JP7205969B2 - 外板冷却システム - Google Patents

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Description

本発明は、外板を介した外部流体との熱交換により冷却された冷却気体を利用する外板冷却システムに関する。
近年、輸送機の電動化の促進や電子機器の高性能化及び小型化が急速に進み、これらの機器を多数搭載した船舶、鉄道車両、自動車、及び航空機などを含む輸送機におけるサーマルマネジメント要求が高まりつつある。輸送機の一例としての航空機では、従来、電子機器の冷却のために、機体表面に設けられたエアスクープから取り入れた高高度の冷気を利用するヒートシンクが用いられてきたが、機体表面の不連続性による空気抵抗の増大や、エアスクープへの異物の侵入などの課題があった。このような課題に対し、高高度の冷気と機内循環空気とを熱交換する外板熱交換器が提案されている。特許文献1,2は、航空機に設けられた外板熱交換器を開示する。
特許文献1の航空機に設けられた外板熱交換器は、壁の一部が外板で形成された冷空気チャンバと、流入ダクト及び流出ダクトを経由して冷空気チャンバと連通された冷却室とを備える。冷却室から流出ダクトを通じて冷空気チャンバ内へ流入した空気は、外板を介して大気と熱交換することにより冷却される。冷却された空気は、流入ダクトを通じて冷却室へ流入し、冷却室内の飲食物を冷却する。
特許文献2の航空機に設けられた外板熱交換器は、外板と内板との間に形成されたエンベロープと、航空電子機器を収容したコンパートメントと、コンパートメントとエンベロープとを接続する排気ダクト及びコレクタダクトとによって構成された閉ループを備える。コンパートメントにおいて航空電子機器の放熱によって温度上昇した空気は、排気ダクトを通じてエンベロープに流入し、エンベロープを通過するうちに外板を通じた外気との熱交換によって冷却され、コレクタダクトを通じてコンパートメントへ戻って航空電子機器を冷却する。
特開平1-311999号公報 米国特許第4819720号公報
上記特許文献1の外板熱交換器では、冷空気チャンバで冷やされた気体を機内に設けられた冷却室との間で循環させている。同様に、上記特許文献2の外板熱交換器では、エンベロープで冷やされた気体を機内に設けられたコンパートメントとの間で循環させている。
このように外板熱交換器で冷却された気体を機内に循環させると、気体が機内を巡るうちに同伴する埃塵を除くためのフィルタや、気体の湿度や圧力を調整するための装置が必要となり、システムの大型化やシステムメンテナンスの煩雑化が伴う。また、機内を循環する流体は気体(空気)に限定されるため、被冷却体の自由度が低い。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、外板を介した外部流体との熱交換により冷却された冷却気体を利用する輸送機の外板冷却システムであって、被冷却体の自由度の高いものを提案することにある。
本発明の一態様に係る外板冷却システムは、輸送機の外板冷却システムであって、
外板、前記外板の内側に設けられた内板、及び、前記外板と前記内板との間に設けられた断熱層を有する外殻と、
前記外板と前記内板との間に設けられ、内部の気体が前記外板を介して外部へ放熱することにより冷却される冷却チャンバと、
前記内板の内側に設けられて熱媒体を昇温する昇温部、及び、前記冷却チャンバの内部に設けられて前記熱媒体を冷却する冷却部を含み、前記熱媒体が循環する循環ループと、
前記冷却チャンバ内に設けられた、気体の循環流路を形成する流路形成部材、及び、気体に前記循環流路を循環する駆動力を与えるファンと、を備えるものである。
上記構成の外板冷却システムでは、外板を通じた外気との熱交換により冷却された気体(以下、「冷却気体」と称する)が輸送機の機内を循環するのではなく、冷却気体によって機内を循環する熱媒体が冷却される。冷却気体は冷却部を通過する熱媒体を間接的に冷却するので、冷却気体と熱媒体とは混合せず、熱媒体として任意の気体や液体を利用することができる。このように任意の熱媒体を利用することができるので昇温部で熱媒体に熱を与える被冷却体の自由度が高まる。
本発明によれば、外板を介した外部流体との熱交換により冷却された冷却気体を利用する輸送機の外板冷却システムであって、被冷却体の自由度の高いものを提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る外板冷却システムの概略構成を示す図である。 図2は、図1のII-II矢視断面図である。 図3は、図2のIII-III矢視断面図である。 図4は、図1の冷却チャンバの変形例を説明する図である。 図5は、熱媒体循環ループの変形例を説明する図である。 図6は、実施形態の変形例1に係る外板冷却システムの概略構成を示す図である。 図7は、図6のVII-VII矢視断面図である。 図8は、図7のVIII-VIII矢視断面図である。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態に係る外板冷却システム1は、船舶(潜水艇を含む)、鉄道車両、自動車、及び航空機などの輸送機に適用され、輸送機に搭載された被冷却体99を冷却するために利用される。以下、外板冷却システム1を輸送機の一例としての航空機10に適用した例を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る外板冷却システム1の概略構成を示す図、図2は、図1のII-II矢視断面図で、図3は図2のIII-III矢視断面図である。なお、図1では外板冷却システム1が適用された輸送機の一例としての航空機10の胴体の一部分の断面図が示されている。
図1に示す航空機10は、外板21、外板21よりも機内側に離れて設けられた内板22、及び、外板21と内板22との間に設けられた断熱層23を有する外殻2を備える。外板21は、例えば、アルミニウム合金や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの材料からなる。内板22は、機体の室内と室外とを仕切る壁を形成している。内板22の内部には、操縦室、客室、貨物室、船内電子機器類が設置された電子設備室、エンジンなどの機械類が設置された機械設備室など(いずれも図示略)が設けられている。
断熱層23は、外板21と内板22とを熱的に絶縁する。断熱層23は、例えば、真空断熱材で構成されていてよい。一例として、真空断熱材は、所望形状に成形された多孔性且つ断熱性の芯材と、芯材を被覆するラミネートフィルムとからなり、ラミネートフィルムの内部がほぼ真空に減圧されたものである。
上記構成の航空機10には、外板21を介した外部流体との熱交換により冷却された冷却気体を利用する外板冷却システム1が構築されている。外板冷却システム1は、上述の外殻2と、外板21と内板22との間に設けられ、内部の気体が外板21を介して外部へ放熱することにより冷却される冷却チャンバ27と、熱媒体が循環する循環ループ4と、冷却チャンバ27内に設けられた流路形成部材29及びファン30とを備える。循環ループ4は、内板22の内側に設けられて熱媒体を昇温する昇温部41、及び、冷却チャンバ27の内部に設けられて熱媒体を冷却する冷却部42を含む。
冷却チャンバ27は、外板21と内板22との間において、外板21及び断熱層23の一部分(断熱層23a)によって形成されている。図1及び図2に示すように、外板21と内板22との間に設けられた隣接するフレーム28の間において、隣接するフレーム28のうち一方のフレーム28、内板22、及び、他方のフレーム28に沿って断熱層23aが設けられている。冷却チャンバ27は、この断熱層23aと外板21の一部分とを含み、全体として箱状を呈している。但し、図4に示すように、フレーム28に沿って設けられた断熱層23に代えて、フレーム28に沿って気体の移動を阻止するが熱の移動を許容する金属板25が設けられていてもよい。この金属板25を介して冷却チャンバ27内の気体が、内板22と外板21との間であって且つ冷却チャンバ27の外部にある気体へも放熱する。また、その場合、内板22と外板21との間であって且つ冷却チャンバ27の外部にある気体は、外板21を介して、外気と熱交換を行っていてもよい。
冷却チャンバ27内は、密閉された空間であって、高高度を飛行する際に結露が生じない程度に十分に乾いた気体が封入されている。外板21は航空機10の飛行中に高高度の外気(外部流体)に晒され、この外気と冷却チャンバ27内の気体とが外板21を介して熱交換を行い、冷却チャンバ27内の気体が冷却される。
冷却チャンバ27内には、流路形成部材29によって、環状の循環流路3が形成されている。図1及び図2に示す流路形成部材29は、機内側が断熱層23aと接合され、機外側が外板21と接合された、外板21及び内板22のうち少なくとも一方と略直交する板状部材である。流路形成部材29の上下は断熱層23aと離間しており、この間隙を気体が通過する。流路形成部材29は、断熱層23と同様に真空断熱材で構成されていてよい。
冷却チャンバ27内に設けられた流路形成部材29によって、図3に示すように、機体前側で冷却気体が上向きに流れ、機体後側で冷却気体が下向きに流れる、冷却気体の循環流路3が形成される。但し、流路形成部材29によって、機体前側で冷却気体が下向きに流れ、機体前側で冷却気体が下向きに流れる、冷却気体の循環流路3が形成されてもよい。
冷却チャンバ27内であって流路形成部材29よりも機体前側には、少なくとも1つの冷却部42と少なくとも1つのファン30とが配置される。ファン30は、冷却チャンバ27内の冷却気体に循環流路3を循環する駆動力を与える。
循環ループ4は、内板22よりも内部に設けられた昇温部41、冷却チャンバ27の内部に設けられた冷却部42、昇温部41から冷却部42へ熱媒体を送る高温ライン43、及び、冷却部42から昇温部41へ熱媒体を送る低温ライン44を含み、熱媒体が循環する。
昇温部41は、循環ループ4のうち熱媒体を昇温させる部分である。昇温部41は、航空機10の機体内部に設置された被冷却体99と熱的に接続されている。なお、昇温部41と被冷却体99とが熱的に接続されている状態とは、例えば、昇温部41と被冷却体99とが接触したり、昇温部41が被冷却体99内に置かれたりして、被冷却体99から昇温部41を流れる熱媒体へ熱が移動する状態を意味する。昇温部41を流れる熱媒体は被冷却体99から吸熱し、熱媒体の温度は上昇し、被冷却体99は冷却される。高温ライン43は、昇温部41の出口と冷却部42の入口とを接続する配管等で構成されている。昇温部41で温度が上昇した熱媒体は、高温ライン43を通じて冷却部42の入口へ至る。
冷却部42は、循環ループ4のうち熱媒体を冷却する部分である。冷却部42は、循環流路3の一部分において流路断面を塞ぐように循環流路3に置かれる。冷却部42は、例えば、多数の伝熱管とそれを束ねる入口側ヘッダ及び出口側ヘッダを備えたものである(図示略)。冷却チャンバ27の循環流路3に置かれた冷却部42では、冷却部42を流れる熱媒体が当該循環流路3を流れる冷却気体へ放熱し、これにより熱媒体が冷却される。
低温ライン44は、冷却部42の出口と昇温部41の入口とを接続する配管等で構成されている。冷却部42で冷却された熱媒体は、低温ライン44を通じて昇温部41へ流入し、再び被冷却体99の冷却に利用される。
上記構成の熱媒体循環ループ4において、被冷却体99は、制御盤やエンジンコントロールユニット(ECU)やその他コンピュータなどの発熱部品を含む電子機器、軸受などの摩擦熱が生じる機械部品、電池、及び、室内空気のうち少なくとも1つであってよい。なお、被冷却体99が軸受などの摩擦熱が生じる機械部品である場合には、熱媒体が高温の機械部品から熱エネルギーを受けることに加え、熱媒体が機械部品との間で圧縮されるなどの運動エネルギーを受けて昇温することがある。このように、昇温部41には、熱媒体が被冷却体99から熱エネルギーを受けて昇温するものや、熱媒体が運動エネルギーやその他のエネルギーを受けて昇温するものが含まれてよい。
また、熱媒体は、任意の液体又は気体であってよい。このような熱媒体として、例えば、水、アルコール、アンモニア、及び、それらの混合液、又は、油が挙げられる。また、熱媒体循環ループ4は、ベーパサイクル冷却システム(Vapor Cycle System)、ヒートパイプ、及び、液浸冷却システムのうち少なくとも1つとして構成されていてもよい。また、図5に示すように、熱媒体循環ループ4に熱媒体を強制的に循環させるポンプPが設けられていてもよい。
以上に説明したように、本実施形態に係る輸送機の外板冷却システム1は、外板21、外板21の内側に設けられた内板22、及び、外板21と内板22との間に設けられた断熱層23を有する外殻2と、外板21と内板22との間に設けられ、内部の気体が外板21を介して外部へ放熱することにより冷却される冷却チャンバ27と、内板22の内側に設けられて熱媒体を昇温する昇温部41、及び、冷却チャンバ27の内部に設けられて熱媒体を冷却する冷却部42を含み、熱媒体が循環する循環ループ4と、冷却チャンバ27内に設けられた、気体の循環流路3を形成する流路形成部材29、及び、気体に循環流路3を循環する駆動力を与えるファン30と、を備えるものである。
上記構成の外板冷却システム1では、外板21を通じた外気との熱交換により冷却された冷却気体が機内を循環するのではなく、冷却気体によって機内を循環する熱媒体が冷却される。冷却気体は冷却部42を通過する熱媒体を間接的に冷却するので、冷却気体と熱媒体とは混合せず、熱媒体として任意の気体や液体を利用することができる。このように任意の熱媒体を利用することができるので被冷却体99の自由度が高まる。
また、上記の外板冷却システム1では、冷却チャンバ27内に気体の循環流路3が形成されており、ファン30によってこの循環流路3を冷却気体が強制的に循環させられる。よって、冷却チャンバ27内に設置された冷却部42からの放熱を促進させることができる。
更に、上記の外板冷却システム1では、冷却チャンバ27内の冷却気体は当該冷却チャンバ27内で循環し、冷却チャンバ27には外気や機内の気体が導入されない。よって、冷却気体から埃塵を除くためのフィルタや、冷却気体の湿度や圧力を調整するための装置は不要である。また、冷却チャンバ27に十分に乾いた気体を予め封入しておけば、外気の温度が低下しても冷却チャンバ27内での結露が生じないので、メンテナンスが容易である。また、冷却チャンバ27内の気体が十分に乾いた状態でない場合には、デシカント式除湿器等のメンテナンス容易な除湿器を内部に設けるだけでも、乾いた状態を維持することが容易である。
上記外板冷却システム1において、本実施形態に示したように、流路形成部材29は断熱材で構成されていてよい。
これにより、流路形成部材29を、冷却チャンバ27を形成している断熱層23aと一体的に成形することができ、部品点数を削減することができる。また、流路形成部材29が循環流路3の往路と復路とを熱的に隔離することができる。
或いは、上記外板冷却システム1において、冷却チャンバ27と、内板22と外板21との間であって且つ冷却チャンバ27の外部の空間とが、金属板25で仕切られていてよい。
これにより、金属板25を介して冷却チャンバ27の外部の空間へ放熱される。また、金属板25により放熱面積が増えるので、より効果的に冷却チャンバ27内の気体を冷却することができる。
また、上記外板冷却システム1において、本実施形態に示したように、流路形成部材29が、外板21及び内板22のうち少なくとも一方と直交する板状部材であってよい。
これにより、冷却チャンバ27内における流路形成部材29を介して一方と他方の熱分布が小さくなり、冷却部42を通過する熱媒体に効率よく放熱させることができる。
〔変形例1〕
次に、上記実施形態の変形例1を説明する。図6は、実施形態の変形例1に係る外板冷却システム1Aの概略構成を示す図、図7は、図6のVII-VII矢視断面図、図8は、図7のVIII-VIII矢視断面図である。本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
図6~8に示す外板冷却システム1Aは、上記実施形態に係る外板冷却システム1と、冷却チャンバ27に設けられた流路形成部材29Aの態様が異なる。具体的には、流路形成部材29Aは、外板21及び内板22の間において、外板21及び内板22のうち少なくとも一方と略平行に延在する板状部材である。流路形成部材29Aの上下は断熱層23aと離間しており、この間隙を冷却気体が流れる。
冷却チャンバ27内に設けられた流路形成部材29Aによって、機内側で冷却気体が上向きに流れ、機外側で冷却気体が下向きに流れる、冷却気体の循環流路3が形成される。冷却チャンバ27内であって流路形成部材29Aの機内側には、少なくとも1つの冷却部42と、少なくとも1つのファン30とが配置される。
このような流路形成部材29Aによれば循環流路3の気体の流路断面における温度分布が小さく、冷却部42における冷却の程度のバラツキを抑えることができる。
以上に本発明の好適な実施の形態(及び、変形例)を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
1,1A:外板冷却システム
2 :外殻
3 :循環流路
4 :循環ループ
10 :航空機(輸送機の一例)
21 :外板
22 :内板
23,23a:断熱層
27 :冷却チャンバ
28 :フレーム
29,29A:流路形成部材
30 :ファン
41 :昇温部
42 :冷却部
43 :高温ライン
44 :低温ライン
99 :被冷却体
P :ポンプ

Claims (5)

  1. 輸送機の外板冷却システムであって、
    外板、前記外板の内側に設けられた内板、及び、前記外板と前記内板との間に設けられた断熱層を有する外殻と、
    前記外板と前記内板との間に設けられ、内部の気体が前記外板を介して外部へ放熱することにより冷却される冷却チャンバと、
    前記内板の内側に設けられて熱媒体を昇温する昇温部、及び、前記冷却チャンバの内部に設けられて前記熱媒体を冷却する冷却部を含み、前記熱媒体が循環する循環ループと、
    前記冷却チャンバ内に設けられた、気体の循環流路を形成する流路形成部材、及び、気体に前記循環流路を循環する駆動力を与えるファンと、を備える、
    外板冷却システム。
  2. 前記流路形成部材が断熱材で構成されている、
    請求項1に記載の外板冷却システム。
  3. 前記冷却チャンバと、前記内板と前記外板との間であって且つ前記冷却チャンバの外部の空間とが、金属板で仕切られている、
    請求項1に記載の外板冷却システム。
  4. 前記流路形成部材が、前記外板及び前記内板のうち少なくとも一方と平行に延在する板状部材である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の外板冷却システム。
  5. 前記流路形成部材が、前記外板及び前記内板のうち少なくとも一方と直交する板状部材である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の外板冷却システム。
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