JP7221205B2 - 改変クモ糸タンパク質及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、改変クモ糸タンパク質と、斯かるタンパク質の繊維を製造するための方法の分野に関する。
クモ糸は腹腺で産生されるスピドロイン(spidroin)からなる。多くのクモは最大7種の異なる糸を異なる腺から産生する。これらはそれぞれ異なる目的に使用され、異なる力学特性を有する。コガネグモ類(orbweavers)が産生する最も強靭な糸として、引き綱(dragline silk)(大瓶状腺(major ampullate gland)由来)及び小瓶状糸(minor ampullate silk)(小瓶状腺(minor ampullate gland)由来)の2つが挙げられる。大瓶状スピドロイン(major ampullate spidroins:MaSp)及び小瓶状スピドロイン(minor ampullate spidroins:MiSp)を含むスピドロインの大半は、非反復N末端ドメイン(N-Terminal domain:NT)、長大な反復領域(repetitive region:REP)、及び非反復C末端ドメイン(C-Terminal domain:CT)からなる共通の構造を有している。クモは縄張りを有し、その生産する糸は少量に過ぎないことから、クモ糸を何らかの工業用途に供するには、組換スピドロインを産生し、人工クモ糸繊維を生成することが必要となる。スピドロインは、例えば細菌、酵母、及び虫の細胞で産生することができるが、こうして得られた組換タンパク質は殆どの場合、その基となる天然産物とは大きく異なり、末端ドメインの一方又は両方が欠落していると共に、反復領域もコンセンサスリピートの繰り返しから変わっていることが多い。更に、こうして生産されるスピドロインは、製法をスケーラブルとするにはあまりにも収率が低く、及び/又は、水溶性が低い。その理由の一つは、おそらくこれらのスピドロインが本質的に自己集合しやすい傾向を有する点にあると思われる。しかし、産生レベル及び溶解性に関しては、最適でないスピドロインコンストラクトの使用が、旧来の欠点の原因となっている可能性がある。驚くべきことに、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)やギ酸等の溶媒を用いた場合でも、組換スピドロインの溶解性は、天然のドープにおけるスピドロインの極めて高い溶解性(タンパク質濃度30~50%w/w、即ち300~500mg/mLを示す)には遠く及ばない。
クモ糸腺及び紡糸管(spinning duct)における条件の解析が進展し、これらの腺に沿ってpHが7.6から≦5.7へと徐々に低下していることが分かってきた。斯かる条件の変化によって、末端ドメインに独自の立体構造変化が生じる結果、ロック・アンド・トリガー(lock and trigger)機構を通じて繊維が形成される。糸腺内で中性pHで保存されている間、NTはモノマーで極めて溶解性が高く、これがスピドロイン全体の高い溶解性に寄与しているものと考えられる。本願においてより重要なのは、紡糸管内でpHが低下する際に、NTが安定なダイマーを形成する結果、スピドロインが大きなネットワーク内に固定されるということである。pHがCTに対して与える作用はまだ決定されておらず、異なる作用が観察されている。ある研究によれば(Andersson et al, PLoS Biol 12(8): e1001921. doi:10.1371/ journal.pbio.1001921)、pHの低下がCTを不安定化させ、折り畳み構造を解放して、βシートアミロイド様原線維へと変換する。斯かるCTの構造変換が、アミロイド原線維形成に見られる核形成現象の場合と同様に、反復領域のβシート構造への転移を誘発するとの仮説が示されている。斯かる糸腺の管に沿って紡糸ドープ(spinning dope)の脱水が生じると共に、徐々に狭まる菅に沿って剪断力が発生し、これがスピドロインの末端ドメインに影響を与える可能性が高い。分子動力学シミュレーションの結果は、反復領域の構造変換においても、剪断力が重要な役割を果たしていることを示している。
改変された組換クモ糸タンパク質が、国際公開第2007/078239号に記載されている。クモ糸タンパク質のポリマーを製造する方法が、国際公開第2010/123450号に記載されている。
斯かる公知の改変クモ糸タンパク質及びその製造方法は、前記のような欠点を有することから、本技術分野では改良された改変クモ糸タンパク質が求められている。
即ち、本発明の目的の一つは、特に水への高い溶解性を有し、スケーラブルな産生が可能であると共に、生体模倣的な仕方で重合し、真にクモ糸様の有用な繊維を形成することが可能な、改良された改変クモ糸タンパク質を提供することである。本発明の別の目的は、改変クモ糸タンパク質の繊維を製造するための改良された方法であって、特に公知の紡糸された状態の(in as-spun state)繊維と比較して、改良された有用な力学特性を有する繊維を得ることが可能な方法を提供することである。
本発明は以下の項に関する。以下の項に開示される主題は、添付の特許請求の範囲において開示された主題と同様に開示されたものと見做すべきである。
1.800個以内のアミノ酸からなり、式(NT)-REP-CTに従って配置される複数のドメインの組を含む組換クモ糸タンパク質であって、ここで
a.前記任意のNTドメインが、存在する場合には、クモ糸タンパク質のN末端ドメインに由来する100~160個のアミノ酸残基の配列からなり、
b.前記REPドメインが、クモ糸タンパク質の反復セグメントに由来する30~600個のアミノ酸残基の配列からなり、
c.前記CTドメインが、
i.クモ糸タンパク質のC末端ドメインに由来する72~110個のアミノ酸残基の配列であって、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列、
ii.配列番号64、又は、配列番号62~65若しくは67~73の何れかに対して、少なくとも81%の同一性を有する配列、及び
iii.配列番号64、又は、配列番号62~65若しくは67~73の何れかに対して、少なくとも70%の同一性を有する配列であって、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列
から選択される、クモ糸タンパク質のC末端ドメインに由来する70~120個のアミノ酸残基の配列からなる、組換クモ糸タンパク質。
2.前記CTドメインが、クモ糸タンパク質のC末端ドメインに由来する72~110個のアミノ酸残基の配列であって、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
3.前記CTドメインが、配列番号64、又は、配列番号62~65若しくは67~73の何れかに対して 少なくとも81%、好ましくは少なくとも82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、又は89%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
4.前記CTドメインが、配列番号64に対して少なくとも81%、好ましくは少なくとも82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、又は89%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
5.前記CTドメインが、配列番号64に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも72%、75%、77%、80%、83%、85%、87%、又は89%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列からなり、ここで前記配列が、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
6.前記CTドメインが、少なくとも80個、好ましくは少なくとも90個のアミノ酸残基からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
7.前記CTドメインが、110個未満のアミノ酸残基からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
8.前記CTドメインが、87~97個のアミノ酸残基からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
9.前記CTドメイン配列が、ヘリックス4の初めの箇所にC残基を含まない、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
10.前記CTドメイン配列が、配列番号49の位置47~55にアラインする位置にC残基を含まない、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
11.前記NTドメインが存在する、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
12.前記NTドメインが存在すると共に、大瓶状腺クモ糸タンパク質のN末端ドメインに由来する配列からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
13.前記NTドメインが存在すると共に、配列番号2に対して少なくとも50%の同一性、及び/又は、配列番号1若しくは表2に示す何れかのアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する配列からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
14.前記NTドメインが存在すると共に、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有する配列からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
15.前記NTドメインが存在すると共に、少なくとも110個、好ましくは少なくとも120個のアミノ酸残基からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
16.前記NTドメインが存在すると共に、最大160個、好ましくは140個未満のアミノ酸残基からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
17.前記NTドメインが存在すると共に、130~140個のアミノ酸残基からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
18.前記REPドメインが、アラニン豊富なAセグメントと、グリシン豊富なGセグメントとを交互に含む、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
19.前記REPドメインが、アラニン豊富な複数のAセグメントと、グリシン豊富な複数のGセグメントとを含み、ここで前記REPドメインにおけるAセグメントの数とGセグメントの数との合計が3~30個、好ましくは4~20個、より好ましくは4~10個、最も好ましくは4~8個である、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
20.前記REPドメインが、アラニン豊富な複数のAセグメントと、グリシン豊富な複数のGセグメントとを含み、ここで各Aセグメントは、8~20個のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、ここで前記アミノ酸残基の少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも75%がAlaである、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
21.前記REPドメインが、アラニン豊富な複数のAセグメントと、グリシン豊富な複数のGセグメントとを含み、ここで各Gセグメントは、12~40個のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、ここで前記アミノ酸残基の少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、最も好ましくは少なくとも40%がGlyである、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
22.前記REPドメインが、アラニン豊富な複数のAセグメントと、グリシン豊富な複数のGセグメントとを含み、ここで各Aセグメントが、連続する5個の、好ましくは連続する6個のA残基の配列を少なくとも1つ含む、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
23.前記REPドメインが、アラニン豊富な複数のAセグメントと、グリシン豊富な複数のGセグメントとを含み、ここで各Gセグメントが、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのGGXモチーフ(ここでXは任意のアミノ酸を指す)を含む、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
24.前記REPドメインが、L(AG)L、L(AG)AL、L(GA)L、L(GA)GL、LG(AG)Lからなる群より選択され、ここで
nは2~10の整数であり、
各Aセグメントは、8~18個のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、ここで前記アミノ酸残基のうち0~3個はAlaではなく、残りのアミノ酸残基はAlaであり、
各Gセグメントは、12~30個のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり、ここで前記アミノ酸残基の少なくとも40%がGlyであり、
各Lセグメントは、0~30個、好ましくは0~25個のアミノ酸残基のリンカーアミノ酸配列である、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
25.各Aセグメントが、配列番号3のアミノ酸残基7~19、43~56、71~83、107~120、135~147、171~183、198~211、235~248、266~279、294~306、330~342、357~370、394~406、421~434、458~470、489~502、517~529、553~566、581~594、618~630、648~661、676~688、712~725、740~752、776~789、804~816、840~853、868~880、904~917、932~945、969~981、999~1013、1028~1042及び1060~1073の群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性を有し、
各Gセグメントが、配列番号3のアミノ酸残基20~42、57~70、84~106、121~134、148~170、184~197、212~234、249~265、280~293、307~329、343~356、371~393、407~420、435~457、471~488、503~516、530~552、567~580、595~617、631~647、662~675、689~711、726~739、753~775、790~803、817~839、854~867、881~903、918~931、946~968、982~998、1014~1027、1043~1059及び1074~1092の群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性を有する、項24に記載の組換クモ糸タンパク質。
26.nが2又は4である、項24~25の何れか一項に記載の組換クモ糸タンパク質。
27.前記選択されたREPドメインが、LG(AG)2L又はLG(AG)4Lである、項26に記載の組換クモ糸タンパク質。
28.前記選択されたREPドメインが、LG(AG)2Lである、項27に記載の組換クモ糸タンパク質。
29.前記REPドメインが、40~600個、好ましくは50~500個、より好ましくは60~400個、最も好ましくは70~300個のアミノ酸からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
30.前記クモ糸タンパク質が、式NT-L-REP-L-CTに従った複数のドメインの組を含み、ここで各Lセグメントは、1~20個のアミノ酸残基からなるリンカーアミノ酸配列である、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
31.前記クモ糸タンパク質が、総計600個以下、好ましくは500個以下、より好ましくは400個以下、より一層好ましくは300個以下、最も好ましくは250個以下のアミノ酸残基からなる、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
32.前記タンパク質が、極めてpH依存性の高い溶解性を示す、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
33.前記タンパク質が、極めてpH依存性の高い溶解性を示すと共に、斯かる溶解性が、500mM 酢酸Na、200mM NaCl、pH5.0の緩衝水溶液よりも、20mM Tris-HCl、pH8.0の緩衝水溶液に対して、少なくとも10倍、好ましくは50倍、より好ましくは100倍高い溶解性を示すことにより規定される、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
34.前記タンパク質が、20mM Tris-HCl、pH8.0の緩衝水溶液に溶解しうると共に、500mM 酢酸Na、200mM NaCl、pH5.0の水溶液中、50mg/mL、好ましくは100mg/mL、より好ましくは200mg/mL、最も好ましくは300mg/mLの濃度で重合する、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
35.配列番号11に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
36.配列番号11と同一の配列を含む、前記の項の何れかに係る組換クモ糸タンパク質。
37.前記の項の何れかに係るクモ糸タンパク質の非変性溶液であって、前記クモ糸タンパク質のタンパク質濃度が、少なくとも100mg/mL、好ましくは150mg/mL、最も好ましくは200mg/mLである溶液。
38.項1~36の何れかに係るクモ糸タンパク質のポリマー、好ましくは繊維、フィルム、発泡体、ネット又はメッシュ。
39.長さ少なくとも10cm、好ましくは少なくとも1m、より好ましくは少なくとも5m、より一層好ましくは少なくとも10m、より一層好ましくは少なくとも50m、最も好ましくは少なくとも100mの繊維である、項38に記載のポリマー。
40.直径≦100μm、好ましくは50μm未満、より好ましくは20μm未満、最も好ましくは10μm未満の繊維である、項38~39の何れか一項に記載のポリマー。
41.靱性≧3MJ/m、好ましくは≧10MJ/m、より好ましくは≧20MJ/m、最も好ましくは≧40MJ/mである、項38~40の何れか一項に記載のポリマー。
42.クモ糸タンパク質のポリマーを製造するための方法であって、
a.項1~36の何れかに係るクモ糸タンパク質を、培地に溶解した状態で、少なくとも100mg/mL、好ましくは200mg/mL、最も好ましくは300mg/mLの濃度で含む、第1の液体培地を提供する工程、
b.前記クモ糸タンパク質の重合を生じさせるように、前記第1の液体培地の特性を調節する工程、
c.前記クモ糸タンパク質にポリマーを形成させる工程、及び、
d.前記クモ糸タンパク質ポリマーを単離する工程
を含む方法。
43.前記第1の液体培地の特性の調節が、前記クモ糸タンパク質の重合を生じさせる特性を有する第2の流体培地内に、前記クモ糸タンパク質の溶液を押し出すことにより行われる、項42に記載の方法。
44.工程(a)における第1の液体培地が、少なくとも6.4のpHを有する、項42~43の何れか一項に記載の方法。
45.工程(a)における第1の液体培地が、100mM未満の塩濃度を有する、項42~44の何れか一項に記載の方法。
46.工程(a)における第1の液体培地が、有機溶媒濃度10%(v/v)未満の水溶液である、項42~45の何れか一項に記載の方法。
47.工程(b)~(d)において、前記第1の液体培地の特性が、pH6.3以下、且つ、前記クモ糸タンパク質が重合するのに十分な塩濃度の存在下に調節される、項42~46の何れか一項に記載の方法。
48.工程(b)~(d)において、前記第1の液体培地の特性が、塩濃度少なくとも100mM、且つ、pH6.3以下に調節される、項42~47の何れか一項に記載の方法。
49.工程(b)~(d)において、前記第1の液体培地の特性が、重合を生じさせるのに十分な有機溶媒濃度となるように調節される、項42~48の何れか一項に記載の方法。
50.前記第2の流体培地が、pH6.3以下であり、且つ、前記クモ糸タンパク質が重合するのに十分な塩濃度を有する、項42に記載の方法。
51.前記第2の流体培地が、重合を生じさせるのに十分な濃度の有機溶媒を含む、項42又は50に記載の方法。
52.前記第2の流体培地が、吸湿性ポリマー、例えばPEGを含む、項42又は50~51の何れか一項に記載の方法。
53.前記押し出しが、前記間隔内の断面積が20~50000μm、好ましくは30~30000μm、より好ましくは40~10000μm、より一層好ましくは50~5000μm、最も好ましくは70~800μmの開口を有する毛細管を通じて行われる、項42又は50~52の何れか一項に記載の方法。
54.前記押し出しが、0.1~500mm/s、より好ましくは0.5~200mm/s、最も好ましくは1~100mm/sの線流速で行われる、項42又は50~52の何れか一項に記載の方法。
55.前記 ポリマーが繊維、フィルム、発泡体、ネット又はメッシュ、好ましくはa 繊維、より好ましくは項38~41の何れかに係るポリマーである、項42~54の何れか一項に記載の方法。
56.項1~36の何れかに係るタンパク質をコードする核酸。
57.プロモーターに作動式に連結された項56に係る核酸を含む発現。
58.項56に係る核酸又は項57に係る発現ベクターを含む宿主細胞。
59.組換クモ糸タンパク質を製造する方法であって、
a.項58に係る宿主細胞を、前記タンパク質の産生を許容する条件下で培養し、
b.前記培養物から前記タンパク質を単離する
ことを含む方法。
60.前記ポリマーが3D印刷機から押し出される、項42~55の何れか一項に記載の方法。
61.項1~36の何れかに係るクモ糸タンパク質又は項38~41の何れかに係るポリマーの、埋込可能な材料又は細胞培養スキャフォールドの製造における使用。
62.項1~36の何れかに係るクモ糸タンパク質又は項38~41の何れかに係るポリマーの、埋込可能な材料又は細胞培養スキャフォールドとしての使用。
図1:表2に示すスピドロインNTドメインのClustalWを用いたアラインメント。 図2:NT2RepCTは、高い発現レベル及び水溶性を有する。(a)精製されたNT2RepCTのSDS-PAGE及び異なる精製工程。M=Spectra Broadrangeタンパク質マーカー(サイズは左側にキロダルトンで示す)、L=総細胞溶解物、P=ペレット、Sup=全細胞溶解物の遠心分離後の上清、FT=Ni-NTAカラムのフロー、E=Ni-NTAカラムから溶出した標的タンパク質NT2RepCT。(b)タンパク質濃度300mg/mLで形成されたNT2RepCTのゲル写真。スケールバーは0.1cm。(c)NT2RepCTの0.001mg/mLでのCryo-EM。スケールバーは50nm。 図3:人工クモ糸の生体模倣紡糸。(a)高濃縮NT2RepCT紡糸ドープをシリンジから、サイズ10~30μmの先端を低pHの採集用水槽に浸した芯引きガラス毛細管にポンプで注入する。前記採集用槽から繊維を引き上げ(矢印)、フレームに巻き付ける。(b)低pHの採集用水槽内で防止した繊維の写真。(c)低pH緩衝剤中の湿繊維ネスト。(d)フレームに巻き付けた繊維。(b)~(c)の繊維直径は約40μm。(d)の繊維直径は15μm。スケールバーは(b)3mm、(c)~(d)5mm。 図4:NT2RepCT繊維の特性決定。(a)異なるpH値の緩衝剤中での紡糸。緩衝剤から引き上げてフレームに巻き付けることが可能な連続した繊維は、3.0≦pH≦5.5の緩衝剤中で形成される。(b)pH5.5でインキュベートしたNT2RepCTのnESI-MS経時変化。低pHに長時間暴露することで、NT2RepCTの凝集が誘導される。この凝集体に濃縮ギ酸を添加するとモノマーが放出されるが、アセトニトリルの添加では放出されない。ユビキチンを内部標準として用い、残存するNT2RepCTダイマーの時間依存的なシグナル減少を追跡した。(c)pH7.5では、安定な天然ダイマーの集団が検出された(白丸)のに対し、pH5.5でインキュベーションすると、可溶性のNT2RepCTが数分間で完全に消失する(黒丸)。 図5:NT2RepCT繊維の引張特性。8本の個別のNT2RepCT繊維の機械(Engineering)応力/歪み曲線。 図6:NT2RepCTのサイズ排除クロマトグラフィー。クロマトグラム上のタンパク質サイズは較正(calibrant)タンパク質に基づく。 図7:NT2RepCTミセルの電子顕微鏡写真。a)陰性染色したミセルの透過型電子顕微鏡に基づくサイズ分布。b)低温電子顕微鏡に基づくミセルのサイズ分布。c)陰性染色したミセルの透過型電子顕微鏡写真。スケールバー 50nm。 図8:NT2RepCT繊維の走査型電子顕微鏡。(A)紡糸直後の繊維。(B)フレームに巻き付けた紡糸直後の繊維。(C)500mM 酢酸ナトリウム緩衝剤及び200mM NaCl(pH5)中で200%内に伸張した後の繊維。(D)繊維の内部コアを調べるために破断した伸張後繊維の断面。何れの繊維も500mM 酢酸ナトリウム緩衝剤及び200mM NaCl(pH5)の採集用槽内で紡糸。スケールバーは(A-B)が10μm、(C-D)が2μm。 図9:NT2RepCTのフーリエ変換赤外分光。溶液中のNT2RepCTタンパク質(点線)及びNT2RepCT繊維(実線)のFTIRスペクトル。 図10:単離されたNT及びCTにpHの変化が与える作用。(A)NTは低pHで二量体化する。(B)低pHによりCTのダイマーは不安定化し、NT2RepCTの凝集について観察されたのと同じ時間スケール内で、タンパク質はより高い荷電状態へと変化する。 図11:イソプロパノール内で紡糸したNT2RepCT繊維の走査型電子顕微鏡。スケールバーは5μm。 図12:3Dプリンティングでのパイロット試験。A.低pH緩衝剤中にNT2RepCT繊維で印刷した名前。B.NT2RepCTゲル内で印刷した名前。C.NT2RepCTゲルで名前を印刷した後、印刷された構造体にpH5の酢酸ナトリウム緩衝剤を注いで固化。 同上。 同上。 図13:NT2+2RepCTの精製プロセスのSDS-PAGE分析。TP=総タンパク質;Sup=溶解後の上清;P=溶解後のペレット;P-s=一晩凍結したペレットの上清;FT=(Ni-NTAカラムの)通過液(flow through);E=カラムから溶出したタンパク質。 図14:異なる採集用槽に紡糸した、又は異なる槽内で伸張した後のNT2RepCT繊維の応力対歪み曲線。160223_1:500mM NaAc、200mM NaCl、pH5内に紡糸。160223_2:500mM NaAc、200mM NaCl、15% PEG、pH5内に紡糸。160223_4:50%メタノール及び500mM NaAc、200mM NaCl、pH5中で伸張後。160223_5:30% PEG中で伸張後。 図15:160303_4:500mM NaAc、200mM NaCl、pH4.25中に紡糸したNT2RepCT繊維の力/変位曲線。 図16:160303_5a:500mM NaAc、200mM NaCl、pH5中に室温で紡糸し、次いで80%イソプロパノール水溶液中で伸張した後のNT2RepCT繊維の力/変位曲線。 図17:160303_5b:500mM NaAc、200mM NaCl、pH5中に室温で紡糸し、次いで80%イソプロパノール水溶液に浸漬した後のNT2RepCT繊維の力/変位曲線。 図18:表1のCTドメイン配列の系統樹。 図19:A)hfcMSCはクモ糸発泡体上で膨張させた場合にlsl1+及びF-アクチンの発現を維持する。DAPI染色(青)により核を示す。B)紡糸した繊維は集合して~1cm直径の球を形成する(左)。稠密な繊維球の上で胎児心臓前駆細胞を培養。繊維球を切断し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E;中央)並びにDAPIで染色。C)クモ糸球上の低温切断細胞は、ラミニンα4、CD31、及びヘパラン硫酸塩の発現を示す。 図20:精製されたNT2RepCT(MiSp Ds)及び異なる精製段階のSDS-PAGE。M=Spectra Broadrangeタンパク質マーカー(左にサイズをキロダルトンで示す)、Tot=総細胞溶解物、PelL=ペレット、Sup=全細胞溶解物の遠心分離後の上清、FT=Ni-NTAカラム通過液(flow through)、W=洗浄液、E=Ni-NTAカラムから流出した標的タンパク質NT2RepCT(MiSp Ds)。 図21:(1)NT2RepCT(MaSp1 Ea)及び(2)NT2RepCT(ADF-4)のSDS-PAGE。M=Spectra Broadrangeタンパク質マーカー(左にサイズをキロダルトンで示す)、Tot=総細胞溶解物、PelL=ペレット、Sup=全細胞溶解物の遠心分離後の上清。 図22:NT2RepCT(MiSp Lh)のSDS-PAGE。M=Spectra Broadrangeタンパク質マーカー(左にサイズをキロダルトンで示す)、Tot=総細胞溶解物、PelL=ペレット、Sup=全細胞溶解物の遠心分離後の上清。
定義
スピドロイン及びクモ糸タンパク質という語は、本明細書を通じて相互交換可能に用いられ、文脈に応じて天然タンパク質又は組換タンパク質を意味する。
ミニスピドロインという語は、スピドロインの改変された変異体であって、天然スピドロインよりも反復領域がはるかに短いものを意味する。
パーセンテージで表される配列同一性(sequence identity)(或いは同意語である%同一性(% identity))は、最適となるようにアラインされた2つの配列を、比較ウィンドウ全体に亘って比較して決定される値として定義される。ここで、これら2つの配列のアラインメントが最適となるように、比較ウィンドウ内において、(付加又は欠失を含まない)参照配列と比較して、もう一方の配列の一部が付加又は欠失(即ちギャップ)を有していてもよい。斯かるパーセンテージを求めるには、両配列で同一のアミノ酸残基が現れる位置の数を一致した位置の数とし、斯かる一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除算し、その結果に100を乗算して配列同一性のパーセンテージを算出する。別途断りなき限り、比較ウィンドウは対象となる配列の全長である。なお、ここで最適なアラインメントとは、米国国立生物工学情報センター(NCBIハンドブック[インターネット]チャプター16、出願日時点の最新版を参照)によりオンラインで実行されるBLASTPアルゴリズムにより、以下のインプットパラメーターで生成されるアラインメントである:Word length = 3、Matrix = BLOSUM62、Gap Cost=11、Gap extension cost = 1。
本明細書及び添付の特許請求の範囲を通じて使用される%類似性(% similarity)とは、疎水性残基Ala、Val、Phe、Pro、Leu、Ile、Trp、Met、及びCysは互いに類似し、塩基性残基Lys、Arg、及びHisは互いに類似し、酸性残基Glu及びAspは互いに類似し、親水性非荷電残基Gln、Asn、Ser、Thr及びTyrは互い類似すると見做すことを除いては、%同一性と同様に算出される。ここでは、残る天然アミノ酸Glyは、他の何れのアミノ酸とも類似しないとされる。
本明細書において、可溶(soluble)及び溶液(solution)という語は、問題のタンパク質を溶媒に溶解した場合に、視認できる凝集が生じず、60000gでも溶媒から沈殿が生じないことを意味する。
本明細書で引用するGenbank受入番号は、本出願日における最新版のGenbankデータにおけるエントリーを指す。
詳細な説明
本発明者等は、人工クモ糸の生体模倣紡糸を実現するために満たすべき必須要件は、pH応答性であり、天然紡糸ドープにおけるスピドロインに匹敵するレベルの水溶性を示すスピドロインを得ることであると想定した。ここから本発明者等は、異なる種類のクモ及び異なる種類の糸に由来するスピドロインでは、NTの水溶性及びCTのpH応答性も異なるとの発想を得た。
更に、本発明者等は、高可溶性のNTと、同様に高可溶性のCTとを含む組換ミニスピドロインが、十分なpH感受性を有し、溶解性の観点から有利ではないかとの仮説を立てた。斯かる仮説を検証するべく、本発明者等は、E.アウストラリス(E. australis)MaSp1由来のNTとA.ベントリコスス(A. ventricosus)MiSp由来のCTとで、E.アウストラリス(E. australis)由来の短い反復配列を挟み込んだ(実施例1)ミニスピドロインを設計したところ、斯かるミニスピドロインが、かつてないほどの溶解性を有すると共に、従来技術のミニスピドロイン(比較例11)と比較して、有用且つある面では優れた繊維を、生体模倣的且つpH依存的に形成する能力を兼ね備える(実施例2~10)ことを見出した。
更なる実験によれば、E.アウストラリス(E. australis)由来の短い反復領域に連結された、A.ベントリコスス(A. ventricosus)MiSp由来のCTを含むミニスピドロイン(実施例12)も、pH依存的に繊維を形成することが示された。斯かるpH依存的な繊維の形成は、これまでNTドメインを含まないミニスピドロインでは観察されたことがない。
実施例1の二倍の長さの反復領域を有する改変ミニスピドロインについて、更なる検討を行ったところ、高可溶性且つpH感受性のNT及びCTを組み合わせることによる利点は、極めて短い反復領域を有するミニスピドロインに限定されないことが示された(実施例13)。
設計されたクモ糸タンパク質
本発明の第1の観点によれば、好ましくは800個以内のアミノ酸からなる、組換クモ糸タンパク質であって、式(NT)-REP-CTに従って配置される複数のドメインの組を含み、ここで、
a.前記任意のNTドメインが、存在する場合には、クモ糸タンパク質のN末端ドメインに由来する100~160個のアミノ酸残基の配列からなり、
b.前記REPドメインが、クモ糸タンパク質の反復セグメントに由来する30~600個のアミノ酸残基の配列からなり、
c.前記CTドメインが、
i.クモ糸タンパク質のC末端ドメインに由来する72~110個のアミノ酸残基の配列であって、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列、
ii.配列番号15又は配列番号62の~65又は67~73の何れかに対して少なくとも81%の同一性を有する配列、及び
iii.配列番号64、又は、配列番号62~65若しくは67~73の何れかに対して、少なくとも70%の同一性を有する配列であって、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列
から選択される、クモ糸タンパク質のC末端ドメインに由来する70~120個のアミノ酸残基の配列からなる、
組換クモ糸タンパク質が提供される。
慣例に従い、式は左側がN末端、右側がC末端である。
CTドメインの特性
生理学的なクモ糸の重合におけるNTドメインの役割は、早くから理解されてきた(例えば、国際公開第2010/123450号参照)。NTドメインの極めて高い溶解性が、生理学的な(天然)クモ糸ドープにおいて見られ得る極めて高いタンパク質濃度の形成に寄与するものと考えられている。特に、NTドメインが有するpH依存性の高い特性が、ドープの急速重合を可能とする上で極めて重要な因子であると認識されてきた。
一方で、(これまで最も研究されてきた)大瓶状腺(major ampullate gland)糸由来のCTドメインの殆どは、顕著な溶解性を示さず、pH5~7.5の範囲でpH感受的な溶解性を示すこともない。
しかし、本発明者等は、他の種類の糸、例えば小瓶状腺(minor ampullate gland)糸に由来する特定のCTドメインが、実はpH依存的に顕著な溶解性を示すことを見出した。
本発明者等は、CTの一次構造のアラインメントを分析している際に、これらが荷電アミノ酸残基の数に違いがあること、即ち、エウプロステノプス・アウストラリス(Euprosthenops australis)MaSp1由来のCTが4つの荷電残基を含むのに対して、アラネウス・ベントリコスス(Araneus ventricosus)MiSpのCTは7つの荷電残基を有することを見出した。ここから、本発明者等は、CTの電荷の数が、CTの溶解性と正の相関を有し、惹いては高荷電アミノ酸残基の数を有するCTが、組換により作製されたスピドロインの溶解性に有益であるとの仮説を立てた。従って、特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者等は、生理学的条件下で荷電性を示すクモ糸腺内の残基(K、R、E及びD)が、溶解性及びpH依存性にとって重要であると考えている。なお、ヒスチジンは、ここでいう荷電を有するとは見做さない。生理学的条件下、関連性のあるpHでは、概ねのところ非荷電であるからである。
下記の表1に示すように、大瓶状腺(major ampullate gland)クモ糸CTドメインは、検討した限りにおいては、顕著な溶解性及び/又はpH依存的な溶解性を示さないように見受けられるが、斯かる荷電残基の数が7未満である。これに対して、小瓶状腺(minor ampullate gland)クモ糸CTドメインの殆どは、これらの荷電残基を少なくとも7つ有する。斯かる観察は、天然又は遺伝子工学的に荷電残基の数を変えた複数の異なるCTドメインを比較することにより、実験的に検証された(実施例15参照)。
即ち、前記CTドメイン配列は、例えばクモ糸タンパク質のC末端ドメインに由来する72~110個のアミノ酸残基の配列であって、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列とすることができる。
好ましくは、前記CTドメイン配列は、PDB id 2MFZ(MiSp CT、A.ベントリコスス(A. ventricosus))又は2M0M(MiSp N.アンチポディアナ(N. Antipodiana))のNMR構造に従い定義されるヘリックス4の冒頭にC残基を含まない。CTドメインの構造が実験により決定されていない場合には、例えばpsipred等の二次構造予測アルゴリズムを用いてヘリックス4を決定してもよい。C残基は、大瓶状腺(major ampullate gland)のCTドメインに特有の特徴であるが、小瓶状腺(minor ampullate gland)のCTドメインには概ね存在しない。好ましくは、前記CTドメイン配列が、配列番号49の位置47~55にアラインする位置にC残基を含まない。
前記CTドメインは、例えば配列番号62の~65又は67~73の何れか一つに対して、少なくとも81%、好ましくは少なくとも82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、又は89%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列であってもよい。
前記CTドメインは、例えば配列番号64に対して、少なくとも81%、好ましくは少なくとも82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、又は89%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列であってもよい。
前記CTドメイン配列は、例えば配列番号64又は配列番号62の~65又は67~73の何れかに対して、少なくとも70%、好ましくは少なくとも72%、75%、77%、80%、83%、85%、87%、又は89%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列(但し、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列)であってもよい。
Figure 0007221205000001
Figure 0007221205000002
Figure 0007221205000003
Figure 0007221205000004
Figure 0007221205000005
Figure 0007221205000006
CTドメインは通常、70~120個のアミノ酸残基からなる。CTドメインは、少なくとも70個、又は80個超、好ましくは90個超のアミノ酸残基を含む。また、前記CTドメインが、最大120個、又は110個未満のアミノ酸残基、より好ましくは100個未満の残基を含むことが好ましい。一般に好ましいCTドメインとしては、約87~97個のアミノ酸残基を含むものが挙げられる。
REPドメインの特性
REPドメインは、重合可能なドメインであれば、その具体的な配列又は構成は本発明においては重要ではなく、多種多様なクモ糸REPドメインが本発明のタンパク質に適していると考えられる。Rising et al., Cell. Mol. Life Sci. (2011) 68:169-184では、本分野において組換スピドロインに使用される数種のREPドメインを論じているところ、本文献の教示に基づくREPドメインは、本発明においても有用であると考えられる。
一般的には、REPドメインは反復を特徴とし、好ましくはアラニン豊富な配列部分(Aセグメント)とグリシン豊富な配列部分(Gセグメント)とが交互に現れる配列を有する。
本発明のREPドメインは、アラニン豊富なAセグメントとグリシン豊富なGセグメントとを含むと共に、REPドメイン中のAセグメントの数とGセグメントの数との合計が、3~30個、好ましくは4~20個、より好ましくは4~10個、最も好ましくは4~8個であってもよい。
前記REPドメインは、アラニン豊富なAセグメントとグリシン豊富なGセグメントとを含むと共に、各Aセグメントは8~20個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、前記アミノ酸残基の少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも75%がAlaであってもよい。
前記REPドメインは、アラニン豊富なAセグメントとグリシン豊富なGセグメントとを含むと共に、各Gセグメントは12~40個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、前記アミノ酸残基の少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、最も好ましくは少なくとも40%がGlyであってもよい。
前記REPドメインは、アラニン豊富なAセグメントとグリシン豊富なGセグメントとを含むと共に、各Aセグメントが、連続する5個の、好ましくは連続する6個のA残基からなる、少なくとも1つの配列部分を含んでいてもよい。前記REPドメインは、アラニン豊富なAセグメントとグリシン豊富なGセグメントとを含むと共に、各Gセグメントが少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのGGXモチーフ(ここでXは任意のアミノ酸を指す)を含んでいてもよい。
前記REPドメインは、40~600個、好ましくは50~500個、より好ましくは60~400個、最も好ましくは70~300個のアミノ酸を含んでいてもよい。
前記REPドメインは通常、30個超、例えば70個超、且つ、600個未満、好ましくは300個未満、例えば240個未満のアミノ酸残基を含むと共に、以下に詳細に説明するように、それ自体幾つかのL(リンカー)セグメント、A(アラニン豊富)セグメント、及びG(グリシン豊富)セグメントに分割される。通常、任意のリンカーセグメントは、REPドメインの末端に存在するのに対し、残りのセグメントは順にアラニン豊富及びグリシン豊富となる。すなわち、REPドメインは例えば概ね以下の何れかの構造を有する(ここでnは整数である)。
L(AG)L、例えばLAL;
L(AG)AL、例えばLAL;
L(GA)L、例えばLGL;又は
L(GA)GL、例えばLGL。
従って、アラニン豊富なセグメント又はグリシン豊富なセグメントの何れが、N末端又はC末端リンカーセグメントに隣接するかは重要ではない。ここでnは2~10の整数であり、好ましくは2~8、好ましくは4~8、より好ましくは4~6、即ちn=4、n=5、又はn=6であることが好ましい。
本発明のREPドメインのアラニン含量は、例えば20%超、好ましくは25%超、より好ましくは30%超であり、且つ、50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは35%未満であってもよい。アラニン含量が多いほど、より硬く、及び/又は、より強く、及び/又は、より伸びにくい繊維が得られると考えられることから、これは有利な特徴と言える。
前記REPドメインはプロリン残基を欠いている、即ち、前記REPドメイン内にPro残基が存在しないことが好ましい。
次ぎに本発明のREPドメインを構成するセグメントについて説明すると、特に強調されるのは、各セグメントが独自であること、即ち、ある特定のREPドメイン内の任意の2つのAセグメント、任意の2つのGセグメント、又は任意の2つのLセグメントが、互いに同一であってもよく、異なっていてもよいという点である。即ち、ある特定のREPドメイン内の各種類のセグメントが同一であるというのは、本発明の一般的な特徴ではない。むしろ、当業者であれば以下の開示を指針として、どのように個々のセグメントを設計し、それらのセグメントを組み立ててREPドメインとし、本発明に係る機能的なクモ糸タンパク質の一部とすればよいかを、理解するであろう。
個々のAセグメントは、8~18個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列である。各Aセグメントは、13~15個のアミノ酸残基を含むことが好ましい。また、Aセグメントの多数、即ち3つ以上のAセグメントが、13~15個のアミノ酸残基を含み、Aセグメントの少数、即ち例えば1又は2のAセグメントが、8~18個のアミノ酸残基、例えば8~12個又は16~18個のアミノ酸残基を含むことが好ましい。これらのアミノ酸残基の大多数がアラニン残基である。より具体的に、前記アミノ酸残基のうち0~3個がアラニン以外の残基であり、残りのアミノ酸残基がアラニン残基である。即ち、各Aセグメントのアミノ酸残基の全てが例外なく、或いは1個、2個、又は3個のアミノ酸残基(アミノ酸であってもよい)を例外として残りがアラニン残基である。アラニンを置換するアミノ酸は天然アミノ酸であることが好ましく、独立にセリン、グルタミン酸、システイン、及びグリシンからなる群から選択されることが好ましく、より好ましくはセリンである。もちろん、前記Aセグメントのうち1又は2以上のセグメントが、完全にアラニンのみからなるセグメントであって、残りのAセグメントが1~3個の非アラニン残基、例えばセリン、グルタミン酸、システイン、又はグリシンを含むセグメントであってもよい。
各Aセグメントは、例えば13~15個のアミノ酸残基を含んでいてもよく、前述したように、それらのうち10~15個がアラニン残基で、0~3個が非アラニン残基であってもよい。中でも、各Aセグメントが13~15個のアミノ酸残基を含み、前述したように、それらのうち12~15個がアラニン残基で、0~1個が非アラニン残基であることが好ましい。
各Aセグメントは、配列番号3のアミノ酸残基7~19、43~56、71~83、107~120、135~147、171~183、198~211、235~248、266~279、294~306、330~342、357~370、394~406、421~434、458~470、489~502、517~529、553~566、581~594、618~630、648~661、676~688、712~725、740~752、776~789、804~816、840~853、868~880、904~917、932~945、969~981、999~1013、1028~1042及び1060~1073の群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、最も好ましくは100%の同一性を有することが好ましい。この群の各配列は、対応するcDNAのクローニングから推定される、エウプロステノプス・アウストラリス(Euprosthenops australis)MaSp1タンパク質の天然配列のセグメントに対応する。国際公開第2007/078239号を参照。或いは、各Aセグメントが、配列番号3のアミノ酸残基143~152、174~186、204~218、233~247及び265~278の群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、最も好ましくは100%の同一性を有する。この群の各配列は、本発明に係る発現対象の非天然クモ糸タンパク質であって、適切な条件下で糸繊維を形成する能力を有するタンパク質のセグメントに対応する。すなわち、本発明に係るある態様によれば、各Aセグメントは、上述のアミノ酸セグメントから選択されるアミノ酸配列と同一である。何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明に係るAセグメントは、らせん構造又はベータシートを形成すると推定される。
本明細書を通じて、本発明に係る別の態様は、先に詳述した同一性のパーセンテージの代わりに、対応する類似性のパーセンテージを充足する。他の別の態様は、先に詳述した同一性のパーセンテージに加えて、各配列の好ましい同一性のパーセンテージの群から選択される、より高い類似性のパーセンテージを充足する。例えば、ある配列が他の配列に対して70%の類似性を示してもよく、他の配列に対して70%の同一性を有してもよく、他の配列に対して70%の同一性と90%の類似性とを有してもよい。
更に、実験データによれば、各Gセグメントは、12~30個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。各Gセグメントは、14~23個のアミノ酸残基からなることが好ましい。各Gセグメントのアミノ酸残基の少なくとも40%はグリシン残基である。通常、各Gセグメントのグリシン含量は、40~60%の範囲である。
各Gセグメントは、配列番号3のアミノ酸残基20~42、57~70、84~106、121~134、148~170、184~197、212~234、249~265、280~293、307~329、343~356、371~393、407~420、435~457、471~488、503~516、530~552、567~580、595~617、631~647、662~675、689~711、726~739、753~775、790~803、817~839、854~867、881~903、918~931、946~968、982~998、1014~1027、1043~1059及び1074~1092の群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、最も好ましくは100%の同一性を有することが好ましい。この群の各配列は、対応するcDNAのクローニングから推定される、エウプロステノプス・アウストラリス(Euprosthenops australis)MaSp1タンパク質の天然配列のセグメントに対応する。国際公開第2007/078239号を参照。或いは、各Gセグメントが、配列番号3のアミノ酸残基153~173、187~203、219~232、248~264及び279~296の群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%、最も好ましくは100%の同一性を有する。この群の各配列は、本発明に係る発現対象の非天然クモ糸タンパク質であって、適切な条件下で糸繊維を形成する能力を有するタンパク質のセグメントに対応する。すなわち、各Gセグメントは、上述のアミノ酸セグメントから選択されるアミノ酸配列と同一であることが好ましい。
本発明に係る各Gセグメントの最初の2つのアミノ酸残基は、-Gln-Gln-ではないことが好ましい。
本発明に係るGセグメントには3つのサブタイプが存在する。この分類は、エウプロステノプス・アウストラリス(Euprosthenops australis)MaSp1タンパク質配列(国際公開第2007/078239号)の入念な分析に基づく分類であり、斯かる情報は、非天然クモ糸タンパク質の構築の際に利用及び検証した情報である。
本発明に係るGセグメントの第1のサブタイプは、アミノ酸1文字コンセンサス配列GQG(G/S)QGG(Q/Y)GG(L/Q)GQGGYGQGAGSS(配列番号4)により表される。この第1の(そして通常は最も長い)Gセグメントのサブタイプは、通常は23個のアミノ酸残基を含むが、17個のアミノ酸残基からなる小型のセグメントの場合もあり、荷電残基を有さないか、1個の荷電残基を有する。すなわち、この第1のGセグメントサブタイプは、17~23個のアミノ酸残基を含むことが好ましいが、少ない場合には12個のアミノ酸残基、多い場合には30個のアミノ酸残基を含むものであってもよいと考えられる。何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、このサブタイプはコイル構造又は3-ヘリックス構造を形成すると推定される。この第1のサブタイプの代表的なGセグメントとしては、配列番号3のアミノ酸残基20~42、84~106、148~170、212~234、307~329、371~393、435~457、530~552、595~617、689~711、753~775、817~839、881~903、946~968、1043~1059及び1074~1092が挙げられる。本発明に係るこの第1のサブタイプの各Gセグメントの最初の2つのアミノ酸残基は、-Gln-Gln-ではないことが好ましい。
本発明に係るGセグメントの第2のサブタイプは、アミノ酸1文字コンセンサス配列GQGGQGQG(G/R)YGQG(A/S)G(S/G)S(配列番号5)により表される。前記この第2の(そして通常は中型の)Gセグメントサブタイプは、通常は17個のアミノ酸残基を含むと共に、荷電残基を有さないか、1個の荷電残基を有する。この第2のGセグメントサブタイプは、14~20個のアミノ酸残基を含むことが好ましいが、少ない場合には12個のアミノ酸残基、多い場合には30個のアミノ酸残基を含んでいてもよいと考えられる。何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、このサブタイプは、コイル構造を形成すると推定される。この第2のサブタイプの代表的なGセグメントとしては、配列番号3のアミノ酸残基249~265、471~488、631~647及び982~998;及び、配列番号3のアミノ酸残基187~203が挙げられる。
本発明に係るGセグメントの第3のサブタイプは、アミノ酸1文字コンセンサス配列G(R/Q)GQG(G/R)YGQG(A/S/V)GGN(配列番号6)により表される。この第3のGセグメントサブタイプは、通常は14個のアミノ酸残基を含み、通常は本発明に係るGセグメントサブタイプの中でも最も短い。この第3のGセグメントサブタイプは、12~17個のアミノ酸残基を含むことが好ましいが、多い場合には23個のアミノ酸残基を含んでいてもよいと考えられる。何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、このサブタイプは、ターン構造を形成すると推定される。この第3のサブタイプの代表的なGセグメントとしては、配列番号3のアミノ酸残基57~70、121~134、184~197、280~293、343~356、407~420、503~516、567~580、662~675、726~739、790~803、854~867、918~931、1014~1027;及び、配列番号3のアミノ酸残基219~232が挙げられる。
すなわち、各Gセグメントは、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、より好ましくは90%、より一層好ましくは95%、最も好ましくは100%の同一性を有することが好ましい。
REPドメインのA及びGセグメントが交互に現れる配列において、Gセグメントが1つおきに第1のサブタイプであり、残りのGセグメントが第3のサブタイプである構造、例えば...A1 Gshort A2 Glong A3 Gshort A4 Glong A5 Gshort...であることが好ましい。
或いは、REPドメインにおいて、Gセグメントの中に定期的に第2のサブタイプのGセグメントが一つ挿入されて中断される構造、例えば ...A1 Gshort A2 Glong A3 Gmid A4 Gshort A5 Glong...であることが好ましい。
個々のLセグメントは、例えば0~30個のアミノ酸残基、好ましくは0~25個のアミノ酸残基、例えば0~10個のアミノ酸残基を含んでいてもよい、任意のリンカーアミノ酸配列を表す。このセグメントは任意であり、クモ糸タンパク質の機能にとって重要ではないが、このセグメントが存在しても十分に機能的なクモ糸タンパク質を得ることができ、本発明に係るクモ糸繊維を形成することができる。エウプロステノプス・アウストラリス(Euprosthenops australis)のMaSp1タンパク質の推定アミノ酸配列の反復部分(配列番号3)にも、リンカーアミノ酸配列が存在する。特に、リンカーセグメントのアミノ酸配列は、前述したA又はGセグメントの何れかと類似していてもよいが、通常は本明細書に記載の要件を十分に満たさなくともよい。
国際公開第2007/078239号に示すように、REPドメインのC末端部分に配置されるリンカーセグメントは、アミノ酸1文字コンセンサス配列ASASAAASAASTVANSVS(配列番号7)及びASAASAAA(配列番号8)という、アラニン豊富な配列で表すことができる。事実、第2の配列は、本発明に係るAセグメントと考えることができ、第1の配列は、本発明に係るAセグメントに対して高度の類似性を有する。本発明に係るリンカーセグメントの他の例としては、1文字アミノ酸配列GSAMGQGS(配列番号9)という、グリシン豊富であり、本発明に係るGセグメントに対して高度の類似性を有する配列が挙げられる。リンカーセグメントの他の例としては、SASAG(配列番号10)が挙げられる。リンカーセグメントの更なる例としては、A.ベントリコスス(A. ventricosus)MiSP CTタンパク質由来のVTSGGYGYGTSAAAGAGVAAGSYA(配列番号11の一部)が挙げられる(実施例1を参照)。
代表的なLセグメントとしては、配列番号3のアミノ酸残基1~6及び1093~1110;並びに、配列番号3のアミノ酸残基138~142が挙げられるが、当業者であれば容易に認識するように、これらのセグメントとして他にも多数の適切なアミノ酸配列が存在する。本発明のREPドメインにおいて、Lセグメントの一つが0個のアミノ酸を含むものであってもく、即ち、Lセグメントの一つが不在であってもよい。本発明のREPドメインにおいて、Lセグメントの両方が0個のアミノ酸を含むものであってもく、即ち、Lセグメントの両方が不在であってもよい。すなわち、本発明に係るREPドメインのこれらの態様を模式的に表すと次の通りとなる:(AG)L、(AG)AL、(GA)L、(GA)GL;L(AG)、L(AG)A、L(GA)、L(GA)G;及び(AG)、(AG)A、(GA)、(GA)G。これらのREPドメインの何れも、先に規定したCTドメインとの使用に適している。
nは、2又は4であることが好ましい。選択されるREPドメインは、LG(AG)2L又はLG(AG)4Lであることが好ましい。選択されるREPドメインは、LG(AG)2Lであることが最も好ましい。
クモ糸タンパク質は、式NT-L-REP-L-CTに従う複数のドメインの組を含んでいてもよい。ここで、各Lセグメントは、1~30個のアミノ酸残基、好ましくは1~25個のアミノ酸残基からなるリンカーアミノ酸配列である。
REPドメインは、30~600個、より好ましくは50~500個、最も好ましくは70~300個のアミノ酸残基からなる配列であることが好ましい。
任意のNTドメインの特性
前述した任意のNTドメインは、存在することが好ましい。言うまでもなく、NTに関する以下の定義は、NTドメインが実際に存在する場合にのみ当てはまることになる。
前記NTドメインは、クモ糸タンパク質のN末端アミノ酸配列に対して、高度の類似性を有する。図1に示すように、このアミノ酸配列は、MaSp1及びMaSp2を含む広範な種及びクモ糸タンパク質の間で、高度に保存されている。図1では、以下のスピドロインのNTドメインをアラインしている。なお、当てはまる場合にはGenBankの受入番号を併せて示す。
Figure 0007221205000007
各配列のN末端断片に対応する部分のみを示し、シグナルペプチドは省略している。Nc Flag及びNlm Flagは、Rising A. et al. Biomacromolecules 7, 3120-3124 (2006)に従って翻訳及び編集した。
本発明に係るクモ糸タンパク質において、具体的にどのNTドメインが存在するかは重要ではない。すなわち、本発明に係るNTドメインは、表2に示すアミノ酸配列、及び、高度の類似性を有する配列の何れかから選択することができる。本発明に係るクモ糸タンパク質では、多種多様なN末端配列を用いることができる。図1の相同配列に基づけば、以下の配列がコンセンサスNTアミノ酸配列を構成する。
Figure 0007221205000008
本発明に係るNTドメインの配列は、図1のアミノ酸配列に基づく配列番号2のコンセンサスアミノ酸配列に対して、少なくとも50%の同一性、好ましくは少なくとも60%の同一性を有していてもよい。本発明に係るNTドメインの配列は、配列番号2のコンセンサスアミノ酸配列に対して、少なくとも65%の同一性、より好ましくは少なくとも70%の同一性を有することが好ましい。中でも、本発明に係るNTドメインは、配列番号2のコンセンサスアミノ酸配列に対して、更に70%、最も好ましくは80%の類似性を有することがより好ましい。
本発明に係る代表的なNTドメインとしては、配列番号1のエウプロステノプス・アウストラリス(Euprosthenops australis)配列が挙げられる。NTドメインは、配列番号1又は表2に示す何れかのアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性を有することが好ましい。中でも、NTドメインが、配列番号1又は表2に示す何れかのアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、例えば少なくとも95%の同一性を有することがより好ましい。特に、NTドメインが、配列番号1又は表2に示す何れかのアミノ酸配列、特にEa MaSp1に対して、同一であることが最も好ましい。
NTドメインは、100~160個のアミノ酸残基を含む。前記NTドメインが、少なくとも100個、又は110個超、好ましくは120個超のアミノ酸残基を含むことが好ましい。また、NTドメインが、最大160個、又は140個未満のアミノ酸残基を含むことが好ましい。特に、NTドメインが、約130~140個のアミノ酸残基を含むことが最も好ましい。
クモ糸タンパク質のN末端部分が、クモ糸タンパク質のN末端ドメインに由来する2個以上のドメイン(NT)を含む場合、更に1個又は2個以上のリンカーペプチドを含んでいてもよい。斯かるリンカーペプチドは、2つのNTドメインの間に配置され、スペーサーとして機能してもよい。
キメラクモ糸タンパク質の特性及び特徴
組換クモ糸タンパク質は、極めてpH依存性の高い溶解性を示すことが好ましい。中でも、500mM 酢酸Na、200mM NaCl、pH5.0の水溶液よりも、20mM Tris-HCl、pH8.0の緩衝水溶液に対して、少なくとも10倍、好ましくは50倍、より好ましくは100倍高い溶解性を示すことにより規定される、極めてpH依存性の高い溶解性を有することがより好ましい。
中でも、組換クモ糸タンパク質は、20mM Tris-HCl、pH8.0の緩衝水溶液に対し、100mg/mL、より好ましくは200mg/mL、最も好ましくは300mg/mLの濃度で溶解しうると共に、500mM 酢酸Na、200mM NaCl、pH5.0の水溶液中で重合しうることが好ましい。
中でも、第1の観点に係るタンパク質は、配列番号11に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より一層好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むことが好ましい。特に、第1の観点の組換クモ糸タンパク質は、配列番号11と同一の配列からなることが最も好ましい。
クモ糸タンパク質は、600個以下、好ましくは500個以下、より好ましくは400個以下、より一層好ましくは300個以下、最も好ましくは250個以下のアミノ酸残基を含むことが好ましい。一般に小さいタンパク質ほど組換による大量生産が容易である。
キメラクモ糸タンパク質の溶液
本発明の第2の観点によれば、以上の態様の何れかに係るクモ糸タンパク質の非変性溶液であって、クモ糸タンパク質のタンパク質濃度が少なくとも100mg/mL、好ましくは少なくとも150mg/mL、最も好ましくは少なくとも200mg/mLであるクモ糸タンパク質の非変性溶液が提供される。言うまでもなく、非変性溶媒は、特にpH、塩濃度、及び有機溶媒の何れの点でも、前記タンパク質の重合を誘発しない組成を有する。例えば、溶媒としては、20mM Tris-HCl、pH8.0の緩衝水溶液等が挙げられる。pHとしては、6.4以上、例えば7.0以上、好ましくは7.5~8.5であることが好ましい。
キメラクモ糸タンパク質のポリマー
第3の観点によれば、第1の観点に係るクモ糸タンパク質のポリマーが提供される。ポリマーとしては、例えば繊維、フィルム、発泡体、ネット又はメッシュが挙げられるが、繊維が好ましい。
ポリマーは、例えば少なくとも10cm、好ましくは少なくとも1m、より好ましくは少なくとも5m、より一層好ましくは少なくとも10m、より一層好ましくは少なくとも50m、最も好ましくは少なくとも100mの長さの繊維である。
繊維の直径は、例えば100μm、好ましくは50μm未満、より好ましくは20μm未満、最も好ましくは10μm未満である。
ポリマーの靱性は、例えば≧3MJ/m、好ましくは≧10MJ/m、より好ましくは≧20MJ/m、最も好ましくは≧40MJ/mである。好ましくは、靱性とは紡糸直後の(as-spun)ポリマー、即ち、後延伸又は同様の事後処理を受けていない状態の靱性を指すことが好ましい。
クモ糸タンパク質のポリマーを製造するための方法
第4の観点によれば、クモ糸タンパク質のポリマーを製造するための方法であって、
a.第1の液体培地中に、第1の観点に係るクモ糸タンパク質を、少なくとも100mg/mL、好ましくは200mg/mL、最も好ましくは300mg/mLの濃度で含む溶液を提供する工程;
b.クモ糸タンパク質の重合を生じさせるように、第1の液体培地の特性を調節する工程;
c.クモ糸タンパク質にポリマーを形成させる工程;及び
d.クモ糸タンパク質ポリマーを単離する工程
を含む方法が提供される。
第1の液体培地の特性は、クモ糸タンパク質の溶液を、クモ糸タンパク質の重合を許容する第2の流体培地に押し出すことにより調節される。
工程(a)における第1の液体培地のpHは、少なくとも6.4であることが好ましい。
工程(a)における第1の液体培地の塩濃度は、100mM未満であることが好ましい。
工程(a)における第1の液体培地は、有機溶媒含有量が10%(v/v)未満の水溶液であることが好ましい。
工程(b)~(d)において、第1の液体培地の特性は、前記クモ糸タンパク質が重合するのに十分な塩濃度の存在下で、pHが6.3以下となるように調節されることが好ましい。
工程(b)~(d)において、第1の液体培地の特性は、例えば塩濃度が少なくとも100mM、及び、pHが6.3以下となるように調節される。
工程(b)~(d)において、第1の液体培地の特性は、例えば有機溶媒の濃度が重合を誘発するのに十分な濃度となるように調節される。
第2の流体培地は、例えばpHが6.3以下であり、クモ糸タンパク質が重合するのに十分な塩濃度を有していてもよい。
第2の流体培地は、重合を生じさせるのに十分な濃度の有機溶媒を含んでいてもよい。
第2の流体培地は、吸湿性ポリマー、例えばPEGを含んでいてもよい。
前記押し出しは、例えば間隔20~50000μm、好ましくは30~30000μm、より好ましくは40~10000μm、より一層好ましくは50~5000μm、最も好ましくは70~800μmの断面積の開口を有する毛細管を通じて行うことができる。
前記押し出しは、例えば0.1~500mm/s、より好ましくは0.5~200mm/s、最も好ましくは1~100mm/sの線流速で行うことができる。
ポリマーを3D印刷機から押し出すことにより、所定のパターンの形成を可能とするのも好ましい。
ポリマーは、繊維、フィルム、発泡体、ネット又はメッシュを形成してもよく、繊維を形成することが好ましい。
ポリマーを更なる処理、例えば異なる水性緩衝剤及び/又はアルコール槽、及び/又は、例えばポリエチレングリコール (PEG)等の脱水溶液内での後延伸処理等に供してもよい。
DNA配列、コンストラクト、宿主細胞、製造方法
第5の観点によれば、第1の観点に係るタンパク質をコードする核酸が提供される。
第6の観点によれば、第5の観点に係る核酸を、プロモーターに作動式に連結された状態で含む発現ベクターが提供される。
第7の観点によれば、第5の観点に係る核酸、又は、第6の観点に係る発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。
第8の観点によれば、組換クモ糸タンパク質を製造する方法であって、
a.第7の観点に係る宿主細胞を、前記タンパク質の産生を許容する条件下で培養し、
b.培養物からタンパク質を単離する
ことを含む方法が提供される。
前記本発明に係るクモ糸タンパク質は、通常は組換により、種々の適切な宿主、例えば細菌、酵母、哺乳類細胞、植物、虫細胞、及び、トランスジェニック動物等を用いて製造される。本発明に係るクモ糸タンパク質は、細菌により製造することが好ましい。
クモ糸タンパク質の用途
上に論じた組換クモ糸タンパク質及びこれに由来するポリマーは、クモ糸タンパク質の既知の用途の何れにおいても有用である。
第9の観点によれば、第1の観点に係るクモ糸タンパク質、又は、第3の観点に係るポリマーの、埋込可能な材料又は細胞培養スキャフォールドの製造における使用が提供される。
第10の観点によれば、第1の観点に係るクモ糸タンパク質、又は、第3の観点に係るポリマーの、埋込可能な材料又は細胞培養スキャフォールドとしての使用が提供される。
本開示に関する一般的事項
「含む」(comprising)という語は、含む(including)という意で解すべきであるが、限定されるものではない。参照文献は何れも引用により本明細書に組み込まれる。本明細書は見出しを付して複数の項目に分割したが、これらは単に読みやすさのためであり、如何なる意味でも限定的に解すべきではない。特にこうした分割は、異なる見出しの項目から複数の特徴を組み合わせることを、如何なる意味でも除外又は制限するものではない。
以下の実施例を限定的であるとみなしてはならない。実験の詳細に関するさらなる情報については、当業者は「材料および方法」という表題の別の節を参照のこと。
実施例1:キメラミニスピドロインNT2RepCTの製造
本発明者らは、ガシキバラヒタキ(E. australis) MaSp1由来のNTおよびE. australisからの短い反復領域を挟むオニグモ(A. ventricosus) MiSp由来のCTからなるミニスピドロインを設計した。キメラNT2RepCTタンパク質は、振盪フラスコ大腸菌培養液中でこれまでにない高レベルで産生され、精製後の収量はL細胞培養物あたり約125mgのタンパク質であった。ほぼ全てのタンパク質が発現し、溶解後に可溶性であり、かつNi-NTAカラムに効率的に結合した(図2A)。溶出液は95%を超える純度のNT2RepCTを含み、SDS PAGEゲルに固定されたタンパク質のサイズは予想される分子量(33 kDa)とよく一致した(図2A)。サイズ排除クロマトグラフィーは、100 kDaの質量を示し(図6)ており、二量体(CTの構成的二量体の性質による)および反復部分の非球状構造とよく一致した。
実施例2: キメラミニスピドロインNT2RepCTは極端な溶解性を示す
水中で高濃度の紡糸ドープを得ることは長年の大きな目標であったが、今までは、非生理学的溶媒を使用したとしても、報告されている人工紡糸ドープの濃度は10~30%の範囲であった。実施例1のNT2RepCTは、溶解性に関してあらゆる予想をはるかに上回った。それはpH 8の水性緩衝液中で沈殿なしに500 mg/mlに濃縮することができ、この濃度はクモの紡糸ドープ中のタンパク質濃度と等しいかそれを超えることさえある。このような高濃度では、タンパク質は黄色のヒドロゲルを形成した(図2B)。天然のクモ絹糸ドープは、直径100~200 nmのミセルとして貯蔵されていることが分かっており、おそらくシェルに末端ドメインおよびコアに遮蔽された反復領域を持っている。これは、カイコ絹糸腺内の貯蔵メカニズムであることも提案されている。この点でNT2RepCTタンパク質は天然の絹タンパク質として機能し、約10 nmのミセルに集合している(図2C、図7)。天然クモ絹ドープ中のミセルと比較して、組み換えスピドロインからなるミセルの直径が小さいことから、NT2RepCTの反復領域が短いことから予想される。500 mg/mlのNT2RepCTは、繊維を形成する能力を維持しながら、4℃で数週間、また-20℃で数ヶ月間保存することができた(下記参照)。人工紡糸ドープ溶液の報告されている典型的な安定性は3~5日なので、これは驚くべきことである。
公表されている精製プロトコルは、硫酸アンモニウムによる発現タンパク質の沈殿、凍結乾燥、さらにHFIPまたはチオシアン酸グアニジニウムへの可溶化を含んでいた。製造中に非水性溶媒または他の変性剤が存在すると、天然構造の形成が妨げられる可能性があり、我々はNT2RepCTの高い溶解度および経時安定性は天然に折り畳まれたNTおよびCTの存在に関連していることを提案するが、これは、天然様ミセル構造の観察により支持されている推測である。さらに、溶液中のNT2RepCTタンパク質のフーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、波数約1545および1650 cm-1にそれぞれアミドIおよびIIの最大吸収帯を示した(図9)。この結果はαらせん構造を示している。これは、NTとCTの両方の天然の五本のらせん束構造とよく一致している。
実施例3:NT2RepCTミニ スピドロインの生物模倣紡糸
生物模倣紡糸を達成するのに満たされる必要がある別の前提条件は、クモ絹糸腺の状態を模倣することができる紡糸装置を設計することである。我々は細いガラス製毛細管(ここから高濃度のNT2RepCTドープを酸性の水性緩衝回収槽に注入する)から、単純だが効率的な第一世代の紡糸装置を設計した(図3)。この設定によりpHが低下し、ドープが毛細管の先端を進む際に剪断力がドープに作用し、その結果、連続的な固体繊維が形成される(図3A~B)。繊維は、数百メートルを超える長さで空気中で回転するフレームに容易に巻き取られる(図3C)。繊維を紡糸することができるドープ濃度間隔は100~500 mg/mlの範囲であった。200 mg/mlを超える濃度のドープから紡糸された繊維は取り扱いがより簡単で、破断することなく連続繊維に紡糸することができた。紡糸直後(as-spun)の繊維は、SEMで判断されるように、約10~20 μmの直径で均質であった(図8)。低pH浴中で後延伸した繊維は、紡糸直後の繊維と比較して直径がわずかに減少した。切れるまで延伸された繊維の破断面は、緻密で均質な内部核を示す(図8)。
NT2RepCT繊維のフーリエ変換赤外分光(FTIR)分析によると、アミドIおよびIIピーク分布の移動から分かるように、可溶性状態と比較してβシート立体配座が増加した(図9)。
実施例4: pHの繊維紡糸に及ぼす影響
pHの繊維紡糸に及ぼす影響をさらに調べるために、ドープを2.0~7.5の範囲のpHを有する水浴中に押出した。浴のpHが6.0~6.5の間にあるときは、不連続な繊維様構造体が形成された(図4A)。pHが3.0~5.5の間では連続繊維が形成され(図4A)、繊維は回収浴から容易に引き出され、フレームに巻き取ることができた(図3および4)。回収浴のpHが2.5以下の場合は、繊維は見られなかった(図4A)。
実施例5:分子レベルでのNT2RepCTの集合
分子レベルでNT2RepCTのpHに依存する集合をさらに調べるために、我々はナノエレクトロスプレー質量分析法(nESI-MS)を使用した。予想通り、pH 7.5でnESI-MSからは、天然のNT2RepCT二量体に対応する66560 Daの主要分子種の存在が確認された。pHを約5.5に下げると、四次構造の著しい変化が引き起こされる。オリゴマー(主に四量体、図4Bの矢印)を、エレクトロスプレー毛細管中の試料にギ酸を直接添加した後1分まで観察することができた。より重合度の高いオリゴマーがなくなった後、二量体に対応する低強度のピークのみを検出することができ、これは5分の間にさらにベースラインまで減少した(図4B)。これらの知見は、末端ドメインのpH依存性による固定あるいは開始作用とよく相関している。NTはそれ自体が低pHで急速な逆平行二量体化を受ける(図10)が、このことはスピドロインの無限重合体への架橋をもたらすことを示唆している。一方、CTを単独で使用すると、モノマーの量が増えることから分かるように、低pHにさらされると徐々に折り畳みが解け、最終的にはいくつかのより高い荷電状態で示されるようにアミロイド様βシート核となる(図10)。アミロイド様フィブリルと同様に(Solvent effects on self-assembly of beta-amyloid peptide(ベータ-アミロイドペプチドの自己集合に及ぼす溶媒効果)。Shen CL, MurpHy, RM. BiopHys J. 1995 Aug; 69(2) :640-51)、アセトニトリルを添加してもより高重合度のNT2RepCTのオリゴマーは溶解できなかったが、濃ギ酸はモノマーの信号を回復し、これは変性による凝集体の解離を示している(図4B)。
実施例6:紡糸したNT2RepCT繊維の機械的性質
天然のドラグライン繊維の強度と伸びは、クモの種類によって大きく異なり、湿度や温度などの環境要因にも大きく依存するが、それらはすべて降伏点までの初期弾性挙動を示し、その後塑性変形が起こる。応力をかけたときの紡糸後のNT2RepCT繊維の挙動は、天然のドラグライン絹糸と似ているが、引張強度はより低く歪みはより高い(図5)。pH 5の水性回収浴中に紡糸したNT2RepCT繊維は45±7 MJ/m3の靭性を持つ(図5、表3)が、A. trifasciataのドラグライン絹糸(100 ± 40 MJ/m3)の靭性39に近づく(表3)。ヤング率は約6 GPaで、天然のArgiope trifasciataのドラグライン絹糸の半分である。
Figure 0007221205000009
参考文献 1. Plaza, G. R., Perez-Rigueiro, J., Riekel, C., Perea, G.B., Agullo-Rueda, F., Burghammer, M., Guinea, G.V., Elices, M. . Relationship between microstructure and mechanical properties in spider silk fibers: identification of two regimes in the microstructural changes(クモ絹繊維の微細構造と機械的性質の関係:微細構造変化における2つの型の同定). Soft matter 8, 6015-6026, (2012).
参考文献 2. Heidebrecht, A. et al. Biomimetic fibers made of recombinant spidroins with the same toughness as natural spider silk(天然クモ絹糸と同じ靭性を有する組み換え型スピドロインでできた生体模倣型繊維). Adv Mater 27, 2189-2194, (2015).
参考文献 3. Copeland, C. G., Bell, B.E., Christensen, C.D., Lewis, R.V. Development of a Process for the Spinning of Synthetic Spider Silk(合成クモ絹糸の紡糸法の開発). ACS Biomaterials Science and Engineering 1, 577-584, (2015).
参考文献 4. Teule, F. F., W.A.; Cooper, A.R.; Duncan, J.R.; Lewis R.V. Modifications of spider silk sequences in an attempt to control the mechanical properties of the synthetic fibers(合成繊維の機械的性質を制御する試みにおけるクモ絹配列の改変). J Mater Sci 42, 8974-8985, (2007).
参考文献 5. Albertson, A. E., Teule, F., Weber, W., Yarger, J. L. & Lewis, R. V. Effects of different post-spin stretching conditions on the mechanical properties of synthetic spider silk fibers(合成クモ絹繊維の機械的性質に及ぼす異なる紡糸後延伸条件の影響). J Mech Behav Biomed Mater 29, 225-234, (2014).
参考文献 6. Adrianos, S. L. et al. Nephila clavipes Flagelliform silk-like GGX motifs contribute to extensibility and spacer motifs contribute to strength in synthetic spider silk fibers(合成のクモ絹繊維では、NepHila clavipes鞭毛の絹様GGXモチーフは伸張性に寄与し、スペーサーのモチーフは強度に寄与する. Biomacromolecules 14, 1751-1760, (2013).
今までに公表された人工のクモ絹繊維を製造する方法には、エレクトロスピニング、ハンドドローイング、マイクロ流体装置による紡糸、および湿式紡糸が含まれ、しばしば水性アルコールの凝固浴中で行われる。これらの方法はどれも、おそらく製造および紡糸工程で変性されたタンパク質同士の組合せおよび生物模倣条件が欠如しており、天然のクモドラグライン絹糸の性質と同等の機械的特性を有する繊維を形成しなかった。紡糸後の繊維は、14~55 MPaの範囲の最大引張応力、および1~7%の歪みレベルをもち、最大2 MJ/m3の靭性を持つ(表3)。繊維の機械的性質を高めるには、別の紡糸後処理が必要である。500%の後延伸した末端ドメインを持たない天然サイズの組換えタンパク質について、最大500 MPaの応力および15 ± 5%の歪みを持つこれまでに発表された最も靭性の高い繊維が得られたが、紡糸後の繊維の応力水準は報告されなかった。これらの結果を考慮すると、我々の紡糸後の繊維は、天然の反復領域の僅かに約2%がミニ スピドロインに含まれていることを考えると、驚くほど良好な機械的性質を持っている。NT2RepCT繊維は、我々の知る限りでは、これまで製造された中で最も堅牢な紡糸繊維である(表3)。
実施例7:乾燥繊維の種々の溶媒への溶解度
乾燥繊維を重水(dH 2O)に溶解する。本発明者らは、乾燥繊維の溶解を起こさずに使用することができる水性緩衝液および溶媒を研究した。
実施例3に記載のように、繊維の紡糸をガラス毛細管中で行った。繊維を500 mM NaAcおよび200 mM NaCl、pH 5を有する回収浴中に紡糸した。紡糸後の繊維を回収浴から引き上げて乾燥させ、その後、単繊維を種々の溶液に浸して溶解したかどうかを確認した。
試験に使用した浸漬溶液:
1. 200 mM クエン酸, pH 3
2. 500 mM NaAc および200 mM NaCl, pH 5
3. 1M NaCl, pH 6.6
4. dH2O
5. 20 mM Hepes/Mes, pH 5.5
6. 20 mM Hepes/Mes, pH 7.5
7. Mes, pH 5.15
8. 20 mM トリス, 100 mM NaCl, pH 8
繊維は浸漬溶液1~3には溶解しなかったが、溶液4~8には溶解した。pHとイオン強度の組み合わせが溶解度に影響を及ぼす要因であると結論付けた。
実施例8:種々の回収浴へのNT2RepCTの紡糸
NT2RepCT繊維の紡糸に及ぼす回収浴の組成およびイオン強度の影響を調べるために、回収浴中の溶液以外は実施例3と同様の設定で追加の試験を行った。
試験に使用した回収浴:
1. 400 mM NaCl, pH 5を含む1000 mM NaAc緩衝液
2. 200 mM NaCl, pH 5を含む500 mM 酢酸ナトリウム(NaAc)緩衝液
3. 20 mM NaAc 緩衝液, pH 5
4. 20 mM リン酸緩衝液, pH 6.2
5. 20 mM トリス, 500 mM NaCl, pH 7.2
6. 80%の2-プロパノールと水の混合液
7. 40%の2-プロパノールと水の混合液, 500 mM NaAc, 200 mM NaCl
8. 60 %のメタノール, 40%の水
9. 60 % のメタノールと水の混合液, 500 mM NaAc, 200 mM NaCl
10. 33% PEG 6000(ポリエチレングリコール6000)
11. 16.5% PEG 6000, 500 mM NaAc, 200 mM NaCl, pH 5
回収浴1~2、6~11中に連続繊維が形成された。回収浴3~5からは、容易に溶解する短い繊維のみが得られた。PEG繊維は酢酸ナトリウム緩衝液中で調製された繊維と非常に類似しているように見えたが、2-プロパノール(図11)およびメタノール繊維は異なる巨視的外観をしていた。2-プロパノール繊維は、NaAc繊維よりも不透明度が低かった。メタノール繊維は完全に透明で、よりゲル状であった。
最も強度が高いと思われる繊維は回収浴2(500mM NaAc、200mM NaCl pH5)で製造された。紡糸後に空気中で後延伸するのが最も容易な(すなわち、より伸張性の)繊維は回収浴11(16.5%PEG、500mM NaAc緩衝液、200mM NaCl pH5)中で製造された。
実施例9:種々の回収浴中で、異なる温度で紡糸した、または種々の浴中で後延伸したNT2RepCT繊維の引張特性および二次構造
目的
1) NT2RepCT繊維の引張特性に及ぼす回収浴の組成の影響を研究すること
2) NT2RepCT繊維の引張特性に及ぼす後延伸の影響を研究すること
方法
研究1):NT2RepCT繊維を実施例3に記載のようにして以下の異なる回収浴中に紡糸した:
160223_1: 500 mM NaAc, 200 mM NaCl, pH 5
160223_2: 500 mM NaAc, 200 mM NaCl, 15% PEG, pH 5
160303_4: 500 mM NaAc, 200 mM NaCl, pH 4.25
研究2):NT2RepCT繊維を、実施例3に記載のようにして、500mM NaAc、200mM NaCl、pH5を含む回収浴中に紡糸し、続いて:
160223_4:50% MetOhおよび500 mM NaAc, 200 mM NaCl, pH 5中で後延伸した;
160223_5:30% PEG中で後延伸した;
160303_5a:80%の2-プロパノール中で後延伸した;あるいは
160303_5b:80%の2-プロパノール(延伸せず)に浸漬した。
引張試験(160223試料)を実施例3に記載のように行った。あるいは、引張試験機をShimadzu(島津)製に変えて、実施例3に記載のものと同じ手順で(160303試料)引張試験を行った。
結果
PEGを含む回収浴中へ紡糸すると、500 mMのNaAc、200 mMのNaCl、pH 5のみを含む回収浴に比べて、繊維の靭性が増加する。ただし、500 mMのNaAc、200 mMのNaCl、pH 5に紡糸されたNT2RepCT繊維(160223_1)は、他のバッチからのNT2RepCT繊維よりも靱性がはるかに低かった。
メタノールの存在下で後延伸すると繊維の引張強度が高くなり、一方30% PEG中で後延伸すると繊維の歪みが大きくなる。
pHを4.25に下げると、得られた繊維は非常に脆い。
2-プロパノール中で後延伸すると引張強度は高くなるが、歪みは低くなる。一方2-プロパノールに浸漬したのみだと歪みが高くなる。
実施例10:NT2RepCTによる3D印刷の予備研究
この研究の狙いは、NT2RepCT蛋白質を用いる繊維構造の印刷とNT2RepCTゲル繊維の印刷を試験することであった。
実施例1に記載のようにNT2RepCTを発現・精製し、次いで濃縮した。
紡糸の設定は実施例3に記載のとおりであった。引き上げたガラス毛細管を紡糸しながらあちこちに移動させて名前と記号を印刷した。
ゲル実験のために、高濃度のNT2RepCTタンパク質を注射器に入れ、27Gの針からペトリ皿に押し出した。ゲル構造体を印刷した後、低pH緩衝液(500 mM NaAc、200 mM NaCl、pH 5)をペトリ皿に注いだ。
どちらの研究も、3D印刷機を用いたNT2RepCTの印刷の実現可能性を示している。両方の研究で、名前と記号を印刷することができた(図12A~C)。従って、3D印刷機は、乾いた状態でも低pHの湿った状態でも印刷することができた。
比較例11:比較例の繊維の形成
3つの異なる構築物:MaSpCT、NT4rep、および4repCT(全ての構築物はMaSpからの部分を含む、すなわち、MiSp CTを含まない)を発現・精製し、基本的に2007年にStarkらが記載したようにガラス管中で緩傾斜法を用いて繊維形成を行った。ただし、pHを下げる添加剤により異なるミニスピドリン構築物の繊維形成特性に及ぼすpHの影響の研究が可能になった。
方法
グリセリン保存液から20 mLのLB培地(カナマイシンを含む)を接種して、種々の構築物の一晩培養物を調製した。一晩培養物を30℃、200 rpmで増殖した。
5 mlのON培養液を500 mlの新鮮なLB培地(カナマイシンを含む)に加え、30℃、200 rpmでOD 0.9まで増殖させ、その後温度を25℃に下げ、IPTGを加えた(最終濃度0.3 mM)。発現を4時間続けた後、培養物を5000 rpm、4℃で20分間遠心分離した。ペレットを30 mlの20 mM トリスpH 8に溶解し、-20℃で保存した。
解凍しながら600 μlのリゾチームを添加して細胞を溶解した。細胞が融解したら、15 μlのDNaseおよび60 μl(1 M)のMgCl2を加え、試料を氷上で30分間インキュベートした。溶解物を15000 rpm、4℃で30分間遠心分離した後、上清を精製のためにNi-セファロースカラムに充填した。カラムを20 mMトリス pH 8、次いで20 mMトリスpH 8および10 mMイミダゾールで洗浄した。タンパク質を20 mMトリス、300 mMイミダゾールpH 8で溶出した。トロンビン(1 μg/mgタンパク質)を融合タンパク質に加え、試料を20 mMトリスpH 8に向けて4℃で一晩透析した。透析して切断した試料をNi-セファロースカラムに充填し、精製タンパク質を含む通過画分を回収した後、タンパク質の純度をSDS-PAGEで確認し、タンパク質濃度を280 nmで測定した。
種々の構築物のタンパク質収率は次の通り:
NT4rep:1Lの震盪フラスコ培養で21 mg、
4repCT:1Lの震盪フラスコ培養で24 mg、
MaSpCT:1Lの震盪フラスコ培養で14 mg。
タンパク質を≦3 mg/mlに濃縮し、次いで試料を異なるpHおよび塩条件の緩衝液中で1 mg/mlに希釈した。4RepCTの最大濃度は10 mg/mlであり、その後タンパク質を沈殿させた。
繊維形成に使用された方法は、(Starkら 2007年に記載されているように)ガラス管内で穏傾斜させることであった。
3つの異なるpHで試験した:pH 7.5、6.5および5.5の約10 mMのHepes/Mes。154 mM NaClを添加あるいは無添加。
結果
MaSpCTは、約3時間の穏傾斜の後、短繊維(≦5 mm)を形成する。pHおよび塩条件は繊維形成速度と繊維のサイズのどちらにも影響しない。
NT4repはpHや塩の状態に関係なく繊維を形成しない。
4repCTはすべてのpHで繊維(長さ約2 cm)を形成するが、繊維形成はpH 5.5では遅くなる。繊維形成はpH 6.5および7.5で同じくらいに速いが、繊維はpH値が下がると小さくなる。
NT4repと4repCT(それぞれ0.5 mg / ml)の混合物からは(3 cm以下)の長繊維が形成され、pH 6.5または7.5よりもpH 5.5の方が形成速度は速いが、4repCT単独よりもはるかに遅い。
実施例12:2RepCTの製造と紡糸
2RepCTは100 mg/ml超に濃縮することができ、紡糸装置からタンパク質を送り出すことで繊維に紡糸される。
実施例1のNT2RepCTについて記載のとおりにPGB1-2RepCTを発現・精製する。His - PGB1-タグを4℃で一晩トロンビンで切断し、続いて逆IMACで除去し、その後2RepCTを170 mg/mlに濃縮する(NT2RepCTで説明したように行う)。
外径1.0 mmおよび内径0.6 mmの円形ガラス毛細管(G1、Narishige)を先端直径25 μmまで引き延ばす(Micro Electrode Puller、Stoelting co.51217)。ルアーロック(Luer Lok)先端(BD)を有する1 ml注射器を2RepCT (170 mg/ml)で満たし、0.40 mmの外径を持つ27G鋼針(Braun)に接続する。針はポリエチレン管を介して延伸ガラス毛細管に接続される。neMESYS低圧(290N)注射器ポンプ(Cetoni)を用いて、50 mlのファルコンチューブ内に500 mM NaAc、200 mM NaCl、pH 5.0または50%メタノールおよび50%NaAC (500mM)、NaCl (200 mM) pH5のいずれかを含む回収浴に20 μl/minの流速でPGB1-KL4を出射する。
2RepCTを毛細管先端からメタノール/低pH回収浴中に押し出すと連続繊維が即座に形成され、回収浴から引き上げると同時にファルコンチューブの底部に集まる。
結論として、2RepCTを天然条件で高収率・高純度で製造することができ、7から5へのpH低下に応答し、pH 7~8の水性緩衝液への溶解性が高い。
実施例13: NT 2 + 2RepCTミニ スピドロインの発現と紡糸
NcoIHisNt2x2RepCtHindIIIのDNA配列は配列番号17に従った。発現されたタンパク質のアミノ酸配列は配列番号18に従った。
発現
発現を大腸菌BL21細胞中で行った。LB培地(70 μg/mLカナマイシンを含む)中で37℃で一晩置いた細胞培養物5 mLを、500 mLのLB培地(70 μg/mLカナマイシンを含む)に移し、OD600が0.8から1.0になるまで30℃で振盪フラスコ中で培養した。次いで温度を20℃に下げ、150 μlの1M IPTG(最終濃度0.3 mM)を加えて発現を誘導した。一晩培養後、5,000 rpm、4℃で15分間遠心分離して細胞を回収した。500 mlの培養液からの細胞を30 mlの20 mM pH 8トリス緩衝液に再懸濁し、-20℃で一晩保存した。
溶解と精製
細胞を解凍し、30 mlの細胞を2本の試験管に分け、各試験管をトリス緩衝液(pH 8.0)で30 mlまで満たした。次に、600 μlのリゾチームを各チューブに加え、次いでこれを氷上で1.5時間インキュベートし、その後、15 μlのDNAseと60 μlの1M MgCl2を加えて、試料を氷上で1時間インキュベートした。次いで溶解物を4℃、27,000gで30分間遠心分離した。最初の上清(上清1)をNi-NTAカラムに充填した。次いでペレットを30 mlのトリス緩衝液(pH 8.0)に再懸濁し、-20℃で一晩貯蔵した。翌日、ペレットを解凍し、27,000g、4℃で30分間遠心分離し、次に第二の上清を回収してNi-NTAカラムに充填した。
上清を重力流Ni-NTAカラムに充填した。カラムを(1)20 mMトリスpH 8.0、(2)100 mM NaClを含む20 mMトリスpH 8.0緩衝液、および(3)10 mMイミダゾールを含む20 mMトリスpH 8.0緩衝液で洗浄した。タンパク質を、300 mMイミダゾールを含む20 mMトリスpH 8.0緩衝液で溶出した。目的タンパク質を含む溶出液を、20 mMトリス、pH 8.0に対して6-8 kDaの分子量カットオフを有するSpectra/Por(登録商標)透析膜を用いて冷室で一晩透析してイミダゾールを除去した。
収量は次の通り:
1)上清1から41 mgのタンパク質、
2)上清2から46 mgのタンパク質。
従って収量は1LのLB培地振盪フラスコ培養からは87 mgである。精製工程のSDS-PAGE分析を図13に示す。
濃度と溶解度
NT2×2RepCTタンパク質は、20 mMトリス中、pH 8.0で300 mg/ml超に濃縮することができた。
紡糸
繊維はNT2RepCTに関する記載の通り紡糸に成功した。NT2RepCTとNT2 + 2RepCTとの間でマクロ構造または繊維形成能力に明らかな違いはなかった。
実施例14:細胞培養マトリックスとしてのクモ絹糸
ヒト胎児心臓間葉系間質細胞(hfMSC)は、6~9週目のヒト胎児心臓に由来した(Mansson-Broberg et al., Wnt/b-Catenin Stimulation and Laminins Support Cardiovascular Cell Progenitor Expansion from Human Fetal Cardiac Mesenchymal Stromal Cells(Wnt/β-カテニン刺激およびラミニンはヒト胎児心臓間葉系間質細胞からの心血管細胞前駆体の増殖を支持する), Stem Cell Reports, 2016)。
細胞を、2%ウシ胎児血清、2% B27、グルタミンおよびMycozap(マイコプラズマ除去試薬)を供給したダルベッコ改変イーグル培地 F12(DMEM / F12、Sigma)からなる培地中のクモ絹糸マトリックスに播種した。培地は週に2~3回交換した。
培養10日後、細胞を含むクモ絹糸マトリックスを急速冷凍し、5 μmの切片を調製した。これらを4%ホルムアルデヒドを含むPBS液中で固定し、免疫組織化学のために5%ウサギ血清を含むPBS中でブロックした。ラミニンα4およびKi67染色については、抗原回収のためにスライドをクエン酸緩衝液pH 7(Invitrogen)中で煮沸した。一次抗体はすべてマウス抗ヒト抗体であり、以下に従ってブロック緩衝液に加えた:α平滑筋アクチン(αSMA、A2547、Sigma) 1/250、CD31 (M0823、Dako) 1/300、トロポニンT(ab8295、Abcam) 1/800、ヘパラン硫酸(370255-1、Amsbio) 1/500、ラミニンα4(CL3183、Atlas antibodies) 1/200、Ki67 (MIB1、Dako) 1/75。スライドを湿室中、室温で一晩インキュベートし、PBSで洗浄し、二次抗体、ウサギ抗マウス(Alexa fluor 488)をブロックバッファー1/700に加えた。スライドを湿度室内で室温で90分間インキュベート、洗浄し、Dapi蛍光色素で標本化した。
細胞はクモの絹糸に容易に付着して増殖することができ、多くの細胞がKi67を発現することがわかった。細胞はαSMA、ラミニンα4およびヘパラン硫酸を発現し、このことは細胞外マトリックスと基底膜の形成を示している。インビボでは、このことが細胞の移植後の生残を助けることができると思われる、というのは、それらは固定部位およびよく知られた細胞外マトリックスとなるからである。アノイキス、すなわち足場の喪失によるアポトーシスは、それによって最小になり、移植後の細胞生存率が増加すると思われる。
実施例15:ミニスピドロインの溶解度に及ぼすC末端ドメインの荷電残基数(K/R/E/D)の影響
本発明者らは、NT2RepCT(配列番号11、実施例1参照)と同一のミニスピドロインを発現させた。ただしCTは以下のものと交換した:
-MiSp Ds CT(配列番号73):小瓶状(minor ampullate)絹タンパク質Deinopis spinosa。ジェンバンク登録番号ABD61589、NT2RepCT (MiSp Ds)、配列番号74が得られた。このCTは11個の荷電残基を含む。
-MaSp1 Ea CT(配列番号27):大瓶状(major ampullate)スピドロイン1 Euprosthenops australis。ジェンバンク登録番号CAJ00428.1、配列番号75のNT2RepCT (MaSp1 Ea)が得られた。CT中に4つの荷電残基を含む。
-ADF-4(配列番号56):Araneus diadematusフィブロイン-4。ジェンバンク登録番号ADU47856。CT中に5個の荷電残基を含むNT2RepCT (ADF-4)(配列番号76)が得られた。
-MiSp Lh CT(配列番号45):小瓶状スピドロインLatrodectus hesperus。ジェンバンク登録番号ADM14322.1。CT中に5個の荷電残基を含む、配列番号77のNT2RepCT (MiSp Lh)が得られた。
本発明者らはまた、NT2RepCT(配列番号11)のCT中の2つの荷電アミノ酸残基(アラニンに対してそれぞれR38およびD105)を個々に変異させて、NT2RepCTR38AおよびNT2RepCTD105A(それぞれ配列番号78および79)を得た。この置換により、CTドメイン中の荷電残基の数が7から6に減少する。
これら6つの新規なタンパク質は、NT2RepCTに関する記載のようにして発現された。タンパク質が可溶性画分中に十分な収率で見出された場合、タンパク質をIMACクロマトグラフィーにより精製・濃縮し、続いてNT2RepCTに関する記載のように繊維に紡糸した。
結果:NT2RepCT (MiSp Ds)を発現させることができ、可溶性画分中に見出され、精製し、300 mg/ml超に濃縮することができ、NT2RepCTと同じ方法で紡糸させることができた。SDS PAGE分析によれば、NT2RepCT (MaSp1 Ea)、NT2RepCT (ADF-4)およびNT2RepCT (MiSp Lh)はすべて不溶性画分中に見出された(図20~22)。
NT2RepCTR38Aは高収率で発現されたが、主に不溶性画分中に見られた。NT2RepCTD105Aは発現が乏しく、タンパク質濃度および繊維紡糸に十分な量を得ることができなかった。
結論:これらの結果は、CT中の少なくとも7個の荷電残基が、精製、濃縮および水性溶媒中での紡糸に対して十分に可溶性のNT2RepCT種のミニスピドロインを得るのに必要であるという結論を支持している。
材料および方法
タンパク質の発現と精製
構築物NT2RepCT(配列番号11)は、6×Hisタグ(MGHHHHHHM)および次のドメインからなる、配列番号12のタンパク質をコードする:
E. australisのMaSp1配列に基づくN末端ドメイン:(SHTTPWTNPGLAENFMNSFMQGLSSMPGFTASQLDDMSTIAQSMVQSIQSLAAQGRTSPNKLQALNMAFASSMAEIAASEEGGGSLSTKTSSIASAMSNAFLQTTGVVNQPFINEITQLVSMFAQAGMNDVSA)
E. australisのMaSp1由来の2つのポリアラニン/グリシンに富む反復領域からなる反復部分:(GNSGRGQGGYGQGSGGNAAAAAAAAAAAAAAAGQGGQGGYGRQSQGAGSAAAAAAAAAAAAAAGSGQGGYGGQGQGGYGQSGNS)
25個のアミノ酸のリンカーの前のA. ventricosus MiSp配列に基づくC末端ドメイン: (VTSGGYGYGTSAAAGAGVAAGSYAGAVNRLSSAEAASRVSSNIAAIASGGASALPSVISNIYSGVVASGVSSNEALIQALLELLSALVHVLSSASIGNVSSVGVDSTLNVVQDSVGQYVG)
構築物をpT7プラスミドにクローニングし、BL21 (DE3)大腸菌に形質転換した。カナマイシン(70mg/l)を含むルリアブロス培地にNT2RepCTを含有する大腸菌のグリセリン保存液を接種し、振盪(200 rpm)しながら37℃で一晩増殖させた。一晩培養物をカナマイシンを含む500 mlのLB培地の1/100接種に使用し、次いでそれをOD600が0.8に達するまで振盪(200 rpm)しながら30℃で培養し、その後温度を20℃に下げ、イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を0.3 mMの最終濃度まで加えてタンパク質発現を誘導した。細胞を振盪(200 rpm)しながら20℃で一晩培養し、次いで4℃、5000 rpmで20分間遠心分離して回収した。ペレットを20 mMトリスpH 8に再懸濁し-20℃で凍結するか、または再懸濁直後に溶解した。
溶解は、細胞破砕機(T-S 系列の機械、Constant Systems Limited、イギリス)中で、30 kPsiで行い、その後、溶解物を27000 g、4℃で30分間遠心分離した。上清をNi-NTAカラムに充填し、タンパク質を300 mMイミダゾールで溶出した。溶出したタンパク質を、6~8 kDaの分子量カットオフを有するSpectra / Por透析膜を用いて、4℃で一晩、20 mMトリスpH 8に対して透析した。SDS-ポリアクリルアミド(12%)ゲル電気泳動およびクマシーブリリアントブルー染色によりタンパク質の純度を決定した。広域タンパク質ラダー(ThermoFisher Scientific)をサイズ標準として使用した。
タンパク質を、遠心分離濾過装置(Vivaspin 20、GE healthcare)を用いて、4000 gで10 kDaの分子量カットオフで20分間回転して濃縮した。タンパク質濃度を決定するために、1 μlのタンパク質を20 mMトリス中で400倍に希釈し、280 nmでの吸光度を記録した。
サイズ排除クロマトグラフィー
Superdex 200 HRカラム(Amersham Biosciences)を用いて、TBS泳動用バッファー(20 mMトリス、150 mM NaClおよび1 mM EDTA、pH 8.0)中で精製タンパク質試料200 μlを泳動した。使用した流速は0.5 ml/分であった。分子量標準リボヌクレアーゼA(13.7 kDa)、炭酸脱水酵素 (29 kDa)、オボアルブミン(43 kDa)、コナルブミン(75 kDa)、アルドラーゼ (158 kDa)およびフェリチン(440 kDa)を較正に使用した。
質量分析
質量分析のために、NT2RepCTをバイオスピン緩衝液交換カラム(Bio-Rad Laboratories)を用いて100 mM酢酸アンモニウム、pH 7.5に再構成した。微量遠心分離管内でギ酸を最終濃度0.02%まで加えて絹の集合を誘導し、pHは5.5であった。スピドロインの時間依存性集合の基準として、ギ酸を加える前に、ウシユビキチン(Sigma)を最終濃度0.2 mg/mLでNT2 RepCT試料に加えた。次に、試料をすぐに自社製の金被覆ホウケイ酸毛細管に装填し、スペクトルを1走査/秒で10分間連続的に取得した。原線維溶解のために、pH 5.5でNT2RepCTを30分間インキュベートした後、濃ギ酸またはアセトニトリルのいずれかを50%の最終濃度まで添加した。飛行時間モードで操作され、高質量分析用の32k四重極を備えたSynapt G1 T波質量イオン移動度分光計(Waters)でスペクトルを取得した。設定は以下の通り:毛細管電圧1.4 kV、試料コーン20 V、試料源温度20℃、トラップ衝突エネルギー100 V、移動衝突エネルギー10 V、トラップDCバイアス8V。背圧を約7ミリバールに維持した。MassLynx 4.1ソフトウェアパッケージ(Waters)を用いてデータを分析した。各時点について、60回のスキャンを組み合わせ、スペクトル強度をユビキチン信号に対して正規化した。相対強度をミリ質量(mMass)を用いて抽出し、GrapHPad 5.0を用いてプロットした。
繊維の紡糸
外径1.0 mmおよび内径0.6 mmの円形ガラス毛細管(G1、Narishige)を先端直径10~30 μmに延伸した(Micro Electrode Puller、Stoelting co.51217)。ルアーロック先端(BD)を有する1 ml注射器を高濃度(100~500 mg/ml)のNT2 RepCTで満たし、0.40 mmの外径を持つ27G鋼針(Braun)に接続した。針をポリエチレン管を介して延伸ガラス毛細管に接続した。neMESYS低圧(290N)注射器ポンプ(Cetoni)を用いて、500 mM酢酸ナトリウム緩衝液および200 mM NaCl(pH 5)からなる低pH回収浴中に1~20 μl/分の流速でNT2RepCTを出射した。形成後、繊維を回収浴から引き出してプラスチックの上に置いて乾燥させるか、または枠に巻き取った。繊維を低pH浴(200mM NaClを含む500 mM NaAc、pH 5)中で2本のピンセットの間に数秒間保持して後延伸し、次いで元の長さの2倍に延伸し、プラスチック上で乾燥した。
紡糸に及ぼすpHの影響を試験するために、いくつかの緩衝系を使用しそれらの緩衝系のモル濃度を変えた。すなわちpH > 5.5ではリン酸ナトリウム(100 mM)、pH 5.5~4では酢酸ナトリウム(100~500 mM)、pH < 4ではクエン酸(100~300mM)を使用。
フーリエ変換赤外(FTIR)分光法
FTIR分析は、室温でiD5 ATRを備えたThermo Scientific Nicolet iS5を用いて液体試料および固体試料に対して実施した。溶液中のタンパク質については、各スペクトルについて254回の走査を積算したが、繊維については16回の走査を行なった。各種類の試料について3つのスペクトルを得て、曲線の平均を取った。
繊維の引張強度測定
テープおよび接着剤(Loctite(登録商標)Super Glue Professional)を用いて、繊維試料を20 mmゲージ長のプラスチック枠に取り付けた。繊維は、40倍対物レンズを用いて光学顕微鏡(Leica DMI3000 B)で可視可した。繊維の長さに沿って3つの顕微鏡写真を撮影し、Carl Zeiss Zen 2012を用いて顕微鏡写真から直径を測定して、個々の繊維片の平均直径を得た。プラスチック枠の側面を切り取り、試験片をInstron 4411引張試験機に取り付けた。力をPrecisa XT 220天秤(分解能±1μN)で測定した。ピンと張ってはいるが荷重のかかっていない繊維の長さを測定した。引張試験は、公称環境条件24℃および30%相対湿度で1 mm/分の引っ張り速度で行った。全ての引張特性は、KaleidaGraphを用いて計算した。真応力および真歪みの計算のために、試験中は繊維容積を一定と仮定した。以下の式を用いた:
σT = σE (1 + εE) (1)
εT = ln (1 + εE) (2)
ここで、
σT = 真応力
σE = 工学的応力
εT = 真ひずみ
εE = 工学的ひずみ
繊維の走査型電子顕微鏡
乾燥繊維(500 mM NaAc 200 mM NaCl pH 5.0中で紡糸後の状態または後延伸した状態)を走査型電子顕微鏡スタブに置き、金/パラジウムで2分間被覆した後、Zeiss Supra 35VP走査型電子顕微鏡で観察・写真撮影した。
TEMと低温EMによるミセル構造の研究
NT2RepCT(5 mg/ml)を20 mMトリス緩衝液、pH 8.0に0.001 mg/mlに希釈した。試料を1滴の2%リンタングステン酸、pH 7.8中で30秒間インキュベートし、過剰の溶液を吸い取ってそれを乾燥させて、ネガティブ染色グリッドを調製した。低温電子顕微鏡法のために、試料の3 μl分割量(aliquot)をグロー放電400メッシュQuantifoilホーリー炭素網に付着させた。低温試料は、自動化Vitrobot(FEI、オランダ、アイントホーフェン)を用いて、16℃、湿度100%の制御環境で調製した。データは、200 kVおよび公称倍率80000倍で操作したJEOL JEM - 2100f顕微鏡を用いて得た。画像はTVIPS TemCam-F415 4k x 4k CCDカメラ(Tietz Video and Image Processing Systems GmbH、Gauting、ドイツ)を用いて収集した。ミセルのサイズは、画像処理プログラムImageJを用いて推定した。
PGB1-2RepCT
PGB1-2RepCTのDNA配列は配列番号13に従うが、PGB1-2RepCTのタンパク質配列は配列番号14に従った。

Claims (12)

  1. 組換クモ糸タンパク質の水性溶液であって、当該組換クモ糸タンパク質の濃度が少なくとも100mg/mlであり、当該組換クモ糸タンパク質は配列番号11又は配列番号74の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、
    ここで前記組換クモ糸タンパク質はクモ糸タンパク質のC末端ドメインに由来する70~120個のアミノ酸残基からなり、かつK、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を有するCTドメインを含む、組換クモ糸タンパク質の溶液。
  2. 前記溶液のpHが6.4以上である、請求項1に記載の組換クモ糸タンパク質の溶液。
  3. 前記溶液の塩濃度が100mM未満である、請求項1又は2に記載の組換クモ糸タンパク質の溶液。
  4. 前記CTドメインが、
    配列番号64又は配列番号73に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列であって、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列からなる、請求項1~の何れか一項に記載の組換クモ糸タンパク質の溶液。
  5. 前記CTドメインが、
    配列番号64に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列であって、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列からなる、請求項1~の何れか一項に記載の組換クモ糸タンパク質の溶液。
  6. 配列番号11又は配列番号74を有する配列を含む、請求項1~の何れか一項に記載の組換クモ糸タンパク質の溶液。
  7. 組換クモ糸タンパク質であって
    ここで前記組換クモ糸タンパク質は配列番号11又は配列番号74の配列に対し少なくとも90%の同一性を有する配列を含み、かつ
    ここで前記組換クモ糸タンパク質はクモ糸タンパク質のC末端ドメインに由来する70~120個のアミノ酸残基からなり、かつK、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を有するCTドメインを含む、組換クモ糸タンパク質。
  8. 前記CTドメインが、配列番号64又は配列番73に対して少なくとも90%の同一性を有し、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列からなる、請求項に記載の組換クモ糸タンパク質。
  9. 前記CTドメインが、配列番号64に対して少なくとも90%の同一性を有し、K、R、E及びDから独立に選択される少なくとも7個の残基を含む配列からなる、請求項に記載の組換クモ糸タンパク質。
  10. 前記CTドメインが配列番号64である、請求項に記載の組換クモ糸タンパク質。
  11. クモ糸タンパク質のポリマーを製造する方法であって、
    a.請求項1~10の何れか一項に規定のクモ糸タンパク質を少なくとも100mg/mLの濃度で含む第1の液体培地を供給する工程、
    b.前記クモ糸タンパク質の重合を許容するように前記第1の液体培地の特性を調節する工程、
    c.前記クモ糸タンパク質にポリマーを形成させる工程、及び、
    d.前記クモ糸タンパク質ポリマーを単離する工程
    を含み、
    ここで、工程(b)~(d)において、前記第1の液体培地の特性が、pH6.3以下であり、前記クモ糸タンパク質が重合するのに十分な塩濃度の存在下となるように調節されると共に、
    前記塩濃度が少なくとも100mMである、方法。
  12. 請求項1~10の何れか一項に規定のクモ糸タンパク質の、埋込可能な材料又は細胞培養スキャフォールドの製造におけるインビトロでの使用。
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