JP2003510672A - 分子疑似体を作製するためのコンピュータによる設計方法 - Google Patents

分子疑似体を作製するためのコンピュータによる設計方法

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JP2003510672A JP2001513997A JP2001513997A JP2003510672A JP 2003510672 A JP2003510672 A JP 2003510672A JP 2001513997 A JP2001513997 A JP 2001513997A JP 2001513997 A JP2001513997 A JP 2001513997A JP 2003510672 A JP2003510672 A JP 2003510672A
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キャセット,フローレンス
グラニエール,クラウデ
カクゾレック,ミカエル
ラハナ,ロジャー
リーズ,アンソニー
ロウクス,フローレンス
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シンテム ソシエテ アノニム
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Abstract

(57)【要約】 親分子の活性を模倣する分子の設計および合成のための方法を提唱するものである。特に、該方法は、疑似体に包含させるための親分子の化学基をコンピュータによる特定、親分子の折り畳み構造を考慮した疑似体の設計、親分子内の化学基の相対幾何学的関係を用いる疑似体の設計、疑似体の分子動力学シミュレーションを用いる疑似体の設計、および分子動力学シミュレーションを用いる可能性のある疑似体のスクリーニングに関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の技術分野 本発明は、元となる親分子の活性を模倣する分子の設計および合成に関する。
かかる分子は一般的に、疑似体(mimetic)と呼ばれる。例えば、親分子は特定
の「標的」分子と相互作用することが知られているタンパク質であってもよく、
本発明は、親分子とは異なるが、やはりその標的分子と相互作用する疑似体の作
製に関し得る。
【0002】 より具体的には、本発明は、疑似体に組込まれる親分子の活性部分を特定する
方法、疑似体を設計する方法、所望の活性について疑似体をスクリーニングする
方法、これらの方法を実施するための装置、疑似体そのもの、疑似体の使用、お
よび疑似体を含む医薬組成物に関する。
【0003】発明の背景 生化学において研究される多くの反応は、タンパク質と「標的」となる第2の
分子(これ自身もタンパク質である場合が多い)との間の相互作用であるというこ
とができる。かかる相互作用は、抗原-抗体、酵素-基質およびホルモン-受容体
の相互作用を含む。多くのこのような反応においては、タンパク質内のこれらの
相互作用を担っている部分は、該タンパク質分子全体のごく一部に過ぎないこと
が示されており、かかる部分はタンパク質の「活性領域」と一般に呼ばれている
【0004】 活性領域の模倣に基づいて天然の大きなタンパク質の活性を再現する小さいオ
リゴペプチドまたはペプチド様疑似体の設計は、治療および診断の両方において
多数の用途を有している。対象とする活性領域は、該タンパク質内の連続した配
列中に位置する場合、種々の化学的結合または他の合成方法による、その領域の
立体構造的上の必要条件を満たし得る方法はすでに記載されている。しかし、タ
ンパク質の活性領域がポリペプチド鎖中の不連続な部分で構成される場合、疑似
体の設計における課題は特に深刻である。
【0005】 多くの研究者が、疑似体もまた標的分子と相互作用可能であるという意味で既
知のタンパク質を模倣する分子の設計を試みてきた。疑似体の構築においては、
まず既知のタンパク質の活性領域を特定し(例えば、抗体-抗原相互作用の場合は
、抗原に結合できる抗体の領域を特定する)、続いて活性領域に競合する疑似体
を検索する。既知のタンパク質の活性領域は比較的小さいので、該タンパク質よ
りかなり小さく(例えば、分子量において)、その分、容易かつ安価に合成される
疑似体が見出されることが期待される。かかる疑似体は、タンパク質の便利な代
替物として、標的分子と相互作用する薬剤として使用できるであろう。
【0006】 Reinekeら(「インターロイキン-10の不連続な結合部位の合成疑似体(A synthe
tic mimic of a discontinuous binding site on interleukin-10)」, Nature B
iotechnology, Vol. 17, 1999, p271-275)により、下記の方法によるインターロ
イキン-10タンパク質の結合部位を模倣する擬似分子の設計が提案されている。
まず、短いペプチドそれぞれがインターロイキン-10の短い断片に相当する短い
ペプチドの大規模なライブラリーを合成した。次いで、この各ペプチドの標的(
この場合、インターロイキン-10に対する抗体)への結合を、アッセイ技法により
それぞれについて試験して、関連する可能性のあるペプチドを特定した。
【0007】 模倣させる過程における次のステップは、上記の関連する可能性のあるペプチ
ドに基づいてさらなるペプチドを合成することであった。即ち、Reinekeらは、
先に得られた関連する可能性のあるペプチドのうちの1つを選択し、この選択し
たペプチドの各アミノ酸が他の19種のL-アミノ酸のうちの1つで置換された可能
な限りの全てのペプチドを合成した(即ち、アミノ酸を、可能な限りの他の各ア
ミノ酸で可能な全ての様式で置換した)。その結果得られた「置換ペプチド」の
それぞれの結合活性を試験した。これにより、どのアミノ酸が該タンパク質の活
性にとって重要であるかが示唆された。
【0008】 いくつかのアミノ酸置換が、置換ペプチドの元になった対応するペプチドに比
べて、置換ペプチドの活性の方が増大させた。さらに、このような「活性を増大
させる置換」を組み合わせて組込んだペプチドを作製した。標的への結合性が最
も優れているペプチドを疑似体として使用するために選択した。
【0009】 Reinekeらは、この手法をさらに実施する方法について記載している。つまり
、上記方法で特定された疑似体を2つ連結させて、新しい連結した疑似体を作製
することを試みた。
【0010】 詳細には、彼らは、得られた2つのペプチド鎖をリンカーペプチドによって連
結することを提唱した。リンカー配列の長さは、該2つの疑似ペプチド間の距離
が既知タンパク質内でのそれらの距離と同じに保てるように選択した。この既知
タンパク質内での距離は、予め決定された結晶構造に基づくものとした。
【0011】 この連結ペプチドにおいてもアミノ酸置換を実施した。これは、上述のように
、アミノ酸の体系的な置換により行った。従って、最適化ペプチドは、連結され
たペプチドを元に、「活性を増大させる置換」を用いて作製された。
【0012】 Reinekeらはまた、ジスルフィド架橋の形成を可能とする2つのシステイン残基
を最適化ペプチド内に導入することにより、環状分子も作製した。実際、彼らは
、可能な全てのこのような環状分子それぞれを体系的に合成した(即ち、最適化
ペプチドの2つの残基を2個のシステイン残基と可能な限りの全ての様式で置換
することを試みた)。これにより、環状ペプチドの大規模なライブラリーが得ら
れ、続いてそのそれぞれをスクリーニングして、それらの標的に結合する能力を
調べた。これは、やはり、極度の労力を要する集中操作であった。
【0013】 同様の研究において、Falcioniら(「自己免疫疾患関連II型主要組織適合性分
子により提示される抗原を阻害するペプチド疑似化合物(Peptidomimetic compo
unds that inhibit antigen presentation by autoimmune disease-associated
class II major histocompatibility molecules)」, Nature Biotechnology Vo
l. 17, 1999, p562-567)は、ペプチドライブラリーを用いて、慢性関節リュウ
マチに関与するII型主要組織適合性(MHC)分子に対して高い親和性を有するヘプ
タペプチド(7残基ペプチド)を同定した。その後、候補ヘプタペプチドに種々
の置換を作製し、得られたペプチドの結合親和性を調べて、結合親和性が匹敵す
るかまたは増大している候補ヘプタペプチドの疑似体を探索した。選択された疑
似体はその後、MHC分子により提示されるタンパク質抗原を処理するT細胞応答を
阻害する能力について試験した。
【0014】 Launeら(「イムノグロブリンの可変領域から単離された合成ペプチドの抗原
結合活性の体系的探索(Systematic Exploration of the Antigen Binding Acti
vity of Synthetic Peptides Isolated from the Variable Regions of Immunog
lobulins)」, The Journal of the Biochemistry Society, Vol. 272, 1997, 3
0937-30944)は、重要なアミノ酸を特定するための「アラニン走査法(the alan
ine scanning method)」を記述している。この手法では、、各ペプチドが既知
のタンパク質の活性領域内の短い断片に相当するペプチドライブラリーを合成し
、その活性を結合アッセイにより試験した。標的に結合するペプチド配列をこの
方法で同定した。
【0015】 次いで、同定されたペプチド結合配列に相当するヘキサペプチド(6残基ペプ
チド)を合成した後、これらの結合性ヘキサペプチドに基づいて更なるヘキサペ
プチドを合成した。この更なるヘキサペプチドのそれぞれは、1個のアミノ酸が
他のアミノ酸(この場合はアラニン)で置換されているため、対応する結合性ヘ
キサペプチドとは異なるものであった。そして、その更なるヘキサペプチドのそ
れぞれの活性を測定した。アラニンによるアミノ酸の置換がペプチドの活性の顕
著な低下をもたらす場合は、そのアミノ酸が重要であると特定した。Launeらは
また、3D X線結晶構造において重要なアミノ酸の位置を特定していった。
【0016】 非常に多数の合成が必要とされ、かつ合成されたペプチドそれぞれの結合能を
測定する必要があるという点において、上記の方法は極度に集中的な労力を要す
る。従って、このような方法の結果として得られる情報を合理的かつ有効な方法
で利用することが重要であることは明らかである。
【0017】 関連する手法の一つは、「TASP法」である(Tuchscherer, 「鋳型を集積した
合成タンパク質:化学的選択性結合を介したトポロジー的鋳型への多機能性ペプ
チドの凝集(Template Assembled Synthetic Proteins: Condensation of a Mul
tifunctional Peptide to Topological Template via Chemioselective Ligatio
n)」, Tetrahedron Letters, 1993, Vol 34, No 52, pp8419-8422; Tuscherer
ら、「Taspコンセプト:ペプチドリガンド疑似体、タンパク質表面および折りた
たみ単位(The Tasp oncept: Mimetics of Peptide Ligands, Protein Surfaces
and Folding units)」, Tetrahedron, 1993, Vol 49, No 17, pp3559-3575; T
uschererら、「タンパク質設計:機能特性の閾値に基づく設計(On the Thresho
ld of Functional Properties)」 1998, Vol. 47, pp. 63-73)。Tuschererら
(「Taspコンセプト:ペプチドリガンド疑似体、タンパク質表面および折りたた
み単位(The Tasp oncept: Mimetics of Peptide Ligands, Protein Surfaces a
nd Folding units)」)は、MHC分子であるHLA-A2由来のらせんペプチドをHLA-A
2の折りたたみ構造のトポロジーを模倣するように、基となるペプチド性鋳型に
融合した。該らせんが、(i) 受容体への結合に関与しないと考えられる残基の
ら旋形成に好ましい残基への変異、および(ii) 両親媒性が向上するような変異
を含むらせんを形成するようにさらに改変する。この構造を、円二色性を用いて
らせん形成ついて試験した。TASP分子に対して作製された抗体は、天然のMHC分
子に特異的であった。
【0018】 TASP手法では、個々の構造のモチーフは、各モチーフの互いの構造的関係は必
ずしも維持されていないが、その末端が外部の足場につながれている。擬似分子
内に変異を作製し、構造決定または生物学的活性により試験されるこれらの変異
体のトポロジーおよび効果を向上させる。これもやはり、労力を要する工程であ
る。さらに、TASP分子は技術的に作製が困難である。
【0019】発明の概要 本発明は、親分子の活性を模倣する分子の設計に用いる方法を提供することを
目的とする。
【0020】 ある形態では、本発明はさらに疑似体の探索を合理化する分子動力学コンピュ
ータシミュレーションを利用することを目的とする。
【0021】 一般的には、本発明の第1の態様は、親分子内の、活性である可能性がある化
学基(例えば、アミノ酸残基)のセットが実験的に決定されると(例えば、アラニ
ン走査法などにより、抗体等の親分子の活性のある(ペプチド)フラグメント内
の活性な化学基を実験的に特定するなどにより)、この化学基のセットを該親分
子中で該活性基が接触可能かどうかを予測するためのコンピュータを用いるスク
リーニングを行う。接触可能な化学基は、親分子の活性に関与している可能性が
一層高い。したがって、接触可能であると予測される化学基を、疑似体に組込む
とよい。このようにして、本発明の第1の態様は、試行錯誤しながらの上記の活
性な化学基の特定を簡略化するレベルの構造の解明を利用するものである。
【0022】 具体的には、この第1の態様では、本発明は、所定の活性を有することが知ら
れている親分子内で、該活性に関与する親分子内の少なくとも1個の化学基を特
定する方法であって、 親分子の活性領域を含む親分子の少なくとも一部分の3次元構造をコンピュー
タにより決定するステップ; 実験データに基づいて、該活性領域内で、活性に関与する可能性のある複数個
の化学基を選択するステップ; 選択された化学基それぞれの3次元構造内での接触性の程度をコンピュータに
より決定するステップ;および、 そのそれぞれの接触性の程度に基づいて、選択された化学基の中から活性に関
与する少なくとも1個の化学基を特定するステップ; を含む、上記方法を提供する。
【0023】 上記方法の記述および下記の本発明の方法の記述において、そのステップの順
序は本発明の範囲を限定するものではない。例えば、三次元モデルは化学基を選
択した後に作製してもよい。
【0024】 活性である可能性のある化学基を実験的に選択することは、以下のステップ:
親分子の活性領域の複数の部位を選択し、この場合の各部位は化学基の列であり
;この各列に関連する活性を実験的に測定し;各列について、その中の化学基を
選択して該化学基を改変し(例えば、化学的または遺伝子学的方法等により該化
学基を除去または置換する)、該改変による活性の変化を測定することを繰り返
し;そして、活性の変化に基づいて各列の中から化学基を選択するステップを含
み得る。
【0025】 特定の化学基の接触性の程度は、親分子中の化学基の、溶媒分子(イオンを含
むもしくは含まない水など)または親分子が結合する標的分子への露出度の測定
値であり得る。
【0026】 該方法は、疑似体として作用する特定された化学基を含む分子を設計するステ
ップ、または場合によっては、該分子を化学合成するステップをさらに含んでよ
い。
【0027】 本発明の第2の態様は、一般的には、親分子の折りたたみ構造(即ち、分子の
活性領域がどのように三次元的に折り畳まれているのかということ)を考慮した
疑似体の設計を提案するものである。親分子が、その上に少なくとも1個の第1
の活性な化学基が位置しているループと該ループ上には位置していない少なくと
も1個の第2の活性な化学基を含む場合、その疑似体は第1の化学基を含む環状部
分を含み、かつ該環状部分の外部に第2の化学基を含むように設計する。
【0028】 具体的には、該第2の態様においては、本発明は、親分子と共通の活性を有す
る疑似体を設計する方法であって、 活性に関与する親分子内の複数個の化学基を特定し、この場合、該化学基には
、親分子の第1のループ上に位置する少なくとも1個の第1の化学基と、親分子の
第1のループ上には位置しない少なくとも1個の第2の化学基とが含まれており;
そして、 第1の化学基を含む第1の環状部分と第1の環状部分の外部にある第2の化学基と
を含む疑似体を設計すること; を含む、上記方法を提供する。
【0029】 好ましくは、疑似体の不活性部分の少なくとも一部(即ち、疑似体の活性な化
学基以外の少なくとも一部)に、親分子内の活性な化学基の近くに存在するが、
それ自身は活性でないと考えられる1個以上の化学基(「骨組み(framework)化
学基」)が含まれる。例えば、該骨組み化学基は、活性があるという可能性が考
えられない化学基(例えば、実験による選択過程において活性であるとは特定さ
れなかったもの)もしくは親分子内では標的に接触不可能であると考えられる化
学基、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0030】 親分子内で、親分子の第1のループおよび第2のループのそれぞれに1個以上の
活性な化学基が存在するような場合、疑似体を、2つの環状部分を含み、各環状
部分に上記のループそれぞれに存在する活性な化学基が含まれるように設計する
とよい。好ましくは、疑似体内の環状部分の間の連結構造は、構造エレメントに
よって、環状部分の相対的配向性が親分子内のループの相対的配向性を模倣する
ように保たれている。
【0031】 このスキームは、疑似体に含まれる活性な化学基が、親分子の3個、4個また
はそれ以上のループ上に位置する化学基を含む場合にも拡張して適用することが
できる。該疑似体は、ループの数以下の数の環状部分を含むことができ、各環状
部分はそれぞれの活性基を含んでいる。
【0032】 例えば、第2の態様の方法は、2回(またはそれ以上)実施し、各回ごとに活性
基を含む少なくとも1つの環状部分と環状部分の外部にある他の活性基を有する
第1の分子を設計することができる。そこで、第2の分子は2つ(またはそれ以上
の)第1の分子に基づき由来するものであり、かつ2つの第1の分子の実質的に全
ての構造を含有し得る。例えば、親分子が抗体である場合、1個の第1分子は重鎖
のCDR3および軽鎖のCDR3の活性基に基づき得るが、もう1つの第1の分子は重鎖
のCDR2および軽鎖のCDR2の活性基に基づき得る。この2つの第1の分子を結合さ
せて、重鎖および軽鎖のCDR2ならびにCDR3の両方を模倣する構造を含有する疑
似体を形成できる。
【0033】 該方法は、第3の方法にしたがって設計された分子を化学的に合成するさらな
るステップを含んでよい。
【0034】 本発明の上記第2の態様では、疑似体は、そのトポロジーにおいて、親分子の
折りたたみ構造を(複製が必須でない場合は)模倣する。しかし、1つの代替手
段として、活性な化学基を連結する構造が親分子の構造とトポロジーが類似して
いない場合でさえも、親分子内で活性な化学基が有している相対的な幾何学的関
係を有する疑似体を作製するという目的に徹することができる。
【0035】 この手段は、本発明の第3の態様を導く。該第3の態様は、一般的には、疑似体
内の活性な化学基間の幾何学的関係が、標的分子から見て(例えば、親分子の標
的分子と相互作用する外面から見て)、親分子内の対応する化学基間の幾何学的
関係に対応する疑似体を提供するものであるということができる。
【0036】 具体的には、この第3の態様において、本発明は、親分子に関連する活性を示
す疑似体を設計する方法であって、 活性に関与する親分子内の複数個の化学基を特定し; 1方向から見た場合の親分子内でのその化学基間の相対幾何学的関係を決定し
; 上記の複数個の化学基を含み、該化学基の相対幾何学的配置が上記で決定され
た親分子内での該化学基間の相対幾何学的配置に相当する疑似体を作製すること
; を含む、上記方法を提供する。
【0037】 該疑似体は、活性な化学基の他に、公知の分子内の活性な化学基の幾何学的構
造に実質的に合致するように該活性基を連結する連結化学基から構成される連結
構造を含む。このような連結化学基は、親分子に含まれるものと同じ種類の化学
基であってよい。これらは、親分子の一部分であってもよい。例えば、親分子が
タンパク質である場合は、連結化学基はアミノ酸であってもよいが、非ペプチド
性の特性を有する連結構造を用いることもできる。
【0038】 好ましくは、連結化学基は、親分子またはその1部の3次元構造を参照して選択
する。1方向から見た場合、活性基の幾何学的配置が親分子の活性基の幾何学的
配置を模倣するように連結構造を設計することが好ましい。親分子の活性基は、
1方向から見た場合、特定の幾何学的配置を有する。1方向から親分子を見た場
合、該活性基が、その方向から見たある部分に存在するように考慮することがで
きる。
【0039】 連結基は、好ましくは、この部分内の活性基の配置を維持するように選択され
る。親分子のこの部分に見られる他の化学基または原子(即ち、活性基以外)を
含んでもよい。このような場合、これらの他の基または原子が連結構造内に保持
され、その部分にある原子の配置が維持されるように連結構造を設計することが
好ましい。このようにして、該部分にある活性基および他の化学基が一緒に連結
されている疑似体を設計することができる。親分子内で連続していない基(また
は、該基が結合している主鎖部分)は、連結構造により連続した構造内に共に存
在することになる。
【0040】 例えば、親分子がタンパク質である場合、活性なアミノ酸と同じ部分に突出す
るアミノ酸側鎖がある場合がある。好ましくは、その疑似体は、これらの側鎖が
該疑似体内に存在するように設計される。このようにして、一次配列中で隣接し
ていないアミノ酸側鎖が該疑似体中に共に存在するようにしてもよい。好ましく
は、これらの側鎖が疑似体内で親分子内と同じ配向を有するように連結構造を選
択する。該側鎖に適切な配向を提供するためには、該連結構造はペプチド性であ
っても非ペプチド性であってもよい。
【0041】 本発明の第4の態様は、一般的には、疑似体を、連結構造により結合された複
数個の活性な化学基を含むように設計し、その連結構造を選択するために分子動
力学シミュレーションを利用することを提案する。
【0042】 詳細には、この第4の態様では、本発明は、親分子に関連する活性を示す疑似
体を設計する方法であって、 活性に関与する親分子内の複数個の化学基を特定し; 活性に関与する化学基および該化学基を連結する構造を含む疑似体を作製し; 作製した疑似体の分子動力学シミュレーションをコンピュータにより実施し; 該疑似体が所定の基準に合致するか否かを該シミュレーションから判定し;そ
して、 上記の連結構造を変化させて、上記所定の基準により一層合致する第2の疑似
体を作製すること; を含む、上記方法を提供する。
【0043】 第2の疑似体を作製するために第1の疑似体を改変するステップには、例えば、
親分子がタンパク質である場合、第1の疑似体内の連結に関与するアミノ酸に1個
以上のアミノ酸を付加するか、または該アミノ酸を1個以上のアミノ酸で置換す
ることにより、連結構造を改変することができる。例えば、異なる化学的特性を
有するアミノ酸基を用いることもでき、例えば、親水性の基を疎水性の基(バリ
ンまたはロイシンなど)で置換してもよい。プロリンを用いて、プロリンをペプ
チドに導入することにより特徴的にできる「ねじれ(kink)」を提供することも
可能である。このようにして、活性基が種々の連結化学基により連結されている
さらなる疑似体を設計することができる。連結化学基の改変は、連結化学基の幾
何学的構造の改変をもたらし、したがって疑似体の幾何学的構造の改変をもたら
す。このような改変は、疑似体の立体構造(例えば、親分子の折りたたみ構造を
模倣した形態で)を安定化させ得る。例えば、親分子内に存在する連結化学基を
導入することにより、疑似体の安定性または立体構造を改善し得る。
【0044】 場合によっては、第2の疑似体自体を改変して、同じ(または異なる)基準を第2
の疑似体に比べてより一層満たす第3の疑似体を作製してもよい。換言すると、
この過程を反復することが可能であるということである。
【0045】 本発明の第4の態様において、分子シミュレーションを用いて、改良された第2
の疑似体を作製し(即ち、設計過程の一部として)、分子動力学モデリングに基づ
いた基準を基に、可能性のある疑似体をスクリーニングすることは、より広範に
適応可能である。例えば、複数個の可能性のある疑似体を設計するステップに続
いて、分子のそのセットを合成する価値があるかどうかを判定する方法として用
いることができる。実際、これは、本発明の別の第5の態様を構成する。
【0046】 即ち、第5の態様において、本発明は、一般的には、可能性のある疑似体のう
ち合成の価値のあるものを特定するための「仮想の分子」である可能性のある疑
似体(即ち、これは、物理的に存在する必要はないが、コンピュータでの描写と
して存在するか、または記憶媒体上に保存されている)をスクリーニングするた
めの分子動力学モデリングを用いることを提唱する。
【0047】 具体的には、この第5の態様では、本発明は親分子の活性を示す疑似体の類似
物を評価する方法を提唱する。該方法は、疑似体全体またはその一部について分
子動力学シミュレーションを実施し(下記にさらに詳述する)、分子動力学シミュ
レーションに基づく基準によってそれを評価することを含む。そこで、活性を示
すであろうと評価された分子を合成して、その活性をin vitroおよび/またはin
vivoにて実験的に試験する。
【0048】 疑似体の評価には、疑似体の一部についての分子動力学シミュレーションを別
々に実施することが含まれる。このようにして、合成する疑似体は疑似体の部分
についての一連の分子動力学シミュレーションの評価から導き出される。例えば
、疑似体が1個以上のループを有する場合、該疑似体を、それぞれのループにつ
いての分子動力学シミュレーションによって評価することができる。
【0049】 疑似体の設計に続いて、当業者に公知の方法で疑似体を合成することができる
。この方法は本明細書中の他の項で論述する。
【0050】 以上の本発明の態様の関係を要約すると、本発明の第1の態様は、活性な化学
基 (例えば、疑似体に組込むための化学基) を特定することに関し、本発明の第
2、第3および第4の態様は、活性な化学基が組込まれた疑似体(例えば、本発明の
第1の態様にしたがって特定されたもの)を作製することに関し、本発明の第5の
態様は、可能性のある疑似体(例えば、本発明の第2から第4までの態様のいずれ
かによって作製された仮想の疑似体など)をコンピュータによりスクリーニング
することに関する。
【0051】 さらに他の態様では、本発明は、上記の本発明の方法によって得られた、また
は取得可能な疑似体に関する。特に、本発明は、上記の基準にしたがって選択さ
れた活性基を有する疑似体を提供する。活性な化学基の配置が親分子中の活性な
化学基の配置と同様である疑似体が好ましい。
【0052】 更に他の態様では、本発明は、上記方法による疑似体を含む医薬組成物、かか
る疑似体の活性を利用するための該疑似体の使用法、疑似体の活性を利用する方
法に使用するための医薬組成物の製造における該疑似体の使用、および上記の方
法のいずれかを実施するために用意された装置に関する。
【0053】 さらには、本発明の適応性を、薬学的な適応について後述するが、これは本発
明の範囲を限定するものではなく、本発明は、原理的に他の化学分野(例えば、
農薬または他の農業関連の化学物質の分野など)にも適応可能である。
【0054】詳細な説明 分子 本明細書中において「分子」という用語は、高分子量の化合物(「巨大分子」
までさえも)を含むものとして使用し、タンパク質を含む。非常に大きなタンパ
ク質(例えば、第XIII因子(分子量約300kDa))または大きなタンパク質(例えば
、抗体(分子量100〜200kDa))については、必要に応じてタンパク質の一部をモ
デル化してもよい。例えば、抗体の可変領域をモデル化してもよく、この場合、
モデルは約50〜400個のアミノ酸の領域からなるだろう。中位のサイズのタンパ
ク質(例えば、リゾチーム(分子量15kDa)については、モデルは全体構造に基づ
いてもよいが、構造の一部(例えば、活性部位)に基づいてもよい。また、小さ
な分子をモデル化してもよく、例えば、5〜10個のアミノ酸の範囲のサイズを有
するエピトープ(抗体と結合することが知られている抗原の小さな領域)をモデ
ル化してもよい。
【0055】三次元モデル 本願において3Dモデルという用語は、コンピュータ内に表される三次元構造
を意味すると理解される。この表示は、分子モデリング法を用いて第1原理から
導き出してもよく、あるいは、結晶構造解析データまたは核磁気共鳴データまた
は相同性データベースに基づく構造予測から入手可能なあらゆる情報を組み合わ
せてもよい。
【0056】折りたたみ構造 分子の折りたたみ構造とは、その分子の化学基の三次元的配置を意味する。分
子がタンパク質である場合、折りたたみ構造にはペプチド鎖の二次構造、三次構
造および四次構造が含まれる。同様に、RNAの折りたたみ構造は、RNAの二
次構造(例えば、いくつかのRNAウイルスの複製に関与するT-RNA様構造)、
もしくは三次構造(例えば、シュードノット構造)、またはこれらの組み合わせ
のいずれかの結果によるものである。
【0057】疑似体の作製 疑似体を作製するとは、分子の物理的合成という観点からの作製とコンピュー
タによる仮想分子の作製の両方を意味する。
【0058】アミノ酸 アミノ酸は、任意の天然のアミノ酸または非天然のアミノ酸であってよく、酸
性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、極性アミノ酸
、大きなアミノ酸、小さなアミノ酸または新種のα-アミノ酸、ならびに任意の
他のアミノ酸化合物が含まれる。アミノ酸はD-アミノ酸を含み、さらにアルキル
化(例えば、メチル化またはアセチル化)、ヒドロキシル化、リン酸化、または
グリコシル化されたアミノ酸などのアミノ酸誘導体を含む。
【0059】親分子 親分子とは、模倣される分子のことである。親分子は模倣される機能を有し、
疑似体はこの機能を示す。通常、親分子は模倣される活性を示し、「活性出発分
子」として知られうる。典型的には、親分子は「標的分子」と呼ばれる第2の分
子と相互作用するが、親分子の活性または機能は、標的との結合であっても、ま
たはこの結合の下流の作用(例えば、生物学的活性)であってもよい。しかしな
がら、本発明は、親分子が標的と相互作用する場合に限定されるものではない。
【0060】 本発明は特に、固有の三次元構造を有するオリゴマー分子またはポリマー分子
に適用することができる。
【0061】 親分子はタンパク質(例えば、抗体)であってもよいが、「親分子」という用
語はこの点に限定されるものではなく(下記に説明するように)、糖タンパク質
を含む他のタンパク質分子(例えば、酵素、受容体、抗原およびホルモン)も含
まれる。模倣されうる他の生物活性分子には、炭水化物および核酸(例えば、R
NAの二次構造および/または三次構造を模倣するもの)が含まれる。本発明は
、無機分子(例えば、無機高分子または触媒の活性部位)の活性表面を模倣する
ことを含む。
【0062】 本発明の親分子は、天然の分子(例えば、天然の抗体)または分子の一部であ
ってもよい。またこれらの分子は、合成された親分子(例えば、合成された抗体
フラグメント)であってもよい(下記参照)。本発明をペプチドディスプレイラ
イブラリー由来の疑似体ペプチド(例えば、特定の標的との結合に基づいてファ
ージディスプレイライブラリーから選択されたペプチド)に対して使用してもよ
い。この場合、ライブラリーから選択された特定の結合活性を有するペプチドを
模倣することができる。
【0063】 親分子は、いくつかの化学基(例えば、タンパク質では構成要素の化学基はア
ミノ酸であり、核酸では構成要素はヌクレオチド)から成る。
【0064】結合分子 本発明は特に、標的と結合する分子(結合分子)に関する。このように、結合
分子の疑似体は標的と結合することができ、例えば、標的が細胞表面受容体であ
る場合、疑似体は細胞表面受容体に対する抗体について作製され、これらの疑似
体は受容体を妨害することができる。
【0065】 疑似体は、親分子またはその標的について作製することができ、言い換えれば
、疑似体は結合相互作用を有する任意のメンバーについて作製することができる
。疑似体は、抗原:抗体相互作用における抗体または抗原のいずれかについて作
製することができる。従って、抗原エピトープを模倣してもよく、これにはウイ
ルス表面に通常見出されるループ状エピトープ(例えば、ライノウイルス、ヒト
免疫不全症ウイルスおよびポリオウイルスの特定のエピトープ)が含まれる。
【0066】イムノグロブリンスーパーファミリーメンバー 本発明は、イムノグロブリンスーパーファミリーメンバー(例えば、抗体、T
細胞受容体、MHC分子(ヒトにおけるHLA)およびN-CAMなどの他の細胞表
面受容体、特に抗体分子)の疑似体の作製に好適である。本発明は特に抗体を模
倣することに関する。
【0067】 「抗体」という用語は、必要とされる特異性を有する結合ドメインを有する任
意の結合物質を含むものとして解釈される必要がある。したがって、本発明の親
分子としては、抗体フラグメント、誘導体、機能的均等物および抗体の相同体が
挙げられ、また合成分子およびその形態が抗体の形態を模倣することにより抗原
またはエピトープと結合することができる分子が含まれる。
【0068】 抗原または他の結合パートナーと結合することができる抗体フラグメントの例
としては、VL、VH、C1およびCH1ドメインからなるFabフラグメント;VHおよびCH
1ドメインからなるFdフラグメント;抗体のシングルアームのVLおよびVHドメイ
ンからなるFvフラグメント;VHドメインからなるdAbフラグメント;単独のCDR領
域およびF(ab’)2フラグメントである、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結
合している2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメントが挙げられる。一
本鎖のFvフラグメントも含まれる。
【0069】細胞表面受容体 上述のように本発明はイムノグロブリンスーパーファミリーの細胞表面受容体
(例えば、T細胞受容体およびN-CAM)の疑似体を含む。さらに本発明は、他の細
胞表面受容体(例えば、細胞表面受容体のインテグリンファミリーメンバー)を
含む。
【0070】その他の親分子 親分子は、少なくとも分子の一部の3Dモデルが存在するか、または3Dモデルを
作製することができる任意の分子であることができる。例えば、親分子は酵素で
あってもよい。酵素には、セリンプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン)など
のプロテアーゼ、ポリメラーゼ、レプリカーゼ、テロメラーゼ、トランスクリプ
ターゼ、リボヌクレアーゼおよび当業者には公知である多くの他の酵素が挙げら
れる。その他の可能な親分子としては、インスリン、腫瘍壊死因子、組織プラス
ミノーゲン活性因子が挙げられる。
【0071】標的分子 標的分子とは、親分子の活性領域の活性化学基との相互作用により、親分子と
相互作用する分子である。親分子が触媒である場合、標的分子は反応物または生
成物または反応物-生成物中間複合体であることができる。親分子が酵素である
場合、標的分子は基質または基質-生成物中間体または生成物であることができ
る。また、親分子が抗体である場合、標的分子は抗原またはその抗原のエピトー
プであることができる。上述のように、伝統的には標的として考えられる分子(
例えば、エピトープ)も本発明の方法により模倣することができ、その場合、エ
ピトープが「親分子」である。
【0072】活性領域 一般的な用語として活性領域とは分子の活性を担う親分子の領域のことである
。活性領域が分子全体のごく一部に過ぎないこともしばしばある。活性領域には
触媒分子および酵素の活性部位、ならびに抗体の結合部位などが含まれる。典型
的には、活性領域は標的分子との相互作用に関与する。
【0073】 親分子がタンパク質である場合、活性領域は1以上のループ部分(「ループ(lo
ops)」)を含んでいてもよく、また各ループは数十のアミノ酸残基を含んでいて
もよい。これらのループはタンパク質の折りたたみ構造に起因する。また、ルー
プは核タンパク質を含む核酸親分子中においても見出すことができる。
【0074】活性化学基 活性化学基とは、その分子の活性に関与する親分子内の化学基のことである。
これら活性化学基は、活性領域における化学基の総数に対して、比較的低い割合
で構成されるのが典型的である。
【0075】 例えば、親分子がタンパク質である場合、活性化学基とは、タンパク質の活性
において直接の役割を有する、活性領域内に位置する個々のアミノ酸のことであ
る。このタンパク質が酵素である場合、活性化学基とは、酵素が関与する反応に
おいて(例えば、基質との相互作用、または酵素-基質複合体内における原子の
移動において)直接関与する活性領域中に見出されるアミノ酸残基のことである
。タンパク質が抗体である場合、活性化学基とは、抗原との結合に関与するアミ
ノ酸のことである。
【0076】 既知の分子がタンパク質である場合、活性化学基(アミノ酸)は親タンパク質
の一次配列中の離れた場所に位置してもよい。例えば、シミュレーションのため
に特定された1以上のアミノ酸が既知の構造の親タンパク質における異なるペプ
チド鎖上に位置していてもよい。
【0077】 特に親分子が抗体である場合、疑似体は、抗体の軽鎖および重鎖両方に由来す
る、とりわけ抗体の軽鎖および重鎖両方の相補性決定領域に由来する活性化学基
を含むことが望ましい。疑似体が、最も活性なCDR(通常、これは重鎖のCDR3で
ある)を含むことが好適である。また活性化学基は抗体のフレームワーク領域中
においても見出すことができる。ある化学基が「活性である」と特定される場合
、それらは疑似体に包含されるだろう。
【0078】フレームワーク化学基 上述のように、通常、活性化学基は活性領域のごく一部を構成する。また活性
領域にはその殆んどが標的との相互作用には直接関与しない化学基も含まれる。
これらの化学基を本明細書中では非活性フレームワーク化学基と呼ぶ。一般的に
、フレームワーク化学基は分子の活性を遂行するために活性化学基を正しい配向
に維持する。
【0079】活性に関与する化学基の同定 本発明の態様に従い、活性化学基をi)潜在的に活性な化学基の実験による選択
およびii)親分子中の活性化学基の位置にある潜在的に活性な化学基の接触性の
コンピュータによる決定を組合せることにより特定する。親分子の三次元モデル
またはX線構造が化学基の接触性を決定するのに必要である。
【0080】i)実験データに基づく潜在的に活性な化学基の選択 実験データに基づく活性基の選択には、実験データの作成または既知の実験デ
ータの利用を含んでもよい。前者の場合、親分子内の活性領域を選択する過程、
活性領域の化学基を改変する過程、および分子活性に及ぼす改変の影響を調べる
過程を含むことができる。具体的には、実験データの作成には活性領域部分から
なるライブラリーの作製を含んでもよく、その活性領域部分の各々が一連の化学
基を含む。次に、個々の化学基を置換、欠失または修飾のいずれかにより改変す
る。このことは、個々の化学基が改変されている活性領域部分からなる更なるラ
イブラリーを作製することによって達成することができる。
【0081】 親分子がタンパク質である場合、この方法は少なくともタンパク質の活性領域
を含むペプチドライブラリーの作製を含むことができる。ペプチドライブラリー
は、慣例的な化学合成によりまたは組換え方法により作製することができる。ア
ミノ酸側鎖への化学的修飾、または化学的方法もしくは遺伝子学的方法によるア
ミノ酸の置換もしくは欠失によりアミノ酸の修飾を行なうことができる。
【0082】 置換には、当業者には理解されるように(後ほど更に記載する)、アミノ酸が
化学的特性の類似するアミノ酸によって置換される保存的置換と特性の異なるア
ミノ酸によって置換される非保存的置換とを含むことができる。あるいは、任意
のアミノ酸を小さな脂肪族アミノ酸(好ましくは、グリシンまたはアラニン)で
置換することができる。例えば、アミノ酸をアラニンによって置換するアラニン
走査法を、潜在的に活性な化学基の実験による特定に用いることができる。
【0083】 上記のように、疑似体に含まれる活性基を上記の選択方法または既存のデータ
に基づく選択方法のいずれかにより選択することができる。実際には、特定の疑
似体はこれらの方法の両方によって選択される残基を含んでもよい。
【0084】 活性基を選択することができる既存のデータの例としては次のものが挙げられ
る:活性基を構造データ(例えば、X線結晶構造解析またはNMR)に基づいて疑似
体に含まれるものとして選択することができる;残基を遺伝子データベースから
の情報にしたがって(例えば、化学基の保存の程度に基づいて)選択することが
できる。
【0085】 例えば、特定の酵素については、どのアミノ酸が基質との結合に関与している
かが(構造解析または遺伝子解析から)知られている。これらの残基を疑似体に
包含させることができる。
【0086】ii)親分子内の潜在的に活性な化学基の接触性についてのコンピュータによる決
接触性の程度は親分子内の化学基の数値的な露出度であることができる。この
場合、活性に関与する化学基(群)は、数値的な露出度が所定の値を超えるもの
として選択された潜在的に活性な化学基の中に含まれるものとして特定すること
ができる。
【0087】 例えば、露出度のひとつの好適な数値的尺度は溶媒に接触可能な化学基の表面
積である。
【0088】 あるいは、露出度は親分子の活性領域の「表面」に関して規定することができ
る。例えば、「表面」を、活性領域の分子運動のエンベロープ(envelope)(分子
動力学シミュレーションによって測定される)として、または親分子の三次元構
造によって描かれる部分として、規定することにより、親分子の最も露出されて
いる部分と残りの部分とを分けることができる。次に、化学基の露出度を、「表
面」に関して、例えば、「表面」からの距離として、または化学基が、例えば主
に、「表面」の一方の側にあるのかまたは反対側にあるのかによって、測定する
ことができる。
【0089】分子動力学基準 一連の仮想の疑似体(すなわち、物理的に合成されたというよりもむしろコン
ピュータによって作製された疑似体)のうちのどれが親分子の活性化学基と最も
類似する活性基の配列を有するかを調べるために分子動力学基準を使用すること
ができる。
【0090】 親分子の折りたたみ構造と疑似体の折りたたみ構造とを比較するために、親分
子の領域の分子動力学シミュレーションを行なうことができる。次に、この分子
動力学シミュレーションを疑似体の分子動力学シミュレーションと比較するため
に使用することができる。例えば、シミュレーションは活性化学基を含む選択さ
れたループから構成される。
【0091】 疑似体を、所定の基準に基づいてスクリーニングし、所定の基準に合致する程
度を改善するために改変することができる。
【0092】 所定の基準として、第1の可能性は、該基準が分子動力学シミュレーションに
よって決定される疑似体(またはその一部分)の屈曲特性を示すことである。好
ましくは、疑似体は、親分子の対応する領域の屈曲特性と同様の屈曲特性を有す
る必要がある。
【0093】 あるいは、またはさらに、基準は、可能性のある疑似体の立体構造の経時変化
と親分子の立体構造の経時変化との間の類似性が所定のレベルを上回ることであ
ってもよい。例えば、親分子の一部分(分子動力学シミュレーションにより得ら
れたもの)および疑似体の少なくとも一部分の一定時間にわたる運動についての
主成分分析を実施することができる。これら2つの経時変化同士の類似性(この
類似性は主成分分析によって明らかとなる)は、疑似体における化学基の配置が
既知の分子において対応する活性化学基の配置と類似することを示唆しうるし、
および/または疑似体が親分子の活性を比較的呈しやすいことを示唆しうる。
【0094】 どちらの場合においても、可能性のある疑似体の全体をシミュレートすること
が可能である。あるいは、動力学シミュレーションは、活性領域の一部分として
特定されている複数の残基を含む疑似体の一部分について行ってもよい。
【0095】疑似体 本明細書中で使用する場合、疑似体という用語は、物質的に存在する類似体(
例えば、合成疑似体)、およびコンピュータシミュレーションにおける仮想的な
意味合いにおいてのみ存在する疑似体の両方を含む。
【0096】 本明細書中において使用する場合、「疑似体」という用語は、該疑似体が親分
子の活性と共通の活性を有するが、より低い程度でしか共通していない場合を含
む(例えば、活性レベルが数値インデックスにより表される場合、疑似体に対す
るインデックス値は親分子に対するインデックス値のわずか50%であってもよい
)。さらに、「疑似体」という用語は、該疑似体が実際には親分子よりも高い活
性を有する場合さえも含む。
【0097】 本発明の疑似体は、出発分子の活性を模倣するのに好適な任意の化学的特性を
有することができる。そして、親分子がタンパク質である場合には、疑似体は活
性なアミノ酸基を含む。ペプチド疑似体については下記により詳細に説明する。
疑似体は出発分子と比べて短いかまたは小さいことが好ましい。本発明の疑似体
は、5〜50個のアミノ酸を、より好ましくは8〜40個のアミノ酸を、さらにより好
ましくは10〜30個のアミノ酸を有することが好ましい。
【0098】 非ペプチド疑似体については、サイズ(例えば、原子の数として定義される)
は同様でありうる。例えば、5〜60個のアミノ酸、または8〜50個のアミノ酸、ま
たは10〜40個のアミノ酸の範囲でありうる。該範囲は、500〜6000ダルトン、好
ましくは800〜5000ダルトン、より好ましくは1000〜4000ダルトンであることが
できる。
【0099】 疑似体は、活性化学基を含む1以上のループからなる形態を取ることができる
。疑似体の構造にループを含む場合、疑似体は、疑似体内に化学結合(例えば、
疑似体内の化学基から生じる化学結合)が形成され、かつ外部の鋳型を必要とし
ないことが好ましい。かかる結合は、活性化学基からよりもむしろ疑似体内のフ
レームワーク化学基から生じるのが好ましい。疑似体がペプチドである場合、か
かる結合には、アミド結合およびジスルフィド架橋またはエステル結合、チオ-
エステル結合、エーテル結合もしくはチオ-エーテル結合のような他の結合が含
まれる。
【0100】 疑似体は、活性化学基を含む2以上のループを含んでいてもよい。このことは
、親分子がタンパク質である場合、アミノ酸の一次配列において遠く離れている
アミノ酸基が適当な結合により接触した空間的関係を生じていることを意味する
ことができる。疑似体構造の他の例としては、1つのループが直線状のペプチド
に結合したもの、2つのループが一緒に結合したもの、複数のループが一緒に結
合したもの、複数のループと直線状のペプチドが組み合わさって結合したもの、
が挙げられる。
【0101】連結構造 ある種の連結構造が、疑似体を適切な配置に維持するためにしばしば必要であ
る。ループ疑似体が適切である場合、連結構造は、疑似体の化学基から生じる単
純な化学結合であることができる。この結合は、疑似体の活性化学基またはフレ
ームワーク化学基のどちらから生じてもよい。しかしながら、この結合はフレー
ムワーク化学基から生じるのが好ましい。疑似体がペプチドである場合、化学結
合は疑似体のアミノ酸基から(例えば、そのアミノ酸側鎖から)生じることがで
きる。
【0102】 複数個の活性化学基が連結して、親分子と位相幾何学的に類似していない構造
を有する活性化学基の幾何学的配置を維持している場合、連結構造は単純な化学
結合だけではない場合がある。この場合、連結構造は、化学結合を生じる更なる
化学基(化学結合基)を含むことができる。それゆえに、連結構造は化学結合基
およびそれから生じる化学結合の組み合わせである。
【0103】 上記の場合のいずれにおいても、連結構造を改変して疑似体において適切な配
置の活性化学基をもたらすことができる。この改変は、連結構造内の結合または
化学基の置換、欠失または変更により行うことができる。
【0104】擬似体の種類 ペプチド擬似体に関して以下に説明する。ペプトイドは非ペプチド擬似体の一
例である。ペプチドとは異なり、ペプトイド分子では、側鎖基が、炭素ではなく
窒素と結合している。ペプトイドは、N-置換グリシン残基の重合により合成しう
る。N-置換は、アミノ酸に見出される任意の適切な側鎖に存在することができ、
N-AlaはCH3でN置換したグリシンでありうる(Simon, R Jら、1992,「ペプトイド
:薬物発見に対する分子アプローチ(Peptoids: A Modular Approach to Drug Di
scovery)」, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 9367-71を参照のこと。これは
参照により本明細書に組み入れる)。
【0105】 ペプトイド主鎖を以下に示す:
【0106】 ペプトイドの他に、他の擬似体としては、プソイドペプチド(例えば修飾アミ
ド結合を導入したもの)、レトロインベルソペプチド(例えばアミド結合が逆転
したもの)、およびペプチド結合擬似体が挙げられる。これらの擬似体は、以下
に挙げる論文に記載されており、これらを参照により本明細書に組み入れるもの
とする:Emmonsら、Current Opinion in Biotechnology, 1997,8: 435-441;Ols
onら、Journal of Medicinal Chemistry, 1993,8 (21): 3039-3049;Fletcherお
よびCampbell, Chem. Rev., 1998,98: 763-795;Marraudら、Biopolymers, 1993
,33: 1135-1148;Gante, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1994,33: 1699-1720。
【0107】 また、アミノ酸を、炭水化物主鎖または任意の所定の足場および鋳型分子で連
結してもよい。
【0108】 実際には、任意の適切な連結構造を利用することにより、活性を有する基を適
切に配置して、親分子の機能を模倣することができる。
【0109】ペプチド擬似体 特に説明する以外は、本明細書に記載のペプチド配列は、慣例的な1文字暗号
でN末端からC末端の方向で示す。
【0110】 「含んでなる(comprising)」という用語は、「含む(including)」を意味
するものであり、N末端および/またはC末端における追加のアミノ酸配列または
他の化学的部分が存在することが可能であるが、ペプチドが全体として親分子の
活性を保持するものとする。本発明の擬似体には、上述の配列、それらの断片、
ならびにその配列および断片の変異体を含んでなる。
【0111】 本発明はまた、NもしくはC末端またはその両方で追加のペプチド配列(1種類
もしくは複数)と連結した上記擬似体を含んでなる融合ペプチドをも包含する。
これらの追加配列は、特定のさらなる機能を生成する融合ペプチドに付与するよ
うに選択されうる。かかる追加配列を、目的とする機能を考慮して、当業者であ
れば選択することができる。
【0112】 好ましい実施形態において、上記追加のペプチド配列は、真核細胞の膜を通過
するよう融合ペプチドに指令することができる膜輸送配列である。かかるペプチ
ドの例としては、HSV-1 VP22タンパク質、HIV Tatタンパク質もしくはそれらの
一部分、またはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)アンテナ
ペディアタンパク質に由来する配列が挙げられる。後者のペプチドは、生物学的
膜を横切って輸送するアンテナペディアホメオドメインタンパク質の3番目のへ
リックスに由来する16アミノ酸残基を含有するものである。当技術分野で公知の
他の膜輸送配列を同様に用いてもよい。
【0113】 他のクラスの配列は、ペプチド検出、または、例えばアフィニティークロマト
グラフィーなどによる回収が可能となるタグである。そのようなタグの多くは入
手可能であり、例えばT7タグ、HAタグおよびmycタグが挙げられる。
【0114】 他のクラスの配列は、エフェクター機能、例えば抗体の定常領域の一部分に抗
体エフェクター機能を付与するものでありうる。
【0115】 一般的には、上述した他の配列は、合計500個以上のアミノ酸を含むものでな
くてもよく、場合によっては、N-末端とC末端との間の任意の部分に開裂部分を
有していてもよい。より望ましくは、上記配列は、より短いもの、例えば合計20
0個以下、好ましくは100個以下、例えば50個または多くて20個のアミノ酸であり
うる。
【0116】ペプチド擬似体の作製 本発明のペプチドは、当技術分野で広く利用可能な手法を用いて、合成または
組換え手法により生成しうる。合成による生成は、一般的には、個々のアミノ酸
残基を逐次的に反応容器中に加えて、該容器中で所望の配列を有するペプチドを
生成することを含む。組換え手法の例を以下に記載する。
【0117】 本発明のペプチドを組換え手法により産生するには、本発明のペプチドをコー
ドするポリヌクレオチドを組換え複製ベクター中に組み込むことができる。該ベ
クターを利用して、適合可能な宿主細胞中で核酸を複製しうる。適切な宿主細胞
に関して、発現ベクターと共に以下に説明する。好ましくは、ベクター中の本発
明のペプチドをコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞によりコード配列の発
現がもたらされ得る制御配列と機能しうる形で連結する。すなわち、当該ベクタ
ーを発現ベクターとする。
【0118】 「機能しうる形で連結する」という用語は、記載する構成要素が、その目的と
するように機能可能な関係にある並列を指す。コード配列と「機能しうる形で連
結された」制御配列は、コード配列の発現が制御配列と共存可能な条件下にて達
成されるように連結する。
【0119】 そのようなベクターを、適切な宿主細胞中に形質転換して本発明のペプチドを
発現させうる。従ってさらなる態様において、本発明は、本発明のペプチドの製
造方法を提供するものであり、該方法には、上記発現ベクターで形質転換または
トランスフェクトした宿主細胞を、該ペプチドをコードするコード配列がベクタ
ーにより発現可能な条件下にて培養し、発現されたペプチドを回収することが含
まれる。
【0120】 上記ベクターとしては、例えば、複製起点を有し、場合により上記ポリヌクレ
オチドの発現プロモーターを含有し、また場合により該プロモーターの調節因子
を含有していてもよいプラスミド、ウイルスまたはファージベクターが挙げられ
うる。ベクターは、1種以上の選択マーカー遺伝子、例えば細菌プラスミドの場
合にはアンピシリン耐性遺伝子、または哺乳動物ベクターに関してはネオマイシ
ン耐性遺伝子を含有してもよい。ベクターを、in vitroで、例えばRNAの産生の
ために使用してもよいし、または宿主細胞をトランスフェクトもしくは形質転換
するために使用してもよい。
【0121】 本発明の他の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを複製および発現するた
めの、ベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞を提供す
る。該細胞は、上記ベクターと適合可能なように選択され、例えば細菌、酵母、
昆虫または哺乳動物の細胞でありうる。
【0122】 プロモーターおよび他の発現調節シグナルは、発現ベクターの設計対象とした
宿主細胞と適合可能なように選択されうる。例えば、酵母プロモーターとしては
、S.セレビシエ(S. cerevisiae)GAL4およびADH プロモーター、S.ポンベ(S.
pombe)nmtlおよびadhプロモーターが挙げられる。
【0123】 哺乳動物プロモーターとしては、メタロチオネインプロモーターが挙げられ、
これはカドミウムなどの重金属に応答するように含有させうる。
【0124】 ウイルスプロモーターとしては、SV40 large T抗原プロモーター、レトロウイ
ルスLTRプロモーターおよびアデノウイルスプロモーターが挙げられる。これら
のプロモーターは全て当技術分野にて容易に入手可能である。
【0125】ペプチドの修飾 上述したように、本発明のペプチドのアミノ酸配列には非天然アミノ酸が含ま
れうる。ペプチドを合成手法により生成する場合には、かかるアミノ酸を生成過
程で導入してもよい。
【0126】 またペプチドは、例えばペプチドの安定性または活性を改善するために、合成
または組換え生成法のいずれかに引き続いて、修飾してもよい。例えば、アミノ
酸側鎖の修飾は、当業者に公知の手法を利用して本発明のペプチド側鎖に対し行
ないうる。そのような修飾としては、例えば、アルデヒドと反応させた後でNaBH 4 を用いて還元することによる還元性アルキル化、メチルアセチミデート(methy
lacetimidate)を用いたアミド化、または無水酢酸を用いたアシル化によるアミ
ノ基の修飾が挙げられる。アルギニン残基のグアニジノ基は、2,3-ブタンジオン
またはグリオキサールなどの試薬を用いた複素環式縮合生成物の形成により修飾
されうる。スルフヒドリル基は、カルボキシメチル化などの方法により修飾され
うる。カルボキシ末端および任意の他のカルボキシ側鎖を、エステル基、例えば
C1-6アルキルエステル、ビオチン蛍光色素、フルオレセインおよびローダミンの
形態でブロッキングしてもよい。
【0127】製剤化 本発明のペプチドを、塩の形態で製剤化することができる。治療に慣例的に用
いることができる本発明のペプチドの塩としては、生理学的に許容される塩基の
塩、例えば適切な塩基から誘導されたもので、例えばアルカリ金属(ナトリウム
、カリウムなど)塩、アルカリ土類金属(マグネシウムなど)塩、アンモニウム
およびNR4(式中、RはC1-4アルキルである)塩が挙げられる。また塩には、生理
学的に許容される酸付加塩、例えばトリフルオロ酢酸塩、塩酸塩および酢酸塩が
挙げられる。
【0128】 本発明のペプチドは、実質的に単離された形態でありうる。かかるペプチドは
、当該ペプチドの意図する目的を妨害するものではなく、また実質的に単離され
ているとみなされる限りは担体または希釈剤と混合していてもよいことを理解さ
れたい。本発明のペプチドはまた、実質的に精製された形態であってよく、その
場合、一般的には、調製物中に本発明のペプチドを90%以上、例えば95%、98%
もしくは99%で含有しうる。
【0129】 本発明のペプチドは、表示用標識で標識してもよい。該表示用標識は、ペプチ
ドを検出可能にする適切な標識でありうる。適切な標識としては、放射性同位体
(例えば125I)、酵素、抗体、ポリヌクレオチドおよびリンカー(例えばビオチ
ン)などが挙げられる。本発明の標識化ペプチドをイムノアッセイなどの診断手
法において用いることにより、サンプル中の本発明のペプチド量を測定すること
が可能である。
【0130】 本発明のペプチドもしくは標識化ペプチドまたはそれらの断片を、固相、例え
ばイムノアッセイウエルまたはディップスティックの表面に固定してもよい。
【0131】 かかる標識化および/または固定化ペプチドは、適切な試薬、対照、説明書な
どと共に適切な容器中にキットとしてパッケージしてもよい。
【0132】医薬組成物 本発明のペプチドを、製剤化して医薬組成物としうる。該組成物は、製薬上許
容される担体または希釈剤と共に該ペプチドを含むものである。製薬上許容され
る担体または希釈剤としては、経口、局所または非経口(例えば筋肉内もしくは
静脈内)投与に適切な製剤に用いられるものが挙げられる。製剤は、慣例的には
単位投与剤形として提供され、薬学の分野で周知の任意の方法により調製しうる
。かかる方法には、有効成分と、1種以上の補助成分から構成される担体とを合
わせるステップが含まれる。一般的には、該製剤は、有効成分と液体担体もしく
は微粉砕固体担体またはその両者とを均一にかつ密接に合わせ、次いで必要であ
ればその生成物を成形することにより調製されるものである。
【0133】 非経口投与に適切な製剤としては、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および
溶質(対象の受容者の血液と該製剤とを等張にする)を含有していてもよい水性
および非水性滅菌注射剤、ならびに懸濁剤および増粘剤(thickening agent)を含
んでいてもよい水性および非水性滅菌懸濁剤、ならびにペプチドを血液成分また
は1種以上の器官にターゲティングするように設計したリポソームまたはその他
の微小粒子系が挙げられる。
【0134】 適切なリポソームとしては、例えば陽性に荷電した脂質(N[1-(2,3-ジオレイル
オキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウム(DOTMA)を含むもの、ジオレ
オイルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)を含むもの、および3β[N-(n'
,N'-ジメチル-アミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)を含む
ものが挙げられる。
【0135】 上記組成物は、任意の所望の量で本発明のペプチドを含みうる。部分的には、
これは意図する製剤および意図する用途に応じて変更しうる。一般的な目安とし
ては、該組成物は、約1%〜約99%、例えば10〜90%の本発明のペプチドを含み
うる。
【0136】 上記組成物は、1種以上、例えば2もしくは3種の本発明のペプチドの混合物
を含んでいてもよい。
【0137】 本発明に関して、以下に抗体のペプチド擬似体の製造に関する特定の例を挙げ
て詳述する。以下で使用する方法は、一般的には本明細書に記載の方法に基づい
て、抗体擬似体の設計に適用可能である。
【0138】 ある抗体においては、VH鎖単独でも抗原と結合するのに十分であり、ある種(
例えばラクダ)は、天然にこのタイプの単一鎖抗体を生成する。本発明を用いて
、VH単一鎖抗体の擬似体またはVH鎖とVL鎖との相互作用に基づく抗体の結合領域
の擬似体を提供することができ、抗体擬似体を作製するための参照としてその両
者の可能性を包含することを意図している。
【0139】 その概要は、抗体擬似体を得るために、標的抗体の三次元構造を提供すること
から開始する。X線構造解析が利用可能でなければ、構造を推定する方法が必要
とされる。配列から抗体可変領域の構造を推測することは、以下の研究以来、考
慮すべき研究対象である。すなわち、KabatおよびWu(Proc. Natl. Acad. Sci.
U S A 69: 960-964,1972;κ軽鎖の推定)、Padlanら(Cold. Spring. Harb. Sy
mp. Quant. Biol. 41: 627-637, 1977)、StanfordおよびWu(J. Theor. Biol.
88: 421-39, 1981)ならびにFeldmannら(J. Mol. Immunol. 18: 683-698,1981
)。
【0140】 上記初期の手法における本質的な「相同性」に基づく推測に続いて、より法則
に基づいた手法を導入した方法が開発された。以下にその研究例を示す:Reesと
共同研究者(DarsleyおよびRees, EMBO J. 4: 383-392,1985;de la Pazら、EMB
O J. 5: 415-425,1986;Martinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 68: 9268-927
2,1989およびMethods Enzymol. 203:121-153, 1991;Pedersenら、1992, Immuno
methods 1: 126-136;Reesら、1996, 「Protein Structure Prediction」. Oxfo
rd University Press, Sternberg MJE編)、ならびにChothia、Leskおよび共同
研究者(Chothiaら、J. Mol. Biol. 196: 901-917 1987;Nature 342: 877-883,
1989;J. Mol. Biol. 227: 799-817,1992;Tomlinsonら、EMBO J. 18: 4628-46
38,1995;Al-Lazikaniら、J. Mol. Biol. 273 : 4 927- 48,1997)は、Kabatら
(Ann. N. Y. Acad. Sci. 169: 43-54,1970;J. Biol. Chem. 252: 6609-6616,
1977)ならびにPadlanおよびDavies(Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 72: 819-8
23,1975)の観察結果(特定の可変領域CDRの標準的なクラスの概念を展開した)
を基に上記方法を開発した。その時以来、最も一致性を示さない抗体重鎖のCDR3
(以下「H3」という)を有する非標準的CDRに関する困難な問題に注目が集まっ
ている。
【0141】 抗体のモデリングには、一般的に、定常領域が保存されているので、Fvをモデ
リングする必要があるという点にのみタンパク質モデリングの利点がある。さら
に、Fv自体の大部分、すなわちフレームワークは、種々の抗体において構造が高
度に保存されており、最大の配列相同性を有する既知のフレームワークを利用し
てモデリングすることができる(Pedersenら、1992、前掲)。CDRモデリングに
関して、6個のCDR(全てH3以外)のうちの5個は、ほとんどの場合1〜10の標
準的クラスの1つ、すなわち各CDRのセットに分類される。標準的クラスのメン
バーは全てほぼ同じ主鎖立体構造を有する。このことは、ループの長さ、ならび
にCDRおよびフレームワークの両者における水素結合、静電的相互作用および/
または疎水性相互作用により与えられる立体構造においてCDRが有する多数の重
要な残基の存在により決定される。従って、未知のCDRをモデリングするには、
配列を決定し、適切な標準的クラスに分類し、そして最大の配列相同性を有する
既知CDRを利用する。L2を除く各ループに関して、わずかな事例は既存の標準的
クラスに分類されず、H3ループと同様に、他の方法でモデリングする必要がある
(http://antibody. bath. ac. ukを参照のこと)。結晶構造を解析するよりも
、他の標準的クラスを解明しようとすることが考えられるが、現在のところ、H3
に関する厳密な「標準的」分類は不可能である。
【0142】 H3ループのモデリングにおいて困難な点は、種々の抗体間の配列および構造の
過度な多様性に起因するものである。本質的には3つの手法がある。すなわち、
データベース検索などの知識に基づく方法であり、この方法では、抗体から、ま
たはBrookhavenプロテインデータバンク(PDB;Bernsteinら、Eur. J. Biochem.
80: 319-324,1977)全体から配列および長さに関して最大に一致するデータベ
ースのループをモデルとして利用する。またはCONGEN立体構造検索(Bruccoleri
およびKarplus, 1987 Biopolymers 26: 137-168)などの非経験(ab initio)法
、あるいは上記2つの方法の組み合わせ(Martinら、1991、前掲)である。より
最近の分析では、最終的には、知識に基づく方法によって、抗体のヒト化などの
大部分のモデリング用途に必要とされる精度が達成されうることが示唆された(
Reichmannら、Nature 332: 323-327, 1988;Roguskaら、1996, Protein. Eng. 9
: 895-904)。しかしながら現在は、中程度の分解能のX線構造の精度手法が要求
される場合には経験的および非経験的方法の組み合わせが必要であると考えられ
る。
【0143】 出発抗体の3次元構造を示すと、さらに2つの項目が任意のオーダーで提供さ
れる。標的抗原に結合する抗体部分を特定する。例えばこれは、一般的には、溶
媒および/または標的に対する接触性を有する多数の残基が位置する、抗体表面
の一部分である。
【0144】 さらに、標的結合活性に関連する親分子の残基を特定する。最も都合良く行う
には、例えば上述したアラニン走査などによりこの特定を経験的に行ってもよい
。しかしながら、標的に結合した抗体のモデルまたはこの構造、例えば結合した
抗体のX線結晶構造が利用可能である場合、これらを利用して上記アミノ酸を決
定することができる。本明細書の記載内容および以下の実施例からわかるように
、標的結合活性と関連する親分子の残基、および親分子の構造および機能に必須
の残基には、抗原に直接的には接触可能ではなく、擬似体への導入に必要ではな
い残基が含まれる。
【0145】 続いて、標的結合活性に関連するアミノ酸を抗体モデル上にマッピングするこ
とができ、および標的結合領域内に位置するアミノ酸を同定する(例を図2に示
す)。
【0146】 標的結合領域にも存在するアミノ酸を同定した後で、これらを抜粋することに
より、抜粋された個々のアミノ酸の間の3次元関係を規定するモデルを提供しう
る(例えば図3参照)。
【0147】 当業者であれば理解可能なように、親分子の標的結合活性に関連し、かつ標的
と接触可能な(例えば分子の結合表面に存在することにより)アミノ酸の全てを
抜粋する必要はない。例えば、結合表面は、標的と結合する2つの小さな領域を
含む場合があり、この場合に、一方の領域のアミノ酸のみを抜粋してもよい。
【0148】 都合良く実験を行うために、数個の標的結合アミノ酸を除外する場合もあり、
それによって、より適切なサイズを有する擬似体を作製しうる。例えば、いくつ
かのアミノ酸が他のものよりも非常に高程度で結合に寄与するものであると実験
的に決定してもよい。それによって、抗体結合領域の「有力なエネルギー(ener
getic)パラトープ」を規定することが可能であり、そこから抜粋するアミノ酸
の個々の選択が行われる。
【0149】 例えば、抗体のVH CDR3 (H3) ループは、標的に対し最も強力な結合活性で結
合する場合が多く、擬似体においてこのループの標的結合残基を保持させること
が望ましいこともある。以下に記載する実施例において、そのような残基4個が
、他のループ以上にH3ループ中に存在することが認められるだろう。アミノ酸を
選択する際に、このループを選択対象のアミノ酸基の中心に配置し、同時に選択
したアミノ酸をH3アミノ酸の周囲に設定する。より一般的には、選択は、最大数
の標的結合アミノ酸を有するループ(1種もしくは複数)の周囲に基づいて行い
うる。それにより、1つ以上のより距離の離れた標的アミノ酸を排除することが
可能となる。約4〜15、例えば6〜12個のアミノ酸を選択することが望ましい。
【0150】 望ましくは、少なくとも2つのループ、好ましくは少なくとも3つのループ、
そして2つの鎖(VH+VL抗体)の場合には、より好ましくは抗体の少なくとも4
つのループからアミノ酸を選択する。
【0151】 選択したアミノ酸を規定した後は、これらのアミノ酸を組み込んだ擬似体を設
計することができる。
【0152】 望ましくは、擬似体は、少なくとも部分的に環状でありうる。すなわち、選択
したアミノ酸の大部分が擬似体の環状部分内にありうる。例えば、選択したアミ
ノ酸のうち1、2または3個のみが非環状部分に存在するようにする。
【0153】 選択したアミノ酸の間のリンカーは、選択したアミノ酸の間の幾何学的関係を
維持するように選択される。リンカーはペプチドリンカーでありうる。
【0154】 一実施形態において、リンカーを、第1の擬似体のMDシミュレーション(これ
は、例えば以下の実施例に記載する基準を用いて親抗体と比較を行って該擬似体
の屈曲性プロファイルを決定し、1以上のリンカー分子を置換し、そしてMDシミ
ュレーションが屈曲性特性が改善された(すなわち親分子とより類似している)
擬似体を示すかどうかを判定する)の稼働の反復的プロセスによって精練するこ
とができる。
【0155】 最初の例として、第1の擬似体は、親分子に見出される抜粋した残基間の空間
の実行可能な構造またはパッキングの程度を反映する、選択した残基間の連結基
をモデリングすることにより設計されうる。選択した2つの残基間の空間を上述
したように模倣することができない場合には、グリシン残基を挿入して、その距
離または屈曲性を維持することができる。プロリン残基を、ターンを導入するか
、または屈曲性を制御するために挿入しうる。このプロセスは、通常は、コンピ
ュータモデリングソフトウエア上で手動または半手動で実施され、出発擬似体を
得ることができる。続いて、この出発擬似体を以下の段落に記載する反復的プロ
セスにより精練する。
【0156】 この反復的プロセスは、当業者に許容される性質をもつリンカーが得られるま
で繰り返し行いうる。最終的には、許容可能な擬似体が実験的に決定されるが、
上記プロセスによって、活性を示すものと合理的に予測される候補擬似体を設計
することができる。例えば、AMBERなどの標準的なモデリングパッケージでの100
〜150psのMDにおいて、元の抗体構造からの擬似体のRMSDが10Åまたはそれ以下
、例えば5Åまたはそれ以下であれば、生物学的に関連がありうる活性を好まし
く示すものとなり、従ってこれが、分子の実際の合成および試験の基礎を形成し
得る。
【0157】 都合の良いことに、リンカーは他のアミノ酸であるが、上述したような他のタ
イプのリンカーもまた包含される。
【0158】 本手法の利点は、擬似体が、上述したTASP手法の場合のように基礎により担持
される必要のないコンパクトな構造において親分子の結合部分を模倣することで
ある。擬似体のペプチドフォーマットにおいて、本発明は、特に、標的結合残基
が分枝していないポリペプチド分子内に(環状結合から離れて)位置する擬似体
を提供する。
【0159】 他の利点は、擬似体における選択したアミノ酸の相対的配置が抗体分子の天然
の配置に制約を受けないことである。例えば本明細書に記載するST40擬似体では
、H2鎖から選択したアミノ酸は逆の配置で存在する。これによって、擬似体は、
アミノ酸が線状の配置で連結する場合よりも小さくなり、さらに選択した残基間
の欠失も許容されることになる。
【0160】 まとめると、本発明は、抗体の結合領域の擬似体の設計方法を提供する。該方
法は、 抗体の可変部の少なくとも標的結合領域の3次元構造を得; 該領域内で、標的との結合性に関与する可能性のあるアミノ酸残基を特定し; 特定されたアミノ酸残基それぞれの3次元構造内での接触性の程度をコンピュ
ータにより決定し; 特定されたアミノ酸の中から標的結合活性に関与する複数のアミノ酸残基を選
択し; その複数個のアミノ酸を含み、そのアミノ酸基の相対幾何学的配置が親抗体に
おいて決定された相対幾何学的配置に相当する疑似体を作製し; 作製した疑似体の分子動力学シミュレーションをコンピュータにより実施し; 疑似体が所定の基準に合致するか否かを該シミュレーションから判定し;そし
て、 連結構造を変化させて、上記所定の基準により一層合致する第2の疑似体を作
製すること; を含む。
【0161】 上述したように、第2の擬似体に対し、さらに数ラウンドの連結構造の変更お
よびMD解析を行って、所定の基準をより良好に満たすさらなる擬似体を得ること
ができる。続いて、第2またはそれに続く擬似体は、本明細書に記載のように合
成し、使用しうる。
【0162】 上述したように、選択は、抗原に接触可能であり、かつ親分子の標的結合活性
と関連すると同定された最大数の残基(または最大に等しい数の残基)を有する
CDRループを特定し、少なくとも1つの他のCDRからの残基を共に有するものを選
択することに基づいて行いうる。好ましくは、2番目に大きい数の残基(または
場合によっては等しい数の残基)を有するCDRループを残基の少なくとも1つの
他の供与源とする。
【0163】 従って、本発明は、抗体の活性を模倣するペプチドの設計および合成方法を提
供するものである。特に本発明は、CD4受容体、例えばCD4タンパク質のCDR3受容
体と結合するペプチドの設計および合成方法を提供する。当業者であれば、この
手法を他の抗体に応用して、それらの抗体の標的と結合する可能性のあるペプチ
ドを設計し、合成することが可能である。例えば、HIV感染症に関与する他の受
容体(例えばCCR5)に対する抗体の擬似体、および腫瘍壊死因子に対する抗体の
擬似体が挙げられる。
【0164】 上述したように、上記擬似体は、天然の抗体または合成抗体であっても、それ
らに基づいて設計する必要はない。実際、擬似体は、ペプチドライブラリー(例
えばファージディスプレイライブラリー)から選択したペプチドの構造に基づい
て設計することが可能であり、例えばペプチドは、標的(例えばCD4)に結合す
る能力に基づいてファージディスプレイライブラリーから選択しうる。このペプ
チドに基づいて擬似体を作製することが可能であり、得られる擬似体はCD4に結
合しうる。
【0165】 従って、本発明は、上述した方法に従って得られる、CD4と結合するペプチド
およびCD4と結合しうるペプチド擬似体の設計および合成方法を提供する。
【0166】 本発明のペプチド擬似体を、例えば細胞表面上にCD4を有する細胞の検出など
の診断技法に使用することができる。
【0167】 本発明はまた、CD4-結合ペプチドおよび薬学的に適切な担体を含む医薬組成物
を提供する。
【0168】 本発明はさらに、CD4が関与する症状を処置するための医薬品の製造に使用す
るためのペプチドを提供する。かかる症状の例としてはHIVがある。
【0169】 ST40抗体のペプチド擬似体の設計および合成例に関して以下に詳述する。
【0170】 本例においては、抗原を認識する抗体の一部(パラトープ)を調べ、このパラ
トープの擬似体を設計した。該擬似体は、抗体と比較して低分子量であるべきで
あり、また合成が容易でなければならない。
【0171】 アラニン走査による重複する合成ペプチドを用いた生物学的アッセイは、結合
に重要な役割を果たすと考えられるアミノ酸を規定するものである。
【0172】 CD4を認識し、かつ細胞に基づくHIV感染モデルにおいて中和抗体である抗体の
ST40を、プロジェクトを開始し、上記方法の有効性を証明するために選択した。
この抗体は、十分に研究されているため選択した。ST40の3次元構造は、AbMソ
フトウエア(研究用バージョン)を用いて既にモデリングされている。Alascan
によりCDR内(結合が起こる位置)に位置し、かつ良好な接触性を有すると推測
されるアミノ酸を選択し、擬似体中に含有させる。擬似体の構築過程において、
全ての重要なアミノ酸、特にその側鎖の空間における位置、配向および立体構造
を可能な限り保存する。擬似体および親抗体のCDRの水における分子動力学(MD
)シミュレーションを行って、それらの屈曲性を規定した。
【0173】 擬似体を推測及び提供する2つの方法を使用した。 1)ST40の3次元構造は、AbM(Oxford Molecular, UK)ソフトウエアの研究
用バージョンを用いてモデリングした。アラニン走査(Monnetら、1999, J. Bio
l. Chem. 274: 3789-3796)により活性を有すると推測され、かつCDR内で良好な
接触性を有するように位置するアミノ酸を選択し、擬似体に含有させた。擬似体
の構築過程において、全ての「活性を有する」アミノ酸、特にその側鎖の空間で
の位置、配向および立体構造を可能な限り保存した。結合に重要であると同定さ
れたCDR残基のみを含有するオリゴペプチド擬似体を設計した。これらの重要な
アミノ酸を他のアミノ酸で互いに連結して、その配列の注意深く選択した位置に
おいて環化させた。この擬似体設計物は連続する配列であるため、パラトープの
非連続的なCDRループと正確な構造類似性を有するものではない。上記擬似体設
計物の種々のバージョンの屈曲性および立体構造を、水中での分子動力学シミュ
レーション解析により評価した。活性を有するものとして選択したST40のペプチ
ド擬似体を合成し、その結合親和性及び生物学的活性(HIVレトロウイルス阻害
活性)について試験した。擬似体と同じ数のアミノ酸を有し、かつ重要なアミノ
酸残基をペプチドの異なる位置に含有する環状ペプチドを陰性対照として使用し
た。
【0174】 2)種々の点において互いに連結して、プソイド環状構造を形成するいくつか
のCDRループを含有する3タイプの擬似体に関してシミュレーションを行った。C
DRの数を1〜3で変更して、擬似体中のアミノ酸残基数を低減させた。該擬似体
は、Lys、GluまたはCys側鎖を介して特異的な架橋を形成するアミノ酸のみを含
有する(しかしながら将来的には他のタイプの分子も可能かもしれない)。これ
ら擬似体の屈曲性および全体的な立体構造を、イオンの存在下または不在下の水
における分子動力学的シミュレーションを行い、続いて主成分分析(PCA)によ
る分析を行って特定した。PCAは関連分子のMD軌跡に基づき、抗体の元のままのF
v領域のMD挙動から計算されるPCAと比較される。
【0175】材料および分析方法 (A) 抗体モデリング MAb ST40のクローニングおよびアラニン走査法は、Monnetら、1999(前出)に
記載されている。抗体の軽鎖および重鎖、特に抗原(CD4)認識に関与する6つのCD
R(L1、L2、L3(軽鎖)、H1、H2およびH3(重鎖))の分子モデリングは、O2 R500
0シリコングラフィックスワークステーション(Silicon Graphics workstation)
上で稼働する抗体モデリングソフトウェアAbMの研究用バージョン(Reesら, Univ
ersity of Bath, UK)で行われた。AbMソフトウェアは、特に相同性の法則および
立体構造検索を組合せることによって、一次アミノ酸配列から抗体をモデリング
するために開発された(Martinら, 1989 (前述); Pedersenら, 1992, 前述)。こ
の研究で用いる最新バージョンのAbMは、University of Bathで開発された。こ
のバージョンは、約80種の抗体のX線構造のデータベースを含む。標準的な大き
さであるL2、L3およびH1ループは、AbMにおいて定義されるH2に対する標準的ク
ラス(canonical Class)1フレームワークおよび標準的クラス2を用いて構築され
た。新規の標準的クラスが、15アミノ酸を含むST40の例外的に長いL1 CDRループ
について定義される必要がある。15残基のL1を有する抗体の4つのX線構造(libg
、lmf2、lacy、およびlggc)が同定され、重ね合わされた。これらのL1各々は、
類似した立体構造を有していた。これに基づいて、L1について以下の標準的クラ
スを定義し、データベースに欠けているX線構造を加えた:[TI]-x(20)-C(1)-x(1
)-A-x(3)-V-x(7)-S-x(1)-[MLI]-x(1)-W(1)-x(35)-F(Searleら, 1995 (Antibody
structure and function. Antibody engineering, Borrebaeck編, C.A.K., Oxf
ord university press3-51))。13アミノ酸からなるH3ループ(これは長すぎて
、どのH3分類にも適合しない)(Shiraiら, 1996 (FEBS Lett 399: 1-8);Shira
iら, 1998 (J. Mol. Biol. 278: 481-496))は、3次元構造データベース検索と
組み合わせて、AbM中で実行される立体構造検索プログラム CONGEN(Bruccoleri
およびKarplus, 1987, 前述)を用いて構築された。「ねじれ(kinked)」の特徴
があまりよく規定されなかったので、CONGENを用いてH3を生じさせるための構築
ブロック(building blocks)の規定を数回改変することで、4つの異なるモデルを
得た。次いで、15および13残基のL1およびH3ループを含有する抗体libgのX線構
造を用いて、同様の立体構造を有するST40のH3をモデリングした。このH3のモデ
ルは、ねじれ形態と伸びた形態を示す。モデリングは、単純な変化を介して達成
され、その構造は、Tripos force fieldを用いて完全に最小化された。水素を、
Sybylソフトウェア(Tripos, Inc.)を用いてST40のすべてのモデルに加えて、
モデルを共役勾配法を用いて100回反復して最小化し、すべての小さな立体化学
的矛盾を排除した。
【0176】(B) 疑似体のモデリング すべての分子は、O2 R5000シリコングラフィックスワークステーション上で稼
働するSybylソフトウェアを用いて視覚化して、さらに改変した。疑似体のモデ
リングにおいて、CDRを抗体から選択し、その本来の立体構造を維持したまま、
さらに適当な側鎖を介して化学リンカーと連結して、さらに最小化した。疑似体
の分子動力学(MD)シミュレーションは、4つのプロセッサーを使用するO200 R100
00シリコングラフィックスワークステーション上で稼働するAMBERソフトウェア(
Oxford Molecular)を用いるAMBER force fieldを使用して水中にて行った。AMBE
Rの入力ファイルは、XLEAPモジュールを用いて作成された。側鎖間の架橋である
-CO-NH-を、アミド結合として定義した。水のボックス(water box)は、ボックス
サイズが8ÅであるモジュールSolvateBoxを用いて計算された。水のボックスは
、すべてのシミュレーションにおいて2500〜3500個の水分子を含有し、WATBOX21
6モジュールを用いて作成された。これは、周期的条件および定圧での水のモン
テカルロ分布に対応する。温度を、300Kに固定し、カットオフを10Åに、誘電定
数を1に設定し、さらにサンプリング頻度は、1psであった。動力学を稼働する前
に溶媒分子を最小にし、次いで溶質とした。MDシミュレーションは、100〜300ps
で稼働させた。動力学の最初の20psは、加熱期間であり、その間のシステムは、
10K〜300Kで行われ、1ps毎に15K増大させた。
【0177】 抗体ST40のMDシミュレーションにおいて、CDRと幾つかの骨格アミノ酸のみを
シミュレーションし、残りのFvを削除した(図5を参照されたい)。H3、L1および
L3ループは、疑似体についての選択されたCDRなので、このシミュレーション中
に、これらを移動させることができた。2つのMDシミュレーションを稼働させ、1
つのMDシミュレーションはイオンなしで、もう1つは、3つのNa+イオンをH1、L1
、およびH3ループの周辺に加えた。H3L1L3の荷電した残基を除いたすべての他の
荷電した残基を、シミュレーション中、イオンを用いて中性化した。シミュレー
ション時間は、300psであった。
【0178】(C) MDシミュレーションの分析 動力学シミュレーションの最初の50psは、平衡時間と考えられるので、分析中
では考慮しなかった。
【0179】 疑似体の屈曲性を、種々の方法によって、親抗体と比較した:最初に動力学シ
ミュレーション中のさまざまな時間における疑似体を、抗体の立体構造に非常に
近い出発配座異性体上に重ね合わせた。これにより、MDシミュレーション中の疑
似体がかなり変形していることが示された。なおこれはSYBYLソフトウェアを用
いて行われた。
【0180】 次いで、AMBERパッケージ(Oxford molecular)のCARNALモジュールを使用したM
Dシミュレーションの各psについてのRMSD'sを、参照として出発配座異性体を用
いて計算した。これらを、抗体のMDシミュレーションについて計算した同様のデ
ータと比較した。
【0181】 最後に、抗体と比較した疑似体のMDシミュレーションをより効率的に説明する
ために、疑似体の骨格のオートコレログラム(autocorrelogram)(距離行列)の主
要コンポーネント分析(PCA)を、各psにおいて計算した。抗体における対応する
ループのオートコレログラムは、参照として用いられた。Synt:emにより開発さ
れたプログラムAnadynにより、特定のアミノ酸についてのオートコレログラムの
計算が可能となり、さらに該分子の骨格の断片についてのオートコレログラムの
計算も可能である。この研究では、特定のアミノ酸の骨格だけを、変異させたア
ミノ酸の問題を除去するために考慮した。PCA分析は、プログラムTSAR(Oxford m
olecular)を用いて行われた。
【0182】(D) ST40のモデリング ST40のアミノ酸配列のアラインメントおよびAbMにおけるCDRの定義を、図1に
示す。ST40は、2つの異例な程長いCDRループ、L1(15残基)およびH3(13残基)を含
む。
【0183】 CDRのL1、L2、L3、H1およびH2のすべては、AbMについての相同性モデリングを
用いて、標準的分類によって規定した。対照的に、より屈曲性のあるH3は、Cong
en(立体構造検索法)を用いてモデリングした。Congenを用いてH3を作成するため
の構築ブロックの定義を数回改変して、4つの異なるモデルを得た。残念なこと
に、ねじれはこれらの4つのモデルではうまく規定されなかった。次に、抗体lib
g(15残基と13残基のL1およびH3ループが含む)のX線構造を用いて、同様の立体
構造を有するST40のH3をモデリングした。H3のこのモデルには、ねじれと伸長形
態が示されている。モデリングは、単純な変化を通じて達成され、その構造は、
Tripos force fieldを用いて完全に最小化された。水素を、Sybylを用いたST40
のすべてのモデルに加えて、モデルを共役勾配法およびTripos force fieldを用
いて100回反復して最小化し、すべての立体化学的矛盾を排除した。
【0184】 本発明者らによって同定されたL1についての新しい標準的クラスにより、特定
の立体構造におけるこのループの構築が可能となり、一方でH3ループについての
数種の可能性のある立体構造が同定された。13残基のH3ループを含む抗体の4つ
のX線構造のみを記載するが、これらのX線構造の各々は、異なる立体構造を有し
ていた。11、12、13、14、15および16残基を含むH3ループの3D構造比較が行われ
、これから、最大の可変性はループの頂端で生じることが示された。しかしなが
ら、この配列が、H3のN-1位にArgおよびC末端にAsp-x-Trpを含む場合、ST40のよ
うにねじれ形態(Shiraiら, 1996, 前述;Shiraiら, 1998, 前述)は、ループのC
末端に観察される。これは、それぞれ15残基および13残基のL1およびH3ループを
含む抗体libgにおいて観察される。ST40のH3の選択された3D構造(これには、こ
のループの伸長末端部分およびC末端付近のねじれが含まれる)を図2に示す。こ
の構造は、ST40疑似体の設計における参照モデルとして選択された。しかしなが
ら、かかるより長いH3ループに固有の屈曲性から、疑似体構築の際、H3のこの領
域を必要以上に厳しく制限しないように注意を払うべきであることが示唆された
【0185】(E) 水中におけるST40の動力学シミュレーション MDシミュレーションのために選択したST40の断片は、図6中、灰色で示されて
いる。
【0186】 自由に動くことができるループの重ね合わせは、イオンを加えないシミュレー
ションについては図7に、イオンを加えたシミュレーションについては図8に示
されている。
【0187】 L1の頂端は、疑似体においても観察されるように、大きな変動が起こっていた
。一方、L3は、開始時にのみ動き、後はシミュレーションの間、安定したままで
あった。H3とL3との相互作用は、観察された。
【0188】 ループL1は、イオンを加えないMDシミュレーション中で観察されるものとは異
なる動きを示し、より安定しているように思われた。H3は、L3とほとんど相互作
用しなかった。PCAを用いたこの2つの動力学シミュレーション間の比較が図8に
示されている。
【0189】 イオンを加えないMDシミュレーションは、イオンを加えたMDよりもコンパクト
である。これは、たぶんH3とL1との相互作用に起因するものである(この相互作
用は、イオンを加えたMDシミュレーションでははっきり明確化されない)。イオ
ンの存在により分散が誘導された。H3とL1の双方がある程度の屈曲性を示すとい
うことは、注意すべきことであり、このことは疑似体の設計中に考慮すべきであ
る。
【0190】(F) CD4 反応速度論的解析および生物学的アッセイに使用されるヒト組換え型CD4は、R
epliGen(USA)から入手した。
【0191】(G) BIAcore分析 反応速度論のパラメーターである、結合速度定数(ka)および解離速度定数(kd)
は、BIACORE 2000(Biacore AB、Uppsala、Sweden)を用いた表面プラズモン共鳴
分析によって測定された。kaおよびkdは、BIAevaluation 3.0ソフトウェア(BIAc
ore AB)を用いて決定された。見かけ平衡定数KDは、kd/kaの比率である。すべて
の実験は、25℃で行った。
【0192】 3-メルカプトプロピオン酸リンカーによって伸長された疑似体のリジン側鎖の
遊離SH基を用いて、BIAcoreの標準的PDEA/EDC/NHS方法に続いてB1センサーチッ
プ(BIAcore AB)上に分子を化学的に固定化する。
【0193】 固定化したペプチド疑似体についてのSPRシグナルは、チップ再生サイクルの
完了後には、280〜500pg/mm2に対応する約280〜500共鳴ユニットであることが見
出された。CD4の固定化した疑似体に対する結合反応速度論は、HBSバッファー(
ランニングバッファー)中に流速30μl/分でCD4(1〜20μg/ml、16〜330nM)を注入
することによって測定した。
【0194】 疑似体の選択性研究においては、固定化ミメテックの結合反応速度論は、無関
係なタンパク質:8A6(抗リンパ球MAb)、9E8(抗トロポニンi MAb)、トロポニンC
およびチログロブリン(Tg)を、各々50μg/mlで、HBSバッファー中に流速30μl/
分で注入することによって測定した。
【0195】 競合試験においては、ST40mAb(50μg/ml - 330nM)およびCD4(20μg/ml - 330n
M)を前もって混合し、次いでセンサーチップ上に同時注入した。同様の実験を無
関係なタンパク質9E8(50μg/ml)についても行った。
【0196】(H) 抗レトロウイルス活性アッセイ (i): 末梢血からの単核細胞の単離および培養 単核細胞は、健康な(かつHIVウイルスおよび肝炎ウイルスに対して血清学的に
陰性である)ドナーの末梢血から、フィコール・ハイパック(Ficoll-Hypaque)の
グラジェントを用いて単離した。PBMCは、フィトヘマグルチニン-P(PHA-P, Difc
o Laboratories, Detroit, USA)1mg/mlで3日間活性化し、次いで96ウエルプレー
トに各ウエル当たり200,000個の細胞で、組換え型インターロイキン-2(rHuIL-2,
Roche Products, Mannheim, Germany)20IU/mlを補足した培地A中に培養された
。培地Aは、RPMI細胞培養(RPMI 1640, Roche Products)、10%の胎児ウシ血清(F
CS, Roche Products)(補体を56℃、45分間の加熱によって不活化したもの)、L-
グルタミン(Roche Products)2mMおよび3種の抗生物質(ペニシリン、ストレプト
マシンおよびネオマイシン)(PSN, LifeTechnologies, Grand Island, USA)の溶
液からなっている。培養中は、細胞を+37℃で、5%のCO2下での飽和湿度で維持
した。
【0197】(ii): HIVウイルス PBMCに、10000のTCID50(50%組織培養感染量)のリンパ球親和性(lymphocyta
ry tropism)参考株HIV-1-LAIを、37℃にて1時間感染させた。インキュベーショ
ンの最後に、細胞を培地Aで2回洗浄した。このHIV-1株は、Neurovirology Servi
ceにおいて独占的に、PHA-Pで活性化された臍帯血単核細胞(UBMC)を用いて増殖
され、TCID50はKarberの公式を用いて計算されたものである。
【0198】(iii): 疑似体および制御分子 疑似体およびスクランブル(scrambled)ペプチドを、滅菌超純水に溶解して、5
つの濃度(50μM、10μM、5μM、1μMおよび0.5μM)を試験した。さらに抗体ST40
および9E8(CNRS UMR 9921, Montpellierによって提供された)は、以下の濃度:
100μg/ml、10μg/ml、1μg/ml、100ng/mlおよび10ng/mlで試験された。
【0199】 これらの化合物の活性を、Q4120参照抗体およびAZTと比較した。これら後者の
2つの化合物は、SpiBio(Paris, France)により提供され、Q4120抗体は、以下の
濃度:5μg/ml、500ng/ml、250ng/ml、50ng/mlおよび25ng/mlで試験され、およ
びAZTの抗HIV活性は、以下の濃度:10μM、1μM、100nM、10nMおよび1nMにおい
て測定された。すべての希釈は、培地Aで行った。
【0200】(iv): HIV単離株によって感染されたPBMCにおける抗ウイルス活性のアッセイ すべての実験は、3連で行われた。PBMCを、関連分子で、1時間+4℃にて前処理
し、次に10000 TCID50のHIV-1-LAI株を、+37℃にて4時間感染させた。次いで細
胞を、培地A 100mlで2回洗浄した。細胞は、rHuIL-2 20IU/mlを補足した培地A中
で培養され、培養培地の半分は、培養7日目に新しいものと交換した。培養の7日
目および10日目に、上清を採取して-20℃で凍結した。ウイルスの複製を、Retro
sys(r)刺激(dosing)キット(Innovagen(Lund, Sweden)により供給される)を用
いて、7日目培養の上清中に逆転写酵素活性化を刺激することによって測定した
【0201】 この抗ウイルス活性アッセイと平行して、細胞の生存率を、顕微鏡観察によっ
て評価した。細胞濃度の減少、細胞フラグメントの存在、または細胞形態の変化
を記録した。細胞生存率の低減は、トリパンブルー色素の排除により定量化した
【0202】実施例1: 連続的環状疑似体 合成が容易な連続的ペプチド疑似体を得るために、CDRから選択されたアミノ
酸(図3に示されている)を抜粋した。ペプチド走査に続いて、Monnetら, (1999,
前述)によるアラニン走査によって決定されたST40の重要なアミノ酸残基を、図
1および2に示す。重要なアミノ酸には、パラトープが位置するCDR領域内に位
置しないものがあるか、または場合によってはその付近にさえ位置していないと
いうことが観察された。疑似体に含まれるべきであるアミノ酸を選択するために
、生物活性のある残基をST40の3D構造(図2)上に示し、水に対するそれらの接触
性を計算した(表1)。幾つかの残基(例えばLys152およびLys43)は、パラトー
プ結合表面(図2の上部)からある程度注目すべき距離に位置することが見出され
、一方で他の残基は、タンパク質に覆い隠されており、抗原への接触性の乏しか
った。例えば、Tyr40、Phe102またはTrp149などの芳香族残基の多くは、多くの
場合、すべての抗体可変領域において構造的役割を果たすが、これらはマッピン
グ法によって「活性である」として同定された覆い隠された残基の中にある。対
照的に、結合に直接関与しているとより考えられるArg218およびArg219のような
荷電した残基は、保存されていた。これらの親水性残基に加えて、疑似体の疎水
性安定化の維持に不可欠であると推定され、かつH3ループに屈曲性があるために
、疑似体において接触性の増大を示すと考えられたアミノ酸(例えば、Phe222、
Trp163およびTyr36)は、保存されているが、しかしながら静的モデルにおいて測
定されたそれらの接触性は低いものであり得る。
【0203】 最後に、アラニン走査プロトコールによって規定されたアミノ酸残基の重要性
およびそれらの考えられる抗原に対する接触性に基づき、疑似体に含まれるべき
アミノ酸残基についての境界を固定した。選択したアミノ酸を、図1において四
角で囲み、さらに図3においてループ上に示した。L2を除くすべてのCDRは、少
なくとも1つの残基によって疑似体中に示される。
【0204】 合成が容易にできる連続的ペプチド疑似体を得るために、CDRから選択したア
ミノ酸(図3に示されている)を抜粋した。選択したアミノ酸残基の空間におけ
る相対的位置および方向性、特に側鎖を保存し、さらにこれらのアミノ酸をグリ
シン残基を用いて一緒に連結し、環状ペプチドを得た。環化は、内在するリジン
側鎖のNH2とペプチドのC末端カルボキシルとの共有結合によって成し遂げられる
。この位置は、ST40の屈曲性のあるH3ループに由来する2つのアルギニンを含む
疑似体のN末端部分内においてある程度の屈曲性を確実にするように選択された
。次いで、疑似体を安定化するために、グリシン残基を、疎水性残基または屈曲
部(turn)においてプロリン残基で体系的に置換することで、重要なアミノ酸が、
完全な親抗体、ST40において観察されるものと同じ(または厳密に類似した)方向
性を示す安定した疑似体を得た。最小化および短いMDシミュレーション(100ps)
後に、重要な残基の側鎖の位置および方向性をチェックした。短いMDシミュレー
ションにより、観察されるべき疑似体の「強い」変形が可能となる。合成につい
てのMDシミュレーションから選択した最も安定した疑似体は、100ps後に最も低
いRMSD(5Å)を有していた。MK3Tyrと呼ばれるこの疑似体は、以下のアミノ酸配
列: を有する。この疑似体において、重要なアミノ酸の側鎖の大部分はMDシミュレー
ションの100psの間中、正確な立体構造を維持する。シミュレーションを300psま
で延長する場合、RMSDは、ペプチドの固有の屈曲性によって5.49(最後100psの平
均)まで増大する。
【0205】 結合に関与するアミノ酸残基の位置の重要性を証明するために、異なる位置に
重要な残基と、連結が疑似体中のアミノ酸以外のアミノ酸とを有する類似の環状
ペプチドを合成した。この「スクランブル」ペプチドは、以下のアミノ酸配列:
を有する。疑似体およびスクランブルペプチドの合成は、段階的様式で、Automa
ted Multiple Peptide Synthesis(AMS 422, ABIMED)で行われた。HPLC分析は、B
eckman LC126システムにて、Waters SymetryShieldカラム RP18(5mm、100Å(150
x 4.6mm))、バッファーA(水中、0.1%のTFA)、バッファーB(アセトニトリル中
、0.08%のTFA);1.5ml/分の流速で12.5分でバッファーA 95%からバッファーB
100%へのグラジェントを用いて行った。HPLC精製は、Waters Prep LC 4000シ
ステムにて、Waters PrepPak Cartridge C18(6mm、60A(40 x 100mm));20ml/分
の流速で60分でバッファーAからバッファーB 60%へのグラジェントを用いて行
った。質量分析は、基質としてジヒドロキシ安息香酸を有するMaldi-tof分光計(
Voyager DE Elite, PE Applied Biosystems)を用いて行った。
【0206】 ペプチド合成は、従来からあるFmoc固体支持体プロトコールによって行い、そ
の合成は、ポリエチレングリコールグラフトポリスチレン支持体(Fmoc-PAL-PEG-
PS樹脂、置換:0.41mmol/g)を用いて行われた。Fmocアミノ酸は、DMF(N,N-ジメ
チルホルムアミド)中に加えた活性化試薬DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド
)およびHOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)を、標準的に4倍過剰で用いるこ
とによってその場で活性化された。アセチル化のステップを各々のアミノ酸を組
込んだ後に行い、残存する可能性のあるアミノ基をキャップし、かつ欠失のある
ペプチドを確実に存在しないようにした。Fmoc保護基を、DMF中に溶解したピペ
リジンの溶液(20%)によって除去し、各々をカップリングした。
【0207】 支持体を切断、および試薬B、標準的TFAを基にした反応混液(88%のTFA、5%
のフェノール、5%のH2O、4%のTIPS [v/v])による側鎖保護基の除去、ならび
にエーテル沈殿法による切断後の後処理の後に、粗精製の直鎖状ペプチドの純度
を分析用HPLCおよび質量分光計によって調べた。純度が85%を上回る場合には、
粗精製直鎖状ペプチドを、DMF中に加えた1当量のPyBopおよび5当量のNaHCO3を用
いて、室温で環化させた。反応混合物を、分離用(preparative)HPLCによって精
製し、純粋な生成物を凍結乾燥して、全体的な収率が5〜20%である白色粉末を
得た。
【0208】 線状ペプチドの純度が、85%を下回る場合には、環化の前に、分離用HPLCによ
る中間的精製の後に凍結乾燥が行われた。
【0209】 イソロイシンに代わり、3-メルカプトプロピオン酸リンカーによって伸長され
たリジンを有する変異疑似体の場合には、この残基の側鎖の初めのNH2官能基を
、Alloc(アリルオキシカルボニル)保護基によって特異的に保護した。この保護
基は、以下の条件:Pd[PPh3]4 (3当量)、CHCl3/AcOH/NMM(37/2/1)、室温、3時間
、に従って環化のステップの後に特異的に除去される。次いで3-(トリチルチオ)
プロピオン酸を遊離NH2官能基に、DMF中に加えた標準的なPyBOPの活性化を用い
て、カップリングさせた。支持体の切断および側鎖保護基の除去は、上記のよう
に達成された。
【0210】 純粋な生成物を、分析用HPLCおよびMaldi-Tof質量分光計によって分析した。
【0211】反応速度論パラメーター 疑似体MK3Tyrを、センサーチップに共有結合させ、CD4を溶液中に維持した。
疑似体のセンサーチップへの結合には、疑似体上に遊離アミンまたはスルフィド
基が必要とされた。1つの解決方法は、結合に関与しない疑似体のアミノ酸を3-
メルカプトプロピオン酸基(3MP = COCH2CH2SH)によって伸長されたLysに変化さ
せることで、さらに長いリンカーを得ることであった。この変化は、注意深く選
択された。なぜならば疑似体をセンサーチップに固定する場合、CD4と相互作用
する疑似体の表面は、接触しやすくなければならないからであった。300ps動力
学シミュレーションの最後の100psの平均的構造に基づいて、Tyr140とAsn144と
の間のIleは、変化させるのに最良の位置として特定された。この位置において
、3MPによって伸長されたLys側鎖は、CD4相互作用にとって重要であると推定さ
れる表面から離れて位置することが観察された。この設計は、図4に示されてお
り、この疑似体をMk3Tyr-long1SHと称した。
【0212】 固定化疑似体Mk3Tyr-long1SHと可溶性CD4との反応速度論パラメーター、ka
よびkdを測定し、ka 8.26 x 104 s-1M-1およびkd 2.64 x 10-4 s-1の値を得た。
算出されたKDは、3.2nMである。
【0213】 幾つかの無関係なタンパク質(8A6(抗リンパ球MAb)、9E8(抗トロポニンI MAb)
、トロポニンCおよびチログロブリン)と固定化疑似体との相互作用もまた試験し
、結果を図5Aに示す。これらのタンパク質のいずれについても、結合は全く観
察されなかった。
【0214】 競合研究において、ST40 MAb(50μg/ml)およびCD4(20μg/ml)を前もって混合
し、次いでセンサーチップ上に同時注入した。同様の実験は、無関係なMAb 9E8
についても行われた。CD4の疑似体への結合は、ST40によって阻害され、一方、
無関係なMAb 9E8は、結合に関して全く影響しなかった。これから、疑似体がST4
0と同一の、または非常に隣接した位置にある、CD4の部位と結合することが明確
に示された。
【0215】抗レトロウイルス活性アッセイ 疑似体の抗レトロウイルス活性を、方法の節で記載したように、細胞性アッセ
イで試験した。無関係な抗体9E8を陰性対照として、ST40を陽性対照として用い
た。抗HIV逆転写酵素阻害剤であるAZT、および抗体Q4120を、陽性参照として用
いた。このデータを表2に示す。
【0216】 陰性対照抗体の9E8は、-5%〜+13%の阻害の用量非依存的活性を示し、これが
アッセイのバックグラウンドノイズの範囲内であると考えられた。陽性対照抗体
Q4120および疑似体親抗体ST40は、類似した用量依存的活性を示し、最大96%の
阻害が得られる。該疑似体は、用量依存的阻害を示し、50μMで最大70%のウイ
ルス阻害が得られる。このアッセイの間中、細胞死は、全く見られなかった。対
照的に、スクランブルペプチドは、用量非依存的で、非直線の挙動を示し、9E8
を用いた場合と同様に、バックグラウンドノイズ内であると考えられる。
【0217】実施例2: CDRループを含むST40の疑似体の設計 この設計における最初のステップは、含まれるべきであるFvのアミノ酸の選択
であった。全部で36残基を含む5つの選択した断片を、図6において四角で示す
。最も難しい課題は、アミノ酸のこれらの断片を一緒に連結し、さらにお互いに
適切なCDRの立体構造を維持することである。すべての5つのループが疑似体に含
まれる場合、結合後の残基数は60を上回る数であろう。この残基数は、合成の点
から見て、許容され得る数ではない。この理由から、H3の疑似体のみをモデリン
グ、合成、および試験し、次いで第2ステップにおいてH3-L1の疑似体をモデリン
グ、合成、および試験し、最終的にはすべての3つのループを含むH3-L1-L3の疑
似体をモデリング、合成、および試験した。これらのループは、適切に配置した
残基の側鎖を用いて連結された。多数の疑似体をモデリングしたが、少数の例の
みを示す。
【0218】A) H3疑似体 すべてのH3疑似体を、アミド結合またはCys、Glu、Lys、ArgもしくはOrnの側
鎖が関与するジスルフィド架橋によってループの各末端で連結した。
【0219】 MDシミュレーションを、6つのH3疑似体について行った。結果から、ジスルフ
ィド架橋を有する疑似体は、その開始時の立体構造を維持していないことが示さ
れた。H3において最も安定した疑似体はRおよびEであり、図10に示されている
。この2つの疑似体を、L1に付加するために選択した。結合には重要なアミノ酸
が含まれていないということから、疑似体Eが好ましく、疑似体Eを合成した。
【0220】B) H3L1疑似体 L1である第2の断片(図1を参照されたい)を、Asp221の側鎖とAsn38を変更して
L1上に付加されたLysの側鎖を介して、H3に連結した。H3疑似体RおよびEの双方
を、H3L1のモデリングに用いた。
【0221】 第1の疑似体RMは、L1の非常に短い断片で(図11を参照されたい)、非常に屈
曲性があり、さらにH3と相互作用し、MDシミュレーション中、このループのねじ
れを誘導する。次いでL1の断片を用いるが(Val129〜Met37)、Val129およびMet37
をCysに変化させることでジスルフィド架橋を含ませ、L1の立体構造を安定化さ
せた。Trp39をL1に付加することで、親分子ST40のように疑似体の下部の芳香族
残基の数を増大させた。L1がST40と対照的にループの上部で環状の立体構造をと
っていたとしても、疑似体ECは、100psの動力学シミュレーション後においてRM
よりも安定していた(図12)。分子のこの部分は、ST40自体のMDシミュレーシ
ョンの間中、屈曲性があるので、このことは問題として考慮されず、いずれの場
合においても、断片L1はL3の存在下で、より安定であるべきである。従って、H3
L1疑似体のさらなる改変体をモデリングしなかった。
【0222】 最後に、EとCの結合を改変して合成を容易にした。Eループ(H3)のAsp221をCys
に変化させ、I-CH2-CO-(N1-CO-CH2-CH2-C10)を添加することによって、Cループ(
L1)のLysとS-CH2-CO-NH結合を形成させた。Na+イオンを含有する水中でのこの疑
似体の300psでのMDシミュレーションを実行し、この疑似体を形成させた。構造
の重ね合わせを図13に示し、さらにPCAの結果を図14に示す。
【0223】 ループH3は、動力学の際に比較的変形するが、残りの2つのループは、なおも
お互いから一定の距離にあるので、骨格のPCAは、難しすぎることはない。EC2
単一のループC(L1)が合成されたが、このループが示す生物学的活性は低い。EC
の合成は、進行中であるが、残りの2つのループが付加された場合、ループC(L1)
単独と比較して生物学的活性は増大すると推定される。
【0224】C) H3L1L3疑似体 H3L1L3を設計するためにL1とL3との間の結合のいくつかの型を試験した後、L3
が最初の選択物より長く、かつL3がL1とH3の双方に連結されている場合に、最も
安定した疑似体が見出せるようである。
【0225】 最後に疑似体E[WFK]2(図15)またはE[WFK]3(この場合、Lysの代わりにOrnを
用いてH3とL1とを連結した)を、合成のために選択した。これらの2つの疑似体
のMDシミュレーションが行われ、結果を図16および17に示す。Ornが存在す
る場合、モデルは、Lysを有する場合よりもコンパクトであり、さらにLysを有す
るL3の変形に起因して、より良好なRMSDを有する。
【0226】 ST40と同一の立体構造で疑似体を正確に得ることは、幾つかのループが不在の
ために難しいことは明かであるが、少なくとも疑似体H3L1L3が動力学シミュレー
ションの間中、安定したままである(例えば、E[WFK]3で観察されるように)場合
には、溶液中である程度の安定性を示すと思われる。E[WFK]3の合成は困難であ
り得るが、この場合にはH3とL3との連結を除去する必要がある場合がある。
【0227】表1: ST40の3Dモデルにおいて重要な残基(赤色)および大して重要でない残基
の溶媒に接触可能な表面面積を、R.S. Pearlmanらによって開発されたSALVOLプ
ログラムによって計算し、Sybyl中で実行した。文字が太字のアミノ酸は、疑似
体の一部分であるべきと選択されたアミノ酸である。
【表1】
【0228】表2: HIV分離株によって感染されたPBMCにおける抗ウイルス活性アッセイ。結
果は、阻害%で表されている。
【表2】 S.P. = スクランブルペプチド MK3 = 疑似体MK3Tyr-long1SH
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はST40の配列アライメントを示す。CDRループを下線で示す。重要なアミ
ノ酸残基(太字)およびあまり重要ではないアミノ酸残基(太字、イタリック体
)を表す。疑似体に包含されるように選択される残基を四角で囲む。
【図2】 図2はリボン状のST40の3D構造およびアラニン走査法により特定された重要な
アミノ酸残基(黒色)およびあまり重要ではないアミノ酸残基(濃灰色)の局在
位置を示す図である。抗原との接触性を残基が有するか有しないかのカットオフ
を点線により示す。点線の上側がCDRとの結合面であり、点線の下側が抗体の定
常部と相互作用する面である。つまり、活性アミノ酸が選択される領域と除外さ
れる領域が、それぞれ点線の上側と下側として規定される。
【図3】 図3はリボン状のST40のCDRを(その先端から)示す図である(先端から)。疑
似体に包含されるように選択される残基を黒色で示す。
【図4】 図4は、3-メルカプトプロピオン酸(3MP)基によって伸張されたリジンを有す
る疑似体の3D構造を空間充填モデルにより示したものである。この構造は、30
0ps(変異前)の分子動力学状態のうち100psを超えて継続する平均的構造である
。アミノ酸イソロイシンはリジンに変異しており、リジンは3-MPにより伸張され
ており、黒色で示す。
【図5】 図5は、(A)疑似体がセンサーチップ上に固定されている場合におけるCD4およ
び関連性の無いタンパク質(8A6、9E8、TnC)のセンサーグラム;ならびに(B)疑似
体がセンサーチップ上に固定されている場合におけるプレインキュベートしたCD
4 + ST40およびCD4 + 9E8の注入による結合競合のセンサーグラムを示す。
【図6】 図6は、水中での動力学シミュレーションのために使用する(灰色)ST40の断
片を示す。
【図7】 図7は、H3、L1およびL3を除く全てのアミノ酸が固定されている場合における
ST40のMDシミュレーション中のH3、L1およびL3 CDRを示す(黒色:開始時の配座
異性体、灰色:MDシミュレーションにおける50、100、150、200、250および300p
sの時点での配座異性体)。
【図8】 図8は、イオンを用いたST40のMDシミュレーション中のH3、L1およびL3 CDRを
示す(黒色:開始時の配座異性体、灰色:50、100、150、200、250および300ps
の時点での配座異性体)。
【図9】 図9は、ST40についての2つのMDシミュレーションのPCA(cp1、cp2)を示す図で
ある。MDシミュレーション中に移動可能なアミノ酸骨格についてのみ自己相関図
(autocorrelogram)を計算した(灰色:イオンを含まない;黒色:イオンを含む
)。
【図10】 図10は、H3の疑似体であるRおよびEを表わしたものである。開始時のコンフ
ォメーションを灰色で示し、100ps後のコンフォメーションを黒色で示す。
【図11】 図11は、H3L1の疑似体であるRMを表わしたものである。開始時のコンフォメ
ーションを灰色で示し、MDシミュレーションの100ps後のコンフォメーションを
黒色で示す。
【図12】 図12は、H3L1の疑似体であるEC、およびそのMDシミュレーションを表わした
ものである。開始時のコンフォメーションを灰色で示し、MDシミュレーションの
100ps後のコンフォメーションを黒色で示す。
【図13】 図13は、EC2のCα原子を表わしたものである。開始時のコンフォメーション
を黒色で示し、50、80、100、120および150psの時点でのコンフォメーションを
灰色で示す。
【図14】 図14は、ST40(黒色)およびEC2(灰色)についてのMDシミュレーションのP
CA(cp1、cp2)を示す図である。
【図15】 図15は、H3L1L3の疑似体であるE[WFK]2を表わす。
【図16】 図16は、H3L1L3の疑似体であるa)E[WFK]2およびb)E[WFK]3を表わす。開始時
のコンフォメーションを黒色で示し、300ps後のコンフォメーションを灰色で示
す。
【図17】 図17は、ST40(黒色)、E[WFK]2(濃灰色)およびE[WFK]3(淡灰色)につい
てのMDシミュレーションのPCA(cp1、cp2)を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN, YU,ZA,ZW (72)発明者 グラニエール,クラウデ フランス国 エフ−34060 モントペリエ セデックス 02,アヴェニュー チャー ルズ フラホールト,15,ファカルテ デ ファーマシー,シーエヌアールエス ユ ーエムアール 9921,イミュノアナリセ エト イノヴェイション エン バイオロ ジー クリニック (72)発明者 カクゾレック,ミカエル フランス国 エフ−30000 ニームス,パ ーク サイエンティフィック ジョージズ ベッセ,シンテム (72)発明者 ラハナ,ロジャー フランス国 エフ−30000 ニームス,パ ーク サイエンティフィック ジョージズ ベッセ,シンテム (72)発明者 リーズ,アンソニー フランス国 エフ−30000 ニームス,パ ーク サイエンティフィック ジョージズ ベッセ,シンテム (72)発明者 ロウクス,フローレンス フランス国 エフ−30000 ニームス,パ ーク サイエンティフィック ジョージズ ベッセ,シンテム Fターム(参考) 4H045 AA11 AA20 CA40 DA75 5B046 AA00 JA04

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親分子に関連する活性を示す疑似体を設計する方法であって、 活性に関与する親分子内の複数個の化学基を特定し; 活性に関与する化学基および該化学基を連結する構造を含む疑似体を作製し; 作製した疑似体の分子動力学シミュレーションをコンピュータにより実施し; 該疑似体が所定の基準に合致するか否かを該シミュレーションから判定し;そ
    して、 上記の連結構造を変化させて、上記所定の基準により一層合致する第2の疑似
    体を作製すること; を含む、上記方法。
  2. 【請求項2】 抗体の結合領域の疑似体を設計するための請求項1記載の方
    法であって、 抗体の可変部の少なくとも標的結合領域の3次元構造を得; 実験データに基づいて、該領域内で、標的との結合性に関与する可能性のある
    アミノ酸残基を特定し; 特定されたアミノ酸残基それぞれの3次元構造内での接触性の程度をコンピュ
    ータにより決定し; 特定されたアミノ酸の中から標的結合活性に関与する複数個のアミノ酸残基を
    選択し; その複数個のアミノ酸を含み、そのアミノ酸基の相対幾何学的配置が親抗体に
    おいて決定された相対幾何学的配置に相当する疑似体を作製し; 作製した疑似体の分子動力学シミュレーションをコンピュータにより実施し; 疑似体が所定の基準に合致するか否かを該シミュレーションから判定し;そし
    て、 連結構造を変化させて、上記所定の基準により一層合致する第2の疑似体を作
    製すること; を含む、上記方法。
  3. 【請求項3】 疑似体が親分子の活性を示す可能性を評価する方法であって
    、 疑似体全体またはその一部分の分子動力学シミュレーションを実施するステッ
    プ;および、 分子動力学シミュレーションに基づく基準によって疑似体を評価するステップ
    ; を含む、上記方法。
  4. 【請求項4】 疑似体の評価に、分子動力学シミュレーションにより決定し
    た疑似体の屈曲特性を親分子の屈曲特性と比較することが含まれる、請求項3記
    載の方法。
  5. 【請求項5】 疑似体の評価に、可能性のある疑似体の立体構造の経時変化
    と親分子の立体構造の経時変化との類似性が所定のレベルを上回るか否かを判定
    することが含まれる、請求項3記載の方法。
  6. 【請求項6】 所定の活性を有することが知られている親分子内で、該活性
    に関与する親分子内の少なくとも1個の化学基を特定する方法であって、 親分子の活性領域を含む親分子の少なくとも一部分の3次元構造をコンピュー
    タにより決定するステップ; 実験データに基づいて、該活性領域内で、活性に関与する可能性のある複数個
    の化学基を選択するステップ; 選択された化学基それぞれの3次元構造内での接触性の程度をコンピュータに
    より決定するステップ;および、 そのそれぞれの接触性の程度に基づいて、選択された化学基の中から活性に関
    与する少なくとも1個の化学基を特定するステップ; を含む、上記方法。
  7. 【請求項7】 特定の化学基の接触性の程度が、コンピュータにより測定さ
    れた親分子内での該化学基の露出度である、請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 上記の露出度が溶媒に接触可能な化学基が占める表面積であ
    る、請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】 上記の露出度が、標的分子と相互作用する親分子の表面から
    活性基までの距離であり、該距離は親分子の三次元構造から決定されたものであ
    る、請求項7記載の方法。
  10. 【請求項10】 親分子と共通の活性を有する疑似体を設計する方法であっ
    て、 活性に関与する親分子内の複数個の化学基を特定し、この場合、該化学基には
    、親分子の第1のループ上に位置する少なくとも1個の第1の化学基と、親分子の
    第1のループ上には位置しない少なくとも1個の第2の化学基とが含まれており;
    そして、 第1の化学基を含む第1の環状部分と第1の環状部分の外部にある第2の化学基と
    を含む疑似体を設計すること; を含む、上記方法。
  11. 【請求項11】 少なくとも1個の第2の化学基が、親分子の第2のループ上
    に位置し、 かつ、その疑似体が第1の化学基を含む第1の環状部分と少なくとも1個の第2の
    化学基を含む第2の環状部分とを含む、請求項10記載の方法。
  12. 【請求項12】 親分子に関連する活性を示す疑似体を設計する方法であっ
    て、 活性に関与する親分子内の複数個の化学基を特定し; 1方向から見た場合の親分子内でのその化学基間の相対幾何学的関係を決定し
    ; 上記の複数個の化学基を含み、該化学基の相対幾何学的配置が上記で決定され
    た親分子内での該化学基間の相対幾何学的配置に相当する疑似体を作製すること
    ; を含む、上記方法。
  13. 【請求項13】 親分子が、抗体結合ドメインもしくはイムノグロブリンス
    ーパーファミリーの他のメンバーの結合ドメインであるか、または抗体もしくは
    イムノグロブリンスーパーファミリーのメンバーの超可変領域である、請求項1
    または3〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 【請求項14】 疑似体を合成するさらなるステップを含む、請求項1、2
    、または10〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 【請求項15】 親分子が抗体であり、疑似体がペプチドである、請求項1
    〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 【請求項16】 親分子がCD4に結合する抗体であり、疑似体がCD4に結合す
    るペプチドである、請求項15に記載の方法。
  17. 【請求項17】 請求項13に記載の方法により得られた疑似体。
  18. 【請求項18】 請求項13に記載の方法により取得可能である疑似体。
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