[第1実施形態]
図1および図2において、乳房撮影装置10は、本開示の技術に係る「トモシンセシス撮影装置」の一例であり、被検者Hの乳房Mを被写体とする。乳房撮影装置10は、乳房MにX線、γ線といった放射線36(図3等参照)を照射して、乳房Mの放射線画像を撮影する。
乳房撮影装置10は、装置本体11と制御装置12とで構成される。装置本体11は、例えば医療施設の放射線撮影室に設置される。制御装置12は、例えば放射線撮影室の隣室の制御室に設置される。制御装置12は、例えばデスクトップ型のパーソナルコンピュータである。制御装置12は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク13を介して、画像データベース(以下、DB;Data Base)サーバ14と通信可能に接続されている。画像DBサーバ14は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)サーバであり、乳房撮影装置10から放射線画像を受信し、放射線画像を蓄積管理する。
ネットワーク13には、端末装置15も接続されている。端末装置15は、例えば、放射線画像に基づく診療を行う医師が使用するパーソナルコンピュータである。端末装置15は、画像DBサーバ14から放射線画像を受信し、放射線画像をディスプレイに表示する。
装置本体11は、スタンド20とアーム21とを有する。スタンド20は、放射線撮影室の床面に設置される台座20Aと、台座20Aから高さ方向に延びる支柱20Bとで構成される。アーム21は横から見た形状が略C字状であり、接続部21Aを介して、支柱20Bに接続されている。この接続部21Aにより、アーム21は支柱20Bに対して高さ方向に移動可能で、被検者Hの身長に応じた高さ調節が可能となっている。また、アーム21は、接続部21Aを貫く、支柱20Bに垂直な回転軸回りに回転可能である。
アーム21は、線源収容部22、検出器収容部23、および本体部24で構成される。線源収容部22は放射線源25を収容する。検出器収容部23は放射線検出器26を収容する。また、検出器収容部23は、乳房Mが載せられる撮影台としても機能する。本体部24は、線源収容部22と検出器収容部23とを一体的に接続する。線源収容部22は高さ方向の上側に配されており、検出器収容部23は、線源収容部22と対向する姿勢で、高さ方向の下側に配されている。
放射線源25は、複数、例えば15個の放射線管27と、放射線管27を収容するハウジング28とで構成される。ハウジング28内は、絶縁油で満たされている。放射線管27は、乳房Mに対する照射角度が異なる複数の投影画像P(図6参照)を放射線画像として撮影するトモシンセシス撮影に用いられる。放射線検出器26は、乳房Mを透過した放射線36を検出して放射線画像を出力する。なお、放射線管27の個数は、上記例の15個に限らない。
なお、図示は省略したが、線源収容部22には、放射線源25に加えて照射野限定器も収容されている。照射野限定器はコリメータとも呼ばれ、放射線検出器26の撮像面35(図3参照)における放射線36の照射野を規定する。
本体部24の線源収容部22と検出器収容部23との間には、圧迫板29が取り付けられている。圧迫板29は、放射線36を透過する材料で形成されている。圧迫板29は、検出器収容部23と対向配置されている。圧迫板29は、検出器収容部23に向かう方向と検出器収容部23から離間する方向とに移動可能である。圧迫板29は、検出器収容部23に向かって移動して、検出器収容部23との間で乳房Mを挟み込んで圧迫する。
線源収容部22の正面下部には、フェイスガード30が取り付けられている。フェイスガード30は、被検者Hの顔を放射線36から防護する。
支柱20B内には、放射線管27に印加する管電圧を発生する管電圧発生器(図示せず)が設けられている。また、支柱20B内には、管電圧発生器から延びる電圧ケーブル(図示せず)が配設されている。電圧ケーブルは、さらに接続部21Aからアーム21を通って線源収容部22内に導入され、放射線源25に接続される。
検出器収容部23の部分を示す図3において、放射線検出器26は撮像面35を有する。撮像面35は、乳房Mを透過した放射線36を検出して乳房Mの投影画像Pを撮像する面である。より詳しくは、撮像面35は、放射線36を電気信号に変換する画素が二次元配列された二次元平面である。このような放射線検出器26は、FPD(Flat Panel Detector)と呼ばれる。放射線検出器26は、放射線36を可視光に変換するシンチレータを有し、シンチレータが発する可視光を電気信号に変換する間接変換型でもよいし、放射線36を直接電気信号に変換する直接変換型でもよい。
図4および図5は、乳房撮影装置10における乳房Mの撮影方式を示す。図4は頭尾方向(CC;Craniocaudal view)撮影、図5は内外斜位方向(MLO;Mediolateral Oblique view)撮影である。CC撮影は、検出器収容部23と圧迫板29とで、乳房Mを上下に挟み込んで圧迫して撮影する撮影方式である。この場合、放射線検出器26は、投影画像PとしてCC画像を出力する。対してMLO撮影は、検出器収容部23と圧迫板29とで、乳房Mを60°程度の角度で斜めに挟み込んで圧迫して撮影する撮影方式である。この場合、放射線検出器26は、投影画像PとしてMLO画像を出力する。なお、図4および図5では、簡単化のために1個の放射線管27だけを図示している。また、図4および図5では、右の乳房Mを示しているが、もちろん左の乳房Mの撮影も可能である。
支柱20B側から放射線源25および放射線検出器26を平面視した図6において、撮像面35の法線方向をZ方向、撮像面35の辺に沿う方向をX方向、Z方向およびX方向と直交する撮像面35の奥行方向をY方向とする。放射線管27は、撮像面35に対する放射線36の照射角度が異なる計15箇所の位置SP1、SP2、・・・、SP14、SP15に配置されている。各位置SP1~SP15における放射線管27の放射線36の焦点F1~F15は、直線状に、等しい間隔で並んでいる。
X方向の撮像面35の辺の中心点CPから延びる撮像面35の法線NRに、位置SP8が配されている。位置SP8以外の他の位置は、法線NRの左側に位置SP1~SP7、法線NRの右側に位置SP9~SP15というように、法線NRに関して左右対称に設定されている。すなわち、位置SP1~SP7の放射線管27と位置SP9~SP15の放射線管27とは、線対称な位置に配置されている。
ここで、直線状に並んだ焦点F1~F15を結ぶ、位置SP1~SP15が設定される直線GLは、放射線源25および放射線検出器26をZ方向から平面視した場合に、X方向の撮像面35の辺と平行な線である。直線GLは、Y方向に関して、手前側(支柱20Bとは反対側)にオフセットされている。なお、焦点F1~F15の間隔は、完全に一致する場合に限らず、例えば±5%の誤差を許容する。
放射線36の照射角度は、法線NRと、各位置SP1~SP15における放射線管27の放射線36の焦点F1~F15および中心点CPを結んだ線とのなす角度である。このため、法線NRと一致する位置SP8における照射角度は0°である。図6では、位置SP1における焦点F1および中心点CPを結んだ線L1、および法線NRと線L1とのなす角度である照射角度θ(1)を、一例として図示している。
符号Ψで示す角度は、トモシンセシス撮影の最大スキャン角度である。最大スキャン角度Ψは、位置SP1~SP15のうちの両端の位置SP1、SP15で規定される。具体的には、最大スキャン角度Ψは、位置SP1における焦点F1および中心点CPを結んだ線L1と、位置SP15における焦点F15および中心点CPを結んだ線L15とのなす角度である。
通常の1回のトモシンセシス撮影においては、各位置SP1~SP15の放射線管27が各々動作されて、各位置SP1~SP15から乳房Mに向けて放射線36が照射される。放射線検出器26は、各位置SP1~SP15において照射された放射線36をその都度検出し、各位置SP1~SP15における投影画像Pを出力する。トモシンセシス撮影は、図4で示したCC撮影、および図5で示したMLO撮影の両撮影方式でそれぞれ行うことが可能である。なお、図4で示したCC撮影、および図5で示したMLO撮影を単独で行う単純撮影の場合は、照射角度が0°の位置SP8に配置された放射線管27のみが動作される。
図7に示すように、乳房撮影装置10は、通常、図6で示したトモシンセシス撮影で得られた、複数の位置SP1~SP15における複数の投影画像Pから、乳房Mの任意の断層面TF1~TFNに対応する断層画像T1~TNを生成する。乳房撮影装置10は、断層画像T1~TNの生成に、フィルタ補正逆投影法等の周知の方法を用いる。断層画像T1~TNは、各断層面TF1~TFNのそれぞれに存在する構造物を強調した画像である。この断層画像TのSN比を向上させるために、隣接する放射線管27同士は、例えば数cm~数十cmの距離で近接して配置されている。
図8に示すように、放射線源25を構成する15個の放射線管27のそれぞれは、陰極40、陽極41、および容器42を有する。陰極40は電子を放出する。陰極40は冷陰極である。より詳しくは、陰極40は、電界放出現象を利用して、陽極41に向けて電子線63(図10参照)を放出する電子放出源を有する電界放出型である。陽極41は電子が衝突して放射線36を発する。
各放射線管27は、陽極41側の一端が共通基板45に支持されている。共通基板45は、X方向に長い1枚の平板である。共通基板45は、導電性が比較的高く、かつ熱伝導性も比較的高い金属、例えば銅等で形成されている。共通基板45は、各放射線管27を配列した状態で保持する。共通基板45には、X方向に等しい間隔D_Aで、陽極41が配列されている。すなわち、陽極41は、回転機構により回転する回転陽極とは異なり、回転せずに位置が固定された固定陽極である。
図9に示すように、共通基板45は、放射線管27が取り付けられる側の面である第1面50に、陽極ベース部51を有している。陽極ベース部51には、陽極41が配されている。陽極41は、例えばモリブデン、タングステン、ロジウム等である。このように、共通基板45と陽極41とは、陽極ベース部51を介して電気的および熱的に接続されている。
第1面50には、陽極ベース部51の周囲を取り囲むように、円環状の溝52が形成されている。このため、陽極ベース部51は略円柱状とされている。溝52は、例えばルーター等で形成される。溝52の外周面の一部には、規制溝53が設けられている。
容器42は、例えばセラミックで形成されており、鋳込み成形により作製される。容器42は、両側が開放端54、55となった円筒状をしている。容器42の一端54の外周面の一部には、溝52の規制溝53に対応する規制突起56が設けられている。容器42は、規制溝53に規制突起56が入るよう、その挿入向きが規制されつつ、一端54が溝52に嵌合される。すなわち、規制溝53および規制突起56は、本開示の技術に係る「第1規制部」の一例である。なお、溝52の外周面の一部に規制突起56、容器42の一端54の外周面の一部に規制溝53を設けてもよい。また、規制溝53および規制突起56の一方を陽極ベース部51の外周面に、規制溝53および規制突起56の他方を容器42の内周面にそれぞれ設けてもよい。
一方、容器42の他端55には、陰極40が取り付けられる。より詳しくは、他端55の内周面には、円環状の受け部57が設けられている。そして、この受け部57に、陰極40の円板状の取り付け部58が突き当てられ、取り付け部58により他端55の開口が塞がれることで、他端55に陰極40が取り付けられる。なお、取り付け部58の外周面に雄ネジ、容器42の他端55の内周面に雌ネジをそれぞれ形成し、取り付け部58を容器42の他端55に螺合することで、他端55に陰極40を取り付けてもよい。
図10において、陰極40は、半導体基板60上にエミッタ電極61とゲート電極62とが設けられた構造である。半導体基板60は、例えば結晶化シリコンである。エミッタ電極61は、ゲート電極62と接続されている。エミッタ電極61は、電子線63の放出エリアとして機能する。すなわち、エミッタ電極61は、本開示の技術に係る「電子放出源」の一例である。
エミッタ電極61およびゲート電極62の周囲には、集束電極64が設けられている。この集束電極64に集束電圧を印加することで、エミッタ電極61が放出する電子線63が陽極41に向けて加速され、かつ、電子線63が集束される。
陰極40と陽極41との間には、管電圧発生器からの管電圧が印加される。特に陽極41には、電気的に接続された共通基板45を介して管電圧が印加される。
管電圧の印加により、陰極40から陽極41に向けて電子線63が放出される。そして、電子線63が衝突した陽極41の部分、すなわち焦点Fから、放射線36が発せられる。
陽極41が配される、陰極40と対向する陽極ベース部51の面65は、第1面50に対して角度η傾いている。このため、放射線36は、容器42の一部に設けられた放射線透過窓66を通じて、放射線管27の下方に照射される。角度ηは、例えば16°~23°である。放射線透過窓66は、例えばベリリウムで形成されている。なお、前述の規制溝53および規制突起56は、放射線透過窓66を図10に示す規定の位置とするために設けられている。
丸囲い67内に拡大して示すように、容器42の他端55の開口縁と、陰極40の取り付け部58の外周縁は、全周にわたってろう68で接合、つまりろう付けされている。また、丸囲い69内に拡大して示すように、第1面50を臨む容器42の一端54の外周縁と、溝52の外周縁も、全周にわたってろう68で接合されている。ろう68は、例えば銀、ニッケル、ニッケルコバルト合金等を材料とする。
図11に示すように、溝52の内周面70は、容器42の一端54の内周面71と接触する。これにより、XZ平面における、陽極41に対する陰極40の位置が規定される。また、溝52の底面72には、容器42の一端54が突き当てられる。これにより、陽極41に対する陰極40のY方向の距離が規定される。溝52の底面72は、陽極41に対する陰極40のY方向の距離を規定値とするために、エンドミル等で平面加工が施されている。このように、溝52の内周面70および底面72は、複数の放射線管27のそれぞれの陰極40と陽極41の位置関係を規定する。すなわち、溝52の内周面70および底面72は、本開示の技術に係る「第1基準面」の一例である。また、溝52は、本開示の技術に係る「位置決め部」の一例である。このため、本第1実施形態においては、共通基板45および溝52によって、本開示の放射線管取付部材が構成される。なお、溝52の外周面73と容器42の一端54の外周面74とが接触してもよい。また、溝52の内周面70と容器42の一端54の内周面71、並びに溝52の外周面73と容器42の一端54の外周面74の両方が接触してもよい。
図12は、放射線源25の製造手順を示すフローチャートである。まず、ルーター、エンドミル等を用いた機械加工により、放射線管27の個数分の陽極ベース部51および溝52を共通基板45の母材に形成する(ステップST100)。次いで、陽極ベース部51に、等しい間隔D_Aで陽極41を配列し、共通基板45を作製する(ステップST110)。
続いて、容器42に陰極40を取り付ける(ステップST120)。また、溝52に容器42の一端54を嵌合し、共通基板45に容器42を取り付ける(ステップST130)。なお、ステップST120とステップST130の手順を逆にし、溝52に容器42の一端54を嵌合した後、容器42に陰極40を取り付けてもよい。
その後、容器42と陰極40の接合部分、容器42と共通基板45の接合部分にろう68を塗布する(ステップST140)。容器42と陰極40の接合部分は、容器42の他端55の開口縁と、陰極40の取り付け部58の外周縁である。容器42と共通基板45の接合部分は、第1面50を臨む容器42の一端54の外周縁と、溝52の外周縁である。
ろう68の塗布後、陰極40および容器42が取り付けられた状態の共通基板45を真空炉にセットし(ステップST150)、真空引きする(ステップST160)。そして、予め設定された真空度、例えば1×10-6Paにて、ろう付け温度まで真空炉内を加熱し、真空ろう付けを行う(ステップST170)。放置冷却後、陰極40が容器42に、容器42が共通基板45にそれぞれ真空ろう付けされた共通基板45を真空炉から取り出し、ハウジング28内に設置する(ステップST180)。こうして放射線源25が製造される。
以上説明したように、放射線管取付部材は、共通基板45と、位置決め部としての溝52とを備える。共通基板45は、複数の放射線管27のそれぞれの一端側、ここでは陽極41側を支持し、複数の放射線管27を配列した状態で保持する。溝52は、複数の放射線管27のそれぞれの焦点Fを、目標位置に位置決めする。このため、共通基板45が複数の放射線管27のそれぞれの焦点Fの位置の基準となり、基準がなく闇雲に個々の放射線管27を位置決めする場合と比べて、複数の放射線管27のそれぞれの焦点Fの位置決めがしやすい。したがって、複数の放射線管27のそれぞれの焦点Fの位置ずれを抑制することが可能となる。結果として、適切な断層画像Tを生成することができる。
また、複数の放射線管27のそれぞれの焦点Fの位置ずれを抑制することが可能となるため、場合によっては、焦点Fの位置ずれのキャリブレーションを、両端の位置SP1、SP15に配された放射線管27に限定して行い、その結果を位置SP2~SP14に配された他の放射線管27に反映させることで済ませることができる。つまり、焦点Fの位置ずれのキャリブレーションを、比較的短時間で済ませることができる可能性がある。
共通基板45と陽極41は、電気的および熱的に接続されている。したがって、共通基板45を、陽極41に管電圧を印加するためのバスバーとして機能させることができる。各放射線管27の陽極41が同電位となるため、各放射線管27を同じ条件で駆動させることができ、各放射線管27の駆動を安定化させることができる。また、管電圧を印加したことで生じた陽極41の駆動熱を、共通基板45から効果的に放熱することができる。このため、陽極41の駆動熱で放射線管27が耐用温度に達し、撮影を中断せざるを得なくなる機会が減り、また、各放射線管27の照射間隔を短くすることができ、撮影を円滑に進めることができる。
本第1実施形態においては、位置決め部は、陽極ベース部51の周囲に形成され、容器42の一端54が嵌合される溝52である。そして、溝52の内周面70は、容器42の一端54の内周面70と接触し、溝52の底面72には、容器42の一端54が突き当てられる。溝52の内周面70および底面72が、複数の放射線管27のそれぞれの陰極40と陽極41の位置関係を規定する第1基準面として機能する。したがって、複数の放射線管27のそれぞれの焦点Fの位置ずれを、より確実に抑制することが可能となる。
溝52に対する容器42の一端54の挿入向きを規制する第1規制部としての規制溝53および規制突起56を有する。したがって、挿入向きを間違えることなく、容器42の一端54を溝52に嵌合させることができる。
放射線管27は、電界放出型の陰極40を有している。電界放出型の陰極40は、熱電子を放出するフィラメント構造の陰極よりも遥かに発熱量が小さい。このため放熱構造が不要で、小型化が可能である。したがって、限られたハウジング28内のスペースに、より多くの放射線管27を配することができる。より多くの放射線管27を配することができれば、トモシンセシス撮影においてより多くの投影画像Pを得ることができる。これにより、断層画像Tの生成に用いる画像情報量が多くなるので、断層画像Tの高画質化に貢献することができる。
なお、図13に示すように、溝52の外周縁の一部に、規制溝53の代わりにマーク80を形成し、容器42の一端54の外周面の一部に、規制突起56の代わりにマーク81を形成してもよい。マーク80、81は、溝52に対する容器42の一端54の挿入向きを示す。この場合、容器42は、図14に示すように、マーク80とマーク81が一致するよう、その挿入向きが規制されつつ、一端54が溝52に嵌合される。すなわち、マーク80、81は、本開示の技術に係る「第1マーク」の一例である。こうした構成によっても、挿入向きを間違えることなく、容器42の一端54を溝52に嵌合させることができる。
また、図15に示すように、溝52の内周面70に雄ネジ85、容器42の一端54の内周面71に雌ネジ86をそれぞれ形成する。そして、雄ネジ85と雌ネジ86を螺合することで、容器42の一端54を共通基板45に取り付けてもよい。この場合も、雄ネジ85が形成された溝52の内周面70は、雌ネジ86が形成された容器42の一端54の内周面71と接触し、溝52の底面72には、容器42の一端54が突き当てられる。したがってこの場合も、溝52の内周面70および底面72が第1基準面として機能する。
[第2実施形態]
図16~図27に示す第2実施形態では、共通基板の第1面から1段突出した凸部を、陽極ベース部とする。
図16に示すように、共通基板90の陽極ベース部91は、第1面92から1段突出した略円柱状の凸部である。陽極ベース部91は、放射線管27の個数分、機械加工により共通基板90に一体的に形成されている。陽極ベース部91の外周面の一部には、規制溝93が設けられている。対して、容器42の一端54の内周面の一部には、陽極ベース部91の規制溝93に対応する規制突起94が設けられている。容器42は、規制溝93に規制突起94が入るよう、その挿入向きが規制されつつ、一端54が陽極ベース部91に嵌合される。すなわち、規制溝93および規制突起94は、本開示の技術に係る「第2規制部」の一例である。なお、陽極ベース部91の外周面の一部に規制突起94、容器42の一端54の内周面の一部に規制溝93を設けてもよい。
図17に示すように、上記第1実施形態と同じく、陽極41が配される、陰極40と対向する陽極ベース部91の面100は、第1面92に対して角度η傾いており、放射線36は、放射線透過窓66を通じて、放射線管27の下方に照射される。規制溝93および規制突起94は、放射線透過窓66を図17に示す規定の位置とするために設けられている。また、丸囲い101内に拡大して示すように、第1面92を臨む容器42の一端54の外周縁と、第1面92は、全周にわたってろう68で接合されている。
図18に示すように、陽極ベース部91の外周面105は、容器42の一端54の内周面71と接触する。これにより、XZ平面における、陽極41に対する陰極40の位置が規定される。また、第1面92には、容器42の一端54が突き当てられる。これにより、陽極41に対する陰極40のY方向の距離が規定される。第1面92は、陽極41に対する陰極40のY方向の距離を規定値とするために、エンドミル等で平面加工が施されている。このように、陽極ベース部91の外周面105および第1面92は、複数の放射線管27のそれぞれの陰極40と陽極41の位置関係を規定する。すなわち、陽極ベース部91の外周面105および第1面92は、本開示の技術に係る「第1基準面」の一例である。また、陽極ベース部91は、本開示の技術に係る「位置決め部」の一例である。このため、本第2実施形態においては、共通基板90および陽極ベース部91によって、本開示の放射線管取付部材が構成される。
このように、第2実施形態では、陽極ベース部91は、第1面92から1段突出した凸部であり、陽極ベース部91に容器42の一端54が嵌合される。陽極ベース部91の外周面105は、容器42の一端54の内周面71と接触し、第1面92には、容器42の一端54が突き当てられる。陽極ベース部91の外周面105および第1面92が、複数の放射線管27のそれぞれの陰極40と陽極41の位置関係を規定する第1基準面として機能する。したがって、上記第1実施形態と同じく、複数の放射線管27のそれぞれの焦点Fの位置ずれを、より確実に抑制することが可能となる。また、容器42の一端54が突き当てられる第1面92の平面加工が、上記第1実施形態の溝52の底面72よりも行いやすい。
陽極ベース部91に対する容器42の一端54の挿入向きを規制する第2規制部としての規制溝93および規制突起94を有する。したがって、挿入向きを間違えることなく、容器42の一端54を陽極ベース部91に嵌合させることができる。
なお、図19に示すように、陽極ベース部91の周囲の第1面92の一部に、規制溝93の代わりにマーク107を形成し、容器42の一端54の外周面の一部に、規制突起94の代わりにマーク108を形成してもよい。マーク107、108は、陽極ベース部91に対する容器42の一端54の挿入向きを示す。この場合、容器42は、図20に示すように、マーク107とマーク108が一致するよう、その挿入向きが規制されつつ、一端54が陽極ベース部91に嵌合される。すなわち、マーク107、108は、本開示の技術に係る「第2マーク」の一例である。こうした構成によっても、挿入向きを間違えることなく、容器42の一端54を陽極ベース部91に嵌合させることができる。
また、図21に示すように、陽極ベース部91の外周面105に雄ネジ110、容器42の一端54の内周面71に雌ネジ111をそれぞれ形成する。そして、雄ネジ110と雌ネジ111を螺合することで、容器42の一端54を共通基板90に取り付けてもよい。この場合も、雄ネジ110が形成された陽極ベース部91の外周面105は、雌ネジ111が形成された容器42の一端54の内周面71と接触し、第1面92には、容器42の一端54が突き当てられる。したがってこの場合も、陽極ベース部91の外周面105および第1面92が第1基準面として機能する。
図22に示すように、第1面から1段突出した陽極ベース部を別体としてもよい。
図22において、共通基板115は、基板本体116と、基板本体116とは別体の陽極ベース部117とで構成される。基板本体116は、X方向に長い1枚の平板である。陽極ベース部117は、基板本体116の第1面118上に取り付けられる。より詳しくは、丸囲い119内に拡大して示すように、第1面118を臨む陽極ベース部117の外周縁と、第1面118は、全周にわたってろう68で接合される。これにより、陽極ベース部117は、第1面118から1段突出した凸部となる。なお、容器42の一端54には、ろう68を避けるための切欠き120が全周にわたって形成されている。
陽極ベース部117には突起121、基板本体116には突起121に対応する溝122がそれぞれ形成されている。溝122に突起121を嵌合することで、基板本体116に陽極ベース部117が取り付けられる。
図23に示すように、溝122は、X方向に等しい間隔D_Gで形成される。また、図24に示すように、突起121は、陽極ベース部117および陽極41の中心CP_Bに形成される。結果的に、陽極41は、X方向に等しい間隔D_Gで配列されることになる。すなわち、溝122の周面123(図22参照)が、複数の放射線管27のそれぞれの陽極41の間隔を規定する第2基準面として機能する。なお、陽極ベース部117に溝122、基板本体116に突起121を形成してもよい。この場合は、突起121の周面が第2基準面として機能する。
図25は、図22で示したろう付けの代わりに、基板本体116に陽極ベース部117をネジ止めする例である。すなわち、基板本体116には第1ネジ穴125、陽極ベース部117には第1ネジ穴125に対応する第2ネジ穴126がそれぞれ形成されている。そして、第1ネジ穴125および第2ネジ穴126にネジ127が螺合されることで、基板本体116に陽極ベース部117が取り付けられる。
図26に示すように、第1ネジ穴125は、X方向に等しい間隔D_Sで形成される。また、図27に示すように、第2ネジ穴126は、陽極ベース部117および陽極41の中心CP_Bに形成される。結果的に、陽極41は、X方向に等しい間隔D_Sで配列されることになる。すなわち、第1ネジ穴125の周面128(図25参照)および第2ネジ穴126の周面129(図25参照)が、複数の放射線管27のそれぞれの陽極41の間隔を規定する第2基準面として機能する。
図25に示す例では、放射線管27の取り付け方に2通りのパターンがある。第1のパターンは、図28に示すように、陽極ベース部117を基板本体116に取り付けた後、容器42の一端54を陽極ベース部117に嵌合するパターンである。この第1のパターンは、陽極ベース部117が別体である以外は、図16~図18で示した例と同じ取り付け方である。
一方、第2のパターンは、図29に示すように、陰極40および陽極ベース部117が取り付けられた状態の容器42の一端54を、基板本体116に取り付けるパターンである。この場合、陰極40と陽極41の位置関係は、各容器42において正しく規定されている。また、丸囲い130内に拡大して示すように、容器42の一端54の開口縁と、陽極ベース部117の外周縁は、全周にわたってろう68で接合される。さらに、丸囲い131内に拡大して示すように、基板本体116の第1面118には、ろう68を避けるための切欠き132が全周にわたって形成されている。
このように、共通基板115を基板本体116と陽極ベース部117とで構成し、陰極40および陽極ベース部117が取り付けられた状態の容器42を、基板本体116に取り付けてもよい。こうすれば、既存の放射線管27の陽極ベース部117に第2ネジ穴126を形成することで、既存の放射線管27を流用することも可能となる。ただし、放射線管27において、陰極40と陽極41の位置関係が正しく規定されていることが前提である。
なお、容器42の一端54に陽極ベース部117を取り付ける方法は、上記例のろう付けに限らない。図21で示した態様を採用し、陽極ベース部117の外周面に雄ネジ110、容器42の一端54の内周面71に雌ネジ111をそれぞれ形成し、雄ネジ110と雌ネジ111を螺合することで、容器42の一端54に陽極ベース部117を取り付けてもよい。
図22~図29で示した例においては、共通基板115および陽極ベース部117によって、本開示の放射線管取付部材が構成される。
[第3実施形態]
図30~図39に示す第3実施形態では、共通基板の第1面から先端に向かって階段状となった凸部を、陽極ベース部とする。
図30に示すように、共通基板140の陽極ベース部141は、第1面142から2段突出した積層円柱状の凸部である。より詳しくは、陽極ベース部141は、第1面142側に設けられた大径部143と、先端側に設けられた小径部144とを有する。小径部144は、大径部143よりも平面視したサイズが小さい。大径部143および小径部144は、中心を同じくする。大径部143は、小径部144とのサイズ差によって生じた段差面145を有する。段差面145は第1面142と平行である。大径部143は、本開示の技術に係る「大サイズ部」の一例であり、小径部144は、本開示の技術に係る「小サイズ部」の一例である。
陽極ベース部141は、放射線管27の個数分、機械加工により共通基板140に一体的に形成されている。小径部144の外周面の一部には、規制溝146が設けられている。対して、容器42の一端54の内周面の一部には、小径部144の規制溝146に対応する規制突起147が設けられている。容器42は、規制溝146に規制突起147が入るよう、その挿入向きが規制されつつ、一端54が小径部144に嵌合される。すなわち、規制溝146および規制突起147は、本開示の技術に係る「第3規制部」の一例である。なお、小径部144の外周面の一部に規制突起147、容器42の一端54の内周面の一部に規制溝146を設けてもよい。
図31に示すように、上記第1実施形態および上記第2実施形態と同じく、陽極41が配される、陰極40と対向する陽極ベース部141の面150は、第1面142に対して角度η傾いており、放射線36は、放射線透過窓66を通じて、放射線管27の下方に照射される。規制溝146および規制突起147は、放射線透過窓66を図31に示す規定の位置とするために設けられている。また、丸囲い151内に拡大して示すように、段差面145を臨む容器42の一端54の外周縁と、段差面145は、全周にわたってろう68で接合されている。
図32に示すように、小径部144の外周面155は、容器42の一端54の内周面71と接触する。これにより、XZ平面における、陽極41に対する陰極40の位置が規定される。また、大径部143の段差面145には、容器42の一端54が突き当てられる。これにより、陽極41に対する陰極40のY方向の距離が規定される。段差面145は、陽極41に対する陰極40のY方向の距離を規定値とするために、エンドミル等で平面加工が施されている。このように、小径部144の外周面155および大径部143の段差面145は、複数の放射線管27のそれぞれの陰極40と陽極41の位置関係を規定する。すなわち、小径部144の外周面155および大径部143の段差面145は、本開示の技術に係る「第1基準面」の一例である。また、小径部144は、本開示の技術に係る「位置決め部」の一例である。このため、本第3実施形態においては、共通基板140および小径部144を含む陽極ベース部141によって、本開示の放射線管取付部材が構成される。
このように、第3実施形態では、陽極ベース部141は、第1面142から先端に向かって階段状となった凸部であり、第1面142側に設けられた大径部143と、先端側に設けられた小径部144とを有する。そして、小径部144に容器42の一端54が嵌合される。小径部144の外周面155は、容器42の一端54の内周面71と接触し、大径部143の段差面145には、容器42の一端54が突き当てられる。小径部144の外周面155および大径部143の段差面145が、複数の放射線管27のそれぞれの陰極40と陽極41の位置関係を規定する第1基準面として機能する。したがって、上記第1実施形態および上記第2実施形態と同じく、複数の放射線管27のそれぞれの焦点Fの位置ずれを、より確実に抑制することが可能となる。また、上記第2実施形態では、第1面92、118の全体に平面加工を施す必要があるが、本第3実施形態では、段差面145に対してのみ平面加工を施せば済むので、平面加工の手間を省くことができる。
小径部144に対する容器42の一端54の挿入向きを規制する第3規制部としての規制溝146および規制突起147を有する。したがって、挿入向きを間違えることなく、容器42の一端54を小径部144に嵌合させることができる。
なお、図33に示すように、大径部143の段差面145の一部に、規制溝146の代わりにマーク160を形成し、容器42の一端54の外周面の一部に、規制突起147の代わりにマーク161を形成してもよい。マーク160、161は、小径部144に対する容器42の一端54の挿入向きを示す。この場合、容器42は、図34に示すように、マーク160とマーク161が一致するよう、その挿入向きが規制されつつ、一端54が小径部144に嵌合される。すなわち、マーク160、161は、本開示の技術に係る「第3マーク」の一例である。こうした構成によっても、挿入向きを間違えることなく、容器42の一端54を小径部144に嵌合させることができる。
また、図35に示すように、小径部144の外周面155に雄ネジ165、容器42の一端54の内周面71に雌ネジ166をそれぞれ形成する。そして、雄ネジ165と雌ネジ166を螺合することで、容器42の一端54を共通基板140に取り付けてもよい。この場合も、雄ネジ165が形成された小径部144の外周面155は、雌ネジ166が形成された容器42の一端54の内周面71と接触し、大径部143の段差面145には、容器42の一端54が突き当てられる。したがってこの場合も、小径部144の外周面155および大径部143の段差面145が第1基準面として機能する。
本第3実施形態においても、上記第2実施形態の図22で示した態様と同様に、第1面から2段突出した陽極ベース部を別体としてもよい。具体的には図36に示すように、共通基板170を、基板本体171と、基板本体171とは別体の陽極ベース部172とで構成する。基板本体171は、X方向に長い1枚の平板である。陽極ベース部172は、図30等で示した陽極ベース部141と同じく、大径部173と小径部174で構成される。大径部173は、容器42の一端54が突き当てられる段差面175を有する。陽極ベース部172は、基板本体171の第1面176上に取り付けられる。より詳しくは、丸囲い177内に拡大して示すように、第1面176を臨む陽極ベース部172の外周縁と、第1面176は、全周にわたってろう68で接合される。これにより、陽極ベース部172は、第1面176から2段突出した凸部となる。
陽極ベース部172には突起178、基板本体171には突起178に対応する溝179がそれぞれ形成されている。溝179に突起178を嵌合することで、基板本体171に陽極ベース部172が取り付けられる。
溝179は、溝122と同様に、X方向に等しい間隔で形成される。また、突起178は、突起121と同様に、陽極ベース部172および陽極41の中心に形成される。結果的に、陽極41は、X方向に等しい間隔で配列されることになる。すなわち、溝179の周面180が、複数の放射線管27のそれぞれの陽極41の間隔を規定する第2基準面として機能する。なお、陽極ベース部172に溝179、基板本体171に突起178を形成してもよい。この場合は、突起178の周面が第2基準面として機能する。
図37は、上記第2実施形態の図25で示した態様と同様に、図36で示したろう付けの代わりに、基板本体171に陽極ベース部172をネジ止めする例である。すなわち、基板本体171には第1ネジ穴181、陽極ベース部172には第1ネジ穴181に対応する第2ネジ穴182がそれぞれ形成されている。そして、第1ネジ穴181および第2ネジ穴182にネジ183が螺合されることで、基板本体171に陽極ベース部172が取り付けられる。
第1ネジ穴181は、第1ネジ穴125と同様に、X方向に等しい間隔で形成される。また、第2ネジ穴182は、第2ネジ穴126と同様に、陽極ベース部172および陽極41の中心に形成される。結果的に、陽極41は、X方向に等しい間隔で配列されることになる。すなわち、第1ネジ穴181の周面184および第2ネジ穴182の周面185が、複数の放射線管27のそれぞれの陽極41の間隔を規定する第2基準面として機能する。
図37に示す例では、図25で示した例と同じく、放射線管27の取り付け方に2通りのパターンがある。第1のパターンは、図38に示すように、陽極ベース部172を基板本体171に取り付けた後、容器42の一端54を小径部174に嵌合するパターンである。この第1のパターンは、陽極ベース部172が別体である以外は、図30~図32で示した例と同じ取り付け方である。
一方、第2のパターンは、図39に示すように、陰極40および陽極ベース部172が取り付けられた状態の容器42の一端54を、基板本体171に取り付けるパターンである。この場合、丸囲い187内に拡大して示すように、段差面175を臨む容器42の一端54の外周縁と、段差面175は、全周にわたってろう68で接合される。
なお、容器42の一端54に陽極ベース部172を取り付ける方法は、上記例のろう付けに限らない。図35で示した態様を採用し、小径部174の外周面に雄ネジ165、容器42の一端54の内周面71に雌ネジ166をそれぞれ形成し、雄ネジ165と雌ネジ166を螺合することで、容器42の一端54に陽極ベース部172を取り付けてもよい。
図36~図39に示す例においては、共通基板170および小径部174を含む陽極ベース部172によって、本開示の放射線管取付部材が構成される。
図22、図25、図36、図37では、共通基板を基板本体と陽極ベース部とで構成した例を示した。ただし、図16、図30等で示した共通基板のように、複数の放射線管27の個数分の陽極ベース部を、機械加工により共通基板と一体的に形成することが好ましい。というのは、陽極ベース部を別体とし、基板本体に取り付ける手間を省くことができるからである。また、陽極ベース部を別体とした場合、陽極ベース部を基板本体に取り付けた際に取り付け誤差が生じるおそれがあるが、そうした心配がないからである。
[第4実施形態]
図40~図42に示す第4実施形態では、排気路を共通基板に形成する。
図40および図41に示すように、共通基板45には、放射線管27が取り付けられた後に、容器42の内部を真空状態とするための排気路190が形成されている。排気路190は、陽極ベース部51毎に2つずつ設けられている。排気路190は、陽極41が配される、陰極40と対向する陽極ベース部51の面65から、突出部192まで貫通している。突出部192は、第1面50と対向する共通基板45の面である第2面191から突出している。
突出部192には、真空ポンプ193の配管194が接続される。真空ポンプ193は、陽極ベース部51毎に用意されている。真空ポンプ193は、放射線管27が取り付けられた後に作動される。真空ポンプ193は、配管194および排気路190を介して容器42内を排気する。
図42は、本第4実施形態における放射線源25の製造手順を示すフローチャートである。ステップST200~ステップST230は、上記第1実施形態のステップST100~ステップST130と同じである。ステップST230において溝52に容器42の一端54を嵌合し、共通基板45に容器42を取り付けた後のステップが、上記第1実施形態とは異なる。すなわち、容器42と陰極40の接合部分、容器42と共通基板45の接合部分を、ろう68で接合する(ステップST240)。ろう付け後、配管194を突出部192に接続することで、各陽極ベース部51の排気路190に真空ポンプ193を接続し(ステップST250)、真空引きする(ステップST260)。そして、予め設定された真空度、例えば1×10-6Paとなったときに、突出部192において排気路190を封じ切る(ステップST270)。その後、共通基板45をハウジング28内に設置する。
このように、第4実施形態では、放射線管27が取り付けられた後に、容器42の内部を真空状態とするための排気路190が共通基板45に形成される。したがって、上記第1実施形態の真空炉ではなく、真空炉と比較して小型かつ廉価な真空ポンプ193を用いて容器42内を予め設定された真空度とすることができる。したがって、放射線源25の製造場所の省スペース化に貢献することができ、かつ設備コストを低減することができる。
陽極ベース部51毎に設けられた排気路190を、共通基板45内で1つの排気路に合流させてもよい。こうすれば、真空ポンプ193を1台で済ませることができる。
なお、図40~図42では、上記第1実施形態の共通基板45に排気路190を形成した例を示したが、これに限らない。上記第2実施形態の共通基板90、115、上記第3実施形態の共通基板140、170に、排気路190を形成してもよい。
上記第1実施形態では溝52、上記第2実施形態では陽極ベース部91、117、上記第3実施形態では小径部144、174をそれぞれ位置決め部として例示したが、これに限らない。例えば図43に示すように、容器42の一端54の全周に突起200、共通基板201の第1面202の、陽極ベース部203の周囲に、突起200に対応する溝204をそれぞれ形成する。そして、溝204を位置決め部として機能させ、溝204に突起200を嵌合することで、共通基板201に容器42の一端54を取り付けてもよい。この例においては、共通基板201および溝204によって、本開示の放射線管取付部材が構成される。
図43では、容器42の一端54の全周にわたって突起200を形成し、かつ、陽極ベース部203の周囲の全周にわたって溝204を形成しているが、これに限らない。例えば図44に示すように、陽極ベース部203の周囲の120°毎の3箇所に溝204を形成し、突起200も溝204に合わせて容器42の一端54の120°毎の3箇所に形成する(図示省略)等、数箇所に突起200および溝204を形成してもよい。この場合、符号204Aで示すように、1つの溝204の形状を、他の溝204の形状と変え、同じく1つの突起200の形状を、他の突起200の形状と変えて、形状を変えた突起200および溝204を、容器42の一端54の挿入向きを規制する規制部として機能させてもよい。なお、上記例とは逆に、容器42の一端54に溝204、共通基板201の第1面202に突起200を形成してもよい。
上記各実施形態では、陽極41が配される、陰極40と対向する陽極ベース部の面を、第1面に対して角度η傾けているが、これに限らない。例えば図45に示すように、直方体状の共通基板210の第1面211に陽極41を配し、容器42等が取り付けられた共通基板210自体を角度η傾けてもよい。なお、図45では、図43および図44で示した態様を採用し、容器42の一端54に突起212、共通基板210の第1面211に溝213をそれぞれ形成している。そして、溝213を位置決め部として機能させ、溝213に突起212を嵌合することで、共通基板210に容器42の一端54を取り付けている。この例においては、共通基板210および溝213によって、本開示の放射線管取付部材が構成される。
また、上記各実施形態では、陽極41側を共通基板で支持していたが、図46に示すように陰極40側を支持してもよい。この場合、共通基板220の第1面221には、半導体基板60、エミッタ電極61、ゲート電極62、および集束電極64で構成される陰極40の要部が取り付けられる。陰極40の要部の周囲には、位置決め部として機能する溝222が形成されている。共通基板220には、例えばエミッタ電極61が接続される。共通基板220には、ゲート電極62の配線を通すための貫通穴223、および集束電極64の配線を通すための貫通穴224が形成されている。貫通穴223および貫通穴224は、碍子等で絶縁されている。
容器225の一端226は、溝222と嵌合する。容器225の他端227には、陽極41の取り付け部228の受け部229が設けられている。なお、図示は省略したが、容器225の他端227の開口縁と、陽極41の取り付け部228の外周縁は、全周にわたってろう68で接合されている。また、これも図示は省略したが、第1面221を臨む容器225の一端226の外周縁と、溝222の外周縁も、全周にわたってろう68で接合されている。この例においては、共通基板220および溝222によって、本開示の放射線管取付部材が構成される。
陰極40側を支持する場合は、貫通穴223および貫通穴224を形成する必要がある等、共通基板220の構造が複雑化する。このため、陰極40側を共通基板で支持するよりは、陽極41側を共通基板で支持するほうが、共通基板の構造が単純であるため好ましい。
なお、電界放出型の陰極40に代えて、熱電子を放出するフィラメント構造の陰極を用いてもよい。また、放射線透過窓66を設けずとも放射線36の照射量が十分稼げる場合は、放射線透過窓66を省略してもよい。この場合は、第1規制部、第1マーク、第2規制部、第2マーク、第3規制部、第3マークは、いずれも不要となる。
容器42、225は多角筒状であってもよい。同様に、陽極ベース部91、115、141、170も多角柱状であってもよい。さらには、大サイズ部は、大径部143、173に限らず、多角柱状であってもよい。小サイズ部も同様である。
陽極41に対する陰極40のY方向の距離をより正しく規定するために、第1面と対向する共通基板の面を平面加工してもよい。
上記各実施形態では、焦点Fが配される位置を直線状としているが、これに限定されない。図47に示すように、焦点F1~F15が配される複数の位置SP1~SP15を、円弧状に、等しい間隔で並べてもよい。この場合、二点鎖線で示すように、共通基板230は略扇型状となる。
上記各実施形態では、トモシンセシス撮影装置として乳房撮影装置10を例示した。従来、乳房撮影装置10においてトモシンセシス撮影を行うことは、乳房Mの微小石灰化等の病変の発見を容易にするための手法として有用性が認められている。したがって、本開示の技術を、乳房撮影装置10に適用することは好ましい。
もちろん、乳房撮影装置10に限らず、本開示の技術を、他の撮影装置に適用してもよい。例えば、手術時に被検者Hを撮影する、図48に示す撮影装置250に、本開示の技術を適用してもよい。
撮影装置250は、制御装置251を内蔵する装置本体252と、横から見た形状が略C字状のアーム253とを備えている。装置本体252には台車254が取り付けられ、装置本体252は移動可能となっている。アーム253は、線源収容部255、検出器収容部256、および本体部257で構成される。図1で示した乳房撮影装置10と同じく、線源収容部255は放射線源258、および図示しない照射野限定器を収容する。また、検出器収容部256は放射線検出器259を収容する。線源収容部255と検出器収容部256とは、本体部257により対向した姿勢で保持される。
放射線源258および放射線検出器259は、図1で示した放射線源25および放射線検出器26と基本的な構成は同じである。ただし、撮影装置250では、被検者Hの胸部全体等、乳房Mよりも大きな被写体を撮影する。このため、放射線源258を構成する放射線管260は、乳房撮影装置10の各放射線管27よりも径が大きい。また、放射線検出器259も、その撮像面261は、放射線検出器26の撮像面35よりも面積が大きい。なお、大きな被写体の撮影に対応するため、放射線管260の配列個数を増やしてもよい。
検出器収容部256は、被検者Hが仰臥する寝台262の下方に挿入される。寝台262は放射線36を透過する材料で形成されている。線源収容部255は、被検者Hの上方であって、被検者Hを挟んで検出器収容部256と対向する位置に配置される。
撮影装置250の放射線源258は、乳房撮影装置10の放射線源25と同じく、複数の放射線管260のそれぞれの一端側が共通基板に支持され、複数の放射線管260が配列した状態で共通基板に保持される。なお、撮影装置250においても、トモシンセシス撮影の他に、放射線管260を用いて単純撮影を行うことが可能である。また、単純撮影を行う代わりに合成放射線画像を生成することも可能である。さらに、撮影装置250は、静止画の放射線画像を撮影する他、動画の放射線画像を撮影することも可能である。なお、符号263は、放射線源258のハウジングである。
本開示の技術は、こうした手術用の撮影装置250以外にも、天井吊り下げ型の放射線源と、放射線検出器がセットされる立位撮影台または臥位撮影台とを組み合わせた一般的な放射線撮影装置に適用することも可能である。また、病棟を巡回して被検者Hを撮影するために用いられる、カート型の移動式放射線撮影装置に、本開示の技術を適用することも可能である。
[第5実施形態]
図49~図54に示す第5実施形態を採用してもよい。
図49および図50において、複数の放射線管300の一端を支持する共通基板301は、第1面302に略円柱状の陽極ベース部303を有している。陽極ベース部303には、陽極304が配されている。陽極ベース部303は、後述する陰極ユニット315との沿面放電を避けるために、第1面302からある程度の高さをもち、かつ陰極ユニット315からZ方向にある程度離れた細長形状とされている。
図51にも示すように、第1面302には、陽極ベース部51の周囲を取り囲むように、円環状の溝305が形成されている。
容器310は、容器42と同じく、例えばセラミックで形成されており、両側が開放端311、312となった円筒状をしている。ただし、容器310には放射線透過窓66は設けられていない。容器310は、一端311が溝305に嵌合される。すなわち、本第5実施形態においては、溝305が、本開示の技術に係る「位置決め部」の一例である。容器310の一端311の外周縁と、溝305の外周縁は、全周にわたってろう68で接合されている。より詳しくは、容器310の一端311と溝305との接合部分にろう68を塗布した後、溝305に容器310の一端311を嵌合することで、容器310の一端311と溝305とがろう付けされる。
一方、容器310の他端312には、陰極ユニット315が取り付けられる。容器310の他端312の外周縁と、陰極ユニット315の本体部316の外周縁も、全周にわたってろう68で接合されている。より詳しくは、容器310の他端312と陰極ユニット315の本体部316との接合部分にろう68を塗布した後、容器310の他端312と陰極ユニット315の本体部316とを嵌合することで、容器310の他端312と陰極ユニット315の本体部316とがろう付けされる。
陰極ユニット315は、本体部316、窓取付部317、陰極要部318、配線319、コネクタ320、集束電極321、排気路322等を有している。本体部316、窓取付部317、コネクタ320、集束電極321、排気路322といった陰極ユニット315の主要部分は、例えば銅等の金属で形成されている。
本体部316は、容器310と同様に円筒状をしている。窓取付部317は、本体部316からZ方向に突き出た角型フランジ(図52および図53も参照)である。窓取付部317には、放射線透過窓325が取り付けられている。窓取付部317は、金属製のネジ326によりハウジング327に接続固定される。すなわち、放射線透過窓325とハウジング327とは、窓取付部317およびネジ326を介して電気的に接続されている。
ハウジング327は接地されている。このため、陽極304から放射線36が発せられる使用状態において、ハウジング327に電気的に接続された窓取付部317、ひいては放射線透過窓325、さらには陰極ユニット315全体も接地される。
図52にも示すように、ハウジング327には、放射線透過窓325に対応する開口328が設けられている。放射線透過窓325は、開口328を通じて外部に露呈されている。ここで、「外部に露呈されている」とは、放射線透過窓325の放射線36が出射される側の面が大気に晒されている、という意である。
陰極要部318は、陽極304と対向する位置に設けられている。陰極要部318には、半導体基板、エミッタ電極、およびゲート電極(いずれも図示省略)が配置されている。陰極要部318からの配線319は、本体部316に形成された貫通穴329を通じてコネクタ320に接続されている。
図53にも示すように、集束電極321には、電子線63を陽極304に向けて集束するための集束穴330が設けられている。また、排気路322と対向する集束電極321の一部には、三日月状の切欠き331が形成されている。切欠き331は、放射線管300内、特に陽極304で発生する残ガスを排気路322に導くために設けられている。
排気路322には、上記第4実施形態と同様に真空ポンプ335の配管336が接続される。真空ポンプ335は、放射線管300毎に用意されている。真空ポンプ335は、共通基板301に放射線管300が取り付けられた後に作動される。真空ポンプ335は、配管336および排気路322を介して放射線管300内を排気する。
図54は、本第5実施形態における放射線源の製造手順を示すフローチャートである。ステップST300~ステップST340は、陰極40が陰極ユニット315となっている以外は、上記第4実施形態のステップST200~ステップST240と同じである。ステップST340において容器310と陰極ユニット315の接合部分、容器310と共通基板301の接合部分を、ろう68で接合した後のステップが、上記第4実施形態とは異なる。すなわち、ろう付け後、配管336を介して各陰極ユニット315の排気路322に真空ポンプ335を接続する(ステップST350)。次に、陰極要部318と陽極304との間に管電圧を印加し、実際に放射線36を発しながら真空引きする(ステップST360)。そして、予め設定された真空度、例えば1×10-6Paとなったときに、排気路322を封じ切る(ステップST370)。図49は、排気路322を封じ切った後の放射線管300を示す。その後、窓取付部317をネジ326によりハウジング327に接続固定する等して、放射線管300が取り付けられた共通基板301をハウジング327内に設置する(ステップST380)。なお、共通基板301をハウジング327に設置した後、真空引き等を行ってもよい。
放射線透過窓325は、ハウジング327の開口328を通じて外部に露呈されている。放射線透過窓325とハウジング327とが電気的に接続されておらず、陽極304から放射線36が発せられる使用状態において、放射線透過窓325とハウジング327が接地されていない場合は、周囲との放電を防ぐために、放射線透過窓325の放射線36の出射側に絶縁油等の絶縁部材を配する必要があり、放射線透過窓325を外部に露呈させることができない。このため放射線36が減衰してしまう。
しかし、本第5実施形態では、放射線透過窓325とハウジング327とが電気的に接続されており、陽極304から放射線36が発せられる使用状態において、放射線透過窓325とハウジング327が接地されている。このため、放射線透過窓325の放射線36の出射側に絶縁油等の絶縁部材を配する必要がなく、放射線36を減衰させることなく照射することができる。特に乳房撮影装置10の場合は、一般的な放射線撮影装置と比べて低いエネルギーの放射線36を照射するため、放射線36を減衰させないという効果の優位性が高い。
また、第5実施形態では、陰極ユニット315に排気路322を設けている。そして、実際に放射線36を発しながら真空引きしている。放射線36を発する場合、陽極304の温度は2000℃程度になる。このため、数100℃程度の熱処理では取り除くことができない、陽極304に取り付いた残ガスを確実かつ効率的に排気することができる。
本第5実施形態と上記第1~第4実施形態を複合して実施してもよい。なお、本第5実施形態は、共通基板と位置決め部とを備える放射線管取付部材を用いない放射線源についても適用可能である。
本第5実施形態によって、以下の付記項1~6に記載の放射線源、および放射線源の製造方法を把握することができる。
[付記項1]
電子を放出する陰極、前記電子が衝突して放射線を発する陽極、前記陰極と前記陽極が収容される容器、並びに前記放射線を透過して外部に出射する放射線透過窓を有する放射線管と、前記放射線管を収容するハウジングとで構成される放射線源であって、
前記ハウジングには、前記放射線透過窓に対応する開口が設けられており、
前記放射線透過窓は、前記開口を通じて外部に露呈されている、
放射線源。
[付記項2]
前記放射線透過窓と前記ハウジングとは、電気的に接続されている付記項1に記載の放射線源。
[付記項3]
電子を放出する陰極、前記電子が衝突して放射線を発する陽極、前記陰極と前記陽極が収容される容器、並びに前記放射線を透過して外部に出射する放射線透過窓を有する放射線管と、前記放射線管を収容するハウジングとで構成される放射線源であって、
前記陽極から前記放射線が発せられる使用状態において、前記放射線透過窓と前記ハウジングは接地されている記載の放射線源。
[付記項4]
乳房を被写体とする乳房撮影装置に用いられる付記項1から付記項3のいずれか1項に記載の放射線源。
[付記項5]
電子を放出する陰極、前記陰極に対向する位置に設けられ、前記電子が衝突して放射線を発する陽極、並びに前記陰極と前記陽極が収容される容器を有する放射線管を含む放射線源の製造方法であって、
前記陰極側に形成された排気路を通じて、前記容器の内部を真空引きする放射線源の製造方法。
[付記項6]
前記陽極から前記放射線を発しながら前記真空引きを行う付記項5に記載の放射線源の製造方法。
本開示の技術は、上述の種々の実施形態および/または種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記各実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。