JP7215210B2 - 半導体装置 - Google Patents

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本明細書では、半導体モジュールの第1面から露出する放熱板と冷却器との間にグリスが充填されている半導体装置を開示する。
上記の半導体装置は、内部に半導体素子を収容している。半導体素子に電流が流れると、半導体素子は発熱する。半導体素子の熱は、放熱板に伝わり、その後グリスを介して、冷却器に放熱される。
上記の半導体装置では、「グリス抜け」と呼ばれる次の現象が生じる。半導体素子に電流が流れると、半導体素子の温度が上昇する。これにより、放熱板の温度が上昇し、放熱板が膨張する。このため、放熱板と冷却器との間の空間が小さくなる。これにより、グリスが放熱板と冷却器との間の空間から外に排出され、放熱板と冷却器との間のグリス量が減少する。半導体素子に電流が流れなくなると、半導体素子の温度が低下する。これにより、放熱板の温度が低下し、放熱板の膨張が収まる。このため、放熱板と冷却器との間の空間が元に戻り、放熱板と冷却器との間にグリスが存在しない空隙が形成される。これにより、放熱板から冷却器への伝熱効率が低下する。
放熱板の膨張を抑制する技術の1つとして、グリスの伝熱効率を高める技術があり、例えば、特許文献1に記載の技術である。特許文献1には、伝熱粒子の群を備えるグリスが開示されている。伝熱粒子は、放熱板から冷却器への伝熱を促進する。グリスが伝熱粒子の群を備えない場合と比較して、放熱板から冷却器への伝熱効率が高い。この結果、半導体素子に電流が流れることに伴う放熱板の温度上昇が抑制される。
特開2016-162929号公報
特許文献1の技術では、グリスが伝熱粒子の群を備えない場合と比較して、半導体素子の発熱に伴う放熱板の膨張を抑えることができる。しかしながら、発明者の検討によると、グリスの伝熱効率を高めるだけでは、依然として放熱板と冷却器との間の空間からグリスが抜け出ることが判明した。
本明細書では、放熱板と冷却器との間の空間からグリスが抜け出ることを抑制することができる技術を開示する。
本明細書で開示する半導体装置は、半導体素子を収容しており、第1面に放熱板が露出している半導体モジュールと、前記放熱板の熱を放熱させる冷却器と、前記放熱板と前記冷却器との間に充填されており、前記放熱板から前記冷却器への伝熱を促進するグリスと、を備える。前記グリスは、第1平均粒子径を有する第1伝熱粒子の群と、前記第1平均粒子径よりも大きい第2平均粒子径を有する第2伝熱粒子の群と、を備える。前記放熱板の露出面には、複数の凸部が形成されており、互いに隣接する前記凸部の間隔は、前記第1平均粒子径よりも大きい。
上記の構成では、放熱板の露出面には、例えば表面処理によって形成される複数の凸部が残っている。即ち、放熱板の露出面において、互いに隣接する凸部の間に溝部が形成されていることになる。第1伝熱粒子の第1平均粒子径は、隣接する凸部の間隔、即ち、溝部の幅よりも小さいため、第1伝熱粒子の群は、溝部の内部まで侵入することができる。この結果、グリスは、溝部の内部まで充填される。これにより、グリスが溝部の内部まで充填されていない場合と比較して、グリスと放熱板の露出面との接触面積が大きくなる。
半導体素子の温度が上昇すると、放熱板の温度が上昇する。このため、放熱板の温度の上昇によって放熱板と冷却器との間の空間が小さくなると、グリスは、放熱板と冷却器との間の空間から外部に移動しようとする。グリスが溝部の内部まで充填されていない場合と比較すると、本構成の場合、グリスと放熱板の露出面との接触面積が大きいため、グリスに作用する摩擦抵抗が大きく、グリスは、放熱板と冷却器との間の空間から外部に移動し難くなる。この結果、放熱板の温度が低下し、放熱板と冷却器との間の空間が元に戻っても、放熱板と冷却器との間にグリスが存在しない空隙が形成されることを抑制することができる。これにより、グリス抜けを抑制することができる。
実施例の半導体素子の斜視図である。 半導体モジュールを下面から見た斜視図である。 図1におけるXY平面で切断した半導体モジュールの断面図である。 放熱板の露出面の溝に伝熱粒子が配置されている状態を示す図である。
(実施例)
図1から図4を参照して、実施例の半導体装置2を説明する。半導体装置2は、ハイブリット自動車、電気自動車や燃料電池車等の電動車両に搭載される。また、半導体装置2は、車両のパワーコントロールユニットを構成する電力変換器に搭載される。図1に示すように、半導体装置2は、複数(本実施例では6個)の半導体モジュール10と、複数(本実施例では7個)の冷却器3と、複数(本実施例では12個)の絶縁板6と、グリス32(図1では図示省略)と、を備える。図1では、1個の半導体モジュール10と1個の冷却器3にのみ符号が付されている。半導体モジュール10と冷却器3は、X方向に交互に積層されている。X方向における半導体装置2の両端部には、冷却器3が位置している。半導体装置2は、仮想線で図示されるケース50に収容されている。半導体モジュール10と冷却器3との間には、絶縁板6が配置されている。図1では図示省略しているが、半導体モジュール10と絶縁板6との間、及び、絶縁板6と冷却器3との間にはグリス32が充填されている。
半導体モジュール10は、平板形状を有する。半導体モジュール10には、半導体素子11a、11bが収容されている。半導体モジュール10については、後で詳しく説明する。
冷却器3は、平板形状を有する。冷却器3は、例えば、アルミニウム等の金属材料から作製されている。冷却器3は、液体冷媒が流れる流路を内部に有する。液体冷媒は、例えば、LLC(Long Life Coolant)等である。
半導体装置2は、連結管5a、5bと、冷媒供給管4aと、冷媒排出管4bをさらに備える。連結管5a、5bは、互いに隣接する冷却器3を連結している。積層方向の一端側の冷却器3には、冷媒供給管4aと冷媒排出管4bが連結されている。冷媒供給管4aと冷媒排出管4bには、図示省略の冷媒循環装置が接続されている。冷媒循環装置から送り出された液体冷媒は、冷媒供給管4aから連結管5aを通り、すべての冷却器3の流路に供給される。冷却器3を通る間に、隣接する半導体モジュール10から液体冷媒に、熱が放熱される。その後、液体冷媒は、連結管5bから冷媒排出管4bを通り、冷媒循環装置に戻る。
次に、図2から図4を参照して、半導体モジュール10を説明する。図3は、半導体モジュール10をXY平面に平行な平面であって、半導体素子11a、11bを横切る平面で、半導体モジュール10を切断した断面図である。
半導体モジュール10は、本体18と、半導体素子11a、11bと、2個のスペーサ14と、放熱板20、24、28と、3個の電力端子7a、7b、7c(正極端子7a、中性端子7b、負極端子7c)と、制御端子8と、を備える。図3に示すように、半導体素子11a、11bは、Y方向に並んで配置されている。半導体素子11a、11bは、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(即ちIGBT)や金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(即ちMOSFET)である。半導体素子11a、11bは、制御端子8に接続されている。
半導体素子11a、11bの上方のそれぞれには、放熱板20、24のそれぞれが配置されている。図3において、上下方向が規定されている。放熱板20、24は、例えば、銅やアルミニウムから作製されている。放熱板20、24は、導電性と熱伝導性を有する。放熱板20、24のそれぞれは、ハンダ16を介して半導体素子11a、11bのそれぞれに連結されている。放熱板20は、正極端子7aに接続されており、放熱板24は、負極端子7cに接続されている。
半導体素子11a、11bの下方のそれぞれには、スペーサ14、14のそれぞれが配置されている。スペーサ14は、例えば、銅やアルミニウムから作製されている。スペーサ14は、導電性と熱伝導性を有する。スペーサ14、14のそれぞれは、ハンダ16を介して半導体素子11a、11bのそれぞれに連結されている。
スペーサ14、14の下方には、放熱板28が配置されている。放熱板28は、例えば、銅やアルミニウムから作製されている。放熱板28は、導電性と熱伝導性を有する。放熱板28は、ハンダ16を介してスペーサ14、14のそれぞれに連結されている。放熱板28は、中性端子7bに接続されている。
本体18は、半導体素子11a、11bと、スペーサ14、14と、放熱板20、24、28と、3個の電力端子7a、7b、7cと、制御端子8を収容している。本体18は、樹脂材料から作製されている。本体18は、放熱板20、24の上面と放熱板28の下面を除く面を覆う。放熱板20、24の上面は、半導体モジュール10の上面10aから露出しており、放熱板28の下面は、半導体モジュール10の下面10bから露出している。以下では、放熱板20、24の上面と放熱板28の下面のそれぞれを、露出面20a、24a、28aと呼ぶ。図2に示すように、3個の電力端子7a、7b、7cと制御端子8は、本体18の内部から外部に向かって延びている。
図4に模式的に示すように、露出面20aには、複数の凸部22aが形成されている。凸部22aは、露出面20aを研磨することによって形成される。研磨後の露出面20aは、研磨前の露出面20aよりも粗い。図4は、露出面20a、24a、28aを拡大した断面図である。露出面20aは、例えば、ショットブラスト方式を利用して研磨される。隣接する凸部22aの間には、溝部22bが形成されている。これらのため、露出面20aを研磨すると、複数の凸部22aとともに複数の溝部22bが形成される。
露出面24a、28aは、露出面20aと同様の研磨方式を利用して研磨されている。これにより、露出面24aには、複数の凸部26aと複数の溝部26bが形成されており、露出面28aには、複数の凸部30aと複数の溝部30bが形成されている。
図3に示すように、半導体モジュール10と冷却器3との間には、絶縁板6が配置されている。絶縁板6は、半導体モジュール10と冷却器3とを絶縁する。絶縁板6は、絶縁材料から作製されている。絶縁板6は、例えばセラミックスである。絶縁板6は、熱伝導性を有する。
半導体モジュール10と絶縁板6との間、及び、絶縁板6と冷却器3との間には、グリス32が充填されている。グリス32は、半導体モジュール10から冷却器3への伝熱を促進する。グリス32の厚みは、数十ミクロンである。図3では、構造を理解し易いように、グリス32の厚みが誇張されている。
グリス32は、基油34と、第1伝熱粒子36の群と、第2伝熱粒子38の群と、を備える。以下では、「群」の記載を省略する。基油34の主成分は、シリコンオイルである。基油34は、高い粘性を有しており、半固体形状を有する。基油34は、熱伝導性を有する。基油34中には、第1伝熱粒子36と第2伝熱粒子38が分散されている。第1伝熱粒子36と第2伝熱粒子38は、球形状を有する。第1伝熱粒子36と第2伝熱粒子38は、熱伝導性を有する。第1伝熱粒子36と第2伝熱粒子38は、例えば、酸化亜鉛やアルミナ等の金属から作製されている。第1伝熱粒子36と第2伝熱粒子38は、放熱板20、24、28から冷却器3への伝熱を促進する。
第1伝熱粒子36は、第1平均粒子径D1を有する。第1平均粒子径D1は、露出面20a、24a、28aの溝部22b、26b、30bの幅W(即ち、隣接する凸部22a、26a、30aの間隔)よりも小さい。ここで、溝部22b、26b、30bの幅Wは、複数の溝部22b、26b、30bの幅を平均化することによって算出される。第1伝熱粒子36は、溝部22b、26b、30bの内部に侵入している。第2伝熱粒子38は、第2平均粒子径D2を有する。第2平均粒子径D2は、第1平均粒子径D1よりも大きい。第2平均粒子径D2は、露出面20a、24a、28aの溝部22b、26b、30bの幅W(即ち、隣接する凸部22a、26a、30aの間隔)よりも小さい。第2伝熱粒子38は、溝部22b、26b、30bの内部に侵入している。第2伝熱粒子38は、第1伝熱粒子36よりも溝部22b、26b、30bの深部に侵入できない。このため、溝部22b、26b、30bの深部には、第1伝熱粒子36が配置され、第1伝熱粒子36よりも浅い位置に第2伝熱粒子38が配置される。これにより、基油34は、溝部22b、26b、30bの深部まで充填されている。
なお、変形例では、第2平均粒子径D2は、露出面20a、24a、28aの溝部22b、26b、30bの幅W(即ち、隣接する凸部22a、26a、30aの間隔)よりも大きくてもよい。この場合、第2伝熱粒子38は、溝部22b、26b、30bの内部に侵入できない。このため、第1伝熱粒子36のみ、溝部22b、26b、30bの内部に配置され、第2伝熱粒子38は、溝部22b、26b、30bの外部に配置される。
次に、半導体装置2の動作に伴うグリス32の挙動を説明する。半導体素子11a、11bに電流が流れると、半導体素子11a、11bの温度が上昇する。半導体素子11a、11bの熱が、放熱板20、24、28に伝わる。放熱板20、24、28の温度が上昇するとともに、放熱板20、24、28が膨張する。これにより、放熱板20、24、28と絶縁板6との間の空間が小さくなる。
放熱板20、24、28と絶縁板6との間の空間が小さくなると、グリス32は、放熱板20、24、28と絶縁板6との間の空間から外側に向かって移動しようとする。基油34は、放熱板20、24、28の溝部22b、26b、30bの深部まで充填されている。このため、基油34が溝部22b、26b、30bの深部まで充填されていない場合と比較して、基油34と放熱板20、24、28との接触面積が大きく、基油34に作用する摩擦抵抗が大きい。この結果、グリス32は、放熱板20、24、28と絶縁板6との間の空間から外側に向かって移動し難くなる。これにより、グリス32が放熱板20、24、28と絶縁板6との間の空間から外側に排出されない。あるいは、放熱板20と絶縁板6との間の空間から外側に排出されるグリス32の量は極めて少ない。
また、半導体素子11a、11bに電流が流れなくなると、半導体素子11a、11bの温度が低下する。放熱板20、24、28の温度が低下し、放熱板20、24、28は、元の形状に戻る。これにより、放熱板20、24、28と絶縁板6との間の空間が元の状態に戻る。グリス32は放熱板20、24、28と絶縁板6との間の空間から排出されておらず、あるいは、グリス32の排出量は極めて少ないため、放熱板20、24、28と絶縁板6との間にグリス32が存在しない空隙が形成されない。これらにより、放熱板20、24、28と冷却器3との間の空間から、グリス32が抜け出ることを抑制することができる。
(効果)
第1伝熱粒子36の第1平均粒子径D1は、露出面20a、24a、28aの溝部22b、26b、30bの幅Wよりも小さい。このため、第1伝熱粒子36は、溝部22b、26b、30bの内部に配置される。この結果、基油34は、溝部22b、26b、30bの深部まで充填されている。この構成では、半導体素子11a、11bに電流が流れ、放熱板20、24、28の温度が上昇したとき、基油34が溝部22b、26b、30bの内部まで充填されていない場合と比較して、放熱板20、24、28の熱がグリス32に伝熱し易い。このため、放熱板20、24、28の熱が冷却器3に伝熱し易くなる。この結果、放熱板20、24、28の温度上昇を緩やかにすることができる。
また、グリス32は、第1伝熱粒子36に加えて、第2伝熱粒子38を備える。第2伝熱粒子38の第2平均粒子径D2は、第1伝熱粒子36の第1平均粒子径D1よりも大きい。基油34は、第1平均粒子径D1と溝部22b、26b、30bの幅Wとの関係に基づいて、溝部22b、26b、30bの深部まで充填されている。このため、第1伝熱粒子36と第2伝熱粒子38とを備えるグリス32は、第1伝熱粒子36のみを備えるグリスと同様のグリス抜けに対する効果を得ることができる。この結果、第1伝熱粒子36のみを備えるグリスと比較して、グリス32のコストを下げることができる。
(対応関係)
半導体モジュール10の上面10aと下面10bは、「第1面」の一例である。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2 :半導体装置
3 :冷却器
6 :絶縁板
10 :半導体モジュール
11a、11b:半導体素子
18 :本体
20、24、28:放熱板
20a、24a、28a:露出面
22a、26a、30a:凸部
22b、26b、30b:溝部
32 :グリス
34 :基油
36 :第1伝熱粒子
38 :第2伝熱粒子

Claims (2)

  1. 半導体素子を収容しており、第1面に放熱板が露出している半導体モジュールと、
    前記放熱板の熱を放熱させる冷却器と、
    前記放熱板と前記冷却器との間に充填されており、前記放熱板から前記冷却器への伝熱を促進するグリスと、を備え、
    前記グリスは、第1平均粒子径を有する第1伝熱粒子の群と、前記第1平均粒子径よりも大きい第2平均粒子径を有する第2伝熱粒子の群と、を備え、
    前記放熱板の露出面には、複数の凸部が形成されており、
    互いに隣接する前記凸部の間隔は、前記第1平均粒子径よりも大きく、
    前記第1伝熱粒子の群は、前記複数の凸部の間に形成されている溝部の深部に配置され、
    前記第2伝熱粒子の群は、前記第1伝熱粒子の群よりも前記溝部の入口側に配置される、半導体装置。
  2. 前記第2平均粒子径は、互いに隣接する前記凸部の前記間隔よりも大きい、請求項1に記載の半導体装置。
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