JP2005502099A - タンパク質医薬品デザインのためのアンサンブルベースのストラテジー - Google Patents

タンパク質医薬品デザインのためのアンサンブルベースのストラテジー Download PDF

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Abstract

本発明は、ペプチドおよびタンパク質の配座異性体のアンサンブルを作製および分析する方法および所望の特徴を示すようにタンパク質をデザインする方法を提供する。本発明は、タンパク質医薬品デザインで特に有用である。

Description

【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年3月12日提出の米国特許仮出願番号60/275,259号の優先権を主張する。
【0002】
本明細書中に記載の研究は、米国政府の助成金によって支援されている。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【0003】
I.発明の分野
本発明は、一般に、構造生物学およびタンパク質モデリング、特にタンパク質の種々の特徴を至適化するためのコンピュータ支援の方法に関する。本発明は、特に、タンパク質医薬品デザインで有用である。
【背景技術】
【0004】
II.関連分野
タンパク質の三次元構造は多数の方法で決定されている。おそらくタンパク質構造決定の最も知られている方法は、X線結晶学技術の使用を含む。この技術を使用すると、良好な精度で三次元構造を解明可能である。さらに、中性子回折技術の使用または核磁気共鳴(NMR)によってタンパク質構造を決定することができる。
【0005】
多数のタンパク質の三次元構造は、内面(通常タンパク質が見出される水性環境から離れた方向を向いている)および外面(水性環境に曝されている)を有するものとして特徴付けることができる。多数の天然タンパク質の研究により、研究者らは、タンパク質分子の内表面上に疎水性残基(トリプトファン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、またはメチオニンなど)が最も頻繁に見出されることを発見した。対照的に、タンパク質外表面上に親水性残基(アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、アルギニン、セリン、およびトレオニンなど)が最も頻繁に見出される。アミノ酸アラニン、システイン、グリシン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、およびトレオニンは、タンパク質内表面および外表面上でほぼ等しい頻度で出現する。
【0006】
タンパク質の生物学的特性は、タンパク質の三次元(3D)高次構造に直接依存する。高次構造は、酵素活性、結合タンパク質の能力および特異性、ならびに受容体分子の構造的寄与を決定する。各タンパク質の可能な高次構造の数は天文学的であり(100残基の小タンパク質で約1016通り)、水溶液中で支配的な1つの高次構造を選択する信頼できる方法は存在しなかった。第2の困難は、タンパク質の一部と別の部分および水との相互作用についての正確且つ信頼できる力学的法則が存在しないことである。これらおよび他の要因は、公知のタンパク質配列中の各残基の最も可能性の高い相対的部位の決定を非常に複雑にしている。
【0007】
タンパク質折りたたみ問題(そのアミノ酸配列からのタンパク質三次元四次構造の決定における問題)は、半世紀以上前に最初に体系化された。初期の所見およびその後の実験により、タンパク質の高次構造をアミノ酸配列のみによって決定し、配列中では離れているが空間的に隣接した残基により疎水性残基中に豊富な密集コアが得られる固有の天然高次構造が存在するという当時の見解が導かれた。分子生物学における革命の結果として、公知のタンパク質配列数は、公知の三次元タンパク質構造の数の約50倍である。タンパク質配列が三次元構造の範囲外でほとんど意味を待たないので、この不釣合いは多くの生化学領域の進展を妨げている。
【0008】
構造ベースの薬物デザインは、より活性の高い化合物(例えば、薬物の品質がより高く、且つ類似の効力を有する化合物)の予測にタンパク質-薬物複合体の三次元構造を使用する。手がかりは、タンパク質およびそのインヒビターの構造、運動、およびエネルギーが薬物活性の原因であることである。
【0009】
薬物デザインは、ある方法で受容体(例えば、哺乳動物の生細胞中のタンパク質)と相互作用する特定の化学物質の「発見」を歴史上含んでいる。タンパク質がポリペプチドから作製されるので、いくつかの有効な薬物がペプチドでもあるか、ペプチドを模範とすることは驚くべきことではない。一般に、2つのペプチドが相互に有効に相互作用するために(例えば、一方がタンパク質受容体で他方が薬物)、一方のペプチドの複雑な三次元形状(「高次構造」)が2つのペプチドを適合させて所望の結果が得られる方法で互いに結合可能な矛盾のない高次構造を取ることが必要である。例えば、第1のペプチドの複雑な形状または高次構造を、「ロック」とたとえ、受容体の対応する不可欠な形状または高次構造を第1のペプチドをアンロックする(すなわち、第1のペプチド内で所望の結果が得られる)「キー」とみなした。この「ロック-アンド-キー」アナロジーは、適切に適合させたキー(その後模倣された第2のペプチドまたは化合物)のみがそれと「アンロック」する(所望の結果を得る)ためにロック(第1のペプチド)内で適合することができることを強調する。さらに、キーがロックに適合する場合でさえ、それがその機能を実行するためには適切な組成でなければならない。すなわち、第2のペプチドは、第1のペプチド(例えば、受容体タンパク質)と適切に結合するために正確な空間的配置および位置で正確なエレメントを含まなければならない。したがって、キーの適切な高次構造もしくは形状の発見もしくは予測またはその後に模倣される第2のペプチドもしくは化合物は、任意の薬物デザインの主要な目的である。
【0010】
薬物デザインにおける別の目的は、免疫応答を惹起する内因性または外因性の特性をほとんど示さない薬物のデザインである。タンパク質は免疫応答を惹起することが公知である。タンパク質は、ほとんどの抗体応答の誘導に寄与し、免疫記憶に必要なT細胞と戦う能力を有する。T細胞は、主要組織適合複合体分子(MHC)に結合するタンパク質のペプチドフラグメントとして抗原を認識する。タンパク質の一定の特性は、タンパク質の免疫原性により大きく影響を与える。例えば、巨大且つより複雑なタンパク質ならびに自己タンパク質との関係が離れているほど、応答を惹起する可能性が高い。したがって、タンパク質抗原がより大きく且つより異なるほど、T細胞によって認識されるペプチドを含む可能性が高い。また、粒子状の抗原または凝集した抗原は、細胞(例えば、抗原提示細胞)によってより有効に取り込まれるので免疫原性がより高い。
【0011】
本発明のタンパク質モデリングアプローチは、ペプチドまたはタンパク質の可能な構造を予想する方法を提供する。本発明の使用例は、ペプチドまたはタンパク質の溶解性を増大させるか凝集または免疫原性を減少させることである。この方法により、ペプチドまたはタンパク質の安定領域および不安定領域の構造の予測が可能である。
【発明の開示】
【0012】
本発明は、ペプチドおよびタンパク質の配座異性体のアンサンブルを作製および分析する方法および所望の特徴を示すようにタンパク質をデザインする方法を提供する。本発明は、タンパク質医薬品デザインで特に有用である。
【0013】
本発明の実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して至適化された薬学的特性を提供する工程とを含む、至適化された薬学的特性を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、前記タンパク質医薬品の薬学的送達特性を測定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、至適化された薬学的特性を示す前記タンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを調製する工程と、各変異体の薬学的特性およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも薬学的特性が至適化されているかどうかを決定する工程と、各特性について前記変異体と目標物とを比較する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製して至適化された薬学的特性を提供する工程とを含む、至適化された薬学的特性を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。特定の実施形態では、本方法は、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも薬学的特性が至適化されているかどうかを決定する工程とを前記薬学的特性が使用するために十分に至適化されるまで繰り返すことを含む。
【0015】
別の特定の実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製してタンパク質医薬品とリガンドとの間の増加した結合親和性を提供する工程とを含む、タンパク質医薬品とリガンドとの間の増加した結合親和性を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、前記タンパク質医薬品とリガンドとの間の結合親和性を決定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、前記リガンドに結合することができるタンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、各変異体の結合親和性およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異を選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも結合親和性が増加するかどうかを決定する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製してリガンドに対する増加した結合親和性を示す工程とを含む、タンパク質医薬品とリガンドとの間の増加した結合親和性を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。特定の実施形態では、本方法は、さらに、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも増加した結合親和性を有しているかどうかを決定する工程とを前記結合親和性がタンパク質医薬品として使用するために十分に至適化されるまで繰り返す工程を含む。
【0017】
特定の実施形態では、結合親和性を表面プラズモン共鳴によって同定する。なおさらに、リガンドは、タンパク質または非タンパク質である。より詳細には、タンパク質は、受容体結合部位での非タンパク質リガンドの結合によってリガンドの受容体への結合を阻害する。
【0018】
さらに特定の実施形態では、結合することができる高次構造フラクションおよび結合親和性の決定は、高次構造が立体的に許容されるかどうかを評価するためのタンパク質とリガンドとを使用したファンデルワールス計算を行うことを含む。
【0019】
別の特定の実施形態では、結合することができる高次構造フラクションおよび結合親和性の決定は、タンパク質とリガンドとの間の結合定数および解離定数を決定する工程を含む。
【0020】
特定の実施形態では、本方法は、リガンドとの結合状態におけるタンパク質の構造に類似する構造の安定化によって結合エントロピーを減少させる配座異性体を決定する工程をさらに含む。
【0021】
本発明の別の実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して低減した凝集を提供する工程とを含む、低減した凝集を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。
【0022】
別の実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、タンパク質医薬品の凝集を測定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、低減した凝集を示すタンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、各変異体の凝集値およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも凝集が減少するかどうかを決定する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製して低減した凝集を示す工程とを含む、低減した凝集を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。
【0023】
特定の実施形態では、本方法は、さらに、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも凝集が減少しているかどうかを決定する工程とを前記凝集がタンパク質医薬品として使用するために十分に至適化されるまで繰り返す工程を含む。詳細には、凝集を360nmの光散乱によって測定する。なおさらに、タンパク質上表面上に露呈した疎水性残基数が減少する。詳細には、平衡状態で見出される非折りたたみ領域数が減少する。なおさらに、特定の実施形態では、グルタミン/アスパラギン豊富なドメインの数が減少する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して増加した溶解性を提供する工程とを含む、増加した溶解性を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。
【0025】
なおさらに、本発明の別の実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、前記タンパク質医薬品の溶解性を測定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、増加した溶解性を示すタンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、各変異体の溶解値およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも溶解性が増加するかどうかを決定する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製して増加した溶解性を示す工程とを含む、増加した溶解性を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。
【0026】
特定の実施形態では、本方法は、さらに、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも溶解性が増大しているかどうかを決定する工程とを前記溶解性がタンパク質医薬品として使用するために十分に至適化されるまで繰り返すことを含む。さらに特定の実施形態では、溶解性を、タンパク質医薬品の自由遷移エネルギーの決定によって測定する。
【0027】
さらに特定の実施形態では、タンパク質表面上の極性残基数が増加する。なおさらに、タンパク質表面上の非極性残基数が減少する。また、タンパク質の正味の電荷が増加する。
【0028】
本発明の別の実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して減少した免疫原効果を提供する工程とを含む、減少した免疫原効果を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。
【0029】
別の特定の実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、前記タンパク質医薬品の免疫原効果を測定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、減少した免疫原効果を示すタンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、各変異体の免疫原効果値およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも免疫原効果が減少するかどうかを決定する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製して減少した免疫原効果を示す工程とを含む、減少した免疫原効果を示すタンパク質医薬品をデザインする方法である。
【0030】
特定の実施形態では、本方法は、さらに、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも免疫原効果が減少しているかどうかを決定する工程とを前記免疫原効果がタンパク質医薬品として使用するために十分に至適化されるまで繰り返すことを含む。詳細には、免疫原効果をELISAによって決定する。
【0031】
さらなる実施形態では、タンパク質医薬品は、タンパク質医薬品の他の分子との凝集が減少する傾向を示す。より詳細には、タンパク質医薬品は、主要組織遺伝子複合体のタンパク質と結合する傾向が減少する。特定の実施形態では、タンパク質医薬品は5,000ダルトン以上のタンパク質である。さらに、タンパク質医薬品はエンドソーム経路によるプロセシングに耐性を示す。
【0032】
本発明のさらなる実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して薬学的特性を至適化する工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有する至適化された薬学的特性を示すタンパク質医薬品である。特定の実施形態では、治療有効量の前記タンパク質医薬品を被験体に全身投与または粘膜投与する。当業者は、被験体がヒトまたは非ヒト動物を含むことを理解している。
【0033】
本発明の別の実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、前記タンパク質医薬品の薬学的特性を測定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、至適化された薬学的特性を示す前記タンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを調製する工程と、各変異体の薬学的特性およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも至適化された薬学的特性を示しているかどうかを決定する工程と、各特性について前記変異体と目標物とを比較する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製して至適化された薬学的特性を得る工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有する、至適化された薬学的特性を示すタンパク質医薬品である。詳細には、タンパク質医薬品を、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも薬学的特性が至適化されているかどうかを決定する工程とを前記薬学的特性が使用するために十分に至適化されるまで繰り返すことによって至適化する。
【0034】
さらなる実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製してタンパク質医薬品とリガンドとの間の増加した結合親和性を提供する工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有するタンパク質とリガンドとの間の増加した結合親和性を示すタンパク質医薬品である。
【0035】
本発明の別の実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、前記タンパク質医薬品とリガンドとの間の結合親和性を決定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、前記リガンドに結合することができるタンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、各変異体の結合親和性およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも結合親和性が増加するかどうかを決定する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製してリガンドに対する増加した結合親和性を示す工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有するタンパク質とリガンドとの間の増加した結合親和性を示すタンパク質医薬品である。なおさらに、タンパク質医薬品を、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも結合親和性が増大しているかどうかを決定する工程とを前記結合親和性がタンパク質医薬品として使用するために十分に至適化されるまで繰り返すことによって至適化することができる。
【0036】
別の実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して低減した凝集を提供する工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有する、低減した凝集を示すタンパク質医薬品である。
【0037】
発明の特定の別の実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、タンパク質医薬品の凝集を測定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、低減した凝集を示すタンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、各変異体の凝集値およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも凝集が減少するかどうかを決定する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製して低減した凝集を示す工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有する、最初の構造と比較して低減した凝集を示すタンパク質医薬品である。詳細には、タンパク質医薬品を、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも凝集が減少しているかどうかを決定する工程とを前記凝集がタンパク質医薬品として使用するために十分に至適化されるまで繰り返すことによって至適化することができる。
【0038】
本発明のさらなる実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して増加した溶解性を提供する工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有する、増加した溶解性を示すタンパク質医薬品である。
【0039】
別の実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、前記タンパク質医薬品の溶解性を測定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、増加した溶解性を示すタンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、各変異体の溶解値およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも溶解性が増大するかどうかを決定する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製して増加した溶解性を示す工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有する、最初の構造と比較して増加した溶解性を示すタンパク質医薬品である。特定の実施形態では、タンパク質医薬品を、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも溶解性が増大しているかどうかを決定する工程とを前記溶解性がタンパク質医薬品として使用するために十分に至適化されるまで繰り返すことによって至適化することができる。
【0040】
本発明の別の実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程と、コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して減少した免疫原効果を提供する工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有する、減少した免疫原効果を示すタンパク質医薬品である。
【0041】
さらなる実施形態は、タンパク質医薬品の高分解能構造をコンピュータ支援のモデリングプログラムに入力する工程と、前記タンパク質医薬品の免疫原効果を測定する工程と、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、前記タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、免疫原効果が減少したタンパク質の高次構造フラクションを決定する工程と、前記タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で上記工程を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、各変異体の免疫原効果値およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、初期リード変異体を同定する工程と、制限セットを初期化する工程と、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも免疫原効果が減少するかどうかを決定する工程と、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製して免疫原効果を減少させる工程とを含む方法によって決定された構造の特徴を有する、最初の構造と比較して減少した免疫原効果を示すタンパク質医薬品である。詳細には、タンパク質医薬品を、制限セットに基づいた多数の変異体を得る工程と、データベースに基づいたリード変異セットを選択するために変異体を試験する工程と、前記助変数方程式で前記リードを試験する工程と、前記リードが試験された従来のリードよりも免疫原効果が減少しているかどうかを決定する工程とを前記免疫原効果が使用するために十分に至適化されるまで繰り返すことによって至適化することができる。
【0042】
本発明のさらなる態様は、記載の方法を実行することができるコンピュータシステムである。コンピュータシステムは、記載の方法を実行するために暗号化されたソフトウェアプログラムを有する。好ましくは、ソフトウェアプログラムは、データベースまたは入力ファイル由来のタンパク質データを読み出すことができる。至適化された薬学的特性を示すタンパク質医薬品の設計のこのようなコンピュータシステムの1つの実施形態は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを含むデータベースおよびデータベース付属のソフトウェアプログラムである。ソフトウェアプログラムを、試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品構造を作製する工程とを実施するように暗号化または適用することができる。さらに、ソフトウェアは、デザインした医薬品について以下の1つまたは複数を決定することができる:薬学的特性を至適化すること、タンパク質医薬品とリガンドとの間の結合親和性を増大させること、および免疫原効果を減少させること。
【0043】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載の方法を実行することができるソフトウェアプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータによって利用される任意のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、例えば、フロッピーディスク、ハードドライブ、記憶装置、ディスクパック、ROM、RAM、PCカード、光媒体、および磁気媒体が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、このようなコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、タンパク質医薬品の変異体の試験データセットからアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程と、前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程と、前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程と、前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品構造を作製する工程とを実行するソフトウェアプログラムを有する。さらに、ソフトウェアプログラムは、デザインした医薬品について以下の1つまたは複数を決定することができる:薬学的特性を至適化すること、タンパク質医薬品とリガンドとの間の結合親和性を増大させること、および免疫原効果を減少させること。
【0044】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかし、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、この詳細な説明から本発明の精神および範囲内の種々の変更形態および修正形態が当業者に明らかであるので、これらは例示のみを目的とすると理解すべきである。
【0045】
以下の図面は、本発明の一部を構成し、本発明の一定の態様をさらに説明するために含まれる。本発明は、本明細書中に記載の特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて1つまたは複数のこれらの図面を参照することによってより理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本出願は、多数のコンピュータ支援のタンパク質モデリング法の組み合わせの使用による種々の特徴を至適化するためのペプチドまたはタンパク質の修飾方法を含む。本発明は、特に、タンパク質医薬品のデザインで有用である。
【0047】
I.定義
本明細書中で使用される、「a」または「an」は、1つまたは複数を意味し得る。特許請求の範囲で使用されるように、用語「含む」と共に使用される場合、用語「a」または「an」は、1つまたは1つを超えることを意味し得る。
【0048】
本明細書中で使用される、「凝集」は、共有結合または非共有結合であり得る複合体を形成するための通常非特異的なタンパク質の相互作用をいう。
【0049】
本明細書中で使用される、「別の」は、少なくとも第2またはそれを超えることを意味し得る。
【0050】
本明細書中で使用される、「自己タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド」は、生物に由来するか生物から得られるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをいう。
【0051】
本明細書中で使用される、「三次構造に基づく」は、それに基づくために言及した元の構造の骨格構造に類似の骨格構造を保有する構造をいう。
【0052】
本明細書中で使用される、「配置」は、原子の同一のキラリティーを有するタンパク質分子の異なる高次構造をいう。
【0053】
本明細書中で使用される、「高次構造または配座異性体」は、共有結合を破壊することなく相互変換可能な原子の種々の重ね合わせ不可能な三次元配列をいう。
【0054】
本明細書中で使用される、「コンピュータモデリング」は、コンピュータを使用して対象物または対象物の相互作用をシミュレートするための生データを使用したパターンの構築をいう。例えば、コンピュータモデリングを使用して、ある化合物のサイズ、形状、および相互作用を決定し、特定疾患に関連する治療法を開発する。
【0055】
本明細書中で使用される、「コンピュータシミュレーション」は、科学者の現象に対する概念上および数学的理解に基づいていくつかの現象をシミュレートすることを意図する任意のサイズのコンピュータで実行されるソフトウェアプログラムをいう。科学者の概念上の理解は、アルゴリズム的および数学的論理に帰着し、その後多数のプログラミング言語のうちの1つでプログラミングされ、およびコンパイルされてコンピュータで実行されるバイナリコードが作製される。
【0056】
本明細書中で使用される、「制限」は、ペプチドが選択することができる高次構造空間における制限をいう。
【0057】
本明細書中で使用される、「データベース」は、タンパク質の実験データと分析データとの関係に関連する情報の任意のコンパイルをいう。公的に利用可能なデータベース、市販のデータベース、または本発明者らによって作製されたデータベースを使用することができる。
【0058】
本明細書中で使用される、「ジスルフィド架橋またはジスルフィド結合」は、2つのシステインの硫黄原子間の共有結合をいう。
【0059】
本明細書中で使用される、「作製」は、1つまたは複数の操作の使用によって定義または創作する行為をいう。本発明を使用する当業者は、事項もしくはデータ自体を作製するか、事項もしくはデータを別の場所に置いて本発明の実施の際に使用することができる。当業者は、本発明において、全試験データまたは全実験データを有料もしくは公的に得ることができるか、本明細書中に定義の手順および技術によって作製することができることを理解している。用語「作製」および「獲得」は、本明細書中では交換可能である。
【0060】
本明細書中で使用される、「免疫原性」は、タンパク質によって得られる免疫応答の量、特に目的のタンパク質によって得られる主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質の結合量をいう。
【0061】
本明細書中で使用される、「リード」は、最初もしくは最も重要な位置、または先行することをいう。したがって、リード変異体は、試験することができる第1または初期の変異体である。リードは、最後の変異体ではなく、単に開始点である。
【0062】
本明細書中で使用される、「リガンド」は、タンパク様または非タンパク様化合物をいう。リガンドは、受容体、酵素、補酵素、または非タンパク様化合物であり得るが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書中で使用される、「ループ」は、分子表面でポリペプチド鎖の方向が逆転するポリペプチド鎖中のターンをいう。
【0064】
本明細書中で使用される、「変異」は、タンパク質中の1つまたは複数のアミノ酸の変化をいう。
【0065】
本明細書中で使用される、「助変数方程式」は、所与の変異体に占められる高次構造状態に関する変数を含む方程式をいう。方程式は、各変異体およびアンサンブル由来の特性のライブラリに必要な実験データを使用する。
【0066】
本明細書中で使用される、「ペプチド」は、物理的特性がそのアミノ酸残基の合計から予測される特性であり、固定した三次元構造が存在しない一定の配列を含むアミノ酸鎖をいう。
【0067】
本明細書中で使用される、「薬学的特性」は、結合親和性、凝集、溶解性、および免疫原効果をいうが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書中で使用される、「タンパク質」は、通常定義された配列、長さ、および三次元構造のアミノ酸残基の鎖をいう。タンパク質を生成する重合反応により、各アミノ酸から1分子の水が喪失する。タンパク質は、アミノ酸残基から構成されるといわれる場合が多い。天然タンパク質分子は、20種もの異なるアミノ酸残基を含むことができ、それぞれ個別の側鎖を含む。タンパク質は、多数のペプチドから構成され得る。
【0069】
本明細書中で使用される、「回転異性体」は、低エネルギーアミノ酸側鎖情報をいう。
【0070】
本明細書中で使用される、「溶解性」は、所与の体積の溶媒に溶解することができるタンパク質の量をいう。
【0071】
本明細書中で使用される、「構造の特徴」は、コンピュータ支援プログラムを使用して決定される特徴をいい、折りたたみの特徴、ジスルフィド結合、結合親和性、凝集、溶解性、免疫原性、安定性などであるが、これらに限定されない。したがって、当業者は、本発明を使用してタンパク質の任意の構造の特徴を決定し、この特徴を用途に依存して増減することができることを理解している。
【0072】
本明細書中で使用される、「テンプレート分子」は、修飾タンパク質が結合しているタンパク質をいう。
【0073】
本明細書中で使用される、「変異体」は、所与の変異組を有するタンパク質をいう。
【0074】
II.COREXコンピュータモデリングストラテジー
COREXアルゴリズムは、タンパク質の高分解能構造由来の平衡折りたたみ経路の全統計的記述子セットを評価し、この値のセットを使用して全体的および残基特異的実験所見(例えば、タンパク質安定性または水素交換保護因子)を予測する。部分的に折りたたまれた状態の巨大アンサンブルを作製するためのテンプレートとして三次元構造を使用し、アンサンブルの各状態の相対自由エネルギーを計算する。一旦各状態の自由エネルギーが評価されると、パターンの機能および残りの熱力学量が評価される。
【0075】
A.COREXアルゴリズムによる部分的に折りたたまれた状態の作製
分配関数
【0076】
【数1】
Figure 2005502099
は、タンパク質の全状態の合計である。これは、小タンパク質でさえも天文学的な数である。例えば、100残基のタンパク質の各アミノ酸が10個の高次構造をとる可能性がある場合、全状態数は10100であり、コンピュータでも処理困難な数である。幸運なことに、タンパク質折りたたみは高度に共同的プロセスであり、ほとんどの状態の確率がほぼゼロであり、分配関数に寄与しない。この事実により、算出の問題は有意に単純化される。分配関数に寄与する状態のみを含むサブセットを作製可能な一組の選択規則を開発することが望ましい。分配関数から実験の特性を予測することができるので、得られた予想の精度を使用して、選択規則で使用される仮定の妥当性を評価し、予測を絞り込む。
【0077】
特定のタンパク質の中間状態のアンサンブルを作製するためのアプローチは、テンプレートとして天然状態の高分解能構造を使用すること、および全ての可能な組み合わせにおける分子の所定の領域を折りたたまないように体系的方法でコンピュータを使用することである。結果の分解能は、部分的に折りたたまれた状態を作製するために使用した領域(折りたたみ単位と呼ばれる)のサイズおよび数に依存する。本アルゴリズムでは以下の2つの基本的仮定が存在する:(1)部分的に折りたたまれた状態における折りたたみ領域が天然のものと類似すること;および(2)非折りたたみ領域が構造を欠くと仮定されること。このアプローチは、実験的に観察された中間体の一般的特徴を予測し(Freire & Xie、1994;Xieら、1994;Freire & Xie、1994a、b)、これにより、ほとんどの場合、非天然中間体の集団は無視してよいことが示唆される。この結論は、これらの構造の測定されたエネルギー特性(Freire、1995;Grikoら、1994、1995;Haynie & Freire、1993;Xieら、1994)、いくつかのタンパク質の融解状態で天然の折りたたみが保存されているという所見(Jennings & Wright、1993;Peng & Kim、1994;Schulmanら、1995)、および非常に初期の速度中間体が天然に類似する特徴をすでに示しているという一般的所見(例えば、Jacobs & Fox、1994;Jones & Matthews、1995;Matthews、1993;Radfordら、1992b;Sosnickら、1994を参照のこと)によっても支持されている。
【0078】
COREXアルゴリズムは、各アミノ酸残基のNwのウィンドウブロックを使用し、これを使用してタンパク質を異なる折りたたみ単位に分配する。各タンパク質分配は、Nu折りたたみ単位(NuはNres/Nwの最大限界値と等しい)からなる。Nresは、全残基数であり、Nwはウィンドウあたりのアミノ酸残基数である。タンパク質の第1の分配を、第1の残基から始まるタンパク質の全配列上へのウィンドウブロックの移動によって定義する。Nres/Nwが整数ではない場合、最後のユニット中の残基数は、余りに等しくセットされる。この分配により、全ての可能な組み合わせ中の単位の折りたたみおよび非折りたたみによって得られる(2Nu,i −2)部分的に折りたたまれた中間体が得られる。一旦第1の分配が行われると、第2の分配を、配列中のアミノ酸残基上へのウィンドウブロックのスライディングによって定義する。全配列が使われるまでこのプロセスを継続する。この手順の使用によって得られた全異なる状態数は、2+Σ(2Nu,i−2)に等しく、合計は全分配を超え、Nu,iは分配i中の折りたたみ単位数である。
【0079】
結果の安定性を試験するために、異なるウィンドウサイズを使用した。研究した全ての場合では、結果は、検討した範囲内でウィンドウサイズと無関係であった。折りたたみ単位は、二次構造の十分に定義されたエレメントと一致してもしなくてもよいので、これらのエレメントが形成されないか部分的にのみ形成される状態を超えるその完全性または優先的安定性についての任意の推測的判断が排除される。この手順により、それ自体のウィンドウサイズ(5〜12残基)から全タンパク質分子までの範囲の局所的、部分的、および全体的に非折りたたみの高次構造の完全な範囲が得られる。
【0080】
B.ギブスエネルギーの計算
ニワトリ卵白リゾチーム(HEWL)の分配スキームにより、全部で32,757種の異なる状態が得られる。これらの各状態の確率(ΔGi=ΔHi−TΔSi)を評価するために、これらの各状態および全状態の自由エネルギーを評価する必要がある。
【0081】
各高次構造状態の自由エネルギーを、以前に開発された自由エネルギーの経験的媒介変数化(D’Aquinoら、1996;Gomez & Freire、1995;Gomezら、1995;Xie & Freire、1994a、b)を使用して計算した。この媒介変数化は、タンパク質データ分析に由来していた。簡単に述べれば、この手順は、所望の温度での各状態の相対熱容量(ΔCp)、エンタルピー(ΔH)、エントロピー(ΔS)の計算を含む。
【0082】
熱容量の変化は、温度の弱い関数であり、主に水和での変化に由来するので溶媒接触可能表面領域の変化(ΔASA)に関して以下のように媒介変数化されている(Gomez & Freire、1995;Gomezら、1995;Murphyら、1992):
【0083】
【数2】
Figure 2005502099
上記式では、ΔASAの変化はÅ2であり、熱容量はcalK-1mol-1である。一般に、低温(80℃未満)の計算については、温度非依存性係数は十分である(Gomez & Freire、1995;Gomezら、1995)。
【0084】
エンタルピーの変化の大部分はまた、ΔASAの変化に関して決定付けられ、60℃の参照温度では、以下のように記載することができる。
【0085】
【数3】
Figure 2005502099
エントロピー変化の計算では、2つの主な寄与が含まれる。一方は溶媒和の変化に関し、他方は高次構造の自由度の変化に関する(ΔS=ΔSsolv+ΔSconf)。溶媒和のエントロピーを、以下のように無極性および極性水和エントロピーが0である温度(T* s,apおよびT* s,pol)を基準温度として使用する場合の熱容量に関して記載することができる。
【0086】
【数4】
Figure 2005502099
T* S,apは長時間385.15Kに等しいことが公知であり(Baldwin、1986;Murphy & Freire、1992)、T* S,polは最近335.15Kに近いことが見出された(D’Aquinoら、1996)。
【0087】
高次構造のエントロピーを、各アミノ酸についての以下の3つの寄与の明白な考慮によって評価する:(1) ΔSbuex(タンパク質の内面に埋没している側鎖のその表面への移動に関連するエントロピーの変化);(2) ΔSexu(ペプチド骨格が折りたたまれない場合に表面に露呈した側鎖によって増加するエントロピーの変化);(3) ΔSbb(非折りたたみの際の骨格自体によって増加するエントロピーの変化)。各アミノ酸残基のこれらの項の大きさを、二面角およびねじれ角の関数としての異なる配座異性体の確率のコンピュータ分析によって評価した(D’Aquinoら、1996;Leeら、1994)。D’Aquinoら(1996)によって報告された全アミノ酸の高次構造のエントロピー値を、表1に示す。ジスルフィド結合の存在によるさらなるエントロピーの寄与を、Paceら(1988)に記載のように評価した。平均して、これらの寄与は、タンパク質の完全な非折りたたみのエントロピー変化の約95%を占める。残りの説明されていない寄与(主にプロトン化効果)は、特定の実験条件下での完全な非折りたたみについての推定ギブスエネルギーと実験ギブスエネルギーとの間の相違から評価し、全残基間で均一に分布していた。
【0088】
【表1】
Figure 2005502099
図3に記載のように作製した各高次構造のために、ΔASAapおよびΔASApolを、記載のLee and Richardsのアルゴリズム(Murphyら、1992)を使用して計算する。次いで、これらのΔASAを使用して、ΔH、ΔCp、およびΔSsolv値を計算する。さらに、各高次構造状態における各残基について、側鎖(折りたたまれた領域に埋没および露呈している、非折りたたみ領域に露呈している)および骨格(折りたたみまたは非折りたたみ)の状態を、高次構造のエントロピーを評価するために決定する。これらの手順を使用して、所与のタンパク質について得られた全状態の自由エネルギーを評価する。
【0089】
C.水素交換保護因子
いわゆるEX2レジメに従った実験条件下で、以下の反応の平衡定数を、水素交換実験(例えば、Baiら、1995を参照のこと)によって測定する:
【0090】
【数5】
Figure 2005502099
この反応によれば、Kop,jは、残基jが開いているのでプロトンを溶媒と交換することができる全高次構造濃度の合計と残基jが閉じている全高次構造濃度の合計との間の比に等しい。標準的な解釈は、ゆっくり交換されたプロトンが局所、部分的、または全体の非折りたたみの結果として露呈した後にのみ溶媒と交換することである。部分的に折りたたまれた状態で折りたたまれない残基は、溶媒に露呈される残基のみではない。いわゆる相補領域にも存在する残基はまた溶媒に露呈する(すなわち、折りたたまれたままであるが、折りたたまれないタンパク質領域と構造的に相補的なタンパク質部分に存在する残基)(Freireら、1993)。一般に報告されている水素交換保護因子(PFj)は、Kop,j定数の逆数に等しい。
【0091】
残基安定定数が全残基について定義された純粋な熱力学量である一方で、保護因子はまた非熱力学的に寄与し、残基のサブセットのみについて定義される。プロリン残基は交換可能なアミドプロトンを欠くので含まれない。天然状態で溶媒に露呈したアミド基を有する残基を除外する(Pedersenら、1991)。統計学的観点から、任意の所与の残基jについての保護因子を、以下のように残基jが開いている状態の確率の合計に対する残基jが閉じている状態の確率の合計の比として定義することができる:
【0092】
【数6】
Figure 2005502099
保護因子の統計的定義は、安定度定数と同一の形態を有し、折りたたみ確率に関して以下のように示すことができる:
【0093】
【数7】
Figure 2005502099
修正項Pf,xc,jは、残基jが折りたたまれているが交換する能力を有する全状態の確立の合計である。水素交換保護因子PFjは、Pf,xc,j項が小さい場合のみで残基あたりの安定定数κf,j に等しいことが明らかである。残基が折りたたまれているが溶媒に露呈しているほとんどの一般的な状況は、(1) 残基のアミド基が天然の状態で露呈している場合、および(2) 残基のアミド基が非折りたたみ領域と構造的に相補的なタンパク質領域中のその位置のために曝露される場合に起こる。ここで示した分析では、式(6)の機構の後にプロトンが交換される残基の水素交換保護因子の予測を、Pf,j値およびPf,xc,j値のアンサンブルの計算によって行う。勿論、異なる機構(例えば、溶媒浸透)を介して交換されるアミドプロトンは、この形式によって説明されない。
【0094】
PFjおよびκf,jが2つの分離した状態の間の化学反応よりもむしろ高次構造のアンサンブルに関する統計的に定義された量であることは、上記の処理から明らかである。
【0095】
III.タンパク質での協力的相互作用の構造分布
協力的相互作用は、タンパク質分子内の異なるアミノ酸残基の挙動に関連する。結果として、任意の所与の残基に対する化学的または物理的混乱の効果は、難解な相互作用ネットワークによって他の残基に広げられた。非常に頻繁に、アミノ酸は、タンパク質分子中の非常に離れた位置で起こる混乱の効果を「察知」している。本発明者らは、コンピュータシミュレーションによってこれらの相互作用の構造分布を調査した。協力的相互作用は本質的に二方向性ではなく、異なる残基はタンパク質中に存在する複雑な相互作用ネットワーク内で異なる役割を果たす。残基jに対する混乱の残基kに及ぼす効果は、残基kに対する同じ混乱の残基jに及ぼす効果と必ずしも等しくない。本発明者らは、タンパク質中の各残基に対する1部位熱力学的変異を徹底的に実行し、高次構造状態の分布に及ぼすこれらの変異の効果を試験する、タンパク質内の協力的相互作用ネットワークのマッピングを目的とするコンピュータアルゴリズムを作製した。
【0096】
A.マッピング協力性:SSTM
特定の残基が折りたたまれた全状態の自由エネルギーの変化(基本的に、その残基の非混乱エネルギー変異の実施)によって協力性を試験することができる。
【0097】
【数8】
Figure 2005502099
の分子における全状態の統計的重みで得られた変化により、確率が再分布される。特定の残基が折りたたまれた(および折りたたまれない)状態のサブセットが各残基で異なるので、熱力学的変異の効果はタンパク質中の各残基で特異的である。タンパク質中の各残基に対するそれぞれの熱力学的変異を実行することにより、他の全ての残基に及ぼす各残基の変化の効果を評価することが可能である。SSTM分析の最終結果は、タンパク質内の相互作用の協力的ネットワークを導き出すことができるマップである。
【0098】
協力的挙動の方向性を、以下の3つの異なる効果の考慮によって分析することができる:(i)協力的応答(すなわち、タンパク質のいずれかでの変異に対する残基jの応答)、(ii)供与体の協力性(すなわち、他の残基に及ぼす残基jの変異の効果)、および(iii)相互混乱/応答(すなわち、混乱の大きさ:
【0099】
【数9】
Figure 2005502099
によって正規化された残基kに及ぼす残基jに対する変異の効果および残基jに及ぼす残基kに対する変異の効果である)。
【0100】
B.協力的応答
変異はタンパク質の全残基に拡大しないが、混乱する位置に無関係に常に影響を受ける残基のサブセットが存在する。これらの残基は、タンパク質中で最も安定な残基である。この挙動の起源を、以下の折りたたみおよび非折りたたみ状態の寄与から部分的に折りたたまれた状態の寄与を分離することによって説明することができる:
【0101】
【数10】
Figure 2005502099
式中、分子の総和は残基jが折りたたまれた全ての部分的に折りたたまれた状態を含み、分母の総和は残基jが折りたたまれていない全ての部分的に折りたたまれた状態を含む。一般に、最も高い安定度定数を有する残基は、最も可能性の高い部分的に折りたたまれた高次構造の折りたたみ領域に属する。これらの残基(ΣPfj>>ΣPnfjおよびPu>>ΣPnfj)について、上記の式は、本質的に(PN+ΣPfj)/Puに減少する。これらの残基について、安定度定数は、総非折りたたみ定数(PN/PU)よりも大きい(すなわち、実験的に認められる「超保護」を示す)(Swint-Kruse & Robertson、1996)。
【0102】
残基jの安定性に及ぼす任意の不定残基kに対する変異の効果を例示するために、以下のように残基jおよびkのいずれかが折りたたまれ、共にまたは個別に折りたたまれない状態を個別に含ませるために総和をさらに分けることができる:
【0103】
【数11】
Figure 2005502099

【0104】
【数12】
Figure 2005502099
による残基kの変異(すなわち、残基kが折りたたまれた全状態の自由エネルギーの変化)の際、式:
【0105】
【数13】
Figure 2005502099
が得られる。
【0106】
本発明で考慮された状況および実験室で見出されたほとんどの状況について、Δgf,kは通常2kcal/mol未満(30ほどのΦf,k因子と等しい)である。これらの条件下で、ほとんどの安定な残基の安定度定数は、Φf,kの効果が主に分子で認められるのでタンパク質のいずれで起こる変異によっても影響を受ける。
【0107】
それに対して、最も安定性の低い残基は、非折りたたみ状態以外の状態での非折りたたみの確率が比較的高い。これらの残基について、ΣPnf,j>>PUおよび分子および分母のΦf,kが約分され、安定度定数に影響を与えない。一般に、最も安定性の低い残基は、タンパク質中のいずれの場所での変異によっても最小の影響を受ける。数学的観点から、状況を以下のように一般化することができる:タンパク質中の任意の所与の残基の協力的応答の大きさを、比
【0108】
【数14】
Figure 2005502099
によって決定する。言い換えれば、天然の条件下で、協力性は、全体的な非折りたたみ:局所的非折りたたみの確率の比を反映する。この確率が大きくなるにつれて、協力的効果が増加する。この理由のために、協力的効果は、変性条件が増加する条件下で増加し、移行中間点で最大となると予想される。
【0109】
C.供与体の協力性
前の節で考察した協力的応答と異なり、1残基がタンパク質中の全ての他の残基に影響を与えることができないということができる。数学的には、この所見は、大きなペナルティが他の残基(すなわち、
【0110】
【数15】
Figure 2005502099
)の非折りたたみを含まない1残基の非折りたたみで存在する場合のみに、ΣPnf,j>>PUの残基が変異の影響を受けるという事実に依る。したがって、残基kの安定性がタンパク質中の全ての他の残基に完全に結合している場合のみ、この残基は他の全残基に影響を与えることができる。ある残基の他の全残基への完全な結合が全残基間の完全な結合を意図するので、このような状況は、真の二状態遷移の場合のみで存在する。
【0111】
IV.MPMOD
MPMODは、ラマチャンドランプロットの許容領域中の高次構造空間の無作為検索の組み合わせを使用する。高次構造空間のこれらの無作為検索の使用により、ミニ環状ペプチドの挙動を研究するための簡便且つ有用なツールが得られる。簡単な剛体球モデルを使用してこれを行い、立体化学的に許容可能な高次構造を獲得し、可撓性ジスルフィド結合モデリングを行う。Nc/No(式中、Ncは潜在的にジスルフィド結合を形成することができる配座異性体数であり、Noはジスルフィド結合を形成することができないがファンデルワールスチェックをパスした配座異性体数である)で定義されるSS結合ループ閉鎖の「比」は、アンサンブルが1000個を超える配座異性体を有する場合に飽和する。ペプチドのCXCおよびCXXC系について、モデリングしたループ閉鎖の確率は、同一の方法で4つ全てのミニペプチド型の実験的に決定した平衡定数Kcと同様に挙動する。共通の倍率を適用後に両方を十分に比較する。ファンデルワールス相互作用は、ループ閉鎖において小ペプチドCXCおよびCXXCに対して優勢な役割を果たす。
【0112】
プログラム(MPMOD)は、ジスルフィド結合配座異性体を作製する有効な方法である。PentiumIII450でLinuxシステムを使用して4000個のジスルフィド結合配座異性体CXXCを得るためにCPUは約10〜20分かかる。配座異性体CXCの衝突の確率がより高いので、CXXCの作製よりもCPU時間は約3倍長い。しかし、消費したCPU時間は、配座異性体の作製のために使用した基準に強く依存した。
【0113】
図6に示す流れ図は、MPMODの一般的なプログラムを示す。ペプチド配列およびジスルフィド結合の連結性などの入力パラメータ(ステップ301)をロードし、その後4つのマップに高次構造角(φ、ψ、ω)を作製する(ステップ302)。角度に基づいて主鎖および側鎖の原子を作製する。骨格原子および側鎖原子についてファンデルワールスチェックを個別に行う(ステップ303)。ファンデルワールス違背が認められた場合、配座異性体を拒否する。いかなる原子の衝突もなくペプチドが終了するまで別の高次構造角のセットを得るために戻る。次いで、ペプチドの座標を記録し、溶媒接触可能表面(SAS)ベースのエネルギーを計算する(ステップ304)。2つの残基対で可能なジスルフィド結合が存在するかどうかを調査するために、ジスルフィド結合をモデリングする(ステップ305)。ジスルフィド結合が可能な場合、この配座異性体のSASエネルギーを計算する。ジスルフィド結合が可能でない場合、別の高次構造角のセットを試験し、ジスルフィド結合を有する配座異性体が得られるまでこの手順を繰り返す。最後に、この配座異性体のSASエネルギーを再度計算する(ステップ306)。
【0114】
MPMODプログラムは、ジスルフィド結合配座異性体またはジスルフィド結合配座異性体および直鎖配座異性体を作製するようにデザインされている。このプログラムがジスルフィド結合配座異性体のみを作製するように作動する場合、「ファーストモード」と考えられ、図10Aおよび図10Bに示す。ステップ400では、配列、ジスルフィド結合結合性および他のパラメータを入力する。開始データは、手動で入力するか、当業者に周知で使用されるデータベースから検索することができる。ステップ401で入力データから二面角(φ、ψ、ω)を無作為に作製し、角度を骨格の各残基に割り当てる。ステップ402で、作製した二面角を使用して所与の3つの原子から開始して骨格原子を作製する。ステップ403で距離対をチェックする。2つのCα原子間の距離および2つのCβ原子間の距離を決定することが重要である。距離が許容されない場合、二面角を再度作製する。システイン(C)の間の距離は、ループ閉鎖の速度において役割を果たす。距離が許容可能な場合、ステップ404でファンデルワールスチェックを行う。ファンデルワールスチェックが許容可能な場合、ステップ405で残りの骨格を作製する。ファンデルワールスチェックが許容不可能な場合、二面角を再度作製する。骨格を作製している間、ファンデルワールスチェックが許容可能なままである場合、ステップ406でジスルフィド結合のモデリングを行う。ファンデルワールスチェックが許容可能なままではない場合、二面角を再度作製する。次に、ステップ407で回転異性体または側鎖を骨格に付加する。システイン以外の各残基に回転異性体を付加する。ステップ408でステップ407からの1つを全ての非ファンデルワールス違背を照合して二面角を再度作製し、ステップ409で骨格および全回転異性体の組み合わせをファイルに書き込むことができる。ステップ410で各回転異性体のファンデルワールスチェックが許容可能である場合、次いでステップ411で硫黄原子(S)が他の全ての原子を用いて幾何学的に良好であることを確認するためにジスルフィド結合対をチェックする。全チェックが許容可能である場合、次いでステップ412で骨格の角度および他の情報をファイルに書き込む。次に、ステップ413でどの配座異性体がより高い結合親和性を有するかを決定するために各配座異性体と受容体について結合試験を行う。最後に、ステップ414でSASベースのエネルギーを計算する。
【0115】
記載のように、MPMODプログラムは、ジスルフィド結合配座異性体および直鎖配座異性体も作製することができる。このプログラム型を「スローモード」とみなし、図11Aおよび図11Bに示す。ステップ500では、配列、ジスルフィド結合の結合性、および他のパラメータを入力する。開始データを手動で入力するか、当業者に周知で使用されているデータベースから検索ことができる。ステップ501で入力データから二面角(φ、ψ、ω)を無作為に作製し、角度を骨格の各残基に割り当てる。ステップ502で、作製した二面角を使用して所与の3つの原子から開始して骨格原子を作製する。次に、ステップ503で残りの骨格を作製する。ファンデルワールスチェックが許容可能な場合、ステップ504で骨格に回転異性体または側鎖を付加する。各残基に回転異性体を付加する。回転異性体の付加後、距離対をチェックし、ジスルフィド結合をモデリングし、ステップ505で完全な配座異性体を有するSS対についてファンデルワールスチェックを行う。ステップ505での任意のステップが許容不可能である場合、ステップ508でSS結合を形成することができない配座異性体数を記録し、プログラムをCOREXプログラムにリンクさせて各配座異性体のSASベースのエネルギーΔGを計算する。ステップ505の全ステップが許容可能である場合、次いでステップ506で配座異性体のSS結合数を記録し、各配座異性体のSASベースのエネルギーΔGを計算する。計算後、ステップ507で各配座異性体をファイルに書き込む。
【0116】
なおさらに、MPMODプログラムは、図12に記載のようにループ作製を行うことができる。ステップ700では、タンパク質の可撓性ループの2つの残基数および精度を入力する。開始データを手動で入力するか、当業者に周知で使用されているデータベースから検索することができる。ステップ701で入力データから二面角(φ、ψ、ω)を無作為に作製し、角度を骨格の各残基に割り当てる。作製した二面角を使用して、骨格原子または主鎖原子を作製する。ステップ703で距離対をチェックする。配座異性体の2つのCα原子間およびN末端とC末端との間の距離を決定することが重要である。ステップ704では、配座異性体のN末端とC末端との間の距離を、二面角の変更または改変によって最小化する。ステップ705は、配座異性体の左右像が標的タンパク質の切断部分と同一であることが必要である。ステップ706で主鎖原子対のファンデルワールスチェックを行う。ファンデルワールスチェックが許容可能である場合、ステップ707で標的タンパク質に対して配座異性体を整列させる。ステップ708で主鎖および標的タンパク質原子対のファンデルワールスチェックを行う。許容可能な場合、ステップ709で主鎖に回転異性体または側鎖を付加する。ステップ709で各回転異性体のファンデルワールスチェックが許容可能である場合、次いでステップ710で情報をファイルに書き込む。
【0117】
ジスルフィド結合のためのMPMODプログラムのモデリングモジュールを図13に示す。ステップ800では、2つのシステインのN、Cα、およびCβの座標が得られる。次に、ステップ801では、Ca-CaおよびCb-Cbの距離チェックを行う。距離が許容されない場合、ステップ800で他の座標を得なければならない。距離が許容される場合、ステップ802でCa-Cb結合に沿った回転によって形成される円上にSGを作製する。次に、ステップ803で結合長、結合角、および二面角を決定する。ステップ803での測定が許容可能である場合、ステップ804でジスルフィド結合を形成し、座標をファイルに書き込む。
【0118】
MPMODプログラムの結合試験モジュールを、図14に示す。ステップ900では、作製した配座異性体および結晶構造のpdb座標、両アラインメント配列のセグメント、最良のアラインメントの基準、ならびに「結合」試験のための3つのオプションが必要である。一旦全部の情報が収集されると、ステップ901で対応するペプチドの結晶構造に対して配座異性体を整列させる。次に、ステップ902でモデリングした各配座異性体と標的ペプチドとの間の標準偏差を決定し、2つの配座異性体の各残基の間の高次構造角の差の平均を決定する。値が許容可能である場合、次いでステップ903で各配座異性体とタンパク質のファンデルワールスチェックを行う。ファンデルワールスチェックが許容可能である場合、次いでステップ904で各配座異性体のSASベースのエネルギーを計算し、ステップ905で統計処理を行う。
【0119】
V.薬学的特性を至適化するためのBEST/MPMOD
本明細書中で使用される、「BEST」は、組み合わせた様式で状態をモデリングするテクノロジーをいう。所与の状態について、高分解能構造にしたがって折りたたみ領域をモデリングする一方で、(多数の微視的高次構造としてモデリングするのと対照的に)非折りたたみ領域を高次構造エントロピーを有するものとしてモデリングする。エントロピーの変化(ΔS)が十分に折りたたまれた状態の基準における自由度に対して特定の巨視的状態での高次構造状態数の相違に関連するので、多数の微視的状態を1つの巨視的状態で示すことができる。この二重モデリング手順の意図は、折りたたまれていない10残基を有する巨視的状態(残基あたり最低4つの高次構造を含む)が100万個を超える明白な微視的高次構造状態を必要とすることである。計算の最終結果は、アンサンブル中に100,000個の巨視的状態を使用して、1060を超える異なる微視的状態のエネルギー特性を有効に捕捉することである。ソフトウェアのジスルフィドのミニタンパク質モデリング(MPMOD)部分は、BESTによって不安定であることが示されたタンパク質の小領域の高次構造を明白にモデリングする。BESTを使用して一旦不安定領域が同定されると、不安定領域の2つの隣接残基が、高分解能構造で見出された高次構造中の残基の固定によって固定する。MPMODに記載のループの突き出しによって高次構造を作製する。BEST/MPMODと呼ばれるBESTプログラムとMPMODプログラムとの組み合わせにより、任意のサイズのタンパク質の高次構造の明白なモデリングが可能である(図1)。したがって、図1に示すように、ステップ100は、タンパク質-リガンド複合体の三次元構造を入力する工程を含む。構造を直接入力するか、当業者に周知で使用されている任意のデータベースから得ることができる。次に、ステップ101は、折りたたみ単位および折りたたみ単位あたりの最小残基のウィンドウサイズを定義する工程を含む。ステップ102は、COREX分析を実施して領域の安定性を決定する工程を含む。ステップ103は、ステップ103にリンクしたMPMODであるステップ105にリンクしている(タンパク質のアンサンブルを作製するためのBEST/MPMODモジュール)。次に、ステップ104は、各アンサンブル対の結合親和性を決定する工程と、ステップ106にリンクし、結合試験モジュールである巨視的結合定数を計算する工程を含む。結合試験モジュールは、MPMODまたはステップ105にリンクしている。
【0120】
図2Aおよび2Bに示す至適化された薬学的特性を提示するタンパク質医薬品のBEST/MPMODデザイン法。ステップ200は、タンパク質医薬品の高分解能構造のコンピュータ支援のモデリングプログラムへの入力である。ステップ201は、折りたたみ単位のウィンドウサイズを定義する工程を含む。ステップ202でCOREX分析を行い、ステップ204でMPMODを行う。ステップ205でこれらのプログラムの組み合わせによって試験データセットを作製する。データを、一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによって前記タンパク質の漸増的に異なる高次構造のアンサンブルを得る工程と、前記タンパク質医薬品の各高次構造状態の確率を決定する工程と、タンパク質内の残基の保護因子を計算する工程と、前記タンパク質の異なる構造エレメント間のエネルギー結合性を決定する工程と、前記タンパク質の不安定領域を同定する工程と、平均値由来の幾何学的媒介変数を逸脱するφ/Ψ角およびねじれ角の無作為選択によって支援される全原子コンピュータアプローチを使用して不安定領域の配座異性体のアンサンブルを得る工程と、至適化された薬学的送達特性を提示する前記タンパク質の高次構造フラクションを決定する工程とによって得る。ステップ207では、ステップは、タンパク質医薬品のアミノ酸配列を変異させて変異体を得る工程と、所与のサイクル数で高次構造フラクションの決定による薬学的特性の決定を繰り返して各変異体のアンサンブル由来の特性のライブラリを調製する工程とを含む。ステップ208は、各変異体の薬学的送達特性およびアンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程を含む。次に、ステップ209で初期リード変異体を同定する。ステップ210では、制限セットを初期化する。ステップ209に基づいて、ステップ211で多数の変異体が得られる。次に、ステップ212では、データベースに基づいたリード変異を選択するために変異体を試験する。ステップ214では、助変数方程式でリードを試験する。次に、ステップ215では、リードが試験された従来のリードよりも薬学的送達特性が至適化されているかどうかを決定する。ステップ219では、各特性(目的A(220)または目的B(222))について前記変異体と目標物とを比較する。ステップ221では、上記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品の変異体を作製して至適化された薬学的送達特性を得る。任意選択的に、リードが至適化されたかどうかの決定によって多数の変異体を得る工程を、意図する薬学的用途のためにタンパク質の薬学的特性を十分に至適化することを繰り返すことができる。薬学的特性は、結合親和性の増大、凝集の減少、溶解性の増大、および免疫原効果の減少を含むことができるが、これらに限定されない。当業者は、BEST/MPMODによるタンパク質デザイン方法はタンパク質医薬品に限定されないことを理解している。例えば、殺虫剤または除草剤として有利であり得るタンパク質をデザインするためのBEST/MPMOD方法の使用が含まれるが、これに限定されない。
【0121】
本発明のコンピュータ支援のプログラムを、憶測を排除し、プログラム作動に必要な時間を減少させる種々のデータベースと組み合わせることができる。使用することができるこのようなデータベースの1つは、アミノ酸の熱力学的特性を定義するデータベースである(米国特許仮出願番号60/261,733号および2002年1月15日提出の米国出願(その両方全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0122】
全ての可能な組み合わせ中の一組の所定の折りたたみ単位の非折りたたみとの組み合わせによる漸増的に異なる高次構造のアンサンブルの作製は、ステップ201のようにタンパク質の全配列上にウィンドウブロックを置くことによって折りたたみ単位にタンパク質を分割する工程と、ウィンドウブロックを一度に1残基スライドさせる工程とを含む。
【0123】
各高次構造状態の確率の決定は、アンサンブル中の各高次構造状態の自由エネルギー(Gi)を決定する工程と、各状態のボルツマン重み[Ki=exp(-Gi/RT)]を決定する工程と、式:
【0124】
【数16】
Figure 2005502099
を使用して各状態の確率を決定する工程とを含む。
【0125】
保護因子を、
【0126】
【数17】
Figure 2005502099
によって定義する。
【0127】
異なる構造エレメント間のエネルギー連結性の決定は、残基特異的連結性および機能的連結性を決定する工程を含む。
【0128】
残基特異的連結性を、式:
【0129】
【数18】
Figure 2005502099
によって計算する。
【0130】
全原子計算アプローチは、ミニタンパク質モデリング(MPMOD)であり、ラマチャンドランプロットの許容範囲中の高次構造空間を検索する工程と、剛体球接近により巨視的にありそうにない配座異性体を排除する工程と、可撓性ジスルフィド結合モデルを検索する工程と、溶媒接触可能表面(SAS)ベースのエネルギーを計算する工程とを含む。この方法は、さらに、ジスルフィドを形成するアンサンブルの確率を計算する工程を含み得る。
【0131】
全原子計算アプローチは、ミニタンパク質モデリング(MPMOD)であってよく、ラマチャンドランプロットの許容範囲中の高次構造空間を検索する工程と、高分解能構造と同一の配座異性体のN末端およびC末端を最小にする工程と、配座異性体の左右像をチェックする工程と、高分解能構造に対して配座異性体を整列させる工程と、ファンデルワールス計算を行う工程とを含む。この方法は、さらに、ループが作製される確率を計算する工程を含み得る。
【0132】
任意の論理型を使用して、データセットを作製するための変異を決定する。論理型には、モンテカルロ加重選択法および神経回路網が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
本発明を、実行するプログラムのサイクル数に依存する分析または予測に使用することができる。プログラムを実行する薬学的特性の改良のサイクル数は、1サイクルまたは複数のサイクル数であり得る。至適化された薬学的特性を得るのに必要なサイクル数は、タンパク質に依存する。リードが至適化されたかの決定を通じた多数の変異体の取得由来の工程を、薬学的特性が所与の反復数で改良されなくなるまで繰り返すことができる。この所与の繰り返し数は50回であり得るが、これに限定されない。全ての特性が至適化されたかどうかの決定において、任意または全ての薬学的特性を考慮することができる。例えば、一定のタンパク質医薬品について、溶解性が高いよりも結合親和性が高いことがより重要であり得る。したがって、結合親和性の高い変異体を得るために、より溶解性の低い変異体を許容することができる。
【0134】
本発明では、任意の市販のデータ分析型を使用して、計算データと実験データとの間の関係を得ることができる。本発明を行うためには、重複決定されたデータセットが必要である。目的の任意の薬学的特性について任意のセット(タンパク質依存性)の変異数を試験してデータセットを獲得し、データセットに対して実行されるかについて「ジャックナイフ」分析を行う。「ジャックナイフ分析」では、データセットの一部を除去し、データを再分析する。分析が統計的に異ならない場合、データセットは重複決定されている。データセットが重複決定されているか否かの任意の他の統計試験方法を本発明で使用することができる。データ分析に使用することができる統計学的方法の例は、主成分分析および特異値分解である。1つの薬学的特性についてのデータセットを重複決定することができる一方で、別の薬学的特性についてのデータセットを過少決定することが可能である。データセットが過少決定される場合、データセットにより多数の変異体を付加する必要がある。
【0135】
A.結合親和性
結合親和性は、タンパク質とリガンドとの間の全自由エネルギーの基準である。親和性の大きさは、特定の相互作用が所与の条件セット下で関連するかどうかを決定する。リガンドに対するタンパク質の任意の特定の親和が有意であるかどうかは、遭遇するタンパク質のために存在するリガンドの濃度に依存する。結合親和性の決定アッセイには、表面プラズモン共鳴、ウェスタンブロット、ELISA、DNアーゼフットプリンティング、およびゲル移動度シフトアッセイが含まれるが、これらに限定されない。リガンドは、タンパク質または非タンパク質であり得る。リガンドは、受容体、補酵素、非タンパク様化合物であり得るが、これらに限定されない。タンパク質とリガンドとの間の結合親和性を、タンパク質とリガンドとの間の結合定数または解離定数によって測定することができる。タンパク質とリガンドとの間の結合エントロピーを、リガンドとの結合状態におけるタンパク質の構造に類似する構造の安定化によって減少させることができる。タンパク質およびリガンドを使用してファンデルワールス計算を行って、結合高次構造が立体的に許容されるかどうかを決定することができる。
【0136】
B.タンパク質の凝集
タンパク質凝集は、共有結合してもしなくても良い複合体を形成するためのタンパク質(通常、非特異的)の相互作用をいう。折りたたみの競合反応として凝集が起こり得る。凝集により不可逆的な沈殿が生じる場合があり、in vivoでは複合体を分解し得る。部分的に折りたたまれたタンパク質上の露呈した疎水性領域による凝集が形成され得る。折りたたみタンパク質中であっても、任意の露呈した疎水性領域により凝集が起こり得る。凝集は、組換えタンパク質産生上の問題である。凝集は、薬学的用途におけるペプチドおよびタンパク質産生上の障害である。溶液中でのタンパク質またはペプチドの凝集を、360nmでの光散乱の測定および分析的遠心分離によって決定することができる。タンパク質内のグルタミン/アスパラギンアミノ酸が豊富なドメインは、タンパク質を凝集する傾向を示した。
【0137】
C.タンパク質の溶解性
タンパク質の溶解性は、所与の溶媒体積中に溶解することができるタンパク質の量である。この量より多いタンパク質の存在により、タンパク質が凝集および沈殿する。タンパク質の水溶性を、存在し得る任意の他の分子を含む無定形または規則正しい固体状態で相互作用する場合または膜内に浸漬した場合の自由エネルギーと比較した水性溶媒に囲まれた場合の自由エネルギーによって決定する。任意の物質の溶解性における因子は、物質に適応するために緩衝液の置換が必要なエネルギーの量である。緩衝液のイオン強度、pH、および温度は、タンパク質の溶解性に影響を与える。低い値で緩衝液のイオン強度が増加するとタンパク質の溶解性が増加する傾向を示す一方で、高い値でイオン強度が増加すると溶解性が減少する傾向を示す。イオン強度の低い緩衝液では、タンパク質は、タンパク質の正味の電荷に反した電荷の過剰なイオンに取り囲まれる。これによりタンパク質の静電気的自由エネルギーが減少し、溶解性が増大する。水性溶媒では、タンパク質表面上の荷電した極性基が優先的に水と相互作用する。有機溶媒は、タンパク質の溶解性を減少させる傾向を示す。タンパク質は、その等電点で最も溶解性が低い。等電点を超えるpHでは、タンパク質は脱プロトン化して溶解性を示す。等電点よりも低いpHでは、タンパク質はプロトン化して溶解性を示す。タンパク質の正味の電荷が増大するにつれて、タンパク質は溶液中に存在しやすくなる。これは、分子間のより大きな静電気的反発力による。高温では、タンパク質が変性するので、凝集して溶解性を失う。
【0138】
4.タンパク質の免疫原性
タンパク質の免疫原性は、主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質への結合に基づく。この出現の可能性を減少させる因子により、免疫原性が減少する。MHC分子は、抗体に対する抗原を提示する。T細胞は、抗原に対する適応免疫応答においてペプチド/MHC複合体を認識する。MHCによって結合したタンパク質医薬品は、その有効部位に到達せず、タンパク質医薬品のさらなる分子にも到達しない。したがって、低免疫原性のタンパク質医薬品をデザインすることは、主要な目的である。タンパク質が小さいほどMHCによって認識される可能性が低くなる。したがって、タンパク質の凝集は、免疫原性を増大させることができる。さらに、凝集は、折りたたみタンパク質内で通常接触不可能なタンパク質部分を認識可能にする劣化を誘発し得る。したがって、タンパク質の安定性の増大は、免疫原性の減少の一助となる。
【0139】
VI.変異誘発
使用する場合、変異誘発を種々の標準的な変異誘発手順によって行う。変異は、生物の量または構造の変化が生じるプロセスである。変化は、DNA配列内の1ヌクレオチド塩基の除去、付加、または置換を含む点変異の結果であるか、多数のヌクレオチドの挿入または欠失を含む変化の結果であり得る。
【0140】
構造誘導部位特異的変異誘発は、タンパク質相互作用の詳細な分析および操作のための強力なツールの代表である(Wells、1996)。この技術は、1つまたは複数のヌクレオチド配列変化を選択されたDNAへ移入することによって配列変異体を調製および試験する。
【0141】
部位特異的変異誘発は、所望の変異DNA配列をコードする特定のオリゴヌクレオチド配列および十分な数の隣接する非修飾ヌクレオチドを使用する。この方法では、横断する欠失連結点の両側上に安定な二重鎖を形成させるための十分なサイズおよび複雑さのプライマー配列が得られる。配列の接合点の両側上の約5〜10残基が変化した約17〜25ヌクレオチド長のプライマーが好ましい。
【0142】
この技術は、典型的には、一本鎖および二本鎖形態で存在するバクテリオファージベクターを使用する。部位特異的変異誘発に有用なベクターには、M13ファージなどのベクターが含まれる。これらのファージベクターは市販されており、その使用は一般に当業者に周知である。二本鎖プラスミドはまた、部位特異的変異誘発で日常的に使用されており、ファージからプラスミドへの目的の遺伝子の導入工程が排除される。
【0143】
一般に、最初に一本鎖ベクターを獲得するか、その配列内に所望のタンパク質または遺伝要素をコードするDNA配列を含む二本鎖ベクターの2つの鎖を融解する。次いで、合成した所望の変異配列を保有するオリゴヌクレオチドプライマーを、ハイブリッド形成条件の選択の際のミスマッチ度を考慮して一本鎖DNA調製物にアニーリングする。ハイブリッド形成産物を、E.coliポリメラーゼI(Klenowフラグメント)などのDNAポリメラーゼ酵素に供して、変異を有する鎖の合成を完了する。したがって、ヘテロ二本鎖が形成され、第1の鎖は元の非変異配列をコードし、第2の鎖は所望の変異を保有する。次いで、このヘテロ二本鎖ベクターを使用して、E.coli細胞などの適切な宿主細胞を形質転換し、変異配列の再構築を保有する組換えベクターを含むクローンを選択する。
【0144】
部位特異的変異誘発の他の方法は、米国特許第5,220,007号、同第5,284,760号、同第5,354,670号、同第5,366,878号、同第5,389,514号、同第5,635,377号、および同第5,789,166号に開示されている。
【0145】
VII.修飾ポリペプチド
アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換の相対的類似性(例えば、疎水性、親水性、電荷、および/またはサイズなど)に基づく。アミノ酸側鎖置換基のサイズ、形状、および/または型の分析により、アルギニン、リジン、および/またはヒスチジンは全て正電荷の残基であり、アラニン、グリシン、および/またはセリンは全て類似のサイズであり、そして/またはフェニルアラニン、トリプトファン、および/またはチロシンは全て一般に類似の形状であることが明らかとなる。したがって、これらの検討材料に基づいて、アルギニン、リジン、および/またはヒスチジン;アラニン、グリシン、および/またはセリン;ならびに/またはフェニルアラニン、トリプトファン、および/またはチロシンは、本明細書中で生物学的に機能的な等価物と定義する。
【0146】
より定量的に変化させるために、アミノ酸の親水性指数を考慮することができる。各アミノ酸は、その疎水性および/または電荷の特徴に基づいて親水性指数が割り当てられており、これを以下に示す:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸塩(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸塩(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);および/またはアルギニン(−4.5)。
【0147】
タンパク質への生物学的相互作用機能の付与における親水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で理解されている(Kyte & Doolittle、1982、本明細書中で参考として援用される)。一定のアミノ酸を類似の親水性指数および/またはスコアを有する他のアミノ酸に置換し、そして/または依然として類似の生物活性を保持することができることが公知である。親水性指数に基づいた変化において、親水性指数が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内での置換が特に好ましく、そして/または±0.5以内がなおさらに特に好ましい。
【0148】
親水性に基づいて類似のアミノ酸置換を有効に行うことができることも当該分野で理解されている。米国特許第4,554,101号(本明細書中で参考として援用される)は、隣接するアミノ酸の親水性に支配されているタンパク質の最も高い局所平均親水性は免疫原性および/または抗原性(すなわち、タンパク質の生物学的特性)に相関すると記述している。
【0149】
米国特許第4,554,101号に詳述するように、アミノ酸残基に以下の親水性値が割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸塩(+3.0±1);グルタミン酸塩(+3.0±1);セリン(+3.0);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。類似の親水性値に基づいた変化において、親水性値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内での置換が特に好ましく、そして/または±0.5以内がなおさらに特に好ましい。
【0150】
修飾では、アミノ酸残基の極性を考慮することができる。極性アミノ酸残基は、以下を含み得る:リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、およびチロシン。非極性アミノ酸残基は、以下を含み得る;アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、およびシステイン(Albertsら、1994)。
【0151】
A.アミノ酸の変化
本発明は、適切なポリヌクレオチドの転写および翻訳を介したペプチドおよびポリペプチドの合成を含む。これらのペプチドおよびポリペプチドは、20種の「天然」アミノ酸およびその翻訳後修飾アミノ酸が含まれる。しかし、in vitroでは、ペプチド合成により、修飾および/または通常とは異なるアミノ酸を使用可能である。
【0152】
B.模倣物
本発明は、類似の構造の化合物をペプチドまたはポリペプチドの鍵となる部分を模倣するように構築することができることを意図する。このような化合物を、ペプチド模倣物と呼ぶことができる。
【0153】
タンパク質の二次構造および三次構造のエレメントを模倣する一定の模倣物は、Johnsonら(1993)に記載されている。ペプチド模倣物の使用の裏の基本的な論理的根拠は、分子の相互作用(抗体および/または抗限の相互作用など)を促進する方法などで主にアミノ酸側鎖を方向付けるためにタンパク質のペプチド骨格が存在することである。したがって、ペプチド模倣物を、天然の分子に類似の分子相互作用が得られるようにデザインする。
【0154】
ペプチド模倣物概念のいくつかの首尾の良い適用は、抗原性が高いことが公知であるタンパク質内のβターンの模倣物に注目している。同様に、ポリペプチド内のβターン構造を、コンピュータベースのアルゴリズムによって予想することができる。一旦ターンの成分アミノ酸が決定されると、アミノ酸側鎖の不可欠なエレメントの類似の空間的方向が得られるように模倣物を構築することができる。
【0155】
他のアプローチは、巨大タンパク質の結合部位を模倣する生物活性高次構造の産生のための魅力的な構造テンプレートとして小さな多ジスルフィド含有タンパク質の使用に注目している(Vitaら、1998)。一定の毒素で進化的に保存されているようである構造モチーフは、小さく(30〜40アミノ酸)、安定であり、変異に対する許容性が高い。このモチーフは、3つのジスルフィドによって内部コアで架橋したβシートおよびαヘリックスから構成される。
【0156】
βIIターンは、環状L-ペンタペプチドおよびDアミノ酸を含むものを使用して首尾よく模倣されている。Weisshoffら(1999)。また、Johannessonら(1999)は、逆ターンを誘導する特性を有する二環式トリペプチドについて報告している。
【0157】
特異的構造の作製方法は、当該分野で開示されている。例えば、αヘリックス模倣物は、米国特許第5,446,128号、同第5,710,245号、同第5,840,833号、および同第5,859,184号に開示されている。これらの構造はペプチドまたはタンパク質により高い熱安定性を付与し、タンパク質分解への耐性も増加する。6員環、7員環、11員環、12員環、13員環、および14員環の構造が開示されている。
【0158】
高次構造が制限されたβターンおよびβバルジの作製方法は、例えば、米国特許第5,440,013号;同第5,618,914号、同第5,670,155号に記載されている。βターンにより、対応する高次構造の骨格を変化させることなく側鎖置換基を荷電可能であり、標準的な合成手順によってペプチドに組み込むための適切な末端を有する。他の模倣ターン型には、逆ターンおよびγターンが含まれる。逆ターン模倣物は、米国特許第5,475,085号および同第5,929,237号で開示されており、γターン模倣物は、米国特許第5,672,681号および同第5,674,976号に記載されている。
【0159】
VIII.合理的薬物デザイン
合理的薬物デザインの目標は、生物活性化合物の構造アナログを産生することである。このようなアナログの作製により、天然分子よりも活性または安定性が高いか、変更に対する感受性が異なり、種々の他の分子の機能に影響を与えることができる薬物を構築可能である。1つのアプローチでは、タンパク質またはそのフラグメントの三次元構造を作製する。X線結晶学、コンピュータモデリング、または両アプローチの組み合わせによってこれを行うことができる。別のアプローチは、タンパク質のいたるところの官能基の無作為な置換を含み、官能基に対する得られた効果を決定する。
【0160】
機能アッセイによって選択したタンパク質特異的抗体を単離し、次いでその結晶構造を解釈することが可能である。原則として、このアプローチにより、その後に薬物デザインをベースにすることができるファルマコアが得られる。官能基に対する抗イディオタイプの抗体(薬理学的に活性な抗体)を共に作製することよってタンパク質結晶学を回避することが可能である。鏡像の鏡像として、抗イディオタイプの結合部位は元の抗原のアナログと予測される。次いで、抗イディオタイプを使用して、化学的または生物学的に産生したペプチドバンク由来のペプチドを同定および単離することができる。次いで、選択されたペプチドをファルマコアとして使用する。抗原として抗体を使用して抗イディオタイプを作製することができる。
【0161】
したがって、タンパク質の出発構造と比較して所与の条件について生物活性が増強および改良された薬物をデザインすることができる。
【0162】
IX.スクリーニングアッセイ
迅速、安価、且つ操作が簡単なアッセイは、in vitroアッセイである。このようなスクリーニングアッセイのために、この目的のために特に操作した細胞を含む種々の細胞株を使用することができる。アッセイに依存して、培養が必要であり得る。あるいは、分子分析(例えば、タンパク質発現、mRNA発現(ホールセルまたはポリA RNAのディファレンシャルディスプレイを含む)などの調査)を行うことができる。
【0163】
in vivoアッセイは、トランスジェニック動物を含む種々の動物モデルの使用を含む。そのサイズ、扱いやすさ、ならびに生理学および遺伝子構造についての情報により、マウス、特にトランスジェニックマウスが好ましい実施形態である。しかし、他の動物も同様に適切であり、昆虫、線虫、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット、アレチネズミ、ウッドチャック、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、およびサル(チンパンジー、テナガザル、およびヒヒを含む)が含まれる。タンパク質医薬品のアッセイを、任意のこれらおよび他の種由来の動物モデルを使用して行うことができる。
【0164】
このようなアッセイでは、1つまたは複数の候補物質を動物に投与し、候補物質で治療していない類似の動物と比較した候補物質の活性を測定する。
【0165】
候補物質でのこれらの動物の治療は、適切な形態の化合物の動物への投与を含む。臨床または非臨床目的のために任意の経路(経口、鼻腔、口腔、または局所が含まれるが、これらに限定されない)で投与することができる。あるいは、気管内点滴、気管支点滴、経皮、皮下、筋肉内、腹腔内、または静脈内注射によって投与することができる。特に意図される経路は、全身静脈内注射、血管またはリンパからの供給を介した局所的投与、または罹患部位への直接投与である。
【0166】
in vivoでの化合物の有効性の決定は、種々の異なる基準を含み得る。また、動物における毒性および用量反応の測定を、in vitroまたはin cytoアッセイよりも有意義な様式で行うことができる。
【0167】
X.薬学的調製物
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能なキャリアに溶解または分散させた有効量の1つまたは複数のタンパク質またはさらなる薬剤を含む。句「薬学的または薬理学的に許容可能な」は、動物(例えば、適切にはヒトなど)に投与した場合に有害な反応、アレルギー性の反応、または他の不利益な反応を起こさない分子および組成物をいう。少なくとも1つのタンパク質またはさらなる有効成分を含む薬学的組成物の調製は、「レミントンの薬学」、第18版、Mack Printing Company、1990(本明細書中で参考として援用される)に例示される本発明の開示に照らして、当業者に公知である。さらに、動物(例えば、ヒト)投与のために、調製物は、FDA局の生物学的標準に必要な滅菌、発熱性、総括的安全、および純度の基準を満たすと理解される。
【0168】
本明細書中で使用される、「薬学的に許容可能なキャリア」には、任意およびすべての溶媒、分散媒、被覆剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗菌薬、抗真菌薬)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、香料、色素、類似の材料およびその組み合わせが含まれ、当業者に公知である(例えば、「レミントンの薬学」、第18版、Mack Printing Company、1990、1289〜1329(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。有効成分と適合しない任意の従来のキャリアを除き、治療組成物または薬学的組成物でのその使用が意図される。
【0169】
本発明は、固体、液体、またはエアロゾル形態のいずれで投与するかまたは注射としてのこのような投与経路のために滅菌が必要であるに依存して異なる型のキャリアを含み得る。本発明を、静脈内、皮内、腹腔内、病変内、頭蓋内、動脈内、前立腺内、胸腔内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、小胞内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、経口、局所、局部、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、継続的注入、局所灌流浸漬標的細胞への直接投与、カテーテル、洗浄、クリーム、脂質組成物(例えば、リポソーム)、もしくは他の方法または当業者に公知の上記の任意の組み合わせ(例えば、「レミントンの薬学」、第18版、Mack Printing Company、1990(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)で投与することができる。
【0170】
一定の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのタンパク質医薬品と組み合わせた1つまたは複数の脂質を含む新規の組成物に関する。脂質は、特徴的に水に不溶性で、有機溶媒で抽出可能な物質である。脂質には、細胞質に天然に存在する脂肪の小滴ならびに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む当業者に周知の化合物のクラスを含む物質が含まれる。勿論、脂質として当業者に理解される本明細書中に詳細に記載の化合物以外の化合物もまた、本発明の組成物および方法に含まれる。
【0171】
XI.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すことを含む。本発明の実施で十分に機能することが本発明者らによって発見された代表的技術に付随する実施例で技術が開示されているので、その実施のための好ましい様式を構成するとみなすことができることを当業者に認識すべきである。しかし、当業者は、本発明の開示に照らして、開示された特定の実施形態で、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく依然として類似の結果が得られる多数の変更形態を得ることができることを認識する。より詳細には、化学的および生理学的に関連する一定の薬剤を同じまたは類似の結果を達成しながら本明細書中に記載の薬剤に置換することができることが明白である。全てのこのような類似の構成要素および修飾が当業者に明白であり、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の精神、範囲、および概念の範囲内であると考えられる。
【0172】
[実施例1]
DHFRの天然状態はアンサンブルである
DHFRのエネルギー連結性を、DHFR・葉酸塩・NADP+三次複合体(タンパク質データバンクアクセッション番号7dfr(Bystroffら、1990))の結晶構造に対するCOREX分析によって決定し、葉酸塩およびNADP+分子を除去する。以前に記載のものよりも分解能が高い分析を行うために、COREXアルゴリズムを、モンテカルロサンプリングストラテジー(Metropolisら、1953)を使用するように改変した。別の分析では、モンテカルロサンプリングにより元のCOREXサンプリングで得られた結果と等しい結果が得られたことが示された。
【0173】
高い安定度定数は、天然条件下で大部分の確率の高い状態で折りたたまれた残基を示し、低い安定度定数は、多数のこれらの状態で折りたたまれない残基を示す。一般に、安定度定数の高い残基は、βストランド1、6、および8およびαヘリックス1、2、および4に存在し、安定度定数の低い残基は標準的な二次構造のエレメントから離れたいくつかのループ領域で見出される。
【0174】
[実施例2]
協力性のアンサンブル所見
タンパク質の協力性は、異なる領域間の強力な結合の結果である。平衡のアンサンブルベースの記載の文脈の範囲内で、アンサンブルの異なる状態の相対的確率において協力性が明らかとなる。高エネルギーで結合した領域について、両領域が折りたたまれているか折りたたまれていない状態の確率は、片方の領域のみが折りたたまれている確率よりも高い。COREXアルゴリズムがアンサンブルの異なる状態の確率についての妥当に評価するので、タンパク質中の協力的相互作用ネットワークを捕捉する。この事実は、タンパク質の異なる構造と機能的エレメントとの間の協力性を最も高い確率の状態で折りたたまれるタンパク質のこれらの領域の分析によって確認することができることを意味する。2つの残基jおよびkが共に確率の高い状態の大部分で折りたたまれるか折りたたまれない場合、残基の安定度定数は両残基で同一である。したがって、一定量の残基jに影響を与える混乱は、同量の残基kに必ず影響を与える。同様の残基群の間の強力な結合を調査するために,この理由を拡大することができる。本明細書中で、本発明者らは、2つの残基または残基群の間の結合を連結性と定義し、本発明者らは2つの異なる連結性型を同定する。最初にどのようにして各残基での変化が拡大するのかを記載し(点変異)、他方ではどのようにして残基群に対する変化が拡大するのかを記載する(すなわち、部位特異的結合)。
【0175】
[実施例3]
残基特異的連結性
残基特異的連結性(RSC)は、2残基間の結合である。モンテカルロサンプリング法の文脈では、RSCを、相関関数:
【0176】
【数19】
Figure 2005502099
によって定義する。正の値のRSCは、残基jおよびkの安定化により前記kまたはjが安定化し(すなわち、正の協力性を示す)、負の値は残基jまたはkの安定化により残基kまたはjが不安定化する(すなわち、負の協力性を示す)ことを示す。0の値は、相関しないことを意味し、残基は強力に結合していない。
【0177】
上記式があらゆる他の残基での混乱に対する各残基の相互の感受性を提供しているので、これを使用してタンパク質中の熱力学的ドメイン構造を探索することができる。
【0178】
熱力学的ドメインの割り当てに加えて、RSCを使用して、どのようにして変異効果がその複製起点から拡大するのかを探究することもできる。
【0179】
DHFRの顕著な特徴は、タンパク質の末端領域が構造によってしばしば大きなAで拡大し、NADPHまたは葉酸塩のいずれかに対するDHFRの親和性に優先的に影響を与えるという実験所見である(Fierke and Benkovic、1989;Warrenら、1991;Ohmaeら、1996;Cameron and Benkovic、1997;Ohmaeら、1998)。本発明を使用して、どのようにして各結合部位が変異に影響を受けるかということと実験的に認められた結合に対する効果とのあいだに相関関係が存在するのかを測定することができる。一般に、結合部位の安定性に及ぼす変異の効果は、結合親和性の変化に必ず対応するはずである。表2に示すように、DHFRにおける変異効果は、大きなÅで拡大し、特定の結合部位が変異残基に強力に結合する程度は、各リガンドの親和性に及ぼす変異の効果に相関する。この相関はどのようにして結合親和性が変異に影響を受けるかということについての機械論的詳細は得られていないにもかかわらず、挙動の相関は、残基特異的連結性によって得られる連結性情報の精度を支持し、アルゴリズムが長距離にわたり効果をマッピングする能力を示す。
【0180】
[実施例4]
機能的連結性
実験的に、NADPHまたは葉酸塩結合部位のいずれかでの結合は他のリガンドに対するDHFRの親和性に影響を与えることが確立されている(Fierkeら、1987)。この効果の性質は、アンサンブルに関する傾向であり得る。記載のように、葉酸塩またはNADPHの非存在下における天然条件下で存在するDHFR高次構造のアンサンブルを、多数のループ領域が折りたたまれていない状態によって特徴付けられ、そのサブセットは、いずれかのリガンドに対する結合に関与する。しかし、いずれかのリガンドの存在下では、結合部位の残基が折りたたまれた状態はリガンド結合し、活性部位の全部または一部が折りたたまれていない状態を超えて優先的に安定化される(Metropolisら、1953)。したがって、RSCによって説明された対の相関関係に加えて、タンパク質全体およびその残りとしての結合部位の間の結合相関関係を同定することが必要である。機能的連結性(FC)を、以下のように所与のリガンドxとタンパク質中の全残基の全結合部位間の連結性として定義される:
【0181】
【数20】
Figure 2005502099
式中、j*およびk*は2つの方法のうちの1つで定義される。全残基について、jおよびkは、リガンドxの結合ポケット(残基特異的連結性方程式中のSj *=SjおよびSk *=Sk)に関連しない。しかし、リガンドxの結合部位中の残基について、Sj *および/またはSk *は、リガンドxの結合部位中の全nx残基の平均結合状態である:
【0182】
【数21】
Figure 2005502099
RSCとFCとの間の相違に注目すべきである。RSCを、他の残基の折りたたみ状態に無関係に2つの特定の残基が折りたたまれた状態の確率の相関によって決定する。それに対して、FCは、残基が折りたたまれた確率と残基群が折りたたまれた確率が相関する。したがって、FCは、RSC分析で頻繁に認められない連結性情報を有効に増幅する。この結果は、1残基変異の結果からタンパク質の機能的連結性を実験的に導く困難を強調する。
【0183】
【表2】
Figure 2005502099
この結果の重要度は3倍である。第1に、影響を受けたループは葉酸結合部位から15A以上はなれており、アンサンブルアプローチがDHFRによる結合エネルギーの拡大を適格にモデリングすることを示す。第2に、影響を受けたループを囲む残基は、葉酸塩部位に対して連結性を示さず、視覚可能な連結性経路の非存在下で残基が強力に結合することができることを示す。この結果は、結合または変異の効果が一連の高次構造のゆがみによってタンパク質の末端部分に拡大するシグナル拡大の機械的図が揺るがされる。第3に、同様に重要なことに、当業者は、これらの結果は、結合がタンパク質高次構造を「追い出し」て、動き(または動力学)が減少する古典的図(Froloffら、1977)と矛盾することを認識する。結合によりいくつかの系で動力学が増大し得る実験的所見(Bolinら、1982;Bystroff and Kraut、1991;Akkeら、1993;Olejniczakら、1997;Yuら、1996;Stiversら、1996;Zidekら、1999)は、エントロピーの分布の重要性を強調する。この効果の捕捉における本発明者らのアプローチの成功は、COREXアルゴリズムによって実行されたアンサンブルの図におけるエントロピー分布が適切に示されることを意味する。
【0184】
本明細書中に記載のアプローチが三次複合体(7dfr)の構造のみを分析したという事実を含む多数の簡略化した仮定を含んでいるにもかかわらず、アルゴリズムは、DHFRにおける強力な連結性に関して明らかに詳細を捕らえることに成功している。この成功の理由は、エネルギー拡大起源に根ざしている。したがって、それは、結合および変異の効果が構造によって拡大する大きさおよび範囲を決定する低エネルギー状態の数および相対的確率である。DHFRについて、残基60〜90と残りのタンパク質との間のLnκfの相違(図9A)は、この非折りたたみ領域を有する状態は他の非折りたたみ領域を有する状態よりも安定で7.0kcal/mol以上であることを示す。したがって、まれにしか2kcal/molを超えないほとんどの変異効果は、状態の強力な上下関係および連結性パターンに有意に影響を与えそうにない。これは、アンサンブル中の状態の分布の間のこの関連性であり、およびタンパク質が有意な配列の多様性に耐性を示す一方で複雑な生物学的挙動を維持することができる異なる機能エレメントの間の連結性である。
【0185】
[実施例5]
BEST/MPMODを使用した分子認識からのアンサンブルの図の誘導
定量的結合モデル開発における第1の工程は、アンサンブルにおける分子認識のやり直しである。図5Aは、モデル系の構造(Sosペプチドを含む複合体におけるC.elegansタンパク質SEM5のSrc-ホモロジー-3(SH3)ドメイン)を示す。図5Bは、COREXアルゴリズムによって計算したSEM5の折りたたみ定数パターンを示す。予想されるように、折りたたみ定数のパターンにおいて領域の相違が存在する。最も低い折りたたみ定数は、残基165〜173(RTループとして公知)および残基184〜190で見出された定数である。図5Aから証明されるように、これらのループ領域に存在する多数の残基は、SEM5/Sos複合体中のSosペプチドに直接接触する。
【0186】
RTループの低安定性の関与は、ペプチドの非存在下でSEM5アンサンブルが不規則なループを有する分子の有意な集団を含むことである。このサブアンサンブルの結合エネルギーがループの整列に必要なエネルギーを含むので、これらの状態はペプチドに対する親和性が減少するか、無視できる。この点を図5Cに示し、結合能力をもつ種の一部がペプチドの非存在下で全アンサンブルのサブセットとして示されている。したがって、SEM5へのSosの結合には、偏った結合能力をもつ種へのSEM5アンサンブルの再分布が必要である。
【0187】
図5Cに示すアンサンブルベースの図の範囲内で、リガンドに対するタンパク質の認められた親和性定数Kobsは、タンパク質およびリガンドアンサンブル両方の全高次構造状態の結合定数の合成数であり、これを以下の行列式で示すことができる:
【0188】
【数22】
Figure 2005502099
式中、Ki,jはi番目のタンパク質とj番目のリガンドの高次構造の間の微視的結合定数である。Ki,jを、PiLjと単離したPiおよびLjの高次構造との間のエネルギーの差から決定する(演算子Ψとして示す;さらなるクラティックエントロピー項-ΔScratic=-R*ln55は自由度の減少を説明するために必要である)。上記の式が関与しているので、Sosに対するSEM5の観察された結合親和性には、SosペプチドおよびSEM5タンパク質の高次構造アンサンブルの構造および熱力学的寄与の知識が必要である。BEST/MPMODプログラムは、この問題に取り組んでいる。
【0189】
Figure 2005502099
Figure 2005502099
Figure 2005502099
Figure 2005502099
[実施例6]
ペプチド-ストレプトアビジン複合体のモデリングのためのBEST/MPMODを使用したペプチドの構築
ペプチド骨格の二平面角(φ、Ψ)を、4つのラマチャンドランマップ(グリシンが1、プロリンが1、CB分岐アミノ酸(VAL、ILE、およびTHR)が1、および全ての他のアミノ酸が1)で無作為に作製した。ペプチドのトランスおよびシス形態の二平面角は、無作為差異を少し含む(通常、±5°)ω=180°および0°である。二面角(φ、ψ、ω)ならびに標準的な結合の長さおよび結合角に基づいてペプチド骨格を作製した。Ponder and Richardの回転異性体ライブラリ(1989)を使用して、骨格に側鎖を付加した。簡単な剛体球接近を使用して、ありそうにない配座異性体を排除した。各原子を、適切なファンデルワールス半径を有する剛体球とみなした。2原子間の最小距離(Iijimaら、1987)を、各原子対のファンデルワールスチェックで使用した。これらの距離は、Ramachandranら(1963)の「正常な」距離よりも約0.2〜0.4Å短い。骨格水素原子(HNおよびHCA)が作製された場合、H原子の他の原子との重複は正常な距離よりもさらに長い(約0.5Å)。さもなければ、ファンデルワールス違背によって配座異性体が十分に作製されない。
【0190】
「実施例7」
ペプチド-ストレプトアビジン複合体のBEST/MPMODを使用したジスルフィド結合のモデリング
1つのジスルフィド結合を、本発明によってモデリングすることができる。配座異性体中の2つのジスルフィド結合をモデリングする場合、計算効率に注意すべきである。1つのポリペプチドで2つのジスルフィド結合が同時に形成される確率は、形成される各ジスルフィド結合の確率の積である。現在、2つのジスルフィド結合を含む1つのペプチドの作製には長時間かかる。本発明は、2つのジスルフィド結合を含む配座異性体の有効なモデリング法を提供する。2つのジスルフィドが結合したループを使用して、短い配座異性体を最初にモデリングする。短い配座異性体がジスルフィド結合を形成した場合、このループの高次構造を固定する。最初のループを固定した時に第1のループは適切な幾何学を有さない場合、第2のループを見出すのに長時間かかる。したがって、第2のループを検索するために数回試行しながら、第1のループの高次構造を固定する。試行回数は通常約5回と10回との間である。第1のループのための1つの固定された高次構造および第2のループのための種々の高次構造を含むいくつかのポリペプチドを得ることができる。アンサンブル中の全配座異性体を「結合」試験用に保持する。
【0191】
ポリペプチドがラクタム共有結合(すなわち、第1の残基の窒素(N)は最後の残基の炭素(C)と共有結合を形成する)によって環状化される場合、ジスルフィド結合のモデリング法は、もはや確かではない。このような環状ペプチドを形成するための基準は、N-C結合長については1.35±0.6Å、結合角(CA-N-CまたはCA-C-N)については120±35°である。このような環状ペプチドの作製は1つのジスルフィド結合ペプチドの作製よりも効率が悪く、これは、前者は原子NまたはCの1つの位置のみによって検索され、後者は硫黄の多数の位置から検索するからである。
【0192】
[実施例8]
BEST/MPMODを使用したストレプトアビジン結合への配座異性体の整列
配座異性体のアンサンブルを作製した後、「結合」試験を行った。第1の工程は、テンプレートに配座異性体を整列させることである。テンプレートは、同時結晶構造複合体中のペプチドである。第2の工程は、剛体球の可能なモデルの使用によって配座異性体をスクリーニングすることである。ペプチド-ストレプトアビジン複合体のために、ペプチドのHPQ配列で支配的結合力が生じ、モデリングした配座異性体を、複合体結晶構造の対応するHPQ配列に整列させた。任意の高分解能X線結晶構造をテンプレートに使用した。2つの基準を使用して、アラインメントが成功するかどうかを決定した。1つの基準は、以下の各モデリングした配座異性体kと標的ペプチドtとの間の標準偏差(rmsd)である:
【0193】
【数23】
Figure 2005502099
式中、nはアラインメントで分配された原子数である(HPQ配列についてn=9)。
【0194】
別の基準は、以下の2つの配座異性体の各残基間の配座異性体の角度の差の平均である:
【0195】
【数24】
Figure 2005502099
式中、mは比較した配列の残基数である(HPQ配列についてm=3)。
【0196】
アラインメントが許容されるかどうかを決定するために、2つの共通の基準値(rmsd(k,t)およびΔA(k,t)についてそれぞれrmsdrefおよびΔAref)を得る。アンサンブル中のk番目配座異性体のために、rmsd(k,t)≦rmsdrefおよびΔA(k,t)≦ΔArefを満足する場合、このアラインメントは、許容可能である。基準の任意の1つを満足しない場合、アラインメントは許容不可能であり、配座異性体は拒絶される。HPQ配列について、基準値は、rmsdref=0.50Å(各残基のアラインメントのために3つの原子Cα、C、およびNを使用した)およびΔAref=50°である。
【0197】
アラインメントが許容可能である場合、第2の工程と同様にストレプトアビシンでファンデルワールスチェックを行って、最終のドッキングが成功するかどうかを決定する。配座異性体および標的タンパク質の原子対に任意の衝突が存在する場合、ドッキングは成功せず、配座異性体は拒絶される。ファンデルワールスチェックのための原子半径は、先に記載の半径と同一である。任意の原子対にファンデルワールス違背が存在しない場合、配座異性体はタンパク質に首尾よくドッキングしたとみなされる。「結合比」を、Nb/Nt比(NbはHPQ結合ポケットに首尾よくドッキングすることができる配座異性体数であり、Ntはアンサンブル中の配座異性体数である)と定義することができる。この比は、複合体の実験で測定した結合親和性と十分に相関した。
【0198】
[実施例9]
(BEST/MPMODを使用したHPQ配列のクラスター分析)
ペプチド-ストレプトアビジン複合体を調査した。表3は、ペプチド、およびストレプトアビジンを用いて実験的に測定した結合親和性を列挙している。これら全てのペプチドの配座異性体のアンサンブルを、上記の手順に従って作製した。図7は、CCHPQCGMVEECのペプチドアンサンブルの例を示す。ペプチドのHPQ配列は結合に極めて重要であるので、モデリングした配座異性体のどの部分がHPQ配列中のI型βターンに適合することができるのかを知る必要がある。分解能1.46Åで決定したCCHPQCGMVEECの結晶構造(図8)を、一部を計算するためのテンプレートとして使用した。すべてのモデリングした配座異性体を、基準値rmsdref=0.50ÅおよびΔAref=50°を使用して結晶構造CCHPQCGMVEECのHPQ配列に整列させる。各配座異性体のために、計算したrmsd(k,t)およびΔA(k,t)の両方が所与の基準値未満である場合、配座異性体はHPQ様であるか、HPQ配列中の結晶構造に類似する。言い換えれば、モデリングしたHPQ配列を、I型βターンに適用することができる。基準を満たすことができる配座異性体の割合を、表3に列挙する。
【0199】
【表3】
Figure 2005502099
直鎖ペプチドのHPQ様配座異性体(約6%)は、ジスルフィド結合を含むペプチド(12%〜42%)の約1/2〜1/7である(表3)。理由は、直鎖ペプチドは高次構造空間を抑制せず、種々の高次構造を許容可能であることである。それに対して、ジスルフィド結合を有するペプチドについて、配座異性体は制限される。直鎖ペプチドについてのHPQ様比はあまり変化しない。環状ペプチドの比は、2システイン間のアミノ酸の型および数によって変化する。配座異性体AECHPQFNCIEGRKとAECHPQFPCIEGRKとの間の相違は、残基8のみである。しかし、両異性体の比は有意に異なり、前者の比が22.4%であり、後者の比が41.9%である。残基8のプロリンを有することにより、HPQモチーフのI型βターンを形成する機会が非常に増える。
【0200】
ペプチドCCHPQCGMVEECおよびCCHPQCGMAEECでは、最初の2つのシステインが互いに近すぎてジスルフィド結合を形成できない。形成することができるジスルフィド結合の組み合わせは、架橋形態C1-C6、C2-C12、およびネスト化形態C2-C6、C1-C12である。架橋形態は、ネスト化形態よりもHPQ様配座異性体の比率が高い。これは、ループがより小さいことに起因していた。CXXXC形成のための平衡定数KcはCXXXXC形成のための平衡定数より小さいことが当該分野で公知である(Zhang and Snyder、1989)。架橋形態についてのCCHPQC中の第1のループは、HPQ配列中のI型βターンより高い比を採用する。2つのループを含むペプチドのAlaをValに置換した場合、HPQ様配座異性体フラクションが増えた。CB分岐アミノ酸は、HPQ配列の高次構造をさらに制限し、それによりHPQ様配座異性体の比が上昇した。
【0201】
[実施例10]
BEST/MPMODを使用したペプチド-ストレプトアビジン複合体の「結合比」
X線同時結晶構造は、全ペプチドが同一の部位でストレプトアビジンに結合することを示す。HPQ配列は、複合体の結合に極めて重要である。モデリングした配座異性体のHPQモチーフが対応する結晶構造のそれに類似する場合、モデリングした配座異性体は、ストレプトアビジンと結合する能力を有する。各HPQ様配座異性体を、同時結晶構造のHPQ配列に整列させる。配座異性体が標的タンパク質とファンデルワールス衝突しない場合、「結合物」と定義する。アンサンブル中の「結合物」フラクションが大きいほど、複合体の結合親和性は高くなる。表3の最後の列にアンサンブル中の「結合物」の比率を示す。「結合物」フラクションは、一連のペプチドに対する実験的に測定した結合親和性と相関する。直鎖ペプチドは、環状またはジスルフィド結合ペプチド(7%〜28.7%)と比較して非常に低い割合(0.85%〜1.1%)でストレプトアビジンに採用される。直鎖ペプチドに対する測定した結合親和性もまた、他のペプチドよりも非常に低い。これは、エントロピー効果に起因する。直鎖ペプチドは高次構造空間を制限せず、標的タンパク質に結合した場合、エントロピーがさらに減少する。したがって、直鎖ペプチドの測定した結合親和性および計算した「結合物」フラクションは非常に低い。
【0202】
表3に列挙した最後の2つのペプチドを、ファージディスプレイライブラリから選択した。各ペプチドは2つのジスルフィド結合を有する。高次構造は、1つのジスルフィドを有するペプチドよりも制限される。2つのジスルフィド結合によって高次構造がより制限されるので、環状ペプチドよりもさらに高い親和性を除外することが妥当であり得る。実際、測定した結合親和性は、いくつかの環状ペプチドの結合親和性よりも低い。「結合物」モデリングフラクションもまた、測定した親和性のようにふるまう。これは、この系の結合部位の幾何学に起因し得る。ペプチドがより強固であり、HPQ様高次構造の一部がより多いにもかかわらず、ミニタンパク質が大きすぎて結合部位の環境に適切に適合しないので、ストレプトアビジンと衝突する機会はより高い。衝突由来のペナルティは、ペプチドの剛性由来の利点よりもさらに高い。ペプチド上の各原子がストレプトアビジンと1回だけ衝突すると仮定して、各残基がストレプトアビジンに衝突する回数を計数した。図9は、2つのジスルフィド結合ペプチドの各残基の衝突数を示す。残基7〜11(GMVEE)を含む第2のループは、他の残基よりもストレプトアビジンと衝突する回数が多い。
【0203】
明細書中に記載の全ての特許および刊行物は、本発明に属する当業者のレベルを示す。全ての特許および刊行物は、各刊行物が具体的且つ個別に参考として援用されることを示す場合と同一の範囲で本明細書中で参考として援用される。
【0204】
U.S. Patent 4,554,101
U.S. Patent 5,220,007
U.S. Patent 5,284,760
U.S. Patent 5,354,670
U.S. Patent 5,366,878
U.S. Patent 5,389,514
U.S. Patent 5,440,013
U.S. Patent 5,446,128
U.S. Patent 5,475,085
U.S. Patent 5,618,914
U.S. Patent 5,635,377
U.S. Patent 5,670,155
U.S. Patent 5,672,681
U.S. Patent 5,674,976
U.S. Patent 5,789,166
U.S. Patent 5,929,237
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【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】分析ツールとしてのBEST/MPMODの流れ図である。
【図2】AおよびB、至適化された特徴を有するタンパク質医薬品開発で使用される予測ツールとしてのBEST/MPMODの流れ図である。
【図3】人為的に折りたたまれた状態を作製するためのCOREXアルゴリズムの例を示す図である。この例については、各12残基のウィンドウブロックを使用して全部で12種のパーティショニングを作製した。
【図4】λ6-85の計算上および実験による保護因子の自然対数(バー)を示す図である。Hilser and Freire、1996に記載のように計算値を決定した。計算値を超える実線は、定義された残基の安定度定数を示す。保護を示すか否かに関係なく全残基についてこの量を定義する。二次構造の対応するエレメントもまた図に示す。計算値と実験値が良好な一致は、計算したアンサンブルが実際のアンサンブルの一般的特徴を捕らえ、タンパク質における協力的相互作用のネットワークがこのモデルで正確に示されていることを示す。
【図5】(A)ペプチドSosと複合体を形成したC.elegansタンパク質SEM5のSrc-ホモロジー-3(SH3)ドメインの2つのX線構造図である。(B)SEM5の残基折りたたみ定数を示す図である。灰色のバーは、低安定性を示すループ領域中の残基を示す((A)で灰色のもの)。(C)ペプチドの非存在下(I.)および存在下(II.)での結合能力サブアンサンブルを示すSEM5アンサンブルの略図である。
【図6】MPMODプログラムの流れ図である。
【図7】アンサンブルCCHPQCGMVEECのジスルフィド結合無作為高次構造を示す図である。各配座異性体は、2つの架橋ジスルフィド結合を有する。無作為に作製した配座異性体は、種々の高次構造を有する。
【図8】ペプチド-ストレプトアビジン複合体の相互作用を示す図である。ここでは、ペプチドは架橋する2つのジスルフィド結合を有する。HPQモチーフは、結合ポケットに存在し、複合体の相互作用に関連する3つの水素結合が存在する。
【図9】ペプチドCCHPQCGMVEECの各残基が標的ストレプトアビジンと衝突する機会数を示す図である。
【図10】AおよびB、MPMODプログラム(ファーストモード)の流れ図である。
【図11】AおよびB、MPMODプログラム(スローモード)の流れ図である。
【図12】MPMODプログラム(ループ作製)の流れ図である。
【図13】ジスルフィド結合のMPMODプログラムのモデリングの流れ図である。
【図14】結合試験の流れ図である。

Claims (42)

  1. i.タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程、
    ii.コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程、
    iii.前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程、
    iv.前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程、ならびに
    v.前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して至適化された薬学的特性を提供する工程を含む、至適化された薬学的特性を示すタンパク質医薬品をデザインする方法。
  2. i.タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程、
    ii.コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程、
    iii.前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程、
    iv.前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程、ならびに
    v.前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製してタンパク質医薬品とリガンドとの間の増大した結合親和性を提供する工程を含む、タンパク質医薬品とリガンドとの間の増大した結合親和性を示すタンパク質医薬品をデザインする方法。
  3. 前記結合親和性を表面プラズモン共鳴によって決定する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記リガンドがタンパク質である、請求項2に記載の方法。
  5. 結合することができる高次構造フラクションおよび結合親和性の決定が、タンパク質およびリガンドを使用してファンデルワールス計算を行い、前記高次構造が立体的に許容されるかどうか評価する工程を含む、請求項2に記載の方法。
  6. 結合することができる高次構造フラクションおよび結合親和性の決定が、タンパク質とリガンドとの間の結合定数または解離定数を決定する工程を含む、請求項2に記載の方法。
  7. リガンドとの結合状態におけるタンパク質の構造に類似する構造の安定化によって結合エントロピーを減少させる配座異性体を決定する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
  8. 前記タンパク質が受容体結合部位での非タンパク質リガンドの結合によってリガンドの受容体への結合を阻害する、請求項2に記載の方法。
  9. i.タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程、
    ii.コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程、
    iii.前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程、
    iv.前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程、ならびに
    v.前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して低減した凝集を提供する工程を含む、凝集が低減したタンパク質医薬品をデザインする方法。
  10. 前記凝集を360nmでの光散乱によって測定する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記タンパク質表面上に露呈した疎水性残基数が減少する、請求項9に記載の方法。
  12. 平衡で見出された非折りたたみ領域数が減少する、請求項9に記載の方法。
  13. グルタミン/アスパラギンが豊富なドメイン数が減少する、請求項9に記載の方法。
  14. i.タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程、
    ii.コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程、
    iii.前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程、
    iv.前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程、ならびに
    v.前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して増加した溶解性を提供する工程を含む、増加した溶解性を示すタンパク質医薬品をデザインする方法。
  15. 前記溶解性をタンパク質医薬品の自由遷移エネルギーの決定によって測定する、請求項14に記載の方法。
  16. 前記タンパク質表面上の極性残基数が増加する、請求項14に記載の方法。
  17. 前記タンパク質表面上の非極性残基数が減少する、請求項14に記載の方法。
  18. タンパク質の正味の電荷が増加する、請求項14に記載の方法。
  19. i.タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを得る工程、
    ii.コンピュータベースの方法を使用して前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程、
    iii.前記試験データセット内の各タンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程、
    iv前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程、ならびに
    v.前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品を作製して減少した免疫原効果を提供する工程を含む、減少した免疫原効果を示すタンパク質医薬品をデザインする方法。
  20. 前記免疫原効果をELISAによって決定する、請求項19に記載の方法。
  21. 前記タンパク質医薬品が、前記タンパク質医薬品の他の分子との凝集が減少する傾向を示す、請求項19に記載の方法。
  22. 前記タンパク質医薬品が、前記タンパク質の主要組織適合複合体との結合が減少する傾向を示す、請求項19に記載の方法。
  23. 前記タンパク質医薬品が5,000ダルトン未満のタンパク質である、請求項19に記載の方法。
  24. 前記タンパク質医薬品がエンドソーム経路によるプロセシングに耐性を示す、請求項19に記載の方法。
  25. 請求項1に記載の方法によって決定した構造の特徴を有する至適化された薬学的特性を示すタンパク質医薬品。
  26. 治療有効量の前記タンパク質医薬品を被験体に全身投与または粘膜投与する、請求項25に記載のタンパク質医薬品。
  27. 請求項2に記載の方法によって決定された構造の特徴を有する、タンパク質とリガンドとの間の増大した結合親和性を示すタンパク質医薬品。
  28. 請求項9に記載の方法によって決定された構造の特徴を有する、低減した凝集を示すタンパク質医薬品。
  29. 請求項14に記載の方法によって決定された構造の特徴を有する、増加した溶解性を示すタンパク質医薬品。
  30. 請求項19に記載の方法によって決定された構造の特徴を有する、減少した免疫原効果を示すタンパク質医薬品。
  31. i.タンパク質医薬品の変異体の試験データセットを含むデータベース、および
    ii.前記データベースと組み合わせたソフトウェアプログラムを含み、前記ソフトウェアプログラムが、
    前記試験データセットについてのアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程、
    前記試験データセット内のタンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程、
    前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程、ならびに
    前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品構造を作製する工程を実施するように適用されている、至適化された薬学的特性を示すタンパク質医薬品をデザインするためのコンピュータシステム。
  32. 前記デザインしたタンパク質医薬品が至適化された薬学的特性を提供するようにデザインされたものである、請求項31に記載のコンピュータシステム。
  33. 前記デザインしたタンパク質医薬品がタンパク質医薬品とリガンドとの間の増加した結合親和性を提供するようにデザインされたものである、請求項31に記載のコンピュータシステム。
  34. 前記デザインしたタンパク質医薬品が減少した免疫原効果を提供するようにデザインされたものである、請求項31に記載のコンピュータシステム。
  35. i.タンパク質医薬品の変異体の試験データセットからアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程、
    ii.前記試験データセット内のタンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程、
    iii.前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程、ならびに
    iv.前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品構造を作製する工程を実行するソフトウェアプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
  36. 前記デザインしたタンパク質医薬品が至適化された薬学的特性を提供するようにデザインされたものである、請求項35に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
  37. 前記デザインしたタンパク質医薬品がタンパク質医薬品とリガンドとの間の増加した結合親和性を提供するようにデザインされたものである、請求項35に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
  38. 前記デザインしたタンパク質医薬品が減少した免疫原効果を提供するようにデザインされたものである、請求項35に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
  39. i.タンパク質医薬品の変異体の試験データセットからアンサンブル由来の特性のライブラリを作製する工程、
    ii.前記試験データセット内のタンパク質変異体の所与の特性についての実験データを得る工程、
    iii.前記実験データおよび前記アンサンブル由来の特性のライブラリを使用して助変数方程式を導く工程、ならびに
    iv.前記工程によって見出された構造の特徴を有するタンパク質医薬品構造を作製する工程を含む、至適化された薬学的特性を示すタンパク質医薬品をデザインするためのコンピュータ実行方法。
  40. 前記デザインしたタンパク質医薬品が至適化された薬学的特性を提供するようにデザインされたものである、請求項39に記載のコンピュータ実行方法。
  41. 前記デザインしたタンパク質医薬品がタンパク質医薬品とリガンドとの間の増加した結合親和性を提供するようにデザインされたものである、請求項39に記載のコンピュータ実行方法。
  42. 前記デザインしたタンパク質医薬品が減少した免疫原効果を提供するようにデザインされたものである、請求項39に記載のコンピュータ実行方法。
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