以下、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。図1は、三脚12を含む基準スタンド10に設置した三次元座標測定装置1を示す。三次元座標測定装置1は、測定装置本体100と、手持ち式のプローブ200、処理装置300との組み合わせで構成され、例えば大型の測定対象物Sの各部の寸法等の物理量を測定するために用いられる。
典型的には、三次元座標測定装置1は、測定対象物Sが設計通りに作られているかを確認するのに用いられる。図1には、測定対象物Sの例として大型の配管が図示されている。測定対象物Sは床面上に置かれ、測定中は定置した状態が維持される。
プローブ200は、使用者Uにより携行される。プローブ200は接触子201を有している。使用者Uは測定対象物Sの所望の部分に接触子201を当接させる。接触子201の接触ポイントが「測定点」となる。
基準スタンド10の一部を構成する三脚12は、測定装置本体100を固定するための固定部11を含む。基準スタンド10は床面上に定置され、測定対象物Sの測定が完了するまで位置固定される。
測定装置本体100は、測定点を検出する測距光学系部材110として測定用の可動カメラ111を有し、可動カメラ111は定焦点カメラで構成されている。可動カメラ111は測距光学系部材110の一例である。測定用の可動カメラ111に代えて、特許文献1(JP特開2015-194452号公報)に開示の固定カメラを採用してもよい。
測定用の可動カメラ111はプローブ200に設けられた複数のプローブマーカeq(p)を撮像する。可動カメラ111は、その向きを左右方向及び/又は上下方向に変化させることが可能であり、これにより可動カメラ111の視野を左右方向及び/又は上下方向に拡大することができる。
図2は、測定装置本体100の内部構造の概要を説明するための斜視図である。図3は、測定装置本体100の全体概要を説明するための縦断面図である。先ず図2を参照して、測定装置本体100は俯瞰カメラ120を有している。俯瞰カメラ120は定焦点カメラで構成されている。俯瞰カメラ120は大きな撮像視野を有し、広い撮像視野でプローブ200の存在及びその概略的な位置を監視するのに用いられる。
例えばプローブ200が移動することにより可動カメラ111の撮像視野からプローブ200が外れても、俯瞰カメラ120が撮像した画像データ(以下、「俯瞰画像データ」と呼ぶ。)に基づいてプローブ200の大まかな位置を特定する。俯瞰カメラ120で特定した位置に基づいて、可動カメラ111の撮像視野内にプローブ200が位置するように、可動カメラ111の向きが調整される。
図1に戻って、測定装置本体100はケーブルCAを介して処理装置300に接続される。処理装置300は典型的にはパーソナルコンピュータ(PC)で構成される。処理装置300は、液晶モニタなどの本体表示部310及びキーボード、マウスなど周知の本体操作部320と有線又は無線で接続される。
処理装置(PC)300は、測定用の可動カメラ111がプローブマーカeq(p)を撮像することにより得られる画像データ(以下、「測定画像データ」と呼ぶ。)を測定装置本体100から受け取る。そして、処理装置(PC)300は、受け取った測定画像データと、後述する基準画像データとに基づいて、接触子201の接触ポイントつまり、使用者Uがプローブ200を介して指示した測定点の座標を求める。すなわち、処理装置300は画像処理と演算処理とを実行して測定点の三次元座標を求める。そして、処理装置300は、測定対象物Sの一又は複数の測定点の座標に基づいて測定対象物Sの物理量を求めて本体表示部310に表示する。
実施例では、測定装置本体100と処理装置300が別体であるが、処理装置300の機能の一部又は全てを測定装置本体100に組み込んでもよい。
把持しているプローブ200を使用者Uが移動させると、図1に白抜きの点線矢印で示すように、プローブ200の移動に追従して可動カメラ111の向きが上下及び/又は左右に変化する。すなわち、可動カメラ111の向きは、プローブ200が移動すると、このプローブ200が可動カメラ111の撮像視野内に位置するように変化する。これにより、三次元座標測定装置1は大きな測定可能領域を実現している。
図2、図3を参照して、測定装置本体100は、ベース部材130と、第1サブ部材140と、第2サブ部材150との3分割構造を有し、その各々が独立したフレームを有している。具体的に説明すると、ベース部材130はベースフレームF(B)を有している。第1サブ部材140は第1サブフレームF(S1)を有している。第2サブ部材150は第2サブフレームF(S2)を有している。これら3つの独立したフレームF(B)、F(S1)、F(S1)は金属製であり、好ましくは熱伝達性に優れた例えばアルミニウム合金で作られている。
ベースフレームF(B)は第1サブフレームF(S1)を縦軸Ax(V)を中心に回転可能に支持している。第1サブフレームF(S1)は第2サブフレームF(S2)を横軸Ax(L)を中心に回転可能に支持している。測定装置本体100は、第2サブフレームF(S2)の姿勢を介して可動カメラ111の姿勢を検出する姿勢検出センサ160を有している。実施例では、姿勢検出センサ160として光学系部材の一例である基準カメラ161が採用されている。この基準カメラ161は定焦点カメラで構成され、ベースフレームF(B)に固定されている。
ベースフレームF(B)は、縦軸Ax(V)と同軸に配置された中空支持軸148を有している。中空支持軸148は、ベースフレームF(B)から上方向に真っ直ぐに延びており、この中空支持軸148の中に基準カメラ161が配置され、そして、基準カメラ161はベースフレームF(B)に固定されている。基準カメラ161の撮像視野は上方を差し向けられている。基準カメラ161の光軸は、好ましくは、中空支持軸148と同軸である。すなわち、基準カメラ161の光軸は縦軸Ax(V)と同軸であるのが好ましい。なお、ベースフレームF(B)は下方に突出する取付部132を有する。取付部132は、下方に開放した凹所を含み、この取付部132を基準スタンド10の固定部11に凹凸嵌合することにより、測定装置本体100を基準スタンド10に固定することができる(図1)。
図4は、測定装置本体100及び処理装置(PC)300の概要を説明するためのブロック図である。図3、図4を参照して、ベースフレームF(B)には、第1サブフレームF(S1)の回転を制御する第1回転駆動制御回路141と、第2サブフレームF(S2)の回転を制御する第2回転駆動制御回路142と、無線通信回路143が実装された各種基板がベースフレームF(B)に対して直接的な熱伝導が可能な状態で設けられている。また、ベースフレームF(B)には、第1サブフレームF(S1)を回転動作させるための第1回転駆動機構145が設けられている(図3)。第1回転駆動機構145は例えばステッピングモータ及びこれに関連した動力伝達部材を含む。
図2、図3を参照して、第1サブ部材140はベース部材130の上に回転可能に配置されている。具体的に説明すると、第1サブフレームF(S1)は、中空支持軸148の上端部分にクロスローラベアリングCB(図3)を介して回転自在に取付けられている。第1サブフレームF(S1)はベースフレームF(B)に対して縦軸Ax(V)を中心に相対回転可能である。この第1サブフレームF(S1)は、上述した第1回転駆動機構145によって回転動作する。第1サブフレームF(S1)は、側面視U字状の形状を有し(図2)、互いに対向して上方に延びる2つの支柱部分146に第2サブフレームF(S2)が設置されている。第2サブフレームF(S2)は横軸Ax(L)を中心に回転可能である。これにより、第2サブフレームF(S2)は第1サブフレームF(S1)に対して横軸Ax(L)を中心に相対回転可能である。第2サブフレームF(S2)には、第2サブフレームF(S2)を回転動作させるための第2回転駆動機構151が取り付けられている。第2回転駆動機構151(図2)は、例えばステッピングモータ及びこれに関連した動力伝達部材を含む。
俯瞰カメラ120は、第1サブフレームF(S1)に設置されている(図2)。俯瞰カメラ120を第1サブフレームF(S1)に設けることにより、長期の使用に亘って監視誤差を抑制することができる。換言すれば、俯瞰カメラ120を第2サブフレームF(S2)に設けたときには、この第2サブフレームF(S2)は可動要素であり且つ同じく可動要素である第1サブフレームF(S1)で支持されていることから、第1サブフレームF(S1)の組付誤差が累積した監視誤差となって現れる可能性がある。
可動カメラ111は第2サブフレームF(S2)に設置されている。可動カメラ111及び俯瞰カメラ120は、共に前方に差し向けられている。第1サブフレームF(S1)が縦軸Ax(V)を中心に回転することにより可動カメラ111及び俯瞰カメラ120の向きが左右に回転する。他方、第2サブフレームF(S2)が横軸Ax(L)を中心に回転することにより可動カメラ111の向きが上下にチルトする。
図3を参照して、基準カメラ161の上方に差し向けられた撮像視野には参照部材162が配置される。基準カメラ161は、その光軸が縦軸Ax(V)と平行であるのがよく、好ましくは、基準カメラ161は、その光軸が縦軸Ax(V)と同軸であるのがよい。参照部材162は、第2サブフレームF(S2)に固設されている。つまり参照部材162は第2サブフレームF(S2)に関して不動である。また、参照部材162は、第2サブフレームF(S2)に対して直接的に熱伝導可能な状態で取り付けられている。図5は、参照部材162の構成を説明するための模式図であり、(a)は断面図、(b)は参照部材162を下方から見た底面図である。図5の(a)を参照して、参照部材162は複数の参照マーカep(ref)を有し、参照マーカep(ref)は自発光タイプの面マーカで構成されている。具体的に参照部材162の構成を説明すると、参照部材162は、上から下に向けて順に配置された発光基板163、拡散板164、ガラス板165を有し、これらは、その側方の周囲が拡散反射シート166によって包囲されている。
発光基板163の下面には、全体に亘って数多くの発光素子Lが整列した状態で実装されている。各発光素子Lは、例えば赤外LED(発光ダイオード)で構成されている。発光素子Lとしては、赤外LEDの代わりに他の波長の光を発するLEDが用いられてもよいし、フィラメント等の他の可視光発光素子が用いられてもよい。発光素子Lは参照マーカ駆動回路152(図4)によって駆動される。この参照マーカ駆動回路152は第2サブフレームF(S2)に搭載されている。
拡散板164は、例えば樹脂からなる板部材であり、複数の発光素子Lから発生される光を拡散させつつ下方へ透過する。拡散反射シート166は、例えば樹脂からなる帯状のシート部材であり、複数の発光素子Lから参照部材162の側方(外方)に向かう光を拡散させつつその内方に反射する。以上の構成により、拡散板164から放出される光を面全体に均一化することができる。
ガラス板165は板ガラスであり、例えば石英ガラスまたはソーダガラスで構成される。ガラス板165の上下の面のうち少なくとも下面は、高度に平滑化された面で構成され、この下面に複数の円形開口を有する薄膜マスク167が設けられている。薄膜マスク167は、例えばガラス板165の下面にスパッタ法または蒸着法により形成されるクロムマスクである。この薄膜マスク167の各円形開口によって参照マーカep(ref)の円形輪郭が規定される。これにより、どの角度から参照マーカep(ref)を撮像しても、規定の形状を歪みの無い画像を獲得することができる。面発光マーカである参照マーカep(ref)の輪郭形状は任意であり、四角形、星形、楕円などであってもよい。
上記の構成により、複数の発光素子Lから発生されて拡散板164および拡散反射シート166により拡散されて面全体に均一に放出される。つまり面全体に均一に光を放出する面光源になる。そして、この面光源から放出された光は、薄膜マスク167の各円形開口を通して参照部材162の下方に放出される。すなわち、薄膜マスク167は、各円形開口によって透光部を構成し、それ以外の部分で遮光部を構成する。これにより輪郭が明確な面発光の参照マーカep(ref)となる。複数の参照マーカep(ref)は、図5の(b)から分かるように、参照部材162の下面(平面)において、マトリクス状に等間隔に配列されている。複数の参照マーカep(ref)のうち、中心に位置する参照マーカep(ref)を「第1マーカ」と呼び、符号(1)を付記する。第1マーカep(ref)(1)から所定距離離間した一つのマーカep(ref)を「第2マーカ」と呼び、符号(2)を付記する。第1、第2のマーカep(ref)(1)、ep(ref)(2)には、他の参照マーカep(ref)と識別するために識別マークとして例えば第1、第2のマーカep(ref)(1)、ep(ref)(2)の中心に識別マーク点P(図5(b))が付されている。この識別マーク点Pは、薄膜マスク167によって生成される。
参照部材162は、面発光マーカである複数の参照マーカep(ref)が基準カメラ161の撮像視野の範囲内に位置するように位置決めされている。具体的には、第2サブフレームF(S2)が所定の基準姿勢をとったときに、参照部材162が縦軸Ax(V)と直交する横断面上に位置するように、第2サブフレームF(S2)が位置決めされている。好ましくは、第1マーカep(ref)(1)の中心の位置する識別マーク点Pが縦軸Ax(V)上に位置するように参照部材162が位置決めされる。
第1、第2のサブフレームF(S1)、F(S2が一緒に縦軸Ax(V)を中心に回転し、及び/又は、第2サブフレームF(S2)が横軸Ax(L)を中心に回転すると、基準カメラ161が獲得する複数の参照マーカep(ref)の画像が変化する。
図6は、基準カメラ161が参照部材162を撮像することにより得られる情報を説明するための図である。なお、基準カメラ161の撮像タイミングは、後に説明するように、参照部材162の複数の参照マーカep(ref)が発光するタイミングに同期される。これにより、複数の参照マーカep(ref)を発光させるのに要する電気的エネルギ及び参照部材162が発する熱を必要最小限に止めることができる。
可動カメラ111が基準姿勢の状態のとき、つまり第1サブフレームF(S1)及び第2サブフレームF(S2)が共に基準姿勢の状態のときは、図6(a)に示す画像161i(1)が得られる。ここに可動カメラ111の基準姿勢は、第1サブフレームF(S1)が基準となる回転位置にあることを前提として、参照部材162の下面が基準カメラ161の光軸と好ましくは同軸の縦軸Ax(V)と直交する横断面上に位置することで作られる。基準カメラ161の光軸は縦軸Ax(V)と平行に配置されてもよい。図6(a)の画像161i(1)においては、複数の参照マーカep(ref)にそれぞれ対応するマーカ画像iepが複数の参照マーカep(ref)の配列と一致した状態で並んでいる。すなわち、参照部材162の複数の参照マーカep(ref)と、撮像画像161i(1)の複数のマーカ画像iepとは、その配列パターンが同じである。したがって、基準カメラ161の視野中心に対応する画像中央部には、第1マーカep(ref)(1)に対応する第1マーカ画像iep1が位置している。さらに、第1マーカ画像iep1から所定距離離間した位置に第2マーカep(ref)(2)に対応する第2マーカ画像iep2が位置している。第1、第2のマーカ画像iep1、iep2と他のマーカ画像との識別は、第1マーカep(ref)(1)及び第2マーカep(ref)(2)に存在する識別マーク点Pによって行われる。
図6(b)は、第1サブフレームF(S1)の軸回転に伴って第2サブフレームF(S2)が基準姿勢から縦軸Ax(V)を中心に回転したとき、つまり可動カメラ111の向きが左右に動いたときの基準カメラ161の撮像画像161i(2)を示す。第2サブフレームF(S2)が基準姿勢から縦軸Ax(V)を中心に回転しても、複数の参照マーカep(ref)と基準カメラ161との間の距離は大きく変動しない。縦軸Ax(V)を中心に第2サブフレームF(S2)が回転すれば、同じように複数のマーカ画像iepが画像中央部を中心として回転する。すなわち、参照部材162の複数の参照マーカep(ref)と、撮像画像161i(1)の複数のマーカ画像iepとは、その配列パターンが同じであるが、画像中央部を中心として回転する。この回転角度θは、第1、第2のマーカ画像iep1、iep2の位置関係に基づいて実質的に求めることができる。
図6(c)は、第2サブフレームF(S2)が基準姿勢から横軸Ax(L)を中心に回転したとき、つまり可動カメラ111の向きが上下に動いたときの基準カメラ161の撮像画像161i(3)を示す。第2サブフレームF(S2)が横軸Ax(L)を中心に回転すると、複数の参照マーカep(ref)のうち、その一部は基準カメラ161との距離が短くなり、他の部分は基準カメラ161との距離が長くなる。すなわち、参照部材162の複数の参照マーカep(ref)と、撮像画像161i(1)の複数のマーカ画像iepとは、その配列パターンに違いがある。図6(c)から分かるように、複数のマーカ画像iepの配列状態に歪が生じる。この歪みを含む配列パターンに基づいて、横軸Ax(L)を中心とした第2サブフレームF(S2)のチルト角度φを実質的に求めることができる。具体的には、第1、第2のマーカ画像iep1、iep2の位置関係に基づいてチルト角度φを実質的に求めることができる。ここに、第2サブフレームF(S2)が横軸Ax(L)を中心に回転できる角度範囲つまり第2サブフレームF(S2)のチルトは例えば30°程度の限定的な角度範囲で足りる。この程度の角度範囲であれば、第2サブフレームF(S2)が横軸Ax(L)を中心にチルトしても、第1、第2の参照マーカep(ref)(1)、ep(ref)(2)に対応する第1、第2のマーカ画像iep1、iep2の相対的な位置関係つまり離間距離は大きく変化しない。
上述したように、第2サブフレームF(S2)には可動カメラ111および参照部材162が固定されている。したがって、基準カメラ161を使って参照部材162の複数の参照マーカep(ref)を撮像することにより得られる画像データ(以下、「基準画像データ」と呼ぶ。)に基づいて、可動カメラ111の向きつまり上下及び/又は左右の変位量(回転角度θ及び/又はチルト角度φ)を実質的に検出することができる。すなわち、基準カメラ161は可動カメラ111の姿勢を第2サブフレームF(S2)の姿勢を介して検出する姿勢検出センサとして機能する。
また、基準カメラ161は可動カメラ111の姿勢を第2サブフレームF(S2)の姿勢を検出することから、後に説明するように、第1、第2の回転駆動機構145、147の回転停止の制御を可動カメラ111及び基準カメラ161の画像データに基づいて行うようことができる。これによれば、第1、第2の回転駆動機構145、147の回転停止を行うための近接スイッチなどリミットセンサの設置を省くことができる。
ベースフレームF(B)に配置した姿勢検出センサ160の一例として光学系部材の具体例である基準カメラ161の第1変形例として、基準カメラ161と共に縦軸Ax(V)を中心とした第1サブフレームF(S1)の回転角度を検出するロータリエンコーダをベースフレームF(B)に設けてもよい。また、第2変形例として、縦軸Ax(V)を中心とした第1サブフレームF(S1)の回転角度θを検出するロータリエンコーダをベースフレームF(B)に設置すると共に、このベースフレームF(B)に、横軸Ax(L)を中心とした第2サブフレームF(S2)のチルト角度φを検出するレーザビーム方式の光学系測距ユニットを設けてもよい。
図7は、上述したように、測定装置本体100が3つに分割したフレーム構造を明らかにするための分解斜視図である。この図7に図示の3分割のフレーム構造に次に説明する包囲部材170が装着される。包囲部材170を装着した状態を図8に示す。
図8及び前述した図2、図3を参照して、基準カメラ161の視野を含む撮像空間rsを、その周囲から遮断する包囲部材170が基準カメラ161に関連して配置されている。包囲部材170は、撮像空間rsをその回りの環境から断絶するための部材である。包囲部材170は、撮像空間rsの内部に外から熱、光、空気が入り込むのを防止し且つ撮像空間rs内部で空気の流れが発生するのを防止する。
包囲部材170は横断面正方形の上下方向に延びる筒状の形状を有し、上端及び下端は開放している。包囲部材170の下端は、その全周が第1サブフレームF(S1)の下端部に密着した状態で固定されている。包囲部材170の上端は、その全周が第2サブフレームF(S2)の下面に密着状態で固定されている。これにより、基準カメラ161の撮像空間rsは、包囲部材170によって、外部の熱、光、空気の流動の影響を受け難い実質的に閉じた空間になる。すなわち、包囲部材170により撮像空間rsの内部雰囲気を安定させることができる。包囲部材170は、また、変形したときに基準カメラ161の撮像視野と干渉することがないように包囲部材170の断面形状の大きさが設計される。
包囲部材170は撮像空間rsの内部で光の乱反射が発生しないように、黒を含む暗色の布などの変形容易な材料で構成するのがよい。また、包囲部材170の変形を容易にするために蛇腹構造を有するのが好ましい。更に好ましくは、バネ無しの蛇腹構造を採用するのがよい。バネ無しの蛇腹構造を採用することにより、第2サブフレームF(S2)の横軸Ax(L)(図2)を中心としたチルト動作に伴って包囲部材170の一部が圧縮変形し、他の一部が伸長変形しても、これらの変形に伴う反力が発生するのを抑えることができる。
第1サブフレームF(S1)が縦軸Ax(V)(図3)を中心に回転する際には、第2サブフレームF(S2)の回転を伴うことから、包囲部材170も一緒に回転する。つまり、縦軸Ax(V)を中心とした回転では、包囲部材170の変形は発生しない。他方、第2サブフレームF(S2)が横軸Ax(L)を中心に回転すると、これに追従して包囲部材170が変形する。包囲部材170の材料及び/又は構造として、変形に伴う反力が発生しない材料及び構造(例えば上述したバネ無しの蛇腹構造)を採用することにより、第2サブフレームF(S2)の回転が停止した瞬間に発生し易い、包囲部材170からの反力の発生を抑えることができる。これにより、可動カメラ111を上下にチルトさせるときの第2サブフレームF(S2)の位置決め精度を長期に亘って維持できる。
基準カメラ161の周囲を包囲部材170で包囲することにより、外から光が撮像空間rs内に侵入するのを防止できる。また、撮像空間rsの周囲に存在する空気の流れ、熱(典型的にはモータ、基板からの熱)を包囲部材170によって遮断することができる。これにより撮像空間rsの内部雰囲気に揺らぎが生じるのを防止できる。このことは、高い精度で複数の参照マーカep(ref)を撮像できることを意味している。これにより、姿勢検出センサ160である基準カメラ161の検出精度を高めることができる。
包囲部材170は、少なくともその内面が、光の反射率を低下させる又は光を吸収できる色(黒を含む暗色)または材料で構成するのが好ましい。具体的には、光を反射しない無反射素材で包囲部材170の内面を構成する、或いは、光を反射しない無反射素材のコーティングを施して乱反射するのを防止するのが好ましい。
図6の(a)ないし(c)に図示の外枠OFは基準カメラ161の撮像視野の境界を示す。撮像視野OFは限定的であり、参照部材162に含まれる全ての参照マーカep(ref)を取り込むのに過不足無い、必要最小限の寸法に設定されている。これにより、画像から全ての参照マーカep(ref)の相対的な関係を求める精度を高めることができる。この実施例では単一の基準カメラ161を用いているが、基準カメラ161を複数並置してもよい。複数の基準カメラ161を設置するときには、撮像視野OFを複数に分割した分割撮像視野毎に各基準カメラ161で撮像し、これを合成することで、図6に図示の撮像視野OF全体の画像を生成してもよい。これによれば、複数の基準カメラ161の各々が担う撮像視野を更に小さく設定することができるため、合成した撮像視野OFの画像は高い分解能を備えている。これにより、基準カメラ161の画像の読取精度を更に向上することができる。つまり、複数の基準カメラ161の各画像を合成することにより、可動カメラ111の姿勢を検出するセンサとしての検出精度を更に向上することができる。
測定装置本体100の筐体180は第1の下方筐体181と第2の上方筐体182で外観が作られている。図9は測定装置本体100の外観を示す斜視図である。図10は上方筐体182を取り外した状態を示す図である。図10から分かるように、上方筐体182は第1、第2のサブ部材140、150を包囲する部材である。図11は下方筐体181を取り外した状態を示す図である。図11から分かるように、下方筐体181はベース部材130を包囲する部材である。
下方筐体181はベースフレームF(B)に固定される(図3)。下方筐体181は、互いに対向する位置に配置された一対の取っ手183を有し(図9、図10)、この一対の取っ手183を使用者が把持することで重量物である測定装置本体100を持ち運ぶことができる。ちなみに、測定装置本体100の重量は約13Kgである。一対の取っ手183は、測定装置本体100の重心Gの高さレベルに配置されている。これにより使用者は安定して測定装置本体100を持ち運ぶことができる。その結果、測定装置本体100を持ち運びに伴う内装部品、特に光学系部品に与える可能性としての荷重変動や衝撃を抑制することができ、長期に亘る使用に伴う光学系の誤差の発生を抑えることができる。
図3を参照して、下方筐体181はベース部材130を構成する要素と協働して上端部、下端部、側方周囲を閉じた第1の下方閉空間131を形成している。他方、上方筐体182は、その下端が第1サブフレームF(S1)に固定されており、第1、第2のサブ部材140、150を構成する要素と協働して上端、下端、側方周囲を閉じた第2の上方閉空間153を形成している。
図12は、図9に図示の測定装置本体100の縦断面図である。図12を参照して、下方筐体181は、側方に向けて開口した下方排気口184を有し、この下方排気口184には電動の下方排気ファン185が設置されている。同様に、第2筐体182は、その上端部に側方に向けて開放した上方排気口186を有し、この上方排気口186には電動の上方排気ファン187が設置されている。この上方排気口186は、好ましくは、可動カメラ111の光軸から離れた位置、例えば可動カメラ111の光軸とは縦軸AX(V)を挟んで反対側に配置される。
下方筐体181などで画成される下方閉空間131には、ベース部材130の一部を構成する各種回路基板144、第1回転駆動機構145(図3)などの熱源が配置されている。この熱は下方排気ファン185によって外部に放出される。この強制排気に伴って下方閉空間131に負圧が発生しないように、下方閉空間131には、下方筐体181とベース部材130との間の隙間など意図的に限定した箇所を通じて、例えば下方筐体181の下端から外気が導入される。
他方、上方筐体182によって画成される上方閉空間153には、第2回転駆動機構151(図2)などの熱源が配置されている、この熱は上方排気ファン187によって外部に放出される。この強制排気に伴って上方閉空間153に負圧が発生しないように、上方閉空間153には、上方筐体182の下端など意図的に限定した箇所を通じて外気が導入される。
上述したように、互いに隔離された上下の閉空間131、153を独立して強制排気するため、測定装置本体100の内部で温度勾配が発生するのを抑制することができる。特に、下方閉空間131と下方閉空間153との間の温度勾配の発生を抑制することができる。これにより、基準カメラ161や可動カメラ111の検出精度を更に向上することができる。
図10、図13を参照して、最も上の高さレベルに位置する第2サブ部材150は、単一ブロックからなるカウンタウエイト192を有している。図13は、カウンタウエイト192の存在を明らかにするために上方筐体182の一部を切り欠いた測定装置本体100の側面図である。
前述したように、縦軸Ax(V)を中心に第1、第2サブ部材140、150が回転する。また、横軸Ax(L)を中心に第2サブ部材150が回転する。これらの回転に伴って、第1、第2サブ部材140、150の組立体の重心位置が変化する。測定位置本体100の重心位置が変化すると、ベース部材130を固定している台座や三脚12を含む基準スタンド10に作用する荷重が変化し、この結果、基礎部分の姿勢に変化が生じる可能性がある。例えば、基礎部分が1arcsec変化しただけでも可動カメラ111の部分では約14μmの変位となって現れる。第1、第2サブ部材140、150の組立体の重心位置の変化を抑えることで、上記の問題を低減できると共に第1サブ部材140、第2サブ部材150の安定した回転動作を長期に亘って維持することができる。同様に、第1回転駆動機構145(図3)、第2回転駆動機構151(図7)の負担を軽減することができる。
単一のカウンタウエイト192の配置位置に関する基本的な設計指針を説明すると、第1に、第2サブ部材150に含まれる第2回転駆動機構151と縦軸Ax(V)を挟んで反対側の位置を選択するのがよい。第2に、可動カメラ111と横軸AX(L)を挟んで反対側の位置を選択するのがよい。
単一のカウンタウエイト192の変形例として、第1に、縦軸Ax(V)を中心とした第1、第2サブ部材140、150の回転に伴う重心位置の変化を抑える第1カウンタウエイトと、第2に、横軸Ax(L)を中心とした第2サブ部材150の回転に伴う重心位置の変化を抑える第2カウンタウエイトと、を別部材として第2サブ部材150に設けてもよい。
図14は、可動カメラ111の画角の設定を説明するための図である。定焦点の可動カメラ111の画角が大きいと、比較的遠い位置のプローブ200はその画像上のプローブが小さくなり測定点の検出精度が低下する。可動カメラ111は、複数のプローブマーカeq(p)を撮像するのが目的である。この観点に立脚して、可動カメラ111は、図14から分かるように、ある程度の余裕を持って複数のプローブマーカeq(p)を撮像できる範囲の限定した画角が設定されている。具体的に説明すると、可動カメラ111の画角は、例えば可動カメラ111から1.5m離間した位置で直径15cm程度の領域をカバーできるように設定される。これにより、複数のプローブマーカeq(p)を介して接触子201の位置座標を特定する精度を高めることができる。
可動カメラ111は、実施例では単一のカメラで構成されているが、変形例として、複数のカメラで構成してもよい。つまり、測距デバイスとして複数の可動カメラ111を採用し、そして各可動カメラ111の画像を合成することで、図14に図示の撮像視野を形成してもよい。これによれば、接触子201の接触ポイントつまり測定点を特定する精度を更に高めることができる。
次に、俯瞰カメラ120について説明する。俯瞰カメラ120は、その画角が可動カメラ111の画角に比べて大きい。そのため、俯瞰カメラ120の撮像視野は、可動カメラ111の撮像視野に比べて大きい。俯瞰カメラ120はプローブ200の移動を監視する目的を有している。この目的に合致する俯瞰カメラ120を第1サブ部材140に搭載すればよい。これにより、プローブ200の移動に伴って可動カメラ111の撮像視野からプローブ200が外れた場合でも、俯瞰カメラ120が撮像した画像データ(以下、「俯瞰画像データ」と呼ぶ。)に基づいてプローブ200の大まかな位置を特定することができる。特定された位置に基づいて、可動カメラ111の撮像視野内にプローブ200が位置するように可動カメラ111の向きの上下及び/又は回転変位させる調整が行われる。
図3、図4を参照して、基準カメラ161、可動カメラ111、参照部材162を発光させるための参照マーカ駆動回路152、第1、第2の回転駆動機構145、151を駆動させるための第1、第2の回転駆動回路141、142、無線通信回路143、処理装置(PC)300、この処理装置300と通信するための通信回路149は、測定装置本体200を統合制御するヘッド制御回路193に接続されている。ヘッド制御回路193は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、基準カメラ161、可動カメラ111、参照マーカ駆動回路152および第1、第2の回転駆動回路141、142を制御する。
基準カメラ161、可動カメラ111および俯瞰カメラ120の各画素からは、検出量に対応するアナログの電気信号(以下、「受光信号」と呼ぶ)がヘッド制御回路193に出力される。
ヘッド制御回路193には、図示しないA/D変換器(アナログ/デジタル変換器)およびFIFO(First In First Out)メモリが実装されている。基準カメラ161、可動カメラ111および俯瞰カメラ120からそれぞれ出力される受光信号は、ヘッド制御回路193のA/D変換器により一定のサンプリング周期でサンプリングされるとともにデジタル信号に変換される。A/D変換器から出力されるデジタル信号は、FIFOメモリに順次蓄積される。FIFOメモリに蓄積されたデジタル信号は、画素データとして、順次、処理装置(PC)300に転送される。
参照マーカ駆動回路152は、ヘッド制御回路193の制御に基づいて、図5(a)の発光基板163を駆動する。それにより、発光基板163上の複数の発光素子Lが発光し、参照部材162の複数の参照マーカep(ref)から光が放出される。なお、好ましくは、この発光タイミングと基準カメラ161の撮像タイミングとが同期される。
第1回転駆動回路141は、ヘッド制御回路193の制御に基づいて図4の第1回転駆動機構145を駆動する。これにより第1サブ部材140と第2サブ部材150は一緒に縦軸Ax(V)を中心に回転して、可動カメラ111はその向きが左右に変位する。また、第2回転駆動回路142は、ヘッド制御回路193の制御に基づいて第2回転駆動機構147を駆動する。これにより、第2サブ部材150が横軸Ax(L)を中心に回転して、可動カメラ111はその向きが上下にチルトする。これらの第1、第2の回転駆動回路141、142による可動カメラ111の撮像視野の向きの上下及び/又は左右の変位は、処理装置(PC)300の追跡処理(後に説明する)に基づいて行われる。
ヘッド制御回路193は、無線通信回路143を介してプローブ200との間で無線通信を行う。この無線通信は2系統の通信手段によって行われる。一つは、電磁波として可視光又は不可視光(例えば赤外線)を使った光通信である。他の一つは電波無線信号であり、例えばBluetooth(登録商標)通信のように電波を使った短距離デジタル無線通信が採用可能である。図9を参照して、測定装置本体100は、俯瞰カメラ120の直ぐ上の位置に光通信用の第1の窓194を有し、また、測定装置本体100の下端部に電波通信用の第2の窓195を有している。
図15ないし図18はプローブ200に関連した図である。図15は、プローブ200を使用者側から見た斜視図である。図16は、プローブ200の背面側から見た斜視図である。図15、図16を参照して、プローブ200は、一つの方向に延びる細長い形状のプローブ本体202と、長手方向一端から延びるスタイラス203の先端に、前述した接触子201が設けられている。この接触子201は球状である。また、スタイラス203の近傍にプローブカメラ204が設けられている。プローブ本体202はその長手方向中間部分に把持部205を有し、使用者は片手で把持部205を握ってプローブ200を操作することができる。
プローブ200の背面には、図16を参照して、複数のプローブマーカeq(p)が互いに離間して配置されており、また、通信窓206が設けられている。図17は、通信窓206の部分を拡大した図である。この通信窓206は、測定装置本体100との間の情報の授受を行う通信インターフェースの一部を構成しており、通信窓206を通じて測定装置本体100との間で特定の周波数帯を共有した電波通信と、赤外線などの光通信との使い分けの下でプローブ200と測定装置本体100との間で設定情報や撮像情報などの各種の情報の授受が行われる。光通信は、後に説明するトラッキング処理において、可動カメラ111の撮像タイミングとプローブマーカeq(p)の発光のタイミングとの厳格な同期性を確保するのに用いられる。測定処理においても、可動カメラ111の撮像タイミングとプローブマーカeq(p)の発光のタイミングとの厳格な同期性を確保するために光通信を用いてもよい。
図15を参照して、プローブ200は、長手方向他端にタッチパネルディスプレイ210を備え、また、その近傍に操作部211が配置されている。操作部211は複数のプッシュ式ボタンで構成され、測定を開始するための第1ボタン、幾何要素などの選択を決定するための第2ボタン、測定を完了させるための第3ボタンを含む。図18は、プローブ200の構成を説明するためのブロック図である。プローブ200は、電気的な構成としてプローブ制御部220、表示灯221、バッテリ222、プローブマーカ駆動回路223、プローブメモリ224、無線通信回路225、モーションセンサ226の他に、上述したプローブカメラ204、プローブ操作部(プッシュ式ボタン)211、タッチパネルディスプレイ210、複数のプローブマーカeq(p)を含む。
バッテリ222は、プローブ200に設けられた他の構成要素に電力を供給する。プローブ制御部220は、CPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、表示灯221、プローブマーカ駆動回路223、プローブカメラ204およびタッチパネルディスプレイ210を制御する。また、プローブ制御部220は、操作部を構成するプッシュ式ボタン211およびタッチパネルディスプレイ210に対する使用者Uの操作に応答して、各種処理を行う。すなわち、プローブ200の駆動電力は全てバッテリ222から供給される。
さらに、プローブ制御部220は、複数種類の副画面生成用データ(後に説明する)に基づいて、タッチパネルディスプレイ210に表示されるべき画面を示す画面データを生成する。
タッチパネルディスプレイ210は、プローブ表示部231およびタッチパネル232を含む。プローブ表示部231は、例えば液晶ディスプレイパネルまたは有機ELパネルにより構成される。
表示灯221は、例えば一又は複数のLEDを含み、その発光部が外部に露出するように設けられている。表示灯221は、プローブ制御部220の制御に基づいてプローブ200の状態に応じた発光動作を行う。
複数のプローブマーカeq(p)は、図5(a)を参照して前述した参照部材162と同じ構成を有し、面発光マーカで構成されている。プローブマーカ駆動回路223は、複数のプローブマーカeq(p)に接続され、プローブ制御部220の制御に基づいて複数のプローブマーカeq(p)の発光のオン・オフが制御される。このオン・オフのタイミングは、可動カメラ111の撮像タイミングと同期される。
プローブメモリ224は、不揮発性メモリまたはハードディスク等の記録媒体を含む。プローブメモリ224には、タッチパネルディスプレイ210の画面表示に関するプログラムが記憶される。また、プローブメモリ224は、種々のデータの処理および測定装置本体100から与えられる画像データ等の種々のデータを保存するために用いられる。さらに、プローブメモリ224には、使用者Uによる三次元座標測定装置1の操作に応じてタッチパネルディスプレイ210に表示されるべき画面を示す画面データを生成するための複数種類の副画面生成用データが記憶されている。
モーションセンサ226は、例えば使用者Uがプローブ200を携行して移動する際に、そのプローブ200の動きを検出する。例えば、モーションセンサ226は、プローブ200の移動時に、その移動方向、加速度および姿勢等を検出する。プローブカメラ204は、例えばCCD(電荷結合素子)カメラである。
プローブ制御部220には、上記のCPUおよびメモリ、またはマイクロコンピュータに加えて、図示しないA/D変換器およびFIFOメモリが実装されている。それにより、プローブ制御部220においては、モーションセンサ226により検出されたプローブ200の動きを示す信号がデジタル信号形式のデータ(以下、「動きデータ」と呼ぶ。)に変換される。また、プローブ制御部220においては、プローブカメラ204の各画素から出力される受光信号がデジタル信号形式の複数の画素データに変換される。プローブ制御部220は、デジタル形式の動きデータおよび複数の画素データを、無線通信回路225を通して測定装置本体100に無線通信(Bluetooth(登録商標)通信)により送信する。測定装置本体100は、動きデータおよび複数の画素データを処理装置300に転送する。
三次元座標測定装置1においては、基準カメラ161に対して予め定められた関係を有する三次元座標系(以下、「装置座標系」と呼ぶ。)が予め定義されている。図4を参照して、処理装置(PC)300の本体メモリ303には、予め参照部材162の参照マーカep(ref)の相対的な位置関係が記憶されている。
前述したように、基準カメラ161は参照部材162の複数の参照マーカep(ref)を撮像する。図4に示すように、処理装置(PC)300は、通信回路301、本体制御回路302および本体メモリ303を含む。通信回路301および本体メモリ303は、本体制御回路302に接続されている。また、本体制御回路302には、本体操作部320および本体表示部310が接続され、本体表示回路302と本体表示部310との間に表示制御回路311が介在し、本体表示部310の表示は表示制御回路311によって制御される。本体制御回路302は、撮像により得られる基準画像データと、本体メモリ303に記憶されている複数の参照マーカep(ref)の位置関係とに基づいて、装置座標系における各参照マーカep(ref)の各座標を算出する。このとき、参照部材162の複数の参照マーカep(ref)の各々は、第1および第2のマーカep1、ep2(図5(b))に基づいて識別される。
その後、本体制御回路302は、算出された複数の参照マーカep(ref)の座標に基づいて、可動カメラ111の姿勢を装置座標系により示す情報を「第1の位置姿勢情報」として生成する。
三次元座標測定装置1においては、上記の装置座標系に加えて、可動カメラ111に対して予め定められた関係を有する三次元座標系(以下、「可動座標系」と呼ぶ。)が予め定義されている。また、処理装置300の本体メモリ303には、予めプローブ200の複数のプローブマーカeq(p)の相対的な位置関係が記憶されている。
可動カメラ111は、複数のプローブマーカeq(p)を撮像する。本体制御回路302は、撮像により得られる測定画像データと、本体メモリ303に記憶されている複数のマーカeqの位置関係とに基づいて、可動座標系における各プローブマーカeq(p)の各座標を算出する。
その後、本体制御回路302は、算出された複数のプローブマーカeq(p)の座標に基づいて、プローブ200の位置および姿勢を可動座標系により示す情報を「第2の位置姿勢情報」として生成する。
可動カメラ111の向きは、撮像視野がプローブ200の移動に追従する。そのため、装置座標系と可動座標系との間の関係は可動カメラ111の向きの変化に伴って変化する。
処理装置(PC)300の本体制御回路302は、第1および第2の位置姿勢情報に基づいて、プローブ200の位置および姿勢を装置座標系で表す「第3の位置姿勢情報」を生成する。すなわち、本体制御回路302は、第1の位置姿勢情報に基づいて装置座標系に対する可動座標系の相対的な関係を算出するとともに、算出された関係に基づいて第2の位置姿勢情報を装置座標系に従う情報に変換する。それにより、第3の位置姿勢情報が生成される。
その後、本体制御回路302は、生成された第3の位置姿勢情報と、本体メモリ303に記憶されたプローブ200の複数のプローブマーカeqと接触子201の中心との位置関係とに基づいて、プローブ200により指示された「測定点」の座標を算出する。また、ヘッド制御回路193は、通信回路149およびケーブルCAを介して処理装置300との間で有線通信を行う。
本体メモリ303は、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)およびハードディスクを含む。本体メモリ303には、システムプログラムとともに、後述する測定対象部分設定プログラム、測定値算出プログラム、追跡処理プログラムおよび画面表示に関するプログラムが記憶される。また、本体メモリ303は、種々のデータの処理および測定装置本体100から与えられる画素データ等の種々のデータを保存するために用いられる。さらに、本体メモリ303には、使用者Uによる三次元座標測定装置1の操作に応じて本体表示部310に表示されるべき画面を示す画面データを生成するための複数種類の主画面生成用データが記憶されている。
本体制御回路302は、CPUを含む。本実施の形態においては、本体制御回路302および本体メモリ303は、パーソナルコンピュータにより実現される。本体制御回路302は、測定装置本体100からケーブルCA(図1)および通信回路301を介して与えられる画素データに基づいて画像データを生成する。画像データは複数の画素データの集合である。
測定装置本体100の基準カメラ161、可動カメラ111および俯瞰カメラ120にそれぞれ対応する基準画像データ、測定画像データおよび俯瞰画像データが生成される。また、プローブ200に設けられる後述するプローブカメラ204に対応する画像データが生成される。本体制御回路302は、基準画像データおよび測定画像データに基づいて、画像処理及び演算処理により接触子201(図1)の接触ポイントつまり測定点の位置座標を算出する。
さらに、本体制御回路302は、本体メモリ303に記憶された複数種類の主画面生成用データに基づいて、本体表示部310に表示されるべき画面を示す画面データを生成する。本体表示部310に表示される画面の詳細は後述する。
本体表示部310は、例えば液晶ディスプレイパネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成される。本体表示部310には、本体制御回路302による制御に基づいて、測定対象物S上の測定点の座標および測定対象物Sの各部の測定結果等が表示される。また、本体表示部310には、測定に関する種々の設定を行うための設定画面が表示される。
本体操作部320は、キーボードおよびポインティングデバイスを含む。ポインティングデバイスは、マウスまたはジョイスティック等を含む。本体操作部320は、使用者Uにより操作される。
三次元座標測定装置1による測定対象物Sの寸法の基本的な測定例について説明する。図19は、処理装置(PC)300の本体表示部310(図1)に表示される画像の一例を示す図である。図20は、測定対象物Sの一例を示す図である。
図19を参照して、処理装置(PC)300の本体表示部310には、三次元座標測定装置1により測定対象物Sの寸法測定が可能な領域を仮想的に表す画像(以下、「測定領域仮想画像」と呼ぶ)VIが表示される。画像VIにおいては、平坦かつ水平な仮想上の床面FLに平行でかつ互いに直交するように装置座標系のx軸およびy軸が設定され、床面FLに対して垂直に装置座標系のz軸が設定される。
また、可動カメラ111の撮像視野と予め定められた関係にある床面の位置が装置座標系の原点Oに設定される。図19の測定領域仮想画像VIには、装置座標系の原点O、x軸、y軸およびz軸が含まれるとともに、仮想上の床面FLに対応する床面画像FLi(図19の点線部分)が含まれる。
図20の測定対象物Sは、直方体形状を有する。本例では、測定対象物Sの一方の側面Saと、その反対側の側面Sbとの間の距離が測定される。測定対象物Sの側面Sa、Sbは、それぞれx軸に対して垂直である。
図21~図25は、図20に図示した測定対象物Sについての基本的な測定例を説明するための図である。図21(a)および図23(a)は、可動カメラ111、プローブ200および測定対象物Sの位置関係を示す図であり、図21(b)および図23(b)は、プローブ200および測定対象物Sの外観斜視図である。図22、図24および図25には、処理装置(PC)300の本体表示部310に表示される測定領域仮想画像VIの例が示される。
この測定時には、使用者Uは測定対象物Sのうち測定すべき部分(測定対象部分)の位置および形状を特定する必要がある。そこで、使用者Uは、処理装置300の本体操作部(マウスなど)320(図1)またはプローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15)を操作することにより、測定対象物Sのうち測定すべき部分の形状を示す幾何形状の種類(以下、幾何要素と呼ぶ。)を選択する。幾何要素には、点、直線、平面、円、円筒および球など、工業製品に含まれる幾何要素が含まれる。
例えば、使用者Uは、測定対象物Sの一方の側面Saの形状を示す幾何要素として「平面」を選択する(幾何要素の選択操作)。その後、使用者Uは、当該側面Saを特定するために、測定対象物Sの側面Sa上で3点以上の複数の測定点を指示する(測定点の指示操作)。
具体的には、使用者Uは、図21(a)および図21(b)に示すように、プローブ200の複数のプローブマーカeq(p)が可動カメラ111に向くように、接触子201を測定対象物Sの側面Saに接触させる。その状態で、使用者Uは、プローブ操作部(プッシュ式ボタン)211(図15)を押下操作することにより、測定対象物Sと接触子201との接触位置を測定点M1aとして指示する。この場合、処理装置300の本体制御回路302(図4)において測定点M1aの座標が算出され、算出結果が本体メモリ303(図4)に記憶される。
同様にして、使用者Uは、測定対象物Sの側面Sa上の互いに異なる3つの部分を測定点M2a、M3a、M4aとして指示する。それにより、本体制御回路302において測定点M2a、M3a、M4aの座標が算出される。算出結果は本体メモリ303に記憶される。
続いて、使用者Uは、処理装置300の本体操作部(マウスなど)320(図4)またはプローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15)を操作することにより、測定点M1a~M4aを通る平面(以下、測定平面ML1と呼ぶ。)を、測定対象物Sの側面Saに対応する測定対象部分として設定する(測定対象部分の設定操作)。それにより、装置座標系における測定平面ML1の位置が算出され、算出結果が要素特定情報として本体メモリ303に記憶される。この場合、図22に示すように、測定領域仮想画像VI上に、設定された測定平面ML1を示す画像ML1iが重畳表示される。
ここで、本実施の形態では、要素特定情報は、使用者Uにより選択された幾何要素と使用者Uにより指示された測定点とに基づいて特定された測定対象物S上の測定対象部分を装置座標系で示す情報である。
続いて、使用者Uは、測定対象物Sの他方の側面Sb(図20、図21)の形状を示す幾何要素として「平面」を選択する(幾何要素の選択操作)。その後、使用者Uは、当該側面Sbを特定するために、測定対象物Sの側面Sb上で3点以上の複数の測定点を指示する(測定点の指示操作)。
具体的には、使用者Uは、図23(a)および図23(b)に示すように、プローブ200の複数のプローブマーカeq(p)が可動カメラ111に向くように、接触子201を測定対象物Sの側面Sbに接触させる。その状態で、使用者Uは、プローブ操作部(プッシュ式ボタン)211(図15)を押下操作することにより、測定対象物Sと接触子201との接触位置を測定点M1bとして指示する。この場合、本体制御回路302(図4)において測定点M1bの座標が算出され、算出結果が本体メモリ303に記憶される。
同様にして、使用者Uは、測定対象物Sの側面Sb上の互いに異なる3つの部分を測定点M2b、M3b、M4bとして指示する。それにより、本体制御回路302において測定点M2b、M3b、M4bの座標が算出される。算出結果は本体メモリ303に記憶される。
続いて、使用者Uは、処理装置(PC)300の本体操作部(マウスなど)320またはプローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15)を操作することにより、測定点M1b~M4bを通る平面(以下、測定平面ML2と呼ぶ。)を、測定対象物Sの側面Sbに対応する測定対象部分として設定する(測定対象部分の設定操作)。それにより、装置座標系における測定平面ML2の位置が算出され、算出結果が要素特定情報として本体メモリ303に記憶される。この場合、図24に示すように、測定領域仮想画像VI上に、測定平面ML1を示す画像ML1iに加えて、測定平面ML2を示す画像ML2iが重畳表示される。
使用者Uは、上記のように、測定対象物Sの測定対象部分を特定した上で、本体操作部320(マウスなど)(図4)またはタッチパネルディスプレイ210(図15)を操作することにより、どの測定対象部分についての何を測定すべきかを設定する必要がある。そこで、使用者Uは、処理装置(PC)300の本体操作部(マウスなど)320またはプローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15)を操作することにより、測定対象物Sについての測定項目の種類を選択するとともに(測定項目の選択操作)、当該測定項目の値を得るために必要な測定対象部分のいずれかを選択する(測定対象部分の選択操作)。なお、測定項目の種類には、距離の他、角度等の種々の物理量が含まれる。
次に、使用者Uは、測定項目の種類として距離を選択する。また、使用者Uは、その距離がどこの距離であるのかを規定するための測定対象部分として2つの測定平面ML1、ML2を選択する。
測定項目及び測定対象部分が選択されることにより、本体メモリ303に記憶された要素特定情報を用いた測定項目の演算が行われる。本例では、選択された2つの測定対象部分(測定平面ML1、ML2)の間の距離が算出される。算出結果は測定結果として本体メモリ303(図4)に記憶される。
このとき、図25に示すように、測定結果が測定領域仮想画像VI上に表示される。なお、測定結果は、測定領域仮想画像VIとは別個に本体表示部310(図4)に表示されてもよい。また、2つの測定平面ML1、ML2間の距離の演算方法等は、使用者Uにより適宜設定可能であってもよい。
上記の例では、4つの測定点に基づいて1つの平面が測定対象部分として設定されるが、最少で3つの測定点に基づいて、1つの平面を測定対象部分として設定することができる。一方、1つの平面を設定するために4つ以上の測定点が指示される場合には、測定対象部分として設定される平面の平面度を求めることもできる。
また、上記の例では、2つの測定平面ML1、ML2が測定対象部分として設定された後、測定項目の種類として距離が選択されるが、測定項目の種類として距離に代えて角度が選択されてもよい。この場合、測定平面ML1、ML2の間の距離に代えて測定平面ML1、ML2のなす角度が測定される。
次に、処理装置300の本体表示部310(図4)およびプローブ200のタッチパネルディスプレイ210の画面表示例を説明する。上記のように、使用者Uは、測定対象物Sの測定時に、幾何要素の選択操作、測定点の指示操作、幾何要素および測定点に基づく測定対象部分の設定操作、測定項目の選択操作、および測定対象部分の選択操作を行う。
また、三次元座標測定装置1によれば、使用者Uは、測定対象物Sの所望の部分について、所望の幾何公差を測定することも可能である。この場合、使用者Uは、複数種類の幾何公差のうち所望の幾何公差を選択する。それにより、使用者により指示された複数の測定点から特定される測定対象部分について、選択された種類の幾何公差が算出される。幾何公差は、測定対象物S上で一又は複数の測定点により特定された測定対象部分の形状が幾何的に正しい形状からどれだけ狂っているのかを表す。すなわち、幾何公差は、正しい幾何形状に対する測定対象部分の形状の狂いの程度を表す。このように、使用者Uは、幾何公差の測定を行う際には、幾何公差の選択操作を行う。
図26は、処理装置(PC)300の本体メモリ303(図4)およびプローブ200のプローブメモリ224(図18)にそれぞれ記憶される主画面生成用データおよび副画面生成用データと使用者Uによる三次元座標測定装置1の操作との関係を示す図である。
図26に示すように、処理装置(PC)300の本体メモリ303には、複数種類の主画面生成用データとして第1~第4の主画面生成用データが記憶されている。また、プローブメモリ224には、複数種類の副画面生成用データとして第1~第4の副画面生成用データが記憶されている。第1~第4の主画面生成用データおよび第1~第4の副画面生成用データの各々は、本体表示部310またはプローブ200のタッチパネルディスプレイ210に表示されるべき画面の背景を示す背景画像データ、背景画像上の一部領域に予め定められたアイコンを表示させるためのデータ、背景画像上の一部領域が操作されることにより実行すべき処理を示すデータ、および背景画像上の他の領域に本体制御回路302(図4)において算出された各種測定結果を表示させるためのデータ等を含む。
処理装置(PC)300の第1の主画面生成用データおよび第1の副画面生成用データは、幾何要素の選択操作および測定項目の選択操作に対応付けられている。これにより、本体制御回路302(図4)は、幾何要素の選択操作および測定項目の選択操作を受け付けるための待機時に、第1の主画面生成用データに基づいて本体表示部310に表示されるべき画面を示す第1の主画面データを生成する。また、プローブ制御部220(図18)は、本体制御回路302の第1の主画面データの生成に同期して、第1の副画面生成用データに基づいてプローブ200のタッチパネルディスプレイ210に表示されるべき画面を示す第1の副画面データを生成する。以下の説明では、第1の主画面データにより本体表示部310上に表示される画面を「第1の主画面」と呼び、第1の副画面データによりプローブ200のタッチパネルディスプレイ210上に表示される画面を「第1の副画面」と呼ぶ。
プローブ200の第2の主画面生成用データおよび第2の副画面生成用データは、測定点の指示操作および測定対象部分の設定操作に対応付けられている。これにより、本体制御回路302(図4)は、測定点の指示操作および測定対象部分の設定操作を受け付けるための待機時に、第2の主画面生成用データに基づいて本体表示部310に表示されるべき画面を示す第2の主画面データを生成する。また、プローブ制御部220(図18)は、本体制御回路302の第2の主画面データの生成に同期して、第2の副画面生成用データに基づいてタッチパネルディスプレイ210に表示されるべき画面を示す第2の副画面データを生成する。以下の説明では、第2の主画面データにより本体表示部310上に表示される画面を「第2の主画面」と呼び、第2の副画面データによりプローブ200のタッチパネルディスプレイ210上に表示される画面を「第2の副画面」と呼ぶ。
第3の主画面生成用データおよび第3の副画面生成用データは、測定対象部分の選択操作に対応付けられている。これにより、本体制御回路302(図4)は、測定対象部分の選択操作を受け付けるための待機時に、第3の主画面生成用データに基づいて本体表示部310に表示されるべき画面を示す第3の主画面データを生成する。また、プローブ制御部220(図18)は、本体制御回路302の第3の主画面データの生成に同期して、第3の副画面生成用データに基づいてタッチパネルディスプレイ210に表示されるべき画面を示す第3の副画面データを生成する。以下の説明では、第3の主画面データにより本体表示部310上に表示される画面を「第3の主画面」と呼び、第3の副画面データによりプローブ200のタッチパネルディスプレイ210上に表示される画面を「第3の副画面」と呼ぶ。
第4の主画面生成用データおよび第4の副画面生成用データは、幾何公差の選択操作に対応付けられている。これにより、本体制御回路302(図4)は、幾何公差の選択操作を受け付けるための待機時に、第4の主画面生成用データに基づいて本体表示部310に表示されるべき画面を示す第4の主画面データを生成する。また、プローブ制御部220(図18)は、本体制御回路302の第4の主画面データの生成に同期して、第4の副画面生成用データに基づいてタッチパネルディスプレイ210(図15、図18)に表示されるべき画面を示す第4の副画面データを生成する。以下の説明では、第4の主画面データにより本体表示部310上に表示される画面を「第4の主画面」と呼び、第4の副画面データによりプローブ200のタッチパネルディスプレイ210上に表示される画面を「第4の副画面」と呼ぶ。
三次元座標測定装置1においては、使用者Uは、処理装置(PC)300の本体操作部(マウスなど)320(図4)またはプローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15)を用いて、幾何要素の選択操作、測定対象部分の設定操作、測定項目の選択操作、測定対象部分の選択操作および幾何公差の選択操作を行う。また、使用者Uは、プローブ200のプローブ操作部(プッシュ式ボタン)211を用いて、測定点の指示操作を行う。
図27は、幾何要素および測定項目の選択操作時に本体表示部310(図4)およびプローブ200のタッチパネルディスプレイ210に表示される第1の主画面および第1の副画面の表示例を示す図である。図27を参照して、第1の主画面sc01および後述する第2~第4の主画面sc02~sc04(図28~図30)においては、本体表示部310の表示領域が、測定状態表示領域311、結果表示領域312および操作表示領域313に分割されている。
測定状態表示領域311は、上記の測定領域仮想画像VIを表示する領域である。測定領域仮想画像VIには、可動カメラ111を用いてプローブ200が撮像されることにより算出されるプローブ200の位置および姿勢が仮想的に重畳表示される。結果表示領域312は、主として測定結果を表示する領域である。そのため、図27(a)の第1の主画面sc01では、結果表示領域312に情報は表示されていない。操作表示領域313は、使用者により操作されるべきアイコン、ボタンおよび入力欄のうち少なくとも1つを表示する領域である。
図27(a)では、第1の主画面sc01の全体の表示例とともに、第1の主画面sc01における操作表示領域313の拡大図が示される。第1の主画面sc01の操作表示領域313には、太い点線の枠内に示されるように、予め定められた複数の測定項目にそれぞれ対応する複数(本例では2個)の項目アイコンi01が表示される。本例の2個の項目アイコンi01は、測定項目「距離」および「角度」にそれぞれ対応する。
また、第1の主画面sc01の操作表示領域313には、太い一点鎖線の枠内に示されるように、予め定められた複数の幾何要素にそれぞれ対応する複数の(本例では19個)の要素アイコンi02が表示される。複数の要素アイコンi02には、幾何要素「平面」、「直線」、「円」、「点」、「円筒」、「円錐」および「球」にそれぞれ対応する7個の要素アイコンi02が含まれる。以下の説明では、これらの7個の要素アイコンi02をそれぞれ「基本要素アイコン」と呼ぶ。
さらに、複数の要素アイコンi02には、幾何要素「角丸長方形」、「楕円」、「四角形」、「段差円筒」、「トーラス」、「中点」、「交点」、「接線」、「中線」、「交線」、「交円」および「中面」にそれぞれ対応する12個の要素アイコンi02が含まれる。以下の説明では、基本要素アイコンを除く他の全ての要素アイコンi02をそれぞれ「特殊要素アイコン」と呼ぶ。
上記の例に示されるように、特殊要素アイコンには、例えば「交線」、「交円」および「中面」のように複数の幾何要素の位置関係から特定される幾何要素が含まれる。
使用者Uは、幾何要素の選択操作として、処理装置(PC)300の本体操作部320(図4)により複数の要素アイコンi02から所望の要素アイコンi02を選択することができる。また、使用者Uは、測定項目の選択操作として、本体操作部320により複数の項目アイコンi01から所望の項目アイコンi01を選択することができる。
第1の主画面sc01の操作表示領域313には、さらに、幾何公差ボタンb01が表示されている。幾何公差ボタンb01は、幾何公差の選択操作を受け付けるように三次元座標測定装置1の状態を変更するためのボタンである。使用者Uは、本体表示部310に第1の主画面sc01が表示された状態で、幾何公差の選択操作を行いたい場合に、本体操作部320により幾何公差ボタンb01を操作することができる。
図27(b)に示すように、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210の第1の副画面sc11には、図27(b)の太い点線の枠内に示されるように、複数の測定項目にそれぞれ対応する複数(本例では2個)の項目アイコンi11が表示される。本例の2個の項目アイコンi11は、第1の主画面sc01に表示される2個の項目アイコンi01と同様に、測定項目「距離」および「角度」にそれぞれ対応する。
また、プローブ200の第1の副画面sc11には、図27(b)の太い一点鎖線の枠内に示されるように、複数の幾何要素にそれぞれ対応する複数の(本例では7個)の要素アイコンi12が表示される。本例の7個の要素アイコンi12は、第1の主画面sc01に表示される7個の基本要素アイコンと同様に、幾何要素「平面」、「直線」、「円」、「点」、「円筒」、「円錐」および「球」にそれぞれ対応する。しかしながら、第1の副画面sc11には、第1の主画面sc01に表示される12個の特殊要素アイコンに対応する要素アイコンが表示されない。
使用者Uは、幾何要素の選択操作として、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15)により複数の要素アイコンi12から所望の要素アイコンi12を選択することができる。また、使用者Uは、測定項目の選択操作として、タッチパネルディスプレイ210により複数の項目アイコンi11から所望の項目アイコンi11を選択することができる。
第1の副画面sc11には、さらに、幾何公差ボタンb11が表示されている。処理装置300側の第1の主画面sc01の例と同様に、使用者Uは、タッチパネルディスプレイ210に第1の副画面sc11が表示された状態で、幾何公差の選択操作を行いたい場合に、当該タッチパネルディスプレイ210上で幾何公差ボタンb11を操作することができる。
第1の主画面sc01および第1の副画面sc11に表示される複数の要素アイコンi02、i12のいずれかが選択されると、三次元座標測定装置1は、測定点の指示操作および測定対象部分の設定操作を受け付けるための待機状態となる。それにより、本体表示部310に表示される第1の主画面sc01が第2の主画面に切り替わるとともに、タッチパネルディスプレイ210に表示される第1の副画面sc11が第2の副画面に切り替わる。
図28は、測定点の指示操作時および測定対象部分の設定操作時に本体表示部310(図4)およびプローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15)に表示される第2の主画面および第2の副画面の表示例を示す図である。本例では、測定対象部分を設定するための幾何要素として「平面」が選択されているものとする。
図28(a)では、処理装置(PC)300の第2の主画面sc02の全体の表示例とともに、第2の主画面sc02における操作表示領域313の拡大図が示される。第2の主画面sc02の操作表示領域313には、設定されるべき測定対象部分の名称を入力するための名称入力欄f01が表示される。第1の主画面sc01から第2の主画面sc02への切り替わり時点で、名称入力欄f01には、予め定められた方法に従って仮に決定された測定対象部分の名称が表示される。ここで、使用者Uは、名称入力欄f01に表示される名称を維持することもできるし、本体操作部320により所望の名称に変更することもできる。本例では、名称入力欄f01に「平面1」が入力されている。
また、第2の主画面sc02の操作表示領域313には、撮像ボタンb09が表示される。使用者Uは、撮像ボタンb09を操作することにより、プローブ200に設けられたプローブカメラ204(図16、図18)による撮像を行うことができる。この撮像により生成される画像データは、測定結果とともに本体メモリ303(図4)に記憶される。
また、第2の主画面sc02の操作表示領域313には、測定点座標表示欄f02が表示される。測定点座標表示欄f02は、測定点の指示操作により取得される測定点の座標を順次表示するための表示欄である。本例では、測定対象物S上の特定の平面を測定対象部分として設定するために4つの測定点が指定されている。それにより、4つの測定点の座標が測定点座標表示欄f02に表示されている。
また、第2の主画面sc02の操作表示領域313には、指示された複数の測定点の座標とともに、それらの複数の測定点に基づいて得られる情報として、複数の測定点の座標から算出される平面度が表示される。
第2の主画面sc02の操作表示領域313には、さらに、戻るボタンb02、OKボタンb03およびキャンセルボタンb04が表示されている。戻るボタンb02は、測定対象部分の設定を行うことなく、幾何要素および測定項目の選択操作を受け付けるように三次元座標測定装置1の状態を戻すためのボタンである。OKボタンb03は、特定対象部分の設定を行うための全ての測定点の指定が完了したことを三次元座標測定装置1に指令するためのボタンである。OKボタンb03が操作されることにより、直前に選択された幾何要素と測定点の指示操作により取得された一又は複数の測定点とに基づいて特定対象部分の設定が行われる。キャンセルボタンb04は、直前の測定点の指示操作により取得された測定点の情報を削除するためのボタンである。
図28(b)に示すように、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210の第2の副画面sc12には、第2の主画面sc02に表示される撮像ボタンb09、戻るボタンb02、OKボタンb03およびキャンセルボタンb04にそれぞれ対応する撮像ボタンb19、戻るボタンb12、OKボタンb13およびキャンセルボタンb14が表示される。
なお、プローブ200の第2の副画面sc12には、測定対象部分の名称を入力するための名称入力欄f01は表示されない。そのため、プローブ200において測定対象部分の設定が行われる場合には、その設定ごとに、予め定められた方法に従って測定対象部分の名称が決定される。
また、第2の副画面sc12には、上記の各種ボタンに加えて、特定対象部分の設定を行うために、測定点の指示操作が開始されてから現在までに指示された測定点の点数が表示される。本例では、4番目の測定点が指示されたことが示される。さらに、第2の副画面sc12には、指示された複数の測定点の座標とともに、それらの複数の測定点に基づいて得られる情報として、複数の測定点の座標から算出される平面度が表示される。
第2の主画面sc02および第2の副画面sc12のいずれかにより特定対象部分が設定されると、本体表示部310に表示される第2の主画面sc02が第1の主画面sc01に切り替わるとともに、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210に表示される第2の副画面sc12が第1の副画面sc11に切り替わる。
一又は複数の特定対象部分が設定された後、図27の第1の主画面sc01および第1の副画面sc11に表示される複数の項目アイコンi01、i11のいずれかが選択されると、三次元座標測定装置1は測定対象部分の選択操作を受け付けるための待機状態となる。それにより、本体表示部310に表示される第1の主画面sc01が第3の主画面に切り替わるとともに、タッチパネルディスプレイ210に表示される第1の副画面sc11が第3の副画面に切り替わる。
図29は、測定対象部分の選択操作時に処理装置(PC)300の本体表示部310(図4)およびプローブ200のタッチパネルディスプレイ210に表示される第3の主画面および第3の副画面の表示例を示す図である。本例では、測定項目として「距離」が選択されているものとする。また、本例では、測定対象部分として予め「平面1」および「平面2」が設定されているものとする。
図29(a)では、処理装置(PC)300の第3の主画面sc03の全体の表示例とともに、第3の主画面sc03における操作表示領域313の拡大図が示される。また、主測定画面sc03における結果表示領域312の一部拡大図が示される。
第3の主測定画面sc03の操作表示領域313には、プルダウンメニューm01、m02、設計値入力欄f03、上限値入力欄f04および下限値入力欄f05が表示される。
プルダウンメニューm01、m02は、測定項目として選択された「距離」を得るために必要な測定対象部分を選択するために使用者により操作される。本例では、距離を算出するための2つの測定対象部分として「平面1」および「平面2」が選択されている。
ここで、使用者Uは、「平面1」および「平面2」間の距離について、予め定められた設計値を設計値入力欄f03に入力することができる。さらに、使用者Uは、その設計値に対する公差(以下、設計公差と呼ぶ。)の上限値および下限値を上限値入力欄f04および下限値入力欄f05にそれぞれ入力することができる。これにより、設計公差が設定される。
処理装置(PC)300の第3の主画面sc03の操作表示領域313には、さらに、戻るボタンb05および保存ボタンb06が表示されている。戻るボタンb05は、幾何要素および測定項目の選択操作を受け付けるように三次元座標測定装置1の状態を戻すためのボタンである。保存ボタンb06は、測定対象部分が選択されることにより算出される測定項目の値(本例では距離)等を本体メモリ303に記憶させるためのボタンである。
上記のように処理装置(PC)300の、操作表示領域313上で測定対象部分が選択されることにより、第3の主画面sc03の結果表示領域312には、選択された測定項目および測定対象部分に基づいて算出された各種情報が測定結果として表示される。
図29(a)の処理装置(PC)300の第3の主画面sc03の結果表示領域312には、太い点線の枠内に示すように、プルダウンメニューm01、m02で選択された「平面1」および「平面2」間の距離に対応する測定対象物Sの測定値が表示される。また、図29(a)の太い実線の枠内に示すように、測定値が、操作表示領域313の設計値入力欄f03、上限値入力欄f04および下限値入力欄f05を用いて設定された設計公差の範囲内にあるか否かの判定結果が表示される。さらに、図29(a)の太い一点鎖線の枠内に示すように、測定された距離に関して装置座標系の3方向にそれぞれ対応する成分(長さ)が表示される。
また、結果表示領域312には、測定結果に関連する情報として、図29(a)の太い二点鎖線の枠内に示すように、選択された測定対象部分の「平面1」および「平面2」についての平面度が表示される。
図29(b)に示すように、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210の第3の副画面sc13には、第3の主画面sc03に表示されるプルダウンメニューm01、m02、戻るボタンb05および保存ボタンb06にそれぞれ対応するプルダウンメニューm11、m12、戻るボタンb15および保存ボタンb16が表示される。
プローブ200の第3の副画面sc13においては、プルダウンメニューm11、m12による測定対象部分の選択が行われることにより、選択された測定対象部分から算出される測定対象物Sの測定値が表示される。
処理装置(PC)300の第3の主画面sc03および第3の副画面sc13のいずれかにより測定対象物Sの測定値が本体メモリ303(図4)に記憶されると、本体表示部310に表示される第3の主画面sc03が第1の主画面sc01に切り替わるとともに、タッチパネルディスプレイ210に表示される第3の主画面sc03が第1の副画面sc11に切り替わる。
図27の第1の主画面sc01および第1の副画面sc11に表示される幾何公差ボタンb01、b11のいずれかが操作されると、三次元座標測定装置1は、幾何公差の選択操作を受け付けるための待機状態となる。それにより、本体表示部310に表示される第1の主画面sc01が第4の主画面に切り替わるとともに、タッチパネルディスプレイ210に表示される第1の副画面sc11が第4の副画面に切り替わる。
図30は、幾何公差の選択操作時に本体表示部310(図4)およびタッチパネルディスプレイ210(図15、図18)に表示される第4の主画面および第4の副画面の表示例を示す図である。
図30(a)では、処理装置(PC)300の第4の主画面sc04の全体の表示例とともに、第4の主画面sc04における操作表示領域313の拡大図が示される。図30(a)に示すように、幾何公差の選択操作時には、第4の主画面sc04の操作表示領域313に、複数の幾何公差にそれぞれ対応する複数(本例では11個)の幾何公差アイコンi03が表示される。本例の11個の幾何公差アイコンi03は、幾何公差「平面度」、「真円度」、「真直度」、「円筒度」、「平行度」、「垂直度」、「傾斜度」、「位置度」、「同心度」、「同軸度」および「対称度」にそれぞれ対応する。使用者Uは、本体操作部320(図4)を操作することにより、複数の幾何公差アイコンi03から所望の幾何公差アイコンi03を選択することができる。
第4の主画面sc04の操作表示領域313には、さらに、戻るボタンb07が表示されている。戻るボタンb07は、幾何要素および測定項目の選択操作を受け付けるように三次元座標測定装置1の状態を戻すためのボタンである。
図30(b)に示すように、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210の第4の副画面sc14には、複数の幾何公差にそれぞれ対応する複数(本例では4個)の幾何公差アイコンi13が表示されるとともに、戻るボタンb17が表示される。本例の4個の幾何公差アイコンi13は、第4の主画面sc04に表示される11個の幾何公差アイコンi03のうち4個の幾何公差アイコンi03にそれぞれ対応する。また、本例の戻るボタンb17は、第4の主画面sc04に表示される戻るボタンb07に対応する。
使用者Uは、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15、図18)を操作することにより、複数の幾何公差アイコンi13から所望の幾何公差アイコンi13を選択することができる。
使用者Uは、幾何公差を選択すると、選択した幾何公差に対応する幾何要素の測定対象部分を設定する必要がある。したがって、第4の主画面sc04および第4の副画面sc14に表示される複数の幾何公差アイコンi03、i13のいずれかが選択されると、三次元座標測定装置1は測定対象部分の選択操作を受け付けるための待機状態となる。
それにより、処理装置(PC)300の本体表示部310に表示される画面が第1の主画面sc01から第2の主画面sc02に切り替わるとともに、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210に表示される画面が第1の副画面sc11から第2の副画面sc12に切り替わる。この場合、選択された幾何公差に対応する測定対象部分が設定されることにより、設定された測定対象部分についての幾何公差が算出される。算出された幾何公差が、第2の主画面sc02および第2の副画面sc12にそれぞれ表示される。
例えば、幾何公差として「平面度」が選択されると、測定対象物Sにおける平面部分が測定対象部分として設定されることにより、設定された測定対象部分についての平面度が算出される。
上記のように、処理装置(PC)300の第1の主画面sc01によれば、使用者Uは、三次元座標測定装置1において予め定められた全ての測定項目および幾何要素から所望の測定項目および幾何要素を選択することが可能である。一方、第1の副画面sc11によれば、使用者Uは、処理装置(PC)300および本体表示部310から離間した位置で予め定められた複数の測定項目および幾何要素のうち一部の測定項目および幾何要素から所望の測定項目および幾何要素を選択することが可能である。
また、第2の主画面sc02によれば、使用者Uは、自己が指定する測定点について詳細な情報を確認しつつ測定点の指示操作を行うことができる。一方、第2の副画面sc12によれば、使用者Uは、処理装置300および本体表示部310から離間した位置でプローブ200を用いた測定点の指示操作を行うことができる。ここで、第2の副画面sc12には、使用者Uにより指示される一又は複数の測定点について算出可能な物理量が代表情報として表示されることが好ましい。上記の例では、複数の測定点により算出される平面度が代表情報として表示される。この場合、使用者Uは、第2の副画面sc12に表示される代表情報に基づいて、測定点の指示操作に大きな誤りがないか否かを容易に確認することができる。
また、第3の主画面sc03によれば、使用者Uは、測定対象物Sの測定に関して、測定結果とともに当該測定により算出される多数の情報を把握することができる。一方、第3の副画面sc13によれば、使用者Uは、処理装置300(PC)から離間した位置で測定結果を把握することができる。したがって、使用者Uは、測定対象物Sの測定に関して優先的に把握したい情報に応じて測定中に視認すべき表示部(本体表示部310およびタッチパネルディスプレイ210)を使い分けることができる。
また、第4の主画面sc04によれば、使用者Uは、三次元座標測定装置1において予め定められた全ての幾何公差から所望の幾何公差を選択することが可能である。一方、第4の副画面sc14によれば、使用者Uは、処理装置300および本体表示部310から離間した位置で予め定められた複数の幾何公差のうち一部の幾何公差から所望の幾何公差を選択することが可能である。
これらの点を考慮して、使用者Uは、例えば処理装置300から大きく離間した位置に設けられた測定対象物Sの各部の寸法を測定する際に、以下に示すように三次元座標測定装置1を使用することができる。
例えば、使用者Uは、測定対象物Sの近傍位置で、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210に表示される第1の副画面sc11上の所望の要素アイコンi02を操作する。また、使用者Uは、第2の副画面sc12を視認しつつ一又は複数の測定点の指示を行う。それにより、測定対象物Sの各部の寸法測定に有用と考えられる複数の測定対象部分を設定する。
その後、使用者Uは、測定対象物Sの近傍位置から処理装置(PC)300の設置位置まで移動する。その上で、使用者Uは、本体表示部310に表示される第1の主画面sc01上の所望の項目アイコンi01を操作する。また、使用者Uは、第2の主画面sc02を視認しつつ測定対象部分の選択操作および設計公差の設定を行う。それにより、使用者Uは、プローブ200を手放した状態で、設定済みの複数の測定対象部分に基づいて、測定対象物Sの各部の寸法を順次測定することができる。
上記の使用方法によれば、使用者Uは、幾何要素の選択時に所望の幾何要素に対応する要素アイコンi12がプローブ200のタッチパネルディスプレイ210に表示されない場合にのみ、測定対象物Sと処理装置300との間の移動を行うことになる。したがって、使用者Uは、特殊要素アイコンに対応する比較的複雑な寸法測定を行う場合にのみ、本体表示部310に表示される第1の主画面sc01および第2の主画面sc02を視認しつつ本体操作部320を操作すればよい。
次に、測定対象部分設定処理および測定値算出処理を説明する。図31は、処理装置(PC)300の本体制御回路302(図4)による測定対象部分設定処理の流れを示すフローチャートである。測定対象部分設定処理は、本体制御回路302(図4)のCPUが本体メモリ303に記憶された測定対象部分設定プログラムを実行することにより所定周期で繰り返して行われる。また、測定対象部分設定処理の開始時には、本体制御回路302に内蔵されたタイマがリセットされるとともにスタートされる。
まず、処理装置(PC)300の本体制御回路302は、使用者Uによる本体操作部(マウスなど)320(図4)またはプローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15、図18)の操作の有無に基づいて、幾何要素の選択が行われたか否かを判定する(ステップS11)。
幾何要素の選択が行われた場合、本体制御回路302は、測定点座標算出処理を行う(ステップS12)。測定点座標算出処理の詳細は後述する。この処理により、本体制御回路302は、使用者によるプローブ200の操作に基づいて、選択された幾何要素を特定するための測定点の座標を算出する。
また、本体制御回路302は、ステップS12の測定点座標算出処理により算出される測定点の座標を本体メモリ303に記憶させる(ステップS13)。
次に、本体制御回路302は、測定対象部分の設定を完了すべき指令を受けたか否かを判定する(ステップS14)。この判定は、例えば使用者Uによる本体操作部320またはタッチパネルディスプレイ210の操作の有無に基づいて行われる。上記の例では、図28のOKボタンb03、b13のいずれかが操作された場合に、測定対象部分の設定を完了すべき指令を受けたことが判定される。
測定対象部分の設定を完了すべき指令を受けない場合、本体制御回路302は、上記のステップS12の処理に戻る。一方、測定対象部分の設定を完了すべき指令を受けると、本体制御回路302は、選択された幾何要素および一又は複数の測定点の座標から測定対象部分を特定し、当該測定対象部分の要素特定情報を生成する(ステップS15)。生成された要素特定情報は本体メモリ303に記憶される。その後、測定対象部分設定処理が終了する。
上記のステップS11において幾何要素の選択が行われない場合、本体制御回路302は、内蔵のタイマによる計測時間に基づいて、当該測定対象部分設定処理が開始された後予め定められた時間が経過したか否かを判定する(ステップS16)。
予め定められた時間が経過していない場合、本体制御回路302は、ステップS11の処理に戻る。一方、予め定められた時間が経過した場合、本体制御回路302は、ステップS12の処理と同様に、後述する測定点座標算出処理を行う(ステップS17)。その後、本体制御回路302は、測定対象部分設定処理を終了する。
なお、ステップS17の処理は、例えば後述する追跡処理においてプローブ200が可動カメラ11一又は俯瞰カメラ120の撮像視野内にあるか否かを判定するために行われる。
図32は、測定点座標算出処理の流れを示すフローチャートである。測定点の座標を求める処理は、使用者Uがプローブ200の操作部(プッシュ式ボタン)211(図15)を押し下げる操作を行うことによって開始される。プローブ操作部(プッシュ式ボタン)211の押し下げ情報を測定装置本体100が受け付けると、ステップS101からステップS102に進んで測定装置本体100から無線通信回路143より電波通信を使ってプローブ200に精測定発光トリガが発行される。この精測定発光トリガは、測定点座標算出処理において、プローブマーカeq(p)の発光と可動カメラ111の撮像とを同期させる同期信号の機能を有している。プローブ200は、この精測定発行トリガを受信すると(S103)、所定のプログラムに従って、プローブマーカeq(p)が発光する(S104)。また、測定装置本体100側では、可動カメラ111の撮像が実行される(S105)。また、測定装置本体100の内部では、基準カメラ161による参照マーカep(ref)の撮像が実行される(S106)。
以後の処理の概要を説明すると、本体制御回路302は、ヘッド制御回路193により基準カメラ161を用いて参照部材162の複数の参照マーカep(ref)を撮像させることにより「基準画像データ」を生成する。また、本体制御回路302は、生成された基準画像データに基づいて、可動カメラ111の位置および姿勢を装置座標系により示す「第1の位置姿勢情報」を生成する。
本体制御回路302は、更に、可動カメラ111を用いてプローブ200の複数のプローブマーカeq(p)を撮像することにより「測定画像データ」を生成する。また、本体制御回路302は、生成された測定画像データに基づいて、プローブ200の位置および姿勢を可動座標系により示す「第2の位置姿勢情報」を生成する。
その後、本体制御回路302(図4)は、第1および第2の位置姿勢情報に基づいて、プローブ200の位置および姿勢を装置座標系で表す「第3の位置姿勢情報」を生成する。また、本体制御回路302は、生成された第3の位置姿勢情報に基づいてプローブ200により指示された測定点の座標を算出する。
図32の上述したステップS104ないしS106つまりプローブマーカeq(p)の発光及び可動カメラ111の撮像、参照マーカep(ref)の発光及び基準カメラ161の撮像は、ほぼ同期して実行される。図33は、可動カメラ111の撮像、プローブマーカeq(p)の発光、基準カメラ161の撮像、参照マーカep(ref)の発光に関するタイムチャートである。図33を参照して、測定装置本体100は、電波無線であるBluetooth(登録商標)通信により精測定発光トリガをプローブ200に発行すると同時に、この精測定発光トリガは内部配線を通じて基準カメラ161及び参照部材162に転送する。
測定プログラムは、可動カメラ111の撮像タイミングとプローブマーカeq(p)の発光タイミングとの間及び基準カメラ161の撮像タイミングと参照マーカep(ref)の発光タイミングとの間を同期させるように設定されている。これらを同期させることにより、プローブマーカeq(p)の発光及び参照マーカep(ref)の発光に伴うエネルギ消費を必要最小限に抑えて発熱を極力抑えることができる。特にプローブマーカeq(p)の電力消費を抑えることでバッテリ222の消費電力を低減させることができる。また、参照マーカep(ref)の発光を必要最小限に抑えることにより、発熱による上述した問題つまり基準カメラ161や可動カメラ111での検出誤差の発生を抑えることができる。
測定処理において、プローブマーカeq(p)の発光を伴う可動カメラ111の撮像及び参照マーカep(ref)の発光を伴う基準カメラ161の撮像は複数回実行される。図33に例示する実施例では、8回反復して実行される。すなわち、図32のステップS105では、プローブマーカeq(p)が8回、所定時間毎に間欠的に発光し、これに同期して可動カメラ111が8回、プローブマーカeq(p)を撮像する(図33の(a))。可動カメラ111が撮像した画像を「第1画像」と呼ぶ。また、ステップS106では参照マーカep(ref)が8回、所定時間毎に間欠的に発光し、これに同期して基準カメラ161が8回、参照マーカep(ref)を撮像する(図33の(b))。基準カメラ161が撮像した画像を「第2画像」と呼ぶ。
次のステップS107では、第1画像に含まれるプローブマーカeq(p)に基づいてプローブ200の位置姿勢を算出する。この処理は、複数回の画像積算という画像処理と、これにより求められた測定値の平均化するという演算処理とによって行われる。図33の(a)を参照して、可動カメラ111による第1回目のNo.1撮像画像と第2回目のNo.2撮像画像の画像積算が行われ、この積算画像から第1回目のNo.1測定値が算出される。次に、第3回目のNo.3撮像画像と第4回目のNo.4撮像画像の画像積算が行われ、この積算画像から第2回目のNo.2測定値が算出される。以後、同様にして、第3回目、第4回目のNo.3、No.4測定値が算出される。そして、このNo.1測定値ないしNo.4測定値を平均化することによりプローブ200の位置姿勢が求められる。この結果得られたプローブ200の位置姿勢に基づいて上述した第2の位置姿勢情報が生成される。
次のステップS108では、第2画像の参照マーカep(ref)に基づいて可動カメラ111の位置姿勢を算出する。この処理は、基準カメラ161が撮像した8枚の画像を上述したように画像積算して、この積算画像に基づいて可動カメラ111の位置姿勢の算出が行われる。換言すれば、平均化処理は行われない。図33の(a)を参照して、可動カメラ111による第1回目のNo.1撮像画像ないし第8回目のNo.8撮像画像を取得し、これらNo.1ないしNo.8の8枚の撮像画像を画像積算して得た積算画像から可動カメラ111の位置姿勢が求められる。この結果得られた可動カメラ111の位置姿勢に基づいて上述した第1位置姿勢情報が生成される。
プローブ200は使用者Uが手で把持しているため、手振れの問題が発生する。また、プローブ200のプローブマーカeq(p)の数は参照マーカep(ref)に比べて僅かである。他方、参照部材162は前述したように第2サブフレームF(S2)に固定されていることから、手振れの問題はない。しかし、参照マーカep(ref)の数は多い。仮に、ステップS108において、ステップS107(基準カメラ111の画像処理)と同様に画像積算を繰り返し、各積算画像から測定値を求めるとしたら、その処理に伴う負担は大きい。また、参照部材162手振れの問題がないため、基準カメラ161が獲得する8枚の画像は安定している。このことから、プローブ200の位置姿勢を求める際の画像積算の回数を少なくし且つ平均化処理を省いくことで可動カメラ111の位置姿勢を求める際の画像処理及び演算処理の負担を軽減することができる。
図32に戻って、ステップS109において、使用者Uが選択した幾何要素(図31のステップS11)と第1、第2の位置姿勢情報に基づいてプローブ200が指し示す指示位置つまり測定点に対応する三次元座標が求められる。算出した座標は「測定点」として本体メモリ303(図4)に記憶される。
また、ステップS111において、プローブ操作部211に含まれる測定を完了させるためのプッシュ式ボタンの押し下げ操作の有無が判別される。この一連の処理により求めた測定点の座標は、後に説明する測定要素の算出(S113)、幾何的特徴量の算出(S114)に用いられる。測定要素の算出及び幾何的特徴量の算出は後に説明する。これらの処理が終わると、次に使用者Uがプローブ200の操作部(プッシュ式ボタン)211を押し下げるまで待機状態になる。この待機状態の間、後に説明するトラッキング処理(ステップS38(図35))が所定時間毎に行われ、プローブ200の動きに追従して可動カメラ111の向きが調整される。
なお、上記のステップS105とS106の処理及びステップS107とS108の処理は、逆の順に行われてもよい。
図34は、本体制御回路302による測定値算出処理の流れを示すフローチャートである。測定値算出処理は、図4を参照して、本体制御回路302(図4)のCPUが本体メモリ303に記憶された測定値算出プログラムを実行することにより所定周期で繰り返して行われる。
まず、本体制御回路302は、使用者Uによる本体操作部(マウスなど)320(図4)またはプローブ200のタッチパネルディスプレイ210の操作の有無に基づいて、測定項目の選択が行われたか否かを判定する(ステップS21)。
測定項目の選択が行われない場合、本体制御回路302は、ステップS21の処理を繰り返す。一方、測定項目の選択が行われた場合、本体制御回路302は、現時点で設定済みの測定対象部分が本体メモリ303に記憶されているか否かを判定する(ステップS22)。
本体制御回路302(図4)は、設定済みの測定対象部分が本体メモリ303に存在しない場合に、ステップS21の処理に戻る。一方、本体制御回路302は、設定済みの測定対象部分が本体メモリ303に存在する場合に、使用者Uにより設定済みのいずれかの測定対象部分が選択されたか否かを判定する(ステップS23)。
本体制御回路302は、測定対象部分が選択されない場合、ステップS23の処理を繰り返す。一方、本体制御回路302は、測定対象部分が選択された場合、選択された測定項目と選択された測定対象部分の要素特定情報とに基づいて測定値の算出を行い(ステップS24)、測定値算出処理を終了する。
上記の測定対象部分設定処理および測定値算出処理によれば、使用者Uは、予め定められた複数の幾何要素および予め定められた複数の測定項目から所望の幾何要素および測定項目を選択することにより、測定対象物Sにおける所望の部分の寸法等を容易に測定することができる。
次にプローブ200の追跡処理を説明する。図35は、処理装置(PC)300の本体制御回路302(図4)による追跡処理の流れを示すフローチャートである。追跡処理は、本体制御回路302(図4)のCPUが本体メモリ303に記憶された追跡処理プログラムを実行することにより所定周期で繰り返して行われる。
まず、処理装置(PC)300の本体制御回路302は、プローブ200が可動カメラ111の撮像視野内にあるか否かを判定する(ステップS31)。この判定は、測定対象部分設定処理におけるステップS12、S17の処理中に生成される測定画像データに、複数のプローブマーカeq(p)(図16)に対応する画像データが含まれているか否かを判定することにより行われる。
プローブ200が可動カメラ111の撮像視野内にある場合、本体制御回路302は、後述するステップS38のトラッキング処理に進む。一方、プローブ200が可動カメラ111の撮像視野内にない場合、本体制御回路302は、プローブ200が俯瞰カメラ120の撮像視野内にあるか否かを判定する(ステップS32)。この判定は、上記の測定対象部分設定処理におけるステップS12、S17の処理中に生成される俯瞰画像データに、複数のプローブマーカeq(p)に対応する画像データが含まれているか否かを判定することにより行われる。
プローブ200が俯瞰カメラ120の撮像視野内にある場合、本体制御回路302(図4)は、後述するステップS37の処理に進む。一方、プローブ200が可動カメラ111の撮像視野内にない場合、本体制御回路302は、プローブ200から転送される動きデータに基づいてプローブ200の座標推定を行うことが可能か否かを判定する(ステップS33)。この判定は、例えば動きデータが異常な値を示しているか否かまたは動きデータの示す値が「0」であるか否か等に基づいて行われる。動きデータが異常な値を示す場合、または動きデータが「0」である場合、プローブ200の座標推定は不可能である。
プローブ200の座標推定が可能である場合、本体制御回路302は、動きデータに基づいてプローブ200の位置を推定する。また、本体制御回路302は、プローブ200が可動カメラ111の撮像視野内に位置するように、可動カメラ111の位置および姿勢の調整を指令する(ステップS34)。その後、本体制御回路302は、ステップS31の処理に戻る。
ここで、使用者Uは、処理装置(PC)300の本体操作部(マウスなど)320(図4)またはプローブ200のタッチパネルディスプレイ210(図15、図18)を操作することにより、本体制御回路302にプローブ200の探索を指令することができる。
そこで、ステップS33において、プローブ200の座標推定が不可能である場合、本体制御回路302(図4)は、プローブ200の探索指令を受けたか否かを判定する(ステップS35)。プローブ200の探索指令を受けない場合、本体制御回路302は、ステップS31の処理に戻る。一方、プローブ200の探索指令を受けた場合、本体制御回路302は、測定装置本体100の第1サブ部材としての回転支持部材102を回転するように、ヘッド制御回路193に指令する。このようにして、本体制御回路302は、俯瞰カメラ120によるプローブ200の探索を行う(ステップS36)。
その後、処理装置(PC)300の本体制御回路302は、プローブ200が俯瞰カメラ120の撮像視野内に位置することになると、俯瞰画像データに基づいてプローブ200の位置を算出する。また、本体制御回路302は、プローブ200が可動カメラ111の撮像視野内に位置するように可動カメラ111の位置および姿勢の調整をヘッド制御回路193に指令する(ステップS37)。
次に、本体制御回路302は、プローブ200が可動カメラ111の撮像視野内に位置することになると、プローブ200の複数のマーカeqの重心が可動カメラ111の撮像視野の略中心に位置するように可動カメラ111の位置および姿勢の調整をヘッド制御回路193に指令するトラッキング処理が実行される(ステップS38)。
トラッキング処理は、可動カメラ111の撮像画像に基づいてプローブ200の位置を監視し、撮像画像のほぼ中心にプローブ200が位置するように可動カメラ111の向きを調整する機能を実行させる処理である。変形例として、使用者Uの操作、例えばプローブ200にトラッキング開始ボタンを用意し、このトラッキング開始ボタンを使用者Uが操作したときにトラッキング処理を開始するようにしてもよい。
図36は、トラッキング処理の具体的な手順の一例を説明するためのフローチャートである。図36を参照して、使用者Uがプローブ200の操作部(プッシュ式ボタン)211(図15)を押し下げる操作を行っていないことを確認する(S301)。仮に、使用者Uが操作部(プッシュ式ボタン)211を操作したときには、図32を参照して前述した測定点座標算出処理が実行される。使用者Uがプローブ200の操作部(プッシュ式ボタン)211(図15)を押し下げる操作を行わない時間が一定時間経過するとステップS302からステップS303に進む。ステップS303ないしS310は、原理的には、図32のステップS102ないしS109に対応している。このことから、前述したS303ないしS310との違いを以下に説明する。
ステップS303は、図32のステップS102に対応している。トラッキング処理では、プローブ操作部(プッシュ式ボタン)211が操作されないとき、所定時間毎に光通信によって装置本体100からプローブ200に粗測定発光トリガが発行される。この粗測定発光トリガは、トラッキング処理において、プローブマーカeq(p)の発光と可動カメラ111の撮像とを同期させる同期信号の機能を有している。このトリガの発行に光通信を使うことでプローブマーカeq(p)の発光タイミングと可動カメラ111の撮像タイミングとの同期性を確保するのが容易である。
図37、図38は、同期性確保の難易に関し、光通信と電波通信との違いを説明するための図である。図37は、光通信に関するタイムチャートである。光通信は、その特性として、指向性が高く情報転送に要する時間は正確である。このことから、測定装置本体100がプローブ200に向けて発光トリガを送信するタイミングからプローブ200が発光トリガを受け取る時間は一定である。したがって、可動カメラ111の撮像タイミングとプローブマーカeq(p)の発光タイミングとを同期させるには、次の設定を行えばよい。測定装置本体100内部で発光トリガを発光するタイミングから可動カメラ111が撮像するタイミングまでの第1の時間t1と、プローブ200が発光トリガを受け取ったタイミングからプローブマーカeq(p)を発光させるタイミングまでの第2の時間t2との関係に関し、上記同期性が確保できるように第1、第2の時間t1、t2を設定する。これにより、可動カメラ111の撮像とプローブマーカeq(p)の発光とを厳格に同期させることができる。
図38は、電波通信に関するタイムチャートである。電波通信は、その特性として、情報転送に要する時間は不定である。したがって、上記第1、第2の時間t3、t4を設定しても、測定装置本体100がプローブ200に向けて発光トリガを送信するタイミングからプローブ200が発光トリガを受け取る時間が不定であるため、可動カメラ111の撮像とプローブマーカeq(p)の発光とを厳格に同期させることが難しい。したがって、光通信ではなくて電波通信を使って発光トリガを発行する場合には、図38において、(1)~(4)で図示するように、プローブマーカeq(p)の発光時間を延長して、可動カメラ111の撮像に備える必要がある。
図37に図示の光通信の場合と、図38に図示の電波通信の場合とを比較すると直ちに分かるように、光通信(図37)を採用したときには、プローブマーカeq(p)の発光時間を短縮できる。このことは、プローブマーカeq(p)の発光に要する電力を削減できることを意味している。したがって、プローブ200が内蔵するバッテリ222の消費電力を削減できる。実施例では、上述したように、トラッキング処理における粗測定発光トリガの転送に光通信が用いられ、測定処理での精測定発光トリガの転送には電波無線通信(Bluetooth(登録商標)通信)が用いられているが、この精測定発光トリガの転送も光通信で行うようにしてもよいのは勿論である。
図36のフローチャートに戻って、ステップS306は、図32のステップS105に対応している。また、ステップS307は、図32のステップS107に対応している。図39はトラッキング処理での撮像及びマーカ発行の回数を説明するための図である。図39から分かるように、トラッキング処理においては、可動カメラ111の撮像は一回であり、この撮像に同期してプローブマーカeq(p)が一回発光する。この一回は例示であり、複数回であってもよいが、トラッキング処理ではプローブマーカ200の厳格な位置姿勢を求めることが必要ないことから、可動カメラ111の撮像及びこの撮像に同期してプローブマーカeq(p)が発光する回数は、測定処理での回数よりも少なくてよく、好ましくは一回である。
ステップS307は、図32のステップS106に対応している。基準カメラ161による参照マーカep(ref)の撮像は1回である。
ステップS310は、図32のステップS109に対応している。ステップS310において、プローブ200が指し示す指示位置(測定点)に対応する座標の算出が終わると、次のステップS311に進んで、測定点の座標がリミット位置であるか否かの判定が行われる。この判定は、画像処理により、プローブマーカeq(p)の重心位置が可動カメラ111が撮像した画像のほぼ中心に位置するか否かによって判定される。ステップS311において、「No」であれば、ステップS312に進んで、可動カメラ111の向きを調整する制御が実行され、ステップS303に戻って再度、ステップS303ないしS310の処理が行われてプローブ200の位置姿勢の検出が行われる。そして、ステップS311において、YESの判定であれば、つまりプローブマーカeq(p)の重心位置が、可動カメラ111の撮像画像のほぼ中心に位置していれば、ステップS313に進んでプローブ200の追跡処理を終了して、ステップS302に戻って一定時間が経過するまで待機状態になる。したがって、トラッキング処理は、使用者Uがプローブ操作部(プローブボタン)211を操作しない限り、一定時間毎に実行され続ける。
上記の追跡処理及びトラッキング処理によれば、プローブ200が移動する場合でも、可動カメラ111の撮像視野がプローブ200の複数のマーカeqに追従する。それにより、使用者Uは、可動カメラ111の撮像視野を手動で調整する必要がない。したがって、煩雑な調整作業を要することなく広い範囲で測定対象物Sの所望の測定点の座標を測定することが可能になる。
次にプローブカメラ204(図16、図18)の使用例を説明する。接触子201が位置するプローブ200の先端面に設けられたプローブカメラ204は、これによって測定対象物Sを撮像することにより、測定対象物Sの画像を本体表示部310(図4)に表示させることができる。以下、プローブカメラ204により得られる画像を撮像画像と呼ぶ。
プローブ200の複数のプローブマーカeq(p)とプローブ200のプローブカメラ204との位置関係、およびプローブカメラ204の特性(画角およびディストーション等)は、例えば本体メモリ303(図4)に撮像情報として予め記憶される。そのため、複数のプローブマーカeq(p)が可動カメラ111の撮像視野内にある場合、プローブカメラ204により撮像される領域が本体制御回路302(図4)により認識される。すなわち、撮像画像に対応する3次元空間が本体制御回路302により認識される。この場合、本体表示部310に撮像画像を表示させつつ、測定対象物Sの測定時に設定された幾何要素および測定項目を重畳表示させることができる。
なお、撮像画像は、プローブ200のタッチパネルディスプレイ210に表示されてもよい。例えば、ある測定対象物Sについて、測定すべき部分をプローブカメラ204で予め撮像することにより得られた撮像画像をタッチパネルディスプレイ210に表示させる。この場合、使用者Uは、当該撮像画像を視認しつつプローブ200を操作することにより、他の測定対象物Sについてもその測定すべき部分を容易に識別することが可能になる。
画面表示に関する機能的な構成を図40に図示のブロック図で説明する処理装置(PC)300の本体制御回路302は、本体表示部310(図4)およびプローブ表示部231に表示される画面を制御するための機能的な構成として、主設定画面生成部351、主幾何公差画面生成部352、主測定画面生成部353、座標算出部354、主受付部355、測定部356および同期表示制御部357を含む。本体制御回路302のCPUが、例えば本体メモリ303(図4)に記憶された画面表示に関するプログラムを実行することにより、上記の各機能部の構成が実現される。なお、上記の構成の一部または全てが電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
主設定画面生成部351は、第1の主画面生成用データに基づいて予め定められた複数の測定項目および予め定められた複数の幾何要素を含む第1の主画面sc01(図27(a))の画面データを生成し、本体表示部310に第1の主画面sc01を表示させる。また、主設定画面生成部351は、第2の主画面生成用データに基づいて第2の主画面sc02(図28(a))の画面データを生成し、本体表示部310に第2の主画面sc02を表示させる。
主幾何公差画面生成部352は、第4の主画面生成用データに基づいて予め定められた複数の幾何公差を含む第4の主画面sc04(図30)の画面データを生成し、本体表示部310に第4の主画面sc04を表示させる。
座標算出部354は、使用者によるプローブ200の操作に基づいて指示された測定対象物S上の測定点の座標を算出する。この処理は、図31のステップS12、S17の測定点座標算出処理に相当する。
処理装置(PC)300の主受付部355は、使用者による本体操作部320の操作に基づいて第1の主画面sc01において選択された幾何要素および測定項目を受け付けるとともに、第2の主画面sc02において選択された測定対象部分を受け付ける。主受付部355は、受け付けた幾何要素、測定項目および測定対象部分を本体メモリ303(図4)に記憶させることにより、幾何要素、測定項目および測定対象部分の設定を行う。
さらに、主受付部355は、使用者による本体操作部320の操作に基づいて第4の主画面sc04において選択された幾何公差を受け付ける。主受付部355は、受け付けた幾何公差を本体メモリ303に記憶させることにより、幾何公差の設定を行う。
測定部356は、幾何要素および測定項目の選択があった場合に、本体メモリ303(図4)またはプローブ200のプローブメモリ224に設定された幾何要素および測定項目と座標算出部354により算出された一又は複数の測定点の座標とに基づいて、選択された測定項目の値を算出する。より具体的には、測定部356は、選択された幾何要素と測定点の座標とに基づいて一又は複数の測定対象部分の設定を行う。その後、測定部356は、選択された測定項目と選択された設定済みの測定対象部分とに基づいて、選択された測定項目の値を算出する。この処理は、上記の測定値算出処理に相当する。また、測定部356は、幾何公差が選択された場合には、その幾何公差の選択後に座標算出部354により算出された一又は複数の測定点の座標に基づいて当該幾何公差を算出する。
ここで、測定部356は、幾何要素の選択時および測定項目の選択時に予め定められた情報を算出してもよい。例えば、測定部356は、測定項目として「距離」が選択された場合に、測定された距離に関して装置座標系の3方向にそれぞれ対応する成分(長さ)をさらに算出してもよい。また、測定部356は、幾何要素として「平面」が選択された場合に、複数の測定点により特定される測定対象物S上の平面について平面度を算出するとともに、当該平面の法線ベクトル等を算出してもよい。
主測定画面生成部353は、第3の主画面生成用データに基づいて、測定部356によって算出された測定対象物Sについての測定結果を含む第3の主画面sc03(図29(a))の画面データを生成し、本体表示部310に第3の主画面sc03を表示させる。同期表示制御部357の機能については後述する。
プローブ200のプローブ制御部220は、本体表示部310およびプローブ表示部231に表示される画面を制御するための機能的な構成として、副設定画面生成部251、副幾何公差画面生成部252、副測定画面生成部253および副受付部254を含む。プローブ制御部220のCPUが、例えばプローブメモリ224に記憶された画面表示に関するプログラムを実行することにより、上記の各機能部の構成が実現される。なお、上記の構成の一部または全てが電子回路等のハードウェアにより実現されてもよい。
副設定画面生成部251は、第1の副画面生成用データに基づいて第1の主画面sc01に表示される複数の測定項目および複数の幾何要素のうち一部を含む第1の副画面sc11(図27(b))の画面データを生成する。また、副設定画面生成部251は、生成した画面データに基づいてプローブ表示部231に第1の副画面sc11を表示させる。また、副設定画面生成部251は、第2の副画面生成用データに基づいて第2の副画面sc12(図28(b))の画面データを生成し、本体表示部310に第2の副画面sc12を表示させる。
副幾何公差画面生成部252は、第4の主画面sc04に表示される複数の幾何公差のうち一部を含む第4の副画面sc14(図30(b))の画面データを生成する。また、副幾何公差画面生成部252は、生成した画面データに基づいてプローブ表示部231に第4の副画面sc14を表示させる。
副測定画面生成部253は、第3の主画面sc03に表示される一又は複数の測定結果のうち少なくとも一部を含む第3の副画面sc13(図29(b))の画面データを生成する。また、副測定画面生成部253は、生成した画面データに基づいてプローブ表示部231に第3の副画面sc13を表示させる。
副受付部254は、使用者によるタッチパネル232の操作に基づいて第1の副画面sc11において選択された幾何要素および測定項目を受け付けるとともに、第2の副画面sc12において選択された測定対象部分を受け付ける。副受付部254は、受け付けた幾何要素、測定項目および測定対象部分をプローブメモリ224に記憶させることにより、幾何要素、測定項目および測定対象部分の設定を行う。
さらに、副受付部254は、使用者によるタッチパネル232の操作に基づいて第4の副画面sc14において選択された幾何公差を受け付ける。副受付部254は、受け付けた幾何公差をプローブメモリ224に記憶させることにより、幾何公差の設定を行う。
ここで、処理装置(PC)300の主受付部355は、プローブ200の副受付部254において幾何要素、測定項目および測定対象部分が受け付けられた場合に、副受付部254において受け付けられた幾何要素、測定項目および測定対象部分を受け付ける。また、副受付部254は、主受付部355において副受付部254により受付可能な幾何要素、測定項目および測定対象部分が受け付けられた場合に、主受付部355において受け付けられた幾何要素、測定項目および測定対象部分を受け付ける。これにより、主受付部355と副受付部254との間で、受け付けられる設定に相違が生じることが低減される。
上記の同期表示制御部357は、本体表示部310に第1の主画面sc01が表示されるとともにプローブ表示部231に第1の副画面sc11が表示されるように、主設定画面生成部351および副設定画面生成部251間で同期制御を行う(図27(a)、(b)参照)。
また、同期表示制御部357は、本体表示部310に第2の主画面sc02が表示されるとともにプローブ表示部231に第2の副画面sc12が表示されるように、主設定画面生成部351および副設定画面生成部251間で同期制御を行う(図28(a)、(b)参照)。
また、同期表示制御部357は、本体表示部310に第3の主画面sc03が表示されるとともにプローブ表示部231に第3の副画面sc13が表示されるように、主測定画面生成部353および副測定画面生成部253間で同期制御を行う(図29(a)、(b)参照)。
さらに、同期表示制御部357は、本体表示部310に第4の主画面sc04が表示されるとともにプローブ表示部231に第4の副画面sc14が表示されるように、主幾何公差画面生成部352および副幾何公差画面生成部252間で同期制御を行う(図30(a)、(b)参照)。
この場合、使用者Uは、処理装置(PC)300の本体表示部310に表示される画面およびタッチパネルディスプレイ210に表示される画面のうち一方を視認することにより、測定条件の設定作業および測定作業にそれぞれ応じた情報を適切に把握することができる。
三次元座標測定装置1においては、処理装置(PC)300の本体表示部310に第1の主画面sc01が表示される。第1の主画面sc01は、予め定められた複数の測定項目および予め定められた複数の幾何要素をそれぞれ表すアイコン(項目アイコンi01および要素アイコンi02)を含む。第1の主画面sc01において選択されたアイコンに対応する幾何要素および測定項目が主受付部355により受け付けられる。
また、タッチパネルディスプレイ210に第1の副画面sc11が表示される。第1の副画面sc11は、第1の主画面sc01に含まれる複数の測定項目および複数の幾何要素のうち一部をそれぞれ表すアイコン(項目アイコンi11および要素アイコンi12)を含む。第1の副画面sc11において選択されたアイコンに対応する幾何要素および測定項目が副受付部254により受け付けられる。
主受付部355および副受付部254のうち少なくとも一方において受け付けられた幾何要素および測定項目と、プローブ200により指示されて算出される一又は複数の測定点の座標とに基づいて、選択された幾何要素に関する選択された測定項目の値が算出される。
上記の構成によれば、使用者は第1の主画面sc01において予め定められた複数の幾何要素および測定項目から所望の幾何要素および測定項目を選択することができる。
一方、使用者は第1の副画面sc11において予め定められた複数の幾何要素および測定項目のうちの一部から所望の幾何要素および測定項目を選択することができる。ここで、タッチパネルディスプレイ210は、プローブ200を介して使用者Uにより携行可能に構成されている。それにより、使用者Uは、第1の副画面sc11に表示される幾何要素および測定項目を選択する場合には、プローブ200による測定点の指定作業と幾何要素および測定項目の選択作業とを異なる位置で行う必要がない。したがって、測定に関する設定作業を容易かつ短時間で行うことが可能になる。
このように、使用者Uは、設定対象となる測定項目および幾何要素に応じて、測定対象物Sの測定の設定に用いる画面を第1の主画面sc01と第1の副画面sc11との間で使い分けることができる。したがって、測定条件の設定に関して高い利便性を有する三次元座標測定装置1が実現される。
以上、本発明の好ましい実施例を説明した。上記の実施例では、測距光学系部材110として可動カメラ111が採用されているが、前述したように、特許文献1に開示の固定カメラを採用した三次元座標測定装置にも本発明を適用することができる。このことから、特許文献1(JP特開2015-194452号公報)を援用することにより、特許文献1に開示の内容を本明細書に組み込む。本発明に含まれる他の変形例を以下に説明する。
(1)実施例の三次元座標測定装置1においては、第1の主画面sc01に表示される項目アイコンi01の数と第1の副画面sc11に表示される項目アイコンi11の数とが一致しているが、プローブ200側の第1の副画面sc11に表示される項目アイコンi11や要素アイコンi12は、処理装置(PC)300側の第1の主画面sc01に表示される項目アイコンi01や要素アイコンi02の数よりも少なくてもよい。プローブ200における最小限の設定作業に不可欠な項目アイコンi11や要素アイコンi12に限定してもよい。
(2)実施例の三次元座標測定装置1に含まれるプローブ200においては、タッチパネルディスプレイ210がプローブケーシング240に一体的に設けられているが、タッチパネルディスプレイ210をプローブケーシング240から着脱可能であってもよい。
(3)プローブ200のディスプレイとしてタッチパネル232が用いられているが、タッチパネル232に代えて、プローブ表示部231上に表示される画面上で各種操作を行うための他のポインティングデバイス(トラックボールまたはジョイスティック等)を採用してもよい。