更なる高周波に対応するために、誘電体層に内蔵されるプラズマ発生用の下部電極の厚さを十分に厚くすることが求められる。その厚さは、一般に、従来より誘電体層に内蔵されていたウェハ等を吸着するための吸着用電極の厚さよりも厚くなる。電極の厚さが厚いなど、電極の内部応力の課題に対しては、その緩和のために気孔率を高めることが知られている。
ところが、電極の気孔率を高めると電気抵抗が増大する。印加される電流が高周波の場合、気孔率が高いと電気抵抗が増大してしまうという新たな課題が生じる。一般に、交流電流が電極を流れる場合には、電流密度が電極表面で高く、表面から離れると低くなる表皮効果と呼ばれる現象が生じる。交流電流の周波数が高くなるほど電流の表面への集中が大きくなることが知られている。プラズマ発生用の下部電極として誘電体層内蔵電極を用いる場合において、より高いプラズマ密度が求められる状況では、気孔率を高めるだけでは不十分であることを本発明者らは新たに見出した。
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、誘電体層に内蔵されたプラズマ発生用である下部電極における内部応力の緩和と電気抵抗増大の抑制を両立できる静電チャックを提供することを目的とする。
第1の発明は、吸着の対象物が載置される第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持するベースプレートと、前記セラミック誘電体基板の内部に設けられ、高周波電源と接続される少なくとも1つの第1電極層と、を備え、前記第1電極層は、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板に向かうZ軸方向において、前記第1主面と前記第2主面との間に設けられ、前記第1電極層は、前記第1主面側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記第1電極層は、前記第1面を含む第1領域と、前記第2面を含む第2領域と、前記Z軸方向において、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する第3領域と、を有し、前記第1領域の気孔率は、前記第3領域の気孔率よりも低いことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、高周波電源と接続される第1電極層をセラミック誘電体基板の内部に設けることで、例えば、静電チャックよりも上方に設けられるプラズマ発生用の上部電極と第1電極層(下部電極)との間の距離を短くすることができる。これにより、例えば、ベースプレートをプラズマ発生用の下部電極とする場合などに比べて、低い電力でプラズマ密度を高めることができる。また、この静電チャックによれば、第1領域の気孔率を第3領域の気孔率よりも低くすることで、気孔率の高い第3領域において内部応力を緩和するとともに、電流が流れる第1領域における電気抵抗の増大を抑制することができる。これにより、第1電極層(誘電体層に内蔵されたプラズマ発生用である下部電極)における内部応力の緩和と電気抵抗増大の抑制を両立することができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記第2領域の気孔率は、前記第3領域の気孔率よりも低いことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第2領域の気孔率を第3領域の気孔率よりも低くすることで、第2領域における電気抵抗の増大を抑制することができる。これにより、第1電極層における電気抵抗の増大をさらに抑制することができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第3領域の気孔率は、2%以上40%以下であることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第3領域の気孔率をこの範囲とすることで、第1電極層における内部応力の緩和と電気抵抗増大の抑制をよりバランスよく両立することができる。
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記第1領域の気孔率及び前記第2領域の気孔率の少なくともいずれかは、2%未満であることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1領域の気孔率及び第2領域の気孔率の少なくともいずれかをこの範囲とすることで、第1電極層における内部応力の緩和と電気抵抗増大の抑制をよりバランスよく両立することができる。
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記第1電極層は、前記第2面側から給電され、前記第1面と前記第1主面との間の前記Z軸方向に沿う距離は一定であり、前記第1電極層の端部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記第1電極層の中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1面と第1主面との間のZ軸方向に沿う距離を一定とすることで、プラズマ密度の面内均一性を向上させることができる。
一般に、交流電流が電極を流れる場合には、電流密度が電極表面で高く、表面から離れると低くなる表皮効果と呼ばれる現象が生じる。交流電流の周波数が高くなるほど電流の表面への集中が大きくなることが知られている。本発明では、第1電極層は高周波電源と接続されるため、第1電極層において表皮効果が生じ、高周波電源から印加された交流電流は、第1電極層の表面を伝って流れると考えられる。この静電チャックによれば、第2面側から高周波電源と接続され給電される第1電極層において、第1電極層の端部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離を、第1電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離よりも小さくしている。そのため、第2面から第1面までの給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)を高めることができる。
また、高周波電源と接続される第1電極層をセラミック誘電体基板の内部に設け、さらに、プラズマ密度を高めるために第1電極層に印加される電源をハイパワー化する場合には特に、第1電極層の発熱によりチャンバ内環境が変化し、プラズマ密度の面内均一性に悪影響が出るという新たな課題を見出した。この静電チャックによれば、第1電極層の端部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離を、第1電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離よりも小さくすることで、冷却機能を有するベースプレート側に位置する第1電極層の第2面の表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、第1電極層をより効果的に放熱させることができ、プラズマ密度の面内均一性をより高めることができる。
第6の発明は、第1~第5のいずれか1つの発明において、前記第1電極層は、Ag、Pd、及びPtの少なくともいずれかを含むことを特徴とする静電チャックである。
このように、実施形態に係る静電チャックによれば、例えば、Ag、Pd、及びPtなどの金属を含む第1電極層を用いることができる。
第7の発明は、第1~第6のいずれか1つの発明において、前記第1電極層は、金属とセラミックスとのサーメットからなることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1電極層をサーメットで形成することで、第1電極層とセラミック誘電体基板との密着性を高めることができるとともに、第1電極層の強度を高めることができる。
第8の発明は、第1~第7のいずれか1つの発明において、前記第1電極層の中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、1μm以上500μm以下であることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離(中央部における第1電極層の厚さ)をこの範囲とすることで、表皮効果の影響を低減し、プラズマ密度の面内均一性をさらに高めるとともに、RF応答性の低下を抑制することができる。
第9の発明は、第8の発明において、前記第1電極層の中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、10μm以上100μm以下であることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離(中央部における第1電極層の厚さ)をこの範囲とすることで、表皮効果の影響を低減し、プラズマ密度の面内均一性をより一層高めるとともに、RF応答性の低下を抑制することができる。
第10の発明は、第1~第9のいずれか1つの発明において、前記セラミック誘電体基板は、酸化アルミニウムを含み、前記セラミック誘電体基板における前記酸化アルミニウムの濃度は、90質量%以上であることを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、高純度の酸化アルミニウムを用いることで、セラミック誘電体基板の耐プラズマ性を向上させることができる。
第11の発明は、第1~第10のいずれか1つの発明において、前記セラミック誘電体基板の内部に設けられ、吸着用電源と接続される少なくとも1つの第2電極層をさらに備え、前記第2電極層は、前記Z軸方向において、前記第1電極層と前記第1主面との間に設けられることを特徴とする静電チャックである。
このように、実施形態に係る静電チャックによれば、プラズマを発生させるための下部電極である第1電極層とは別に、対象物を吸着させるための吸着電極である第2電極層を設けることができる。
第12の発明は、第11の発明において、前記第1電極層の前記第1面の面積の合計は、前記第2電極層の前記第1主面側の面の面積の合計よりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1電極層の第1面の面積の合計を、第2電極層の第1主面側の面の面積の合計よりも大きくすることで、プラズマ密度の面内均一性をさらに高めることができる。
第13の発明は、第11または第12の発明において、前記第1電極層の厚さは、前記第2電極層の厚さよりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1電極層の厚さを、第2電極層の厚さよりも大きくすることで、表皮効果の影響を低減し、プラズマ密度の面内均一性をさらに高めることができる。
第14の発明は、第11~第13のいずれか1つの発明において、前記Z軸方向において、前記第1電極層の一部は、前記第2電極層と重ならないことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、Z軸方向において、第1電極層の一部が第2電極層と重ならないようにすることで、プラズマ密度の面内均一性をさらに高めることができる。
第15の発明は、第11~第14のいずれか1つの発明において、前記第1電極層は、金属とセラミックスとを含み、前記第2電極層は、金属とセラミックスとを含み、前記第1電極層に含まれる前記金属の体積と前記セラミックスの体積との合計に対する前記金属の体積の割合は、前記第2電極層に含まれる前記金属の体積と前記セラミックスの体積との合計に対する前記金属の体積の割合よりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1電極層に含まれる金属の割合を第2電極層に含まれる金属の割合よりも大きくすることで、例えば、高周波電源から電圧が印加される第1電極層の電気抵抗をより小さくすることができ、プラズマ密度の面内均一性及びRF応答性を高めることができる。
第16の発明は、第11~第14のいずれか1つの発明において、前記第1電極層は、金属とセラミックスとを含み、前記第2電極層は、金属とセラミックスとを含み、前記第1電極層に含まれる前記金属の体積は、前記第2電極層に含まれる前記金属の体積よりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1電極層に含まれる金属の体積を第2電極層に含まれる金属の体積よりも大きくすることで、例えば、高周波電源から電圧が印加される第1電極層の電気抵抗をより小さくすることができ、プラズマ密度の面内均一性及びRF応答性を高めることができる。
第17の発明は、第11~第16のいずれか1つの発明において、前記第1電極層と前記第2電極層との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記第1主面と前記第2電極層との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1電極層と第2電極層との間のZ軸に沿う距離を第1主面と第2電極層との間のZ軸に沿う距離よりも大きくすることで、高周波電源から電圧が印加された場合でも第1電極層と第2電極層との間の短絡や絶縁破壊などの不具合の発生をより効果的に抑制することができる。
第18の発明は、第1~第10のいずれか1つの発明において、前記第1電極層は、吸着用電源と接続されることを特徴とする静電チャックである。
このように、実施形態に係る静電チャックによれば、プラズマを発生させるための下部電極である電極層を、対象物を吸着させるための吸着電極としても使用することができる。
第19の発明は、第5の発明において、前記端部の幅は、前記第1電極層の前記中央部における前記第2面と前記第1面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも大きいことを特徴とする静電チャックである。
この静電チャックによれば、第1電極層の端部の幅を第1電極層の中央部における第2面と第1面との間のZ軸方向に沿う距離(すなわち、第1電極層の中央部における厚さ)よりも大きくすることで、給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)をより高めることができる。
本発明の態様によれば、誘電体層に内蔵されたプラズマ発生用である下部電極における内部応力の緩和と電気抵抗増大の抑制を両立できる静電チャックが提供される。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る静電チャックを例示する模式的断面図である。
図1に表したように、静電チャック100は、セラミック誘電体基板10と、第1電極層11と、ベースプレート50と、を備える。
セラミック誘電体基板10は、例えば焼結セラミックによる平板状の基材である。例えば、セラミック誘電体基板10は、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)を含む。例えば、セラミック誘電体基板10は、高純度の酸化アルミニウムで形成される。セラミック誘電体基板10における酸化アルミニウムの濃度は、例えば、90質量パーセント(mass%)以上100mass%以下、好ましくは、95質量パーセント(mass%)以上100mass%以下、より好ましくは、99質量パーセント(mass%)以上100mass%以下である。高純度の酸化アルミニウムを用いることで、セラミック誘電体基板10の耐プラズマ性を向上させることができる。なお、酸化アルミニウムの濃度は、蛍光X線分析などにより測定することができる。
セラミック誘電体基板10は、第1主面10aと、第2主面10bと、を有する。第1主面10aは、吸着の対象物Wが載置される面である。第2主面10bは、第1主面10aとは反対側の面である。吸着の対象物Wは、例えば、シリコンウェーハなどの半導体基板である。
なお、本願明細書において、ベースプレート50からセラミック誘電体基板10に向かう方向をZ軸方向とする。Z軸方向は、例えば、各図に例示する通り、第1主面10aと第2主面10bとを結ぶ方向である。Z軸方向は、例えば、第1主面10a及び第2主面10bに対して略垂直な方向である。Z軸方向と直交する方向の1つをX軸方向、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向ということにする。本願明細書において、「面内」とは、例えばX-Y平面内である。
セラミック誘電体基板10の内部には、第1電極層11が設けられる。第1電極層11は、第1主面10aと、第2主面10bと、の間に設けられる。すなわち、第1電極層11は、セラミック誘電体基板10の中に挿入されるように設けられる。第1電極層11は、例えば、セラミック誘電体基板10に一体焼結されることで内蔵されてもよい。
このように、第1電極層11をセラミック誘電体基板10の内部に設けることで、静電チャック100よりも上方に設けられる上部電極(図7の上部電極510)と第1電極層11(下部電極)との間の距離を短くすることができる。これにより、例えば、ベースプレート50を下部電極とする場合などに比べて、低い電力でプラズマ密度を高めることができる。換言すれば、高いプラズマ密度を得るために必要となる電力を低減させることができる。
第1電極層11の形状は、セラミック誘電体基板10の第1主面10a及び第2主面10bに沿った薄膜状である。第1電極層11の断面形状については、後述する。
第1電極層11は、高周波電源(図7の高周波電源504)と接続される。上部電極(図7の上部電極510)及び第1電極層11に高周波電源から電圧(高周波電圧)が印加されることで、処理容器501内部においてプラズマが発生する。第1電極層11は、換言すれば、プラズマを発生させるための下部電極である。高周波電源は、高周波のAC(交流)電流を第1電極層11に供給する。ここでいう「高周波」は、例えば、200kHz以上である。
第1電極層11は、例えば、金属製である。第1電極層11は、例えば、Ag、Pd、及びPtの少なくともいずれかを含む。第1電極層11は、例えば、金属とセラミックスとを含んでいてもよい。第1電極層11は、例えば、金属とセラミックスとのサーメットからなるものであってもよい。サーメットは、金属とセラミックス(酸化物、炭化物など)とを含む複合材料である。第1電極層11をサーメットで形成することで、第1電極層11とセラミック誘電体基板10との密着性を高めることができる。また、第1電極層11の強度を高めることができる。
サーメットに含まれる金属は、例えば、Ag、Pd、及びPtの少なくともいずれかを含む。また、サーメットに含まれるセラミックスは、例えば、セラミック誘電体基板10に含まれるセラミックスと同じ元素を含む。第1電極層11を、セラミック誘電体基板10に含まれるセラミックスと同じ元素を含むセラミックスのサーメットで形成することで、第1電極層11の熱膨張率とセラミック誘電体基板10の熱膨張率との差を小さくすることができる。これにより、第1電極層11とセラミック誘電体基板10との密着性を高め、剥離等の不具合を抑制できる。なお、サーメットに含まれるセラミックスは、セラミック誘電体基板10に含まれるセラミックスとは異なる元素を含んでもよい。
また、この例では、第1電極層11は、吸着用電源(図7の吸着用電源505)と接続される。静電チャック100は、吸着用電源から第1電極層11に電圧(吸着用電圧)を印加することによって、第1電極層11の第1主面10a側に電荷を発生させ、静電力によって対象物Wを吸着保持する。換言すれば、第1電極層11は、対象物Wを吸着させるための吸着電極である。実施形態によれば、このように、プラズマを発生させるための下部電極である第1電極層11を、対象物を吸着させるための吸着電極としても使用することができる。吸着用電源は、直流(DC)電流またはAC電流を第1電極層11に供給する。吸着用電源は、例えば、DC電源である。吸着用電源は、例えば、AC電源であってもよい。
第1電極層11には、セラミック誘電体基板10の第2主面10b側に延びる接続部20が設けられている。接続部20は、例えば、第1電極層11と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)である。接続部20は、ロウ付けなどの適切な方法によって接続された金属端子でもよい。
ベースプレート50は、セラミック誘電体基板10を支持する部材である。セラミック誘電体基板10は、接着部材60によってベースプレート50の上に固定される。接着部材60としては、例えばシリコーン接着剤が用いられる。
ベースプレート50は、例えば、アルミニウムなどの金属製である。ベースプレート50は、例えば、セラミック製であってもよい。ベースプレート50は、例えば、上部50aと下部50bとに分けられており、上部50aと下部50bとの間に連通路55が設けられている。連通路55の一端側は、入力路51に接続され、連通路55の他端側は、出力路52に接続される。
ベースプレート50は、静電チャック100の温度調整を行う役目も果たす。例えば、静電チャック100を冷却する場合には、入力路51からヘリウムガスなどの冷却媒体を流入し、連通路55を通過させ、出力路52から流出させる。これにより、冷却媒体によってベースプレート50の熱を吸収し、その上に取り付けられたセラミック誘電体基板10を冷却することができる。一方、静電チャック100を保温する場合には、連通路55内に保温媒体を入れることも可能である。セラミック誘電体基板10やベースプレート50に発熱体を内蔵させることも可能である。ベースプレート50やセラミック誘電体基板10の温度を調整することで、静電チャック100によって吸着保持される対象物Wの温度を調整することができる。
この例では、セラミック誘電体基板10の第1主面10a側に、溝14が設けられている。溝14は、第1主面10aから第2主面10bに向かう方向(Z軸方向)に窪み、X-Y平面内において連続して延びている。溝14が設けられていない部分を凸部13とすると、対象物Wは、凸部13に載置される。第1主面10aは、対象物Wの裏面と接する面である。すなわち、第1主面10aは、凸部13の上面を含む平面である。静電チャック100に載置された対象物Wの裏面と溝14との間に空間が形成される。
セラミック誘電体基板10は、溝14と接続された貫通孔15を有する。貫通孔15は、第2主面10bから第1主面10aにかけて設けられる。すなわち、貫通孔15は、第2主面10bから第1主面10aまでZ軸方向に延び、セラミック誘電体基板10を貫通する。
凸部13の高さ(溝14の深さ)、凸部13及び溝14の面積比率、形状等を適宜選択することで、対象物Wの温度や対象物Wに付着するパーティクルを好ましい状態にコントロールすることができる。
ベースプレート50には、ガス導入路53が設けられる。ガス導入路53は、例えば、ベースプレート50を貫通するように設けられる。ガス導入路53は、ベースプレート50を貫通せず、他のガス導入路53の途中から分岐してセラミック誘電体基板10側まで設けられていてもよい。また、ガス導入路53は、ベースプレート50の複数箇所に設けられてもよい。
ガス導入路53は、貫通孔15と連通する。すなわち、ガス導入路53に流入した伝達ガス(ヘリウム(He)等)は、ガス導入路53を通過した後に、貫通孔15に流入する。
貫通孔15に流入した伝達ガスは、貫通孔15を通過した後に、対象物Wと溝14との間に設けられた空間に流入する。これにより、対象物Wを伝達ガスによって直接冷却することができる。
図2は、実施形態に係る静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図3(a)~図3(c)は、実施形態に係る静電チャックの第1電極層の変形例を模式的に表す断面図である。
図2は、図1に示す領域R1を拡大して示す。
図2に表したように、第1電極層11は、第1面11aと、第2面11bと、を有する。第1面11aは、第1主面10a側の面である。第2面11bは、第1面11aとは反対側の面である。第1面11aは、換言すれば、第1主面10aと対向する面である。第2面11bは、換言すれば、第2主面10bと対向する面である。
また、図2に表したように、第1電極層11は、第1領域111と、第2領域112と、第3領域113と、を有する。第1領域111は、第1面11aを含む領域である。第2領域112は、第2面を含む領域である。第3領域113は、Z軸方向において、第1領域111と第2領域112との間に位置する領域である。第3領域113は、例えば、第1電極層11のZ軸方向における中心を含む領域である。
第1領域111のZ軸方向に沿う長さ(厚さ)は、例えば、第1電極層11の厚さの5%を超え50%未満、好ましくは、10%を超え40%未満である。第2領域112のZ軸方向に沿う長さ(厚さ)は、例えば、第1電極層11の厚さの5%を超え50%未満、好ましくは、10%を超え40%未満である。第3領域113のZ軸方向に沿う長さ(厚さ)は、例えば、第1電極層11の厚さの0%を超え90%未満、好ましくは、20%を超え80%未満である。第3領域113が第1電極層11のZ軸方向における中心を含む場合、第3領域113は、例えば、第1電極層11のZ軸方向における中心から上下に第1電極層11の厚さの0%を超え45%未満、好ましくは、10%を超え40%未満の領域であってもよい。
実施形態において、第1領域111の気孔率は、第3領域113の気孔率よりも低い。第1領域111の気孔率を第3領域113の気孔率よりも低くすることで、気孔率の高い第3領域113において内部応力を緩和するとともに、電流が流れる第1領域111における電気抵抗の増大を抑制することができる。これにより、第1電極層11(誘電体層に内蔵された下部電極)における内部応力の緩和と電気抵抗増大の抑制を両立することができる。
また、第2領域112の気孔率は、例えば、第3領域113の気孔率よりも低い。第2領域112の気孔率を第3領域113の気孔率よりも低くすることで、第2領域112における電気抵抗の増大を抑制することができる。これにより、第1電極層11における電気抵抗の増大をさらに抑制することができる。
例えば、第1領域111の気孔率及び第2領域112の気孔率の少なくともいずれかは、2%未満である。第1領域111の気孔率及び第2領域112の気孔率の少なくともいずれかをこの範囲とすることで、第1電極層11における内部応力の緩和と電気抵抗増大の抑制をよりバランスよく両立することができる。
例えば、第3領域113の気孔率は、2%以上40%以下である。第3領域113の気孔率をこの範囲とすることで、第1電極層11における内部応力の緩和と電気抵抗増大の抑制をよりバランスよく両立することができる。
気孔率は、例えば、測定するサンプルの断面を樹脂包埋して研磨し、鏡面が出たサンプル断面表面をSEM(Scanning Electron Microscope)にて撮影し、撮影像を画像解析して求めることができる。より具体的には、例えば、第1電極層11を切断し、断面方向がSEMで観察できるように樹脂包埋し、機械研磨を行う。断面を鏡面がでるまで研磨し、サンプルをPt蒸着し、SEM観察を行う。観察倍率は、500倍とし、サンプルの構造ばらつきを把握するため、5視野観察を行う。SEM観察像は、市販の2次元画像解析ソフト「Win Roof」にて解析し、気孔を数値化する。5視野の値を平均して、これを気孔率とする。
実施形態において、第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D1は、例えば、一定である。距離D1は、換言すれば、第1主面10aから第1電極層11の上面(第1面11a)までの距離である。ここで、「一定」とは、例えば第1面11aのうねりなどを含むことができる。例えば、静電チャック100の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等で低倍率(例えば100倍程度)で観察したときに、距離D1が概ね一定であればよい。例えば、第1電極層11の中央部11cにおける距離D1cと第1電極層11の端部11dにおける距離D1dとの差は0±150μmである。距離D1(距離D1c及び距離D1d)は、例えば、300μm程度である。第1面11aは、例えば、第1主面10aに対して、平行な面である。
図2に表したように、第1電極層11の端部(end portion)11dは、第1電極層11のX-Y平面における縁部(edge)11eを含む領域である。第1電極層11の縁部11eとは、第1面11aに位置し、Z軸方向からみたときの第1電極層11とセラミック誘電体基板10との界面を指す。第1電極層11の中央部11cは、X-Y平面において、2つの端部11dの間に位置する領域である。第1電極層11の中央部11c及び端部11dについては、後述する。
このように、第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D1を一定とすることで、上部電極(図7の上部電極510)と第1電極層11(下部電極)との間の距離を一定とすることができる。これにより、例えば、第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D1が一定でない場合などに比べて、プラズマ密度の面内均一性を向上させることができる。例えば、第1電極層11の断面形状が上に凸である場合など、端部11dにおける第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離が、中央部11cにおける第1面11aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離とは異なる場合に比べて、プラズマ密度の面内均一性を向上させることができる。
第1電極層11の端部11dにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2dは、例えば、第1電極層11の中央部11cにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2cと実質的に同じである。距離D2cは、換言すれば、中央部11cにおける第1電極層11の厚さである。距離D2dは、換言すれば、端部11dにおける第1電極層11の厚さである。つまり、端部11dにおける第1電極層11の厚さは、中央部11cにおける第1電極層11の厚さと実質的に同じである。第1電極層11の厚さは、例えば、一定である。
第1電極層11の断面形状は、これに限定されない。図3(a)~図3(c)に表したように、第1電極層11の断面形状は、好ましくは、下に凸である。より具体的には、第1電極層11の端部11dにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2dは、第1電極層11の中央部11cにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2cよりも小さい。つまり、これらの例では、端部11dにおける第1電極層11の厚さは、中央部11cにおける第1電極層11の厚さよりも小さい。例えば、第1電極層11の厚さは、中央部11cから端部11dに向かうにつれて小さくなる。第1電極層11は、第2面11b側に凸の形状である。
距離D2cは、例えば、1μm以上500μm以下、好ましくは、10μm以上100μm以下、より好ましくは、20μm以上70μm以下である。中央部11cにおける第1電極層11の厚さ(距離D2c)をこの範囲とすることで、表皮効果の影響を低減し、プラズマ密度の面内均一性をさらに高めることができる。距離D2cは、例えば、第1電極層11の断面SEM(Scanning Electron Microscope)画像における中央部11cにおける3点の厚さの平均値として求めることができる。本願明細書においては、この平均値を距離D2cと定義する。
第1電極層11には、第2面11b側から高周波電流が給電される。通常、AC電流が電極層を流れるときには、電流密度が電極層の表面で高く、表面から離れると低くなる表皮効果が生じる。また、流れるAC電流が高周波であるほど、電流の表面集中は顕著となる。つまり、第2面11b側から第1電極層11に流れ込む高周波のAC電流は、第1電極層11の第2面11bを伝って第1面11aに流れ込むこととなる。
実施形態においては、第1電極層11の端部11dにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2dを、第1電極層11の中央部11cにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2cよりも小さくすることで、給電される第2面11bから第1面11aまでの給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)をより高めることができる。
また、実施形態によれば、第1電極層11の端部11dにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2dを、第1電極層11の中央部11cにおける第2面11bと第1面11aとの間のZ軸方向に沿う距離D2cよりも小さくする。例えば、第1電極層11を第2面11b側(すなわち、ベースプレート50側)に凸の形状とすることで、第1電極層11の冷却機能を有するベースプレート50側の面である第2面11bの表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、第1電極層11をより効果的に放熱させることができ、プラズマ密度の面内均一性をより高めることができる。
なお、図3(a)の例では、中央部11cにおいて、第1電極層11の厚さは、略一定である。換言すれば、中央部11cにおいて、第2面11bは、第1面11aに対して、略平行である。一方、端部11dにおいて、第1電極層11の厚さは、中央部11c側から縁部11eに向かって小さくなる。換言すれば、端部11dにおいて、第2面11bは、中央部11c側から縁部11eに向かって上方に傾斜する傾斜面を有する。この例では、傾斜面は、平面状である。傾斜面は、図3(b)に表したように、曲面状であってもよい。
また、例えば、図3(c)に表したように、第2面11bは、第2面11bのX-Y平面における中心から縁部11eに向かって上方に傾斜する傾斜面を有していてもよい。換言すれば、中央部11cにおいて、第1電極層11の厚さは、一定でなくてもよい。換言すれば、中央部11cにおいて、第2面11bは、第1面11aに対して、平行でなくてもよい。また、このとき、傾斜面は、図3(c)に表したように、曲面状であってもよい。
図4(a)、図4(b)、図5(a)、図5(b)、図6(a)、及び図6(b)は、実施形態に係る静電チャックの一部を模式的に表す平面図である。
これらの図は、静電チャック100において、セラミック誘電体基板10のうち第1電極層11(第2面11b)よりもベースプレート50側(下側)に位置する部分、及び、ベースプレート50などを省略した状態で、第2面11b側(下側)から第1電極層11を見た平面図である。
図4(a)、図4(b)、図5(a)、図5(b)、図6(a)、及び図6(b)に表したように、静電チャック100には、例えば、X-Y平面に沿って拡がる少なくとも1つの第1電極層11が設けられる。第1電極層11の数は、例えば、図4(a)及び図4(b)に表したように1つでもよいし、図5(a)及び図5(b)に表したように2つでもよいし、図6(a)及び図6(b)に表したように3つ以上(この例では、4つ)でもよい。複数の第1電極層11が設けられる場合、第1電極層11のそれぞれは、例えば、同一平面上に位置してもよいし、Z軸方向において異なる平面上に位置してもよい。
図4(a)及び図4(b)に示した例では、Z軸方向に沿って見たときに円形である第1電極層11が、例えば、第1電極層11の中心とセラミック誘電体基板10の中心とが重なるように配置されている。第1電極層11の縁部11eは、例えば、セラミック誘電体基板10の縁部に対して同心円状である。この例において、第1電極層11の端部11dは、セラミック誘電体基板10の外周側に環状に配置される。
図5(a)及び図5(b)に示した例では、例えば、内側の第1電極層11Aと外側の第1電極層11Bとが同心円状に設けられている。内側の第1電極層11Aは、例えば、Z軸方向に沿って見たときに円形である。外側の第1電極層11Bは、例えば、Z軸方向に沿って見たときに内側の第1電極層11Aを囲む円環形である。内側の第1電極層11A及び外側の第1電極層11Bのそれぞれは、例えば、内側の第1電極層11Aの中心とセラミック誘電体基板10の中心とが重なる同心円状に配置される。この例において、外側の第1電極層11Bの端部11dは、セラミック誘電体基板10の中心側、及び、セラミック誘電体基板10の外周側に、それぞれ環状に配置される。また、内側の第1電極層11Aの端部11dは、セラミック誘電体基板の外周側に環状に配置される。なお、第1電極層11の数は、2つに限定されず、3つ以上の第1電極層11が、同心円状に配置されてもよい。
図6(a)及び図6(b)に示した例では、Z軸方向に沿って見たときに円形である複数の第1電極層11が、それぞれ、例えば、セラミック誘電体基板10の中心に対して、点対称となる位置に配置されている。なお、第1電極層11の1つが、この第1電極層11の中心とセラミック誘電体基板10の中心とが重なるように配置されてもよい。換言すれば、第1電極層11の1つが、セラミック誘電体基板10の中央に配置されてもよい。この例において、各第1電極層11の端部11dは、各第1電極層11の外周側に環状に配置される。
また、図4(b)、図5(b)、及び図6(b)に表したように、第1電極層11には、Z軸方向において第1電極層11を貫通する孔11pが設けられてもよい。孔11pが設けられる場合、孔11pの外周付近にも端部11dが配置される。
実施形態においては、これら端部11dのいずれの箇所においても、端部11dにおける第1面11aと第2面11bとの間の距離D2dと、中央部11cにおける第1面11aと第2面11bとの間の距離D2cとの関係がD2d<D2cを満たしていてもよい。一方で、本発明の効果を奏す範囲において、D2d<D2cを満たさない箇所を含むことを排除しない。換言すれば、実施形態においては、上記のような端部11dの少なくとも一部において、D2d<D2cが満たされていることが好ましい。例えば、端部11dのうち、D2d<D2cを満たす箇所が多いと、RF応答性をさらに高めることができる。
上述のように、第1電極層11の中央部11cは、X-Y平面において、2つの端部11dの間に位置する領域である。例えば、第1電極層11において、端部11d以外のすべての領域を中央部11cとみなしてもよい。換言すれば、第1電極層11において、例えば、縁部11eの近傍を端部11dとし、それ以外を中央部11cとみなすことができる。
以下、第1電極層11が内部に設けられたセラミック誘電体基板10の作製方法について説明する。
第1電極層11が内部に設けられたセラミック誘電体基板10は、例えば、第1主面10a側を下にした状態で各層を積層して、積層体を焼結することで作製することができる。より具体的には、例えば、第1主面10aを含むセラミックス層となる第1層の上に、第1電極層11を積層させる。第1電極層11の上に、第2主面10bを含むセラミックス層となる第2層を積層させる。そして、この積層体を焼結させる。
第1電極層11は、例えば、スクリーン印刷、ペーストの塗布(スピンコート、コーター、インクジェット、ディスペンサーなど)及び蒸着などにより形成される。第1主面10aを下にした状態で、複数回に分けて各層を積層させて第1電極層11を形成することができる。このとき、例えば積層条件の調整などにより、第1~第3領域111~113の気孔率を調整し、第1領域111の気孔率を第3領域113の気孔率よりも低くしたり、第2領域112の気孔率を第3領域113の気孔率よりも低くしたりすることができる。
図7は、実施形態に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
図7に表したように、ウェーハ処理装置500は、処理容器501と、高周波電源504と、吸着用電源505と、上部電極510と、静電チャック100と、を備えている。処理容器501の天井には、処理ガスを内部に導入するための処理ガス導入口502、及び、上部電極510が設けられている。処理容器501の底板には、内部を減圧排気するための排気口503が設けられている。静電チャック100は、処理容器501の内部において、上部電極510の下に配置されている。静電チャック100の第1電極層11及び上部電極510は、高周波電源504と接続されている。また、この例では、静電チャック100の第1電極層11は、吸着用電源505と接続されている。
第1電極層11と上部電極510とは、互いに所定の間隔を隔てて略平行に設けられている。より具体的には、第1電極層11の第1面11aは、上部電極510の下面510aに対して略平行である。また、セラミック誘電体基板10の第1主面10aは、上部電極510の下面510aに対して略平行である。対象物Wは、第1電極層11と上部電極510との間に位置する第1主面10aに載置される。
高周波電源504から第1電極層11及び上部電極510に電圧(高周波電圧)が印加されると、高周波放電が起こり処理容器501内に導入された処理ガスがプラズマにより励起、活性化されて、対象物Wが処理される。
吸着用電源505から第1電極層11に電圧(吸着用電圧)が印加されると、第1電極層11の第1主面10a側に電荷が発生し、静電力によって対象物Wが静電チャック100に吸着保持される。
図8は、実施形態に係る別の静電チャックを模式的に表す断面図である。
図9は、実施形態に係る別の静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図9は、図8に示す領域R2を拡大して示す。
図8及び図9に表したように、静電チャック100Aにおいて、セラミック誘電体基板10の内部には、第1電極層11に加えて、第2電極層12が設けられる。第2電極層12は、Z軸方向において、第1主面10aと第1電極層11との間に位置する。換言すれば、第1電極層11は、Z軸方向において、第2電極層12と第2主面10bとの間に位置する。第2電極層12は、例えば、セラミック誘電体基板10に一体焼結される。
第2電極層12の形状は、セラミック誘電体基板10の第1主面10a及び第2主面10bに沿った薄膜状である。第2電極層12は、例えば、金属製である。第2電極層12は、例えば、Ag、Pd、Pt、Mo、及びWの少なくともいずれかを含む。第2電極層12は、例えば、金属とセラミックスとを含んでいてもよい。
第1電極層11が金属とセラミックスとを含み、第2電極層12が金属とセラミックスとを含む場合、第1電極層11に含まれる金属の体積とセラミックスの体積との合計に対する金属の体積の割合は、第2電極層12に含まれる金属の体積とセラミックスの体積との合計に対する金属の体積の割合よりも大きいことが好ましい。
このように、第1電極層11に含まれる金属の割合を第2電極層12に含まれる金属の割合よりも大きくすることで、例えば、高周波電源から電圧が印加される第1電極層11の電気抵抗をより小さくすることができ、プラズマ密度の面内均一性及びRF応答性を高めることができる。
実施形態において、金属の体積とセラミックスの体積との合計に対する金属の体積の割合は、SEM-EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)により第1電極層11及び第2電極層12の断面を観察し、画像解析により求めることができる。より具体的には、第1電極層11及び第2電極層12の断面SEM-EDX画像を取得し、EDX成分分析によってセラミックスと金属とに分類し、セラミックスと金属との面積比率を画像解析により求めることで、金属の体積とセラミックスの体積との合計に対する金属の体積の割合を算出することができる。
第1電極層11が金属とセラミックスとを含み、第2電極層12が金属とセラミックスとを含む場合、第1電極層11に含まれる金属の体積は、第2電極層12に含まれる金属の体積よりも大きいことも好ましい。
このように、第1電極層11に含まれる金属の体積を第2電極層12に含まれる金属の体積よりも大きくすることで、例えば、高周波電源から電圧が印加される第1電極層11の電気抵抗をより小さくすることができ、プラズマ密度の面内均一性及びRF応答性を高めることができる。
第2電極層12は、吸着用電源(図11の吸着用電源505)と接続される。静電チャック100Aは、吸着用電源から第2電極層12に電圧(吸着用電圧)を印加することによって、第2電極層12の第1主面10a側に電荷を発生させ、静電力によって対象物Wを吸着保持する。換言すれば、第2電極層12は、対象物Wを吸着させるための吸着電極である。吸着用電源は、直流(DC)電流またはAC電流を第2電極層12に供給する。このように、実施形態によれば、プラズマを発生させるための下部電極である第1電極層11とは別に、対象物を吸着させるための吸着電極である第2電極層12を設けることができる。
この例では、第2電極層12には、セラミック誘電体基板10の第2主面10b側に延びる接続部20が設けられている。接続部20は、例えば、第2電極層12と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)である。接続部20は、ロウ付けなどの適切な方法によって接続された金属端子でもよい。
図9に表したように、第2電極層12は、第1主面10a側の第3面12aと、第3面12aとは反対側の第4面12bと、を有する。第4面12bは、換言すれば、第1電極層11と対向する面である。第4面12bは、換言すれば、第1電極層11の第1面11aと対向する面である。
第3面12aは、第1主面10aに対して、平行な面であってもよい。第3面12aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D3は、例えば一定である。距離D3は、換言すれば、第1主面10aから第2電極層12の上面(第3面12a)までの距離である。
第4面12bは、第3面12aに対して、平行な面であることも好ましい。第4面12bは、第1主面10aに対して、平行な面であることも好ましい。より具体的には、第4面12bと第3面12aとの間のZ軸方向に沿う距離D4は、一定であることも好ましい。距離D4は、換言すれば、第2電極層12の厚さである。第2電極層12の厚さは、例えば、第2電極層12の断面SEM画像における3点の厚さの平均値として求めることができる。
第1電極層11の厚さは、例えば、第2電極層12の厚さよりも大きい。第1電極層11の厚さを、第2電極層12の厚さよりも大きくすることで、表皮効果の影響を低減し、プラズマ密度の面内均一性をさらに高めることができる。
第1電極層11と第2電極層12との間のZ軸方向に沿う距離(すなわち、第1面11aと第4面12bとの間のZ軸方向に沿う距離)D5は、例えば、第1主面10aと第2電極層12との間のZ軸方向に沿う距離(すなわち、第3面12aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離)D3よりも大きい。
このように、距離D5を距離D3よりも大きくすることで、高周波電源から電圧が印加された場合でも第1電極層11と第2電極層12との間の短絡や絶縁破壊などの不具合の発生をより効果的に抑制することができる。
図10(a)及び図10(b)は、実施形態に係る別の静電チャックの一部を模式的に表す平面図である。
これらの図は、静電チャック100Aにおいて、セラミック誘電体基板10のうち第2電極層12(第3面12a)よりも第1主面10a側(上側)に位置する部分を省略した状態で、第3面12a側(上側)から第2電極層12を見た平面図である。
図10(a)及び図10(b)に表したように、第2電極層12は、単極型でも双極型でもよい。第2電極層12が単極型の場合、図10(a)に表したように、X-Y平面に沿って拡がる1つの第2電極層12が設けられる。第2電極層12は、例えば、Z軸方向に沿って見たときに略円形である。一方、第2電極層12が双極型の場合、図10(b)に表したように、X-Y平面に沿って拡がり、同一平面状に位置する2つの第2電極層12が設けられる。第2電極層12は、それぞれ、例えば、Z軸方向に沿って見たときに略半円形である。第2電極層12は、例えば、X-Y平面に沿って拡がるパターンを有していてもよい。
Z軸方向において、第1電極層11の一部は、例えば、第2電極層12と重ならない。また、第1電極層11の第1面11a(第1主面10a側の面)の面積の合計は、例えば、第2電極層12の第3面12a(第1主面10a側の面)の面積の合計よりも大きい。換言すれば、Z軸方向に沿って見たときに、第1電極層11の面積の合計は、第2電極層12の面積の合計よりも大きい。これにより、プラズマ密度の面内均一性をさらに高めることができる。
図11は、実施形態に係る別の静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
図11に表したように、ウェーハ処理装置500Aは、静電チャック100を図8に表した静電チャック100Aに変更する以外は、図7に表したウェーハ処理装置500と実質的に同じである。
ウェーハ処理装置500Aにおいて、吸着用電源505は、静電チャック100Aの第1電極層11ではなく、静電チャック100Aの第2電極層12と接続されている。吸着用電源505から第2電極層12に電圧(吸着用電圧)が印加されると、第2電極層12の第1主面10a側に電荷が発生し、静電力によって対象物Wが静電チャック100Aに吸着保持される。
図12(a)~図12(d)は、実施形態に係る第1電極層の端部を拡大して模式的に表す断面図である。
図12(a)~図12(d)に表したように、断面視における第1電極層11の端部11dのX軸方向の長さである幅tは、例えば、第1電極層11の中央部11cにおける厚さD2cよりも大きい(厚さD2c<幅t)。端部11dの幅tは、換言すれば、第2面11bの傾斜面の幅である。つまり、幅tは、第2面11bの傾斜面の下端P(傾斜が終わるところ)と縁部11eとの間のX軸方向の長さである。このように、端部11dの幅tを第1電極層11の中央部11cにおける厚さD2cよりも大きくすることで、給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)をより高めることができる。
傾斜面の下端Pは、第1電極層11を含むように切断したサンプルの断面画像から求めることができる。実施形態においては、例えば、サンプルのうち少なくとも1か所が上記の関係(厚さD2c<幅t)を満たす。実施形態においては、サンプルのうち複数個所が上記の関係(厚さD2c<幅t)を満たすことがより好ましい。
また、第2面11bの傾斜面の角度θは、例えば、10度以上80度以下、好ましくは20度以上60度以下である。角度θは、縁部11eと第2面11bの傾斜面の下端P(傾斜が終わるところ)とを結ぶ直線を線Lとしたときに、第1面11aと線Lとのなす角度(劣角)で表すことができる。角度θを小さくすることで、給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)をより高めることができる。
なお、これらの図では下端Pと縁部11eの間が曲線状の断面形状を示しているが、下端Pと縁部11eの間は、これに限らず、直線状の断面形状でも良い。直線状とすることで、例えば給電距離をより短くすることができる。
以上、説明したように、実施形態によれば、誘電体層に内蔵されたプラズマ発生用である下部電極からの放熱性を高めることができる静電チャックを提供することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、静電チャックが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。