JP7223649B2 - 塗膜特性測定方法、および塗膜特性測定装置 - Google Patents

塗膜特性測定方法、および塗膜特性測定装置 Download PDF

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Description

本発明は、塗膜特性測定方法、および塗膜特性測定装置に関する。
海洋鋼構造物は厳しい腐食環境の中で長期に亘り機能を維持する必要がある。30年以上の耐用年数が期待される海洋鋼構造物の飛沫干満帯には、超厚膜形エポキシ樹脂塗装が適用される場合が多い。超厚膜形エポキシ樹脂塗装は、2.5mmを超える厚い塗膜によって漂流物に対する耐衝撃性を向上させる。また、超厚膜形エポキシ樹脂塗装の厚い塗膜は、腐食因子である水、酸素、塩化物イオンが鋼材表面に到達するまでの時間の長期化を図ることができる。さらに、塗膜を厚く形成することにより紫外線による減耗で塗膜の膜厚が減少することに対して、必要な膜厚を確保している。このように超厚膜形エポキシ樹脂塗装は塗膜を厚くすることによって、鋼材の長期耐久性を担保している。この塗装が最初に適用されたものは今日で期待耐用年数である30年を経過し、クラックや微細孔が全面にあり外観上からは明らかに劣化している状況にある。
30年を経過した塗膜の海洋暴露試験体について、その防食性能の調査が行われている(例えば、非特許文献1参照)。この防食性能の調査における調査項目は外観、膜厚、塗膜の付着力測定による破壊検査、電気化学インピーダンススペクトル法(EIS: Electrochemical Impedance Spectroscopy)による測定などである。防食性能の調査は、200Hz~1kHzといった狭い周波数域で、且つ、3つの周波数200Hz、500Hz、1kHzの周波数に対する電気化学インピーダンススペクトル特性を測定することで行われ、塗膜の劣化状況が評価されている。
佐々木信博, 佐藤弘隆, 森田さやか, 「26年経過した超厚膜形エポキシ樹脂被覆の防食性能」, 防錆管理, 2018, vol.62, no.5, p.159-168
電気化学インピーダンススペクトル法は、塗膜の深度方向の劣化を評価できる非破壊検査法の一つである。電気化学インピーダンススペクトル特性は、電気的等価回路で説明され、等価回路のパラメータは、塗膜の劣化とともに変化する。等価回路のパラメータは、実測した電気化学インピーダンススペクトル特性から得られるボード線図とナイキスト線図とを、回路要素を適合させることによって導出される。導出されたパラメータと、ボード線図とナイキスト線図との曲線変化傾向とが劣化指標となる。
仮に、電気化学インピーダンススペクトル法による劣化診断を、超厚膜形エポキシ樹脂塗装に適用した場合に、200Hz~1kHzの狭い周波数域ではインピーダンスの計測を行うことによって、大まかな塗膜の劣化傾向は把握できる。
しかし、塗膜の鋼材に近い部分である塗膜の最深部や塗膜と鋼材界面の状態を示す200Hzより低い低周波数域では、超厚膜形エポキシ樹脂塗装の塗膜が劣化した場合でも絶縁性が高いため、S/N比が悪く、電気化学インピーダンススペクトル特性が、ノイズに埋もれてしまう場合がある。この場合、等価回路のパラメータを導出できる実データが得られないことになるため、劣化診断が不可能となる。
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、検査時の膜厚が1.5mmを超えるような塗膜の鋼材に近い部分である塗膜の最深部やその下の鋼材表面近傍の状況を把握するための情報を導出できる塗膜特性測定方法、および塗膜特性測定装置を提供することを目的とする。
(1)本発明の一態様に係る塗膜特性測定方法は、
電気化学インピーダンススペクトル法を使用して塗膜の特性を測定する塗膜特性測定装置が実行する塗膜特性測定方法であって、
前記塗膜は鋼材にジンクリッチプライマーなどの防食下地を塗布した後、所定の塗装間隔をおいて、超厚膜形のエポキシ樹脂による防食層を形成した塗膜であり、
前記塗膜特性測定方法は、前記塗膜上に形成された電極と前記鋼材と間に交流電圧を印加し、交流電圧を周波数掃引することで得られる交流電流を測定するステップと、
前記交流電圧と前記交流電流の測定結果とに基づいて、インピーダンスを導出するステップとを有し、前記電極の面積は、0.05m以上である。
この発明によれば、塗膜特性測定方法は、電気化学インピーダンススペクトル法を使用して、塗膜上に形成された電極と鋼材との間に交流電圧を周波数掃引することで得られる交流電流を測定する。電極の面積は、0.05m以上である。電極の面積を、0.05m以上とすることによって、塗膜特性測定方法は、電極と鋼材との間に印加した交流電圧と交流電流の測定結果とに基づいて、低周波数側のインピーダンスを導出できる。低周波数側のインピーダンスは、超厚膜形のエポキシ樹脂による防食層の鋼材側に近い深部や鋼材上の防食下地(ジンクリッチプライマー)の状態を示している。このため、塗膜深部から鋼材表面近傍の状況を把握するための情報を導出できる。
(2)本発明の一態様に係る塗膜特性測定方法は、上記(1)に係る塗膜特性測定方法であって、前記測定するステップでは、1Hz未満の周波数領域を含む周波数領域で、交流電圧を周波数掃引する。
この場合、塗膜特性測定方法は、塗膜上に形成された電極と鋼材との間に、1Hz未満の周波数領域を含む周波数領域で、交流電圧を周波数掃引する。1Hz未満の周波数領域を含む周波数領域で、交流電圧を周波数掃引することで、塗膜特性測定方法は、低周波数側のインピーダンスを導出できる。1Hz未満の低周波数側のインピーダンスは、鋼材に塗布した防食下地の状態を示している。このため、防食下地の状態を示す情報から鋼材表面近傍の状況を把握することができる。
(3)本発明の一態様に係る塗膜特性測定方法は、上記(1)又は上記(2)に記載の塗膜特性測定方法であって、
前記導出するステップで導出したインピーダンスに基づいて、ナイキスト線図を描画するステップと、前記ナイキスト線図を描画するステップで描画した前記ナイキスト線図に基づいて、前記塗膜の状態を判定するステップとを有する。
インピーダンスをプロットすることによって得られる劣化している厚膜塗膜のナイキスト線図は、第1半円と第2半円とを含む。第2半円は、第1半円よりも高抵抗側(低周波数側)にみられる。エポキシ樹脂の防食層の劣化に伴って、第1半円の半径は減少するが、ジンクリッチプライマーなどの防食下地が健全である限り第2半円の半径は一定で減少しない。したがって、塗膜特性測定方法は、ナイキスト線図に表されている第1半円の半径に基づいて、ジンクリッチプライマーなどの防食下地上に形成されているエポキシ樹脂の防食層の状態を判定できる。
(4)本発明の一態様に係る塗膜特性測定方法は、上記(3)に記載の塗膜特性測定方法であって、前記判定するステップでは、前記ナイキスト線図に表される前記ジンクリッチプライマーなどの防食下地の状態を表す半円に基づいて、前記ジンクリッチプライマーなどの防食下地の状態を判定する。
インピーダンスをプロットすることによって得られるナイキスト線図は、第1半円と第2半円とを含む。第2半円は、第1半円よりも高抵抗側にみられる。エポキシ樹脂の防食層の劣化に伴って、第1半円の半径は減少するが、第2半円の半径はジンクリッチプライマーなどの防食下地が健全である限り減少しない。
第1半円の半径がさらに小さくなり、第1半円の半径と第2半円の半径の比が3:1程度になると、この特性を有する塗膜の付着力測定による破壊検査結果によれば、ジンク凝集破壊となっている。つまり、水、酸素、塩化物イオンなどの腐食因子が、防食下地まで、若しくは少なくとも防食下地の直上の防食層の最深部にまで達していると考えられる。
しかし、第1半円の半径と第2半円の半径の比が3:1では、防食下地(ジンクリッチプライマー)の電位測定結果が健全なジンクリッチプライマーであることを示す-0.9Vより卑であること(飽和銀塩化銀電極基準)、外観からジンクリッチプライマーが全く腐食していないことが確認できている。このことから、第1半円の半径と第2半円の半径の比が3:1では、防食下地は健全であることが判明している。
さらに防食層の劣化が進み、第1半円の半径が小さくなると第1半円の半径と、第2半円の半径とが同じになる。第1半円の半径と第2半円の半径の比が1:1となった場合には、この特性を有する塗膜の付着力測定による破壊検査結果によれば、ジンク凝集破壊となっている。つまり、水、酸素、塩化物イオンなどの腐食因子が、防食下地まで、若しくは少なくとも防食下地の直上の防食層の最深部にまで達していると考えられる。
しかし、第1半円の半径と第2半円の半径の比が1:1では、防食下地(ジンクリッチプライマー)の電位測定結果が健全なジンクリッチプライマーであることを示す-0.9Vより卑であること(飽和銀塩化銀電極基準)、外観からジンクリッチプライマーが全く腐食していないことが確認できていることから、第1半円の半径と第2半円の半径の比が1:1では、防食下地は健全であることが判明している。このように、第1半円の半径と第2半円の半径の比が1:1になるまでは、防食下地の健全が確認されている。
したがって、塗膜特性測定方法は、ナイキスト線図に表されている第1半円の半径と第2半円の半径とに基づいて、ジンクリッチプライマーなどの防食下地の状態を判定できる。
(5)本発明の一態様に係る塗膜特性測定方法は、上記(3)又は上記(4)に記載の塗膜特性測定方法であって、前記判定するステップで判定された前記防食下地の状態に基づいて、補修時期であるか否かを判定するステップを有する。
インピーダンスをプロットすることによって得られるナイキスト線図は、第1半円と第2半円とを含む。第2半円は、第1半円よりも高抵抗側(低周波数側)にみられる。塗膜の劣化に伴って、第1半円の半径は減少するが、第2半円の半径は減少しない。
第1半円の半径と第2半円の半径とが同じになった場合には、水、塩分などの腐食因子が、エポキシ樹脂の防食層の深部まで既に達したものと考えられる。この場合、腐食因子が鋼材に到着するのを防止するには、補修を行うのが好ましい。したがって、塗膜特性測定方法は、第1半円の半径と第2半円の半径とが同じになったか否かに基づいて、補修時期であるか否かを判定できる。
(6)本発明の一態様に係る塗膜特性測定装置は、電気化学インピーダンススペクトル法を使用して塗膜の特性を測定する塗膜特性測定装置であって、前記塗膜は、鋼材を被膜するジンクリッチプライマーなどの防食下地上に形成されたエポキシ樹脂の防食層であり、前記塗膜特性測定装置は、前記塗膜上に形成された電極と前記鋼材と間に交流電圧を周波数掃引し、交流電圧を周波数掃引することで得られる交流電流を測定する測定部と、前記交流電圧と前記交流電流の測定結果とに基づいて、インピーダンスを導出する処理部とを備え、前記電極の面積は、0.05m以上である。
この発明によれば、塗膜特性測定装置は、電気化学インピーダンススペクトル法を使用して、塗膜上に形成された電極と鋼材との間に交流電圧を周波数掃引することで得られる交流電流を測定する。電極の面積は、0.05m以上である。電極の面積を、0.05m以上とすることによって、塗膜特性測定装置は、電極と鋼材との間に印加した交流電圧と交流電流の測定結果とに基づいて、低周波数側のインピーダンスを導出できる。低周波数側のインピーダンスは、鋼材を被膜するジンクリッチプライマーなどの防食下地の状態を示している。このため、防食下地下の鋼材表面近傍の状況を把握するための情報を導出できる。それは、防食下地が健全であれば、その下の鋼材は腐食がない。一方、防食下地が劣化していれば、その下の鋼材は腐食している可能性がある。もしくは近い将来鋼材が腐食する可能性が大きいということである。
本発明の実施形態によれば、エポキシ樹脂の防食層の劣化状況、および、その下で鋼材を被覆しているジンクリッチプライマーなどの防食下地の健全性を把握することができ、且つ、防食下地の健全性から防食下地下の鋼材表面近傍の状況を把握することができる。
本発明の実施形態に係る塗膜特性測定システムを示す図である。 塗膜CFの一例を示す図である。 周波数と電流の振幅との関係の一例を示す図である。 周波数とインピーダンスの振幅との関係の一例を示す図である。 塗膜CFの電気的等価回路の一例を示す図である。 電極面積の比と電流の比との関係の一例を示す図である。 電極面積の比と電流の比との関係の一例を示す図である。 交流抵抗と容量リアクタンスとの関係の例1を示す図である。 交流抵抗と容量リアクタンスとの関係の例2を示す図である。 交流抵抗と容量リアクタンスとの関係の例3を示す図である。 本発明の実施形態に係る塗膜特性測定システムを構成する制御・解析装置を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る制御・解析装置によって分類される被覆膜の劣化の状態の一例を示す図である。 ナイキスト線図の例1を示す図である。 ナイキスト線図の例2を示す図である。 ナイキスト線図の例3を示す図である。 ナイキスト線図の例4を示す図である。 ナイキスト線図の例5を示す図である。 本発明の実施形態に係る制御・解析装置によって分類される塗膜の劣化の状態とナイキスト線図との関係の一例を示す図である。 塗膜劣化度判定テーブルの一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る制御・解析装置が導出するボード線図の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る制御・解析装置が導出するナイキスト線図の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る塗膜特性測定システムの動作の一例を示すフロー図である。
次に、本実施形態の塗膜特性測定方法、および塗膜特性測定装置を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
(実施形態)
(塗膜特性測定システム)
図1は、本発明の実施形態に係る塗膜特性測定システムを示す図である。
本実施形態に係る塗膜特性測定システム1は、電気化学インピーダンススペクトル法(EIS: Electrochemical Impedance Spectroscopy)によって、鋼材を被覆している塗膜の診断を行う。電気化学インピーダンススペクトル法は、電極と電解液との界面を解析する際のインピーダンス分光法であり、塗膜の劣化診断にも適用が可能である。
塗膜特性測定システム1は、塗膜に正弦波交流の電圧を印加して掃引し、正弦波交流の電圧を印加して掃引することによる周波数応答である交流電流を測定する。塗膜特性測定システム1は、塗膜に印加した正弦波交流の電圧と、測定することによって得られた交流電流とに基づいて、交流電圧を交流電流で除算することによって交流電圧と交流電流との比(インピーダンス)を導出する。
塗膜特性測定システム1は、塗膜に正弦波交流の電圧を印加して掃引し、正弦波交流の電圧を印加して掃引することによる周波数応答である交流電流を測定することによって、塗膜から鋼材の表面までの各種反応に対応するインピーダンスが分離されて測定できることを利用する。
ここで、塗膜CFについて説明する。
図2は、塗膜CFの一例を示す図である。塗膜CFは、鋼材10の一面に形成される。鋼材10の一例は、海洋構造物である。本実施形態では、一例として、鋼材10が海洋構造物である場合について説明を続ける。
塗膜CFは、漂流物に対する耐衝撃性を向上させるために厚膜で形成される。塗膜CFは、酸素、水、塩化物イオンなどの腐食因子が、鋼材10の表面に到達するまでの時間の長期化を図るために厚膜で形成される。塗膜CFを厚膜で形成することにより紫外線による減耗で膜厚が減少することに対して、必要な膜厚を確保する。塗膜CFの一例は、鋼材10上に形成された防食下地20aと、防食下地20aの上に形成された防食層20bとを含む。
防食下地20aの一例は、ジンクリッチプライマーである。ジンクリッチプライマーは、亜鉛末を多量に含んだ下塗り塗料である。ジンクリッチプライマーは、鋼材を防錆し、且つ、防食層20bの下地となるものであり、ジンクリッチプライマーを塗付する鋼材にはブラスト処理などの素地調整がされている。ブラスト処理されることによって、拡大鏡なしで、目に見えるミルスケール、さび、塗膜、異物、油、グリース及び泥土がない表面とすることができる。残存するすべての汚れは、そのこん跡が斑点又はすじ状のわずかな染みだけとなって認められる程度となっている。
本実施形態では、一例として、Sa2 1/2の除錆度で加工されている場合について説明を続ける。ジンクリッチプライマーの膜厚の一例は、10μmから75μmであり、本実施形態では、ジンクリッチプライマーの膜厚が、20μmである場合について説明を続ける。
防食層20bの一例は、エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂の膜厚の一例は、0.2mmから3mmであり、本実施形態では、エポキシ樹脂が、2mmである場合について説明を続ける。
ここで、ジンク層などの防食下地20aとエポキシ樹脂などの防食層20bとを含む初期施工膜厚を0.3mmから3mmの塗膜CFとしてもよい。さらに、防食層20bの上部に形成する耐候性塗膜を含んでもよい。好ましくは、ジンク層などの防食下地20aとエポキシ樹脂の防食層20bとの組み合わせで、1.0mm~2.5mmの塗膜CFを構成してもよい。
図2には、さらに、塗膜CFの診断を行う場合に形成される導電性ペースト30と、電極40とが示されている。
導電性ペースト30は、防食層20bと電極40とを導通し、且つ、塗膜CFに浸透する電解質を形成する。導電性ペースト30の一例は、カルボキシメチルセルロース(CMC: carboxymethyl cellulose)を3%塩化ナトリウム水溶液に溶解させたものである。
電極40は、後述する塗膜特性測定装置100から交流電圧が印加される。電極40は、アルミ箔やステンレス箔などの金属箔が好ましく、電極40の一例は、アルミ箔である。電極40の面積は、0.05m以上1m以下であり、より好ましくは、0.1m以上0.3m以下である。本実施形態では、電極40の面積を、0.3mとした場合について説明を続ける。
ここで、電極40の面積Sについて、説明する。
図3は、周波数と交流電流の振幅との関係の一例を示す図である。図3には、電極40の面積Sを可変にした場合に得られる周波数と、交流電流の振幅との関係を示す。図3において、横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は交流電流の振幅[A]である。横軸、縦軸とも対数表示である。電極40の面積Sは、0.01m、0.02m、0.03m、0.1m、0.2m、0.3mとした。
図3によれば、電極40の面積Sの増加とともに交流電流の振幅が増加することが分かる。また、図3によれば、電極40の面積Sが0.01mと、0.02mとである場合に、10Hz~1kHzの間で、電流値の振幅のばらつきが大きいのが分かる。図3によれば、電極40の面積Sが0.03mである場合には、電極40の面積Sが0.01mと、0.02mである場合と比較して、電流の振幅のばらつきは小さくなるが、周波数が20Hz~50Hzで、ばらついているのが分かる。図3によれば、電極40の面積Sが0.1m以上では、電流値の振幅にばらつきは見られないことから、電流値の振幅にばらつきが見られなくなる電極面積の閾値は0.03mから0.1mの間にあり、図には示していないがその閾値は、0.05mであった。
図4は、周波数とインピーダンスの振幅との関係の一例を示す図である。図4には、電極40の面積Sを可変にした場合に得られる周波数と、インピーダンスの振幅との関係を示す。図4において、横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はインピーダンスの振幅[Ω]である。横軸、縦軸とも対数表示である。電極40の面積Sは、0.01m、0.02m、0.03m、0.1m、0.2m、0.3mとした。
図4によれば、電極40の面積Sの増加とともにインピーダンスの振幅が減少することが分かる。また、図4によれば、電極40の面積Sが0.01mと、0.02mとである場合に、10Hz~1kHzの間で、インピーダンスの振幅のばらつきが大きいのが分かる。図4によれば、電極40の面積Sが0.03mである場合には、電極40の面積Sが0.01mと、0.02mである場合と比較して、インピーダンスの振幅のばらつきは小さくなるが、周波数が20Hz~50Hzで、ばらついているのが分かる。図4によれば、電極40の面積Sが0.1m以上では、インピーダンスの振幅にばらつきは見られないことから、インピーダンスの振幅にばらつきが見られなくなる電極面積の閾値は電流の振幅と同様に、0.03mから0.1mの間にあり、図には示していないがその閾値は、0.05mであった。
電気化学インピーダンス特性(以下「EIS特性」ともいう)を、抵抗、静電容量などの素子を組み合わせた等価回路で再現し、その抵抗の値、静電容量の値から等価回路の解析を実施することによって、塗膜CFの劣化、塗膜CFの下の鋼材近傍の腐食状況を把握できる。これまでの結果から、30数年では、防食層20bの劣化は進むが、防食下地20aはほぼ健全で鋼材10の腐食は見られないことが判明している。防食層20bは健全部と欠陥部とに分かれ、健全な防食下地20aは、防食層20bに直列に接続される。防食層20bの劣化が進行すると防食層の回路は欠陥部が支配的となる。
図5は、塗膜の電気的等価回路の一例を示す図である。図5には、塗膜CFの電気的等価回路に加え、導電性ペースト30の電気的等価回路も示されている。導電性ペースト30の抵抗は非常に小さいため、解析の際は無視しても差し支えない。
塗膜CFの電気的等価回路は、防食層20bについて、防食層20bの塗膜容量C1[F]と、防食層20bの塗膜抵抗R1[Ω]とを含み、防食下地20aについて、防食下地20aの塗膜容量C2[F]と、防食下地20aの塗膜抵抗R2[Ω]とを含む。周波数をf[Hz]とし、角周波数をω=2πf[rad/s]とした場合に、インピーダンスZは、式(1)で表される。
Z=(R1/(1+ω+C1+R1))-j(ωC1R1/(1+ω+C1+R1))+(R2/(1+ω+C2+R2))-j(ωC2R2/(1+ω+C2+R2)) (1)
式(1)において、「(R1/(1+ω+C1+R1))-j(ωC1R1/(1+ω+C1+R1))」は防食層20bのインピーダンスに該当し、「(R2/(1+ω+C2+R2))-j(ωC2R2/(1+ω+C2+R2))は防食下地20aのインピーダンスに該当する。
高周波域と低周波域とでは塗膜CFの電気的等価回路において、交流電流が流れる素子は変化する。
容量リアクタンスXcは、式(2)で表される。式(2)によれば、高周波ほど容量リアクタンスXcが小さくなるため、高周波域ではコンデンサ素子に交流電流が流れ、抵抗側には流れない。逆に、交流電流は、低周波ほど容量リアクタンスXcが大きくなるため、低周波域ではコンデンサ素子にはあまり流れず主に抵抗側に流れる。
コンデンサ素子の周波数との関係、コンデンサ素子と電極面積の関係などは、式(2)と式(3)で表される。また抵抗素子と電極面積の関係は式(4)で表される。
Xc=1/2πfC [Ω] (2)
C=ε×(S/d) [F] (3)
R=(1/σ)×(d/S) [Ω] (4)
式(2)、式(3)、式(4)において、Xcは容量リアクタンス[Ω]、fは周波数[Hz]であり、Cは静電容量[F]、εは誘電率[F/m]、Sは電極面積[m]、dは塗膜厚さ[m]である。また、Rは抵抗[Ω]、σは導電率[S/m]である。
式(3)より静電容量Cは、電極40の面積Sに比例し、式(4)より抵抗は反比例する。仮に、電極40の面積SがN倍(Nは、N>0の整数)になると静電容量Cは式(3)によりN倍となる。そして、静電容量CがN倍になると、式(2)より容量リアクタンスXcは1/N倍となり、その結果、静電容量Cを流れる交流電流はN倍となる。
なお、式(3)の誘電率εは塗膜CFの吸湿により増加する特徴を有している。また、誘電率εは周波数によって変化し、一般的には、高周波域で小さく一定の値を示すが、周波数が低くなると、ある周波数で急増し、さらに低い周波数で高止まりの一定値となる特徴を有している。
一方、式(4)より電極40の面積SがN倍になると、抵抗Rは1/N倍となり、抵抗Rを流れる交流電流はN倍となる。なお、式(4)の導電率σは塗膜CFの吸湿により増大する特徴を有している。
次に、電極40の面積Sと、交流電流との関係について説明する。
図6は、電極面積の比と交流電流の比との関係の一例を示す図である。図6には、周波数が100kHzである場合を示す。周波数が100kHzである場合は、高周波側であるため、容量リアクタンスXcが小さくなり、コンデンサ素子に交流電流が流れ、抵抗側には殆ど流れない状態となる。
図6において、横軸は電極面積の比である。ここでは、電極面積の比は、電極40の面積Sが0.01mである場合に対する比で表される。また、図6において、縦軸は交流電流の比であり、ここでは、交流電流の比は、電極40の面積Sが0.01mである場合に流れた交流電流に対する比で表される。
なお、周波数が100kHzで、電極40の面積Sが0.01mである場合に流れる交流電流は、136μA程度となる。
図6によれば、周波数が100kHzでは、交流電流の比の大きさは、電極面積(電極40の面積S)の比の増加と同様に増加することから、仮に電極面積の比をN倍とした場合には、交流電流の比もN倍となり、電極面積増加による電流増加は理論通りの結果が得られるのが分かる。高周波域では、誘電率は小さく一定なので、誘電率の影響は殆どなく、交流電流の増加は電極面積増加の影響のみと思われる。
図7は、電極面積の比と交流電流の比との関係の一例を示す図である。図7には、周波数が0.1Hzである場合を示す。周波数が0.1Hzである場合は、低周波側であるため、容量リアクタンスXcが大きくなり、低周波域では、交流電流は、コンデンサ素子には殆ど流れず抵抗側に流れる状態となる。
図7において、横軸は電極面積の比であり、ここでは、電極面積の比は、電極40の面積Sが0.01mである場合に対する比で表される。また、図7において、縦軸は交流電流の比であり、ここでは、交流電流の比は、電極40の面積Sが0.01mである場合に流れた交流電流に対する比で表される。
なお、周波数が0.1Hzで、電極40の面積Sが0.01mである場合に流れる交流電流は、0.07μA程度となる。
図7によれば、周波数が0.1Hzでは、電極面積(電極40の面積S)の比の増加以上に、交流電流の比が増加しているのが分かる。仮に電極面積の比をN倍とした場合に、電流の比はN倍の値より更に一桁程度大きくなっているのが分かる。
この理由は、電極面積が大きくなるほど、塗膜CFへの導電性ペースト(電解質)の浸透が進みやすくなり、電極面積が大きいほど導電率σが増加し、交流電流が電極面積効果に加えて、より増加するためと思われる。電極面積が小さいと塗膜CFの蓄熱や風によって電極面積周辺からの乾燥が促進され、塗膜CFの吸湿の妨げになるが、電極面積が大きいと、乾燥の影響はほぼ無視でき、電解質の浸透が促進されると思われる。したがって、周波数が0.1Hzでは、電極面積の比の増加N倍の値より更に一桁程度大きくなったものと思われる。
次に、電極40の面積Sと、EIS特性との関係について説明する。ここでは、EIS特性の一例として、交流抵抗と、容量リアクタンスとの関係、つまりナイキスト線図を使用した場合について説明する。
図8は、交流抵抗と容量リアクタンスとの関係の例1を示すナイキスト図である。
図8の左図は、電極40の面積Sを0.01mとした場合について示す。図8の左図において、横軸は交流抵抗[Ω]であり、縦軸は容量リアクタンス[Ω]である。
図8の右図は、電極40の面積Sを0.02mとした場合について示す。図8の右図において、横軸は交流抵抗[Ω]であり、縦軸は容量リアクタンス[Ω]である。
図8の左図と、図8の右図とによれば、電極40の面積Sが0.01mと0.02mとである場合には、第1象限以外にも、インピーダンスが得られているのが分かる。また、図8の左図と、図8の右図とによれば、電極40の面積Sが0.01mと0.02mとである場合には、インピーダンスのばらつきが大きいのが分かる。
図9は、交流抵抗と容量リアクタンスとの関係の例2を示すナイキスト図である。
図9の左図は、電極40の面積Sを0.03mとした場合について示す。図9の左図において、横軸は交流抵抗[Ω]であり、縦軸は容量リアクタンス[Ω]である。
図9の右図は、電極40の面積Sを0.1mとした場合について示す。図9の右図において、横軸は交流抵抗[Ω]であり、縦軸は容量リアクタンス[Ω]である。
図9の左図によれば、電極40の面積Sが0.03mである場合には、第1象限以外にも、インピーダンスが得られているのが分かる。また、図9の左図によれば、電極40の面積Sが0.03mである場合には、インピーダンスのばらつきが大きいのが分かる。
図9の右図によれば、電極40の面積Sが0.1mである場合には、第1象限に、インピーダンスが収まっているのが分かる。また、図9の右図によれば、電極40の面積Sが0.1mである場合には、電極40の面積Sが0.01m、0.02m、0.03mである場合と比較して、インピーダンスのばらつきが小さいのが分かる。
図10は、交流抵抗と容量リアクタンスとの関係の例3を示すナイキスト図である。
図10の左図は、電極40の面積Sを0.2mとした場合について示す。図10の左図において、横軸は交流抵抗[Ω]であり、縦軸は容量リアクタンス[Ω]である。
図10の右図は、電極40の面積Sを0.3mとした場合について示す。図10の右図において、横軸は交流抵抗[Ω]であり、縦軸は容量リアクタンス[Ω]である。
図10の左図と、図10の右図とによれば、電極40の面積Sが0.2mと0.3mとである場合には、第1象限に、インピーダンスが収まっているのが分かる。また、図10の左図と、図10の右図とによれば、電極40の面積Sが0.2mと0.3mとである場合には、電極40の面積Sが0.01m、0.02m、0.03mである場合と比較して、インピーダンスのばらつきが小さいのが分かる。
図8から図10では、電極40の面積Sが0.05mである場合については示していないが、電極40の面積Sが0.05mである場合には、電極40の面積Sが0.1mである場合と同様に、第1象限にインピーダンスが収まり、電極40の面積Sが0.01m、0.02m、0.03mである場合と比較して、インピーダンスのばらつきが小さい結果が得られている。
図8から図10では、電極40の面積Sが0.5mである場合については示していないが、電極40の面積Sが0.5mである場合には、電極40の面積Sが0.3mである場合と同様に、第1象限にインピーダンスが収まり、電極40の面積Sが0.01m、0.02m、0.03mである場合と比較して、インピーダンスのばらつきが小さい結果が得られている。
以上から、電極40の面積Sが0.05m以上で、インピーダンスのばらつきは小さくなり、SN比(signal-noise ratio)が、電極40の面積Sが0.05m未満である場合と比較して改善されることが分かる。また、電極面積が1m以上だとSN比には全く問題はないものの、EIS測定の際、電極貼り付け作業などのハンドリングに難があるため、作業性の観点から電極面積は1mまでが上限と判断した。
したがって、電極40の面積Sは、0.05m以上1m以下であるのが好ましく、その中でも、SN比と作業性の観点から0.1m以上0.3m以下であるのがより好ましい。図1に戻り説明を続ける。
塗膜特性測定システム1は、塗膜特性測定装置100と、制御・解析装置200とを備える。塗膜特性測定装置100は、測定部102と、処理部104とを備える。塗膜特性測定システム1が電気化学インピーダンススペクトル法で測定する際に使用する電極の一例は、3電極ではなく、前述したように金属箔(電極40)を用いる2電極とする。
測定部102の一例は、ポテンショ/ガルバノスタットである。本実施形態では、一例として、測定部102がポテンショ/ガルバノスタットである場合について説明を続ける。測定部102は、第1対極CE1(counter electrode 1)と、第2対極CE2(counter electrode 2)と、第1作用電極WE1(working electrode 1)と、第2作用電極WE2(working electrode 2)とを備える。
第1作用電極WE1と第2作用電極WE2とは、鋼材10に直接接続され、導通がとられる。
また、第1対極CE1と第2対極CE2とは、塗膜上に塗布した導電性ペーストの上に張り付けた測定電極に接続され、導通がとられる。これにより測定部102は、第1対極CE1と第1作用電極WE1との間に交流電圧を印加して、第2対極CE2と第2作用電極WE2との間に流れる交流電流を測定する。
測定部102は、制御・解析装置200が指示する出力に基づいて、処理部104を介して、第1対極CE1と第1作用電極WE1との間に交流電圧を印加する。測定部102は、処理部104が出力する測定を開始する情報である測定開始情報に基づいて、受け付けた第1対極CE1と第1作用電極WE1との間へ印加する交流電圧を示す情報に基づいて、第1対極CE1と第1作用電極WE1との間へ正弦波交流の電圧を印加し掃引する。
測定部102は、第1対極CE1と第1作用電極WE1との間へ正弦波交流の電圧を印加し掃引することによる周波数応答である第2対極CE2と第2作用電極WE2との間に流れる交流電流を測定する。測定部102は、第1対極CE1と第1作用電極WE1との間へ印加し掃引した正弦波交流の電圧を示す情報と、第2対極CE2と第2作用電極WE2との間に流れる交流電流の測定結果とを、処理部104へ出力する。
処理部104は、制御・解析装置200が出力する測定を開始することを要求する情報である測定開始要求を取得し、取得した測定開始要求に基づいて、測定部102に測定開始情報を出力する。処理部104は、測定部102が出力した正弦波交流の電圧を示す情報と、電流の測定結果とを取得し、取得した正弦波交流の電圧を示す情報と、交流電流の測定結果とに基づいて、電圧値を電流値で除算することによってインピーダンスを導出する。処理部104は、導出したインピーダンスを示す情報を、制御・解析装置200へ出力する。
制御・解析装置200は、ユーザの操作に基づいて、測定開始要求を、塗膜特性測定装置100へ出力する。また、制御・解析装置200は、第1対極CE1と第1作用電極WE1との間へ印加する交流電圧を示す情報および、第2対極CE2と第2作用電極WE2との間に流れる交流電流を含む測定条件を、塗膜特性測定装置100へ出力する。制御・解析装置200は、塗膜特性測定装置100が出力したインピーダンスを示す情報を含む測定結果を取得し、取得した測定結果に基づいて、防食層20bの特性を解析する。
以下、塗膜特性測定システム1を構成する制御・解析装置200について説明する。
図11は、本発明の実施形態に係る塗膜特性測定システムを構成する制御・解析装置を示すブロック図である。
制御・解析装置200は、パーソナルコンピュータ、サーバー、又は産業用コンピュータ等の装置によって実現される。
制御・解析装置200は、IF210と、記憶部220と、情報処理部230と、操作部240と、表示部250と、各構成要素を図11に示されているように電気的に接続するためのアドレスバスやデータバスなどのバスライン260とを備える。
IF210は、塗膜特性測定装置100との間で情報の入出力を行う。
具体的には、IF210は、情報処理部230が出力した測定条件を取得し、取得した測定条件を、塗膜特性測定装置100に出力する。IF210は、情報処理部230が出力した測定開始要求を取得し、取得した測定開始要求を、塗膜特性測定装置100に出力する。IF210は、塗膜特性測定装置100が出力した測定結果を取得し、取得した測定結果を、情報処理部230に出力する。
記憶部220は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、又はこれらのうち複数が組み合わされたハイブリッド型記憶装置などにより実現される。記憶部220の一部又は全部は、制御・解析装置200の一部として設けられる場合に代えて、NAS(Network Attached Storage)や外部のストレージサーバなど、制御・解析装置200のプロセッサがネットワーク50を介してアクセス可能な外部装置により実現されてもよい。
記憶部220には、情報処理部230により実行されるプログラム222と、アプリ224と、測定条件情報226と、塗膜劣化度判定テーブル227とが記憶される。
プログラム222は、例えばオペレーティングシステムであり、ユーザやアプリケーションプログラムとハードウェアの中間に位置し、ユーザやアプリケーションプログラムに対して標準的なインターフェースを提供すると同時に、ハードウェアなどの各リソースに対して効率的な管理を行う。
アプリ224は、制御・解析装置200に、ユーザが、操作部240に対して、測定を開始する操作を行った場合に、測定条件を、塗膜特性測定装置100に出力させる。アプリ224は、制御・解析装置200に、ユーザが、操作部240に対して、測定を開始する操作を行った場合に、測定開始要求を、塗膜特性測定装置100に出力させる。アプリ224は、制御・解析装置200に、塗膜特性測定装置100が出力した測定結果を受け付けさせる。アプリ224は、制御・解析装置200に、受け付けさせた測定結果に基づいて、特性図を導出させる。特性図の一例は、ボード線図、ナイキスト線図である。アプリ224は、制御・解析装置200に、導出させた特性図に基づいて、塗膜CFの状態(状況)を判定させる。
測定条件情報226は、塗膜特性測定装置100が、電気化学インピーダンススペクトル法によって、塗膜CFの診断を行う場合に、塗膜CFに印加する交流電圧などのインピーダンスの測定を行う条件を記憶する。測定条件の一例は、掃引周波数を示す情報と、印加電圧を示す情報とである。本実施形態では、測定条件の一例として、掃引周波数が0.1Hzから100kHz、印加電圧が装置の最大出力である1V実効値である場合について、説明を続ける。つまり、測定条件には、1Hz未満の周波数領域を含む周波数領域を示す情報が含まれる。
塗膜劣化度判定テーブル227について説明する。
まず、塗膜劣化度について説明する。塗膜CFの劣化の状態は、その程度に応じて、複数の段階に分類される。本実施形態では、一例として、劣化の状態が、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vの五段階に分類される場合について説明を続ける。
図12は、外観調査、塗膜CFの付着力測定による破壊検査、塗膜CFへの腐食因子侵入状況といった実際の塗膜CFの調査結果と、本発明の実施形態に係るEISデータの解析によって分類される塗膜CFの劣化の状態の一例を示す図である。
塗膜CFの付着力測定による破壊検査は、以下の手順で行われる。塗膜表面を#240のサンドペーパーで軽く研磨する処理を行う。研磨処理後、エポキシ樹脂系接着剤を塗布したφ20mmのドリー(円筒形の引張端)を塗膜面に貼り付ける。接着剤が十分硬化した後にドリー外周に沿ってスリット傷を電動工具で入れる。プルオフ式付着性試験機でドリーに垂直引張力を付加し、塗膜CFが剥れたときの付着強度を読み取る。また、剥れた塗膜(防食層や防食下地)の破壊形態および防食下地(ジンクリッチプライマー層)の電位測定、ジンクジンクリッチプライマー層や鋼面の腐食有無の観察も行う。
図12に示されるように、塗膜CFの劣化の状態は、劣化の程度が低い状態から、劣化の程度が高い状態になるにしたがって、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vに分類される。
塗膜劣化度Iは、鋼材10に塗膜CFが形成された初期の状態を維持している状況であり、健全な状態である。塗膜劣化度Iの状態では、健全塗膜では塗膜CFへの腐食因子の浸透、および紫外線による塗膜CFの表層劣化が無い状態であることから、塗膜CFの付着力測定によって、塗膜CFに接着させたドリーは、塗膜CFを破壊することなく、接着剤の部分で剥離する(接着剤界面付着破壊)。この場合、塗膜劣化度Iの塗膜CFを測定することによって得られるインピーダンスは、非常に高い値となる。
塗膜劣化度IIは、紫外線、水、酸素、塩化物イオン等の腐食因子によって、塗膜CFの防食層20bの表面の劣化が始まった状態である。塗膜劣化度IIでは、紫外線エネルギーを吸収した塗膜構成分子は活性化し、酸化分解などの化学変化を起こし、防食層20bの表層は劣化しはじめ、防食層20bの表層から、水、塩分、酸素の浸透が始まる。塗膜劣化度IIにおいて、塗膜CFの付着力測定による破壊検査を行うと、腐食因子が浸透した防食層20bの位置である表層から深さ方向に少し進んだ比較的浅い箇所で、防食層20bの塗膜凝集破壊が生じる。塗膜劣化度IIの塗膜CFを測定することによって得られるインピーダンスは、塗膜劣化度Iの塗膜CFを測定することによって得られるインピーダンスよりも低い値となる。
塗膜劣化度IIIは、紫外線、水、酸素、塩化物イオン等の腐食因子によって、塗膜CFの防食層20bが、塗膜劣化度IIより更に劣化した状態である。防食層20bの表面の紫外線による劣化によって減耗した状態で、防食層20bには微小なクラックや微小な孔が存在し、ところどころには空隙が発生する。したがって、水や塩分や酸素は塗膜劣化度IIよりさらに浸透が促進され、腐食促進因子の浸透深さは塗膜劣化度IIより深くなる。塗膜劣化度IIIにおいて、塗膜CFの付着力測定による破壊検査を行うと、腐食因子が浸透した防食層20bの深部で、防食層20bの凝集破壊が生じる。塗膜劣化度IIIの塗膜CFを測定することによって得られるインピーダンスは、塗膜劣化度IIの塗膜CFを測定することによって得られるインピーダンスよりも低い値となる。
塗膜劣化度IVは、紫外線、水、酸素、塩化物イオン等の腐食因子によって、塗膜CFの防食層20bが塗膜劣化度IIIより更に劣化した状態である。塗膜劣化度IVでは、紫外線劣化により防食層20bが塗膜劣化度IIIより更に減耗した状態で、防食層20bにはクラックや微小な孔がより多く存在し、空隙もより多く発生し、水、塩分、酸素が防食下地20aへ到達する。塗膜劣化度IVにおいて、塗膜CFの付着力測定による破壊検査を行うと、防食下地20aで、防食下地20aの凝集破壊が生じる。また、防食下地(ジンクリッチプライマー)の電位測定では、健全なジンクリッチプライマーであることを示す-0.9Vより卑であること(飽和銀塩化銀電極基準)、外観からジンクリッチプライマーが全く腐食していないこと、さらにその下の鋼面も全く腐食していない。
塗膜劣化度IVの塗膜CFを測定することによって得られるインピーダンスは、塗膜劣化度IIIの塗膜CFを測定することによって得られるインピーダンスよりも低い値となる。
塗膜劣化度Vは、防食下地20aが腐食後、ジンクリッチプライマーによる防食が消失した後には引き続いて鋼材10が腐食する。塗膜劣化度Vでは、鋼材10の表面に、水、塩分、酸素が到達する。塗膜劣化度Vにおいて、塗膜CFの付着力測定による破壊検査を行うと鋼材の表面で塗膜CFが剥離する鋼材界面付着破壊が生じる。防食下地(ジンクリッチプライマー)の電位測定では、既に亜鉛が消失してしまっているため、鋼材の腐食電位が測定される。外観からもジンクリッチプライマーが腐食していること、さらにその下の鋼面も腐食している。塗膜CFを測定することによって得られるインピーダンスは、塗膜劣化度IVの塗膜CFを測定することによって得られるインピーダンスよりも低い値となる。
次に、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vの各々の対応するナイキスト線図について説明する。
図13は、ナイキスト線図の例1を示す図である。図13は実測したEISによって得られたナイキスト線図に対して、式(1)で回路素子の値を最適化し、実測EISのナイキスト線図に合致するように再現したものである。防食下地20aが健全である場合を想定し、防食下地20aの塗膜抵抗R2と防食下地の静電容量C2、加えてナイキスト線図に影響が小さい防食層20bの塗膜容量C1を一定とし、防食層20bの塗膜抵抗R1のみ、劣化とともに低下させた。
図13の上図は、鋼材10に塗膜CFが形成された初期の状態のナイキスト線図である。塗膜抵抗は、100000[Ω]である。図13の上図によれば、ナイキスト線図に一つの半円(以下「第1半円HC-1」という)が描かれている。
図13の下図は、鋼材10に塗膜CFが形成されてから半年が経過した状態のナイキスト線図である。塗膜抵抗は、50000[Ω]である。図13の下図によれば、ナイキスト線図に第1半円HC-1が描かれている。この第1半円HC-1の半径は、図13の上図の第1半円HC-1の半径よりも小さくなっていることが分かる。
図14は、ナイキスト線図の例2を示す図である。
図14は、鋼材10に塗膜CFが形成されてから数年~十数年程度が経過した状態のナイキスト線図である。図14の上図は、塗膜抵抗は、30000[Ω]である。図14の上図によれば、ナイキスト線図に第1半円HC-1が描かれているが、その第1半円HC-1の高抵抗側(低周波数側)の容量リアクタンスが2000Ω付近から0にかけて、でっぱりがあるのが分かる。これが、第2半円の出現である。また、第1半円HC-1の半径は、図13の下図の第1半円HC-1の半径よりも小さくなっていることが分かる。
図14の下図は、塗膜抵抗が、20000[Ω]である。図14の下図によれば、ナイキスト線図に第1半円HC-1が描かれているが、その第1半円HC-1の高抵抗側(低周波数側)の容量リアクタンスが1000Ω付近から0にかけてのでっぱりが、図14の上図よりも大きくなっているのが分かる。また、第1半円HC-1の半径は、図14の上図の第1半円HC-1の半径よりも小さくなっていることが分かる。
図15は、ナイキスト線図の例3を示す図である。
図15は、鋼材10に塗膜CFが形成されてから数十年(三十年程度)が経過した状態のナイキスト線図である。図15の上図は、塗膜抵抗が、10000[Ω]である。図15の左図によれば、ナイキスト線図に、図13と図14とに見られた第1半円HC-1に加え、その半円の高抵抗側(低周波数側)にもう一つの半円(以下「第2半円HC-2」という)が現れ、合計二つの半円が見られる。この第1半円HC-1の半径は、図14の下図の第1半円HC-1の半径よりも小さくなっていることが分かる。
図15の下図は、塗膜抵抗が、5000[Ω]である。図15の下図によれば、ナイキスト線図に、図13と図14とに見られた第1半円HC-1に加え、その第1半円HC-1の高抵抗側(低周波数側)に第2半円HC-2が現れ、合計二つの半円が見られる。第2半円HC-2の半径は、図15の上図と同様であることが分かる。この第1半円HC-1の半径は、図15の上図の第1半円HC-1の半径よりも小さくなっていることが分かる。
図16は、ナイキスト線図の例4を示す図である。
図16は、図15と同様に鋼材10に塗膜CFが形成されてから数十年(三十年程度)が経過した状態のナイキスト線図であるが、図15と比べ更に塗膜CFは劣化している。図16の上図は、塗膜抵抗が、3000[Ω]である。図16の上図によれば、ナイキスト線図に、第1半円HC-1と、第2半円HC-2とが見られる。図15の下図よりも、第1半円HC-1の半径は小さくなっていることが分かる。また、第2半円HC-2の半径は、図15の下図と同様であることが分かる。
図16の下図は、塗膜抵抗が、2000[Ω]である。図16の下図によれば、ナイキスト線図に、第1半円HC-1と、第2半円HC-2とが見られる。図16の上図よりも、第1半円HC-1の半径は小さくなっていることが分かる。また、第2半円HC-2の半径は、図16の上図と同様であることが分かる。
図17は、ナイキスト線図の例5を示す図である。
図17は、鋼材10に塗膜CFが形成されてから数十年(三十年以上)が経過した状態のナイキスト線図である。塗膜抵抗は、1000[Ω]である。図17によれば、ナイキスト線図に、第1半円HC-1と、第2半円HC-2とが見られる。図16の下図よりも、第1半円HC-1の半径は小さくなっていることが分かる。また、第2半円HC-2の半径は、図16の下図と同様であることが分かる。このため、第1半円HC-1の半径と第2半円HC-2の半径とが等しくなっているのが分かる。
図13から図17によれば、鋼材10に塗膜CFが形成されてから半年が経過した状態では、第1半円HC-1が描かれていたが、鋼材10に塗膜CFが形成されてから数年以上が経過した状態では、第1半円HC-1と、第2半円HC-2とが描かれている。
第1半円HC-1は、塗膜のエポキシ樹脂の防食層20bの電気化学インピーダンスを反映し、防食層20bの劣化が進むにしたがって第1半円HC-1の半径が小さくなる。
第2半円HC-2は、2Hz~20Hzで容量リアクタンスが上昇し始め、0.3Hz~0.5Hzで最大となり、0.1Hzでまた最小となる軌跡を示す。第2半円HC-2の半径は、塗膜CFの防食層20bの劣化が進んだ場合でも、同じ大きさを維持している。第2半円HC-2は、現出する周波数域から、防食下地20aの電気化学インピーダンスを反映していると想定される。第2半円HC-2の半径が同じ大きさを維持していることから、防食下地20aは健全であると推察される。
以上から、被覆膜CFの防食層20bの劣化の過程は電極面積を大きくしたEIS特性で把握できることが分かる。
塗膜CFを電気的等価回路で表す場合に、鋼材10に塗膜CFが形成された初期の状態からの経過期間が数十年程度では、交流抵抗と静電容量との並列回路で表される防食層20bと、交流抵抗と静電容量との並列回路で表される防食下地20aとの直列回路で表される。実測によるEIS特性と、電気的等価回路を解析することによって再現されるEIS特性とは、ほぼ一致する。
塗膜CFの防食層20bは、劣化によって、防食層20bの抵抗は低下するが、防食層20bの容量の変化は小さい。塗膜CFの防食層20bは、三十数年程度の期間が経過した場合でも、防食下地20aは健全であり、防食下地20a抵抗と容量は初期から変化しない。
防食層20bの抵抗が低下する原因として、紫外線により防食層20bに、クラックと微細孔とが生じ、物理的に体積が欠損することと、クラックと微細孔とに、腐食因子である水、塩分、酸素が侵入することとが想定される。仮に、防食下地20aが腐食することによって塗膜CFの下の腐食が発生した場合には、防食下地20aの抵抗が増大すると想定される。
図13から図17に基づいて、塗膜CFの劣化の状態と、ナイキスト線図とが関係付けられる。
図18は、本発明の実施形態に係る制御・解析装置によって分類される塗膜CFの劣化の状態とナイキスト線図との関係の一例を示す図である。図18において、横軸は交流抵抗[Ω]で、縦軸は容量リアクタンス[Ω]である。
図18に示される例では、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度IVの各々について、交流抵抗と容量リアクタンスをプロットすることによって得られるナイキスト線図が示される。
「I」で表される塗膜劣化度Iのナイキスト線図は、第1半円HC-11を含む。
「II」で表される塗膜劣化度IIのナイキスト線図は、第1半円HC-12と第2半円HC-22とを含む。第2半円HC-22は、第1半円HC-12よりも高抵抗側(低周波数側)に描かれる。第1半円HC-12の半径は、塗膜劣化度Iのナイキスト線図の第1半円HC-11の半径よりも短く、第2半円HC-22の半径よりも長いことが分かる。
「III」で表される塗膜劣化度IIIのナイキスト線図は、第1半円HC-13と第2半円HC-23とを含む。第2半円HC-23は、第1半円HC-13よりも高抵抗側(低周波数側)に描かれる。第1半円HC-13の半径は、塗膜劣化度IIのナイキスト線図の第1半円HC-12の半径よりも短く、第2半円HC-23の半径よりも長いことが分かる。
「IV」で表される塗膜劣化度IVのナイキスト線図は、第1半円HC-14と第2半円HC-24とを含む。第2半円HC-24は、第1半円HC-14よりも高抵抗側(低周波数側)に描かれる。第1半円HC-14の半径は、塗膜劣化度IIIのナイキスト線図の第1半円HC-13の半径よりも短く、第2半円HC-24の半径よりも長いことが分かる。
以下、第1半円HC-11と、第1半円HC-12と、第1半円HC-13と、第1半円HC-14とのうち、任意の第1半円を第1半円HC-1と記載する。また、以下、第1半円HC-22と、第1半円HC-23と、第1半円HC-24とのうち、任意の第2半円を第2半円HC-2と記載する。
塗膜劣化度Iから塗膜劣化度IVとなるにしたがって、第1半円HC-1の半径は小さくなるのが分かる。つまり、塗膜CFの防食層20bの劣化の度合いが大きくなるにしたがって、第1半円HC-1の半径は小さくなる。
一方、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度IVとなるにしたがって、第2半円HC-2の半径は変化しないことがわかる。つまり、塗膜CFの防食層20bの劣化の度合いが大きくなっても、第2半円HC-2の半径は変化しない。仮に、第1半円HC-1の半径と、第2半円HC-2の半径とが同じになった場合には、水、塩分、酸素などの腐食因子が、防食下地20aに到達したと想定される。
本実施形態では、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vの各々と、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vの各々で得られるインピーダンスの範囲と、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vの各々で得られる第1半円の半径の範囲と、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vの各々で得られる第2半円の有無を示す情報とを関連付ける。
図19は、塗膜劣化度判定テーブルの一例を示す図である。
塗膜劣化度判定テーブル227は、塗膜劣化度と、第2半円の有無と、第2半円の半径対する第1半円の半径の比とを関連づけたテーブル形式の情報である。尚、ここで、第1半円の半径とは、ナイキスト線図のX軸上で0から第1半円と第2半円の交点までの抵抗値を指すものとし、第2半円の半径とは第1半円と第2半円の交点から第2半円がX軸と接する点までの抵抗値を指すものとする。例えば図16の下図(劣化7:塗膜抵抗2000Ω)の場合であれば、第1半円の半径は2000Ωであり、第2半円の半径は1000Ωである。
塗膜劣化度判定テーブル227は、塗膜劣化度と、第2半円の有無と、第2半円の半径対する第1半円の半径の比との関連づけに限られず、その他にもインピーダンスの範囲、第2半円の半径の変化など、塗膜付着力試験における塗膜CFの破壊形態と関連付けられるテーブル形式の情報であってもよい。
また、塗膜劣化度判定テーブル227は、鋼材10ごとに用意されてもよいし、塗膜CFの厚さごとに用意されてもよい。これらの場合、塗膜劣化度判定テーブル227は、複数の塗膜劣化度判定テーブルを含んで構成される。図11に戻り説明を続ける。
情報処理部230は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが記憶部220に格納されたプログラム222や、アプリ224を実行することにより実現される機能部(以下「ソフトウェア機能部」という)である。なお、情報処理部230の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
情報処理部230は、例えば、指示部231と、受付部232と、処理部233と、解析部234とを備える。
指示部231は、ユーザが操作部240に対して測定を開始する操作を行うことによって、操作部240から出力される測定を開始することを示す情報を取得する。指示部231は、取得した測定を開始することを示す情報に基づいて、記憶部220に記憶されている測定条件情報226を取得し、取得した測定条件情報226に含まれる測定条件を、IF210へ出力する。指示部231は、取得した測定を開始することを示す情報に基づいて、測定開始要求を作成し、作成した測定開始要求を、IF210へ出力する。
受付部232は、IF210が出力した測定結果を受け付ける。受付部232は、受け付けた測定結果を処理部233に出力する。測定結果に含まれる情報の一例は、インピーダンスを示す情報である。以下、測定結果に含まれる情報がインピーダンスを示す情報である場合について説明を続ける。
処理部233は、受付部232が出力した測定結果を取得する。処理部233は、取得した測定結果に基づいて、測定結果に含まれるインピーダンスを示す情報を処理する。処理部233は、測定結果に含まれるインピーダンスを示す情報を処理した結果を、解析部234へ出力する。
具体的には、処理部233は、受付部232が出力した測定結果に含まれるインピーダンスを示す情報を取得し、取得したインピーダンスを示す情報に基づいて、ボード線図と、ナイキスト線図とのいずれか一方又は両方を導出する。本実施形態では、処理部233が、ボード線図と、ナイキスト線図とを導出する場合について説明を続ける。処理部233は、導出したボード線図を示す情報と、ナイキスト線図を示す情報とを、解析部234へ出力する。
図20は、本発明の実施形態に係る制御・解析装置が導出するボード線図の一例を示す図である図20の左図はボード線図で、インピーダンスの振幅の周波数特性を示し、図20の右図はボード線図でインピーダンスの位相の周波数特性を示す。
図20の左図において、横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はインピーダンスの振幅[Ω]である。この場合、横軸、縦軸とも対数表示である。図20の左図によれば、すべての周波数域において顕著なノイズがないことが確認できる。
図20の右図において、横軸は周波数[Hz]であり、縦軸はインピーダンスの位相[deg]である。この場合、横軸のみ対数表示である。図20の右図によれば、すべての周波数域において顕著なノイズがないことが確認できる。
図21は、本発明の実施形態に係る制御・解析装置が導出するナイキスト線図の一例を示す図である。図21において、横軸は交流抵抗[Ω]であり、縦軸は容量リアクタンス[Ω]である。図21によれば、ナイキスト線図では、すべての周波数域において顕著なノイズがないことが確認できる。このナイキスト線図では、0.1Hzの低周波域でもインピーダンスを読み取れていることを確認できる。つまり、このナイキスト線図では、1Hz未満の周波数領域を含む周波数領域で測定が行われることによって、第2半円HC-2を検出できることが分かる。
解析部234は、処理部233が出力したボード線図を示す情報と、ナイキスト線図を示す情報とを取得する。解析部234は、取得したボード線図を示す情報と、ナイキスト線図を示す情報とに基づいて、塗膜CFの状況を把握する。
解析部234が、図20に示されるボード線図と、図21に示されるナイキスト線図とを取得した場合について、説明を続ける。
解析部234は、記憶部220に記憶されている塗膜劣化度判定テーブル227を参照し、取得したボード線図から得られるインピーダンスが、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vの各々のインピーダンスの範囲のいずれに該当するかを判定する。このように構成することによって、0.1Hzの低周波域でもインピーダンスを確認できるため、塗膜CFの防食下地20a、鋼材10の表面が腐食しているか否かを判定できる。
解析部234は、記憶部220に記憶されている塗膜劣化度判定テーブル227を参照し、取得したナイキスト線図から得られる第1半円HC-1の半径に基づいて、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vの各々の第1半円の半径の範囲のいずれに該当するかを判定する。このように構成することによって、0.1Hzの低周波域でもインピーダンスを確認できるため、塗膜CFの防食層20bの劣化の度合いを把握できる。
解析部234は、記憶部220に記憶されている塗膜劣化度判定テーブル227を参照し、取得したナイキスト線図から得られる第2半円HC-2の有無と、第2半円HC-2の半径の増加有無に基づいて、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vの各々の第2半円の有無と、第2半円HC-2の半径の増加有無のいずれに該当するかを判定する。このように構成することによって、0.1Hzの低周波域でもインピーダンスを確認できるため、第2半円の有無と、第2半円HC-2の半径の増加有無を確認できる。このため、塗膜CFの防食下地20aの劣化の度合いを把握できる。
解析部234は、ボード線図から得られるインピーダンスと、ナイキスト線図から得られる第1半円HC-1の半径と、ナイキスト線図から得られる第2半円HC-2の有無と、第2半円HC-2の半径の増加有無の各々から判定した結果に基づいて、塗膜劣化度Iから塗膜劣化度Vのいずれに該当するかを判定する。
例えば、解析部234は、ボード線図から得られるインピーダンスと、ナイキスト線図から得られる第1半円HC-1の半径と、ナイキスト線図から得られる第2半円HC-2の有無と、第2半円HC-2の半径の増加有無の各々から判定した塗膜劣化度とのうち、一番劣化度が進んでいるものとしてもよい。このように構成することによって、塗膜CFの劣化に対する対応を早く進めることができる。
解析部234は、ボード線図と、ナイキスト線図とに基づいて、塗膜CFの状況を判定した結果を示す情報を、表示部250に表示する。さらに、解析部234は、塗膜CFの状況が塗膜劣化度IVであると判定した場合に、以下の処理を行ってもよい。塗膜CFの状況が、塗膜劣化度IVである場合には、水、塩分などの腐食因子が、防食下地20aに到達したと想定される。この場合、腐食因子が鋼材に到着するのを防止するには、補修を行うのが好ましい。したがって、解析部234は、塗膜CFの状況が、塗膜劣化度IVであると判定した場合には、補修時期であると判定する。例えば、高周波側の半円の半径と低周波側の半円の半径が1:1になった時点を補修時期の閾値とするなどである。この場合、解析部234は、補修時期であることを示す情報を、表示部250に出力する。
なお、補修時期の判定はIVではなく、IIIであってもよい。
操作部240は、ユーザの操作を受け付ける入力デバイスである。具体的には、ユーザが操作部240に対して測定を開始する操作を行うことによって、操作部240は、測定を開始することを示す情報を作成し、作成した測定を開始することを示す情報を、情報処理部230に出力する。
表示部250は、例えばタッチパネルによって構成される。表示部250は、電気化学インピーダンススペクトル法によって、鋼材10を被覆している塗膜CFの診断を行う画面を表示する。また、表示部250は、鋼材10を被覆している塗膜CFの診断結果を表示する画面を表示する。
(塗膜特性測定システムの動作)
図22は、本発明の実施形態に係る塗膜特性測定システムの動作の一例を示すフロー図である。
(ステップS1)
制御・解析装置200の操作部240に対して、ユーザが測定を開始する操作を行うことによって、操作部240は、測定を開始することを示す情報を作成し、作成した測定を開始することを示す情報を、情報処理部230に出力する。
(ステップS2)
情報処理部230の指示部231は、操作部240が出力した測定を開始することを示す情報を取得する。指示部231は、取得した測定を開始することを示す情報に基づいて、記憶部220に記憶されている測定条件情報226を取得し、取得した測定条件情報226に含まれる測定条件を、IF210へ出力する。
IF210は、情報処理部230が出力した測定条件を取得し、取得した測定条件を、塗膜特性測定装置100に出力する。
(ステップS3)
指示部231は、取得した測定を開始することを示す情報に基づいて、測定開始要求を作成する。
(ステップS4)
指示部231は、作成した測定開始要求を、IF210へ出力する。IF210は、情報処理部230が出力した測定開始要求を取得し、取得した測定開始要求を、塗膜特性測定装置100に出力する。
(ステップS5)
塗膜特性測定装置100の処理部104は、制御・解析装置200が出力する測定開始要求を取得し、取得した測定開始要求に基づいて、測定部102に測定開始要求を出力する。
測定部102は、制御・解析装置200が出力する測定条件を受け付ける。測定部102は、処理部104が出力する測定開始要求に基づいて、受け付けた測定条件に含まれる第1対極CE1と第1作用電極WE1との間に印加する交流電圧を示す情報を取得する。測定部102は、取得した第1対極CE1と第1作用電極WE1との間に印加する交流電圧を示す情報に基づいて、第1対極CE1と第1作用電極WE1との間に正弦波交流の電圧を印加し掃引する。
(ステップS6)
測定部102は、第1対極CE1と第1作用電極WE1との間に正弦波交流の電圧を印加し掃引することによる周波数応答である第2対極CE2と第2作用電極WE2との間に流れる交流電流を測定する。測定部102は、第1対極CE1と第1作用電極WE1との間を正弦波で掃引した交流電圧を示す情報と、電流の測定結果とを、処理部104へ出力する。
(ステップS7)
処理部104は、測定部102が出力した交流電圧を示す情報と、交流電流の測定結果とを取得し、取得した交流電圧を示す情報と、電流の測定結果とに基づいて、電圧値を電流値で除算することによってインピーダンスを導出する。
(ステップS8)
処理部104は、導出したインピーダンスを示す情報を、制御・解析装置200へ出力する。
(ステップS9)
制御・解析装置200のIF210は、塗膜特性測定装置100が出力した測定結果を取得し、取得した測定結果を、情報処理部230に出力する。
情報処理部230の受付部232は、IF210が出力した測定結果を受け付ける。受付部232は、受け付けた測定結果を処理部233に出力する。
処理部233は、受付部232が出力した測定結果を取得する。処理部233は、取得した測定結果に含まれるインピーダンスを示す情報に基づいて、ボード線図と、ナイキスト線図とを導出する。処理部233は、導出したボード線図を示す情報と、ナイキスト線図を示す情報とを、解析部234へ出力する。
(ステップS10)
解析部234は、処理部233が出力したボード線図を示す情報と、ナイキスト線図を示す情報とを取得する。解析部234は、取得したボード線図を示す情報と、ナイキスト線図を示す情報とに基づいて、塗膜CFの状況を判定する。
(ステップS11)
解析部234は、ボード線図と、ナイキスト線図とに基づいて、塗膜CFの状況を判定した結果を示す情報を、表示部250に表示する。
前述した実施形態では、塗膜特性測定装置100と制御・解析装置200とが異なる装置として説明したが、この限りでない。例えば、塗膜特性測定装置100と制御・解析装置200とが一体化されていてもよい。つまり、塗膜特性測定装置100が制御・解析装置200を含んでいてもよい。また、塗膜特性測定装置100に含まれる測定部102と、処理部104とが異なる装置とされてもよい。また、測定部102と処理部104と制御・解析装置200とのうちの二つが組み合わされてもよい。
前述実施形態において、塗膜特性測定装置100と制御・解析装置200とは、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。
前述した実施形態では、塗膜特性測定方法、および塗膜特性測定装置において、インピーダンスを測定する方法として、塗膜CFを挟んで電極と鋼材間に交流電圧を印加し、周波数掃引して、その周波数応答である塗膜CFを挟んで電極と鋼材間に流れる交流電流を測定し、塗膜CFのインピーダンスを求めているが、逆に、塗膜CFを挟んで電極と鋼材間に交流電流を通電し、周波数掃引して、その周波数応答である塗膜CFを挟んで電極と鋼材間に生じる交流電圧を測定し、インピーダンスを求めることでも同様の結果が得られる。
前述した実施形態では、塗膜CFが、防食下地20aと、防食層20bとを含み、防食下地20aの一例としてジンクリッチプライマー、防食層20bの一例としてエポキシ樹脂について説明したが、この例に限られない。例えば、防食層20bが劣化すると、防食下地20aと防食層20bに該当するナイキスト線図が2つの半円となり、防食下地20aが健全なうちは防食層20bに該当する半円の径だけが小さくなって、防食下地20aに該当する半円は変わらない。この現象は、原則、2つの電気特性が異なる防食下地20aと防食層20bとを組み合わせた塗膜で成り立つものと想定される。この組み合わせは、防食下地20aにジンクリッチプライマーのような抵抗が低いものと防食層20bにエポキシ樹脂のような抵抗が高いものを組み合わせた場合である。
ここで、防食層20bはエポキシ樹脂以外でもよく、例えば、塗装の防食層20bとして使われているアクリル樹脂、ウレタン樹脂などであってもよい。
前述した実施形態において、ジンクとエポキシとを組み合わせた塗膜CFを、以下の用途で使い分けてもよい。
(1)超厚膜形エポキシ樹脂塗装
(a)有機ジンク20μm以上+エポキシ樹脂2500μm以上(総膜厚2.52mm以上)
(b)有機ジンク20μm以上+エポキシ樹脂1250μm以上+耐候性塗料55μm以上(総膜厚1.325mm以上)
(2)海洋厚膜エポキシ塗装
(a)有機ジンク75μm以上+エポキシ樹脂480μm以上(総膜厚0.555mm以上)
(b)有機ジンク75μm以上+エポキシ樹脂200μm以上+耐候性塗料55μm以上(総膜厚0.33mm以上)
(3)C5塗装
無機ジンク75μm以上+エポキシ樹脂120μm以上+耐候性塗料55μm以上(総膜厚0.25mm以上)
ここで、(1)と(2)は海洋鋼構造物に適用され、(3)は大型橋梁に適用されてもよい。
ここで、塗膜CFの厚さについて、説明する。
(1)から(3)に基づいて塗膜CFを構成した場合に、この塗膜CFは、防食層20bの上に耐候性塗料を塗布した場合も適用でき、防食下地20a(ジンク層)と防食層20bとを含む。この場合、塗膜CFは、膜厚が250μm以上3mm以下である。この場合、防食層20bはエポキシ樹脂に限られない。具体的には、防食層20bは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂であってもよい。
(1)と(2)とに基づいて塗膜CFを構成した場合に、この塗膜CFは、防食層20bの上に耐候性塗料を塗布した場合も適用でき、防食下地20a(ジンク層)と防食層20bとを含む。この場合、塗膜CFは、膜厚が300μm以上3mm以下である。この場合、防食層20bはエポキシ樹脂に限られない。具体的には、防食層20bは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂であってもよい。
(1)に基づいて塗膜CFを構成した場合に、この塗膜CFは、防食層20bの上に耐候性塗料を塗布した場合も適用でき、防食下地20a(ジンク層)と防食層20bとを含む。この場合、塗膜CFは、膜厚が1.325mm以上3mm以下である。この場合、防食層20bはエポキシ樹脂に限られない。具体的には、防食層20bは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂であってもよい。
本実施形態に係る塗膜特性測定システム1によれば、塗膜特性測定装置100は、電気化学インピーダンススペクトル法を使用して塗膜CFの特性を測定する。塗膜CFは、鋼材上に直接塗布した防食下地と、防食下地の上に塗布した防食層に形成された厚膜である。塗膜特性測定システム1は、防食層上に形成された電極と鋼材と間に交流電圧を印加し、交流電圧を周波数掃引することで得られる交流電流を測定し、交流電圧と交流電流の測定結果とに基づいて、インピーダンスを導出する。電極の面積は、0.1m以上0.3m以下である。
電極の面積を増加させることによって、静電容量が増加するため、容量リアクタンスを減少させることができる。また、電極の面積を増加させることによって、交流抵抗を減少させることができる。また、電極外周塗膜CFからの乾燥の影響の度合いは、電極面積が小さいと大きいが、電極面積が大きくなると、ほとんど乾燥の影響がなくなることから、塗膜CFへの導電ペーストの吸湿の程度は、電極面積の方が有利となる。これは、低周波数において、電流は抵抗回路に殆ど流れることから、電極面積が大きいものほど塗膜CFの導電率が低下することが示唆される。以上、電極面積を増加することによって、電極面積の増加に相当する抵抗の低下、容量リアクタンスの低下の他に導電率の効果的な低下が起きる。このため、電極の面積増加によって、信号電流が増加しSN比の向上が図られるため、明瞭なナイキスト線図を得るための情報を導出できる。
また、塗膜特性測定システム1によれば、塗膜特性測定装置100は、1Hz未満の周波数領域を含む周波数領域で、交流電圧を周波数掃引する。
電極の面積を増加させることによって、1Hz未満の周波数領域の低周波域でもインピーダンスを読み取ることができる。塗膜CFの下の鋼材の表面近傍の状況を把握するには、より低周波域の電気化学インピーダンスの測定が必要である。1Hz未満の低周波域を含む電気化学インピーダンスの測定を行うことによって、ナイキスト線図において、低周波域で現出する半円を確認できる。この低周波域で現出する半円は、防食下地電気化学インピーダンスを反映していると想定されるため、この低周波域の半円によって、防食下地の状況を判定できる。このように構成することによって、防食下地の健全性や鋼材表面の腐食有無を評価できる。つまり、防食下地の状況を判定するための情報を導出できる。
また、電極面積を増加させることにより、低周波域のEIS特性がノイズなく測定できるため、実測EISと、等価回路で再現したEISとをフィッテイングできる。さらに、劣化進展の異なる塗膜CFの実測EISデータを等価回路にフィッテイングすることにより、塗膜CFの劣化過程をパラメータの変化やEISの曲線形状変化により明らかにできる。これにより塗膜劣化の進展が防食層までか、その下の防食下地が腐食しているのか、更に進んで防食膜の下の鋼材が腐食しているのかが判断できる。
また、塗膜特性測定システム1によれば、塗膜特性測定システム1は、導出したインピーダンスに基づいて、ナイキスト線図を描画し、描画したナイキスト線図に基づいて、塗膜CFの状態を判定する。このように構成することによって、明瞭なナイキスト線図を得ることができるため、塗膜CFの状態を判定できる。
また、塗膜特性測定システム1によれば、塗膜特性測定システム1は、ナイキスト線図に表される塗膜CFの状態を表す半円に基づいて、塗膜CFの状態を判定する。このように構成することによって、ナイキスト線図において、低周波域の半円によって、防食下地の状況が表されるため、防食下地膜の状態を判定できる。
また、塗膜特性測定システム1によれば、塗膜特性測定システム1は、塗膜CFの状態に基づいて、補修時期であるか否かを判定する。このように構成することによって、塗膜CFの状態に基づいて、補修時期であるか否かを判定できるため、腐食因子が鋼材に到着するのを防止できる。防食下地が腐食していれば被覆膜全面剥離での大規模補修となるが、防食層までの劣化であれば、塗膜CFを残し、クラックや微細孔に浸透し、その隙間を充填でき、且つ、耐候性のよい塗料を上塗りする簡易的な補修にとどめることができ、適切な補修時期の提案ができる。
以上、実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組合せを行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
なお、上述した制御・解析装置200は、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、各機能ブロックの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録する。この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、CPUが実行することで実現してもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体のことをいう。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置を含む。
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、短時間の間、動的にプログラムを保持するものを含んでいてもよい。短時間の間、動的にプログラムを保持するものは、例えば、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線である。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」には、サーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。また、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、上記プログラムは、プログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。プログラマブルロジックデバイスは、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)である。
なお、上述の制御・解析装置200は内部にコンピュータを有している。そして、上述した制御・解析装置200の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどをいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
1 塗膜特性測定システム
10 鋼材
20a 防食下地
20b 防食層
30 導電性ペースト
40 電極
100 塗膜特性測定装置
102 測定部
104 処理部
200 制御・解析装置
210 IF
220 記憶部
222 プログラム
226 測定条件情報
227 塗膜劣化度判定テーブル
230 情報処理部
231 指示部
232 受付部
233 処理部
234 解析部
240 操作部
250 表示部
260 バスライン

Claims (6)

  1. 電気化学インピーダンススペクトル法を使用して塗膜の特性を測定する塗膜特性測定装置が実行する塗膜特性測定方法であって、
    前記塗膜は、鋼材に防食下地を塗布した後、防食層を形成した厚膜であり、
    前記塗膜特性測定方法は、
    前記塗膜上に形成された電極と前記鋼材と間に交流電圧を印加し、交流電圧を周波数掃引することで得られる交流電流を測定するステップと、
    前記交流電圧と前記交流電流の測定結果とに基づいて、インピーダンスを導出するステップと
    を有し、
    前記電極の面積は、0.05m以上である、塗膜特性測定方法。
  2. 前記測定するステップでは、1Hz未満の周波数領域を含む周波数領域で、交流電圧を周波数掃引する、請求項1に記載の塗膜特性測定方法。
  3. 前記導出するステップで導出したインピーダンスに基づいて、ナイキスト線図を描画するステップと、
    前記ナイキスト線図を描画するステップで描画した前記ナイキスト線図に基づいて、前記塗膜の状態を判定するステップと
    を有する、請求項1又は請求項2に記載の塗膜特性測定方法。
  4. 前記判定するステップでは、前記ナイキスト線図に表される前記防食下地の状態を表す半円に基づいて、前記防食下地の状態を判定する、請求項3に記載の塗膜特性測定方法。
  5. 前記判定するステップで判定された前記防食下地の状態に基づいて、補修時期であるか否かを判定するステップ
    を有する、請求項3又は請求項4に記載の塗膜特性測定方法。
  6. 電気化学インピーダンススペクトル法を使用して塗膜の特性を測定する塗膜特性測定装置であって、
    前記塗膜は、鋼材に防食下地を塗布した後、防食層を形成した厚膜であり、
    前記塗膜特性測定装置は、
    前記塗膜上に形成された電極と前記鋼材と間に交流電圧を印加し、交流電圧を周波数掃引することで得られる交流電流を測定する測定と、
    前記交流電圧と前記交流電流の測定結果とに基づいて、インピーダンスを導出する処理部と
    を備え、
    前記電極の面積は、0.05m以上である、塗膜特性測定装置。
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