次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る広角レンズ装置1の構成について、図1(図2)を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る広角レンズ装置1、特に、仮想線で示すプロジェクタPに装着して使用する交換レンズとして構成した広角投射レンズ装置1pにおける結像光学系Ccの全体構成を示す。図中、矢印Dfは、結像光学系Ccの拡大側、矢印Drは、結像光学系Ccの縮小側を示している。また、図2は、同結像光学系Ccにおけるレンズに着目した構成、即ち、図1から第1光路変更ミラーM1と第2光路変更ミラーM2を除いた構成を示す。
なお、図1において、仮想線で示す11は、広角投射レンズ装置1pにおけるハウジング部(レンズ鏡筒)を示すとともに、同11mはマウント部を示す。一方、仮想線で示すプロジェクタPにおいて、100Dは、プロジェクタPの内部に配される液晶表示パネル等の画像表示パネル100の位置にある広角投射レンズ1pのイメージサークルを示す。したがって、画像表示パネル100は、イメージサークル100Dの下半部に、横長矩形パネル(図1では縦方向)を描いている。このイメージサークル100Dと画像表示パネル100のピント位置は同じ位置で重なっている。また、広角投射レンズ装置1pの設置に際しては、全体を画像表示パネル100の中心に対して縦方向上側にシフト(ディセンター)させる。これにより、広角投射レンズ装置1pから投射される画像(画面)は、前端のレンズ(L1(Lx))の上半部エリアのみが使用され、斜め上方前方へ投射される(図1及び図8参照)。
また、101は、画像表示パネル100に対面して配したプリズムを示す。このプリズム101は、色合成(或いは偏光分離)を行うものであり、所定の軸上面間隔を有する平行平面板として示している。したがって、このプリズム101は、本実施形態における広角投射レンズ装置1pの構成に影響を与えるものではない。その他、プロジェクタPにおいて、Pcはキャビネット、Pcfはキャビネット前面、Pcuはキャビネット上面、Pmはレンズマウント部を示す。
この広角投射レンズ装置1pにおける結像光学系Ccは、拡大側Dfから縮小側Drへ順に、正の第1レンズ群G1,負の第2レンズ群G2を配して構成する。これにより、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間には、当該第1レンズ群G1により中間結像する中間像Kmが形成されるとともに、この中間像Kmは第2レンズ群G2により縮小側Drに再結合する基本的光学系として構成される。
この場合、第1レンズ群G1は、図2に示すように、拡大側Dfから、6枚のレンズL1~L6を含む第1Aレンズ群G1A,4枚のレンズL7~L10を含む第1Bレンズ群G1Bの順に配して構成し、図1に示すように、第1Aレンズ群G1Aと第1Bレンズ群G1Bの間には、第1光路変更ミラーM1を配設する。この第1光路変更ミラーM1により、第1Bレンズ群G1Bの出射光の光路(光軸S)は、90°折り曲げられる。なお、第1光路変更ミラーM1は、一例として反射鏡を示したが、これに限定されるものではなく、光路を90°折り曲げる機能を有するプリズム等の各種の折り曲げ手段を含む概念である。この第1光路変更ミラーM1の配置に際しては、光軸S上の位置において軸外主光線が一致するように考慮する。
なお、第1光路変更ミラーM1の光軸S上の位置において、軸外主光線を一致させるようにすれば、第1Aレンズ群G1Aに、光線の通過しない範囲を半分程度生じさせることができるため、例えば、プロジェクタPからの投射光の光軸Sを、180°まで方向変換した場合、プロジェクタPにおける上面との隙間を柔軟に確保することが可能となるなど、汎用性,柔軟性及び発展性の向上に寄与できる。
また、第1レンズ群G1の最も拡大側DfのレンズL1(Lx)には、両面が拡大側Dfに凸となる球面のガラスレンズを用いる。このようなレンズLxを用いれば、防塵用ガラスフィルタを兼用可能になるため、特に、広角レンズ装置1における前端部におけるメンテナンスの容易化及び小型コンパクト化に寄与できる利点がある。
この点について、さらに言及するに、図4には、参考図として、レンズLxの前に防塵用平行平面フィルタ200を付加した場合の構成及び一部光線を示した。本実施形態に係る広角投射レンズ装置1pのように、画角が66°を超えるような広角化を図る場合、図4に示すような防塵用平行平面フィルタ200を付加すれば、図示のような光線経路が生じ、この結果、防塵用平行平面フィルタ200の外径寸法は、レンズLxに対して、2倍以上を必要とする。しかし、レンズL1(Lx)に、両面が拡大側Dfに凸となる球面のガラスレンズを用いれば、防塵用ガラスフィルタを兼用可能になり、防塵用平行平面フィルタ200を不要にできるため、広角レンズ装置1における前端部におけるメンテナンスの容易化及び小型コンパクト化を図ることができる。なお、防塵用平行平面フィルタ200を不要にできるが、最外鏡枠を形成するに際しては、光束を妨げないような形状、例えば、先端に複数の切欠部による花形フード等に形成することが望ましい。
さらに、フォーカス調整機構の具体的な構造に係わる図示は省略したが、このフォーカス調整機構により移動させるレンズ群には、第1Bレンズ群G1Bを適用する。したがって、不図示のフォーカス調整リング又は回転駆動機構を設け、このフォーカス調整リング又は回転駆動機構により回動力を発生させれば、この回動運動は、運動変換機構を介して進退変位運動に変換され、第1Bレンズ群G1Bに付与される。この結果、第1Bレンズ群G1Bを構成する一又は二以上のレンズが光軸S上を移動してフォーカス調整が行われる。この場合、レンズの移動によりレンズの軸上面間隔も変更されることがあるが、この変更も第1Bレンズ群G1Bによるフォーカス調整に含まれる。具体的には、レンズの移動により、図2の場合、レンズL7とL6間、レンズL9とL10間、レンズL10とL11間の変更が生じる場合があるが、この変更は、第1Bレンズ群G1Bによるフォーカス調整に含まれる。
このように、第1Bレンズ群G1Bを構成する一又は二以上のレンズを光軸S上で移動させてフォーカス調整可能にすれば、全系中における最もコンパクトなレンズ群をフォーカス調整機構に組み込むことができるため、フォーカス調整機構における構成の簡略化,小型化及び低コスト化に寄与できるとともに、調整操作の円滑性も容易に確保できる利点がある。
第2レンズ群G2は、図2に示すように、拡大側Dfから、4枚のレンズL11~L14を含む第2Aレンズ群G2A,9枚のレンズL15~L23を含む第2Bレンズ群G2Bの順に配して構成し、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間には、全系中で最長となる軸上空気間隔Smを設ける。
これにより、後述する条件式を満たすことを前提にして、軸上空気間隔Smの距離及び第2Bレンズ群G2Bに入射する光束を適切な大きさに設定可能となるため、図1に示すように、この軸上空気間隔Sm、即ち、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間に、第2光路変更ミラーM2を容易かつ柔軟に配設することができる。この第2光路変更ミラーM2により、第2Bレンズ群G2Bの出射光の光路は、90°折り曲げられる。このように、第2レンズ群G2を、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bにより構成するとともに、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間に、第2光路変更ミラーM2を配して構成すれば、前述した第1光路変更ミラーM1と組合わせることにより、光軸Sを180°まで拡大する形態として実施できるため、比較的狭い室内等であっても、実質的にプロジェクタの前後サイズ分だけ投射距離を長くすることが可能となり、プロジェクタPの設置性及び広角性をより高めることができる。なお、第2光路変更ミラーM2も、第1光路変更ミラーM1と同様、一例として反射鏡を示したが、これに限定されるものではなく、光路を90°折り曲げる機能を有するプリズム等の各種の折り曲げ手段を含む概念である。
さらに、第2Aレンズ群G2Aは、一例として、4枚のレンズL11~L14により構成した場合を示したが、一般的には、一枚以上のレンズにより構成できるとともに、第2Bレンズ群G2Bは、一例として、9枚のレンズL15~L23により構成した場合を示したが、一般的には、二枚以上のレンズにより構成できる。また、第2Aレンズ群G2Aの最も拡大側DfのレンズL11(Ly)には、両凸レンズを用いることが望ましい。このようなレンズLyを用いれば、軸外光線の屈折を大きくできるため、第2Aレンズ群G2Aの全体の大きさを抑制できる利点がある。
図5には、第2Bレンズ群G2Bの主要光線を用いた光路図を示す。第2レンズ群G2では、第2Bレンズ群G2B中の絞りStと、絞りStから縮小側Drの第2Bレンズ群G2Bの軸上空気間隔Ssを適切に確保することにより、第2Bレンズ群G2Bと画像表示パネル100間の空間をテレセントリックになるように設定する。即ち、絞りStから縮小側Drにおける第2Bレンズ群G2Bの拡大側主点までの軸上空気換算距離を、絞りStから縮小側Drにおける第2Bレンズ群G2Bの焦点距離に一致させる。第2Bレンズ群G2Bの第1主点(中間像Km側)と絞りStの絞り面と仮定する面の空気間隔を第2Bレンズ群G2Bの焦点距離に近づけることにより、絞り面と仮定する点から発した主光線は、第2Bレンズ群G2Bから画像表示パネル100側では平行、即ち、テレセントリック状態となる。このことは、画像表示パネル100から平行光線が入射した第2Bレンズ群G2B内の絞りStよりも、縮小側Drの拡大焦点が絞り面であることを示している。
また、図6は、第2光路変更ミラーM2の位置を光軸S方向に変更、即ち、第1位置X21,第2位置X22,第3位置X23,の異なる三位置に変更したときの概要図を示す。これにより、第1光路変更ミラーM1の位置も、第1位置X11,第2位置X12,第3位置X13に変更できるため、第1光路変更ミラーM1と第2光路変更ミラーM2は、仕様等に応じて最適な位置を設定可能となる。
さらに、前述した図1のように、広角投射レンズ装置1pを、画像表示パネル100の中心に対して縦方向上側にシフト(ディセンター)させて設置すれば、広角投射レンズ装置1p内では、画像表示パネル100から射出される光線の入らない範囲が生じるため、図7に示すように、第1Aレンズ群G1Aの一部と第2Aレンズ群G2Aにおける光線の入らない外形形状部分を物理的にカットすることが可能になり、これにより、キャビネット前面Pcfと第2Aレンズ群G2A間の間隔Efと、キャビネット上面Pcuと第1Aレンズ群G1A間の間隔Euの自由度を高くすることができる。
本実施形態に係る広角投射レンズ装置1pは、各種プロジェクタPに対する交換レンズとして構成するとともに、プロジェクタPのキャビネット前面Pcfから画像表示パネル100までの距離(深さ)やレンズマウント部Pmからキャビネット上面Pcuまでの高さに対応させるため、第2光路変更ミラーM2を配設するために必要な軸上空気間隔Smを確保する自由度を与えている。したがって、プロジェクタPの底面からスクリーン300(図8参照)に拡大投射する位置に対しても容易に対応することができる。なお、第2光路変更ミラーM2の前後の空間は、軸上空気間隔Smは一定に維持されるも、光軸上の光路変換点前後の機械的要素の長さにより、それぞれの広角投射レンズ装置1pにおいて異なってくる。
このように、本発明に係る広角レンズ装置1は、少なくともプロジェクタPに用いる広角投射レンズ装置1pに適用すれば、プロジェクタPの有する課題、特に、設置性及び広角性に係わる課題を有効に解決できるため、本発明における最適な実施形態として位置付けることができる。したがって、広角投射レンズ装置1pには、プロジェクタPのレンズマウント部Pmに対して着脱するマウント部11mを設けることができる。この結果、各種プロジェクタP…に対する汎用性のある交換レンズとして構成できるため、特に、様々なサイズや形状を備える既存の各種プロジェクタに利用することができる。
そして、このように構成する広角投射レンズ装置1pにおける結像光学系Ccの光学条件は、次の各条件式〔01〕~〔05〕を満たすように設定する。
〔01〕 20 <│MD2/FL│ <35
〔02〕 30 <│FLB/FN│ <60
〔03〕 0.5<│MD2/FL2│<5.0
〔04〕 1.0<│MD2/M2B│<2.0
〔05〕 0.5<│FLA/FLB│<1.5
ただし、MD2:軸上空気間隔Smの距離〔mm〕
FL: 全系の焦点距離の絶対値〔mm〕
FLB:第2Bレンズ群G2Bの焦点距離〔mm〕
FN: 全系のFナンバー
FL2:第2レンズ群G2の焦点距離〔mm〕
M2B:第2Bレンズ群G2Bの軸上空気間隔Ssの距離〔mm〕
FLA:第2Aレンズ群G2Aの焦点距離〔mm〕
以上の条件式において、〔01〕及び〔02〕は、本実施形態に係る広角投射レンズ装置1pを構成する際の必須要件、特に、最重要条件となり、〔03〕及び〔04〕は、最重要条件に次いで重要度の高い第二重要条件となり、〔05〕は、第二重要条件に次いで重要度の高い第三重要条件となる。
以下、各条件式〔01〕~〔05〕の内容について具体的に説明する。なお、各条件式〔01〕~〔05〕における数値の有為性については、後述する、第1実施例~第5実施例の検証結果に基づいて説明する。
まず、条件式〔01〕は、全系の焦点距離FLに対する軸上空気間隔Smの距離MD2の度合を規定する条件となるため、適切な範囲に設定することにより、第2Bレンズ群G2Bの小型化や第2光路変更ミラーM2を配設する自由度を確保できる。したがって、軸上空気間隔Smの距離MD2が長い場合は、第2Bレンズ群G2Bに入射する軸外光線が高くなり、結果的に、第2Bレンズ群G2Bのサイズが大きくなったり或いは周辺光量が少なくなってしまうとともに、距離MD2が短い場合は、第2光路変更ミラーM2を配設する自由度が低くなる。
条件式〔02〕は、第2Bレンズ群G2Bに平行光が入射するときの光束の大きさを規定する条件となる。この場合、FNは全系のFナンバーであるため、Fナンバーを大きく選定するすることにより、第2光路変更ミラーM2のサイズを小さくできる。この結果、前後の空間に余裕を持たせることができるため、大型のプロジェクタPを含む様々なタイプのプロジェクタPに利用可能となり汎用性が高められる。したがって、Fナンバーを小さくした場合には、第2光路変更ミラーM2のサイズが大きくなってしまうため、配設位置が限定されるとともに、軸上空気間隔Smの距離MD2を長くする必要があるため、これによって発生する収差を補正することが困難となる。
よって、条件式〔01〕及び〔02〕を満たすことにより、軸上空気間隔Smの距離及び第2Bレンズ群G2Bに入射する光束を適切な大きさに設定可能になるため、特に、軸上空気間隔Smの設計自由度を高めることができ、第2光路変更ミラーM2を柔軟に配設することができる。
条件式〔03〕は、第2レンズ群G2の焦点距離FL2に対する軸上空気間隔Smの距離MD2の度合を規定する条件となり、条件式〔01〕と同様、適切な範囲に設定することにより、第2Bレンズ群G2Bの小型化や第2光路変更ミラーM2を配設する自由度を確保できる。したがって、距離MD2が長い場合は、第2Bレンズ群G2Bに入射する軸外光線が高くなり、結果的に、第2Bレンズ群G2Bが大きくなったり、或いは周辺光量が少なくなってしまうとともに、距離MD2が短い場合は、第2光路変更ミラーM2を配設する自由度が低くなる。
条件式〔04〕は、第2Bレンズ群G2Bの軸上空気間隔Ssの距離M2Bに対する軸上空気間隔Smの距離MD2の度合を規定する条件となる。この場合、軸上空気間隔Ssの距離M2Bの長さにより、第2光路変更ミラーM2と画像表示パネル100の間隔が変わるが、条件式〔04〕を満たすことにより、図1に示すようなプロジェクタPに装着して使用する交換レンズとして構成する場合、プロジェクタPのキャビネット前面Pcfから画像表示パネル100までの距離(深さ)やレンズマウント部Pmからキャビネット上面Pcuまでの高さに対応できるように、必要な軸上空気間隔Smを確保するための自由度が与えられる。また、この結果、プロジェクタPの底面からスクリーン20(図8参照)に拡大投射する位置に対しても容易に対応可能となる。
よって、条件式〔03〕及び〔04〕を満たすことにより、第2光路変更ミラーM2を付加する場合の設計自由度をより高めることが可能になるため、特に、プロジェクタPの高さ方向に沿う中間部位の寸法を十分に確保できる。これにより、各種プロジェクタP…のサイズや形状に対応させることが可能になるなど、汎用性を高めることができる。
条件式〔05〕は、第2Aレンズ群G2Aの焦点距離FLAと第2Bレンズ群G2Bの焦点距離FLBの比を規定する条件となる。したがって、この条件を満たさない場合、即ち、第2Bレンズ群G2Bの焦点距離FLBが長い場合や第2Aレンズ群G2Aの焦点距離FLAが短い場合は、条件式〔05〕の数値が小さくなる。特に、第2Bレンズ群G2Bの焦点距離FLBが長い場合は、入射光束が大きくなるため、第2光路変更ミラーM2も大きくなったり或いはその配設位置が限定されてしまう。また、軸上空気間隔Smの距離MD2を長くする必要があるため、これにより発生する収差を補正することは困難となる。
よって、条件式〔05〕を満たすことにより、第2Aレンズ群G2Aの焦点距離FLAと第2Bレンズ群G2Bの焦点距離FLBの比を適切な比率に設定できるため、第2Bレンズ群G2Bの位置及び軸上空気間隔Ssの距離M2Bに係わる十分な設計自由度を確保できる。
このように、図1に示す広角投射レンズ装置1pは、第1レンズ群G1に第1光路変更ミラーM1を含むとともに、第2レンズ群G2に第2光路変更ミラーM2を含めて構成する。即ち、第1レンズ群G1を構成する第1Aレンズ群G1Aと第1Bレンズ群G1Bの間に、第1光路変更ミラーM1を配設するとともに、第2レンズ群G2を構成する第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間に、第2光路変更ミラーM2を配設するため、プロジェクタPから出射する光線(光軸S)は、180°折り曲げられる。
図8~図10には、三タイプの設置例を示す。前述したように、画像表示パネル100の中心Sと結像光学系Cc(第2Bレンズ群G2B)の光軸Sをオフセットさせた場合、プロジェクタPのキャビネット上面Pcuよりも上方に投射可能となる。
したがって、図8に示すように、テーブル400の上面等に設置した場合、投射距離が短くなりプロジェクタPのキャビネット上面Pcuよりも上方投射となるため、スクリーン300を見やすくなる。また、図9に示すように、天井402に取付けた場合、観察者の影が入り込まず、近距離でスクリーン300を観察できる。さらに、投射距離が短くなることから、図10に示すように、壁面401に取付けた場合であっても、テーブル400の上面や床面等に容易に投射することができる。
次に、本実施形態に係る広角投射レンズ装置1p(広角レンズ装置1)のより具体的な実施例(第1実施例~第5実施例)について、図2~図18を参照して説明する。
まず、第1実施例について、前述した図2及び図3を参照して説明する。図2は、第1実施例に係る広角投射レンズ装置1p(広角レンズ装置1)における結像光学系Ccのレンズに着目した構成を示すとともに、図3に、第1実施例に係る広角投射レンズ装置1pの光学系の投射距離をパラメータ(0.9m,0.6m,2.2m)とした縦収差図を示す。この縦収差図は、左側から、(a)球面収差図(620nm,550nm,460nm)、(b)非点収差図(550nm)、(c)歪曲収差図(550nm)を示している。各スケールは、±0.2mm,±0.2mm,±3%である。
[表1]及び[表2]に、第1実施例に係る図2に示す結像光学系Ccにおける全系のレンズデータを示す。[表1]において、FLは、レンズ全系の焦点距離、FNはFナンバー、Wは半画角を示す。なお、焦点距離FLとFナンバーFNは、広角投射レンズ装置1pの内部に中間像Kmを形成するため、縮小側の画像表示パネル100では正立像になり、値は負となる。また、スクリーン300側から数えたレンズ面の面番号をiとし、これに対応して、レンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、波長587.56nmのレンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)を示す。なお、面番号のOBJは投射距離、STOは絞り面、IMGは画像表示パネル100の位置を示す。曲率半径のINFは平面であり、曲率半径の数値の後にAが付いた面は面形状が非球面であることを示す。軸上面間隔の数値の後にZD面番号が付いた軸上面間隔はフォーカシングにより変わる軸上面間隔であり、屈折率nd(i)とアッベ数νd(i)が空欄であるのは空気であることを示す。
[表2]は、第1実施例における非球面としての面形状(非球面係数)を示す。この場合、面の中心を原点とし、光軸S方向をZとした直交座標系(X,Y,Z)において、ASPを非球面の面番号とし、Rを中心曲率半径、Kを円錐定数、A4,A6,A8,A10…A20を、それぞれ4次,6次,8次,10次…20次の非球面係数、Hを原点からの距離とするとき、[数1]により表されるものとする。なお、[表2]において、「e」は「×10」を意味する。
また、[表2]の下段には、第1実施例におけるフォーカシング時に変化する軸上面間隔を示す。1行目に、変化する面数をZD面番号、1行目にZD0として投射距離を示すとともに、その時の変化する軸上面間隔を記してある。なお、画像表示パネル100に面して配するプリズム101は、色合成(或いは偏光分離)を行うものであり、前述したように、所定の軸上面間隔を有する平行平面板として示しており、このようなプリズム101に関する数値は、本実施形態における広角投射レンズ装置1pの構成に影響を与えるものではない。
図2及び図3から明らかなように、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間には、長い軸上空気間隔Smが確保されている。そして、この軸上空気間隔Smが確保されつつ収差補正は良好に行われていることを確認できる。
次に、本実施形態に係る広角投射レンズ装置1p(広角レンズ装置1)の第2実施例~第5実施例について、図11~図18を参照して説明する。
図11,図13,図15及び図17に、第2実施例,第3実施例,第4実施例及び第5実施例に対応する広角投射レンズ装置1p(広角レンズ装置1)における結像光学系Ccのレンズに着目した構成をそれぞれ示すとともに、図12,図14,図16及び図18に、第2実施例,第3実施例,第4実施例及び第5実施例に対応する広角投射レンズ装置1pの光学系の投射距離をパラメータ(0.9m,0.6m,2.2m)とした縦収差図を示す。各縦収差図は、第1実施例(図2,図3)の場合と同様に、左側から、(a)球面収差図(620nm,550nm,460nm)、(b)非点収差図(550nm)、(c)歪曲収差図(550nm)を示している。各スケールは、±0.2mm,±0.2mm,±3%である。
第2実施例~第5実施例に係る広角投射レンズ装置1pにおける結像光学系Ccは、
拡大側Dfから縮小側Drへ順に、正の第1レンズ群G1,負の第2レンズ群G2を配して構成し、これにより、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間には、当該第1レンズ群G1により中間結像する中間像Kmが形成されるとともに、この中間像Kmは第2レンズ群G2により縮小側Drに再結合する基本的光学系を備える点、第1レンズ群G1は、拡大側Dfから、第1Aレンズ群G1A,第1Bレンズ群G1Bの順に配して構成し、第1Aレンズ群G1Aと第1Bレンズ群G1Bの間に、第1光路変更ミラーM1を配設する点、第2レンズ群G2は、拡大側Dfから、第2Aレンズ群G2A,第2Bレンズ群G2Bの順に配して構成し、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間に、第2光路変更ミラーM2を配する点、を含む基本構成は、第1実施例(図2(図1))と同じになるが、以下に記載するレンズの枚数,各レンズのレンズデータを、第1実施例に対して異ならせている。
まず、第2実施例は、図11に示すように、第1レンズ群G1を、6枚のレンズL1~L6を含む第1Aレンズ群G1Aと4枚のレンズL7~L10を含む第1Bレンズ群G1Bにより構成するとともに、第2レンズ群G2を、2枚のレンズL11及びL12を含む第2Aレンズ群G2Aと9枚のレンズL13~L21を含む第2Bレンズ群G2Bにより構成し、全系のレンズデータを[表3]及び[表4]に設定した点が第1実施例と異なる。なお、[表3]及び[表4]中、各レンズデータの数値は、図11に示す第2実施例のレンズ構成に対応するが、各項目は第1実施例における前述した[表1]及び[表2]と同じである。
図11及び図12から明らかなように、第2実施例においても、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間には、長い軸上空気間隔Smが確保されている。そして、この軸上空気間隔Smが確保されつつ収差補正は良好に行われていることを示している。
第3実施例は、図13に示すように、第1レンズ群G1を、5枚のレンズL1~L5を含む第1Aレンズ群G1Aと4枚のレンズL6~L9を含む第1Bレンズ群G1Bにより構成するとともに、第2レンズ群G2を、1枚のレンズL10を含む第2Aレンズ群G2Aと6枚のレンズL11~L16を含む第2Bレンズ群G2Bにより構成し、全系のレンズデータを[表5]及び[表6]に設定した点が第1実施例と異なる。なお、[表5]及び[表6]中、各レンズデータの数値は、図13に示す第3実施例のレンズ構成に対応するが、各項目は第1実施例における前述した[表1]及び[表2]と同じである。
図13及び図14から明らかなように、第3実施例においても、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間には、長い軸上空気間隔Smが確保されている。そして、この軸上空気間隔Smが確保されつつ収差補正は良好に行われていることを示している。
第4実施例は、図15に示すように、第1レンズ群G1を、6枚のレンズL1~L6を含む第1Aレンズ群G1Aと4枚のレンズL7~L10を含む第1Bレンズ群G1Bにより構成するとともに、第2レンズ群G2を、4枚のレンズL11~L14を含む第2Aレンズ群G2Aと9枚のレンズL15~L23を含む第2Bレンズ群G2Bにより構成し、全系のレンズデータを[表7]及び[表8]に設定した点が第1実施例と異なる。なお、[表7]及び[表8]中、各レンズデータの数値は、図15に示す第4実施例のレンズ構成に対応するが、各項目は第1実施例における前述した[表1]及び[表2]と同じである。
図15及び図16から明らかなように、第4実施例においても、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間には、長い軸上空気間隔Smが確保されている。そして、この軸上空気間隔Smが確保されつつ収差補正は良好に行われていることを示している。
第5実施例は、図17に示すように、第1レンズ群G1を、6枚のレンズL1~L6を含む第1Aレンズ群G1Aと4枚のレンズL7~L10を含む第1Bレンズ群G1Bにより構成するとともに、第2レンズ群G2を、3枚のレンズL11~L13を含む第2Aレンズ群G2Aと9枚のレンズL14~L22を含む第2Bレンズ群G2Bにより構成し、全系のレンズデータを[表9]及び[表10]に設定した点が第1実施例と異なる。なお、[表9]及び[表10]中、各レンズデータの数値は、図17に示す第5実施例のレンズ構成に対応するが、各項目は第1実施例における前述した[表1]及び[表2]と同じである。
図17及び図18から明らかなように、第5実施例においても、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの間には、長い軸上空気間隔Smが確保されている。そして、この軸上空気間隔Smが確保されつつ収差補正は良好に行われていることを示している。
次に、これら各実施例(第1実施例~第5実施例)に基づき、各条件式〔01〕~〔05〕の有為性について検証する。
図19に、第1実施例~第5実施例における各条件式〔01〕~〔05〕の結果をまとめて示す。同図中、二点鎖線で示す矩形枠Zrにより囲んだ範囲が各条件式〔01〕~〔05〕の結果となる。
図19に示すように、条件式〔01〕における│MD2/FL│の結果は、第1実施例~第5実施例において、それぞれ、「26.06」,「23.84」,「26.10」,「31.07」,「20.32」となる。この結果、最小値は「20.32」、最大値は「31.07」となるため、条件式〔01〕20<│MD2/FL│<35を満たす結果を得ている。また、条件式〔02〕における│FLB/FN│の結果は、第1実施例~第5実施例において、それぞれ、「47.82」,「43.35」,「36.78」,「56.09」,「32.0」となる。この結果、最小値は「32.0」、最大値は「56.09」となるため、条件式〔02〕30<│FLB/FN│<60を満たす結果を得ている。
したがって、本実施形態に係る広角投射レンズ装置1p(広角レンズ装置1)は、拡大側Dfから縮小側Drへ順に、正の第1レンズ群G1,負の第2レンズ群G2を配して構成し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に、当該第1レンズ群G1により中間結像するとともに、この中間結像により形成される中間像Kmが第2レンズ群G2により縮小側Drに再結合する結像光学系Ccを有し、特に、第2レンズ群G2を、少なくとも一枚以上のレンズを有する第2Aレンズ群G2A,全系中で最長となる軸上空気間隔Sm,少なくとも二枚以上のレンズを有する第2Bレンズ群G2Bの順に配して構成することを前提にすることにより、上述した条件式〔01〕及び〔02〕、即ち、軸上空気間隔Smの距離をMD2、全系の焦点距離の絶対値をFL、第2Bレンズ群G2Bの焦点距離をFLB、全系のFナンバーをFNとしたときに、各条件式「20<│MD2/FL│<35」及び「30<│FLB/FN│<60」を満たすように構成すれば、その有為性により、軸上空気間隔Smの距離及び第2Bレンズ群G2Bに入射する光束を適切な大きさに設定可能となり、特に、軸上空気間隔Smの設計自由度を高めることができる。したがって、例えば、光路変更ミラー等を柔軟に配設することができ、プロジェクタPの場合、出射する投射光の光軸Sを、180°まで容易に方向変換可能となる。この結果、柔軟性及び発展性に優れた広角レンズ装置1を構成でき、プロジェクタPの設置性及び広角性をより高めることができるなど、ユーザーの要請にも十分に応えることができる。
一方、図19に示すように、条件式〔03〕における│MD2/FL2│の結果は、第1実施例~第5実施例において、それぞれ、「2.95」,「2.19」,「0.57」,「4.46」,「1.86」となる。この結果、最小値は「0.57」となり、最大値は「4.46」となるため、条件式〔03〕0.5<│MD2/FL2│<5.0を満たす結果を得ている。また、条件式〔04〕における│MD2/M2B│の結果は、第1実施例~第5実施例において、それぞれ、「1.36」,「1.33」,「1.77」,「1.48」,「1.07」となる。この結果、最小値は「1.07」、最大値は「1.77」となるため、条件式〔04〕1.0<│MD2/M2B│<2.0を満たす結果を得ている。
したがって、本実施形態に係る広角投射レンズ装置1p(広角レンズ装置1)は、前記条件式〔01〕及び〔02〕を満たすことに加え、第2レンズ群G2の焦点距離をFL2、第2Bレンズ群G2Bの軸上空気間隔Ssの距離をM2Bとしたときに、各条件式「0.5<│MD2/FL2│<5.0」及び「1.0<│MD2/M2B│<2.0」を満たすように構成すれば、その有為性により、光路変更ミラー等を付加する場合の設計自由度をより高めることが可能になり、特に、プロジェクタPの高さ方向に沿う中間部位の寸法を十分に確保できる。この結果、各種プロジェクタP…のサイズや形状に対応させることが可能になるなど、汎用性を高めることができる。
さらに、図19に示すように、条件式〔05〕における│FLA/FLB│の結果は、第1実施例~第5実施例において、それぞれ、「0.95」,「1.08」,「0.60」,「0.74」,「1.40」となる。この結果、最小値は「0.60」、最大値は「1.40」となるため、条件式〔05〕0.5<│FLA/FLB│<1.5を満たす結果を得ている。したがって、本実施形態に係る広角投射レンズ装置1p(広角レンズ装置1)は、前記条件式〔01〕~〔04〕を満たすことに加え、第2Aレンズ群G2Aの焦点距離をFLAとしたときに、条件式「0.5<│FLA/FLB│<1.5」を満たすように構成すれば、その有為性により、第2Aレンズ群G2Aと第2Bレンズ群G2Bの焦点距離を適切に設定可能になり、第2Bレンズ群G2Bの位置及び軸上空気間隔Ssの距離に係わる設計自由度をより高めることができる。
次に、本発明の変更実施形態に係る広角投射レンズ装置1p(広角レンズ装置1)について、図20及び図21を参照して説明する。
図20に示す広角投射レンズ装置1pは、第1光路変更ミラーM1及び第1Aレンズ群G1Aを、第1Bレンズ群G1Bの光軸S上において回動可能に構成したものである。図20は、90°回動させた状態を示しているが、基本的には、図示に限らず、任意の角度位置に回動変位させることができる。このような回動手段を構成するには、例えば、図1に仮想線で示すように、ハウジング部11の一部に回動機構部R1を設けることにより実現できる。
これにより、例えば、図20の場合には、画像表示パネル100から出射する原画像Viを、スクリーンに対して90°変換した投射画像Voとして映すことができる。したがって、横長画面(Vi)を縦長画面(Vo)に変更できるなど、プロジェクタPに使用した場合の多様性を高めることができるとともに、使用用途の拡大に寄与できる。
他方、図21に示す広角投射レンズ装置1pは、第2光路変更ミラーM2及び第2Bレンズ群G2Bを、第2Aレンズ群G2Aの光軸S上において回動可能に構成したものである。図21は、左右方向となる矢印Dpq方向へ概ね45°ずつ、即ち、一方側の位置Xpと他方側の位置Xqの二位置へ回動変位させた状態を重複させて描いているが、基本的には、図示に限らず、任意の角度位置に回動変位させることができる。このような回動手段を構成するには、例えば、図1に仮想線で示すように、ハウジング部11の一部に回動機構部R2を設けることにより実現できる。
これにより、例えば、図21の場合には、画像表示パネル100から出射する原画像Viを、スクリーンに対して概ね45°変換した投射画像Voで示す傾斜画像として映すことができる。特に、回動可能に構成した第1光路変更ミラーM1と組合わせれば、例えば、プロジェクタPからの出射光の高さを変更可能になり、多様性及び用途性をより高めることができる。
以上、第1実施例~第5実施例を含む好適実施形態及び変更実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、各条件式「0.5<│MD2/FL2│<5.0」及び「1.0<│MD2/M2B│<2.0」を満たすことにより、より望ましい効果を得ることができるが、満たさない場合であっても、一定水準の効果を得ることができ、これらの条件式は、必須の構成要件となるものではない。また、レンズLx及びレンズLyも、用いることが望ましいが、必須の構成要素となるものではない。一方、軸上空気間隔Smに第2光路変更ミラーM2を配した構成を例示したが、この軸上空気間隔Smを利用して光線を分岐したり合成することも可能である。