JP7221653B2 - 光波長変換部品の製造方法及び発光装置 - Google Patents

光波長変換部品の製造方法及び発光装置 Download PDF

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Description

本開示は、例えばヘッドランプや照明やプロジェクター等の各種光学機器に用いられるような、光の波長の変換が可能な光波長変換部材を備えた光波長変換部品、及び光波長変換部品を備えた発光装置、並びに光波長変換部品の製造方法に関するものである。
従来、ヘッドランプや各種照明機器などでは、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や半導体レーザー(LD:Laser Diode)の青色光を、光波長変換部材である
蛍光体によって波長変換することにより、白色を得ている装置が主流となっている。
この蛍光体としては、樹脂系やガラス系などが知られているが、近年、光源の高出力化が進められており、蛍光体には、より高い耐久性が求められるようになったことから、セラミックス蛍光体に注目が集まっている。
また、上述した蛍光体は、例えば基板上に配置されるとともに、樹脂やガラスによって基板等に固定されていた(特許文献1、2参照)。
国際公開第2009/069671号 特開2014-107307号公報
ところで、上述した従来技術では、下記のような問題があり、その改善が求められていた。
具体的には、従来では、蛍光体は熱伝導率の低い樹脂やガラスで基板等に固定されているので、例えば蛍光体にレーザー光を照射して光波長変換を行う際に、蛍光体が高温になると、その熱を十分に外部に放出(即ち放熱)できないことがある。その場合には、いわゆる蛍光体の温度消光によって、発光強度が低下してしまう。なお、温度消光とは、蛍光体の温度が過度に上昇すると発光強度が低下する現象である。
また、蛍光体が高温になると、耐熱性の低い樹脂の場合には、樹脂が変質することがあり、樹脂が変質すると、蛍光体を固定する性能が低下する恐れがある。
この対策として、本願発明者等は、樹脂等より熱伝導率の高い金属枠を使用して蛍光体を固定する研究を行っているが、その際に、金属枠と蛍光体との間から光が漏れるという問題に直面にした。
つまり、材料が異なる金属枠と蛍光体とは、通常は熱膨張率が異なるので、例えば金属枠に(即ち枠内の貫通孔に)蛍光体を嵌め込んだ場合には、温度が変化すると、熱膨張率の違いによって金属枠と蛍光体との間に隙間が生ずることがある。
このように、金属枠と蛍光体との間に隙間が生じると、例えば蛍光体の一方の表面側から例えばレーザー光を照射して、蛍光体にて光波長変換させる場合には、金属枠と蛍光体との間の隙間からレーザー光が漏れてしまうという問題がある。そして、レーザー光が漏れると、その漏れた光と蛍光体から出力される光とが混合して、本来の目的とする色度の光が得られない恐れがある。
本開示は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光波長変換部材の温度の上昇を抑制できるとともに、金属枠と光波長変換部材との間から光が漏れることを抑制できる、光波長変換部品及び発光装置並びに光波長変換部品の製造方法を提供することにある。
(1)本開示の第1局面は、光の波長を変換し、一方の表面と他方の表面を有する光波長変換部材と、光波長変換部材を囲む枠状の金属枠と、を備えた光波長変換部品に関するものである。
この光波長変換部品では、光波長変換部材は、金属枠の貫通孔にて金属枠に直接に接触し且つ一方の表面と他方の表面とが外部に露出した状態で、金属枠に固定されている。しかも、光波長変換部品を一方の表面側又は他方の表面側から見た場合に、金属枠の光波長変換部材側の内側部は、光波長変換部材の外周に沿った外周部と重なる重なり部を有している。
本第1局面では、光波長変換部材は、金属枠に直接に接触した状態で金属枠に固定されているので、光波長変換部材の温度が上昇しにくいという効果がある。つまり、金属枠の熱伝導率は、上述した従来の樹脂やガラスの熱伝導率より高いので、光波長変換部材の温度が上昇した場合でも、その熱は金属枠側に容易に伝達される(即ち放熱される)。よって、光波長変換部材の温度が過度に上昇することを抑制できるので、好適に温度消光を抑制できる。
また、本第1局面では、光波長変換部品を一方の表面側又は他方の表面側から見た場合に、金属枠の光波長変換部材側の内側部は、光波長変換部材の外周に沿った外周部と重なる重なり部を有しているので、金属枠と光波長変換部材との熱膨張率が異なっている場合でも、金属枠と光波長変換部材との間に隙間が生じにくい。
詳しくは、例えば温度が低いときに、金属枠と光波長変換部材とが直接に接触している場合でも、温度が上昇して金属枠が外側に広がると、金属枠と光波長変換部材との接触部分が離れることがある。
しかし、本第1局面では、金属枠の内側部には光波長変換部材の外周部と重なる重なり部があるので、その重なり部によって、光波長変換部材の一方の表面側から他方の表面側に向かう方向(以下、面に向かう方向と記すこともある)における隙間ができにくいようになっている。
そのため、例えば光波長変換部材の一方の表面側から例えばレーザー光を照射して、光波長変換させる場合に、温度変化が生じても、金属枠と光波長変換部材との間の隙間からレーザー光が漏れにくい。その結果、本第1局面の光波長変換部品により、本来の目的とする色度の光が得られ易いという顕著な効果を奏する。
さらに、本第1局面では、金属枠の光波長変換部材側の内側部は、光波長変換部材の外周に沿った外周部と重なる重なり部を有しているので、金属枠と光波長変換部材とが確実に固定されているという利点がある。
つまり、金属枠と光波長変換部材との熱膨張率が異なっている場合には、温度変化によって、金属枠と光波長変換部材との間に隙間が生じ易いので、金属枠に光波長変換部材を固定する強度が低下し易い。そのため、例えば外力を受けた場合などには、光波長変換部材が金属枠から脱落し易い。
それに対して、本第1局面では、金属枠の光波長変換部材側の内側部は、光波長変換部材の外周に沿った外周部と重なる重なり部を有しているので、光波長変換部材が重なり部側に向かって外力を受けた場合には、重なり部が光波長変換部材の移動を規制する規制部として機能する。そのため、光波長変換部材が脱落しにくいという利点がある。
(2)本開示の第2局面では、金属枠は光波長変換部材の一方の表面側に重なり部を有しており、その一方の表面のうち重なり部を除く部分の面積は、一方の表面の全体の面積の80%以上であってもよい。
本第2局面のように、光波長変換部材の一方の表面のうち重なり部を除く部分の面積(即ち光が通過できる部分の面積)が、一方の表面の全体の面積の80%以上である場合には、光波長変換部材から一方の表面を介して外部に多くの光を照射することができる。
つまり、後述する実験例からも明らかなように、光が通過できる部分の面積が全面積の80%以上である場合には、光波長変換部材の発光強度が高いという効果がある。
(3)本開示の第3局面では、光波長変換部品を25℃~300℃の範囲で温度を変化させた場合に、熱膨張率が異なる光波長変換部材と金属枠との間にて一方の表面側から他方の表面側への方向に光が透過する隙間が生じないように、重なり部を設けてもよい。
このように重なり部を設けることにより、光波長変換部品を25℃~300℃の範囲で温度を変化させた場合でも、前記面に向かう方向における光の漏れを好適に抑制することができる。
なお、重なり部の寸法や形状は、光波長変換部材と金属枠との熱膨張率や、光波長変換部材と金属枠との寸法や形状に応じて、光の漏れが生じないように、実験やシミュレーション等によって設定すればよい。
(4)本開示の第4局面では、金属枠は、光波長変換部材の一方の表面側に重なり部を有しており、光波長変換部材の金属枠の貫通孔を形成する内周面に接する側面は、光波長変換部材の一方の表面に対して傾斜していてもよい。
このように、光波長変換部材の側面が一方の表面に対して傾斜していることで、光波長変換部材の側面と金属枠の内周面との接触面積が大きくなる。従って、光波長変換部材から金属枠への放熱性が向上する。
(5)本開示の第5局面では、金属枠は、光波長変換部材の一方の表面側に重なり部を有しており、光波長変換部材の側面は、光波長変換部材の一方の表面に対して、テーパ形状であってもよい。
この構成によって、光波長変換部材の側面(即ち全周における側面)における放熱性のムラが少なくなり、光波長変換部材の温度がより均一になる。
なお、ここでテーパ形状とは、光波長変換部材の厚み方向に沿って、すなわち、光波長変換部材の一方の表面側から他方の表面側に向けて、または、他方の表面側から一方の表面側に向けて、径方向の寸法が小さくなっている(即ち先細りになっている)形状を示している。
(6)本開示の第6局面では、金属枠は、光波長変換部材の一方の表面側に重なり部を有しており、光波長変換部材の一方の表面と、光波長変換部材の金属枠の貫通孔を形成する内周面に接する側面と、の間の角度は、80°以上100°以下の範囲であってもよい。
後述する実験例から明らかなように、一方の表面と側面との間の角度(即ち一方の表面に対する側面の傾斜の角度)が80°未満や100°を超える場合には、光波長変換部材の端部(即ちエッジ部)が割れやすくなるので、80°以上100°以下の範囲が好適である。
ここで、エッジ部とは、光波長変換部材を厚み方向に破断した場合に、側面と一方の表面又は他方の表面とのなす角の部分である。なお、エッジ部は、一方の表面側と他方の表面側の両方にあるが、割れ易いのは、エッジ部における角度(エッジ角)が鋭角の部分である。
(7)本開示の第7局面では、光波長変換部材の一方の表面と光波長変換部材の側面との間の角度は、85°以上95°以下の範囲であってもよい。
後述する実験例から明らかなように、一方の表面と側面との間の角度(即ち一方の表面に対する側面の傾斜の角度)が85°以上95°以下の範囲にある場合には、光波長変換部品として総合的に優れた性能を有するので、この範囲が好適である。
詳しくは、後述するように、他の条件が同じ場合に、一方の表面と側面との間の角度(以下発光側エッジ角と称することがある)が小さくなるほど、一方の表面の面積(例えば発光面積)が増加するので、発光強度が増加する。
また、重なり部の幅(図3Bのw参照)が同じ場合には、発光側エッジ角が小さくなるほど、一方の表面の露出面積が増加するので、この点からも発光強度が増加する。
さらに、発光側エッジ角が大きくなるほど、固定強度が増加する。なお、この場合の固定強度は、一方の表面と反対側の他方の表面側から一方の表面側に力を加えた場合の固定強度である。
従って、これらのことから、総合的に、上述した角度の範囲が好適である。
(8)本開示の第8局面では、金属枠を構成する材料が、Al(アルミニウム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)のうち少なくとも1種の金属、または、少なくとも1種の金属を含む金属複合体又は合金であってもよい。
本第8局面では、金属枠を構成する好適な材料を例示している。
なお、金属枠の材料としては、光波長変換部品の使用温度範囲において、光波長変換部材の熱伝導率よりも熱伝導率が大きな材料が用いられる。また、金属枠の材料としては、前記使用温度範囲において、光波長変換部材の熱膨張率よりも熱膨張率が大きな材料が用いられる。
なお、前記金属としては、前記金属の各単体(Al、Cu、Ni、Fe)のいずれかを用いることができる。また、前記金属のうち少なくとも1種を含む金属複合体や前記金属のうち少なくとも1種を含む合金としては、例えば銅タングステン(Cu-W)、銅モリブデン(Cu-Mo)、真鍮、ベリリウム銅合金、銅クロム合金、銅ジルコニウム合金、銅鉄合金、アルミニウム合金、ステンレス鋼等を用いることができる。
(9)本開示の第9局面では、金属枠を構成する材料が、Al又はAl合金であってもよい。
金属枠を構成する材料が、Al又はAl合金である場合には、後述するように光波長変換部品を製造する際に、その製造が容易である(即ち潰し易い)という効果がある。また、光波長変換部材から照射される光がAl又はAl合金に当たった場合でも、その反射光の波長が変化しにくいという利点がある。さらに、熱伝導率が高いという効果もある。
なお、Al合金とは、Alを主成分とする合金である。なお、主成分とは、最も含有量(例えば体積%)多い成分のことである。
(10)本開示の第10局面は、前記第1~第9局面のいずれかに記載の光波長変換部品と、光波長変換部材に光を照射する発光素子と、を備えた発光装置である。
本第10局面では、発光素子から光波長変換部材に光を照射することにより、光波長変換部材にて波長が変換された光(即ち蛍光)を、外部等に照射することができる。
この発光装置は、前記光波長変換部品を備えているので、上述した光波長変換部品による効果を発揮できる。
なお、発光装置の発光素子としては、例えばLEDやLDなどの公知の素子を用いることができる。
(11)本開示の第11局面では、金属枠の重なり部は、光波長変換部品において発光素子と反対側に設けられていてもよい。
これにより、光波長変換部材の前記金属枠の重なり部と反対側において、発光素子を配置する際の自由度が向上するという利点がある。
(12)本開示の第12局面は、前記第1~第9局面のいずれかに記載の光波長変換部品を製造する光波長変換部品の製造方法に関するものである。
この光波長変換部品の製造方法は、金属枠で囲まれた貫通孔の開口部と対向する位置に光波長変換部材を配置するとともに、金属枠の内側部と重なるように光波長変換部材の外周部を配置する工程と、光波長変換部材を金属枠の貫通孔に押し込むことにより、光波長変換部材の外周部にて金属枠の内側部を潰して重なり部を形成する工程と、を有している。
つまり、本第12局面では、光波長変換部材を金属枠の貫通孔に押し込むことにより、光波長変換部材を金属枠に固定することができる。また、その際に、光波長変換部材の外周部にて金属枠の内側部を潰すことによって、重なり部を形成することができる。
従って、本第12局面では、簡易な方法で光波長変換部品を製造することができるという効果を奏する。
なお、本第12局面では、光波長変換部材の材料としては、金属枠を潰すことができるように、金属枠よりは硬い材料を用いる。例えば光波長変換部材としては、セラミック製の部材を用いることができる。
<以下に、本開示の各構成について説明する>
・前記「光波長変換部材」として、セラミック製の部材(即ちセラミックス焼結体)を採用できる。
このセラミックス焼結体としては、例えば、Al結晶粒子と化学式A12:Ceで表される成分の結晶粒子との体積が最も多い(即ち主成分とする)多結晶体であるセラミックス焼結体を採用できる。
このセラミックス焼結体としては、A12中のAとBは下記元素群から選択される少なくとも1種の元素であるものを採用できる。
A:Sc、Y、ランタノイド(Ceは除く)
B:Al、Ga
なお、「A12:Ce」とは、A12中の元素Aの一部にCeが固溶 置換していることを示しており、このような構造を有することにより、同化合物は蛍光特性を示すようになる。
・前記金属枠の硬度としては、15~400Hvの範囲を採用できる。
第1実施形態の光波長変換部品を備えた発光装置を厚み方向に破断した断面図である。 図2Aは第1実施形態の光波長変換部品の平面図、図2BはそのA-A断面図である。 図3Aは第1実施形態の光波長変換部品の中心部分を拡大して示す平面図、図3BはそのB-B断面図である。 第1実施形態の光波長変換部品の製造工程を示す説明図である。 第2実施形態の光波長変換部品の中央部分を厚み方向に破断した断面図である。 図6Aは第3実施形態の光波長変換部品を軸線に沿って破断した断面図、図6Bは第4実施形態の光波長変換部品を軸線に沿って破断した断面図である。 図7Aは第5実施形態の発光装置を厚み方向に破断した断面図、図7Bは第6実施形態の光波長変換部品を厚み方向に破断した断面図、図7Cは第7実施形態の発光装置の一部を厚み方向に破断した断面図である。 図8Aは第8実施形態の発光装置を厚み方向に破断した断面図、図8Bはその光波長変換部材の平面図、図8Cはその変形例の発光装置を厚み方向に破断した断面図である。 実験例2の実験方法を示す説明図である。 実験例4の実験条件や実験結果を示す説明図である。 実験例5の実験条件や実験結果を示す説明図である。 実験例6の実験条件や実験結果を示す説明図である。 実験例7の実験条件や実験結果を示す説明図である。
次に、本開示の光波長変換部品、発光装置、光波長変換部品の製造方法の実施形態について説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.発光装置]
まず、第1実施形態の光波長変換部品を備えた発光装置について説明する。
図1に示すように、本第1実施形態の発光装置1は、例えばアルミナ等の箱状のセラミック製のパッケージ(容器)3と、容器3の内部に配置された例えばLD等の発光素子5と、容器3の開口部7を覆うように配置された板状の光波長変換部品9とを備えている。
また、光波長変換部品9は、後に詳述するように、光の波長を変換する光波長変換部材11と、光波長変換部材11を保持する金属枠13とから構成されている。なお、金属枠13の外周部15は、容器3の開口側の枠状の端面17に接合されている。
この発光装置1では、発光素子5から図1の矢印方向に放射された光(L)は、光波長変換部材11を透過するとともに、その光の一部は光波長変換部材11の内部で波長変換されて発光する。つまり、光波長変換部材11では、発光素子5から放射(即ち照射)される光の波長とは異なる波長の蛍光を発する。なお、Lの矢印の向きは、発光素子5から照射される光の向きである(以下同様)。
例えば、LDから照射される青色光が、光波長変換部材11によって波長変換されることにより、全体として白色光が光波長変換部材11から外部(例えば図1の上方)に照射される。
[1-2.光波長変換部品]
次に、光波長変換部品9について説明する。
図2に示すように、本第1実施形態の光波長変換部品9は、セラミック製の板状の光波長変換部材11と、光波長変換部材11の周囲を囲んで保持する板状の金属枠13とから構成されている。以下、詳細に説明する。
<光波長変換部材>
光波長変換部材11は、平面視で(即ち図2Bの上下方向である板厚方向(即ち厚み方向)から見た場合)、矩形状(例えば正方形)の部材である。
なお、光波長変換部材11の寸法としては、例えば縦1.0mm×横1.0mm×厚み0.18mmを採用できる。
この光波長変換部材11は、例えば、Al結晶粒子と、化学式A12:Ceで表される成分の結晶粒子(即ちA12:Ce結晶粒子)と、を主成分とする多結晶体であるセラミックス焼結体から構成されている。
なお、化学式A12:CeのA、Bは、化学式A12:Ceで示される物質を構成する各元素(但し異なる元素)を示しており、Oは酸素、Ceはセリウムである。
この光波長変換部材11としては、セラミックス焼結体全体におけるA12:Ceの割合が、セラミックス焼結体の3~70体積%のものを採用できる。
また、このセラミックス焼結体は、下記元素群から選択される少なくとも1種の元素から構成されているA12:Ceで表されるガーネット構造を有している。
A:Sc、Y、ランタノイド(Ceは除く)
B:Al、Ga
さらに、セラミックス焼結体は、A12:Ce中のCeの濃度が、元素Aに対して5mol%以下(但し0を含まず)である。
なお、上述したセラミックス焼結体としては、例えば、セラミックス焼結体中のYAG(YAl12)の割合が30体積%、Ce濃度がYAG中のYに対して0.3mol%になる焼結体を採用できる。
<金属枠>
金属枠13は、平面視で、四角枠状の板材であり、その中央に、板厚方向に貫通する矩形状(例えば正方形)の貫通孔19が形成されている。
この金属枠13は、例えばAl等の金属からなり、その硬度(例えばビッカース硬度)は光波長変換部材11よりも低い。つまり、金属枠13は、光波長変換部材11よりも柔らかい材料からなる。また、25℃~300℃の範囲では、金属枠13の熱膨張率は、光波長変換部材11の熱膨張率よりも大きい。
なお、金属枠13の外径寸法は、例えば縦10mm×横10mm×厚み0.2mmである。
また、貫通孔19は、平面視で、金属枠13の外周形状と相似であり、貫通孔19の周囲を囲む部分(金属枠13の枠部14)の幅は同じ寸法である。つまり、平面視で、貫通孔19の中心(重心)は、金属枠13の中心(重心)と一致している。
なお、貫通孔19の寸法(但し後述する重なり部25の無い位置での寸法)は、例えば縦1.0mm×横1.0mmである。
<光波長変換部品>
そして、図3に拡大して示すように、光波長変換部品9においては、光波長変換部材11は、金属枠13の貫通孔19内に配置されており、光波長変換部材11の厚み方向の一方の表面(例えば図3Bの上方の外面11a)と、他方の表面(例えば図3Bの下方の内面11b)とが、外部(即ち貫通孔19の外側)に露出している。
なお、外面11aが、光が光波長変換部材11から外部に照射される出射面(即ち発光面)であり、内面11bが、光が発光素子5側から光波長変換部材11に入射する入射面(即ち受光面)である。
また、光波長変換部材11の側面11c、即ち外面11aの外周と内面11bの外周とを繋ぐ帯状の側面11cは、金属枠13の貫通孔19の内周面19aに直接に接触している。
さらに、平面視で、金属枠13の光波長変換部材11側の内側部21(即ち貫通孔19の周囲を構成する金属枠13の内周部分)は、光波長変換部材11の外周に沿った外周部23と重なる重なり部25を有している。
この金属枠13の内周側の重なり部25は、平面視で、光波長変換部材11の外周に沿って帯状に延びる四角枠状であり、光波長変換部材11の外面11aの一部に接触して重なるように形成されている。なお、重なり部25は、図1に示すように、発光素子5とは反対側に設けられている。
この重なり部25の幅(即ち帯状部分の幅:w)は、例えば25μmであり、その厚みtは例えば20μmである。つまり、重なり部25は、光波長変換部品9を25℃~300℃の範囲で温度を変化させた場合に、熱膨張率が異なる光波長変換部材11と金属枠13との間にて厚み方向に光が透過する隙間が生じないように設定されている。
なお、光波長変換部材11の外面11aのうち重なり部25を除く部分の面積(即ち露出面積)は、外面11aの全体の面積の80%以上である。
[1-3.光波長変換部品の製造方法]
次に、光波長変換部品9の製造方法について説明する。
図4Aに示すように、まず、基台27上に、貫通孔19を有する金属枠13を配置した。なお、図示しないが、貫通孔19は、矩形状の例えばAlからなる金属板の中央を、プレス機によって打ち抜くことによって形成した。
次に、金属枠13の貫通孔19の開口部29と対向する位置(図4Aの上方)に、光波長変換部材11を配置した。このとき、金属枠13の内側部21の全周(即ち四角枠状の全周部分)と重なるように、光波長変換部材11の外周部23の全周(即ち矩形の外周の全周部分)を配置した。
なお、この段階では、貫通孔19の内径は、後述する押し込み後の内径(即ち光波長変換部品9における貫通孔19の内径)よりも小さく、例えば、平面視で、縦0.97mm×横0.97mmの正方形である。
次に、図4Bに示すように、プレス機30にて、光波長変換部材11を金属枠13の貫通孔19に押し込んで、光波長変換部材11を金属枠13に固定した。
その押し込む工程の際に、光波長変換部材11の外周部23にて金属枠13の内側部21を潰して重なり部25を形成した。
なお、光波長変換部材11の外周部23にて金属枠13の内側部21を潰すことにより、貫通孔19の内径(即ち重なり部25以外の内径)は大きくなる。
これにより、本第1実施形態の光波長変換部品9を得た。
[1-4.効果]
次に、本第1実施形態の効果を説明する。
(1)本第1実施形態では、光波長変換部材11は、熱伝導率の高い金属枠13に直接に接触した状態で金属枠13に固定されているので、光波長変換部材11の温度が上昇しにくいという効果がある。よって、光波長変換部材11の温度が過度に上昇することを抑制できるので、好適に温度消光を抑制できる。
(2)本第1実施形態では、平面視で、金属枠13の内側部21は、光波長変換部材11の外周部23と重なる重なり部25を有している。よって、金属枠13と光波長変換部材11との熱膨張率が異なっている場合に、温度変化が生じても、金属枠13と光波長変換部材11との間に隙間が生じにくい。
そのため、発光素子5から光波長変換部材11に光を照射して、光波長変換させる場合に、温度変化が生じても、金属枠13と光波長変換部材11との間の隙間から光が漏れにくい。その結果、本第1実施形態の光波長変換部品9では、本来の目的とする色度の光が得られ易いという顕著な効果を奏する。
なお、色度とは、国際照明委員会(CIE)のXYZ表色形を使用した色度図により求められる色度である。
(3)本第1実施形態では、平面視で、金属枠13の内側部21は、光波長変換部材11の外周部23と重なる重なり部25を有しているので、その重なり部25が支えとなって、金属枠13と光波長変換部材11とが確実に固定されている。そのため、例えば厚み方向(例えば図1の上方)に向かう力を受けた場合でも、光波長変換部材11が金属枠13から脱落しにくいという利点がある。
(4)本第1実施形態では、光波長変換部材11の外面11aのうち重なり部25を除く部分の面積(即ち露出面積)は、外面11bの全体の面積の80%以上であるので、光波長変換部材11から外部に多くの光を照射することができる。よって、光波長変換部材11の発光強度が高いという効果がある。
(5)本第1実施形態面では、光波長変換部品9を25℃~300℃の範囲で温度を変化させた場合に、熱膨張率が異なる光波長変換部材11と金属枠13との間にて厚み方向に光が透過する隙間が生じないように、重なり部25を設けている。従って、発光装置1の使用中に温度に変化が生じても、厚み方向における光の漏れを好適に抑制することができる。
(6)本第1実施形態では、金属枠13を構成する材料として、例えばAl(又はAl合金)を用いるので、光波長変換部品9を製造する際に、その製造が容易である(即ち潰し易い)という効果がある。
また、光波長変換部材11から照射される光が金属枠13に当たった場合でも、その反射光の波長が変化しにくいので、結果として、光波長変換部品9から出力される光の色度が変化しにくいという利点がある。さらに、熱伝導率が高いという効果もある。
(7)本第1実施形態の発光装置1は、前記光波長変換部品9を備えているので、上述した光波長変換部品9による効果を発揮できる。
(8)本第1実施形態の光波長変換部品9の製造方法では、光波長変換部材11を金属枠13の貫通孔19に押し込むことにより、光波長変換部材11を金属枠13に固定することができる。また、その際に、光波長変換部材11の外周部23にて金属枠13の内側部21を潰すことにより重なり部25を形成することができる。従って、簡易な方法で光波長変換部品9を製造することができるという効果を奏する。
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ番号を用いて説明する。
図5に示すように、本第2実施形態の光波長変換部品31は、第1実施形態と同様に、平面視で四角枠状の金属枠13の貫通孔19に、光波長変換部材11が固定されたものである。
本第2実施形態では、平面視で四角枠状の重なり部33は、金属枠13の外面13a(図5の上方の表面:光の出射側)よりも外部(図5の上方)に突出している。
本第2実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。
[3.第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ番号を用いて説明する。
図6Aに示すように、本第3実施形態の光波長変換部品41は、第1実施形態と同様な光波長変換部材11が、筒状の金属枠43の先端側(図6Aの上方)の板状部45に固定されたものである。
詳しくは、金属枠43は、四角形の筒状の筒状部47と、筒状部47の先端側を覆う板状部45とから一体に構成されており、この板状部45の(第1実施形態と同様な)貫通孔19に光波長変換部材11が固定されている。
本第3実施形態では、第1実施形態と同様に、平面視(図6Bの上下方向から見た場合)で四角枠状の重なり部25は、板状部45の内周側を構成する内側部49の先端側に設けられており、光波長変換部材11の外面11aの外周を覆っている。
本第3実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。
[4.第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ番号を用いて説明する。
図6Bに示すように、本第4実施形態の光波長変換部品51は、第1実施形態と同様な光波長変換部材11が、筒状の金属枠53の先端側(図6Bの上方)に固定されたものである。
詳しくは、金属枠53は、四角形の筒状であり、その軸方向に設けられた貫通孔55の先端側の開口部57を覆うように、光波長変換部材11が固定されている。
本第4実施形態では、貫通孔55は、後端側より先端側の内径が大きくなっており、内径が異なる段差部分が重なり部59を構成している。
本第4実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。
[5.第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ番号を用いて説明する。
図7Aに示すように、本第5実施形態の発光装置61は、基台63上に発光素子5が配置され、その発光素子5を覆うように、金属枠65及び光波長変換部材11からなる光波長変換部品67が配置されている。
詳しくは、金属枠67は、平面視(図7Aの上下方向から見た場合)で四角枠状の筒状部69と、その先端側(図7Aの上方)を覆う四角枠状の板状部71とから一体に構成されている。また、光波長変換部材11は、板状部71の貫通孔19に固定されている。
なお、重なり部25は、第1実施形態と同様に、光波長変換部材11の外面11aの外周を覆うように、板状部71の貫通孔19側である内側部73に沿って設けられている。
また、本第5実施形態では、発光素子5は光波長変換部材11の内面11bに密着するように配置されている。
本第5実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。また、本第5実施形態では、発光素子5は光波長変換部材11の内面11bに密着するように配置されているので、発光素子5から照射された光は、光波長変換部材11側に効率よく供給される。よって、光波長変換部材11の発光強度が高いという利点がある。
[6.第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ番号を用いて説明する。
図7Bに示すように、本第6実施形態の発光装置81は、平面視で四角枠状の金属枠13の貫通孔19に、光波長変換部材11と発光素子5とが配置されたものである。
つまり、貫通孔19内において、図7Bの上方より、光波長変換部材11と発光素子5とが積層されている。また、光波長変換部材11と発光素子5との側面は、貫通孔19の内周面に接触している。なお、金属枠13の厚みは、光波長変換部材11と発光素子5とを収容できる程度の厚みとされている。
また、重なり部25は、第1実施形態と同様に、光波長変換部材11の外面11aの外周を覆うように、金属枠13の貫通孔19側である内側部21に沿って設けられている。
本第6実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。また、本第6実施形態では、発光素子5は、貫通孔19内にて、光波長変換部材11の内面11bに密着するように配置されているので、発光素子5から照射された光は、光波長変換部材11側に一層効率よく供給される。よって、光波長変換部材11の発光強度が高いという利点がある。
[7.第7実施形態]
次に、第7実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ番号を用いて説明する。
図7Cに示すように、本第7実施形態の発光装置91では、平面視で四角枠状の金属枠13の貫通孔19に光波長変換部材11が配置され、その光波長変換部材11の内面11bに密着して発光素子5が配置されている。
特に本第7実施形態では、重なり部93は、第1実施形態とは逆に、光波長変換部材11の内面11bの外周を覆うように、金属枠13の貫通孔19側である内側部21に沿って設けられている。
なお、発光素子5は、重なり部93の内周側に配置されている。また、金属枠13の外周の発光素子5側(図7Cの下方)には、筒状部95が接合されている。
本第7実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。また、本第5実施形態と同様に、光波長変換部材11の発光強度が高いという利点がある。
[8.第8実施形態]
次に、第8実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同じ構成については、同じ番号を用いて説明する。
[8-1.発光装置の構成]
図8Aに示すように、本第8実施形態の発光装置101では、箱状の基台103の底面103a上に発光素子5(例えばLED)が配置され、その発光素子5を覆うように、金属枠105及び光波長変換部材107からなる光波長変換部品109が配置されている。なお、この光波長変換部材107は第1実施形態とは形状が異なるが、材料は同じである。
詳しくは、金属枠105は、第1実施形態とほぼ同様に、平面視(図8Aの上下方向から見た場合)で四角枠状の板材であり、光波長変換部材107は、金属枠105の平面視で正方形の貫通孔111にはめ込まれて固定されている。
特に本第8実施形態では、光波長変換部材107の形状は、第1実施形態とは異なり、その側面106はテーパ形状となっている。つまり、側面106は外面(即ち発光面である一方の表面)107aに対して、所定の角度(発光側エッジ角)θの範囲内で傾斜している。
詳しくは、光波長変換部材107は、図8Bに示すように、平面視が正方形の板材であり、その四方の側面106a、106b、106c、106d(106と総称する)は、図8Aに示すように、光波長変換部材107の発光面107aに対して、所定の角度(即ち発光側エッジ角θ)で傾斜している。
なお、発光面107aは、光波長変換部材107の厚み方向の一方の表面(即ち発光素子5が配置される側と反対側の表面)である。
ここでは、全ての側面106は、発光面107aに対して同様な角度で傾斜している。つまり、光波長変換部材107の側面106の形状は、発光面107aに対して同様な角度で傾斜するいわゆるテーパ形状となっている。
前記発光側エッジ角θは、例えば75°~105°の範囲である。なお、図8Aは、発光側エッジ角θが鋭角の場合を例示している。なお、発光側エッジ角θが90°の場合には、発光面107aに対して側面106は傾斜していない。
一方、光波長変換部材107が嵌めこまれる貫通孔111を形成する内周面111a(即ち側面106と接する内周面111a)は、光波長変換部材107の側面106の形状と一致するように、側面106と同様な角度(即ち発光側エッジ角θ)で傾斜している。つまり、貫通孔111を形成する内周面111aの形状も光波長変換部材107の側面106と同様なテーパ形状となっている。
また、光波長変換部材107の受光面107bと発光素子5の発光側の表面5aとは、平面視で同じ形状であり、受光面107bと発光側の表面5aとは密着している。なお、光波長変換部材107の受光面107bと金属枠105の内面105b(図8Aの下方の面)とは、同一平面上にある。
そして、金属枠105には、貫通孔111を形成する内周面111aを構成する内側部113に沿って、重なり部25が設けられている。つまり、重なり部25は、第1実施形態と同様に、光波長変換部材107の発光面107aの外周の縁部を覆うように、金属枠105の貫通孔111側である内側部113に沿って設けられている。
[8-2.光波長変換部品の製造方法]
本第8実施形態の光波長変換部品109を製造する場合は、例えば、金属枠105に光波長変換部材107が嵌り込むテーパ形状の貫通孔111を開けておく。但し、この段階では重なり部25はない。
次に、この貫通孔111に、図8Aの上方より光波長変換部材107を嵌め込む。その後、重なり部25と同様な形状の例えば金属製の枠状の部材(即ち枠体)25aを、図8の上方より貫通孔111に嵌める。
そして、枠体25aを光波長変換部材107の発光面107a(詳しくは外周に沿った縁部)に密着させ、例えば接着剤により、枠体25aと金属枠105とを一体に接合する。なお、溶接やろう付け等によって、枠体25aと金属枠とを一体に接合してもよい。
[8-3.効果]
本第8実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。また、本第8実施形態は、第1実施形態に比べて、光波長変換部材107の側面106が金属枠105と接する面積が広いので、光波長変換部材107から金属枠105への放熱性がさらに優れるという効果がある。
さらに、本第8実施形態では、光波長変換部材107の側面106はテーパ形状であるので、全周における放熱性のムラが少なくなり、光波長変換部材107の温度がより均一になる。
さらに、本第8実施形態では、発光側エッジ角θが鋭角であるので、発光面107aの面積(発光面積)が広く、発光強度が高いという効果がある。
[8-4.変形例]
また、図8Cは、発光側エッジ角θが鈍角の場合の変形例を示している。
この場合には、第1実施形態と同様に、図8Cの下方から光波長変換部材107を貫通孔111に押し込んで(即ち圧入して)、光波長変換部材107を金属枠105に固定できる。
また、光波長変換部材107を貫通孔111に押し込む際に、金属枠105の内側部113を押し潰して、発光面107a側に重なり部25を形成することができる。
このような変形例においても、上述のように、光波長変換部材107から金属枠105への放熱性がさらに優れるという効果がある。
さらに、発光側エッジ角θが鈍角であるので、受光面107b側から発光面107a側に向けて、光波長変換部材107に外力が加わった際に、光波長変換部材107が金属枠105から脱落することが抑制される。つまり、光波長変換部材107が金属枠105に固定されている際の固定強度が向上するという利点がある。
[9.実験例]
次に、本開示の効果を確認するために行った実験例について説明する。
<実験例1>
本実験例1は、本開示例と比較例とについて、光波長変換部材の温度消光について調べたものである。
本開示例の試料として、第1実施形態と同様な光波長変換部品を用いた。
光波長変換部材(即ち蛍光体)としては、第1実施形態と同様に、セラミックス焼結体からなる四角状の板材を用いた。この光波長変換部材の寸法は、縦1mm×横1mm×厚み0.18mmである。
金属枠としては、第1実施形態と同様に、Alからなる四角枠状の板材を用いた。この金属枠の寸法は、外径が縦10mm×横10mm×厚み0.2mm、貫通孔の内径は縦1mm×横1mmである。
なお、重なり部の幅は、平均で25μmである。
そして、実験例1の試料の光波長変換部材に対して、レーザー光を照射した。詳しくは、レーザー光を照射するレーザー装置の出力(従って出力密度)を徐々に増加させて、温度消光が生じたレーザー装置の出力を求めた。
なお、レーザー装置としては、波長465nmの青色LD光を発生させる装置を用い、レーザー装置の出力を0.5Wから始めて、0.5Wずつ段階的に増加させた。各段階におけるレーザー装置の出力の保持時間は5分間とした。
その結果、本開示例の場合には、レーザー装置の出力が6Wとなるまで、温度消光は生じなかった。
また、比較例として、金属枠がない光波長変換部材に対して、前記と同様にしてレーザー光を照射し、温度消光が生じたレーザー装置の出力を求めた。
その結果、比較例の場合には、レーザー装置の出力が1Wで、温度消光が生じた。
この実験結果から、本開示例の場合には、比較例に比べて、温度消光が生じにくいことが分かる。
<実験例2>
本実験例2は、本開示例と比較例とについて、光波長変換部材が金属枠に固定されている強度(固定強度:接合強度)を調べたものである。
本開示例の試料として、第1実施形態と同様な光波長変換部品を用いた。
光波長変換部材(即ち蛍光体)としては、第1実施形態と同様に、セラミックス焼結体からなる四角状の板材を用いた。この光波長変換部材の寸法は、縦1mm×横1mm×厚み0.18mmである。
金属枠としては、第1実施形態と同様に、Alからなる四角枠状の板材を用いた。この金属枠の寸法は、外径が縦10mm×横10mm×厚み0.2mm、貫通孔の内径は縦1mm×横1mmである。
なお、重なり部の幅は、平均で25μmである。
そして、図9に示すように、四角枠状の基台(131)の上に、第1実施形態と同様な光波長変換部品(9)を配置した。詳しくは、重なり部(25)が形成されている側を下にし、且つ、重なり部が基台の貫通孔(133)内に位置するようにして、基台上に光波長変換部品を配置した。
この状態で、プレス機によって、光波長変換部材(11)を下方に押圧し、光波長変換部材が金属枠から脱落するまでの圧力を求めた。
その結果、本開示例の場合には、1.2kg/mmの圧力で、光波長変換部材が金属枠から脱落した。
また、比較例として、重なり部がない金属枠に光波長変換部材を嵌め込んだ波長変換部材を作成した(図示せず)。そして、前記と同様にして、光波長変換部材を下方に押圧し、光波長変換部材が金属枠から脱落するまでの圧力を求めた。
その結果、比較例の場合には、0.2kg/mmの圧力で、光波長変換部材が金属枠から脱落した。
この実験結果から、本開示例の場合には、比較例に比べて、光波長変換部材は金属枠に強固に固定されていること(即ち接合強度が高いこと)が分かる。
<実験例3>
本実験例3は、本開示例と比較例とについて、光波長変換部材の露出面積と発光強度との関係を調べたものである。
本開示例の試料として、第1実施形態と同様な光波長変換部品を用いた。但し、露出面積が異なるものを複数(4種類)準備した。
光波長変換部材(即ち蛍光体)としては、第1実施形態と同様に、セラミックス焼結体からなる四角状の板材を用いた。この光波長変換部材の寸法は、縦1mm×横1mm×厚み0.18mmである。
金属枠としては、第1実施形態と同様に、Alからなる四角枠状の板材を用いた。この金属枠の寸法は、外径が縦10mm×横10mm×厚み0.2mm、貫通孔の内径は縦1mm×横1mmである。
本実験例3では、No.1~4の各試料として、重なり部の幅を調節して、下記表1に示すように、光波長変換部材の外面の全面積に対する露出面積の割合(露出率)を設定した。
Figure 0007221653000001
そして、実験例3の各試料の光波長変換部材に対して、レーザー光を照射した。詳しくは、レーザー光を照射するレーザー装置の出力を一定(例えば3W)とし、各試料から出力される光の強度(発光強度)を求めた。詳しくは、出力された光をレンズによって集光し、パワーセンサーによりその発光強度を測定した。
なお、表1の各試料の発光強度は、重なり部が無い光波長変換部品における発光強度を100%とし、それに対する割合で示している。
その結果、露出率が80%以上では、発光強度が82%以上であり、露出率が73%以下よりも発光強度が高かった。なお、表1の「○」は発光強度が80%以上を示し、「△」は発光強度が80%未満を示している。
<実験例4>
本実験例4は、本開示例の試料について、発光側エッジ角θが異なる光波長変換部材の温度消光を調べたものである。
本実験例4では、図10に示すように、光波長変換部材(141)としては、第1実施形態と同様な材料のセラミックス焼結体からなる四角状の板材を用いた。この光波長変換部材の寸法は、縦1mm×横1mm×厚み0.18mmである。なお、縦横の寸法は、発光素子(143)に接する側(即ち受光面)の寸法であり、受光面の形状や寸法は各試料同じである(以下同様)。
金属枠(145)としては、第1実施形態と同様に、Alからなる四角枠状の板材を用いた。この金属枠の寸法は、外径が縦10mm×横10mm×厚み0.2mmである。
本実験例4では、前記第1実施形態と同様な材料のセラミックス焼結体からなる四角状の板材と前記第1実施形態と同様なAlからなる四角枠状の板材とに対して、本開示例の試料として、第8実施形態と同様な光波長変換部品の試料を作製した。つまり、図10に示すように、エッジ角度θ(即ち発光側エッジ角θ)を、105°から75°の範囲で、5°毎に変更した7種の試料(No.5~11)を作製した。
そして、実験例4の各試料の光波長変換部材に対して、レーザー光を照射した。詳しくは、レーザー光を照射するレーザー装置の出力(従って出力密度)を徐々に増加させて、温度消光が生じたレーザー装置の出力を求めた。
なお、レーザー装置としては、波長465nmの青色LD光を発生させる装置を用い、レーザー装置の出力を0.5Wから始めて、0.1Wずつ段階的に増加させた。各段階におけるレーザー装置の出力の保持時間は5分間とした。
その結果を、図10のレーザー出力の欄に示す。なお、図10に示すレーザー出力[W]の数値は、それぞれのサンプルにおいて、温度消光することなく光波長変換部材が発光することできたレーザー出力である。図10から明らかなように、発光側エッジ角θが90°から小さくなるほど又は大きくなるほど、光波長変換部材から金属枠への放熱性が向上し、温度消光が生じにくいという効果を得ることができる。
<実験例5>
本実験例5は、実験例4と同様な試料(No.5~11)を用いて、エッジ部の強度を調べたものである。
具体的には、前記図9に示すように、基体上に、重なり部側を下にして光波長変換部品を載置し、プレス機によって、光波長変換部材の発光素子の配置側(上側)から光波長変換部材を下方に押圧し、金属枠から光波長変換部材を打ち抜いた。
そして、打ち抜いた際に、各試料のエッジ部(詳しくはエッジ部のうち角度が90°以下のエッジ部)に欠けが生じたかどうかを調べた。具体的には、各試料毎に実験に用いる試料を100個ずつ用意して打ち抜きを行い、100個中に何個の欠けが生じたかを調べた。
その結果を、図11に示す。なお、図11では、100個中欠けが3個未満の場合を「○」で示し、3~5個の場合を「△」で示している。
図11から明らかなように、発光側エッジ角θが100°~80°の場合は、エッジ部の欠けが少なく好適である。つまり、光波長変換部材の強度が大きく好適である。
<実験例6>
本実験例6は、実験例4と同様な試料(No.5~11)を用いて、光波長変換部材の発光強度を調べたものである。
具体的には、各試料の光波長変換部材に対して、レーザー光を照射した。詳しくは、レーザー光を照射するレーザー装置の出力を一定(例えば3W)とし、各試料から出力される光の強度(発光強度)を求めた。詳しくは、出力された光をレンズによって集光し、パワーセンサーによりその発光強度を測定した。
その結果を、図12に示す。なお、図12では、各試料の発光強度は、発光側エッジ角θが90°の光波長変換部品における発光強度を100%とし、それに対する割合で示している。
図12から明らかなように、受光面の面積が同じ場合には、発光側エッジ角θが小さくなるほど、発光強度が大きくなるという効果を得ることができる。
<実験例7>
本実験例7は、実験例4と同様な試料(No.5~11)を用いて、光波長変換部材の固定強度を調べたものである。
具体的には、前記実験例5と同様に、プレス機によって、光波長変換部材を金属枠から打ち抜いた。そして、各試料を打ち抜いた際の最大強度(最大圧力)を調べた。
その結果を、図13に示す。図13から明らかなように、受光面の面積が同じ場合には、発光側エッジ角θが大きくなるほど、最大圧力(従って固定強度)が大きくなるという効果を得ることができる。
従って、上述した実験例4~7の実験結果を総合的に判断すると、発光側エッジ角θが85°~95°の範囲が総合的に最も好ましいことが分かる。
つまり、この範囲であれば、エッジ部強度、発光強度、固定強度が大きいので、好適である。
[10.他の実施形態]
本開示は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本開示を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)光波長変換部品や発光装置の用途としては、蛍光体、光波長変換機器、ヘッドランプ、照明、プロジェクター等の光学機器など、各種の用途が挙げられる。
(2)光波長変換部材としては、前記セラミックス焼結体に限らず、金属枠よりも硬度が高い各種のセラミックス焼結体などを採用できる。
(3)金属枠としては、前記AlやAl合金に限らず、光波長変換部材よりも熱伝導率が高く、光波長変換部材よりも硬度の低い各種の材料を採用できる。
(4)金属枠の光波長変換部材を支持した光波長変換部品の構成としては、前記各実施形態の構成に限らず、各種の構成が挙げられる。
(5)重なり部については、金属枠に光波長変換部材を押し込む際に、金属枠の内側部を押し潰して形成してもいいが、例えば機械加工などによって、予め金属枠に重なり部を設けておいてもよい。
この場合は、金属枠の貫通孔と光波長変換部材との寸法を調節して、金属枠の内側部を押し潰すことなく、金属枠に光波長変換部材を圧入する方法を採用できる。
また、金属枠の内側部を押し潰すことなく、金属枠に光波長変換部材を圧入した後に、重なり部と同様な形状の枠体を、金属枠の貫通孔に嵌めて、例えば溶接やろう付けや接着剤による接着等の方法で、光波長変換部材と金属枠と一体化してもよい。
(6)なお、上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を、省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
1、61、81、91、101…発光装置
5…発光素子
9、31、41、51、67、81、91、109…光波長変換部品
11、107…光波長変換部材
13、43、53、65、105…金属枠
19、55、111…貫通孔
21…内側部
23…外周部
25、33、59、93…重なり部
29、57…開口部

Claims (18)

  1. 光の波長を変換し、一方の表面と他方の表面を有する光波長変換部材と、
    前記光波長変換部材を囲む枠状の金属枠と、
    を備え、
    前記光波長変換部材は、前記金属枠の貫通孔にて当該金属枠に直接に接触し且つ前記一方の表面と前記他方の表面とが外部に露出した状態で、前記金属枠に固定されており、
    前記光波長変換部を前記一方の表面側又は前記他方の表面側から見た場合に、前記金属枠の前記光波長変換部材側の内側部は、前記光波長変換部材の外周に沿った外周部と重なる重なり部を有する、
    光波長変換部品、
    を製造する光波長変換部品の製造方法であって、
    前記金属枠で囲まれた前記貫通孔の開口部と対向する位置に前記光波長変換部材を配置するとともに、前記金属枠の前記内側部と重なるように前記光波長変換部材の前記外周部を配置する工程と、
    前記光波長変換部材を前記金属枠の前記貫通孔に押し込むことにより、前記光波長変換部材の前記外周部にて前記金属枠の前記内側部を潰して前記重なり部を形成する工程と、
    を有する、
    光波長変換部品の製造方法。
  2. 前記金属枠は前記光波長変換部材の前記一方の表面側に前記重なり部を有しており、
    前記一方の表面のうち前記重なり部を除く部分の面積は、前記一方の表面の全体の面積の80%以上である、
    請求項1に記載の光波長変換部品の製造方法。
  3. 前記光波長変換部品を25℃~300℃の範囲で温度を変化させた場合に、熱膨張率が異なる前記光波長変換部材と前記金属枠との間にて前記一方の表面側から前記他方の表面側への方向に光が透過する隙間が生じないように、前記重なり部を設けた、
    請求項1又は2に記載の光波長変換部品の製造方法。
  4. 前記金属枠は、前記光波長変換部材の前記一方の表面側に前記重なり部を有しており、
    前記光波長変換部材の前記金属枠の前記貫通孔を形成する内周面に接する側面は、前記光波長変換部材の前記一方の表面に対して傾斜している、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の光波長変換部品の製造方法。
  5. 前記金属枠は、前記光波長変換部材の前記一方の表面側に前記重なり部を有しており、
    前記光波長変換部材の前記側面は、前記光波長変換部材の前記一方の表面に対して、テーパ形状である、
    請求項4に記載の光波長変換部品の製造方法。
  6. 前記金属枠は、前記光波長変換部材の前記一方の表面側に前記重なり部を有しており、
    前記光波長変換部材の前記一方の表面と、前記光波長変換部材の前記金属枠の前記貫通孔を形成する内周面に接する側面と、の間の角度は、80°以上100°以下の範囲である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の光波長変換部品の製造方法。
  7. 前記光波長変換部材の前記一方の表面と、前記光波長変換部材の前記側面と、の間の角度は、85°以上95°以下の範囲である、
    請求項6に記載の光波長変換部品の製造方法。
  8. 前記金属枠を構成する材料が、Al、Cu、Ni、Feのうち少なくとも1種の金属、または、前記少なくとも1種の金属を含む金属複合体又は合金である、
    請求項1~7のいずれか1項に記載の光波長変換部品の製造方法。
  9. 前記金属枠を構成する材料が、Al又はAl合金である、
    請求項8に記載の光波長変換部品の製造方法。
  10. 光の波長を変換し、一方の表面と他方の表面を有する光波長変換部材と、前記光波長変換部材を囲む枠状の金属枠と、を備えた光波長変換部品と、
    前記光波長変換部材に光を照射する発光素子と、
    を備えた、発光装置であって、
    前記光波長変換部材は、前記金属枠の貫通孔にて当該金属枠に直接に接触し且つ前記一方の表面と前記他方の表面とが外部に露出した状態で、前記金属枠に固定されており、
    前記光波長変換部品を前記一方の表面側又は前記他方の表面側から見た場合に、前記金属枠の前記光波長変換部材側の内側部は、前記光波長変換部材の外周に沿った外周部と重なる重なり部を有し、
    前記金属枠の前記重なり部は、前記光波長変換部品において前記発光素子と反対側にのみ設けられている、
    発光装置。
  11. 前記金属枠は、前記発光素子と反対側である前記光波長変換部材の前記一方の表面側に前記重なり部を有しており、
    前記一方の表面のうち前記重なり部を除く部分の面積は、前記一方の表面の全体の面積の80%以上である、
    請求項10に記載の発光装置
  12. 前記光波長変換部品を25℃~300℃の範囲で温度を変化させた場合に、熱膨張率が異なる前記光波長変換部材と前記金属枠との間にて前記一方の表面側から前記他方の表面側への方向に光が透過する隙間が生じないように、前記重なり部を設けた、
    請求項10又は11に記載の発光装置
  13. 前記金属枠は、前記発光素子と反対側である前記光波長変換部材の前記一方の表面側に前記重なり部を有しており、
    前記光波長変換部材の前記金属枠の前記貫通孔を形成する内周面に接する側面は、前記光波長変換部材の前記一方の表面に対して傾斜している、
    請求項10~12のいずれか1項に記載の発光装置
  14. 前記金属枠は、前記発光素子と反対側である前記光波長変換部材の前記一方の表面側に前記重なり部を有しており、
    前記光波長変換部材の前記側面は、前記光波長変換部材の前記一方の表面に対して、テーパ形状である、
    請求項13に記載の発光装置
  15. 前記金属枠は、前記発光素子と反対側である前記光波長変換部材の前記一方の表面側に前記重なり部を有しており、
    前記光波長変換部材の前記一方の表面と、前記光波長変換部材の前記金属枠の前記貫通孔を形成する内周面に接する側面と、の間の角度は、80°以上100°以下の範囲である、
    請求項10~12のいずれか1項に記載の発光装置
  16. 前記光波長変換部材の前記一方の表面と、前記光波長変換部材の前記側面と、の間の角度は、85°以上95°以下の範囲である、
    請求項15に記載の発光装置
  17. 前記金属枠を構成する材料が、Al、Cu、Ni、Feのうち少なくとも1種の金属、または、前記少なくとも1種の金属を含む金属複合体又は合金である、
    請求項10~16のいずれか1項に記載の発光装置
  18. 前記金属枠を構成する材料が、Al又はAl合金である、
    請求項17に記載の発光装置
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