以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。以下で説明する複数の実施形態において、特に説明しない一実施形態の構成は、他の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図1は、ポンプ装置1の一実施形態を示す図である。図1に示すように、機械装置の一例であるポンプ装置1は、流体(本実施形態では、液体)を移送する回転機械の一例であるポンプ2と、ポンプ2を動作させるモータ(電動機)3とを備える機械装置である。本実施形態では、ポンプ2は横軸多段ポンプである。ポンプ2は、回転軸10Aと、回転軸10Aに固定された複数の(本実施形態では、3段)羽根車6A~6Cと、これら複数の羽根車6A~6Cを収容するポンプケーシング7とを備えている。以下、ポンプケーシング7を単にケーシングと呼ぶことがある。
以下の実施形態では、機械装置の一例として、液体を移送するポンプ装置1について説明するが、機械装置は、気体を移送する真空ポンプ装置であってもよい。機械装置はポンプ装置には限定されない。
回転軸10Aは駆動源としてのモータ3に連結されている。モータ3は、その駆動により、駆動軸10Bおよび回転軸10Aを回転する。羽根車6A~6Cは回転軸10Aとともに回転する。モータ3は、回転軸10Aに連結された駆動軸10Bと、駆動軸10Bに固定された回転子(ロータ)11と、回転子11を取り囲むように配置された固定子(ステータ)12と、これら回転子11および固定子12を収容するモータケーシング13とを備えている。固定子12はモータケーシング13の内周面に固定されている。駆動軸10Bは、回転軸10Aと一直線上に並ぶように回転軸10Aに連結されている。以下、本明細書において、回転軸10Aおよび駆動軸10Bを区別せずに共通軸10と呼ぶことがある。
ポンプケーシング7は、吸込口15を有する吸込ケーシング16と、吐出口17を有する吐出ケーシング18と、吸込ケーシング16と吐出ケーシング18との間に配置された中間ケーシング20とを備えている。吸込ケーシング16の吸込口15は共通軸10の軸線CL方向に開口しており、吐出ケーシング18の吐出口17は軸線CL方向と垂直な方向に開口している。
図1に示すように、吸込ケーシング16、中間ケーシング20、および吐出ケーシング18は、この順に直列的に配列されており、複数の締結部材(例えば、通しボルト)8によって互いに締結されている。図1では、単一の締結部材8が描かれている。
回転軸10Aに固定された羽根車6A~6Cが回転すると、液体は吸込口15を通じてポンプケーシング7内に導入される。ポンプケーシング7内に導入された液体は、羽根車6A~6Cによって段階的に昇圧され、吐出口17を通じてポンプ2の外部に移送される。以下、羽根車6A~6Cを区別せずに単に羽根車6と呼ぶことがある。羽根車6は、樹脂から構成されてもよく、または、金属から構成されてもよい。
本実施形態では、ポンプケーシング7は樹脂から構成されている。樹脂の一例として、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、またはポリフェニレンスルファイド(PPS)を挙げることができる。樹脂製のポンプケーシング7は、金属製のポンプケーシングよりも軽量であり、かつポンプケーシング7の材料原価および加工費を低くすることができる。上述したように、ポンプケーシング7には、その内部を移動する液体の高い圧力が作用するため、ポンプケーシング7は耐圧性の高い構造を有しなければならない。
ポンプケーシング7の耐圧性を高めるために、ポンプケーシング7の肉厚を厚くする方法が考えられる。しかしながら、樹脂の肉厚を厚くすると、製造工程において、溶けた樹脂が完全に固まるまでに多大な時間を要する。さらに、この場合、樹脂には、“ひけ”と呼ばれる窪みが形成されるおそれがある。最悪の場合、樹脂の内部に空洞が形成されるおそれがある。また、樹脂には、クリープ変形と呼ばれる樹脂特有の現象が生じうる。クリープ変形は、高い圧力が樹脂に長期間、作用し続けた結果、樹脂が塑性変形してしまう現象である。“ひけ”および/または空洞は、クリープ変形を促進するおそれがある。樹脂にクリープ変形が発生すると、ポンプケーシングが破損し、または液体がポンプケーシングから漏洩するおそれがある。
本実施形態に係るポンプケーシング7は、上述した問題点を解決するための構造を有している。本実施形態では、吸込ケーシング16、中間ケーシング20、および吐出ケーシング18のいずれも、基本的に同様の構造を有しているため、以下、ポンプケーシング7の中間ケーシング20の構造について図面を参照して説明する。
図2は、中間ケーシング20の拡大図である。図2に示すように、樹脂製の中間ケーシング20は、内部に羽根車6Bが収容可能な大きさを有する環状の内周壁(内側壁または第1の周壁)21と、内周壁21の外側に配置された環状の外周壁(外側壁または第2の周壁)22と、内周壁21と外周壁22との間に配置され、かつ内周壁21を補強するように、内周壁21および外周壁22に固定された補強部材23とを備えている。これら内周壁21、外周壁22、および補強部材23は、樹脂から構成されており、一体成形部材である。
内周壁21の厚さおよび外周壁22の厚さは、ポンプケーシング7の強度上、必要に応じて決定される。一実施形態では、内周壁21の厚さおよび外周壁22の厚さは、同一であってもよい。この場合、ポンプケーシング7の強度上の観点から、最も厚くすべきポンプケーシング7の部位の厚さを決定し、決定されたポンプケーシング7の部位の厚さに合わせて内周壁21の厚さおよび外周壁22の厚さを均一にする。結果として、ポンプケーシング7の樹脂成型を容易に行うことができる。他の実施形態では、内周壁21の厚さおよび外周壁22の厚さは、異なっていてもよい。この場合、強度が必要なポンプケーシング7の部位の厚さを厚くし、強度が不要なポンプケーシング7の部位の厚さを薄くすることができる。結果として、ポンプケーシング7の材料費を抑えることができる。
一実施形態では、吸込ケーシング16、吐出ケーシング18、および中間ケーシング20のうちの少なくとも1つは、樹脂製の内周壁と、内周壁を取り囲むように配置された樹脂製の外周壁と、内周壁と外周壁との間に配置された樹脂製の補強部材とを備えてもよい。
図3は、図2のA線方向から見た図である。図4は、図2のB線方向から見た図である。図3および図4では、羽根車6Bおよび仕切部材50(後述する)の図示は省略されている。外周壁22は内周壁21を取り囲むように配置されている。内周壁21および外周壁22は、回転軸10Aと同心状に配置されており、二重壁を構成している。
図3および図4に示すように、補強部材23は、内周壁21の半径方向外側(すなわち、外周壁22の半径方向内側)に向かって延びる半径方向リブ23aと、内周壁21(および外周壁22)の軸方向に延びる軸方向リブ23bとを備えている。ここで、内周壁21(および外周壁22)の軸方向とは、回転軸10Aの軸線CL方向と平行な方向を意味する。
図3および図4に示す実施形態では、半径方向リブ23aの数は16であるが、半径方向リブ23aの数は本実施形態には限定されない。軸方向リブ23bの数は16であるが、軸方向リブ23bの数は本実施形態には限定されない。一実施形態では、中間ケーシング20は、軸方向リブ23bのみを備えてもよく、必要に応じて、半径方向リブ23aを備えてもよい。
本実施形態では、4つの軸方向リブ23bのそれぞれは、上述した締結部材8(図2参照)が貫通可能な大きさを有する貫通孔20aを有している。貫通孔20aは軸方向リブ23bと平行に延びている。ポンプケーシング7は、貫通孔20aに挿入された締結部材8の締め付けによって組み立てられる。
半径方向リブ23aおよび軸方向リブ23bは、内周壁21(および外周壁22)の周方向に沿って等間隔に交互に配置されている。互いに隣接する半径方向リブ23a(または軸方向リブ23b)の間には、軸方向リブ23b(または半径方向リブ23a)が配置されている。より具体的には、図2に示すように、半径方向リブ23aは、軸方向リブ23bの両端部26,27の間に配置されている。本実施形態では、半径方向リブ23aおよび軸方向リブ23bは一体成形部材である。
羽根車6Bによって昇圧された液体の高い圧力は羽根車6Bを取り囲む内周壁21に作用し、内周壁21には、応力が発生する。本実施形態では、中間ケーシング20は、二重壁構造を有しており、補強部材23を備えている。したがって、中間ケーシング20は、その耐圧性を向上することができ、中間ケーシング20の内部に作用する液体の圧力に耐えることができる。
本実施形態によれば、中間ケーシング20は、その肉厚を厚くすることなく、液体の圧力に十分に耐えることができる。したがって、中間ケーシング20の構成要素の肉厚を比較的薄くすることができ、樹脂の肉厚の厚肉化に起因する空洞の形成は発生しない。また、本実施形態では、ポンプケーシングの構成要素を覆う外側ケーシング(例えば、特許文献2参照)を不要とすることができるため、材料原価および加工費を抑えることができる。
図3および図4に示すように、中間ケーシング20は、内周壁21の内周面21aから回転軸10Aに向かって半径方向内側に延びる隔壁24を備えている。隔壁24は、前段のポンプ室と後段のポンプ室とを区画する部材である。隔壁24は環状形状を有しており、隔壁24の内周面24aには、後述するライナーリング60が装着されている。なお、図3および図4では、ライナーリング60の図示は省略されている。
隔壁24の厚さは、ポンプケーシング7の強度上、必要に応じて決定される。一実施形態では、隔壁24の厚さは、内周壁21の厚さおよび外周壁22の厚さと同一であってもよい。この場合、ポンプケーシング7の強度上の観点から、最も厚くすべきポンプケーシング7の部位の厚さを決定し、決定されたポンプケーシング7の部位の厚さに合わせて、隔壁24の厚さ、内周壁21の厚さ、および外周壁22の厚さを均一にする。結果として、ポンプケーシング7の樹脂成型を容易に行うことができる。他の実施形態では、隔壁24の厚さ、内周壁21の厚さ、および外周壁22の厚さは、異なっていてもよい。この場合、強度が必要なポンプケーシング7の部位の厚さを厚くし、強度が不要なポンプケーシング7の部位の厚さを薄くすることができる。結果として、ポンプケーシング7の材料費を抑えることができる。
図2に示す中間ケーシング20と、中間ケーシング20に隣接する吸込ケーシング16とは、互いに嵌合する構造を有している。同様に、図2に示す中間ケーシング20と、中間ケーシング20に隣接する吐出ケーシング18とは、互いに嵌合する構造を有している。
以下、ポンプケーシング7の嵌合構造について、図5を参照して説明する。図5は、ポンプケーシング7の嵌合構造を示す断面図である。内周壁21は、吸込ケーシング16側に位置する環状の端面21bと、吐出ケーシング18側に位置する環状の端面21cとを有している。吸込ケーシング16側の端面21bには、この端面21bから離間する方向(水平方向)に延びる環状突起28が形成されており、吐出ケーシング18側の端面21cには、この端面21cから離間する方向(水平方向)に延びる環状突起29が形成されている。環状突起29は、その内側に形成された環状傾斜面29aを有している。
吸込ケーシング16および吐出ケーシング18のそれぞれは、中間ケーシング20と同様の二重壁構造を有している。より具体的には、吸込ケーシング16は、内部に羽根車6が収容可能な大きさを有する環状の内周壁31と、内周壁31の外側に配置された環状の外周壁32と、内周壁31と外周壁32との間に配置され、かつ内周壁31を補強するように、内周壁31および外周壁32に固定された補強部材33とを備えている。補強部材33は、上述した軸方向リブ23bと同様の構造を有する軸方向リブ33bを備えている。図示しないが、補強部材33は、上述した半径方向リブ23aと同様の構造を有する半径方向リブを備えてもよい。
吐出ケーシング18は、内部に羽根車6が収容可能な大きさを有する環状の内周壁36と、内周壁36の外側に配置された環状の外周壁37と、内周壁36と外周壁37との間に配置され、かつ内周壁36を補強するように、内周壁36および外周壁37に固定された補強部材38とを備えている。補強部材38は、上述した半径方向リブ23aと同様の構造を有する半径方向リブ38a(図1参照)と、上述した軸方向リブ23bと同様の構造を有する軸方向リブ38bとを備えている。
図5に示すように、吸込ケーシング16の内周壁31は中間ケーシング20側に位置する環状の端面31aを有している。端面31aには、この端面31aから離間する方向に延びる環状突起34が形成されている。中間ケーシング20の環状突起28と吸込ケーシング16の環状突起34とは、互いに嵌合している。したがって、ポンプケーシング7が組み立てられると、環状突起28は端面31aに密着し、環状突起34は端面21bに密着する。
環状突起34は、その内側に形成された環状傾斜面34aを有しており、環状突起34が端面21bに密着すると、環状傾斜面34a、端面21b、および環状突起28との間には、環状のシール空間35が形成される。シール空間35には、環状のシール部材(例えば、Oリング)40が配置されており、シール部材40は、吸込ケーシング16と中間ケーシング20との間の隙間を封止している。
吐出ケーシング18の内周壁36は中間ケーシング20側に位置する環状の端面36aを有している。端面36aには、この端面36aから離間する方向に延びる環状突起39が形成されている。中間ケーシング20の環状突起29と吐出ケーシング18の環状突起39とは、互いに嵌合している。したがって、ポンプケーシング7が組み立てられると、環状突起39は端面21cに密着し、環状突起29は端面36aに密着する。
環状突起29が端面36aに密着すると、環状傾斜面29a、端面36a、および環状突起39との間には、環状のシール空間55が形成される。シール空間55には、環状のシール部材(例えば、Oリング)56が配置されており、シール部材56は、吐出ケーシング18と中間ケーシング20との間の隙間を封止している。
このような、ポンプケーシング7の嵌合構造は、吸込ケーシング16(および/または吐出ケーシング18)と中間ケーシング20との間に、中間ケーシング20とは異なる中間ケーシングが配置される構造であっても同様である。
図5に示すように、隔壁24は、内周壁21の軸方向における内周壁21の一端面21bと他端面21cとの間に配置されている。一実施形態では、隔壁24は、軸線CL方向における内周壁21の中央部分に配置されてもよい。半径方向リブ23aは、隔壁24と一直線上に並ぶように、内周壁21と外周壁22との間に配置されている。この一直線は、回転軸10Aの軸線CL方向と垂直な方向に延びる線分である。
内周壁21の内周面21aおよび隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bには、羽根車6の回転によって液体に付与された速度エネルギーを圧力エネルギーに変換するための複数の(本実施形態では、7つ)案内羽根45が固定されている。これら複数の案内羽根45は、樹脂製であり、内周壁21および隔壁24と一体的に形成されている。案内羽根45は、中間ケーシング20のみならず吸込ケーシング16および吐出ケーシング18にも設けられている。
複数の案内羽根45は、内周壁21の円周方向に沿って等間隔に配置されており、羽根車6の半径方向外側に位置している。複数の案内羽根45は螺旋状に延びており、複数の案内羽根45のそれぞれは湾曲形状を有している。互いに隣接する案内羽根45の間には、液体が通過する案内流路47が形成されている。
内周壁21の内周面21aおよび隔壁24の吸込ケーシング16側の面24cには、次段の羽根車6に導入される液体を整流するための複数の(本実施形態では、7つ)の戻り羽根46が固定されている。戻り羽根46は、中間ケーシング20のみならず吐出ケーシング18にも設けられている。
これら複数の戻り羽根46は、樹脂製であり、内周壁21および隔壁24と一体的に形成されている。複数の戻り羽根46は、内周壁21の円周方向に沿って等間隔に配置されており、螺旋状に延びている。複数の戻り羽根46のそれぞれは湾曲形状を有している。互いに隣接する戻り羽根46の間には、液体が通過する戻り流路48が形成されている。案内羽根45および戻り羽根46は案内装置を構成している。
図6は、本実施形態に係る中間ケーシング20の効果を説明するための比較例を示す図である。図7は、本実施形態に係る中間ケーシング20の効果を説明するための図である。図6に示すように、羽根車600が回転すると、液体は羽根車600によって昇圧される。液体の高い圧力は、羽根車600の半径方向外側に作用し、羽根車600を取り囲む壁部材601に作用する(図6の矢印参照)。
壁部材601の断面はL字形状を有しており、壁部材601の後方端部は自由端である。このように、壁部材601の前方端部から壁部材601の後方端部までの距離は長いため、液体の圧力に対する壁部材601の剛性は低くなる。したがって、液体の高い圧力が壁部材601に作用すると、壁部材601の変形量は大きくなり、壁部材601には、比較的大きな応力(第1応力)が発生する。
図7に示すように、本実施形態では、隔壁24は内周壁21の両端面21b,21cの間に配置されている。このような配置により、隔壁24から端面21c(および端面21b)までの距離は比較的短くなるため、内周壁21の剛性は向上する。したがって、液体の高い圧力Paが内周壁21に作用しても、内周壁21の変形量は小さく、内周壁21には、大きな応力は発生せずに、図6で説明した第1応力よりも小さな応力(第2応力)が発生する。
前段の羽根車6と後段の羽根車6との間の間隔(いわゆる、段間ピッチ)が同一である条件下では、図6および図7に示すように、本実施形態に係る内周壁21および外周壁22の受圧部分の長さL1は壁部材601の受圧部分の長さL2よりも短い。したがって、中間ケーシング20は液体の圧力Paに十分に耐えることができる。
液体は、複数段のポンプ室において段階的に昇圧され、外部に移送される。後段のポンプ室に発生する液体の圧力は、前段のポンプ室に発生する液体の圧力よりも大きいため、前段のポンプ室と後段のポンプ室との間には、差圧(いわゆる、段間差圧)が発生する。したがって、図7に示すように、隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bには、隔壁24の吸込ケーシング16側の面24cに向かって、段間差圧としての液体の圧力Pbが作用する。本実施形態によれば、案内装置(すなわち、案内羽根45および戻り羽根46)と隔壁24とは一体成形部材であり、案内装置は補強材(リブ)としての機能を果たす。したがって、中間ケーシング20は、高い剛性を有することができ、隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bに作用する液体の圧力Pbに耐えることができる。
本実施形態に係る中間ケーシング20は、高い剛性を有しているため、液体の高い圧力に十分に耐えることができ、クリープ変形の発生を抑制することができる。さらに、中間ケーシング20は、樹脂から構成されているため、ポンプ装置1の全体の軽量化を図ることができ、かつポンプ装置1の全体にかかるコストを低減することができる。
一実施形態では、中間ケーシング20は、一重壁構造を有してもよい。図8は、中間ケーシング20の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図8に示すように、中間ケーシング20は、一重壁としての周壁21と、隔壁24と、案内羽根45と、戻り羽根46とを備えている。図8に示す実施形態においても、周壁21、隔壁24、案内羽根45、および戻り羽根46は、一体成形部材であり、樹脂から構成されている。隔壁24は、周壁21の両端面21b,21cの間に配置されているため、周壁21は、周壁21に作用する液体の圧力Paに耐えることができる。
周壁21の厚さおよび隔壁24の厚さは、ポンプケーシング7の強度上、必要に応じて決定される。一実施形態では、周壁21の厚さおよび隔壁24の厚さは、同一であってもよい。この場合、ポンプケーシング7の強度上の観点から、最も厚くすべきポンプケーシング7の部位の厚さを決定し、決定されたポンプケーシング7の部位の厚さに合わせて周壁21の厚さおよび隔壁24の厚さを均一にする。結果として、ポンプケーシング7の樹脂成型を容易に行うことができる。他の実施形態では、周壁21の厚さおよび隔壁24の厚さは、異なっていてもよい。この場合、強度が必要なポンプケーシング7の部位の厚さを厚くし、強度が不要なポンプケーシング7の部位の厚さを薄くすることができる。結果として、ポンプケーシング7の材料費を抑えることができる。
案内装置(案内羽根45および戻り羽根46)と隔壁24とは一体成形部材であるため、案内羽根45および戻り羽根46は隔壁24を補強する補強材としての機能を果たすことができる。したがって、隔壁24は、隔壁24に作用する液体の圧力Pbに耐えることができる。このように、中間ケーシング20は、周壁21に固定された隔壁24と、隔壁24に固定された案内羽根45および戻り羽根46とを備えているため、中間ケーシング20は、高い剛性を有することができる。
図9は、仕切部材50を示す図である。図1、図2、および図9に示すように、ポンプ2は、案内羽根45と戻り羽根46とを仕切る仕切部材50をさらに備えている。仕切部材50は、環状のプレート部材であり、戻り羽根46に隣接して配置されている。仕切部材50は、樹脂から構成されており、中間ケーシング20とは別部材である。一実施形態では、仕切部材50は、ステンレス鋼などの金属から構成されてもよい。
図10は、仕切部材50と羽根車6との位置関係を示す図である。図10に示すように、仕切部材50は、羽根車6の背面6aに隣接しており、案内羽根45と戻り羽根46との間に配置されている。案内羽根45の端面45aは、羽根車6の背面6aよりも軸線CL方向において、戻り羽根46側に位置している。したがって、仕切部材50が案内羽根45と戻り羽根46との間に配置されると、羽根車6と仕切部材50との間には隙間が形成される。結果として、羽根車6が回転しても、羽根車6は仕切部材50には接触しない。
図10に示すように、仕切部材50は案内羽根45と戻り羽根46との間に配置されている。したがって、案内流路47は、内周壁21、互いに隣接する案内羽根45、および仕切部材50によって形成され、戻り流路48は、内周壁21、互いに隣接する戻り羽根46、および仕切部材50によって形成される。
図9に示すように、仕切部材50の外周面50aには、複数の液体流入部(流体流入部)51が形成されている。液体流入部51の数は、案内流路47(および戻り流路48)の数に対応している。本実施形態では、案内流路47および戻り流路48のそれぞれの数は7であるため、7つの液体流入部51が形成されている。複数の液体流入部51は、仕切り部材50の周方向に沿って等間隔に配置されている。
これら複数の液体流入部51のそれぞれは、仕切部材50の外周面50aから仕切部材50の内周面50bに向かって延びる切り欠きである。液体が仕切部材50を通過可能であれば、液体流入部51の形状は本実施形態には限定されない。
前段の羽根車6によって昇圧された液体は、案内流路47を通り、複数の液体流入部51を通過する。その後、液体は、戻り流路48を通って、次段の羽根車6に導かれる。
図11は、羽根車6の液体入口を囲むように配置されたライナーリング60を示す図である。ライナーリング60は、昇圧された液体が羽根車の吸込側に逆流することを防止するために設けられている。ライナーリング60は、その中間ケーシング20の隔壁24への装着により、ライナーリング60と羽根車6との間の隙間を極めて小さくすることができる。
一般的なライナーリングは金属製である。金属製のライナーリングは、ケーシングに圧入固定される場合がある。このようなライナーリングは、羽根車との接触に起因して、羽根車の回転を拘束してしまうおそれがある。このような拘束を防止するために、ライナーリングは、羽根車とは異なる金属で構成されている。
しかしながら、ライナーリングが金属から構成されていると、回転軸、羽根車、および/またはライナーリングなどの構成部品の加工精度が悪い場合には、ライナーリングと羽根車との間の相対位置が所定の設計位置からずれてしまい、ライナーリングと羽根車との間の環状の隙間の大きさが隙間の周方向において、不均一になるおそれがある。結果として、ポンプ効率および/またはライナーリングと羽根車との接触に起因する異音の発生などの問題が生じてしまう。
樹脂製のライナーリングが知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、このような場合、ライナーリングの形状に合うようなケーシングの設計が必要となる。したがって、このようなライナーリングを他のポンプに容易に適用することができず、ライナーリングをポンプに適用するために、ケーシングを改造する必要がある。
ライナーリングをハウジング部材によってケーシングに取り付ける構成が考えられる。しかしながら、ハウジング部材を設ける場合、ハウジング部材を組み立てるために、複数の構成部品を溶接などの手段で接合しなければならない。したがって、加工や組み立てなどの製造コストが高価になるという問題がある。ライナーリングのケーシングへの装着および取り外しの際に別個の工具が必要であるため、作業性も悪い。また、ハウジング部材は金属から構成されているため、ライナーリングとハウジング部材との接触に起因して、異音(騒音)が発生してしまうおそれがある。
そこで、以下に示す実施形態では、ポンプケーシング7に容易に装着することができ、かつポンプケーシング7からの抜けを防止することができるライナーリングを提供する。本実施形態に係るライナーリング60は、吸込ケーシング16、中間ケーシング20、および吐出ケーシング18のそれぞれに装着可能である(図1参照)。
吸込ケーシング16、中間ケーシング20、および吐出ケーシング18に装着されるライナーリング60の構造は、同一であるため、以下、中間ケーシング20に装着されるライナーリング60の構造について説明する。
図12は、図11に示すライナーリング60の正面図である。図11および図12に示すように、ライナーリング60は、環状形状を有しており、中間ケーシング20の隔壁24および羽根車6と同心状に配置されている。ライナーリング60の内周面60aは羽根車6の外面6bの直径よりも大きな直径を有しており、ライナーリング60の内周面60aと羽根車6の外面6bとの間には僅かな隙間が形成されている。したがって、ライナーリング60は、羽根車6の回転を阻害することなく、昇圧された液体が高圧側から低圧側に流れることを防止することができる。
ライナーリング60は樹脂から構成されている。一実施形態では、ライナーリング60は、ポリアセタール(POM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリフェニレンスルファイド(PPS)から構成されている。しかしながら、ライナーリング60に適用可能な樹脂は、本実施形態には限定されない。ライナーリング60は、隔壁24の材質と同一種類の材質から構成されてもよく、または隔壁24の材質と異なる種類の材質から構成されてもよい。
ライナーリング60は羽根車6よりも軟質な材質から構成されている。このような構成により、ライナーリング60は、羽根車6のマウス(すなわち、ライナーリング60の半径方向内側に位置する羽根車6の部位)とライナーリング60との接触によって削られるため、羽根車6が摩耗したり、傷付くことはない。
ライナーリング60は、その外周面60bに形成された第1の環状爪部61と、外周面60bに形成され、かつ第1の環状爪部61から離間して配置された第2の環状爪部62とを備えている。言い換えれば、第1の環状爪部61および第2の環状爪部62は、互いに離間して配置されている。図11および図12に示す実施形態では、第2の環状爪部62は第1の環状爪部61よりも長い長さを有している。
第1の環状爪部61および第2の環状爪部62のそれぞれは、外周面60bから半径方向外側に向かって延びる突起である。つまり、ライナーリング60は環状の凹構造を有している。図11に示すように、第1の環状爪部61と第2の環状爪部62との間の距離DAは隔壁24を挟み込むことが可能な長さである。距離DAは隔壁24の厚さTAに相当する。
ライナーリング60が隔壁24に装着されると、第1の環状爪部61は隔壁24の吸込ケーシング16側の面24cに密着し、第2の環状爪部62は隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bに密着する。このようにして、ライナーリング60は、第1の環状爪部61および第2の環状爪部62で隔壁24を挟み込むことができる。
第1の環状爪部61はライナーリング60の前端面60cに接続されており、第2の環状爪部62はライナーリング60の後端面60dに接続されている。ライナーリング60の内周面60aは前端面60cと後端面60dとの間に位置している。ライナーリング60の前端面60cは液体の吸込側の面であり、ライナーリング60の後端面60dは液体の吐出側の面である。
本実施形態によれば、ライナーリング60は、中間ケーシング20の隔壁24を挟持可能な第1の環状爪部61と第2の環状爪部62とを備えており、隔壁24は第1の環状爪部61と第2の環状爪部62との間に挟まされる。したがって、ライナーリング60は、隔壁24に容易に装着され、かつ隔壁24からの抜けを防止することができる。
ライナーリング60は嵌め込み式のリング部材であるため、ライナーリング60の隔壁24への装着の際に、作業者は特別な工具を使用する必要はない。したがって、作業性を向上することができる。また、樹脂製のケーシングの強度は金属の強度よりも低いため、金属製のライナーリングを樹脂製のケーシングに装着すると、ケーシングが破損するおそれがある。本実施形態では、ライナーリング60は樹脂製であるため、ライナーリング60の装着および取り外しの際に、樹脂製の隔壁24が破損するおそれはない。
樹脂製の隔壁24は、過熱や吸水などの原因により、膨張する可能性がある。本実施形態では、ライナーリング60は隔壁24を挟持する構造を有しているため、隔壁24が膨張しても、ライナーリング60の隔壁24からの抜けが防止される。
さらに、ライナーリング60は隔壁24を挟持する構造を有しているため、ライナーリング60を隔壁24に取り付けるための新たな構造物(例えば、上述したハウジング部材)は不要である。したがって、ポンプ2の構成部品の点数を減らすことができ、ポンプ2のコストを削減することができる。
さらに、ライナーリング60は樹脂から構成されているため、羽根車6のライナーリング60との接触に起因する騒音は発生せず、ポンプ2の静音性を向上することができる。さらに、樹脂製のライナーリング60は、金属製のライナーリングよりも高い摺動性を有している。
図12に示すように、ライナーリング60は、第1の環状爪部61に形成されたスリット65と、第2の環状爪部62に形成されたスリット66とを備えてもよい。図12に示す実施形態では、4つのスリット65および4つのスリット66が形成されているが、スリット65およびスリット66のそれぞれの数は本実施形態には限定されない。
図13は、図12のC-C線断面図である。図14は、図12のD-D線断面図である。複数のスリット65は、ライナーリング60の内周面60aから半径方向外側に向かって放射状に延びる切り欠きであり、ライナーリング60の周方向に沿って等間隔に配置されている。スリット65は、第1の環状爪部61を分断している。本実施形態では、スリット65は、第1の環状爪部61のみならず前端面60cにも形成されている。
複数のスリット66は、ライナーリング60の内周面60aから半径方向外側に向かって放射状に延びる切り欠きであり、ライナーリング60の周方向に沿って等間隔に配置されている。スリット66は、第2の環状爪部62を分断している。本実施形態では、スリット66は、第2の環状爪部62のみならず後端面60dにも形成されている。
作業者は、ライナーリング60を回転軸10Aの軸線CL方向に移動して、ライナーリング60を隔壁24に装着する。本実施形態では、スリット65およびスリット66のそれぞれは、第1の環状爪部61および第2の環状爪部62のそれぞれを分断しているため、第1の環状爪部61および第2の環状爪部62のそれぞれは、容易に変形することができる。したがって、ライナーリング60の着脱性を向上することができる。
図12に示すように、複数のスリット65および複数のスリット66は、ライナーリング60をその軸心方向(すなわち、回転軸10Aの軸線CL方向)から見たとき、ライナーリング60の周方向に沿って交互に配置されている。
本実施形態では、図13および図14に示すように、ライナーリング60は、スリット65またはスリット66が形成されている部位(第1部位)と、スリット65およびスリット66が形成されていない部位(第2部位)とを有している。第1部位の厚さTBは、第2部位の厚さTCからスリット65またはスリット66の深さTDを除いた厚さである。
本実施形態に係るライナーリング60との比較例について図15を参照して説明する。図15は、本実施形態に係るライナーリング60との比較例を示す図である。スリット65およびスリット66が、ライナーリング60をその軸心方向から見たとき、互いに重なるように配置されている場合、スリット65およびスリット66が形成されている部位の厚さTEは、スリット65およびスリット66が形成されていない部位の厚さTCからスリット65およびスリット66の深さTD1およびTD2を除いた厚さである。
このように、本実施形態では、スリット65またはスリット66が形成されている第1部位の厚さTBはスリット65およびスリット66が形成されている部位の厚さTEよりも厚いため、ライナーリング60の強度を高くすることができる。
図16は、ライナーリング60の他の実施形態を示す図である。図17は、図16のE線方向から見た図である。一実施形態では、図16に示すように、スリット65は、少なくとも第1の環状爪部61に形成されていればよく、必ずしも前端面60cに形成される必要はない。スリット66は、少なくとも第2の環状爪部62に形成されていればよく、必ずしも後端面60dに形成される必要はない。この場合、スリット65およびスリット66はライナーリング60の厚さに影響を与えない。したがって、図17に示すように、スリット65およびスリット66は、ライナーリング60をその軸心方向から見たとき、互いに重なるように配置されてもよい。
ライナーリング60は、第1の環状爪部61に形成されたスリット65および第2の環状爪部62に形成されたスリット66のうちの少なくとも1つを備えてもよい。図18は、ライナーリング60の装着方向および取り外し方向を説明するための図である。図18に示すように、ライナーリング60を隔壁24に装着するときのライナーリング60の移動方向(装着方向)と、ライナーリング60を隔壁24から取り外すときのライナーリング60の移動方向(取り外し方向)が互いに逆方向である場合、ライナーリング60は、スリット65,66のうちの少なくとも1つを備えてもよい。
例えば、作業者は、第2の環状爪部62を隔壁24の吸込ケーシング16側の面24cに押し付けてライナーリング60を隔壁24に装着し、ライナーリング60が隔壁24に装着された状態で、第2の環状爪部62を隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bに押し付けてライナーリング60を隔壁24から取り外す。この場合、ライナーリング60は、第2の環状爪部62に形成されたスリット66のみを備えてもよい。
例えば、作業者は、第1の環状爪部61を隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bに押し付けてライナーリング60を隔壁24に装着し、ライナーリング60が隔壁24に装着された状態で、第1の環状爪部61を隔壁24の吸込ケーシング16側の面24cに押し付けてライナーリング60を隔壁24から取り外す。この場合、ライナーリング60は、第1の環状爪部61に形成されたスリット65のみを備えてもよい。
第1の環状爪部61および第2の環状爪部62の少なくとも1つは、ライナーリング60の内周面60aに向かって延びるテーパー面を有してもよい。以下、テーパー面の構成について、図面を参照して説明する。
図19は、ライナーリング60の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図19に示すように、第1の環状爪部61は、ライナーリング60の外周面60bから前端面60cに向かって延びるテーパー面70を有している。テーパー面70は、ライナーリング60の外周面60bから前端面60cに向かって、第1の環状爪部61の直径(または断面積)が徐々に小さくなるように傾斜する環状の面である。
図1に示すライナーリング60は、図19に示すライナーリング60と僅かに異なる形状を有しているが、図1に示すライナーリング60と図19に示すライナーリング60とは、同一の形状を有してもよい。
ライナーリング60を隔壁24に装着する場合、作業者は、ライナーリング60を隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bに隣接するように配置し、ライナーリング60を隔壁24の面24bに近接する方向に移動する。テーパー面70を設けることにより、第1の環状爪部61はスムーズに隔壁24を通過することができるため、作業者は、テーパー面70を通じてライナーリング60を隔壁24に容易に装着することができる。
隔壁24に装着されたライナーリング60を取り外す場合、作業者は、第1の環状爪部61が隔壁24から離間するように、ライナーリング60を回転軸10Aの軸線CL方向に移動させる。言い換えれば、作業者は、第2の環状爪部62を隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bに押し付ける。このように、作業者がライナーリング60を移動させ続けると、やがて、第2の環状爪部62は切断され、結果として、ライナーリング60は隔壁24から取り外される。
図20は、ライナーリング60のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図20に示すように、第1の環状爪部61は、その中央部分から前端面60cに向かって延びる第1のテーパー面71と、第1の環状爪部61の中央部分から外周面60bに向かって延びる第2のテーパー面72とを有してもよい。
第1のテーパー面71は、第1の環状爪部61の中央部分から前端面60cに向かって、第1の環状爪部61の直径(または断面積)が徐々に小さくなるように傾斜する環状の面である。第2のテーパー面72は、第1の環状爪部61の中央部分から外周面60bに向かって、第1の環状爪部61の直径(または断面積)が徐々に小さくなるように傾斜する環状の面である。第1のテーパー面71および第2のテーパー面72は互いに反対方向を向いて傾斜している。
第1の環状爪部61が第1のテーパー面71を通じて隔壁24を通過すると、ライナーリング60は隔壁24に装着される。第1の環状爪部61が第2のテーパー面72を通じて隔壁24を通過すると、ライナーリング60は隔壁24から取り外される。このような構造により、作業者は、第2の環状爪部62を切断することなく、ライナーリング60を隔壁24から取り外すことができる。
図21は、ライナーリング60のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図21に示すように、第1の環状爪部61は、前端面60cから外周面60bに向かって延びるテーパー面73を有してもよい。テーパー面73は、前端面60cから外周面60bに向かって、第1の環状爪部61の直径(または断面積)が徐々に小さくなるに傾斜する環状の面である。第2の環状爪部62は、外周面60bから後端面60dに向かって延びるテーパー面74を有してもよい。テーパー面74は、第2の環状爪部62の直径(または断面積)が徐々に小さくなるように傾斜する環状の面である。テーパー面73およびテーパー面74は同一方向を向いて傾斜している。
第2の環状爪部62がテーパー面74を通じて隔壁24を通過すると、ライナーリング60は隔壁24に装着される。第1の環状爪部61がテーパー面73を通じて隔壁24を通過すると、ライナーリング60は隔壁24から取り外される。このような構造により、作業者は、第1の環状爪部61を切断することなく、ライナーリング60を隔壁24から取り外すことができる。
図21に示す実施形態では、ライナーリング60が隔壁24に装着されたとき、第2の環状爪部62は隔壁24に密着している。したがって、液体の圧力が高圧側(吐出側)から低圧側(吸込側)に作用しても、ライナーリング60は隔壁24から脱落しない。
図22は、ライナーリング60のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図22に示すように、ライナーリング60は、第1の環状爪部61と、テーパー面74を有する第2の環状爪部62を備えてもよい。図22に示す実施形態では、第1の環状爪部61はテーパー面を有していない。
一実施形態では、図示しないが、図20に示す実施形態と同様に、ライナーリング60は、互いに反対方向を向いて傾斜するテーパー面を有する第2の環状爪部62を有してもよい。
上述した実施形態では、ライナーリング60は隔壁24を挟持する構造を有しているため、ライナーリング60は隔壁24にすべり接触する。一実施形態では、ライナーリング60および隔壁24は、ライナーリング60の回転を制限する回り止め構造を有してもよい。
図23および図24は、回り止め構造100を示す図である。図23および図24に示すように、回り止め構造100は、隔壁24に形成された回り止め突起101と、ライナーリング60に形成された回り止め溝102とから構成されている。
ライナーリング60は、隔壁24に形成された回り止め突起101が嵌合可能な回り止め溝102を有している。本実施形態では、4つの回り止め溝102がライナーリング60の周方向に沿って等間隔に配置されているが、回り止め溝102の数は本実施形態には限定されない。単一の回り止め溝102が形成されていてもよい。一実施形態では、回り止め溝102の数は回り止め突起101の数に対応している。他の実施形態では、回り止め溝102の数は回り止め突起101の数よりも多くてもよい。ライナーリング60は、回り止め突起101と回り止め溝102とが互いに嵌合するように、隔壁24に装着される。このような構成により、ライナーリング60の軸心を中心とするライナーリング60の回転は制限される。
図23および図24に示す本実施形態では、回り止め突起101は、隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bに形成されており、隔壁24の内周面24aに接続されている。一実施形態では、回り止め突起101は隔壁24の吸込ケーシング16側の面24cに形成されてもよい。回り止め溝102は、回り止め突起101が形成された隔壁24の面(面24bおよび面24cのうちの少なくとも1つ)に対向するライナーリング60の爪部(第1の環状爪部61および第2の環状爪部62のうちの少なくとも1つ)に形成されている。
図25は、隔壁24の内周面24aから離間して配置された回り止め突起101を示す図である。図23に示す実施形態では、隔壁24の内周面24aに接続された回り止め突起101について説明したが、図25に示すように、回り止め突起101は、隔壁24の内周面24aから離間してもよい。隔壁24の内周面24aと突起101との間の距離DBは、0(ゼロ)以上であってもよい。
図26乃至図30は、回り止め構造100の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図26乃至図30に示すように、回り止め構造100は、隔壁24に形成された回り止め溝110と、ライナーリング60に形成された回り止め突起111とから構成されている。
図26に示す実施形態では、複数の回り止め溝110が隔壁24の内周面24aの周方向に沿って等間隔に配置されている。各回り止め溝110は、隔壁24の内周面24aおよび吐出ケーシング18側の面24bに接続されている。一実施形態では、図29に示すように、各回り止め溝110は、隔壁24の内周面24aおよび吸込ケーシング16側の面24cに接続されてもよい。
図27および図28に示す実施形態では、複数の回り止め突起111がライナーリング60の周方向に沿って等間隔に配置されている。各回り止め突起111は、第2の環状爪部62およびライナーリング60の外周面60bに接続されている。一実施形態では、図30に示すように、各回り止め突起111は、第1の環状爪部61およびライナーリング60の外周面60bに接続されてもよい。
図31および図32は、回り止め構造100のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図31および図32に示す実施形態では、回り止め構造100は、隔壁24に形成された回り止め溝115と、ライナーリング60に形成された回り止め突起116とから構成されている。
図31に示すように、回り止め溝115は、隔壁24の内周面24aから離間して配置されており、隔壁24の吐出ケーシング18側の面24bに形成されている。図32に示すように、回り止め突起116は、第2の環状爪部62に形成されており、第2の環状爪部62から第1の環状爪部61に向かって延びている。
一実施形態では、回り止め溝115は、隔壁24の内周面24aから離間して配置されており、隔壁24の吸込ケーシング16側の面24cに形成されてもよい。回り止め突起116は、第1の環状爪部61に形成されており、第1の環状爪部61から第2の環状爪部62に向かって延びてもよい。
一実施形態では、回り止め突起101が形成された隔壁24の面(面24bおよび面24cのうちの少なくとも1つ)に対向するスリット(スリット65およびスリット66のうちの少なくとも1つ)は、回り止め溝102としての機能を果たしてもよい。
図33は、ライナーリング60のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図33に示すように、ライナーリング60は、隔壁24を挟持可能な環状のベース部材80と、ベース部材80に装着された環状の装着部材90とを備えている。ベース部材80は装着部材90よりも軟質な材質、言い換えれば、弾性変形可能な材質から構成されている。ベース部材80の一例として、天然ゴム(NR)またはニトリルゴム(NBR)などの弾性部材を挙げることができる。装着部材90は樹脂から構成されている。
弾性部材から構成されたベース部材80は、羽根車6の装着部材90との接触に起因する振動を吸収することができ、ポンプ2のより高い静音性を実現することができる。さらに、本実施形態では、弾性部材から構成されたベース部材80は容易に弾性変形することができるため、ベース部材80の隔壁24への着脱性をより向上することができる。本実施形態では、ベース部材80は図12に示すようなスリットを備える必要はないため、ライナーリング60はより単純な構造を有することができる。なお、ベース部材80にスリットを設けてもよい。
ベース部材80は、上述した実施形態に係るライナーリング60と同様に、環状の凹構造を有している。すなわち、ベース部材80は、隔壁24を挟持可能な第1の環状爪部81と第2の環状爪部82とを備えており、隔壁24を挟持可能である。第1の環状爪部81は上述した第1の環状爪部61と同様の構造を有しており、第2の環状爪部82は上述した第2の環状爪部62と同様の構造を有している。
ベース部材80の内周面80aには、装着部材90が装着可能な環状の幅広溝84が形成されている。装着部材90の外周面90aには、ベース部材80の幅広溝84に対応する形状を有する環状の幅広突起85が形成されている。幅広突起85を幅広溝84に嵌め込む(挿入)ことにより、装着部材90はベース部材80に装着される。このように、ライナーリング60は、装着部材90が物理的にベース部材80から外れにくい構造を有している。
ベース部材80は弾性部材から構成されているため、幅広突起85を幅広溝84から引き抜くことにより、装着部材90は、破損することなく、ベース部材80から容易に取り外される。図示しないが、ベース部材80は、上述した実施形態と同様に、テーパー面を有してもよい。一実施形態では、幅広突起85は、装着部材90の周方向に沿って等間隔に配置された複数の幅広部材(図示しない)から構成されてもよい。
上述した実施形態では、横軸多段ポンプとしてのポンプ2について説明したが、ポンプ2は横軸単段ポンプであってもよい。図34は、ポンプ2の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図34に示すように、ポンプ2は、回転軸10Aと、回転軸10Aに固定された羽根車6と、吸込口15および吐出口17を有するポンプケーシング7とを備えている。ポンプケーシング7は、内部に羽根車6が収容可能な大きさを有する樹脂製の内周壁91と、内周壁91を取り囲むように配置された樹脂製の外周壁92と、内周壁91と外周壁92との間に配置された樹脂製の補強部材(半径方向リブ93aおよび軸方向リブ93b)93とを備えている。内周壁91、外周壁92、および補強部材93は、一体成形部材である。
ポンプ2は、羽根車6の液体入口を囲むように配置されたライナーリング60をさらに備えている。ライナーリング60はポンプケーシング7内に収容されている。ライナーリング60は、ポンプケーシング7を挟持可能な第1の環状爪部61および第2の環状爪部62を備えている。第1の環状爪部61および第2の環状爪部62は、ライナーリング60の外周面60bに形成されており、互いに離間して配置されている。
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。