JP7231532B2 - 建築物用枠部材 - Google Patents
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Description
住宅等の建築物の内部または外部で火災が発生した場合、該火災による延焼を防ぐ必要があり、該火災の炎等が建築物用枠部材を貫通して延焼しないように、建築物用枠部材は防火性能に優れるものでなければならない。また、該建築物用枠部材の普及を促進するためには、低価格であることが好ましいことから、該建築物用枠部材についての生産効率が高く、低コストで製造することが可能であることも重要である。
建築物用枠部材の防火性能を高める技術として、例えば、窓枠部材である樹脂サッシの空洞内部に、ポリウレタン樹脂等の熱膨張性耐火材料が注入され、前記熱膨張性耐火材料が、前記空洞の内部に注入された後に、25℃において前記空洞の内部で流動性を失う防火性樹脂サッシ(特許文献1)、合成樹脂製の枠材と金属製部材と耐火性のある板材とを備えたサッシについて、そのサッシに使用される枠材の長手方向に複数の空洞が設けられていて、断面形状が略コ字状等をしている金属製部材に、エポキシ樹脂等の粘着性を有する平板状の熱膨張性耐火材を貼り合わせて一体化した耐火シート貼着部材が該枠材の空洞の長手方向に沿って挿入されている防火性樹脂サッシ等が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、該熱膨張性耐火材料を樹脂サッシの空洞内部に配設する手段、方法として、該熱膨張性耐火材料を樹脂サッシの空洞内部に注入後に硬化すること、または熱膨張性耐火材を貼り合わせて一体化した耐火シート貼着部材を作成後、該耐火シート貼着部材を空洞の長手方向に沿って挿入すること等から、防火性能の高い建築物用枠部材の製造における生産効率が低く、製造コストが高くなるという問題がある。
ここで、該空洞部は、枠部材を構成するために必須の部分であり、かつ防火性能を必要とする部分に設けられる空洞部を意味しており、意匠的な効果のみを有する部分に設けられる空洞部または防火性能を必要としない部分に設けられる空洞部を意味しない。ただし、さらなる防火性能向上のため、該意匠的な効果のみを有する部分に設けられる空洞部または防火性能を必要としない部分に設けられる空洞部に本発明を採用することを妨げるものではない。
ここで、該少なくとも2つ以上の空洞部に該熱膨張性難燃断熱材が挿入されていることにより、本発明は高い防火性能を有すると共に、高い断熱性能を有する建築物用枠部材を提供することができる。
ここで、本発明の建築物用枠部材は、該少なくとも2つ以上の空洞部の一部に該熱膨張性難燃断熱材が挿入されていない場合であったとしても高い防火性能を有するが、該少なくとも2つ以上の空洞部のすべてに該熱膨張性難燃断熱材が挿入されている場合が好ましい。この場合、本発明の建築物用枠部材は高い防火性能を有すると共に、高い断熱性能を有する。
そして、ISO834には、標準加熱温度曲線としてT=345log10(8t+1)+20(ここで、T:平均炉内温度(℃)、t:試験の経過時間(分)である。)が規定されており、該標準加熱温度曲線にしたがった加熱開始20分後の平均炉内温度は781℃となる。
そして、本発明において、熱膨張性難燃断熱材が最大に膨張する温度が300℃以上、600℃未満の範囲であることとは、該熱膨張性難燃断熱材の最大に膨張する温度範囲の一部または全部が300℃以上、600℃未満の範囲に含まれることを意味しており、好ましくは450℃以上、550℃未満の範囲である。
また、体積が最大に膨張する温度が600℃以上の熱膨張性難燃断熱材は、遮炎性能は高いが、600℃以上の温度では、すでに建築物用枠部材の壁が崩壊し、内部の空洞部が露出している状態であることから、膨張したとしても該空洞部を閉塞することができないため、これも建築物用枠部材全体として高い防火性能を有するとはいえない。
体積が最大に膨張する温度が300℃以上、600℃未満の範囲であれば、該温度範囲内で建築物用枠部材内部の空洞部を閉塞することができ、伝熱効果により、建築物用枠部材の壁の熱を内部の熱膨張性難燃断熱材に吸収できることから、建築物用枠部材全体として高い防火性能を発揮することができる。
空洞部における該金属製補強材の形状は略コ字状又は角パイプ状をしており、該金属製補強材の材質は、形鋼、鉄、ステンレス、アルミニウム、アルミ合金等を用いることができ、型鋼を用いた場合の形状は、特に限定されず、平板型、溝型、角型、L型、山型、I型、T型、およびこれらを2つ以上組合せたもの等を用いることができる。
該金属製補強材の空洞部への挿入方法は、熱膨張性難燃断熱材と同様に該空洞部の長手方向全体にわたって挿入すればよく、最初に該金属製補強材が囲繞するように熱膨張性難燃断熱材を挿入してから、両者を一緒に該空洞部へ挿入してもよく、先に該空洞部に金属製補強材を挿入後、熱膨張性難燃断熱材を該金属製補強材の内部に挿入してもよい。
この場合、あらかじめ成形された長尺の熱膨張性難燃断熱材を建築物用枠部材の空洞部にスムーズに挿入することができることから、本発明の建築物用枠部材について、生産効率が高く、低コストで製造することが可能となる。
ここで、熱膨張性難燃断断熱材の占有面積割合が、空洞部の面積または金属製補強材によって規定される空間の面積に対して70%未満の場合、熱膨張性難燃断熱材が最大に膨張したとしても建築物用枠部材が有する空洞部を閉塞することができない可能性があり、99%を超える場合、熱膨張性難燃断熱材を建築物用枠部材の空洞部にスムーズに挿入することが困難となる可能性がある。
また、「空洞部を閉塞する」ことは、空洞部の空間を難燃断熱材が熱膨張することにより塞ぐことを意味しており、空洞部の形状によっては、空洞部の空間を完全に塞ぐことができず、部分的にわずかな空間が発生する場合も想定されるが、該わずかな空間は防火性能にほとんど影響を与えないと考えられることから、そのような場合であっても、空洞部の空間を完全に塞いだ場合と同等の高い防火性能を維持することができる。
なお、膨張率の測定において、体積膨張率の測定に比べ、面積膨張率の測定が容易であることから面積膨張率の測定を採用しているのであり、体積が最大に膨張する温度と面積が最大に膨張する温度は同一である。
また、該面積膨張率が最小値である1%であったとしても、該占有面積割合(膨張前)が最大値である99%であれば、熱膨張性難燃断熱材の膨張時の占有面積は(99/100)×(1+(1/100))=100/100と算出され、上記と同様に理論上では空洞部の面積を完全に閉塞することが可能である。
また、該樹脂フォームの独立気泡率は特に限定されないが、好ましくは該樹脂フォームの独立気泡率は80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。該樹脂フォームの独立気泡率が80%以上であると、特に断熱性能に優れるという機能特性が得られる。
また、室外側の上部の空洞部4には、金属製補強材として、略コ字状の形鋼9が配設されている。
ここで、該空洞部5~8の面積または該金属製補強材である形鋼9によって規定される空間の面積に対する、熱膨張性難燃断熱材10の面積の割合は、それぞれ90%である。
そして、例えば熱膨張性難燃断熱材10の最大膨張温度300℃における最大面積膨張率を15%であるとした場合、熱膨張性難燃断熱材10の最大膨張時の面積は103.5%((90/100)×(1+15/100)=1.035)と算出され、100%を超えるため、熱膨張性難燃断熱材10は300℃において、該空洞部5~8の面積または該金属製補強材である形鋼9によって規定される空間のそれぞれを閉塞することができる。
遮炎性能試験は、窓枠部材1の室外側2からの火災を想定し、窓枠部材の室内側3とほぼ同一形状である矩形の貫通孔を有するセラミック板に、室外側2が露出するように該試験体を嵌入した後、該セラミック板を室外側2が加熱されるよう加熱炉に設置した。
それぞれ試験体を1個ずつ使用し、加熱開始20分後の平均炉内温度が781℃になるまでのISO834にしたがった標準加熱温度曲線において、100℃ごとに加熱を終了する試験を繰り返すことにより、最終加熱温度が100~700℃まで各100℃の試験体および781℃の試験体を計8個得た。該加熱後の試験体について、それぞれ室外側2および室内側3の正面からの外観、並びに横断面の外観の観察を行った。
ここで、室内側3の正面からの外観は、最終加熱温度が100~781℃までの試験体すべてにおいて特に変化はなかったため、表1への記載を省略する。
表1 遮炎性能に関する試験の結果
また、横断面の外観の観察結果から、300~400℃の範囲で、室外側2の空洞部4~5に挿入されたフェノール樹脂フォームは、それぞれ膨張して空洞部4~5を閉塞した。さらに、500℃では該フェノール樹脂フォームは空洞部4~5を閉塞したまま特に変化はなく、600℃では該フェノール樹脂フォームの室外側約20%が炭化した。塩化ビニル樹脂が崩壊・消失した700℃では、完全に露出した該フェノール樹脂フォームの室外側約50%が炭化すると共に、室内側3の空洞部6~8に挿入されたフェノール樹脂フォームが、それぞれ膨張して空洞部6~8を閉塞した。781℃では、空洞部4~5に挿入されたフェノール樹脂フォームだけでなく、空洞部4~5と空洞部6~8の間の隔壁までが炭化し、空洞部6~8のフェノール樹脂の室外側約20%が炭化した。
しかしながら、781℃においても室内側3の空洞部6~8のフェノール樹脂の室外側約20%が炭化しただけであったことから、該遮炎性能に関する試験に合格するだけでなく、室内側3の正面からの外観についても特に変化なかったため、本発明の建築物用枠部材が高い防火性能を有することが明らかとなった。
表2 面積膨張率試験後の試験体の横断面の外観についての目視観察結果
また、比較例1のポリスチレンフォームは、熱可塑性樹脂であることから、高温に加熱されるほど溶融するため、加熱により膨張することはなく、比較例2の硬質ウレタンフォームは熱硬化性樹脂であることから、高温に加熱されても溶融することはないが、加熱により膨張することはなく、高温になるほど徐々に炭化し、体積が減少することも明らかとなった。
2:窓枠部材の室外側
3:窓枠部材の室内側
4:室外側の上部空洞部
5:室外側の下部空洞部
6:室内側の上部空洞部
7:室内側の真ん中の空洞部
8:室内側の下部空洞部
9:略コの字状の形鋼
10:熱膨張性難燃断熱材
Claims (7)
- 建築物に用いられる固定枠を有する枠部材の枠内に設置され、長手方向の内部に空洞部を有する合成樹脂製の建築物用枠部材であって、
該空洞部には、成形された熱膨張性難燃断熱材が、該空洞部の長手方向全体にわたって挿入されており、
該熱膨張性難燃断熱材の体積が最大に膨張する温度が300℃以上、600℃未満の範囲であり、前記熱膨張性難燃断熱材は、前記最大に膨張する温度において前記空洞部を閉塞している状態となるように、構成されている、ことを特徴とする建築物用枠部材。 - 横断面図において、建築物用枠部材の内部は隔壁によって少なくとも2つ以上の空洞部に分割されており、該少なくとも2つ以上の空洞部には該熱膨張性難燃断熱材が挿入されており、該少なくとも2つ以上の空洞部の少なくとも1つ以上には該熱膨張性難燃断熱材を囲繞する金属製補強材が配設されている、請求項1に記載された建築物用枠部材。
- 横断面図において、該熱膨張性難燃断熱材の占有面積割合が、該空洞部の面積に対して70~99%である、請求項1に記載された建築物用枠部材。
- 横断面図において、該熱膨張性難燃断熱材の占有面積割合が、該金属製補強材によって規定される空間の面積に対して70~99%である、請求項2に記載された建築物用枠部材。
- 該熱膨張性難燃断熱材の該最大膨張温度における最大面積膨張率が1~30%である、請求項1~4のいずれかに記載された建築物用枠部材。
- 該熱膨張性難燃断熱材の独立気泡率が80%以上である請求項1~5のいずれかに記載された建築物用枠部材。
- 該熱膨張性難燃断熱材が、フェノール樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1~6のいずれかに記載された建築物用枠部材。
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