本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態における空気圧縮機の構成を表す図である。図2は、本実施形態における排気ダクト及びその周辺の構造を表す斜視図である。なお、図2においては、排気ダクトの一部とカバーの一部を透視して、それらの内側に配置された部品を示す。
本実施形態の空気圧縮機は、低圧段の圧縮機本体1Aと、圧縮機本体1Aの吸入側に吸入配管2Aを介し接続されたエアフィルタ3と、圧縮機本体1Aの吐出側に吐出配管4Aを介し接続されたインタークーラ5と、インタークーラ5に吸入配管2Bを介し接続された高圧段の圧縮機本体1Bと、圧縮機本体1Bの吐出側に吐出配管4Bを介し接続されたプレクーラ6及びアフタークーラ7と、アフタークーラ7に接続された供給配管8と、前述した機器や配管などを収納する筐体9とを備える。筐体9は、外部から冷却風を取入れるための冷却風入口10と、外部へ冷却風を排出するための冷却風出口11とを有する。
圧縮機本体1Aは、図示しないものの、互いに噛み合う雌雄一対のスクリューロータと、スクリューロータを回転可能に支持する複数の軸受と、それらを収納するケーシングとを備えており、スクリューロータの歯溝に複数の圧縮室が形成されている。各圧縮室は、ロータの回転に伴ってロータの軸方向に移動すると共に、空気を吸入する吸入過程と、空気を圧縮する圧縮過程と、圧縮空気を吐出する吐出過程とを順次行う。圧縮機本体1Bは、圧縮機本体1Aとほぼ同じ構成であり、圧縮機本体1Aで圧縮された空気を更に圧縮するようになっている。
圧縮機本体1A,1Bは、電動機12によって駆動される。詳しく説明すると、圧縮機本体1A,1Bと電動機12の間にはギヤ装置13が設けられている。ギヤ装置13は、電動機12の回転軸に設けられたギヤ(ブルギヤ)14Aと、圧縮機本体1A,1Bの駆動ロータ(詳細には、雌ロータ及び雌ロータのうちの一方)の端部にそれぞれ設けられ、ギヤ14Aと噛合うギヤ(ピニオン)14B,14Cと、それらを収納するギヤケーシング15とを有する。ギヤ14A,14B,14Cなどを介し電動機12の回転力が伝達されて、圧縮機本体1A,1Bが駆動される。
ギヤケーシング15の下部には、油が貯留されている。ギヤケーシング15の下部に貯留された油は、油循環系統16を介し圧縮機本体1A,1Bの軸受などに供給される。油循環系統16は、オイルポンプ17と、オイルポンプ17の上流側(詳細には、ギヤケーシング15の内部)に設けられたストレーナ18と、オイルポンプ17の下流側に設けられたオイルクーラ19と、オイルクーラ19の下流側に設けられたオイルフィルタ20とを有する。ポンプギヤ(ピニオン)21Aが電動機12の回転軸に設けられ、ポンプギヤ21Aと噛合うポンプギヤ21Bがオイルポンプ17のロータの端部に設けられている。ポンプギヤ21A,21Bを介し電動機12の回転力が伝達されて、オイルポンプ17が駆動される。
本実施形態の空気圧縮機は、回転軸が鉛直方向に延在するように配置された遠心ファン22(冷却ファン)と、遠心ファン22を駆動するファンモータ23と、遠心ファン22の一次側(下側)に配置された吸気ダクト24と、遠心ファン22の二次側(上側)に配置された排気ダクト25とを更に備える。本実施形態の遠心ファン22は、後向きの羽根を有するターボファンである。
吸気ダクト24の入口は、筐体9の内部に連通され、排気ダクト25の出口は、筐体9の冷却風出口11に接続されている。そして、遠心ファン22の駆動により、冷却風が冷却風入口10を介し筐体9の内部に取入れられ、吸気ダクト24、遠心ファン22、排気ダクト25の順序で流れ、冷却風出口11を介し筐体9の外部へ排出される。これにより、筐体9の内部が冷却される。
遠心ファン22の一次側(詳細には、吸気ダクト24の上流側又は内部)には、インタークーラ5、アフタークーラ7、及びオイルクーラ19が配置され、遠心ファン22の二次側(詳細には、排気ダクト25の内部)には、プレクーラ6が配置されている。インタークーラ5は、遠心ファン22で生起された冷却風を用いて、低圧段の圧縮機本体1Aから吐出された圧縮空気を冷却する。プレクーラ6及びアフタークーラ7は、遠心ファン22で生起された冷却風を用いて、高圧段の圧縮機本体1Bから吐出された圧縮空気を冷却する。オイルクーラ19は、遠心ファン22で生起された冷却風を用いて、油を冷却する。
吐出配管4Aから分岐するように放気配管26Aが設けられている。放気配管26Aは、主流路に設けられた放気弁(電磁弁)27Aと、主流路の出口側に配置されたサイレンサ28Aと、主流路から分岐された流路に設けられ、停電及び停止時に放気するための放気弁(電磁弁)29Aとを有する。吐出配管4Bにおけるプレクーラ6とアフタークーラ7の間(詳細には、逆止弁30の上流側)から分岐するように放気配管26Bが設けられている。放気配管26Bは、放気配管26Aと同様、放気弁(電磁弁)27A、サイレンサ28B、及び停電及び停止時に放気するための放気弁(電磁弁)29Bを有する。
供給配管8は、筐体9の外部(詳細には、圧縮空気を使用する機器など)へ圧縮空気を供給するためのものである。供給配管8には圧力センサ31及び開閉弁(電磁弁あるいは電動弁)32が設けられている。
制御装置33は、運転スイッチ(図示せず)からのON信号に応じて、電動機12を駆動させると共に、開閉弁32を開状態に制御する。また、運転スイッチからのOFF信号に応じて、電動機12を停止させると共に、開閉弁32を閉状態に制御する。
制御装置33は、負荷運転中、圧力センサ31で検出された圧力が所定の制御圧力となるように、インバータ(図示せず)を介し電動機12の回転数を可変制御する。また、電動機12の回転数が下限値まで低下し、圧力センサ31で検出された圧力が上限値に達した場合、放気弁27A,27Bを閉状態から開状態に切換えて、負荷運転から無負荷運転に切換える。無負荷運転では、圧縮機本体1A,1Bから吐出された圧縮空気が放気配管26A,26Bを介し放出されることにより、圧縮機本体1A,1Bの負荷が軽減する。
制御装置33は、無負荷運転中に、圧力センサ31で検出された圧力が下限値に達した場合、放気弁27A,27Bを開状態から閉状態に切換え、無負荷運転から負荷運転に切換える。なお、制御装置33は、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する演算制御部(例えばCPU)と、プログラムや演算処理の結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)等を有するものである。
ここで、本実施形態の特徴として、放気配管26A,26Bの出口(本実施形態では、サイレンサ28A,28Bの出口)が排気ダクト25の側壁(言い換えれば、遠心ファン22の回転軸に対して平行に設けられた側壁)の外側かつ近傍に配置されるものの、放気配管26A,26Bの出口から放出された圧縮空気を排気ダクト25の内側に導入する導入口34が排気ダクト25の側壁に形成されている。また、放気配管26A,26Bの出口側部分(本実施形態では、サイレンサ28A,28B)の周囲を覆うカバー35が排気ダクト25の側壁の外側に設けられ、吸音材36がカバー35の内面に貼付けられている。
排気ダクト25の内部(すなわち、遠心ファン22の二次側)は、遠心ファン22の一次側より静圧が高い。また、排気ダクト25の流路断面(水平断面)がn角形であれば、排気ダクト25の内部に流れの不均一が生じ、静圧分布が生じる。そのため、本実施形態の特徴として、排気ダクト25の導入口34は、静圧が比較的低い範囲に配置されている。その詳細を、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態における排気ダクトの導入口と遠心ファンとの位置関係を表す水平断面図である。
排気ダクト25の流路断面は、五角形(n=5)であり、遠心ファン22の周方向位置に応じて静圧が変化する静圧分布が生じる。排気ダクト25の流路断面の一辺ABに対し垂直で遠心ファン22の回転中心Oを通る基準線Vを中心として遠心ファン22の中心角がθ=(360÷n÷2)度(本実施形態では、n=5であるから、θ=36度)である、点Cから点Dまでの範囲は、点Aから点Cまでの範囲や、点Dから点Bまでの範囲と比べ、遠心ファン22の半径方向における遠心ファン22の外縁と排気ダクト25の側壁との間隔が小さく、静圧が低い。本実施形態の導入口34は、点Cから点Dまでの範囲内に配置されている。これにより、導入口が点Aから点Cまでの範囲又は点Dから点Bまでの範囲に配置された場合と比べ、放気配管26A,26Bの出口から圧縮空気を放出するときの背圧を低くすることができる。したがって、無負荷運転時の動力を抑えることができる。
また、本実施形態では、放気配管26A,26Bの出口が排気ダクト25の側壁の外側かつ近傍に配置され、且つ、排気ダクト25の側壁に形成された導入口34を介し、放気配管26A,26Bの出口から放出された圧縮空気を排気ダクト25の内側に導入するので、筐体9の内部の温度上昇を抑えることができる。また、放気配管26A,26Bの出口から放出された圧縮空気が遠心ファン22を経由しないため、遠心ファン22に対する影響を避けることができる。
また、本実施形態では、排気ダクト25の導入口34は、筐体9の冷却風出口11より遠心ファン22に近づくように配置されている。そのため、排気ダクトの導入口が遠心ファン22より筐体9の冷却風出口11に近づくように配置された場合と比べ、無負荷運転時の騒音を低減することができる。
なお、上記一実施形態において、排気ダクト25の流路断面が五角形(n=5)である場合を例にとって説明したが、これに限られず、他の多角形であってもよい。例えば排気ダクト25の流路断面が四角形(n=4)である場合、排気ダクト25の流路断面の一辺に対し垂直で遠心ファン22の回転中心Oを通る基準線を中心として遠心ファン22の中心角が45度である範囲内に、導入口が配置されればよい。例えば排気ダクト25の流路断面が六角形(n=6)である場合、排気ダクト25の流路断面の一辺に対し垂直で遠心ファン22の回転中心Oを通る基準線を中心として遠心ファン22の中心角が30度である範囲内に、導入口が配置されればよい。これらの変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
また、上記一実施形態において、特に説明しなかったが、図4で示す変形例のように、ガイド板37が排気ダクト25の内側に設けられ、吸音材36がガイド板37の表面に貼付けられてもよい。ガイド板37は、導入口34を介し排気ダクト25の内側に導入された圧縮空気を排気ダクト25の流路方向(上方向)に向ける。この変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
また、上記一実施形態において、放気配管26A,26Bの出口が排気ダクト25の側壁の外側に配置されるものの、放気配管26A,26Bの出口から放出された圧縮空気を排気ダクト25の内側に導入する導入口34が排気ダクト25の側壁に形成された場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば、放気配管26A,26Bの出口が、排気ダクト25の内側であって、図3で示す三角形OCDの範囲内に配置されてもよい。この変形例においても、上記一実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記一実施形態において、空気圧縮機がプレクーラ6を備え、プレクーラ6が遠心ファン22の二次側に配置され、インタークーラ5、アフタークーラ7、及びオイルクーラ19が遠心ファン22の一次側に配置された場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば、空気圧縮機がプレクーラ6を備えず、インタークーラ5、アフタークーラ7、及びオイルクーラ19のうちのいずれか、または全てが遠心ファン22の二次側に配置されてもよい。
また、上記一実施形態において、各圧縮機本体は、スクリューロータ式であって、雌雄一対のスクリューロータを備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。各圧縮機本体は、例えば、1つのスクリューロータと複数のゲートロータを備えてもよい。また、各圧縮機本体は、スクリューロータ式以外の他の容積形(詳細には、ツース式又はレシプロ式など)であってもよいし、ターボ形であってもよい。
また、上記一実施形態において、空気圧縮機は、二段の圧縮機本体1A,1Bを備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。空気圧縮機は、一段のみ若しくは三段以上の圧縮機本体を備えてもよい。
また、上記実施形態において、空気圧縮機は、電動機12の回転数を可変制御する可変速機である場合を例にとって説明したが、これに限られない。空気圧縮機は、電動機12の回転数を固定する定速機であってもよい。