以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する形態に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現しており、実際の製品における寸法とは縮尺等が異なる場合がある。以下の各図においては、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系では、水平面に平行な平面をYZ平面とする。このYZ平面においてタレット20の旋回軸AX1に平行な方向をZ方向と表記し、水平面においてZ方向に直交する方向をY方向と表記する。また、YZ平面に垂直な方向はX方向と表記する。X方向は、工具Tによるワークへの切込み方向である。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印とは反対の方向が-方向であるとして説明する。
図1は、本実施形態に係る刃物台100の一例を示す概略断面図である。図1に示す刃物台100は、例えば、旋盤等の工作機械に搭載される。刃物台100は、ワークに対して切削加工等を行う工具Tを保持する。ワークは、工作機械の主軸等に保持される。工具Tとしては、主軸に保持されて回転するワークに対して旋削するための工具と、回転させずに保持されたワークに対して孔開け等を行う回転工具とが用いられる。図1に示すように、刃物台100は、ベース10と、タレット20と、モータ30と、モータ支持体40と、固定部材50とを備える。
ベース10は、例えば、工作機械の基台であるベッド等に固定される。ベース10は、刃物台100のタレット20、モータ支持体40及び固定部材50を支持する。ベース10は、タレット支持部11と、軸挿入部12と、クランプ収容部13と、作業用空間部14とを有する。タレット支持部11は、ベース10の-Z側端部に設けられ、後述するタレット20の本体部21を支持する。タレット20の本体部21とタレット支持部11との間には、例えば、ボールベアリング等が設けられている。従って、タレット支持部11は、タレット20を回転可能に支持している。
軸挿入部12は、ベース10をZ方向に貫通するようにZ方向に沿って設けられている。軸挿入部12は、後述するタレット20の軸部22が挿入される。タレット20の軸部22と、軸挿入部12との間には、例えば、ボールベアリング等が設けられている。従って、軸挿入部12は、タレット20の軸部22を回転可能に支持している。
なお、タレット20の軸部22には、後述するモータ支持体40のシャフト部材42が挿入される。軸部22とシャフト部材42との間には、例えば、ボールベアリング等が設けられている。従って、軸部22と、モータ支持体40のシャフト部材42とは、相対的な回転が可能となっている。すなわち、軸挿入部12は、タレット20の軸部22を回転可能に支持し、かつ、軸部22を介してモータ支持体40のシャフト部材42を支持している。
クランプ収容部13は、環状の凹部であり、ベース10の-Z側の端部から+Z方向に向けて形成される。クランプ収容部13は、例えば環状のクランプ部15を収容する。クランプ部15は、クランプ収容部13においてZ方向に移動可能である。クランプ部15は、不図示のクランプ駆動部によってZ方向に移動し、後述するタレット20の本体部21における+Z側の面を-Z方向に押圧する押圧位置と、その面の押圧を解放位置との間で移動する。不図示のクランプ駆動部は、例えば、エアシリンダ装置又は油圧シリンダ装置などの流体圧シリンダ装置、又は電動モータなどが用いられる。タレット20は、-Z方向への移動が規制されて設けられている。従って、クランプ部15が押圧位置にあるときには、タレット20の本体部21における+Z側の面をクランプ部15が押圧することにより、タレット20の旋回位置をベース10に対して固定する。なお、クランプ部15が解放位置にあるときには、タレット20は旋回可能となっている。
作業用空間部14は、ベース10の+Z側端部の上部に設けられる。作業用空間部14は、上記した軸挿入部12の+Z側の端部の上方を開口させる。作業用空間部14は、軸挿入部12に連通した状態となっている。従って、作業用空間部14は、タレット20の軸部22の+Z側の端部と、モータ支持体40のシャフト部材42の+Z側の端部とを露出させる。また、軸挿入部12の+Z側には、後述する固定部材50が設けられている。作業用空間部14は、例えば、作業者により固定部材50に対する作業を行うための空間として用いられる。
タレット20は、ベースの10の-Z側の端部において旋回可能に支持される。図2は、タレット20の断面の一例を示す図である。図2では、タレット20を-Z側から視た図である。タレット20は、旋回軸AX1を中心として旋回可能である。タレット20は、本体部21と、軸部22とを有する。本体部21は、図2に示すように、XY平面に平行な平面による断面視において、多角形状の外周を有し、内部に空洞Kが設けられている。本体部21の外周の各面には、それぞれ工具取付部21aが設けられる。工具取付部21aは、少なくとも1つの回転工具TRを含む工具Tを装着可能である。
回転工具TRは、入力軸(工具回転軸)AX2を中心として回転可能に工具取付部21aに取り付けられる。入力軸AX2は、回転工具TRが取り付けられる本体部21の外周面に直交又は交差する。また、入力軸AX2は、タレット20の旋回軸AX1と直交又は交差するように配置されている。回転工具TRは、工具本体部TRaと、回転部TRbと、連結用凸部TRcと、ホルダTRdとを有する。
工具本体部TRaは、タレット20の本体部21の内外を貫通して設けられる。工具本体部TRaは、タレット20の工具取付部21aに支持される。工具本体部TRaは、筒状であって内部に回転部TRbを回転可能に支持する。連結用凸部TRcは、回転部TRbの空洞K側に突出して設けられる。連結用凸部TRcは、回転工具TRがタレット20の1つの旋回位置21Rに配置される場合に、後述するモータ30の回転軸部材32の連結用凹部33に連結される。連結用凸部TRcは、連結用凹部33に対して連結及び離間が可能な形状に設けられている。
ホルダTRdは、ワークWを加工するための刃部Hを保持する。ホルダTRdは、回転部TRbの外側端部に設けられる。ホルダTRdは、例えば、刃部Hを着脱可能な構成を有し、刃部Hを交換可能としてもよい。回転部TRbが回転することで、ホルダTRdに保持された刃部Hを回転させ、この刃部Hによりワークを加工することができる。回転部TRbの回転は、連結用凸部TRcがモータ30の回転軸部材32の連結用凹部33に連結されることで生じる。上記のように、連結用凸部TRcは、回転工具TRがタレット20の1つの旋回位置21Rに配置される場合に、後述するモータ30の回転軸部材32に連結される。
旋回位置21Rは、モータ30の回転軸部材32における回転出力軸(モータ回転軸)AX3の軸線上に設定されている。回転工具TRが旋回位置21Rに配置される場合、入力軸AX2とモータ30の回転出力軸AX3とが合致する。また、この状態では、連結用凸部TRcとモータ30の回転軸部材32の連結用凹部33とが連結される。従って、モータ30を駆動した場合、回転軸部材32の回転が回転部TRbに伝達され、ホルダTRdに保持された刃部Hを回転させることができる。
タレット20の軸部22は、図1に示すように、例えば円筒状であり、本体部21から旋回軸AX1に沿って+Z方向に延びている。軸部22は、ベース10の軸挿入部12に挿入された状態で配置される。軸部22は、ベース10によって回転可能に支持される。すなわち、タレット20の本体部21及び軸部22はいずれもベース10に支持され、タレット20の荷重はベース10により受け止められている。なお、軸部22の内側には、後述するシャフト部材42が貫通した状態で配置される。
軸部22は、本体部21に対して離間した外周面から外側に向けて突出する円盤状のギア22aを有する。ギア22aは、ベース10の軸挿入部12の内周に設けられる凹部16内に配置される。ギア22aは、不図示の駆動装置に接続されている。この駆動装置を駆動することによりギア22aを回転させ、軸部22を回転させることができる。軸部22と一体の本体部21は、軸部22の回転により旋回軸AX1まわりに旋回する。
モータ30は、後述するモータ支持体40に支持されて、タレット20の空洞Kに配置される。モータ30は、上記した回転工具TRに対する回転駆動力を供給する。モータ30は、ロータ31Aと、ステータ31Bと、回転軸部材32とを有する。ロータ31Aは、モータ支持体40において回転可能に支持されている。ステータ31Bは、モータ支持体40に固定配置されている。回転軸部材32は、ロータ31Aの下端(+X側の端部)に設けられており、ロータ31Aとともに回転する。モータ30は、ロータ31Aとステータ31Bとの間の相互の磁気作用により、回転軸部材32を、回転出力軸AX3を中心として回転させる電動モータである。
図3は、図1におけるモータ30の回転軸部材32と回転工具TRとの連結部分の一例を拡大して示す図である。図3に示すように、回転軸部材32は、-X側の先端(下端)に連結用凹部33を有する。連結用凹部33は、凹んだ部分がY方向に直線状に延びている。すなわち、連結用凹部33は、Y方向から視て凹形状となっている。また、連結用凹部33は、回転工具TRの連結用凸部TRcがY方向から進入可能な大きさに形成されている。
従って、タレット20が旋回位置21Rに配置される場合(図2参照)、連結用凹部33に連結用凸部TRcが入り込み、モータ30の回転軸部材32と回転工具TRの回転部TRbとが連結された状態となる。なお、この連結された状態とは、回転軸部材32の回転が回転部TRbに伝達された状態を意味する。このように、モータ30の回転軸部材32と回転工具TRの回転部TRbとが連結された状態では、モータ30を駆動することにより(ロータ31Aを回転させることにより)、回転工具TRの刃部Hを回転させることができる。
図1に示すように、モータ支持体40は、モータハウジング41と、シャフト部材42とを有する。モータハウジング41は、モータ30を収容し、タレット20の空洞Kに配置される。モータハウジング41は、モータ30のステータ31Bを保持する。また、モータハウジング41は、ロータ31Aを回転可能に支持するベアリング43を有する。ベアリング43は、ロータ31Aの-X側の端部、及び+X側の端部に配置され、ロータ31Aを回転可能に支持する。また、モータハウジング41とタレット20との間には、+Z側及び-Z側の2カ所にベアリング44が設けられる。ベアリング44は、モータハウジング41に対するタレット20の旋回軸AX1まわりの回転を許容し、かつタレット20に対するモータハウジング41の旋回軸AX1の軸線方向におけるスライドを許容する。
また、モータハウジング41は、回転工具TRの連結用凸部TRcを旋回軸AX1まわりにガイドするガイド部45を有する。図1及び図2に示すように、ガイド部45は、連結用凹部33の部分を除いて、旋回軸AX1を中心とする一周にわたって設けられている。回転工具TRの連結用凸部TRcは、タレット20の旋回中においてガイド部45にガイドされる。また、ガイド部45は、タレット20が旋回位置21Rまで旋回するときに、回転工具TRの連結用凸部TRcがスムーズに連結用凹部33に入り込むようにガイドする。
シャフト部材42は、ボルト等の固定部材によりモータハウジング41に固定される。すなわち、シャフト部材42は、モータハウジング41と一体となっている。シャフト部材42は、モータハウジング41の+Z側から+Z方向にタレット20の旋回軸AX1の軸線方向に延びている。シャフト部材42は、タレット20の軸部22の内部に挿入される。シャフト部材42の+Z側の端部42dは、タレット20の軸部22の+Z側の端部から+Z側に突出している。すなわち、シャフト部材42の、モータハウジング41とは反対側の端部42dは、タレット20の軸部22より突出している。シャフト部材42の端部42dは、後述する固定部材50によりベース10に固定される。
また、シャフト部材42は、固定部材50による固定を解放することで、軸部22に対して(ベース10に対して)旋回軸AX1の軸線方向にスライド可能である。シャフト部材42が旋回軸AX1の軸線方向にスライドする場合、シャフト部材42と一体のモータハウジング41も旋回軸AX1の軸線方向(Z方向)に移動する。すなわち、モータ支持体40は、ベース10に支持されかつベース10及びタレット20に対してタレット20の旋回軸AX1の軸線方向にスライド可能となっている。なお、シャフト部材42は、タレット20の軸部22との間で相対的に回転可能である。すなわち、回転が規制されたシャフト部材42に対してタレット20の軸部22が回転可能となっている。なお、シャフト部材42は、中央部分(中間部分)がタレット20の軸部22を介してベース10に支持され、かつ+Z側の端部42dが固定部材50を介してベース10に支持される。
固定部材50は、スライド可能なシャフト部材42をベース10に対して固定する。つまり、固定部材50は、旋回軸AX1の軸線方向におけるシャフト部材42の位置を固定することで、モータハウジング41のZ方向における位置を固定する。本実施形態では、固定部材50は、シャフト部材42の+Z側の端部42d、つまりモータハウジング41とは反対側の端部42dをベース10に対して固定する。固定部材50は、ベース10において上記した作業用空間部14内に配置される。固定部材50が作業用空間部14内に配置されることにより、作業者が作業用空間部14において固定部材50にアクセス可能となり、固定部材50の操作(作業)等を容易に行うことが可能となる。固定部材50の構成については、後述する。
図4は、回転軸部材32と回転工具TRとが連結する動作の一例を示す図である。なお、図4では、説明のためタレット20の旋回軸AX1を図2とは異なる位置に示している。図4に示すように、タレット20が旋回軸AX1を中心として旋回する場合、本体部21の工具取付部21aに装着される回転工具TRは、タレット20と一体で旋回軸AX1を中心として旋回する。また、回転工具TRの連結用凸部TRcは、回転工具TRと一体で旋回軸AX1を中心として移動する。このとき、回転工具TRの連結用凸部TRcは、ガイド部45にガイドされている。モータ30の連結用凹部33は、連結用凸部TRcが移動する軌跡上に対応して配置されている。
従って、回転工具TRが旋回位置21Rに移動する際、連結用凸部TRcは、ガイド部45から連結用凹部33の内側に入り込み、連結用凹部33の内部に収容された状態となる。この状態において、連結用凸部TRcは、連結用凹部33に連結される。また、回転工具TRの入力軸AX2は、回転軸部材32の回転出力軸AX3に合致する。従って、回転軸部材32の回転は、連結用凹部33及び連結用凸部TRcを介して回転工具TRの回転部TRb(ホルダTRd及び刃部H)の回転へとスムーズに伝達される。
図5は、モータ30の回転出力軸AX3と回転工具TRの入力軸AX2とがずれた状態を示す図である。図5に示すように、例えば、連結用凹部33が連結用凸部TRcの移動の軌跡上に配置されていない場合、つまり、ガイド部45にガイドされる連結用凸部TRcが連結用凹部33に対してZ方向にずれている場合には、回転工具TRが所定の旋回位置21Rに配置される際、連結用凹部33と連結用凸部TRcとが干渉し、両者が連結されない。図5に示す状態では、連結用凸部TRcに対して連結用凹部33が+Z方向にずれている。この状態では、回転工具TRが旋回位置21Rに移動しても回転出力軸AX3と入力軸AX2とが合致しない。
従って、回転工具TRが所定の旋回位置21Rに配置される際、連結用凹部33と連結用凸部TRcとが干渉することなく連結されるように、連結用凹部33のZ方向における位置を、連結用凸部TRcに対して調整する必要がある。この場合、作業者は、ベース10の作業用空間部14において固定部材50によるシャフト部材42の固定を解除し、シャフト部材42をZ方向にスライドさせてモータハウジング41の位置(すなわち、モータ30の連結用凹部33の位置)を調整することができる。
図6は、タレット20の本体部21及びシャフト部材42をスライドさせる動作の一例を模式的に示す図である。図6に示すように、固定部材50によるシャフト部材42の固定を解放し、シャフト部材42をZ方向にスライドさせることにより、シャフト部材42と一体のモータハウジング41がZ方向に移動する。このモータハウジング41の移動に伴い、モータ30がZ方向に移動し、回転軸部材32(連結用凹部33)がZ方向に移動する。作業者は、例えば、シャフト部材42(モータハウジング41)をZ方向に少しずつスライドさせながら、適宜手動でタレット20を旋回させ、連結用凸部TRcが連結用凹部33にスムーズに入り込む位置を見つけ出す。
作業者は、連結用凸部TRcが連結用凹部33にスムーズに入り込む位置で、再度固定部材50によりシャフト部材42をベース10に固定させることで、モータハウジング41(モータ30の回転軸部材32)のZ方向における位置が適切に調整される。その結果、タレット20を旋回位置21Rに旋回させた際に、連結用凸部TRcがガイド部45から連結用凹部33にスムーズに入り込み、連結用凸部TRcと連結用凹部33とを連結させ、かつ回転出力軸AX3と入力軸AX2とが合致した状態とすることができる。
なお、上記では作業者がシャフト部材42(モータハウジング41)をZ方向に少しずつスライドさせて、連結用凸部TRcが連結用凹部33にスムーズに入り込む位置を見つけ出しているが、この形態に限定されない。例えば、測定装置等を用いて連結用凸部TRcと連結用凹部33とのZ方向におけるズレ量(回転出力軸AX3と入力軸AX2とのZ方向におけるズレ量)を計測し、この計測結果に基づいてシャフト部材42をZ方向に移動させる形態であってもよい。
図7は、固定部材の一例を示す断面図である。図7では、旋回軸AX1を含みXZ平面に平行な平面による断面図を示している。図7に示すように、固定部材50は、例えば、シャフト部材42の端部42dにおいて、外周面42aに沿う周回方向に配置される。固定部材50は、シャフト部材42の外周面42aに沿って配置される筒状部材51と、筒状部材51の一部であってシャフト部材42の外周面42aに接触する接触部52と、筒状部材51の一部であってベース10に保持される保持部53とを有する。
筒状部材51には、ボルト孔51aが形成される。ボルト孔51aは、旋回軸AX1に直交する方向に形成される。ボルト孔51aには、セットボルト54がネジ結合している。セットボルト54は、ボルト孔51aを貫通してシャフト部材42の外周面42aを押圧可能である。すなわち、セットボルト54を締めることにより、セットボルト54の先端でシャフト部材42の外周面42aを押圧し、シャフト部材42の端部42dをベース10に固定することができる。なお、セットボルト54を緩めることにより、シャフト部材42がスライド可能(Z方向の位置を調整可能)となる。なお、図7では1本のセットボルト54を用いる構成を示しているが、この構成に限定されず、2本以上のセットボルト54を用いる構成であってもよい。
図8は、固定部材の他の例を示す断面図である。図8では、旋回軸AX1を含みXZ平面に平行な平面による断面図を示している。なお、図7に示す固定部材50と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。図8に示すように、固定部材50Aは、固定部材50のセットボルト54に変えてボルト55が用いられる。また、ボルト55のネジ部55bは、筒状部材51を貫通してシャフト部材42の端部42dに設けられたボルト孔42bとネジ結合している。ボルト孔42bは、例えば、シャフト部材42を径方向に貫通して設けられている。
また、固定部材50Aの筒状部材51には、ボルト55のネジ部55bを貫通させるための貫通孔51bが設けられる。貫通孔51bは、ネジ部55bの径よりもZ方向の寸法が大きい円形状の孔又は長孔である。このため、貫通孔51bを介してネジ部55bをボルト孔42bにネジ結合させた状態において、ネジ部55bと貫通孔51bとの間にはZ方向の隙間51cが形成される。なお、ボルト55のヘッド部55aは、筒状部材51の外周面に係止されるように、X方向及びY方向の少なくとも一方の寸法が、貫通孔51bよりも大きく形成される。
この固定部材50Aでは、ボルト55を締めることでヘッド部55aにより接触部52をシャフト部材42の外周面42aに押圧させ、シャフト部材42の端部42dをベース10に固定することができる。また、シャフト部材42をスライドさせる場合には、ボルト55を緩めることで接触部52による外周面42aの押圧を解放させる。この状態で、シャフト部材42をZ方向に移動させると、ボルト55も併せてZ方向に移動する。上記したように、ネジ部55bと貫通孔51bとの間にはZ方向の隙間51cが形成されているので、ボルト55は、この隙間51cの範囲でZ方向に移動し、シャフト部材42をスライドさせることができる。なお、図8では1本のボルト55を用いる構成を示しているが、この構成に限定されず、2本以上のボルト55を用いる構成であってもよい。
図9は、固定部材の他の例を示す断面図である。図9では、旋回軸AX1を含みXZ平面に平行な平面による断面図を示している。なお、図7に示す固定部材50と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。図9に示すように、固定部材50Bは、筒状部材51の-Z側に外側環状部材56を備える。外側環状部材56は、+Z側に突出する小径部56aを備える。また、筒状部材51の接触部52と外側環状部材56の小径部56aとの間には、2つの環状部材58、59が配置される。環状部材58は、テーパ面58aが設けられ、-Z方向に向けて徐々に薄くなるように形成されている。環状部材59は、テーパ面59aが設けられ、+Z方向に向けて徐々に薄くなるように形成されている。
環状部材58、59は、テーパ面58a、59aどうしを当接させた状態で配置されている。テーパ面58a、59aどうしは摺動可能である。また、環状部材58の内周面は、シャフト部材42の外周面42aに接触している。環状部材59の外周面は、筒状部材51の内周面51fに接触している。外側環状部材56にはボルト57のネジ部57aを貫通させる複数の貫通孔56cを備えている。ボルト57のネジ部57aは、貫通孔56cを貫通して、筒状部材51の-Z側の面に設けられているボルト孔51dとネジ結合している。
固定部材50Bでは、複数のボルト57を締めることにより、外側環状部材56が+Z方向に移動する。この移動により、小径部56aに押されて環状部材59が+Z方向に移動する。また、環状部材58は、接触部52により+Z方向への移動が規制されている。従って、テーパ面58aとテーパ面59aとが摺動し、環状部材59が、くさび部材として環状部材58のテーパ面58aと、筒状部材51の内周面51fとの間に入り込むことになる。その結果、環状部材59により環状部材58が内側に押圧され、環状部材58の内周面でシャフト部材42の外周面42aを押圧する。この押圧力により、シャフト部材42の端部42dがベース10に固定される。
また、シャフト部材42をスライドさせる場合には、ボルト57を緩めることにより、環状部材59による環状部材58の押圧が開放され、この環状部材58の内周面によるシャフト部材42の押圧が解放される。その結果、シャフト部材42はスライド可能な状態となる。なお、上記した環状部材58、59は、筒状部材51、外側環状部材56と別に設けられることに限定されない。例えば、環状部材58は筒状部材51に設けられ、環状部材59は外側環状部材56に設けられてもよい。
図10は、固定部材の他の例を示す断面図である。図10では、旋回軸AX1を含みXZ平面に平行な平面による断面図を示している。なお、図7に示す固定部材50と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。図10に示すように、固定部材50Cは、ロックナット60を用いてシャフト部材42の端部42dを固定する。ロックナット60は、筒状部材51の-Z側の端部に、旋回軸AX1の軸周りに回転可能に保持されている。ロックナット60は、内周にネジ部60aを備えている。ネジ部60aは、シャフト部材42の外周面42aに形成されるネジ部42sとネジ接合している。
ロックナット60には、ボルト孔60bが形成される。ボルト孔60bは、旋回軸AX1に直交する方向に形成される。ボルト孔60bには、セットボルト61がネジ結合している。セットボルト61の先端は、ボルト孔60bを貫通してシャフト部材42のネジ部42sを押圧可能である。セットボルト61の先端でシャフト部材42のネジ部42sを押圧することにより、ロックナット60は回り止めされる。
固定部材50Cでは、セットボルト61によりロックナット60が回り止めされることにより、シャフト部材42の端部42dは、ロックナット60及び筒状部材51を介してベース10に固定される。また、シャフト部材42をスライドさせる場合は、セットボルト61を緩めて、ロックナット60を回転させることでシャフト部材42をスライドさせることができる。例えば、-Z側から視て、ロックナット60を時計回りに回転させることによりシャフト部材42を+Z方向にスライドさせ、ロックナット60を反時計回りに回転させることによりシャフト部材42を-Z方向にスライドさせることができる。
図11は、固定部材の他の例を示す断面図である。図11では、旋回軸AX1を含みXZ平面に平行な平面による断面図を示している。なお、図7に示す固定部材50と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。図11に示すように、固定部材50Dは、ライナー62によってシャフト部材42のZ方向の位置を設定する構成である。固定部材50Dは、ライナー62と、固定板63と、ボルト64、65とを備える。また、筒状部材51は、保持部53Aによりベース10に保持されている。
ライナー62は、+Z側から視て、筒状部材51の+Z側端部と重なるような環状の部材である。ライナー62は、例えば、複数種類の厚さを持ったライナー62が予め用意されていずれか1枚が用いられてもよいし、同一厚さのライナー62を複数枚重ねた状態で用いられてもよい。ライナー62には、ボルト65のネジ部65aを貫通させるための貫通孔61aが設けられている。
固定板63は、固定部材50D(筒状部材51)に対するシャフト部材42のZ方向の位置を固定し、かつシャフト部材42と筒状部材51とを連結するために用いられる。固定板63は、+Z側から視て、シャフト部材42の+Z側端部、及び筒状部材51の+Z側端部を覆う円形かつ板状の部材である。固定板63は、ボルト64のネジ部64aを貫通させるための貫通孔63aと、ボルト65のネジ部65aを貫通させるための貫通孔63bとが設けられている。
ボルト64は、固定板63の貫通孔63aを介して、ネジ部64aがシャフト部材42の+Z側の端部42dに設けられたボルト孔42cとネジ結合している。ボルト65は、固定板63の貫通孔63b及びライナー62の貫通孔61aを介して、ネジ部65aが筒状部材51の+Z側の端部に設けられたボルト孔51gとネジ結合している。固定板63は、ボルト64、65の双方が締められることで、ライナー62を筒状部材51との間で挟んだ状態でシャフト部材42と筒状部材51とを連結する。
固定部材50Dでは、セットボルト54の先端がシャフト部材42の外周面42aを押圧することで、シャフト部材42をベース10に固定し、さらに、固定板63がシャフト部材42と筒状部材51とを連結することで、シャフト部材42の端部42dをベース10に固定している。なお、固定部材50Dにおいて、セットボルト54を備えるか否かは任意であり、セットボルト54はなくてもよい。
また、シャフト部材42をスライドさせる場合には、セットボルト54を緩めて、さらに、ボルト64、65を外して固定板63及びライナー62を取り外す。続いて、先に用いたライナー62と異なる厚さのライナー62、又は重ねて用いるライナー62の枚数を変えて、再度ボルト64、65により固定板63を取り付ける。その結果、シャフト部材42は、ライナー62の厚さに応じて、固定部材50Dに対してZ方向にスライドする。従って、シャフト部材42をスライドさせたい分だけ、ライナー62の厚さを調整することで、シャフト部材42を所望の方向及び量だけスライドさせることができる。
例えば、先に用いたライナー62より厚いライナー62に交換すると、シャフト部材42を固定部材50Dに対して+Z方向に厚くなった分だけスライドさせることができ、先に用いたライナー62より薄いライナー62に交換すると、シャフト部材42を固定部材50Dに対して-Z方向に薄くなった分だけスライドさせることができる。このように、固定部材50Dでは、シャフト部材42のスライドの方向及び量をライナー62によって設定できるので、作業者による調整作業を容易に行うことができる。
なお、固定部材50Dでは、図7に示す固定部材50の構成にライナー62、固定板63、ボルト64、65を追加して構成しているが、この形態に限定されない。例えば、図8から図10に示す固定部材50A、50B、50Cにおいて、ライナー62、固定板63、ボルト64、65を追加する構成であってもよい。
このように、本実施形態の刃物台100では、モータ支持体40のシャフト部材42をベース10に対してスライドさせることにより、モータハウジング41(モータ30)をタレット20に対して移動させることようにしている。この構成によれば、シャフト部材42をZ方向にスライドさせることにより、シャフト部材42と一体でモータ30の回転軸部材32をZ方向に移動させ、モータ30の回転出力軸AX3を、旋回位置21Rの回転工具TRの入力軸AX2に容易に合致させることができる。従って、作業者は、モータハウジング41を取り外す等の作業が不要となり、モータ30の回転出力軸AX3と回転工具TRの入力軸AX2との調整作業における作業負担を軽減することができる。
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。上記した実施形態では、モータ30と回転工具TRとを連結させるタレット20の旋回位置21Rが、タレット20の旋回軸AX1の下方の位置である構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。モータ30と回転工具TRとを連結させる旋回位置21Rは、例えば、タレット20の旋回軸AX1に対して側方、又は上方等の他の位置であってもよい。