以下、図面を参照して、実施形態に係る画像再構成方法、再構成装置、及び磁気共鳴イメージング装置を説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用可能である。
(実施形態)
図1は、実施形態に係るMRI装置の全体的な構成例を示す図である。例えば、図1に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、WB(Whole Body)コイル4、受信コイル装置5、寝台6、送信回路7、受信回路8、架台9、インタフェース10、ディスプレイ11、記憶回路12、処理回路13,14,15,16、及び発振器17を備える。なお、MRI装置100に被検体S(例えば、人体)は含まれない。
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、内周側に配置された撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有する。なお、静磁場磁石1は、例えば、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。
傾斜磁場コイル2は、被検体Sが配置される撮像空間に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、径方向に積層された略円筒状の複数の傾斜磁場コイルを有する。ここで、複数の傾斜磁場コイルは、傾斜磁場電源3から供給される電流に基づいて、内周側に配置された撮像空間に、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を発生させる。
より具体的には、傾斜磁場コイル2は、X軸方向に沿った傾斜磁場コイルを発生させるXコイルと、Y軸方向に沿った傾斜磁場コイルを発生させるYコイルと、Z軸方向に沿った傾斜磁場コイルを発生させるZコイルとを有する。ここで、X軸、Y軸、及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、X軸は、傾斜磁場コイル2の中心軸に直交する水平方向に設定され、Y軸は、傾斜磁場コイル2の中心軸に直交する鉛直方向に設定される。また、Z軸は、傾斜磁場コイル2の中心軸に沿って設定される。
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2が有するXコイル、Yコイル、及びZコイルそれぞれに個別に電流を供給することで、X軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向に沿った傾斜磁場を撮像空間に発生させる。具体的には、傾斜磁場電源3は、Xコイル、Yコイル、及びZコイルそれぞれに適宜に電流を供給することによって、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる。ここで、リードアウト方向に沿った軸、位相エンコード方向に沿った軸、及びスライス方向に沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。
なお、以下では一例として、論理座標系を構成するリードアウト方向に沿った軸、位相エンコード方向に沿った軸、及びスライス方向に沿った軸が、装置座標系を構成するX軸、Y軸、及びZ軸にそれぞれ対応する場合を説明する。しかしながら、論理座標系と装置座標系との対応関係は、これに限定されるものではなく、任意に変更可能である。
そして、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳されることによって、被検体Sから発生した磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号に空間的な位置情報を付与する。具体的には、リードアウト方向の傾斜磁場Groは、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、リードアウト方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。また、位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeは、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、位相エンコード方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。また、スライス方向の傾斜磁場Gssは、スライス方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。例えば、スライス方向の傾斜磁場Gssは、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させるために用いられる。
WBコイル4は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間にRF(Radio Frequency)磁場を印加する送信コイルの機能と、当該RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信する受信コイルの機能とを有するRFコイルである。具体的には、WBコイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、送信回路7から供給される高周波パルス信号に基づいて、円筒内に配置された撮像空間にRF磁場を印加する。また、WBコイル4は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路8へ出力する。
受信コイル装置5は、被検体Sから発生したMR信号を受信するRFコイルである。例えば、受信コイル装置5は、被検体Sの部位ごとに用意され、被検体Sの撮像が行われる際に、撮像対象の部位の近傍に配置される。そして、受信コイル装置5は、WBコイル4によって印加されるRF磁場の影響によって被検体Sから発生したMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路8へ出力する。なお、受信コイル装置5は、被検体SにRF磁場を印加する送信コイルの機能をさらに有していてもよい。その場合には、受信コイル装置5は、送信回路7に接続され、送信回路7から供給されるRFパルス信号に基づいて、被検体SにRF磁場を印加する。
寝台6は、被検体Sが載置される天板6aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが載置された天板6aを撮像空間に移動する。例えば、寝台6は、天板6aの長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
送信回路7は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数(ラーモア周波数)に対応するRFパルス信号をWBコイル4に出力する。具体的には、送信回路7は、パルス発生器、RF発生器、変調器、及び増幅器を有する。パルス発生器は、RFパルス信号の波形を生成する。RF発生器は、共鳴周波数のRF信号を発生する。変調器は、RF発生器によって発生したRF信号の振幅をパルス発生器によって発生した波形で変調することで、RFパルス信号を生成する。増幅器は、変調器によって発生したRFパルス信号を増幅してWBコイル4に出力する。
受信回路8は、WBコイル4又は受信コイル装置5によって受信されたMR信号に基づいてMR信号データを生成する。そして、受信回路8は、生成したMR信号データを処理回路14に出力する。
ここで、図2を用いて、実施形態に係る受信コイル装置5及び受信回路8の構成例を説明する。図2は、実施形態に係る受信コイル装置5及び受信回路8の全体的な構成例を示す図である。
図2に示すように、例えば、受信コイル装置5は、エレメント50a,50b,50c、及びプリアンプ51a,51b,51cを有する。また、受信回路8は、検波器80a,80b,80c、及びADC(Analog to Digital Converter)81a,81b,81cを有する。なお、以下では、エレメント50a,50b,50cを区別無く総称する場合に「エレメント50」と記載する。また、プリアンプ51a,51b,51cを区別無く総称する場合に「プリアンプ51」と記載する。また、検波器80a,80b,80cを区別無く総称する場合に「検波器80」と記載する。また、ADC81a,81b,81cを区別無く総称する場合に「ADC81」と記載する。また、エレメント50は、「コイルエレメント」とも表記される。
エレメント50は、WBコイル4によって印加されるRF磁場の影響によって被検体Sから発生したMR信号を受信する。プリアンプ51は、エレメント50によって受信されたMR信号を増幅する。検波器80は、プリアンプ51によって増幅されたMR信号から共鳴周波数の成分を差し引いたアナログ信号を検波する。ADC81は、発振器17から供給されるクロック信号を用いて、検波器80によって検波されたアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成する。なお、図2において発振器17は複数のADC81、および検波器80に対して1つ設けられているが、複数の発振器17をADC17ごとに設けてもよい。生成されたMR信号データは、処理回路14へ出力される。
なお、図2にて説明した構成はあくまで一例であり、図示の構成に限定されるものではない。例えば、受信コイル装置5が有するエレメント50の数は、任意に変更可能である。つまり、受信コイル装置5は、複数のエレメントを有していれば良い。また、プリアンプ51が受信回路8に備えられていても良いし、検波器80及びADC81が受信コイル装置5に備えられていても良い。
図1の説明に戻る。架台9は、略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成された中空のボア9aを有し、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、及びWBコイル4を支持している。具体的には、架台9は、静磁場磁石1の内周側に傾斜磁場コイル2を配置し、傾斜磁場コイル2の内周側にWBコイル4を配置し、WBコイル4の内周側にボア9aを配置した状態で、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、及びWBコイル4それぞれを支持している。ここで、架台9が有するボア9a内の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
なお、ここでは、MRI装置100が、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及びWBコイル4それぞれが略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構成を有する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイルユニット及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構成を有していてもよい。この場合には、一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイルユニット及び一対のRFコイルによって挟まれた空間が、トンネル型の構成におけるボアに相当する。
インタフェース10は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、インタフェース10は、処理回路16に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路16に出力する。例えば、インタフェース10は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、インタフェース10は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路もインタフェース10の例に含まれる。
ディスプレイ11は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ11は、処理回路16に接続されており、処理回路16から送られる各種情報及び各種画像データを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ11は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
記憶回路12は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路12は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
処理回路13は、寝台制御機能13aを有する。寝台制御機能13aは、制御用の電気信号を寝台6へ出力することで、寝台6の動作を制御する。例えば、寝台制御機能13aは、インタフェース10を介して、天板6aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板6aを移動するように、寝台6が有する天板6aの移動機構を動作させる。
処理回路14は、収集機能14aを有する。収集機能14aは、各種のパルスシーケンスを実行することで、被検体SのMR信号データを収集する。具体的には、収集機能14aは、処理回路16から出力されるシーケンス実行データに従って、傾斜磁場電源3、送信回路7及び受信回路8を駆動することで、パルスシーケンスを実行する。ここで、シーケンス実行データは、パルスシーケンスを表すデータであり、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路7がWBコイル4に供給するRFパルス信号の強さや供給タイミング、受信回路8がMR信号を検出する検出タイミング等を規定した情報である。そして、収集機能14aは、パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路8からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路12に記憶させる。ここで、収集機能14aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路12に記憶される。
処理回路15は、再構成機能15aを有する。再構成機能15aは、記憶回路12に記憶されたMR信号データに基づいて画像データを生成する。具体的には、再構成機能15aは、収集機能14aによって記憶回路12に記憶されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理、すなわち、フーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像データを生成する。また、再構成機能15aは、生成した画像データを記憶回路12に記憶させる。
処理回路16は、主制御機能16aを有する。主制御機能16aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、主制御機能16aは、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ11に表示する。そして、主制御機能16aは、インタフェース10を介して受け付けられた入力操作に応じて、MRI装置100が有する各構成要素を制御する。例えば、主制御機能16aは、インタフェース10を介して操作者から撮像条件の入力を受け付ける。そして、主制御機能16aは、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、当該シーケンス実行データを処理回路14に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、主制御機能16aは、操作者からの要求に応じて、記憶回路12から画像データを読み出してディスプレイ11に出力する。
ここで、上述した処理回路13,14,15,16は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、各処理回路が有する処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路12に記憶される。各処理回路は、記憶回路12から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。ここで、各処理回路は、複数のプロセッサによって構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、ここでは、単一の記憶回路12が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
発振器17は、所定の周波数で振幅変化を繰り返すクロック信号を生成し、生成したクロック信号をMRI装置100内の各部に供給する。例えば、発振器17は、水晶振動子を用いて構成される。
本実施形態に係るMRI装置100は、CS-MRIを実行可能な装置である。CS-MRIを実行する場合、MRI装置100は、k空間上の個々のデータ(MR信号データ)を、例えば、ウェーブレット変換によりスパース空間(ウェーブレット空間)のデータに変換し、このスパース空間上で画像を推定(再構成)する。
ここで、CS-MRIによる再構成画像の画質は、k空間上のMR信号データのランダム性を上げることにより向上することが報告されている(非特許文献1)。例えば、ランダムな間引きサンプリングを行う場合に、スライス間で異なる間引き方とすることで、再構成画像の画質が向上することが報告されている。
そこで、本実施形態に係るMRI装置100は、圧縮センシングによる再構成画像の画質を向上させるために、以下の処理を実行する。
図3を用いて、実施形態に係るMRI装置100による処理手順を説明する。図3は、実施形態に係るMRI装置100による処理手順を示すフローチャートである。図3に示す処理手順は、例えば、操作者により入力された撮像開始要求を契機として開始される。
なお、図3では、図4A、図4B、図5、図6、図7、及び図8を参照しつつ説明する。図4A及び図4Bは、第1の実施形態に係る処理機能の処理を対比比例とともに説明するための図である。図5、図6、及び図7は、実施形態に係る収集機能14aの処理を説明するための図である。図8は、実施形態に係る再構成機能15aの処理を説明するための図である。
ステップS101において、主制御機能16aは、撮像条件を設定する。例えば、主制御機能16aは、インタフェース10を介して操作者から撮像条件の入力を受け付ける。そして、主制御機能16aは、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データを収集機能14aに送信する。
ステップS102において、収集機能14aは、準備スキャンを実行する。例えば、収集機能14aは、主制御機能16aから出力されるシーケンス実行データに従って、傾斜磁場電源3、送信回路7及び受信回路8を駆動することで、準備スキャンを実行する。準備スキャンには、例えば、位置決め用の画像を収集するスキャンや、静磁場の不均一性を補正するシミングスキャン、感度分布情報を収集するスキャンなどが含まれる。感度分布情報は、「感度マップ」とも呼ばれる。
例えば、収集機能14aは、各エレメント50の感度分布情報を収集する。具体例を挙げると、収集機能14aは、WBコイル4及び各エレメント50のそれぞれについて個別のスキャンを行う。そして、収集機能14aは、WBコイル4によりスキャンされた情報(又は画像データ)と、各エレメント50によりスキャンされた情報(又は画像データ)とを比較することによって、各エレメント50の感度分布情報を生成する。これにより、収集機能14aは、エレメント50a,50b,50cそれぞれの感度分布情報を収集する。
ステップS103において、収集機能14aは、本スキャンを実行する。例えば、収集機能14aは、主制御機能16aから出力されるシーケンス実行データに従って、傾斜磁場電源3、送信回路7及び受信回路8を駆動することで、本スキャンを実行する。
図4A、図4B、図5、及び図6を用いて、収集機能14aにより実行される本スキャンのパルスシーケンスについて説明する。まず、本実施形態に係る収集機能14aにより実行されるパルスシーケンスとの対比例を図4A及び図4Bに示す。図4Aは、一般的なグラジエントエコー系のパルスシーケンスを示しており、上から順に、RFパルスおよびエコー信号、スライス方向の傾斜磁場Gss、リードアウト方向の傾斜磁場Gro、及び位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeを示している。一般的には、リードアウト方向の傾斜磁場Groを印加してエコー信号を収集するのに先行して、位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeが印加される。図4Bは、本実施形態の収集機能14aにより実行されるパルスシーケンスを示しており、図4Aの対比例との違いは、位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeがリードアウト方向の傾斜磁場Groと位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeを各エレメント50による収集タイミングと同時に印加されている点にある。簡単のため、位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeを矩形波e1と正弦波e2に分けているが、これらは合成されて傾斜磁場コイル2によって印加される。なお、一例としてグラジエントエコー系のパルスシーケンスに基づいて説明しているが、シーケンス種を限定することは意図していない。
例えば、収集機能14aは、複数のエレメント50を有する受信コイル装置5を用いて、複数のエレメント50のそれぞれにおいて互いに異なる収集時刻のMR信号データを収集する。図5に示す例では、収集機能14aは、各エレメント50におけるサンプリングの開始位相を異ならせることで、MR信号データを収集する。具体的には、収集機能14aは、エレメント50a、エレメント50b、及びエレメント50cの順にサンプリングを開始させる。なお、エレメント50a、エレメント50b、及びエレメント50cのサンプリングの間隔(周波数)は、互いに同じである。これにより、収集機能14aは、エレメント50a、エレメント50b、エレメント50c、エレメント50a、エレメント50b、エレメント50c・・・の順に、互いに異なる収集時刻のMR信号データを収集する。
また、収集機能14aは、各エレメント50における各MR信号データの収集時刻をそれぞれ別々に収集する。そして、収集機能14aは、収集した各エレメント50の収集時刻を収集時刻テーブルに記録する。なお、収集時刻テーブルは、例えば、記憶回路12に格納される。
図6を用いて、収集機能14aにより記録される収集時刻テーブルについて説明する。図6には、上から順に、各エレメント50による収集タイミングと、収集時刻テーブルにおける記録タイミングとを例示する。なお、各エレメント50による収集タイミングについては、図5に図示した内容と同様である。また、図6の横軸は、経過時間に対応する。
図6に示すように、収集機能14aは、各エレメント50においてMR信号データが収集された収集時刻を収集する。例えば、収集機能14aは、発振器17からクロック信号の供給を受け(図2参照)、各ADC81によってMR信号からMR信号データに変換された時刻を収集時刻として収集する。そして、収集機能14aは、各エレメント50により収集されたそれぞれのMR信号データの収集時刻を、収集時刻テーブルに記録する。ここで、収集機能14aは、各収集時刻においてMR信号の収集を行ったエレメント50を識別可能な状態で収集時刻を記録する。図6に示す例では、黒丸印は、エレメント50aにおける収集時刻を示し、ハッチングの丸印は、エレメント50bにおける収集時刻を示し、白丸印は、エレメント50cにおける収集時刻を示す。
図5の説明に戻り、収集機能14aは、図示しない傾斜磁場Gssを印加した後に、傾斜磁場Gro及び傾斜磁場Gpeを同時に印加する。ここで、収集機能14aは、波形e1及び波形e2を組み合わせることで、傾斜磁場Gpeを印加する。具体的には、収集機能14aは、波形e1及び波形e2を重ね合わせた波形の制御信号を傾斜磁場電源3に入力する。傾斜磁場電源3は、収集機能14aにより入力された制御信号の波形(波形e1及び波形e2の重ね合わせ波形)に応じた電流を傾斜磁場コイル2に供給する。傾斜磁場コイル2は、波形e1及び波形e2を重ね合わせた波形に対応する傾斜磁場Gpeを撮像空間に印加する。これにより、収集機能14aは、複数の波形の組み合わせによりk空間上のサンプリングパターンを制御する。
図7を用いて、収集機能14aにより収集されるk空間のサンプリングパターンの1つの例について説明する。図7には、k空間上に配置される複数のMR信号データ(k空間データ)を例示する。図7において、横方向はリードアウト(RO)方向に対応し、縦方向は位相エンコード(PE)方向に対応する。図6に示す曲線は、サンプリングの軌跡に対応する。また、サンプリングの軌跡上の丸印は、各エレメント50により収集されたMR信号データに対応する。具体的には、黒丸印は、エレメント50aにより収集されたMR信号データに対応し、ハッチングの丸印は、エレメント50bにより収集されたMR信号データに対応し、白丸印は、エレメント50cにより収集されたMR信号データに対応する。
図7に示すように、収集機能14aは、エンコード波形である波形e1及び波形e2の重ね合わせによりサンプリングの軌跡を制御する。ここで、収集機能14aは、波形e2として一定の振幅及び周波数を有する正弦波を傾斜磁場Groとともに印加することで、正弦波に沿った軌跡でサンプリングを行うことができる。また、波形e1は、一定の値(オフセット)を有する台形波である。図5に示した傾斜磁場波形により、収集機能14aは、図7に示した右肩上がりの正弦波状の軌跡に沿ってサンプリングを行う。
そして、収集機能14aは、図7に示した軌跡上を、図5に示した各エレメント50の収集タイミングで収集する。この結果、収集機能14aは、右肩上がりの正弦波状の軌跡上を、エレメント50a、エレメント50b、エレメント50c、エレメント50a、エレメント50b、エレメント50c・・・の順に収集する。
なお、図5から図7に例示した内容はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、図5では、サンプリングの開始位相を異ならせる場合を説明したが、収集機能14aは、サンプリングの間隔(周波数)を異ならせることも可能である。つまり、収集機能14aは、各エレメント50におけるサンプリングの開始位相及び間隔のうち少なくとも一方を異ならせることで、MR信号データを収集することができる。
上述した収集方法によって、収集機能14aは、本スキャンのパルスシーケンスを実行する。これにより、収集機能14aは、各MR信号データをk空間上にランダムに配置できる。そして、収集機能14aは、収集したk空間データを再構成機能15aに送る。
また、例えば、図5では、傾斜磁場Gpeを異なる2つの波形の重ね合わせにより印加する場合を説明したが、収集機能14aは、3つ以上の波形の重ね合わせにより傾斜磁場Gpeを印加することも可能である。また、重ね合わせる波形は、図示のものに限定されるものではなく、例えば、収集機能14aは、台形波、矩形波、正弦波、三角波、ノコギリ波など、任意の種類の波形を任意に重ね合わせることができる。
ステップS104において、再構成機能15aは、収集時刻に基づいて、リグリッディング(re-gridding)を実行する。例えば、図7に示したように、k空間データのサンプリングパターンは、複数の傾斜磁場波形(波形e1及び波形e2)と収集時刻とによって複雑に制御されている。そこで、再構成機能15aは、図6の収集時刻テーブルを参照し、k空間上の各MR信号データが収集された収集時刻と、印加された傾斜磁場波形とに基づいて、各MR信号データの再配置(再配列)を行う。これにより、各MR信号データは、k空間上の正確な位置に配置される。
このように、再構成機能15aは、収集された各MR信号データの収集時刻に基づいて、k空間に配置された各MR信号データを再配置することで、各MR信号データをk空間データに統合する。なお、上述した再配置はあくまで一例であり、上記の説明内容により限定されるものではない。
ステップS105において、再構成機能15aは、感度分布情報に基づいて、信号強度を補正する。例えば、異なるエレメント50によって収集した複数のMR信号データを一つのk空間に統合すると、各MR信号データの信号強度にばらつきが生じる。そこで、再構成機能15aは、各エレメント50の感度分布情報に基づいて、各エレメント50の感度補正を行う。
図8を用いて、再構成機能15aによる感度補正について説明する。図8において、横方向は感度に対応し、縦方向は例えば装置座標系のX軸(リードアウト方向)に対応する。つまり、図8に示す曲線は、X軸方向における各エレメント50の感度分布情報に対応する。なお、図8では、X軸方向における感度分布を図示して説明するが、撮像空間(関心領域)における各点(各位置)は、X軸(リードアウト方向)、Y軸(位相エンコード方向)、及びZ軸(スライス方向)に応じて異なる感度を有し、この感度に応じた補正が行われる。また、図8では、この曲線のピーク(図中の最右端)の感度を「100%」として説明する。
図8に示すように、撮像空間のうちの点P1では、エレメント50aの感度が100%であり、エレメント50bの感度が50%であり、エレメント50cの感度が20%である。この場合、再構成機能15aは、エレメント50aのMR信号データの信号強度を基準として、エレメント50bのMR信号データの信号強度を「100/50」倍、エレメント50cのMR信号データの信号強度を「100/20」倍にする。
このように、再構成機能15aは、各エレメント50の感度分布情報に基づいて、各エレメント50によって収集されたMR信号データの信号強度を補正する。なお、上述した感度補正はあくまで一例であり、上記の説明内容により限定されるものではない。
ステップS106において、再構成機能15aは、画像データを再構成する。例えば、再構成機能15aは、感度補正後のk空間データに対して、CS-MRIに対応する再構成処理を実行することで、画像データを生成する。例えば、CS-MRIに対応する再構成処理では、ステップS106において得られる補正後のMR信号データをスパース空間に変換する。再構成機能15aは、スパース空間に変換されたデータに対して近似解を求めた後にスパース逆変換を行うことによって、推定された画像データを生成する。また、再構成機能15aは、推定された画像データに対してフーリエ変換を施すことでk空間データを生成し、上述したスパース空間への変換、画像データの推定を再び行うといった、反復的操作を行うことで、画像を生成する。
このように、再構成機能15aは、各エレメントで収集された各MR信号データをk空間データに統合して画像データを再構成する。そして、再構成機能15aは、再構成した画像データを記憶回路12に格納する。
ステップS107において、主制御機能16aは、画像データを表示させる。例えば、主制御機能16aは、記憶回路12に格納された画像データをディスプレイ11に表示させる。なお、画像データの表示に際して、主制御機能16aは、レンダリング処理などの公知の画像処理技術を適宜適用することができる。
なお、図3にて説明した処理手順はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、MRI装置100は、処理内容に矛盾の無い範囲で処理手順を適宜入れ替えて実行可能である。
上述してきたように、実施形態に係るMRI装置100は、複数のエレメント50を有する受信コイル装置5を用いて、複数のエレメント50のそれぞれにおいて互いに異なる収集時刻のMR信号データを収集する。そして、MRI装置100は、各エレメント50で収集された各MR信号データをk空間データに統合して画像データを再構成する。これによれば、MRI装置100は、圧縮センシングによる再構成画像の画質を向上させることができる。
例えば、MRI装置100は、複数の独立したエレメント50を用いて、MR信号データを独立したタイミングでサンプリングを行う。このため、MRI装置100は、エレメント50の自由度を利用して、CS-MRIにおける間引きサンプリングのランダム性を向上させることができ、再構成画像の画質を向上させることができる。
また、例えば、MRI装置100は、異なる収集時刻においてMR信号データのサンプリングを行う。このため、MRI装置100は、収集タイミングの自由度を利用して、CS-MRIにおける間引きサンプリングのランダム性を向上させることができるので、再構成画像の画質を向上させることができる。なお、発振器17をADC81、検波器80ごとに複数設けた場合においては、各エレメント50のサンプリングタイミングの独立性が高まり、間引きサンプリングのランダム性をさらに向上させることができる。
また、例えば、MRI装置100は、位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeを、複数の波形の重ね合わせによって印加する。このため、MRI装置100は、位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeの自由度を利用して、CS-MRIにおける間引きサンプリングのランダム性を向上させることができるので、再構成画像の画質を向上させることができる。
このように、MRI装置100は、エレメント50の自由度、収集タイミングの自由度を、及び位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeの自由度の3つの自由度を利用することで、再構成画像の画質を向上させることができる。
また、MRI装置100は、各エレメント50によりMR信号データが収集された収集時刻を収集時刻テーブルに記録しておくことで、各MR信号データの再配置を行う。このため、MRI装置100は、複数のエレメント50の収集タイミングの精密な同期が不要となるため、精度がさほど高くない比較的安価な発振器17を適用することが可能となる。
(変形例1)
上記の実施形態では、各エレメント50における収集タイミングを規則的に異ならせる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、収集機能14aは、ランダムサンプリングによってMR信号データを収集することも可能である。
図9は、実施形態の変形例1に係る収集機能14aの処理を説明するための図である。図9には、上から順に、各エレメント50による収集タイミングと、収集時刻テーブルにおける記録タイミングとを例示する。なお、図9の横軸は、経過時間に対応する。
図9に示すように、収集機能14aは、各エレメント50における収集タイミングをランダムに制御する。また、収集機能14aは、各エレメント50においてMR信号データが収集された収集時刻を収集し、収集時刻テーブルに記録する。これにより、ランダムサンプリングの場合にも、再構成機能15aは、リグリッディングを行うことができる。
このように、収集機能14aは、ランダムサンプリングによってMR信号データを収集する。これにより、収集機能14aは、収集タイミングの自由度を利用して、CS-MRIにおける間引きサンプリングのランダム性を向上させることができる。
(変形例2)
また、例えば、収集機能14aは、各エレメントの感度分布情報に基づいて、各エレメントのサンプリングの頻度を異ならせることも可能である。
図10は、実施形態の変形例2に係る収集機能14aの処理を説明するための図である。図10には、上から順に、各エレメント50による収集タイミングと、収集時刻テーブルにおける記録タイミングとを例示する。なお、図10の横軸は、経過時間に対応する。
例えば、収集機能14aは、各エレメント50の感度分布情報を比較して、関心領域に対する感度が最も高いエレメント50を選択する。ここで、エレメント50aの感度が最も高い場合には、収集機能14aは、エレメント50aによるサンプリングの頻度が他のエレメント50b,50cの頻度より多くなるように、各エレメント50の収集タイミングを決定する。図10に示す例では、収集機能14aは、一定期間におけるエレメント50aのサンプリング回数を4回とし、他のエレメント50b,50cのサンプリング回数を2回ずつとする。そして、収集機能14aは、決定した各エレメント50の収集タイミングに従って、各エレメント50のサンプリングを行う。サンプリングされたMR信号データは、収集時刻テーブルにおける記録タイミングに基づいてk空間上で再配置される。
このように、収集機能14aは、感度が良好なエレメント50によるMR信号データを多く収集することで、再構成画像の画質のSNR(Signal-to-Noise Ratio)を更に向上させることができる。
(変形例3)
また、例えば、収集機能14aは、様々な種類の波形を任意数重ね合わせて、傾斜磁場Gpeを印加することも可能である。
図11は、実施形態の変形例3に係る収集機能14aの処理を説明するための図である。図11には、位相エンコード方向の傾斜磁場Gpeの波形を例示する。なお、図11の横軸は、経過時間に対応する。
図11に示すように、収集機能14aは、エンコード波形の波形e1、波形e2、及び波形e3を組み合わせることで、傾斜磁場Gpeを印加する。ここで、波形e1及び波形e2は、図5に例示した波形e1及び波形e2と同様であるので説明を省略する。また、波形e3は、一定の振幅及び周波数を有する三角波である。収集機能14aは、波形e1及び波形e2に加え、正弦波の波形e3を重ね合わせることにより、1回のリードアウト傾斜磁場Groの印加の間に複数ラインのk空間を充填することになり、効率を上げることができる。
このように、収集機能14aは、3つ以上の波形の重ね合わせにより傾斜磁場Gpeを印加することが可能である。また、収集機能14aは、図示の波形に限らず、台形波、矩形波、正弦波、三角波、ノコギリ波など、任意の種類の波形を任意に重ね合わせることができる。
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上記の実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、上記の実施形態及び変形例で説明した画像再構成方法は、予め用意された画像再構成プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像再構成プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この画像再構成プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、圧縮センシングによる再構成画像の画質を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。