以下、インクジェットヘッドに対する補正データ設定装置及びこの装置によって設定された補正データを用いて印刷を行うインクジェットプリンタの一実施形態について、図面を用いて説明する。なお、この実施形態では、シェアモードタイプのインクジェットヘッド100(図1を参照)を用いたインクジェットプリンタを例示する。
はじめに、インクジェットヘッド100(以下、ヘッド100と略称する)の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、ヘッド100の一部を分解して示す斜視図、図2は、ヘッド100の前方部における横断面図、図3は、ヘッド100の前方部における縦断面図である。なお、ヘッド100は、長手方向を縦方向、長手方向に直交する方向を横方向とする。
ヘッド100は、長方形のベース基板9を有する。ヘッド100は、ベース基板9の前方側の上面に第1の圧電部材1を接合し、この第1の圧電部材1の上に第2の圧電部材2を接合する。接合された第1の圧電部材1と第2の圧電部材2とは、図2の矢印で示すように、板厚方向に沿って互いに相反する方向に分極されている。
ベース基板9は、誘電率が小さく、かつ圧電部材1,2との熱膨張率の差が小さい材料を用いて形成する。ベース基板9の材料としては、例えばアルミナ(Al203)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等がよい。一方、圧電部材1,2の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)等が用いられる。
ヘッド100は、接合された圧電部材1,2の先端側から後端側に向けて、多数の長尺な溝3を設ける。各溝3は、間隔が一定でありかつ平行である。各溝3は、先端が開口し、後端が上方に傾斜する。このような多数の溝3の形成には、切削加工機を用いることができる。
ヘッド100は、各溝3の隔壁に電極4を設ける。電極4は、ニッケル(Ni)と金(Au)との二層構造となっている。電極4は、例えばメッキ法によって各溝3内に均一に成膜される。電極4の形成方法は、メッキ法に限定されない。他に、スパッタ法や蒸着法等を用いることもできる。
ヘッド100は、各溝3の後端から第2の圧電部材2の後部上面に向けて引出し電極10を設ける。引出し電極10は、前記電極4から延出する。
ヘッド100は、天板6とオリフィスプレート7とを備える。天板6は、各溝3の上部を塞ぐ。オリフィスプレート7は、各溝3の先端を塞ぐ。ヘッド100は、天板6とオリフィスプレート7とで囲まれた各溝3によって、複数の圧力室15を形成する。圧力室15は、例えば深さが300μmで幅が80μmの形状を有し、169μmのピッチで平行に配列される。ただし、切削加工機の特性に起因する製造時のばらつき等により、各圧力室15の形状が必ずしも均一になるとは限らない。例えば切削加工機は16本の圧力室15を一括して形成し、これを20回繰り返すことによって320本の圧力室15を形成する。このとき16本の圧力室を形成する加工刃が個体差を持っていれば、各圧力室15の形状は周期性をもつことになる。さらに圧力室の形状は20回の繰り返し加工の時の加工温度の変化などに起因して僅かずつ変化して行く。これらの圧力室15の微小な変化が最終的には印刷濃度の微小な周期的変化の原因のひとつとなる。
天板6は、その内側後方に共通インク室5を備える。オリフィスプレート7は、各溝3と対向する位置にノズル8を穿設する。ノズル8は、対向する溝3つまりは圧力室15と連通する。ノズル8は、圧力室15側から反対側のインク吐出側に向けて先細りの形状をなす。ノズル8は、隣り合う3つの圧力室15に対応したものを1セットとし、溝3の高さ方向(図2の紙面の上下方向)に一定の間隔でずれて形成される。なお、図2では、ノズル8の位置がわかるようにノズル8を模式的に図示している。ノズル8は、例えば、レーザ加工機により形成することができる。レーザ加工機が所定の位置にノズルを形成する際、各ノズルの加工位置を決める方法として、レーザービームの位置を光学的に設定する方法と、ワーク、即ちオリフィスプレート側を機械的に移動する方法がある。ノズルの数が多い場合はその両方を併用すると都合が良い。しかし光学的位置決め方法と機械的位置決め方法を併用した穴加工を行うと、それぞれの加工毎の穴形状の微小変化によって穴形状に周期性が生じる。この穴形状の周期性は印刷濃度の微小な周期的変化の原因のひとつとなる。
ヘッド100は、ベース基板9の後方側の上面に、導電パターン13が形成されたプリント基板11を接合する。そしてヘッド100は、このプリント基板11に、後述するヘッド駆動回路101(図8を参照)を実装したドライブIC12を搭載する。ドライブIC12は、導電パターン13に接続する。導電パターン13は、各引出し電極10とワイヤボンディングにより導線14で結合する。ドライブIC12は一つで全てのノズルに対応する電極を駆動するものであっても良いが、ひとつのドライバIC当たりの回路数が多くなり過ぎると、チップサイズが大きくなり歩留まりが低下する、出力回路の配線が困難になる、駆動時の発熱が集中する、ICの数を増減してノズル数の増減に対応することができない等、いくつかのデメリットが生じる。このため例えばノズル数320のヘッドに対して出力80回路のドライバICを4つ使用する。しかしそうするとドライバIC内の配線抵抗の差異などに起因して出力波形がノズル並び方向に応じて空間的な周期を持つ。その周期性の強さはドライバドライバIC12の個体差などに依存して変化する。この出力波形の空間的周期性は印刷濃度の微小な周期的変化の原因のひとつとなる。
ヘッド100が有する圧力室15、電極4及びノズル8の組をチャネルと称する。すなわちヘッド100は、溝3の数だけチャネルを有する。なお、シェアモードタイプのヘッド100は、両端のチャネルからはインクが吐出されない。しかし本実施形態では、説明の便宜上、インクが吐出されるチャネルの数をnとし、ノズル8の配列方向に沿って一端側から他端側に向けて順番にチャネル番号1,2,3,…,nを割り当てる。つまり、ヘッド100を正面から見たときの一端側のチャネルをch.1と称し、それに隣接するチャネルをch.2と称する。以下、同様にしてチャネル番号を割り当て、他端側のチャネルをch.nと称する。
次に、上記の如く構成されたヘッド100の動作原理について、図4及び図5を用いて説明する。
図4の(a)は、中央の圧力室15bと、この圧力室15bに隣接する両隣の圧力室15a,15cとの各壁面にそれぞれ配設された電極4の電位がいずれもグラウンド電位GNDである状態を示している。この状態では、圧力室15aと圧力室15bとで挟まれた隔壁16a及び圧力室15bと圧力室15cとで挟まれた隔壁16bは、いずれも何ら歪み作用を受けない。
図4の(b)は、中央の圧力室15bの電極4に負極性の電圧-Vが印加され、両隣の圧力室15a,15cの電極4に正極性の電圧+Vが印加された状態を示している。この状態では、各隔壁16a,16bに対して、圧電部材1,2の分極方向と直交する方向に電圧Vの2倍の電界が作用する。この作用により、各隔壁16a,16bは、圧力室15bの容積を拡張するようにそれぞれ外側に変形する。
図4の(c)は、中央の圧力室15bの電極4に正極性の電圧+Vが印加され、両隣の圧力室15a,15cの電極4に負極性の電圧-Vが印加された状態を示している。この状態では、各隔壁16a,16bに対して、図4(b)のときとは逆の方向に電圧Vの2倍の電界が作用する。この作用により、各隔壁16a,16bは、圧力室15bの容積を収縮するようにそれぞれ内側に変形する。
図5は、圧力室15bからインク液滴を吐出するために、当該圧力室15b及びその両隣の圧力室15a,15cの各電極4に印加される駆動パルス信号の基準パルス波形を示している。時間Ttによって示される区間は、インク液滴の吐出に必要な時間であり、この時間Ttは、準備区間の時間、いわゆる準備時間T1と、吐出区間の時間、いわゆる吐出時間T2と、後処理区間の時間、いわゆる後処理時間T3とに区分される。さらに、準備時間T1は、定常区間の時間、いわゆる定常時間Taと、拡大区間の時間、いわゆる拡大時間(T1-Ta)とに細分化され、吐出時間T2は、維持区間の時間、いわゆる維持時間Tbと、復元区間の時間、いわゆる復元時間(T2-Tb)とに細分化される。一般に、定常時間Taと拡大時間(T1-Ta)とからなる準備時間T1と、維持時間Tbと復元時間(T2-Tb)とからなる吐出時間T2と、後処理時間T3とは、使用するインクや温度等の条件により適切な値に設定される。
図5に示すように、ヘッド100は、先ず、時点t0において、圧力室15bに対応した電極4に0ボルトの電圧を印加する。またこのとき、ヘッド100は、圧力室15a,15cにそれぞれ対応した各電極4にも0ボルトの電圧を印加する。そしてヘッド100は、定常時間Taが経過するのを待機する。この間、各圧力室15a,15b,15cは、図4の(a)の状態を維持する。
定常時間Taが経過して時点t1になると、ヘッド100は、圧力室15bに対応した電極4に負極性の電圧(-Vs)を印加する。またこのとき、ヘッド100は、圧力室15a,15cにそれぞれ対応した各電極4に正極性の電圧(+Vs)を印加する。そしてヘッド100は、拡大時間(T1-Ta)が経過するのを待機する。
圧力室15bに対応した電極4に負極性の電圧(-Vs)が印加され、圧力室15a,15cにそれぞれ対応した各電極4に正極性の電圧(+Vs)が印加されると、圧力室15bの両側の隔壁16a,16bが、圧力室15bの容積を拡大するようにそれぞれ外側に変形して、図4の(b)の状態となる。この変形により、圧力室15b内の圧力が低下する。このため、共通インク室5から圧力室15b内にインクが流れ込む。
拡大時間(T1-Ta)が経過して時点t2になると、ヘッド100は、さらに維持時間Tbが経過するまで、圧力室15bに対応した電極4に負極性の電圧(-Vs)を印加し続ける。またヘッド100は、圧力室15a,15cにそれぞれ対応した電極4に正極性の電圧(+Vs)を印加し続ける。この間、各圧力室15a,15b,15cは、図4の(b)の状態を維持する。
維持時間Tbが経過して時点t3になると、ヘッド100は、圧力室15bに対応した電極4に印加する電圧を0ボルトに戻す。またこのとき、ヘッド100は、圧力室15a,15cにそれぞれ対応した各電極4に印加する電圧も0ボルトに戻す。そしてヘッド100は、復元時間(T2-Tb)が経過するのを待機する。
圧力室15a,15b,15cにそれぞれ対応した電極4への印加電圧が0ボルトになると、圧力室15bの両側の隔壁16a,16bが定常状態に復元されて、図4の(a)の状態に戻る。この復元により、圧力室15b内の圧力が増大して、圧力室15bに対応したノズル8からインク液滴が吐出される。
復元時間(T2-Tb)が経過して時点t4になると、ヘッド100は、圧力室15aに対応した電極4に正極性の電圧(+Vs)を印加する。またこのとき、ヘッド100は、圧力室15a,15cにそれぞれ対応した各電極4に負極性の電圧(-Vs)を印加する。そしてヘッド100は、後処理時間T3が経過するのを待機する。
圧力室15bに対応した電極4に正極性の電圧(+Vs)が印加され、圧力室15a,15cにそれぞれ対応した電極4に負極性の電圧(-Vs)が印加されると、圧力室15bの両側の隔壁16a,16bが、圧力室15bの容積を縮小するようにそれぞれ内側に変形して、図4の(c)の状態となる。この変形により、圧力室15b内の圧力がさらに増大する。このため、インク液滴の吐出後に圧力室15b内に生じる圧力低下が緩和される。
後処理時間T3が経過して時点t5になると、ヘッド100は、圧力室15bに対応した電極4に印加する電圧を0ボルトに戻す。またこのとき、ヘッド100は、圧力室15a,15cにそれぞれ対応した各電極4に印加する電圧も0ボルトに戻す。圧力室15a,15b,15cにそれぞれ対応した電極4への印加電圧が0ボルトになると、圧力室15bの両側の隔壁16a,16bが定常状態に復元されて、図4の(a)の状態に戻る。このとき圧力室15b内に残っていた圧力振動がキャンセルされる。
ヘッド100は、このような基準パルス波形の駆動パルス信号をインク吐出対象の圧力室15b、及びそれに隣接する圧力室15a,15cの各電極4に供給する。そうすると、圧電部材1,2からなる各隔壁16a,16bが圧力室15bの容積を拡大または縮小するように駆動して、圧力室15bに対応したノズル8からインク液滴が吐出される。ここに、圧電部材1,2からなる各隔壁16a,16bとこの隔壁16a,16bに設けられた電極4は、各隔壁16a,16bで仕切られた圧力室15bに連通するノズル8からインク液滴を吐出するために駆動するアクチュエータを構成する。
次に、ヘッド100を用いてマルチドロップ方式により階調印刷を行う場合について説明する。マルチドロップ方式は、インク液滴の大きさを変えずに1ドットに対して打ち込むインク液滴の数を可変して1ドットの濃度を変化させ、階調を表現する印刷方式である。このような印刷方式を実現させるためには、インク吐出対象のノズル8に対応したアクチュエータに駆動パルス電圧を複数回連続して繰り返し与えればよい。例えばアクチュエータに駆動パルス電圧を2回連続して与えることにより、このアクチュエータに対応したノズル8からはインク液滴が2滴吐出される。同様に、アクチュエータに駆動パルス電圧を7回連続して与えることにより、このアクチュエータに対応したノズル8からはインク液滴が7滴吐出される。かくして、ヘッド100は、マルチドロップ方式による階調印刷を行う。
次に、このようなヘッド100を搭載したインクジェットプリンタ200(以下、プリンタ200と略称する)について説明する。
図6は、プリンタ200のハードウェア構成を示すブロック図である。プリンタ200は、例えばオフィス用プリンタ、バーコードプリンタ、POS用プリンタ、産業用プリンタ等に適用される。
プリンタ200は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、補助記憶デバイス204、通信インターフェース205、操作パネル206、I/Oポート207、搬送モータ208、モータ駆動回路209、ポンプ210、ポンプ駆動回路211及びヘッド100を備える。またプリンタ200は、アドレスバス,データバスなどのバスライン212を含む。そしてプリンタ200は、このバスライン212に、CPU201、ROM202、RAM203、補助記憶デバイス204、通信インターフェース205、I/Oポート207、モータ駆動回路209、ポンプ駆動回路211及びヘッド100の駆動回路101をそれぞれ直接あるいは入出力回路を介して接続する。
CPU201は、コンピュータの中枢部分に相当する。CPU201は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムに従って、プリンタ200としての各種の機能を実現するべく各部を制御する。
ROM202は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。ROM202は、上記のオペレーティングシステムやアプリケーションプログラムを記憶する。ROM202は、CPU201が各部を制御するための処理を実行する上で必要なデータを記憶する場合もある。
RAM203は、上記コンピュータの主記憶部分に相当する。RAM203は、CPU201が処理を実行する上で必要なデータを記憶する。またRAM203は、CPU201によって情報が適宜書き換えられるワークエリアとしても利用される。ワークエリアは、印刷データが展開される画像メモリを含む。
補助記憶デバイス204は、上記コンピュータの補助記憶部分に相当する。例えばHDD、SSD、EEPROM等が補助記憶デバイス204として使用される。補助記憶デバイス204は、CPU201が各種の処理を行う上で使用するデータや、CPU201での処理によって生成されたデータを保存する。補助記憶デバイス204は、上記のアプリケーションプログラムを記憶する場合もある。補助記憶デバイス204は、補正データメモリ220を保存する。補正データメモリ220は、ヘッド100のチャネル毎(ノズル毎)に設定される補正データを格納する領域である。
通信インターフェース205は、LAN(Local Area Network)等の通信回線400を介して接続される情報処理装置300との間で、予め設定された通信プロトコルに従いデータ通信を行う。情報処理装置300は、汎用のパーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータ機器である。情報処理装置300は、上記補正データの設定機能301を有する。この補正データ設定機能301は、情報処理装置300が備えるプロセッサ、メモリ等のハードウェアと、情報処理装置300にインストールされた専用のアプリケーションプログラムによって実現される。補正データ設定機能301の詳細については後述する。
操作パネル206は、操作部と表示部とを有する。操作部は、電源キー、用紙フィードキー、エラー解除キー等のファンクションキーを配置したものである。表示部は、プリンタ200の種々の状態を表示可能なものである。操作パネル206は、I/Oポート207を介して、バスライン212に接続される。I/Oポート207は、操作パネル206から操作部の操作により生じる信号を入力する。またI/Oポート207は、表示部への表示データを操作パネル206に出力する。
モータ駆動回路209は、搬送モータ208の駆動を制御する。搬送モータ208は、印刷用紙などの記録媒体を搬送する搬送機構の駆動源として機能する。搬送モータ208が駆動すると、搬送機構が記録媒体の搬送を開始する。搬送機構は、記録媒体をヘッド100による印刷位置まで搬送する。搬送機構は、印刷を終えた記録媒体を図示しない排出口からプリンタ200の外部に排出する。
ポンプ駆動回路211は、ポンプ210の駆動を制御する。ポンプ210が駆動すると、図示しないインクタンク内のインクがヘッド100に供給される。
ヘッド駆動回路101は、印刷データに基づきヘッド100のチャネル群102を駆動する。チャネル群102は、図7に示すように、チャネル番号1からチャネル番号nまでのn個のチャネルch.1,…,ch.i,ch.j,…,ch.n(1<…<i<j…<n:ch.1~ch.n)含む。
図7は、ヘッド駆動回路101の要部構成を示すブロック図である。ヘッド駆動回路101は、画像データ出力部110、補正データ出力部111、基準信号出力部112、駆動順序制御部113、画像データ用シフトレジスタ114、補正データ用シフトレジスタ115、複数の駆動信号生成部116(116-1,…,116-i,116-j,…,116-n)、及び複数のアンプ117(117-1,…,117-i,117-j,…,117-n)を備える。各駆動信号生成部116及びアンプ117は、インクジェットヘッド100の各チャネルch.1~ch.nに対応して備えられる。
画像データ出力部110は、RAM203の画像メモリから画像データを1ラインずつ読出し、画像データ用シフトレジスタ114に出力する。画像データ用シフトレジスタ114は、インクジェットヘッド100の各チャネルch.1~ch.nに1対1で対応したレジスタ長を有し、1ラインの画像データを画素単位に順次シフトして保持する。
補正データ出力部111は、補正データメモリ220に記憶されるチャネルch.1~ch.n毎の補正データを1ラインずつ読出し、補正データ用シフトレジスタ115に出力する。補正データ用シフトレジスタ115は、インクジェットヘッド100の各チャネルch.1~ch.nに1対1で対応したレジスタ長を有し、1ラインの補正データを順次シフトして保持する。
基準信号出力部112は、インクジェットヘッド100の駆動素子を動作させる駆動パルス信号の基準となる波形を有した基準信号S1を出力する。
駆動順序制御部113は、隔壁を共有する両隣の圧力室15のノズル8から順次インクが吐出されるように、各駆動信号生成部116でチャネルch.1~ch.n毎に生成される駆動パルス信号P1,…Pi,Pj,…,Pn(P1~Pn)の出力タイミングを制御する。
各駆動信号生成部116は、基準信号S1を入力する基準信号入力部と、画像データを入力する画像データ入力部と、補正データを入力する補正データ入力部と、駆動パルス信号を出力する出力部を持つ。各駆動信号生成部116は、基準信号S1と画像データ用シフトレジスタ114に格納された画像データとから、それぞれ対応するチャネルch.1~ch.nの電極4に印加する駆動パルス信号P1~Pnを生成する。このとき各駆動信号生成部116は、補正データ用シフトレジスタ115に格納された補正データにより、チャネルch.1~ch.n毎に駆動パルス信号P1~Pnを補正する。補正データにより補正された各駆動パルス信号P1~Pnは、それぞれアンプ117で増幅された後、対応するチャネルch.1~ch.nの電極4に印加される。
ここで、駆動パルス信号P1~Pnの補正方法について、図8を用いて説明する。図8において、パルス波形Pa,Pb,Pcは、いずれもインク吐出対象の圧力室15bに対応した電極4に印加される駆動パルス信号の波形である。そして、パルス波形Paは補正前の波形であり、パルス波形Pbとパルス波形Pcは補正後の波形である。パルス波形Paは、図5で圧力室15bに印加される駆動パルス信号として示した基準パルス波形と一致する。
パルス波形Pa、Pb、Pcを対比すればわかるように、本実施形態では、1ドロップのインク液滴の吐出に必要な基準パルス波形の準備時間T1を補正する。具体的には、準備時間T1内で定常時間Taから拡大時間(T1-Ta)に切り替わる時点t1を、補正データにしたがって時間“-t”から“+t”の範囲内で可変させる。吐出時間T2及び後処理時間T3は補正しない。
定常時間Taを短くする、すなわち時点t1を“-t”の方向に補正すると、拡大時間(T1-Ta)が長くなる。その結果、ノズル8から吐出されるインク液滴の体積は増加する。定常時間Taを長くする、すなわち時点t1を“+t”の方向に補正すると、拡大時間(T1-Ta)が短くなる。その結果、ノズル8から吐出されるインク液滴の体積は減少する。補正データは、時点t1を“-t”の方向または“+t”の方向にどれだけずらすかを設定するデータである。
図9は、時点t1を時間“-t”から“+t”の範囲内で段階的に遅延させ、その都度、ノズル8から7ドロップのインク液滴を吐出させた場合の吐出体積(縦軸)と遅延時間(横軸)との対応関係を示すグラフである。縦軸の吐出体積[pl]は、時点t1を補正していないときの吐出体積に対する差分を示している。図9のグラフからわかるように、吐出体積[pl]と遅延時間[nsec]との関係は、遅延時間[nsec]が大きくなればなるほど吐出体積[pl]は小さくなるという関数特性を有する。
このように、チャネルch.1~ch.n毎に駆動パルス信号P1~Pnの時点t1を遅らせる方向(+方向)または早める方向(-方向)に補正することで、各チャネルch.1~ch.nからそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出量を調整することができる。すなわち、補正データとしてチャネルch.1~ch.n毎に時点t1に対する正または負の補正時間t[nsec]を設定することで、各ノズル8から吐出されるインク液滴の吐出量を均一にすることができる。吐出量が均一になれば、濃度ムラが解消される。また、ノズル8の配列方向に並べた第1のヘッドと第2のヘッドとの境目で濃度の段差が生じることもない。
チャネルch.1~ch.n毎の補正データ(補正時間t[nsec])は、情報処理装置300が有する補正データ設定機能301によって補正データメモリ220に設定される。以下、この補正データ設定機能301について詳細に説明する。
図10は、補正データ設定機能301の実現に必要な回路構成を示すブロック図である。補正データ設定機能301は、パラメータ出力部310、表示部311、選択部312、通信部313、チャネル番号発生部314、記憶部315、演算部316、変換部317及び制御部318を必要とする。パラメータ出力部310、表示部311及び選択部312は、情報処理装置300が備える入力デバイス(キーボード、タッチパネル等)、表示デバイス(ディスプレイ、タッチパネル等)を主体に実現される。通信部313は、情報処理装置300が備える通信インターフェース(LANコントローラ、USBインターフェース等)を主体に実現される。チャネル番号発生部314及び記憶部315は、情報処理装置300が備える揮発性メモリ(RAM、補助記憶デバイス等)を主体に実現される。演算部316、変換部317及び制御部318は、情報処理装置300が備えるプロセッサ(CPU、MPU等)及びプログラムメモリ(ROM、補助記憶デバイス等)を主体に実現される。
パラメータ出力部310は、パラメータテーブルを有する。パラメータテーブルには、補正データ設定作業を遂行するオペレータによって、補正の強さを決めるパラメータaが複数記憶される。パラメータ出力部310は、パラメータテーブルに記憶された複数のパラメータa(a1,a2,…)を順次、演算部316と制御部318とに出力する。なお、パラメータaは1種類に限定されるものではない。複数種類のパラメータをパラメータテーブルで記憶し、演算部316と制御部318とに出力してもよい。
表示部311は、パラメータテーブルに設定されたパラメータaのリストを表示する。リストは、制御部318によって作成される。表示部311は、制御部318によって作成されたパラメータaのリストを表示する。
選択部312は、表示部311に表示されたリストからいずれか1つのパラメータaの選択入力を受け付ける。パラメータaが複数種類の場合、選択部312はその種類毎にいずれか1つのパラメータaの選択入力を受け付ける。表示部311がタッチパネルであるとき、選択部312は、タッチパネルからのタッチ位置座標を示す信号を待ち受ける。オペレータによるリストへのタッチ操作によって上記信号が入力されると、選択部312は、そのタッチ位置に表示されているリスト上のパラメータaが選択されたものと決定する。
通信部313は、プリンタ200に対して種々のコマンドを送信する。コマンドには、補正データの仮設定とテストデータの印刷とを指令するテストコマンドと、補正データの本設定を指令する設定コマンドとがある。テストコマンドには、仮設定する補正データとテストデータの印刷回数とが含まれる。テストデータは、典型的にはベタ印刷用のデータである。設定コマンドには、プリンタの補正データメモリ220に設定される補正データが含まれる。補正データは、各チャネルch.1~ch.nのチャネル番号“1”~“n”と、そのチャネル番号“1”~“n”のチャネルch.1~ch.nに対する補正時間t[nsec]とを対応付けたものである。
チャネル番号発生部314は、“1”~“n”までのチャネル番号iを発生する。チャネル番号発生部314は、チャネル番号iを“1”から昇順に“n”まで発生する。あるいはチャネル番号発生部314は、チャネル番号iを“n”から降順に“1”まで発生する。チャネル番号発生部314は、ランダムに“1”~“n”までのチャネル番号iを発生してもよい。チャネル番号発生部314は、“1”~“n”までのチャネル番号iを発生し終えたならば、パラメータ出力部310に対して次のパラメータaの出力を指令する。この指令を受けて、パラメータ出力部310は、パラメータテーブルに記憶され、まだ出力していない1つのパラメータaを、演算部316と制御部318とに出力する。そしてパラメータテーブルに記憶されたパラメータaを全て出力し終えたならば、パラメータ出力部310は、演算部316と制御部318とに出力終了を通知する。
記憶部315は、図11に示すように、パラメータa(a1,a2,…)別の補正データテーブルTA(TA1,TA2,…)を記憶する。補正データテーブルTAは、それぞれパラメータaが格納される領域と、チャネル番号iと補正時間t[nsec]との対データが格納される領域とを有する。
演算部316は、パラメータaとチャネル番号iとを用いて、所定の補正演算式によりそのチャネル番号iで識別されるチャネルch.iに対する濃度補正量Xを算出する。補正演算式は、特に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、ヘッド100の略中央のチャネルch.i(i=n/2)に対する濃度補正量Xを“0”とし、チャネル番号iが“1”~“n”に増加する方向(ノズル8の並び方向)に対して直線的に濃度を補正する直線補間の補正演算式を採用してもよい。直線補間の補正演算式は、式(1)で表わされる。
X=a(i-(n/2)) …(1)
すなわち、パラメータaが正の値の場合には、チャネル番号iが大きくなるにつれて濃度補正量Xも大きくなる右上がりの直線となり、パラメータaが負の値の場合には、チャネル番号iが大きくなるにつれて濃度補正量Xが小さくなる右下がりの直線となる。そして、直線の傾きは、パラメータaの絶対値が大きくなればなるほど大きくなる。このような直線補間の補正演算式は、ノズル8の並び方向に対して一方の端部側の印刷濃度が最も高く、他方の端部側の印刷濃度が最も低いというヘッド100に対して濃度の不均一を補正することができる。
変換部317は、演算部316で算出された濃度補正量Xを補正時間t[nsec]に変換する。この変換には、図13に示されるグラフの関数特性を有する変換テーブルを用いる。この変換テーブルの関数特性は、図9に示されるグラフの関数特性から求められる。すなわち図9において、横軸(遅延時間)をxとし、縦軸(吐出体積の差)をyとすると、グラフ上の各点は座標(x,y)で表わされる。一方、変換テーブルは、濃度補正量Xを補正時間t[nsec]に変換するものであるから、図13に示すように、横軸を濃度補正量Xとし、縦軸を補正時間t[nsec]とする。そして、図9に示されるグラフ上の各点の座標(x,y)を座標(y,x)に置き換える。すなわち、y座標の値を変換テーブルの濃度補正量Xとし、x座標の値を変換テーブルの補正時間t[nsec]とする。かくして、図9に示されるグラフから図13に示される変換テーブルが作成される。
変換部317は、この変換テーブルの関数特性を用いて、チャネル番号iに対する濃度補正量Xを、チャネル番号iに対する補正時間t[nsec]に変換する。そして変換部317は、チャネル番号iと補正時間t[nsec]との対データを制御部318に出力する。また変換部317は、チャネル番号発生部314に対して更新を指令する。この指令を受けて、チャネル番号発生部314は、次のチャネル番号iを発生する。新たなチャネル番号iが発生されると、演算部316は、そのチャネル番号iとパラメータaとから濃度補正量Xを算出する。濃度補正量Xが算出されると、変換部317は、その濃度補正量Xを補正時間t[nsec]に変換する。そして変換部317は、チャネル番号iと補正時間t[nsec]との対データを制御部318に出力する。かくして、チャネル番号発生部314、演算部316及び変換部317の作用により、パラメータ出力部310から出力された1つのパラメータaに対するチャネル番号i別の補正時間t[nsec]が求められる。
制御部318は、パラメータ出力部310からパラメータaを入力する。また制御部318は、変換部317からチャネル番号iと補正時間t[nsec]との対データを入力する。その入力シーケンスは、先ず、パラメータaが入力される。次いで、チャネル番号“1”から“n”までのチャネル番号iと、そのチャネル番号iに対する補正時間t[nsec]との対データが入力される。
最初のパラメータa1が入力されると、制御部318は、記憶部315にこのパラメータa1を記憶した補正データテーブルTA1を作成する。その後、制御部318は、チャネル番号iと補正時間t[nsec]との対データが入力される毎に、この対データを補正データテーブルTA1に格納する。
次のパラメータa2が入力されると、制御部318は、記憶部315にこのパラメータa2を記憶した補正データテーブルTA2を作成する。その後、制御部318は、チャネル番号iと補正時間t[nsec]との対データが入力される毎に、この対データを補正データテーブルTA2に格納する。
次のパラメータa3が入力された場合も、制御部318は上記と同様に動作する。
パラメータ出力部310から出力終了の通知を受けると、制御部318は、最後に作成した補正データテーブルTAxを記憶部315に記憶させる。その後、制御部318は、記憶部315に記憶された補正データテーブルTA1,TA2,…,TAxを作成順にプリンタ200へと出力するように通信部313に指令する。
この指令を受けて、通信部313は、制御部318に補正データの読出しを指令する。この指令を受けて、制御部318は、最初に作成した補正データテーブルTA1を記憶部315から読み出し、通信部313へと出力する。通信部313は、制御部318から受け取った補正データテーブルTA1を含むテストコマンドを作成し、通信回線400を介してプリンタ200へと出力する。
テストコマンドを受信したプリンタ200は、そのコマンドに含まれる補正データテーブルTAの補正データ(チャネル番号iと補正時間t[nsec]との対データ群)を補正データメモリ220にセットする。そしてプリンタ200は、この補正データでチャネルi毎に基準パルス波形の定常時間Taから拡大時間(T1-Ta)に切り替わる時点t1を補正して、ベタ画像のテスト印刷を行う。
制御部318は、続いて2番目に作成した補正データテーブルTA2を記憶部315から読み出し、通信部313へと出力する。通信部313は、制御部318から受け取った補正データテーブルTA2を含むテストコマンドを作成し、通信回線400を介してプリンタ200へと出力する。以後、制御部318は、補正データテーブルTA(TA3,TA4,…)を順次読み出して通信部313へと出力する処理を繰り返し、通信部313は、制御部318から受け取った補正データテーブルTAを含むテストコマンドを作成し、プリンタ200へと出力する処理を繰り返す。そして制御部318は、最後に作成した補正データテーブルTAxを通信部313へと出力したならば、パラメータ出力部310から受け取ったパラメータaのリストを作成し、表示部311に表示させる。
パラメータaのリストを確認したオペレータは、テスト印刷の結果から、適正な補正データが得られたパラメータaを選択する。リストからパラメータaが選択されると、選択部312は、そのパラメータaが選択されたことを制御部318に通知する。この通知を受けて、制御部318は、選択されたパラメータaがセットされた補正データテーブルTAを記憶部315から読み出し、通信部313に出力するとともに補正データの本設定を指令する。この指令を受けて、通信部313は、制御部318から受け取った補正データテーブルTAを含む設定コマンドを作成し、通信回線400を介してプリンタ200へと出力する。
設定コマンドを受信したプリンタ200は、そのコマンドに含まれる補正データテーブルTAの補正データ(チャネル番号iと補正時間t[nsec] との対データ群)を補正データメモリ220にセットする。以後、プリンタ200は、この補正データでチャネルi毎に基準パルス波形の定常時間Taから拡大時間(T1-Ta)に切り替わる時点t1を補正して、印刷を行う。ここに、制御部318及び通信部313は、補正データを補正データメモリ220に設定する設定部として機能する。
このように、情報処理装置300において補正データ設定機能を動作させることにより、プリンタ200では、パラメータテーブルに設定されたパラメータaの数だけ、テスト印刷が行われる。すなわち、パラメータaとチャネル番号iとを用いてチャネル番号i別に算出された濃度補正量Xで各チャネルのノズル8から吐出されるインクの吐出量が調整されながら、ベタ画像を印刷する動作がパラメータaの数だけ繰り返される。
このテスト印刷の結果から、オペレータは、濃度ムラが最も生じない補正データは、どのパラメータaのときかを判断することができる。そして、オペレータが最適なパラメータaを選択すると、その最適なパラメータaを基にチャネル番号i別に算出された濃度補正量Xを得るための補正時間t[nsec]が、プリンタ200の補正データメモリ220にセットされる。かくしてオペレータは、複数のパラメータaを設定し、その中から最適なパラメータを選択するという容易な作業で、ヘッド100の各ノズル8にそれぞれ対応した各アクチュエータに印加される駆動パルス信号のパルス幅を補正するための補正データを設定することができる。
ところで、テスト印刷は、プリンタ200がシリアルプリンタの場合とラインプリンタの場合とで、その手法を変える必要がある。例えばシリアルプリンタの場合、パラメータa毎にベタ画像を1パス印刷しただけでは濃度差が目立たず、最適なパラメータaを選択するのは困難である。そこでシリアルプリンタの場合には、ヘッド100の幅で同じベタ画像を最低で2パス、好ましくは3パス印刷する。このとき各パスの間隔がヘッド100のドット間隔と等しくなるようにパス間を近接させる。パス間が近接するように印刷することよって、仮に濃度が均一であったならば全面一様な印字に見え、パス間を判別できなくなる。このためユーザは、濃度が均一かどうかを容易に判断可能となる。
図14は、プリンタ200がシリアルプリンタの場合において、そのCPU201が実行するテスト印刷処理の手順を示す流れ図である。なお、図14に示すとともに以下に説明する処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
先ずCPU201は、Act1として情報処理装置300からのコマンドを待機する。コマンドを受信すると(Act1にてYES)、CPU201は、Act2としてそのコマンドがテストコマンドであるか否かを判断する。テストコマンドである場合(Act2にてYES)、CPU201は、Act3としてそのテストコマンドに含まれる補正データテーブルTAの補正データを補正データメモリ220にセットする。そしてCPU201は、Act4としてこの補正データメモリ220にセットされた補正データを用いて、ベタ画像のn(n≧2)パス印刷を制御する。nパス印刷が終了すると、CPU201はAct1に戻り、次のコマンドを待機する。CPU201は、テストコマンドを受信する毎に、上記Act3及びAct4の処理を繰り返し実行する。
一方、受信コマンドがテストコマンドでない場合(Act2にてNO)、CPU201は、Act5として設定コマンドであるか否かを判断する。設定コマンドである場合、CPU201は、Act6としてその設定コマンドに含まれる補正データテーブルTAの補正データを補正データメモリ220にセットする。以上で、CPU201は、テスト印刷処理の手順を終了する。
シリアルプリンタにおいて、図14に示す手順のテスト印刷処理が実行されることにより、例えば図15に示すようなテスト印刷画像500が得られる。このテスト印刷画像500は、パラメータaがa1(補正傾き+1),a2(補正傾き0),a3(補正傾き-1),a4(補正傾き-2)の4つの場合であり、ベタ画像をそれぞれ3パス印刷した場合である。図15において、矢印pは用紙の搬送方向を示し、矢印qはインクジェットヘッド100の走査方向を示し、記号hはインクジェットヘッド100の幅を示している。
図15から明らかなように、補正データが適正でない場合(パラメータaがa1,a2またはa4の場合)、3パス印刷することで、1パス目と2パス目及び2パス目と3パス目の境界で濃度差が目立つ。これに対し、補正データが適正である場合(パラメータaがa3の場合)、には、パスの境界でも濃度差が目立たない。その結果、オペレータが最適なパラメータa3を選択し易くなる。
一方、ヘッドを移動して印字することができないラインプリンタの場合には、先に説明したシリアルプリンタの場合のように複数パスを利用してヘッドの右端と左端が隣接する印字を行うことができない。そこで、各パラメータaに対応するベタ画像を、パラメータaを変更しながら用紙の搬送方向に連続して印刷する。ラインプリンタの場合にはテスト印刷中に隙間なくパラメータaを変更しなくてはならないが、テスト印刷が始まってしまうと次のパラメータaを受信する時間的余裕が無い。このため補正データメモリ220の代わりにRAM203をテスト印刷用の補正データメモリとして利用し、複数のパラメータaに対応する補正データテーブルTAnを予め全てRAM203に記憶してからテスト印刷を開始する。テスト印刷が終了して補正データを決定した後、通常印字時の補正データメモリには補助記憶デバイス中の補正データメモリ220を利用する。
図16は、プリンタ200がラインプリンタの場合において、そのCPU201が実行するテスト印刷処理の手順を示す流れ図である。なお、図16に示すとともに以下に説明する処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
先ずCPU201は、Act11として情報処理装置300からのコマンドを待機する。コマンドを受信すると(Act11にてYES)、CPU201は、Act12としてそのコマンドがテストコマンドであるか否かを判断する。テストコマンドである場合(Act12にてYES)、CPU201は、Act13としてパラメータa1~axに対応する補正データテーブルTA1~TAxを受信し、RAM203に格納する。次にCPU201は、Act14として印刷領域の先頭ラインymと最終ラインy(m+1)を決定する。そしてCPU201は、Act15として先頭ラインymと最終ラインy(m+1)とが区分された印刷領域に対する補正データとして、対応する補正データテーブルTA(m+1)の補正データをRAM203から読み出し、ヘッド駆動回路101の補正データ出力部111にセットする。なお、mは初期値が0のカウント値である。
次にCPU201は、Act16として先頭ラインymと最終ラインy(m+1)との間のベタ印字を開始する。そして最終ラインy(m+1)を印字したならば、CPU201は、Act17としてカウント値mを“1”だけカウントアップする。そしてCPU201は、Act18としてそのカウント値mが最大値“x”に達したか否かを判断する。最大値 “x”は、情報処理装置300にて作成された補正データテーブルTA1,TA2,…,TAxの数である。最大値“x”は、例えばテストコマンドとともに事前にプリンタ200に通知される。
カウント値mが最大値“x”に達していない場合(Act18にてNO)、CPU201は、Act14に戻り、次の印刷領域の先頭ラインymと最終ラインy(m+1)を決定するとともに対応する補正データテーブルTA(m+1)の補正データをRAM203から読み出し、ヘッド駆動回路101の補正データ出力部111にセットして引き続きベタ印字を行う。CPU201は、カウント値mが最大値“x”に達するまでは、上記Act14乃至Act17の処理を繰り返し実行する。この間、各領域間の用紙送り方向の間隔は、領域内の用紙送り方向のドットの間隔と等しくする。すなわちCPU201はAct16、Act17、Act14、Act15の処理を1ドットを印刷する時間内に行わなくてはならない。CPU201の処理速度がこれに足りない場合には、Act16、Act17、Act14、Act15の処理の全部または一部をハードウェアに置き換えるとよい。または、最初の印刷領域を印刷した後、次の印刷領域を印刷する間に一旦用紙を止めて戻し、印刷領域と隙間なくつながるように次の印刷領域を印刷するようにしてもよい。
カウント値mが最大値“x”に達すると(Act18にてYES)、CPU201はAct1に戻り、次のコマンドを待機する。
一方、受信コマンドがテストコマンドでない場合(Act12にてNO)、CPU201は、Act19として設定コマンドであるか否かを判断する。設定コマンドである場合、CPU201は、Act20としてその設定コマンドに含まれる補正データテーブルTAの補正データを補正データメモリ220にセットする。以上で、CPU201は、テスト印刷処理の手順を終了する。
ラインプリンタにおいて、図16に示す手順のテスト印刷処理が実行されることにより、例えば図17に示すようなテスト印刷画像600が得られる。このテスト印刷画像600は、パラメータaがa1(補正傾き+1),a2(補正傾き0),a3(補正傾き-1),a4(補正傾き-2)の4つの場合であり、各パラメータa1,a2,a3,a4に対応する領域についてはそれぞれその領域に対して設定された補正データで補正をしながらベタ画像を1パス印刷した場合である。図17において、矢印pは用紙の搬送方向を示し、記号hはインクジェットヘッド100の幅を示している。
図17から明らかなように、異なるパラメータaを用いて算出された補正データで補正されたベタ画像を補正量の順に印刷することにより、領域ごとに右に向かって濃い印字(パラメータa1及びパラメータa2)又は左に向かって濃い印字(パラメータa4)となる。左右のどちらが濃いのかは単独の印字だけでは判別困難だが、すぐ上又は下に隙間なく印刷された比較すべきベタ画像があることで相対的に判別が可能となる。この印字を見れば右に向かって濃い印字と左に向かって濃い印字の境目に当たるパラメータa3が均一な印字となっていることが推定でき、オペレータが最適なパラメータa3を選択し易くなる。
以上詳述したように、本実施形態の補正データ設定機能301によれば、ヘッド100の各ノズル8にそれぞれ対応した各アクチュエータに印加される駆動パルス信号のパルス幅を補正するための補正データを容易に設定することができる。その結果、ヘッド100の構造上のばらつき等に起因する濃度ムラをなくすことができるので、高品質な印刷が可能なインクジェットプリンタを提供することができる。
前記実施形態では、補正データ設定機能301において、直線補間により補正データを算出する場合を例示した。補正データの算出方法は、直線補間に限定されるものではない。例えば複数の制御点を通るスプライン曲線でチャネル番号iに対する濃度補正量Xを補間するスプライン補間の技術を利用してもよい。
図18は、一次のスプライン補間におけるスプライン曲線を示す。一次のスプライン補間の場合、スプライン曲線は、第1の直線R1と第2の直線R2とからなる折れ線である。この場合、パラメータ出力部310からは、折れ線の両端となるチャネル番号i=1に対する濃度補正量r1及びチャネル番号i=nに対する濃度補正量r3と、折れ線の頂点となるチャネル番号i=kに対する濃度補正量r2とをパラメータとして出力すればよい。演算部316では、チャネル番号発生部314から発生するチャネル番号iと、3つのパラメータr1,r2,r3とを用いて、スプライン補間の演算式によりチャネルch.iに対する濃度補正量Xが算出される。スプライン補間の演算式は、式(2)で表わされる。
X=F(i,r1,r2,r3) …(2)
なお、F(i,r1,r2,r3)は、スプライン曲線である。
図18に示される折れ線のスプライン曲線を採用した場合、チャネル番号i=1の補間点(1,r1)からチャネル番号i=kの補間点(k,r2)までは、第1の直線R1によって補間される。チャネル番号i=kの補間点(k,r2)からチャネル番号i=nの補間点(n,r3)までは、第2の直線R2によって補間される。
したがってオペレータは、3つのパラメータr1,r2,r3を指定するだけで、ノズル8の並び方向に対して両端部側の印刷濃度が薄く、中央付近の印刷濃度が濃いというヘッド100に対して濃度の不均一を補正することが可能な補正データを容易に得ることができる。
なお、図18に示される折れ線のスプライン曲線F(i,r1,r2,r3)は、次数を上げることによって、図19に示すように滑らかな山型の曲線となる。山型のスプライン曲線F(i,r1,r2,r3)を用いることにより、より滑らかに濃度の不均一を補正することが可能な補正データを容易に得ることができる。
また、図20に示すように、補間点(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)、(x5,y5)を増やすことで、スプライン曲線Fを波型にすることもできる。この場合、パラメータ出力部310からは、各補間点(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)、(x5,y5)をパラメータaとして出力すればよい。波型のスプライン曲線Fを用いることにより、ノズル8の配列方向に対して一部分の印刷濃度が濃く、他の部分の印刷濃度が低いというような濃度不均一にも対応可能な補正データを容易に得ることができる。
ところで、ヘッド100の製造上の原因だけでなく印刷する用紙の皺等が原因で、空間方向に周期的な濃度ムラ(周期ムラ)が生じる場合がある。このような場合には、演算部316において、周期関数を用いて濃度補正量Xを算出すればよい。また、このような濃度ムラは、ヘッド100のノズル配列方向の全域に亙って生じる場合は少なく、部分的に生じる場合が多い。そこで、窓関数を用いて補正を適用する範囲を定めることが望ましい。
図21は、周期関数と窓関数とを用いた演算部316の回路構成を示すブロック図である。演算部316は、周期関数演算部316Aと、窓関数演算部316Bと、乗算器316Cとを含む。
周期関数演算部316Aは、パラメータ出力部310から、パラメータとして周期τ、振幅A及び位相Φを入力する。また周期関数演算部316Aは、チャネル番号発生部314から発生されるチャネル番号iを入力する。そして周期関数演算部316Aは、(3)式によりチャネル番号i毎に周期関数値αを算出する。
α=Asin{(i/τ)+Φ} …(3)
このような周期関数値αは、図22の(a)で示される波形となる。
窓関数演算部316Bは、パラメータ出力部310から、パラメータとして窓位置pと窓幅hとを入力する。また窓関数演算部316Bは、チャネル番号発生部314から発生されるチャネル番号iを入力する。そして窓関数演算部316Bは、図22(b)に示すように、窓位置pとなるチャネル番号iを中心に窓幅hを有限区間とする窓関数G(i)を算出する。
乗算器316Cは、周期関数演算部316Aで算出された周期関数値αに窓関数演算部316Bで算出された窓関数G(i)を掛け合わせる。その結果、演算部316は、図22(c)に示すように、窓関数G(i)の有限区間内で周期関数値αを濃度補正量Xとして変換部317へと出力する。
この実施形態の場合、オペレータは、パラメータとして周期τ、振幅A及び位相Φと、窓位置pと窓幅hとを指定するだけで、空間方向に周期的な濃度ムラを補正するための補正データを容易に得ることができる。
なお、図21に示した例は、窓関数G(i)の有限区間内で周期τが1種類の場合の波形からなる周期関数値αを演算部316が算出した。さらに、複数種類の周期τを加算した周期関数値αを演算部316が算出することで、波形形状が異なる補正データを生成することも可能である。
図23は、周期τ1に対して周期τ2、τ3及びτ4がそれぞれ1/2,1/3,1/4の関係にある場合の演算部316の回路構成を示すブロック図である。演算部316は、第1~第4の周期関数演算部316A1~316A4と、窓関数演算部316Bと、乗算器316Cと、加算器316Dを含む。
周期関数演算部316A1は、パラメータ出力部310から、パラメータとして周期τ1、振幅A1及び位相Φ1を入力する。また周期関数演算部316A1は、チャネル番号発生部314から発生されるチャネル番号iを入力する。そして周期関数演算部316A1は、(4)式によりチャネル番号i毎に周期関数値α1を算出する。
α1=A1sin{(i/τ1)+Φ1} …(4)
周期関数演算部316A2は、パラメータ出力部310から、パラメータとして周期τ2、振幅A2及び位相Φ2を入力する。また周期関数演算部316A2は、チャネル番号発生部314から発生されるチャネル番号iを入力する。そして周期関数演算部316A2は、(5)式によりチャネル番号i毎に周期関数値α2を算出する。
α2=A2sin{(i/τ2)+Φ2} …(5)
周期関数演算部316A3は、パラメータ出力部310から、パラメータとして周期τ3、振幅A3及び位相Φ3を入力する。また周期関数演算部316A3は、チャネル番号発生部314から発生されるチャネル番号iを入力する。そして周期関数演算部316A3は、(4)式によりチャネル番号i毎に周期関数値α3を算出する。
α3=A3sin{(i/τ3)+Φ3} …(6)
周期関数演算部316A4は、パラメータ出力部310から、パラメータとして周期τ4、振幅A4及び位相Φ4を入力する。また周期関数演算部316A4は、チャネル番号発生部314から発生されるチャネル番号iを入力する。そして周期関数演算部316A4は、(5)式によりチャネル番号i毎に周期関数値α4を算出する。
α4=A4sin{(i/τ4)+Φ4} …(7)
加算器316Dは、各周期関数演算部316A1~316A4で算出された周期関数値α1,α2,α3及びα4を加算する。窓関数演算部316Bは、図21に示したものと同様である。乗算器316Cは、加算器316Dで算出された周期関数値α1,α2,α3及びα4の合算値に窓関数演算部316Bで算出された窓関数G(i)を掛け合わせる。そして乗算器316Cは、その乗算結果を変換部317に出力する。
また、図21に示した周期的な濃度補正を、図18,図19,図20に示したスプライン曲線Fによる濃度補正と組み合わせることも可能である。
図24は、周期的な濃度補正と図18または図19に示すスプライン曲線Fによる濃度補正と組み合わせた場合の演算部316の回路構成を示すブロック図である。演算部316は、前記の周期関数演算部316A、窓関数演算部316B及び乗算器316Cと、パラメータr1,r2,r3に対して前記(2)式によりスプライン補間の演算を行うスプライン補間演算部316Eと、加算器316Fとを含む。
加算器316Fは、乗算器316Cの出力とスプライン補間演算部316Eの出力とを加算する。そして加算器316Fは、その加算結果である濃度補正量Xを変換部317に出力する。
因みに、図20に示すスプライン曲線Fによる濃度補正と組み合わせた場合も、パラメータ出力部310からスプライン補間演算部316Eに出力されるパラメータを変更するだけで、同様な回路構成で対応することができる。
なお、補正データ設定機能を搭載した情報処理装置の譲渡は一般に、補正データ設定機能301を実現させるためのプログラムPがROMに記憶された状態にて行われる。しかしこれに限らず、コンピュータ装置が備える書き込み可能な記憶デバイスに、このコンピュータ装置とは個別に譲渡されたプログラムPがユーザなどの操作に応じて書き込まれてもよい。プログラムPの譲渡は、リムーバブルな記録媒体に記録して、あるいはネットワークを介した通信により行うことができる。記録媒体は、CD-ROM,メモリカード等のようにプログラムPを記憶でき、かつ装置が読み取り可能であれば、その形態は問わない。また、プログラムPのインストールやダウンロードにより得る機能は、装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。
例えば前記実施形態では、補正データ設定機能301を情報処理装置300が有する場合を示したが、プリンタ200が補正データ設定機能301を有してもよい。この場合、補正データ設定機能301を実現させるためのプログラムPは、ROM202あるいは補助記憶デバイス204に記憶される。このとき、補正データ設定機能301内の各回路は、各作用となる機能を有する。また、ヘッド駆動回路101が補正データ設定機能301を有してもよい。
また、前記実施形態では、プリンタ200が補正データメモリ220を有する場合を示したが、ヘッド100が補正データメモリ220を備えていてもよい。
また、前記実施形態では、画像データ出力部110、補正データ出力部111、基準信号出力部112、駆動順序制御部113はインクジェットヘッド100のヘッド駆動回路101内にあるとしたが、このうちいくつか、又は全てはプリンタ200内のインクジェットヘッド100内では無い他の場所にあってもよい。インクジェットヘッド100、ヘッド駆動回路101とプリンタ200の他の部分との境界は任意に取ることができる。
補正データ設定機能301およびその各要素は、プロセッサ、メモリ等のハードウェアと専用のアプリケーションプログラムによって実現しても良く、専用のハードウェアによって実現しても良い。また各要素の一部をハードウェアによって実現し他の部分をプログラムによって実現しても良い。
補正データ設定機能301のパラメータ出力部310は、情報処理装置300が備える入力デバイス(キーボード、タッチパネル等)を主体に構成しても良く、不揮発メモリ等に記憶したデータであっても良い。
情報処理装置300は補正データをプリンタ200に与える機能と印刷用画像データをプリンタ200に与える機能を共に備えていても良いし、情報処理装置300は補正データをプリンタ200に与える機能だけを持ち印刷用画像データは別の手段でプリンタ200に与えても良い。
補正データ設定機能301はユーザが随時利用可能に提供しても良いし、ユーザには解放されずサービスマンだけが利用可能に提供される機能であっても良く、或いはプリンタまたはヘッドの製造工程で利用される機能であっても良い。
情報処理装置300はサービスマンが利用可能な治具であっても良いし、プリンタまたはヘッドの製造工程で利用される治具であっても良い。
また、テスト印刷の手法は、前記実施形態で説明した手法に限定されるものではない。例えばラインプリンタの場合において、ヘッド100のノズル配列方向の幅が印刷幅よりも小さい場合には、複数のヘッド100をノズル配列方向に沿って並べる。そして先ず、ヘッド100毎に各パラメータに対応するベタ画像を印刷して、良好な補正データを選択する。次いで、その選択された補正データを用いて、全ヘッドでベタ画像を印刷する。その結果、ヘッド間に濃度差があれば、そのヘッド同士で各パラメータに対応するベタ画像を再度印刷して、濃度差が生じない最適な補正データを選択する。
また、前記実施形態では、シェアモードタイプのヘッド100を用いたプリンタを例示したが、隣接するチャネルでアクチュエータを共有しないタイプのヘッド100を用いたプリンタにも、本発明の補正データ設定機能301を適用できるのは言うまでもないことである。
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]インクジェットヘッドの各ノズルにそれぞれ対応した各アクチュエータに印加される駆動パルス信号のパルス幅を補正するための補正データを記憶するメモリに前記補正データを設定する補正データ設定装置であって、前記各ノズルを個々に識別するチャネル番号を順次発生する発生部と、前記各ノズルの配列方向に対する補正量の特性を表す演算で必要なパラメータを出力する出力部と、前記発生部から発生される前記チャネル番号毎に、前記出力部から出力される前記パラメータを用いて前記演算を行い、前記補正量を算出する演算部と、前記演算部で前記チャネル番号毎に算出される前記補正量を前記補正データに変換する変換部と、前記変換部により前記チャネル番号毎に得られる前記補正データを前記メモリに設定する設定部と、を具備したことを特徴とする補正データ設定装置。
[2]前記出力部は、複数の値をパラメータとして出力するものであり、前記パラメータとして出力される複数の値の中からいずれか1つの値を選択する選択部、をさらに具備し、前記設定部は、前記選択部で選択された値のパラメータを用いて算出された前記補正量から得られる補正データを前記メモリに設定する、ことを特徴とする付記[1]記載の補正データ設定装置。
[3]前記出力部から出力されるパラメータ毎に、そのパラメータを用いた演算により算出された補正量を変換して得られたチャネル番号毎の前記補正データを記憶する記憶部と、この記憶部で記憶された補正データでインクジェットヘッドの各ノズルにそれぞれ対応した各アクチュエータに印加される駆動パルス信号のパルス幅を補正してテスト印刷を行わせる制御部と、をさらに具備し、前記設定部は、前記選択部で選択されたパラメータに対する前記補正データを前記記憶部から前記メモリに設定する、ことを特徴とする付記[2]記載の補正データ設定装置。
[4]前記演算部は、前記各ノズルの配列方向に対して補正量が直線状に変化する特性を表す演算、またはスプライン曲線状に変化する特性を表す演算により前記補正量を算出することを特徴とする付記[1]乃至[3]のうちいずれか1に記載の補正データ設定装置。
[5]前記演算部は、前記各ノズルの配列方向に対して補正量が周期的に変化する特性を表す周期関数演算及びその特性の有限区間を設定する窓関数により前記補正量を算出することを特徴とする付記[1]乃至[3]のうちいずれか1に記載の補正データ設定装置。
[6]インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの各ノズルにそれぞれ対応した各アクチュエータに印加される駆動パルス信号のパルス幅を補正するための補正データを記憶するメモリと、前記各ノズルを個々に識別するチャネル番号を順次発生する発生部と、前記各ノズルの配列方向に対する補正量の特性を表す演算で必要なパラメータを出力する出力部と、前記発生部から発生される前記チャネル番号毎に、前記出力部から出力される前記パラメータを用いて前記演算を行い、前記補正量を算出する演算部と、前記演算部で前記チャネル番号毎に算出される前記補正量を前記補正データに変換する変換部と、前記変換部により前記チャネル番号毎に得られる前記補正データを前記メモリに設定する設定部と、を具備したことを特徴とするインクジェットプリンタ。
[7]インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの各ノズルにそれぞれ対応した各アクチュエータに印加される駆動パルス信号のパルス幅を補正するための補正データを記憶するメモリと、プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記ノズルの配列方向に対する補正量の特性を表す演算で必要な複数のパラメータ毎に算出される補正データで前記インクジェットヘッドの各ノズルにそれぞれ対応した各アクチュエータに印加される駆動パルス信号のパルス幅を補正してテスト印刷を行う手段と、前記テスト印刷の結果を基に選択された補正データを前記メモリに設定する手段と、を具備することを特徴とするインクジェットプリンタ。