[本開示が解決しようとする課題]
本開示の目的は、切屑の溶着を抑制可能なドリルを提供することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、切屑の溶着を抑制可能なドリルを提供することができる。
[実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。
(1)本開示に係るドリル100は、軸線Oの周りを回転するドリルであって、ねじれ溝面5と、第1逃げ面10と、シンニング面6とを備えている。ねじれ溝面5は、軸線Oの周りにおいて螺旋状に設けられている。第1逃げ面10は、ねじれ溝面5に連なっている。シンニング面6は、ねじれ溝面5および第1逃げ面10の各々に連なっている。ねじれ溝面5と第1逃げ面10との稜線は、主切刃3を構成している。シンニング面6と第1逃げ面10との稜線は、シンニング切刃4を構成している。シンニング切刃4は、主切刃3に連なっている。軸線Oに沿う軸線方向に見て、シンニング切刃4は、主切刃3よりも軸線Oの近くにある。シンニング切刃4は、曲線シンニング切刃部43と、第2直線シンニング切刃部42とを含んでいる。曲線シンニング切刃部43は、回転方向の前方に凸となっている。第2直線シンニング切刃部42は、曲線シンニング切刃部43に連なっている。第2直線シンニング切刃部42は、曲線シンニング切刃部43よりも軸線Oの近くにある。主切刃3の最外周端59から回転方向の後方に所定の外周芯高さFだけ離れた外周位置55と軸線Oとを通る直線は、第1直線121とされる。軸線方向に見て、第1直線121と第2直線シンニング切刃部42とがなす角度は、135°以上160°以下である。軸線方向に見て、第2直線シンニング切刃部42の長さは、ドリル100の直径の10%以下である。軸線方向に見て第2直線シンニング切刃部42に垂直であり且つ第2直線シンニング切刃部42と交差する断面において、第2直線シンニング切刃部42の軸方向すくい角は、-10°以上0°以下である。曲線シンニング切刃部43は、第1端部51と、第2端部52とを有している。第1端部51は、曲線シンニング切刃部43と第2直線シンニング切刃部42との境界である。第2端部52は、第1端部51の反対にある。第1端部51から離間するにつれて、軸線方向に見て曲線シンニング切刃部43の接線に垂直な断面における曲線シンニング切刃部43の軸方向すくい角は、大きくなっている。軸線方向に見て第2端部52における曲線シンニング切刃部43の接線に垂直であり且つ第2端部52を含む断面において、曲線シンニング切刃部43の軸方向すくい角は、5°以上20°以下である。軸線方向に見て、曲線シンニング切刃部43の曲率半径は、ドリル100の直径の15%以上35%以下である。
(2)上記(1)に係るドリル100によれば、シンニング面6は、シンニングすくい面部61と、シンニングポケット壁部63と、中間面62とを含んでいてもよい。シンニングすくい面部61は、ねじれ溝面5および第1逃げ面10の各々に連なっていてもよい。シンニングポケット壁部63は、シンニング切刃4に対して回転方向の前方にあってもよい。中間面62は、シンニングすくい面部61およびシンニングポケット壁部63の各々に連なっていてもよい。第1逃げ面10は、第1逃げ面部11と、第2逃げ面部12とを含んでいてもよい。第1逃げ面部11は、ねじれ溝面5およびシンニング面6の各々に連なっていてもよい。第2逃げ面部12は、第1逃げ面部11に連なっていてもよい。第2逃げ面部12は、第1逃げ面部11に対して回転方向の後方にあってもよい。シンニングポケット壁部63と中間面62との境界線に沿う直線は、第2直線122とされる。軸線方向に見て、第1逃げ面部11と第2逃げ面部12との稜線に垂直な方向に沿っており且つ径方向内側に向かう方向は平面視方向101とされる。平面視方向101に見て第2直線122に垂直であり且つシンニングポケット壁部63と中間面62との境界線と交差する断面は、第3断面CS3とされる。第3断面CS3において、シンニングポケット壁部63は曲線状であってもよい。第3断面CS3において、シンニングポケット壁部63の曲率半径は、ドリル100の直径の10%以上30%以下であってもよい。第3断面CS3において、シンニングすくい面部61と中間面62との境界におけるシンニングすくい面部61の接線と、シンニングポケット壁部63と中間面62との境界におけるシンニングポケット壁部63の接線とがなす角は、105°以上125°以下であってもよい。
(3)上記(1)または(2)に係るドリル100によれば、主切刃3は、曲線切刃部31を含んでいてもよい。曲線切刃部31は、回転方向の後方に凹んでいてもよい。軸線方向に見て、曲線切刃部31の曲率半径は、ドリル100の直径の40%以上100%以下であってもよい。軸線方向に見て、曲線切刃部31の外周端を通り且つ第1直線121に平行である第3直線123と曲線切刃部31との間の最大距離Hは、ドリル100の直径の0.5%以上4%以下であってもよい。シンニング面6は、第1ヒール91を構成していてもよい。第1ヒール91は、シンニング切刃4に連なっていてもよい。第1ヒール91は、シンニング切刃4に対して回転方向の前方にあってもよい。ねじれ溝面5は、第2ヒール92を構成していてもよい。第2ヒール92は、第1ヒール91に連なっていてもよい。第2ヒール92は、主切刃3に対して回転方向の前方にあってもよい。第2ヒール92は、曲線部95を含んでいてもよい。曲線部95は、回転方向の前方に凹んでいてもよい。軸線方向に見て、曲線部95の曲率半径は、ドリル100の直径の15%以上25%以下であってもよい。軸線Oに垂直な断面において、ねじれ溝面5の中心角は、ねじれ溝面以外の部分の中心角の0.55倍以上1.0倍以下であってもよい。
(4)上記(3)に係るドリル100によれば、主切刃3は、補強切刃部32を含んでいてもよい。補強切刃部32は、曲線切刃部31に連なっていてもよい。補強切刃部32は、最外周端59を構成していてもよい。軸線方向に見て、曲線切刃部31と補強切刃部32との境界と、軸線Oとを含む直線は、第4直線124とされる。軸線方向に見て、補強切刃部32は、第4直線124に対して回転方向の後方に傾斜していてもよい。軸線方向に見て、補強切刃部32と第4直線124とがなす角度は、15°以上30°以下であってもよい。軸線方向に見て、補強切刃部32の長さは、ドリル100の直径の1%以上2%以下であってもよい。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本開示の実施形態(以降、本実施形態とも称する)の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るドリル100の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係るドリル100の構成を示す平面模式図である。図1に示されるように、第1実施形態に係るドリル100は、前端1と、後端2と、主切刃3と、シンニング面6と、第1逃げ面10と、外周面9と、ねじれ溝面5と、シャンク17とを主に有している。第1実施形態に係るドリル100は、金属加工用のドリルである。図1に示されるように、外周面9は、軸線Oの周りにおいて螺旋状に設けられている。ねじれ溝面5は、フルートを構成する。ねじれ溝面5は、軸線Oの周りにおいて螺旋状に設けられている。外周面9は、ねじれ溝面5に連なっている。主切刃3はドリル100の前端1に近い位置に設けられている。
シンニング面6は、ねじれ溝面5に連なっている。第1逃げ面10は、外周面9に連なっている。ドリル100の前端1は、被削材に対向する部分である。ドリル100の後端2は、ドリル100を回転させる工具主軸に対向する部分である。シャンク17は、工具主軸に取り付けられる部分である。
軸線Oは、前端1と後端2とを通っている。軸線Oに沿った方向は、軸線方向である。軸線方向に対して垂直な方向は、径方向である。本明細書においては、前端1から後端2に向かう方向を軸線方向の後方と称する。反対に、後端2から前端1に向かう方向を軸線方向の前方と称する。本明細書においては、軸線方向に対して垂直であり、且つ軸線Oに近づく方向を径方向内側と称する。反対に、軸線方向に対して垂直であり、且つ軸線Oから離れる方向を径方向外側と称する。ドリル100は、軸線Oの周りを回転する。
図2は、第1実施形態に係るドリル100の前端部を示す斜視模式図である。図2に示されるように、ドリル100は、第2逃げ面20をさらに有している。第2逃げ面20は、第1逃げ面10、シンニング面6、ねじれ溝面5および外周面9の各々に連なっている。第1逃げ面10と第2逃げ面20との稜線は、チゼル8を構成している。
ねじれ溝面5と第1逃げ面10との稜線は、主切刃3を構成している。主切刃3に近いねじれ溝面5は、すくい面として機能する。シンニング面6は、第1逃げ面10に連なっている。シンニング面6と第1逃げ面10との稜線は、シンニング切刃4を構成している。シンニング切刃4は、主切刃3に連なっている。シンニング切刃4は、主切刃3に対して径方向内側にある。シンニング切刃4と主切刃3とは、ドリル100の切刃を構成している。
第1逃げ面10は、第1逃げ面部11と、第2逃げ面部12とを有している。第1逃げ面部11は、ねじれ溝面5およびシンニング面6の各々に連なっている。第2逃げ面部12は、第1逃げ面部11に連なっている。第2逃げ面部12は、第1逃げ面部11に対して傾斜している。第1逃げ面部11と第2逃げ面部12との稜線は、第1境界線15とされる。
第2逃げ面20は、第3逃げ面部23と、第4逃げ面部24とを有している。第3逃げ面部23は、第1逃げ面10に連なっている。第4逃げ面部24は、第3逃げ面部23、ねじれ溝面5およびシンニング面6の各々に連なっている。第4逃げ面部24は、第3逃げ面部23に対して傾斜している。第3逃げ面部23と第4逃げ面部24との稜線は、第2境界線25とされる。
外周面9は、第1外周面部19と、第2外周面部29とを有している。第1外周面部19は、第1逃げ面部11およびねじれ溝面5の各々に連なっている。第1外周面部19とねじれ溝面5との稜線は、リーディングエッジ7を構成している。第2外周面部29は、第1逃げ面部11および第2逃げ面部12の各々に連なっている。第1外周面部19は、第2外周面部29に対して径方向外側にある。第1外周面部19は、外周マージンを構成している。
シンニング面6は、シンニングすくい面部61と、中間面62と、シンニングポケット壁部63とを有している。シンニングすくい面部61は、ねじれ溝面5および第1逃げ面10の各々に連なっている。具体的には、シンニングすくい面部61は、第1逃げ面10の第1逃げ面部11に連なっている。中間面62は、シンニングすくい面部61、第2逃げ面20およびねじれ溝面5の各々に連なっている。シンニングすくい面部61は、中間面62と第1逃げ面10との間にある。シンニングポケット壁部63は、中間面62、ねじれ溝面5および第2逃げ面20の各々に連なっている。具体的には、シンニングポケット壁部63は、第2逃げ面20の第4逃げ面部24に連なっている。中間面62は、シンニングポケット壁部63と、シンニングすくい面部61との間にある。
シンニングすくい面部61は、第1部分81と、第2部分82と、第3部分83とを有している。第1部分81は、ねじれ溝面5、第1逃げ面10および中間面62の各々に連なっている。第2部分82は、第1部分81、第1逃げ面10および中間面62の各々に連なっている。第3部分83は、第2部分82、第1逃げ面10および中間面62の各々に連なっている。第3部分83は、第1部分81に対して径方向内側にある。第2部分82は、第1部分81と第3部分83との間にある。
シンニング切刃4は、第1直線シンニング切刃部41と、曲線シンニング切刃部43と、第2直線シンニング切刃部42とを有している。第1直線シンニング切刃部41は、主切刃3に連なっている。第1直線シンニング切刃部41は、主切刃3に対して径方向内側にある。第1直線シンニング切刃部41は、第1逃げ面10の第1逃げ面部11とシンニングすくい面部61の第1部分81との稜線によって構成されている。
曲線シンニング切刃部43は、第1直線シンニング切刃部41に連なっている。曲線シンニング切刃部43は、第1直線シンニング切刃部41に対して径方向内側にある。曲線シンニング切刃部43は、第1直線シンニング切刃部41に対して主切刃3の反対にある。別の観点から言えば、第1直線シンニング切刃部41は、主切刃3と曲線シンニング切刃部43との間にある。曲線シンニング切刃部43は、第1逃げ面10の第1逃げ面部11とシンニングすくい面部61の第2部分82との稜線によって構成されている。
第2直線シンニング切刃部42は、曲線シンニング切刃部43に連なっている。第2直線シンニング切刃部42は、曲線シンニング切刃部43に対して径方向内側にある。第2直線シンニング切刃部42は、曲線シンニング切刃部43に対して第1直線シンニング切刃部41の反対にある。別の観点から言えば、曲線シンニング切刃部43は、第1直線シンニング切刃部41と第2直線シンニング切刃部42との間にある。第2直線シンニング切刃部42は、第1逃げ面10の第1逃げ面部11とシンニングすくい面部61の第3部分83との稜線によって構成されている。
シンニング面6は、第1ヒール91を構成している。具体的には、シンニング面6と第2逃げ面20との稜線は、第1ヒール91を構成している。第1ヒール91は、シンニング切刃4に連なっている。第1ヒール91は、ヒール内周部93と、ヒール中間部94とを有している。
ねじれ溝面5は、第2ヒール92を構成している。具体的には、ねじれ溝面5と第2逃げ面20の第4逃げ面部24との稜線は、第2ヒール92を構成している。第2ヒール92は、第1ヒール91に連なっている。第2ヒール92は、第1ヒール91に対して径方向外側にある。第2ヒール92は、曲線部95と、ヒール外周部96とを有している。
ヒール内周部93は、シンニング切刃4の第2直線シンニング切刃部42に連なっている。ヒール内周部93は、第2逃げ面20と中間面62との稜線によって構成されている。
ヒール中間部94は、ヒール内周部93に連なっている。ヒール中間部94は、ヒール内周部93に対して径方向外側にある。ヒール中間部94は、第2逃げ面20の第4逃げ面部24とシンニングポケット壁部63との稜線によって構成されている。
曲線部95は、ヒール中間部94に連なっている。曲線部95は、ヒール中間部94に対して径方向外側にある。曲線部95は、ヒール中間部94に対してヒール内周部93の反対にある。別の観点から言えば、ヒール中間部94は、ヒール内周部93と曲線部95との間にある。
ヒール外周部96は、曲線部95に連なっている。ヒール外周部96は、曲線部95に対して径方向外側にある。ヒール外周部96は、曲線部95に対してヒール中間部94の反対にある。別の観点から言えば、曲線部95は、ヒール中間部94とヒール外周部96との間にある。
図3は、第1実施形態に係るドリル100の構成を示す正面模式図である。図3に示されるように、軸線方向に見て、主切刃3は、回転方向後方に凹んでいてもよい。ドリル100の直径は、第1直径D1とされる。第1直径D1は、主切刃3の直径である。言い換えれば、軸線方向に見て、第1直径D1は、主切刃3の最外周端59と軸線Oとの距離の2倍である。
図3に示されるように、曲線シンニング切刃部43は、回転方向前方に凸になっている。曲線シンニング切刃部43は、第1端部51と、第2端部52とを有している。第1端部51は、曲線シンニング切刃部43と第2直線シンニング切刃部42との境界である。言い換えれば、第1端部51において、曲線シンニング切刃部43は、第2直線シンニング切刃部42に連なっている。
第2端部52は、第1端部51の反対にある。別の観点から言えば、軸線方向に見て、第2端部52と軸線Oとの距離は、第1端部51と軸線Oとの距離よりも長い。第2端部52は、曲線シンニング切刃部43と第1直線シンニング切刃部41との境界である。言い換えれば、第2端部52において、曲線シンニング切刃部43は、第1直線シンニング切刃部41に連なっている。
図3に示されるように、軸線方向に見て、第2直線シンニング切刃部42は、曲線シンニング切刃部43よりも軸線Oの近くにある。軸線方向に見て、第2直線シンニング切刃部42は直線状である。軸線方向に見て、第1直線シンニング切刃部41は、曲線シンニング切刃部43よりも軸線Oから遠くにある。軸線方向に見て、第1直線シンニング切刃部41は直線状である。
第1逃げ面10の第2逃げ面部12は、第1逃げ面部11に対して回転方向後方にある。軸線方向に見て、第1境界線15は直線状である。軸線方向に見て、第1境界線15に垂直な方向に沿っており、且つ径方向内側に向かう方向は、平面視方向101とされる。
第2逃げ面20の第4逃げ面部24は、第3逃げ面部23に対して回転方向後方にある。軸線方向に見て、第2境界線25は直線状である。軸線方向に見て、第2境界線25は、第1境界線15と実質的に平行であってもよい。
第1逃げ面10の第1逃げ面部11は、第2逃げ面20の第3逃げ面部23に連なっている。チゼル8は、軸線Oと交差している。言い換えれば、第1逃げ面部11と第3逃げ面部23との境界は、軸線Oと交差している。
図3に示されるように、軸線方向に見て、ヒール内周部93は曲線状である。ヒール中間部94は、回転方向前方に凹んでいる。曲線部95は、回転方向前方に凹んでいる。ヒール中間部94と曲線部95との境界において、第1ヒール91および第2ヒール92は回転方向後方に凸になっている。別の観点から言えば、軸線方向に見て、ヒール中間部94と曲線部95との境界は、変曲点である。ヒール外周部96は、回転方向後方に凸になっていてもよい。
シンニングポケット壁部63は、シンニング切刃4に対して回転方向前方にある。第1ヒール91は、シンニング切刃4に対して回転方向前方にある。第2ヒール92は、主切刃3に対して回転方向前方にある。
軸線方向に見て、ドリル100の形状は、軸線Oに対して実質的に回転対称である。ドリル100の切刃の数がNとされる場合、ドリル100の形状は、軸線Oに対して実質的にN回対称である。ドリル100の切刃の数が2の場合、軸線方向に見て、ドリル100の形状は、軸線Oに対して2回対称である。軸線Oを回転中心として、第1逃げ面10を180°回転すると、第1逃げ面10の形状は、第2逃げ面20の形状と実質的に一致する。第1逃げ面10の第1逃げ面部11は、第2逃げ面20の第3逃げ面部23に対応する。第1逃げ面10の第2逃げ面部12は、第2逃げ面20の第4逃げ面部24に対応する。
図4は、図3の領域IVの拡大模式図である。図4に示されるように、主切刃3とシンニング切刃4との境界は、第1境界点58とされる。言い換えれば、第1境界点58において、主切刃3は、シンニング切刃4に連なっている。主切刃3の最外周端59から回転方向後方に所定の外周芯高さFだけ離れた外周位置55と軸線Oとを通る直線は、第1直線121とされる。軸線方向に見て、外周位置55は、ドリル100の外周上にある。別の観点から言えば、軸線方向に見て、外周位置55と軸線Oとの間の距離は、第1直径D1の50%である。
第1直線121は、第1境界線15と実質的に平行であってもよい。第1直線121は、第2境界線25と実質的に平行であってもよい。外周芯高さFは、軸線方向に見た回転方向における最外周端59と外周位置55との間の距離である。外周芯高さFは、たとえば第1直径D1の8%である。外周芯高さFは、たとえば第1直径D1の10%であってもよいし、第1直径D1の12%であってもよい。
軸線方向に見て、第1直線121と第2直線シンニング切刃部42とがなす角度は、第1角度θ1とされる。第1角度θ1は、135°以上160°以下である。第1角度θ1の下限は、特に限定されないが、たとえば140°以上であってもよいし、143°以上であってもよい。第1角度θ1の上限は、特に限定されないが、たとえば155°以下であってもよいし、152°以下であってもよい。
図4に示されるように、軸線方向に見て、第2直線シンニング切刃部42の長さは、第1長さL1とされる。第1長さL1は、第1直径D1の10%以下である。第1長さL1の上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の8%以下であってもよいし、第1直径D1の5%以下であってもよい。第1長さL1の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の1%以上であってもよいし、第1直径D1の3%以上であってもよい。
図4に示されるように、軸線方向に見て、曲線シンニング切刃部43は円弧状であってもよい。軸線方向に見て、曲線シンニング切刃部43の曲率半径は第1曲率半径R1とされる。第1曲率半径R1は、第1直径D1の15%以上35%以下である。第1曲率半径R1の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の20%以上であってもよいし、第1直径D1の23%以上であってもよい。第1曲率半径R1の上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の30%以下であってもよいし、第1直径D1の27%以下であってもよい。
図4に示されるように、軸線方向に見て、主切刃3は円弧状であってもよい。軸線方向に見て、主切刃3の曲率半径は第2曲率半径R2とされる。第2曲率半径R2は、第1曲率半径R1よりも大きくてもよい。第2曲率半径R2は、たとえば第1直径D1の40%以上100%以下である。第2曲率半径R2の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の50%以上であってもよいし、第1直径D1の60%以上であってもよい。第2曲率半径R2の上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の90%以下であってもよいし、第1直径D1の80%以下であってもよい。
図4に示されるように、軸線方向に見て、曲線部95は円弧状であってもよい。軸線方向に見て、曲線部95の曲率半径は第3曲率半径R3とされる。第3曲率半径R3は、第2曲率半径R2よりも小さくてもよい。第3曲率半径R3は、たとえば第1直径D1の15%以上25%以下である。第3曲率半径R3の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の17%以上であってもよいし、第1直径D1の19%以上であってもよい。第3曲率半径R3の上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の23%以下であってもよいし、第1直径D1の21%以下であってもよい。
軸線方向に見て、第1直線121に平行であり且つ主切刃3の最外周端59を通る直線は、第5直線125とされる。第5直線125と主切刃3との間の最大距離は、最大距離Hとされる。最大距離Hは、たとえば第1直径D1の0.5%以上4%以下である。最大距離Hの下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の1%以上であってもよいし、第1直径D1の1.5%以上であってもよい。最大距離Hの上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の3.5%以下であってもよいし、第1直径D1の3%以下であってもよい。
図5は、図3のV-V線に沿った断面模式図である。図5に示される断面は、軸線方向に見て第2直線シンニング切刃部42に垂直であり且つ第2直線シンニング切刃部42と交差する断面である。以下において、軸線方向に見て第2直線シンニング切刃部42に垂直であり且つ第2直線シンニング切刃部42と交差する断面を第1断面CS1とも称する。図5に示されるように、第1断面CS1において、シンニング面6のシンニングすくい面部61は直線状であってもよい。第1断面CS1において、第1逃げ面10の第1逃げ面部11とシンニング面6のシンニングすくい面部61とがなす角は、たとえば鋭角である。
第1断面CS1において、軸線Oに平行であり、かつ第2直線シンニング切刃部42を含む直線は、第6直線126とされる。第6直線126とシンニング面6のシンニングすくい面部61とがなす角は、第1軸方向すくい角θ11とされる。第1軸方向すくい角θ11は、第1断面CS1における第2直線シンニング切刃部42の軸方向すくい角である。
第1断面CS1において、第1軸方向すくい角θ11は、-10°以上0°以下である。第1軸方向すくい角θ11の下限は、特に限定されないが、たとえば-8°以上であってもよいし、-6°以上であってもよい。第1軸方向すくい角θ11の上限は、特に限定されないが、たとえば-2°以下であってもよいし、-4°以下であってもよい。
なお、本明細書において、切刃の軸方向すくい角が「負」であるとは、径方向に見た場合に、軸線Oに平行な直線に対して、切刃のすくい面が回転方向前方に傾斜している状態である。反対に、本明細書において、切刃の軸方向すくい角が「正」であるとは、径方向に見た場合に、軸線Oに平行な直線に対して、切刃のすくい面が回転方向後方に傾斜している状態である。
図6は、図3のVI-VI線に沿った断面模式図である。図6に示される断面は、軸線方向に見て第2端部52における曲線シンニング切刃部43の接線に垂直であり且つ第2端部52を含む断面である。以下において、軸線方向に見て第2端部52における曲線シンニング切刃部43の接線に垂直であり且つ第2端部52を含む断面を第2断面CS2とも称する。図6に示されるように、第2断面CS2において、シンニング面6のシンニングすくい面部61は直線状であってもよい。第2断面CS2において、第1逃げ面10の第1逃げ面部11とシンニング面6のシンニングすくい面部61とがなす角は鋭角である。
第2断面CS2において、軸線Oに平行であり、かつ曲線シンニング切刃部43を含む直線は、第7直線127とされる。第7直線127とシンニング面6のシンニングすくい面部61とがなす角は、第2軸方向すくい角θ12とされる。第2軸方向すくい角θ12は、第2断面CS2における曲線シンニング切刃部43の軸方向すくい角である。第2軸方向すくい角θ12は、第1軸方向すくい角θ11よりも大きい。
第2断面CS2において、第2軸方向すくい角θ12は、5°以上20°以下である。第2軸方向すくい角θ12の下限は、特に限定されないが、たとえば8°以上であってもよいし、10°以上であってもよい。第2軸方向すくい角θ12の上限は、特に限定されないが、たとえば17°以下であってもよいし、15°以下であってもよい。
図7は、切刃における軸線Oからの距離と切刃の軸方向すくい角との関係を示す模式図である。図7において、縦軸は切刃の軸方向すくい角を示し、横軸は切刃における軸線Oからの距離を示している。第1端部51の反対にある第2直線シンニング切刃部42の端部における軸線Oからの距離は、基準距離E0とされる。第1端部51における軸線Oからの距離は、第1距離E1とされる。第2端部52における軸線Oからの距離は、第2距離E2とされる。第1境界点58における軸線Oからの距離は、第3距離E3とされる。最外周端59における軸線Oからの距離は、第4距離E4とされる。
第1境界点58における第1直線シンニング切刃部41の軸方向すくい角は、第3軸方向すくい角θ13とされる。第1直線シンニング切刃部41は、第2端部52における曲線シンニング切刃部43の接線に沿って延びているため、第3軸方向すくい角θ13は、第2軸方向すくい角θ12と実質的に同じ角度である。最外周端59における主切刃3の軸方向すくい角は、第4軸方向すくい角θ14とされる。第4軸方向すくい角θ14は、第3軸方向すくい角θ13よりも大きい。第4軸方向すくい角θ14は、たとえば30°である。
図7に示されるように、第2直線シンニング切刃部42において、軸方向すくい角は実質的に一定であってもよい。曲線シンニング切刃部43において、軸方向すくい角は、単調に大きくなっている。第1端部51から離間するにつれて、軸線方向に見て曲線シンニング切刃部43の接線に垂直な断面における曲線シンニング切刃部43の軸方向すくい角は大きくなっている。第1端部51から第2端部52にかけて、曲線シンニング切刃部43の軸方向すくい角は、第1軸方向すくい角θ11から第2軸方向すくい角θ12まで変化している。なお、曲線シンニング切刃部43は、軸方向すくい角が一定である部分を有していてもよい。第1直線シンニング切刃部41において、軸方向すくい角は実質的に一定であってもよい。
主切刃3において、軸方向すくい角は単調に大きくなっている。最外周端59に近づくにつれて、軸線方向に見て主切刃3の接線に垂直な断面における主切刃3の軸方向すくい角は大きくなっている。第1境界点58から最外周端59にかけて、主切刃3の軸方向すくい角は、第3軸方向すくい角θ13から第4軸方向すくい角θ14まで変化している。なお、主切刃3は、軸方向すくい角が一定である部分を有していてもよい。
曲線シンニング切刃部43における長さあたりの軸方向すくい角の変化量は第1変化率とされる。具体的には、第1変化率は、第2軸方向すくい角θ12と第1軸方向すくい角θ11との差の絶対値を第2距離E2と第1距離E1との差の絶対値で割った値である。主切刃3における長さあたりの軸方向すくい角の変化量は第2変化率とされる。具体的には、第2変化率は、第4軸方向すくい角θ14と第3軸方向すくい角θ13との差の絶対値を第4距離E4と第3距離E3との差の絶対値で割った値である。第1変化率は、第2変化率よりも大きくてもよい。
図8は、図1の領域VIIIの拡大平面模式図である。図8に示される拡大平面模式図は、平面視方向101に見たドリル100の前端部の構成を示している。図8に示されるように、シンニングポケット壁部63と中間面62との境界線は、直線状であってもよい。シンニングポケット壁部63と中間面62との境界線に沿う直線は、第2直線122とされる。なお、シンニングポケット壁部63と中間面62との境界線が曲線状である場合、第2直線122は、シンニングポケット壁部63と中間面62との境界線の両端を含む直線とされる。平面視方向101に見て、シンニングポケット壁部63と中間面62との境界線は、軸線Oと交差している。平面視方向101に見て、第2直線122は、軸線Oと交差している。平面視方向101に見て、第1ヒール91のヒール内周部93は、軸線Oと交差している。
図9は、図8のIX-IX線に沿った断面模式図である。図9に示される断面は、平面視方向101に見て、第2直線122に垂直であり且つシンニングポケット壁部63と中間面62との境界線と交差する断面である。図9に示される断面は、シンニングすくい面部61の第2部分82と中間面62との境界および曲線シンニング切刃部43の各々と交差する。以下において、平面視方向101に見て、第2直線122に垂直であり且つシンニングポケット壁部63と中間面62との境界線と交差する断面を第3断面CS3とも称する。
第3断面CS3において、シンニングポケット壁部63は曲線状である。第3断面CS3において、シンニングポケット壁部63は円弧状であってもよい。第3断面CS3において、シンニングポケット壁部63の曲率半径は、第4曲率半径R4とされる。第4曲率半径R4は、第1直径D1の10%以上30%以下である。第4曲率半径R4の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の15%以上であってもよいし、第1直径D1の18%以上であってもよい。第4曲率半径R4の上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の25%以下であってもよいし、第1直径D1の22%以下であってもよい。
第3断面CS3において、中間面62は円弧状であってもよい。中間面62の曲率半径は、第4曲率半径R4よりも小さい。第3断面CS3において、シンニングすくい面部61と中間面62との境界におけるシンニングすくい面部61の接線は、第1接線131とされる。第3断面CS3において、シンニングポケット壁部63と中間面62との境界におけるシンニングポケット壁部63の接線は、第2接線132とされる。第1接線131と第2接線132とがなす角は、第2角度θ2とされる。
第2角度θ2は、105°以上125°以下である。第2角度θ2の下限は、特に限定されないが、たとえば110°以上であってもよいし、113°以上であってもよい。第2角度θ2の上限は、特に限定されないが、たとえば120°以下であってもよいし、117°以下であってもよい。
図10は、図1のX-X線に沿った断面模式図である。図10に示される断面は、軸線Oに対して垂直である。軸線方向において、図10に示される断面とドリル100の前端1との距離は、第1直径D1と同じである。
図10に示されるように、ドリル100の芯厚は、第2直径D2とされる。第2直径D2は、たとえば第1直径D1の20%以上40%以下である。なお、ドリル100の芯厚は、軸線Oに対して垂直な断面において、軸線Oとねじれ溝面5との間の最短距離の2倍である。
図10に示されるように、軸線Oに垂直な断面において、ねじれ溝面5の中心角は、第1中心角θ21とされ、且つねじれ溝面5以外の部分の中心角は、第2中心角θ22とされる。第1中心角θ21は、回転方向前方におけるねじれ溝面5の端部と軸線Oとを繋ぐ線分と、回転方向後方におけるねじれ溝面5の端部と軸線Oとを繋ぐ線分とがなす角度である。回転方向前方におけるねじれ溝面5の端部は、第2外周面部29とねじれ溝面5との境界である。回転方向後方におけるねじれ溝面5の端部は、第1外周面部19とねじれ溝面5との境界である。ドリル100の切刃の数がNとされる場合、第2中心角θ22は、360°をNで割った値から第1中心角θ21を差し引いた値とされる。ドリル100の切刃の数が2の場合、第2中心角θ22は、180°から第1中心角θ21を差し引いた値である。
軸線Oに垂直な断面において、第1中心角θ21は、たとえば第2中心角θ22の0.55倍以上1.0倍以下である。軸線Oに垂直な断面において、第1中心角θ21の下限は、特に限定されないが、たとえば第2中心角θ22の0.6倍以上であってもよいし、第2中心角θ22の0.65倍以上であってもよい。軸線Oに垂直な断面において、第1中心角θ21の上限は、特に限定されないが、たとえば第2中心角θ22の0.9倍以下であってもよいし、第2中心角θ22の0.85倍以下であってもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るドリル100の構成について説明する。第2実施形態に係るドリル100は、補強切刃部を有する点において、第1実施形態に係るドリル100と異なっており、その他の点については、第1実施形態に係るドリル100と実質的に同じである。以下、第1実施形態に係るドリル100と異なる点を中心に説明する。
図11は、第2実施形態に係るドリル100の前端部を示す斜視模式図である。図11に示される斜視模式図は、図2に示される斜視模式図に対応している。図11に示されるように、ドリル100は、補強すくい面39をさらに有していてもよい。補強すくい面39は、第1逃げ面10、ねじれ溝面5および第1外周面部19の各々に連なっている。補強すくい面39と第1外周面部19との稜線は、リーディングエッジ7を構成している。
主切刃3は、曲線切刃部31と補強切刃部32とを有していてもよい。曲線切刃部31は、第1直線シンニング切刃部41に連なっている。補強切刃部32は、曲線切刃部31に連なっている。補強切刃部32は、曲線切刃部31に対して径方向外側にある。補強切刃部32は、第1逃げ面10と補強すくい面39との稜線によって構成されている。
図12は、第2実施形態に係るドリル100の構成を示す正面模式図である。図12に示される正面模式図は、図3に示される正面模式図に対応している。図13は、図12の領域XIIIの拡大模式図である。図12および図13に示されるように、曲線切刃部31は、回転方向後方に凹んでいる。軸線方向に見て、補強切刃部32はたとえば直線状である。補強切刃部32は、最外周端59を構成している。
図12および図13に示されるように、曲線切刃部31と補強切刃部32との境界は、第2境界点57とされる。第2境界点57は、曲線切刃部31の外周端である。軸線方向に見て、第2境界点57と軸線Oとを含む直線は、第4直線124とされる。軸線方向に見て、補強切刃部32は、第4直線124に対して回転方向後方に傾斜している。軸線方向に見て、補強切刃部32と第4直線124とがなす角度は、第3角度θ3とされる。第3角度θ3は、たとえば15°以上30°以下である。第3角度θ3の下限は、特に限定されないが、たとえば18°以上であってもよいし、21°以上であってもよい。第3角度θ3の上限は、特に限定されないが、たとえば27°以下であってもよいし、24°以下であってもよい。
図13に示されるように、軸線方向に見て、補強切刃部32の長さは第2長さL2とされる。なお、軸線方向に見て補強切刃部32が曲線状である場合、第2長さL2は、補強切刃部32の両端を繋ぐ線分の長さとされる。第2長さL2は、たとえば第1直径D1の1%以上2%以下である。第2長さL2の下限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の1.2%以上であってもよいし、第1直径D1の1.4%以上であってもよい。第2長さL2の上限は、特に限定されないが、たとえば第1直径D1の1.8%以下であってもよいし、第1直径D1の1.6%以下であってもよい。
図13に示されるように、第2境界点57を通り且つ第1直線121に平行な直線は、第3直線123とされる。言い換えれば、曲線切刃部31の外周端を通り且つ第1直線121に平行な直線は、第3直線123とされる。主切刃3が曲線切刃部31を有している場合、最大距離Hは、軸線方向に見て第3直線123と曲線切刃部31との間の最大距離とされる。軸線方向に見て、曲線切刃部31は円弧状であってもよい。主切刃3が曲線切刃部31を有している場合、第2曲率半径R2は、曲線切刃部31の曲率半径とされる。
なお上記において、ドリル100が2つの主切刃3を有する場合について説明したが、主切刃3の数は、2つに限定されない。主切刃3の数は、3つであってもよいし、4つ以上であってもよい。被削材は、たとえばステンレス材(SUS)などの金属である。被削材は、炭素鋼であってもよいし、合金鋼であってもよいし、難削材であってもよい。
次に、本実施形態に係るドリル100の作用効果について説明する。
ドリル100の切刃において軸方向すくい角の変化が大きい部分がある場合、当該部分の周辺において、切刃が受ける切削抵抗の変化が大きくなる。これによって、当該部分の周辺において、ドリル100から被削材に負荷される圧力が集中する。この結果、当該部分の周辺において、切屑の溶着が発生することがある。
本実施形態に係るドリル100によれば、第1端部51から離間するにつれて、軸線方向に見て曲線シンニング切刃部43の接線に垂直な断面における曲線シンニング切刃部43の軸方向すくい角は大きくなっている。軸線方向に見て、曲線シンニング切刃部43の曲率半径(第1曲率半径R1)は、ドリル100の直径(第1直径D1)の15%以上である。このため、曲線シンニング切刃部43の曲率半径が過度に小さい場合と比較して、曲線シンニング切刃部43の長さを長くすることができる。これによって、曲線シンニング切刃部43における長さあたりの軸方向すくい角の変化量を小さくすることができる。このため、ドリル100の切刃が受ける切削抵抗が急激に変化することを抑制できる。この結果、切刃に切屑が溶着することを抑制できる。
さらに、曲線シンニング切刃部43の長さが十分に長い場合、曲線シンニング切刃部43の第2端部52と最外周端59との間の距離が短くなる。このため、第2端部52における曲線シンニング切刃部43の軸方向すくい角は、第4軸方向すくい角θ14に近くなる。言い換えれば、第2端部52における曲線シンニング切刃部43の軸方向すくい角は大きくなる。これによって、曲線シンニング切刃部43における切削抵抗を低減できる。
軸線方向に見て、第1直線121とシンニング切刃4とがなす角度(第1角度θ1)が過度に大きい場合、曲線シンニング切刃部43の第1端部51と軸線Oとの距離が大きくなる。このため、曲線シンニング切刃部43の長さが短くなる。これによって、曲線シンニング切刃部43における長さあたりのすくい角の変化量が大きくなる。この結果、切刃に切屑が溶着するおそれがある。本実施形態に係るドリル100によれば、軸線方向に見て、第1直線121とシンニング切刃4とがなす角度は、160°以下である。このため、曲線シンニング切刃部43の長さが短くなることを抑制できる。この結果、切刃に切屑が溶着することを抑制できる。
第2直線シンニング切刃部42の軸方向すくい角が0°より大きい場合、ドリル100の切刃を再研削することによって、第2直線シンニング切刃部42は、回転方向後方に後退する。このため、チゼル8の長さが短くなる。これによって、ドリル100の中心部の強度が低下するおそれがある。この結果、ドリル100が欠損するおそれがある。本実施形態に係るドリル100によれば、軸線方向に見て第2直線シンニング切刃部42に垂直あり且つ第2直線シンニング切刃部42と交差する断面(第1断面CS1)において、第2直線シンニング切刃部42の軸方向すくい角(第1軸方向すくい角θ11)は0°以下である。このため、ドリル100の欠損を抑制できる。また、本実施形態に係るドリル100によれば、第1断面CS1において、第1軸方向すくい角θ11は-10°以上である。このため、第2直線シンニング切刃部42における切削抵抗が過度に大きくなることを抑制できる。
本実施形態に係るドリル100によれば、シンニングポケット壁部63は、シンニング切刃4に対して回転方向前方にあってもよい。平面視方向101に見て第2直線122に垂直であり且つシンニングポケット壁部63と中間面62との境界線と交差する断面(第3断面CS3)において、シンニングポケット壁部63の曲率半径(第4曲率半径R4)は、ドリル100の直径(第1直径D1)の10%以上30%以下であってもよい。これによって、ドリル100の軸線Oに近い切屑の部分は、シンニングポケット壁部63に収められて流される。このため、切屑は分断されやすくなり、ドリル100の切屑排出性を向上できる。
本実施形態に係るドリル100によれば、平面視方向101に見て第2直線122に垂直であり且つシンニングポケット壁部63と中間面62との境界線と交差する断面(第3断面CS3)において、シンニングすくい面部61と中間面62との境界におけるシンニングすくい面部61の接線(第1接線131)と、シンニングポケット壁部63と中間面62との境界におけるシンニングポケット壁部63の接線(第2接線132)とがなす角(第2角度θ2)は、105°以上であってもよい。このため、シンニングポケット壁部63が構成する溝の容積を大きくすることができる。これによって、切屑排出性を向上できる。
本実施形態に係るドリル100によれば、主切刃3は、曲線切刃部31を有していてもよい。軸線方向に見て、曲線切刃部31の曲率半径(第2曲率半径R2)は、ドリル100の直径(第1直径D1)の40%以上100%以下であってもよい。このため、主切刃3が直線状である場合と比較して、軸線方向に見て、曲線切刃部31の外周端における曲線切刃部31の接線は、軸線Oと曲線切刃部31の外周端とを含む直線に対して、回転方向前方に大きく傾斜する。このため、曲線切刃部31の外周端周辺における主切刃3の切れ味を向上することができる。軸線方向に見て、第2曲率半径R2を第1直径D1の40%以上とすることによって、曲線切刃部31の外周端周辺における主切刃3の強度の低下を抑制できる。軸線方向に見て、第2曲率半径R2を第1直径D1の100%以下とすることによって、主切刃3の切れ味の低下を抑制できる。
主切刃3が直線状である場合、形成された直後の切屑は直線状となる。この場合、直線状の切屑が第2ヒール92の曲線部95によってカールされる。このため、切屑の変形量が大きくなり、切削抵抗が大きくなる。一方、主切刃3が曲線状である場合、形成された直後の切屑は曲線状となる。この場合、曲線状の切屑が第2ヒール92の曲線部95によってカールされる。このため、主切刃3が直線状である場合と比較して、切屑の変形量が小さくなり、切削抵抗が小さくなる。本実施形態に係るドリル100によれば、主切刃3は、曲線切刃部31を有していてもよい。このため、主切刃3で形成された切屑は曲線状となる。これによって、切削抵抗を低減できる。
本実施形態に係るドリル100によれば、軸線方向に見て、第2ヒール92の曲線部95の曲率半径(第3曲率半径R3)は、主切刃3の曲線切刃部31の曲率半径(第2曲率半径R2)よりも小さくてもよい。このため、切屑が主切刃3の近くのねじれ溝面5から第2ヒール92の近くのねじれ溝面5に向かって流れるにつれて、切屑のカール半径は徐々に小さくなる。
本実施形態に係るドリル100は、補強切刃部32を有していてもよい。補強切刃部32は、最外周端59を構成していてもよい。補強切刃部32は、第4直線124に対して回転方向後方に傾斜していてもよい。このため、補強切刃部32を有していない場合と比較して、最外周端59の周囲において、切刃の強度を向上することができる。この結果、硬度がHB300以上である被削材を切削する場合においても切刃の欠損を抑制できる。
軸線方向に見て補強切刃部32の長さが過度に長い場合、切削抵抗が大きくなるため、切屑の厚みが厚くなる。このため、切屑の強度が上がり、ドリルのねじれ溝表面を切屑が強く擦る。これによって、切屑が流れた跡に沿って、ドリル100において摩耗が発生する。本実施形態に係るドリル100によれば、軸線方向に見て、補強切刃部32の長さ(第2長さL2)は、ドリル100の直径(第1直径D1)の2%以下であってもよい。このため、補強切刃部32の長さが過度に長くなることを抑制できる。これによって、ドリル100の摩耗を抑制できる。
補強切刃部32の長さが過度に長い場合、補強切刃部32における切削抵抗が過度に大きくなる。このため、曲線切刃部31と補強切刃部32との境界における切削抵抗の変化量が大きくなる。このため、切刃において切屑の溶着が発生し易くなる。本実施形態に係るドリル100によれば、軸線方向に見て、補強切刃部32の長さ(第2長さL2)は、ドリル100の直径(第1直径D1)の2%以下であってもよい。これによって、切刃における切屑の溶着を抑制できる。
(サンプル準備)
まず、サンプル1からサンプル3に係るドリル100を準備した。サンプル1およびサンプル2のドリル100は、比較例である。サンプル3のドリル100は、実施例である。
サンプル1のドリル100において、曲線シンニング切刃部43の第1曲率半径R1は、ドリル100の直径の10%とした。サンプル1のドリル100において、曲線シンニング切刃部43の第2軸方向すくい角θ12は、0°とした。サンプル1からサンプル3に係るドリル100の直径(第1直径D1)は、19.25mmとした。
サンプル2のドリル100において、曲線シンニング切刃部43の第1曲率半径R1は、ドリル100の直径の10%とした。サンプル2のドリル100において、曲線シンニング切刃部43の第2軸方向すくい角θ12は10°とした。
サンプル3のドリル100は、シンニングポケット壁部63を有している。サンプル3のドリル100において、シンニングポケット壁部63の第4曲率半径R4は、ドリル100の直径の15%とした。サンプル3のドリル100において、曲線シンニング切刃部43の第1曲率半径R1は、ドリル100の直径の25%とした。サンプル3のドリル100において、曲線シンニング切刃部43の第2軸方向すくい角θ12は13°とした。
(評価方法)
次に、サンプル1からサンプル3に係るドリル100を用いて切削抵抗のスラスト分力を評価した。サンプル1からサンプル3に係るドリル100を用いて被削材に穴を形成した。被削材は、SS400とした。穴の深さは、40mmとした。穴の数は、3個とした。サンプル1からサンプル3に係るドリル100を用いて被削材に穴を形成しながら、切削抵抗のスラスト分力を測定した。3個の穴を形成する際にドリル100が受けた切削抵抗のスラスト分力の平均値を求めた。穴の形成によって生じた切屑を確認した。切削速度Vcは、120m/分とした。送り量fは、0.3mm/回転とした。内部給油によってクーラントを供給した。
(評価結果)
表1は、サンプル1からサンプル3に係るドリル100を用いて穴を形成する過程において、ドリル100が受けた切削抵抗のスラスト分力の平均値を示している。表1に示されるように、サンプル3に係るドリル100を用いて穴を形成した場合のドリル100が受けた切削抵抗のスラスト分力は、サンプル1およびサンプル2に係るドリル100を用いて穴を形成した場合のドリル100が受けた切削抵抗のスラスト分力よりも小さかった。以上の結果より、実施例のドリル100は、比較例のドリル100と比較して、切削抵抗を低減可能であることが実証された。
図14は、サンプル1に係るドリル100を用いて形成された切屑の写真である。図15は、サンプル2に係るドリル100を用いて形成された切屑の写真である。図16は、サンプル3に係るドリル100を用いて形成された切屑の写真である。図14、図15および図16に示されるように、サンプル1およびサンプル2に係るドリル100によって形成された切屑98の表面において、切屑98の流れる方向に沿った傷99が発生した。切刃に溶着した切屑が新たに形成される切屑に接触することによって、傷99が発生すると考えられる。このため、サンプル1およびサンプル2に係るドリル100において、切刃への切屑の溶着が発生していると考えられる。一方、サンプル3に係るドリル100によって形成された切屑98の表面において、切屑98の流れる方向に沿った傷99は、ほとんど発生していなかった。このことから、実施例のドリル100は、比較例のドリル100と比較して、切刃への切屑の溶着が抑制可能であることが実証された。
図14、図15および図16に示されるように、サンプル3に係るドリル100によって形成された切屑98の長さは、サンプル1およびサンプル2の各々に係るドリル100によって形成された切屑98の長さよりも短かった。このことから、実施例のドリル100は、比較例のドリル100と比較して、切屑の排出性が向上可能であることが実証された。
(評価方法)
次に、サンプル1からサンプル3に係るドリル100を用いて、低送り条件における切屑排出性を評価した。被削材は、SS400とした。穴の深さは、40mmとした。穴の形成によって生じた切屑を確認した。切削速度Vcは、120m/分とした。送り量fは、0.2mm/回転とした。内部給油によってクーラントを供給した。
(評価結果)
図17は、低送り条件においてサンプル1に係るドリル100を用いて形成された切屑の写真である。図18は、低送り条件においてサンプル2に係るドリル100を用いて形成された切屑の写真である。図19は、低送り条件においてサンプル3に係るドリル100を用いて形成された切屑の写真である。図17および図18に示されるように、サンプル1およびサンプル2に係るドリル100によって形成された切屑98の中に、長さが50mm以上の切屑98が含まれていた。一方、図19に示されるように、サンプル3に係るドリル100によって形成された切屑98の長さは、50mm以下であった。このことから、実施例のドリル100は、比較例のドリル100と比較して、切屑の排出性が向上可能であることが実証された。
今回開示された実施形態および実施例は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。