実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成の一例を示す構成図である。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150(2次電子画像取得機構)、及び制御系回路160を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)及び検査室103を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、主偏向器208、副偏向器209、ビームセパレーター214、偏向器218、電磁レンズ224、電磁レンズ226、及びマルチ検出器222が配置されている。
検査室103内には、少なくともXYZ方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、フレーム設定回路129、不良ビーム検出回路130、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、及びメモリ118に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。DACアンプ148は、偏向器218に接続される。
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。さらに、駆動機構142では、例えば、ピエゾ素子等を用いて、Z方向(高さ方向)にステージ105を移動可能に制御している。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビームの光軸(電子軌道中心軸)に直交する面に対して、X方向、Y方向、θ方向が設定される。
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ207(対物レンズ)、電磁レンズ224、電磁レンズ226、及びビームセパレーター214は、レンズ制御回路124により制御される。また、一括ブランキング偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。副偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。主偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器218は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御される。
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメント(カソード)と引出電極(アノード)間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、別の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは3以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、理想的には共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、理想的には同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。
次に、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームのクロスオーバー位置に配置されたビームセパレーター214を通過して電磁レンズ207(対物レンズ)に進む。そして、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101にフォーカス(合焦)する。対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされた(合焦された)マルチ1次電子ビーム20は、主偏向器208及び副偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。なお、一括ブランキング偏向器212によって、マルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板213の中心の穴から位置が外れ、制限アパーチャ基板213によって遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチ1次電子ビーム20は、図1に示すように制限アパーチャ基板213の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板213は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチ1次電子ビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板213を通過したビーム群により、検査用(画像取得用)のマルチ1次電子ビーム20が形成される。
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、ビームセパレーター214に進む。
ここで、ビームセパレーター2140はマルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(電子軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離する。
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって、さらに曲げられ、電磁レンズ224,226によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子が投影されても良い。マルチ検出器222は、例えば図示しない2次元センサを有する。そして、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子が2次元センサのそれぞれ対応する領域に衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。言い換えれば、マルチ検出器222には、マルチ1次電子ビーム20の1次電子ビーム10i(iは、インデックスを示す。23×23本のマルチ1次電子ビーム20であれば、i=1~529)毎に、検出センサが配置される。そして、各1次電子ビーム10iの照射によって放出された対応する2次電子ビームを検出する。よって、マルチ検出器222の複数の検出センサの各検出センサは、それぞれ担当する1次電子ビーム10iの照射に起因する画像用の2次電子ビームの強度信号を検出することになる。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
図3は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。図3において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ、スキャナ等)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数のフレーム領域33に分割される。対象となるフレーム領域33へのビームの移動は、主偏向器208によるマルチビーム20全体での一括偏向によって行われる。
図4は、実施の形態1におけるマルチビームのスキャン動作を説明するための図である。図4の例では、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。図3及び図4の例では、照射領域34がフレーム領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34がフレーム領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、副偏向器209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接するフレーム領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び主偏向器208によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10iの照射によって得られるサブ照射領域29の画像(部分2次電子画像)を組み合わせることで、フレーム領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。
なお、例えばx方向に並ぶ複数のチップ332を同じグループとして、グループ毎に例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割されるようにしても好適である。そして、ストライプ領域32間の移動は、チップ332毎に限るものではなく、グループ毎に行っても好適である。
ここで、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように主偏向器208によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。このため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、偏向器218は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。
ここで、上述したように、マルチ1次電子ビーム20を用いた装置では、例えば529本という多数の1次電子ビーム10を用いるため、確率的に一部の1次電子ビーム10に不良が発生する頻度が高くなる。不良ビームが生じると、被検査画像が得られなくなる、或いは得られたとしても画像精度が劣化してしまい十分な検査が困難となる。例えば、常時ビームOFFとなる不良ビームが生じると、被検査画像が得られなくなる。例えば、ビームONはできても既定のビーム電流量が取れない不良ビームが生じると、必要な2次電子の放出が得られず、画像精度が劣化してしまう。そこで、実施の形態1では、まずは、不良ビームの有無を検出し、マルチ1次電子ビーム20の中に不良ビームが存在する場合でも、所望の精度が得られるビーム照射が可能な構成を説明する。
図5は、実施の形態1におけるフレーム設定回路129内の構成の一例を示す構成図である。図5において、フレーム設定回路129内には、不良ビーム位置判定部60、フレーム1設定部62、及びフレーム2設定部64が配置される。不良ビーム位置判定部60、フレーム1設定部62、及びフレーム2設定部64といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。不良ビーム位置判定部60、フレーム1設定部62、及びフレーム2設定部64内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
図6は、実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図6において、実施の形態1における検査方法は、不良ビーム検出工程(S102)と、フレーム1設定工程(S110)と、フレーム2設定工程(S112)と、スキャン1工程(S202)と、スキャン2工程(S204)と、位置合わせ工程(S230)と、比較工程(S232)と、いう一連の工程を実施する。
不良ビーム検出工程(S102)として、まず、画像取得機構150は、m行×n列(m,nは3以上の整数)のマルチ1次電子ビーム20を用いて、評価パターンが形成された評価基板をスキャンして、各1次電子ビーム10iが個別に走査するサブ照射領域29毎の評価パターン画像を取得する。評価パターンとして、例えば、同じ図形パターンが所定のピッチで配列されたパターンを用いると好適である。例えば、マルチ1次電子ビーム20のビームピッチで配列されたパターンを用いると好適である。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、フレーム設定回路129に転送される。
次に、不良ビーム検出回路130は、サブ照射領域29毎の評価パターン画像を比較して、不良ビームを検出する。具体的には、サブ照射領域29毎の評価パターン画像は、同じパターンの画像であるはずなのに、画像が他とは不一致になるサブ照射領域29を検出し、この検出されたサブ照射領域29を照射した1次電子ビーム10iを検出し、この1次電子ビーム10iの位置を判定すればよい。不良ビームは、他の正常な1次電子ビーム10に比べて照射される電流量が異なる。例えば常時ビームOFFであれば、電流量がゼロになり、原則2次電子が検出されないことになる。電流量が異なれば、得られる評価パターン画像も大きく異なる。よって、同じパターンの画像であるはずのサブ照射領域29毎の評価パターン画像同士を比較することで、不良ビームを検出できる。検出された不良ビームの情報は、フレーム設定回路129に出力される。フレーム設定回路129内において、不良ビーム位置判定部60は、検出された不良ビームの位置を判定する。これにより、以下、フレーム領域を設定する上で、不良ビームの位置を特定できる。
図7は、実施の形態1におけるマルチ1次電子ビームの照射領域と不良ビームによるサブ照射領域の一例を示す図である。図7の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。また、図7の例では、例えば、中心ビームが不良ビーム11であった場合を示している。かかる場合、正常な各1次電子ビーム10で走査されるサブ照射領域29の画像に対して、不良ビーム11で走査されたサブ照射領域2911の画像は、精度が劣化した画像として得られることになる。
フレーム1設定工程(S110)として、フレーム1設定部62(第1の領域設定部の一例)は、m行×n列(m,nは3以上の整数)のマルチ1次電子ビーム20のうち、4隅以外の位置に1つの不良ビームが存在する場合に、マルチ1次電子ビーム20のうち、端部の1行1列のビーム群を除く、(m-1)行×(n-1)列の残りのビーム群で照射可能な照射領域のサイズで基板101(試料)のチップ332(ビーム照射対象領域)が仮想分割される複数のフレーム領域33-1(第1のフレーム領域)を設定する。ここでは、残りのビーム群の中に不良ビーム11が含まれるように1行1列のビーム群を除く。
図8は、実施の形態1における1回目のスキャンに用いるフレーム領域サイズの一例を示す図である。図8の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。端部の1行1列のビーム群を除く4×4列のマルチ1次電子ビーム20が照射する4×4列のサブ照射領域29のサイズをフレーム領域33-1のサイズに設定する。図8の例では、例えば、最上行と右端列のサブ照射領域29を除いた場合を示している。なお、図4に示したようにサブ照射領域29の集合が照射領域34となる。
図9は、実施の形態1における1回目のスキャンに用いるフレーム領域と2回目のスキャンに用いるフレーム領域との一例を示す図である。例えば左下隅を基準点としてチップ332領域を4×4列のマルチ1次電子ビーム20が照射する4×4列のサブ照射領域29で構成される複数のフレーム領域33-1に分割する。図9に示すように、複数のフレーム領域33-1は互いに他のフレーム領域33-1に接するように設定される。
フレーム2設定工程(S112)として、フレーム2設定部64(第2の領域設定部の一例)は、マルチ1次電子ビーム20のうち、端部の1行1列のビーム群を除いた、少なくとも残りのビーム群のうちの正常ビーム群を用いて、複数のフレーム領域33-1のフレーム領域33-1毎に1回目のマルチ1次電子ビーム20の照射処理を実施する場合における不良ビーム11の照射位置に相当するサブ照射領域2911を4隅とする複数のフレーム領域33-2(第2のフレーム領域)を設定する。端部の1行1列のビーム群を除いた、残りのビーム群でフレーム領域33-1毎にビーム照射を行う場合、図9に示すように、m行×n列のマルチ1次電子ビーム20の4隅のビームの照射位置が全ての不良ビーム11の照射位置に重なる様にフレーム領域33-2を設定することができる。さらに、図9に示すように、複数のフレーム領域33-2は互いに接することなく設定される。図9の例では、複数のフレーム領域33-2は、例えば3つのサブ照射領域29の隙間を挟んで飛び飛びに設定されていることになる。
スキャン1工程(S202)として、画像取得機構150(電子ビーム照射機構の一例)は、端部の1行1列のビーム群を除いた、少なくとも残りのビーム群のうちの正常ビーム群を用いて、基板101の複数のフレーム領域33-1に対してフレーム領域33-1毎に1回目のマルチ1次電子ビーム20の照射処理を実施する。具体的には、以下のように動作する。画像取得機構150は、ステージ105を速度V1で等速移動させながら、複数の図形パターンが形成された基板101にマルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300を検出して、複数の図形パターンの2次電子画像を取得する。上述したように、マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子が投影されても良い。ここで、検査装置100では、基板101にパターンを形成する(描画する)訳ではないので、基板101にダメージを加えたり、他のサブ照射領域29に干渉する恐れがない限り、余分なビームが基板101に照射されても構わない。検査画像に使用する2次電子ビームの検出強度データを取捨選択できればよい。よって、特に、基板101に照射するマルチ1次電子ビーム20の数を制限する必要は無い。図9の例では、不良ビーム11を含む5×5列のマルチ1次電子ビーム20をそのまま使用してスキャンすればよい。但し、画像取得機構150は、フレーム領域33-1毎に、端部の1行1列のビーム群を除いた残りのビーム群が当該フレーム領域33-1をスキャンするように残りのビーム群の照射領域の位置を当該フレーム領域33-1に合わせる。そして、端部の1行1列のビーム群を除いた残りのビーム群の照射に起因したフレーム領域33-1毎の画像を取得する。
画像の取得は、上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出される反射電子を含むマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222で検出する。マルチ検出器222によって検出された2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、1回目のスキャン処理において、各フレーム領域33-1上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
スキャン2工程(S204)として、画像取得機構150は、m行×n列のマルチ電子ビームの少なくとも4隅のビーム群を用いて、基板101の複数のフレーム領域33-2に対してフレーム領域33-2毎に2回目のマルチ1次電子ビームの照射処理を実施する。具体的には、以下のように動作する。画像取得機構150は、ステージ105を速度V2で等速移動させながら、複数の図形パターンが形成された基板101にマルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300を検出して、複数の図形パターンの2次電子画像を取得する。上述したように、マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子が投影されても良い。
ここで、1回目のスキャン1工程(S202)では、不良ビーム11の照射位置に相当するサブ照射領域2911の正常な画像が得られていない。このため、2回目のスキャン2工程(S204)では、少なくとも不良ビーム11の照射位置に相当するサブ照射領域2911の正常な画像を取得する必要がある。よって、m行×n列のマルチ電子ビームの4隅のビーム群のみで不良ビーム11の照射位置に相当するサブ照射領域2911のスキャンを行えば足りる。但し、上述したように、検査装置100では、基板101にパターンを形成する(描画する)訳ではないので、基板101にダメージを加えたり、他のサブ照射領域29に干渉する恐れがない限り、余分なビームが基板101に照射されても構わない。検査画像に使用する2次電子ビームの検出強度データを取捨選択できればよい。よって、特に、基板101に照射するマルチ1次電子ビーム20の数を制限する必要は無い。図9の例では、不良ビーム11を含む5×5列のマルチ1次電子ビーム20をそのまま使用してスキャンすればよい。但し、画像取得機構150は、フレーム領域33-2毎に、m行×n列のマルチ1次電子ビーム20が当該フレーム領域33-2をスキャンするようにマルチ1次電子ビーム20の照射領域34の位置を当該フレーム領域33-2に合わせる。そして、m行×n列のマルチ電子ビームの照射に起因したフレーム領域33-2毎の画像を取得する。マルチ1次電子ビーム20の4隅のビームは不良ビーム11ではなく正常ビームなので、1回目のスキャン1工程(S202)における不良ビーム11の照射位置に相当するサブ照射領域2911は、2回目のスキャン2工程(S204)において、正常ビームでスキャンできる。
さらに、複数のフレーム領域33-2は、図9に示すように、飛び飛びに設定されるので、スキャンする領域全体の面積が複数のフレーム領域33-1に対して少なくて済む。図9の例では、1つのフレーム領域33-2の面積を4つのフレーム領域33-1の面積で割った割合だけスキャンする領域全体の面積が少なくなる。よって、少なくなった分、ステージ速度を速くできる。よって、ステージ105の駆動機構142は、1回目のスキャン1動作(1回目のマルチ電子ビームの照射処理)の場合よりも2回目のスキャン2動作(2回目のマルチ電子ビームの照射処理)の場合におけるステージ105の移動速度を速くする。言い換えれば、1回目のスキャン1でのステージ105の速度V1よりも2回目のスキャン2でのステージ105の速度V2を速くできる。よって、2回目のスキャン2では、1回目のスキャン1よりもスキャン時間(画像取得時間)を大幅に短縮できる。
また、ストライプ領域32も飛び飛びに設定されるので、ストライプ領域32の総数が削減され、1回目のスキャン1よりもスキャン時間(画像取得時間)が大幅に短縮される。
画像の取得は、上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出される反射電子を含むマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222で検出する。マルチ検出器222によって検出された2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、2回目のスキャン処理において、各フレーム領域33-2上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
なお、上述した例では、フレーム領域33-1とフレーム領域33-2との設定をした後に、1回目のスキャン1工程(S202)と2回目のスキャン2工程(S204)とを実施する場合を説明したが、これに限るものではない。フレーム領域33-1を設定し、1回目のスキャン1工程(S202)を実施した後、或いは1回目のスキャン1工程(S202)の実施と並行してフレーム領域33-2を設定し、この後、2回目のスキャン2工程(S202)を実施しても良い。
また、図6のスキャン1工程(S202)とスキャン2工程(S204)の順番は逆にしても良い。
図10は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。図10において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置52,56、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
比較回路108(検査部)は、測定された各フレーム領域33の複数のサブ照射領域29の測定画像(部分2次電子画像)の検査を行う。ここでは、ダイ-ダイ検査を行う場合について主に説明する。
実施の形態1では、1つの1次電子ビーム10iのスキャン動作によって取得されるサブ照射領域29をさらに複数のマスクダイ領域に分割して、マスクダイ領域を被検査画像の単位領域として使用する。なお、各マスクダイ領域は、画像の抜けが無いように、互いにマージン領域が重なり合うように構成されると好適である。
比較回路108内では、転送されたパターン画像データ(2次電子画像データ)が、マスクダイ領域毎のマスクダイ画像(補正被検査画像)として記憶装置56に一時的に格納される。なお、2回目のスキャン2工程(S204)によって、同じサブ照射領域29の測定画像を重複して得るが、以下の検査では、この一方について検査すればよい(但し、不良ビーム11の照射位置に相当するサブ照射領域2911の測定画像を除く)。もちろん、両方検査しても構わない。
位置合わせ工程(S230)として、位置合わせ部57は、ダイ1のマスクダイ画像(補正被検査画像)と、同じパターンが形成されたダイ2のマスクダイ画像(補正被検査画像)とを読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。画素サイズとして、例えば、マルチ1次電子ビーム20の各ビームサイズと同程度のサイズの領域に設定されると好適である。よって、各ビームによってスキャンされるサブ照射領域29は、N×N画素によって構成される。例えば、1024×1024画素で構成される。
比較工程(S232)として、比較部58は、ダイ1のマスクダイ画像(補正被検査画像)と、ダイ2のマスクダイ画像(補正被検査画像)とを比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される。
なお、上述した例では、ダイ-ダイ検査を行う場合を説明したが、これに限るものではない。ダイ-データベース検査を行う場合であっても構わない。ダイ-データベース検査を行う場合には、参照画像データが、記憶装置52に一時的に格納される。参照画像は、参照画像作成回路112により作成される。
参照画像作成回路112(参照画像作成部)は、基板101に形成された複数の図形パターンの元になる設計データに基づいて、マスクダイ画像に対応する参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、この図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、この図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとなる。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、演算された係数を適用したフィルタ関数Fを使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の代表ビーム(例えば中心ビーム)の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力される。
そして、位置合わせ工程(S230)として、位置合わせ部57は、被検査画像となるマスクダイ画像と、当該マスクダイ画像に対応する参照画像とを読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。画素サイズとして、例えば、マルチ1次電子ビーム20の各ビームサイズと同程度のサイズの領域に設定されると好適である。よって、各ビームによってスキャンされるサブ照射領域29は、N×N画素によって構成される。例えば、1024×1024画素で構成される。
比較工程(S232)として、比較部58は、マスクダイ画像(2次電子画像)と参照画像とを比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される。
以上のように、実施の形態1によれば、マルチ電子ビームの中に不良ビームが存在する場合でも、所望の精度が得られるビーム照射ができる。さらに、実施の形態1によれば、不良ビームが照射されるはずの領域の画像を得るためにスキャン動作を2回行う場合であっても、スキャン時間を短縮できる。
実施の形態2.
実施の形態1では、マルチ電子ビーム(マルチ1次電子ビーム)のうち、4隅ではない位置に不良ビームが1つ存在する場合の照射手法の構成について説明した。実施の形態2では、複数の不良ビームが存在する場合の照射手法の構成について説明する。実施の形態2における検査装置100の構成は、図1と同様で構わない。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
図11は、実施の形態2におけるフレーム設定回路内の構成の一例を示す構成図である。図11において、フレーム設定回路129内に、図5のフレーム1設定部62及びフレーム2設定部64の代わりに、フレーム1設定部61、ベクトル演算部63、ベクトル集合演算部65、シフトベクトル決定部66、及びフレーム2設定部67が配置された点以外は、図5と同様である。不良ビーム位置判定部60、フレーム1設定部61、ベクトル演算部63、ベクトル集合演算部65、シフトベクトル決定部66、及びフレーム2設定部67といった各「~部」は、処理回路を含み、この処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。不良ビーム位置判定部60、フレーム1設定部61、ベクトル演算部63、ベクトル集合演算部65、シフトベクトル決定部66、及びフレーム2設定部67内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
図12は、実施の形態2における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図12において、実施の形態1における検査方法は、不良ビーム検出工程(S102)と、フレーム1設定工程(S120)と、ベクトル演算工程(S122)と、ベクトル集合演算工程(S124)と、シフトベクトル決定工程(S126)と、フレーム2設定工程(S128)と、スキャン1工程(S212)と、スキャン2工程(S214)と、位置合わせ工程(S230)と、比較工程(S232)と、いう一連の工程を実施する。
不良ビーム検出工程(S102)の内容は、実施の形態1と同様である。但し、実施の形態2では、検出される不良ビームの数が異なる。
図13は、実施の形態2におけるマルチ1次電子ビームの照射領域と不良ビームによる照射領域の一例を示す図である。図13の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。また、図13の例では、例えば、x方向に2列目かつy方向に3段目の不良ビーム11aと、x方向に5列目かつy方向に2段目の不良ビーム11bとの複数(2つ)の不良ビームが検出された場合を示している。かかる場合、正常な各1次電子ビーム10で走査されるサブ照射領域29の画像に対して、不良ビーム11aで走査されたサブ照射領域2911aの画像と不良ビーム11bで走査されたサブ照射領域2911bの画像では、精度が劣化した画像が得られることになる。
フレーム1設定工程(S120)として、フレーム1設定部61(第1の領域設定部の他の一例)は、m行×n列(m,nは3以上の整数)のマルチ1次電子ビーム20で照射可能な照射領域34のサイズで基板101のチップ332(ビーム照射対象領域)が仮想分割される複数のフレーム領域33-1(第1のフレーム領域)を設定する。
図14は、実施の形態2における1回目のスキャンに用いるフレーム領域サイズの一例を示す図である。図14の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。実施の形態2では、当初の5×5列のマルチ1次電子ビーム20が照射する5×5列のサブ照射領域29のサイズをフレーム領域33-1のサイズに設定する。
図15は、実施の形態2における1回目のスキャンに用いるフレーム領域の一例を示す図である。例えば左下隅を基準点としてチップ332領域を5×5列のマルチ1次電子ビーム20が照射する5×5列のサブ照射領域29のサイズで複数のフレーム領域33-1に分割する。図15に示すように、複数のフレーム領域33-1は互いに他のフレーム領域33-1に接するように設定される。
ベクトル演算工程(S122)として、ベクトル演算部63は、m行×n列のマルチ1次電子ビーム20が複数の不良ビーム11a,11bを含み、複数のフレーム領域33-1のフレーム領域33-1毎にm行×n列のマルチ電子ビームの少なくとも正常ビーム群により1回目のマルチ電子ビームの照射処理が実施される場合に、複数の不良ビーム11a,11bの照射位置に相当する複数のサブ照射領域2911a,2911bにおける領域間のベクトルを演算する。ベクトルは、隣接するフレーム領域33-1に対しても演算する。図15の例では、例えば、左下のフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911aから見て、同じフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911bへのベクトルは(3,-1)となる。同様に、左下のフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911aから見て、y方向に隣接するフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911bへのベクトルは(3,4)となる。また、左下のフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911bから見て、x方向に隣接するフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911aへのベクトルは(2,1)となる。図15の例では、ベクトル座標の位置の単位として、サブ照射領域29を2次元配列としたときのインデックスを用いる場合を示している。
なお、隣接するフレーム領域33-1同士間において、その他にも不良のサブ照射領域29間のベクトルは存在し得るが、マルチ1次電子ビーム20のx方向のビームインデックス間隔m以上のx値及びy方向のビームインデックス間隔n以上のy値のベクトルを演算する必要はない。図15の例では、x方向のビームインデックス間隔m及びy方向のビームインデックス間隔n以上離れたベクトルとして以下のベクトルも参考までに示している。例えば、同様に、左下のフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911aから見て、y方向に隣接するフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911aへのベクトルは(0,5)となる。同様に、左下のフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911aから見て、x方向に隣接するフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911aへのベクトルは(5,0)となる。同様に、左下のフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911bから見て、x方向に隣接するフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911bへのベクトルは(5,0)となる。同様に、左下のフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911bから見て、y方向に隣接するフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911bへのベクトルは(0,5)となる。同様に、左下のフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911bから見て、x,y方向(斜め方向)に隣接するフレーム領域33-1内の不良のサブ照射領域2911aへのベクトルは(2,6)となる。
ベクトル集合演算工程(S124)として、ベクトル集合演算部65は、演算されたベクトルの集合を演算する。
図16は、実施の形態2におけるベクトル集合の一例を示す図である。例えば、上述した座標が6まで離れたベクトル集合Aとして、{(0,5)(2,1)(2,6)(3,-1)(3,4)(5,0)(0,-5)(-2,-1)(-2,-6)(-3,1)(-3,-4)(-5,0)}が挙げられる。上述したように、マルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム数m以上のx値及びy方向のビームインデックス間隔n以上のy値のベクトルを演算する必要はない。よって、ベクトル集合演算部65は、絶対値がマルチ1次電子ビーム20のx方向のビームインデックス間隔m未満のx値及び絶対値がy方向のビームインデックス間隔n未満のy値のベクトル集合A’を演算する。図16の例では、ベクトル集合A’{(2,1)(3,-1)(3,4)(-2,-1)(-3,1)(-3,-4)}が演算される。
シフトベクトル決定工程(S126)として、シフトベクトル決定部66は、ベクトル集合A’を演算した場合と同様、マルチ1次電子ビーム20のx方向のビームインデックス間隔m及びy方向のビームインデックス間隔n未満の1つ以上のベクトルの内、演算されたサブ照射領域29(領域)間のベクトルの集合A’に属さない1つのベクトルをシフトベクトルとして決定する。図16の例では、ベクトル集合A’{(2,1)(3,-1)(3,4)(-2,-1)(-3,1)(-3,-4)}に属さない、例えばベクトル(1,3)をシフトベクトルとして決定する場合を示している。ベクトル(1,3)以外にも、例えば、(1,1)であっても構わない。例えば、(1,2)であっても構わない。例えば、(1,4)であっても構わない。例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20であれば、ベクトルのx値として-4~4までの値、及びベクトルのy値として-4~4までの値で組み合わされるベクトルの中から(0,0)と、ベクトル集合A’{(2,1)(3,-1)(3,4)(-2,-1)(-3,1)(-3,-4)}の各座標を除いた組合せのベクトルを選択し、決定できる。
フレーム2設定工程(S128)として、フレーム2設定部67(第2の領域設定部の他の一例)は、演算された不良のサブ照射領域2911a,2911b(領域)間のベクトルの集合であるベクトルの集合A’に属さないベクトルに複数のフレーム領域33-1をシフトさせた複数のフレーム領域33-2(第2のフレーム領域)を設定する。
図17は、実施の形態2における1回目のスキャンに用いるフレーム領域と2回目のスキャンに用いるフレーム領域との一例を示す図である。例えば左下隅を基準点としてシフトベクトル(1,3)だけ、1回目のスキャンに用いる複数のフレーム領域33-1をシフトした2回目のスキャンに用いる複数のフレーム領域33-2を設定する。図17に示すように、不良のサブ照射領域29間のベクトル集合A’に属さないベクトルだけシフトした2回目のスキャンに用いる複数のフレーム領域33-2を設定することで、1回目のスキャンで複数の不良ビーム11a,11bが照射するサブ照射領域2911a-1,2911b-1と、2回目のスキャンで複数の不良ビーム11a,11bが照射するサブ照射領域2911a-2,2911b-2とをずらすことができる。
スキャン1工程(S212)として、画像取得機構150は、m行×n列のマルチ1次電子ビーム20の少なくとも正常ビーム群を用いて、実施の形態2における複数のフレーム領域33-1に対してフレーム領域33-1毎に1回目のマルチ1次電子ビーム20の照射処理を実施する。具体的には、以下のように動作する。画像取得機構150は、ステージ105を速度V3で等速移動させながら、複数の図形パターンが形成された基板101にマルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300を検出して、複数の図形パターンの2次電子画像を取得する。上述したように、マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子が投影されても良い。ここで、実施の形態1と同様、検査装置100では、基板101にパターンを形成する(描画する)訳ではないので、基板101にダメージを加えたり、他のサブ照射領域29に干渉する恐れがない限り、余分なビームが基板101に照射されても構わない。検査画像に使用する2次電子ビームの検出強度データを取捨選択できればよい。よって、特に、基板101に照射するマルチ1次電子ビーム20の数を制限する必要は無い。図17の例では、不良ビーム11を含む5×5列のマルチ1次電子ビーム20をそのまま使用してスキャンすればよい。そして不良ビーム11を含む5×5列のマルチ1次電子ビーム20の照射に起因したフレーム領域33-1毎の画像を取得する。
画像の取得は、上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出される反射電子を含むマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222で検出する。マルチ検出器222によって検出された2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、1回目のスキャン処理において、各フレーム領域33-1上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
スキャン2工程(S214)として、画像取得機構150は、m行×n列のマルチ1次電子ビーム20の、実施の形態2における複数のフレーム領域33-2において複数の不良ビーム11の照射位置を担当する正常ビーム群を少なくとも用いて、複数のフレーム領域33-2に対してフレーム領域33-2毎に2回目のマルチ電子ビームの照射処理を実施する。具体的には、以下のように動作する。画像取得機構150は、ステージ105を速度V3で等速移動させながら、複数の図形パターンが形成された基板101にマルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300を検出して、複数の図形パターンの2次電子画像を取得する。上述したように、マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子が投影されても良い。
ここで、1回目のスキャン1工程(S202)では、複数の不良ビーム11a,11bの照射位置に相当するサブ照射領域2911a-1,2911b-1の正常な画像が得られていない。このため、2回目のスキャン2工程(S204)では、少なくとも複数の不良ビーム11a,11bの照射位置に相当するサブ照射領域2911a-1,2911b-1の正常な画像を取得する必要がある。よって、サブ照射領域2911a-1,2911b-1を照射することになる正常ビーム群を演算により求めて、かかるビーム群のみで複数の不良ビーム11a,11bの照射位置に相当するサブ照射領域2911a-1,2911b-1のスキャンを行えば足りる。但し、上述したように、検査装置100では、基板101にパターンを形成する(描画する)訳ではないので、基板101にダメージを加えたり、他のサブ照射領域29に干渉する恐れがない限り、余分なビームが基板101に照射されても構わない。検査画像に使用する2次電子ビームの検出強度データを取捨選択できればよい。よって、特に、基板101に照射するマルチ1次電子ビーム20の数を制限する必要は無い。図17の例では、複数の不良ビーム11a,11bを含む5×5列のマルチ1次電子ビーム20をそのまま使用してスキャンすればよい。2回目のスキャン2用に無作為にフレーム領域をシフトするのではなく、実施の形態2では、不良のサブ照射領域2911a,2911b間のベクトルの集合であるベクトル集合A’に属さないベクトルに、2回目のフレーム領域33-2の設定位置をシフトしているので、1回目のスキャン1工程(S212)における複数の不良ビーム11a,11bの照射位置に相当するサブ照射領域2911a-1,2911b-1は、2回目のスキャン2工程(S214)において、確実に正常ビームでスキャンできる。
画像の取得は、上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出される反射電子を含むマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222で検出する。マルチ検出器222によって検出された2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、2回目のスキャン処理において、各フレーム領域33-2上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
そして、比較回路108(検査部)は、取得された2次電子画像を検査する。検査処理を行う、位置合わせ工程(S230)と、比較工程(S232)との各工程の内容は実施の形態1と同様である。
以上のように、実施の形態2によれば、マルチ電子ビームの中に不良ビームが存在する場合でも、所望の精度が得られるビーム照射ができる。さらに、実施の形態2によれば、複数の不良ビームが照射されるはずの複数の領域の画像を得るためにスキャン動作を2回行う場合に、1回目に不良ビームが照射されたサブ照射領域について、2回目に確実に正常ビームで画像を取得できる。
実施の形態3.
実施の形態3では、不良ビームが存在する場合の照射手法について、上述した各実施の形態よりも、もっと簡易に1回のスキャン動作で必要なすべての画像を取得する構成について説明する。実施の形態3における検査装置100の構成は、図1と同様で構わない。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
図18は、実施の形態3におけるフレーム設定回路内の構成の一例を示す構成図である。図18において、フレーム設定回路129内に、図5のフレーム1設定部62及びフレーム2設定部64の代わりに、矩形領域設定部68、及びフレーム設定部69が配置された点以外は、図5と同様である。不良ビーム位置判定部60、矩形領域設定部68、及びフレーム設定部69といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。不良ビーム位置判定部60、矩形領域設定部68、及びフレーム設定部69内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
図19は、実施の形態3における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図19において、実施の形態3における検査方法は、不良ビーム検出工程(S102)と、矩形領域設定工程(S130)と、フレーム設定工程(S132)と、スキャン工程(S222)と、位置合わせ工程(S230)と、比較工程(S232)と、いう一連の工程を実施する。
不良ビーム検出工程(S102)の内容は、実施の形態1と同様である。但し、実施の形態3では、検出される不良ビームの数が異なる。
図20は、実施の形態3におけるマルチ1次電子ビームの照射領域と不良ビームによるサブ照射領域の一例を示す図である。図20の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。また、図20の例では、例えば、x方向に4列目かつy方向に3段目の不良ビーム11aと、x方向に5列目かつy方向に2段目の不良ビーム11bとの複数の不良ビームが検出された場合を示している。かかる場合、正常な各1次電子ビーム10で走査されるサブ照射領域29の画像に対して、不良ビーム11aで走査されたサブ照射領域2911aの画像と不良ビーム11bで走査されたサブ照射領域2911bの画像とは、精度が劣化した画像として得られることになる。図20の例では、複数の不良ビーム11a,11bが検出された場合を示しているが、不良ビームの数は1つであっても良い。
矩形領域設定工程(S130)として、矩形領域設定部68は、m行×n列(m,nは2以上の整数)のマルチ1次電子ビーム20が不良ビーム11を含む場合に、不良ビーム11を除く正常ビーム群で照射可能な面積が大きく、好ましくは最大となる矩形領域を設定する。
図21は、実施の形態3における正常ビーム群で照射可能な矩形領域の一例を示す図である。図21の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。図21の例では、x方向に4列目と5列目に不良ビーム11a,11bにより照射されるサブ照射領域2911a,2911bが発生する。このため、矩形領域設定部68は、不良ビーム11a,11bを除く正常ビーム群で照射可能な面積が大きく、好ましくは最大となる矩形領域35を設定する。図21の例では、左端5行×3列のサブ照射領域29のサイズが最大サイズの矩形領域35となる。不良ビームの位置が、端部に位置するほど、大きな矩形領域35を設定することができる。逆に中央部に不良ビームが存在する場合には、設定できる矩形領域35が小さくなってしまう。
フレーム設定工程(S132)として、フレーム設定部69(領域設定部)は、m行×n列(m,nは2以上の整数)のマルチ1次電子ビーム20が不良ビーム11a,11bを含む場合に、不良ビーム11a,11bを除く正常ビーム群で照射可能な矩形領域35のサイズで基板101のチップ332(ビーム照射対象領域)が仮想分割される複数のフレーム領域33を設定する。
図22は、実施の形態3におけるスキャンに用いるフレーム領域の一例を示す図である。例えば左下隅を基準点としてチップ332領域を3×5列のマルチ1次電子ビーム20が照射する5×3列のサブ照射領域29のサイズで複数のフレーム領域33に分割する。図22に示すように、複数のフレーム領域33は互いに他のフレーム領域33に接するように設定される。
スキャン工程(S222)として、画像取得機構150は、複数のフレーム領域33に対してフレーム領域33毎に、m行×n列のマルチ1次電子ビーム20の不良ビーム11a,11bを除く正常ビーム群のうち、少なくとも矩形領域35内を照射可能なビーム群を当該フレーム領域33に照射して、照射に起因して当該フレーム領域33から放出されたマルチ2次電子ビーム300を検出することで、当該フレーム領域33内の2次電子画像を取得する。上述したように、マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子が投影されても良い。ここで、検査装置100では、基板101にパターンを形成する(描画する)訳ではないので、基板101にダメージを加えたり、他のサブ照射領域29に干渉する恐れがない限り、余分なビームが基板101に照射されても構わない。検査画像に使用する2次電子ビームの検出強度データを取捨選択できればよい。よって、特に、基板101に照射するマルチ1次電子ビーム20の数を制限する必要は無い。図22の例では、不良ビーム11a,11bを含む5×5列のマルチ1次電子ビーム20をそのまま使用してスキャンすればよい。但し、画像取得機構150は、フレーム領域33毎に、矩形領域35内を照射可能なビーム群が当該フレーム領域33をスキャンするように矩形領域35内を照射可能なビーム群の照射領域の位置を当該フレーム領域33に合わせる。そして、矩形領域35内を照射可能なビーム群の照射に起因したフレーム領域33毎の画像を取得する。
画像の取得は、上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出される反射電子を含むマルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222で検出する。マルチ検出器222によって検出された2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、各フレーム領域33上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
ここで、各フレーム領域33は、すべて正常ビーム群でスキャンされるので、1回のスキャン工程(S222)で必要なすべてのサブ照射領域29の画像を得ることができる。但し、正常ビーム群によって照射可能な矩形領域35のサイズが小さいと、スキャン時間が長くなってしまう。よって、実施の形態3では、不良ビーム11が端部側に偏っている場合に矩形領域35のサイズを大きく設定できるので、特に有効である。
そして、比較回路108(検査部)は、取得された2次電子画像を検査する。検査処理を行う、位置合わせ工程(S230)と、比較工程(S232)との各工程の内容は実施の形態1と同様である。
以上のように、実施の形態3によれば、マルチ電子ビームの中に不良ビームが存在する場合でも、所望の精度が得られるビーム照射ができる。さらに、実施の形態3によれば、不良ビームを排除したフレーム領域が設定されるので、スキャン動作を1回行うだけで済む。
実施の形態4.
実施の形態1~3では、それぞれ、不良ビームが存在する場合でも、各領域の画像を測定できる。しかし、実施の形態1では、2回目のスキャン領域を少なくできるため高速化が可能であるが、不良ビームが4隅に位置する場合および複数の不良ビームが検出される場合には適用困難である。実施の形態2では、複数の不良ビームが検出される場合でも適用可能であるが、全面スキャン工程を2回にする必要が生じ、高速化には不向きである。実施の形態3では、1回の全面スキャン工程で良いが、矩形領域35のサイズによって、総スキャン時間が大きく左右されてしまう。よって、実施の形態1~3の効果を大きく、好ましくは最大に発揮するためには、それぞれ適した条件下で適用されることが望ましい。そこで、実施の形態4では、実施の形態1~3の各手法を選択可能な構成を説明する。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
図23は、実施の形態4におけるパターン検査装置の構成の一例を示す構成図である。図23において、モード選択回路132を追加した点以外は、図1と同様である。図1において、制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、フレーム設定回路129、不良ビーム検出回路130、モード選択回路132、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、及びメモリ118に接続されている。また、フレーム設定回路129内には、実施の形態1~3の各フレーム設定回路129内の構成が配置される。
図24は、実施の形態4におけるモード選択回路132内の構成の一例を示す構成図である。図24において、モード選択回路132内に、不良ビーム特定部70、モード選択部72、及びモード設定部74が配置される。不良ビーム特定部70、モード選択部72、及びモード設定部74といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。不良ビーム特定部70、モード選択部72、及びモード設定部74内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
図25は、実施の形態4における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図25において、実施の形態1における検査方法は、不良ビーム検出工程(S102)と、不良ビーム特定工程(S104)と、モード選択/設定工程(S106)と、モード1(実施の形態1)の各工程と、モード2(実施の形態2)の各工程と、モード3(実施の形態3)の各工程と、位置合わせ工程(S230)と、比較工程(S232)と、いう一連の工程を実施する。モード1(実施の形態1)の各工程として、フレーム1設定工程(S110)と、フレーム2設定工程(S112)と、スキャン1工程(S202)と、スキャン2工程(S204)と、を実施する。モード2(実施の形態2)の各工程として、フレーム1設定工程(S120)と、ベクトル演算工程(S122)と、ベクトル集合演算工程(S124)と、シフトベクトル決定工程(S126)と、フレーム2設定工程(S128)と、スキャン1工程(S212)と、スキャン2工程(S214)と、を実施する。モード3(実施の形態3)の各工程として、矩形領域設定工程(S130)と、フレーム設定工程(S132)と、スキャン工程(S222)と、を実施する。
不良ビーム検出工程(S102)の内容は実施の形態1と同様である。
不良ビーム特定工程(S104)として、不良ビーム特定部70(特定部)は、m行×n列(m,nは3以上の整数)のマルチ1次電子ビーム20の中から不良ビームを特定する。具体的には、検出された不良ビーム11の位置を特定する。複数の不良ビーム11が検出された場合には、それぞれの不良ビーム11の位置を特定する。
モード選択/設定工程(S106)として、モード選択部72(選択部)は、特定された不良ビーム11の位置に応じて、複数のモード1~3(複数照射処理方法)の中から照射処理時間が最短となる1つを選択する。モード設定部74は、この選択されたモードに設定する。
例えば、すべての不良ビーム11の位置がm行×n列(m,nは3以上の整数)のマルチ1次電子ビーム20の端部(外周部)に位置するのであれば、モード3(実施の形態3)により画像を取得する方が、スキャン工程が1回でかつ大きなフレーム領域33でスキャンできるので総スキャン時間が最も短くなる。
例えば、不良ビーム11の位置がマルチ1次電子ビーム20の外周部ではなく、内部に位置し、かつ不良ビームの数が1つであれば、モード1(実施の形態1)により画像を取得する方が、2回のスキャン工程を行う場合であっても2回目のスキャン工程を高速化できるので総スキャン時間が最も短くなる。
例えば、複数の不良ビーム11が存在し、かつ1つでもマルチ1次電子ビーム20の外周部ではなく、内部に位置する場合には、モード2(実施の形態2)により画像を取得する方が、モード3(実施の形態3)により画像を取得する場合よりも照射処理時間が短くなる可能性がある。
例えば、矩形領域35のサイズがm行×n列のサブ照射領域29の1/2未満になった場合、モード3(実施の形態3)よりもモード2(実施の形態2)の方が、総スキャン時間を短くできる。
例えば、フレーム領域内の上下の領域に同時に不良ビームが存在する場合、フレーム領域内の左右の領域に同時に不良ビームが存在する場合、或いはフレーム領域の中心領域に複数の不良ビームが存在する場合等に矩形領域35のサイズがm行×n列のサブ照射領域29の1/2未満になることが生じる可能性が高い。このように、不良ビーム11の位置に応じて、適したモードが異なる。そこで、実施の形態4では、その都度、3つのモード全てにおいて照射処理時間を計算するのではなく、単に、特定された不良ビーム11の位置に応じて、複数のモード1~3(複数照射処理方法)の中から適したモードを選択する。
画像取得機構150(電子ビーム照射機構)は、選択された1つの方法(モード)に沿って、基板101上にマルチ1次電子ビーム20の照射処理を実施する。具体的には、以下のように動作する。
モード1(実施の形態1)が選択された場合、フレーム1設定工程(S110)と、フレーム2設定工程(S112)と、スキャン1工程(S202)と、スキャン2工程(S204)と、を実施する。フレーム1設定工程(S110)と、フレーム2設定工程(S112)と、スキャン1工程(S202)と、スキャン2工程(S204)と、の各工程の内容は、実施の形態1と同様である。
モード2(実施の形態2)が選択された場合、フレーム1設定工程(S120)と、ベクトル演算工程(S122)と、ベクトル集合演算工程(S124)と、シフトベクトル決定工程(S126)と、フレーム2設定工程(S128)と、スキャン1工程(S212)と、スキャン2工程(S214)と、を実施する。フレーム1設定工程(S120)と、ベクトル演算工程(S122)と、ベクトル集合演算工程(S124)と、シフトベクトル決定工程(S126)と、フレーム2設定工程(S128)と、スキャン1工程(S212)と、スキャン2工程(S214)と、の各工程の内容は、実施の形態2と同様である。
モード3(実施の形態3)が選択された場合、矩形領域設定工程(S130)と、フレーム設定工程(S132)と、スキャン工程(S222)と、を実施する。矩形領域設定工程(S130)と、フレーム設定工程(S132)と、スキャン工程(S222)と、の各工程の内容は、実施の形態3と同様である。
そして、比較回路108(検査部)は、取得された2次電子画像を検査する。検査処理を行う、位置合わせ工程(S230)と、比較工程(S232)との各工程の内容は実施の形態1と同様である。
以上のように、実施の形態4によれば、マルチ電子ビームの中に不良ビームが存在する場合でも、自動的に不良ビームの発生条件に合った照射処理時間が短いモードで所望の精度が得られるビーム照射ができる。
実施の形態5.
上述した各実施の形態では、検査装置100について説明したが、不良ビームの対策をしたマルチ電子ビームの照射手法は、これに限るものではない。実施の形態5では、描画装置に適用する構成について説明する。
図26は、実施の形態5における描画装置の構成を示す概念図である。図26において、描画装置500は、描画機構550(マルチビーム照射機構)と制御系回路560を備えている。描画装置500は、マルチ電子ビーム描画装置の一例である。描画機構550は、電子鏡筒502と描画室503を備えている。電子鏡筒502内には、電子銃601、照明レンズ602、成形アパーチャアレイ基板603、ブランキングアパーチャアレイ機構604、縮小レンズ605、制限アパーチャ基板606、対物レンズ607、及び偏向器608が配置されている。描画室503内には、XYステージ505が配置される。XYステージ505上には、描画時(露光時)には描画対象基板となるマスク等の試料501が配置される。試料501には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、試料501には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。XYステージ505上には、さらに、XYステージ505の位置測定用のミラー610が配置される。XYステージ505上には、さらに、電流検出用のファラディーカップ506が配置される。照明レンズ602、縮小レンズ605、及び対物レンズ607には、電磁レンズが用いられる。各電磁レンズは、マルチビーム(電子ビーム)を屈折させる。成形アパーチャアレイ基板603には、図2と同様、マルチ電子ビーム15を形成するための複数の穴22が形成されている。
制御系回路560は、制御計算機510、メモリ512、偏向制御回路530、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプユニット532、ステージ制御機構538、ステージ位置測定器539及び磁気ディスク装置等の記憶装置540を有している。制御計算機510、メモリ512、偏向制御回路530、ステージ制御機構538、ステージ位置測定器539及び記憶装置540は、図示しないバスを介して互いに接続されている。記憶装置540(記憶部)には、描画データが描画装置500の外部から入力され、格納されている。偏向制御回路530には、DACアンプユニット532及びブランキングアパーチャアレイ機構604が図示しないバスを介して接続されている。ステージ位置測定器539は、レーザ光をXYステージ505上のミラー610に照射し、ミラー610からの反射光を受光する。そして、かかる反射光の情報を利用してXYステージ505の位置を測定する。
制御計算機510内には、不良ビーム検出部40、領域設定部41、描画処理制御部42、描画データ処理部44、及びモード選択部46が配置されている。不良ビーム検出部40、領域設定部41、描画処理制御部42、描画データ処理部44、及びモード選択部46といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。不良ビーム検出部40、領域設定部41、描画処理制御部42、描画データ処理部44、及びモード選択部46に入出力される情報および演算中の情報はメモリ512にその都度格納される。
ここで、図26では、実施の形態5を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
図27は、実施の形態5におけるブランキングアパーチャアレイ機構604の構成の一例を示す断面図である。図27において、ブランキングアパーチャアレイ機構604は、図2と同様の成形アパーチャアレイ基板603の各穴22に対応する位置にマルチ1次電子ビームのそれぞれのビームの通過用の通過孔(開口部)が開口される。言い換えれば、ブランキングアパーチャアレイ機構604には、マルチ1次電子ビームのそれぞれ対応するビーム15が通過する複数の通過孔がアレイ状に形成される。そして、複数の通過孔のうち対応する通過孔を挟んで対向する位置に2つの電極を有する複数の電極対がそれぞれ配置される。具体的には、各通過孔の近傍位置に通過孔25を挟んでブランキング偏向用の制御電極24と対向電極26の組(ブランカー:ブランキング偏向器)がそれぞれ配置される。また、各通過孔の近傍には、各通過孔用の制御電極24に偏向電圧を印加する図示しない各ビーム用の制御回路(ロジック回路)が配置される。各ビーム用の対向電極26は、グランド接続される。各ビーム用の制御回路は、偏向制御回路530によって制御される。
各通過孔を通過する電子ビーム15は、それぞれ独立に対となる2つの制御電極24と対向電極26に印加される電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。具体的には、制御電極24と対向電極26の組は、図示しないスイッチング回路によって切り替えられる電位によってマルチビームの対応ビームをそれぞれ個別にブランキング偏向する。このように、複数のブランカーが、成形アパーチャアレイ基板603の複数の穴22(開口部)を通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
次に、描画機構550の動作の具体例について説明する。電子銃601(放出源)から放出された電子ビーム600は、照明レンズ602によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板603全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板603には、矩形の複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム600は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム600の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板603の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状の複数の電子ビーム(マルチビーム)15a~eが形成される。かかるマルチ電子ビームは、ブランキングアパーチャアレイ機構604のそれぞれ対応するブランカー(制御電極24と対向電極26の組)内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、少なくとも個別に通過する電子ビーム15を設定された描画時間(照射時間)ビームがON状態になるようにブランキング制御する。
ブランキングアパーチャアレイ機構604を通過したマルチ電子ビーム15a~eは、縮小レンズ605によって、縮小され、制限アパーチャ基板606に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングアパーチャアレイ機構604のブランカーによって偏向された電子ビーム15は、制限アパーチャ基板606(ブランキングアパーチャ部材)の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板606によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構604のブランカーによって偏向されなかった電子ビーム15は、図26に示すように制限アパーチャ基板606の中心の穴を通過する。このように、制限アパーチャ基板606は、ビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板606を通過したビームにより、1回分のショットの各ビームが形成される。制限アパーチャ基板606を通過したマルチ電子ビーム15は、対物レンズ607により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、偏向制御回路530によって制御された偏向器608によって、制限アパーチャ基板606を通過した各ビーム(マルチビーム15全体)が同方向にまとめて偏向され、各ビームの試料501上のそれぞれの照射位置に照射される。また、例えばXYステージ505が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ505の移動に追従するように偏向器608によって制御される。一度に照射されるマルチビーム15は、理想的には成形アパーチャアレイ基板603の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。
マルチ電子ビーム描画においても、各フレーム領域33のサブ照射領域29をそれぞれ担当する各電子ビームが照射することによってパターンを描画する。そして、マルチ電子ビームにも、上術したように、不良ビームが発生し得る。そこで、実施の形態5では、実施の形態1~4において説明した照射手法をマルチ電子ビーム描画に適用する。
不良ビーム検出工程として、まず、描画機構550は、ブランキングアパーチャアレイ機構604を用いてマルチ電子ビーム15を1本ずつに制限してした上で、1本ずつビームをファラディーカップ506に照射して、電流検出器537によりファラディーカップ506に照射された電流量を検出する。かかる動作をマルチ電子ビーム15の各ビームに対して実施する。なお、常時ビームONのビームが存在する場合、ブランキングアパーチャアレイ機構604では、ビームOFFに制御することが困難であるため、別途、ビームを選択的に通過させる穴が形成された、例えば水平方向に移動可能なシャッター機構を穴毎に配置し、このシャッター機構により常時ビームONのビームをブランキングできる構成にすればよい。
次に、不良ビーム検出部40は、マルチ電子ビーム15の各ビームの電流量の違いから不良ビームを検出する。例えば常時ビームOFFであれば、電流量がゼロになる。検出された不良ビーム11の情報は、モード選択部46に出力される。
次に、モード選択/設定工程として、モード選択部46(選択部)は、特定された不良ビーム11の位置に応じて、複数のモード1~3(複数照射処理方法)の中から照射処理時間が最短となる1つを選択する。描画処理制御部42は、この選択されたモードに設定する。
例えば、すべての不良ビーム11の位置がm行×n列(m,nは3以上の整数)のマルチ1次電子ビーム20の端部(外周部)に位置するのであれば、モード3(実施の形態3)により描画する方が、描画処理回数が1回でかつ大きなフレーム領域33でスキャンできるのでスキャン時間が最も短くなる。
例えば、不良ビーム11の位置がマルチ電子ビーム15の外周部ではなく、内部に位置し、かつ不良ビームの数が1つであれば、モード1(実施の形態1)により描画する方が、2回の描画処理動作を行う場合であっても2回目の描画処理を高速化できるので描画時間が最も短くなる。
例えば、複数の不良ビーム11が存在し、かつ1つでもマルチ電子ビーム15の外周部ではなく、内部に位置する場合には、モード2(実施の形態2)により描画する方が、モード3(実施の形態3)により描画する場合よりも照射処理時間が短くなる可能性がある。
例えば、矩形領域35のサイズがm行×n列のサブ照射領域29の1/2未満になった場合、モード3(実施の形態3)よりもモード2(実施の形態2)の方が、描画時間を短くできる。例えば、上下両方向に不良ビームが存在する場合、左右両方向に不良ビームが存在する場合、或いは中心に不良ビームが存在する場合等に矩形領域35のサイズがm行×n列のサブ照射領域29の1/2未満になることが生じる可能性が高い。このように、不良ビーム11の位置に応じて、適したモードが異なる。そこで、実施の形態5では、その都度、3つのモード全てにおいて照射処理時間を計算するのではなく、単に、特定された不良ビーム11の位置に応じて、複数のモード1~3(複数照射処理方法)の中から適したモードを選択する。
但し、実施の形態5では、常時ビームOFFによる不良ビーム、若しくはブランキングアパーチャアレイ機構604によってビームOFFに制御できる不良ビーム11については、モード1~3の中から選択する。常時ビームONによる不良ビーム、若しくはブランキングアパーチャアレイ機構604によってビームOFFに制御困難な不良ビーム11については、不良ビームの照射をブランキングアパーチャアレイ機構604により排除できないので、モード3を選択する。但し、予め、矩形領域35外のビームを遮断できる可動式の遮蔽板を配置しておく。例えば、成形アパーチャアレイ基板603、若しくはブランキングアパーチャアレイ機構604の下流側に遮蔽板を配置しておく。
描画機構550(電子ビーム照射機構)は、選択された1つの方法に沿って、基板101上にマルチ電子ビーム15の照射処理を実施する。具体的には、以下のように動作する。
まず、描画データ処理部44は、記憶装置540から描画データを読み出し、試料501の描画領域を格子状に分割した画素毎の照射時間を演算する。かかる照射時間には、近接効果を考慮した照射時間が演算されると好適である。照射時間は、例えば、基準照射量と画素のパターン面積密度と当該画素の近接効果補正用の係数とを乗じた値を電流密度で割った値で演算できる。演算された照射時間のデータは、ショット順に偏向制御回路530に出力される。画素サイズとして、例えば、マルチ電子ビームの1本あたりのビームサイズ程度の大きさに設定されると好適である。
モード1(実施の形態1)が設定された場合、フレーム1設定工程(S110)と、フレーム2設定工程(S112)と、描画1-1工程と、描画2-1工程と、を実施する。フレーム1設定工程(S110)と、フレーム2設定工程(S112)と、の各工程の内容は、実施の形態1と同様である。但し、フレーム領域33-1,33-2の設定は、領域設定部41が行う。
描画1-1工程として、描画機構550は、m行×n列(m,nは3以上の整数)のマルチ電子ビーム15のうち、4隅以外の位置に1つの不良ビーム11が存在する場合に、マルチ電子ビーム15のうち、端部の1行1列のビーム群を除く、残りのビーム群のうちの正常ビーム群を用いて、試料501の複数のフレーム領域33-1(第1のフレーム領域)に対してフレーム領域33-1毎に1回目のマルチ電子ビーム15の描画処理(照射処理)を実施する。具体的には、以下のように動作する。まず、ブランキングアパーチャアレイ機構604を用いてマルチ電子ビーム15のうち、端部の1行1列のビーム群と不良ビーム11がビームOFFになるように制御する。そして、ステージ制御機構538により制御されたステージ505を速度V1で等速移動させながら、描画処理を行う。
マルチ1次電子ビーム15の各ビームは、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)しながら、必要な画素に必要な照射時間だけビームを照射する。マルチ電子ビーム15を構成する各電子ビームは、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各電子ビームは、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。また、各ショット時に、各電子ビームは、担当サブ照射領域29内の照射対象の画素に演算された照射時間のビーム照射を行うことになる。サブ照射領域29内の電子ビームの移動は、偏向器608によるマルチ電子ビーム15全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの電子ビームで1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。そして、1つのサブ照射領域29の描画が終了したら、偏向器608によるマルチ電子ビーム15全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接するフレーム領域33-1へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32の描画処理が終了したら、ステージ505の移動或いは/及び偏向器608によるマルチ電子ビーム15全体での一括偏向によって照射位置が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各電子ビームの照射によって得られるサブ照射領域29内のショット画素図形を組み合わせることで、所定のパターンが描画される。
描画2-1工程として、描画機構550は、m行×n列のマルチ電子ビーム15の4隅のビーム群を用いて、試料501の複数のフレーム領域33-2に対してフレーム領域33-2毎に2回目のマルチ電子ビームの描画処理(照射処理)を実施する。具体的には、以下のように動作する。なお、描画する際、ブランキングアパーチャアレイ機構604を用いてマルチ電子ビーム15のうち、4隅のビーム群以外をビームOFFに制御する。
ここで、1回目の描画1工程では、不良ビーム11の照射位置に相当するサブ照射領域29の描画が実施されていない。このため、2回目の描画2工程では、不良ビーム11の照射位置に相当するサブ照射領域29の正常な描画を行う必要がある。よって、m行×n列のマルチ電子ビームの4隅のビーム群のみで不良ビーム11の照射位置に相当するサブ照射領域29の描画を行う。
さらに、複数のフレーム領域33-2は、図9に示すように、飛び飛びに設定されるので、スキャンする領域全体の面積が複数のフレーム領域33-1に対して少なくて済む。図9の例では、1つのフレーム領域33-2の面積を4つのフレーム領域33-1の面積で割った割合だけスキャンする領域全体の面積が少なくなる。よって、少なくなった分、ステージ速度を速くできる。よって、1回目の描画1動作(1回目のマルチ電子ビームの照射処理)の場合よりも2回目の描画2動作(2回目のマルチ電子ビームの照射処理)の場合におけるステージ505の移動速度を速くする。よって、2回目の描画2では、1回目の描画1よりも描画時間を大幅に短縮できる。
モード2(実施の形態2)が設定された場合、フレーム1設定工程(S120)と、ベクトル演算工程(S122)と、ベクトル集合演算工程(S124)と、シフトベクトル決定工程(S126)と、フレーム2設定工程(S128)と、描画1-2工程と、描画2-2工程と、を実施する。フレーム1設定工程(S120)と、ベクトル演算工程(S122)と、ベクトル集合演算工程(S124)と、シフトベクトル決定工程(S126)と、フレーム2設定工程(S128)と、の各工程の内容は、実施の形態2と同様である。但し、フレーム領域33-1,33-2の設定は、領域設定部41が行う。
描画1-2工程として、描画機構550は、m行×n列のマルチ電子ビーム15の正常ビーム群を用いて、複数のフレーム領域33-1に対してフレーム領域33-1毎に1回目のマルチ電子ビーム15の描画処理(照射処理)を実施する。なお、描画する際、ブランキングアパーチャアレイ機構604を用いてマルチ電子ビーム15のうち、複数の不良ビーム11をビームOFFに制御する。
描画2-2工程として、描画機構550は、m行×n列のマルチ電子ビーム15のうち、1回目のマルチ電子ビーム15の描画処理において複数の不良ビーム11によって照射される照射位置を担当する正常ビーム群を用いて、複数のフレーム領域33-2に対してフレーム領域33-2毎に2回目のマルチ電子ビーム15の描画処理(照射処理)を実施する。なお、描画する際、ブランキングアパーチャアレイ機構604を用いてマルチ電子ビーム15のうち、複数の不良ビーム11によって描画されなかったサブ照射領域29を担当するビーム群を除いて、残りのビームをビームOFFに制御する。
モード3(実施の形態3)が設定された場合、矩形領域設定工程(S130)と、フレーム設定工程(S132)と、描画1-3工程と、を実施する。矩形領域設定工程(S130)と、フレーム設定工程(S132)と、の各工程の内容は、実施の形態3と同様である。但し、フレーム領域33の設定および矩形領域35の設定は、領域設定部41が行う。
描画1-3工程として、描画機構550は、複数のフレーム領域33に対してフレーム領域33毎に、前記m行×n列のマルチ電子ビーム15の不良ビームを除く正常ビーム群のうち、矩形領域35内を照射可能なビーム群を用いて、当該フレーム領域33にパターンを描画する。なお、描画する際、矩形領域35外を照射するビーム群は、ブランキングアパーチャアレイ機構604によりビームOFFに制御する、若しくは、図示しない可動式の遮蔽板で遮蔽する。
以上のように、実施の形態5によれば、マルチ電子ビーム15の中に不良ビームが存在する場合でも、不良ビームの発生条件に合ったモードで所望の精度が得られるビーム照射(描画)ができる。
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、補正回路113、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、フレーム設定回路129、不良ビーム検出回路130、及びモード設定回路132は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。図1の例では、1つの照射源となる電子銃201(電子銃601)から照射された1本のビームから成形アパーチャアレイ基板203(603)によりマルチ1次電子ビーム20(マルチ電子ビーム15)を形成する場合を示しているが、これに限るものではない。複数の照射源からそれぞれ1次電子ビームを照射することによってマルチ1次電子ビーム20(マルチ電子ビーム15)を形成する態様であっても構わない。
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ電子ビーム検査装置及びマルチ電子ビーム検査方法は、本発明の範囲に包含される。