以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
(第1実施形態)
本実施形態について、図1~図4を参照して説明する。本実施形態では、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置1に対して本開示の電動圧縮機10を適用した例について説明する。冷凍サイクル装置1は、例えば、車両に搭載されるシートの内側に配置されて、シート付近を空調するために用いられる。
図1に示すように冷凍サイクル装置1では、電動圧縮機10、放熱器2、減圧機器3、蒸発器4が冷媒配管5によって順次接続されている。冷凍サイクル装置1に用いられる冷媒には、電動圧縮機10内部の摺動部分等を保護するための冷凍機油が含まれている。
電動圧縮機10は、冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮して吐出する流体ポンプである。電動圧縮機10は、ハウジング20、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機構30、および圧縮機構30を駆動するモータ40を備えている。電動圧縮機10の詳細については後述する。
放熱器2は、電動圧縮機10の冷媒吐出側に接続されている。放熱器2は、電動圧縮機10で圧縮された冷媒を暖房用ファン2aから送風される空気と熱交換させて放熱させる熱交換器で構成される。暖房用ファン2aから送風される空気は放熱器2で所望の温度となるまで加熱される。
減圧機器3は、放熱器2の冷媒出口側に接続されている。減圧機器3は、放熱器2を通過した冷媒を減圧膨張させるものである。減圧機器3は、例えば、温度式膨張弁や固定絞り機構等によって構成される。
蒸発器4は、減圧機器3の冷媒出口側に接続されている。蒸発器4は、減圧機器3で減圧された冷媒を冷房用ファン4aから送風される空気と熱交換させて蒸発させる熱交換器で構成される。冷房用ファン4aから送風される空気は蒸発器4で所望の温度となるまで冷却される。
このように構成される冷凍サイクル装置1は、放熱器2で加熱された空気および蒸発器4で冷却された空気の一方をシート付近に吹き出すことで、シート付近の空調を実施可能になっている。
以下、本実施形態の電動圧縮機10の詳細について図2、図3を参照して説明する。電動圧縮機10は、外形状が扁平な角柱形状に形成されたハウジング20を備える。ハウジング20は、複数の金属製の部材が気密に組み合されることによって構成される密閉容器である。具体的には、ハウジング20は、モータハウジング部21、吐出側ハウジング部22、およびモータハウジング部21および吐出側ハウジング部22との間に介在する中間ハウジング部23等を有している。各ハウジング部21~23は、モータハウジング部21と吐出側ハウジング部22とで中間ハウジング部23を挟み込んだ状態で一体となるように図示しない締結ボルトによって締結されている。
図3に示すように、ハウジング20の内部には、圧縮機構30、モータ40、主軸50が収容されている。圧縮機構30およびモータ40は、ハウジング20の内部において、特定方向に並んで配置されている。具体的には、圧縮機構30およびモータ40は、ハウジング20の内部において主軸50の軸方向DRaに並んで配置されている。なお、主軸50の軸方向DRaは、主軸50の軸心CLmに沿って延びる方向である。また、主軸50の軸心CLmは、主軸50のうちモータ40に接続される部位における軸心であり、モータ40の回転中心と略一致する。
ハウジング20には、冷媒入口部24および冷媒出口部25が設けられている。冷媒入口部24は、外部回路を流れる冷媒(すなわち、蒸発器4を通過した冷媒)をハウジング20の内側に吸入させるものである。また、冷媒出口部25は、圧縮機構30で圧縮された冷媒をハウジング20の外側に冷媒を吐出させるものである。
ハウジング20には、モータハウジング部21と中間ハウジング部23との間にガスケットやOリング等からなるシール部材SM1が配設されている。また、ハウジング20には、吐出側ハウジング部22と中間ハウジング部23との間に、後述する圧縮機構30の固定スクロール31が介在されている。そして、吐出側ハウジング部22と固定スクロール31との間にガスケットやOリング等からなるシール部材SM2が配設され、中間ハウジング部23との間にガスケットやOリング等からなるシール部材SM3が配設されている。
以下、ハウジング20を構成する各ハウジング部21~23の詳細について説明する。モータハウジング部21は、有底筒状に形成されており、底面を形成する第1底壁部211、および側面を形成する筒状の第1側壁部212を含んで構成されている。第1底壁部211および第1側壁部212は、一体の構造物として構成されている。
吐出側ハウジング部22は、有底筒状に形成されており、底面を形成する第2底壁部221、および側面を形成する筒状の第2側壁部222を含んで構成されている。前述の冷媒出口部25は、吐出側ハウジング部22の第2側壁部222に設けられている。
第2底壁部221、第2側壁部222、および冷媒出口部25は、一体の構造物として構成されている。
中間ハウジング部23は、モータハウジング部21と吐出側ハウジング部22との間に介在する介在部231、主軸50が挿通される円筒状の筒状部232、介在部231と筒状部232を接続する接続部233を含んで構成されている。前述の冷媒入口部24は、中間ハウジング部23の介在部231に設けられている。なお、図示しないが、介在部231には、モータ40に給電するための電気配線をハウジング20の内部に取り込むための配線取付部が設けられている。この配線取付部は、例えば、密閉性に優れたハーメチックコネクタによって構成される。
筒状部232は、ハウジング20の内部において、圧縮機構30側からモータハウジング部21の第1底壁部211に向かって突き出ている。そして、筒状部232の内側には、主軸50が挿通される挿通穴232aが形成されている。この挿通穴232aは、軸方向DRaに貫通する貫通穴で構成されている。この挿通穴232aには、後述する第1軸受部61および第2軸受部62の軸方向DRaの位置を規制するための内側突起部232bが設けられている。筒状部232は、モータ40を支持する支持部としても機能する。
接続部233は、筒状部232と介在部231の内側とを接続するものであり、円環状に形成されている。接続部233には、後述する複数の冷媒導入路234~236が形成されている。中間ハウジング部23は、介在部231、筒状部232、および介在部231が一体の構造物として構成されている。
このように構成されるハウジング20には、中間ハウジング部23と圧縮機構30の旋回スクロール32との間に、冷媒入口部24から流入した冷媒が吸入される冷媒吸入室200Aが形成されている。
冷媒吸入室200Aは、複数の冷媒導入路234~236を介して冷媒入口部24に連通している。複数の冷媒導入路234~236は、接続部233に形成されている。具体的には、複数の冷媒導入路234~236は、接続部233を軸方向DRaに貫通する貫通穴で構成されている。複数の冷媒導入路234~236の詳細については後述する。
また、ハウジング20には、モータハウジング部21および中間ハウジング部23の内側にモータ40が収容されるモータ室200Bが形成されている。このモータ室200Bは、中間ハウジング部23の接続部233に形成された有底の連通穴233aによって冷媒入口部24に連通している。これにより、モータ室200Bには、冷媒が流入する。
また、モータ室200Bは、冷媒入口部24から流入した冷媒の少なくとも一部がモータ室200Bを介して複数の冷媒導入路234~236に流れるように、複数の冷媒導入路234~236に連通している。すなわち、冷媒入口部24は、冷媒入口部24から流入した冷媒の少なくとも一部がモータ室200Bを介して複数の冷媒導入路234~236に流れるように、ハウジング20におけるモータ室200Bを形成する部位に連通している。
さらに、ハウジング20には、吐出側ハウジング部22と圧縮機構30の固定スクロール31との間に圧縮機構30で圧縮された冷媒が吐出される冷媒吐出室200Cが形成されている。冷媒吐出室200Cは、圧縮機構30から吐出された冷媒に冷媒出口部25に向けて流れるように冷媒出口部25に連通している。
ハウジング20の内側には、モータ40および圧縮機構30の一部が収容されている。ハウジング20の内側には、モータハウジング部21側にモータ40が配置され、吐出側ハウジング部22側に圧縮機構30が配置されている。
モータ40は、回転磁界を生成するステータ41、ステータ41で生成された回転磁界によって主軸50の軸心CLmを中心に回転するロータ42を含んで構成されている。
モータ40は、ロータ42の一部がステータ41に対して主軸50の径方向DRrの外側に配置されるアウタロータ型の電動機で構成されている。
ステータ41は、金属製の磁性材料で形成された円筒状のステータコア411、およびステータコア411に巻き付けられたステータコイル412で構成されている。ステータ41は、圧入等の固定手法によって中間ハウジング部23の筒状部232の外側に固定されている。
ロータ42は、円筒状のロータ本体部421、ロータ本体部421の一方の開口を閉塞する側端部422、ロータ本体部421の内側に埋設された複数の磁石423を含んで構成されている。
ロータ本体部421は、ロータ42において、主軸50の径方向DRrにおいてステータ41と対向する部位である。ロータ本体部421には、複数の磁石423がその周方向に所定の間隔をあけて埋設されている。
側端部422は、ロータ本体部421を主軸50に接続する主軸接続部である。側端部422には、略中央部分に主軸50の電動機側端部501を受け入れるための貫通穴422aが形成されている。なお、電動機側端部501は、主軸50における圧縮機構30よりもモータ40側に近い端部である。
ロータ42は、磁石423とステータコア411との間に微小な隙間が形成された状態で、電動機側端部501に設けられた連結機構501aによって主軸50に連結されている。
主軸50は、モータ40の回転動力を圧縮機構30に伝達する伝達部材である。主軸50は、上述の連結機構501aが設けられた電動機側端部501、軸方向DRaにおける電動機側端部501の反対側の端部である圧縮側端部502を有している。
主軸50の電動機側端部501は、主軸50を筒状部232の挿通穴232aに挿通させた際に挿通穴232aから外部に露出するように構成されている。すなわち、主軸50は、筒状部232の挿通穴232aに挿通させた際に電動機側端部501が挿通穴232aの外部に露出するように軸方向DRaの寸法が設定されている。
主軸50は、第1軸受部61および第2軸受部62によって回転自在に支持されている。第1軸受部61は、主軸50のうち軸方向DRaにおいてモータ40側に近い部位を回転可能に支持するものである。第2軸受部62は、主軸50のうち軸方向DRaにおいてモータ40よりも圧縮機構30側に近い部位を回転可能に支持するものである。
第1軸受部61および第2軸受部62それぞれは、中間ハウジング部23の筒状部232の内側に設置されている。本実施形態の第1軸受部61および第2軸受部62それぞれは、筒状部232の内側に圧入等によって固定されている。なお、第1軸受部61および第2軸受部62それぞれは、筒状部232の内側に固定されている必要はなく、例えば、筒状部232の内側に当接するように設置されていてもよい。
主軸50の圧縮側端部502には、主軸50の軸心CLmに対して偏心する偏心軸部51が接続されている。この偏心軸部51は、その軸心CLsが主軸50の軸心CLmに対して主軸50の径方向DRrに所定の偏心量ΔEだけずれている。なお、径方向DRrは、主軸50の軸心CLmに対して直交する方向である。
偏心軸部51は、第3軸受部63を介して圧縮機構30に連結されている。具体的には、偏心軸部51の外周側は、第3軸受部63を介して圧縮機構30の旋回スクロール32が連結されている。
第3軸受部63は、後述する旋回スクロール32のボス部321aの内側に圧入等の手段で固定されている。なお、第3軸受部63は、ボス部321aの内側に固定されている必要はなく、例えば、ボス部321aの内側に当接するように設置されていてもよい。
ここで、主軸50に対して偏心軸部51が接続されていると、主軸50に対して偏心軸部51、第3軸受部63、旋回スクロール32の遠心力が作用する。このため、偏心軸部51には、主軸50に作用する遠心力を抑制するためのウェイトバランス52が設けられている。なお、主軸50、偏心軸部51、およびウェイトバランス52は、一体に回転するように一体の構造体として構成されている。
圧縮機構30は、ハウジング20に収容されて冷媒吸入室200Aの冷媒を圧縮室Vに吸入して圧縮するものである。圧縮機構30は、ハウジング20に対して固定された固定部およびモータ40から駆動力が伝達されることで固定部に対して変位する可動部を有し、可動部の変位に伴って圧縮室Vの容積を変化させる構造になっている。
本実施形態の圧縮機構30は、固定歯部312と旋回歯部322とを噛み合わせた状態で、旋回スクロール32を固定スクロール31に対して旋回させることで旋回スクロール32の外側から吸い込んだ冷媒を圧縮するスクロール型の圧縮機構で構成されている。なお、本実施形態では、固定スクロール31が固定部を構成し、旋回スクロール32が可動部を構成する。
固定スクロール31は、ハウジング20に固定された固定基板部311、および固定基板部311から突き出る渦巻き状の固定歯部312を有する。固定基板部311の略中央部分には、圧縮機構30で圧縮された冷媒を吐出する冷媒吐出口311aが形成されている。また、固定基板部311には、冷媒吐出口311aから圧縮機構30への冷媒の逆流を防止するためのリード弁313が設けられている。
旋回スクロール32は、固定基板部311のうち固定歯部312が形成される面に対向して配置される旋回基板部321、および旋回基板部321から固定基板部311側に向かって突き出る渦巻き状の旋回歯部322を有する。
旋回基板部321には、その略中央部分に偏心軸部51および第3軸受部63を受け入れる受入部として機能するボス部321aが形成されている。ボス部321aは、旋回基板部321の背面(すなわち、中間ハウジング部23に対向する面)に形成されている。図示しないが、旋回基板部321には、旋回スクロール32の自転を防止するための自転防止機構が設けられている。
固定スクロール31および旋回スクロール32は、固定歯部312と旋回歯部322とを噛み合わせることで、固定歯部312と旋回歯部322との間に冷媒を圧縮する圧縮室Vが形成される。また、旋回スクロール32の外側には、圧縮室Vに冷媒を導入するための冷媒吸入室200Aが形成される。
ここで、電動圧縮機10では、電力供給によってモータ40が発熱することから、モータ40を適宜冷却する必要がある。このため、電動圧縮機10は、モータ40が収容されるモータ室200Bに冷媒入口部24から流入した低温の冷媒が流れ込むように、モータ室200Bと冷媒入口部24とが連通している。
ところが、電動圧縮機10は、冷媒の導入位置および導出位置が固定されており、モータ室200Bにおける冷媒が流れ易い領域と冷媒が流れ難い領域とが形成される虞がある。このことは、モータ40の一部が過度に高温になってしまう要因となることから好ましくない。
これらを踏まえて、電動圧縮機10は、ハウジング20の内側を流れる冷媒の流れ方が随時変化する構造になっている。すなわち、電動圧縮機10は、複数の冷媒導入路234~236の少なくとも1つが、旋回スクロール32の変位に伴って流路断面積が変化するようにハウジング20の内側に設けられている。本実施形態の各導入路234~236は、一部の冷媒導入路が、旋回スクロール32の変位に伴って他の冷媒導入路とは異なる流路断面積となるようにハウジング20の内側に設けられている。
図3に示すように、中間ハウジング部23には、第1冷媒導入路234、第2冷媒導入路235、および第3冷媒導入路236が形成されている。第1冷媒導入路234、第2冷媒導入路235、および第3冷媒導入路236は、主軸50を囲むように等間隔をあけて形成されている。具体的には、第1冷媒導入路234は、中間ハウジング部23における冷媒入口部24および連通穴233aが形成された位置と主軸50を挟んで反対側に設けられている。また、第2冷媒導入路235および第3冷媒導入路236は、中間ハウジング部23のうち第1冷媒導入路234が形成された位置から主軸50の周りに120°程度回転させた位置に設けられている。
第1冷媒導入路234、第2冷媒導入路235、および第3冷媒導入路236は、旋回スクロール32が変位した際に一部の流路断面積が変化するように、中間ハウジング部23のうち、軸方向DRaにおいて旋回スクロール32と対向する部位に形成されている。すなわち、第1冷媒導入路234、第2冷媒導入路235、および第3冷媒導入路236は、旋回スクロール32が変位した際に、一部の冷媒導入路と旋回スクロール32とが主軸50の軸方向DRaにおいて対向するように中間ハウジング部23に設けられている。
第1冷媒導入路234、第2冷媒導入路235、および第3冷媒導入路236は、旋回スクロール32が変位した際に一部の流路断面積が変化するように、主軸50の軸心CLmから径方向DRrに所定距離だけ離れた部位に形成されている。
本実施形態の各導入路234~236それぞれは、一部の冷媒導入路が、旋回スクロール32の変位に伴って他の冷媒導入路とは異なる流路断面積となるように主軸50の軸心CLmから径方向DRrに一定の距離だけ離れた部位に形成されている。
具体的には、各導入路234~236は、主軸50の軸心CLmと流路穴内側との距離である内側距離Lが、各導入路234~236の穴径Dh、旋回基板部321の半径である旋回基板半径Rs、主軸50と偏心軸部51との偏心量ΔEに基づいて設定されている。
内側距離Lは、旋回スクロール32が変位した際に、各導入路234~236の一部が軸方向DRaにおいて旋回スクロール32と重なり合うように、旋回基板半径Rsに偏心量ΔEを加えた値よりも小さくなるように設定されている。また、内側距離Lは、旋回スクロール32が変位した際に、各導入路234~236の一部が旋回スクロール32によって閉塞されないように、内側距離Lに穴径Dhを加算した値が旋回基板半径Rsに偏心量ΔEを加えた値よりも大きくなるように設定されている。すなわち、第1冷媒導入路234、第2冷媒導入路235、および第3冷媒導入路236は、少なくとも以下の不等式F1を満たす範囲で設定されている。
Rs+ΔE-Dh<L<Rs+ΔE ・・・(F1)
このように構成される電動圧縮機10は、ステータ41への給電によってモータ40のロータ42および主軸50が回転すると、固定スクロール31に対して旋回スクロール32が旋回する。
これにより、図1のFR1に示すように、ハウジング20の冷媒入口部24からハウジング20の内側のモータ室200Bに導入される。冷媒入口部24から導入される冷媒は、蒸発器4を通過した後の低温低圧の冷媒である。このため、モータ室200Bに冷媒が導入されることでモータ40が冷却される。
モータ室200Bに導入された冷媒は、図1の矢印FR2に示すように、中間ハウジング部23の接続部233に形成された複数の冷媒導入路234~236を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。
ここで、電動圧縮機10は、旋回スクロール32が変位すると、図4に示すように、複数の冷媒導入路234~236の少なくとも一部の流路断面積が変化する構造になっている。
例えば、図4の紙面左上に示すように、旋回スクロール32が下方に変位した状態では、第1冷媒導入路234の一部が旋回スクロール32によって塞がれ、第1冷媒導入路234の流路断面積が小さくなる。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、主に第2冷媒導入路235および第3冷媒導入路236を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第2冷媒導入路235および第3冷媒導入路236に向かう冷媒流が形成される。これにより、モータ室200Bの紙面上方に冷媒流が形成され、モータ40のうちモータ室200Bの紙面上方に位置する部位が冷却される。また、第1冷媒導入路234を通過する冷媒は、旋回スクロール32の背面に衝突することになる。このため、第1冷媒導入路234を通過する冷媒に含まれる冷凍機油を旋回スクロール32と中間ハウジング部23との摺動面等に対して供給し、旋回スクロール32と中間ハウジング部23との潤滑性を確保することが可能となる。
図4の紙面左上に示す状態から主軸50が90°程度回転すると、旋回スクロール32が図4の紙面右上に示す位置に変位する。この状態では、第3冷媒導入路236の一部が旋回スクロール32によって塞がれ、第3冷媒導入路236の流路断面積が小さくなる。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、主に第1冷媒導入路234および第2冷媒導入路235を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第1冷媒導入路234および第2冷媒導入路235に向かう冷媒流が形成される。これにより、モータ室200Bにおける紙面左上方と下方に冷媒流が形成され、モータ40のうちモータ室200Bの紙面左上方と下方に位置する部位が冷却される。また、第3冷媒導入路236を通過する冷媒に含まれる冷凍機油によって、旋回スクロール32と中間ハウジング部23との潤滑性を確保することが可能となる。
図4の紙面左上に示す状態から主軸50が180°程度回転すると、旋回スクロール32が図4の紙面右下に示す位置に変位する。この状態では、第2冷媒導入路235および第3冷媒導入路236の一部が旋回スクロール32によって塞がれ、第2冷媒導入路235および第3冷媒導入路236の流路断面積が小さくなる。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、主に第1冷媒導入路234を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第1冷媒導入路234に向かう冷媒流が形成される。これにより、モータ室200Bにおける紙面下方に冷媒流が形成され、モータ40のうちモータ室200Bの紙面下方に位置する部位が冷却される。また、第2冷媒導入路235および第3冷媒導入路236を通過する冷媒に含まれる冷凍機油によって、旋回スクロール32と中間ハウジング部23との潤滑性を確保することが可能となる。
図4の紙面左上に示す状態から主軸50が270°程度回転すると、旋回スクロール32が図4の紙面左下に示す位置に変位する。この状態では、第2冷媒導入路235の一部が旋回スクロール32によって塞がれ、第2冷媒導入路235の流路断面積が小さくなる。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、主に第1冷媒導入路234および第3冷媒導入路236を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第1冷媒導入路234および第3冷媒導入路236に向かう冷媒流が形成される。これにより、モータ室200Bにおける紙面右上方と下方に冷媒流が形成され、モータ40のうちモータ室200Bの紙面右上方と下方に位置する部位が冷却される。また、第2冷媒導入路235を通過する冷媒に含まれる冷凍機油によって、旋回スクロール32と中間ハウジング部23との潤滑性を確保することが可能となる。
続いて、冷媒吸入室200Aに流れ込んだ冷媒は、圧縮機構30の圧縮室Vで圧縮される。圧縮室Vで圧縮された冷媒は、固定スクロール31の冷媒吐出口311aから冷媒吐出室200Cに吐出された後、冷媒出口部25を介して、放熱器2の冷媒入口側に向けて導出される。
以上説明した電動圧縮機10は、圧縮機構30の駆動時に、複数の冷媒導入路234~236における流路断面積が変化する構造になっている。これによれば、冷媒入口部24から冷媒吸入室200Aに向かう冷媒の流れ方が多様な流れとなる。これに伴って、冷媒入口部24に連通するモータ室200Bにおける冷媒の流れ方も多様な流れとなる。
このように、本実施形態の電動圧縮機10によれば、モータ室200Bにおいて冷媒が拡散し易く、モータ室200Bの一部に冷媒が流れ難い領域が形成されることが抑制されるので、モータ40を適切に冷却することが可能となる。
具体的には、複数の冷媒導入路234~236は、一部の冷媒導入路が、旋回スクロール32の変位に伴って他の冷媒導入路とは異なる流路断面積となるようにハウジング20の内側に設けられている。
このように、旋回スクロール32の変位に伴って一部の冷媒導入路が他の冷媒導入路と異なる流路断面積に変化する構造では、旋回スクロール32の変位に伴って冷媒入口部24から冷媒吸入室200Aに向かう冷媒の流れ方が大きく変化する。これに伴いモータ室200Bにおける冷媒の流れ方も多様な流れとなるので、モータ40を適切に冷却することが可能となる。
また、電動圧縮機10は、モータ40として、ロータ42の一部がステータ41に対して主軸50の径方向DRrの外側に配置されるアウタロータ型の電動機が採用されている。アウタロータ型の電動機では、回転部である主軸50およびロータ42がステータ41の内外に位置する構造であり、主軸50およびロータ42それぞれがステータ41の内側に位置するインナロータ型の電動機に比べてモータ室200Bが複雑な構造となる。モータ室200Bが複雑になると、モータ室200Bに冷媒の淀みが生じ易くなり、モータ40を適切に冷却することが困難となる。このため、モータ40を適切に冷却することが可能な本実施形態の電動圧縮機10は、モータ40がアウタロータ型の電動機で構成されるものに好適である。
加えて、電動圧縮機10は、圧縮機構30としてスクロール型の圧縮機構が採用されている。スクロール型の圧縮機構は、レシプロ型の圧縮機構の如く軸方向DRaに可動する可動部材が必要ないので、圧縮機構30全体として軸方向DRaの体格を小型化することができる。このため、圧縮機構30としてスクロール型の圧縮機構を採用すれば、電動圧縮機10全体としての軸方向DRaの体格を抑えることが可能となる。
(第1実施形態の変形例)
上述の第1実施形態では、一部の冷媒導入路が旋回スクロール32の変位に伴って他の冷媒導入路とは異なる流路断面積となるように、各導入路234~236それぞれの内側距離Lが同じ長さに設定されたものを例示したが、これに限定されない。電動圧縮機10は、例えば、旋回スクロール32の変位に伴って各導入路234~236が同程度の流路断面積となるように、それぞれの内側距離Lが異なる長さに設定されていてもよい。このことは、後述する第3実施形態等においても同様である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図5、図6を参照して説明する。本実施形態の電動圧縮機10は、中間ハウジング部23に対して2つの冷媒導入路237、238が形成されている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図5に示すように、中間ハウジング部23には、第1実施形態の第1冷媒導入路234、第2冷媒導入路235、および第3冷媒導入路236に代えて、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238が形成されている。
第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238は、主軸50の周りに形成されている。具体的には、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238は、中間ハウジング部23のうち冷媒入口部24および連通穴233aが形成された位置から主軸50の周りに±120°程度回転させた位置に設けられている。
第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238は、旋回スクロール32が変位した際に一部の流路断面積が変化するように、中間ハウジング部23のうち、軸方向DRaにおいて旋回スクロール32と対向する部位に形成されている。すなわち、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238は、旋回スクロール32が変位した際に、一部の冷媒導入路と旋回スクロール32とが主軸50の軸方向DRaにおいて対向するように中間ハウジング部23に設けられている。
第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238それぞれは、一部の冷媒導入路が、旋回スクロール32の変位に伴って他の冷媒導入路とは異なる流路断面積となるように主軸50の軸心CLmから径方向DRrに一定の距離だけ離れた部位に形成されている。具体的には、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238は、第1実施形態で説明した不等式F1を満たす範囲で設定されている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下、本実施形態の電動圧縮機10における旋回スクロール32の変位に伴う第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238の流路断面積の変化について図6を参照して説明する。
図6に示すように、本実施形態の電動圧縮機10は、旋回スクロール32が変位すると、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238の少なくとも一部の流路断面積が変化する構造になっている。
例えば、図6の紙面左上に示すように、旋回スクロール32が下方に変位した状態では、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238の一部が旋回スクロール32によって塞がれ、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238の流路断面積が小さくなる。この場合、モータ室200Bから第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238を介して冷媒吸入室200Aに流れ込む流量が少なくなる。
図6の紙面左上に示す状態から主軸50が90°程度回転すると、旋回スクロール32が図6の紙面右上に示す位置に変位する。この状態では、第5冷媒導入路238の一部が旋回スクロール32によって塞がれ、第5冷媒導入路238の流路断面積が小さくなる。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、主に第4冷媒導入路237を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第4冷媒導入路237に向かう冷媒流が形成されることで、紙面左下方に位置する部位が冷却される。
図6の紙面左上に示す状態から主軸50が180°程度回転すると、旋回スクロール32が図6の紙面右下に示す位置に変位する。この状態では、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238それぞれが全開となり、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238の流路断面積が最大となる。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238それぞれを介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238に向かう冷媒流が形成されることで、モータ40のうちモータ室200Bの紙面下方に位置する部位が冷却される。
図6の紙面左上に示す状態から主軸50が270°程度回転すると、旋回スクロール32が図6の紙面左下に示す位置に変位する。この状態では、第4冷媒導入路237の一部が旋回スクロール32によって塞がれ、第4冷媒導入路237の流路断面積が小さくなる。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、主に第5冷媒導入路238を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第5冷媒導入路238に向かう冷媒流が形成されることで、紙面右下方に位置する部位が冷却される。
ここで、モータ室200Bにおける紙面上方は、冷媒入口部24に連通しており、冷媒入口部24からの冷媒が流れ込む。このため、モータ室200Bにおける紙面上方に位置する部位は、冷媒入口部24から流れ込んだ冷媒によって冷却される。
以上説明した本実施形態の電動圧縮機10は、圧縮機構30の駆動時に、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238における流路断面積が変化する構造になっている。これによれば、モータ室200Bにおいて冷媒が拡散し易く、モータ室200Bの一部に冷媒が流れ難い領域が形成されることが抑制されるので、モータ40を適切に冷却することが可能となる。
(第2実施形態の変形例)
上述の第2実施形態では、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238それぞれの内側距離Lが同じ長さに設定されたものを例示したが、これに限定されない。電動圧縮機10は、例えば、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238それぞれの内側距離Lが異なる長さに設定されていてもよい。このことは、後述する第4実施形態等においても同様である。
また、上述の第2実施形態では、中間ハウジング部23に対して2つの冷媒導入路237、238が形成されているものを例示したが、これに限定されない。中間ハウジング部23に形成する冷媒導入路は、モータ40の発熱特性等に応じて適宜設定されもので、例えば、4つ以上形成されていてもよい。また、中間ハウジング部23に形成する冷媒導入路の設定位置は、上述の第1実施形態および第2実施形態とは異なる位置に設定されていてもよい。このことは、以降の実施形態においても同様である。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図7~図9を参照して説明する。本実施形態の電動圧縮機10は、旋回スクロール32が所定の位置に変位した際に、複数の冷媒導入路234~236の少なくとも1つが旋回スクロール32によって閉塞される構造になっている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図7に示すように、第1冷媒導入路234、第2冷媒導入路235、および第3冷媒導入路236は、旋回スクロール32が所定の位置に変位した際に、旋回スクロール32によって一部の導入路が完全に閉塞されるように、ハウジング20の内側に設けられている。
図8に示すように、本実施形態の各導入路234~236それぞれは、一部の冷媒導入路が、旋回スクロール32の変位に伴って他の冷媒導入路とは異なる流路断面積となるように内側距離Lが同程度の長さに設定されている。
具体的には、内側距離Lは、旋回スクロール32が変位した際に、各導入路234~236の一部が旋回スクロール32によって閉塞されるように、内側距離Lに穴径Dhを加算した値が旋回基板半径Rsに偏心量ΔEを加えた値以下となるように設定されている。
また、内側距離Lは、各導入路234~236全てが常に旋回スクロール32によって閉塞されないように、内側距離Lに穴径Dhを加算した値が旋回基板半径Rsから偏心量ΔEを減じた値よりも大きくなるように設定されている。すなわち、第1冷媒導入路234、第2冷媒導入路235、および第3冷媒導入路236は、少なくとも以下の不等式F2を満たす範囲で設定されている。
Rs-ΔE-Dh<L≦Rs+ΔE-Dh ・・・(F2)
その他の構成について第1実施形態と同様である。以下、本実施形態の電動圧縮機10における旋回スクロール32の変位に伴う各導入路234~236の流路断面積の変化について図9を参照して説明する。
図9の紙面左上に示すように、旋回スクロール32が下方に変位した状態では、第1冷媒導入路234が旋回スクロール32によって閉塞される。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、第2冷媒導入路235および第3冷媒導入路236を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。これにより、モータ室200Bの紙面上方に冷媒流が形成され、モータ40のうちモータ室200Bの紙面上方に位置する部位が冷却される。
図9の紙面左上に示す状態から主軸50が90°程度回転すると、旋回スクロール32が図9の紙面右上に示す位置に変位する。この状態では、第3冷媒導入路236が旋回スクロール32によって閉塞される。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、第1冷媒導入路234および第2冷媒導入路235を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。これにより、モータ室200Bにおける紙面左上方と下方に冷媒流が形成され、モータ40のうちモータ室200Bの紙面左上方と下方に位置する部位が冷却される。
図9の紙面左上に示す状態から主軸50が180°程度回転すると、旋回スクロール32が図9の紙面右下に示す位置に変位する。この状態では、第2冷媒導入路235および第3冷媒導入路236が旋回スクロール32によって閉塞される。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、第1冷媒導入路234を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。これにより、モータ室200Bにおける紙面下方に冷媒流が形成され、モータ40のうちモータ室200Bの紙面下方に位置する部位が冷却される。
図9の紙面左上に示す状態から主軸50が270°程度回転すると、旋回スクロール32が図9の紙面左下に示す位置に変位する。この状態では、第2冷媒導入路235が旋回スクロール32によって閉塞される。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、第1冷媒導入路234および第3冷媒導入路236を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。これにより、モータ室200Bにおける紙面右上方と下方に冷媒流が形成され、モータ40のうちモータ室200Bの紙面右上方と下方に位置する部位が冷却される。
以上説明した本実施形態の電動圧縮機10は、旋回スクロール32が所定の位置に変位した際に、複数の冷媒導入路234~236の少なくとも1つが旋回スクロール32によって閉塞される構造になっている。
このように、旋回スクロール32の変位に伴って一部の冷媒導入路が閉鎖される構造では、旋回スクロール32の変位に伴って冷媒入口部24から冷媒吸入室200Aに向かう冷媒の流れ方に加えて、冷媒の流速が大きく変化する。これに伴いモータ室200Bの隅々まで低温の冷媒が拡散され易くなるので、モータ40を適切に冷却することが可能となる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図10、図11を参照して説明する。本実施形態の電動圧縮機10は、旋回スクロール32が所定の位置に変位した際に、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238の少なくとも1つが旋回スクロール32によって閉塞される構造になっている点が第2実施形態と相違している。本実施形態では、第2実施形態と異なる部分について主に説明し、第2実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図10に示すように、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238は、旋回スクロール32が所定の位置に変位した際に、旋回スクロール32によって一部の導入路が完全に閉塞されるように、ハウジング20の内側に設けられている。
本実施形態の各導入路234~236それぞれは、一部の冷媒導入路が、旋回スクロール32の変位に伴って他の冷媒導入路とは異なる流路断面積となるように内側距離Lが同程度の長さに設定されている。具体的には、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238は、第3実施形態で説明した不等式F2を満たす範囲で設定されている。
その他の構成は、第2実施形態と同様である。以下、本実施形態の電動圧縮機10における旋回スクロール32の変位に伴う第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238の流路断面積の変化について図11を参照して説明する。
図11の紙面左上に示すように、旋回スクロール32が下方に変位した状態では、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238それぞれが旋回スクロール32によって閉塞される。この場合、モータ室200Bから冷媒吸入室200Aへの冷媒の供給が停止するので、圧縮機構30には、冷媒吸入室200Aに残存する冷媒が吸入される。なお、本実施形態の冷媒吸入室200Aは、圧縮機構30での一回の吸入工程で必要とされる冷媒量を貯留可能な大きさを有している。
図11の紙面左上に示す状態から主軸50が90°程度回転すると、旋回スクロール32が図11の紙面右上に示す位置に変位する。この状態では、第5冷媒導入路238が旋回スクロール32によって閉塞される。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、第4冷媒導入路237を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第4冷媒導入路237に向かう冷媒流が形成されることで、紙面左下方に位置する部位が冷却される。
図11の紙面左上に示す状態から主軸50が180°程度回転すると、旋回スクロール32が図11の紙面右下に示す位置に変位する。この状態では、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238それぞれが開放される。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238それぞれを介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238に向かう冷媒流が形成されることで、モータ40のうちモータ室200Bの紙面下方に位置する部位が冷却される。
図11の紙面左上に示す状態から主軸50が270°程度回転すると、旋回スクロール32が図11の紙面左下に示す位置に変位する。この状態では、第4冷媒導入路237が旋回スクロール32によって閉塞される。この場合、モータ室200Bに導入された冷媒は、第5冷媒導入路238を介して、冷媒吸入室200Aに流れ込む。この際、モータ室200Bでは、ハウジング20の内側において、第5冷媒導入路238に向かう冷媒流が形成されることで、紙面右下方に位置する部位が冷却される。
ここで、モータ室200Bにおける紙面上方は、冷媒入口部24に連通しており、冷媒入口部24からの冷媒が流れ込む。このため、モータ室200Bにおける紙面上方に位置する部位は、冷媒入口部24から流れ込んだ冷媒によって冷却される。
以上説明した本実施形態の電動圧縮機10は、旋回スクロール32が所定の位置に変位した際に、第4冷媒導入路237および第5冷媒導入路238の少なくとも1つが旋回スクロール32によって閉塞される構造になっている。これによると、旋回スクロール32の変位に伴って冷媒入口部24から冷媒吸入室200Aに向かう冷媒の流れ方に加えて、冷媒の流速が大きく変化する。これに伴いモータ室200Bの隅々まで低温の冷媒が拡散され易くなるので、モータ40を適切に冷却することが可能となる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図12を参照して説明する。本実施形態の電動圧縮機10は、ハウジング20における冷媒入口部24が設定される位置が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図12に示すように、複数の冷媒導入路234~236は、ハウジング20の内側において圧縮機構30とモータ40との間に設けられている。すなわち、複数の冷媒導入路234~236は、圧縮機構30とモータ40との間に介在する中間ハウジング部23の接続部233に設けられている。そして、冷媒入口部24は、ハウジング20のうち、主軸50の軸方向DRaにおいて複数の冷媒導入路234~236よりもモータ40に近い部位に設けられている。
ハウジング20において複数の冷媒導入路234~236よりもモータ40に近い部位は、モータハウジング部21の第1底壁部211と、第1側壁部212のうち主軸50の径方向DRrにおいて電動機側端部501や側端部422と重なり合う部位である。
本実施形態の冷媒入口部24は、電動圧縮機10の軸方向DRaの体格増大を抑えるために、第1側壁部212のうち主軸50の径方向DRrにおいて電動機側端部501や側端部422と重なり合う部位に設けられている。
その他の構成は第1実施形態と同様である。本実施形態の電動圧縮機10は、冷媒入口部24が、ハウジング20のうち、主軸50の軸方向DRaにおいて複数の冷媒導入路234~236よりもモータ40に近い部位に設けられている。これによると、モータ室200Bにおける複数の冷媒導入路234~236から離れた空間にも冷媒を流すことができるので、モータ40全体を適切に冷却することが可能となる。
(第5実施形態の変形例)
上述の第5実施形態では、冷媒入口部24が、第1側壁部212のうち主軸50の径方向DRrにおいて電動機側端部501や側端部422と重なり合う部位に設けられているものを例示したが、これに限定されない。冷媒入口部24は、例えば、モータハウジング部21の第1底壁部211に設けられていてもよい。
上述の第5実施形態で説明した冷媒入口部24の配置形態は、第1実施形態で説明した電動圧縮機10だけでなく、第2~第4実施形態で説明した電動圧縮機10や以降の実施形態で説明する電動圧縮機10にも適用可能である。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、図13~図15を参照して説明する。本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42がモータ室200Bにおいて所定の方向に向かう冷媒流を発生可能に構成されている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図13に示すように、本実施形態のロータ42は、ロータ本体部421に対して、主軸50の軸方向DRaに沿って流れる冷媒流を発生させる対向側軸方向流発生機構43が設けられている。
対向側軸方向流発生機構43は、ロータ本体部421の外周側に設けられた複数の羽根431で構成されている。複数の羽根431は、ロータ本体部421から径方向DRrの外側に向けて突出している。
図14および図15に示すように、複数の羽根431は、ロータ本体部421の周方向に等間隔をあけて配置されている。複数の羽根431は、ロータ42が回転した際に、ロータ本体部421の外側に、主軸50の圧縮側端部502側から電動機側端部501側に向かう冷媒流を発生させる翼形状を有している。
また、ロータ42には、主軸接続部を構成する側端部422に、主軸50の軸方向DRaに貫通する貫通穴422aが複数形成されている。この貫通穴422aは、側端部422のうち主軸50の軸方向DRaにステータ41に対向する位置に、主軸50を囲むように等間隔をあけて形成されている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下、本実施形態の電動圧縮機10におけるモータ室200Bにおける冷媒の流れ方について説明する。電動圧縮機10は、ステータ41への給電によってモータ40のロータ42および主軸50が回転すると、固定スクロール31に対して旋回スクロール32が旋回する。これにより、冷媒入口部24からハウジング20の内側のモータ室200Bに導入される。
モータ室200Bに導入された冷媒の一部は、図13の矢印FR3に示すように、対向側軸方向流発生機構43によって、ロータ本体部421の外側を主軸50の圧縮側端部502側から電動機側端部501側に向かって流れる。電動機側端部501側に流れた冷媒は、図13の矢印FR4に示すように、側端部422に形成された貫通穴422aを通過した後、ステータ41に向かって流れる。その後、冷媒は、ステータ41とロータ42の磁石423との間に形成される隙間に流れ込む。
以上説明した本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42の回転を利用してモータ室200Bに冷媒流を発生させる構造になっている。これによれば、モータ室200Bにおいて冷媒が拡散し易くなる。このため、モータ室200Bの一部に冷媒が流れ難い領域が形成されることが抑制されるので、モータ40を適切に冷却することが可能となる。
特に、本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42の回転を利用してモータ室200Bに主軸50の軸方向DRaに沿う冷媒流を発生させる構造になっている。これによれば、モータ室200Bにおいて冷媒が主軸50の軸方向DRaにも拡散し易くなるため、モータ40における主軸50の軸方向DRaの冷却ムラの発生を抑制することができる。
ここで、モータ40では、ステータ41に給電されることからステータ41が高温になり易い。また、ロータ42に配設される磁石423は、その周囲の温度が変化すると磁気特性が変化してしまうことがある。
このため、本実施形態の如く、圧縮機構30に吸入される低温の冷媒がロータ42の磁石423とステータ41との隙間を介して流れる構造とすれば、ステータ41を熱的に保護しつつ、温度変化に伴う磁石423の磁気特性の変化を抑制することができる。このことは、以降の実施形態においても同様である。
(第6実施形態の変形例)
上述の第6実施形態では、対向側軸方向流発生機構43として、ロータ42が回転した際に主軸50の圧縮側端部502側から電動機側端部501側に向かう冷媒流を発生させる翼形状を有する複数の羽根431で構成されるものを例示したが、これに限定されない。対向側軸方向流発生機構43は、例えば、ロータ42が回転した際に主軸50の電動機側端部501側から圧縮側端部502側に向かう冷媒流を発生させる翼形状を有する複数の羽根431で構成されていてもよい。
上述の第6実施形態で説明した対向側軸方向流発生機構43は、第1実施形態で説明した電動圧縮機10だけでなく、第2~第5実施形態で説明した電動圧縮機10にも適用可能である。
上述の第6実施形態では、圧縮機構30の駆動時に、複数の冷媒導入路234~236における流路断面積が変化する構造になっているものを例示したが、これに限定されない。電動圧縮機10は、圧縮機構30の駆動時に、複数の冷媒導入路234~236における流路断面積が変化しない構造になっていてもよい。
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、図16~図18を参照して説明する。本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42が主軸50の径方向DRrに沿って流れる冷媒流を発生可能に構成されている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図16に示すように、本実施形態のロータ42には、対向側軸方向流発生機構43の代わりに、主軸50の径方向DRrに沿って流れる冷媒流を発生させる径方向流発生機構44が設けられている。径方向流発生機構44は、側端部422に対して形成されている。
径方向流発生機構44は、側端部422の外側に設けられた複数の羽根441で構成されている。複数の羽根441は、側端部422からモータハウジング部21の第1底壁部211に向かって突き出ている。
図17および図18に示すように、複数の羽根441は、側端部422の中心部から外側に向かって放射状に延びている。複数の羽根441は、ロータ42が回転した際に、モータハウジング部21の第1底壁部211と側端部422との間に、側端部422の外周側から中心部に向かう冷媒流を発生させる翼形状を有している。
また、ロータ42には、主軸接続部を構成する側端部422に、主軸50の軸方向DRaに貫通する貫通穴422aが複数形成されている。この貫通穴422aは、側端部422のうち主軸50の軸方向DRaにステータ41に対向する位置に、主軸50を囲むように等間隔をあけて形成されている。複数の羽根441は、側端部422の中心部から外側に向かって流れる冷媒が、側端部422に設けられた貫通穴422aに導かれるように、湾曲した形状を有している。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下、本実施形態の電動圧縮機10におけるモータ室200Bにおける冷媒の流れ方について説明する。電動圧縮機10は、ステータ41への給電によってモータ40のロータ42および主軸50が回転すると、固定スクロール31に対して旋回スクロール32が旋回する。これにより、冷媒入口部24からハウジング20の内側のモータ室200Bに導入される。
モータ室200Bに導入された冷媒の一部は、図16の矢印FR5に示すように、径方向流発生機構44によって、第1底壁部211と側端部422との間に、側端部422の外周側から中心部に向かって流れる。
側端部422の中心部に向かって流れる冷媒は、図17の矢印FR6に示すように、側端部422に形成された貫通穴422aに流れ込む。そして、貫通穴422aを通過した冷媒は、ステータ41とロータ42の磁石423との間に形成される隙間に流れ込む。
以上説明した本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42の回転を利用してモータ室200Bに冷媒流を発生させる構造になっている。これによれば、モータ室200Bにおいて冷媒が拡散し易くなるので、モータ40を適切に冷却することが可能となる。
特に、本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42の回転を利用してモータ室200Bに主軸50の径方向DRrに沿う冷媒流を発生させる構造になっている。これによれば、モータ室200Bにおいて冷媒が主軸50の径方向DRrにも拡散し易くなるため、モータ40における主軸50の径方向DRrの冷却ムラの発生を抑制することができる。
(第7実施形態の変形例)
上述の第7実施形態では、径方向流発生機構44として、側端部422の外周側から中心部に向かう冷媒流を発生させる翼形状を有する複数の羽根441で構成されるものを例示したが、これに限定されない。径方向流発生機構44は、例えば、ロータ42が回転した際に側端部422の中心側から外周側に向かう冷媒流を発生させる翼形状を有する複数の羽根441で構成されていてもよい。
上述の第7実施形態で説明した径方向流発生機構44は、第1実施形態で説明した電動圧縮機10だけでなく、第2~第5実施形態で説明した電動圧縮機10にも適用可能である。
上述の第7実施形態では、圧縮機構30の駆動時に、複数の冷媒導入路234~236における流路断面積が変化する構造になっているものを例示したが、これに限定されない。電動圧縮機10は、圧縮機構30の駆動時に、複数の冷媒導入路234~236における流路断面積が変化しない構造になっていてもよい。
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、図19~図21を参照して説明する。本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42の側端部422に主軸50の軸方向DRaに沿って流れる冷媒流を発生させる構造が設けられている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図19に示すように、本実施形態のロータ42には、対向側軸方向流発生機構43の代わりに、主軸50の軸方向DRaに沿って流れる冷媒流を発生させる接続側軸方向流発生機構45が設けられている。接続側軸方向流発生機構45は、側端部422に対して形成されている。
接続側軸方向流発生機構45は、側端部422に設けられた複数の貫通穴451で構成されている。図20に示すように、複数の貫通穴451は、側端部422のうち主軸50の軸方向DRaにステータ41に対向する位置に、主軸50を囲むように等間隔をあけて形成されている。
また、図21に示すように、複数の貫通穴451は、ロータ42が回転した際に、ロータ本体部421の内側に主軸50の電動機側端部501側から圧縮側端部502側に向かう冷媒流が発生するように、その穴形状が設定されている。すなわち、複数の貫通穴451は、ロータ42が回転した際に、ロータ本体部421の内側に主軸50の電動機側端部501側から圧縮側端部502側に向かう冷媒流が発生するように、その中心軸が主軸50の軸方向DRaに交差する穴形状を有している。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下、本実施形態の電動圧縮機10におけるモータ室200Bにおける冷媒の流れ方について説明する。電動圧縮機10は、ステータ41への給電によってモータ40のロータ42および主軸50が回転すると、固定スクロール31に対して旋回スクロール32が旋回する。これにより、冷媒入口部24からハウジング20の内側のモータ室200Bに導入される。
モータ室200Bに導入された冷媒の一部は、図19の矢印FR7に示すように、接続側軸方向流発生機構45によって、ロータ本体部421の内側に主軸50の電動機側端部501側から圧縮側端部502側に向かって流れる。
以上説明した本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42の回転を利用してモータ室200Bに冷媒流を発生させる構造になっている。これによれば、モータ室200Bにおいて冷媒が拡散し易くなるので、モータ40を適切に冷却することが可能となる。
特に、本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42の回転を利用してモータ室200Bのうち主軸50付近に主軸50の軸方向DRaに沿う冷媒流を発生させる構造になっている。これによれば、主軸50付近において冷媒が主軸50の軸方向DRaにも拡散し易くなるため、モータ40の主軸50付近における冷却ムラの発生を抑制することができる。
(第8実施形態の変形例)
上述の第8実施形態では、接続側軸方向流発生機構45として、主軸50の電動機側端部501側から圧縮側端部502側に向かう冷媒流を発生させる穴形状を有する複数の貫通穴451で構成されるものを例示したが、これに限定されない。接続側軸方向流発生機構45は、例えば、ロータ42が回転した際に主軸50の圧縮側端部502側から電動機側端部501側に向かう冷媒流を発生させる穴形状を有する複数の貫通穴451で構成されていてもよい。
上述の第8実施形態で説明した接続側軸方向流発生機構45は、第1実施形態で説明した電動圧縮機10だけでなく、第2~第5実施形態で説明した電動圧縮機10にも適用可能である。
上述の第8実施形態では、圧縮機構30の駆動時に、複数の冷媒導入路234~236における流路断面積が変化する構造になっているものを例示したが、これに限定されない。電動圧縮機10は、圧縮機構30の駆動時に、複数の冷媒導入路234~236における流路断面積が変化しない構造になっていてもよい。
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について、図22~図24を参照して説明する。本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42に対して、第7実施形態で説明したが径方向流発生機構44および第8実施形態で説明した接続側軸方向流発生機構45が設けられている点が第6実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図22、図23、図24に示すように、本実施形態のロータ42には、ロータ本体部421に対して対向側軸方向流発生機構43が設けられるとともに、側端部422に対して径方向流発生機構44および接続側軸方向流発生機構45が設けられている。
各発生機構43~45は、図22の矢印FR8に示すように、各発生機構43~45で発生した冷媒流が互いに阻害しないように構成されている。すなわち、各発生機構43~45は、冷媒が、ロータ本体部421の外側→側端部422と第1底壁部211との隙間→複数の貫通穴451の順に流れるように構成されている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の電動圧縮機10は、ロータ42に対して、対向側軸方向流発生機構43、径方向流発生機構44、および接続側軸方向流発生機構45が設けられている。これによれば、モータ室200Bの隅々まで冷媒が拡散し易くなるため、モータ40の冷却ムラの発生を抑制することができる。
(第9実施形態の変形例)
上述の第9実施形態では、ロータ42の回転を利用してモータ室200Bに冷媒流を発生させる構造として、冷媒がロータ本体部421の外側→側端部422と第1底壁部211との隙間→複数の貫通穴451の順に流すものを例示したが、これに限定されない。
ロータ42の回転を利用してモータ室200Bに冷媒流を発生させる構造は、例えば、冷媒が複数の貫通穴451→側端部422と第1底壁部211との隙間→ロータ本体部421の外側の順に流す構造になっていてもよい。なお、各発生機構43~45は、各発生機構43~45で発生した冷媒流が互いに阻害しないように構成されていることが望ましいが、これに限定されない。各発生機構43~45は、各発生機構43~45で発生した冷媒流の一部が干渉するように構成されていてもよい。
上述の第9実施形態では、ロータ42に対して対向側軸方向流発生機構43、径方向流発生機構44、および接続側軸方向流発生機構45が設けられているものを例示したが、これに限定されない。電動圧縮機10は、例えば、対向側軸方向流発生機構43、径方向流発生機構44、および接続側軸方向流発生機構45の2つがロータ42に対して設けられた構成になっていてもよい。
上述の第9実施形態では、圧縮機構30の駆動時に、複数の冷媒導入路234~236における流路断面積が変化する構造になっているものを例示したが、これに限定されない。電動圧縮機10は、圧縮機構30の駆動時に、複数の冷媒導入路234~236における流路断面積が変化しない構造になっていてもよい。
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
上述の実施形態では、主軸50の電動機側端部501にロータ42が連結される例について説明したが、これに限定されない。電動圧縮機10は、例えば、ロータ42が主軸50の圧縮側端部502に対して連結される構成になっていてもよい。
上述の実施形態では、モータ40がアウタロータ型の電動機で構成されているものを例示したが、これに限定されない。モータ40は、例えば、ステータ41の内側にロータ42が配置されるインナロータ型の電動機で構成されていてもよい。
上述の実施形態では、圧縮機構30がスクロール型の圧縮機構で構成されているものを例示したが、これに限定されない。圧縮機構30は、例えば、シリンダの内側をベーンが設けられた可動部が回転変位するベーン型の圧縮機構、シリンダの内側をピストンが変位するレシプロ型の圧縮機構で構成されていてもよい。
上述の実施形態では、本開示の電動圧縮機10を車両に搭載されたシート付近を空調する冷凍サイクル装置1に適用する例について説明したが、これに限定されない。すなわち、本開示の電動圧縮機10は、車両空調用の冷凍サイクル装置1に限らず、例えば、家屋などの室内空調用の冷凍サイクル装置や、機器温調用の冷凍サイクル装置に対しても広く適用可能である。
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、電動圧縮機は、ハウジングと、冷媒入口部と、冷媒吸入室と、圧縮機構と、モータと、モータ室と、を備える。モータ室は、冷媒入口部から流入した冷媒が流れ込むように冷媒入口部に連通している。圧縮機構は、ハウジングに対して固定された固定部およびモータから駆動力が伝達されることで固定部に対して変位する可動部を有し、可動部の変位に伴って圧縮室の容積を変化させる構造になっている。ハウジングの内側には、冷媒入口部から流入した冷媒を冷媒吸入室に導く複数の冷媒導入路が設けられている。複数の冷媒導入路の少なくとも1つは、可動部の変位に伴って流路断面積が変化するようにハウジングの内側に設けられている。
第2の観点によれば、電動圧縮機における複数の冷媒導入路は、一部の冷媒導入路が、可動部の変位に伴って他の冷媒導入路とは異なる流路断面積となるようにハウジングの内側に設けられている。
このように、可動部の変位に伴って一部の冷媒導入路が他の冷媒導入路と異なる流路断面積に変化する構造では、可動部の変位に伴って冷媒入口部から冷媒吸入室に向かう冷媒の流れ方が大きく変化する。これに伴いモータ室における冷媒の流れ方も多様な流れとなるので、モータを適切に冷却することが可能となる。
第3の観点によれば、電動圧縮機における複数の冷媒導入路の少なくとも1つは、可動部が所定の位置に変位した際に可動部によって閉塞されるようにハウジングの内側に設けられている。
このように、可動部の変位に伴って一部の冷媒導入路が閉鎖される構造では、可動部の変位に伴って冷媒入口部から冷媒吸入室に向かう冷媒の流れ方に加えて、冷媒の流速が大きく変化する。これに伴いモータ室の隅々まで低温の冷媒が拡散され易くなるので、モータを適切に冷却することが可能となる。
第4の観点によれば、電動圧縮機の圧縮機構およびモータは、ハウジングの内部において主軸の軸方向に並んで配置されている。複数の冷媒導入路は、ハウジングの内側において圧縮機構とモータとの間に設けられている。そして、冷媒入口部は、ハウジングのうち、主軸の軸方向において複数の冷媒導入路よりもモータに近い部位に設けられている。
ここで、冷媒入口部が、ハウジングにおいて複数の冷媒導入路に近接する部位に設けられている場合、冷媒入口部がモータ室に流れ込んだ冷媒がすぐに複数の冷媒導入路に流入してしまう虞がある。
これに対して、冷媒入口部は、ハウジングにおいて複数の冷媒導入路よりもモータに近い部位に設けられている場合、モータ室における複数の冷媒導入路から離れた空間にも冷媒を流すことができる。このため、モータ全体を適切に冷却することが可能となる。
第5の観点によれば、電動圧縮機は、モータの回転駆動力を圧縮機構に伝達する主軸を備える。モータは、ハウジングに固定されて回転磁界を生成するステータおよび回転磁界によって主軸の軸心を中心に回転するロータを有する。ロータは、モータ室において所定の方向に向かう冷媒流を発生させることが可能に構成されている。
このように、ロータの回転を利用してモータ室に冷媒流を発生させる構造とすれば、モータ室において冷媒が拡散し易くなる。このため、モータ室の一部に冷媒が流れ難い領域が形成されることが抑制されるので、モータを適切に冷却することが可能となる。
第6の観点によれば、電動圧縮機は、ハウジングと、冷媒入口部と、冷媒吸入室と、圧縮機構と、モータと、主軸と、モータ室と、を備える。モータ室は、冷媒入口部から流入した冷媒が流れ込むように冷媒入口部に連通している。モータは、ハウジングに固定されて回転磁界を生成するステータおよび回転磁界によって主軸の軸心を中心に回転するロータを有する。ロータは、モータ室において所定の方向に向かう冷媒流を発生させることが可能に構成されている。
第7の観点によれば、電動圧縮機のロータは、主軸の径方向においてステータと対向するロータ本体部に対して、主軸の軸方向に沿って流れる冷媒流を発生させる対向側軸方向流発生機構が設けられている。
このように、ロータの回転を利用してモータ室に主軸の軸方向に沿う冷媒流を発生させる構造とすれば、モータ室において冷媒が主軸の軸方向にも拡散し易くなるため、モータにおける主軸の軸方向の冷却ムラの発生を抑制することができる。
第8の観点によれば、電動圧縮機のロータは、主軸の径方向においてステータと対向するロータ本体部を主軸に接続する主軸接続部に対して、主軸の径方向に沿って流れる冷媒流を発生させる径方向流発生機構が設けられている。
このように、ロータの回転を利用してモータ室に主軸の径方向に沿う冷媒流を発生させる構造とすれば、モータ室において冷媒が主軸の径方向にも拡散し易くなるため、モータにおける主軸の径方向の冷却ムラの発生を抑制することとができる。
第9の観点によれば、電動圧縮機のロータは、主軸の径方向においてステータと対向するロータ本体部を主軸に接続する主軸接続部に、主軸の軸方向に沿って流れる冷媒流を発生させる接続側軸方向流発生機構が設けられている。
このように、ロータの回転を利用してモータ室のうち主軸付近に主軸の軸方向に沿う冷媒流を発生させる構造とすれば、主軸付近において冷媒が主軸の軸方向にも拡散し易くなるため、モータの主軸付近における冷却ムラの発生を抑制することとができる。
第10の観点によれば、電動圧縮機のモータは、ロータの一部がステータに対して主軸の径方向の外側に配置されるアウタロータ型の電動機で構成されている。ロータは、主軸の径方向においてステータと対向するロータ本体部を主軸に接続する主軸接続部に、主軸の軸方向に貫通する貫通穴が少なくとも1つ形成されている。
アウタロータ型の電動機では、回転部である主軸およびロータがステータの内外に位置する構造であり、主軸およびロータそれぞれがステータの内側に位置するインナロータ型の電動機に比べてモータ室が複雑な構造となる。モータ室が複雑になると、モータ室に冷媒の淀みが生じ易くなり、モータを適切に冷却することが困難となる。このため、モータを適切に冷却することが可能な本開示の電動圧縮機は、モータがアウタロータ型の電動機で構成されるものに好適である。