用語
「接触する」という用語は、電子が一方の物体から他方の物体を通ってトンネリングすることができるように、ある物体を別の物体に近接させることを指す場合がある。素粒子レベルでは、物体内の電子雲からの反発力が、物体の接近を妨げ得るため、2つの物体が物理的に互いに接触することはありえない。
「核酸」は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーを指し得る。この用語は、既知のヌクレオチド類似体または修飾された主鎖の残基または連結を含む核酸を包含し得、これらは、合成、天然および非天然であり、参照核酸と同様の結合特性を有する。そのような類似体の例には、これらに限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロアミダート、メチルホスホナート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)が含まれ得る。
特に明記しない限り、個別の核酸配列はまた、暗黙的に、その保存的に修正されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列、ならびに明示的に示された配列も包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19、5081、1991)、Ohtsukaら、J.Biol.Chem.、260、2605-2608(1985)、Rossoliniら、Mol.Cell.Probes、8、91-98(1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換的に使用される。
「ヌクレオチド」という用語は、天然に存在するリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドモノマーを指すのに加えて、文脈が明確に別のことを示さない限り、ヌクレオチドが使用されている特定の文脈(例えば、相補的塩基へのハイブリダイゼーション)に関係して、機能的に同等な誘導体および類似体を含む、それらの関連する構造的バリアントを指すと理解され得る。
「振動する」という用語は、ブラウン運動または他の力の結果としての流体中の物体の運動を指し得る。物体は、人や機械による積極的な介入なしに振動することができる。場合によっては、印加された電場または圧力駆動の流れの結果として、物体が振動する可能性がある。
「部分構造」という用語は、技術用語が化学で使用される場合、官能基を含み得る。さらに、部分構造は、原子、またはより大きな化合物の一部を形成し得る、一緒に結合した原子のグループも指し得る。部分構造には、磁性ナノ粒子が含まれ得る。
半導体加工層およびステップに対する「上」または「上部に」などの方向性を示す用語は、これらの用語が基板の表面によって定義される平面からより遠い位置を示す参照フレームを使用することができる。「底部」は、基板の下側であっても、基板の下側に向かってであってもよい。当業者は、基板が上下逆に加工されたとしても、層の「底部」は、依然として、基板の下側または未加工面に最も近い層の側を指し得ることを理解するであろう。
「電気的特性」という用語は、電気回路に関連する任意の特性を指すと理解され得る。電気的特性は、電圧、電流、抵抗、インピーダンス、インダクタンス、またはキャパシタンス、およびそれらの時間変化(例えば、電流周波数)を指し得る。
トンネル認識は、分子(例えば、核酸)または分子の一部を同定するために使用される手法である。トンネル接合部は、電気トンネル接合部または磁気トンネル接合部を含み得る。電気トンネル接合部は、絶縁層を挟む2つの導体を含み得る。分子または分子の一部が両方の導体に接触するか、両方の導体に十分に近い場合、一方の導体から他方の導体にトンネリングする電流が変化する。分子または分子の一部は、直接伝導またはトラップ補助トンネリングを誘発することによって電流の振幅を変化させ得る。
磁気トンネル接合部は、絶縁層を挟む2つの強磁性体を含み得る。磁性ナノ粒子が強磁性体に近づくと、磁区の相対的な配向が変化し、一方の導体から他方の導体にトンネリングする電流が変化する。トンネル電流の量は、強磁性体の磁化(つまり、スピン)の配向に依存する。同じスピンを有する(すなわち、平行である)強磁性体の電流は、反対のスピンを有する(すなわち、反平行である)2つの強磁性体よりも大きい。
いずれの接合を用いても、トンネル電流は、両方の導体に接触する分子または分子の一部の固有性、および導体に接触する場合と接触しない場合との間で分子がどれほど振動するかに応じて変化し得る。核酸の1つのヌクレオチドのみを通る電流を測定する場合、ヌクレオチドが絶縁層を横切って両方の導体に接触できるように、絶縁層は通常、ヌクレオチドのサイズよりも小さくなければならない。
しかしながら、1nmの厚さでも約3つのヌクレオチドのサイズであり、1つのヌクレオチドの検出に問題が生じる可能性がある。絶縁層の厚さが1~2nm程度であっても、製造が依然として困難な場合があり、薄い絶縁層を通るバックグラウンドトンネル電流が大きすぎて、ヌクレオチドからの信号を検出できない場合があるか、またはそのような薄い絶縁層では短絡を防ぐことができない場合がある。絶縁層の厚さを増やすと、製造が容易になる可能性はあるが、測定可能なトンネル電流には、さらに多くのヌクレオチドを通過する必要がある。複数のヌクレオチドを通過する信号は、個々のヌクレオチドを同定すること以上に複雑な信号解析を伴う。
本技術の実施形態は、電流信号のノイズを低減することができ、1~2nm程度の薄い絶縁層を必要としない。トンネル接合デバイスは、一度に1つのヌクレオチドを読み取ることに焦点を合わせることができる。一本鎖核酸分子(すなわち、テンプレート親鎖)は、トンネル接合部に取り付けまたは繋留され得る。二本鎖DNA分子は、テンプレート親鎖に連結したポリメラーゼによって合成することができる。複数のポリメラーゼを伴う複数のテンプレート親鎖を、トンネル接合部に取り付けることができる。実施形態は、同じデバイス上に多くのトンネル接合部を含むことができ、高度な多重化を可能にする。
いくつかの実施形態では、1種のヌクレオチドセット(例えば、Aヌクレオチド)は、部分構造で標識され、デバイスに導入される。これらのヌクレオチドは、ヌクレオチドがテンプレート親鎖に相補的な種類である場合、新生鎖に付加され得る。デバイスは、この時点で、または追加の標識ヌクレオチドを導入した後のサイクルの後半で、過剰な遊離ヌクレオチドを洗浄することができる。
電場を印加して、負に帯電した核酸分子を部分構造とともにトンネル接合部(例えば、絶縁層)に向かって移動させることができる。部分構造を、電流が一方の導体から他方の導体にトンネリングすることを可能にするのに十分に近づけることができる。いくつかの実施形態では、部分構造は両方の導体に接触して、一方の導体から他方の導体への直流経路を可能にすることができる。部分構造が両方の導体に接触して直流経路を可能にする実施形態では、接合部の構成は、トンネル電流が接合部を通って流れる支配的な電流ではない場合でも、トンネル接合と類似または同じであり得るため、該接合部はトンネル接合部と呼ばれ得る。トンネル接合部に取り付けられた複数の核酸分子は、電流信号の確率を増加させるか、または電流信号の強度を増加させることができる。
ヌクレオチドが、DNA分子に付加される場合、その部分構造がトンネル接合部に電流信号を発生させる。ヌクレオチドが、DNA分子に付加されない場合、電流はほぼゼロになり得る。次いで、その部分構造を除去することができる。次の種類の標識ヌクレオチドをデバイスに導入することができ、このプロセスを繰り返すことができ、それにより、個別のヌクレオチドがそれぞれの位置に取り込まれているかどうかの検出が可能になる。部分構造を通して生成される電流信号は、ヌクレオチド自体を通るバックグラウンド電流よりも高く、それにより、より少ないノイズで信号を提供することができる。
I. ランダム・テレグラフ・ノイズ(RTN)の使用
1つまたは複数のヌクレオチド自体を通るトンネル電流は、適切な信号対雑音比で十分に高い電流信号を生成しない場合がある。ヌクレオチドが、導体と短時間接触している可能性があり、異なるヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列間のトンネル電流の差が小さい可能性がある。したがって、より強く、より容易に検出可能な信号が望まれる。
A. RTN
適切な信号対雑音比を有する電流信号を生成するために、本発明の実施形態の電流信号は、ランダム・テレグラフ・ノイズ(RTN)を模倣し得る。該RTNは、以前、トンネル接合部における望ましくない電流信号に関する問題を指していた。特定の理論に拘束されることは意図しないが、RTNの1つの説明は、不純物が望ましくない電流信号を引き起こすということである。不純物が電荷をトラップしている可能性があり、かなりの期間、より高い電流を維持する可能性がある。不純物は、電荷トラップのように作用するトンネル接合部内の酸化物の欠陥である可能性がある。これらの不純物には、酸化物内の酸素空孔、金属酸化物マトリックスにトラップされたイオン、および置換イオン(例えば、ドーパント)が含まれ得る。不純物がトラップされなくなり、電荷または不純物が残ると、電流が降下する。本発明の実施形態におけるデバイスは、標識ヌクレオチドのタグを用いて、このRTN現象を意図的に再現する。
図1は、電流対時間のプロットにおけるRTNのグラフ100を示す。グラフは、より高い電流の領域(例えば、領域102)、およびより低い、ほぼゼロの電流の領域(例えば、領域104)を示す。より高い電流の領域は、トラップされた電荷を有している可能性があり、一方で、より低い電流の領域は、トラップされた電荷を有していない可能性がある。電荷がトラップされる可能性があるかどうかの分析は、バックグラウンド電流よりも高い電流が存在する場所を同定することに依存し得る。
B. 部分構造の使用
意図的にRTNを模倣するために、RTNを生成する部分構造を目的の分子に取り付けることができる。例えば、解析される分子が核酸である場合、部分構造は、伸長する核酸鎖に取り込まれるヌクレオチドに取り付けられ得る。
図2Aおよび図2Bは、部分構造がどのように使用されて電流信号を生成することができるかを示す。図2Aでは、ポリメラーゼ204によって新生鎖202に付加された最後のヌクレオチドは、部分構造208に連結されている。新生鎖202は、ポリメラーゼ204によってテンプレート親鎖206にハイブリダイズされている。部分構造208が、第1の導体210および第2の導体212に十分に近い場合、部分構造208は、電子が第1の導体210から第2の導体212にトンネリングすることを可能にする。トンネリング電子は、グラフ220と同様に、時間に対して電流信号を生成することができる。電流信号のランダムな性質は、トラップされた電荷状態の捕捉と放出、および/または容量効果(すなわち、充電と放電)の結果である可能性がある。容量効果は、トンネル接合部周辺の電荷分布を変化させる、トラップされた電子により生じる可能性があり、これによりトンネル障壁の高さが変化する可能性がある。接合部を通って流れる電流の振幅は、障壁の高さに指数関数的に依存し得る。トラップ状態のランダムな充電および放電によって引き起こされる障壁の高さの小さな変化は、トンネル電流において大きな変化をもたらす可能性があり、これは、図2Aで明らかである。
図2Bでは、部分構造が存在しないので、電子は、第1の導体210から第2の導体212にトンネリングすることができない。図2Bでは、トンネル電流は、グラフ240と同様に、ゼロに近いか、またはバックグラウンドトンネル電流に近いはずである。したがって、部分構造208ひいてはヌクレオチドは、ゼロより大きいトンネル電流、またはバックグラウンドトンネル電流を測定することによって検出することができる。
部分構造は、印加された特定の電位に基づいてトンネル電流が通過できるエンティティである必要がある。図3Aは、部分構造がヌクレオチドに取り付けられていない場合のトンネル電流応答を示す。ポリメラーゼ302は、トンネル接合部304の近くにある。ポリメラーゼ302は、テンプレート親鎖306をハイブリダイズしている。部分構造は存在せず、電荷はトラップされない。トンネル接合部は、オフ・レゾナンス・トラップ状態308にあり、電流が一方の導体から他方の導体にトンネリングすることを可能にしない。結果は、電流対時間のグラフ310であり、電流はゼロに近く、かつバックグラウンドレベルである。
図3Bは、部分構造がヌクレオチドに取り付けられている場合のトンネル電流応答を示す。ポリメラーゼ312は、トンネル接合部314の近くにある。ポリメラーゼ312は、テンプレート親鎖316をハイブリダイズしている。付加されたヌクレオチドは、部分構造318を有する。部分構造318は、電子移動周波数で電荷をトラップする。トンネル接合部は、オン・レゾナンス・トラップ状態320にある。電流は、一方の導体から部分構造を通って他方の導体にトンネリングすることができる。結果は、電流対時間のグラフ322であり、電流はゼロ以外の電流になり、バックグラウンドレベルを超える電流に達する。
II. 部分構造を有する標識化合物
使用される部分構造は、部分構造のみよりも多くの構成要素を含む標識化合物の一部であり得る。本明細書に記載の方法およびシステムで使用される化合物は、ヌクレオチド、開裂可能なリンカー、および部分構造を含み得る。ヌクレオチドは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、およびシトシン(C)を含む4種のDNAヌクレオチドのいずれかを含み得る。ヌクレオチドはまた、アデニン、ウラシル(U)、グアニン、およびシトシンを含む4種のRNAヌクレオチドを含み得る。標識化合物は、電場を印加して核酸分子の部分構造をトンネル接合部に近づけている間、該部分構造が該トンネル接合部と接触可能なほどに十分な長さであり得る。
電気トンネル接合部の場合、部分構造は、有機金属基、ナノ粒子、共役芳香族基、および導電性有機分子からなる群から選択することができる。導電性有機分子は、バンドギャップがない場合があり、絶縁体または半導体でない場合がある。例として、有機金属基は、フェロセン、金属フタロシアニン(例えば、マンガンフタロシアニン)、ルテニウム、オスミウム、および遷移金属の有機金属化合物を含み得る。例として、ナノ粒子は、金、銀、白金、マグネシウム、または窒化チタンのナノ粒子を含み得る。ナノ粒子は、1~5nmおよび5~10nmを含む、1~10nmの特徴的なサイズを有する任意の粒子を含み得る。ナノ粒子が球体である場合、特徴的なサイズはナノ粒子の直径であり得る。一方、ナノ粒子が球体でない場合、特徴的なサイズは、非球体のナノ粒子と同じ体積を有する球体の直径であり得る。場合によっては、特徴的なサイズは、ナノ粒子の幅、長さ、または高さの最小値であり得る。共役芳香族基は、2~9個のベンゼン環を有する化合物、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、ペンタセン、ベンゾピレン、コランニュレン、ベンゾペリレン、コロネン、オバレン、およびベンゾフルオレンを含む、いくつかのベンゼン環を有する化合物を含み得る。共役芳香族基は、ベンゼン環が線状構造に配置された化合物を含み得る。例として、導電性有機分子は、ポリピロールおよびポリアニリンを含む、短いポリマーを含み得る。
上記のように、部分構造は、電荷をオン・レゾナンス・トラップ状態に保持することによって、トンネル電流を可能にし得る。いくつかの実施形態では、同じ部分構造が4つのヌクレオチドに取り付けられ得る。他の実施形態では、異なる部分構造が異なるヌクレオチドに使用され得、各部分構造は、印加された電圧に対して異なるトンネル電流を生成する。部分構造は、複数の有機金属基などの複数の基を含み得る。部分構造は、高度に負または正に帯電していなくてよい。帯電した部分構造は、DNA分子に対して望ましくない反発または引力をもたらす可能性がある。
磁気トンネル接合部の場合、部分構造は、強磁性体または超常磁性体からなる群から選択することができる。磁性体は、磁性ナノ粒子(例えば、FePt、FeCuPt、Fe2O3)を含み得る。ナノ粒子は、1μm、500nm、100nm、または10nm未満の直径または特徴的なサイズを有し得る。
化合物は、N-X-S-Mによって表される構造を有し得、ここで、Nはヌクレオチドであり、Xは開裂可能なリンカーであり、Sはスペーサーであり、Mは部分構造である。ヌクレオチドを、開裂可能なリンカーに向けて結合することができる。
開裂可能なリンカーは、検出後に、取り込まれたヌクレオチドから標識化合物を開裂することを可能にし得る。開裂可能なリンカーは、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第7,057,026号、同第7,414,116号、ならびにそれらの継続および改善に記載されている。いくつかの実施形態では、標識は、アリル基またはアジド基を含むリンカーを介して、ピリミジンの5位またはプリンの7位に取り付けられている。他の実施形態では、リンカーは、ジスルフィド、インドール、またはシーバー基を含む。リンカーは、アルキル(C1-6)もしくはアルコキシ(C1-6)、ニトロ、シアノ、フルオロ基、または同様の特性を有する基から選択される1種以上の置換基をさらに含み得る。簡潔に言えば、リンカーを、水溶性ホスフィンまたはホスフィンベースの遷移金属含有触媒によって開裂することができる。他のリンカーおよびリンカー開裂機構は、当技術分野で公知である。例えば、トリチル、p-アルコキシベンジルエステルおよびp-アルコキシベンジルアミドならびにtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)基ならびにアセタール系を含むリンカーを、プロトン放出性開裂剤によって酸性条件下で開裂することができる。チオアセタールまたは他の硫黄含有リンカーを、ニッケル、銀、または水銀などのチオフィリック金属を使用して開裂することができる。適切なリンカー分子を調製するために、開裂保護基も考慮することができる。エステルおよびジスルフィド含有リンカーを、還元的条件下で開裂することができる。トリイソプロピルシラン(TIPS)またはt-ブチルジメチルシラン(TBDMS)を含有するリンカーを、Fイオンの存在下で開裂できる。反応混合物の他の構成要素に影響を及ぼさない波長によって開裂される光開裂可能なリンカーとしては、O-ニトロベンジル基を含むリンカーが挙げられる。ベンジルオキシカルボニル基を含むリンカーを、Pd系の触媒によって開裂することができる。
例として、開裂可能なリンカーXは、金属触媒(例えば、アリル基)、酵素(例えば、プロテアーゼ開裂部位、タバコエッチウイルス[TEV]開裂部位)、光(例えば、ニトロベンゼン)、還元(例えば、ジスルフィド)、酸(例えば、アセタール、メトキシメチル、または保護されたアセタール[例えば、O-CH2-N3または-O-CH(N3)-])、塩基(例えば、スクシナート、アセチル)、酸化(例えば、ビシナルジオール)、またはホスファターゼ(例えば、ホスフェート)によって開裂可能であり得る。開裂可能なリンカーは、亜硝酸で開裂できる-O-NH2を含み得る。
例として、スペーサーは、ポリエチレングリコール(PEG)、アルキルまたはアリールスペーサー、ペプチド、カチオン性スペーサー(例えば、スペルミン)、核酸、炭水化物、またはそれらの組合せであり得る。
図4Aは、化合物の例を示す。図4Aでは、リンカー-スペーサー-部分構造は、デオキシリボース糖の3’OH基に取り付けられている。ヌクレオチドは、開裂可能なリンカーであるX、スペーサー、そして有機金属(OM)部分構造に結合している。3’-OH基をブロックすると、ポリメラーゼ反応を自動的に終結させることができる。一方、かさばる化合物を持つ3’-OHは、ポリメラーゼによって簡単には受け入れられない可能性がある。
図4Bは、別の化合物の例を示す。リンカー-スペーサー-部分構造は、ヌクレオチドの塩基に取り付けられている。塩基の修飾は通常、ポリメラーゼによって広く受け入れられる。しかしながら、3’-OH基はブロックされていないので、図4Bの化合物は、100%の終結に至らない可能性がある。
図4Cは、化合物のさらに別の例を示す。塩基および3’OH基の両方を、開裂可能なリンカーXに結合させることができる。塩基に結合したリンカーXは、3’OH基に結合したXと同じリンカーであってもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、2つのリンカーは、異なる化合物であり得る。図4Cの化合物は、図4Aの化合物および図4Bの化合物の両方の利点を取り入れることができる。3’-OH基に小さな開裂可能なターミネーター基を付加すると、取込み後に確実に停止することができる。大きなX-S-M化合物を塩基に取り付けても、ポリメラーゼをあまり邪魔しない場合がある。一方、図4Cは、1つの部位だけでなく、2つの部位で開裂させる必要があり得る。
リンカー-スペーサー-部分構造は、光ターミネーター(Stupi,B.P.ら、「Stereochemistry of benzylic carbon substitution coupled with ring modification of 2-nitrobenzyl groups as key determinants for fast-cleaving reversible terminators」、Angew.Chem.Int.Ed.、51、1724-1727(2012)、onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/anie.201106516で入手可能)として、または仮想ターミネーター(Bowers,J.ら、「Virtual terminator nucleotides for next-generation DNA sequencing」、Nature Methods、6、593-595(2009)、www.nature.com/articles/nmeth.1354.pdfで入手可能、および関連する補足情報はmedia.nature.com/original/nature-assets/nmeth/journal/v6/n8/extref/nmeth.1354-S1.pdfで入手可能)として機能することができる。
化合物はまた、ターミネーターを含み得る。ターミネーターは、重合プロセスを停止させることができる。例えば、ポリメラーゼの場合、ターミネーターは、ターミネーターが除去されるまで、ポリメラーゼがヌクレオチドを付加することを停止させることができる。リンカー、スペーサー、部分構造、またはそれらの組合せは、ターミネーターとして機能し得る。図4A、図4B、および図4Cの標識化合物はそれぞれ、ターミネーターを含み得る。
解析される分子が核酸でない場合、化合物はそれに応じて適合され得る。標識化合物は、生物学的ポリマーの1つのユニットに取り付けられ得る。例えば、解析される化合物がタンパク質である場合、標識化合物は、ヌクレオチドの代わりにアミノ酸に取り付けられ得る。
III. 分子を解析する方法
シーケンシングデバイスは、絶縁層によって分離された2つの導体を含み得る。導体および絶縁層の構成は、平行板コンデンサまたはトンネル接合と同じでもよい。トンネル接合部は、電気トンネル接合部または磁気トンネル接合部であり得る。導体のこれらの構成は、核酸の配列を決定するために使用され得る。方法は、ポリメラーゼを、シーケンシングデバイスに取り付けられたテンプレート親鎖に連結することを含み得る。シーケンシングデバイスは、絶縁層によって分離された、第1の導体および第2の導体を含み得る。方法は、ヌクレオチドセットをシーケンシングデバイスに添加することを含み得る。ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、標識化合物に取り付けられ得る。標識化合物は、部分構造を含み得る。
方法は、配列決定されるテンプレート親鎖に連結したポリメラーゼを使用して、新生鎖を伸長することをさらに含み得る。伸長は、テンプレート親鎖へのハイブリダイゼーションを介して、ヌクレオチドセット中の第1のヌクレオチドを、新生鎖に取り込むポリメラーゼを含み得る。
方法は、テンプレート親鎖をシーケンシングデバイスに取り付けたまま、テンプレート親鎖および第1のヌクレオチドに取り付けられた第1の標識化合物の第1の部分構造を絶縁層に近づけるために、電位を印加することを含み得る。次いで、方法は、電位を印加しながら、第1の導体、第1の部分構造、および第2の導体を通る電気的または磁気的特性の値を測定することを含み得る。方法は、電気的または磁気的特性の値を使用して、テンプレート親鎖にハイブリダイズしている第1のヌクレオチドを検出することを含み得る。
電気トンネル接合部および磁気トンネル接合部に対する方法を、以下に説明する。
A. 電場補助型接合部の構成
図5A~図5Gは、核酸配列を決定する際に使用される構成を示す。図5A~5Gのシーケンシングデバイスは、説明を容易にするために提供されているが、シーケンシングデバイスおよび方法は、これらの図の描写に限定されない。
図5Aは、トンネル接合部500を示す。トンネル接合部500は、第1のトンネル電極502および第2のトンネル電極504を含む。第1のトンネル電極502および第2のトンネル電極504は、2つのトンネル電極間に絶縁層508を形成する絶縁材料506によって分離されている。
接着層510を、第1のトンネル電極502、第2のトンネル電極504、および絶縁層508の上部に配置することができる。接着層510は、表面官能基化層であり得、二酸化ケイ素またはアルミナを含み得る。表面官能基化層は、共有結合を可能にする官能基を含むように、表面を修飾することを含む。第1のトンネル電極502および第2のトンネル電極504は、核酸分子の強力な接着を可能にしない金属材料であり得、絶縁層508は、核酸分子を取り付けるには薄すぎるようにできる。接着層510は、核酸分子の取付けを可能にする。核酸を、酸素原子を介して二酸化ケイ素またはアルミナに共有結合する化合物と結合することによって、接着層510に取り付けることができる。接合部は、接着層510なしで動作可能であり得る。
流体空間512は、接着層510を第1のフィールド電極514から分離することができる。トンネル接合部500が配列決定に使用されているとき、流体空間512は液体で満たされ得る。いくつかの実施形態では、第1のフィールド電極514は、液体に接触しなくてもよい。例えば、流体空間512は、ガラスまたはプラスチックであり得るハウジングによって囲まれ得る。第1のフィールド電極514は、ハウジングの外側にあってもよいが、電場は依然としてハウジング内の空間に影響を及ぼし得る。絶縁材料506は、トンネル電極を第2のフィールド電極516から分離することができる。
図5Bは、一本鎖DNA520の同一のコピーが得られた後のトンネル接合部500を示す。一本鎖DNA520の同一のコピーは、ブリッジ増幅によって得ることができる。ブリッジ増幅には、DNA断片の両端にアダプターを付加することが含まれ得る。アダプターには、プライマーが含まれ得る。これらの断片は、次いで、アダプターによって表面に結合され得る。DNA断片の両端は、ブリッジのような構造を形成するアダプターによって表面に取り付けられ得る。ポリメラーゼは、DNA断片の逆鎖を合成して、二本鎖DNAを形成する。次いで、二本鎖DNAを変性させて、2つの一本鎖DNA鎖を残す。表面は、複数のアダプターで覆われていてもよい。アダプターを、表面上にランダムに配置しても、グリッドに配置してもよい。アダプターには2種類あり得、1種類のアダプターは、DNA断片の一端でアダプターに相補的であり、2番目の種類のアダプターは、DNA断片の2番目の端でアダプターに相補的である。2つの一本鎖DNA鎖は、相補的なアダプターとハイブリダイズして、2つのブリッジのような構造を形成することができる。各一本鎖DNAは、ハイブリダイズして二本鎖DNAを形成する。二本鎖DNAを再び変性させる。このプロセスを繰り返すことができる。その結果、多くの一本鎖DNAが、表面に密に取り付けられたままにできる。同一のコピーは、ローリングサークル増幅または他の適切な増幅手法によっても得られ得る。1種類のアダプターは開裂可能であり、DNAのすべての一本鎖が同じ末端(3’または5’)で表面に取り付けられるように、これらのアダプターを開裂することができる。他の手法を使用して、すべての鎖が同じ方向であることを確実にすることができる。
一本鎖DNA520は、接着層510に取り付けられ得る。一本鎖DNA520を、第1のトンネル電極502、第2のトンネル電極504、または絶縁層508よりも簡単にまたはより強く、接着層510に取り付けてもよい。
図5Cは、プライマーを添加した後のトンネル接合部500を示す。プライマー530を一本鎖DNA520に添加して、二本鎖DNAのセクションを形成させる。図5Cに示す各一本鎖DNAは、添加されたプライマーを1つ有している。
図5Dは、ポリメラーゼを添加した後のトンネル接合部500を示す。ポリメラーゼ540は、一本鎖DNA520およびプライマー530に連結されている。図5Dに示す各一本鎖DNAは、連結されたポリメラーゼを1つ有している。
図5Eは、ヌクレオチドセットが添加された後のトンネル接合部500を示す。標識化合物を有するヌクレオチドは、ポリメラーゼによって取り込まれ、一本鎖DNAにハイブリダイズする。添加されるヌクレオチドは、すべて同じ種類のヌクレオチドであり得る。標識化合物は、本明細書に記載の任意の標識化合物であり得る。図5Eでは、例として、ポリメラーゼ540は、部分構造550を含む標識化合物を有するヌクレオチドを取り込んでいる。部分構造は、第1のトンネル電極502から第2のトンネル電極504へのトンネル電流に有意な影響を及ぼさない距離にある。
図5Fは、トンネル接合部500を用いたヌクレオチドの検出を示す。負の電位が、第1のフィールド電極514に印加される。正の電位が、第2のフィールド電極516に印加される。DNAは負に帯電しているため、DNAは第1のフィールド電極514から離れ、第2のフィールド電極516に向かって移動する。その結果、DNAは、第1のトンネル電極502、絶縁層508、および第2のトンネル電極504に向かって移動する。結果として、部分構造を含む標識化合物を有するヌクレオチドもまた、第1のトンネル電極502、絶縁層508、および第2のトンネル電極504に向かって移動する。例えば、部分構造550は、第1のトンネル電極502、絶縁層508、および第2のトンネル電極504に、より近づくことができる。部分構造550は、第1のトンネル電極502から第2のトンネル電極504へのトンネル電流が、部分構造550の存在によって影響を受ける距離にあり得、トンネル電流において違いが測定され得る。隣接または近くのDNAに連結された550付近の部分構造も、同様にトンネル電流に影響を与える可能性がある。
第1のフィールド電極514に対しては負の電圧が、第2のフィールド電極516に対しては正の電圧が記載されているが、一方の電極は負である必要はなく、他方の電極は正である必要はない。電場は、2つの電極間の相対電圧に基づく。例えば、第1のフィールド電極514は正の電圧を有し得、第2のフィールド電極516はさらに大きな大きさの正の電圧を有し得る。
トンネル電流に対する影響は、本明細書に記載のランダム・テレグラフ・ノイズ(RTN)をもたらす可能性がある。換言すれば、トンネル電流は、負の電位が印加されない場合、または部分構造を含む標識化合物を有するヌクレオチドが取り込まれない場合よりも、負の電位が第1のフィールド電極514に印加される場合の方が、大きくなり得る。いくつかの実施形態では、電流は、量子トンネリングを受けなくてもよく、代わりに、第1のトンネル電極502から部分構造550、第2のトンネル電極504に移動してもよい。
図5Fに示されている接着層510は、第1のトンネル電極502、絶縁層508、および第2のトンネル電極504から部分構造550を分離している。場合によっては、DNAから外れた可能性のあるいくつかのポリメラーゼを置き換えるために、追加のポリメラーゼが添加され得る。図5Fは、正の電位が印加された第2のフィールド電極516を示す。一方、第2のフィールド電極516は、正の電位である必要はないが、代わりに、第1のフィールド電極514に対して正でなければならない。同様に、第1のフィールド電極514は、負の電位である必要はないが、第2のフィールド電極516に対して負でなければならない。さらに、両方のフィールド電極は、トンネル電極とは別の電極として存在しなくてもよい。例えば、第1のフィールド電極514は存在する一方で、第2のフィールド電極516は存在しなくてもよい。第1のトンネル電極502および/または第2のトンネル電極504に印加される電位に対して、負の電位が第1のフィールド電極514に印加される。次いで、トンネル電極は、第2のフィールド電極として機能することができる。同様に、第2のフィールド電極516は、第1のフィールド電極514なしで存在することができる。正の電位は、DNAを取り巻く流体に対して、第2のフィールド電極516に印加され得る。正の電位は、トンネル接合部に向かって、DNAを引き付けることができる。
この図示された位置に接着層510を有することは、所与の距離におけるトンネル電流に対して、部分構造550の影響を低減するであろう。しかしながら、図5Fは、トンネル接合部500の二次元レンダリングであり、接着層510が第1のトンネル電極502、絶縁層508、および/または第2のトンネル電極504の一部を覆わない可能性がある構成を排除しない。
図5Gは、接着層510が下にある層の一部を覆っていない可能性がある、種々の可能な接着層510の上面図を示す。図5Gの上部では、接着層510が、絶縁層508の円形部分を露出させる円を規定する。図5Gの中央部は、接着層510が長方形を規定し、絶縁層508の長方形部分が露出していることを示す。図5Gの下部は、図5Gの中央部と同様の構成を示す。ただし、第1のトンネル電極502および第2のトンネル電極504の一部も露出している。第1のトンネル電極502および第2のトンネル電極504の一部を露出させることにより、信号を得るために、電極が部分構造と直接接触することが可能になり得る。
図5Hは、ヌクレオチドから標識化合物を除去した後のトンネル接合部500を示す。標識化合物は、リンカー560および部分構造562を含む。標識化合物を、光化学、化学、酵素反応、または本明細書に記載の任意の手法によって開裂することができる。次いで、流体の流れで洗い流すことにより、標識化合物を除去することができる。ポリメラーゼが除去された場合、ポリメラーゼを再度添加できる。
B. 電気トンネル接合部を用いた方法の例
図6は、本技術の実施形態によるシーケンシングデバイスを使用して、核酸の配列を決定する方法600を示す。シーケンシングデバイスは、電気トンネル接合部、第1の電源、および計測デバイスを含み得る。トンネル接合部は、絶縁層によって分離された第1の導体および第2の導体を含む。したがって、第1の導体および第2の導体は、トンネル接合部の電極であり得る。第1の電源は、トンネル接合部の電極と電気的に通信し得る。第2の電源は、トンネル接合部の電極とは別のフィールド電極と電気的に通信し得る。
方法600は、テンプレート親鎖をシーケンシングデバイスに取り付けることを含み得る。方法600は、ブロック602の前に、テンプレート親鎖にプライマーを取り付けることをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、テンプレート親鎖は、テンプレート親鎖セットの1つである。これらの実施形態では、プライマーセットは、テンプレート親鎖セットに取り付けられ得る。デバイスは、図5Cの図に類似し得る。いくつかの実施形態では、第2のプライマーセットは、シーケンシングデバイスに取り付けられ得、該第2のプライマーセットは、テンプレート親鎖セットに取り付けられた第1のプライマーセットに相補的である。第1のプライマーセットが第2のプライマーセットに取り付けられた結果として、テンプレート親鎖をシーケンシングデバイスに取り付けてもよい。
ブロック602で、ポリメラーゼは、シーケンシングデバイスに取り付けられたテンプレート親鎖に連結される。テンプレート親鎖を、上で説明したように、接着層に取り付けられたプライマーを用いて接着層に取り付けることができる。接着層は、第1の導体に接触してもよい。いくつかの実施形態では、接着層は、第2の導体および/または絶縁層と接触してもよい。接着層は、二酸化ケイ素、アルミナ、シリコン、ダイヤモンド・ライク・カーボン、窒化ケイ素、金、またはトンネル接合部へのテンプレート親鎖の共有結合を改善する任意の適切な材料を含み得る。
実施形態では、テンプレート親鎖は、テンプレート親鎖セット中の1つのテンプレート親鎖であり得る。ポリメラーゼは、ポリメラーゼセット中の1つのポリメラーゼであり得る。方法は、ポリメラーゼセットをテンプレート親鎖セットに連結することを含み得る。ポリメラーゼセット中の各ポリメラーゼを、テンプレート親鎖セット中のたった1つのテンプレート親鎖に連結することができる。テンプレート親鎖セット中の各テンプレート親鎖を、ポリメラーゼセット中のたった1つのポリメラーゼに連結することができる。ブロック602でポリメラーゼを連結した後、構成は、図5Dの図に類似し得る。
テンプレート親鎖セットは、シーケンシングデバイスに取り付けられたテンプレート親鎖のより小さなセットを増幅することによって形成された場合がある。いくつかの実施形態では、順方向の鎖を除去してもよい。他の実施形態では、逆方向の鎖を除去してもよい。残りのテンプレート親鎖は、すべて同じ方向であり、同一であり得る。したがって、テンプレート親鎖セットは、ブリッジ増幅によって形成され得る。
ブロック604で、ヌクレオチドセットが、シーケンシングデバイスに添加される。ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、部分構造を含む標識化合物に取り付けられている。ヌクレオチドセットは、シーケンシングデバイスに接触する液体中にヌクレオチドセットを含めることによって、シーケンシングデバイスに添加され得る。液体はイオン性液体であり得る。部分構造は、有機金属化合物、ナノ粒子、および共役芳香族からなる群から選択され得るか、または本明細書に記載の任意の部分構造であり得る。ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドを、それぞれの部分構造を含むそれぞれの標識化合物に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、同じ種類のヌクレオチドであり得る。例えば、ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、Gヌクレオチドであり得る。各標識化合物の各部分構造は、同じ種類の部分構造であり得る。他の実施形態では、ヌクレオチドセットは、2種類、3種類、または4種類のヌクレオチドを含み得る。これらの実施形態では、各ヌクレオチドは、異なる種類の部分構造に取り付けられ得る。ヌクレオチドセットを含む液体は、リザーバに格納され、注入システムによってトンネル接合部に導入され得る。
ブロック606で、新生鎖は、ポリメラーゼを使用して伸長される。ポリメラーゼは、配列決定されるテンプレート親鎖に連結される。伸長には、ヌクレオチドセット中の第1のヌクレオチドを新生鎖に取り込むポリメラーゼが含まれる。新生鎖は、一本鎖核酸分子であり得る。鎖を伸長することは、テンプレート親鎖へのハイブリダイゼーションを介して、ヌクレオチドセット中の第1のヌクレオチドを新生鎖に取り込むことを含み得る。同時に、新生鎖およびテンプレート親鎖は、二本鎖核酸分子の一部を形成し得る。
標識化合物は、新生鎖のさらなる伸長を防ぐように構成されたターミネーターを含み得る。配列決定における従来のトンネル接合部の問題は、解析対象の分子が接合部を非常に速く通過して、電極との接触が短時間になる可能性があることである。その場合、電流信号が短すぎて、特徴付けが困難になり得る。さらに、ブロック604において、1種類のヌクレオチドのみが添加されたとしても、テンプレート親鎖の個別の配列は、同じ種類のヌクレオチドを複数回連続して含み得る。ひいては、核酸分子は、1回の導入から同じ種類で複数のヌクレオチドを付加することができる。その結果、複数のヌクレオチドが付加された場合、デバイスは1つのヌクレオチドに対して1つの信号のみを生成する可能性がある。ターミネーターは、ターミネーターが除去されるまで、ポリメラーゼ作用を停止することができる。このようにして、一度に1つのヌクレオチドのみを付加することができ、電流信号を測定するのに十分な時間を確保できる。
第1のヌクレオチドを除くヌクレオチドセットは、トンネル接合部との接触から除去され得る。ヌクレオチドの除去には、トンネル接合部を水ですすぐことが含まれ得る。トンネル接合部をすすぐために使用される液体は、水またはヌクレオチドを含まないイオン性液体であり得る。このすすぎ液は、リザーバに格納され、注入システムによりトンネル接合部に導入され得る。電気的特性の値を測定する前に、ヌクレオチドセットを除去してもよい。他の実施形態では、ヌクレオチドセットは、電気的特性の値を測定する前に除去されなくてもよい。ブロック606の後、デバイスは、図5Eの構成に類似し得る。
ブロック608で、テンプレート親鎖をシーケンシングデバイスに取り付けたまま、テンプレート親鎖および第1のヌクレオチドに取り付けられた第1の標識化合物の第1の部分構造を絶縁層に近づけるために、電位を印加する。電位は、上記の第2の電源によってフィールド電極に印加され得る。いくつかの実施形態では、電位を印加することにより、第1の標識化合物の第1の部分構造を移動させて、第1の導体および第2の導体に接触させることができる。実施形態では、第1の部分構造は、電圧が第1の導体および第2の導体にわたって印加される場合、電流が第1の導体から第1の部分構造を通って第2の導体にトンネリングできる距離に移動され得る。
電場を印加することは、ある電極に負の電圧を印加することを含み得る。負の電圧は、-1V~-0.75V、-0.75V~-0.50V、-0.50V~-0.25V、-0.25V~-0Vを含む、-1V~0Vの範囲にあり得る。電場を印加することは、別の電極に正の電圧を印加することを含み得る。正の電圧は、例えば、0V~0.25V、0.25V~0.50V、0.50V~0.75V、または0.75V~1.0Vを含む、0V~+1Vであり得る。2つの電極間の電圧差は、0.25V~0.50V、0.50V~0.75V、または0.75V~1.0V、1.0V~1.25V、1.25V~1.50V、1.50V~1.75V、または1.75V~2.00Vを含む、0V超かつ2V未満の任意の電圧差であり得る。電極は、新生鎖が電極および絶縁層の間にあるように、配置され得る。テンプレート親鎖、ポリメラーゼ、および/または第1の標識化合物は、電極と絶縁層との間にあり得る。
いくつかの実施形態では、ヌクレオチドを取り込まなかった鎖は、キャップされ得る。鎖のキャッピングにより、ヌクレオチドのサイクル後にヌクレオチドが取り込まれていない鎖の解析を回避できる。例えば、鎖は、それぞれのヌクレオチドが導入された後、A、T、G、およびCヌクレオチドのいずれも取り込まない場合がある。これらの鎖が、そのサイクルより後にヌクレオチドを取り込んだ場合、その鎖は、最後のサイクル内でヌクレオチドを取り込んだ他の鎖と位相がずれる。これらの位相がずれた読み取りを減らすために、鎖にキャップを付けて、追加のヌクレオチドが取り込まれないようにすることができる。
ブロック610で、電圧が第1の導体および第2の導体にわたって印加される。電圧は、トンネル接合部に接触するエンティティを介して電流を生成するのに適した任意の電圧であり得る。電流は、トンネル電流であり得る。電圧は、第1のヌクレオチドを除くヌクレオチドセットを除去した後(例えば、すすぎ後)に印加され得る。いくつかの実施形態では、電圧は、すすぎ前、伸長中(例えば、ブロック606)、またはヌクレオチドセットの添加中(ブロック604)を含む、より長い期間印加され得る。いくつかの実施形態では、定電圧は、方法全体にわたって、印加され得る。デバイスは、図5Fの構成に類似し得る。
ブロック612で、第1の導体、第1の部分構造、および第2の導体を通る電気的特性の値が測定される。実施形態では、第1の部分構造は、第1の導体および第2の導体に接触し得る。電気的特性は、電流、電圧、抵抗、インダクタンス、またはパルス幅であり得る。値は、平均(算術平均、中央値、最頻値、二乗平均平方根)、極大値もしくは最大値、または瞬間的な測定値である。値は、10nAを超える場合、100nAを超える場合、または1μAを超える場合がある。
ブロック614で、電気的特性の値を使用して、テンプレート親鎖にハイブリダイズしている第1のヌクレオチドを検出する。ブロック616および618は、第1のヌクレオチドがどのように検出され得るかを説明している。
ブロック616で、電気的特性の値は、電気的特性の基準値と比較され得る。基準値は、第1の電極および第2の電極を通り、部分構造を通過しないバックグラウンドトンネル電流のものであり得る。基準値は、バックグラウンドトンネル電流に基づいてもよい。例えば、基準値は、バックグラウンドトンネル電流の最大レベルに設定されてもよく、またはバックグラウンドの電気的特性と統計的に異なる値に設定されてもよい。例えば、基準値は、平均バックグラウンドトンネル電流からの1、2、または3標準偏差に設定することができる。いくつかの実施形態では、基準値はゼロであり得る。
ブロック618で、値は、基準値を超えていると判定され得る。例えば、値は、バックグラウンドトンネル電流よりも大きいと判定され得る。値が基準値を超えていると判定される場合、電流信号は、1のバイナリ信号に変換され得る。
1. 別のヌクレオチドでの繰り返し測定
方法600は、第1の標識化合物を開裂した後、別のヌクレオチドでの測定および検出を繰り返すことをさらに含み得る。第1の標識化合物を開裂することができ、流体の流れが第1の標識化合物を除去できると、デバイスは図5Hに類似する。第1の標識化合物を開裂することにより、ターミネーターを除去して、ポリメラーゼが追加のヌクレオチドを用いて新生鎖を伸長できるようになる。第1の標識化合物を光開裂により開裂することができ、該開裂は、第1の標識化合物の感光性部分に影響を与えるために特定の波長または波長範囲で光をフラッシュすることを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の標識化合物を開裂することは、開裂剤を導入することによる化学的な開裂を含み得、該開裂剤としては、pH調整剤(例えば、酸または塩基)、酵素、または化学試薬が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、開裂は、金属(例えば、パラジウム)触媒的、還元的、酸化的、求核的、または求電子的であり得る。
方法600は、シーケンシングデバイスに添加される第2のヌクレオチドセットを含み得る。第2のヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、第2の部分構造を含む第2の標識化合物に取り付けられている。第2のヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、第1のヌクレオチドとは異なる種類のヌクレオチドである。第2の標識化合物のそれぞれは、第1の標識化合物と同じであってもよい。第2の部分構造のそれぞれは、第1の部分構造と同じ種類の部分構造であってもよい。
新生鎖が第1のヌクレオチドを取り込むことによって伸長された後、新生鎖は、伸長された新生鎖(すなわち、第1のヌクレオチドが付加された新生鎖)になり得る。方法600は、ポリメラーゼによって伸長された新生鎖をさらに伸長することを含み得る。酸ポリメラーゼは、第2の部分構造を含む第2の標識化合物に取り付けられた、第2のヌクレオチドセット中の第2のヌクレオチドを取り込むことができる。
第1の電極、第2の部分構造、および第2の電極を通る、第2の電気的特性の値を測定することができる。第2の電気的特性の値に基づいて、テンプレート親鎖にハイブリダイズしている第2のヌクレオチドを検出し得る。測定および検出は、第1のヌクレオチドに対して記載された任意の測定および検出と同じであってもよい。ポリメラーゼが、第2のヌクレオチドまたは第2のヌクレオチドセット中のいかなるヌクレオチドも取り込まない実施形態では、第2の電気的特性の値は、基準値と統計的に同等であると判定され得、追加のヌクレオチドが存在しないと判定される。
2. ヌクレオチドセットにおける複数種のヌクレオチド
いくつかの実施形態では、ブロック604において添加されるヌクレオチドセットは、2種以上のヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドセットは、第2の部分構造を含む第2の標識化合物に取り付けられた第2のヌクレオチドを含み得る。ブロック610において、ハイブリダイズしている第1のヌクレオチドを検出することは、ブロック612において、電気的特性の値を比較することを含み得る。方法600では、電気的特性の値を第2の電気的特性の基準値と比較することにより、電気的特性の値を根拠にして、第2のヌクレオチドがテンプレート鎖にハイブリダイズしていないと判定することができる。第2の基準値は、第1の基準値と同じ値または異なる値を有し得る。
第1の部分構造は、特定の範囲または特定の値より上もしくは下の電気的特性の値を生成することができる。第2の部分構造は、異なる範囲または特定の値より上もしくは下の電気的特性の値を生成することができる。電気的特性の測定値を異なる範囲または値と比較することによって、どの部分構造、ひいてはどのヌクレオチドが電気的特性の値によって示されるかを判定することができる。第1の基準値および第2の基準値は、第1の部分構造または第2の部分構造の値の範囲の端点であってもよい。
3. 複数のトンネル接合部
方法600は、複数のトンネル接合部を使用して、核酸の配列を決定することを含み得る。各トンネル接合部は、それぞれの第1の電極、それぞれの第2の電極、およびそれぞれの絶縁層を含み得る。それぞれのトンネル接合部は、それぞれのポリメラーゼに取り付けられている。
方法600は、複数のトンネル接合部のうちの各トンネル接合部のための工程を含み得る。それぞれの電圧は、それぞれの第1の電極およびそれぞれの第2の電極にわたって印加され得る。それぞれの新生鎖は、それぞれのトンネル接合部に取り付けられ、かつ配列決定されるそれぞれの親鎖に連結されたそれぞれのポリメラーゼを使用して、伸長され得る。伸長は、ヌクレオチドセット中のそれぞれのヌクレオチドを、それぞれのテンプレート親鎖へのハイブリダイゼーションを介して、それぞれの新生鎖に取り込む、それぞれのポリメラーゼを含み得る。電気的特性のそれぞれの値は、それぞれの第1の電極、それぞれのヌクレオチドに取り付けられたそれぞれの標識化合物のそれぞれの部分構造、およびそれぞれの第2の電極を通して測定することができる。電気的特性のそれぞれの値を使用して、それぞれのテンプレート親鎖にハイブリダイズしている、それぞれのヌクレオチドを検出し得る。
複数のトンネル接合部のうちの各トンネル接合部は、テンプレート親鎖にハイブリダイズしているヌクレオチドの存在または不在を判定し得る。複数の接合部は、1つのデバイスで数千、数百万、または数十億に達し得、これは約1平方センチメートルであり得る。検出には、0または1のバイナリ信号の識別が含まれるため、トンネル接合部の読み取り時間は、フラッシュドライブの場合と同等になる可能性がある。フラッシュドライブに基づくと、トンネル接合部の読み取り時間は、80メガビット/秒(すなわち、約8000万接合部/秒)~5ギガビット/秒(すなわち、約50億接合部/秒)またはそれより速くなり得る。数百億のトンネル接合部がある場合、すべてのトンネル接合部の読み取り時間は、数秒程度になり得る。トンネル接合部の洗浄サイクルは、100マイクロ秒程度になり得、読み取り時間よりも短くなり得る。
実施形態では、第2のヌクレオチドセットが添加される前に、第1のヌクレオチドセットが除去される。他の実施形態では、第1のヌクレオチドセットは、第2のヌクレオチドセットが添加される前に(例えば、すすぎ工程によって)除去されなくてもよい。このようにして、第2のヌクレオチドは、個別のトンネル接合部で親テンプレート鎖にハイブリダイズし得る。電流信号を伴うトンネル接合部の総数は、第1のヌクレオチドセットからのヌクレオチド、または第2のヌクレオチドセットからのヌクレオチドのいずれかを有する任意の親鎖からのものであろう。ヌクレオチドの添加は順次行われるため、第2のヌクレオチドセットからのヌクレオチドを有する接合部は、第1のヌクレオチドセットの添加では現れなかった信号に基づいて推定することができる。次いで、このプロセスを残りのヌクレオチドを用いて繰り返すことができる。複数のヌクレオチドセットが導入された後、洗浄を行うことができる。
いくつかの実施形態では、複数のトンネル接合部を用いて、1種のヌクレオチドの代わりに、異なる2種類のヌクレオチドを一度に導入してもよい。測定を行うことにより、どのトンネル接合部が、異なる2種の標識化合物を有する異なる2種類のヌクレオチドのいずれを含んでいるかを確認することができる。次いで、第1の種類のヌクレオチドが、ヌクレオチド特異的除去プロセスで除去される。例えば、第1の種類のヌクレオチドを有する標識化合物は、特定の波長の光で除去され得るが、第2の種類のヌクレオチドを有する標識化合物は、新生鎖から除去され得ない。除去後、第2の種類のヌクレオチドを伴うトンネル接合部を同定するために、別の測定が行われる。この手法の結果として、第1の種類のヌクレオチドを取り込んだトンネル接合部、および第2の種類のヌクレオチドを取り込んだトンネル接合部を判定することができる。この手法は、ヌクレオチドの種類に対する標識化合物を選択的に除去できる限り、3種類以上のヌクレオチドにも使用できる。
方法600は、核酸配列以外の分子を解析するために、適合され得る。例えば、タンパク質がアミノ酸配列について解析される場合、ポリメラーゼをリボソームによって置き換えることができる。ヌクレオチドの代わりに、アミノ酸が標識される。解析する分子によっては、ポリメラーゼを他の酵素とともに、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼに置き換えることもできる。
C. 磁気トンネル接合部の構成
図7は、本技術の実施形態によるシーケンシングデバイスを使用して核酸の配列を決定する方法700を示す。シーケンシングデバイスは、磁気トンネル接合部、第1の電源、および計測デバイスを含み得る。トンネル接合部は、絶縁層によって分離された第1の強磁性層および第2の強磁性層を含む。強磁性層および第2の強磁性層は、トンネル接合部について説明した導体の例である。第1の電源は、トンネル接合部の導体と電気的に通信し得る。第2の電源は、トンネル接合部の導体から分離されたフィールド電極と電気的に通信し得る。
方法700は、テンプレート親鎖をトンネル接合部に導入することを含み得る。テンプレート親鎖を、流体注入システムを使用して、トンネル接合部に導入することができる。テンプレート親鎖は、生物学的サンプルから得ることができる。テンプレート親鎖を、本明細書に記載の任意の様式でトンネル接合部に取り付けることができる。デバイスは、図5Cの図に類似し得る。
ブロック702で、ポリメラーゼは、シーケンシングデバイスに取り付けられたテンプレート親鎖に連結される。テンプレート親鎖を、本明細書に記載の任意の様式で接着層に取り付けることができる。接着層は、第1の強磁性層と接触し得る。いくつかの実施形態では、接着層は、第2の強磁性層および/または絶縁層と接触し得る。接着層は、二酸化ケイ素、またはテンプレート親鎖のトンネル接合部への接着を改善する任意の適切な材料を含み得る。ブロック702でポリメラーゼを連結した後、構成は、図5Dの図に類似し得る。
実施形態では、テンプレート親鎖は、テンプレート親鎖セット中の1つのテンプレート親鎖であり得る。テンプレート鎖セットは、すべて同じ方向(順方向または逆方向)であり得る。ポリメラーゼは、ポリメラーゼセット中の1つのポリメラーゼであり得る。方法は、ポリメラーゼセットをテンプレート親鎖セットに連結することを含み得る。ポリメラーゼセット中の各ポリメラーゼを、テンプレート親鎖セット中のたった1つのテンプレート親鎖に連結することができる。テンプレート親鎖セット中の各テンプレート親鎖を、ポリメラーゼセット中のたった1つのポリメラーゼに連結することができる。
テンプレート親鎖セットは、シーケンシングデバイスに取り付けられたテンプレート親鎖のより小さなセットを増幅することによって形成された場合がある。テンプレート親鎖セットは、ブリッジ増幅によって形成された場合がある。
ブロック704で、ヌクレオチドセットがシーケンシングデバイスに添加される。ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、部分構造を含む標識化合物に取り付けられている。ヌクレオチドセットは、シーケンシングデバイスに接触する液体中にヌクレオチドセットを含めることによって、シーケンシングデバイスに添加され得る。液体はイオン性液体であり得る。部分構造は、強磁性体または超常磁性体からなる群から選択することができる。磁性体は、磁性ナノ粒子(例えば、FePt、FeCuPt、Fe2O3)を含み得るか、または本明細書に記載の任意の部分構造であり得る。ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドを、それぞれの部分構造を含むそれぞれの標識化合物に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、同じ種類のヌクレオチドであり得る。例えば、ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、Gヌクレオチドであり得る。各標識化合物の各部分構造は、同じ種類の部分構造であり得る。他の実施形態では、ヌクレオチドセットは、2種類、3種類、または4種類のヌクレオチドを含み得る。これらの実施形態では、各ヌクレオチドは、異なる種類の部分構造に取り付けられ得る。ヌクレオチドセットを含む液体は、リザーバに格納され、注入システムによってトンネル接合部に導入され得る。
ブロック706で、新生鎖は、ポリメラーゼを使用して伸長される。伸長には、ヌクレオチドセット中の第1のヌクレオチドを新生鎖に取り込むポリメラーゼが含まれる。新生鎖は、一本鎖核酸分子であり得る。鎖を伸長することは、テンプレート親鎖へのハイブリダイゼーションを介して、ヌクレオチドセット中の第1のヌクレオチドを新生鎖に取り込むことを含み得る。同時に、新生鎖およびテンプレート親鎖は、二本鎖核酸分子の一部を形成し得る。
標識化合物は、新生鎖のさらなる伸長を防ぐように構成されたターミネーターを含み得る。電気トンネル接合部で使用される標識化合物と同様に、磁気トンネル接合部で使用される標識化合物は、ターミネーターを含めることによって、より長い信号を可能にするように構成される。
第1のヌクレオチドを除くヌクレオチドセットは、トンネル接合部との接触から除去され得る。ヌクレオチドの除去には、トンネル接合部を水ですすぐことが含まれ得る。トンネル接合部をすすぐために使用される液体は、水またはヌクレオチドを含まないイオン性液体であり得る。このすすぎ液は、リザーバに格納され、注入システムによりトンネル接合部に導入され得る。電気的または磁気的特性の値を測定する前に、ヌクレオチドセットを除去してもよい。他の実施形態では、ヌクレオチドセットは、電気的または磁気的特性の値を測定する前に除去されなくてもよい。ブロック706の後、デバイスは、図5Eの構成に類似し得る。
ブロック708で、テンプレート親鎖をシーケンシングデバイスに取り付けたまま、テンプレート親鎖および第1のヌクレオチドに取り付けられた第1の標識化合物の第1の部分構造を、絶縁層に近づけるために、電位を印加する。電位は、上記の第2の電源によってフィールド電極に印加され得る。
ブロック710で、磁場を印加して、第2の強磁性層の極性を設定することができる。第1の強磁性層は永久磁石であり得、第1の極性を有し得る。磁場を第2の強磁性層に印加して、極性を第1の極性に反平行である第2の極性に設定することができる。磁場は、外部磁石によって印加されてもよい。磁場は、第1のヌクレオチドを除くヌクレオチドセットを除去した後(例えば、すすぎ後)に印加され得る。いくつかの実施形態では、電圧は、すすぎ前、伸長中(例えば、ブロック706)、またはヌクレオチドセットの添加中(ブロック704)を含む、より長い期間印加され得る。いくつかの実施形態では、一定の磁場は、方法全体にわたって、印加され得る。デバイスは、図5Fの構成に類似し得る。
ブロック712で、第1の強磁性層、第1の部分構造、および第2の強磁性層を通る電気的または磁気的特性の値が測定される。電気的特性は、電流、電圧、抵抗、インダクタンス、またはパルス幅であり得る。値は、平均(算術平均、中央値、最頻値、二乗平均平方根)、極大値もしくは最大値、または瞬間的な測定値である。値は、10nAを超える場合、100nAを超える場合、または1μAを超える場合がある。磁気的特性は、磁性ナノ粒子によって引き起こされ、磁気センサによって測定される磁場摂動である可能性がある。
ブロック714で、電気的または磁気的特性の値を使用して、テンプレート親鎖にハイブリダイズしている第1のヌクレオチドを検出し得る。ブロック716および718は、第1のヌクレオチドがどのように検出され得るかを説明している。
ブロック716で、電気的または磁気的特性の値は、電気的または磁気的特性の基準値と比較され得る。基準値は、第1の強磁性層および第2の強磁性層を通り、部分構造を通過しないバックグラウンドトンネル電流、抵抗、または他の電気的特性のものであり得る。基準値は、バックグラウンドトンネル電流に基づいてもよい。例えば、基準値は、バックグラウンドトンネル電流の最大レベルに設定されてもよく、またはバックグラウンドの電気的特性と統計的に異なる値に設定されてもよい。例えば、基準値は、平均バックグラウンドトンネル電流からの1、2、または3標準偏差に設定することができる。いくつかの実施形態では、基準値はゼロであり得る。
ブロック718で、値は、基準値を超えていると判定され得る。例えば、値は、バックグラウンドトンネル電流よりも大きいと判定され得る。値が基準値を超えていると判定される場合、電流信号は、1のバイナリ信号に変換され得る。
方法700は、第1のヌクレオチドから第1の標識化合物を開裂することを含み得る。第1の標識化合物を開裂することができ、流体の流れが第1の標識化合物を除去できると、デバイスは図5Hに類似する。第1の標識化合物を開裂することにより、ターミネーターを除去して、ポリメラーゼが追加のヌクレオチドを用いて新生鎖を伸長できるようになる。第1の標識化合物を光開裂により開裂することができ、該開裂は、第1の標識化合物の感光性部分に影響を与えるために特定の波長または波長範囲で光をフラッシュすることを含み得る。いくつかの実施形態では、第1の標識化合物を開裂することは、開裂剤を導入することによる化学的な開裂を含み得、該開裂剤としては、pH調整剤(例えば、酸または塩基)、酵素、または化学試薬が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、開裂は、金属(例えば、パラジウム)触媒的、還元的、酸化的、求核的、または求電子的であり得る。
方法700は、別のヌクレオチド、ヌクレオチドセット内の複数種のヌクレオチド、および/または電気トンネル接合部について説明されたものと同様の複数のトンネル接合部を用いた繰り返し測定を含み得る。方法600と同様に、方法700は、核酸配列以外の分子を解析するために、適合され得る。
IV. 解析システム
核酸の配列を決定する方法は、トンネル接合部またはコンデンサ様構造を備えるシステムを使用することを含み得る。システムは、シーケンシングデバイスを含み得る。シーケンシングデバイスは、絶縁層によって分離された、第1の導体および第2の導体を含み得る。導体は、トンネル接合部の電極または強磁性層であり得る。システムは、第1の導体または第2の導体のうち少なくとも1つに接触する接着層を含み得る。テンプレート親鎖を、シーケンシングデバイスに取り付けることができる。特に、テンプレート親鎖を、接着層に取り付けることができる。第1の電源は、第1の導体または第2の導体のうち少なくとも1つと電気的に通信し得る。
トンネル接合部の導体ではない電極を、テンプレート親鎖が電極と絶縁層との間にあるように配置することができる。第2の電源は、電極と電気的に通信し得る。第2の電源は、電極に電圧を印加するように構成することができる。システムは、ヌクレオチドセットを含み得る。ヌクレオチドセット中の各ヌクレオチドは、部分構造を含む標識化合物に取り付けられ得る。システムは、部分構造を介して第1の導体および第2の導体を通る特性の値を測定するように構成された計測デバイスをさらに含み得る。特性は、電気的特性または磁気的特性であり得る。
システムは、制御システムを含み得る。制御システムは、計測デバイスを使用して特性の値を測定しながら、第2の電源を使用して電圧を印加するように構成することができる。制御システムは、複数の命令を格納するコンピュータ可読媒体を備えたコンピュータを含み得る。複数の命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、第1の導体および第2の導体を通る特性の値を測定させることができる。命令はまた、プロセッサに、特性の値を特性の基準値と比較させることができる。値が基準値を超えていると判定されると、命令により、プロセッサは、テンプレート親鎖にハイブリダイズしているヌクレオチドを検出することができる。いくつかの実施形態では、制御システムは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)または特定用途向け集積回路(ASIC)を含み得る。FPGAまたはASICは、コンピュータシステムのプロセッサ用に記述された操作を実行するように構成され得る。例えば、FPGAまたはASICは、特性の値を特性の基準値と比較することができる。FPGAまたはASICは、値が基準値を超えていると判定すると、テンプレート親鎖にハイブリダイズしているヌクレオチドを検出できる。FPGAまたはASICは、シーケンシングデバイスと同じ基板上にある場合がある。換言すれば、FPGAまたはASICは、シーケンシングデバイスと同じチップ上にある場合がある。制御システムには、コンピュータ、FPGA、およびASICの任意の組合せが含まれ得、操作はこれらの構成要素の間で分けられる。
電気トンネル接合部および磁気トンネル接合部に関連するシステムを以下に説明する。
A. 電気トンネル接合システム
図8Aは、例示的なシステム800を示す。システム800は、トンネル接合部を含み得る。トンネル接合部は、第1の電極804、第2の電極808、および絶縁層812を含む。電極材料は、金、銀、白金、またはパラジウムを含み得る。電極は、解析される分子の媒体として使用される水溶液中で化学的に安定な金属酸化物を有する任意の金属を含み得る。他の金属には、タンタル、ニッケル、クロム、チタン、および銅が含まれる場合がある。
絶縁層812は、アルミナ(Al2O3)、ハフニア(HfO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ケイ素(SiO2)、ガラス、石英、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO2)、または二酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む、誘電体材料を含み得る。絶縁層812は、2nmを超える厚さを有し得る。厚さは、第1の電極804と第2の電極808との間の距離であり得る。トンネル接合部の動作は、核酸分子の1つまたは複数のヌクレオチドが、両方の電極に接触することを必要としないので、絶縁層の幅は、1つまたは複数のヌクレオチドのサイズよりも大きくてもよい。さらに、部分構造が電極間のギャップより小さい場合でも、トンネリングが依然として発生する可能性があるため、絶縁層の幅は部分構造のサイズよりも大きくてもよい。
接着層814は、第1の電極804に接触してもよい。接着層814は、電極材料よりも表面と核酸分子との間のより強い接触を可能にする。接着層814は、二酸化ケイ素を含み得る。
トンネル接合部は、基板を完全に貫通するアパーチャまたは細孔の一部であり得る。第1の電極804、第2の電極808、絶縁層812、および接着層814は、アパーチャまたはアパーチャの一部を規定することができる。他の実施形態では、図8Aに示すトンネル接合部のように、トンネル接合部は、基板を完全に貫通していないトレンチ、ビア、ウェル、または他の構造の一部である。第2の電極808は、分離層816に接触してもよい。分離層816は、二酸化ケイ素を含む絶縁材料であり得る。分離層816は、第2の電極808を第1のフィールド電極820から分離または絶縁することができる。
いくつかの実施形態では、トンネル接合部は、アパーチャまたはビアでなくてもよい。代わりに、トンネル接合部がフィーチャの側壁上にある場合がある。フィーチャは、トレンチ、円柱、または長方形のソリッドの場合がある。電極、絶縁層、および接着層は、フィーチャの側壁または側壁の一部を規定することができる。
第1のフィールド電極820は、トンネル接合部の底部を形成し得る。第2のフィールド電極824は、第1の電極804、第2の電極808、および絶縁層812が第1のフィールド電極820と第2のフィールド電極824との間にあるように配置され得る。第1のフィールド電極820および第2のフィールド電極824は、本明細書に記載の任意の電極材料であり得る。さらに、第1のフィールド電極820および第2のフィールド電極824は、液体にさらされてなくてよく、したがって、いかなる導電性または半導電性材料からできていてもよい。しかしながら、第2のフィールド電極824は、第1の電極804および/または第2の電極808であってはならない。
第2のフィールド電極824は、電源828と電気的に通信し得る。電源828は、負の電位または電圧を第2のフィールド電極824に供給するように構成され得る。第1のフィールド電極820は、電源832と電気的に通信し得る。電源832は、正の電位または電圧を第1のフィールド電極820に供給するように構成され得る。電源828は、電源832によって第1のフィールド電極820に印加される電圧よりも負である電圧を、第2のフィールド電極824に印加することができる。いくつかの実施形態では、電源832は存在せず、第1のフィールド電極820は、接地電位またはその近くにある。前に説明したように、第1のフィールド電極820は、トンネル電極(第1の電極804および第2の電極808)から分離された電極であってはならない。
システム800は、電源836を含み得る。電源836は、第1の電極804および第2の電極808のうち少なくとも1つと電気的に通信し得る。電源836は、第1の電極804および第2の電極808に電圧を印加することができる。電源836は、所望の電流または所望の電圧を維持するように構成され得る。電源836は、10mV~100mV、100mV~200mV、200mV~300mV、300mV~500mV、または500mV~1Vを含む、0~1Vの電圧を提供し得る。いくつかの実施形態では、電源836は、1pA~10pA、10pA~100pA、100pA~1nA、1nA~10nA、または10nA~30nAを含む、0~30nAの電流を提供し得る。
システム800はまた、計測デバイス840を含み得る。計測デバイス840は、第1の電極804および第2の電極808を通る電気的特性の値を測定するように構成され得る。計測デバイス840は、電流メータ、電圧メータ、またはオシロスコープであり得る。電気的特性は、電流または電圧であり得る。
説明を簡単にするために、電気的接続は、図8Aにおいて簡略化されており、多くの場合では、デバイスと電極との間の直接接続を示していない。
システム800は、制御システム844を含み得る。制御システム844は、電源836および計測デバイス840と通信し得る。さらに、制御システム844は、電源828および電源832と通信し得る。制御システム844はまた、トンネル接合部に流体を送達する制御システムと通信し得る。制御システム844は、プロセッサおよびコンピュータ可読媒体を備えたコンピュータシステムを含み得る。コンピュータ可読媒体は、複数の命令を格納することができる。複数の命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、本明細書に記載の任意の方法を実行させることができる。例えば、複数の命令が実行されると、プロセッサは、第1の電極および第2の電極を通る電気的特性の値を測定することができる。プロセッサはまた、電気的特性の値を電気的特性の基準値と比較することができる。値が基準値を超えていると判定すると、プロセッサはさらに、テンプレート親鎖にハイブリダイズしているヌクレオチドを検出できる。値が基準値を超えていないと判定すると、プロセッサはさらに、テンプレート親鎖にヌクレオチドがハイブリダイズしていないと判定することができる。制御システム844は、FPGAまたはASICを含み得る。FPGAまたはASICは、コンピュータシステムのプロセッサによる実行のために、上記の任意の動作を実行するように構成され得る。FPGAまたはASICは、トンネル接合部と同じチップ上にあり得る。制御システム844を、以下でより詳細に説明する。
システム800は、標識化合物852に取り付けられたヌクレオチド848を含み得る。標識化合物852は、部分構造を含み得る。標識化合物852は、本明細書に記載の任意の標識化合物であり得る。部分構造は、本明細書に記載の任意の部分構造であり得る。
システム800は、リザーバ860を含み得る。リザーバ860は、トンネル接合部と流体連通され得る。注入システムは、液体(例えば、水を含む)をリザーバ860からトンネル接合部に送達するように構成され得る。リザーバ860は、標識化合物852に取り付けられたヌクレオチド848を含み得る。いくつかの実施形態では、システム800は、複数のリザーバを含み得る。各リザーバは、トンネル接合部に注入される異なる液体を含み得る。例えば、4種類のヌクレオチドのそれぞれに対して、異なるリザーバを使用することができる。トンネル接合部からヌクレオチドをすすぐための水を送達するために、追加のリザーバが含まれ得る。別のリザーバは、ポリメラーゼセットをトンネル接合部に送達することができる。ポリメラーゼセット中の各ポリメラーゼは、親核酸分子鎖にハイブリダイズする新生核酸分子鎖を伸長するように構成され得る。
システム800は、複数のトンネル接合部を含み得る。複数のトンネル接合部の数は、1平方センチメートルあたり数千、数百万、または数十億になり得る。各トンネル接合部は、同じ基板の表面上にあり得る。基板は、シリコンウェーハまたはシリコン・オン・インシュレータ・ウェーハを含む半導体ウェーハを含み得る。各トンネル接合部を、半導体加工手法を使用して製造することができる。各トンネル接合部は、同一であってもよい。電源836は、複数のトンネル接合部と電気的に通信し得る。計測デバイス840または複数の計測デバイスは、複数のトンネル接合部と電気的に通信し得る。
図8Bは、接着層814に取り付けられた核酸分子を有するトンネル接合部を示す。取り付けられた核酸分子をよりよく説明するために、電気的接続、電源、リザーバ860、および制御システム844は示されていない。
核酸分子864は、接着層814に取り付けられている。核酸分子864は、部分構造856を含む標識化合物852を有するヌクレオチドとハイブリダイズしている。ポリメラーゼを使用してヌクレオチドを取り込むことができるが、除去されたものとして示されている。ポリメラーゼは、ポリメラーゼセットの1つであり得る。各ポリメラーゼを、たった1つの核酸分子に連結することができる。各核酸分子を、たった1つのポリメラーゼに連結することができる。ポリメラーゼは、核酸分子が絶縁層812に向かって後で曲がることを容易にするために、核酸分子から除去され得る。
核酸分子864は、接着層814に取り付けられた核酸分子セット中の1つの核酸分子であり得る。接着層814に取り付けられた核酸分子セットは、1平方ミクロンあたり10を超える、50を超える、100を超える、500を超える、または1,000を超える核酸分子を含み得る。各核酸分子は、長さを有し得る。核酸分子セット中の各核酸分子は、接着層814上のそれぞれの点に取り付けられ得る。それぞれの点からウェルの開口部までの距離は、核酸分子の長さよりも短くてもよく、これには、核酸分子の長さの0.9倍未満、0.8倍未満、0.7倍未満、0.6倍未満、0.5倍未満、0.4倍未満、0.3倍未満、0.2倍未満、または0.1倍未満が含まれる。それぞれの点は、絶縁層812からそれぞれの距離にあり得る。それぞれの距離は、核酸分子のそれぞれの長さよりも短くてもよい。結果として、核酸分子は、特定の方法に配向された場合、該核酸分子が依然としてそれぞれの点に取り付けられたままでさえ、曲がって絶縁層812と接触することができる。より具体的には、核酸分子に取り付けられた部分構造は、絶縁層812と接触することができる。したがって、それぞれの距離は、固体材料(例えば、電極または接着層)を横切らない距離であり得る。
図8Cは、負の電位が、第2のフィールド電極824に印加された後のトンネル接合部を示す。正の電位を第1のフィールド電極820に印加してもよい。核酸分子864は、接着層814に取り付けまたは繋留されたままであるが、第1のフィールド電極820に向かってウェル内に曲がる。電圧差は、第1の電極804および第2の電極808にわたって印加され得る。部分構造が電極の近くに押されたため、電流が一方の電極から部分構造を通って他方の電極にトンネリングすることができる。
トンネル電流が測定され、ヌクレオチドが検出された後、部分構造とともに標識化合物を除去することができる。別の標識化合物を有する別のヌクレオチドを、ポリメラーゼにより新生鎖に取り込むことで、二本鎖核酸分子を形成することができる。新生鎖が成長し、より多くの分子が二本鎖分子になるにつれて、核酸分子は、第1のフィールド電極820に向かって曲がり難くなり得る。しかしながら、接着層814の表面は核酸分子によって覆われているので、分子のいくつかは依然として、より小さな屈曲でさえ、RTNまたはトンネル電流を含む電流を生成するのに十分なように、部分構造を近づける位置になり得る。第2のフィールド電極824に印加される負の電位はまた、より多くのヌクレオチドが取り込まれる場合には、核酸分子をさらに曲げるために、増加され得る。
図9は、トンネル接合部900の電極の構成を示す。電極902および電極904は、絶縁層906によって分離されている。電極902および電極904は重なり、重なり合う領域は絶縁層906の領域である。電極902および電極904は、互いに垂直または実質的に垂直であり得、それぞれが、重なり合う領域よりも大きな領域を有し得る。ウェル接合開口部908は円柱として示され、電極902、絶縁層906、および電極904を通って延びることができる。他の実施形態では、ウェル接合開口部は、角柱、多面体、または長方形のソリッドであり得る。テンプレート親鎖は、電極902の上部に取り付けられ得る。電位は、テンプレート親鎖を接合開口部908に向かっておよび/または接合開口部908に押し込むことができる。
図10は、複数のトンネル接合部を含む構成を示す。電極1002、1004、および1006は、互いに平行であり、電極1008および1010に対して垂直である。電極が重なる場合、電極は絶縁層(例えば、絶縁層1012)によって分離される。ウェル接合開口部(例えば、ウェル接合開口部1014)は、重なり合う各領域にあってもよい。複数のトンネル接合部の数は、1平方センチメートルあたり数千、数百万、または数十億になり得る。下部電極(例えば、電極1008および1010)のそれぞれは、同じ基板の表面上に配置され得る。基板は、シリコンウェーハまたはシリコン・オン・インシュレータ・ウェーハを含む半導体ウェーハを含み得る。各トンネル接合部を、半導体加工手法を使用して製造することができる。各トンネル接合部は、同一であってもよい。電源は、複数のトンネル接合部と電気的に通信し得る。1つまたは複数の計測デバイスは、複数のトンネル接合部と電気的に通信し得る。電極1002、1004、および1006は、従来のメモリシステムのワード線またはビット線に類似してよく、電極1008および1010は、他の種類の線である。
トンネル接合部は、2018年4月9日に出願された「FABRICATION OF TUNNELING JUNCTIONS WITH NANOPORES FOR MOLECULAR RECOGNITION」と題された米国特許仮出願第62/654,894号に記載されているトンネル接合部と同様であり得、該出願の内容は、あらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
B. 磁気トンネル接合システム
図11Aは、例示的なシステム1100を示す。システム1100は、トンネル接合部を含み得る。トンネル接合部は、第1の強磁性層1104、第2の強磁性層1108、および絶縁層1112を含む。強磁性層の材料としては、コバルト、Co/I/La2/3Sr1/3MnO3(LSMO)、ここでIは、SrTiO3(STO)、Ce0.69La0.31、もしくはO1.845(CLO)、CoGd、CoPt、CoFe、CoFeB、CoFeTb、鉄、Fe2O3、FeOFe2O3、NiOFe2O3、CuOFe2O3、MgOFe2O3、MnBi、Ni、MnSb、MnOFe2O3、Y3Fe5O12、MnAs、Gd、Tb、Dy、またはEuOが挙げられ得る。2つの強磁性層の材料は、同じであっても異なっていてもよい。1つの強磁性層は、1つの極性を有する永久磁石であり得る。他方の強磁性層は、印加された磁場によってその極性が設定されてもよい。
絶縁層1112は、アルミナ(Al2O3)、ハフニア(HfO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ケイ素(SiO2)、ガラス、石英、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO2)、または二酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む、誘電体材料を含み得る。絶縁層1112は、2nmを超える厚さを有し得る。厚さは、第1の強磁性層1104と第2の強磁性層1108との間の距離であり得る。トンネル接合部の動作は、核酸分子の1つまたは複数のヌクレオチドが両方の強磁性層に接触することを必要としないので、絶縁層の幅は、1つまたは複数のヌクレオチドのサイズよりも大きくてもよい。さらに、部分構造が強磁性層間のギャップより小さい場合でも、トンネリングが依然として発生する可能性があるため、絶縁層の幅は部分構造のサイズよりも大きくてもよい。
核酸分子1150は、トンネル接合部に取り付けられ得る。核酸分子1150は、第1の強磁性層1104の上部の接着層上で直接的または間接的に第1の強磁性層1104に取り付けられ得る。核酸ポリメラーゼ1154は、核酸分子1150に連結され得る。核酸ポリメラーゼ1154は、テンプレート親鎖にハイブリダイズしている新生鎖を伸長することができる。核酸ポリメラーゼ1154は、部分構造を含む標識化合物を有するヌクレオチドを取り込むことができる。
システム1100は、電源1164と電気的に通信するフィールド電極1160を含み得る。電源1164は、核酸分子に連結された部分構造を絶縁層1112に移動させるために、フィールド電極1160に負の電位を供給するように構成され得る。第2の別個のフィールド電極は、任意であり、示されていない。フィールド電極の構成は、電気トンネル接合部について説明した実施形態のものと同様であり得る。
磁気トンネル接合部は、トンネル接合部の任意の一部と接触するための部分構造を必要としない。部分構造からの磁場は、空の空間に沿った材料を通り抜けることができるからである。磁気トンネル接合部は、核酸分子1150に取り付けられ得る非強磁性材料に埋め込まれ得る。非強磁性材料は、接着層を含み得る。
システム1100は、電源1120を含み得る。電源1120は、第1の強磁性層1104および第2の強磁性層1108のうち少なくとも1つと電気的に通信し得る。電源1120は、第1の強磁性層1104および第2の強磁性層1108に電圧を印加することができる。電源1120は、所望の電流または所望の電圧を維持するように構成され得る。電源1120は、10mV~100mV、100mV~200mV、200mV~300mV、300mV~500mV、500mV~1V、1V~2V、または2V~3Vを含む、0~3Vの電圧を提供し得る。いくつかの実施形態では、電源1120は、1pA~10pA、10pA~100pA、100pA~1nA、1nA~10nA、10nA~30nA、30nA~100nA、100nA~500nA、500nA~1μA、または1μA~10μAを含む、0~10μAの電流を提供し得る。
システム1100はまた、計測デバイス1124を含み得る。計測デバイス1124は、第1の強磁性層1104および第2の強磁性層1108を通る電気的または磁気的特性の値を測定するように構成され得る。計測デバイス1124は、電流メータ、電圧メータ、またはオシロスコープであり得る。電気的特性は、電流または電圧であり得る。計測デバイス1124は、磁場を測定するための磁気センサであり得る。
システム1100は、制御システム1128を含み得る。制御システム1128は、電源1120および計測デバイス1124と通信し得る。制御システム1128はまた、トンネル接合部に流体を送達する制御システムと通信し得る。いくつかの実施形態では、制御システム1128は、プロセッサおよびコンピュータ可読媒体を備えたコンピュータシステムを含み得る。コンピュータ可読媒体は、複数の命令を格納することができる。複数の命令は、プロセスによって実行されると、プロセッサに、本明細書に記載の任意の方法を実行させることができる。例えば、複数の命令が実行されると、プロセッサは、第1の強磁性層および第2の強磁性層を通る電気的特性の値を測定することができる。プロセッサはまた、電気的特性の値を電気的特性の基準値と比較することができる。値が基準値を超えていると判定すると、プロセッサはさらに、テンプレート親鎖にハイブリダイズしているヌクレオチドを検出できる。値が基準値を超えていないと判定すると、プロセッサはさらに、テンプレート親鎖にヌクレオチドがハイブリダイズしていないと判定することができる。コンピュータシステムを、以下でより詳細に説明する。いくつかの実施形態では、制御システム1128は、FPGAまたはASICを含み得る。FPGAまたはASICは、複数の命令を実行するように構成され得る。
システム1100は、標識化合物1136に取り付けられたヌクレオチド1132を含み得る。標識化合物1136は、部分構造1138を含み得る。標識化合物1136は、本明細書に記載の任意の標識化合物であり得る。部分構造1138は、本明細書に記載の任意の部分構造であり得る。
システム1100は、リザーバ1140を含み得る。リザーバ1140は、トンネル接合部と流体連通され得る。注入システムは、液体をリザーバ1140からトンネル接合部に送達するように構成され得る。リザーバ1140は、標識化合物1136に取り付けられたヌクレオチド1132を含み得る。リザーバ1140は、水を含み得る。いくつかの実施形態では、システム1100は、複数のリザーバを含み得る。各リザーバは、トンネル接合部に注入される異なる液体を含み得る。例えば、4種類のヌクレオチドのそれぞれに対して、異なるリザーバを使用することができる。トンネル接合部からヌクレオチドをすすぐための水を送達するために、追加のリザーバが含まれ得る。別のリザーバは、ポリメラーゼセットをトンネル接合部に送達することができる。ポリメラーゼセット中の各ポリメラーゼは、親核酸分子鎖にハイブリダイズする新生核酸分子鎖を伸長するように構成され得る。
図11Bは、核酸分子1150などの核酸分子が、どのようにトンネル接合部に取り付けられ得るかについての別の構成を示す。核酸分子1150は、絶縁層1112の近くの第1の強磁性層1104および第2の強磁性層1108の両方の接着層に取り付けられ得る。図11Bでは、核酸分子は、トンネル接合部の円柱の脇に取り付けられている。フィールド電極1160は、核酸分子1150がトンネル接合部とフィールド電極1160との間にあるように配向され得る。
システムはまた、2018年6月21日に出願された「TUNNELING JUNCTIONS FOR SEQUENCING」と題された米国特許仮出願第62/688,257号に記載されている実施形態と同様の複数のトンネル接合部を含み得、該出願の内容は、あらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
C. 取り付けられたポリメラーゼを伴うシステム
システムはまた、2018年6月21日に出願された「TUNNELING JUNCTIONS FOR SEQUENCING」と題された米国特許仮出願第62/688,257号に記載されているトンネル接合部と同様に、ポリメラーゼがトンネル接合部に繋留されているシステムを含み得る。該出願の内容は、あらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
図12は、例示的なシステム1200を示す。この図は、トンネル接合部およびフィールド電極1250を示しているが、図を簡略化してフィールド電極1250に焦点を合わせるために、標識化合物に取り付けられたヌクレオチドを有するリザーバ、およびコンピュータシステムを示していない。リザーバおよびコンピュータシステムは、本明細書で前に記載されたものと同様であり得る。
システム1200は、トンネル接合部を含み得る。トンネル接合部は、第1の電極1204、第2の電極1208、および絶縁層1212を含む。電極は、解析される分子の媒体として使用される水溶液中で化学的に安定な金属酸化物を有する任意の金属を含み得る。
絶縁層1212は、アルミナ(Al2O3)、ハフニア(HfO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化ケイ素(SiO2)、ガラス、石英、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO2)、または二酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む、誘電体材料を含み得る。絶縁層1212は、2nmを超える厚さを有し得る。厚さは、第1の電極1204と第2の電極1208との間の距離であり得る。トンネル接合部の動作は、核酸分子の1つまたは複数のヌクレオチドが、両方の電極に接触することを必要としないので、絶縁層の幅は、1つまたは複数のヌクレオチドのサイズよりも大きくてもよい。さらに、部分構造が電極間のギャップより小さい場合でも、トンネリングが依然として発生する可能性があるため、絶縁層の幅は部分構造のサイズよりも大きくてもよい。
トンネル接合部は、トンネリング方向が第1の電極および第2の電極に接触する基板の表面に実質的に平行であるように、横方向に向けることができる。新生鎖の伸長の方向は、基板の表面に平行であり得る。絶縁層は、基板に直交する縦軸を有し得る。横方向に配向されたトンネル接合部の例は、米国特許出願公開第2018/0031523 A1号に記載されており、その内容は、あらゆる目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
核酸ポリメラーゼ1216は、繋留化合物1213および化合物1214によって形成される繋留化合物によってトンネル接合部に取り付けられ得る。繋留化合物1213は、SpyTagを含み得、化合物1214はSpyCatcherを含み得る。核酸ポリメラーゼ1216を、絶縁層1212でトンネル接合部に取り付けることができる。核酸ポリメラーゼ1216はまた、第1の電極1204または第2の電極1208でトンネル接合部に取り付けられ得る。1つまたは複数の化合物は、核酸ポリメラーゼ1216を絶縁層1212に繋留することができる。例えば、ヒドロキノン、SpyTag、またはSpyCatcherを使用して、核酸ポリメラーゼ1216を絶縁層1212に繋留することができる。核酸ポリメラーゼ1216は、新生鎖を伸長するように構成され得る。新生鎖は、テンプレート親鎖にハイブリダイズすることができる。
システム1200はまた、計測デバイス1224を含み得る。計測デバイス1224は、第1の電極1204および第2の電極1208を通る電気的特性の値を測定するように構成され得る。計測デバイス1224は、電流メータ、電圧メータ、またはオシロスコープであり得る。電気的特性は、電流または電圧であり得る。
システム1200は、フィールド電極1250を含み得る。フィールド電極1250は、第2のフィールド電極824と同様であり得る。フィールド電極1250は、電源1254と電気的に通信し得る。電源1254は、電源828と同様であり得る。フィールド電極1250を、ポリメラーゼ1216がフィールド電極1250と絶縁層1212との間にあるように配置することができる。電源1254は、フィールド電極1250に負の電圧を供給することができる。負の電圧は、ポリメラーゼ1216によってハイブリダイズしている任意の核酸分子を、絶縁層1212に向かって進ませ得る電場をもたらす。このようにして、標識化合物を有するヌクレオチドは、第1の電極1204と第2の電極1208との間にトンネル電流または直流を生成することができる。接地または正の電圧を提供する別のフィールド電極は、図12には示されていない。このフィールド電極は、第1のフィールド電極820と同様であり得る。
図12は電気トンネル接合部を示しているが、フィールド電極を、ポリメラーゼが繋留されている磁気トンネル接合部とともに使用することができる。フィールド電極は同様の方法で動作し、ヌクレオチドおよび部分構造を伴うテンプレート親鎖をトンネル接合部に向かって進ませる。
繋留されたポリメラーゼを伴うトンネル接合部を使用する方法は、フィールド電極に電圧を印加する追加の工程を含み得る。電圧は、テンプレート親鎖および取り込まれたヌクレオチドに取り付けられた標識化合物の部分構造を、絶縁層1212に近づけることができる。
V. システム例
図13は、例示的な解析システムを示す。図13に示すシステムは、解析デバイス1302と、コンピュータシステム1306の一部であるインテリジェンスモジュール1304とを備える。解析デバイス1302は、システム800、システム1100、または本明細書に記載の任意のシステムを含み得る。コンピュータシステム1306は、コンピュータシステム10の一部または全部を含み得る。データセット(電気的特性データセット)は、ネットワーク接続または直接接続を介して、解析デバイス1302からインテリジェンスモジュール1304に、またはその逆方向に転送される。データセットは、例えば、ヌクレオチドを同定するために処理され得る。同定の工程は、コンピュータシステム1306のハードウェアに格納されたソフトウェアによって実施され得る。データセットは、プロセッサ上で動作し、インテリジェンスモジュールの記憶デバイスに格納されているコンピュータコードによって処理され、処理後に解析モジュールの記憶デバイスに逆向きに転送される。そこで、変更されたデータは、表示デバイスに表示され得る。いくつかの実施形態では、インテリジェンスモジュールはまた、解析デバイスに実装され得る。
図14は、コンピュータシステム1400が、例えば、絶縁層によって分離された第1の電極および第2の電極にわたって電圧を印加することを含み得る印加手段1410を含み得ることを示す。コンピュータシステム1400は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)または特定用途向け集積回路(ASIC)であり得る。コンピュータシステム1400はまた、測定手段1420を含み得、該測定手段は、第1の電極および第2の電極を通る電気的特性の値を測定することを含み得る。コンピュータシステム1400は、受信手段をさらに含み得、該受信手段は、解析システムから電気的特性の値を受信することを含み得る。コンピュータシステム1400はまた、検出手段を含み得、該検出手段は、例えば、電気的特性の値を使用して、テンプレート親鎖にハイブリダイズしているヌクレオチドを検出することを含み得る。
本明細書で言及されるコンピュータシステムのいずれも、任意の適切な数のサブシステムを利用することができる。そのようなサブシステムの例は、図15のコンピュータシステム10内に示されている。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、1つのコンピュータ装置を含み、サブシステムは、該コンピュータ装置の構成要素であり得る。他の実施形態では、コンピュータシステムは、それぞれが内部の構成要素を備えたサブシステムであり、複数のコンピュータ装置を含むことができる。コンピュータシステムは、デスクトップおよびラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話、ならびに他の携帯デバイスを含み得る。コンピュータシステム10は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)または特定用途向け集積回路(ASIC)であり得る。
図15に示すサブシステムは、システムバス75を介して相互接続されている。プリンタ74、キーボード78、記憶デバイス79(複数可)、ディスプレイアダプター82に接続されたモニタ76などの追加のサブシステムが示されている。I/Oコントローラ71に接続した周辺機器および入出力(I/O)デバイスは、入出力(I/O)ポート77(例えば、USB、FireWire(登録商標)、Thunderbolt)などの当技術分野で公知な任意の数の手段によって、コンピュータシステムに接続され得る。例えば、I/Oポート77または外部インターフェース81(例えば、Ethernet、Wi-Fiなど)は、コンピュータシステム10をインターネットなどの広域ネットワーク、マウス入力デバイス、またはスキャナに接続するために用いられ得る。システムバス75を介した相互接続により、サブシステム間での情報交換を可能にするだけでなく、セントラルプロセッサ73が、各サブシステムと通信すること、およびシステムメモリ72または記憶デバイス79(複数可)(例えば、ハードドライブまたは光ディスクなどの固定ディスク)からの命令実行を制御することを可能にする。システムメモリ72および/または記憶デバイス79(複数可)は、コンピュータ可読媒体を統合することができる。別のサブシステムは、カメラ、マイクロフォン、加速度計などのデータ収集デバイス85である。本明細書で説明したデータのいずれも、ある構成要素から別の構成要素へ出力され得、ユーザに出力され得る。
コンピュータシステムは、例えば、外部インターフェース81または内部インターフェースによって一緒に接続された、複数の同じ構成要素またはサブシステムを含むことができる。いくつかの実施形態では、コンピュータシステム、サブシステム、または装置は、ネットワークを通して通信することができる。このような場合、1台のコンピュータをクライアントと見なし、別のコンピュータをサーバと見なすことができ、それぞれが、同じコンピュータシステムの一部であることができる。クライアントおよびサーバには、それぞれ複数のシステム、サブシステム、または構成要素を含めることができる。
本発明の実施形態のいずれも、ハードウェア(例えば、特定用途向け集積回路またはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)を使用して、かつ/または一般的にプログラマブルプロセッサをモジュール式または一体化方式で備えたコンピュータソフトウェアを使用して、制御ロジックの形態で実装され得ることを理解されたい。本明細書で使用されるとき、プロセッサは、1つの集積チップ上のシングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、または1つの回路基板上の、もしくはネットワーク接続されたマルチプロセシングユニットを含む。本明細書で提供される開示および教示に基づいて、当業者は、ハードウェアおよびハードウェアとソフトウェアとの組合せを使用して、本発明の実施形態を実施するための他の手段および/または方法を知り、理解するであろう。
本出願で説明されるソフトウェアの構成要素または機能のいずれも、例えばJava、C、C++、C#、Objective-C、Swiftなどの任意の適切なコンピュータ言語、または例えば、従来のもしくはオブジェクト指向の手法を用いたPerlもしくはPythonなどのスクリプト言語を用いて、プロセッサによって実行されるソフトウェアコードとして実装され得る。ソフトウェアコードは、一連の命令または指令として、記憶および/または送信用の、コンピュータ可読媒体上に格納され得る。適切な非一時的コンピュータ可読媒体は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、ハードドライブまたはフロッピーディスクなどの磁気媒体、コンパクトディスク(CD)またはDVD(デジタル多用途ディスク)などの光学的媒体、フラッシュメモリなどを含み得る。コンピュータ可読媒体は、そのような記憶デバイスまたは送信デバイスの任意の組合せであり得る。
そのようなプログラムはまた、インターネットを含む様々なプロトコルに準拠する有線、光、および/または無線ネットワークを介した送信に適合されたキャリア信号を使用して符号化および送信され得る。したがって、本発明の実施形態によるコンピュータ可読媒体を、そのようなプログラムで符号化されたデータ信号を使用して作成することができる。プログラムコードで符号化されたコンピュータ可読媒体は、互換性のあるデバイスと一緒にパッケージ化されるか、または(例えば、インターネットを介してダウンロードされる)他のデバイスとは別に提供され得る。任意のそのようなコンピュータ可読媒体は、1つのコンピュータ製品(例えば、ハードドライブ、CD、または完全なコンピュータシステム)上にまたは内部に備えられ得、また、システムまたはネットワーク内の異なるコンピュータ製品上にまたは内部に存在し得る。コンピュータシステムは、本明細書に記載の結果のいずれかをユーザに提供するためのモニタ、プリンタ、または他の適切なディスプレイを含み得る。
本明細書に記載の方法のいずれも、工程を実行するように構成することができる1つまたは複数のプロセッサを含むコンピュータシステムを使用して、全体的または部分的に実行することができる。したがって、実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法の工程を実行するように構成され、それぞれの工程またはそれぞれの1群の工程を実行する種々の構成要素を潜在的に備える、コンピュータシステムに関し得る。番号付きの工程として提示されているが、本明細書の方法の工程は、同時にまたは異なる順序で実行することができる。さらに、これらの工程の一部を、他の方法からの別の工程の一部とともに使用することができる。また、工程のすべてまたは一部は、任意であり得る。さらに、任意の方法の任意の工程は、モジュール、ユニット、回路、またはこれらの工程を実行するための他の手段を用いて、実行され得る。
特定の実施形態の個別の詳細は、本発明の実施形態の概念および範囲から逸脱することなく、任意の適切な方法で組み合わされ得る。しかしながら、本発明の他の実施形態は、各々の個別の態様に関する特定の実施形態に、またはこれらの個別の態様の特定の組合せに、向けられ得る。
本発明の例示の実施形態に関する上述の説明は、図解および説明の目的で提示されてきた。網羅的であること、または本発明を、説明されたそのものの形態に限定することを意図するものではなく、上述の教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。
前述の説明では、説明の目的で、本技術の様々な実施形態の理解をもたらすために、多くの詳細が説明されてきた。しかしながら、特定の実施形態は、これらの詳細の一部なしで、または追加の詳細を伴って実施され得ることが当業者には明らかであろう。
いくつかの実施形態を説明してきたが、本発明の概念から逸脱することなく、様々な修正、代替構造、および均等物を使用できることが当業者によって認識されるであろう。さらに、本発明を不必要に曖昧にすることを回避するために、いくつかの周知のプロセスおよび要素は説明されていない。さらに、特定の実施形態の詳細は、その実施形態の変形に常に存在するとは限らないか、または他の実施形態に追加され得る。
値の範囲が提供される場合、各介在値は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、下限の単位の10分の1まで、また具体的に開示された範囲の上限と下限との間であることが理解される。記載された値または記載された範囲内の介在値と、その記載された範囲内の別に記載された値または介在値との間では、より小さい範囲が包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、独立して、範囲に含まれるかまたは除外され得、該範囲において、上下限のいずれかが含まれる場合、いずれも含まれない場合、またはいずれも含まれる場合、各範囲はまた本発明に包含され、記載された範囲内で具体的に除外された上下限はそれに従う。記載された範囲が上下限の一方または両方を含む場合、包含された上下限の一方または両方を除いた範囲もまた、含まれる。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「a method(方法)」への言及は、複数のそのような方法を含み、「the moiety(その部分構造)」への言及は、当業者に知られている1つまたは複数の部分構造およびその均等物などへの言及を含む。本発明は、明確化および理解の目的のために、詳細に説明されてきた。しかしながら、特定の変更および修正は、添付の特許請求の範囲内で実施され得ることが理解されるであろう。