JP7218147B2 - 地中熱交換器を用いた地熱発電システム - Google Patents
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Description
(全体構成)
図1は、第一実施形態に係る地熱発電システムの構成を示す模式図である。
以下、地中熱交換器10及び発電用地上設備20の構成について詳しく説明する。
地中熱交換器10は、例えば、坑井1内に配置される二重管型地中熱交換器であって、二重管型地中熱交換器の外管に相当する、底部を閉塞したケーシング2と、ケーシング2よりも小径の円管状でケーシング2内に挿入される両端部が開放された内管3と、ケーシング2と内管3との間隙に形成され、内管3の内部と繋がる環状のアニュラス5と、を備えている。また、地中熱交換器10の大部分は地中内に埋設されているが、一部は地表よりも上側に配置されている。ケーシング2の地上部分には、アニュラス5と繋がるアニュラス接続口7が設けられており、内管3の地上側の開放端部には、内管接続口8が設けられている。
なお、上記では、断熱管3a及び良伝熱管3bの2つの異なる種類の管を組み合わせて内管3を構成した例を示したが、1つの内管3の一部の区間のみ、材質を代えたり、別部材を貼り付けたり、厚みや形状を変えたりすることによって、断熱管3a及び良伝熱管3bを用いたのと同様の特性を持たせることもできる。
発電用地上設備20は、地上において地中熱交換器10と隣接する位置に設けられる。この発電用地上設備20は、発電装置11と、発電装置11及びアニュラス接続口7を接続する還元水輸送管13と、還元水輸送管13の途中に設けられる注入ポンプ17と、発電装置11及び内管接続口8を接続する熱水輸送管15と、を備えている。
ここで、本実施形態に対して比較対象となる従来提案されている地中熱交換器を用いる地熱発電システム110について簡単に説明しておく。
この地熱発電システム110は、地中熱交換器100と、発電用地上設備20とを備えているが、発電用地上設備20の構成、作動流体、及び作動流体の循環方向は第一実施形態に係る地熱発電システム60と同様であるため説明を省略し、地中熱交換器100の構成のみ説明する。
また、地中熱交換器100の一部は地表よりも上側に配置されており、ケーシング2の地上部分にはアニュラス接続口7が設けられ、内管4の地上側の端部に内管接続口8が設けられている点は、第一実施形態の地中熱交換器10と同様である。ここで、内管4には、全長にわたって、真空二重管式断熱管等の断熱管3aが用いられる。
発電装置11から排出された低温の還元水は、注入ポンプ17によって逆循環方向に輸送され、地中熱交換器10のアニュラス接続口7に注入される。ここで、注入ポンプ17による還元水の注入圧力は、地中熱交換器10の出口となる内管接続口8における熱水の圧力が、その熱水の飽和蒸気圧以上になるように調整される。
本実施形態に係る地熱発電システム60においては、地中熱交換器10の内管3が断熱管3a及び良伝熱管3bで形成されている。このため、内管3の断熱管3a中をほとんどそのままの温度で上昇してきた高温の熱水は、良伝熱管3bの区間でアニュラス5を流下する低温の還元水によって冷却されて温度が低下する。これに伴い熱水の飽和蒸気圧が低下し、フラッシングの発生が防止される。
図2及び図3は、第二実施形態に係る地熱発電システムの構成を示す模式図であり、図2は順循環方向の場合、図3は逆循環方向の場合を示す。
本実施形態に係る地熱発電システム70は、地中熱交換器10と発電用地上設備20に加えて、循環方向変更機構30を備えている。この地熱発電システム70では、循環方向変更機構30を用いて、地中熱交換器10と発電装置11との間で流体を通常の「逆循環方向」から「順循環方向」へと変更して運転を行うものである。地中熱交換器10と発電用地上設備20の構造は第一実施形態と同様であるため説明を省略し、以下、循環方向変更機構30の構成について説明する。
循環方向変更機構30は、地上で地中熱交換器10と隣接する位置に設けられる。
循環方向変更機構30では、注入ポンプ17よりもアニュラス接続口7側の還元水輸送管13の途中に第1三方弁25を介して第1管路21が接続される一方、熱水輸送管15の途中に第2三方弁27を介して第2管路23が接続されている。第1管路21の他端は、熱水輸送管15における第2三方弁27と内管接続口8との間に接続されている。他方、第2管路23の他端は、還元水輸送管13における第1三方弁25とアニュラス接続口7との間に接続されている。
本実施形態では、二重管型地中熱交換器10内で作動流体が流れる方向を「順循環方向」にして運転を行う。すなわち、「順循環方向」で運転を行う場合、発電装置11から排出された低温の還元水は、注入ポンプ17によって加圧されて第1管路21を通り、地中熱交換器10の内管接続口8から内管3に入る。注入ポンプ17による還元水の注入圧力は、地中熱交換器10のアニュラス接続口7における熱水の圧力がその熱水の温度における飽和蒸気圧よりも高くなるように調整される。
本実施形態に係る地熱発電システム70においては、二重管型の地中熱交換器10を「順循環方向」で一定の期間運転する。これによって、地中熱交換器10の浅部において、アニュラス5を上昇する熱水の温度、ひいては熱水の飽和蒸気圧を低下させ、熱水を加圧水の状態に保持する。このため、フラッシングの発生を防止するために必要な作動流体の注入圧力を大幅に低くすることができる。
本実施形態では、図2及び図3に示すように、地中熱交換器10内の循環方向を二つの三方弁(即ち、第1三方弁25及び第2三方弁27)によって便宜的に切り替える例を示したが、三方弁の個数や取付位置は図示のものに限定されない。また、三方弁を用いる方法のみならず、閉止弁を使うなど他の方法によって作動流体の流れる方向を切り替えることもできる。
図4は、第三実施形態に係る地熱発電システムの構成を示す模式図である。
地上熱交換機構40は、地上で地中熱交換器10と隣接する位置に設けられる。
本実施形態では、第1閉止弁32及び第2閉止弁33を開ける一方、第3閉止弁34を閉じて、発電装置11から排出される低温の還元水が地上熱交換器31を通るようにする。また、第1閉止弁35及び第2閉止弁36を開ける一方、第3閉止弁37を閉じて、地中熱交換器10から取り出された高温の熱水が地上熱交換器31を通るようにする。地上熱交換器31では、地中熱交換器10から取り出された高温の熱水を発電装置11から排出された低温の還元水で冷やし、熱水の温度を下げることによって、熱水の飽和蒸気圧を低下させる。
本実施形態に係る地熱発電システム80においては、地上熱交換器31を設置することによって、地中熱交換器10から得られる高温の熱水と発電装置11から地中熱交換器10に還流する低温の還元水の間で熱交換させている。このため、熱水の温度、ひいては熱水の飽和蒸気圧を低下でき、これによって、熱水を加圧水の状態に保持し、かつ、作動流体の水を循環するために必要な地中熱交換器10への還元水の注入圧力を低くすることができる。
本実施形態では、図4の矢印に示すように、地中熱交換器10と発電装置11との間の流体の循環方向を「逆循環方向」として運転する例を示したが、「順循環方向」の運転であってもよい。
図5は、第四実施形態に係る地熱発電システムの構成を示す模式図である。
閉回路形成機構50は、地上で地中熱交換器10と隣接する位置に設けられる。
閉回路形成機構50では、地中熱交換器10の坑口の直近の位置に設けられ、還元水輸送管13と熱水輸送管15とを結ぶ管路41と、管路41の途中に設置された循環ポンプ43と、地中熱交換器10と管路41を含む閉管路の外部に設けられかつ管路41の上流側に配置される加圧ポンプ45と、作動流体の水の流路を切り替えるための閉止弁47、閉止弁49、閉止弁51、閉止弁53と、を備えている。ここで、閉止弁47は上記閉回路の外側の還元水輸送管13の途中に、閉止弁49は上記閉回路の外側の熱水輸送管15の途中に設けられる。また、閉止弁51及び閉止弁53は、共に管路41の途中に設けられるが、循環ポンプ43を挟んでアニュラス接続口7側に閉止弁51が、内管接続口8側に閉止弁53が配置される。
本実施形態では、発電運転開始前に、閉止弁47と閉止弁49を閉め、閉止弁51と閉止弁53を開けることによって、地中熱交換器10と管路41を含む閉管路を形成する。また、加圧ポンプ45によってフラッシングを防ぐために必要な圧力まで当該閉管路内の作動流体を昇圧した上で、循環ポンプ43を運転して、閉管路内で作動流体の水を所定期間循環させる。
本実施形態に係る地熱発電システム90においては、発電運転開始前に、閉回路形成機構50を用いて地中熱交換器10の出口から排出される熱水を地中熱交換器10の入口へと導き、地中熱交換器10を含む閉管路内で作動流体を循環させる。これによって、地中熱交換器10の出口となる内管接続口8における熱水の温度を下げて飽和蒸気圧を低下させることができる。また、このようにした後に通常の管路に戻して発電運転を開始することにより、発電運転開始時に熱水を加圧水の状態に保持し、かつ、作動流体の水を循環するために必要な地中熱交換器10への還元水の注入圧力を低くすることができる。
本実施形態では、地中熱交換器として断熱管3a及び伝熱管3bで形成されている内管3を備えた地中熱交換器10を用いたが、従来提案されている坑井内同軸熱交換器のように、全長にわたって断熱管3aとした内管4を用いた地中熱交換器100を用いてもよい。
まず、図6に示す構成の従来提案されている地中熱交換器を用いる地熱発電システム110を用い、ある地熱地域で深さ3000mの地中熱交換器100によって熱抽出して発電を行う場合を想定してシミュレーションを行った。ここで、想定した地層温度は、深さ3000mで330℃である(後記の図9参照、図中の破線はこの検討で想定した自然平衡状態の地層の温度分布を示している)。
なお、図中の破線は、自然平衡状態の地層の温度分布を示しているが、深さ3000mにおける自然平衡状態の地層温度は330℃である。
図1に示す構成の第一実施形態に係る地熱発電システム60において、深さ1000mから1100mまでの区間と、地表から深さ50mまでの区間を伝熱管3b(本例では鋼管)とした地中熱交換器10を用いた場合について、基準例と同様に発電を行う場合を想定して行ったシミュレーション結果を示す。
2 ケーシング(外管)
3 内管
3a 断熱管(断熱特性の良好な区間)
3b 良伝熱管(伝熱特性の良好な区間)
4 内管
5 アニュラス
7 アニュラス接続口
8 内管接続口
10 地中熱交換器
11 発電装置
13 還元水輸送管
15 熱水輸送管
17 注入ポンプ
20 発電用地上設備
21 第1管路
23 第2管路
25 第1三方弁
27 第2三方弁
28 第1迂回路
29 第2迂回路
30 循環方向変更機構
31 地上熱交換器
32,35 第1閉止弁
33,36 第2閉止弁
34,37 第3閉止弁
40 地上熱交換機構
41 管路
43 循環ポンプ
45 加圧ポンプ
47,49,51,53 閉止弁
50 閉回路形成機構
60,70,80,90 地熱発電システム
Claims (4)
- 地表から地中内の所定の深度まで埋設される地中熱交換器を用いた地熱発電システムであって、前記地中熱交換器は、
底部を閉塞した外管と、
該外管内に挿入された断熱特性の良好な内管と、
前記外管と前記内管との間隙に形成され、前記内管の内部と繋がる環状のアニュラスと、を備え、
前記内管のうち、該内管を流れる作動流体にフラッシングが発生すると予測される区間に伝熱特性の良好な良伝熱区間を設けることによって、前記地中熱交換器への作動流体の注入圧力を低減することを特徴とする地中熱交換器を用いた地熱発電システム。 - 地表から地中内の所定の深度まで埋設される地中熱交換器を用いた地熱発電システムであって、前記地中熱交換器は、
底部を閉塞した外管と、
該外管内に挿入され、一部を伝熱特性の良好な区間、残部を断熱特性の良好な区間とした内管と、
前記外管と前記内管との間隙に形成され、前記内管の内部と繋がる環状のアニュラスと、を備えており、
地上で前記地中熱交換器と隣接する位置に設けられ、
発電装置から前記地中熱交換器の前記アニュラスに低温の作動流体を注入し、前記地中熱交換器の前記内管から前記熱エネルギーを含む高温の作動流体を取り出す循環方向と、前記発電装置から前記地中熱交換器の前記内管に前記低温の作動流体を注入し、前記地中熱交換器の前記アニュラスから前記高温の作動流体を取り出す循環方向とを切替可能な、
循環方向変更機構を更に備えることを特徴とする地中熱交換器を用いた地熱発電システム。 - 地上で前記地中熱交換器と隣接する位置に設けられ、
前記地中熱交換器から得られる前記熱エネルギーを含む高温の作動流体と発電装置から前記地中熱交換器に還流する低温の作動流体との間で熱交換を行い、前記高温の作動流体の飽和蒸気圧を低下させる
地上熱交換機構を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の、地中熱交換器を用いた地熱発電システム。 - 地上で前記地中熱交換器と隣接する位置に設けられ、
発電装置から前記地中熱交換器の入口に低温の作動流体を注入し、前記地中熱交換器の出口から前記熱エネルギーを含む高温の作動流体を取り出して前記発電装置に導入する循環機構に加えて、前記地中熱交換器の前記出口から取り出した前記高温の作動流体を前記発電装置に導入することなく前記地中熱交換器の入口に直接導いて循環させる閉回路形成機構と、前記作動流体の流路を前記循環機構又は前記閉回路形成機構に切り替えるための流路切替機構と、前記地中熱交換器と前記閉回路形成機構を含む流路内の作動流体の水を加圧水の状態に保つためのポンプとを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の、地中熱交換器を用いた地熱発電システム。
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