JP7214972B2 - 安定立体構造の算出方法、及び算出装置、並びにプログラム - Google Patents

安定立体構造の算出方法、及び算出装置、並びにプログラム Download PDF

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Description

本件は、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法、及び算出装置、並びに前記算出方法を実行するプログラムに関する。
環状ペプチドは、細胞内のタンパク質-タンパク質相互作用やタンパク質-核酸相互作用等の低分子では制御が難しい創薬ターゲットに対して作用を与え得るため、医薬品の候補として有用である。
他方、化合物の安定立体構造は、化合物の性質に大きく影響する。そのため、化合物の安定立体構造を知ることは、非常に重要である。特に、創薬の分野においては、化合物の安定立体構造を知ることは、創薬ターゲット(標的分子)に対する作用を予測する上で非常に重要である。
以上のことから、環状ペプチドの安定立体構造を求めることは重要である。
化合物の安定立体構造を求める方法として、系統的探索法が知られている。しかし、環状ペプチドなどの環状化合物において、系統的探索法により安定立体構造を求めることは非常に難しい。
そこで、環状化合物の安定立体構造を求める方法として、コンフレックス方式(例えば、非特許文献1参照)、Ring Opening方式などが知られている。しかし、これらの方式では、計算に時間がかかるという問題がある。例えば、Ring Opening方式は、環を切断して擬非環式分子とし、正規の非環式分子のように扱う方式である。しかし、Ring Opening方式では、員環数が増えると生成する構造が指数関数的に増加するため、計算に非常に時間がかかるという問題がある。
Hitoshi Goto, and Eiji Osawa, J. CHEM. SOC. PERKIN TRANS., 2, 1993
本件は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本件は、環状ペプチドの安定立体構造を短い時間で求めることが可能な安定立体構造の算出方法、及び環状ペプチドの安定立体構造を短い時間で求めることが可能な安定立体構造の算出装置、並びに前記算出方法を実行するプログラムを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
開示の安定立体構造の算出方法の一態様は、
コンピュータを用いた、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法であって、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程と、
前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
を含み、
前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
開示の安定立体構造の算出方法の他の一態様は、
コンピュータを用いた、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法であって、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第1の立体構造取得工程と、
前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第1の立体構造選択工程と、
を少なくとも含み、更に、
前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第2の立体構造取得工程と、
前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第2の立体構造選択工程と、
を、0回又は1回以上含み、
更に、前記第1の立体構造選択工程又は前記第2の立体構造選択工程で選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る第3の立体構造取得工程と、
前記第3の立体構造取得工程で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
を含み、
前記第1の立体構造取得工程、前記第2の立体構造取得工程、及び前記第3の立体構造取得工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
開示のプログラムの一態様は、
コンピュータに、環状ペプチドの安定立体構造を算出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程と、
前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
を実行させ、
前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
開示のプログラムの他の一態様は、
コンピュータに、環状ペプチドの安定立体構造を算出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第1の立体構造取得工程と、
前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第1の立体構造選択工程と、
を少なくとも実行させ、更に、
前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第2の立体構造取得工程と、
前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第2の立体構造選択工程と、
を、0回又は1回以上実行させ、
更に、前記第1の立体構造選択工程又は前記第2の立体構造選択工程で選択された安定構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る第3の立体構造取得工程と、
前記第3の立体構造取得工程で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
を実行させ、
前記第1の立体構造取得工程、前記第2の立体構造取得工程、及び前記第3の立体構造取得工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
開示の安定立体構造の算出装置の一態様は、
環状ペプチドの安定立体構造の算出装置であって、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る取得部と、
前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う最小化部と、を有し、
前記取得部において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
開示の安定立体構造の算出装置の他の一態様は、
環状ペプチドの安定立体構造の算出装置であって、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第1の立体構造取得部と、
前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第1の立体構造選択部と、
を少なくとも有し、更に、
前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第2の立体構造取得部と、
前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第2の立体構造選択部と、
を、有してもよく、
更に、前記第1の立体構造選択部又は前記第2の立体構造選択部で選択された安定構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る第3の立体構造取得部と、
前記第3の立体構造取得部で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う最小化部と、
を有し、
前記第1の立体構造取得部、前記第2の立体構造取得部、及び前記第3の立体構造取得部において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、
開示の安定立体構造の算出方法によれば、環状ペプチドの安定立体構造を短い時間で求めることが可能になる。
開示のプログラムによれば、環状ペプチドの安定立体構造を短い時間で求めることが可能になる。
開示の安定立体構造の算出装置によれば、環状ペプチドの安定立体構造を短い時間で求めることが可能になる。
図1は、開示の環状ペプチドの安定立体構造の算出方法の一例のフローチャートである。 図2は、開示の環状ペプチドの安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートである。 図3は、開示の環状ペプチドの安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートである。 図4は、開示の環状ペプチドの安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートである。 図5は、開示の環状ペプチドの安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートである。 図6Aは、(n-1)員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。 図6Bは、図6Aにおいて、結合B1が削除された状態を示す模式図である。 図6Cは、図6Bにおいて、原子A3が挿入された状態を示す模式図である。 図6Dは、n員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。 図7Aは、(n-1)員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。 図7Bは、図7Aにおいて、結合B1が削除された状態を示す模式図である。 図7Cは、図7Bにおいて、原子A3が挿入された状態を示す模式図である。 図7Dは、n員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。 図8Aは、(n-2)員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。 図8Bは、図8Aにおいて、結合B1が削除された状態を示す模式図である。 図8Cは、図8Bにおいて、原子A4及び原子A5が挿入された状態を示す模式図である。 図8Dは、n員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。 図9は、開示の環状化合物の安定立体構造の算出方法の一例のフローチャートである。 図10は、開示の環状化合物の安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートである。 図11は、開示の環状化合物の安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートである。 図12は、開示の環状ペプチドの安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートである。 図13は、開示の環状ペプチドの安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートである。 図14は、開示の環状ペプチドの安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートである。 図15は、開示の安定立体構造の算出装置の構成例である。 図16は、開示の安定立体構造の算出装置の他の構成例である。 図17は、開示の安定立体構造の算出装置の他の構成例である。
創薬とは、医薬品の設計するプロセスを指す。前記創薬は、例えば、以下のような順で行われる。
(1)標的分子の決定
(2)リード化合物等の探索
(3)生理作用の検定
(4)安全性・毒性試験
リード化合物等(リード化合物及びそれから派生する化合物)の探索においては、多数の薬候補分子の各々と、標的分子との相互作用を精度よく評価することが重要である。
コンピュータを用いて医薬品を設計するプロセスは、創薬全般において利用可能である。その中でも、リード化合物等の探索に利用することは、新薬開発の期間及び確率を高める上で有用である。
開示の技術は、例えば、高い薬理活性が期待されるリード化合物等の探索に利用できる。
また、開示の技術は、創薬に関わらず、環状ペプチドの物性の調査にも利用できる。ここでの環状ペプチドは、既知ペプチドであるか、未知化合物であるかを問わない。
(安定立体構造の算出方法〔第1の態様〕)
開示の安定立体構造の算出方法の第1の態様は、コンピュータを用いた、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法である。
従来の、環状化合物の安定立体構造を求める方法では、計算に時間がかかるという問題がある。例えば、Ring Opening方式では、員環数が増えると生成する構造が指数関数的に増加するため、計算に非常に時間がかかる。
そのことは、環状ペプチドにおいても同様である。例えば、環状ペプチドを構成する各アミノ酸の安定立体構造を求め、それを使用して、前記環状ペプチドの立体構造を構成し、前記環状ペプチドの安定立体構造を求めようとすると、現在のコンピュータによる計算では非現実的な時間を要する。そのため、環状ペプチドの安定立体構造を短い時間で計算できる方法が求められていた。
そこで、本発明者らは、鋭意検討を行った。
そして、本発明者らは、コンピュータを用いて環状ペプチドの安定立体構造を求める際に、以下の手順において、環状ペプチドの立体構造データの作成方法を工夫することで、環状ペプチドの安定立体構造を短い時間で求めることが可能になることを見出し開示の技術の第1の態様の完成に至った。
工程(1)環状ペプチドの立体構造データを得る工程
工程(2)エネルギー最小化を行う工程
以下、上記手順の詳細を説明する。
<環状ペプチドの立体構造データを得る工程〔工程(1)〕>
前記工程(1)では、環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る。そうすることにより、安定な立体構造を有する前記環状ペプチドの立体構造データを得る確率が高くなる。
更に、前記工程(1)においては、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内であるとき、前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の安定立体構造とが似ている前記アミノ酸残基に前記置換用残基を置き換えることにより、単に予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える場合と比べて、得られる立体構造データの総数を減らすことができるとともに、安定な立体構造を有する環状ペプチドの立体構造データを得る確率が更に高くなる。
工程(1)では、前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る。
前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データは、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチドの立体構造データを用いて算出される。ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい。
前記置換環状ペプチドは、安定立体構造を求めたい環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えてなるペプチドである。ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい。
前記置換環状ペプチドは、例えば、アラニン置換環状ペプチド、及び、グリシン置換環状ペプチドのいずれかである。
前記アラニン置換環状ペプチドは、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基に置き換えてなる置換環状ペプチドである。
前記グリシン置換環状ペプチドは、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、及びプロリン以外のアミノ酸の残基をグリシン残基に置き換えてなる置換環状ペプチドである。
前記置換環状ペプチドとしては、前記アラニン置換環状ペプチド、前記グリシン置換環状ペプチドの他に、例えば、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基又はグリシン残基に任意に置き換えてなる置換環状ペプチドであってもよい。
ここで、前記環状ペプチドは、グリシン、プロリン、及びアラニンを含んでいなくてもよい。前記環状ペプチドが、グリシン、プロリン、及びアラニンを含んでいない場合には、すべてのアミノ酸の残基が、置換環状ペプチドを作成する際に、アラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えられる。この場合、全てのアミノ酸残基が、アラニン残基のみ又はグリシン残基のみに置き換えられる必要はない。
前記環状ペプチドは、アミノ酸のペプチド結合による環状構造を有するペプチドである。前記環状ペプチドを構成するアミノ酸の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5~1,000であってもよいし、5~500であってもよいし、10~100であってもよいし、10~50であってもよいし、10~30であってもよい。
グリシン、プロリン、及びアラニン、並びに上記それ以外のアミノ酸は、所謂α-アミノ酸であり、L型であってもよいし、D型であってもよい。
グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、及びアラニン(Ala)以外のアミノ酸としては、例えば、以下のアミノ酸などが挙げられる。
・アルギニン(Arg)
・アスパラギン(Asn)
・アスパラギン酸(Asp)
・システイン(Cys)
・グルタミン(Gln)
・グルタミン酸(Glu)
・グリシン(Gly)
・ヒスチジン(His)
・イソロイシン(Ile)
・ロイシン(Leu)
・リシン(Lys)
・メチオニン(Met)
・フェニルアラニン(Phe)
・セリン(Ser)
・トレオニン(Thr)
・トリプトファン(Trp)
・チロシン(Tyr)
・バリン(Val)
・オルニチン(Orn)
・セレノシステイン(Sec)
・ピロリジン(Pyl)
・ノルバリン
・ノルロイシン
・シトルリン
・クレアチン
・シスチン
・チロキシン
・ホスホセリン
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造の算出方法の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記置換環状ペプチドの立体構造データを用いてエネルギー最小化を行うことにより求めることができる。
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造の算出方法の態様としては、後述の環状化合物の安定立体構造の算出方法が好ましい。
前記安定立体構造は、例えば、複数の前記置換環状ペプチドの立体構造データについて、分子力学計算によりエネルギー最小化を行い、得られるエネルギー値の最低値から所定の範囲内(例えば、15kcal/mol以内)のものを安定立体構造として抽出することにより得ることができる。
ここで、本明細書における「立体構造データ」は、例えば、原子情報データ、座標情報データ及び結合情報データを有し、座標空間に立体構造を構築する。
これらのデータの形式は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テキストデータであってもよいし、SDF(Structure Data File)形式であってもよいし、MOLファイル形式であってもよい。
前記原子情報データは、原子の種類に関するデータである。
前記座標情報データは、原子の座標(位置)に関するデータである。
前記結合情報データは、原子と原子との結合に関するデータである。
前記置換環状ペプチドは、アラニン残基及びグリシン残基の少なくともいずれかを有し、前記環状ペプチドの構造に応じて、プロリン残基を有する。
前記アラニン置換環状ペプチドは、少なくともアラニン残基を有し、前記環状ペプチドの構造に応じて、グリシン残基、及びプロリン残基を有する。ここで、前記アラニン置換環状ペプチドの多くを占めるアラニン残基の安定立体構造はそう多くはない。そのため、前記アラニン置換環状ペプチドの安定立体構造は、計算可能な範囲で求めることができる。
なお、プロリンは、プロリンが有する環構造が環状ペプチドの環構造を制限するので、アラニンに置き換えないほうが、算出される前記アラニン置換環状ペプチドの安定立体構造の数を減らすことができる。
グリシンは、多様な安定立体構造をとる。前記アラニン置換環状ペプチドの安定立体構造は、最終的に作成される前記環状ペプチドの安定立体構造をある程度制限する。そのため、多様な安定立体構造をとるグリシン残基は、前記アラニン置換環状ペプチドの構造内に含めておいたほうが、最終的な計算結果の信頼性が高くなる。
前記グリシン置換環状ペプチドは、少なくともグリシン残基を有し、前記環状ペプチドの構造に応じて、プロリン残基を有する。
前記グリシン置換環状ペプチドは、グリシン残基と、必要に応じてプロリン残基とを有する。即ち、前記グリシン置換環状ペプチドは、2種類以下のアミノ酸残基で環状ペプチドを構成できる。そのため、予め用意しておく前記グリシン置換環状ペプチドの安定立体構造の数が少なくなる。更に、前記グリシン置換環状ペプチドは、前記アラニン置換環状ペプチドに比べて、前記環状ペプチドの立体構造データを得る操作を、手順が少なく少工程で行うことができる。
前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程は、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理を含んでいてもよく、その場合、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理は、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理を含んでいてもよい。
また、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理においては、多様な安定立体構造をとるグリシン残基が、前記置換環状ペプチドの安定立体構造を過剰に多くする場合がある。そのようなことを避けるためには、前記置換環状ペプチドがアラニン残基及びグリシン残基を有する場合、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理において、前記グリシン残基が、前記アラニン残基よりも後に前記置換環状ペプチドの前駆体に導入されて、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データが作成されることが好ましい。
前記置換環状ペプチドの前駆体とは、前記置換環状ペプチドよりもアミノ酸残基の数が少ない環状ペプチドである。
前記工程(1)は、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造に対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程である。
前記工程(1)においては、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内であるとき、前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
前記工程(1)においては、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基をアミノ酸残基に置き換えて、前記環状ペプチドの立体構造データを得るが、その際、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。そうすることにより、安定な立体構造を有する前記環状ペプチドの立体構造データを得る確率が高くなる。
更に、前記工程(1)においては、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内であるとき、前記アミノ酸残基に前記置換用残基が置き換えられる。前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の安定立体構造とが似ている前記アミノ酸残基に前記置換用残基を置き換えることにより、単に予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える場合と比べて、得られる立体構造データの総数を減らすことができるとともに、安定な立体構造を有する環状ペプチドの立体構造データを得る確率が更に高くなる。
前記アミノ酸残基の安定立体構造を予め求める方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アミノ酸がペプチド結合を有した状態の立体構造データを用いてエネルギー最小化を行うことにより求めることができる。
前記安定立体構造は、例えば、前記アミノ酸がペプチド結合を有した状態の各立体構造データについて、分子力学計算によりエネルギー最小化を行い、得られるエネルギー値の最低値から所定の範囲内(例えば、10kcal/mol以内)のものを安定立体構造として抽出することにより得ることができる。
前記対比は、例えば、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造における二面角と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造における二面角とを比べることにより行われる。
より具体的には、例えば、以下の式(1)及び(2)を満たす場合に、前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
|二面角φ(Ala)-二面角φ(Amino acid)|≦A ・・・式(1)
|二面角ψ(Ala)-二面角ψ(Amino acid)|≦B ・・・式(2)
ここで、A及びBは任意に設定される角度であり、例えば、それぞれ独立して30°、40°、45°などが挙げられる。
前記式(1)及び前記式(2)において、前記二面角φ(Ala)及び前記二面角ψ(Ala)は以下のとおりである。
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基において、α-炭素原子をCα(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合するメチル基の炭素原子をCm(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をN(Ala)とし、前記Np1(Ala)に結合し前記N(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Ala)とし、前記Cp2(Ala)に結合し前記Cp2(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Ala)とする。
このときの、Cp1(Ala)-Np1(Ala)-Cα(Ala)が形成する面と、Np1(Ala)-Cα(Ala)-Cm(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Ala)である。
また、Cm(Ala)-Cα(Ala)-Cp2(Ala)が形成する面と、Cα(Ala)-Cp2(Ala)-Np2(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Ala)である。
前記式(1)及び前記式(2)において、前記二面角φ(Amino acid)及び前記二面角ψ(Amino acid)は以下のとおりである。
前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造において、α-炭素原子をCα(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をNp1(Amino acid)とし、前記Np1(Amino acid)に結合し前記Np1(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Amino acid)とし、前記Cp2(Amino acid)に結合し前記Cp2(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合し前記Np1、前記Cp2、及び水素原子以外の原子をR(Amino acid)とする。
このときの、Cp1(Amino acid)-Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)が形成する面と、Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)-R(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Amino acid)である。
また、R(Amino acid)-Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)が形成する面と、Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)-Np2(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Amino acid)である。
ここで、上記二面角を図を用いて説明すると以下のようになる。
Figure 0007214972000001
Figure 0007214972000002
前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、複数のアミノ酸残基のうち、安定立体構造の数が少ないアミノ酸残基から置き換えることが、計算処理効率の点で好ましい。
また、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際には、置き換えられる前記置換用残基に隣接するアミノ酸残基に対して、距離や側鎖の方向を考慮して接触しやすいアミノ酸残基から置き換えることが、計算処理効率の点で好ましい。
<エネルギー最小化を行う工程〔工程(2)〕>
前記工程(2)においては、前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う。
前記エネルギー最小化は、例えば、分子力学計算により行う。
前記エネルギー最小化は、例えば、前記環状ペプチドの個々の原子に働く力を求め、エネルギーが小さくなる方向に原子を移動させることにより行う。
原子に働く力としては、例えば、クーロン力、ファンデルワールス力などが挙げられる。
前記エネルギー最小化計算は、例えば、公知のアルゴリズムを用いて実現することができる。公知のアルゴリズムとしては、例えば、最急降下法(Steepest descent method)、束縛つき最急降下法(Steepest descent method with constraints)、共役勾配法(Conjugate gradient method)などが挙げられる。
最急降下法は、数値的に計算されたポテンシャルエネルギー関数の一次微分(つまり力)を利用してエネルギー極小点へ近づけていく方法である。
最急降下法の計算手順の一例を以下に示す。
・初期構造に対しポテンシャルエネルギーと力を計算する。
・構成原子を座標系の軸方向に沿って順番に少しずつ動かし、その都度エネルギーと力を再計算する。
・上記のプロセスを全原子に対して繰り返し、全原子をポテンシャルエネルギー面の下り坂方向の新しい位置まで動かす。
・あらかじめ定めておいた判定条件を満たした時点で操作を打ち切る。
なお、これらのアルゴリズムでは、ポテンシャルエネルギー面上の局所的な極小点(local minimum)を見つけ出すことができるが、必ずしも大域的な極小点(global minimum)を見つけ出すことができるわけではない。
前記エネルギー最小化は、例えば、公知のソフトウエアを用いて行うことができる。
前記分子力学計算に用いるプログラムとしては、例えば、tinker、amber(Assisted Model Building with Energy Refinement)、gromacs(Groningen Machine for Chemical Simulations)、charmm(Chemistry at HARvard Macromolecular Mechanics)、lammpsなどが挙げられる。
前記安定立体構造の算出方法は、コンピュータを用いて行われる。前記安定立体構造の算出方法に使用される前記コンピュータは、1つであってもよいし、複数であってもよい。例えば、複数のコンピュータに前記安定立体構造の算出方法を分散させて実行させてもよい。
前記安定立体構造の算出方法は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、各種周辺機器等を備えた通常のコンピュータシステム(例えば、各種ネットワークサーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ等)を用いることによって実現することができる。
ここで、前記安定立体構造の算出方法の第1の態様の一例のフローチャートを図1に示す。
図1で示すフローチャートでは、予め置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを複数作成しておき、それらの立体構造データから、環状ペプチドの立体構造データを作成する。
まず、予め作成しておいた置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る(S1)。前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S1)を行う。このとき、例えば、置き換えられている置換用残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える際に、先程の工程に用いたアミノ酸残基とは異なる安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。
更に他の立体構造データを更に作成しない場合には、得られた立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S2)。
前記安定立体構造の算出方法の第1の態様の他の一例のフローチャートを図2に示す。
図2で示すフローチャートは、アラニン置換環状ペプチドの複数の安定立体構造を算出する処理を含む一例である。
まず、環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基に置き換えたアラニン置換環状ペプチドの立体構造データを用いて、前記アラニン置換環状ペプチドの安定立体構造を算出する(S1-1)。
次に、他の安定立体構造を算出する場合には、再度、安定立体構造を算出する工程(S1-1)を行う。この場合、例えば、アラニン置換環状ペプチドの初期構造を変化させて計算を行う。
続いて、前記アラニン置換環状ペプチドの前記安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられているアラニン残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る(S1-2)。前記アラニン残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記アラニン置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記アラニン残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記アラニン残基が置き換えられる。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S1-2)を行う。このとき、例えば、置き換えられているアラニン残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える際に、先程の工程に用いたアミノ酸残基とは異なる安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。
更に他の立体構造データを作成しない場合には、得られた立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S2)。
前記安定立体構造の算出方法の第1の態様の他の一例のフローチャートを図3に示す。
図3で示すフローチャートは、アラニン置換環状ペプチドの複数の安定立体構造を算出する処理を含む他の一例である。
まず、環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基に置き換えたアラニン置換環状ペプチドの立体構造データを用いて、前記アラニン置換環状ペプチドの安定立体構造を算出する(S1-1)。
次に、他の安定立体構造を算出する場合には、再度、安定立体構造を算出する工程(S1-1)を行う。この場合、例えば、アラニン置換環状ペプチドの初期構造を変化させて計算を行う。
続いて、前記アラニン置換環状ペプチドの前記安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられているアラニン残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る(S1-2)。前記アラニン残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記アラニン置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記アラニン残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記アラニン残基が置き換えられる。
続いて、前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う(S2)。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S1-2)を行う。このとき、例えば、置き換えられているアラニン残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える際に、先程の工程に用いたアミノ酸残基とは異なる安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。
次に、得られた立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S2)。
更に他の立体構造データを作成しない場合には、立体構造データの算出を終了する。
前記安定立体構造の算出方法の第1の態様の他の一例のフローチャートを図4に示す。
図4で示すフローチャートは、グリシン置換環状ペプチドの複数の安定立体構造を算出する処理を含む一例である。
まず、環状ペプチドにおいて、グリシン、及びプロリン以外のアミノ酸の残基をグリシン残基に置き換えたグリシン置換環状ペプチドの立体構造データを用いて、前記グリシン置換環状ペプチドの安定立体構造を算出する(S11-1)。
次に、他の安定立体構造を算出する場合には、再度、安定立体構造を算出する工程(S11-1)を行う。この場合、例えば、グリシン置換環状ペプチドの初期構造を変化させて計算を行う。
続いて、前記グリシン置換環状ペプチドの前記安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられているグリシン残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る(S11-2)。前記グリシン残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記グリシン置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記グリシン残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記グリシン残基が置き換えられる。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S11-2)を行う。このとき、例えば、置き換えられているグリシン残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える際に、先程の工程に用いたアミノ酸残基とは異なる安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。
更に他の立体構造データを作成しない場合には、得られた立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S12)。
前記安定立体構造の算出方法の第1の態様の他の一例のフローチャートを図5に示す。
図5で示すフローチャートは、グリシン置換環状ペプチドの複数の安定立体構造を算出する処理を含む他の一例である。
まず、環状ペプチドにおいて、グリシン、及びプロリン以外のアミノ酸の残基をグリシン残基に置き換えたグリシン置換環状ペプチドの立体構造データを用いて、前記グリシン置換環状ペプチドの安定立体構造を算出する(S11-1)。
次に、他の安定立体構造を算出する場合には、再度、安定立体構造を算出する工程(S11-1)を行う。この場合、例えば、グリシン置換環状ペプチドの初期構造を変化させて計算を行う。
続いて、前記グリシン置換環状ペプチドの前記安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられているグリシン残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る(S11-2)。前記グリシン残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記グリシン置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記グリシン残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記グリシン残基が置き換えられる。
続いて、前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う(S12)。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S11-2)を行う。このとき、例えば、置き換えられているグリシン残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える際に、先程の工程に用いたアミノ酸残基とは異なる安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。
次に、得られた立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S12)。
更に他の立体構造データを作成しない場合には、立体構造データの算出を終了する。
〔環状化合物の安定立体構造の算出方法〕
開示の技術に関連する下記の環状化合物の安定立体構造の算出方法は、前記工程(1)における前記置換環状ペプチドの安定立体構造の算出の好適な方法である。なお、下記の環状化合物の安定立体構造の算出方法は、環状ペプチドにかぎらず使用できる方法である。
ここで、下記環状化合物の安定立体構造の算出方法を、前記工程(1)における前記置換環状ペプチドの安定立体構造の算出に適用する場合、以下のように、各用語を読み替える。
「環状化合物」を「環状ペプチド」と読み替える。
「n員環の環状化合物」を「n個のアミノ酸残基を有する環状ペプチド」と読み替える。
「nは4以上の整数を表す」を「nは2以上の整数を表す」と読み替える。
「(n-a)員環〔ただし、aは正の整数を表し、(n-a)≧3である。〕の環状化合物」を「(n-a)個〔ただし、aは正の整数を表し、(n-a)≧2である。〕のアミノ酸残基を有する環状ペプチド」と読み替える。
「a個の原子を含む原子群」を「a個のアミノ酸残基を含むペプチド残基」と読み替える。
本発明者らは、n員環の環状化合物(nは4以上の整数を表す。)の安定立体構造を求める際に、前記n員環の環状化合物よりも員環数が少ない環状化合物[(n-a)員環〔ただし、aは正の整数を表し、(n-a)≧3である。〕の環状化合物]の安定立体構造に基づいて、前記n員環の環状化合物の安定立体構造を求めることにより、計算時間の短縮化が可能であることを見出し、前記環状化合物の安定立体構造の算出方法の完成に至った。
環状化合物の安定立体構造を考えた場合、環構造に原子を挿入して員環数を増やすと、挿入された箇所の局所的な構造安定性は大きく変化するが、挿入された箇所と離れた箇所の局所的な構造安定性は大きくは変化しない。そのため、上記方法でn員環の環状化合物の安定立体構造を求めると、エネルギー最小化を行う立体構造の数が少ない場合でも、効率的に安定立体構造を算出することができる。そのため、計算時間の短縮化が可能である。
即ち、前記環状化合物の安定立体構造の算出方法は、(n-a)員環〔ただし、aは正の整数を表し、(n-a)≧3である。〕の環状化合物の安定立体構造データを、少なくともa個の原子を含む原子群に関するデータを用いて、前記n員環の環状化合物の立体構造データに変換する工程を含む。例えば、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理に適用する際には、前記環状化合物の安定立体構造の算出方法は、(n-a)個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの安定立体構造データを、少なくともa個のアミノ酸残基を含むペプチド残基に関するデータを用いて、前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの立体構造データに変換する処理を含む。
また、前記安定立体構造の算出方法は、前記立体構造データを用いて前記n員環の環状化合物のエネルギー最小化を行う工程を含む。例えば、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理に適用する際には、前記環状化合物の安定立体構造の算出方法は、前記n個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドのエネルギー最小化を行う処理を含む。
ここで、本明細書における「安定立体構造データ」は、例えば、原子情報データ、座標情報データ及び結合情報データを有し、座標空間に、安定立体構造を構築する。
ここで、本明細書における「立体構造データ」は、例えば、原子情報データ、座標情報データ及び結合情報データを有し、座標空間に立体構造を構築する。
ここで、本明細書における「原子群に関するデータ」は、例えば、原子情報データ、座標情報データ及び結合情報データを有し、座標空間に立体構造を構築する。
これらのデータの形式は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テキストデータであってもよいし、SDF(Structure Data File)形式であってもよいし、MOLファイル形式であってもよい。
前記原子情報データは、原子の種類に関するデータである。
前記座標情報データは、原子の座標(位置)に関するデータである。
前記結合情報データは、原子と原子との結合に関するデータである。
<n員環の環状化合物の立体構造データに変換する工程>
前記安定立体構造の算出方法においては、(n-a)員環〔ただし、aは正の整数を表し、(n-a)≧3である。〕の環状化合物の安定立体構造データを、前記n員環の環状化合物の立体構造データに変換する。前記変換は、少なくともa個の原子を含む原子群に関するデータを用いて行われ、例えば、前記(n-a)員環の環状化合物の環の近傍に少なくともa個の原子を含む原子群を挿入することで行われる。例えば、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理に適用する際には、前記変換は、少なくともa個のアミノ酸残基を含むペプチド残基に関するデータを用いて行われ、例えば、前記n個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの環の近傍に少なくともa個のアミノ酸残基を含むペプチド残基を挿入することで行われる。
前記近傍とは、前記a個の原子が、前記(n-a)員環の環状化合物の環を構成する原子と結合を生成可能な範囲を意味する。結合を生成可能な距離は、生成する結合の種類や結合する原子の周囲の環境により異なり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の結合距離が参照される。例えば、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理に適用する際には、前記近傍とは、前記a個のアミノ酸残基を含むペプチド残基が、(n-a)個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドのペプチド結合が開環した際に、開環により生じた-NH基、又は-CO基とペプチド結合を生成可能な範囲を意味する。
前記(n-a)員環(aは正の整数を表す。n>aである。)の環状化合物の安定立体構造データは、公知のデータであってもよいし、既知の方法により求めたデータであってもよいし、開示の環状化合物の安定立体構造の算出方法により求めたデータであってもよい。
前記安定立体構造データは、該当する分子における最安定立体構造データである必要はなく、例えば、エネルギー最小化などの公知の方法で求められた安定立体構造データであればよい。そのため、前記(n-a)員環の環状化合物の安定立体構造データは、一つである場合もあれば、複数存在する場合もあるが、通常は、複数存在する。
前記環状化合物は、単環であってもよいし、多環であってもよい。
前記環状化合物における環の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭化水素環であってもよいし、芳香族環であってもよいし、ヘテロ環であってもよい。
前記原子群は、少なくともa個の原子を含む。そして、a個の原子が、前記(n-a)員環の環状化合物の環状構造に挿入される。
前記aとしては、正の整数であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。前記aが大きすぎると、前記(n-a)員環の環状化合物の員環数と、前記n員環の環状化合物の員環数との差が大きくなりすぎ、それらの安定立体構造が大きく異なる結果、前記n員環の環状化合物の有効な安定立体構造が得られないことがある。
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理に適用する際には、前記aとしては、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が好ましい。
前記原子群の原子数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~100が好ましく、1~50がより好ましく、1~30が特に好ましい。即ち、前記原子群は、原子数が1つであってもよい。
挿入される前記原子群のa個の原子は、前記(n-a)員環の環状化合物の環を構成する結合を構成する任意の2つの原子を結ぶ直線上に配置されてもよいし、直線上以外の箇所に配置されてもよい。
前記変換においては、例えば、前記(n-a)員環の環状化合物の環を構成する結合を構成する2つの原子の間に前記原子群が挿入される。例えば、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理に適用する際には、前記変換においては、例えば、(n-a)個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの環を構成するペプチド結合の炭素原子と窒素原子との間に、前記a個のアミノ酸残基を含むペプチド残基が、2つの新たなペプチド結合を生成するように挿入される。
ここで、本明細書において、「2つの原子の間」とは、2つの原子を結ぶ直線上に限定されない。「2つの原子の間」とは、2つの原子のうちの1つの原子を含み、前記2つの原子を結ぶ直線と直交する第1の平面と、前記2つの原子のうちの他の1つの原子を含み、前記2つの原子を結ぶ直線と直交する第2の平面との間を、意味する。そして、前記原子群の前記a個の原子がそれら2平面の間に存在する場合は、たとえ前記原子群の全ての原子がそれら2平面の間に存在しなくても、「2つの原子の間」に前記原子群が挿入されたと解する。
前記原子群が挿入される、前記2つの原子による結合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1重結合、2重結合、3重結合などが挙げられる。また、例えば、炭素-炭素結合、炭素-酸素結合、炭素-窒素結合、炭素-硫黄結合などが挙げられる。
前記原子群が挿入される際、前記2つの原子の座標は変更されてもよいし、変更されなくてもよい。
前記立体構造データに変換する工程は、例えば、前記(n-a)員環の環状化合物の環を構成する結合に関するデータを、前記結合を構成する2つの原子と前記原子群における前記a個の原子との間に生成するa+1個の結合に関するデータに変換する処理を含む。
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理に適用する際には、前記立体構造データに変換する工程は、例えば、前記(n-a)個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドのペプチド結合に関するデータを、前記ペプチド結合を構成する2つの原子と前記ペプチド残基(a個のアミノ酸残基を含むペプチド残基)との間に生成する2つのペプチド結合に関するデータ、及び前記ペプチド残基に関するデータに変換する処理を含む。
前記結合に関するデータは、前記安定立体構造データに含まれるデータである。
前記変換する処理を行う方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記安定立体構造データ自体を変更することにより行ってもよい。また、化学構造式を描画するソフトウエアを用いて前記安定立体構造データを化学構造図に変換し、前記ソフトウエア上で前記化学構造図においてa個の原子を含む原子群を挿入し、変換された化学構造図をn員環の環状化合物の安定構造データとして出力することで、前記変換する処理を行ってもよい。
前記立体構造データに変換する工程においては、前記原子群に関するデータを複数の座標パターンで用いて、単一種類の分子の複数の前記立体構造データを得ることが好ましい。そうすることで、より安定な安定立体構造を求めることができる確率が高くなる。
ここで、「前記原子群に関するデータを複数の座標パターンで用いる」の一例としては、例えば、前記原子群の立体構造は同一とし、前記安定立体構造に対して前記原子群を配置する座標を複数の種類で行うことが挙げられる。
ここで、(n-1)員環の環状化合物の安定立体構造データを、n員環の環状化合物の立体構造データに変換する方法の一例を、図6A~図6Dを用いて説明する。
図6Aは、(n-1)員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。
図6Bは、図6Aにおいて、結合B1が削除された状態を示す模式図である。
図6Cは、図6Bにおいて、原子A3が挿入された状態を示す模式図である。
図6Dは、n員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。
図6A~図6D中、実線は結合を表し、黒いドットは原子を表し、破線は構造を省略していることを示す。なお、環構造を構成する原子に結合し、かつ環構造の構成に寄与しない原子は省略している。
この一例では、環を構成する結合B1を構成する2つの原子(原子A1及び原子A2)の間に、1つ(a=1)の原子A3を含む原子群を挿入して、(n-1)員環の環状化合物の安定立体構造データを、n員環の環状化合物の立体構造データに変換する。
具体的には以下のようにして変換を行う。
まず、(n-1)員環の環状化合物の安定立体構造データにおける、結合B1に関する結合情報データを削除する(図6B)。
続いて、1つ(a=1)の原子A3を含む原子群の原子情報データ、及び座標データを、前記安定立体構造データに追加する(図6C)。この際、例えば、原子A1と原子A3との距離、及び原子A2と原子A3との距離が、原子A1と原子A2との距離よりも短くなるように、原子A3の座標を決定する。
続いて、原子A1と原子A3とに新たに生成する結合B2に関する結合情報データ、及び原子A2と原子A3とに新たに生成する結合B3に関する結合情報データを、前記安定立体構造データに追加する(図6D)。
そうすることにより、(n-1)員環の環状化合物の安定立体構造データが、n員環の環状化合物の立体構造データに変換される。
次に、(n-1)員環の環状化合物の安定立体構造データを、n員環の環状化合物の立体構造データに変換する方法の他の一例を、図7A~図7Dを用いて説明する。この一例は、図6A~図6Dの一例において、原子A3が挿入される座標(位置)を変えた例である。
図7Aは、(n-1)員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。
図7Bは、図7Aにおいて、結合B1が削除された状態を示す模式図である。
図7Cは、図7Bにおいて、原子A3が挿入された状態を示す模式図である。
図7Dは、n員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。
図7A~図7D中、実線は結合を表し、黒いドットは原子を表し、破線は構造を省略していることを示す。なお、環構造を構成する原子に結合し、かつ環構造の構成に寄与しない原子は省略している。
この一例では、環を構成する結合B1を構成する2つの原子(原子A1及び原子A2)の間に、1つ(a=1)の原子A3を含む原子群を挿入して、(n-1)員環の環状化合物の安定立体構造データを、n員環の環状化合物の立体構造データに変換する。
具体的には以下のようにして変換を行う。
まず、(n-1)員環の環状化合物の安定立体構造データにおける、結合B1に関する結合情報データを削除する(図7B)。
続いて、1つ(a=1)の原子A3を含む原子群の原子情報データ、及び座標データを、前記安定立体構造データに追加する(図7C)。この際、例えば、原子A1と原子A3との距離、及び原子A2と原子A3との距離が、原子A1と原子A2との距離よりも短くなるように、原子A3の座標を決定する。
続いて、原子A1と原子A3とに新たに生成する結合B2’に関する結合情報データ、及び原子A2と原子A3とに新たに生成する結合B3’に関する結合情報データを、前記安定立体構造データに追加する(図7D)。
そうすることにより、(n-1)員環の環状化合物の安定立体構造データが、n員環の環状化合物の立体構造データに変換される。
次に、(n-2)員環の環状化合物の安定立体構造データを、n員環の環状化合物の立体構造データに変換する方法の一例を、図8A~図8Dを用いて説明する。
図8Aは、(n-2)員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。
図8Bは、図8Aにおいて、結合B1が削除された状態を示す模式図である。
図8Cは、図8Bにおいて、原子A4及び原子A5が挿入された状態を示す模式図である。
図8Dは、n員環の環状化合物の環構造の一部分を示す模式図である。
図8A~図8D中、実線は結合を表し、黒いドットは原子を表し、破線は構造を省略していることを示す。なお、環構造を構成する原子に結合し、かつ環構造の構成に寄与しない原子は省略している。
この一例では、環を構成する結合B1を構成する2つの原子(原子A1及び原子A2)の間に、2つ(a=2)の原子A4及び原子A5を含む原子群を挿入して、(n-2)員環の環状化合物の安定立体構造データを、n員環の環状化合物の立体構造データに変換する。
具体的には以下のようにして変換を行う。
まず、(n-2)員環の環状化合物の安定立体構造データにおける、結合B1に関する結合情報データを削除する(図8B)。
続いて、2つ(a=2)の原子A4及び原子A5を含む原子群の原子情報データ、及び座標データを、前記安定立体構造データに追加する(図8C)。この際、例えば、原子A1と原子A4との距離、及び原子A2と原子A5との距離が、原子A1と原子A2との距離よりも短くなるように、原子A4及び原子A5の座標を決定する。
続いて、原子A1と原子A4とに新たに生成する結合B4に関する結合情報データ、原子A4と原子A5とに新たに生成する結合B5に関する結合情報データ、及び原子A2と原子A5とに新たに生成する結合B6に関する結合情報データを、前記安定立体構造データに追加する(図8D)。
そうすることにより、(n-2)員環の環状化合物の安定立体構造データが、図8Dに示すようなn員環の環状化合物の立体構造データに変換される。
<エネルギー最小化を行う工程>
前記環状化合物の安定立体構造の算出方法においては、前記立体構造データを用いて前記n員環の環状化合物のエネルギー最小化を行う。
前記エネルギー最小化は、例えば、分子力学計算により行う。
前記エネルギー最小化は、例えば、前記n員環の環状化合物の個々の原子に働く力を求め、エネルギーが小さくなる方向に原子を移動させることにより行う。
原子に働く力としては、例えば、クーロン力、ファンデルワールス力などが挙げられる。
前記エネルギー最小化計算は、例えば、公知のアルゴリズムを用いて実現することができる。公知のアルゴリズムとしては、例えば、最急降下法(Steepest descent method)、束縛つき最急降下法(Steepest descent method with constraints)、共役勾配法(Conjugate gradient method)などが挙げられる。
最急降下法は、数値的に計算されたポテンシャルエネルギー関数の一次微分(つまり力)を利用してエネルギー極小点へ近づけていく方法である。
最急降下法の計算手順の一例を以下に示す。
・初期構造に対しポテンシャルエネルギーと力を計算する。
・構成原子を座標系の軸方向に沿って順番に少しずつ動かし、その都度エネルギーと力を再計算する。
・上記のプロセスを全原子に対して繰り返し、全原子をポテンシャルエネルギー面の下り坂方向の新しい位置まで動かす。
・あらかじめ定めておいた判定条件を満たした時点で操作を打ち切る。
なお、これらのアルゴリズムでは、ポテンシャルエネルギー面上の局所的な極小点(local minimum)を見つけ出すことができるが、必ずしも大域的な極小点(global minimum)を見つけ出すことができるわけではない。
前記エネルギー最小化は、例えば、公知のソフトウエアを用いて行うことができる。
前記分子力学計算に用いるプログラムとしては、例えば、tinker、amber(Assisted Model Building with Energy Refinement)、gromacs(Groningen Machine for Chemical Simulations)、charmm(Chemistry at HARvard Macromolecular Mechanics)、lammpsなどが挙げられる。
前記環状化合物の安定立体構造の算出方法は、コンピュータを用いて行われる。前記環状化合物の安定立体構造の算出方法に使用される前記コンピュータは、1つであってもよいし、複数であってもよい。例えば、複数のコンピュータに前記環状化合物の安定立体構造の算出方法を分散させて実行させてもよい。
前記環状化合物の安定立体構造の算出方法は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、各種周辺機器等を備えた通常のコンピュータシステム(例えば、各種ネットワークサーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ等)を用いることによって実現することができる。
ここで、前記環状化合物の安定立体構造の算出方法の一例のフローチャートを図9に示す。
図9で示すフローチャートは、1つの立体構造データを作成する一例を示す。
まず、(n-a)員環〔ただし、aは正の整数を表し、(n-a)≧3である。〕の環状化合物の安定立体構造データを、前記(n-a)員環の環状化合物の環を構成する結合を構成する2つの原子の間に少なくともa個の原子を含む原子群を挿入して、n員環の環状化合物の立体構造データに変換する(S31)。
続いて、得られた前記立体構造データを用いて前記n員環の環状化合物のエネルギー最小化を行う(S32)。
次に、前記環状化合物の安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートを図10に示す。
図10で示すフローチャートは、複数の立体構造データを作成する一例を示す。
まず、(n-a)員環〔ただし、aは正の整数を表し、(n-a)≧3である。〕の環状化合物の安定立体構造データを、前記(n-a)員環の環状化合物の環を構成する結合を構成する2つの原子の間に少なくともa個の原子を含む原子群を挿入して、n員環の環状化合物の立体構造データに変換する(S31)。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、立体構造データに変換する工程(S31)を行う。このとき、例えば、前記2つの原子の間に前記原子群を挿入する際の位置を変えた、同一種類の分子の他の立体構造データを作成する。前記原子群を挿入する際の位置を変えることで、同一種類の分子について複数の立体構造データを得ることができる。
次に、他の立体構造データを更に作成しない場合には、得られた複数の立体構造データそれぞれについて、エネルギー最小化を行う(S32)。
次に、前記環状化合物の安定立体構造の算出方法の他の一例のフローチャートを図11に示す。
図11で示すフローチャートは、複数の立体構造データを作成する一例を示す。
まず、(n-a)員環〔ただし、aは正の整数を表し、(n-a)≧3である。〕の環状化合物の安定立体構造データを、前記(n-a)員環の環状化合物の環を構成する結合を構成する2つの原子の間に少なくともa個の原子を含む原子群を挿入して、n員環の環状化合物の立体構造データに変換する(S31)。
次に、得られた立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S32)。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、立体構造データに変換する工程(S31)を行う。このとき、例えば、前記2つの原子の間に前記原子群を挿入する際の位置を変えた、同一種類の分子の他の立体構造データを作成する。前記原子群を挿入する際の位置を変えることで、同一種類の分子について複数の立体構造データを得ることができる。
次に、得られた立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S32)。
他の立体構造データを更に作成しない場合には、環状化合物の安定立体構造の算出を終了する。
(安定立体構造の算出方法〔第2の態様〕)
開示の安定立体構造の算出方法の第2の態様は、コンピュータを用いた、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法である。
本発明者らは、前述のとおり、コンピュータを用いて環状ペプチドの安定立体構造を求める際に、以下の手順において、環状ペプチドの立体構造データの作成方法を工夫することで、環状ペプチドの安定立体構造を短い時間で求めることが可能になることを見出した。
前記工程(1)環状ペプチドの立体構造データを得る工程
前記工程(2)エネルギー最小化を行う工程
この方法では、置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データから、置換基用残基のアミノ酸残基への一度の変換により、環状ペプチドの立体構造データを得る。
本発明者らは、上記方法に替えて、置換用残基のアミノ酸残基への変換を、一度ではなく段階的に行い、置換用残基を一部残した状態の環状ペプチドについてエネルギー最小化を行い、低いエネルギーを持つ構造のみを選択することを繰返しながら、最終的に所望の環状ペプチドのエネルギー最小化を行うことでも、計算対象の構造を適切に減らすことができ、計算が効率的になり、環状ペプチドの安定立体構造を短い時間で求めることが可能であることを見出した。
その方法は、以下の手順により行なわれる。
工程(11)第1の立体構造取得工程
工程(12)第1の立体構造選択工程
工程(13)第2の立体構造取得工程
工程(14)第2の立体構造選択工程
工程(15)第3の立体構造取得工程
工程(16)最小化工程
ただし、前記工程(13)及び工程(14)は、0回又は1回以上含む。即ち、前記工程(13)及び工程(14)を行なわない場合があってもよいし、1回以上行う場合があってもよい。
なお、前記工程(1)の利点は、前記工程(11)、工程(13)、及び工程(15)にも当てはまる。
<第1の立体構造取得工程〔工程(11)〕>
前記工程(11)では、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る。
前記工程(11)は、前記工程(1)において、前記環状ペプチドを、前記一部置換環状ペプチドに置き換えた以外は、前記工程(1)と同様の工程であり、好ましい態様も、前記工程(1)と同様である。
<第1の立体構造選択工程〔工程(12)〕>
前記工程(12)では、前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する。
前記エネルギー最小化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記工程(2)で説明したエネルギー最小化の方法などが挙げられる。
前記工程(12)では、例えば、前記エネルギー最小化を行い、前記立体構造データの各々についてコンフォメーションのエネルギーを算出し、所望の安定立体構造を選択する。
ここで、前記所望の安定立体構造の選択は、例えば、コンフォメーションのエネルギーに対してしきい値を設けて行うことができる。前記しきい値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記エネルギー最小化により算出された全エネルギーのうちの最小のエネルギーに基づいてしきい値を設けてもよい。
<第2の立体構造取得工程〔工程(13)〕>
前記工程(13)では、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る。
前記工程(13)は、前記工程(1)において、前記置換環状ペプチドを、前記一部置換環状ペプチドに置き換え、前記環状ペプチドを、前記第2の一部置換環状ペプチドに置き換えた以外は、前記工程(1)と同様の工程であり、好ましい態様も、前記工程(1)と同様である。
<第2の立体構造選択工程〔工程(14)〕>
前記工程(14)では、前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する。
前記エネルギー最小化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記工程(2)で説明したエネルギー最小化の方法などが挙げられる。
前記工程(14)では、例えば、前記エネルギー最小化を行い、前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データの各々についてコンフォメーションのエネルギーを算出し、所望の安定立体構造を選択する。
ここで、前記所望の安定立体構造の選択は、例えば、コンフォメーションのエネルギーに対してしきい値を設けて行うことができる。前記しきい値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記エネルギー最小化により算出された全エネルギーのうちの最小のエネルギーに基づいてしきい値を設けてもよい。
前記工程(13)及び工程(14)は、0回又は1回以上含む。即ち、前記工程(13)及び工程(14)を行なわない場合があってもよいし、1回以上行う場合があってもよい。
前記工程(13)及び工程(14)を2回以上行う場合は、前記第2の立体構造選択工程の後に、前記第2の立体構造取得工程を行うときがある。その場合、前記第2の立体構造選択工程で選択された安定立体構造の立体構造データが、次の前記第2の立体構造取得工程に供される。
<第3の立体構造取得工程〔工程(15)〕>
前記工程(15)では、前記第1の立体構造選択工程又は前記第2の立体構造選択工程で選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る。
前記工程(15)は、前記工程(1)において、前記置換環状ペプチドを、前記一部置換環状ペプチド又は前記第2の一部置換環状ペプチドに置き換えた以外は、前記工程(1)と同様の工程であり、好ましい態様も、前記工程(1)と同様である。
<最小化工程〔工程(16)〕>
前記工程(16)では、前記第3の立体構造取得工程で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う。
前記工程(16)は、前記工程(2)と同様の工程であり、好ましい態様も、前記工程(2)と同様である。
ここで、前記安定立体構造の算出方法の第2の態様の一例のフローチャートを図12に示す。
図12で示すフローチャートは、第2の立体構造取得工程、及び第2の立体構造選択工程が行なわれない一例である。
まず、予め作成しておいた置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る(S21)。前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S21)を行う。このとき、例えば、置き換えられている置換用残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える際に、先程の工程に用いたアミノ酸残基とは異なる安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。
次に、他の立体構造データを作成しない場合には、得られた一部置換環状ペプチドの立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S22)。
次に、エネルギー最小化の結果を用いて、一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する(S23)。
次に、選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る(S24)。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S24)を行う。
次に、他の立体構造データを作成しない場合には、得られた環状ペプチドの立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S25)。
前記安定立体構造の算出方法の第2の態様の他の一例のフローチャートを図13に示す。
図13で示すフローチャートは、第2の立体構造取得工程、及び第2の立体構造選択工程が行なわれない一例である。
まず、予め作成しておいた置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る(S21)。前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S21)を行う。このとき、例えば、置き換えられている置換用残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える際に、先程の工程に用いたアミノ酸残基とは異なる安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。
次に、他の立体構造データを作成しない場合には、得られた一部置換環状ペプチドの立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S22)。
次に、エネルギー最小化の結果を用いて、一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する(S23)。
次に、選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る(S24)。
次に、得られた環状ペプチドの立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S25)。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S24)を行う。
次に、得られた環状ペプチドの立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S25)。
更に他の立体構造データを作成しない場合には、立体構造データの算出を終了する。
前記安定立体構造の算出方法の第2の態様の他の一例のフローチャートを図14に示す。
図14で示すフローチャートは、第2の立体構造取得工程、及び第2の立体構造選択工程が行なわれる一例である。
まず、予め作成しておいた置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る(S21)。前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S21)を行う。このとき、例えば、置き換えられている置換用残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える際に、先程の工程に用いたアミノ酸残基とは異なる安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。
次に、他の立体構造データを作成しない場合には、得られた一部置換環状ペプチドの立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S22)。
次に、エネルギー最小化の結果を用いて、一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する(S23)。
次に、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る(S21A)。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S21A)を行う。このとき、例えば、置き換えられている置換用残基を、予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える際に、先程の工程に用いたアミノ酸残基とは異なる安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換える。
次に、他の立体構造データを作成しない場合には、得られた第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S22A)。
次に、エネルギー最小化の結果を用いて、第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する(S23A)。
次に、置換用残基の全てをアミノ酸残基に置き換えない場合には、工程S21Aに戻り、前記第2の一部置換環状ペプチドよりも、更に前記環状ペプチドの構造に近づくように、更に置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドを得る。
そして、工程S22A及び工程S23Aを行う。
次に、置換用残基の全てをアミノ酸残基に置き換える場合には、選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る(S24)。
次に、他の立体構造データを作成する場合には、再度、環状ペプチドの立体構造データを得る工程(S24)を行う。
次に、他の立体構造データを作成しない場合には、得られた環状ペプチドの立体構造データについて、エネルギー最小化を行う(S25)。
(プログラム)
開示のプログラムは、開示の前記安定立体構造の算出方法を実行するプログラムである。
前記プログラムは、使用するコンピュータシステムの構成及びオペレーティングシステムの種類・バージョンなどに応じて、公知の各種のプログラム言語を用いて作成することができる。
前記プログラムは、内蔵ハードディスク、外付けハードディスクなどの記憶媒体に記録しておいてもよいし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、MOディスク(Magneto-Optical disk)、USBメモリ〔USB(Universal Serial Bus) flash drive〕などの記憶媒体に記録しておいてもよい。前記プログラムをCD-ROM、DVD-ROM、MOディスク、USBメモリなどの記憶媒体に記録する場合には、必要に応じて随時、コンピュータシステムが有する記憶媒体読取装置を通じて、これを直接、又はハードディスクにインストールして使用することができる。また、コンピュータシステムから情報通信ネットワークを通じてアクセス可能な外部記憶領域(他のコンピュータ等)に前記プログラムを記録しておき、必要に応じて随時、前記外部記憶領域から情報通信ネットワークを通じてこれを直接、又はハードディスクにインストールして使用することもできる。
(コンピュータが読み取り可能な記録媒体)
開示のコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、開示の前記プログラムを記録してなる。
前記コンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内蔵ハードディスク、外付けハードディスク、CD-ROM、DVD-ROM、MOディスク、USBメモリなどが挙げられる。
(安定立体構造の算出装置)
<第1の態様>
開示の安定立体構造の算出装置の第1の態様は、取得部と、最小化部とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部を有する。
前記取得部では、環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る。
更に、前記取得部においては、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
前記最小化部では、前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う。
前記安定立体構造の算出装置の第1の態様は、開示の前記安定立体構造の算出方法の第1の態様を実行する。
前記取得部は、開示の安定立体構造の算出方法の第1の態様における前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程〔工程(1)〕を実行する。
前記最小化部は、開示の安定立体構造の算出方法の第1の態様におけるエネルギー最小化を行う工程〔工程(2)〕を実行する。
<第2の態様>
開示の安定立体構造の算出装置の第2の態様は、第1の立体構造取得部と、第1の立体構造選択部と、第3の立体構造取得部と、最小化部とを少なくとも有し、更に必要に応じて、第2の立体構造取得部、第2の立体構造選択部などのその他の部を有する。
前記第1の立体構造取得部では、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る。
前記第1の立体構造選択部では、前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する。
前記第2の立体構造取得部では、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る。
前記第2の立体構造選択部では、前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する。
前記第3の立体構造取得部では、前記第1の立体構造選択部又は前記第2の立体構造選択部で選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る。
前記最小化部では、前記第3の立体構造取得部で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う。
前記第1の立体構造取得部、前記第2の立体構造取得部、及び前記第3の立体構造取得部において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる。
前記安定立体構造の算出装置の第2の態様は、開示の前記安定立体構造の算出方法の第2の態様を実行する。
前記第1の立体構造取得部は、開示の安定立体構造の算出方法の第2の態様における前記第1の立体構造取得工程〔工程(11)〕を実行する。
前記第1の立体構造選択部は、開示の安定立体構造の算出方法の第2の態様における前記第1の立体構造選択工程〔工程(12)〕を実行する。
前記第2の立体構造取得部は、開示の安定立体構造の算出方法の第2の態様における前記第2の立体構造取得工程〔工程(13)〕を実行する。
前記第2の立体構造選択部は、開示の安定立体構造の算出方法の第2の態様における前記第2の立体構造選択工程〔工程(14)〕を実行する。
前記第3の立体構造取得部は、開示の安定立体構造の算出方法の第2の態様における前記第3の立体構造取得工程〔工程(15)〕を実行する。
前記最小化部は、開示の安定立体構造の算出方法の第2の態様における前記最小化工程〔工程(16)〕を実行する。
図15に、開示の安定立体構造の算出装置の構成例を示す。
安定立体構造の算出装置10は、例えば、CPU11、メモリ12、記憶部13、表示部14、入力部15、出力部16、I/Oインターフェース部17等がシステムバス18を介して接続されて構成される。
CPU(Central Processing Unit)11は、演算(四則演算、比較演算等)、ハードウエア及びソフトウエアの動作制御などを行う。例えば、CPUが、前記取得部、及び前記最小化部に対応する。
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などのメモリである。前記RAMは、前記ROM及び記憶部13から読み出されたOS(Operating System)及びアプリケーションプログラムなどを記憶し、CPU11の主メモリ及びワークエリアとして機能する。
記憶部13は、各種プログラム及びデータを記憶する装置であり、例えば、ハードディスクである。例えば、前記(n-a)員環の安定立体構造データは、記憶部13に格納される。記憶部13には、更にCPU11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OSなどが格納される。
前記プログラムは、記憶部13に格納され、メモリ12のRAM(主メモリ)にロードされ、CPU11により実行される。
表示部14は、表示装置であり、例えば、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置である。
入力部15は、各種データの入力装置であり、例えば、キーボード、ポインティングデバイス(例えば、マウス等)などである。
出力部16は、各種データの出力装置であり、例えば、プリンタである。
I/Oインターフェース部17は、各種の外部装置を接続するためのインターフェースである。例えば、CD-ROM、DVD-ROM、MOディスク、USBメモリなどのデータの入出力を可能にする。
図16に、開示の安定立体構造の算出装置の他の構成例を示す。
図16の構成例は、クラウド型の構成例であり、CPU11が、記憶部13等とは独立している。この構成例では、ネットワークインターフェース部19、20を介して、記憶部13等を格納するコンピュータ30と、CPU11を格納するコンピュータ40とが接続される。
ネットワークインターフェース部19、20は、インターネットを利用して、通信を行うハードウェアである。
図17に、開示の安定立体構造の算出装置の他の構成例を示す。
図17の構成例は、クラウド型の構成例であり、記憶部13が、CPU11等とは独立している。この構成例では、ネットワークインターフェース部19、20を介して、CPU11等を格納する。
以下、開示の環状ペプチドの安定立体構造の算出方法の技術について説明するが、開示の技術は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
Gramicidin-Sについて、アラニン置換環状ペプチドを経由して安定立体構造の算出を行った。
Gramicidin-Sは以下の分子構造を有する環状ペプチドである。なお、Gramicidin-Sは、体系名の一つとして、シクロ(L-Val-L-Orn-L-Leu-D-Phe-L-Pro-L-Val-L-Orn-L-Leu-D-Phe-L-Pro-)で表される。
Figure 0007214972000003
<アラニン置換環状ペプチドの安定立体構造の算出>
上記Gramicidin-Sにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基に置き換えたアラニン置換環状ペプチドの立体構造データを用いてアラニン置換環状ペプチドの安定立体構造を算出した。なお、上記Gramicidin-Sは、グリシン残基を有さない。
アラニン置換環状ペプチドの分子構造を以下に示す。
Figure 0007214972000004
前記アラニン置換環状ペプチドについて、後述の環状化合物の安定立体構造の算出例の参考例4と同様にして、安定立体構造を求めた。即ち、5つのアラニンを環状に結合した環状ペプチドをRing Opening法によって作成し、随時アミノ酸残基(アラニン残基及びプロリン残基)の数を増やすことで、前記アラニン置換環状ペプチドの安定立体構造を求めた。アミノ酸残基の数を増やす際、最低エネルギーから15kca1/mol以内のエネルギーの低エネルギー構造に限定して、次の構造生成の入力構造とした。最終的に得られる前記アラニン置換環状ペプチドの安定立体構造についても、最低エネルギーから15kca1/mol以内のエネルギーの低エネルギー構造を安定立体構造として抽出した。その結果、前記アラニン置換環状ペプチドについて、10,027の安定立体構造が得られた。
なお、エネルギー最小化計算には、以下の計算機を用いた。並列計算は行わず、1コアのみを使用した。
・CELCIUS W510, Intel(R) Xeon(R) CPU E3128, 16GB メモリ
<モデル側鎖の作成>
Gramicidin-Sに含まれるバリン(Val)、ロイシン(Leu)、オルニチン(Orn)、及びD-フェニルアラニン(D-Phe)について、安定立体構造を求めた。安定立体構造は、以下の構造におけるエネルギー最小化により求め、各アミノ酸について、最低エネルギーから10kca1/mol以内のエネルギーの低エネルギー構造を安定立体構造として抽出した。
Figure 0007214972000005
その結果、以下の数の安定立体構造が得られた。
バリン(Val):18
ロイシン(Leu):58
オルニチン(Orn):164
D-フェニルアラニン(D-Phe):20
<環状ペプチドの立体構造データの作成>
前記アラニン置換環状ペプチドの10,027の安定立体構造における置き換えられるアラニン残基を、上記のモデル側鎖(アミノ酸残基)の安定立体構造に置き換えた。その際、前記アラニン残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の安定立体構造とを対比して、前記式(1)においてAが30°(即ち二面角φの差が30°以内)かつ、前記式(2)においてBが30°(即ち二面角ψの差が30°以内)を満たすモデル側鎖(アミノ酸残基)に、前記アラニン残基を置き換えた。
その結果、上記の各安定立体構造〔バリン(Val):18、ロイシン(Leu):58、オルニチン(Orn):164、D-フェニルアラニン(D-Phe):20〕の1~2%が環状ペプチドの立体構造データの作成に使用された。
そして、1つの前記アラニン置換環状ペプチドに対して約1.2万の環状ペプチドの立体構造データが生成された。即ち、開示の安定立体構造の算出方法により、約1.1億の環状ペプチド(Gramicidin-S)の立体構造データが生成された。
環状ペプチドの立体構造データの数が約1.1億であれば、エネルギー最小化計算が実行可能な数である。
(比較例1)
実施例1で算出した10,027のアラニン置換環状ペプチドの安定立体構造に対して、実施例1で算出したモデル側鎖の安定立体構造〔バリン(Val):18、ロイシン(Leu):58、オルニチン(Orn):164、D-フェニルアラニン(D-Phe):20〕の全てを置き換えた場合の環状ペプチド(Gramicidin-S)の立体構造データの数を計算した。
環状ペプチド(Gramicidin-S)には、バリン残基が2つ、ロイシン残基が2つ、オルニチン残基が2つ、D-フェニルアラニン残基が2つある。そのため、環状ペプチド(Gramicidin-S)の立体構造データの数は、1つのアラニン置換環状ペプチドの安定立体構造に対して、約12兆(=18×58×164×20)となり、10,027のアラニン置換環状ペプチドの安定立体構造に対して、約12京(=10,027×約12兆)となる。この数は、エネルギー最小化計算が実行可能な数ではない。
(実施例2)
Gramicidin-Sについて、グリシン置換環状ペプチドを経由して安定立体構造の算出を行った。
Gramicidin-Sは以下の分子構造を有する環状ペプチドである。なお、Gramicidin-Sは、体系名の一つとして、シクロ(L-Val-L-Orn-L-Leu-D-Phe-L-Pro-L-Val-L-Orn-L-Leu-D-Phe-L-Pro-)で表される。
Figure 0007214972000006
<グリシン置換環状ペプチドの安定立体構造の算出>
上記Gramicidin-Sにおいて、グリシン、及びプロリン以外のアミノ酸の残基をグリシン残基に置き換えたグリシン置換環状ペプチドの立体構造データを用いてグリシン置換環状ペプチドの安定立体構造を算出した。なお、上記Gramicidin-Sは、グリシン残基を有さない。
グリシン置換環状ペプチドの分子構造を以下に示す。
Figure 0007214972000007
前記グリシン置換環状ペプチドについて、後述の環状化合物の安定立体構造の算出例の参考例4と同様にして、安定立体構造を求めた。即ち、5つのグリシンを環状に結合した環状ペプチドをRing Opening法によって作成し、随時アミノ酸残基(グリシン残基及びプロリン残基)の数を増やすことで、前記グリシン置換環状ペプチドの安定立体構造を求めた。アミノ酸残基の数を増やす際、最低エネルギーから15kca1/mol以内のエネルギーの低エネルギー構造に限定して、次の構造生成の入力構造とした。最終的に得られる前記グリシン置換環状ペプチドの安定立体構造についても、最低エネルギーから15kca1/mol以内のエネルギーの低エネルギー構造を安定立体構造として抽出した。その結果、前記グリシン置換環状ペプチドについて、17,110の安定立体構造が得られた。
なお、エネルギー最小化計算には、以下の計算機を用いた。並列計算は行わず、1コアのみを使用した。
・CELCIUS W510, Intel(R) Xeon(R) CPU E3128, 16GB メモリ
<モデル側鎖の作成>
Gramicidin-Sに含まれるバリン(Val)、ロイシン(Leu)、オルニチン(Orn)、及びD-フェニルアラニン(D-Phe)について、安定立体構造を求めた。安定立体構造は、以下の構造におけるエネルギー最小化により求め、各アミノ酸について、最低エネルギーから10kca1/mol以内のエネルギーの低エネルギー構造を安定立体構造として抽出した。
Figure 0007214972000008
その結果、以下の数の安定立体構造が得られた。
バリン(Val):18
ロイシン(Leu):58
オルニチン(Orn):164
D-フェニルアラニン(D-Phe):20
<環状ペプチドの立体構造データの作成>
前記グリシン置換環状ペプチドの17,110の安定立体構造における置き換えられるグリシン残基を、上記のモデル側鎖(アミノ酸残基)の安定立体構造に置き換えた。その際、前記グリシン残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の安定立体構造とを対比して、前記式(1)においてAが35°(即ち二面角φの差が35°以内)かつ、前記式(2)においてBが35°(即ち二面角ψの差が35°以内)を満たすモデル側鎖(アミノ酸残基)に、前記グリシン残基を置き換えた。
その結果、上記の各安定立体構造〔バリン(Val):18、ロイシン(Leu):58、オルニチン(Orn):164、D-フェニルアラニン(D-Phe):20〕の0.5~1%が環状ペプチドの立体構造データの作成に使用された。
そして、1つの前記グリシン置換環状ペプチドに対して約3,500の環状ペプチドの立体構造データが生成された。即ち、開示の安定立体構造の算出方法により、約0.6億の環状ペプチド(Gramicidin-S)の立体構造データが生成された。
環状ペプチドの立体構造データの数が約0.6億であれば、エネルギー最小化計算が実行可能な数である。
〔参考例〕
以下、開示の技術に関する環状化合物の安定立体構造の算出方法の技術について説明するが、開示の技術は下記参考例に何ら限定されるものではない。なお、以下においては、データの変換方法について具体的には説明していないが、実際には、(n-a)員環の安定立体構造からn員環の立体構造への変換は、(n-a)員環の安定立体構造データをn員環の立体構造データに変換することで行った。
(参考例1)
<7員環の環状炭化水素>
7員環の環状炭化水素(シクロヘプタン)について、開示の技術によって環状化合物の安定立体構造を求めた。
6員環の環状炭化水素(シクロヘキサン)の2つの安定立体構造(いす形、舟形)のそれぞれについて、以下の4つの結合の間のそれぞれに、メチレン基を挿入した。以下の構造において、挿入される結合を太字で示した。
Figure 0007214972000009
その結果、以下の構造で示す4つの初期構造を得た。
Figure 0007214972000010
上記4つの初期構造について、エネルギー最小化を行い安定立体構造を得た。4回のエネルギー最小化計算に使用した時間は、45秒であった。
なお、エネルギー最小化計算には、以下の計算機を用いた。
・PRIMERGY RX200 S6 , Xeon(R) X5650, 24GBメモリ
並列計算は行わず、1コアのみを使用した。
(参考例1A)
<7員環の環状炭化水素>
7員環の環状炭化水素(シクロヘプタン)について、Ring Opening法によって安定立体構造を求めた。
下記構造の7員環の環状炭化水素(シクロヘプタン)について、1つの炭素-炭素結合を切断して開環し、前記炭素-炭素結合の二面角を90度毎に変更した。6つの炭素-炭素結合について同様の操作を行い、合計4=1,024個の構造を生成した。
Figure 0007214972000011
1,024個の構造から、閉環条件(開環した原子のペアの距離が5Å以内)を満たす109個の構造を選択し、それら109個の構造について、参考例1で用いた計算機を用いてエネルギー最小化を行い、エネルギー値が最小から5kca1/mol以内の複数の安定立体構造を得た。109回のエネルギー最小化計算に使用した時間は、95秒であった。
なお、参考例1と参考例1Aとでは、同じ安定立体構造が得られた。
(参考例2)
<10員環の環状炭化水素>
参考例1と同様の方法により、6員環の環状炭化水素(シクロヘキサン)を用いて、7員環の環状炭化水素(シクロヘプタン)の安定立体構造を求めた。
更に、求められた7員環の環状炭化水素(シクロヘプタン)の安定立体構造を用いて、参考例1と同様の方法により、8員環の環状炭化水素(シクロオクタン)の安定立体構造を求めた。
更に、求められた8員環の環状炭化水素(シクロオクタン)の安定立体構造を用いて、参考例1と同様の方法により、9員環の環状炭化水素(シクロノナン)の安定立体構造を求めた。
更に、求められた9員環の環状炭化水素(シクロノナン)の安定立体構造を用いて、参考例1と同様の方法により、10員環の環状炭化水素(シクロデカン)の安定立体構造を求めた。
その結果、これらの立体構造のエネルギー最小化計算に使用した時間は、354秒であった。
(参考例2A)
<10員環の環状炭化水素>
参考例1Aにおいて、7員環の環状炭化水素(シクロヘプタン)を、10員環の環状炭化水素(シクロデカン)に変更した以外は、参考例1Aと同様にして、安定立体構造を求めた。
その結果、立体構造のエネルギー最小化計算に使用した時間は、1,326秒であった。
(参考例3)
<11員環の環状炭化水素>
参考例1と同様の方法により、6員環の環状炭化水素(シクロヘキサン)を用いて、7員環の環状炭化水素(シクロヘプタン)の安定立体構造を求めた。
更に、求められた7員環の環状炭化水素(シクロヘプタン)の安定立体構造を用いて、参考例1と同様の方法により、8員環の環状炭化水素(シクロオクタン)の安定立体構造を求めた。
更に、求められた8員環の環状炭化水素(シクロオクタン)の安定立体構造を用いて、参考例1と同様の方法により、9員環の環状炭化水素(シクロノナン)の安定立体構造を求めた。
更に、求められた9員環の環状炭化水素(シクロノナン)の安定立体構造を用いて、参考例1と同様の方法により、10員環の環状炭化水素(シクロデカン)の安定立体構造を求めた。
更に、求められた10員環の環状炭化水素(シクロデカン)の安定立体構造を用いて、参考例1と同様の方法により、11員環の環状炭化水素(シクロウンデカン)の安定立体構造を求めた。
その結果、これらの立体構造のエネルギー最小化計算に使用した時間は、866秒であった。
(参考例3A)
<11員環の環状炭化水素>
参考例1Aにおいて、7員環の環状炭化水素(シクロヘプタン)を、11員環の環状炭化水素(シクロウンデカン)に変更した以外は、参考例1Aと同様にして、安定立体構造を求めた。
その結果、立体構造のエネルギー最小化計算に使用した時間は、3,719秒であった。
参考例1~3、参考例1A~3Aの計算時間の結果を表1にまとめた。
Figure 0007214972000012
(参考例4)
<環状ペプチド>
6つのグリシンを環状に結合した環状ペプチドについて、開示の技術によって安定立体構造を求めた。
まず、5つのグリシンを環状に結合した環状ペプチドの立体構造を、Ring Opening法によって作成した。その結果、310個の立体構造が得られた。
続いて、5残基の環状ペプチドの5箇所のアミド結合にグリシン残基を挿入して、合計310×5=1,550個の立体構造を作成した。これらの立体構造について、エネルギー最小化を行った。なお、その際、アミド結合がシスとなった構造と、重複した構造とを除き、1,073個の立体構造についてエネルギー最小化を行った。
同様にして、7つのグリシンが環状に結合した環状ペプチドを得た。その際の、立体構造の数は、6,084個であった。これらの立体構造について、エネルギー最小化を行った。
同様にして、8つのグリシンが環状に結合した環状ペプチドを得た。その際の、立体構造の数は、16,684個であった。これらの立体構造について、エネルギー最小化を行った。
次に、最低エネルギーから15kca1/mol以内のエネルギーの低エネルギー構造に限定して、次の構造生成の入力構造とした。
8つのグリシンが環状に結合した環状ペプチドの16,684個の立体構造から、上記条件に当てはまる6,543個の立体構造に限定して、さらにグリシンの挿入を行って、9つのグリシンが環状に結合した環状ペプチド23,462個の立体構造を得た。これらの立体構造について、エネルギー最小化を行った。
更に、9つのグリシンが環状に結合した環状ペプチドの23,462個の立体構造から、上記条件に当てはまる20,056個の立体構造に限定して、さらにグリシンの挿入を行って、10個のグリシンが環状に結合した環状ペプチド67,046個の立体構造を得た。これらの立体構造について、エネルギー最小化を行った。
これらの計算にかかる時間は、表2に示したとおりである。
なお、表2において、項目「6残基」の時間は、6つのグリシンを環状の結合した環状ペプチドの複数の立体構造について、エネルギー最小化をするのにかかった時間である。
表2において、項目「8残基」の時間は、6つのグリシンを環状の結合した環状ペプチドの複数の立体構造、7つのグリシンを環状の結合した環状ペプチドの複数の立体構造、及び8つのグリシンを環状の結合した環状ペプチドの複数の立体構造について、エネルギー最小化をするのにかかった時間である。
表2において、項目「10残基」の時間は、6つのグリシンを環状の結合した環状ペプチドの複数の立体構造、7つのグリシンを環状の結合した環状ペプチドの複数の立体構造、8つのグリシンを環状の結合した環状ペプチドの複数の立体構造、9つのグリシンを環状の結合した環状ペプチドの複数の立体構造、及び10つのグリシンを環状の結合した環状ペプチドの複数の立体構造について、エネルギー最小化をするのにかかった時間である。
なお、エネルギー最小化計算には、以下の計算機を用いた。
・CELCIUS W510, Intel(R) Xeon(R) CPU E3128, 16GB メモリ
並列計算は行わず、1コアのみを使用した。
(参考例4A)
6つのグリシンを環状に結合した環状ペプチド、及び8つのグリシンを環状に結合した環状ペプチドについて、Ring Opening法によって立体構造を求め、エネルギー最小化を行った。なお、参考例1Aと同様に、開環した結合1つについて、90度毎に二面角を変更して複数の立体構造を作製し、作製された複数の立体構造から閉環条件(開環した原子のペアの距離が5Å以内)を満たす立体構造を選択した。
6つのグリシンを環状に結合した環状ペプチドについては、14,734個の立体構造について、エネルギー最小化を行った。
8つのグリシンを環状に結合した環状ペプチドについては、1,573,436個の立体構造について、エネルギー最小化を行った。
なお、10個のグリシンを環状に結合した環状ペプチドの場合、計算時間は、8つのグリシンを環状に結合した環状ペプチドの計算時間の4倍となると予想される。これは、以下の理由からである。
グリシン残基数が1増えると、回転可能な結合が2つ増える。1つの結合について90度毎、4つの角度に変化させるので、4倍で生成コンフォメーションの数が増える。
参考例4Aの方法においてエネルギー最小化に要する時間を表2に示した。
エネルギー最小化計算に使用した計算機は、参考例4で使用した計算機と同じである。
Figure 0007214972000013
表2中、残基数は、環状ペプチド中のグリシン残基数を表す。
開示の技術の態様について、更に以下に付記する。
(付記1)
コンピュータを用いた、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法であって、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程と、
前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
を含み、
前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、
ことを特徴とする安定立体構造の算出方法。
(付記2)
前記置換環状ペプチドが、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基に置き換えたアラニン置換環状ペプチド、並びに、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、及びプロリン以外のアミノ酸の残基をグリシン残基に置き換えたグリシン置換環状ペプチドのいずれかである付記1に記載の安定立体構造の算出方法。
(付記3)
前記対比が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造における二面角と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造における二面角とを比べることにより行われる付記1から2のいずれかに記載の安定立体構造の算出方法。
(付記4)
前記対比が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造における二面角と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造における二面角とを比べることにより行われ、以下の式(1)及び(2)を満たす場合に、前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる付記1から3のいずれかに記載の安定立体構造の算出方法。
|二面角φ(Ala)-二面角φ(Amino acid)|≦A ・・・式(1)
|二面角ψ(Ala)-二面角ψ(Amino acid)|≦B ・・・式(2)
ここで、A及びBは任意に設定される角度である。
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基において、α-炭素原子をCα(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合するメチル基の炭素原子をCm(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をN(Ala)とし、前記Np1(Ala)に結合し前記N(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Ala)とし、前記Cp2(Ala)に結合し前記Cp2(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Ala)とするときの、Cp1(Ala)-Np1(Ala)-Cα(Ala)が形成する面と、Np1(Ala)-Cα(Ala)-Cm(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Ala)であり、Cm(Ala)-Cα(Ala)-Cp2(Ala)が形成する面と、Cα(Ala)-Cp2(Ala)-Np2(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Ala)である。
前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造において、α-炭素原子をCα(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をNp1(Amino acid)とし、前記Np1(Amino acid)に結合し前記Np1(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Amino acid)とし、前記Cp2(Amino acid)に結合し前記Cp2(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合し前記Np1、前記Cp2、及び水素原子以外の原子をR(Amino acid)としたときの、Cp1(Amino acid)-Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)が形成する面と、Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)-R(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Amino acid)であり、R(Amino acid)-Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)が形成する面と、Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)-Np2(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Amino acid)である。
(付記5)
前記式(1)において前記Aが40°であり、前記式(2)において前記Bが40°である付記4に記載の安定立体構造の算出方法。
(付記6)
前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理を含み、
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理が、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理を含む付記1から5のいずれかに記載の安定立体構造の算出方法。
(付記7)
前記置換環状ペプチドがアラニン残基及びグリシン残基を有する場合、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理において、前記グリシン残基が、前記アラニン残基よりも後に前記置換環状ペプチドの前駆体に導入されて、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データが作成される付記6に記載の安定立体構造の算出方法。
(付記8)
前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理を含み、
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理が、(n-a)個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの安定立体構造データを、少なくともa個のアミノ酸残基を含むペプチド残基に関するデータを用いて、前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの立体構造データに変換する処理と、前記n個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドのエネルギー最小化を行う処理とを含む付記6に記載の安定立体構造の算出方法。
(付記9)
コンピュータを用いた、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法であって、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第1の立体構造取得工程と、
前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第1の立体構造選択工程と、
を少なくとも含み、更に、
前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第2の立体構造取得工程と、
前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第2の立体構造選択工程と、
を、0回又は1回以上含み、
更に、前記第1の立体構造選択工程又は前記第2の立体構造選択工程で選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る第3の立体構造取得工程と、
前記第3の立体構造取得工程で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
を含み、
前記第1の立体構造取得工程、前記第2の立体構造取得工程、及び前記第3の立体構造取得工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、
ことを特徴とする安定立体構造の算出方法。
(付記10)
コンピュータに、環状ペプチドの安定立体構造を算出させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程と、
前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
を実行させ、
前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、ことを特徴とするプログラム。
(付記11)
前記置換環状ペプチドが、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基に置き換えたアラニン置換環状ペプチド、並びに、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、及びプロリン以外のアミノ酸の残基をグリシン残基に置き換えたグリシン置換環状ペプチドのいずれかである付記10に記載のプログラム。
(付記12)
前記対比が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造における二面角と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造における二面角とを比べることにより行われる付記10から11のいずれかに記載のプログラム。
(付記13)
前記対比が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造における二面角と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造における二面角とを比べることにより行われ、以下の式(1)及び(2)を満たす場合に、前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる付記10から12のいずれかに記載のプログラム。
|二面角φ(Ala)-二面角φ(Amino acid)|≦A ・・・式(1)
|二面角ψ(Ala)-二面角ψ(Amino acid)|≦B ・・・式(2)
ここで、A及びBは任意に設定される角度である。
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基において、α-炭素原子をCα(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合するメチル基の炭素原子をCm(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をN(Ala)とし、前記Np1(Ala)に結合し前記N(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Ala)とし、前記Cp2(Ala)に結合し前記Cp2(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Ala)とするときの、Cp1(Ala)-Np1(Ala)-Cα(Ala)が形成する面と、Np1(Ala)-Cα(Ala)-Cm(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Ala)であり、Cm(Ala)-Cα(Ala)-Cp2(Ala)が形成する面と、Cα(Ala)-Cp2(Ala)-Np2(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Ala)である。
前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造において、α-炭素原子をCα(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をNp1(Amino acid)とし、前記Np1(Amino acid)に結合し前記Np1(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Amino acid)とし、前記Cp2(Amino acid)に結合し前記Cp2(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合し前記Np1、前記Cp2、及び水素原子以外の原子をR(Amino acid)としたときの、Cp1(Amino acid)-Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)が形成する面と、Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)-R(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Amino acid)であり、R(Amino acid)-Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)が形成する面と、Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)-Np2(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Amino acid)である。
(付記14)
前記式(1)において前記Aが40°であり、前記式(2)において前記Bが40°である付記13に記載のプログラム。
(付記15)
前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理を含み、
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理が、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理を含む付記10から14のいずれかに記載のプログラム。
(付記16)
前記置換環状ペプチドがアラニン残基及びグリシン残基を有する場合、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理において、前記グリシン残基が、前記アラニン残基よりも後に前記置換環状ペプチドの前駆体に導入されて、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データが作成される付記15に記載のプログラム。
(付記17)
前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理を含み、
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理が、(n-a)個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの安定立体構造データを、少なくともa個のアミノ酸残基を含むペプチド残基に関するデータを用いて、前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの立体構造データに変換する処理と、前記n個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドのエネルギー最小化を行う処理とを含む付記15に記載のプログラム。
(付記18)
コンピュータを用いた、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法であって、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第1の立体構造取得工程と、
前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第1の立体構造選択工程と、
を少なくとも含み、更に、
前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第2の立体構造取得工程と、
前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第2の立体構造選択工程と、
を、0回又は1回以上含み、
更に、前記第1の立体構造選択工程又は前記第2の立体構造選択工程で選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る第3の立体構造取得工程と、
前記第3の立体構造取得工程で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
を含み、
前記第1の立体構造取得工程、前記第2の立体構造取得工程、及び前記第3の立体構造取得工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、
ことを特徴とする安定立体構造の算出方法。
(付記19)
環状ペプチドの安定立体構造の算出装置であって、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基に置き換えたアラニン置換環状ペプチドの立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記アラニン置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられているアラニン残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る取得部と、
前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う最小化部と、を有し、
前記取得部において、前記アラニン残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記アラニン置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記アラニン残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記アラニン残基が置き換えられる、ことを特徴とする安定立体構造の算出装置。
(付記20)
前記置換環状ペプチドが、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基に置き換えたアラニン置換環状ペプチド、並びに、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、及びプロリン以外のアミノ酸の残基をグリシン残基に置き換えたグリシン置換環状ペプチドのいずれかである付記19に記載の安定立体構造の算出装置。
(付記21)
前記対比が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造における二面角と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造における二面角とを比べることにより行われる付記19から20のいずれかに記載の安定立体構造の算出装置。
(付記22)
前記対比が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造における二面角と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造における二面角とを比べることにより行われ、以下の式(1)及び(2)を満たす場合に、前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる付記19から21のいずれかに記載の安定立体構造の算出装置。
|二面角φ(Ala)-二面角φ(Amino acid)|≦A ・・・式(1)
|二面角ψ(Ala)-二面角ψ(Amino acid)|≦B ・・・式(2)
ここで、A及びBは任意に設定される角度である。
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基において、α-炭素原子をCα(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合するメチル基の炭素原子をCm(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をN(Ala)とし、前記Np1(Ala)に結合し前記N(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Ala)とし、前記Cp2(Ala)に結合し前記Cp2(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Ala)とするときの、Cp1(Ala)-Np1(Ala)-Cα(Ala)が形成する面と、Np1(Ala)-Cα(Ala)-Cm(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Ala)であり、Cm(Ala)-Cα(Ala)-Cp2(Ala)が形成する面と、Cα(Ala)-Cp2(Ala)-Np2(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Ala)である。
前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造において、α-炭素原子をCα(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をNp1(Amino acid)とし、前記Np1(Amino acid)に結合し前記Np1(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Amino acid)とし、前記Cp2(Amino acid)に結合し前記Cp2(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合し前記Np1、前記Cp2、及び水素原子以外の原子をR(Amino acid)としたときの、Cp1(Amino acid)-Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)が形成する面と、Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)-R(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Amino acid)であり、R(Amino acid)-Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)が形成する面と、Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)-Np2(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Amino acid)である。
(付記23)
前記式(1)において前記Aが40°であり、前記式(2)において前記Bが40°である付記22に記載の安定立体構造の算出装置。
(付記24)
前記取得部が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理を実行し、
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理が、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理を含む付記19から24のいずれかに記載の安定立体構造の算出装置。
(付記25)
前記置換環状ペプチドがアラニン残基及びグリシン残基を有する場合、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理において、前記グリシン残基が、前記アラニン残基よりも後に前記置換環状ペプチドの前駆体に導入されて、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データが作成される付記24に記載の安定立体構造の算出装置。
(付記26)
前記取得部が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理を実行し、
前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理が、(n-a)個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの安定立体構造データを、少なくともa個のアミノ酸残基を含むペプチド残基に関するデータを用いて、前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの立体構造データに変換する処理と、前記n個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドのエネルギー最小化を行う処理とを含む付記24に記載の安定立体構造の算出装置。
(付記27)
環状ペプチドの安定立体構造の算出装置であって、
前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換えた置換環状ペプチド(ただし、アラニン残基は、グリシン残基に置き換えられてもよい)の立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第1の立体構造取得部と、
前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第1の立体構造選択部と、
を少なくとも有し、更に、
前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第2の立体構造取得部と、
前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第2の立体構造選択部と、
を、有してもよく、
更に、前記第1の立体構造選択部又は前記第2の立体構造選択部で選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る第3の立体構造取得部と、
前記第3の立体構造取得部で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う最小化部と、
を有し、
前記第1の立体構造取得部、前記第2の立体構造取得部、及び前記第3の立体構造取得部において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、ことを特徴とする安定立体構造の算出装置。
10 安定立体構造の算出装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶部
14 表示部
15 入力部
16 出力部
17 I/Oインターフェース部
18 システムバス
19 ネットワークインターフェース部
20 ネットワークインターフェース部
30 コンピュータ
40 コンピュータ

Claims (13)

  1. コンピュータを用いた、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法であって、
    前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換え、前記環状ペプチドにおけるアラニン残基をグリシン残基である置換用残基に置き換えてもよい、置換環状ペプチドの立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程と、
    前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
    を含み、
    前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、
    ことを特徴とする安定立体構造の算出方法。
  2. 前記置換環状ペプチドが、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基に置き換えたアラニン置換環状ペプチド、並びに、前記環状ペプチドにおいて、グリシン、及びプロリン以外のアミノ酸の残基をグリシン残基に置き換えたグリシン置換環状ペプチドのいずれかである請求項1に記載の安定立体構造の算出方法。
  3. 前記対比が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造における二面角と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造における二面角とを比べることにより行われる請求項1から2のいずれかに記載の安定立体構造の算出方法。
  4. 前記対比が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造における二面角と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造における二面角とを比べることにより行われ、以下の式(1)及び(2)を満たす場合に、前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる請求項1から3のいずれかに記載の安定立体構造の算出方法。
    |二面角φ(Ala)-二面角φ(Amino acid)|≦A ・・・式(1)
    |二面角ψ(Ala)-二面角ψ(Amino acid)|≦B ・・・式(2)
    ここで、A及びBは30°~45°の任意に設定される角度である。
    前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基において、α-炭素原子をCα(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合するメチル基の炭素原子をCm(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をNp1(Ala)とし、前記Np1(Ala)に結合し前記Np1(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Ala)とし、前記Cα(Ala)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Ala)とし、前記Cp2(Ala)に結合し前記Cp2(Ala)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Ala)とするときの、Cp1(Ala)-Np1(Ala)-Cα(Ala)が形成する面と、Np1(Ala)-Cα(Ala)-Cm(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Ala)であり
    Cm(Ala)-Cα(Ala)-Cp2(Ala)が形成する面と、Cα(Ala)-Cp2(Ala)-Np2(Ala)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Ala)である。
    前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造において、α-炭素原子をCα(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する窒素原子をNp1(Amino acid)とし、前記Np1(Amino acid)に結合し前記Np1(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する炭素原子をCp1(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合しペプチド結合を構成する炭素原子をCp2(Amino acid)とし、前記Cp2(Amino acid)に結合し前記Cp2(Amino acid)とともに前記ペプチド結合を構成する窒素原子をNp2(Amino acid)とし、前記Cα(Amino acid)に結合し前記Np1、前記Cp2、及び水素原子以外の原子をR(Amino acid)としたときの、Cp1(Amino acid)-Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)が形成する面と、Np1(Amino acid)-Cα(Amino acid)-R(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角φ(Amino acid)であり
    R(Amino acid)-Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)が形成する面と、Cα(Amino acid)-Cp2(Amino acid)-Np2(Amino acid)が形成する面とがなす二面角が、前記二面角ψ(Amino acid)である。
  5. 前記式(1)において前記Aが40°であり、前記式(2)において前記Bが40°である請求項4に記載の安定立体構造の算出方法。
  6. 前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理を含み、
    前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理が、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理を含む請求項1から5のいずれかに記載の安定立体構造の算出方法。
  7. 前記置換環状ペプチドがアラニン残基及びグリシン残基を有する場合、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データを作成する処理において、前記グリシン残基が、前記アラニン残基よりも後に前記置換環状ペプチドの前駆体に導入されて、前記置換環状ペプチドの前記立体構造データが作成される請求項6に記載の安定立体構造の算出方法。
  8. 前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程が、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理を含み、
    前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造を算出する処理が、(n-a)個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの安定立体構造データを、少なくともa個のアミノ酸残基を含むペプチド残基に関するデータを用いて、前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの立体構造データに変換する処理と、前記n個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記置換環状ペプチドであるn個のアミノ酸残基を有する環状ペプチドのエネルギー最小化を行う処理とを含み、n、及びaが正の整数を表し、(n-a)≧3である請求項6に記載の安定立体構造の算出方法。
  9. コンピュータを用いた、環状ペプチドの安定立体構造の算出方法であって、
    前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換え、前記環状ペプチドにおけるアラニン残基をグリシン残基である置換用残基に置き換えてもよい、置換環状ペプチドの立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第1の立体構造取得工程と、
    前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第1の立体構造選択工程と、
    を少なくとも含み、更に、
    前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第2の立体構造取得工程と、
    前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第2の立体構造選択工程と、
    を、前記環状ペプチドにおけるグリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基の総数、並びに前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部に応じて、0回又は1回以上含み、
    更に、前記第1の立体構造選択工程又は前記第2の立体構造選択工程で選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る第3の立体構造取得工程と、
    前記第3の立体構造取得工程で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
    を含み、
    前記第1の立体構造取得工程、前記第2の立体構造取得工程、及び前記第3の立体構造取得工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、
    ことを特徴とする安定立体構造の算出方法。
  10. コンピュータに、環状ペプチドの安定立体構造を算出させるプログラムであって、
    前記コンピュータに、
    前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換え、前記環状ペプチドにおけるアラニン残基をグリシン残基である置換用残基に置き換えてもよい、置換環状ペプチドの立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程と、
    前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
    を実行させ、
    前記環状ペプチドの立体構造データを得る工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、ことを特徴とするプログラム。
  11. コンピュータに、環状ペプチドの安定立体構造を算出させるプログラムであって、
    前記コンピュータに、
    前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換え、前記環状ペプチドにおけるアラニン残基をグリシン残基である置換用残基に置き換えてもよい、置換環状ペプチドの立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第1の立体構造取得工程と、
    前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第1の立体構造選択工程と、
    を少なくとも実行させ、更に、
    前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第2の立体構造取得工程と、
    前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第2の立体構造選択工程と、
    を、前記環状ペプチドにおけるグリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基の総数、並びに前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部に応じて、0回又は1回以上実行させ、
    更に、前記第1の立体構造選択工程又は前記第2の立体構造選択工程で選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る第3の立体構造取得工程と、
    前記第3の立体構造取得工程で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う工程と、
    を実行させ、
    前記第1の立体構造取得工程、前記第2の立体構造取得工程、及び前記第3の立体構造取得工程において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、ことを特徴とするプログラム。
  12. 環状ペプチドの安定立体構造の算出装置であって、
    前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換え、前記環状ペプチドにおけるアラニン残基をグリシン残基である置換用残基に置き換えてもよい、置換環状ペプチドの立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る取得部と、
    前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う最小化部と、を有し、
    前記取得部において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、ことを特徴とする安定立体構造の算出装置。
  13. 環状ペプチドの安定立体構造の算出装置であって、
    前記環状ペプチドにおいて、グリシン、プロリン、及びアラニン以外のアミノ酸の残基をアラニン残基及びグリシン残基のいずれかである置換用残基に置き換え、前記環状ペプチドにおけるアラニン残基をグリシン残基である置換用残基に置き換えてもよい、置換環状ペプチドの立体構造データを用いて算出された安定立体構造である前記置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第1の立体構造取得部と、
    前記一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第1の立体構造選択部と、
    を少なくとも有し、更に、
    前記一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドの構造に近づくように、置き換えられている置換用残基の一部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドのアミノ酸残基の一部が前記置換用残基に置き換えられたままの第2の一部置換環状ペプチドの立体構造データを得る第2の立体構造取得部と、
    前記第2の一部置換環状ペプチドの前記立体構造データを用いて前記第2の一部置換環状ペプチドのエネルギー最小化を行い、前記立体構造データから、前記第2の一部置換環状ペプチドの安定立体構造の立体構造データを選択する第2の立体構造選択部と、
    を、有してもよく、
    更に、前記第1の立体構造選択部又は前記第2の立体構造選択部で選択された安定立体構造の立体構造データに対して、前記環状ペプチドを構成するように、置き換えられている置換用残基の全部を予め求めた安定立体構造を有するアミノ酸残基に置き換え、前記環状ペプチドの立体構造データを得る第3の立体構造取得部と、
    前記第3の立体構造取得部で得られた前記立体構造データを用いて前記環状ペプチドのエネルギー最小化を行う最小化部と、
    を有し、
    前記第1の立体構造取得部、前記第2の立体構造取得部、及び前記第3の立体構造取得部において、前記置換用残基を前記アミノ酸残基に置き換える際、前記置換環状ペプチドの前記安定立体構造中の前記置換用残基の立体構造と、前記アミノ酸残基の前記予め求めた安定立体構造とを対比して、対比した構造の違いが所定の範囲内である前記予め求めた安定立体構造を有する前記アミノ酸残基に、前記置換用残基が置き換えられる、ことを特徴とする安定立体構造の算出装置。
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