〔混注装置の基本構成〕
[混注装置1]
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る混注装置1は、混注制御装置100、薬品装填部200、及び混注処理部300を備える。混注装置1では、混注制御装置100により混注処理部300が制御されることにより、注射器で、調製データに示された薬品(例:抗がん剤)を既定量の薬品が収容された薬品容器から吸引し、当該注射器から輸液容器に当該薬品を注入する混注処理が実行される。薬品容器としては、一又は複数のアンプル又はバイアル等の容器が挙げられる。また、混注処理の他の例には、注射器で薬品容器から薬品を吸引して他の薬品容器に注入する処理、又は注射器で輸液容器から薬品を吸引して他の薬品容器に注入する処理等も含まれる。すなわち、輸液容器に収容されている食塩水(生理用食塩水)又はブドウ糖を含む液体も混注処理の対象となる薬品の一例である。
なお、上記調製データは、処方データに基づいて生成される調製用のデータ又は処方データそのものである。例えば、処方データには、処方箋交付年月日、患者ID、患者名、患者生年月日、薬品情報(薬品コード、薬品名及び用量等)、剤形情報(内服又は外用等)、用法情報(1日3回毎食後等)、診療種別(外来又は入院等)、診療科、病棟、及び病室等が含まれる。また、調製データには、患者情報、医師情報、薬品情報、薬品の処方量、薬品容器の種類(薬液入りアンプル、薬液入りバイアル、又は粉薬入りバイアル等)、調製内容情報(混注処理に使用する薬品容器、注射器、注射針の種類、及び本数等)、及び調製手順情報(作業内容、溶解薬、溶媒、溶解薬量、溶媒量、及び抜取量等)、調製日、処方箋区分、投薬日、診療科、病棟、及び調製時間等が含まれる。
[混注制御装置100]
図1に示すように、混注制御装置100は、通信可能に接続された第1制御部400及び第2制御部500を備える。なお、本実施形態で説明する第1制御部400及び第2制御部500各々の処理分担は一例に過ぎず、混注処理の各処理手順は第1制御部400及び第2制御部500のいずれかによって実行されればよい。
第1制御部400は、混注装置1に調製データを入力する電子カルテシステム又は調剤管理システム等の上位システム(不図示)との間で通信可能である。また、第1制御部400は、薬品装填部200のディスプレイ203、バーコードリーダ204、及び空気清浄装置205(図2の(a)及び(b)参照)と通信可能に接続され、当該部材を制御する。
第1制御部400は、例えば、ユーザの入力操作に基づき、上位システムから調製データを読み出し、調製データと、バーコードリーダ204で読み取った処方箋データとの照合を行う。
第2制御部500は、混注処理部300に設けられた第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、及びトレイ搬送部110等などの各種部材と通信可能に接続され、当該部材を制御する。
また、混注制御装置100の記憶部(不図示)には、例えば注射針マスター、薬品マスター、患者マスター、医師マスター、処方箋区分マスター、診療科マスター、及び病棟マスター等の各種データベースが記憶されている。注射針マスターには、注射針の種類ごとに注射針の針先の形状が記憶されている。針先の形状には、注射針の針管の外径、尖端の角度、及びカット面(傾斜面)の長さ等が含まれる。また、薬品マスターには、薬品コード、薬品名、JANコード(又はRSS)、薬瓶コード、区分(剤形:散薬、錠剤、水剤又は外用薬等)、比重、薬品種(普通薬、抗がん剤、毒薬、麻薬、劇薬、抗精神薬、又は治療薬等)、配合変化、賦形薬品、注意事項、薬品容器の種別(アンプル又はバイアル等)、薬品容器単位の薬品の収容量(既定量)、及び薬品容器の重量等の情報が含まれる。
[薬品装填部200]
図2の(a)及び(b)に示すように、薬品装填部200は、扉201、作業テーブル202、ディスプレイ203、バーコードリーダ204、及び空気清浄装置205を備えるクリーンベンチである。なお、図2の(b)に示すように、薬品装填部200と混注処理部300とは、混注処理部300の側面に形成されたトレイ挿入口114により連通されている。
ディスプレイ203は、第1制御部400からの制御指示に応じて各種の情報(例:混注装置1における混注対象の候補となる調製データ)を表示させる。バーコードリーダ204は、処方箋又は調製指示書等に記載されたバーコードを読み取って、バーコードの内容(例:処方箋データ)を第1制御部400に入力する。空気清浄装置205は、薬品装填部200内に所定のフィルタを通じて空気を供給する。
扉201は、薬品装填部200の前面に設けられており、鉛直上下方向に開閉可能である。ユーザは、図2の(a)に示すように、扉201を少し開いて手を薬品装填部200内に入れた状態で、混注装置1により実行される混注処理の準備作業を行う。例えば、ユーザは、作業テーブル202上に載置されたトレイ101の所定の位置に、薬品容器10、注射器11を構成し得る各部材、及び輸液容器12を載置し、トレイ101を混注処理部300に装填する。薬品容器10等がセットされたトレイ101は、トレイ挿入口114を通じて混注処理部300に供給される。
なお、トレイ101は、器材載置部102(図5の(a)参照)と、輸液容器載置部103(図5の(a)参照)とを有する。器材載置部102には、(1)薬品容器10と、(2)注射器11を構成し得るシリンジ11a、プランジャ11b、注射針11c、及びキャップと、が載置される。輸液容器載置部103には、輸液容器12が載置される。また、トレイ101には、例えば、トレイ101の識別情報が記憶されたICタグ(不図示)が設けられている。
注射器11は、少なくともシリンジ11a及びプランジャ11bを備える。必要に応じて、シリンジ11aに注射針11cが取り付けられる。この場合、注射針11cが取り付けられた状態のものを注射器11と称する。つまり、この場合、注射器11は、シリンジ11a、プランジャ11b及び注射針11cを備えることになる。例えば、輸液容器12に薬品を注入する処理、輸液容器12から液体を取り除く処理、これらの処理を行うための輸液容器12の混注口と注射針11cとの相対的配置関係を調整する処理、又は、輸液容器12から取り除いた液体を所定領域へ排出する処理を行うときには、シリンジ11aに注射針11cが取り付けられている。また、必要に応じて、シリンジ11aに取り付けられた注射針11cに、キャップが取り付けられる。この場合、キャップが取り付けられた状態のものを注射器11と称する。つまり、この場合、注射器11は、シリンジ11a、プランジャ11b、注射針11c及びキャップを備えることになる。例えば、使用済の注射針11cを廃棄するときには、シリンジ11aに取り付けられた注射針11cに、キャップが取り付けられている。
[混注処理部300]
図2に示すように、混注処理部300の前面には、主として、主扉301、注射器取出扉302、ゴミ収容室扉13、タッチパネルモニタ14、及びトレイ排出口15が設けられている。
主扉301は、例えば混注処理部300に設けられた混注処理室104内の清掃等を行うときに、混注処理室104内にアクセスするために開閉される。注射器取出扉302は、混注処理室104から注射器11を取り出すときに開閉される。ゴミ収容室扉13は、混注処理室104における混注処理で使用された後の薬品容器10及び注射器11等の廃棄物が収容されるゴミ収容室13aから廃棄物を除去するために開閉される。タッチパネルモニタ14は、第2制御部500からの制御指示に応じて各種の情報(例:後述の各種カメラにより撮影される画像)を表示させる。トレイ排出口15は、混注処理室104における混注処理により薬品が注入された後の輸液容器12が載置されたトレイ101を取り出すために開閉される。
[混注処理室104]
図2の(b)及び図3の(a)に示すように、主として、混注処理室104には、第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、アンプルカッター31、攪拌装置32、載置棚33、薬品読取部34、秤量計35、針曲り検知部36、混注連通口37、針挿入確認透明窓38、及びゴミ蓋132が設けられている。さらに、図3の(b)に示すように、混注処理室104の天井側には、主として、トレイ確認カメラ41、注射器確認カメラ42、注射針着脱装置43、及び針挿入確認カメラ44が設けられている。
[第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22]
第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22は、多関節構造を有する駆動部であり、混注処理室104の天井側に基端部を固定して垂下状に設けられている。混注装置1では、双腕型の第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22により混注処理における各作業工程が実行される。
具体的に、第2制御部500は、第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22の各関節に設けられた駆動モータを個別に駆動させ、第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22に混注処理における各作業を実行させる。なお、混注処理部300は、混注処理を実行することができる構造であれば、例えば1本のロボットアームを有する構成、3本以上のロボットアームを含む構成、又はロボットアームを用いない構成であっても構わない。
図3の(b)に示すように、第1ロボットアーム21は、その先端部に、薬品容器10及び注射器11等の器材を保持することが可能な保持部25を備える。第1ロボットアーム21は、保持部25を予め定められた可動範囲内において任意の位置に移動させることが可能である。第2ロボットアーム22は、その先端部に、薬品容器10及び注射器11等の器材を保持することが可能であると共に、注射器11による薬品の吸引及び注入の操作を実行することが可能な保持部26を備える。第2ロボットアーム22は、保持部26を予め定められた可動範囲内において任意の位置に移動させることが可能である。
図4の(a)は、第2ロボットアーム22の保持部26の構成例を示す。保持部26は、注射器保持部261、プランジャ保持部262及び移動部263を備える。注射器保持部261は、注射器11のシリンジ11aを保持する一対の把持爪261aを備えている。一対の把持爪261aは、駆動機構により、相互に近接及び離間してシリンジ11aを保持及び解放する把持部である。一対の把持爪261aには、互いに対向する対向面に、把持爪261aの上端面から対向面へ向けて下り傾斜する傾斜部261bが形成されている。
プランジャ保持部262は、注射器11のプランジャ11bの鍔部を保持する一対の把持爪262aを備えている。一対の把持爪262aは、駆動機構と同様の機構により、相互に近接及び離間してプランジャ11bの鍔部を保持及び解放する把持部である。把持爪262aのそれぞれの上面には、把持爪262bが固定されている。把持爪262bのそれぞれは、一対の把持爪262aを近接及び離間させることで近接及び離間し、注射器11だけではなく薬品容器10等の他の器材を把持する把持部である。
移動部263は、駆動機構により、プランジャ保持部262をプランジャ11bの移動方向に移動させることが可能である。
[トレイ搬送部110]
混注処理部300には、トレイ挿入口114(図3の(b)参照)から供給されるトレイ101を、トレイ搬送終端部110a(図3の(b)参照)まで搬送するトレイ搬送部110が設けられている。
図5の(a)は、トレイ搬送部110におけるトレイ101の搬送経路の一例を示す平面模式図である。なお、トレイ搬送部110内は混注処理室104内よりも陽圧に設定されている。図5の(a)に示すように、トレイ搬送部110は、トレイ101を、混注処理室104の下方であってゴミ蓋132の下に位置するゴミ収容室13aの後方側を通過させて搬送するように設けられている。これにより、混注装置1の正面側からゴミ収容室13aにアクセスすることができる。
トレイ搬送部110には、トレイ101のICタグから情報を読み取り可能なICリーダ101c及びICリーダ15aが設けられている。ICリーダ101cは、トレイ挿入口114からトレイ101が装填されるトレイ搬送開始部110bに設けられており、ICリーダ15aは、トレイ101がトレイ排出口15から排出されるトレイ搬送終端部110aに設けられている。
第2制御部500は、トレイ101がトレイ挿入口114からトレイ搬送開始部110bに挿入されたことを不図示のセンサの出力に基づいて判断すると、ICリーダ101cによりトレイ101のICタグから情報を読み取る。また、第2制御部500は、トレイ101がトレイ搬送終端部110aに挿入されたことを不図示のセンサの出力に基づいて判断すると、ICリーダ15aによりトレイ101のICタグから情報を読み取る。第2制御部500は、ICリーダ101c及びICリーダ15aによる読取結果に応じてトレイ101の適否等を判断するトレイ照合処理等を実行する。
また、第2制御部500は、トレイ101がトレイ挿入口114を通ってトレイ搬送部110内の所定位置に達したことを、例えばセンサの出力に基づいて判断すると、トレイ搬送部110及び混注処理室104を連通及び遮蔽させるシャッタ111を水平方向にスライドさせる。シャッタ111が開けられると、器材載置部102が混注処理室104内に露出される。
トレイ搬送部110には、図5の(b)に示すように、トレイ挿入口114を通ってトレイ搬送部110内に移動されたトレイ101における器材載置部102を昇降させるトレイ昇降部112が設けられている。トレイ昇降部112は、例えば昇降可能に設けられた4本のシャフト112aの上下方向の駆動により、器材載置部102を下から上方に持ち上げる。
第2制御部500は、トレイ昇降部112によって器材載置部102を上昇させた後、トレイ確認カメラ41による撮影を行う。トレイ確認カメラ41は、器材載置部102に載置された薬品容器10、及び注射器11(少なくとも、シリンジ11a、プランジャ11b及び注射針11c)等を上方から撮影する。第2制御部500は、トレイ確認カメラ41の撮影画像を用いて画像認識処理を実行し、調製データで示されている数の薬品容器10及び注射器11等が器材載置部102上に存在しているかどうか等の判断を行う。
また、図5の(b)に示すように、トレイ搬送終端部110aには、輸液容器載置部103を昇降させる容器昇降部113が設けられている。第2制御部500は、トレイ101を容器昇降部113の前まで搬送させた後、容器昇降部113のフック部113aを、輸液容器載置部103に設けられた係合穴部(不図示)に引っかける。第2制御部500は、フック部113aが形成された円弧ギア部113bを上昇させることにより、輸液容器載置部103を上昇させ、輸液容器12の混注口を混注連通口37に位置させる。また、第2制御部500は、モータ113cを制御することにより、容器昇降部113を駆動させて輸液容器載置部103を傾斜させ、輸液容器12の混注口を上向き又は下向きにすることができる。
また、図3の(b)に示すように、トレイ搬送終端部110aの上方には、トレイ搬送終端部110aに搬送された輸液容器12を照明するドーム型ライト120及び輸液用カメラ121が設けられている。輸液用カメラ121は、ドーム型ライト120内の中心部に設けられ、輸液容器12の表面に付されているバーコードを読み取る。これにより、第2制御部500は、輸液用カメラ121により読み取られたバーコードの情報に従って輸液容器12の適否を判断する。
[アンプルカッター31]
アンプルカッター31は、アンプルの頭部を切断するものである。
[撹拌装置32]
攪拌装置32は、例えば薬品容器10を軸方向に回転させることにより、薬品容器10内の薬品を攪拌する。これにより、例えば、粉薬(散薬)等の溶解が必要な薬品がバイアルに収容されている場合に、バイアル内に薬品又は輸液容器12に含まれる液体等を注入して、粉薬等の薬品を溶解させ、輸液容器12に注入するための混合薬品を生成できる。
[載置棚33]
図3の(a)に示すように、載置棚33は、混注装置1において実行される混注処理において薬品容器10及び注射器11等を仮置きするために用いられる。載置棚33は、第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22の双方がアクセス可能な位置に設けられている。
[薬品読取部34]
薬品読取部34は、薬品容器10に貼付されたラベルに記載され、収容された薬品の薬品情報を示すバーコードを読み取る。
[秤量計35]
秤量計35は、混注装置1において実行される混注処理において注射器11の重量を測定するために用いられ、秤量計35による測定結果は第2制御部500に入力される。秤量計35は、第2ロボットアーム22の可動範囲内に配置されており、第2ロボットアーム22により載置された注射器11の重量を測定する。
[針曲り検知部36]
針曲り検知部36は、注射器11の注射針11cの針曲り量及び向きを検知するためのものである。図4の(b)に示すように、針曲り検知部36には、注射器11の注射針11cを挿入して移動させることが可能な長穴36aが形成されている。また、針曲り検知部36は、長穴36aを挟んで検出光を照射及び受光し、互いの検出光が非平行となるように配置された第1光センサ361及び第2光センサ362を備える。すなわち、第1光センサ361及び第2光センサ362の検出光の照射方向は異なっている。第1光センサ361及び第2光センサ362による検知結果は第2制御部500に入力される。
第2ロボットアーム22により、注射器11に装着されている注射針11cが長穴36aに挿入されて上下方向に移動される。このとき、第1光センサ361及び第2光センサ362はそれぞれ、自センサが出射した検出光が注射針11cによって遮られるとオフとなる。これにより、第2制御部500は、検出光を遮るときの注射針11cの位置を特定できる。第2制御部500は、当該位置を用いて注射針11cの針曲り量、及び当該曲りを補正するための補正量を算出する。
注射針11cに針曲りが生じている場合、第2制御部500は、注射針11cの針曲り量に基づいて、第2ロボットアーム22により注射針11cで輸液容器12の混注口を穿刺するときの針先位置(穿刺位置)を調整することが可能である。
また、第2制御部500は、第1光センサ361及び第2光センサ362のそれぞれから注射針11cの針先に光を照射したときの、各針先の投影像の幅を検出する。検出された各投影像の幅と、各投影像に対応する各光の照射方向とに応じて、注射針11cの半径方向のうち注射針11cの中心から注射針11cの尖端に向かう方向を検出することで、針先の向きを特定する。具体的な針先の向き検出処理の一例については、特許文献1に開示されている。
なお、注射針11cをカメラで撮影し、この撮影した画像に対する画像認識処理により、針曲り量及び向きを検知しても構わない。
[混注連通口37]
混注連通口37は、輸液容器12の混注口を混注処理室104側へと通すために、図2の(b)に示すように、混注処理室104の側壁に形成されている。具体的には、混注処理室104の側壁における外側に突出したドーム状箇所に、輸液容器12の混注口を通すための切欠きが形成されることで、混注連通口37が形成されている。輸液容器載置部103が上昇すると、輸液容器12の混注口が、混注処理室104内に位置する。
[針挿入確認透明窓38]
針挿入確認透明窓38は、トレイ搬送終端部110aの輸液容器12を混注処理部300から視認可能な窓であり、注射器11の注射針11cが輸液容器12に挿入された状態を確認するための画像撮影時に使用される。
[注射器確認カメラ42]
注射器確認カメラ42は、図3の(b)に示すように、混注処理部300の天井部に配置されている。注射器確認カメラ42は、主として、注射器11に吸引された薬品の有無及び量等を確認するために注射器11を撮影するために用いられる。
[注射針着脱装置43]
注射針着脱装置43は、シリンジ11aに対して、注射針11c及びキャップの着脱を可能とする装置である。注射針着脱装置43は、例えば駆動機構により注射針11c及びキャップを軸方向に回転させることで、注射針11c及びキャップを自装置に取り付ける。そして、注射針着脱装置43は、自装置に取り付けられた状態で保持した注射針11c及びキャップを、シリンジ11aに装着する。また、注射針着脱装置43は、例えば駆動機構により、シリンジ11aに装着された注射針11c及びキャップを取り外し、自装置に取り付け保持する。第2ロボットアーム22が注射器11を注射針着脱装置43に接近又は離間させることにより、上記着脱を行う。また、第2ロボットアーム22が注射針11cに対するキャップの着脱を行っても構わない。
[針挿入確認カメラ44]
針挿入確認カメラ44は、混注処理室104外に位置する輸液容器12と、混注処理室104内の注射器11を1つの画像内に収まるように撮影する。第2制御部500は、輸液容器12の混注口を注射針11cで穿刺したときに、針挿入確認カメラ44によって針挿入確認透明窓38の方向を撮影する。針挿入確認カメラ44による撮影画像は、例えばタッチパネルモニタ14に表示される。これにより、ユーザは、注射針11cの先端側が輸液容器12に位置しているか否かを撮影画像によって確認できる。
[混注処理]
混注装置1において混注処理部300が実行する混注処理の基本的な手順の一例について説明する。
第2制御部500は、トレイ101がトレイ搬送部110に供給されると、ICリーダ101cによってトレイ101のICタグからトレイ101の識別情報を読み取る。そして、第2制御部500は、トレイ101の識別情報が、混注処理の調製データに予め対応付けられた識別情報に一致する場合、シャッタ111を開く。その後、第2制御部500は、トレイ101の器材載置部102を、トレイ搬送部110のトレイ昇降部112により上昇させて混注処理室104に露出させる。
次に、第2制御部500は、器材載置部102をトレイ確認カメラ41により撮影する。第2制御部500は、トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理によって、器材載置部102に載置された薬品容器10及び注射器11等の器材の位置及び向きを把握する。
続いて、第2制御部500は、第1ロボットアーム21により、混注処理室104内に露出された器材載置部102に載置された注射器11を、載置棚33に仮置きする。また、第2制御部500は、第1ロボットアーム21により、器材載置部102に載置された薬品容器10を薬品読取部34にセットする。そして、第2制御部500は、薬品読取部34により、薬品容器10に収容された薬品の種類等の情報を読み取る。その後、第2制御部500は、第2ロボットアーム22により、薬品読取部34にセットされた薬品容器10を載置棚33に移動させる。
また、第2制御部500は、第1ロボットアーム21により、1本目の注射針11cを注射針着脱装置43にセットし、2本目の注射針11cを載置棚33に仮置きする。ここで、1本目の注射針11cは、シリンジフィルタなしの注射針であり、2本目の注射針11cは、シリンジフィルタ付きの注射針である。
なお、器材載置部102に載置されている注射針11cにはキャップが付けられており、キャップは注射針着脱装置43で着脱される。
そして、第2制御部500は、器材載置部102上の全ての器材を取り出すと、トレイ搬送部110のトレイ昇降部112により、器材載置部102を下降させてトレイ101に戻す。第2制御部500は、器材載置部102上の器材が全て取り出されたか否かをトレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理により確認する。
その後、第2制御部500は、シャッタ111を閉めて、トレイ搬送部110によりトレイ101をトレイ搬送終端部110aに搬送させる。次に、第2制御部500は、トレイ搬送部110の容器昇降部113により、トレイ101の輸液容器載置部103に載置されている輸液容器12の混注口を、混注処理室104に形成された混注連通口37に位置させる。
第2制御部500は、第1ロボットアーム21により、載置棚33から注射器11(シリンジ11a及びプランジャ11b)を取り出し、第2ロボットアーム22にセットする。続いて、第2制御部500は、第2ロボットアーム22により、注射器11を注射針着脱装置43に移動させて、注射器11のシリンジ11aに注射針11cをセットし、キャップを注射針着脱装置43に残したまま、注射針11c付きのシリンジ11aをキャップから抜き取る。その後、第2制御部500は、第2ロボットアーム22により、注射器11を針曲り検知部36に移動させ、注射針11cの針曲りの有無を検出する。なお、注射針11cがシリンジ11aに装着された状態でトレイ101にセットされている場合には、シリンジ11aに注射針11cをセットする工程は省略される。
薬品容器10がアンプルの場合、第2制御部500は、第1ロボットアーム21により、載置棚33から薬品容器10を取り出し、アンプルカッター31を用いて薬品容器10の頭部を折る。第2制御部500は、第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22により、薬品容器10と注射器11とを接近させて、注射器11の注射針11cを薬品容器10内に挿入する。第2制御部500は、第2ロボットアーム22によりプランジャ11bを操作して、薬品容器10から調製データにより予め定められた量の薬品を注射器11で吸引する。
その後、第2制御部500は、第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22のいずれか一方又は両方を制御して、薬品が吸引された後の薬品容器10、及び薬品を吸引した状態の注射器11を注射器確認カメラ42の撮影範囲内に移動させる。第2制御部500は、注射器確認カメラ42により薬品容器10及び注射器11を一度に撮影し、その撮影画像を鑑査画像として、混注制御装置100の記憶部(不図示)に記憶する。
次に、第2制御部500は、第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22により、注射器11の注射針11cを交換する。具体的に、第2制御部500は、第2ロボットアーム22により、注射器11を針曲り検知部36に移動させ、注射針11cの針曲りの有無を検出する。そして、第2ロボットアーム22は、注射器11を注射針着脱装置43に移動させて、注射針11cにキャップを装着させる。第2制御部500は、注射針着脱装置43により、注射器11から注射針11c及びキャップを取り外す。
第2制御部500は、ゴミ蓋132を開き、第1ロボットアーム21により、注射針着脱装置43が把持している注射針11cを、ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。その後、第2制御部500は、第1ロボットアーム21により、載置棚33からシリンジフィルタ付きの注射針11cを、注射針着脱装置43にセットさせる。第2制御部500は、第2ロボットアーム22により、注射器11を注射針着脱装置43に移動させて、注射器11に注射針11cを装着させる。この場合も、第2制御部500は、第2ロボットアーム22により、注射器11を針曲り検知部36に移動させ、注射針11cの針曲りの有無及び向きを検出する。
第2制御部500は、第2ロボットアーム22により、トレイ搬送終端部110aに搬送された輸液容器12の混注口に、注射器11の注射針11cを穿刺して、注射器11内の薬品を輸液容器12に注入する。一方、第2制御部500は、ゴミ蓋132を開き、第1ロボットアーム21により、薬品容器10をゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。また、第2制御部500は、第2ロボットアーム22により注射器11を注射針着脱装置43に移動させて、注射器11の注射針11cにキャップを装着させた後、注射器11をゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。
その後、第2制御部500は、注射器確認カメラ42等によって撮影された各種の画像を、記憶部から読み出してタッチパネルモニタ14に表示させる。これにより、ユーザは、タッチパネルモニタ14を見ながら混注処理の適否について鑑査を行うことができる。
また、薬品容器10がバイアルであり、かつバイアル内の薬品が溶解を必要とする場合、第2制御部500は、第2ロボットアーム22により、トレイ搬送終端部110aに搬送された輸液容器12の混注口に注射器11の注射針11cを穿刺して、輸液容器12から調製データで示された溶解量分の液体を吸引する。また、第2制御部500は、第1ロボットアーム21により、載置棚33に載置されている薬品容器10を取り出す。そして、第2制御部500は、第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22により、薬品容器10と注射器11とをそれぞれ接近させて、注射針11cを薬品容器10に穿刺する。その後、第2制御部500は、第2ロボットアーム22によってプランジャ11bを操作することにより、注射器11内の液体を薬品容器10内に注入する。これにより、薬品容器10内の薬品が液体で溶解される。
次に、第2制御部500は、第1ロボットアーム21により、液体が注入された薬品容器10を攪拌装置32にセットする。これにより、攪拌装置32では、薬品容器10内の薬品及び液体が攪拌される。攪拌装置32による攪拌が終了すると、第2制御部500は、第1ロボットアーム21により、攪拌装置32から薬品容器10を取り出す。そして、第2制御部500は、第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22により、薬品容器10と注射器11とをそれぞれ接近させて、注射針11cを薬品容器10に穿刺する。その後、第2制御部500は、第2ロボットアーム22によってプランジャ11bを操作することにより、薬品容器10内の混合薬を注射器11で吸引する。
その後、上記と同様、第2制御部500は、注射器確認カメラ42により、混合薬が吸引された後の薬品容器10、及び混合薬を吸引した状態の注射器11を撮影し、その撮影画像を鑑査画像として記憶部に記憶する。そして、第2制御部500は、第2ロボットアーム22により、トレイ搬送終端部110aに搬送された輸液容器12の混注口に注射針11cを穿刺して、注射器11内の混合薬を輸液容器12に注入する。一方、第2制御部500は、ゴミ蓋132を開き、第1ロボットアーム21により薬品容器10をゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。また、第2ロボットアーム22により、キャップを装着した注射針11cを有する注射器11を、ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。その後、第2制御部500は、鑑査画像をタッチパネルモニタ14に表示させる。
なお、以下の説明においては、混合薬も薬品として説明する。
〔混注処理における穿刺位置の決定処理〕
次に、注射器11のシリンジ11aに取り付けられた注射針11cを輸液容器12の混注口12A(例:ゴム栓)に穿刺するときの穿刺位置を決定する処理について説明する。
[混注処理に係る問題点]
図6(a)及び(b)は、薬品注入後の混合液を輸液容器12から患者に投与するときに、薬剤投与システムの瓶針1000が混注口12Aに穿刺された状態の一例を示す図である。図6の(a)は、瓶針1000が穿刺された直後の状態を示し、図6の(b)は、瓶針1000が穿刺されて所定時間経過後の状態を示す。なお、混注口12Aの表面は、輸液容器12における、注射針11c及び瓶針1000が穿刺される穿刺領域と称することもできる。
図6の(a)に示すように、注射針11cの穿刺による穿刺痕M1が瓶針1000の穿刺位置と近い位置に形成されている場合、又は穿刺痕M1が所定方向に延伸している場合、図6の(b)に示すように、輸液容器12内の混合液が穿刺痕M1から漏れ出す場合がある。図6の(b)に示すDrは、穿刺痕M1から漏れ出した混合液である。
この現象について、図7を用いて説明する。図7は、瓶針1000の穿刺による穿刺痕M1の広がりを説明するための図であり、(a)は、瓶針1000の穿刺前の、混注口12Aの状態を示し、(b)は、瓶針1000の穿刺後の、混注口12Aの状態を示す。
図7の(a)に示すように、注射針11cを混注口12Aに穿刺すると、その抜き取った後には、穿刺痕M1が形成される。後述の図9に示す注射針11cを用いる場合、穿刺痕M1は略直線状となる。この状態においては、穿刺痕M1は閉じている。
図7の(b)に示すように、瓶針1000が、混注口12Aにおける瓶針穿刺位置P1に穿刺されると、瓶針1000を中心として放射状に力が伝わる。穿刺痕M1が瓶針1000の穿刺位置からある程度の距離内にあり、かつこの力が伝わる方向(図中の矢印の方向)と、穿刺痕M1の幅方向とが略平行になる(当該力が伝わる方向に穿刺痕M1が延伸している)場合には、穿刺痕M1を広げる方向に力が印加される。つまり、瓶針1000の穿刺によって、穿刺痕M1の幅方向と略平行の力(矢印方向の力)が穿刺痕M1に印加されると、当該力が穿刺痕M1に作用して、混注口12A(つまりゴム栓)が歪み、その歪みによって穿刺痕M1がその幅方向に距離Ds分縮む。その結果、穿刺痕M1が広げられ、開いた状態(孔が開いた状態)となり、穿刺痕M1から混合液が漏れ出してしまうという現象が生じる。なお、図7の(b)では、理解容易化の観点から、穿刺痕M1が極端に大きく開いた状態を図示している。
また、瓶針1000の穿刺位置が注射針11cの穿刺位置に近くなればなるほど、穿刺痕M1に印加される力が大きくなる。そのため、上記2つの穿刺位置が比較的近い場合も、当該力が穿刺痕M1に作用した結果、穿刺痕M1が広げられ、穿刺痕M1から混合液が漏れ出してしまう場合がある。
本発明者らは、上記現象が生じることを見出し、かつ当該現象が生じる可能性を低減するように、混注口12Aに注射針11cを穿刺すればよいことを見出した。つまり、注射針11c及び混注口12Aの相対的配置関係を調整することで、上記可能性を低減できることを見出した。本構成について、以下にさらに具体的に説明する。
なお、本明細書において、「相対的配置関係」の調整とは、混注口12Aの表面に対向して注射針11cが配置されたときの、当該表面に対する注射針11cの位置を調整することを指す。又は、注射針11cが混注口12Aの表面に対向するように、注射針11cに対して混注口12Aが配置されたときの、注射針11cに対する当該表面の位置を調整するとも換言できる。また、「相対的配置関係」の調整には、混注口12Aの表面に対する注射針11cの位置を変更せずとも、混注口12Aの表面に対する注射針11cの向きが変更されることも含まれる。
[具体的構成]
上記問題を解消する基本的構成として、本実施形態の混注装置1は、第2ロボットアーム22を備えている。この場合、第2ロボットアーム22によって、瓶針1000(輸液用の第1針)を穿刺するための穿刺位置である瓶針穿刺位置P1(第1穿刺位置)が特定された輸液容器12の混注口12Aにおける、瓶針穿刺位置P1とは異なる注射針穿刺位置P2(第2穿刺位置)へ注射器11の注射針11c(第2針)を穿刺するための穿刺装置が構成される。
具体的には、混注装置1(穿刺装置)では、図8の(a)に示すように、第2ロボットアーム22は、保持部26が保持した注射器11の注射針11cを、第2制御部500が決定した注射針穿刺位置P2に穿刺する穿刺動作部である。なお、本実施形態では、第2ロボットアーム22の先端部に保持部26が設けられているが、保持部26が第2ロボットアーム22に接続されていなくても構わない。
また、容器昇降部113(図5の(b)参照)は、混注口12Aが、混注連通口37を通して混注処理室104内に挿入されるように、輸液容器12を保持する輸液容器保持部として機能する。また、保持部26は、混注口12Aに穿刺される注射針11cを有する注射器11を保持及び操作する注射器保持部として機能する。
また、混注口12Aが混注連通口37を通して混注処理室104内に挿入されるように、輸液容器12が保持されている保持状態において、図8の(b)及び(c)に示す斜線部が、混注口12Aにおける下半分の領域である。当該保持状態は、混注口12Aの表面が上下方向に渡るように配置されている状態(つまり、混注口12Aの表面が水平方向とは異なる方向に延伸している状態)であると称することもできる。また、「下半分」とは、鉛直方向(Z軸方向)において穿刺領域の最高点と最低点との中央点を通る水平面以下の領域を指す。図8の(b)及び(c)の例では、混注口12Aの表面が鉛直方向に平行となるように、容器昇降部113によって輸液容器12が保持されている状態を示している。
第2ロボットアーム22により混注口12Aに注射針11cが穿刺されたとき、図8の(c)に示すように、略直線状(具体的には略円弧状)の穿刺痕M1が形成される。本実施形態では、穿刺痕M1を形成する部位のうち最も離れた2つの端部E1及びE2を結ぶ方向を穿刺痕M1の幅方向(第1方向D1)として規定する。また、瓶針穿刺位置P1と注射針穿刺位置P2とを結ぶ直線を第2方向D2として規定する。
本実施形態において想定する注射針11cとしては、例えば、図9の(a)に示すように針先の傾斜面11sが3面を有する3面カット形状のもの、又は、図9の(b)に示すように針先の傾斜面11sが5面を有する5面カット形状のものが挙げられる。いずれの針先を有する注射針11cであっても、図8に示すように、略円弧状の穿刺痕M1が形成される。
ここで、穿刺痕M1の幅方向(つまり穿刺痕M1が形成される方向)は、混注口12Aに穿刺するときの注射針11cの向きによって一意に決まる。つまり、注射針11cの向きから穿刺痕M1の幅方向を特定できる。図9の(a)に示すように、注射針11cの軸方向をAx1方向、傾斜面11sの両端部である端部11e1及び11e2の高さ方向をAx2方向としたとき、Ax1方向とAx2方向とに垂直な方向(Ax3方向)を、注射針11cの幅方向と規定できる。そして、注射針11cが混注口12Aに穿刺されたとき、注射針11cの幅方向と略一致するように、穿刺痕M1の幅方向(第1方向D1)が決まる。
[注射針穿刺位置の決定例]
次に、第2制御部500による注射針穿刺位置P2の決定例について説明する。当該決定例としては、例えば、以下の決定例1~4が挙げられる。
(決定例1:角度に基づく穿刺位置決定-穿刺位置の変更)
決定例1について、図10の(a)を参照して説明する。図10の(a)では、穿刺痕M1の幅方向である第1方向D1が、X軸方向に延伸している場合を例に挙げて説明する。本決定例1では、注射針11cを穿刺可能な候補位置としての注射針穿刺位置P2が8箇所(図10の(a)に示す注射針穿刺位置P21~P28)特定されている。候補位置としての注射針穿刺位置P2は、例えば記憶部に記憶されている。また、注射針穿刺位置P21~P28に注射針11cが穿刺されたときに形成され得る穿刺痕M1を、穿刺痕M11~M18として示している。
第2制御部500は、針曲り検知部36による検知結果に基づき、針先の向きを特定する。針先の向きとは、上述のように、混注連通口37の表面(つまり、混注連通口37に位置する混注口12Aの表面)に穿刺されたときに形成される穿刺痕M1の幅方向と略一致する。穿刺痕M1の幅方向は、本実施形態では、混注連通口37の表面に対して水平方向(X軸方向)を0°したときの角度(0°以上かつ90°以下)として規定されている。
なお、第2制御部500は、例えば、穿刺前の状態の注射針11cを、注射針11cと対向する位置から撮像可能なカメラによって当該注射針11cを撮像させ、画像認識を行うことで、針先の向きを特定してもよい。
第2制御部500は、上記8箇所のうちの少なくとも1つを、注射針11cを穿刺可能な注射針穿刺位置P2として決定する。また、第2制御部500は、瓶針穿刺位置P1を特定する。そして、第2制御部500は、特定した瓶針穿刺位置P1と、候補位置としての注射針穿刺位置P2とを結ぶ第2方向D21~D24を特定し、第1方向D1と第2方向D21~D24とのなす角をそれぞれ算出する。
なお、第2制御部500は、例えば、混注連通口37に位置した混注口12Aを撮影し、撮影画像を解析することで、瓶針穿刺位置P1を特定する。混注口12Aにおいて、瓶針穿刺位置P1には、瓶針穿刺位置P1を示すための突起又は印等が設けられている。第2制御部500は、当該突起又は印等を撮影画像から特定することで、瓶針穿刺位置P1を特定する。その他、瓶針穿刺位置P1は、例えば、予め記憶部に記憶されていても構わないし、ユーザ入力により特定されても構わない。
図10の(a)に示すように、第2制御部500は、上記なす角を、穿刺痕M11及びM15が形成され得る注射針穿刺位置P21及びP25については0°と算出する。また、第2制御部500は、穿刺痕M12及びM16が形成され得る注射針穿刺位置P22及びP26、並びに、穿刺痕M14及びM18が形成され得る注射針穿刺位置P24及びP28については45°と算出する。また、第2制御部500は、穿刺痕M13及びM17が形成され得る注射針穿刺位置P23及びP27については90°と算出する。
第2制御部500は、第1方向D1と第2方向D2とが平行となる注射針穿刺位置P21及びP25以外の注射針穿刺位置P22~24及びP26~P28の少なくともいずれかを、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として決定する。第2制御部500は、第2ロボットアーム22及び保持部26を制御することにより、決定した注射針穿刺位置P2に注射針11cを穿刺する。
つまり、第2ロボットアーム22は、第1方向D1と、瓶針穿刺位置P1及び候補位置としての注射針穿刺位置P2を結ぶ第2方向D2とが平行とならないように、注射針11cを穿刺する。本実施形態では、第2ロボットアーム22は、第1方向D1と第2方向D2とが平行とならないように、混注口12Aと注射器11の注射針11cとの相対的配置関係を調整する。
そして、本決定例1では、第2ロボットアーム22は、注射針穿刺位置P2を調整し、調整後の注射針穿刺位置P2へ注射針11cを穿刺する。換言すれば、第2ロボットアーム22は、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2を調整(決定)することにより、上記相対的配置関係の調整を行っている。
なお、図10の(a)において、環状仮想線L1は、瓶針穿刺位置P1から所定距離離れた位置を示している。環状仮想線L1の内部領域(瓶針穿刺位置P1から所定範囲内)は、上述のように、少なくとも第1方向D1と第2方向D2との角度が0°とならないような角度調整が必要となる領域である。なお、上記所定範囲は、混注口12Aの表面全体に亘っても構わない。
このように、上記なす角が0°以外となるように、混注口12Aに注射針11cが穿刺されることで、輸液容器12に瓶針1000が穿刺されたときの、穿刺痕M1からの液漏れの可能性を低減できる。
また、第2制御部500は、上記なす角が45°以上、かつ90°以下となる(特に90°となる)注射針穿刺位置P2を、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として決定することが好ましい。理由について、図11を用いて説明する。図11は、上記なす角の範囲を説明するための図であり、(a)は上記なす角が45°未満である場合を示し、(b)は上記なす角が45°より大きい場合を示す。
瓶針1000が穿刺されたときに、注射針穿刺位置P2に印加される力(穿刺痕M1を圧縮する圧縮力)をFoとすると、圧縮力Foは、圧縮力Foの幅方向成分Foxと、当該幅方向成分Foxに垂直な圧縮力Foの成分である垂直方向成分Foyとで表すことができる。図11の(a)に示すように、上記なす角が45°未満(θ<45°)である場合、穿刺痕M1を広げようとする力(穿刺痕M1を実質的に圧縮する力)として穿刺痕M1に作用する幅方向成分Foxが、垂直方向成分Foyよりも大きい。一方、図11の(b)に示すように、上記なす角が45°より大きい(θ>45°)場合、幅方向成分Foxが、垂直方向成分Foyよりも小さい。そして、上記なす角が45°(θ=45°)であるとき、幅方向成分Foxの大きさは、垂直方向成分Foyの大きさと略一致する。
つまり、上記なす角が45°未満から45°以上に変化したときに、幅方向成分Foxと垂直方向成分Foyとの間で、その大きさの大小関係が逆転する。具体的には、45°以上の場合、幅方向成分Foxが垂直方向成分Foy以下となるため、幅方向成分Foxが垂直方向成分Foyより大きい場合に比べ、穿刺痕M1を圧縮して広げる可能性が低くなる。また、上記なす角90°の場合、幅方向成分Foxが0となるため、穿刺痕M1が広げられる可能性が最も低い。この観点から言えば、上述のように、上記なす角の範囲が45°以上、かつ90°以下である(特に上記なす角が90°である)ことが好ましい。
また、注射針11cの穿刺回数は、1回でも複数回でも構わない。また、第2制御部500は、穿刺回数が複数回の場合、予め設定された複数の注射針穿刺位置P2のうち、上記なす角が最も大きい位置(例:90°)から順に、穿刺回数分の注射針穿刺位置P2が選択される。なお、穿刺回数は、例えば、調製データが示す調整手順情報(例:作業内容を示す情報)によって設定されている。
注射針11cを複数回穿刺する場合、上記なす角が比較的小さい注射針穿刺位置P2を選択する可能性もある。上記のように注射針穿刺位置P2を選択することで、少しでも上記なす角が大きい位置に優先して注射針11cを穿刺できる。これにより、輸液容器12からの液漏れの可能性をより低減できる。
図10の(a)の例では、例えば、注射針穿刺位置P23(上記なす角90°)→注射針穿刺位置P27(上記なす角90°)→注射針穿刺位置P22(上記なす角45°)→注射針穿刺位置P26(上記なす角45°)→注射針穿刺位置P24(上記なす角45°)→注射針穿刺位置P28(上記なす角45°)の順で選択される。上記なす角が0°となる注射針穿刺位置P21及びP25は選択されない。つまり、本例では、注射針穿刺位置P2として最大6箇所選択できる。
なお、穿刺回数が1回の場合には、上記なす角が最も大きい位置を、注射針穿刺位置P2として決定する。
また、穿刺回数が複数回である場合、後述の決定例2においても同様に、上記なす角が大きい位置から順に、注射針穿刺位置P2が選択される。また、後述の決定例3では、上記なす角、及び瓶針穿刺位置P1から注射針穿刺位置P2までの距離(又は後述の比率)が大きくなる位置、後述の決定例4では、当該距離又は比率が大きくなる位置から順に、注射針穿刺位置P2が選択される。
(決定例2:角度に基づく穿刺位置決定-注射針の向きの変更)
決定例2について、図10の(b)を参照して説明する。注射針穿刺位置P2を決定する代わりに、上記なす角が0°とならないように穿刺痕M1が形成されるように、注射針11cを回転させても構わない。
第2制御部500は、注射針11cが混注口12Aの表面と対向したときに、上述のように上記なす角を算出し、当該なす角が0°の場合には、当該なす角が例えば90°となるように注射針11cを軸方向に回転させる。具体的には、保持部26が注射針11cを軸方向に回転させる。したがって、本決定例2では、保持部26は、注射器11を軸方向に回転させる回転駆動機構を有する。
つまり、本決定例2では、第2ロボットアーム22は、上記なす角が0°とならないように、混注口12Aに対する注射針11cの回転角度を調整し、当該回転角度を調整した後の注射針11cを、注射針穿刺位置P2へ穿刺する。換言すれば、第2ロボットアーム22は、混注口12Aに対する注射針11cの回転角度を調整することにより、上記相対的配置関係の調整を行う。
なお、上記なす角は、90°を上限として少なくとも0°でなければよく、好ましくは、上述のとおり45°以上かつ90°未満であればよい。
(決定例3:角度及び距離に基づく穿刺位置決定)
決定例3について、図12及び図13を参照して説明する。決定例3では、第2制御部500は、上記なす角を考慮するとともに、瓶針穿刺位置P1から注射針穿刺位置P2までの距離を考慮して、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2を決定する。具体的には、図12に示すように上記なす角及び上記距離に対してそれぞれ「角度ポイント」及び「距離ポイント」を付与しておき、第2制御部500は、ポイントの合計値が所定値以上となる注射針穿刺位置P2を、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として決定する。「角度ポイント」及び「距離ポイント」は記憶部に記憶されている。
図12の(a)は、角度ポイントの付与の一例を示す図である。図12の(a)の例では、0°以上90°以下の上記なす角について、上記なす角の小さい方から順に10°刻みで、1~10の角度ポイントが付与されている。
図12の(b)は、距離ポイントの付与の一例を示す図である。本実施形態では、図13の(a)に示すように、混注口12Aの表面において、瓶針穿刺位置P1から最も離れた位置Pmaxまでの最大距離Dimaxに対する、瓶針穿刺位置P1から注射針穿刺位置P2までの距離Diの比率に対して、距離ポイントを付与している。この場合、比率0.0は、瓶針穿刺位置P1と注射針穿刺位置P2とが同じ位置であることを示し、比率1.0は、注射針穿刺位置P2が最大距離Dimaxの位置にあることを示す。図12の(b)の例では、比率が小さい方から順に0.1刻みで、1~10の距離ポイントが付与されている。
第2制御部500は、上述のとおり、候補位置としての注射針穿刺位置P2について、上記なす角を算出し、当該注射針穿刺位置P2についての角度ポイントを特定する。また、第2制御部500は、瓶針穿刺位置P1を用いて最大距離Dimaxを算出すると共に、候補位置としての注射針穿刺位置P2について距離Diを算出し、上記比率(距離Di/最大距離Dimax)を算出する。そして、第2制御部500は、当該注射針穿刺位置P2についての距離ポイントを特定する。
第2制御部500は、特定した角度ポイント及び距離ポイントを加算し、その合計値が所定値以上であるか否かを判定する。所定値は、瓶針1000が穿刺されたときに輸液容器12(具体的には混注口12A)に印加される力により穿刺痕M1が広がらない程度の値に設定されている。第2制御部500は、算出した合計値が所定値以上であると判定した場合に、上記なす角及び上記比率の算出対象とした注射針穿刺位置P2を、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2に決定する。そして、第2ロボットアーム22は、決定された注射針穿刺位置P2に注射針11cを穿刺するように、上記相対的配置関係を調整する。
なお、上記所定値は、実験等により設定されている。但し、混注口12Aの材質、又は注射針11cの穿刺方向等によって、瓶針1000の穿刺により穿刺痕M1に印加される力は異なる。上記所定値は、当該事情を考慮して適宜変更可能である。また、所定値との比較対象が、「角度ポイント×所定係数」及び「距離ポイント×所定係数」の合計値として算出されても構わない。
図13の(b)は、決定された注射針穿刺位置P2の例を示す図である。図13の(b)の例では、形成される穿刺痕M1の幅方向(針先の向き)はX軸に平行な方向とする。また、注射針穿刺位置P2の候補位置として7箇所設定されており(図13の(b)の注射針穿刺位置P31~P37)、注射針11cの穿刺回数が5回と決められているものとする。また、上記7箇所のそれぞれについての上記距離のうち、少なくともいずれか2つは、その長さが異なっているものとする。
図13の(b)の例では、第2制御部500は、候補位置としての注射針穿刺位置P31~P37のうち、注射針穿刺位置P31~P35を、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2(図中の●印)として決定する。また、第2制御部500は、注射針穿刺位置P31~P35の順に注射針11cを穿刺するものとして、注射針11cの穿刺順を決定する。一方、第2制御部500は、注射針穿刺位置P36及びP37については、穿刺不可である注射針穿刺位置P2(図中の×印)として決定する。
第2制御部500は、注射針穿刺位置P31~P37のそれぞれについて、角度ポイント及び距離ポイントの合計値を算出し、所定値以上であり、かつ合計値が大きい順に、上記穿刺順を決定している。なお、穿刺回数分に満たない場合には、合計値が所定値未満であっても、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として決定されても構わない。
ここで、注射針穿刺位置P35の上記なす角θ1は、注射針穿刺位置P36の上記なす角θ2よりも小さい。上記なす角のみを考慮する場合、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2としては、注射針穿刺位置P36が選択され、注射針穿刺位置P35は選択されない。しかし、注射針穿刺位置P35の上記距離Di1は、注射針穿刺位置P35の上記距離Di2よりも大きい。そのため、(注射針穿刺位置P35の上記合計値)>(注射針穿刺位置P36の上記合計値)となることから、本決定例3では、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として、注射針穿刺位置P35が選択され、注射針穿刺位置P36は選択されない。
なお、上記合計値が同じである2以上の注射針穿刺位置P2が候補位置として存在する場合には、第2制御部500は、いずれの注射針穿刺位置P2を、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として決定しても構わない。
このように、第1方向D1と第2方向D2とのなす角、及び、瓶針穿刺位置P1から注射針穿刺位置P2までの距離という、輸液容器12からの液漏れの要因となり得る2つの要因を考慮して、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2が決定される。そのため、より確実に、輸液容器12からの液漏れの可能性を低減できる。
また、上記距離が大きければ、上記なす角が小さい箇所であっても、注射針11cを穿刺することが可能となる。そのため、上記なす角のみを考慮して注射針穿刺位置P2を決定する場合に比べ、注射針11cを穿刺可能な範囲を広げることができる。
(決定例4:距離に基づく穿刺位置決定)
決定例4について、図14を参照して説明する。決定例4では、第2制御部500は、上記距離のみを考慮して、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2の位置を決定する。
具体的には、第2制御部500は、瓶針1000が穿刺されたときに輸液容器12(具体的には混注口12A)に印加される力により穿刺痕M1が広がらない程度に瓶針1000から離れた位置を、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として決定する。図14に示すように、第2制御部500は、混注口12Aの表面上の、干渉領域IR(斜線部)の外側の領域である非干渉領域InRにおける禁止領域PRを除外した領域に、注射針11cが穿刺されるように、注射針穿刺位置P2を決定する。
ここで、干渉領域IRは、瓶針1000が穿刺されたときに瓶針1000が混注口12Aと干渉する、瓶針穿刺位置P1を含む領域である。具体的には、干渉領域IRは、瓶針1000の穿刺により瓶針1000と接触して広げられた、混注口12Aの表面における領域である。つまり、干渉領域IRは、瓶針1000が穿刺された状態における、混注口12Aの表面での瓶針1000の太さ分の領域である。
禁止領域PRは、非干渉領域InR(図14の斜線部以外の領域)のうち、注射針11cの穿刺が禁止される領域である。上述のように注射針穿刺位置P2が決定されるため、禁止領域PRは、上記力により穿刺痕M1が広がらない程度の所定幅を有する領域であるといえる。図14の例では、環状仮想線L1の内部領域が禁止領域PRである。
第2制御部500は、上述のように、瓶針穿刺位置P1と、候補位置としての注射針穿刺位置P2との間の距離を算出する。第2制御部500は、算出した距離が第2所定値以上であるか否かを判定し、第2所定値以上である場合には、当該注射針穿刺位置P2を、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として決定する。つまり、結果として、図14に示すように、禁止領域PR以外の領域に注射針11cが穿刺され、当該穿刺による穿刺痕M1が形成される。
そして、第2ロボットアーム22は、決定された注射針穿刺位置P2に注射針11cを穿刺するように、上記相対的配置関係を調整する。
なお、上記第2所定値は、上記所定値と同様、瓶針1000が穿刺されたときに輸液容器12(具体的には混注口12A)に印加される力により、穿刺痕M1が広がらない程度の値に、実験等により設定されている。また、上記第2所定値は、上記所定値と同様、上述した事情を考慮して適宜変更可能である。
また、第2制御部500は、上記距離の代わりに上記比率を用いて、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2を決定しても構わない。
このように、上記なす角を考慮せず上記距離のみを考慮して注射針穿刺位置P2を決定した場合であっても、輸液容器12からの液漏れの可能性を低減できる。つまり、上記なす角θが非常に小さい(例:0°又は0°近傍)であっても、瓶針穿刺位置P1から所定距離離れた位置(禁止領域PR以外の領域)に注射針11cが穿刺されるように上記相対的配置関係が調整されれば、上記液漏れが生じる可能性を抑制できる。
[混注処理の流れ]
図15は、混注処理の一例を示すフローチャートである。なお、基本的な混注処理については上述したので、ここでは主として、混注口12Aの表面に注射針11cが穿刺されるときの処理(穿刺方法)に特化して説明する。また、本混注処理は、その一例として、上記決定例1に基づく処理の流れを示す。
輸液容器12への薬品の注入時、又は、輸液容器12内の気体もしくは液体の抜取時において、第2制御部500は、容器昇降部113を制御して、混注連通口37に混注口12Aを位置させる。つまり、容器昇降部113は、混注連通口37に位置するように、混注口12Aを保持する(S1)。また、第2制御部500は、第2ロボットアーム22の保持部26を制御して、保持部26に、注射針11cを有する注射器11を保持させる(S2)。この状態において、第2制御部500は、第2ロボットアーム22を移動させ、針曲り検知部36の検知結果に基づき注射針11cの向きを特定する(S3)。上述のように、第2制御部500は、例えば特許文献1に開示の向き検出処理を用いて、注射針11cの向きを特定する。また、第2制御部500は、例えば、混注連通口37に位置した混注口12Aを撮影した撮影画像を解析することで、瓶針穿刺位置P1を特定する(S4)。
第2制御部500は、上述したように、注射針11cの向き及び瓶針穿刺位置P1に基づき上記なす角を算出し、上記なす角が0°とならない位置を、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として決定する(S5)。第2制御部500は、第2ロボットアーム22を制御して、決定した注射針穿刺位置P2に注射針11cを穿刺する(S6:穿刺動作工程)。換言すれば、第2ロボットアーム22は、上記なす角が0°とならないように上記相対的配置関係を調整した状態で、注射針11cを穿刺する。
その後、第2制御部500は、保持部26を制御して、注射器11内の薬品を輸液容器12に注入するか、又は、輸液容器12内の液体(又は気体)を抜き取る(S7)。
なお、S4の処理は、S5の処理前に行われていれば十分である。つまり、S1~S3の処理と平行して実行されても構わないし、S1~S3の処理と前後して実行されてもよい。
また、上記決定例2では、S5の処理において、第2制御部500は、上記なす角が0°とならないように、混注口12Aの表面に対する注射針11cの向きを変更する(注射針11cを軸方向に回転させる)。上記決定例3では、S5の処理において、第2制御部500は、上記なす角とともに上記比率を算出し、上記合計値に基づいて注射針穿刺位置P2を決定する。上記決定例4では、S5の処理において、第2制御部500は、上記距離を算出し、当該距離に基づいて注射針穿刺位置P2を決定する。上記決定例4では、注射針穿刺位置P2の決定の観点からは、S3の処理を行う必要は無い。
また、上記処理は、混注装置1の処理として説明したが、これに限らず、ユーザが上記処理を行っても構わない。つまり、ユーザは、混注口12A及び注射器11を保持した状態で、上記なす角が0°とならないように、上記合計値が所定値以上となるように、又は上記距離が第2所定値以上となるように、注射針11cを穿刺しても構わない。
[その他の構成]
その他の構成として、第2ロボットアーム22は、混注口12Aの表面の下半分の領域(図8の(b)及び(c)の斜線部で示す領域)のいずれかの位置に注射針11cを穿刺するように、上記相対的配置関係を調整してもよい。この場合、第2制御部500は、下半分の領域のいずれかの位置を、実際に注射針11cを穿刺する注射針穿刺位置P2として決定する。これにより、輸液容器12の下側に溜っている液体を抜き取りやすくなる。従って、このような決定処理は、輸液容器12から液体を抜くときの処理として適用されることが有用である。
また、上述した構成では、第2制御部500は、第2ロボットアーム22の保持部26の配置位置を調整することで、決定した注射針穿刺位置P2に注射針11cを穿刺している。これに限らず、第2制御部500は、保持部26の位置が固定されている状態で、混注口12Aの配置位置を調整することで、決定した注射針穿刺位置P2に注射針11cを穿刺しても構わない。この場合、混注連通口37は、混注口12Aの配置位置を調整可能な程度の大きさを有している。また、容器昇降部113は、混注連通口37において混注口12Aの配置位置を変更可能な機構である。この場合、容器昇降部113が穿刺動作部として機能する。また、第2ロボットアーム22及び容器昇降部113の両方が穿刺動作部として機能しても構わない。
また、第2制御部500は、保持部26の位置が固定されている状態で、注射針11cのみを移動させたり、軸方向に回転させて針先の向きを変えたりすることで、上記相対的配置関係を調整しても構わない。
〔廃棄に関する処理〕
次に、輸液容器12内の液体を廃棄するための廃棄機構及び廃棄動作について説明する。
[廃棄機構及び動作]
図14は、上記廃棄機構の一例を示す斜視図であり、(a)はゴミ蓋132が開状態である場合の図であり、(b)はゴミ蓋132が閉状態である場合の図である。図17の(a)は上記廃棄機構の平面図、(b)は上記廃棄機構の上部構造を示す斜視図である。図18は、上記廃棄機構の側面図である。図19は、廃液ダクト141の着脱途中の状態を示す図である。
混注装置1には、上記廃棄機構として、(1)薬品容器10及び注射器11等の廃棄物を収容するための第1廃棄機構と、(2)輸液容器12内の液体を廃棄する第2廃棄機構と、が設けられている。上記第1廃棄機構に加えて上記第2廃棄機構を設けた点で、従来の混注装置(例:特許文献1の混注装置)とは異なる。
図16の(a)及び(b)に示すように、本実施形態では、第1廃棄機構は、混注処理室104の台座104aに形成された、廃棄物が投入される廃棄物投入口131、廃棄物投入口131に開閉可能に設けられたゴミ蓋132、及び廃棄物を収容するゴミ箱133を備えている。ゴミ箱133は、廃棄物投入口131の下方に位置するゴミ収容室13aに配置されている。また、第1廃棄機構は、ゴミ蓋132の開閉動作を制御する駆動機構134(図18参照)を備えている。
上述したように、第2制御部500は、駆動機構134を制御してゴミ蓋132を開き、第1ロボットアーム21又は第2ロボットアーム22により、使用済の薬品容器10又は注射器11(注射針11cのみでもよい)を、廃棄物投入口131へと排出し、ゴミ箱133に収容する。また、第2制御部500は、これらの使用済の廃棄物が廃棄物投入口131に排出された後、駆動機構134を制御してゴミ蓋132を閉じる。これらの動作及び処理を行う第2制御部500、第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、保持部25及び保持部26もまた、上記第1廃棄機構の一部であるといえる。
なお、混注処理室104は、注射器11と、注射器11の注射針11cが穿刺される薬品容器10の穿刺領域、及び輸液容器12の穿刺領域(具体的には混注口12Aの表面)と、を少なくとも内包するチャンバーであるとも称される。混注処理室104は、薬品容器10に収容された薬品が混注装置1の外部に暴露することを防ぐために、少なくとも上記穿刺領域を内包する。
上記第2廃棄機構は、図16~図18に示すように、主として、廃液ダクト141、溝ガイド143、廃液ホース144、及び廃液容器145を備えている。
廃液ダクト141は、廃液容器145へと通じる溝である。液体排出口142は、注射器11で輸液容器12から抜き取られた液体が排出される部分(所定領域)である。液体排出口142は、廃液ダクト141の一端に形成された開口端である。注射器11で輸液容器12から抜き取られた液体は、液体排出口142を介して廃液ダクト141へと流れ込み、廃液容器145まで流される。
廃液ダクト141は、図17の(b)に示すように、廃棄物投入口131の外縁に形成されたダクト挿入口148から挿入又は取出可能である。つまり、廃液ダクト141は、図19に示すように、混注装置1に対して着脱可能な構成となっている。なお、ダクト挿入口148の形成位置は、廃棄物投入口131の外縁に限らず、例えば台座104aのいずれかの位置であっても構わない。また、ダクト挿入口148は、混注処理室104の台座104aに形成された、注射器11で抜き取られた液体が排出される廃液口とも称することができる。
廃液ダクト141が着脱可能な構成の場合、廃液ダクト141の清掃(洗浄)を簡易に行うことができる。それゆえ、廃液ダクト141を清潔に保持でき、液体の成分により繁殖する可能性がある菌等の発生を抑制できる。なお、清掃の簡易化を考慮しなければ、溝ガイド143(つまり混注装置1)に固定されていても構わない。
また、廃液ダクト141の液体排出口142の部分(廃液ダクト141の一端)には、廃液ダクト141が溝ガイド143に挿入されたときに廃棄物投入口131の外縁と当接する庇部141a(図17の(a)及び(b)参照)が設けられている。なお、庇部141aに液体排出口142が形成されているともいえる。
溝ガイド143は、その一端がダクト挿入口148に接続され、ゴミ収容室13a内を下方へと延伸する部材であり、廃液ダクト141を挿入するときのガイドとして機能する。溝ガイド143は、廃液ダクト141を挿入でき、かつ挿入された廃液ダクト141の外縁と当接するような断面(溝ガイド143の延伸方向と垂直な面)の大きさを有する。
これにより、廃液ダクト141が溝ガイド143に挿入されたときに、庇部141aが廃棄物投入口131の外縁と当接するだけで、廃液ダクト141の溝ガイド143への固定を可能とする。そのため、例えば溝ガイド143の、廃液容器145側(下方側)において廃液ダクト141を固定する固定部材を設ける必要が無い。
なお、溝ガイド143のダクト挿入口148側(上方側)に、庇部141aが廃棄物投入口131の外縁と当接したときに、溝ガイド143に対して廃液ダクト141を固定する固定部材(例:ロック機構)が設けられていても構わない。この場合、挿入された廃液ダクト141を溝ガイド143により確実に固定できる。
廃液ホース144は、廃液容器145へと通じる部材であり、廃液ダクト141を流れ出た液体を廃液容器145へと流し込む。具体的には、廃液ホース144は、その一端が溝ガイド143の他端に接続され、他端が廃液容器145の開口端146に接続されている。
廃液容器145は、注射器11で抜き取り、かつ廃液ダクト141及び廃液ホース144を通じて排出された液体を収容するものであり、混注装置1の内部(具体的には、ゴミ収容室13a)に配置されている。つまり、廃液容器145は、ダクト挿入口148を介して混注処理室104の外部に配されている。
また、廃液容器145は、着脱可能に設けられている。そのため、ユーザは、廃液容器145を混注装置1から取り出して、廃液容器145に収容された液体を混注装置1の外部(例:下水)に排出できる。
また、本実施形態では、上記第1及び第2廃棄機構は、図16の(a)及び(b)に示すように、混注処理室104の内部をその外部から遮断する遮断部としてのゴミ蓋132と、ゴミ蓋132の開閉を制御する駆動機構134とを備えている。つまり、本実施形態では、ゴミ蓋132及び駆動機構134は、上記第1及び第2廃棄機構において兼用されている。ゴミ蓋132は、廃棄物投入口131と共に、ダクト挿入口148(挿入された廃液ダクト141の液体排出口142)の開閉を可能とする。
その他、上記第2廃棄機構は、図17の(b)に示すように、混注処理室104の機密性を維持するためのシール部材147(例:パッキン)を備えていることが好ましい。シール部材147は、ダクト挿入口148に設けられており、挿入された廃液ダクト141の庇部141aの底面と当接することにより、混注処理室104の機密性を確保する。
ここで、輸液容器12内の気体又は液体の抜き取り動作、輸液容器12内への薬品の注入動作、及び液体の排出動作の一例について説明する。
第2制御部500は、第2ロボットアーム22を制御して(保持部26の制御を含む)、保持部26で保持した注射器11の注射針11cを、輸液容器12の混注口12Aに穿刺して、輸液容器12内の液体を注射器11で抜き取る。
第2制御部500は、調製データが示す薬品の注入量と、輸液容器12内の液体量及び気体量とに基づいて、輸液容器12から液体を抜き取る必要があるか否かを判定する。
輸液容器12に注入可能な薬品の量は、例えば、輸液容器12内の気体を抜くことなく注入可能な薬品の最大量(第1注入可能量)、及び、輸液容器12内の気体を抜いた場合に注入可能な薬品の最大量(第2注入可能量)として予め設定されている。
第2制御部500は、薬品の注入量を特定すると、特定した注入量が第1注入可能量以下であるか否かを判定する。注入量が第1注入可能量以下である場合、第2制御部500は、第2ロボットアーム22を制御して、輸液容器12内の気体又は液体を抜き取ることなく、注射器11で、注入量分の薬品を輸液容器12に注入する。注入量が第1注入可能量より多く、かつ第2注入可能量以下である場合、第2制御部500は、第2ロボットアーム22を制御して、注射器11で、少なくとも注入量分の気体を輸液容器12から抜き取り、抜き取った後の輸液容器12に対して、注射器11で、注入量分の薬品を注入する。
注入量が第1注入可能量より多く、かつ第2注入可能量よりも多い場合、第2制御部500は、注入量が所定量以上であると判定する。この場合、第2制御部500は、第2ロボットアーム22を制御して、注入量分の気体及び液体を抜き取る。このように所定量は、輸液容器12の液体を抜く必要がある薬品の注入量の最小値である。
第2制御部500は、輸液容器12から液体を抜き取った場合、駆動機構134を制御してゴミ蓋132を開き、第2ロボットアーム22を制御して、注射器11で抜き取った輸液容器12内の液体を、液体排出口142へと排出する。
つまり、第2ロボットアーム22は、輸液容器12内の液体を注射器11で抜き取り、注射器11で抜き取った液体を液体排出口142へと排出する注射器操作部として機能する。また、上記動作及び処理を行う第2制御部500、第2ロボットアーム22及び保持部26もまた、上記第2廃棄機構の一部である。
なお、液体の抜き取りは、薬品を輸液容器12に注入する前に行われる必要があるが、気体の抜き取りについては、薬品を輸液容器12に注入した後でも構わない。これは、輸液容器12に薬品を注入すると、薬品と液体とが混合されるため、液体のみを抜くことは不可能であるが、薬品と液体とが混合されても、注射針11cの針先が輸液容器12内の気体層に位置していれば、気体だけを抜くことが可能であるためである。
[廃液処理]
図20を参照して、輸液容器12内の液体を廃液容器145へと排出する廃液処理の一例について説明する。
輸液容器12への薬品の注入時において、第2制御部500は、容器昇降部113を制御して、混注連通口37に混注口12Aを位置させる。つまり、容器昇降部113は、混注連通口37に位置するように、混注口12Aを保持する(S11;輸液容器保持工程)。また、第2制御部500は、第2ロボットアーム22の保持部26を制御して、注射針11cを有する注射器11を保持する(S12:注射器保持工程)。次に、第2制御部500は、輸液容器12への薬品の注入量を特定し、当該注入量が所定値以上であるか否かを判定する(S13)。
第2制御部500は、上記注入量が所定値以上であると判定した場合(S13でYES)、実際に注射針11cが挿入される注射針穿刺位置を決定する。この注射針穿刺位置は、上述したような手法により決定されても構わないし、予め設定されたものであっても構わない(S14)。第2制御部500は、第2ロボットアーム22を制御して、決定した注射針穿刺位置に注射針11cを穿刺し(S15)、保持部26を制御して、輸液容器12内の液体を注射器11で抜き取る(S16:液体抜取工程)。このとき、場合によっては、輸液容器12内の気体をあわせて抜き取っても構わない。
第2制御部500は、第2ロボットアーム22を制御して、抜き取った液体が収容された注射器11の注射針11cの針先が、液体排出口142に対向する位置まで、当該注射器11を移動させる(S17)。第2制御部500は、駆動機構134を制御してゴミ蓋132を開き、保持部26を制御して、抜き取った液体を液体排出口142へと排出する(S18:液体排出工程)。排出後、ゴミ蓋132は閉じられる。
その後、必要に応じて注射器11(又は注射針11c)を交換し、かつ不要となった注射器11(又は注射針11c)はゴミ箱133へ廃棄される。この場合、保持部26は、新たに、注射針11cを有する注射器11を保持する。そして、第2制御部500は、第2ロボットアーム22及び保持部26を制御して、薬品容器10の薬品を、調製データが示す注入量分、注射器11に吸引する(S19)。その後、S14及びS15と同様の処理が行われることで(S20及びS21)、注射器11内の薬品が輸液容器12に注入される(S22)。
なお、第2制御部500は、上記注入量が所定値未満であると判定した場合(S13でNO)、輸液容器12内の液体を抜き取る必要は無いため、S19の処理へ移行する。場合によっては、S19への処理移行前に、輸液容器12内の気体を抜き取っても構わない。
このように、本実施形態では、薬品の注入において不要となる輸液容器12内の液体を、注射器11を用いて抜き取り、少なくとも混注処理室104の外部へと排出できる。また、不要となる液体の抜き取りのための部材を別途設ける必要が無い。
[その他の構成]
上記では、注射器11で抜き取られた液体が廃液容器145へ排出される構成であったが、これに限らず、当該液体が混注装置1の外部へ直接排出される構成であっても構わない。輸液容器12内の液体は、食塩水又はブドウ糖を含む液体であるため、混注装置1の外部に直接排出されても人体へ影響は無い。
この構成の場合、上記液体は、混注装置1の外部(例:下水)へ通じる廃液ダクト141及び廃液ホース144を流れて、当該外部へと直接排出される。また、当該廃液ダクト141の液体排出口142が、上記所定領域となる。
また、廃液ダクト141を廃液容器145の開口端146に直接接続可能な構成であれば、廃液ホース144を設ける必要は無い。一方、清掃簡易化の観点を考慮しなければ、ダクト挿入口148に廃液ホース144を直接接続しても構わない。この場合、廃液ダクト141は不要であり、ダクト挿入口148に接続される廃液ホース144の開口端が上記所定領域となる。また、ダクト挿入口148に廃液容器145の開口端146が直接接続されても構わない。この場合、廃液ダクト141及び廃液ホース144は不要であり、ダクト挿入口148に接続される廃液容器145の開口端146が上記所定領域となる。
また、廃液容器145は、混注処理室104の内部に設けられても構わない。この場合、開口端146を開閉するための上記遮断部が、開口端146に設けられる。但し、この場合、輸液容器12への薬品の混注作業を行う混注空間が狭くなる。また、廃液容器145に抗がん剤が付着した場合には、廃液容器145は汚染される。この点を考慮すれば、廃液容器145は、混注処理室104の外部に設けられていることが好ましい。
また、少なくとも薬品注入時に、輸液容器12が混注処理室104の内部に配置されても構わない。但し、廃液容器145と同様の理由から、輸液容器12は混注処理室104の外部に配置されることが好ましい。
また、ゴミ蓋132が上記遮断部の機能を有しているが、上記遮断部としてゴミ蓋132とは異なる部材(つまり、液体排出口142を開閉するための廃液蓋部、及び廃液蓋部の開閉を制御する駆動機構)を、ダクト挿入口148に備えてもよい。但し、混注装置1の簡素化、及び部品点数の削減等を考慮すれば、ゴミ蓋132が上記遮断部の機能も有していることが好ましい。
〔混注装置1の別構成〕
混注装置1は、以下の構成を有するものであっても構わない。
[キャップ装着方法]
上述したように、注射器11が廃棄される場合、注射器11の廃棄前に注射針11cにキャップが装着される。このとき、第2制御部500は、注射針11cがキャップに突き刺さらないように、針曲り検知部36の検知結果に基づき、注射針11cの針曲り量を考慮した補正量を算出する。第2ロボットアーム22は、上記補正量に基づく補正を行いつつ、キャップに注射針11cを挿入する。
また、第2制御部500は、例えば針曲り検知部36の検知結果に基づき算出された注射針11cの太さ(サイズ)が所定値以上である場合には、第2ロボットアーム22の保持部26が把持すべき注射針11cとは異なるサイズの注射針11cが把持されているものとして、注射針11cのサイズに異常が生じていると判定する。
ここで、注射針11cが使用済である場合、注射針11cには薬品又は液体が付着している可能性がある。この場合、付着した薬品又は液体による液滴の大きさも含めて、針の太さ又は針曲り量が算出される。そのため、上記異常が生じていると判定されるほどの大きさを有する液滴が注射針11cに付着している場合には、算出される針曲り量、及び当該針曲り量に基づき算出される補正量は、実際に生じている針曲り量、及び当該針曲り量に基づき算出される補正量とは大きく異なる値となる可能性がある。この場合、補正量が不正確であるため、当該補正量に基づきキャップへの挿入動作が実行された場合には、注射針11cがキャップに突き刺さってしまう可能性がある。場合によっては、キャップに突き刺さった注射針11cが折れてしまったり、折れ方によっては注射針11cを取り外せない状態となり混注処理を中断する必要が生じてしまったりする。
上記のような不具合を回避すべく、混注装置1は、例えば図21に示す処理を行う。本処理では、第2ロボットアーム22がキャップの着脱を行うものとして説明するが、上述のように、注射針着脱装置43が当該着脱を行っても構わない。
具体的には、図21に示すように、キャップ装着前に、第2制御部500は、針曲り検知部36の検知結果に基づき、保持部26で保持されている注射器11の注射針11cの針曲り量に基づく補正量を算出する(S31)。また、第2制御部500は、注射針11cの太さが所定値以上であるか否かを判定することにより、上記異常が生じているか否かを判定する(S32)。
上記異常が生じていると判定した場合(S32でYES)、第2制御部500は、注射針11cが未使用なものであるか否かを判定する(S33)。
ここで、第2制御部500は、注射器11の使用状態を管理している。例えば、使用済の注射器11には使用済を示すフラグが付される。シリンジ11a、プランジャ11b及び注射針11c毎に使用状態が管理されても構わない。混注処理の開始時点(注射器11等が混注処理室104に挿入された時点)では、注射器11は未使用状態である。第2制御部500は、例えば、注射針11cが薬品を吸引するために薬品容器10に穿刺されたとき、又は液体を吸引するために輸液容器12に穿刺されたときに、当該注射器11に対して使用済のフラグを付す。第2制御部500は、注射針11cの使用有無を、上記フラグの有無によって判定する。
注射針11cが未使用であると判定された場合(S33でYES)、第2制御部500は、第1ロボットアーム21及び第2ロボットアーム22を制御して、使用する注射針11cを新たな注射針11cに交換する(S34)。その後、S31の処理に戻る。
一方、S32において上記異常が無いと判定された場合には(S32でNO)、第2ロボットアーム22は、第2制御部500の制御を受けて、上記補正量に基づく補正を行いつつ、注射針11cをキャップに挿入する(S35)。その後、第2ロボットアーム22は、キャップが取り付けられた注射器11を廃棄物投入口131へと廃棄する(S36)。
上記異常がなければ、注射針11cの使用の有無にかかわらず、上記のように液滴に起因した不正確な補正量の算出が行われることは無い。そのため、第2制御部500は、算出した補正量に基づく補正を行いながら、注射針11cをキャップに挿入させる。特に、使用済の注射針11cであっても、上記異常と認められない程度の針曲り量であれば、当該針曲り量に基づき算出された補正量の誤差は小さいため、上記のようにキャップに注射針11cが突き刺さってしまう可能性は低い。
一方、上記異常があり、かつ注射針11cが使用済であると判定された場合(S33でNO)、第2ロボットアーム22は、第2制御部500の制御を受けて、混注処理室104の台座104aの所定位置へと注射器11を載置する(S37)。所定位置とは、例えば、ユーザが注射器取出扉302を開けて注射器11を取り出すことが可能な、注射針11cの返却位置である。
ユーザは、注射器11が所定位置へ載置されると、注射器11を取出し、注射針11cにキャップを装着する(S38)。その後、ユーザは、主扉301を開けて、第2ロボットアーム22の保持部26に、キャップ装着後の注射器11を装着する(S39)。第2制御部500は、保持部26での注射器11の保持を認識すると、第2ロボットアーム22に注射器11を廃棄させる(S36)。
上記異常が生じており、かつ使用済の注射針11cの場合には、上述した液滴に起因した不正確な補正量の算出が行われる可能性が高い。そのため、第2ロボットアーム22を用いて自動で注射針11cをキャップに挿入した場合には、キャップに注射針11cが突き刺さってしまう可能性がある。そのため、上記場合には、キャップ挿入を手動で行うことで、上記のような不具合を回避できる。
[薬品把持動作]
第1ロボットアーム21の保持部25は、薬品容器10を挟むことで保持可能な1対の把持爪(不図示)を有している。一対の把持爪によって薬品容器10を把持するときに、一対の把持爪の略中央に薬品容器10が位置していない場合には、薬品容器10の保持状態が不安定になる可能性、又は薬品容器10を一度で把持できない可能性がある。
上記可能性を回避すべく、第2制御部500は、一対の把持爪を一度閉じた後わずかに開き、再度閉じるという動作を、保持部25に行わせる。これにより、上記略中央に位置しない薬品容器10であっても、当該略中央に寄せることができる。そのため、薬品容器10を安定的に把持できる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
混注装置1の制御ブロック(特に混注制御装置100の第1制御部400および第2制御部500)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、混注装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
なお、上記プログラムは、特に、上述した穿刺動作部を制御する第2制御部500(制御部)としてコンピュータを機能させるための穿刺実行プログラムである。
〔本開示の一態様に係る課題および別表現〕
薬品注入後の混合液を輸液容器から患者へ投与するために、輸液容器の蓋部(混注口)の所定位置(点滴用OUTポート)に、薬剤投与システム(抗がん剤投与システム)の瓶針が穿刺されることにより、輸液容器に薬液投与システムが取り付けられる。
ここで、瓶針の太さは注射器の注射針に比べて太い(例:瓶針の直径4.5mm)。そのため、注射針及び瓶針の穿刺位置の関係、及び瓶針の太さによっては、特許文献1の混注装置における薬品注入時の注射針の穿刺により、輸液容器の蓋部に形成された穿刺痕が広がり、混合液が輸液容器から漏れ出てしまう可能性がある。本発明者らは、このような液漏れが生じ得ることを見出し、鋭意研究の成果、液漏れの可能性を低減し得る構成を想到するに至った。
[1]本発明の一態様に係る穿刺装置は、輸液用の第1針を穿刺するための第1穿刺位置が特定された輸液容器の混注口における、上記第1穿刺位置とは異なる第2穿刺位置へ注射器の第2針を穿刺するための穿刺装置であって、上記第2針の穿刺による穿刺痕の幅方向である第1方向と、上記第1穿刺位置と上記第2穿刺位置とを結ぶ第2方向とが、少なくとも上記第1穿刺位置から所定範囲内においては平行とならないように、上記第2針を穿刺する穿刺動作部を備える。
輸液容器の穿刺領域(蓋部、混注口)では、輸液用の第1針が第1穿刺位置に穿刺されると、第1穿刺位置を中心として放射状に力が伝わる。つまり、第2方向に沿って力が伝わる。第1方向と第2方向とが平行となるように、注射器の第2針が第2穿刺位置に穿刺された場合に、第1針が第1穿刺位置に穿刺されると、第2穿刺位置によっては、第2針の穿刺による穿刺痕には、当該穿刺痕を広げる方向に力が印加される場合がある。穿刺痕にある程度大きな力が印加された場合には、穿刺痕から、輸液容器内の混合液(食塩水等の液体に薬品が注入されたもの)が漏れ出る可能性がある。
上記の構成によれば、少なくとも第1穿刺位置から所定範囲内においては第1方向と第2方向とが平行とならないように、第2針が第2穿刺位置に穿刺される。そのため、上記のように穿刺痕が広げられる可能性を低減できる。つまり、第1針を輸液容器に穿刺したときに生じ得る、穿刺痕からの液漏れの可能性を低減できる。
[2]さらに、本発明の一態様に係る穿刺装置では、上記穿刺動作部は、上記第1方向と上記第2方向とのなす角のうち、小さい方の角度が45°以上かつ90°未満となるように、又は上記なす角が90°となるように、上記第2針を穿刺しても構わない。
上記の構成によれば、穿刺痕からの液漏れの可能性を低減できる。
[3]さらに、本発明の一態様に係る穿刺装置では、上記穿刺動作部は、上記第2穿刺位置を調整し、調整後の第2穿刺位置へ上記第2針を穿刺しても構わない。
上記の構成によれば、第1方向と第2方向とが平行にならないように第2穿刺位置を調整して、当該第2穿刺位置に第2針を穿刺できる。
[4]さらに、本発明の一態様に係る穿刺装置では、上記穿刺動作部は、上記混注口に対する上記第2針の回転角度を調整し、当該回転角度を調整した後の第2針を、上記第2穿刺位置へ穿刺しても構わない。
上記の構成によれば、第2針の向きを第1方向と第2方向とが平行とならないようにして、第2針を第2穿刺位置に穿刺できる。
[5]さらに、本発明の一態様に係る穿刺装置では、上記穿刺動作部は、上記輸液容器における上記第2針が穿刺される穿刺領域が上下方向に渡るように配置されているときに、上記穿刺領域の下半分のいずれかの位置を上記第2穿刺位置として、上記第2針の穿刺を行っても構わない。
上記の構成によれば、第2針を穿刺領域の下半分に穿刺することで、輸液容器に含まれる液体の中に第2針を挿入しやすくなる。そのため、輸液容器から液体を抜き取りやすくなる。つまり、輸液容器から液体を抜き取るときに特に有用である。
[6]さらに、本発明の一態様に係る穿刺装置は、輸液用の第1針を穿刺するための第1穿刺位置が特定された輸液容器の混注口における、上記第1穿刺位置とは異なる第2穿刺位置へ注射器の第2針を穿刺するための穿刺装置であって、上記第1針が穿刺されたときに上記第1針が上記混注口と干渉する、上記第1穿刺位置を含む干渉領域の外側の領域である非干渉領域における、上記干渉領域から所定幅を有する、上記第2針の穿刺が禁止される禁止領域を除外して、上記第2針を穿刺する穿刺動作部を備える。
輸液容器の穿刺領域(混注口)では、輸液用の第1針が第1穿刺位置に穿刺されると、
第1穿刺位置を中心として放射状に力が伝わる。また、第2穿刺位置が第1穿刺位置に近くなればなるほど、第2針の穿刺による穿刺痕に印加される力が大きくなる。そのため、第1穿刺位置からの距離が所定距離未満となる第2穿刺位置に第2針が穿刺された場合には、上記の力によって穿刺痕が広げられる場合がある。この場合、穿刺痕から、輸液容器内の混合液が漏れ出る可能性がある。
上記の構成によれば、上記禁止領域を除外して第2針を穿刺できるので、上記のように穿刺痕が広げられる可能性を低減できる。つまり、第1針を輸液容器に穿刺したときに生じ得る、穿刺痕からの液漏れの可能性を低減できる。
[7]さらに、本発明の一態様に係る穿刺装置では、上記所定幅は、上記第1針が穿刺されたときに上記混注口に印加される力により、上記第2針の穿刺による穿刺痕が広がらない程度の幅であっても構わない。
上記の構成によれば、穿刺痕からの液漏れの可能性を確実に低減できる。
[8]さらに、本発明の一態様に係る穿刺方法は、輸液用の第1針を穿刺するための第1穿刺位置が特定された輸液容器の混注口における、上記第1穿刺位置とは異なる第2穿刺位置へ注射器の第2針を穿刺するための穿刺方法であって、上記第2針の穿刺による穿刺痕の幅方向である第1方向と、上記第1穿刺位置と上記第2穿刺位置とを結ぶ第2方向とが、少なくとも上記第1穿刺位置から所定範囲内においては平行とならないように、上記第2針を穿刺する穿刺動作工程を含む。
上記の方法によれば、上記[1]と同様の効果を奏する。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。