JP7223166B2 - 光吸収異方性膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光吸収異方性膜の製造方法に関する。
偏光子は、反射防止、迷光抑止などの観点から、様々な光学装置で用いられているが、使用される各部材に対して、意匠性向上や設計のし易さのため曲面等形状の自由度が求められている。
従来、偏光子にはヨウ素偏光子が使用されていることが多い。ヨウ素偏光子は、ヨウ素を溶解し、ポリビニルアルコール(PVA)のような高分子材料膜に吸着させ、一方向に高倍率に延伸することで作製されており、十分な薄型化が困難であった。また、特許文献1に記載のように、延伸されたPVAは熱経時での形状変化を生じやすく、曲面形状で用いることも困難であった。
近年、ヨウ素偏光子に対して、透明フィルムなどの基板上に液晶性化合物や二色性アゾ色素を塗布し、分子間相互作用などを利用して二色性アゾ色素を配向させた偏光素子が検討されている。例えば、特許文献1には、湾曲部を有する偏光板に用いる偏光子として、第1の面および第2の面を有する、厚みが15μm以下の偏光子が記載されており([請求項1])、また、このような偏光子として、液晶化合物の硬化物および二色性色素を含み、二色性色素が分散して配向された偏光層を含む偏光子が記載されている([請求項4])。
特開2019-194685号公報
ところで、車載ディスプレイやレンズ等の曲面に対して液晶配向を利用した偏光子を使用するためには、偏光フィルムを曲面に沿う形状に成形する必要がある。
また、成形の方法としては、加熱を伴う成形方法(以下、「加熱成形」ともいう。)が知られている。
本発明者らは、特許文献1に記載された偏光子について検討したところ、加熱成形によって三次元形状を設けた場合には、液晶化合物および二色性色素の配向が乱れて偏光度が大きく低下することが分かった。
そこで、本発明は、三次元形状を有する配向性に優れた光吸収異方性膜の製造方法、すなわち、加熱成形によって三次元形状を設けた場合でも、高い偏光度を有する光吸収異方性膜を作製することができる光吸収異方性膜の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、光吸収異方性膜の製造方法において、加熱成形後に特定の後工程を実施することで、加熱成形により三次元形状を設けた場合でも高い偏光度を有する光吸収異方性膜の製造方法を提供することができることを見出した。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] 光吸収異方性膜の製造方法であって、
液晶性化合物および二色性物質を含有する液晶組成物を用いて形成される塗布光学膜と、配向膜と、を有する中間積層体を製造する成膜工程と、
成膜工程により製造された中間積層体を加熱し、三次元形状を付与する加熱成形工程と、
加熱成形工程により三次元形状が付与された中間積層体における塗布光学膜に含まれる液晶性成分を配向させ、光吸収異方性膜を製造する配向工程と、
配向工程により製造された光吸収異方性膜を硬化させる硬化工程と、を備える光吸収異方性膜の製造方法。
[2] 配向工程が、中間積層体を二色性物質の融点よりも高い第1温度とする第1工程と、液晶性化合物のネマチック転移温度よりも低い第2温度とする第2工程とをこの順に備える、[1]に記載の光吸収異方性膜の製造方法。
[3] 加熱成形工程が、配向工程における第2温度よりも高い温度で成形を行う工程である、[2]に記載の光吸収異方性膜の製造方法。
[4] 成膜工程と、加熱成形工程との間に、転写工程を備える、[1]~[3]のいずれかに記載の光吸収異方性膜の製造方法。
本発明によれば、加熱成形によって三次元形状を設けた場合でも、高い偏光度を有する光吸収異方性膜を作製することができる光吸収異方性膜の製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の製造方法から得られる中間積層体の例を示す模式的な断面図である。 図2Aは、本発明の製造方法から得られる三次元形状を有する光吸収異方性膜の一例を示す模式図である。 図2Bは、本発明の製造方法から得られる三次元形状を有する光吸収異方性膜の他の一例を示す模式図である。 図2Cは、本発明の製造方法から得られる三次元形状を有する光吸収異方性膜の他の一例を示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、平行、直交とは厳密な意味での平行、直交を意味するのではなく、平行または直交から±5°の範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を表す表記であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表す表記である。
また、本明細書において、液晶性組成物、液晶性化合物とは、硬化等により、もはや液晶性を示さなくなったものも概念として含まれる。
本発明の光吸収異方性膜の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも略す。)は、液晶性化合物および二色性物質を含有する液晶組成物を用いて形成される塗布光学膜と、配向膜と、を有する中間積層体を製造する成膜工程と、加熱成形工程と、配向工程と、硬化工程とをこの順に備える光吸収異方性膜の製造方法である。
以下に光吸収異方性膜の製造方法に含まれる各構成要素について詳述する。
本発明においては、上述した通り、加熱成形後に配向工程と、硬化工程とをこの順で行うことで、加熱成形によって三次元形状を設けた場合でも高い偏光度を有する光吸収異方性膜の製造方法を提供することができる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
加熱成形においては、三次元形状を付与するために中間積層体が一定程度柔らかくなるまで加熱する。この温度域では、中間積層体における塗布光学膜中の液晶性化合物および二色性物質は、熱緩和によりその配向が乱れてしまう。すなわち、後述する比較例1に示す通り、特許文献1などに記載された従来の方法、すなわち、配向工程および硬化工程の後に加熱成形する場合には、加熱成形の際に、液晶性化合物および二色性物質の配向が乱れることが分かった。
そのため、本発明の光吸収異方性膜の製造方法においては、加熱成形後に、配向工程および硬化工程を設けることで、光吸収異方性膜の配向度を高めることができたと考えられる。
[成膜工程]
本発明の製造方法における成膜工程は、液晶性化合物および二色性物質を含有する液晶組成物を用いて形成される塗布光学膜と、配向膜と、を有する中間積層体を製造する工程である。
本発明の製造方法における成膜工程は、配向膜を形成する工程(以下、「配向膜形成工程」ともいう。)と、配向膜上に後述の液晶組成物を塗布して塗布光学膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)を備える方法が好ましい。
〔配向膜形成工程〕
配向膜形成工程により得られる配向膜は、配向膜上において液晶組成物に含まれる二色性物質を所望の配向状態とすることができるのであれば、どのような層でもよい。
配向膜を形成する工程としては、例えば、有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、および、ラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチルなど)の累積などの手法が挙げられる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
なかでも、配向膜を形成する工程としては、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理を備えることが好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向処理を備えることも好ましい。
<ラビング処理>
配向膜形成工程は、ラビング処理を備えることが好ましい。
ラビング処理により形成される配向膜に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、およびその誘導体が好ましく用いられる。配向膜については国際公開第2001/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照することができる。配向膜の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~2μmであることが更に好ましい。
<光配向処理>
配向膜形成工程は、光配向処理を備えることが好ましい。
光照射により形成される配向膜(以下、「光配向膜」ともいう。)に用いられる光配向化合物としては、多数の文献等に記載がある。本発明においては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
これらのうち、光配向化合物として、光の作用により二量化および異性化の少なくとも一方が生じる光反応性基を有する感光性化合物を用いることが好ましい。
また、光反応性基としては、例えば、桂皮酸(シンナモイル)構造(骨格)を有する基、クマリン構造(骨格)を有する基、カルコン構造(骨格)を有する基、ベンゾフェノン構造(骨格)を有する基、および、アントラセン構造(骨格)を有する基などが挙げられる。これら基のなかでも、シンナモイル構造を有する基、クマリン構造を有する基が好ましく、シンナモイル構造を有する基がより好ましい。
また、上記光配向性基を有する感光性化合物は、更に架橋性基を有していてもよい。
上記架橋性基としては、熱の作用により硬化反応を起こす熱架橋性基、光の作用により硬化反応を起こす光架橋性基が好ましく、熱架橋性基および光架橋性基をいずれも有する架橋性基であってもよい。
上記架橋性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、-NH-CH-O-R(Rは水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。)で表される基、エチレン性不飽和二重結合を有する基、および、ブロックイソシアネート基からなる群から選ばれた少なくとも1つが挙げられる。なかでも、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和二重結合を有する基が好ましい。
なお、3員環の環状エーテル基はエポキシ基とも呼ばれ、4員環の環状エーテル基はオキセタニル基とも呼ばれる。
また、エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が挙げられ、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることが好ましい。
光配向処理は、上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光または非偏光照射を施す。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプなどのランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、二色性物質偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタまたは波長変換素子などを用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜に対して上面、または裏面から配向膜表面に対して垂直、または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°が特に好ましい。
照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
〔塗布膜形成工程〕
塗布膜形成工程は、後述の液晶組成物を塗工して塗布光学膜を形成する工程である。
塗布膜形成工程は、後述の液晶組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう。)と、塗工した液晶組成物に含まれる溶媒を乾燥し除去する工程(以下、「乾燥工程」ともいう。)を備える方法が好ましい。
塗布光学膜中の液晶性化合物は、配向膜と(後述の液晶組成物が界面改良剤を含有する場合には)界面改良剤との相互作用により水平配向していることが好ましい。
溶媒を含有する液晶組成物を用いたり、液晶組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、配向膜上に液晶組成物を塗布することが容易になる。
塗工工程は、後述の液晶組成物を塗工する工程である。液晶組成物の配向性の観点から、配向膜上に塗工することが好ましい。
液晶組成物を塗工する方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
乾燥工程は、加熱、送風、自然乾燥及び/またはその他の方法により、塗工工程で得られた塗膜から溶媒を減少させ、塗膜を乾燥することにより、塗布光学膜を形成する工程である。
<液晶組成物>
以下、本発明の製造方法が備える塗布膜形成工程に用いられる液晶組成物(以下、「本組成物」ともいう。)に含まれる各成分について詳述する。
(液晶性化合物)
本組成物は、液晶性化合物を含有する。液晶性化合物を含有することで、二色性物質の析出を抑止しながら、二色性物質を高い配向度で配向させることができる。液晶性化合物は、二色性を示さない液晶性化合物である。
液晶性化合物は、高分子液晶性化合物を含むことが好ましく、さらに低分子液晶性化合物を含んでもよい。ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
<高分子液晶性化合物>
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子、国際公開第2018/199096号の[0012]~[0042]段落に記載されている高分子液晶性化合物などが挙げられる。
高分子液晶性化合物は、光吸収異方性膜の強度(特に、耐屈曲性)が優れるという観点から、末端に架橋性基を有していてもよい。架橋性基としては、例えば、特開2010-244038号公報の[0040]~[0050]段落に記載された重合性基が挙げられる。これらの中でも、反応性および合成適性の向上の観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、および、スチリル基が好ましく、アクリロイル基およびメタクリロイル基がより好ましい。
高分子液晶性化合物は、得られる光吸収異方性膜の配向度がより高くなる理由から、下記式(1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」とも略す。)を含む高分子液晶性化合物であることが好ましい。
なお、以下の説明において、「得られる光吸収異方性膜の配向度がより高くなる」ことを「本発明の効果がより優れる」とも言う。
Figure 0007223166000001
上記式(1)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
P1が表す繰り返し単位の主鎖としては、具体的には、例えば、下記式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性および取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
Figure 0007223166000002
式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、式(1)におけるL1との結合位置を表す。式(P1-A)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。式(P1-D)において、Rはアルキル基を表す。
式(P1-A)で表される基は、本発明の効果がより優れる理由から、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
式(P1-B)で表される基は、本発明の効果がより優れる理由から、エチレングリコールを重合して得られるポリエチレングリコールにおけるエチレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-C)で表される基は、本発明の効果がより優れる理由から、プロピレングリコールを重合して得られるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
式(P1-D)で表される基は、本発明の効果がより優れる理由から、シラノールの縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。
L1は、単結合または2価の連結基である。
L1が表す2価の連結基としては、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR-、-NRC(O)-、-SO-、および、-NR-などが挙げられる。式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表わす。
P1が式(P1-A)で表される基である場合には、本発明の効果がより優れる理由から、L1は-C(O)O-で表される基が好ましい。
P1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、本発明の効果がより優れる理由から、L1は単結合が好ましい。
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH-CHO)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*は、上記式(1)中のL1またはM1との結合位置を表す。n1は、本発明の効果がより優れる理由から、2~10の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましく、3であることが最も好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、本発明の効果がより優れる理由から、*-(CH(CH)-CHO)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、本発明の効果がより優れる理由から、*-(Si(CH-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、本発明の効果がより優れる理由から、*-(CF-CFn4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
M1が表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、および、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。
メソゲン基としては、例えば、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基からなる群より選択される少なくとも1種の環状構造を有する基が好ましい。
メソゲン基は、本発明の効果がより優れる理由から、芳香族炭化水素基を有するのが好ましく、2~4個の芳香族炭化水素基を有するのがより好ましく、3個の芳香族炭化水素基を有するのがさらに好ましい。
メソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、並びに、本発明の効果がより優れるから、下記式(M1-A)または下記式(M1-B)で表される基が好ましく、式(M1-B)で表される基がより好ましい。
Figure 0007223166000003
式(M1-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、アルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基又は置換基で置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~6員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、SP1またはT1との結合位置を表す。
A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性や原材料の入手性などの観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
A1が表す2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基などが挙げられる。
式(M1-A)中、a1は1~10の整数を表す。a1が2以上である場合には、複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
式(M1-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2およびA3の具体例および好適態様は、式(M1-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
式(M1-B)中、a2は1~10の整数を表し、a2が2以上である場合には、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のA3は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、本発明の効果がより優れる理由から、2以上の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(M1-B)中、a2が1である場合には、LA1は2価の連結基である。a2が2以上である場合には、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。a2が2である場合、本発明の効果がより優れる理由から、2つのLA1のうち、一方が2価の連結基であり、他方が単結合であることが好ましい。
式(M1-B)中、LA1が表す2価の連結基としては、-O-、-(CH-、-(CF-、-Si(CH-、-(Si(CHO)-、-(OSi(CH-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)-C(Z’)-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z”)-、-N(Z”)-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z”は独立に、水素、C1~C4アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、-C(O)O-が好ましい。LA1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
M1の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられる。なお、下記具体例において、「Ac」は、アセチル基を表す。
Figure 0007223166000004
Figure 0007223166000005
T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(ROC(O)-:Rはアルキル基)、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、および、炭素数1~10のウレイド基、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基などが挙げられる。上記(メタ)アクリロイルオキシ基含有基としては、例えば、-L-A(Lは単結合又は連結基を表す。連結基の具体例は上述したL1及びSP1と同じである。Aは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す)で表される基が挙げられる。
T1は、本発明の効果がより優れる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシがより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
これらの末端基は、これらの基、または、特開2010-244038号公報に記載の重合性基によって、さらに置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、偏光子の配向度がより向上する。ここで、T1おける「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
繰り返し単位(1L)の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、20~100質量%が好ましい。
本発明において、高分子液晶性化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
繰り返し単位(1L)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、繰り返し単位(1L)が高分子液晶性化合物中に2種含まれているのがよい。
高分子液晶性化合物が繰り返し単位(1L)を2種含む場合、本発明の効果がより優れる理由から、一方(繰り返し単位A)においてT1が表す末端基がアルコキシ基であり、他方(繰り返し単位B)においてT1が表す末端基がアルコキシ基以外の基であることが好ましい。
上記繰り返し単位BにおいてT1が表す末端基は、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシカルボニル基、シアノ基、または、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基であることが好ましく、アルコキシカルボニル基、または、シアノ基であることがより好ましい。
高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Aの含有量と高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Bの含有量との割合(A/B)は、本発明の効果がより優れる理由から、50/50~95/5であることが好ましく、60/40~93/7であることがより好ましく、70/30~90/10であることが特に好ましい。
また、高分子液晶性化合物は、繰り返し単位(1L)とももに、メソゲン基を有しない繰り返し単位を有していてもよい。メソゲン基を有しない繰り返し単位としては、式(1L)におけるM1が単結合である繰り返し単位が挙げられる。
高分子液晶性化合物がメソゲン基を有しない繰り返し単位を有する場合、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0質量%超20質量%以下が好ましい。
高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れる理由から、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましい。高分子液晶性化合物のMwが上記範囲内にあれば、高分子液晶性化合物の取り扱いが容易になる。
特に、塗布時のクラック抑制の観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、10000~300000がより好ましい。
また、配向度の温度ラチチュードの観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000未満が好ましく、2000以上10000未満が好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
T1は、膜の形状安定性を向上させることができる理由から、重合性基であることが好ましい。
重合性基は、特に限定されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、公知のラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、アクリロイル基またはメタクリロイル基を挙げることができる。この場合、重合速度はアクリロイル基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の観点からアクリロイル基が好ましいが、メタクリロイル基も重合性基として同様に使用することができる。
カチオン重合性基としては、公知のカチオン重合性基を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基などを挙げることができる。中でも、脂環式エーテル基、または、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基が特に好ましい。
本組成物においては、後述する二色性物質との相溶性を調整しやすくなる理由から、高分子液晶性化合物のlogP値が4.0~10であることが好ましく、4.3~9.5であることがより好ましく、4.3~5.5であることが更に好ましい。
ここで、logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標であり、親疎水パラメータと呼ばれることがある。logP値は、ChemBioDraw UltraまたはHSPiP(Ver.4.1.07)などのソフトウェアを用いて計算できる。また、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Sections 1,Test No.117の方法などにより、実験的に求めることもできる。本発明では特に断りのない限り、HSPiP(Ver.4.1.07)に化合物の構造式を入力して算出される値をlogP値として採用する。
<低分子液晶性化合物>
液晶組成物は、低分子液晶性化合物を含むことが好ましい。
ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報に記載されている液晶性化合物が挙げられる。
<液晶性化合物の含有量>
液晶性化合物の含有量は、本組成物の全固形分に対して、60~95質量%が好ましく、70~95質量%がより好ましく、75~90質量%が特に好ましい。液晶性化合物の含有量が上記範囲内にあることで、偏光子の配向度がより向上する。
高分子液晶性化合物の含有量は、本組成物の全固形分に対して、10~95質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましく、40~85質量%が特に好ましい。液晶性化合物の含有量が上記範囲内にあることで、偏光子の配向度がより向上する。
本組成物が低分子液晶性化合物を含有する場合、低分子液晶性化合物の含有量は、本組成物の全固形分に対して、0質量%超95質量%以下が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~40質量%が特に好ましい。
(二色性物質)
液晶組成物が含有する二色性物質は、特に限定されず、可視光吸収物質(二色性色素)、発光物質(蛍光物質、燐光物質)、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、非線形光学物質、カーボンナノチューブ、無機物質(例えば量子ロッド)、などが挙げられ、従来公知の二色性物質(二色性色素)を使用することができる。
具体的には、例えば、特開2013-228706号公報の[0067]~[0071]段落、特開2013-227532号公報の[0008]~[0026]段落、特開2013-209367号公報の[0008]~[0015]段落、特開2013-14883号公報の[0045]~[0058]段落、特開2013-109090号公報の[0012]~[0029]段落、特開2013-101328号公報の[0009]~[0017]段落、特開2013-37353号公報の[0051]~[0065]段落、特開2012-63387号公報の[0049]~[0073]段落、特開平11-305036号公報の[0016]~[0018]段落、特開2001-133630号公報の[0009]~[0011]段落、特開2011-215337号公報の[0030]~[0169]、特開2010-106242号公報の[0021]~[0075]段落、特開2010-215846号公報の[0011]~[0025]段落、特開2011-048311号公報の[0017]~[0069]段落、特開2011-213610号公報の[0013]~[0133]段落、特開2011-237513号公報の[0074]~[0246]段落、特開2016-006502号公報の[0005]~[0051]段落、WO2016/060173号公報の[0005]~[0041]段落、WO2016/136561号公報の[0008]~[0062]段落、国際公開第2017/154835号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/154695号の[0014]~[0033]段落、国際公開第2017/195833号の[0013]~[0037]段落、国際公開第2018/164252号の[0014]~[0034]段落などに記載されたものが挙げられる。
本組成物においては、2種以上の二色性物質を併用してもよく、例えば、得られる光吸収異方性膜を黒色に近づける観点から、波長370~550nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質と、波長500~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の二色性物質とを併用することが好ましい。
上記二色性物質は、架橋性基を有していてもよい。
上記架橋性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、スチリル基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
二色性物質は、液晶性を示してもよいし、液晶性を示さなくてもよい。二色性物質が液晶性を示す場合には、ネマチック性またはスメクチック性のいずれを示してもよい。液晶相を示す温度範囲は、室温(約20℃~28℃)~300℃が好ましく、取扱い性および製造適性の観点から、50℃~200℃であることがより好ましい。
<二色性物質の含有量>
二色性物質の含有量は、本発明の効果がより優れる点から、上記高分子液晶性化合物100質量部に対して1~400質量部であることが好ましく、2~100質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることが更に好ましい。
また、二色性物質の含有量は、液晶組成物における固形分中の1~50質量%となる量であることが好ましく、2~40質量%となる量であることがより好ましい。
(重合開始剤)
本組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、o-アシルオキシム化合物(特開2016-27384明細書[0065])、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)などが挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア-184、イルガキュア-907、イルガキュア-369、イルガキュア-651、イルガキュア-819、イルガキュア-OXE-01およびイルガキュア-OXE-02等が挙げられる。
本組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、液晶組成物中の上記二色性物質と上記高分子液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、光吸収異方性膜の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、光吸収異方性膜の配向度がより良好となる。
重合開始剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合開始剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
(界面改良剤)
本組成物は、界面改良剤を含むことが好ましい。
界面改良剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、さらに配向度を高める効果や、ハジキおよびムラの発生を抑え、面内の均一性を高める効果が見込まれる。
界面改良剤としては、二色性物質と高分子液晶性化合物を塗布表面側で水平にさせるものが好ましく、国際公開第2016/009648号の[0155]~[0170]段落に記載されている化合物 や特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。
本組成物が界面改良剤を含有する場合、界面改良剤の含有量は、液晶組成物中の上記二色性物質と上記高分子液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部がより好ましい。
界面改良剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。界面改良剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
(溶媒)
本組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含むことが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペタンタノン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキソランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,2-ジメトキシエタンなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなど)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジンなど)などの有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。これの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、液晶組成物の溶解性に優れるという効果を活かす観点から、ケトン類(特にシクロペンタノン、シクロヘキサノン)、エーテル類(特にテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロピラン、ジオキソラン)、および、アミド類(特に、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン)が好ましい。
本組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、液晶組成物の全質量に対して、80~99質量%であることが好ましく、83~97質量%であることがより好ましく、85~95質量%であることが特に好ましい。
溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。溶媒を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
〔中間積層体〕
上述した成膜工程により製造される中間積層体の一例を図1に示す。
図1に示す中間積層体10は、任意の基材11、配向膜12、および、塗布光学膜13からなる積層体である。
<基材>
中間積層体は、図1に示すように、基材を有していてもよい。
ここで、基材は、光吸収異方性膜の用途に応じて選択することができ、例えば、ガラスおよびポリマーフィルムが挙げられる。基材の光透過率は、80%以上であるのが好ましい。加熱成形適性の点から、ポリマーフィルムであることが好ましい。
ポリマーフィルムのポリマー材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース系ポリマー;ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルなどのアクリル系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー;ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体、環状共役ジエンの重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体などの脂環式構造を有するポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;またはこれらのポリマーを混合したポリマー;等が挙げられる。
これらの材料のうち、セルロース系ポリマー、または、脂環式構造を有するポリマーであることが好ましく、セルロース系ポリマーであることがより好ましい。
一方、上記基材としては、加熱成形工程において成形性が容易となる理由から、tanδのピーク温度が170℃以下である樹脂基材が好ましい。さらに低温での成形処理が可能となる観点では、tanδのピーク温度は150℃以下が好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
ここで、tanδの測定方法について記載する。動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製DVA-200)を用いて、あらかじめ温度25℃湿度60%Rh雰囲気下で2時間以上調湿したフィルム試料について、下記条件において、E”(損失弾性率)とE’(貯蔵弾性率)を測定し、tanδ(=E”/E’)を求める値とする。
装置:アイティー計測制御株式会社製 DVA-200
試料:5mm、長さ50mm(ギャップ20mm)
測定条件:引張りモード
測定温度:-150℃~220℃
昇温条件:5℃/min
周波数:1Hz
なお、一般的に光学用途においては、延伸処理がなされた樹脂基材を使用することが多く、延伸処理によって、tanδのピーク温度は高温になることが多い。例えば、TAC(トリアセチルセルロース)基材(TG40、富士フイルム社製)は、tanδのピーク温度は180℃以上となる。
上記樹脂基材は、特に制限なく様々な光学樹脂が使用可能である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル及びポリアクリル酸エステル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドが挙げられる。中でも、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、好ましくは、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はアクリル系樹脂であり、特に好ましくは、環状オレフィン系樹脂又はポリメタクリル酸エステルである。
市販の樹脂基材としては、テクノロイS001G、テクノロイS014G、テクノロイS000、テクノロイC001、テクノロイC000(住化アクリル販売株式会社)、ルミラーUタイプ、ルミラーFX10、ルミラーSF20(東レ株式会社)、HK-53A(東山フィルム株式会社)、テフレックスFT3(帝人デュポンフィルム株式会社)、エスシーナ”及びSCA40(積水化学工業(株))、ゼオノアフィルム(オプテス(株))、アートンフィルム(JSR(株))などが挙げられる。
上記樹脂基材の厚みは特に制限されないが、5~300μmが好ましく、5~100μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましい。
配向膜については、上述したとおりであるので、その説明を省略する。
また、塗布光学膜は、上述した液晶組成物を塗工して得られる。後述する本発明の備える加熱成形工程と、配向工程と、硬化工程をこの順に行うことで、本発明の光吸収異方性膜を提供することができる。
[転写工程]
本発明の製造方法は、上述した成膜工程と後述する加熱成形工程との間に転写工程を備えることが好ましい。転写工程を備えることで、成膜工程で使用した基材や配向膜など、塗布光学膜以外の任意の層を除去することができる。
このようにすることで、塗布光学膜を、例えば、成形性に優れた新たな基材へと貼合し、成膜工程で使用した基材を除去することで、後述の加熱成形に適した中間積層体を得ることができる。例えば、中間積層体の基材として、セルロース系ポリマーからなるポリマーフィルムを用いた場合に、転写工程において、上述した樹脂基材に転写することができる。
転写に使用する接着剤もしくは粘着剤については、特に制限はなく公知の材料が使用できる。反応により接着性を発現する硬化型接着剤の具体例としては、(メタ)アクリレート系接着剤のような活性エネルギー線硬化型接着剤やカチオン重合硬化型接着剤が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。(メタ)アクリレート系接着剤における硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物が挙げられる。また、カチオン重合硬化型接着剤としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物も使用することができる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物(芳香族系エポキシ化合物)や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物(脂環式エポキシ化合物)等が例として挙げられる。
成膜工程は、必要に応じてバリア層形成工程を有してもよい。
ここで、バリア層は、ガス遮断層(酸素遮断層)とも呼ばれ、大気中の酸素等のガス、水分、または、隣接する層に含まれる化合物等から本発明の偏光素子を保護する機能を有する。
バリア層については、例えば、特開2014-159124号公報の[0014]~[0054]段落、特開2017-121721号公報の[0042]~[0075]段落、特開2017-115076号公報の[0045]~[0054]段落、特開2012-213938号公報の[0010]~[0061]段落、特開2005-169994号公報の[0021]~[0031]段落の記載を参照できる。
[加熱成形工程]
本発明の製造方法における加熱成形工程は、上述した成膜工程(転写工程を有する場合には転写工程)後の中間積層体を加熱し、三次元形状を付与する工程である。
ここで三次元形状を付与するとは、フィルム状である中間積層体の全体もしくは一部を、厚み方向に変形させ、その形状を固定化することを指す。中間積層体を湾曲させること、中間積層体両面もしくは片面に凹凸形状を付与すること、などが具体的に例示される。
三次元形状を付与する方法としては、例えば、中間積層体単独を変形させる方法、被着体の成形と同時に中間積層体の加飾を行う方法(一次加飾)、被着体の成形後に中間積層体を加飾する方法(二次加飾)などが好適に例示される。
中間積層体単独を変形させる方法としては、インプリントが挙げられる。
一次加飾の方法としては、被着体の成形方法である射出成形、ブロー中空成形、低圧成形圧縮等の成形過程において、被着体の成形と同時に中間積層体を加飾する方法として、IMF(Insert Molding Form)法、IML(Insert Molding Label)法、IMR(Insert Molding Release)法が挙げられる。
二次加飾の方法としては、TOM(Three Dimension Overlay Method)成形が挙げられる。
このうち、機能性薄膜の成形しやすさから一次加飾および二次加飾が好ましく、二次加飾がさらに好ましく、TOM成形が特に好ましい。
また、一次加飾および二次加飾は曲面を有する透明板やレンズと同時に成形することで、光吸収異方性膜と被着体との密着性および均一性を確保することができる点で好ましい。
<曲面成形>
また、本発明の製造方法における加熱成形工程は、加熱成形により、中間積層体に曲面を形成することが可能である。
中間積層体に曲面を形成することにより、本発明の製造方法で作製される光吸収異方性膜は、曲面を有する様々な物品に用いることができ、機能性やデザイン性の向上に寄与する。例えば、曲面を有する車載ディスプレイ、サングラスのレンズ、画像表示装置用のゴーグルのレンズ等に用いることができる。また、ヘッドアップディスプレイ等の車載ディスプレイ光学系;AR(Augmented Reality)眼鏡、VR(Virtual Realty)眼鏡等の光学系;LiDAR(Light Detection and Ranging)、顔認証システム、偏光イメージング等の光学センサなどで迷光抑止の目的で用いることも好ましい。さらに、位相差板と組み合わせて反射防止の目的で用いることも好ましい。
加熱成形により曲面を形成する方法としては、特開2004-322501号公報に記載されているようなインサート成形、WO2010/1867号公報や、特開2012-116094号公報に記載されているような真空成形、射出成形、圧空成形、減圧被覆成形、インモールド転写、金型プレス等が挙げられる。
加熱成形工程において必要となる温度は、中間積層体の構成や、被着体の有無等によって異なる。一次加飾を行う場合には被着体の成形温度以上に加熱を行う必要がある。
ある一態様として、被着体にアクリル樹脂を用い、射出成形と同時にIMF法で1次加飾を行う場合には150℃以上にすることが必要である。
また別の一態様として、中間積層体が基材を含む場合には、基材のガラス転移点以上に加熱することが必要である。
加熱成形工程における加工温度としては、100℃以上300℃未満であることが好ましく、120℃以上200℃未満であることがさらに好ましく、125℃以上170℃未満であることがよりさらに好ましい。
本発明においては、成形性が向上する理由から、加熱成形工程が、後述する配向工程における第2温度よりも高い温度で成形を行う工程であることが好ましい。
上述の加熱を行うと、塗布光学膜中の液晶性化合物と二色性色素化合物の配向は熱緩和する。熱緩和を防ぐため、塗布光学膜の硬膜を促進することで液晶性化合物および二色性色素化合物の運動性を低下させる方法が考えられるが、膜が硬くなり、加熱成形により高い温度を必要とする。すなわち熱緩和の防止と、加工性は本質的に相反する性質である。
[配向工程]
本発明の製造方法における配向工程は、上述した加熱成形工程によって三次元形状が付与された中間積層体における塗布光学膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程である。これにより、三次元形状が付与された高い偏光度を有する光吸収異方性膜を得ることができる。
なお、液晶性成分とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性物質が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性物質も含む成分である。
配向工程は、加熱成形工程後の中間積層体を二色性物質の融点よりも高い第1温度とする第1工程と、液晶性化合物のネマチック転移温度よりも低い第2温度とする第2工程とをこの順に有すること(以下、「特定態様」とも略す。)が好ましい。なお、第2温度は、第1温度より低い温度であることがより好ましい。
このようにすることで、第1温度で二色性物質を溶解することで、配向欠陥の少ない均一な塗布光学膜を得たうえで、第2温度で液晶性化合物の配向を促進することができる。
したがって二色性物質の配向性を高めることができる。
上述の第1工程は、その一部を加熱成形工程と兼ねることができる。具体的には、加熱成形工程において二色性物質の融点よりも高い第1温度で加工を行った場合、その後の配向工程における温度条件が、液晶性化合物のネマチック転移温度よりも低い温度である態様は、上述した特定態様に含まれる。また、加熱成形にモールドを使用した場合、第1工程および第2工程は、中間積層体がモールド内もしくはモールド上にある状態で行ってもよいし、モールドを外した状態で行ってもよい。
第2工程は、第2温度を一定時間保持する工程であることが好ましい。第2温度で保持することで、液晶性化合物の流動性が低い状態であっても、十分な配向時間を得ることができる。保持時間としては、5秒以上であることが好ましく、10秒以上であることが好ましく、30秒以上であることがさらに好ましい。
配向工程は、第1工程と第2工程との間、もしくは第2工程の後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光吸収異方性膜を得ることができる。
[硬化工程]
本発明の製造方法における硬化工程は、上述の配向工程後に、得られた光吸収異方性膜を硬化させる工程(すなわち、配向状態を固定化する工程)である。硬化することで、光吸収異方性膜の耐熱性を向上させることができる。
硬化工程は、例えば、光吸収異方性膜が架橋性基(重合性基)を有している場合には、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
露光が加熱しながら行われる場合、露光時の加熱温度は、光吸収異方性膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度にもよるが、25~140℃であることが好ましい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって光吸収異方性膜の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
加熱成形にモールドを使用した場合、露光は、中間積層体がモールド内もしくはモールド上にある状態で行ってもよいし、モールドを外した状態で行ってもよい。
モールドの全体もしくは一部が、硬化に用いる光源の光を透過する材料であることが好ましい。透過する材料としては特に制限はないが、紫外線を透過する材料として石英ガラスが好適に例示される。
本発明の製造方法により得られる光吸収異方性膜は三次元形状を有する。
前述した通り、三次元形状を有するとは、厚み方向に変形していることを指す。図2A~図2Cに本発明により得られる三次元形状を有する光吸収異方性膜の例として模式図を示す。ここで、図2A~図2C中、符号15は光吸収異方性膜を表し、符号20は被着体を表す。
光吸収異方性膜の全体もしくは一部が湾曲していること、光吸収異方性膜の片面もしくは両面に凹凸形状を有することが具体的に例示される。
三次元形状を有することで、偏光素子(偏光板)として、曲面を有する様々な物品に用いることができる。例えば、曲面を有するディスプレイ、サングラスのレンズ、画像表示装置用のゴーグルのレンズ等に用いることができる。本実施形態における偏光板又は円偏光板は、曲面上に偏光板又は円偏光板を貼合したり、樹脂と一体成形することができるため、デザイン性の向上に寄与する。
本発明の製造方法により得られる光吸収異方性膜は、被着体と一体であることが好ましい。一体であることで、光吸収異方性膜の面内均一性を高め、また光吸収異方性膜を備える物品のデザイン性の向上に寄与することができる。
本発明の製造方法により得られた光吸収異方性膜は、例えば、偏光素子(偏光板)として使用できる。例えば、直線偏光板として、また上述のλ/4板とあわせることで円偏光板として使用できる。
本発明の製造方法により得られた光吸収異方性膜は、ヘッドアップディスプレイ等の車載ディスプレイ光学系、AR眼鏡、VR眼鏡等の光学系やLiDAR、顔認証システム、偏光イメージング等の光学センサなどで迷光抑止の目的で用いることも好ましい。また、位相差板と組み合わせて反射防止の目的で用いることも好ましい。
本発明により得られた光吸収異方性膜は、特に有機EL表示パネルおよび無機EL表示パネルに有効に用いることができる。曲率半径の小さい曲面上に直線偏光板または円偏光板を貼合することができるようになるため、表示装置の端や角に湾曲部を有する場合においてもその曲面を覆うように貼合することができ、デザイン性の向上に寄与することができる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容および処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
<配向膜付き基材の作製>
後述する配向膜形成用塗布液PA1を、ワイヤーバーで連続的にアクリル系樹脂フィルム(住友化学株式会社製、S001G)〔以下、「支持体」と略す。〕上に塗布した。
塗膜が形成された支持体を120℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜PA1を形成し、光配向膜付き支持体を得た。
光配向膜PA1の膜厚は1.0μmであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用塗布液PA1の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記重合体PA-1 100.00質量部
・下記酸発生剤TAG-1 5.00質量部
・下記酸発生剤CPI-110TF 0.005質量部
・酢酸ブチル 1073.60質量部
・メチルイソブチルケトン 268.40質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
重合体PA-1
Figure 0007223166000006
酸発生剤TAG-1
Figure 0007223166000007
酸発生剤CPI-110F
Figure 0007223166000008
<塗布光学層P1の形成>
得られた光配向膜PA1上に、下記の液晶組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し、その後100℃で30秒間加熱し溶剤を除去することで、塗布光学層を含む中間積層体M1を形成した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶組成物P1の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記アゾ色素Y-1 0.25質量部
・下記アゾ色素M-1 0.27質量部
・下記アゾ色素C-1 0.65質量部
・下記高分子液晶性化合物P-1 3.59質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.200質量部
・下記界面改良剤F-1 0.013質量部
・シクロペンタノン 47.50質量部
・テトラヒドロフラン 47.50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
アゾ色素Y-1
Figure 0007223166000009
アゾ色素M-1
Figure 0007223166000010
アゾ色素C-1
Figure 0007223166000011
高分子液晶性化合物P-1
Figure 0007223166000012
界面改良剤F-1
Figure 0007223166000013
なお、上記高分子液晶性化合物P-1のネマチック転移温度は、110℃であった。
また、液晶組成物P1を150℃まで加熱して光学顕微鏡で観察したところ、アゾ色素Y-1、M-1、C-1はいずれも溶解していた。したがって、150℃は二色性物質の融点よりも高い温度であった。
<加熱成形工程>
中間積層体M1を曲率半径60mmの球面の一部の形状(凹状)を有する金属板にセットし、縁を挟持した。縁の形状は直径100mmの円状である。金属板を160℃に加熱し、同じ温度に加熱した曲率半径60mmの金属性の球体を押し当て、曲面を成形した。
<配向工程>
次いで、中間積層体M1を150℃(第1温度)で90秒間保持し、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、100℃(第2温度)で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
<硬膜工程>
金属性の球体を取り外した後、LED(light emitting diode)灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cmの照射条件で2秒間照射することにより、実施例1の三次元形状を付与した光吸収異方性膜P1を作製した。
光吸収異方性膜P1の膜厚は0.4μmであった。
[実施例2]
<配向膜付き基材の作製>
後述の配向膜形成用塗布液2を、ワイヤーバーで連続的にTACフィルムTJ40UL(厚み40μm;富士フイルム社製)〔以下、「支持体」と略す。〕上に塗布した。
塗膜が形成された支持体を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜PA2を形成し、光配向膜付きTACフィルムを得た。
光配向膜PA2の膜厚は1.0μmであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用塗布液PA2の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記重合体PA-1 100.00質量部
・上記酸発生剤TAG-1 5.00質量部
・上記酸発生剤CPI-110TF 0.005質量部
・キシレン 1073.60質量部
・メチルイソブチルケトン 268.40質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
得られた光配向膜PA2上に、実施例1と同様に液晶組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し、その後100℃で30秒間加熱し溶剤を除去することで、塗布光学層を含む中間積層体M2を形成した。
得られた中間積層体M2の塗布光学層面側を、粘着剤を介してアクリル系樹脂フィルム(住友化学株式会社製、S001G)に貼合した。その後、支持体(TACフィルム)を除去して中間積層体M2-2を得た。
得られた中間積層体M2-2を加熱成形工程における加工温度を150℃にした以外は実施例1と同様に、加熱成形工程、配向工程、硬膜工程を行い、実施例2の三次元形状を付与した光吸収異方性膜P2を得た。
[比較例1]
実施例1と同様の方法で光配向膜PA1付き支持体を得た。
次いで、得られた光配向膜PA1上に、上記液晶組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し(成膜工程)、その後、150℃で90秒間加熱し、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した。次いで、100℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した(配向工程)。
その後、LED灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cmの照射条件で2秒間照射した(露光工程)。
その後、実施例1と同様の加熱成形工程を行った。以上により比較例1の光吸収異方性膜P3を得た。
[比較例2]
LED灯を用いた露光を行う前に実施例1と同様の加熱成形を行い、次いでLED灯(中心波長365nm)を用いて照度200mW/cmの照射条件で2秒間照射したこと以外は比較例1と同様にして、比較例2の光吸収異方性膜P4を得た。
なお、光吸収異方性膜P1~P4のいずれもが、意図した三次元形状が付与できていた。
<配向度の評価>
光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に実施例および比較例の各積層体をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて、400~700nmの波長域における積層体の吸光度を測定し、以下の式により配向度を算出したうえで、以下の評点をつけた。
配向度:S=[(Az0/Ay0)-1]/[(Az0/Ay0)+2]
Az0:積層体の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:積層体の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
A:配向度が0.95以上であった。
B:配向度が0.90以上かつ0.95未満であった。
C:配向度が0.20以上かつ0.90未満であった。
D:配向度は0.20未満であった。
結果を下記表1に示す。
Figure 0007223166000014
実施例1および実施例2より、加熱成形工程後に配向工程と露光工程をこの順に備えた製造方法により、3次元形状を有する配向性に優れた光吸収異方性膜が得られた。
一方、比較例1および比較例2により、配向工程後に加熱成形工程を備えた製造方法においては、3次元形状は付与されていたものの、得られた光吸収異方膜は十分に配向していなかった。
10 中間積層体
11 基材
12 配向膜
13 塗布光学膜
15 光吸収異方性膜
20 被着体

Claims (4)

  1. 光吸収異方性膜の製造方法であって、
    液晶性化合物および二色性物質を含有する液晶組成物を用いて形成される塗布光学膜と、配向膜と、を有する中間積層体を製造する成膜工程と、
    前記成膜工程により製造された中間積層体を加熱し、三次元形状を付与する加熱成形工程と、
    前記加熱成形工程により三次元形状が付与された中間積層体における塗布光学膜に含まれる液晶性成分を配向させ、光吸収異方性膜を製造する配向工程と、
    前記配向工程により製造された光吸収異方性膜を硬化させる硬化工程と、を備える光吸収異方性膜の製造方法。
  2. 前記配向工程が、前記中間積層体を前記二色性物質の融点よりも高い第1温度とする第1工程と、前記液晶性化合物のネマチック転移温度よりも低い第2温度とする第2工程とをこの順に備える、請求項1に記載の光吸収異方性膜の製造方法。
  3. 前記加熱成形工程が、前記配向工程における前記第2温度よりも高い温度で成形を行う工程である、請求項2に記載の光吸収異方性膜の製造方法。
  4. 前記成膜工程と、前記加熱成形工程との間に、転写工程を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の光吸収異方性膜の製造方法。
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