以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の一つの実施形態に係る検査装置100の概要を示す図である。検査装置100は、半導体試料10を検査する。半導体試料10は、半導体材料で形成された試料である。半導体試料10は、半導体インゴット、半導体インゴットから切り出された半導体ウエハ、半導体ウエハから個片化された半導体基板、半導体基板またはその他の材料の基板上に形成された半導体層等であってよい。図1においては、半導体試料10の深さ方向をZ軸方向とする。Z軸と直交する2つの軸をX軸およびY軸とする。
検査装置100は、元画像取得部20、転位抽出部22および画像合成部24を備える。元画像取得部20は、半導体試料10を通過した電磁波による元画像であって、半導体試料10に対する電磁波の照射方向が異なる複数の元画像を取得する。一例として電磁波はX線である。元画像は、半導体試料10を透過したX線から得られる画像である。元画像は、半導体試料10の内部において回折したX線から得られる画像であってもよい。元画像は、半導体試料10のXY断面の画像であってよい。元画像は、深さ方向等の所定の方向の複数の位置における複数の断面画像を含んでよい。
検査装置100は、電磁波照射部12と、撮像部18とを備えてよい。電磁波照射部12は、X線等の電磁波14を、半導体試料10に照射する。撮像部18は、半導体試料10を透過したX線等の電磁波16を受光して、受光結果に応じた元画像を生成する。
例えば電磁波照射部12は、半導体試料10の内部の任意の位置(x、y、z)に、電磁波14を数μm程度のサイズに集光する。撮像部18は、当該位置(x、y、z)からのブラッグの回折条件を満たす電磁波16を撮像する。検査装置100は、半導体試料10を、x軸、y軸、z軸に沿って、電磁波14のビームサイズと同等のピッチで移動させながら、回折線を検出して記録する。これにより、半導体試料10の内部の転位に対応する電磁波16の強度分布、すなわち、転位の3次元のマッピング像を取得できる。3次元のマッピング像の取得方法は、特許文献1と同様であってよい。
元画像取得部20は、撮像部18が生成した元画像を取得する。電磁波照射部12および撮像部18は、検査装置100に設けられていてよく、検査装置100とは異なる装置に設けられていてもよい。
電磁波照射部12は、半導体試料10に対して、電磁波14の照射方向が変更可能である。例えば照射方向は、XY面における方向である。撮像部18は、照射方向毎に元画像を撮像する。
転位抽出部22は、それぞれの元画像から転位を抽出する。半導体試料10の結晶の塑性変形の多くは、ある結晶面における特定の結晶方向への変形により、当該結晶面の上下の原子が相対的にずれることにより起こる。これにより、当該結晶方向への結晶歪が生じる。当該結晶面はすべり面とも称される。すべり面の上下の原子が一斉にずれるためには、非常に大きな応力が必要となるため、多くの場合、原子が局所的にずれていく。すべり面上で原子がずれた領域とずれていない領域との境界部分には、線状の結晶欠陥が存在する。このような結晶欠陥が生じている状態を転位と呼ぶ。
半導体試料10には、様々な方向の結晶歪を有する転位が存在する。一方で、特定の照射方向から電磁波14を照射して元画像を撮像すると、結晶歪の方向によって、元画像に現れやすい転位と、現れにくい転位とが存在する。例えば、画像における転位のコントラストは、下式を満たす場合に消失する。
g・n=0、且つ、g・(b×u)=0
ただし、gは電磁波の回折ベクトルであり、電磁波14の運動量ベクトルをk1、電磁波16の運動量ベクトルをk2とすると、g=k2-k1である。また、bは転位の歪方向を表すベクトルであり、uは転位線の向きに対応する単位ベクトルである。転位線の向きとは、線状の転位の各点における線の方向である。このため、単一の照射方向による元画像からは、半導体試料10内の転位を精度よく検出できない場合がある。
本例の転位抽出部22は、照射方向の異なる元画像から転位を抽出する。このため転位抽出部22は、それぞれの元画像から、照射方向に応じた方向に結晶歪を有する転位を抽出できる。
画像合成部24は、照射方向が異なるそれぞれの元画像から抽出したそれぞれの転位を、共通の画像に合成した合成画像を生成する。つまり画像合成部24は、複数の元画像から抽出した転位を含む合成画像を生成する。これにより、半導体試料10中の転位を精度よく検出できる。
図2は、電磁波14の照射方向の一例を示す平面図である。上述したように、電磁波照射部12は、XY面における複数の方向から、半導体試料10に対して電磁波を照射する。電磁波照射部12は、半導体試料10を囲む複数の位置から電磁波を照射してよい。電磁波照射部12は、半導体試料10に対する角度が所定角度(図2の例では60度)ずつ異なる複数の照射方向(図2の例では方向A~F)から、電磁波を照射してよい。
図3は、元画像取得部20が取得する複数の元画像を説明する図である。本例の元画像取得部20は、6つの照射方向A~Fに対応する6つの元画像A~Fを取得する。本明細書では、元画像および照射方向の個数が6個の例を説明するが、元画像および照射方向の個数は6個に限定されない。
それぞれの元画像は、半導体試料10の複数の断面画像を含む。複数の断面画像は、深さ方向(Z軸方向)における位置が異なる画像である。図3の例では、それぞれの元画像は、n個の断面画像を含んでいる。
図4は、画像合成部24の動作の概要を説明する図である。図4における断面画像ak~fkは、元画像A~Fにおける深さ位置kの断面画像である。なおkは1からnの間の整数である。図4では、それぞれの断面画像に含まれる転位30の画像を模式的に示している。転位抽出部22は、断面画像において、輝度強度が所定の閾値以上の画素を、転位30の候補として抽出してよい。輝度強度は、画像上における隣接画素との輝度差、すなわち、コントラストの大きさを示す値であってよい。
当該断面において、半導体試料10には複数の転位30が含まれている。上述したように、電磁波の照射方向と結晶歪の方向により、同一の転位30であっても、断面画像ak~fk間で見え方が異なる。例えばそれぞれの断面画像ak~fkには、電磁波の照射方向および結晶歪の方向により、一部の転位30の輝度強度が変化し、または、転位30自体が現れない場合がある。図4においては、それぞれの断面画像ak~fkにおいて、輝度強度が閾値以上の転位30だけを模式的に表示している。
画像合成部24は、それぞれの断面画像ak~fkに含まれる全ての転位30を含む、一つの合成画像40-kを生成してよい。画像合成部24は、深さ位置毎に、合成画像40-kを生成してよい。このような処理により、半導体試料10に含まれる転位30を精度よく検出でき、また、転位30の検出漏れが少ない合成画像40-kを提供できる。
画像合成部24は、それぞれの断面画像ak~fkに含まれる転位30に基づいて、それぞれの断面画像ak~fkの位置合わせを行ってよい。画像合成部24は、断面画像間でパターンマッチングを行い、位置が一致する転位30の個数が最も多くなるように、断面画像ak~fkの位置合わせを行ってよい。ただし、画像合成部24がパターンマッチングに用いる画像上の特徴は、転位30には限定されない。これにより、合成画像40-kにおいて、それぞれの転位30を精度よく配置できる。
画像合成部24は、いずれかの断面画像と、当該断面画像と電磁波の照射方向の差分が最も小さい断面画像である隣接断面画像とを比較して、2つの断面画像間の位置合わせを行ってよい。例えば断面画像akの隣接断面画像は、断面画像bkおよびfkである。各断面画像と隣接断面画像は、電磁波の照射方向の差異が小さいので、画像に含まれる転位30の差異が小さくなる。このため、各断面画像と隣接断面画像とを比較することで、位置合わせの精度を向上できる。
なお、転位抽出部22は、複数の元画像の断面画像において、対応する位置の輝度変化に基づいて、転位30を抽出してよい。上述したように、電磁波の照射方向と、結晶歪の方向とにより、同一の位置の転位30であっても、断面画像間で見え方が変化する。つまり、同一深さ位置における断面画像間で見え方が変化しない成分は、転位30ではないと判断できる。転位抽出部22は、転位30の候補として抽出した成分であっても、同一深さ位置の断面画像間(例えばak~fk)における輝度変化が所定の閾値以下の成分は、転位30の候補から除外してよい。転位抽出部22は、同一深さ位置の断面画像の全てに現れている成分29を、転位30の候補から除外してもよい。
また、転位抽出部22は、それぞれの元画像において、複数の断面画像からそれぞれの断面画像における転位30を検出してよい。転位抽出部22は、元画像における深さ方向の輝度強度のプロファイルに基づいて、それぞれの断面画像における転位を抽出してよい。
図5は、元画像Aに含まれる転位30の一例を示す図である。なお元画像A以外の他の元画像については説明を省略するが、他の元画像も元画像Aと同様である。半導体試料10における転位は、深さ方向に伸びている場合がある。このため、元画像Aにおいても、3次元的に転位30が含まれている。図5においては、それぞれの断面画像に含まれる転位30を線でつないで示している。
転位抽出部22は、元画像Aについて、深さ方向と垂直な平面における各画素の、深さ方向における輝度プロファイルに基づいて転位30を抽出する。つまり転位抽出部22は、それぞれの断面画像においてx軸およびy軸における座標が共通する画素42-1~42-nの、深さ方向における輝度変化を示す輝度プロファイルから、転位30を抽出する。図5では、x軸およびz軸の座標がxpおよびypである画素42-1~42-nを示している。
転位抽出部22は、画素42-1~42-nの輝度プロファイルから、画素42-1~42-nにおいて転位30に相当する画素42を抽出する。転位抽出部22は、xy面における各画素について、同様に転位30に相当する画素42を抽出する。
図6は、画素42-1~42-nの輝度プロファイルの一例を示す図である。本例の転位抽出部22は、輝度プロファイルにおけるピーク44に基づいて、転位30を抽出する。本例のピーク44は、輝度強度が極大値を取る山形の分布である。転位抽出部22は、輝度強度が予め定められた閾値T1以上となる範囲をピーク44として検出してよい。転位抽出部22は、ピーク44に含まれる画素42を、転位30の画素としてよい。転位抽出部22は、極大値と、隣接する極小値との差異が所定の閾値以上となる山形の分布をピーク44として検出してもよい。これらの閾値は、輝度プロファイルにおける輝度強度の平均値、最小値、最大値等に応じて調整してもよい。このような処理により、画素42-1~42-nにおいて転位30に相当する画素を抽出できる。
図7は、2つの元画像における、輝度プロファイルの一例を示す図である。図7においては、元画像AおよびBについて、x軸およびy軸の座標が同一の画素の輝度プロファイルを示している。
2つの輝度プロファイルは、同一の領域の輝度プロファイルなので、同様の形状を有する。ただし、転位30等における輝度強度は、転位30の方向と、電磁波の照射方向との相対関係により変化する。図7の例では、元画像Bの輝度プロファイルにおけるピーク44は、元画像Aの輝度プロファイルにおけるピーク44よりも輝度強度が小さい。
この場合、2つの輝度プロファイルに対して共通の閾値T1を用いてピーク44を検出しようとすると、元画像Bのピーク44を検出できない場合がある。転位抽出部22は、ピーク44の形状、傾き、ピークの大きさおよび極大値の少なくとも一つに応じて、輝度プロファイル毎に転位30の抽出条件を変化させることが好ましい。転位抽出部22は、ピーク44の形状等に応じて、閾値T1を輝度プロファイル毎に変化させてよく、他の抽出条件を変化させてもよい。
図8は、それぞれの輝度プロファイルにおける転位30を検出する方法の一例を説明する図である。本例の転位抽出部22は、輝度プロファイルにおいて、深さ方向における各位置の輝度強度と、当該位置に対して予め定められた距離離れた位置における輝度強度との差分に基づいて、ピークを検出する。
より具体的には、転位抽出部22は、輝度プロファイルから順次選択される注目点(深さ位置zpの画素)の強度Fpと、注目点から距離αはなれた2つの参照点(深さ位置zp+α、zp-αの画素)の輝度強度Fp+α、Fp-αを算出する。距離αは、例えば断面画像の10層分の距離より小さくてよく、5層分の距離より小さくてもよい。転位抽出部22は、注目点と、それぞれの参照点とを結ぶ2つの直線の傾きを算出してよい。本例の転位抽出部22は、下記の3つの指標G1、G2、G3を算出する。転位抽出部22は、輝度プロファイルにおけるそれぞれの深さ位置の画素を順番に注目点として選択し、それぞれの注目点に対して、下記の3つの指標G1、G2、G3を算出する。
G1=Fp
G2=(Fp-Fp-α)/α
G3=(Fp-Fp+α)/α
図9は、指標G1、G2、G3の空間分布の一例を示す図である。転位抽出部22は、輝度プロファイルのそれぞれの注目点に対して算出した指標G1、G2、G3に応じた点を、空間座標にプロットする。図9の空間座標においては、指標G1、G2、G3に対応する3つの直交軸G1、G2、G3を有する。転位抽出部22は、それぞれの注目点を座標(G1、G2、G3)にプロットする。転位抽出部22は、指標G1、G2、G3の絶対値を用いて、それぞれの注目点を空間座標にプロットしてもよい。転位抽出部22は、XY平面における各画素の輝度プロファイルにおける注目点を、一つの空間座標にプロットしてよい。つまり転位抽出部22は、元画像毎に空間分布を生成してよい。
ピーク44においては、各注目点における輝度プロファイルの傾きが同等の値を取る。このため、ピーク44に含まれる注目点の間では、指標G1、G2、G3の値が類似しやすくなる。図9においては、例えば領域50内に、ピーク44に含まれる注目点がプロットされている。領域50は、他の領域に比べて高密度に注目点がプロットされている。また、輝度プロファイルが平坦な領域においても、指標G1、G2、G3の値が類似する注目点が多くなる。図9においては、例えば領域51内に、平坦領域に含まれる注目点がプロットされている。領域51は、領域50よりも指標G1の値(つまり注目点の輝度強度)が小さい。領域51は、指標G1の値がほぼゼロであってよい。領域51と領域50との間には、平坦領域以外の、転位30が発生していない領域の注目点がプロットされている。
転位抽出部22は、空間分布における注目点の密度に基づいて、ピーク44に含まれる注目点を抽出してよい。転位抽出部22は、注目点の密度が所定の閾値より高く、且つ、指標G1の値が所定の閾値より高い領域50を抽出してよい。転位抽出部22は、領域50に含まれる注目点を、転位30として抽出してよい。
図10は、空間分布にプロットされた注目点の指標G1、G2、G3の指標値のヒストグラムの一例を示す。本例の指標値は、1から256の整数で示される。転位抽出部22は、指標G1、G2、G3毎に、それぞれの指標値が現れる頻度を示すヒストグラムを生成してよい。
転位抽出部22は、指標G1、G2、G3のそれぞれについて、度数が所定の閾値TH以上となる指標値を抽出する。転位抽出部22は、指標G1、G2、G3の少なくとも一つが、抽出した指標値となる注目点を検出してよい。ピーク44に含まれる注目点は、指標G1、G2、G3の少なくとも一つが、同様の値になりやすい。このため、度数の高い指標値を有する注目点を抽出することで、ピーク44に含まれる注目点を抽出できる。
図11は、図10に示したヒストグラムに基づいて、転位抽出部22が抽出した注目点を示す空間分布である。図10において説明した処理により、転位30が発生していない領域の注目点が取り除かれている。
転位抽出部22は、残存した注目点を、注目点間の距離に基づいてクラスター化する。転位抽出部22は、クラスター分析により、注目点をクラスター化してよい。クラスター分析は、2点間の距離に基づいて、近距離の2点を同じクラスターに分類する処理である。図11の例では、残存した注目点が、分布52-1、分布52-2、分布52-3に分類されている。図9において説明したように、指標G1の値が小さい分布52-2および分布52-3は平坦領域に対応している。転位抽出部22は、指標G1の値が所定の閾値以上の分布52-1を、転位30に対応するグループとして抽出してよい。
転位抽出部22は、分布52-1の主軸ベクトルを算出してよい。主軸ベクトルは、分布52-1において注目点の分散が最も大きい方向を示すベクトルである。図11の例では、転位30に対応する分布52-1は一つだけであったが、転位30に対応する分布52が複数存在する場合、転位抽出部22は、それぞれの分布52に対して主軸ベクトルを算出してよい。
図12は、主軸ベクトルを算出する方法の一例を示す図である。分布52の主軸ベクトルは、例えば主成分分析により算出してよい。主成分分析は、分布の特徴ベクトルをもっともよく近似するベクトルを算出する処理である。本例の転位抽出部22は、分布52に含まれる注目点の各指標値の平均値から分散を算出(S1202)し、共分散行列を作成する(S1204)。
転位抽出部22は、共分散行列の固有値を計算し(S1206)、固有ベクトルを計算する(S1208)。これにより、共分散行列を対角化して、主軸ベクトルを算出できる。転位抽出部22は、主軸ベクトルを図11に示した空間座標の各平面に射影することで、各平面における主軸ベクトルの角度を算出してもよい(S1210)。
図13は、主軸ベクトル54を射影したベクトルを示す図である。本例の転位抽出部22は、主軸ベクトル54を、G1G2平面に射影した射影ベクトル55と、G2G3平面に射影した射影ベクトル57を算出する。
主軸ベクトル54のうち、G1軸、G2軸、G3軸と平行な成分を、Eg1、Eg2、Eg3とする。射影ベクトル55と、G2軸との成す角度θg3は、下式から算出できる。
θg3=tan-1(|Eg2|/|Eg1|)
また、射影ベクトル57と、主軸ベクトル54との成す角度θPoleは、下式から算出できる。
θPole=cos-1((Eg22+Eg32)/(Eg12+Eg22+Eg32))1/2
主軸は、三次元空間を構成する1つの基準軸と、選択されていない基準軸のパラメータを除いたベクトルパラメータで表される主軸の直交ベクトルによって、姿勢が決定されている。主軸の固有ベクトルの角度は、図13のようにG1G2平面へ射影された射影ベクトル55の成す角度θg3と、図13に示すような、主軸ベクトル54とG2G3平面上に射影された射影ベクトル57の成す角度θPoleで構成できる。角度θPoleの回転を行うには、下の直交ベクトル式で示される軸を回転軸として用いればよい。
(0,sin(θg3-π/2),cos(θg3-π/2))
当該直交ベクトル式は、主軸ベクトルのG1成分を除いたG2成分・G3成分に対して、直交したベクトルを示している。この軸を回転基準軸として、主軸ベクトルを-θPole回転すると、G1G2平面に射影した射影ベクトル55と合致させることができる。
図14は、条件判別用の図形モデルを示す図である。図11から図13において説明したように、転位抽出部22は、図11に示した分布52-1、52-2、52-3のそれぞれについて主軸ベクトルを算出する。転位抽出部22は、それぞれの主軸ベクトルに基づいて、空間座標において分布52-1、52-2、52-3をそれぞれ包含する楕円球を算出する。主軸ベクトルは、各分布52においてデータが最も広く分布している方向を示すベクトルである。転位抽出部22は、各分布52内の全注目点が包含されるように、主軸ベクトルを中心軸とする楕円球モデルを算出してよい。転位抽出部22は、楕円球モデルの内側の注目点を転位候補とし、楕円球モデルの外側の注目点を対象外と判定してよい。
これにより、図14に示すような条件判別用の図形モデルを自動的に決定可能となる。図形モデルは、空間座標において複数の領域58を有する。図14の例においては、多数の領域58を示しているが、図形モデルは、図11に示した分布52-1、52-2、52-3に対応する領域58だけを有していてよい。それぞれの領域58は、主軸ベクトル54により定義されている。転位抽出部22は、領域58毎に転位30の検出条件を設定してよい。本図形モデルにより転位欠陥を自動判別する事で、それぞれの断面画像における転位候補位置を抽出する事ができ、これらを深さ方向にて合成を行う事で、元画像における転位欠陥を3次元化して表示する事が可能となる。
図15は、元画像Aの各断面画像で抽出された転位33をプロットした図である。図15における各点が、抽出された転位33に対応している。転位抽出部22は、それぞれの断面画像における複数の転位33について、2つの転位33間の距離dに基づいて1つ以上のグループに分類する。転位抽出部22は、それぞれの転位33を順番に注目転位33-1として選択し、注目転位33-1と他の全ての転位33との距離dを算出してよい。転位抽出部22は、他の転位33のうち、距離dが所定の閾値より小さい転位33を、注目転位33-1と同一のグループとする。
図16は、同一のグループの転位33を線で結んだ転位線32を示す図である。転位抽出部22は、転位線32を算出してよい。これにより、半導体試料10における転位30の状態を識別しやすくなる。画像合成部24は、転位線32を含む合成画像を生成してよい。
図17は、元画像Bにおける転位線32を示す図である。上述したように、元画像Bには、元画像Aとは異なる転位線32-6が含まれ得る。同様に、元画像C~元画像Fにおいても、他の元画像とは異なる転位線32が含まれ得る。
図18は、複数の元画像における転位線32を、同一の座標系に配置した合成画像を示す図である。画像合成部24は、図18に示す合成画像を生成してよい。画像合成部24は、いずれかの深さ位置における断面画像における転位のパターンに基づいて、元画像どうしの位置合わせを行ってよい。図4において説明したように、画像合成部24は、いずれかの元画像と、当該元画像と電磁波の照射方向の差分が最も小さい元画像である隣接画像とを比較して、2つの元画像の位置合わせを行ってよい。
画像合成部24は、複数の元画像に基づいて、それぞれの転位線32に含まれる転位30における結晶歪の方向を検出してよい。一つの転位線32には、同一方向の転位30が多く含まれている。画像合成部24は、それぞれの元画像について、それぞれの転位線32に含まれる転位30の個数を計数してよい。画像合成部24は、転位30の個数が最も大きい元画像の電磁波照射方向に基づいて、当該転位線32の結晶歪の方向を検出してよい。例えば画像合成部24は、元画像Aにおける転位線32-1に含まれる転位の個数が、他の元画像における転位線32-1に含まれる転位の個数よりも多い場合、元画像Aの電磁波照射方向から、転位線32-1の歪方向を判別してよい。
図19は、画像合成部24が生成する合成画像の他の例を示す図である。本例の画像合成部24は、それぞれの転位線32の結晶歪の方向を示す情報を含む合成画像を生成する。画像合成部24は、それぞれの転位線32の結晶歪の方向を、転位線32の表示態様によって示してよい。つまり画像合成部24は、同一方向の転位線32を、同一の表示態様で表示してよい。表示態様には、線の色、線の太さ、実線、点線、鎖線等の線の種別が含まれる。
図20は、半導体試料の検査方法の概要を示すフローチャートである。検査方法は、図1から図19において説明した方法と同一である。検査方法は、元画像取得段階S2002、転位抽出段階S2004、画像合成段階S2006を有する。元画像取得段階S2002の処理は、図1から図19において説明した元画像取得部20における処理と同一である。転位抽出段階S2004の処理は、図1から図19において説明した転位抽出部22における処理と同一である。画像合成段階S2006の処理は、図1から図19において説明した画像合成部24における処理と同一である。
図21は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る方法または当該方法の段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。