以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る風力発電装置の構成を示す概略図である。
図1を参照して、実施の形態1に係る風力発電装置10は、発電機20と、蓄電素子30と、出力電圧制御回路40と、励磁電流制御回路50と、発電機制御部60とを備える。
発電機20は、端子21~25と、固定子(図示せず)に設けられた三相の電機子巻線27と、プロペラ5と機械的に連結された回転子(図示せず)に設けられた界磁巻線28と、整流器29とを含む。プロペラ5は、風を受けて回転する様に配置される。
発電機20は、例えば、自動車用のオルタネータによって構成することができる。端子21は、回転子の回転数に応じた周波数を有する交流電圧を出力するP端子に相当する。端子23は、アース用のE端子に相当し、端子22は、発電機20の発電によって得られた直流電圧が出力されるB端子に相当する。端子24及び25は、界磁巻線28の一端及び他端と接続される。端子22(B端子)は、発電機の「出力端子」の一実施例に対応する。
整流器29は、三相の全波整流を行うダイオードブリッジによって構成される。三相の電機子巻線27の一端は、当該ダイオードブリッジの交流側(三相)とそれぞれ接続される。三相の電機子巻線27の他端同士は中性点で互いに接続される。三相の電機子巻線27のうちの一相の一端は、端子21(P端子)と更に接続される。
整流器29を構成するダイオードブリッジの直流側は、端子22及び端子23と接続される。発電機20では、プロペラ5の回転に伴って電機子巻線27に生じた三相交流電圧が整流器29によって整流されて、直流電力(即ち、直流電圧及び直流電流)が端子22から出力される。
出力電圧制御回路40の入力側は、端子22と接続される。出力電圧制御回路40の出力側は、蓄電素子30と電気的に接続される。蓄電素子30は、例えば、鉛蓄電池等の二次電池、又は、キャパシタ等によって構成することが可能である。
励磁電流制御回路50の入力側は蓄電素子30と電気的に接続され、出力側は発電機20の端子24及び25と接続される。励磁電流制御回路50は、蓄電素子30の出力電圧を用いて、界磁巻線28に供給される励磁電流Ifを発生する。
発電機制御部60は、蓄電素子30からの電力供給によって動作して、風力発電装置10の各要素を制御する。図1では、発電機制御部60は、当該制御機能の一部として、出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50の制御信号を生成する。
発電機制御部60は、図示しない、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インタフェース、及び、内部電源回路を有する様に構成することができる。内部電源回路は、蓄電素子30からの電力を用いて制御電源を生成する。メモリには、制御用プログラム、演算により得られたデータ、検出値、指令値等の各種データを記憶することができる。CPUは、所望の演算に必要なプログラム及びデータをメモリから読み出して、後述する制御演算を実行することができる。発電機制御部60は「制御器」の一実施例に対応する。
蓄電素子30は、図示しない外部負荷、例えば、照明及びセンサの電源としても用いられる。即ち、蓄電素子30は、出力電圧制御回路40を介して発電機20による発電電力によって充電されるとともに、風力発電装置10自体の制御電源、界磁巻線28に流れる励磁電流Ifの電源、及び、上記外部負荷の電源としても機能する。このため、実際には、発電機20による発電電力から、上記電源としての消費電力を減算した電力によって、蓄電素子30は充電される。尚、図示は省略しているが、蓄電素子30に対して、電圧、電流、及び、温度の検出器、及び、保護回路、並びに、負荷への給電回路が設けられる。
図2は、図1に示された風力発電装置10の電気回路部分の構成を示す回路図である。図2では、出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50の構成例が主に示される。
図2を参照して、出力電圧制御回路40は、一般にチョッパと呼ばれる昇圧DC/DCコンバータによって構成することができる。例えば、出力電圧制御回路40は、平滑コンデンサ41及び42と、ダイオード43と、スイッチング素子44と、リアクトル45とを有する。スイッチング素子44は、MOSFET(Metal-Oxide-semiconductor Field-Effect Transistor)に代表される、制御信号に従ってオンオフ制御可能な自己消弧型の半導体素子によって構成することができる。スイッチング素子44は、発電機制御部60からのゲート信号SGbに応じてオンオフされる。
平滑コンデンサ41は、端子22と電気的に接続された入力ノードNinと、ノードNgとの間に接続される。ノードNgは、発電機20の端子23と同電位(例えば、接地電位)である。平滑コンデンサ42は、蓄電素子30と電気的に接続された出力ノードNoutと、ノードNgとの間に接続される。入力ノードNin及び出力ノードNoutは、出力電圧制御回路40の「入力ノード」及び「出力ノード」にそれぞれ相当する。
スイッチング素子44は、ノードNm1及びノードNgの間に接続される。スイッチング素子44は、発電機制御部60からのゲート信号SGbに応じてオンオフする。ダイオード43は、ノードNm1及び出力ノードNoutの間に接続される。ダイオード43のアノードは、ノードNm1と接続され、カソードは出力ノードNoutと接続される。即ち、ダイオード43は、ノードNm1から出力ノードNoutへの電流を通過する一方で、出力ノードNoutからノードNm1への電流を遮断する。リアクトル45は、入力ノードNin及びノードNm1の間に接続される。
出力電圧制御回路40では、入力ノードNinの直流電圧Vbが入力電圧、入力ノードNinに入力される直流電流Ibが入力電流、出力ノードNoutの直流電圧Voutが出力電圧と定義される。図示は省略しているが、直流電流Ib、直流電圧Vb、及び、出力電圧Voutの検出器が配置される。これらの検出器による検出値は、発電機制御部60へ入力される。
図2の構成例では、端子22が入力ノードNinと直接接続されるので、直流電圧Vb及び直流電流Ibは、発電機20の出力電圧及び出力電流にそれぞれ相当する。発電機20の出力電流は、発電機20の電機子巻線27を流れる電機子電流に相当する。従って、出力電圧制御回路40で直流電圧Vb及び直流電流Ibを検出することで、発電機20の出力電圧及び出力電流を検出することが可能である。このため、以下では、直流電圧Vb及び直流電流Ibを、発電機20の出力電圧及び出力電流としても取り扱う。即ち、直流電圧Vb及び直流電流Ibの積は、発電機20から出力された発電電力に相当する。
出力電圧制御回路40(昇圧DC/DCコンバータ)では、スイッチング素子44のオン状態では、入力ノードNinからリアクトル45に流れる電流によって、リアクトル45にエネルギが蓄積される。スイッチング素子44をオフすると、リアクトル45に蓄積されたエネルギが、ダイオード43を介して出力ノードNoutへ放出される。これにより、入力ノードNinよりも高い電圧を出力ノードNoutに発生することができる(Vout≧Vb)。
昇圧チョッパでは、単位時間中でのスイッチング素子44のオン時間の割合で定義されるデューティ比Dbを用いると、直流電圧(入力電圧)Vb及び直流電圧(出力電圧)Voutの間には、Db=1-(Vb/Vout)の関係が成立することが知られている。従って、スイッチング素子44のオンオフ制御により、式(1)に示される電圧比の制御が可能である。
1-Db=(Vb/Vout)…(1)
式(1)において、0<(1-Db)≦1であるから、(Vb/Vout)≦1、即ち、Vout≧Vbの範囲で、出力電圧制御回路40は動作することができる。従って、スイッチング素子44のオフ時間の比率に相当する(1-Db)を変化させることで、入力電圧Vbに対する出力電圧Voutの昇圧比(Vout/Vb)を制御できることが理解される。
励磁電流制御回路50は、発電機20の界磁巻線28をリアクトルとして用いる降圧DC/DCコンバータ(降圧チョッパ)によって構成することができる。例えば、励磁電流制御回路50は、平滑コンデンサ46と、ダイオード47と、スイッチング素子48を有する。スイッチング素子48は、スイッチング素子44と同様に、自己消弧型の半導体素子によって構成される。
平滑コンデンサ46は、端子24と接続されたノードNfと、ノードNgとの間に接続される。平滑コンデンサ46は、蓄電素子30の出力電圧によって充電される。スイッチング素子48は、端子25と接続されたノードNm2及びノードNgの間に接続される。スイッチング素子48は、発電機制御部60からのゲート信号SGfに応じてオンオフされる。ダイオード47は、ノードNm2及びノードNfの間に接続される。ダイオード47のアノードは、ノードNm2と電気的に接続され、カソードはノードNfと接続される。即ち、ダイオード47は、ノードNm2(端子25)からノードNfへの電流を通過する一方で、ノードNfからノードNm2への電流を遮断する。
界磁巻線28は、発電機20の内部で端子24及び端子25の間に電気的に接続される。励磁電流制御回路50は、平滑コンデンサ46の直流電圧を入力電圧とし、励磁電流Ifによって界磁巻線28に生じる電圧を出力電圧とする降圧チョッパとして動作する。平滑コンデンサ46は蓄電素子30によって充電されるので、平滑コンデンサ46の電圧は、平滑コンデンサ42の電圧(出力電圧Vout)と同等である。尚、図示は省略しているが、励磁電流Ifの検出器が配置されており、励磁電流Ifの検出値も、発電機制御部60へ入力される。
スイッチング素子48のオン期間には、平滑コンデンサ46の入力電圧を用いて、ノードNfから、端子24、界磁巻線28、端子25(ノードNm2)、及び、スイッチング素子48を経由して、ノードNgに至る経路により、界磁巻線28へのエネルギ蓄積を伴って、励磁電流Ifが供給される。
一方で、スイッチング素子48のオフ期間では、平滑コンデンサ46の入力電圧は供給されず、ノードNf、端子24、界磁巻線28、端子25(ノードNm2)、ダイオード47、及び、ノードNfの還流経路により、界磁巻線28に蓄積されたエネルギにより、励磁電流Ifが流れ続ける。
従って、単位時間中でのスイッチング素子48のオン時間の割合で定義されるデューティ比Dfを用いると、平滑コンデンサ46の電圧(Vout)、界磁巻線28に生じる直流電圧Vf、及び、デューティ比Dfの間には、Vf=Vout・Dfの関係が成立する。界磁巻線28の電気抵抗値Rfを用いると、Vf=Rf・Ifであるので、励磁電流Ifは、式(2)で示される。
If=(Vout/Rf)・Df …(2)
即ち、励磁電流制御回路50は、スイッチング素子48のデューティ比Dfによって、励磁電流Ifを制御することができる。
蓄電素子30(ノードNb)と、発電機制御部60との間には、ダイオード51が更に接続されてもよい。ダイオード51は、ノードNbと接続されたアノード、及び、発電機制御部60と接続されたカソードを有する。これにより、発電機制御部60から蓄電素子30への電流は遮断される。
同様に、励磁電流制御回路50(ノードNf)と、蓄電素子30(ノードNb)との間には、ダイオード52が更に接続されてもよい。ダイオード52は、ノードNbと接続されたアノード、及び、ノードNfと接続されたカソードを有する。これにより、励磁電流制御回路50から蓄電素子30への電流は遮断される。
又、出力電圧制御回路40(出力ノードNout)と、蓄電素子30(ノードNb)との間には、ダイオード53が更に接続されてもよい。ダイオード53は、出力ノードNoutと接続されたアノード、及び、ノードNbと接続されたカソードを有する。これにより、蓄電素子30から出力電圧制御回路40への電流は遮断される。
ダイオード51~53を配置することにより、蓄電素子30、出力電圧制御回路40、励磁電流制御回路50、及び、発電機制御部60のそれぞれとの間の電流方向を固定することが可能である。尚、ダイオード51~53の配置は省略することも可能である。又、発電機20の端子22及び出力電圧制御回路40の間に、出力電圧制御回路40から端子22への電流を遮断する方向に、ダイオードを更に接続することも可能である。
次に、図3及び図4を用いて、風力発電機の特性について説明する。
図3は、風車の回転数-トルクの特性図の一例である。
図3の横軸には風車の回転数N[r/min]が示され、縦軸には、風車に発生するトルクT[N・m]が示される。図1の風力発電装置10では、プロペラ5の回転数及びトルクが、図3の横軸及び縦軸にそれぞれ相当する。
風車は、一定風速下では、回転数が決まると発生トルクが決定される。図3には、風速毎に、回転数及びトルク間の関係を示す曲線が記載される。
図3から、風速が一定の下では、風車の回転数Nが増加するのに従ってトルクTも増加するが、極大点(最大トルク点)を超えて回転数Nが更に増加すると、トルクTは、回転数Nの増加に従って減少する。
各風速での最大トルク点での風車の発生トルク(最大トルク)は、風速が大きくなるのに従って増加し、最大トルクが生じる回転数Nについても、風速が大きくなるのに従って上昇する。
基準となる風速Voにおいて、回転数NoのときにトルクToが発生する特性を風車が有するとき、任意の風速Vにおける当該風車の回転数N及びトルクTは、下記の式(3)及び式(4)にそれぞれ表すことができる。
N=No・(V/Vo) …(3)
T=To・(V/Vo)^2 …(4)
式(3)より、回転数Nは風速に比例し、式(4)より、トルクTは風速の2乗に比例することがわかる。式(3)及び式(4)から、回転数N及びトルクTの関係を導くと、式(5)を得ることができる、式(5)から、トルクTは、回転数Nの2乗に比例することが確認できる。
T=To・(N/No)^2 …(5)
図4は、図3に示した回転数-トルク特性を有する風車の回転数-機械出力の特性図である。図4の横軸には、図3と同様の回転数N[r/min]が示され、縦軸には、機械出力P[W]が示される。機械出力Pは、機械角速度ωとトルクTの積で示される。回転数Nに対する角速度ωは、ω=(N/60)・2・πで示されるので、機械出力P[W]は、下記の式(6)で表すことができる。
P=(N/60)・2・π・T …(6)
更に、基準となる風速Voにおける機械出力Poと、任意の風速Vにおける機械出力Pとの関係は、下記の式(7)で表すことができる。式(7)より、機械出力Pは、風速の3乗に比例することが確認できる。
P=Po・(V/Vo)^3 …(7)
式(3)及び式(7)から回転数N及び機械出力Pの関係を導くと、式(8)を得ることができる。式(8)から機械出力は、回転数Nの3乗に比例することが確認できる。
P=Po・(N/No)^3 …(8)
図4においても、風速が一定の下では、風車の回転数Nが増加するのに従って機械出力Pも増加するが、極大点(最大出力点)を超えて回転数Nが更に増加すると、機械出力Pは、回転数Nの増加に従って減少する。
各風速での最大出力点での風車の機械出力(最大出力)は、風速が大きくなるのに従って増加し、最大出力が生じる回転数Nについても、風速が大きくなるのに従って上昇する。図4中には、各風速での最大出力点の集合に相当する最大出力線210が更に示されている。最大出力線210は、各風速での、機械出力が最大となる回転数の集合である。
最大出力線210は、式(8)に対して、機械出力Pが最大となる動作点に対応させた回転数No及び機械出力Poを代入したときの関数式に相当する。このときの回転数No及びトルクToを式(7)に代入すると、図3上にも最大出力線210を引くことができる。
従って、図3に示す様な、風車の回転数-トルク特性が把握できていれば、最大出力線210上の動作点(回転数N及び発生トルクTの組み合わせ)で発電機20を運転することにより、風速を知ることができなくても、風速に応じて機械出力Pを最大限取り出すことが可能である。
次に、発電機20が所望のトルクを発生する様に、発電機20の運転を制御する手法について説明する。
一般に、巻線界磁の同期電動機は、電機子巻線に流れる無効電流成分を調整することで出力を制御することができる。本実施の形態では、発電機20は、図1で示したとおり、電機子巻線27及び界磁巻線28を有しており、巻線界磁の同期発電機を含んで構成されているが、その出力端子には整流器29が接続されている。従って、発電機20では、電機子巻線に無効電流の基本波成分が流れることはない。このため、同期発電機の出力側に整流器29が接続された図1の発電機20は、他励式の直流発電機とみなすことができる。
一般的に、他励式の直流発電機では、電機子電流Ia、界磁巻線の励磁電流If、電機子及び界磁巻線間の相互インダクタンスLaf(以下、単に「相互インダクタンスLaf」とも称する)、及び、機械角速度ωに対して、内部誘起電圧Eaは式(9)で示され、発生トルクTeは式(10)で示される。
Ea=Laf・If・ω …(9)
Te=Laf・If・Ia …(10)
従って、発電機20の特性試験により、励磁電流If、電機子電流Ia、及び、発生トルクTeを測定することで、式(10)から相互インダクタンスLafを算出することができる。実施の形態1では、図2の回路構成から理解される様に、発電機20の電機子電流Iaは、端子22から出力電圧制御回路40へ入力される直流電流Ibに相当する。このため、発電機20の運転時には、特性試験で予め算出した相互インダクタンスLafと、励磁電流If及び直流電流Ibの検出値とを用いて、式(10)に従って発生トルクを演算することができる。
図5には、電機子巻線27及び整流器29が搭載された発電機20の固定子の電気的な等価回路が示される。
図5を参照して、固定子の等価回路は、三相交流回路を直流回路に換算した形で記載される。従って、図5中では、電機子巻線27のインダクタンスLa、及び、電機子巻線抵抗Raも直流換算されている。又、図5中のVdは、整流器29のダイオードで生じる順電圧降下を示しており、端子22の電圧は、図1で説明した、出力電圧制御回路40の直流電圧Vbと同等である。
この等価回路では、内部誘起電圧Eaについて、下記の式(11)が成立する。
Ea=La・dIb/dt+Ra・Ib+2・Vd+Vb …(11)
整流器29中のダイオードの作用により、式(11)において、Ea-2・Vd-Vb>0の場合には、Ib>0となる一方で、Ea-2・Vd-Vb≦0の場合には、Ib=0となる。又、直流電流Ibは、Ea及びVbの電圧差に応じて変化する。式(9)~式(11)を利用すれば、機械角速度ωに応じて直流電圧Vb及び励磁電流Ifを制御することによって、直流電流Ib及び発生トルクTeが所望の値になる様に、発電機20を運転することができる。
ここで、式(9)~式(11)では、発電機20は直流発電機として扱われているが、実際には、発電機20は、極対数がpの同期発電機である。このため、三相交流を直流に全波整流する際に生じるリプル電圧が、発電機20からの実際の出力電圧(即ち、直流電圧Vb)には含まれる。当該三相交流の周波数feは、下記の式(12)で表すことができる。上記リプル電圧の周波数は、(6・fe)の整数倍となる。
fe=ω/(2・π)・p=N/60・p …(12)
本実施の形態では、発電機20が所望の直流電流Ib(電機子電流Ia相当)及び発生トルクTeで運転される様に、出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50によって、直流電圧Vb及び励磁電流Ifが制御される。これらの直流電圧Vb及び励磁電流Ifの制御、並びに、直流電流Ib及び発生トルクTeの所望の値の決定の手法は限定されるものではないが、例えば、以下の様な制御を適用することができる。尚、本実施の形態では、プロペラ5及び発電機20の回転子が直結されており、両者の回転数が同一値であるものとして説明を進める。
基本的には、発電機20の発生トルクTeは、現在の回転数Nに応じて一意に決定される。このため、直流電圧Vb及び励磁電流Ifの制御に関しては、現在の回転数Nに応じて直流電圧Vbと励磁電流Ifの指令値を決定し、各々の検出値を用いてフィードバック制御を行うことができる。
又、直流電圧Vbに代えて、回転数Nに応じた直流電流Ibの指令値を決定してフィードバック制御を行ってもよい。或いは、励磁電流Ifに代えて、直流電圧Vfの指令値を決定してフィードバック制御を行うことも可能である。又は、回転数Nに対応させて、デューティ比Db,Dfを直接出力することもできる。或いは、発生トルクTeのフィードバック制御を行って、励磁電流Ifの指令値を決定してもよい。
図6は、発電機制御部60による制御構成例を説明するブロック図である。尚、図6を始めとするブロック図中に記載された各ブロックの機能は、例えば、発電機制御部60に含まれるCPUが、予め格納されたプログラムを実行することによるソフトウェア処理によって実現することができる。或いは、各機能の少なくとも一部については、電子回路等のハードウェアによって実現することも可能である。
図6を参照して、発電機制御部60は、回転数検出値生成部62、出力電圧制御部64、励磁電流制御部66、励磁電流供給停止判定部68、及び、ANDゲート65、67を有する。
回転数検出値生成部62には、端子21(P端子)から出力される交流電圧Vpが入力される。交流電圧Vpから、発電機20の回転子の電気角周波数(feに相当)が求められ、当該電気角周波数及び発電機20の極対数pから、プロペラ5及び発電機20の回転数Nを演算することができる。以下では、回転数検出値生成部62によって生成された回転数検出値についても、回転数Nと表記する。上述した様に、本実施の形態では、回転数Nは、発電機20及びプロペラ5(風車)の両方の回転数を示している。
出力電圧制御部64は、プロペラ5の回転数N及び直流電圧Vbの検出値に基づき、出力電圧制御回路40のスイッチング素子44のゲート信号SGbを生成する。
図7は、出力電圧制御部64の構成例を説明するブロック図である。
図7を参照して、出力電圧制御部64は、出力電圧指令値生成部71、減算器72、電圧制御器73、比較器74、及び、NOTゲート75を有する。
出力電圧指令値生成部71は、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nに基づき、発電機20の出力電圧に相当する直流電圧Vbの指令値である出力電圧指令値Vbrefを生成する。
図8は、回転数Nと、出力電圧指令値Vbrefとの関係の一例を示す概念図である。
図8を参照して、基本的には、出力電圧指令値Vbrefは、回転数Nの増加に応じて上昇する様に設定される。但し、回転数Nが小さい領域では、直流電圧Vbが小さくなり過ぎない様に、出力電圧指令値Vbrefは、一定値とすることが好ましい。又、出力電圧指令値Vbrefは、当該時点での出力電圧制御回路40の出力電圧Vout(検出値)を上限値として設定される。
出力電圧指令値生成部71は、図8に示された、回転数Nと出力電圧指令値Vbrefとの関係に従って、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nを入力として、出力電圧指令値Vbrefを出力する。例えば、出力電圧指令値生成部71は、演算式、又は、ルックアップテーブルによって構成することができる。
尚、式(10)から理解される様に、発生トルクTeに直接関係するのは発電機20の電機子電流に相当する直流電流Ibである。このため、出力電圧指令値生成部71は、発電機20の動作点(N,Te)が決まると、当該動作点において望ましい直流電流Ibを発電機20が出力できる様な値に、出力電圧指令値Vbrefを決定することも可能である。つまり、出力電圧指令値Vbrefは、式(11)に従って決定されることに限定されず、動作点に応じた出力特性を予め測定することで決定することが可能である。或いは、式(11)以外の演算式に従って、出力電圧指令値Vbrefを決定することも可能である。
再び図7を参照して、減算器72は、出力電圧指令値Vbrefから、直流電圧Vb(検出値)を減算して電圧偏差ΔVbを算出する。電圧偏差ΔVbは、電圧制御器73に入力される。
電圧制御器73は、例えば、比例積分制御器で構成されて、直流電圧Vbが出力電圧指令値Vbrefに一致するための、出力電圧制御回路40中のスイッチング素子44のデューティ比を演算する。比例積分制御での、積分項の初期値は、例えば、Vb/Voutとすることができる。ここで、「直流電圧Vbが出力電圧指令値Vbrefに一致する」とは、両者が厳密に一致する場合に限定されず、直流電圧Vbが出力電圧指令値Vbrefに近づく(追従する)場合も含むものとする。以下、本明細書での制御に関する「一致する」との記載についても同様であるものする。
電圧制御器73は、出力電圧制御回路40のスイッチング素子44のオフ期間のデューティ比を示す制御量(1-Db)を、0<(1-Db)≦1.0の範囲内で出力する。式(1)に示される様に、出力電圧制御回路40には、1-Db=Vb/Voutの関係があるので、電圧比(Vb/Vout)を上昇又は低下させることで直流電圧Vbが出力電圧指令値Vbrefに一致する様に、制御量(1-Db)を設定することができる。
比較器74は、電圧制御器73からの制御量(1-Db)と、搬送波CWとを比較する。搬送波CWは、例えば、0≦CW≦1.0の範囲内で周期的に上昇及び低下を繰り返す三角波によって構成される。搬送波(三角波)CWの周波数は、スイッチング素子44のスイッチング周波数に相当する。
比較器74は、(1-Db)の方が搬送波CWよりも大きいときには、論理ハイレベル(以下、単に「Hレベル」とも称する)を出力し、反対に、(1-Db)の方が搬送波CWよりも小さいときには、論理ローレベル(以下、単に「Lレベル」とも称する)を出力する。これにより、比較器74からは、制御量(1-Db)及び搬送波CWの比較結果を示すパルス信号が出力される。
NOTゲート75は、比較器74からのパルス信号の反転信号を、ゲート信号SGbとして出力する。
尚、比較器74に対して、制御量(1-Db)から求められたデューティ比Dbを入力することも可能である。この場合には、NOTゲート75を配置することなく、比較器74の出力(パルス信号)を、そのままゲート信号SGbとして用いることができる。
再び図6を参照して、励磁電流制御部66は、回転数N、及び、励磁電流Ifの検出値に基づき、励磁電流制御回路50のスイッチング素子48のゲート信号SGfを生成する。
図9は、励磁電流制御部66の構成例を説明するブロック図である。
図9を参照して、励磁電流制御部66は、励磁電流指令値生成部81、減算器83、電流制御器86、及び、比較器87を有する。
励磁電流指令値生成部81は、回転数検出値生成部62によって検出された回転数Nに基づき励磁電流指令値Ifrefを出力する。減算器83は、励磁電流指令値Ifrefから励磁電流If(検出値)を減算して、電流偏差ΔIfを算出する。電流偏差ΔIfは、電流制御器86に入力される。
電流制御器86は、例えば比例積分制御器で構成されて、励磁電流Ifが励磁電流指令値Ifrefに一致するための、励磁電流制御回路50中のスイッチング素子48のデューティ比を演算する。
電流制御器86は、励磁電流制御回路50のスイッチング素子48のオン期間のデューティ比Dfを、0≦Df≦1.0の範囲内で出力する。式(2)に示される様に、励磁電流制御回路50には、Df=If/(Vout/Rf)の関係があるので、ΔIf>0に対してはデューティ比Dfを上昇させる一方で、ΔIf<0に対してはデューティ比Dfを低下させる様に、デューティ比Dfを調節することができる。
比較器87は、電流制御器86からのデューティ比Dfと、比較器74と同様の搬送波CWとを比較して、ゲート信号SGfを出力する。従って、デューティ比Dfの方が搬送波CWよりも大きい期間において、スイッチング素子48はオン状態に制御される。一方で、反対に、デューティ比Dfの方が搬送波CWよりも小さい期間では、スイッチング素子48はオフ状態に制御される。尚、搬送波CWの周波数は、出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50の間で独立に決定することができる。
再び図6を参照して、励磁電流供給停止判定部68は、回転数Nの検出値に基づき励磁電流供給フラグGonを出力する。励磁電流を供給すると判定したときには、Gon=1(Hレベル)に設定され、励磁電流を供給しない(即ち、励磁電流を停止する)と判定したときには、Gon=0(Lレベル)に設定される。
ANDゲート65には、ゲート信号SGb及び励磁電流供給フラグGonが入力される。ANDゲート65は、出力電圧制御回路40中のスイッチング素子44に伝送される、最終的なゲート信号SGb1を出力する。ゲート信号SGb1は、励磁電流供給フラグGonがHレベルの間はゲート信号SGbと同じ信号である。このとき、出力電圧制御回路40は、直流電圧Vbを出力電圧指令値Vbrefに一致するためのゲート信号SGbに従って動作する。
一方で、ゲート信号SGb1は励磁電流供給フラグGonがLレベルの間は、Lレベル信号に固定される。これにより、スイッチング素子44は、オフ状態に固定されて、ゲートブロックされた状態となる。このとき、出力電圧制御回路40は、動作を停止する。
同様に、ANDゲート67には、ゲート信号SGfと励磁電流供給フラグGonが入力される。ANDゲート67は、励磁電流制御回路50中のスイッチング素子48に伝送される、最終的なゲート信号SGf1を出力する。ゲート信号SGf1は、励磁電流供給フラグGonがHレベルの間はゲート信号SGfと同じ信号である。このとき、励磁電流制御回路50は、励磁電流Ifを励磁電流指令値Ifrefに一致するためのゲート信号SGfに従って動作する。
一方で、ゲート信号SGf1は励磁電流供給フラグGonがLレベルの間は、Lレベル信号に固定される。これにより、スイッチング素子48は、オフ状態に固定されて、ゲートブロックされた状態となる。このとき、励磁電流制御回路50は、動作を停止する。
図10は、励磁電流供給停止判定部68による制御処理を説明するフローチャートである。図10の制御処理は、風力発電装置の10の運転中に一定の周期で繰り返し実行される。
図10を参照して、励磁電流供給停止判定部68は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)1及びS3により、回転数Nが、予め定められた基準回転数N11,N12に対してどの範囲にあるかを判定する。N≧N12の場合(S1のYES判定時)には、S2により、モード1の処理(図11)が実行される。又。N11<N<N12の場合(S1のNO判定、かつ、S3のYES判定時)には、S4により、モード2の処理(図12)が実行される。N≦N11の場合(S1のNO判定、かつ、S3のNO判定時)には、S5により、モード3の処理(図13)が実行される。
図11~図13には、図10のモード1(S2)、モード2(S4)、及び、モード3(S5)のそれぞれでの制御処理を説明するフローチャートが示される。
図11を参照して、モード1の適用時には、S11により、励磁電流供給フラグGon=1(Hレベル)に設定して、フラグをセットする。即ち、モード1では、励磁電流は常時供給される。
図12を参照して、モード2の適用時には、S21により、前回設定された励磁電流供給フラグGonの状態が確認される。Gon=1、即ち、フラグがセットされている場合(S21のYES判定時)には、S22により、励磁電流供給フラグGon=1(Hレベル)に設定される。これに対して、Gon=0、即ち、フラグがリセットされている場合には(S21のNO判定時)、S23により、励磁電流供給フラグGon=0(Lレベル)に設定される。即ち、モード2では、励磁電流供給フラグGonのセット又はリセットが維持されるので、励磁電流の供給時には当該供給状態が継続され、励磁電流の停止時には、当該停止状態が継続される。
一方で、モード3の適用時には、S31により、励磁電流供給フラグGon=0(Lレベル)に設定して、フラグをリセットする。即ち、モード3では、励磁電流の供給は停止される。
図14は、実施の形態1に係る風力発電装置での励磁電流供給制御の動作例を示すタイミングチャートである。図14では、図10~図13に従って励磁電流供給フラグGonが設定されたときの動作が示されている。尚、図14及び後続の同様のタイミングチャートでは、回転数の上昇(加速)及び低下(減速)の挙動について、説明を簡単にするために傾きが一定の直線(一次関数)で表記しているが、実際には、式(13)の右辺の(Tm-Te)の絶対値が変わることで、傾きは一定となるとは限らない。
図14を参照して、時刻ts~t1では、N≧N12(モード1)のため、励磁電流供給フラグGon=1に設定されて、励磁電流Ifが発電機20に供給される。励磁電流Ifの供給時は、発電機20には発電トルクTeが作用する。このため、Gon=1の期間では、Tm-Te<0となる風速においては、回転数Nは徐々に低下する。
時刻t1以降では、回転数Nは基準回転数N12よりも低下する。但し、N11<N<N12(モード2)の間、即ち、時刻t2までは、励磁電流供給フラグGon=1に維持されて、励磁電流の供給、即ち、発電機20の発電が継続される。
時刻t2において、N≦N12(モード3)が検知されるのに応じて、励磁電流供給フラグGonは、1から0に変化する。これにより、励磁電流が停止されて、発電機20の発電は停止される。これにより、N11においてTm>0となる風速の場合は、回転数Nは上昇に転じる。但し、回転数Nが基準回転数N12に達するまでは、N11<N<N12(モード2)であるので、励磁電流供給フラグGon=0に維持される。これにより、時刻t2~t3では、励磁電流の停止、及び、発電機20の発電停止が継続される。
時刻t3において、回転数N≧N12(モード1)が検知されるのに応じて、励磁電流供給フラグGon=1にセットされると、励磁電流の供給、即ち、発電機20の発電が再開される。これにより、発電トルクTeの発生によって回転数Nは低下する。時刻t3以降では、N11<N<N12(モード2)であるので、励磁電流供給フラグGon=1が維持される。
時刻tx~tyでは、一時的な風速の上昇により、発電トルクTeよりも大きいトルクが、プロペラ5から発電機20に作用することで、回転数Nが上昇している。時刻ty以降では、風速が低下に転じることで、回転数Nが低下する。時刻ty~tzまでの間、風速低下が継続する。
時刻ty後の時刻t4において、N≦N11(モード3)が検知されるのに応じて、励磁電流供給フラグGonは、1から0に変化する。これにより、励磁電流が停止されて、発電機20は発電を停止する。時刻t4~tzでは、発電トルクTe=0であるので、発電機20での機械的損失を無視すると、N11においてTm=0となる風速の場合でも、回転数NはN11に維持される。
時刻t4以降では、N≧N12に達する時刻t5までの間は、モード2が適用されて、励磁電流の停止が継続される。即ち、発電トルクTe=0であるので、時刻tz以降で風速が上昇しTm>0になると、回転数Nが上昇する。
以降、同様の制御により、時刻t5~t6、及び、時刻t7以降では、励磁電流が供給される。一方で、時刻t6~t7では、励磁電流供給フラグGon=0に設定されて、励磁電流は停止される。
この様に、N11<N<N12の領域では、回転数NがN≧N12の領域から低下してきた場合には励磁電流の供給が継続される一方で、回転数N≦N11の領域から上昇してきた場合は、励磁電流の停止が継続される、いわゆる、ヒステリシス特性が実現される。以下では、N11<N<N12の領域を、「間欠励磁運転領域」とも称する。又、本実施の形態において、基準回転数N11は「第1の基準回転数」の一実施例に対応し、基準回転数N12は「第2の基準回転数」の一実施例に対応する。基準回転数N11,N12によって規定される間欠励磁運転領域は、発電機20の損失特性を考慮して、発電機20から電力を取り出し可能な低速側の回転数範囲に適合させて決定することができる。又、図14及び後続の同様のタイミングチャートにおいて、励磁電流供給フラグGon=1の期間では、励磁電流の「供給状態」であり、励磁電流供給フラグGon=0の期間では、励磁電流の「停止状態」である。
ここで、発電機20の動作点を、図3の最大出力線210上にとることを考える。このとき、発電機20は回転数の2乗に比例するトルクで運転されるため、回転数Nが小さい領域では、励磁電流If及び出力電流Ibを小さくして、発生トルクTeを低減する。又、式(9)から理解される様に、内部誘起電圧Eaは、機械角速度ω(即ち、回転数N)に比例する。
このため、風速が低下した際に使用される回転数Nが小さい領域では、上記の様に励磁電流Ifを小さくすることからも、内部誘起電圧Eaは低くなる。この下で発電電力を得るためには、出力電圧制御回路40によって、直流電圧Vbを低く制御すること、言い換えると、式(1)中の(Vb/Vout)を低くする様にデューティ比Dbを制御することが必要である。
しかしながら、回転数Nが低い領域では、発電機20は小さい発電トルクTeで運転されるが、この様な条件では、機械出力から発電機の電気出力を得る際の効率が低下することが一般的である。更に、発電を行うためには励磁電流Ifを流す必要があるが、励磁電流Ifを発生させると界磁巻線28の電気抵抗値Rfに起因して電力損失が発生する。したがって、風速が低下すると、外部負荷に対して電力を供給していなくても、蓄電素子30への充電が困難となることが懸念される。
図15は、実施の形態1に係る風力発電装置での発電機20の動作点の変遷の一例を説明するための回転数-トルク特性図である。図15には、図3と同様の、風車(プロペラ5)の回転数-トルク特性も示されており、最大出力線210も図3と同様である。
図15を参照して、回転数-トルク特性図上に、発電機20の動作点の集合である動作線211が、太線で示される。発電機20の動作点は、励磁電流が供給される発電時には、最大出力線210上にある。即ち、励磁電流供給フラグGon=1のとき、発電機20の動作点は、最大出力線210に位置することになる。
一方で、励磁電流供給フラグGon=0のとき、即ち、励磁電流が停止されて、発電機20の発電が停止されるとき、発電機20は、機械損失が無視できるとすると、Te=0(無負荷)で運転される。即ち、発電機20の動作点は、トルクが0(Te=0)の横軸上に位置することになる。
上述の様に、N≧N12の範囲では、モード1が適用されて、励磁電流が供給されるので、発電機20の動作線211は、最大出力線210と一致する。反対に、N≦N11の範囲では、モード3が適用されて、励磁電流が停止されるので、発電機20の動作線211は、横軸(T=0)と一致する。
モード2が適用される間欠励磁運転領域(N11<N<N12)では、励磁電流供給フラグGon=1の間は、発電機20の動作点は、最大出力線210上で運転する。一方で、励磁電流供給フラグGon=0の間は、横軸(T=0)上となる。従って、発電機20の動作線211は、回転数N=N11,N12における図中に矢印で示した遷移を伴う、ヒステリシスループを描くことになる。
ここで、風車の慣性モーメントJm、風車のトルクTm、発電機20の慣性モーメントJeを用いると、発電機20及びプロペラ5の機械角速度ωは、式(13)に従って変化する。尚、式(13)では、発電機20及びプロペラ5の機械損失は無視されている。
(Jm+Je)・dω/dt=Tm-Te …(13)
式(13)から、風車のトルクTmと、発電機20の発生トルクTeとが釣り合うと、dω/dt=0となるので、発電機20は、機械角速度ωが一定値となる定常状態に至る。
又、発電機20及びプロペラ5に蓄積されている運動エネルギKmは、式(14)で示される。
Km=1/2・(Jm+Je)・ω^2 …(14)
式(14)から理解される様に、運動エネルギKmは、慣性モーメントに比例し、機械角速度の2乗に比例する。この性質を利用すると、加速時において風車のトルクTmによって機械角速度ωが上昇することで運動エネルギが蓄積されると、発電機20で発電トルクTeを発生させて減速するときに、運動エネルギを回収することができる。尚、プロペラ5及び発電機20の間で、一般的には、Jm>>Jeが成立する。このため、発電の停止及び開始によって発電機20のトルクTeが変化しても、Jmが十分大きいために回転数Nの急変は起こりにくい。
更に図15を用いて、発電機20の動作の一例を説明する。
まず、風速V1のときの発電機20の定常運転の動作点A1は、風速V1のときの風車の回転数-トルク特性線と、最大出力線210との交点に位置する。動作点A1での回転数NはNA1である。
N>NA1のときには、発電機20は最大出力線210上で動作するので、発電機20の発生トルクは、風速V1での風車(プロペラ5)の発生トルクよりも大きい。このため、式(13)の右辺が負となるので、発電機20は減速する。そして、N=NA1に達すると、式(13)の右辺が0となるので、発電機20は、動作点A1で定常運転に入る。
N<NA1のときには、励磁電流の供給時(Gon=1)と、停止時(Gon=0)とで動作が異なる。励磁電流の供給時には、最大出力線210上における発電機20の発生トルクは、風速V1での風車(プロペラ5)の発生トルクよりも小さいため、式(13)の右辺が正となる。このため、発電機20が加速することにより、発電機20の動作点が、最大出力線210上を移動(右側へ)する態様で、回転速度は上昇する。N=NA1に達すると、式(13)の右辺が0となるので、発電機20は、動作点A1で定常運転に入る。
反対に、N<NA1で励磁電流が停止されていると(Gon=0)、発電機20の発生トルクは0であるので、風車(プロペラ5)の発生トルクによって発電機20が加速される。これにより、発電機20の動作点が横軸(T=0)上を移動する態様で、回転数Nが上昇する。回転数NがN12に達すると、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、励磁電流の供給が開始される。これにより、動作点は、N=N12での矢印に沿って、横軸上から最大出力線210上に遷移する。更に、発電機20が加速されて、回転数NがNA1に達すると、発電機20は、動作点A1で定常運転に入る。
風速V2のときの発電機20の定常運転の動作点A2は、風速V2のときの風車の回転数-トルク特性線と、最大出力線210との交点に位置する。動作点A2での回転数NはNA2である。NA2は、間欠励磁運転領域内である(N11<NA2<N12)。このため、風速V2のときの動作は、回転数NとNA2との大小関係と、励磁電流の供給及び停止との組み合わせの4通りとなる。
N>NA2で、励磁電流が供給されているとき(Gon=1)には、最大出力線210上のトルクが、風速V2のときの風車(プロペラ5)のトルクよりも大きいので、式(13)の右辺が負となって、回転数Nは低下する(減速)。減速に伴って、発電機20の動作点が最大出力線210上を左側に移動する。N=NA2に達すると、式(13)の右辺が0となるので、発電機20は、動作点A2で定常運転に入る。
N>NA2で、励磁電流が停止されているとき(Gon=0)には、発電機20はトルクを発生しないので、風車の発生トルクが全て発電機20の加速に使用されて、発電機20の動作点が横軸(T=0)上を移動する態様で、回転数Nは上昇する。回転数NがN12に達すると、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、励磁電流の供給が開始される。この発電の開始に伴い、発電機20の動作点は、N=N12での矢印に沿って、横軸上から最大出力線210上に遷移する。発電開始後は、上述した、N>NA2、かつ、Gon=1のときの動作と同様となり、回転数NがN12からNA2まで低下すると、発電機20は、動作点A2で定常運転に入る。
N<NA2で、励磁電流が供給されているとき(Gon=1)には、最大出力線210上のトルクが、風速V2のときの風車(プロペラ5)のトルクよりも小さいので、発電機20は、動作点が最大出力線210上を右側に移動する態様で、加速する。そして、回転数N=NA2に達すると、発電機20は、動作点A2で定常運転に入る。
N<NA2で、励磁電流が停止されているとき(Gon=0)には、上述の様に、風車の発生トルクが全て発電機20の加速に使用されて、発電機20の動作点が横軸(T=0)上を移動する態様で、回転数Nは上昇する。回転数NがN12に達すると、励磁電流供給フラグGon=1にセットされるので、発電機20の動作点は、N=N12での矢印に沿って、横軸上から最大出力線210上に遷移する。発電開始後は、上述した様に、発電機20の動作点が最大出力線210上を移動(左側)する態様で回転数NがN12からNA2まで低下すると、発電機20は、動作点A2で定常運転に入る。
風速V3のときの発電機20の定常運転の動作点A3は、風速V3のときの風車の回転数-トルク特性線と、最大出力線210との交点に位置する。動作点A3での回転数NはNA3である。NA3は、間欠励磁運転領域の下限値である基準回転数N11よりも低い。
N>NA3で、励磁電流が供給されているとき(Gon=1)には、最大出力線210上のトルクが、風速V3のときの風車(プロペラ5)のトルクよりも大きいので、発電機20は、動作点が最大出力線210上を左側に移動する態様で、減速する。回転数NがN11(N11>NA3)まで低下すると、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて、励磁電流が停止される。これに伴い、発電機20の動作点は、N=N11での矢印に沿って、最大出力線210上から横軸上に遷移する。
これにより、発電機20の発電が停止されると、風車の発生トルクが全て発電機20の加速に使用されて、発電機20の動作点が横軸(T=0)上を右側に移動する態様で、回転数Nは上昇する。上昇した回転数NがN12に達すると、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、励磁電流の供給が開始されるので、発電機20の動作点は、N=N12での矢印に沿って、横軸上から最大出力線210上に遷移する。その後は、上述の様に、発電中には、発電機20の動作点が最大出力線210上を移動(左側)する態様で回転数Nが低下するので、風速V3の間は、図15中のヒステリシスループに沿って、発電機20の動作点は変化する。
N>NA3で、励磁電流が供給されていないとき(Gon=0)には、風車の発生トルクが全て発電機20の加速に使用されて、発電機20の動作点が横軸(T=0)上を右側に移動する態様で、発電機20は加速する。そして、回転数NがN12まで達すると、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、励磁電流の供給が開始される。これに伴い、発電機20の動作点は、N=N12での矢印に沿って、横軸上から最大出力線210上に遷移する。以降ではN>NA3で、励磁電流が供給されているとき(Gon=0)を起点としたときの上述の動作と同様に、発電機20の動作点は変化する。即ち、風速V3の間は、図15中のヒステリシスループに沿って、発電機20の動作点は変化する様になる。
N<NA3の領域では、NA3<N11のため、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて、発電機20は発電しない。このため、風車の発生トルクが全て発電機20の加速に使用されて、発電機20の動作点が横軸(T=0)上を右側に移動する態様で、回転数Nは上昇する。そして、回転数NがNA3を超え、更にN12に達すると、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、励磁電流の供給が開始される。このとき、発電機20の動作点は、N=N12での矢印に沿って、横軸上から最大出力線210上に遷移する。以降ではN>NA3のケースで説明したのと同様に、発電機20の動作点は変化する。
この様に、風速V3では、即ち、定常運転での動作点(A3)での回転数が、間欠励磁運転領域の下限値(N11)よりも低い風速の下では、N<N11の領域での発電停止時の加速を伴って、ヒステリシスループ上を発電機20の動作点が移動する態様で、励磁運転の供給及び停止が繰り返される。発電機20は、この様な風速では、一定風速下であっても、間欠励磁運転によって、間欠的に発電する。
この様な間欠励磁運転では、励磁電流の停止中には発電機20で電気出力を取出さずに、風車の機械出力を運動エネルギ(Km)として蓄積するので、当該運動エネルギの増加による回転数上昇後(N≧N12)に励磁電流を供給すると、風速による機械出力に加えて、減速による運動エネルギ(Km)の減少分を用いた発電が可能である。
次に、図16を用いて、発電機20の動作の他の例を説明する。
図16に示された他の動作例での動作線212は、図15の動作例での動作線211と比較すると、間欠励磁運転領域(N11<N<N12)において励磁電流供給フラグGonがセットされたときの動作点の集合が異なる。具体的には、当該領域のGon=1では、動作線211(図15)は、最大出力線210に沿って発電機20が運転する様に設定される一方で、動作線212は、発電機20が最大出力線210よりも大きいトルクを発生する様に設定される。即ち、動作線212は、動作線211と比較すると、ヒステリシスループの上辺の軌跡が異なる。動作線212のその他の部分の軌跡は、動作線211と同様である。
これにより、間欠励磁運転領域における発電中には、発電機20の機械入力が、最大出力線210に沿って発電機20を運転しているときよりも大きくなる。又、動作線212は、間欠励磁運転領域(N11<N<N12)を通じて、発電機20のトルクが風車(プロペラ5)のトルクよりも大きくなる様に設定されている(Te>Tm)。このため、風速V2では、図15の動作点A2の様な、動作線212と、風速V2での風車の回転数-トルク特性線との交点が存在しない。即ち、間欠励磁運転領域における発電中には、発電機20は、回転数NがN11に低下するまで減速を継続する。
従って、図16の動作線212によれば、定常運転の動作点(A2)の回転数が間欠励磁運転領域内である風速(V2)のときに、発電機20は、定常運転に入ることなく、動作線212中のヒステリシスループ上を動作点が移動する態様で、間欠的に発電することになる。
一方で、風速V1及びV3のときの動作は、図15の場合と同様である。即ち、風速V1では、発電機20は、最終的には動作点A1での定常運転に入る。一方で、風速V3では、発電機20は、図15と同様に、ヒステリシスループに沿って動作点が移動する態様で間欠的に発電する。
尚、図16の動作線212では、ヒステリシスループの上辺に沿って動作点が移動する際に、負値となる式(13)の右辺(Tm-Te)の絶対値が、動作線211(図15)よりも大きくなる。このため、発電機20の回転数NがN12からN11に低下するまでの減速時間は短くなる。この様に、発電時間を短縮して、発電機20の機械入力を大きくすることにより、蓄電素子30への充電電力を増やすことができる。
尚、発電装置の実際の動作時において、プロペラ5が自然風で回転している場合には、風速は常に変化していると考えられる。この様な状況では、風車トルクTmは、その時点での風速における回転数-トルク特性線に沿って、その時点での回転数に対応して連続的に移動していく。
例えば、図16において、風速V2での運転中に、風速がV2からV1に変化すると、励磁電流供給中(Gon=1)であっても、Tm>Teとなって発電機20は加速するので、発電機20の動作点は、動作点A1へ向けて移動する。これに対して、発電機20が、風速V1において、動作点A1(回転数NA1)で運転しているときに、風速がV1からV2に変化すると、Tm<Teとなって発電機20は減速し、間欠励磁運転領域に移動することになる。
以上説明した様に、本実施の形態1に係る風力発電装置では、界磁巻線28及び整流器29を有する発電機20が、発電機制御部60によって制御される出力電圧制御回路40及び励磁電流制御回路50により、直流電圧Vb及び励磁電流Ifを出力電圧指令値Vbref及び励磁電流指令値Ifrefに従って制御しながら、運転される。
本実施の形態1に係る風力発電装置では、出力電圧制御回路40を配置することにより、発電機20からの出力電圧(直流電圧Vb)を昇圧して蓄電素子30を充電することができる。これにより、プロペラ5の回転数が低く、発電機20の出力電圧が蓄電素子30の電圧より低い領域でも、発電機20を発電状態で運転することが可能である。この結果、風力発電装置の設備利用率を向上することができる。
更に、励磁電流指令値Ifrefについては、風車(プロペラ5)の回転数-トルク特性に応じて設定された動作点で発電機20が動作する様に、回転数Nに対応して決定された発生トルクTeが得られる様に、設定することができる。同様に、出力電圧指令値Vbrefは、回転数Nに対応したトルクを発電機20が出力する際に、蓄電素子30への充電電力が大きくなる様に設定することができる。このため、実施の形態1に係る風力発電装置は、特に、発電機20の低回転-低トルクでの運転に有利である。
又、実施の形態1に係る風力発電装置では、発電機20の回転数Nに対応させて出力電圧指令値Vbref及び励磁電流指令値Ifrefを設定することで、発電機20の発生トルクを制御することができる。この結果、風速を検出しなくても、実際の風速に応じて風車の機械出力が大きくなる動作点(例えば、図3及び図4の最大出力線210上の動作点)で発電機20を動作させて、高効率で発電することができる。
更に、本実施の形態1に係る風力発電装置では、励磁電流供給停止判定部68を有しているので、間欠励磁運転領域において励磁電流の供給及び停止を切り替えることができる。これにより、励磁電流停止中は発電を停止し、発電機20を無負荷状態で加速して、運動エネルギを蓄積できる。一方で、励磁電流供給中は、発電機20でトルクを発生させて減速することで生じる運動エネルギを、風車で発生中のエネルギに加えて用いることによって発電することが可能である。
このため、風車のトルクが減少して定常的に発電ができない様な低風速においても、間欠励磁運転領域で加減速を繰り返すことで発電が可能になるという顕著な効果を享受することができる。この結果、風力発電装置の設備利用率を、更に向上することができる。
加えて、励磁電流Ifを変化させることで、界磁巻線28の発生磁束を調節できるため、発生トルクTe(励磁電流If及び直流電流Ibの積に比例)を得るための励磁電流If及び直流電流Ibの組み合わせの自由度が高くなる。この結果、損失が少なくなる様に、励磁電流If及び直流電流Ibの組み合わせを制御することができる。
加えて、図16の動作線212に示した様に、間欠励磁運転範囲では、風車の機械出力が大きくなる最大出力線210よりも大きいトルクを発生させる様に、発電機20の動作点を設定することにより、発電機20の機械入力を大きくして発電効率を向上させることができる。
又、励磁電流If及び直流電流Ib(発電機20の出力電流)を広範囲で変化させることが可能であり、更に、低回転数において間欠励磁運転ができるので、発電機20の特性が、連結される風車専用に設計されていなくても、発電可能な領域を広く確保することが可能となる。例えば、通常高回転で使用される自動車用オルタネータ等の機器を発電機20に適用して、実施の形態1に係る風力発電装置を構成した場合に、当該発電機20を低回転数で運転する場合にも、高効率で発電することが可能である。
この様に、実施の形態1に係る風力発電装置は、風車及び発電機20の特性に応じて、広い風速範囲において効率よく発電して、蓄電素子30を充電することができる。
ここで、実施の形態1における変形例のいくつかについて説明する。これらの変形例は、以降で説明する実施の形態2以降の各実施の形態においても同様に適用することができる。
まず、図6では、回転数検出値生成部62が、交流電圧Vpから回転数検出値を演算する例を説明したが、発電機20の回転子に対して、機械角又は回転数を直接的に検出するセンサを配置することも可能である。この場合には、回転数検出値生成部62は、当該センサの出力信号を用いて、回転数検出値を出力することができる。
又、図2中での、直流電圧Vb、直流電流Ib、及び、励磁電流Ifについても、図2中に矢印で表記した点の電圧又は電流を検出する様にセンサを配置する他、同等の検出値が得られる別の個所にセンサを配置することも可能である。或いは、これらの電圧又は電流について、直接センサによって検出するのではなく、他の検出値及び演算値を利用して、演算によって求めることも可能である。更に、各センサ(検出器)の出力については、ローパスフィルタに入力して高調波成分やノイズを除去した上で制御に用いることも可能である。
又、図10~図13では、励磁電流供給停止判定部68の制御処理例をフローチャートで示したが、制御処理の内容は、これらのフローチャートに限定されるのではなく、同等の判定結果が得られる範囲内に適宜変更することが可能である。
更に、図15及び図16では発電機20の動作線211,212の一部(N>N11の高回転領域)を、最大出力線210に沿って設定する例を説明したが、当該部分の動作線については、図15及び図16から変形することも可能である。例えば、当該部分では、トルク出力を優先させて最大トルクに近い動作点を採用することも可能であるし、反対に、回転数を優先させて最大回転数に近い動作点を採用することも可能である。
又、図9では、励磁電流供給フラグGonのセット及びリセットを、出力電圧制御用のゲート信号SGb1と、励磁電流制御用のゲート信号SGf1との両方に対して同時に反映する例を説明した。しかしながら、界磁巻線28の時定数が大きく励磁電流が定常状態に至るまでに時間がかかる場合には、励磁電流Ifがある程度上昇してから出力電圧制御を開始したり、励磁電流Ifがある程度低下してから出力電圧制御を終了したりする様に、出力電圧制御回路40のスイッチング素子44のゲートブロック期間(SGb1=0)と、励磁電流制御回路50のスイッチング素子48のゲートブロック期間(SGf1=0)とをずらす様に、発電機制御部60の構成(図6)を変形することも可能である。
図17には、発電機制御部60の構成の変形例が示される。
図17の変形例では、図6の発電機制御部60の構成において、励磁電流供給停止判定部68からの励磁電流供給フラグGonは、遅延回路69を経由して、ゲート信号SGb1を出力するANDゲート65に入力される。即ち、スイッチング素子44(出力電圧制御回路40)のゲート信号SGb1は、遅延回路69によって遅延された励磁電流供給フラグGon♯と、出力電圧制御部64からのゲート信号SGbとのAND演算によって、最終的なゲート信号SGb1を生成する。
一方で、ANDゲート67には、遅延回路69を経由せずに、励磁電流供給フラグGonが入力される。従って、スイッチング素子48(励磁電流制御回路50)のゲート信号SGf1は、図6と同様に、励磁電流供給フラグGonと、励磁電流制御部66からのゲート信号SGbとのAND演算によって生成される。
図18は、図17に示された変形例に係る発電機制御部の動作を説明するタイミングチャートである。
図18を参照して、励磁電流供給停止判定部68は、時刻toffにおいて、励磁電流供給フラグGonを「1」から「0」に変化(リセット)するとともに、時刻tonにおいて、励磁電流供給フラグGonをセット「0」から「1」に変化(セット)する。
スイッチング素子48(励磁電流制御回路50)のゲート信号SGf1のゲートブロック期間は、励磁電流供給フラグGonに連動して、時刻toff~tonの期間に設定される。時刻toffでは、ゲート信号SGf1は、ゲート信号SGfと同じ信号に設定される状態から、「0」に固定されるゲートブロック状態に変化する。ゲートブロック期間が終了される時刻ton以降では、ゲート信号SGf1は、ゲート信号SGfと同じ信号に設定される。
これに対して、スイッチング素子44(出力電圧制御回路40)のゲート信号SGb1は、遅延回路69を経由して励磁電流供給フラグGonが入力されるため、ゲートブロック期間の開始が時刻toffよりも遅く、かつ、ゲートブロック期間の開始が時刻tonよりも遅くなる様に生成される。
これにより、界磁巻線28のインダクタンスが大きく励磁電流が定常状態に至るまでに時間がかかる場合において、励磁電流が定常状態となってから出力電圧の制御を開始することで、制御安定性を高めることが可能になる。
尚、図17の3段目には、励磁電流供給フラグGonの立ち上がりエッジ(セット時)及び立下りエッジ(リセット時)の両方を遅延する様に遅延回路69を構成したときのゲート信号SGb1の波形例が示されている。又、立ち上がりエッジでの遅延時間と、立下りエッジでの遅延時間とを異なる値とすることも可能である。
これに対して、遅延回路69について、立ち上がりエッジ(セット時)及び立下りエッジ(リセット時)の一方のみを遅延する様に構成することも可能である。立ち下がりエッジ(リセット時)のみが遅延されるときは、図17の4段目のゲート信号SGb1xに示される様に、ゲートブロック期間は、時刻toffに遅れて開始される一方で、時刻tonで終了される。
反対に、遅延回路69が立ち上がりエッジ(セット時)のみを遅延する様に構成されるときは、図17の5段目のゲート信号SGb1yに示される様に、ゲートブロック期間は、時刻toffに開始される一方で、時刻tonに遅れて終了される。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1における励磁電流供給停止判定部の変形例を説明する。実施の形態2に係る風力発電装置は、以下で説明する点以外は実施の形態1と同じであるので、基本的には、当該共通部分の説明は省略する。
図19は、実施の形態2に係る風力発電装置における励磁電流供給停止判定部による制御処理を説明するフローチャートである。図19の制御処理も、風力発電装置の10の運転中に一定の周期で繰り返し実行される。
図19を参照して、励磁電流供給停止判定部68は、図10のS1~S5と同様のS101~S105により、回転数Nと、間欠励磁運転領域の下限値及び上限値に相当する基準回転数N11及びN12との比較により、モード11~モード13を選択する。
これにより、N≧N12の場合(S101のYES判定時)には、S102により、モード11の処理(図20)が実行される。又、N≦N11の場合(S101のNO判定、かつ、S103のNO判定時)には、S105により、モード13の処理(図21)が実行される。更に、N11<N<N12の場合(S101のNO判定、かつ、S103のYES判定時)には、S104により、モード12の処理(図22)が実行される。
図20~図22には、図19のモード11(S102)、モード13(S105)、及び、モード12(S104)のそれぞれでの制御処理を説明するフローチャートが示される。実施の形態2では、励磁電流供給フラグGonに加えて、補助フラグGon1,Gon2と、タイマ値tt1とが導入される。
後述する様に、補助フラグGon1及びGon2の一方が「1」にセットされるとき、励磁電流供給フラグGon=1にセットされ、補助フラグGon1及びGon2の一方が「0」にリセットされるとき、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされる。尚、補助フラグGon1及びGon2の両方がセットされることはない。又、タイマ値tt1は、励磁電流の停止時間を計測する。
図20を参照して、モード11の適用時には、S111により、補助フラグGon1=1に設定され、S112により、補助フラグGon2=0に設定される。更に、S113により、タイマ値tt1が初期化(クリア)されるとともに(tt1=0)、S114により、励磁電流供給フラグGon=1にセットされる。
図21を参照して、モード13の適用時には、S131により、補助フラグGon1=0に設定され、S132により、補助フラグGon2=0に設定される。更に、S133により、タイマ値tt1がクリア(tt1=0)されるとともに、S134により、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされる。
この様に、モード11では、実施の形態1のモード1と同様に、励磁電流供給フラグGonがセットされる一方で、モード13では、実施の形態1のモード3と同様に、励磁電流供給フラグGonがリセットされる。又、補助フラグGon1は、モード11の適用時とモード13の適用時とで異なる値に設定される。更に、タイマ値tt1は、モード11又はモード13の適用時には、初期化される(tt1=0)。
図22を参照して、モード12の適用時には、S121により、前回設定された補助フラグGon1の状態が確認される。Gon1=1に設定されている場合(S121のYES判定時)には、S122により、補助フラグGon2=0にリセットされるとともに、S123により、タイマ値tt1=0にクリアされる。更に、S124により、励磁電流供給フラグGon=1にセットされる。S122~S124の処理は、モード11(N≧N12)からモード12(間欠励磁運転領域)に遷移したときに実行される。
一方で、モード13(N≦N11)からモード12(間欠励磁運転領域)に遷移したときには、補助フラグGon1=0であるので、S121はNOとされる。このときには、S125により、タイマ値tt1が予め定められた判定値T11を超えているか否かが判定される。
そして、tt1≦T11のとき(S125のNO判定時)には、S128により、タイマ値tt1がカウントアップされるとともに、S129により、補助フラグGon2=0に設定される。tt1≦T11の期間内では、S130により、励磁電流供給フラグGon=0に維持される。
これに対して、タイマ値tt1が判定値T11を超えると(S125のYES判定時)には、S126により、補助フラグGon2=1に設定されるとともに、S127により、タイマ値tt1が保持される(tt1=tt1)。更に、S124により、励磁電流供給フラグGon=1にセットされる。
この様に、モード13(N≦N11)からモード12(間欠励磁運転領域)に遷移したときには、励磁電流が停止された状態でモード12が開始され、タイマ値tt1によって計測された励磁電流の停止時間が判定値T11をこえると、励磁電流の供給が開始されることになる。
図23は、実施の形態2に係る風力発電装置での励磁電流供給制御の動作例を示すタイミングチャートである。図23では、図19~図22に従って励磁電流供給フラグGonが設定されたときの動作が示されている。
図23を参照して、風力発電装置の時刻t4までの挙動は、図14と同様である。即ち、時刻t2において、回転数Nの低下に応じて励磁電流が停止され(Gon=0)、時刻t2から判定値T11に相当する時間が経過する前の時刻t3において、励磁電流の停止中(発電停止中)の回転数Nの上昇に応じて、励磁電流の供給が再開される(Gon=1)。
更に、時刻t4において、発電中の回転数Nの低下により、励磁電流が停止される。実施の形態2では、モード12において、励磁電流供給フラグGonが0の期間、上述のタイマ値tt1がカウントアップされる。
そして、時刻taでは、回転数Nが基準回転数N12まで上昇していないものの、タイマ値tt1が判定値T11に達したことにより、励磁電流の供給が開始される。
時刻t6では、発電中の回転数Nの低下により、励磁電流が停止される。風速が低く、発電を停止しても回転数Nが上昇しないケースでは、図19の判定によりモード13が継続されるので、タイマ値tt1のカウントアンプは開始されない。時刻tbにおいて、風速が上昇して、発電停止中の回転数Nが上昇に転じると、図19の判定により、モード13からモード12への遷移が生じて、タイマ値tt1のカウントアンプが開始される。即ち、この様なケースでは、時刻t6ではなく、時刻tbを起点として、励磁電流の停止時間が計測される。
図23の例では、時刻t6から、判定値T11に相当する時間が経過した時刻t8において、タイマ値tt1が判定値T11に達したことにより、励磁電流の供給が開始される。時刻t8においても、回転数Nが基準回転数N12まで上昇していないにも関わらず、励磁電流の供給により、発電が開始されることが理解される。
図14及び図23の比較から理解される様に、図23の時刻ta及びt8では、実施の形態1では発電が再開されないのに対して、実施の形態2では、間欠励磁運転領域内(モード12)での励磁電流の停止時間が判定値T11に対応する判定時間に達することで、発電が開始されている。当該判定時間は、「第1の時間」の一実施例に対応する。
実施の形態1(図14)では、風速が下がってくると、間欠励磁運転の運転間隔が長くなったり、運転を開始できなくなったりして発電の機会が失われる虞がある。これに対応するために、励磁電流の供給開始条件となる基準回転数N12を低下させると、反対に、風速V2等の機械入力が比較的大きくとれる回転数が、モード2からモード1の領域になって間欠運転領域外になり、発電量が低下することが懸念される。従って、実施の形態2では、上述した、間欠励磁運転領域内(モード12)での励磁電流の停止時間に応じて発電を開始する条件を追加して、基準回転数N12を低下させることなく、発電の機会を増やしている。
図24は、実施の形態2に係る風力発電装置での発電機20の動作点の変遷の一例を説明するための回転数-トルク特性図である。図24は、図16に示された動作例をベースに、実施の形態2に係る発電開始条件を付加したときの動作例が示される。
図24を参照して、回転数-トルク特性図上に、実施の形態2での動作線213が、太線で示される。動作線213についても、発電機20の動作点の集合である。動作線213は、間欠励磁運転領域での発電時(Gon=1)には、図16と同様に、最大出力線210よりも上側(高トルク側)を通過する様に設定される。一方で、動作線213についても、発電停止時(Gon=0)には、横軸(Te=0)上となる。
実施の形態2に係る動作線213は、上述した励磁電流の停止時間に係る条件の追加により、ヒステリシスループの形状が、動作線212(図16)とは異なる。具体的には、回転数N=N11での、発電状態から発電停止状態に遷移する下向きの矢印と、回転数N=N12での発電停止状態から発電状態に遷移する上向きの矢印とに加えて、N11<N<N12の領域でも、発電停止状態から発電状態に遷移する上向きの矢印が更に発生する。図24の例では、N=Non1及びN=Non2において、発電停止状態から発電状態への遷移(上向きの矢印による遷移)が発生している。例えば、図24のNon1、Non2の各々は、タイマ値tt1に応じて励磁電流供給フラグGonがセットされた、図17中での時刻ta,t8での回転数N(N11<N<N12)に対応する。
図24の動作例において、風速V2での動作は、図16と同様である。即ち、励磁電流が供給されているとき(Gon=1)には、動作線213の上側の軌跡に沿って回転数NがN11まで低下すると、N=N11での矢印(下向き)に沿って励磁電流が停止される。発電停止中には、風速V2による風車の発生トルクによって回転数Nが上昇するので、発電機20の動作点は、横軸(T=0)を右側に移動する。そして、回転数Nが基準回転数N12に達すると、励磁電流の供給が開始される。即ち、動作線213のうちの、N=N11での遷移(下向き矢印)及びN=N12での遷移(上向き矢印)を伴うヒステリシスループに沿って、発電機20の動作点が移動する。
風速V4では、回転数N12での動作点B1の発生トルクが小さい。このため、回転数Nが基準回転数N11まで低下した後の励磁電流の停止中において、回転数Nが基準回転数N12に近付くと、風車の発生トルクが0に近付いて式(13)の右辺が小さくなるため、回転数Nの上昇レートが小さくなる。この様な状態では、回転数Nが基準回転数N12に上昇するまで待機しても、当該待機期間に新たに蓄積される運動エネルギは比較的小さいことが理解される。
このため、判定値T11に対応する時間の経過に応じて、N=Non1で励磁電流の供給を開始して、発電を再開することが効率的である。発電を再開すると、発電機20の動作点は、上向きの矢印に沿って、ヒステリシスループの上辺に移動する。即ち、風速V4では、動作線213のうちの、N=N11での遷移(下向き矢印)及びN=Non1での遷移(上向き矢印)を伴うヒステリシスループに沿って、発電機20の動作点が移動する。
風速V5では、Te=0となる動作点B2までしか発電機20は加速されない。このため、励磁電流停止中でも、回転数Nは基準回転数N12まで上昇することができない。即ち、実施の形態1(図15,図16)では、風速V5では発電することができない。
これに対して、実施の形態2では、タイマ値tt1が判定値T11に達することにより、N=Non2において、励磁電流の供給が開始される。即ち、風速V5では、動作線213のうちの、N=N11での遷移(下向き矢印)及びN=Non2での遷移(上向き矢印)を伴うヒステリシスループに沿って、発電機20の動作点が移動する。この結果、風速V5でも、一定時間経過毎に発電機会を設けることができる。
この様に、低風速時(例えば、風速V4及びV5)においても、励磁電流停止中(発電停止中)の一定時間(T11相当)経過毎に、風車(プロペラ5)で発生中の機械出力と、当該一定時間で蓄積された運動エネルギ(回転エネルギ)とによって、発電機20への機械入力を増加させて、発電の機会を確保することができる。
以上説明した様に、本実施の形態2に係る風力発電装置では、間欠励磁運転領域において励磁電流の停止時間に応じて、励磁電流の供給を開始することできるため、低風速で加速しにくい条件下においても、発電を再開することができる。
この結果、実施の形態1で説明した効果に加えて、間欠励磁運転領域全体を使用して発電機20で電力を取り出せる風速(例えば、図24での風速V2)では電力量を確保したままで間欠的に発電できるとともに、間欠励磁運転領域の高回転数側を利用できない低風速下(例えば、図24の風速V4,V5)では、低回転数側だけを使用して間欠的に発電を行うことが可能である。これにより、風力発電装置の設備利用率を一層向上することができる。
尚、タイマ値tt1を用いて励磁電流の停止時間を管理することで、発電機20の無負荷運転時の回転数Nの上昇レート(傾き)を把握することができる。即ち、タイマ値tt1が判定値T11に達しても回転数Nが基準回転数N12に達していないことの検知は、回転数Nの傾きが予め定められた基準値(T11から逆算)よりも低いことを検知することと等価であり、これにより、更に、風速が基準よりも低いことを間接的に検知することを等価である。この結果、実施の形態2では、風速を把握するとともに、当該風速に応じて間欠励磁運転領域の基準回転数N11,N12を変化させる様な複雑な制御を行うことなく、低風速時の発電機会を簡易な制御で確保することができる。
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態2における励磁電流供給停止判定部の変形例を説明する。実施の形態3に係る風力発電装置は、以下で説明する点以外は実施の形態1及び2と同じであるので、基本的には、当該共通部分の説明は省略する。
図25は、実施の形態3に係る風力発電装置における励磁電流供給停止判定部による制御処理を説明するフローチャートである。図25の制御処理は、風力発電装置の10の運転中に一定の周期で繰り返し実行される。
図25を参照して、励磁電流供給停止判定部68は、S201~S205により、回転数Nと、間欠励磁運転領域の上限値及び下限値に相当する基準回転数N12及び下限回転数Noffとの比較により、モード21~モード23を選択する。実施の形態3では、間欠励磁運転領域の下限値に相当する下限回転数Noffが、励磁電流の供給開始時の回転数に応じて可変に設定される。
N≧N12の場合(S201のYES判定時)には、S202により、モード21の処理(図26)が実行される。又、N≦Noffの場合(S201のNO判定、かつ、S203のNO判定時)には、S205により、モード23の処理(図27)が実行される。Noff<N<N12の場合(S201のNO判定、かつ、S203のYES判定時)には、S204により、モード22の処理(図28)が実行される。
図26~図28には、図25のモード21(S202)、モード23(S205)、及び、モード22(S204)のそれぞれでの制御処理を説明するフローチャートが示される。実施の形態3においても、実施の形態2と同様の、補助フラグGon1,Gon2と、タイマ値tt1とが導入される。
タイマ値tt1は、実施の形態2と同様に、間欠励磁運転領域での励磁電流の停止時間を計測する。補助フラグGon1及びGon2の一方が「1」にセットされるとき、励磁電流供給フラグGon=1にセットされ、補助フラグGon1及びGon2の一方が「0」にリセットされるとき、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされる。尚、補助フラグGon1及びGon2の両方がセットされることはない。
図26を参照して、モード21の適用時には、S211により、補助フラグGon1=1に設定され、S212により、補助フラグGon2=0に設定される。更に、S213では、基準回転数N12から予め定められたヒステリシス幅dNを減算することで、下限回転数Noffが設定される(Noff=N12-dN)。
又、モード21では、実施の形態2と同様に、S214により、タイマ値tt1がクリア(tt1=0)されるとともに、S215により、励磁電流供給フラグGon=1にセットされる。
図27を参照して、モード23の適用時には、S241により、補助フラグGon1=0に設定され、S242により、補助フラグGon2=0に設定される。更に、モード23では、S243により、下限回転数Noffは、基準回転数N11に設定される(Noff=N11)。
又、モード23では、S244により、タイマ値tt1がクリア(tt1=0)されるとともに、S245により、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされる。
図28を参照して、モード22の適用時には、S221により、前回設定された補助フラグGon1の状態が確認される。Gon1=1に設定されている場合(S221のYES判定時)には、S222により、補助フラグGon2=0にリセットされるとともに、S223により、下限回転数Noffは現在の設定値のまま維持される(Noff=Noff)。
更に、S224により、タイマ値tt1=0にクリアされるとともに、S225により、励磁電流供給フラグGon=1にセットされる。S222~S225の処理は、モード21(N≧N12)からモード22(間欠励磁運転領域)に遷移したときに実行される。
一方で、モード23(N≦N11)からモード22(間欠励磁運転領域)に遷移したときには、補助フラグGon1=0であるので、S221はNOとされる。このときには、S226により、補助フラグGon2=0であるか否かが判定される。
補助フラグGon2=0のとき(S226のNO判定時)には、S229により、タイマ値tt1が予め定められた判定値T11を超えているか否かが、更に判定される。そして、tt1≦T11のとき(S229のNO判定時)には、S234により、タイマ値tt1がカウントアップされるとともに、S235により、下限回転数Noffは現在の設定値のまま維持される(Noff=Noff)。更に、S236により、tt1≦T11の期間内では、励磁電流供給フラグGon=0に維持される。
これに対して、タイマ値tt1が判定値T11を超えると(S229のYES判定時)、S230により、補助フラグGon2=1に設定されるとともに、S231により、現在の回転数Nから上述のヒステリシス幅dNを減算することで、下限回転数Noffが設定される(Noff=N-dN)。
更に、S231で設定された下限回転数Noffに対して、S232,S233により、下限リミット処理が行われる。即ち、Noff≦N11であると(S232のNO判定時)、S233により、下限回転数Noffは、基準回転数N11に設定される。即ち、Noff<N1であると、下限回転数Noffは、強制的にN11に書き換えられる。即ち、下限回転数Noffは、励磁電流の供給開始時の回転数からヒステリシス幅dNを減算した値(S231でのN-dN)と、基準回転数N11との高い方に設定される。更に、S228により、タイマ値tt1が現在値に維持されて、S225により、励磁電流供給フラグGon=1にセットされる。
一方で、Noff≧N11であると(S232のYES判定時)、S227により、下限回転数Noffは現在の値に維持される。更に、同様のS228,S225により、タイマ値tt1が現在値に維持されるとともに、励磁電流供給フラグGon=1にセットされる。
一旦、tt1>T11となって補助フラグGon2=1にセットされると(S230)、S226がYES判定とされて、上述のS227,S228,S225の処理が実行される。即ち、S221がNO判定のときには、タイマ値tt1が判定値T11に達するまでは、S234~S236により、励磁電流供給フラグGon=0に設定される。
これに対して、タイマ値tt1が判定値T11に達すると、S230以降の処理により、励磁電流供給フラグGon=1に設定されるとともに、励磁電流の供給の開始時には、当該開始時点の回転数Nからヒステリシス幅dNを減算することで、下限回転数Noffが設定される。上述の様に、この下限回転数Noffは、S232,S233の下限リミット処理により、間欠励磁運転領域の下限値であるN11より低く設定されることはなく、N12-dN>Noff≧N11の範囲内に設定される。又、モード22(間欠励磁運転領域内)での励磁電流の供給中には、電流供給の開始時点に設定された下限回転数Noffが維持される。
図29は、実施の形態3に係る風力発電装置での励磁電流供給制御の動作例を示すタイミングチャートである。図29では、図25~図28に従って励磁電流供給フラグGonが設定されたときの動作が示されている。
図29を参照して、時刻ts~t1では、N≧N12(モード21)のため、励磁電流供給フラグGon=1に設定されて、励磁電流が発電機20に供給される。励磁電流Ifの供給時は、発電機20には発電トルクTeが作用するため、Gon=1の期間では、Tm-Te<0となる風速においては回転数Nは徐々に低下する。
時刻t1において、回転数NがN12まで低下すると、この時点での下限回転数Noff=N12-dNであるので(S213)、モード21からモード22への遷移が生じる。モード22に遷移しても、下限回転数Noff=N12-dNに維持されるので(S223)、発電に応じて回転数Nが下限回転数Noff以下になるまで、励磁電流供給フラグGon=1に維持される。
そして、時刻t10において、回転数Nが下限回転数Noffになると、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて、発電が停止される。これにより、回転数Nは上昇に転じるため、再び、モード23からモード22への遷移が発生するので、励磁電流供給フラグGon=0に維持されるとともに、タイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t11では、タイマ値tt1が判定値T11に達する前に、回転数Nが基準回転数N12まで上昇する。これにより、時刻t11では、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、発電が再開される。時刻t11では、励磁電流の開始に応じて、下限回転数Noff=N12-dNに設定される(S213)。励磁電流の供給が開始されると、タイマ値tt1はクリアされる(S214)。
時刻t12では、時刻t11以降で低下した回転数Nが、時刻t11で設定された下限回転数Noffまで低下するので、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされる。これにより、発電が停止されるとともに、時刻t12から、再び、タイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t13では、回転数Nが基準回転数N12まで上昇する前に、タイマ値tt1が判定値T11を超える。これにより、時刻t13では、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、発電が再開される。時刻t13では、時刻t13での回転数N(N<N12)からヒステリシス幅dNを減算した値が、N11よりも高いので、当該減算値が下限回転数Noffに設定される。即ち、時刻t13で設定される下限回転数Noffは、時刻t1及びt11で設定された下限回転数Noff(=N12-dN)よりも低い。又、時刻t13では、タイマ値tt1が保持される。
時刻t14では、時刻t13以降で低下した回転数Nが、時刻t13で設定された下限回転数Noffまで低下する。これに応じて、タイマ値tt1がクリアされるとともに、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて発電が停止される。時刻t14から、再び、タイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t15において、回転数Nが基準回転数N12まで上昇する前に、タイマ値tt1が判定値T11を超える。これにより、時刻t15では、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、発電が再開される。時刻t15では、時刻t15での回転数N(N<N12)からヒステリシス幅dNを減算した値は、N11と同等であるので、下限回転数Noff=N11に設定される。時刻t15においても、タイマ値tt1が保持される。
時刻t16では、時刻t15以降で低下した回転数Nが、時刻t15で設定された下限回転数Noff(=N11)まで低下する。これに応じて、タイマ値tt1がクリアされるとともに、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて発電が停止される。時刻t16からは再び、タイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t17において、回転数Nが基準回転数N12まで上昇する前に、タイマ値tt1が判定値T11を超える。これにより、時刻t17では、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、発電が再開される。時刻t17では、時刻t15での回転数Nからヒステリシス幅dNを減算した値がN11よりも低いので、図28のS232、S233により、下限回転数Noff=N11に設定される。
時刻t18では、時刻t17以降で低下した回転数Nが、時刻t17で設定された下限回転数Noffである=N11まで低下する。これに応じて、タイマ値tt1がクリアされるとともに、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて発電が停止される。時刻t18からは、再び、タイマ値tt1のカウントアップが開始されることになる。
この様に、実施の形態3では、実施の形態2と同様に、間欠励磁運転領域内(モード22)での励磁電流の停止時間に応じて発電が開始されるとともに、励磁電流の停止条件(下限回転数Noff)が、当該励磁電流の供給開始時の回転数Nに応じて可変に設定される。基本的には、ヒステリシス幅dNだけ回転数が低下すると、励磁電流が停止される。
式(13)を変形すると、dω/dt=(Tm-Te)/(Jm+Je)が成立するので、(dω/dt)、即ち、図29における回転数Nの傾きは、(Tm-Te)に依存することが理解される。このため、風速が十分大きいために、間欠励磁運転領域においてTmが十分大きい場合を例外として、一般的には、間欠励磁運転領域では、回転数Nが低下するにつれて、(Tm-Te)が減少することから回転数Nの傾きが小さくなる。このため、間欠励磁運転領域において、励磁電流が供給される時間(発電時間)のうち、相対的に回転数Nが低い領域での発電時間の占める割合が大きくなる傾向になる。
一方で、発電機20の発電電力は高回転側で大きく、このとき、発電効率も高くなる傾向にある。このため、低回転数領域での発電時間を増やすことは発電効率の面からは得策ではない。このため、実施の形態3では、ヒステリシス幅dNを設けることで、間欠励磁運転領域において励磁電流が供給される回転数領域を、高回転側に制限している。
図30は、実施の形態3に係る風力発電装置での発電機20の動作点の変遷の一例を説明するための回転数-トルク特性図である。図30においても、図16に示された動作例をベースに、実施の形態3に係る発電開始条件を付加したときの動作例が示される。
図30を参照して、回転数-トルク特性図上に、実施の形態3での動作線214が、太線で示される。動作線214についても、発電機20の動作点の集合である。動作線214は、間欠励磁運転領域での発電時(Gon=1)には、図16と同様に、最大出力線210よりも上側(高トルク側)を通過する様に設定される。又、動作線214についても、発電停止時(Gon=0)には、横軸(Te=0)上となる。
実施の形態3に係る動作線214は、上述した励磁電流の停止時間に係る条件の追加により、ヒステリシスループの形状が、動作線213(図24)とは異なる。具体的には、動作線213(図24)では、発電状態から発電停止状態に遷移する下向きの矢印が回転数N=N11での1つのみであるのに対して、動作線214では、発電状態から発電停止状態に遷移する下向きの矢印が、励磁電流の供給開始時における回転数Nに応じて複数個存在することになる。
例えば、回転数Nが基準回転数N12に達したことで、間欠励磁運転領域での励磁電流の供給が開始されると、当該時点の回転数Non1(Non1=N12)からヒステリシス幅dNが減算された、Noff1=Non1-dNが下限回転数Noffとされる。このため、図30中に示される様に、N=Noff1においても、発電状態から発電停止状態に遷移する下向きの矢印が更に発生する。
又、タイマ値tt1に応じて、基準回転数N12よりも低い回転数Non2の時点で、間欠励磁運転領域での励磁電流の供給が開始されると、当該回転数Non2からヒステリシス幅dNが減算された、Noff2=Non2-dNが下限回転数Noffとされる。これにより、図30中に示される様に、N=Noff2においても、発電状態から発電停止状態に遷移する下向きの矢印が更に発生する。この回転数Non2は、図29での時刻t13での回転数Nに対応する。
図30の例では、タイマ値tt1に応じて、基準回転数N12よりも低い回転数Non3の時点で、間欠励磁運転領域での励磁電流の供給が開始される。当該回転数Non3については、Non3-dN<N11が成立する。従って、回転数Non3で開始された励磁電流の供給が、回転数NがNoff3まで低下したときに停止されるとすると、N11=Noff3となるので、Non3での発電停止状態から発電状態に遷移する上向きの矢印に対しては、基準回転数N11での発電状態から発電停止状態に遷移する下向きの矢印が対を成すことになる。即ち、上述の下限リミット処理により、N<N11の領域には、発電状態から発電停止状態に遷移する下向きの矢印は発生しない。
この様に、本実施の形態3に係る風力発電装置では、実施の形態2と同様に、間欠励磁運転領域において励磁電流の停止時間に応じて励磁電流の供給を開始することできるため、低風速で加速しにくい条件下においても、発電を再開することができる。
更に、励磁電流の供給開始時における回転数Nに応じてヒステリシス幅dNが一定になる様に発電を実行するので、発電効率が低下する低回転数領域を避けて、比較的発電効率が高い領域に限定して、間欠励磁運転領域での発電を行うことができる。
この結果、本実施の形態3に係る風力発電装置では、実施の形態2と同様に、風速を把握することなく、低風速時の発電機会を簡易な制御で確保することにより、風力発電装置の設備利用率を向上することができる。更に、ヒステリシス幅dNを設ける制御により、風速が高めの場合には発電電力が大きい高回転数側で間欠的に発電することができる。特に、風速の低下に伴って、励磁電流の供給を開始する回転数が低下しても、風速に応じてなるべく高めの領域で発電することで、発電効率の低下を抑制できる。この結果、蓄電素子30に充電できる電力量を更に大きくできる。
実施の形態4.
実施の形態4においても、実施の形態2における励磁電流供給停止判定部の変形例を説明する。実施の形態4に係る風力発電装置は、以下で説明する点以外は実施の形態1及び2と同じであるので、基本的には、当該共通部分の説明は省略する。
図31は、実施の形態4に係る風力発電装置における励磁電流供給停止判定部による制御処理を説明するフローチャートである。図31の制御処理は、風力発電装置の10の運転中に一定の周期で繰り返し実行される。
図31を参照して、励磁電流供給停止判定部68は、図10のS1~S5、及び、図19のS101~S105と同様のS301~S305により、回転数Nと、間欠励磁運転領域の下限値及び上限値に相当する基準回転数N11及びN12との比較により、モード31~モード33を選択する。
これにより、N≧N12の場合(S301のYES判定時)には、S302により、モード31の処理(図32)が実行される。又、N≦N11の場合(S301のNO判定、かつ、S303のNO判定時)には、S305により、モード33の処理(図33)が実行される。更に、N11<N<N12の場合(S301のNO判定、かつ、S303のYES判定時)には、S304により、モード32の処理(図34)が実行される。
図32~図34には、図31のモード31(S302)、モード33(S305)、及び、モード32(S304)のそれぞれでの制御処理を説明するフローチャートが示される。実施の形態4では、補助フラグGon1,Gon2及びタイマ値tt1に加えて、タイマ値tt2がさらに導入される。
更に、タイマ値tt1が、実施の形態2,3と同様に、間欠励磁運転領域での励磁電流の停止時間を計測する一方で、タイマ値tt2は、間欠励磁運転領域での励磁電流の供給時間を計測する。
実施の形態2及び3と同様に、補助フラグGon1及びGon2の一方が「1」にセットされるとき、励磁電流供給フラグGon=1にセットされ、補助フラグGon1及びGon2の一方が「0」にリセットされるとき、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされる。尚、補助フラグGon1及びGon2の両方がセットされることはない。
図32を参照して、モード31の適用時には、S311により、補助フラグGon1=1に設定され、S312により、補助フラグGon2=0に設定される。更に、S313により、タイマ値tt1及びtt2がクリア(tt1=tt2=0)されるとともに、S314により、励磁電流供給フラグGon=1に設定される。
図33を参照して、モード33の適用時には、S341により、補助フラグGon1=0に設定され、S342により、補助フラグGon2=0に設定される。更に、S343により、タイマ値tt1及びtt2がクリア(tt1=tt2=0)されるとともに、S344により、励磁電流供給フラグGon=0に設定される。
図34を参照して、モード32の適用時には、S321により、前回設定された補助フラグGon1の状態が確認される。Gon1=1のときには(S321のYES判定時)、S322により、補助フラグGon2=0に設定されるとともに、S323により、タイマ値tt1はクリアされる(tt1=0)。
更に、S324では、タイマ値tt2が予め定められた判定値T21と比較される。タイマ値tt2が判定値T21より小さいとき(S324のYES判定時)には、S325により、タイマ値tt2がカウントアップされるとともに、S326により、励磁電流供給フラグGon=1に設定される。一方で、S324において、タイマ値tt2が判定値T21に達すると(S324のNO判定時)には、S327により、補助フラグGon1=0に設定されるとともに、S329により、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされる。更に、S328において、タイマ値tt2がクリアされる(tt2=0)。
S321において、補助フラグGon1=0のときには(S321のNO判定時)には、S330により、タイマ値tt1が判定値T11と比較される。tt1≦T11のとき(S330のNO判定時)には、S337により、タイマ値tt1がカウントアップされるとともに、S338により、補助フラグGon2=0に設定される。更に、tt1≦T11の期間内では、S339により、タイマ値tt2がクリアされる(tt2=0)とともに、S329により、励磁電流供給フラグGon=0に維持される。
タイマ値tt1が判定値T11を超えると(S330のYES判定時)、S331により、タイマ値tt2が判定値T21と比較される。タイマ値tt2が判定値T21より小さいとき(S331のYES判定時)には、S332により、タイマ値tt2がカウントアップされるとともに、S333により、補助フラグGon2=1に設定される。更に、S334により、タイマ値tt1は現在値に維持されるとともに、S326により、励磁電流供給フラグGon=1に設定される。
これに対して、S331において、タイマ値tt2が判定値T21を超えると(S331のNO判定時)、S335により、補助フラグGon2=0に設定されるとともに、S336により、タイマ値tt1及びtt2がクリアされる(tt1=tt2=0)。更に、S329により、励磁電流供給フラグGon=0に設定される。
この様に、実施の形態4では、間欠励磁運転領域において、励磁電流の供給時間、及び、停止時間の両方がタイマ値によって監視される。即ち、励磁電流の停止が、判定値T11に対応する所定時間だけ継続すると、励磁電流の供給が開始されるとともに、励磁電流の供給が、判定値T21に対応する所定時間だけ継続すると、励磁電流が停止される。即ち、判定値T11に対応する所定時間は「第1の時間」の一実施例に対応し、判定値T12に対応する所定時間は「第2の時間」の一実施例に対応する。
図35は、実施の形態4に係る風力発電装置での励磁電流供給制御の動作例を示すタイミングチャートである。図35では、図31~図34に従って励磁電流供給フラグGonが設定されたときの動作が示されている。
図35を参照して、時刻ts~t1では、N≧N12(モード31)のため、励磁電流供給フラグGon=1に設定されて、励磁電流が発電機20に供給される。励磁電流の供給時は、発電機20には発電トルクTeが作用するため、Tm-Te<0となる風速においては、回転数Nは徐々に低下する。
時刻t1において、回転数NがN12まで低下すると、モード31からモード32への遷移が生じる。これに応じて、励磁電流の停止時間を計測するためのタイマ値tt2のカウントアップが開始される。時刻t1より更に回転数Nが低下し、時刻t20では、タイマ値tt2が判定値T21に達する前に、回転数Nが基準回転数N11まで低下する。
これに応じて、時刻t20では、モード32からモード33への遷移に応じて、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて、発電が停止される。これにより、回転数Nが上昇に転じるために、再び、モード33からモード32への遷移が生じるので、励磁電流供給フラグGon=0に維持されるとともに、クリア後のタイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t21では、タイマ値tt1が判定値T11に達する前に、回転数Nが基準回転数N12まで上昇する。これにより、時刻t21では、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、発電が再開される。時刻t21では、タイマ値tt1,tt2がクリアされた後(S313)、励磁電流の供給時間を計測するためのタイマ値tt2のカウントアップが開始される。
時刻t22では、回転数Nが基準回転数N11まで低下する前に、タイマ値tt2が判定値T21に達することにより、励磁電流が停止される。時刻t22からは、クリア後のタイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t23では、タイマ値tt1が判定値T11に達する前に、時刻t22以降で上昇する回転数Nが基準回転数N12に達する。これにより、モード32からモード31への遷移が生じて、励磁電流供給フラグGon=1にセットされることで、励磁電流の供給が開始される。
時刻t23で回転数Nが低下に転じるため、再び、モード31からモード32への遷移が生じるとともに、クリア後のタイマ値tt2のカウントアップが開始される。
更に、時刻t24では、タイマ値tt2が判定値T21に達する前に、時刻t23以降での発電により低下する回転数Nが基準回転数N11まで低下する。これにより、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされることで、励磁電流が停止される。
時刻t24で回転数Nが上昇に転じると、再び、モード33からモード32への遷移が生じるとともに、クリア後のタイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t25では、時刻t24以降で上昇する回転数Nが基準回転数N12に達する前に、タイマ値tt1が判定値T11に達する。これにより、励磁電流供給フラグGon=1にセットされることで、励磁電流の供給が開始される。時刻t25では、クリア後のタイマ値tt2のカウントアップが開始される。
時刻t26では、時刻t24と同様に、タイマ値tt2が判定値T21に達する前に、回転数Nが基準回転数N11まで低下する。これにより、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされることで、励磁電流が停止される。更に、時刻t26では、クリア後のタイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t27では、時刻t23と同様に、タイマ値tt1が判定値T11に達する前に、回転数Nが基準回転数N12に達する。これにより、モード32からモード31への遷移が生じて、励磁電流供給フラグGon=1にセットされる。これにより、励磁電流の供給が再開される。
時刻t27以降では、風速の上昇により、発電中であっても回転数N≧N12の状態が継続して、モード31が維持される。その後、風速の低下により、回転数Nが低下して、時刻t28において、回転数Nが基準回転数N12まで低下すると、時刻t1と同様に、モード31からモード32への遷移が発生して、励磁電流の供給が継続された状態で、クリア後のタイマ値tt2のカウントアップが開始される。
実施の形態4では、間欠励磁運転領域内において、励磁電流の停止時間に応じて発電を開始する機能を有する実施の形態2と比較すると、励磁電流の供給時間に応じて発電を停止することが更に可能となる。
実施の形態2での動作線213(図24)では、励磁電流供給中のタイマ値tt2に基づく、発電状態から発電停止状態への遷移が発生しない。このため、励磁電流供給時において、発電機20のトルクと風車のトルクとが近付くと、式(13)の右辺の絶対値が小さくなることにより、回転数Nの傾きが小さくなる。これにより、回転数Nが基準回転数N11まで低下するのに時間を要すると、発電効率が低い低回転数領域での発電の機会が増加することで、発電量が低下することが懸念される。
これに対して、実施の形態4では、励磁電流の供給時間に上限値(判定値T21)を設けることで、励磁電流の供給を停止して、発電機20を加速させる機会を設けることができる。これにより、間欠励磁運転領域での発電運転を、発電効率が相対的に高い高回転側に設けることが可能となる。
図36は、実施の形態4に係る風力発電装置での発電機20の動作点の変遷の一例を説明するための回転数-トルク特性図である。図36においても、図16に示された動作例をベースに、実施の形態4に係る発電開始条件を付加したときの動作例が示される。
図36を参照して、回転数-トルク特性図上に、実施の形態4での動作線215が、太線で示される。動作線215についても、発電機20の動作点の集合である。動作線215は、間欠励磁運転領域での発電時(Gon=1)には、図16と同様に、最大出力線210よりも上側(高トルク側)を通過する様に設定される。又、動作線215についても、発電停止時(Gon=0)には、横軸(Te=0)上となる。
実施の形態4に係る動作線215は、実施の形態1に係る動作線211,212(図15,図16)でのヒステリシスループと同様の、回転数N=N11での発電状態から発電停止状態への遷移(下向きの矢印)と、回転数N=N12での発電停止状態から発電状態への遷移(上向きの矢印)とに加えて、タイマ値tt1及びt12に応じた遷移を更に含む。
具体的には、タイマ値tt1に応じて、N=Non♯において、発電停止状態から発電状態への遷移(上向きの矢印)が生じるとともに、タイマ値tt2に応じて、N=Noff♯において、発電状態から発電停止状態への遷移(下向きの矢印)とが生じる。これらの回転数Non♯,Noff♯は、回転数Nの傾きに依存して異なるため、基準回転数N11,N12とは異なり、一意に定まるものではない。
例えば、風速V2においては、風車トルクが大きめであるから励磁電流の停止時には、回転数Nは、動作線215のうちの横軸(T=0)上を移動して、基準回転数N12まで上昇することが可能である。N=N12に達して、励磁電流の供給が開始されると、発電機20の動作点は、動作線215のヒステリシスループの上辺に沿って、減速側(右側)に移動する。この際に、回転数の低下(減速)に伴い、風車トルクが増大するため、回転数Nの低下レートは徐々に減少する。
このため、実施の形態4では、回転数Nが基準回転数N11に低下するまでに、タイマ値tt2が判定値T21に達するのに応じて、回転数Noff♯(Noff♯>N11)において、励磁電流を停止する。
これにより、回転数NがNoff♯からN11に低下するまでの期間に亘って発電を継続する代わりに、発電停止により回転数Nを上昇し、N=N12に達すると発電を再開することができる。これにより、低回転数側での発電を抑制して、高回転側での発電を指向することができる。
又、風速V4においては、実施の形態2と同様に、励磁電流の停止後、タイマ値tt1が判定値T11に達した際の回転数N=Non♯であったとすると、その時点で励磁電流を供給して、発電を開始することができる。
尚、図示は省略するが、間欠励磁運転領域において発電機20のトルクと風車トルクとが一致して定常状態に至る風速においても、タイマ値tt1,tt2に応じた励磁電流供給フラグGonの制御により、同様の効果を得ることができる。具体的には、タイマ値tt2に基づく発電の中断による発電機20の加速(回転数Nの上昇)と、回転数Nが基準回転数N12まで上昇した後に発電を開始することを繰り返す間欠充電により、高回転側の領域での発電を行うことができる。
以上説明した様に、本実施の形態4に係る風力発電装置では、間欠励磁運転領域において励磁電流の停止時間を計測するタイマ(タイマ値tt1)に加えて、励磁電流の供給時間を計測するタイマ(タイマ値tt2)を有しているため、実施の形態2と同様に、低風速で加速しにくい条件においても励磁電流の供給を再開できる。
更に、間欠励磁運転領域内では、特に低回転数側で風車トルクが大きくなる風速においては、低回転数領域での発電時間を低減し、当該時間において発電の停止により回転数Nを上昇させることで、高回転数領域での発電時間の割合を高めることで、発電効率を上昇することができる。
尚、実施の形態2で説明したタイマ値tt1と同様に、タイマ値tt2を用いて励磁電流の供給時間を管理することで、発電機20の発電運転時の回転数Nの低下レート(傾き)を把握することができる。即ち、タイマ値tt2が判定値T21に達しても回転数Nが基準回転数N11に達していないことの検知は、回転数Nの傾きが予め定められた基準値(T21から逆算)よりも小さいことを検知することと等価であり、これにより、更に、風速が基準よりも低いことを間接的に検知することと等価である。この結果、実施の形態4においても風速を把握する必要が無く、更に、風速に応じた複雑な制御を行うことなく、低風速時の発電機会を簡易な制御で確保することができる。
尚、実施の形態4では、タイマ値tt1が導入された実施の形態2に対して、タイマ値tt2を更に導入した例を説明したが、実施の形態1に対して、実施の形態4で説明したタイマ値tt2に基づいて励磁電流の供給を停止する制御を組み合わせることも可能である。
実施の形態5.
実施の形態5では、実施の形態2における励磁電流供給停止判定部の変形例を説明する。特に、間欠励磁運転領域の下限(基準回転数N11)近傍で、励磁電流の供給が再開されたときの発電時間を確保するための制御が示される。
図37は、実施の形態5に係る風力発電装置での励磁電流供給制御の動作例を示すタイミングチャートである。
図37を参照して、実施の形態5では、間欠運転励磁領域は、N11<N<N12のこれまでの領域に加えて、N13<N≦N11の領域を更に含む様に拡大される。従って、図31に示されたモード判定の制御処理では、S303は、N>N13であるか否かを判定することになる。そして、N13<N<N12のとき、モード32が適用されて、間欠運転励磁領域で発電機20が運転される。
実施の形態4と同様に、モード32の適用時には、タイマ値tt1によって励磁電流の停止時間が計測されるとともに、タイマ値tt2によって励磁電流の供給時間が計測される。
間欠励磁運転領域のうち、N11<N<N12の範囲内で励磁電流の供給が開始されたときは、実施の形態2等と同様に、励磁電流供給フラグGon=0の時間(即ち、励磁電流の停止時間)を計測するタイマ値tt1が判定値T11に達すると、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、励磁電流の供給が開始される。
一方で、拡大されたN13<N≦N11の範囲内で励磁電流の供給が開始されたときは、タイマ値tt1に関する判定値T13が、上記判定値T11とは別個に設けられる。判定値T13は、判定値T11よりも大きい。従って、当該範囲では、励磁電流の停止時間)を計測するタイマ値tt1が判定値T13に達すると、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、励磁電流の供給が開始される。即ち、実施の形態5では、判定値T13に対応する所定時間は「第4の時間」の一実施例に対応する。
更に、間欠励磁運転領域では、励磁電流の停止条件を示す下限側の回転数についても、励磁電流の供給開始時点での回転数に依存して異なる値に設定される。具体的には、N11<N<N12の範囲内で励磁電流の供給が開始されたときには、回転数Nが基準回転数N11まで低下したときに、励磁電流が停止される。一方で、N13<N≦N11の範囲内で励磁電流の供給が開始されたときは、回転数Nが基準回転数N13まで低下したときに、励磁電流が停止される。即ち、実施の形態5では、N<N13の領域では、励磁電流が供給されることはない。実施の形態5では、基準回転数N13は「第3の回転数」に対応する。
更に、実施の形態5では、励磁電流供給フラグGon=1からGon=0にリセットする条件に、励磁電流の供給時間を計測するタイマ値tt2が加えられる。具体的には、励磁電流供給フラグGon=1のときには、タイマ値tt2が判定値T22に達するまでは、励磁電流供給フラグGon=1が維持される。そして、タイマ値tt2≧T22となった後に、回転数Nが基準回転数N11まで低下すると、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて、励磁電流が停止される。これにより、判定値T22に相当する発電時間を最低限確保することが可能となる。即ち、実施の形態5では、判定値T22に対応する所定時間は「第3の時間」の一実施例に対応する。
図37を参照して、時刻ts~t1では、N>N12(モード31)のため、励磁電流供給フラグGon=1に設定されて、励磁電流の供給によって発電機20が発電するので、回転数Nは徐々に低下している。
時刻t1において、回転数NがN12まで低下すると、モード31からモード32への遷移が生じる。これに応じて、励磁電流の供給時間を計測するためのタイマ値tt2のカウントアップが開始される。時刻t30では、タイマ値tt2が判定値T22に達した後に、回転数Nが基準回転数N11まで低下する。これに応じて、時刻t30では、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて、発電が停止される。これにより、回転数Nは上昇に転じる。更に、励磁電流の停止時間を計測するためのタイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t31では、タイマ値tt1が判定値T11に達する前に、回転数Nが基準回転数N12まで上昇する。これにより、時刻t31では、励磁電流供給フラグGon=1にセットされて、発電が再開される。時刻t31では、クリア後のタイマ値tt2のカウントアップが開始される。
時刻t32では、時刻t30と同様に、タイマ値tt2が判定値T22に達した後に、回転数Nが基準回転数N11まで低下する。これに応じて、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされるので、励磁電流が停止されるとともに、クリア後のタイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t33では、時刻t32以降で上昇する回転数Nが基準回転数N12に達する前に、タイマ値tt1が判定値T11に達する。これにより、励磁電流供給フラグGon=1にセットされることで、励磁電流の供給が開始される。時刻t33では、クリア後のタイマ値tt2のカウントアップが開始される。
時刻t34では、時刻t30,t32と同様に、タイマ値tt2が判定値T22に達した後に、回転数Nが基準回転数N11まで低下する。これに応じて、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされるので、励磁電流が停止されるとともに、クリア後のタイマ値tt1のカウントアップが開始される。
時刻t35では、時刻t33と同様に、回転数Nが基準回転数N12まで上昇する前に、タイマ値tt1が判定値T11に達する。これにより、励磁電流供給フラグGon=1にセットされることで、励磁電流の供給が開始される。時刻t35では、クリア後のタイマ値tt2のカウントアップが開始される。
時刻t35以降では、回転数Nが基準回転数N11まで低下した時点では、タイマ値tt2が判定値T22に達していない。このため、N<N11であっても、励磁電流供給フラグGon=1は、タイマ値tt2が判定値T22に達する時刻t36まで維持される。時刻t36において、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて、励磁電流が停止される。
時刻t36において、クリアされたタイマ値tt1のカウントアップが開始される。時刻t37では、タイマ値tt1が判定値T13に達するため、励磁電流供給フラグ=1にセットされて、回転数Nが基準回転数N12まで上昇する前に励磁電流の供給が開始される。
時刻t38では、発電再開後に回転数Nが拡大された間欠励磁運転範囲の下限(基準回転数N13)まで低下するので、励磁電流供給フラグGon=0にリセットされて、励磁電流が停止される。更に、クリア後のタイマ値tt1のカウントアップが開始される。以降、時刻t39,t40では、時刻t37,t38と同様の条件の成立により、励磁電流の供給が開始及び停止される。
実施の形態5では、間欠励磁運転領域内において、時刻t35~t36の期間に示される様に、間欠励磁運転領域の下限近傍で励磁電流の供給が開始されたときに、発電が極めて短期間で終了することを防止できる。又、時刻t37~t38及びt39~t40の期間の様に、N<N11の範囲でも発電機会を確保することができる。
この様に、実施の形態5に係る風力発電装置では、風速を把握することなく、低風速時の発電機会を簡易な制御で確保することにより、風力発電装置の設備利用率を向上することができる。更に、間欠励磁運転領域の低回転数側(基準回転数N11近傍)での発電時間を確保することが可能となる。
尚、実施の形態2~5では、タイマ値tt1及びtt2と、判定値T11及びT21との比較によって、間接的に回転数Nの傾きを検知する例を説明したが、タイマ値tt1,tt2ではなく、一定時間内での回転数Nの差分から、回転数Nの変化レート(上昇/低下)即ち、傾きを直接算出することも可能である。この場合には、実施の形態2~5でのタイマ値tt1が判定値T11に達したか否かの判定は、直接算出された回転数Nの変化レートの絶対値が、予め定められた第1の判定値よりも小さいか否かの判定によって代替することができる。同様に、タイマ値tt2が判定値T21に達したか否かの判定は、直接算出された回転数Nの変化レートの絶対値が、予め定められた第2の判定値よりも小さいか否かの判定によって代替することができる。
又、上述した実施の形態1~5は、これまでの説明で言及していない組み合わせも含めて、矛盾が生じない限りにおいて適宜に組合せることが可能である。この様にして、本実施の形態に係る風力発電装置では、風車の機械出力だけでは発電電力よりも損失が大きいために連続的に発電しても蓄電素子30を充電することができない場合においても、機械出力を運動エネルギに蓄積する発電停止時間を設けることにより、間欠的に発電して蓄電素子30を充電することが可能となる。又、風速を検出しなくても、風速に応じて蓄電素子30へ充電する電力量を大きくすることができる回転数において、間欠的な発電が可能である。この結果、風力発電装置の設備利用率向上及び蓄電効率向上を達成できる。
尚、本実施の形態では、プロペラ5及び発電機20の回転数が同一値である例を説明したが、増速機等の設置によって、プロペラ5(風車)の回転数と、発電機20(回転子)の回転数との間に、既知の比(K)が存在する場合にも、同様の出力電圧制御及び励磁電流制御を、風力発電装置に適用することが可能である。具体的には、回転数検出値生成部62(図6及び図13)によって生成された、発電機20の回転数検出値をK倍することでプロペラ5(風車)の回転数を算出することが可能である。又、プロペラ5(風車)の所望のトルク値を(1/K)倍することで、発電機20のトルクを算出することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示による技術的範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。