JP7209512B2 - 射出成形機およびその制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、射出成形機およびその制御方法に関する。
従来の射出成形機の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1の射出成形機は、射出シリンダを有している。射出シリンダの後部には油が収容されており、この油を射出シリンダに対して注入および排出することにより油圧を制御するサーボ弁が設けられている。サーボ弁により油圧を変えると、スクリューの位置が変わって、射出シリンダ内の樹脂圧および金型内の樹脂圧が変わる。サーボ弁は制御装置に接続されている。
制御装置は、金型内樹脂圧閉ループ制御手段と、リザーバ内樹脂圧閉ループ制御手段と、切換区間制御手段と、を有している。金型内樹脂圧閉ループ制御手段は、金型内の樹脂圧の計測値と目標値とに基づいてサーボ弁の操作量を制御する。リザーバ内樹脂圧閉ループ制御手段は、射出シリンダのリザーバ内の樹脂圧の計測値と目標値とに基づいてサーボ弁の操作量を制御する。そして、切換区間制御手段は、金型内樹脂圧閉ループ制御手段による操作量からリザーバ内樹脂圧閉ループ制御手段による操作量へ切り換える。
特許文献1の射出成形機では、保圧工程の開始時点t1から時点t2までの区間Aでは、金型内樹脂圧閉ループ制御手段によりサーボ弁の操作量を制御する。時点t2から時点t3までの区間Bでは、切換区間制御手段によりサーボ弁の操作量を制御する。時点t3以後の区間Cでは、リザーバ内樹脂圧閉ループ制御手段によりサーボ弁の操作量を制御する。
特開平3-83621号公報
射出成形機において成形品の品質を安定させるためには、保圧工程で金型内の樹脂材料に適切な圧力(保圧)を加えることが重要である。そして、上記射出成形機では、区間Cにおいて射出シリンダ内の樹脂圧の計測値が目標値に近づくように閉ループ制御して、金型内の樹脂材料に適切な圧力が加わるようにしている。
上述したような射出成形機は、例えば、装置や金型の状態確認などのために動作を一旦停止させたのち動作を再開させることがあり、停止前と停止後とで射出シリンダ内の樹脂材料に熱履歴の違いが生じて粘度などの樹脂状態が変化することがある。これにより、射出シリンダ内の樹脂材料から金型内の樹脂材料への圧力の伝わり方が変化して、射出シリンダ内の樹脂圧の計測値が目標値となるように制御しても、金型内の樹脂材料に適切な圧力が加わらなくなり、成形品の品質にばらつきが生じてしまうおそれがある。
そこで、本発明は、成形品の品質のばらつきを効果的に抑制できる射出成形機およびこの射出成形機の制御方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る射出成形機は、金型のキャビティに通じるノズルが先端に設けられた射出シリンダと、前記射出シリンダに収容されたスクリューと、前記スクリューを回転および前後進させるスクリュー駆動部と、前記キャビティ内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧を検出する金型内圧力検出部と、前記射出シリンダ内の樹脂材料の圧力である射出シリンダ内樹脂圧を検出する射出シリンダ内圧力検出部と、前記スクリューによって前記キャビティに樹脂材料を射出する射出動作、および、前記スクリューによって前記キャビティに充填された樹脂材料に圧力を加える保圧動作、を実行するように前記スクリュー駆動部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記金型内樹脂圧に基づいて前記射出動作から前記保圧動作に切り換えるとともに、前記保圧動作において前記射出シリンダ内樹脂圧が保圧目標圧力値となるように前記スクリュー駆動部を制御し、前記射出シリンダ内樹脂圧から前記金型内樹脂圧を差し引いて圧力損失値を算出し、前記圧力損失値と基準圧力損失値とに基づいて前記保圧目標圧力値を補正するように構成され、前記制御部は、前記基準圧力損失値に対する前記圧力損失値の割合を前記保圧目標圧力値に乗じることにより当該保圧目標圧力値を補正するように構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、金型内樹脂圧に基づいて射出動作から保圧動作に切り換えるとともに、保圧動作において射出シリンダ内樹脂圧が保圧目標圧力値となるようにスクリューを駆動する。そして、射出シリンダ内樹脂圧から金型内樹脂圧を差し引いた圧力損失値を算出し、圧力損失値と基準圧力損失値とに基づいて前記保圧目標圧力値を補正する。このようにしたことから、動作停止により射出シリンダ内の樹脂材料から金型のキャビティ内の樹脂材料への圧力の伝わり方(圧力損失値)が変化しても、基準となる圧力の伝わり方(基準圧力損失値)との関係に基づいて保圧目標圧力値を補正するので、保圧動作においてキャビティ内の樹脂材料に適切な圧力を加えることができる。そのため、成形品の品質のばらつきを効果的に抑制できる。
本発明において、前記制御部は、前記射出動作から前記保圧動作への切り換え時に検出された前記金型内樹脂圧と前記射出シリンダ内樹脂圧とを用いて前記圧力損失値を算出するように構成されていることが好ましい。このようにすることで、キャビティ内に樹脂材料が充填された時点の圧力損失値を算出することができるので、保圧目標圧力値をより適切な値に補正して、キャビティ内の樹脂材料に適切な圧力を加えることができる。
記制御部は、前記圧力損失値から前記基準圧力損失値を差し引いて圧力補正値を算出し、前記圧力補正値を前記保圧目標圧力値に加えることにより補正するように構成されていることが好ましい。このようにすることで、簡易な処理で保圧目標圧力値を補正することができる。
本発明において、前記基準圧力損失値は、品質基準を満足する成形品が得られたときの前記圧力損失値が設定されることが好ましい。このようにすることで、キャビティ内の樹脂材料に品質基準を満足する成形品が得られたときと同等の圧力を加えることができる。
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る射出成形機の制御方法は、金型のキャビティに通じるノズルが先端に設けられた射出シリンダと、前記射出シリンダに回転および前後進可能に収容されたスクリューと、を有する射出成形機の制御方法であって、前記スクリューによって前記キャビティに樹脂材料を射出する射出工程と、前記スクリューによって前記キャビティに充填された樹脂材料に圧力を加える保圧工程と、を含み、前記キャビティ内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧に基づいて前記射出工程から前記保圧工程に切り換えるとともに、前記保圧工程において前記射出シリンダ内の樹脂材料の圧力である射出シリンダ内樹脂圧が保圧目標圧力値となるように前記スクリューを駆動し、前記射出シリンダ内樹脂圧から前記金型内樹脂圧を差し引いた圧力損失値を算出し、前記圧力損失値と基準圧力損失値とに基づいて前記保圧目標圧力値を補正し、前記基準圧力損失値に対する前記圧力損失値の割合を前記保圧目標圧力値に乗じることにより当該保圧目標圧力値を補正することを特徴とする。
本発明によれば、金型内樹脂圧に基づいて射出工程から保圧工程に切り換えるとともに、保圧工程において射出シリンダ内樹脂圧が保圧目標圧力値となるようにスクリューを駆動する。そして、射出シリンダ内樹脂圧から金型内樹脂圧を差し引いた圧力損失値を算出し、圧力損失値と基準圧力損失値とに基づいて前記保圧目標圧力値を補正する。このようにしたことから、動作停止により射出シリンダ内の樹脂材料から金型のキャビティ内の樹脂材料への圧力の伝わり方(圧力損失値)が変化しても、基準となる圧力の伝わり方(基準圧力損失値)との関係に基づいて保圧目標圧力値を補正するので、保圧工程においてキャビティ内の樹脂材料に適切な圧力を加えることができる。そのため、成形品の品質のばらつきを効果的に抑制できる。
本発明によれば、保圧動作において金型のキャビティ内の樹脂材料に適切な圧力を加えることができるので、成形品の品質のばらつきを効果的に抑制できる。
本発明の一実施形態に係る射出成形機の正面図である。 図1の射出成形機の要部拡大断面図である。 図1の射出成形機の機能ブロックを説明する図である。 補正後の保圧目標圧力値の算出例を説明する図である。
以下、本発明の一実施形態に係る射出成形機について、図1~図4を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形機の正面図である。図2は、図1の射出成形機の要部拡大断面図である。図3は、図1の射出成形機の機能ブロックを説明する図である。図4は、補正後の保圧目標圧力値の算出例を説明する図であり、(a)は保圧目標圧力値に圧力補正値を加えた算出例を示し、(b)は保圧目標圧力値に補正割合を乗じた算出例を示す。なお、本明細書では、図1、図2の下方をスクリューの前進方向とし、上方をスクリューの後退方向として説明している。
図1および図2に示す本実施形態に係る射出成形機1は、上金型2および下金型3を型締することで形成されるキャビティ4に溶融した樹脂材料を射出注入し、冷却固形化することで成形品を得るものである。なお、本実施形態は、金型が鉛直方向に開閉しかつ射出シリンダが鉛直方向に沿って配置された竪型射出成形機に本発明を適用した構成の一例を示すものである。これ以外にも、金型が水平方向に開閉しかつ射出シリンダが水平方向に沿って配置された横型の射出成形機に本発明を適用してもよい。
射出成形機1は、機台6上に、樹脂材料を射出するための射出ユニット10と、上金型2と下金型3とを当接させ、型締力を発生させて型締を行うための型締ユニット20と、表示操作ユニット30と、を有している。
射出ユニット10は、下方を向くノズル11aが先端に設けられた射出シリンダ11と、射出シリンダ11内に回転および前後進可能に収容されたスクリュー12と、を有している。ノズル11aは、上金型2にタッチした状態においてランナーやスプール、ゲートなどを有する樹脂流路5を介してキャビティ4に通じている。また、射出ユニット10は、射出シリンダ11を昇降させる電動モータなどを有するシリンダ駆動部13(図1、図2において図示を省略)、および、射出シリンダ11内でスクリュー12を回転および前後進させる電動モータなどを有するスクリュー駆動部14を有している。射出シリンダ11やスクリュー12が下方に移動して上金型2に近づくことを前進といい、上方に移動して上金型2から離れることを後退という。シリンダ駆動部13およびスクリュー駆動部14は、制御部40に接続されており、制御部40からの制御信号に応じて動作する。
射出ユニット10は、スクリュー12とスクリュー駆動部14との間に射出シリンダ内圧力検出部としてのロードセル16を有している。ロードセル16は、射出シリンダ11内でスクリュー12に作用する樹脂材料の圧力を検知するものである。ロードセル16は、スクリュー12またはスクリュー駆動部14に取り付けられており、射出シリンダ11の外に設けられている。ロードセル16は、制御部40に接続されており、射出シリンダ11内の樹脂材料の圧力である射出シリンダ内樹脂圧Piを検出して制御部40に射出シリンダ内樹脂圧Piを示す信号を送信する。なお、ロードセル16に代えて、例えば、射出シリンダ11の内壁に圧力センサーを埋め込んだ構成としてもよいが、ロードセル16を採用することで、射出シリンダ11の外に設けることができるため、簡易な構成で射出シリンダ内樹脂圧Piを検出できる。
射出ユニット10は、射出シリンダ11内でのスクリュー12の前後方向(図1の上下方向)の位置を検出するスクリュー位置検出部としての位置センサー17を有している。位置センサー17は、制御部40に接続されており、射出シリンダ11内でのスクリュー12の位置であるスクリュー位置Lを検出して制御部40にスクリュー位置Lを示す信号を送信する。
型締ユニット20は、上金型2が下面21aに取り付けられる平板状の上部プレートとしての可動プレート21と、上金型2と型締される下金型3が上面22aに取り付けられる下部プレートとしてのロータリーテーブル22と、を有している。上金型2と下金型3とを型締することによりキャビティ4が形成される。ロータリーテーブル22は、複数の下金型3が取り付けられ、回転することにより複数の下金型3を順次上金型2と対向する位置まで搬送する。型締ユニット20は、上金型2および下金型3の開閉ならびに製品取り出しのための図示しないアクチュエータを有している。
可動プレート21の上方に射出シリンダ11が配置されている。可動プレート21の中心部には、射出シリンダ11のノズル11aを挿入できる大きさの貫通孔21bが形成されている。貫通孔21bの上部はすり鉢状に形成されている。貫通孔21bにはノズル11aが挿通され、ノズル11aが上金型2にタッチした状態でキャビティ4に溶融した樹脂材料を射出する。
型締ユニット20は、可動プレート21の上面21cにノズル11aを囲うように設けられた立方体の箱形のカバー23を有している。
型締ユニット20は、上金型2と下金型3とが型締されることにより形成されるキャビティ4内の樹脂材料の圧力を検出する金型内圧力検出部としての金型内圧力センサー26を有している。金型内圧力センサー26は、制御部40に接続されており、キャビティ4内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧Pcを検出して制御部40に金型内樹脂圧Pcを示す信号を送信する。
表示操作ユニット30は、射出成形機1に係る情報を表示する表示部31と、操作を入力するため操作部32と、を有している。表示部31および操作部32は、制御部40に接続されている。表示部31は、制御部40からの制御信号に基づき、表示領域に各種画面を表示する。操作部32は、複数のキーを備えており、各キーに入力された操作に応じた信号を制御部40に送信する。なお、表示操作ユニット30は、操作部32としてタッチパネルを備え、表示部31に表示領域に重ねられたタッチパネルとそこに表示したアイコンとを組み合わせて構成したソフトウェアスイッチを有していてもよい。
また、射出成形機1は、全体の動作を司る制御部40を有している。制御部40は、例えば、CPU、メモリ、各種I/Oインタフェースなどを有する組み込み機器用のマイクロコンピュータを有して構成されている。制御部40は、型閉工程、計量工程、射出工程、保圧工程、型開工程および取り出し工程などの各工程において、射出ユニット10のシリンダ駆動部13およびスクリュー駆動部14や型締ユニット20の図示しないアクチュエータなどの各駆動装置の動作を制御する。制御部40のメモリには、保圧工程において射出シリンダ内樹脂圧Piの目標値として用いられる保圧目標圧力値Psと、保圧目標圧力値Psの補正に用いられる基準圧力損失値PLsと、が記憶されている。
基準圧力損失値PLsは、例えば、成形条件出しのための成形動作など、あらかじめ射出成形機1において成形品の成形を行うことで得る。具体的には、射出成形機1において、射出動作から保圧動作への切り替え時に金型内樹脂圧Pcと射出シリンダ内樹脂圧Piとを検出する。そして、品質基準を満足する成形品、すなわち良品が得られたときに検出した射出シリンダ内樹脂圧Piから金型内樹脂圧Pcを差し引いて得た圧力損失値PLを基準圧力損失値PLsとして設定する。また、保圧目標圧力値Psについても、良品が得られたときに用いた保圧目標圧力値Psを設定する。本実施形態において、基準圧力損失値PLsは40MPaが設定されており、保圧目標圧力値Psは80MPaが設定されている。これらの値は、射出成形機1や成形品の構成などに応じて、適宜設定される。
次に、上述した本実施形態の射出成形機1における本発明に係る動作(制御方法)の一例について、図4を参照して説明する。
まず、射出成形機1の制御部40は、シリンダ駆動部13を制御して、射出シリンダ11を前進させて上金型2に近づけ、ノズル11aを上金型2にタッチさせる。この状態において、ノズル11aとキャビティ4とが樹脂流路5を介して通じており、スクリュー12は初期位置(例えば0mmの位置)にある。また、射出シリンダ11は図示しないヒーターによって加熱されているとともに、射出シリンダ11内の樹脂材料がスクリュー12により混練されており、射出シリンダ11の先端部近傍の樹脂材料は溶融状態となっている。
そして、制御部40は、型閉工程において、図示しない型締駆動部を制御して、上金型2および下金型3を重ねて型締めする(型閉動作)。
制御部40は、計量工程において、スクリュー駆動部14を制御して、スクリュー12を回転させながら計量位置(例えば50mmの位置)まで後退させ、1回の射出に必要となる量の樹脂材料を射出シリンダ11の先端部に供給する(計量動作)。
制御部40は、射出工程において、スクリュー駆動部14を制御して、スクリュー12を前進させることによって、射出シリンダ11の先端部の樹脂材料を樹脂流路5を介してキャビティ4に射出する(射出動作)。
具体的には、制御部40は、射出動作中に位置センサー17から送信される信号に基づいてスクリュー位置Lを取得する。そして、スクリュー位置Lに基づいてスクリュー駆動部14を制御して、スクリュー速度Vが目標速度となるようにスクリュー12を前進させる。そして、制御部40は、射出動作中に金型内圧力センサー26から送信される信号に基づいてキャビティ4内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧Pcを取得する。そして、制御部40は、金型内樹脂圧Pcが所定の動作切替圧力値Pvpに到達すると、保圧動作に切り替える。
また、制御部40は、射出動作から保圧動作への切り替え時に、金型内圧力センサー26から送信される信号に基づいて金型内樹脂圧Pcを取得するとともに、ロードセル16から送信される信号に基づいて射出シリンダ内樹脂圧Piを取得する。制御部40は、射出シリンダ内樹脂圧Piから金型内樹脂圧Pcを差し引いて圧力損失値PLを算出する。制御部40は、メモリから基準圧力損失値PLsを読み出し、圧力損失値PLから基準圧力損失値PLsを差し引いて圧力補正値Phを算出する。そして、制御部40は、メモリから保圧目標圧力値Psを読み出し、保圧目標圧力値Psに圧力補正値Phを加えて補正し、補正後の保圧目標圧力値Ps’を得る。具体的な算出例を以下に示す。
例えば、射出動作から保圧動作への切り替え時に取得した金型内樹脂圧Pcが10MPaであり、射出シリンダ内樹脂圧Piが50MPaだったとき、圧力損失値PLは40MPaとなる(50MPa-10MPa=40MPa)。この圧力損失値PLから基準圧力損失値PLs(40MPa)を差し引くと圧力補正値Phは0MPaとなる(40MPa-40MPa=0MPa)。そして、保圧目標圧力値Ps(80MPa)に圧力補正値Phを加えると、補正後の保圧目標圧力値Ps’は80MPaとなる(80MPa+0MPa=80MPa)。
または、射出動作から保圧動作への切り替え時に取得した金型内樹脂圧Pcが10MPaであり、射出シリンダ内樹脂圧Piが55MPaだったとき、圧力損失値PLは45MPaとなる(55MPa-10MPa=45MPa)。この圧力損失値PLから基準圧力損失値PLs(40MPa)を差し引くと圧力補正値Phは5MPaとなる(45MPa-40MPa=5MPa)。そして、保圧目標圧力値Ps(80MPa)に圧力補正値Phを加えると、補正後の保圧目標圧力値Ps’は85MPaとなる(80MPa+5MPa=85MPa)。
または、射出動作から保圧動作への切り替え時に取得した金型内樹脂圧Pcが10MPaであり、射出シリンダ内樹脂圧Piが45MPaだったとき、圧力損失値PLは35MPaとなる(45MPa-10MPa=35MPa)。この圧力損失値PLから基準圧力損失値PLs(40MPa)を差し引くと圧力補正値Phは-5MPaとなる(35MPa-40MPa=-5MPa)。そして、保圧目標圧力値Ps(80MPa)に圧力補正値Phを加えると、補正後の保圧目標圧力値Ps’は75MPaとなる(80MPa+(-5MPa)=75MPa)。このような圧力補正値Phの加算による補正後の保圧目標圧力値Ps’の算出例を図4(a)に示す。
制御部40は、保圧工程において、スクリュー駆動部14を制御して、スクリュー12を前後進させることによって、キャビティ4に充填された樹脂材料に圧力を加える(保圧動作)。具体的には、制御部40は、ロードセル16から送信される信号に基づいて射出シリンダ内樹脂圧Piを取得するとともに、スクリュー駆動部14をフィードバック制御して射出シリンダ内樹脂圧Piが補正後の保圧目標圧力値Ps’となるようにスクリュー12を前後進させる。制御部40は、保圧動作を所定の実行期間(保圧期間Th、例えば5秒間)にわたって実行する。
次に、制御部40は、型開工程において、型締駆動部を制御して、上金型2および下金型3を上下方向に開く(型開動作)。そして、制御部40は、取り出し工程において、図示しないエジェクトピンによりキャビティ4から成形品を取り出す(取り出し動作)。
以降、上記型閉工程~上記取り出し工程を繰り返して成形品の成形を行う。
以上より、本実施形態の射出成形機1によれば、金型内樹脂圧Pcに基づいて射出動作から保圧動作に切り換えるとともに、保圧動作において射出シリンダ内樹脂圧Piが保圧目標圧力値Psとなるようにスクリュー12を駆動する。そして、射出シリンダ内樹脂圧Piから金型内樹脂圧Pcを差し引いた圧力損失値PLを算出し、圧力損失値PLと基準圧力損失値PLsとに基づいて保圧目標圧力値Psを補正する。このようにしたことから、動作停止により射出シリンダ11内の樹脂材料からキャビティ4内の樹脂材料への圧力の伝わり方(圧力損失値PL)が変化しても、基準となる圧力の伝わり方(基準圧力損失値PLs)との関係に基づいて保圧目標圧力値Psを補正するので、保圧動作においてキャビティ4内の樹脂材料に適切な圧力を加えることができる。そのため、成形品の品質のばらつきを効果的に抑制できる
また、射出動作から保圧動作への切り換え時に検出された金型内樹脂圧Pcと射出シリンダ内樹脂圧Piとを用いて圧力損失値PLを算出する。このようにすることで、キャビティ4内に樹脂材料が充填された時点の圧力損失値PLを算出することができるので、保圧目標圧力値Psをより適切な値に補正して、キャビティ4内の樹脂材料に適切な圧力を加えることができる。
また、圧力損失値PLから基準圧力損失値PLsを差し引いた圧力補正値Phを保圧目標圧力値Psに加えることにより補正する。このようにすることで、簡易な処理で保圧目標圧力値Psを補正することができる。
また、基準圧力損失値PLsは、品質基準を満足する成形品が得られたときの圧力損失値PLが設定される。このようにすることで、キャビティ4内の樹脂材料に品質基準を満足する成形品が得られたときと同等の圧力を加えることができる。
上述した実施形態の説明では、好ましい構成として、射出動作から保圧動作への切り換え時に検出された金型内樹脂圧Pcと射出シリンダ内樹脂圧Piとを用いて圧力損失値PLを算出する構成を示したが、これに限定されるものではない。例えば、保圧動作を開始してから所定時間経過後(例えば0.1~1.0秒後など)に検出された金型内樹脂圧Pcと射出シリンダ内樹脂圧Piとを用いて圧力損失値PLを算出するようにしてもよい。または、射出動作中に検出された金型内樹脂圧Pcと射出シリンダ内樹脂圧Piとを用いてもよい。本発明の目的に反しない限り、圧力損失値PLの算出に用いる金型内樹脂圧Pcおよび射出シリンダ内樹脂圧Piを検出するタイミングは任意である。なお、基準圧力損失値PLsとして設定する圧力損失値PLの算出に用いる金型内樹脂圧Pcおよび射出シリンダ内樹脂圧Piについても、同じタイミングで検出する。
また、上述した実施形態の説明では、圧力損失値PLから基準圧力損失値PLsを差し引いた圧力補正値Phを保圧目標圧力値Psに加えることにより補正する構成を示したが、これに限定されるものではない。例えば、基準圧力損失値PLsに対する圧力損失値PLの割合(補正割合)を保圧目標圧力値に乗じるようにしてもよい。具体的な算出例を以下に示す。
例えば、射出動作から保圧動作への切り替え時に取得した金型内樹脂圧Pcが10MPaであり、射出シリンダ内樹脂圧Piが50MPaだったとき、圧力損失値PLは40MPaとなる(50MPa-10MPa=40MPa)。基準圧力損失値PLs(40MPa)に対する圧力損失値PLの割合(補正割合)は100%となる(40MPa/40MPa=100%)。そして、保圧目標圧力値Ps(80MPa)に補正割合を乗じると、補正後の保圧目標圧力値Ps’は80MPaとなる(80MPa×100%=80MPa)。
または、射出動作から保圧動作への切り替え時に取得した金型内樹脂圧Pcが10MPaであり、射出シリンダ内樹脂圧Piが55MPaだったとき、圧力損失値PLは45MPaとなる(55MPa-10MPa=45MPa)。基準圧力損失値PLs(40MPa)に対する圧力損失値PLの割合(補正割合)は112.5%となる(45MPa/40MPa=112.5%)。そして、保圧目標圧力値Ps(80MPa)に補正割合を乗じると、補正後の保圧目標圧力値Ps’は90MPaとなる(80MPa×112.5%=90MPa)。
または、射出動作から保圧動作への切り替え時に取得した金型内樹脂圧Pcが10MPaであり、射出シリンダ内樹脂圧Piが45MPaだったとき、圧力損失値PLは35MPaとなる(45MPa-10MPa=35MPa)。基準圧力損失値PLs(40MPa)に対する圧力損失値PLの割合(補正割合)は87.5%となる(35MPa/40MPa=87.5%)。そして、保圧目標圧力値Ps(80MPa)に補正割合を乗じると、補正後の保圧目標圧力値Ps’は70MPaとなる(80MPa×87.5%=70MPa)。このような補正割合による補正後の保圧目標圧力値Ps’の算出例を図4(b)に示す。
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
1…射出成形機、2…上金型、3…下金型、4…キャビティ、5…樹脂流路、6…機台、10…射出ユニット、11…射出シリンダ、11a…ノズル、12…スクリュー、13…シリンダ駆動部、14…スクリュー駆動部、16…ロードセル、17…位置センサー、20…型締ユニット、21…可動プレート、21a…下面、21b…貫通孔、21c…上面、22…ロータリーテーブル、22a…上面、23…カバー、26…金型内圧力センサー、30…表示操作ユニット、31…表示部、32…操作部、40…制御部、V…スクリュー速度、L…スクリュー位置、Pi…射出シリンダ内樹脂圧、Pc…金型内樹脂圧、Pvp…動作切替圧力値、Ps…保圧目標圧力値、Ps’…補正後の保圧目標圧力値、PL…圧力損失値、PLs…基準圧力損失値、Ph…圧力補正値、Th…保圧期間

Claims (4)

  1. 金型のキャビティに通じるノズルが先端に設けられた射出シリンダと、
    前記射出シリンダに収容されたスクリューと、
    前記スクリューを回転および前後進させるスクリュー駆動部と、
    前記キャビティ内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧を検出する金型内圧力検出部と、
    前記射出シリンダ内の樹脂材料の圧力である射出シリンダ内樹脂圧を検出する射出シリンダ内圧力検出部と、
    前記スクリューによって前記キャビティに樹脂材料を射出する射出動作、および、前記スクリューによって前記キャビティに充填された樹脂材料に圧力を加える保圧動作、を実行するように前記スクリュー駆動部を制御する制御部と、を有し、
    前記制御部は、
    前記金型内樹脂圧に基づいて前記射出動作から前記保圧動作に切り換えるとともに、前記保圧動作において前記射出シリンダ内樹脂圧が保圧目標圧力値となるように前記スクリュー駆動部を制御し、
    前記射出シリンダ内樹脂圧から前記金型内樹脂圧を差し引いて圧力損失値を算出し、前記圧力損失値と基準圧力損失値とに基づいて前記保圧目標圧力値を補正するように構成され
    前記制御部は、前記基準圧力損失値に対する前記圧力損失値の割合を前記保圧目標圧力値に乗じることにより当該保圧目標圧力値を補正するように構成されていることを特徴とする射出成形機。
  2. 前記制御部は、前記射出動作から前記保圧動作への切り換え時に検出された前記金型内樹脂圧と前記射出シリンダ内樹脂圧とを用いて前記圧力損失値を算出するように構成されている、請求項1に記載の射出成形機。
  3. 前記基準圧力損失値は、品質基準を満足する成形品が得られたときの前記圧力損失値が設定される、請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
  4. 金型のキャビティに通じるノズルが先端に設けられた射出シリンダと、前記射出シリンダに回転および前後進可能に収容されたスクリューと、を有する射出成形機の制御方法であって、
    前記スクリューによって前記キャビティに樹脂材料を射出する射出工程と、
    前記スクリューによって前記キャビティに充填された樹脂材料に圧力を加える保圧工程と、を含み、
    前記キャビティ内の樹脂材料の圧力である金型内樹脂圧に基づいて前記射出工程から前記保圧工程に切り換えるとともに、前記保圧工程において前記射出シリンダ内の樹脂材料の圧力である射出シリンダ内樹脂圧が保圧目標圧力値となるように前記スクリューを駆動し、
    前記射出シリンダ内樹脂圧から前記金型内樹脂圧を差し引いた圧力損失値を算出し、前記圧力損失値と基準圧力損失値とに基づいて前記保圧目標圧力値を補正し、
    前記基準圧力損失値に対する前記圧力損失値の割合を前記保圧目標圧力値に乗じることにより当該保圧目標圧力値を補正することを特徴とする射出成形機の制御方法。
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