JP7234174B2 - 電力系統安定化システム - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、系統事故発生時に電源制限を実施して発電機の同期安定性を維持する電力系統安定化システムに関する。
従来、発電機の脱調現象(発電機が同期外れを起こし不安定な運転状態になること)の発生を未然に防止する系統脱調・事故波及防止リレーシステム(以下、電力系統安定化システム)に関する技術が開示されている(例えば、非特許文献1)。
非特許文献1において開示されているオンライン事前演算型の電力系統安定化システムは、オンラインで入手した系統情報(例えば、接続状態や需給状態を含む)を用いて、予め設定した想定事故毎に過渡安定度演算を実施して、想定事故毎の制御内容を決定し、その決定結果に基づいて制御テーブルを設定する。電力系統安定化システムは、実際に事故が発生した場合、事故種別と制御テーブルとを照合して制御を実施する。
なお、制御内容とは事故発生時に解列する(「解列」とは電力系統から切り離すことであり、以下では「遮断」または「電制」と表現する場合がある)発電機である。また、事故の影響が電力系統全体に波及するのを防止するために一部の発電機を電力系統から強制的に遮断する制御のことを電源制限、または電制と称する。なお、以下の説明において、電源制限の対象として選択された発電機などの制御対象のことを電制対象、電制対象を決定する処理のことを電制対象選択と称する。なお、制御内容には、電源制限に加え、発電機の加速を抑制するタービン高速バルブ制御(EVA;Early Valve Actuation)が含まれてもよい。
図1は、従来のオンライン事前演算型の電力系統安定化システムSSの構成図である。電力系統安定化システムSSは、例えば、中央演算装置9と、中央制御装置10と、事故検出端末装置11と、制御端末装置12とを備える。
なお、中央演算装置9は、「中央演算装置(事前演算部)」と称される場合があり、その際、中央制御装置10は、「中央演算装置(事後制御部)」と称される場合がある。なお、中央演算装置9および中央制御装置10は、それぞれの機能を統合してひとつの装置として構成される場合がある(例えば、特許文献1)。
図2は、電力系統安定化システムSSが設置された電力系統Eの構成図である。電力系統Eは、例えば、上述の電力系統安定化システムSSに加え、さらに、発電機1と、母線2と、送電線または変圧器3と、遮断器(CB)4と、電流計測器(CT)5と、電圧計測器(VT)6と、事故除去リレーシステム7とを備える。
電力系統安定化システムSSの構成要素である中央演算装置9、中央制御装置10、事故検出端末装置11、および制御端末装置12は、図2に示されるように通信設備8(例えば、信号線や通信装置など)により接続される。事故検出端末装置11は、例えば、変電所などに設置される。また、制御端末装置12は、例えば、発電所などに設置される。中央制御装置10は、他の装置との通信が可能な個所に設置されるが、事故検出端末装置11や制御端末装置12と同じ場所に設置されることもある。また、中央制御装置10には、事故検出端末装置11や制御端末装置12の機能を含めて構成されることがある。中央演算装置9は、系統情報をオンラインで入手できるよう中央給電指令所など給電情報網Nと接続可能な個所に設置される。
電力系統安定化システムSSを構成する中央演算装置9と、中央制御装置10と、事故検出端末装置11と、制御端末装置12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integrated circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置150や記憶装置160にインストールされてもよい。記憶装置150および記憶装置160は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により構成される。
中央演算装置9は、例えば、系統情報収集手段101と、系統モデル作成手段102と、解析条件設定手段103と、安定度判定手段104と、電制対象選択手段105と、記憶装置150とを備える。記憶装置150は、例えば、中央演算装置9において実行されるプログラム、系統設備データ151、想定事故種別データ152、電制候補データ153、および制御テーブル154などを記憶する。
系統情報収集手段101は、給電情報網Nを介して電力系統Eから入力された系統情報(給電用オンラインデータ)を収集する。系統設備データ151には、例えば、電力系統Eを構成する発電機や送電線、変圧器など各種設備のインピーダンスなどの情報が含まれる。系統情報とは、例えば、電力系統Eの接続状態や、電力の需給状態、潮流状態に関する情報である。一定の周期または系統情報の更新周期で、給電情報網Nから提供される系統情報は、系統情報収集手段101により収集される。系統情報収集手段101は、収集した系統情報を系統モデル作成手段102に出力する。
系統モデル作成手段102は、例えば、系統情報収集手段101から入力された系統情報と、系統設備データ151に基づいて、後述する中央演算装置9で所定の周期で繰り返し実施する一連の処理における今回の処理タイミングの系統状態を表す解析用系統モデルを作成する。系統モデル作成手段102は、作成した解析用系統モデルを、解析条件設定手段103に出力する。
解析条件設定手段103は、例えば、系統モデル取得部103aと、解析条件設定部103bとを備える。系統モデル取得部103aは、系統モデル作成手段102により作成された解析用系統モデルを取得する。解析条件設定部103bは、系統モデル取得部103aにより取得された解析用系統モデルと、想定事故種別に関する定義が格納された想定事故種別データ152(図4参照)を参照して得られた想定される事故種別のデータとに基づいて、解析条件を設定する。解析条件には、例えば、想定事故種別に対して当該事故の発生時に制御を行う電制対象の組合せの情報が含まれる。想定事故種別には、例えば、事故を監視する監視点(例えば、送電線等)と、その事故様相とを示す情報が含まれる。解析条件設定部103bは、設定した解析条件を、安定度判定手段104に出力する。
安定度判定手段104は、解析条件設定部103bから出力された解析条件に基づいて、過渡安定度演算を行う。
安定度判定手段104は、例えば、解析条件取得部104aと、過渡安定度演算部104bと、安定度判定部104cとを備える。
解析条件取得部104aは、解析条件設定手段103により設定された解析条件を取得する。過渡安定度演算部104bは、解析条件取得部104aにより取得された解析条件に対して、電力系統に並列する発電機が同期を保って運用できるかをシミュレーションする過渡安定度演算を行う。安定度判定部104cは、過渡安定度演算部104bにより得られた過渡安定度演算の結果に基づいて、各解析条件において脱調現象を生じることなく電力系統を安定に運用できるか否かを判定する。脱調する発電機がある場合に不安定、すべての発電機が同期運転を保てる場合は安定と判定する。安定度判定部104cは、安定度に関する判定結果を電制対象選択手段105に出力する。
電制対象選択手段105は、例えば、電制対象選択部105aと、制御テーブル設定部105bとを備える。
電制対象選択部105aは、安定度判定部104cにより出力された各想定事故種別が発生した際の安定度に関する判定結果に基づいて制御対象となる発電機を選択する。制御対象とする発電機は電制候補データ153に設定された発電機の中から選択する。電制対象選択部105aは、例えば、安定度判定部104cにより出力された各想定事故種別が発生した際の過渡安定度演算結果を用いて電制候補データ153に設定された発電機について、当該発電機を電制した場合の安定化効果を表す指標を演算し、その安定化効果指標に基づいて電制対象となる発電機を選択する。制御テーブル設定部105bは、電制対象選択部105aにより選択された各想定事故種別における電制対象の組合せを制御テーブル154に設定する。また、制御テーブル設定部105bは、設定した制御テーブルを中央制御装置10へ送信する。
なお、上述した中央演算装置9の一連の処理は、所定の周期で繰り返し行われる。所定の周期とは、例えば、すべての想定事故種別について制御テーブルの更新が完了する時間(例えば、30秒)である。また、所定の周期は、電力系統Eの規模や想定事故種別の数、中央演算装置9の処理能力に基づいて電力系統安定化システムSSの管理者により設定されてもよい。
中央制御装置10は、例えば、電制対象決定手段106と、記憶装置160とを備える。記憶装置160は、例えば、中央制御装置10において実行されるプログラムや、制御テーブル161などを記憶する。
電制対象決定手段106は、例えば、制御テーブル取得部106aと、照合処理部106bとを備える。
制御テーブル取得部106aは、中央演算装置9により設定された制御テーブルを受信して、記憶装置160に制御テーブル161として記憶させる。照合処理部106bは、後述する事故検出端末装置11から電力系統Eの事故種別に関する情報を取得し、その事故種別に対応付いた想定事故種別における電制対象の組合せを、制御テーブル161を照合して取得し、取得した電制対象の組合せを実際の電制対象として決定し、電制対象を制御する制御端末装置12に対して電制指令を送信する。
事故検出端末装置11は、例えば、事故種別検出手段107を備える。事故種別検出手段107は、電力系統Eから系統情報を取得して、電力系統Eにおける系統事故の発生を検出し、さらに系統事故を検出した場合にはその事故種別を判別する。事故検出端末装置11は、系統事故の発生を検出すると、事故種別を判別して中央制御装置10へ送信する。
制御端末装置12は、例えば、制御手段108を備える。制御手段108は、中央制御装置10から受信した電制指令に基づいて、対象の電制対象に対し遮断指令を送信する。
図3は、中央演算装置9による処理の一例を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートの処理は、例えば、所定の周期で繰り返し実行される。
まず、系統情報収集手段101は、給電情報網Nを介して、電力系統Eの系統情報を収集する(ステップS1)。次に、系統モデル作成手段102は、収集された系統情報と系統設備データ151に基づいて状態推定計算や系統縮約等を行い、電力系統Eの解析用系統モデルを作成する(ステップS2)。
次に、解析条件設定手段103は、ステップS2において作成された解析用系統モデルと想定事故種別データ152に基づいて解析条件を設定する(ステップS3)。次に、安定度判定手段104は、ステップS3において設定された解析条件の過渡安定度演算を行う(ステップS4)。
次に、安定度判定手段104は、ステップS4の過渡安定度演算の結果に基づき、想定事故種別が仮に発生した場合、電力系統Eが安定運転を維持できるか否かを判定する(ステップS5)。
ステップS5で安定と判定しなかった場合、電制対象選択手段105は、その想定事故種別における電制対象を電制候補データ153を参照してその中から選択し、選択した電制対象を追加し、ステップS3へ処理を戻す(ステップS6)。この場合、ステップS3は、ステップS6で選択した電制対象を電制する条件を含む解析条件を設定する。
ステップS5で安定と判定した場合、電制対象選択手段105は、すべての想定事故種別の安定度判定を完了したか否かを判定する(ステップS7)。すべての想定事故種別の安定度判定を完了していないと判定した場合、電制対象選択手段105は、ステップS3へ処理を戻し、次の想定事故種別の安定度判定を行う。すべての想定事故種別の安定度判定を完了したと判定した場合、電制対象選択手段105は、制御テーブル154を設定して(ステップS8)、本フローチャートの処理を終了する。
図4は、想定事故種別データ152に含まれる内容の一例を示す図である。図中のNは自然数である。想定事故種別データ152には、例えば、想定事故種別を識別するための想定事故種別番号と、監視点と、監視点において検知される事故様相などの情報が含まれる。解析条件設定部103bは、例えば、系統モデル取得部103aにより取得された解析用系統モデルと、想定事故種別データ152に含まれる想定事故種別データと、電制対象選択手段105で選択した電制対象の組み合わせとを用いて、解析条件を設定する。
図5は、安定化効果を表す指標に基づいて電制対象を選択する電制対象選択部105aの処理の一例を示すフローチャートである。図5のフローチャートの処理は、図3に示すフローチャートのステップS6に対応付いた処理である。
まず、電制対象選択部105aは、電力系統安定化システムSSが制御可能な発電機、すなわち制御端末装置12が設置された電制候補の発電機N台を記録した電制候補データ153に基づいて電制候補を選択する(ステップS601)。図6は、電制候補データ153の一例を示す図である。図中のNは自然数である。電制候補データ153は、想定事故種別の監視点毎に設けてもよい。
電制対象選択部105aは、電制候補データ153に設定された発電機N台の中から、式(1)または式(2)の判定条件を用いて最初に発電機が不安定と判断された時点から、一定時間内に不安定と判定された発電機x台を電制候補として選択する。すなわち、判定条件を満たさない電制候補の発電機は電制候補から除外する。xは自然数であり、x≦Nの関係にある。
{ δi(t)-δS(t)} ≧ δ ・・・(1)
{ δi(t)-δS(t)} ≧ δ かつ { ωi(t)-ωS(t)} ≧ ω ・・・(2)
ここで、δi(t)は時間tにおける電力系統E内の発電機の内部位相角、ωi(t)は時間tにおける電力系統E内の発電機の角速度、δS(t)は時間tにおける基準発電機の内部位相角、ωS(t)は時間tにおける基準発電機の角速度、iは発電機番号(i=1~N)、tは過渡安定度演算におけるシミュレーション時間、δおよびωはしきい値である。
ステップS601の処理の後、電制対象選択部105aは、電制候補として選択された発電機x台について加速エネルギーを安定化効果指標AEとして演算し(ステップS602)、電力系統Eの運用制約を考慮した重み係数を用いて安定化効果指標AEを補正して(ステップS603)、安定化効果指標AEが最大の発電機を追加する電制対象として選択する(ステップS604)。
図7は、過渡安定度演算結果を用いて電制候補の安定化効果指標AEを演算した結果の一例を示す図である。図示のように、例えば、電制候補の発電機それぞれの内部位相角差、角速度差、安定化効果指標などの情報が含まれる。電制対象選択部105aは、安定化効果指標AEの大きい発電機を電制対象として選択する。
以上が、従来の電力系統安定化システムSSにおける電制対象選択部105aの処理である。制御テーブル設定部105bは、電制対象選択部105aで選択された電制対象を制御テーブルへ設定する。
図8は、制御テーブル154に含まれる内容の一例を示す図である。制御テーブル154には、例えば、想定事故種別番号と、電制対象選択手段105で選択した電制対象などの情報が含まれる。
図8に示す制御テーブル154は、例えば、想定事故種別番号「1」の事故、すなわち図4に示すA変電所X送電線での3Φ6LG-Oの事故(図中の「3Φ6LG-O」等の情報は、事故様相を表すコードであり、これら事故番号、事故対応箇所、および事故様相の組み合わせを、以下、事故種別と記す)が発生した場合は、図2に示した発電機1のうち発電機SG1およびSG2を電制し、想定事故種別番号2の場合は発電機SG1を電制することが設定されている。
このように、従来の電力系統安定化システムSSでは、一部の発電機を電制することによって他の発電機の同期運転を維持し、電力系統を安定化する。電制する発電機は、電力系統に同期連系する火力発電や原子力発電などの同期発電機(以下、同期機)であり、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー電源(以下、再エネ電源)は電制対象としていない。
太陽光発電は太陽光パネルで生成された直流電力をパワーコンディショナー(PCS)で交流電力に変換する電源、風力発電の多くは発電機で発電した交流電力をコンバーターで直流に変換した後に交流電力に再変換する電源であり、どちらも同期機ではない。同期機でない電源のことを非同期機と称し、再エネ電源の多くは非同期機である。
従来の電力系統安定化システムSSで再エネ電源を電制対象としない理由として、再エネ電源は同期機に比べて1電源あたりの出力が小さいため再エネ電源を電制しても同期機の脱調を抑制する効果が小さいこと、脱調しない非同期機の再エネ電源を電制するよりも脱調する同期機を電制する方が電制対象に選択した理由が分かり易く理解を得やすいこと、などが考えられる。
今後も太陽光発電や風力発電などの再エネ電源の導入が拡大することが想定されている。非同期機である再エネ電源の比率が高まった電力系統において同期機を電制すると、同期機が担っている周波数調整機能や電圧維持機能が弱くなり電力系統の安定性が低下する恐れがある。このため、再エネ電源の導入が進んだ電力系統では、同期機だけでなく再エネ電源も電制対象として選択可能な電力系統安定化システムが必要となる。
特許文献2では同期機よりも再エネ電源を優先して電制する電力系統安定化システムが提案されている。また、非特許文献2、非特許文献3では再エネ電源を電制対象とする系統安定化システムにおいて電制する再エネ電源の選択方法に関する検討内容が記載されている。
同期機と再エネ電源の両方を電制対象とし、電制対象を定量的指標に基づいて選択する系統安定化システムに関する文献は見当たらない。
特許第5591505号公報 特許第6223833号公報
電気学会技術報告 第801号、「系統脱調・事故波及防止リレー技術」、p74、p75、p88、p89、p91、p92、 電気学会、2000年10月 下尾ほか,「再生可能エネルギー電源を電源制限する場合の系統安定化効果に関する基礎検討」,電気学会 全国大会,6-073,2019年3月 下尾ほか,「再生可能エネルギー電源を電源制限する系統安定化制御方法の検討」,電気学会,PE-19-071/PSE-19-083,2019年9月 竹内ほか,「系統パラメータ推定と拡張等面積法による過渡安定度ランキング手法の開発」,電気学会,Vol.128,No.1,2008年
本発明が解決しようとする課題は、同期機と再エネ電源を電制対象の候補とし、安定化効果を表す指標に基づいて電制対象を選択することによって、電力系統を安定化でき、かつ電制対象を選択した理由を定量的に示すことができる電力系統安定化システムを提供することである。
実施形態の電力系統安定化システムは、中央演算装置と、事故検出端末装置と、中央制御装置と、制御端末装置とを持つ。制御端末装置が設置される電源は、同期機の発電所と、太陽光発電と風力発電とのうち少なくとも一方を含む再エネ電源と、を含む。また、中央演算装置は、電制候補を電制した際の過渡安定度演算を行い、過渡安定度演算結果を用いて同期安定性を不安定傾向にある同期機グループG1と安定傾向にある同期機グループG2の2機系統モデルで表し、前記2機系統モデルを1機無限大母線モデルに変換し、前記1機無限大母線モデルにおける同期発電機の角速度偏差の変化速度が電制実施時に減少する量を電制量で除算した値を、安定化効果を表す指標とし、指標が最大となる電制候補を電制対象に選択する。
従来のオンライン事前演算型の電力系統安定化システムSSの構成図。 従来の電力系統安定化システムSSが設置された電力系統Eの構成図。 中央演算装置9による処理の一例を示すフローチャート。 想定事故種別データ152の一例を示す図。 従来の電制対象選択部105aによる処理の一例を示すフローチャート。 従来の電制候補データ153の一例を示す図。 従来の安定化効果指標の演算内容の一例を示す図。 制御テーブル154の一例を示す図。 第1の実施形態に係る電力系統安定化システムSSAが設置された電力系統Eの構成図。 第1の実施形態に係る電制候補データ153の一例を示す図。 角速度偏差Δωのシミュレーション波形の一例を示す図。 第1の実施形態に係る電制対象選択部105aによる処理の一例を示すフローチャート。 1機無限大母線モデル。 第1の実施形態に係る安定化効果指標の演算内容の一例を示す図。 第2の実施形態に係る電制対象選択部105aによる処理の一例を示すフローチャート。 第2の実施形態に係る安定化効果指標の演算内容の一例を示す図。
以下、実施形態の電力系統安定化システムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図9は、第1の実施形態の電力系統安定化システムSSAが設置された電力系統Eの構成図である。電力系統安定化システムSSAは、図2に示す従来の電力系統安定化システムSSと比較すると、制御端末装置12が発電機1に加えて再エネ電源の太陽光発電設備21と風力発電設備22にも設置されている点が異なる。電力系統安定化システムSSAの処理構成は図1に示す従来の電力系統安定化システムSSと同じであるが、発電機(同期機)に加えて再エネ電源を電制対象とするため電制候補データ153の内容と電制対象選択部105aの処理が異なる。
従って、以下では同期機に加えて再エネ電源を電制対象とする電力系統安定化システムSSAの電制対象選択部105aの処理を中心に説明する。
過渡安定度対策の電力系統安定化システムでは、加速している同期機グループを減速させて脱調を防止することが重要であるので、事故除去後の加速状態にある同期機グループを短時間で減速させる効果が高い電源を電制対象に選択することが望ましい。
すなわち、加速状態にある同期機グループの角速度偏差Δωの変化速度dΔω/dtが電制によって減少する量が大きい電制候補が安定化効果が大きいので、電力系統安定化システムSSAでは電制実施時の角速度偏差Δωの変化速度dΔω/dtの減少量を電制量で除算した値を安定化効果を表す指標とし、指標が最大の電制候補を電制対象に選択する。
以下、電制対象選択部105aの具体的な処理について、図10と図11と図12を参照して説明する。
図10は、電力系統安定化システムSSAが制御可能な電源、すなわち制御端末装置12が設置された再エネ電源を含む電制候補の電源を記録した電制候補データ153の一例を示す図である。電制候補データ153は、想定事故種別の監視点毎に設けてもよい。電力系統安定化システムSSAの電制対象選択部105aは、電制候補データ153に設定された再エネ電源を含む電制候補の電源N台の中から電制対象を選択する。
図11は、過渡安定度演算によって得られる同期機の角速度偏差Δωのシミュレーション波形の一例を示す図である。時間tFで系統事故が発生し、時間tCで事故除去リレーシステム7によって事故が除去され、時間t1で電制を実施した際の角速度偏差Δωのシミュレーション波形の一例を示している。時間t2は電制実施後の時間である。時間t1と時間t2は過渡安定度演算のシミュレーション時間から得ることができ、その時間間隔は例えば10msである。なお、過渡安定度演算の結果から同じ時刻で電制実施前と電制実施後の演算結果を得ることができる場合は、時間t1と時間t2は同じ時間であってもよい。
図12は、電制対象選択部105aの処理の一例を示すフローチャートである。図12のフローチャートの処理は、図3に示すフローチャートのステップS6に対応付いた処理である。
電制対象選択部105aは、電制候補の電源について、それぞれ安定化効果を演算する。図12に示すように電制対象選択部105aは、初めに、図3に示すステップS4で実施した過渡安定度演算の結果を用いて、不安定傾向にある同期機グループG1を縮約した同期機SG1と安定傾向にある同期機グループG2を縮約した同期機SG2の2機系統モデルで過渡安定度問題(同期安定性)を表し、2機系統モデルを1機無限大母線モデルに変換する(ステップS651)。
多数の同期機が連系する電力系統の過渡安定度問題を2機系統モデルで表し、さらに1機無限大母線モデルに変換する処理は、例えば、非特許文献4に記載されている。
非特許文献4によれば、不安定傾向にある同期機グループG1を同期機SG1、安定傾向の同期機グループG2を同期機SG2の2機系統モデルで表す。このとき、同期機SG1の有効電力出力は式(3)、機械入力は式(4)、慣性は式(5)、同期機SG2の有効電力出力は式(6)、機械入力は式(7)、慣性は式(8)でそれぞれ計算する。
e1 = Σ(M・Pei) ,i∈G1 ・・・(3)
m1 = Σ(M・Pmi) ,i∈G1 ・・・(4)
= ΣM ,i∈G1 ・・・(5)
e2 = Σ(M・Pej) ,j∈G2 ・・・(6)
m2 = Σ(M・Pmj) ,j∈G2 ・・・(7)
= ΣM ,j∈G2 ・・・(8)
つぎに、2機系統モデルを図13に示す1機無限大母線モデルに変換する。1機無限大母線モデルにおける同期機SGの有効電力出力は式(9)、機械入力は式(10)、慣性は式(11)でそれぞれ計算する。
= (Pe1・M-Pe2・M)/(M+M) ・・・(9)
= (Pm1・M-Pm2・M)/(M+M) ・・・(10)
M = (M・M)/(M+M) ・・・(11)
以上より、1機無限大母線モデルで表した不安定傾向の同期機グループG1を1台の同期機に縮約模擬した同期機SGの運動方程式は式(12)で与えられる。
dΔω/d = (P-P)/M ・・・(12)
ここで、Δωは角速度偏差、Pは機械入力、Pは有効電力出力、Mは慣性定数である。
1機無限大母線モデルにおける同期機SGの電制実施前t1の角速度偏差Δωの変化速度をACC1とし、ACC1を式(13)で演算する(ステップS652)。
ACC1 = (Pm(t1)-Pe(t1))/M(t1) ・・・(13)
ここで、t1は電制実施前の時間、Pm(t1),Pe(t1),M(t1)はそれぞれ時間t1時の機械入力,有効電力出力,慣性である。
以下、各電制候補を電制した場合の角速度偏差Δωの変化速度dΔω/dtを演算し、安定化効果を求める。安定化効果を演算する電制候補の電源は、図10に示す電制候補データに設定された電制候補のすべてでも良いし、不安定傾向にある同期機グループG1に含まれる同期機とその近くに位置する再エネ電源に限定しても良い。
電制候補番号iに1を設定する(ステップS653)。電制候補iの電源が電制対象として選択済みか否かを確認し、選択済みの場合はステップS660へ進み、選択済みでない場合は電制候補iの電源を選択してステップS655へ進む(ステップS654)。
電制候補iの電制実施を模擬した過渡安定度演算を実施する(ステップS655)。ステップS655で実施した過渡安定度演算の結果を用いて、電制候補iを電制した場合の1機無限大母線モデルを作成する(ステップS656)。
1機無限大母線モデルにおける同期機SGの電制実施後t2の角速度偏差Δωの変化速度をACC2とし、ACC2を式(14)で演算する(ステップS657)。
ACC2 = (Pm(t2)-Pe(t2))/M(t2) ・・・(14)
ここで、t2は電制実施後の時間、Pm(t2),Pe(t2),M(t2)はそれぞれ時間t2の機械入力,有効電力出力,慣性である。
ACC2がより小さい電制候補が安定化効果が大きいと言えるので、電力系統安定化システムSSAでは電制実施時の角速度偏差Δωの変化速度の減少量を電制量Pで除算した値を安定化効果を表す指標KSTとする。
式(15)を用いて、安定化効果指標KSTを演算する(ステップS658)。
ST = ( ACC1 - ACC2 )/P ・・・(15)
ここで、KSTは安定化効果を表す指標、Pは電制量(電制候補の有効電力出力P)である。
電制候補の有効電力出力Pは、系統情報のひとつであり給電情報網N経由で入手する。また、制御端末装置12で計測して中央制御装置10を経由して入手することも可能である。
全ての電制候補について安定化効果を演算したかを判定する(ステップS659)。全ての電制候補の演算が完了していない場合は電制候補の番号iをインクリメントしてステップS654へ処理を戻す(ステップS660)。全ての電制候補の演算が完了した場合は安定化効果の指標KSTが最大の電制候補を電制対象に選択する(ステップS661)。
図14は、各電制候補について安定化効果指標KSTを演算した結果の一例を示す図である。
なお、本実施例では角速度偏差Δωの変化速度dΔω/dtが電制実施時に減少する量を電制量で除算した値を安定化効果を表す指標としたが、変化速度dΔω/dtの代わりに変化速度dΔω/dtの積分値である角速度偏差Δωや、角速度偏差Δωの積分値である相差角偏差Δδを用いることも可能である。すなわち、加速状態にある同期機グループG1を1台の同期機に縮約模擬した同期機SGの角速度偏差Δωが電制によって減少する量が大きい電制候補が安定化効果が大きいので、電力系統安定化システムSSAでは電制実施時の角速度偏差Δωの減少量を電制量で除算した値を安定化効果を表す指標とし、指標が最大の電制候補を電制対象に選択してもよい。また、加速状態にある同期機SGの角速度偏差Δωの積分値である相差角偏差Δδが電制によって減少する量が大きい電制候補が安定化効果が大きいので、電力系統安定化システムSSAでは電制実施時の相差角偏差Δδの減少量を電制量で除算した値を安定化効果を表す指標とし、指標が最大の電制候補を電制対象に選択してもよい。
以上説明したように、実施形態の電力系統安定化システムは、同期機と再エネ電源を電制対象とし、定量的な安定化効果指標に基づいて電制対象を選択することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の電力系統安定化システムSSBについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。
電力系統安定化システムSSBでは、第1の実施形態で説明した安定化効果指標KSTに加えて他の様々な指標の総合評価を用いて電制対象を選択する。他の指標とは、例えば、周波数調整力である。ガバナフリー運転している火力発電機などは、周波数変動に応じて出力を自動調整し、周波数を一定に維持する周波数調整力がある。周波数調整力を持つ電源の指標を他の電源よりも低い値に設定することによって周波数調整力を持つ電源を残すことが可能になる。
電力系統安定化システムSSBの電制対象選択部105aは、複数の指標を考慮した総合評価に基づいて電制対象を選択する。図15は、第2の実施形態に係る電制対象選択部105aによる処理の一例を示すフローチャートである。ステップS662を除く処理は図12と同じである。
第2の実施形態では、ステップS662に示すように、安定化効果指標KSTだけなく、他の様々な指標も含めた総合評価TKが最大の電制候補を電制対象に選択する。総合評価TKは、例えば、式(16)を用いて求める。
TK=A・KSTi+B・KBi+C・KCi…+Z・KZi・・(16)
ここで、TKは電制候補iの総合評価、KSTiは安定化効果指標、KBi,KCi~KZiは他の指標、A,B,C~Zは各指標の重みを調整する係数(整定値)である。
なお、式(16)の演算を行う前に各指標はそれぞれ正規化しておくのが望ましい。例えば、式(17)を用いて最大値が1となるように正規化した後に式(16)の演算を行う。
ji=K’ji/K’j_max ,i=1~N ・・・(17)
ここで、Kjiは正規化後の電制候補iの指標j、K’jiは正規化前の電制候補iの指標j、K’j_maxは指標jの最大値である。
図16は、各電制候補について複数の指標と、それらを用いて演算した総合評価の一例を示す図である。
以上説明したように、実施形態の電力系統安定化システムは、安定化効果だけでなく、様々な指標を考慮して電制対象を選択することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
SS…電力系統安定化システム、E…電力系統、N…給電情報網、1…発電機(同期機)、2…母線、3…送電線あるいは変圧器、4…遮断器(CB)、5…電流計測器(CT)、6…電圧計測器(VT)、7…事故除去リレーシステム、8…通信設備、9…中央演算装置、10…中央制御装置、11…事故検出端末装置、12…制御端末装置、21…太陽光発電設備(再生可能エネルギー電源)、22…風力発電設備(再生可能エネルギー電源)、101…系統情報収集手段、102…系統モデル作成手段、103…解析条件設定手段、104…安定度判定手段、105…電制対象選択手段、106…電制対象決定手段、107…事故種別検出手段、108…制御手段

Claims (5)

  1. 現在の系統情報を収集して解析用系統モデルを作成し、複数の想定事故について過渡安定度演算を実施し、電力系統の過渡安定度維持に必要な電制対象を選択して制御テーブルに設定し、当該制御テーブルを中央制御装置へ送信することを繰り返し行う中央演算装置と、
    系統事故発生時に事故種別を判定して当該事故種別の情報を中央制御装置へ送信する事故検出端末装置と、
    前記事故検出端末装置から受信した事故種別の情報と前記中央演算装置から受信した制御テーブルとを照合して電制対象を決定し、電制指令を送信する中央制御装置と、
    前記中央制御装置から受信した電制指令に従って、電制対象に決定された電源を電力系統から解列させる制御端末装置と、を備える電力系統安定化システムであって、
    前記制御端末装置が設置される電源は、同期発電機の発電所と、太陽光発電と風力発電とのうち少なくとも一方を含む再エネ電源と、を含み、
    前記中央演算装置は、電制候補を電制した際の過渡安定度演算を行い、過渡安定度演算結果を用いて、同期安定性を不安定傾向にある同期発電機グループと安定傾向にある同期発電機グループの2機系統モデルで表し、前記2機系統モデルを1機無限大母線モデルに変換し、前記1機無限大母線モデルにおける同期発電機の角速度偏差の変化速度が電制実施時に減少する量を電制量で除算した値を安定化効果を表す指標とし、指標が最大となる電制候補を電制対象に選択することを特徴とした電力系統安定化システム。
  2. 現在の系統情報を収集して解析用系統モデルを作成し、複数の想定事故について過渡安定度演算を実施し、電力系統の過渡安定度維持に必要な電制対象を選択して制御テーブルに設定し、当該制御テーブルを中央制御装置へ送信することを繰り返し行う中央演算装置と、
    系統事故発生時に事故種別を判定して当該事故種別の情報を中央制御装置へ送信する事故検出端末装置と、
    前記事故検出端末装置から受信した事故種別の情報と前記中央演算装置から受信した制御テーブルとを照合して電制対象を決定し、電制指令を送信する中央制御装置と、
    前記中央制御装置から受信した電制指令に従って、電制対象に決定された電源を電力系統から解列させる制御端末装置と、を備える電力系統安定化システムであって、
    前記制御端末装置が設置される電源は、同期発電機の発電所と、太陽光発電と風力発電とのうち少なくとも一方を含む再エネ電源と、を含み、
    前記中央演算装置は、電制候補を電制した際の過渡安定度演算を行い、過渡安定度演算結果を用いて同期安定性を不安定傾向にある同期発電機グループと安定傾向にある同期発電機グループの2機系統モデルで表し、前記2機系統モデルを1機無限大母線モデルに変換し、前記1機無限大母線モデルにおける同期発電機の角速度偏差が電制実施時に減少する量を電制量で除算した値を安定化効果を表す指標とし、指標が最大となる電制候補を電制対象に選択することを特徴とした電力系統安定化システム。
  3. 現在の系統情報を収集して解析用系統モデルを作成し、複数の想定事故について過渡安定度演算を実施し、電力系統の過渡安定度維持に必要な電制対象を選択して制御テーブルに設定し、当該制御テーブルを中央制御装置へ送信することを繰り返し行う中央演算装置と、
    系統事故発生時に事故種別を判定して当該事故種別の情報を中央制御装置へ送信する事故検出端末装置と、
    前記事故検出端末装置から受信した事故種別の情報と前記中央演算装置から受信した制御テーブルとを照合して電制対象を決定し、電制指令を送信する中央制御装置と、
    前記中央制御装置から受信した電制指令に従って、電制対象に決定された電源を電力系統から解列させる制御端末装置と、を備える電力系統安定化システムであって、
    前記制御端末装置が設置される電源は、同期発電機の発電所と、太陽光発電と風力発電とのうち少なくとも一方を含む再エネ電源と、を含み、
    前記中央演算装置は、電制候補を電制した際の過渡安定度演算を行い、過渡安定度演算結果を用いて、同期安定性を不安定傾向にある同期発電機グループと安定傾向にある同期発電機グループの2機系統モデルで表し、前記2機系統モデルを1機無限大母線モデルに変換し、前記1機無限大母線モデルにおける同期発電機の相差角偏差が電制実施時に減少する量を電制量で除算した値を安定化効果を表す指標とし、指標が最大となる電制候補を電制対象に選択することを特徴とした電力系統安定化システム。
  4. 前記中央演算装置は、同期発電機の安定化効果指標と他の指標の総合評価に基づいて電制対象を選択することを特徴とした、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の電力系統安定化システム。
  5. 前記他の指標は、周波数変動に応じて出力を自動調整し、周波数を一定に維持する周波数調整力であることを特徴とした、請求項4に記載の電力系統安定化システム。
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