JP7202044B1 - レーザドップラ速度計 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーザドップラ速度計において、移動物体の移動方向を判断するための光変調器や光変調器駆動系は、高額であり大型である。レーザドップラ速度計を、より低価格でより小型として使いやすくするには、光変調器を用いずに移動方向の判断が可能な構成が望ましい。【解決手段】単一モード発振するレーザ光源と、該レーザ光源からのレーザビームを平行ビームにするコリメータレンズと、前記平行ビームを二分するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタで二分されたレーザビームの一方を反射して物体に照射するミラーと、前記物体からの散乱光を集光するレンズと光検出器と電気回路を含む光受信部と、を有し、前記レーザ光源に周期的な信号を印加することによりレーザ光に周波数変調を施し、前記光受信部において前記移動する物体の移動方向を識別する。【選択図】図1

Description

本発明は、レーザ光によるドップラ効果を用いた速度計に関する。
レーザ光線とドップラ効果を利用したレーザドップラ速度計は、測定対象物の速度が、非接触で正確に測れるため、今日、多くの分野で利用されている。その利用分野の一例としては、製鉄業や、鉄道の速度計測がある。製鉄業では、高温での作業工程で、接触しての測定が難しい圧延制御にレーザドップラ速度計が採用されている。一方、鉄道では、高速走行時には車輪の空転や滑りが発生するため車輪の回転からは正確な運航速度が測定できなかったが、非接触で正確に速度が図れるためレーザドップラ速度計が適用されている。
(従来例1)
レーザドップラ速度計は、動作検証が1964年に行われている。その一例が、非特許文献1に開示されている。この報告では、レーザ光線のドップラシフト現象を利用して、液体の流速を観測している。報告例では、光源に波長633nmのヘリウムネオンレーザ(HeNeレーザ)を用い、そのコリメート光をビームスプリッタで2つに分け、一方の光を流れる液体に照射し、もう一方の光を光変調器に入れてSSB変調(Single Sideband Modulation)を行い、光源のレーザ光源に光周波数シフトを施して局部発振光として用いている。流れる流体に照射され散乱した光である散乱光と、前記局部発振光を再結合させ光検出器に入射させて、光検出器からの電気信号をスペクトルアナライザで観測する。この構成では、流体の流速に比例して、前記散乱光の光周波数がドップラシフトを起こし、前記光検出にて散乱光と局部発振光の光ヘテロダイン検波を行うと、その出力である前記電気信号のビート信号にて、流体の流速に対応した周波数シフトが起こることが観測された。結果、光のドップラシフトを用いて液体の流速が観測できることが報告されている。
(従来例2)
レーザドップラ速度計では、小型化の検討と開発も行われている。上述の従来例1は、レーザ光源に大型のガスレーザであるヘリウムネオンレーザを用いていたが、装置を小型化するため、半導体レーザを用いた例が、非特許文献2に示されている。
非特許文献2に示されたレーザドップラ速度計の構成を図10に示した。図10は、非特許関連文献2に示されたレーザドップラ速度計の光学部(Figure.2)の写しである。
図10のレーザドップラ速度計は、ガラス管内の流体速度を観測するための差動型の光学構成であり、小型化を図るために、半導体レーザを用い、かつ、従来例1で用いられた周波数シフトを起こす光変調器は未適用の構成としている。
図10の構成では、光源に波長810nmの半導体レーザ201を用い、レーザ光の集光には小型の屈折率分布型のレンズ202を用いている。半導体レーザ201の出射光のコヒーレンス長は、従来例1で使用したヘリウムネオンレーザより低下しているので、ブレーズド型の回折格子203を用いて、使用する光の周波数成分を制限して、コヒーレンス長を改善した狭いスペクトル幅のレーザ光源としている。
また、差動型の光学系を上下とも同じ光路差光路長となる対称形として、短いコヒーレンス長の光源に対応している。
差動型レーザドップラ速度計は、レーザ光源から分離した2本の光束を、移動する非測定物に照射する構成である。非測定物に対し、2本の光束の内、一方の光束は移動する非測定物の前方向から照射するのでドップラ散乱光は光周波数が増加する方向となり、他の光束は移動する非測定物の後方向から照射するのでドップラ散乱光は光周波数が減少する方向となる。これら2つの散乱光を、光検出器で光ヘテロダイン検波すると、その出力電気信号は2つの散乱光成分の差分となる。出力電気信号のビート周波数の変位量は、一本のみの散乱光を用いていた非特許文献1の系の2倍となるので、速度検出感度が上がるという利点がある。また、光学系が差動型となっているので、非測定物の表面の凹凸から発生する雑音成分や、光源自体の強度雑音から発生する雑音成分の影響も除外できるので、レーザドップラ速度計の感度を向上させることができる。
ブレーズド型の回折格子203の出力は、0次光と1次光の2本を使用し、これらの光源は光路の対称性を保ってレンズ204に入射し、集光されてガラス管205の中の流体に焦点を結ぶ。流体からのそれぞれの散乱光は、光のドップラシフトを受けており、これらの散乱光をガラス管205上に設置された光検出器206で検出する。
この光検出器206からの電気信号出力であるビート周波数(ピーク周波数)から流体の移動速度が得られる。非特許関連文献3での評価結果では、直径0.9umのポリスチレン球体を混ぜた流体の速度を、0.05mm/sから7mm/sの範囲で計測しており、レーザドップラ速度計に半導体レーザを使用してもその動作が可能であることを報告している。
また、光源に半導体レーザを採用したため、レーザドップラ速度計の小型化もできたと報告されている。なお、図10のレーザドップラ速度計では、周波数シフト変調器を用いていないので、流体の移動方向が逆となった場合には、移動方向の判断はできない。
(従来例3)
レーザドップラ速度計の高性能化と小型化を図った例が、特許文献1に示されている。この例は、高感度化が可能な差動型レーザドップラ速度計を基本に、速度がゼロやマイナス(逆方向)も検出可能な周波数シフト変調を行い速度計の汎用性を向上させ、光源に半導体レーザを採用して、小型化も達成している。また、照射光ビームの幅を広く取る工夫を施し、レーザドップラ速度計の焦点深度を深くすることを特徴としている。
図11は、特許文献1に記載された鉄道車両速度計測装置である図1の写しである。図11では、レーザ光源301から出射されるレーザビームは、コリメータレンズ302で平行ビームになるように調整される。このレーザビームが周波数シフト素子(AOM)303に入射され、このAOMに40MHzの信号fmを加えて、入射されたレーザビームの周波数を40MHzシフトさせ、且つ、ある角度だけ回折した1次回折光と、そのまま通過する0次光を出射させる。この出射光が偏光ビームスプリッタ304に入射されてP偏光ビームとS偏光ビームに二分される。P偏光ビームは、透過側に直進し、λ/2波長板5でS偏光ビームに変換されて移動する物体0に照射される。偏光ビームスプリッタからのS偏光ビームは、無偏光ビームスプリッタ306で二分し、それから直角方向に出射されるS偏光ビームと、透過側に直進してミラー307で反射されるS偏光ビームとなり、それぞれ、移動する物体0に向かう。
移動する物体0からの散乱光は、受光レンズ308で集光されて受光素子309にて光電変換を受ける。その電気信号出力のビート信号周波数は、40MHzを中心にプラスやマイナス方向に変位し、その変位した周波数量は物体0の移動速度に比例する。上記電気信号出力は、ミキサ313で5MHz中心の信号にダウンコンバートされ、ADコンバータ315でデジタイズ処理した後、DSP316やCPU320により速度信号に変換される。
以上の構成では、周波数シフトしたビームは2本あるので、周波数シフトの無いビームとの干渉領域は2か所に増える。結果、移動物体0に対する焦点深度が深く取れることになるので、レーザドップラ速度計の適用領域を広げることができる。
また、本レーザドップラ速度計は、差動型レーザドップラ系を採用しているので高感度であり、周波数シフト変調を行っているので速度がゼロや逆方向の速度計測も可能となり、かつ半導体レーザを光源に使用しているので小型化が可能という特徴を有する。
特許第6071264号
Y.Yeh et al., "Localized Fluid Flow Measurements with an He-Ne Laser Spectrometer", Applied Physics Letters, vol.4, no.10, pp.176-178, May, 1964. H W Jentink et al.,"A compact differential laser Doppler velocimeter using a semiconductor laser" , Journal of Physics E: Scientific Instruments, Vol.20, No.10, pp.1281-1283, 1987. 水戸 郁夫 :波長可変半導体レーザーとコヒーレント光通信への応用、応用物理、1990 年 59 巻 9 号 p. 1136-1153 岡田 英史、南谷 春幸 :鏡面反射光を利用した固体表面速度および角度のレーザー・ドップラ計測、計測自動制御学会論文集、Vol.22, No.10(昭和61年10月)p.95-100 N.Satyan et al.."Precise control of broadband frequency chirps using optoelectric feedback", Optics express, vol.17, No.18, pp.15991-15999, 2009.
これまで、レーザドップラ速度計には、差動型構成により高感度化が達成され、光変調器による光周波数シフトにより移動物体の移動方向が判断できるようになってきた。
しかし、その移動方向を判断するための光変調器や光変調器駆動系は、高額であり大型である。レーザドップラ速度計を、より低価格でより小型として使いやすくするには、光変調器を用いずに移動方向の判断が可能な構成が望ましい。
上記課題を解決するための発明は、レーザ光源から分離した二本の光束を、一方の光束は移動する物体の前方向から照射するのでドップラ散乱光は光周波数が増加する方向であり、他の光束は前記移動する物体の後方向から照射するのでドップラ散乱光は光周波数が減少する方向である、これら2つの散乱光を光検出器で検波すると、その出力電気信号は2つの散乱光成分の差分となり、これにより速度を計測する差動型レーザドップラ速度計に於いて、単一モード発振するレーザ光源と、該レーザ光源からのレーザビームを平行ビームにするコリメータレンズと、前記平行ビームを二分するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタで二分されたレーザビームの一方を反射して物体に照射するミラーと、前記物体からの散乱光を集光するレンズと光検出器と電気回路を含む光受信部と、を有し、 前記レーザ光源に周期的な信号を印加することによりレーザ光に光の側帯波を発生させる周波数変調を施し、前記光受信部において前記周波数変調から生じる光の側帯波との干渉によるドップラ信号出力により、前記移動する物体の移動方向を識別する。

また、前記光受信部は前記散乱光からの受信電気信号を生成し、前記受信電気信号と前記周期的な信号と同期した信号との乗算を行い、前記移動する物体の移動方向を識別することを特徴とする。
また、前記周波数変調は、波形の周期内で立ち上がりと立下りの比率が異なった波形の変調を施し、前記光受信部において前記移動する物体の移動方向を識別することを特徴とする。
また、上記課題を解決するための発明は、移動する物体にレーザ光を照射し、前記物体からの散乱光を受けて前記物体の速度を計測する差動型レーザドップラ速度計に於いて、
前記レーザ光のレーザ光源に周期的な信号を印加することによりレーザ光に周波数変調を施し、前記移動する物体の移動方向を識別することを特徴とする。
本発明による効果は、光変調器を用いずとも、移動物体の移動方向の識別が可能となることである。その結果、レーザドップラ速度計の低価格化や小型化が達成でき、且つ複雑な構成の光変調器が削除できるのでレーザドップラ速度計の信頼性を向上させることもできる。
第一の実施形態によるレーザドップラ速度計の構成図である。 第一の実施形態による受信信号のスペクトルである。 第一の実施形態による光ビーム周波数の波形と処理部の波形である。 第三の実施形態によるレーザドップラ速度計の構成図である。 第三の実施形態による光ビーム周波数の波形である。 第三の実施形態による受信信号のスペクトルである。 本発明の動作を説明する図である。 本発明の動作を説明する図である。 本発明の動作を説明する図である。 従来のレーザドップラ速度計の構成を示す図である。 従来のレーザドップラ速度計の構成を示す図である。
単一モード発振する半導体レーザの注入電流を変化させると、光の強度と周波数も変化し、その注入電流の変化にほぼ比例した光強度変調や光周波数変調が実現できる。その波長変化や周波数変調の動作および特性については、非特許文献3に記されている。
本実施形態では、単一モード発振する垂直共振器型面発光レーザ: Vertical Cavity Surface Emitting Laser;以下VCSELと呼ぶ)を用い、例えば正弦波による小振幅の周波数変調を掛けて、その変調出力である搬送波と側帯波の干渉を利用する。また、光の干渉には、周波数変調された光信号の遅延も利用する。
図7に、本実施形態のレーザドップラ速度計の原理を説明するための図を示す。半導体レーザ1のVCSELは、発振波長が安定するよう温度調節を行う。また、半導体レーザ1のVCSELには、周波数fmの正弦波信号を直流バイアスとともに重畳し、その正弦波信号の強度を調整して、FM変調指数mが0.5となるように設定する。この時、VCSELからの光スペクトルは、ほぼ3本の輝線スペクトルからなり、輝線間の周波数間隔は変調周波数のfmとなる。3本の輝線の中央の搬送波の強度は0.94(ベッセル関数のJ(m)に相当)、側帯波の強度は0.24(ベッセル関数のJ(m)に相当)となる。この光信号をビームスプリッタ4で2つに分け、一方は移動物体0に直接照射される光ビームA(図中6)、もう一方は、ミラー5で折り返して移動物体0に照射される光ビームB(図中7)とした。ここで、光ビームA6と光ビームB7の間には光路差Dが存在し、光路差Dにより発生する遅延時間は、ΔTとなる。光ビームA6と光ビームB7を、交差角2θにて、速度Vの移動物体0に照射する。移動物体からの散乱光はfdのドップラ周波数シフトを受けて、レンズ8を介してAPD9で受光される。増幅器10の出力であるAMP出力23が光受信出力となる。
光ビームA6と光ビームB7による観測方向Kに対する散乱光の電場EとEは、非特許文献4に示されたように、下記で表される。
=АА exp[-i{ωt + (K-K)・V t - K・r}] (1.a)
=Аexp[-i{ωt + (K-K)・V t - K・r + ψ }] (1.b)
ここで、АА А:散乱光電場の強度、ω:光ビームの角速度、
:光ビームの波数ベクトル、V:移動物体の速度ベクトル、t:時間
r:任意の点を原点とする位置ベクトル、ψ:電場の位相差、
φ:移動物体の水平線からのズレ角
上式より、APDで観測される強度信号Pは
P ∝ (E+ )(E * + *
= АА 2 + А 2 + 2АААcos{(K-K)・V t + ψ} (2)
となる。ここで、АА 2 2 は直流成分で、最後の項からドップラ周波数fが測定できる。fは、波数ベクトルの差(K-K)と速度ベクトルVの内積で表される。
=(K-K)・V /2π = 2n|V|cosφ sinθ/λ (3)
VCSELの正弦波変調から得られる3本の輝線スペクトルとドップラシフトとAPDで観測される強度信号の関係を図8に示す。図8‐aは、光ビームAの散乱光の光スペクトルであり、図の横軸は周波数、図の縦軸は電力である。VCSELには周波数fmの正弦波信号が電流注入されているので、光の周波数変調(FM)と光の強度変調(AM)の双方が掛かる。光のFM変調は、変調度m=0.5の設定なので、搬送波の両側±fmの周波数位置に、2本の側帯波が立つ状態となる。厳密には、m=0.5の設定では、±2fmには搬送波の0.03倍の側帯波(ベッセル関数のJ2(m)相当)が存在するが、本議論では無視した。なお、VCSELに注入する正弦波信号の振幅を大きくすると、光のFM変調帯域が広がり、±2fm、±3fmの周波数にも側帯波が発生する。
一方、VCSELで発生する光の強度変調(AM)でも、±fmの周波数位置に側帯波を発生させる。この光のAM変調では、正弦波信号の振幅を大きくしても側帯波が増えることはなく、側帯波の振幅が増えるのみとなる。
さて、図7のベクトル位置設定で発生する光ビームAの散乱光のスペクトル(図8‐a)は、周波数が減る方向にfd(ドップラ周波数)分シフトする。搬送波の中心周波数は、f0-fdとなる。波長850nmのVCSELを用いたので、f0=353THzである。
図8‐bには、光ビームBの散乱光のスペクトルを示す。スペクトル全体はfdだけ周波数が増加する方向にシフトする。
光ビームAの散乱光と光ビームBの散乱光をAPDで受信した場合、光ヘテロダイン検波で光周波数の差周波数の電気信号成分が発生するが、そのスペクトルは数本増加する。それは、双方の光ビームが3本のスペクトルであり、
式(2)の最後の項=2АААcos{(K-K)・V t + ψ}
にて、“ААА”が、周波数領域のマトリクス演算となるためである。図8‐cに、各スペクトルの組み合わせと周波数シフトの結果を示す。5本のスペクトルが、周波数間隔fmにてゼロ周波数(f=0)の周りに発生し、スペクトル全体は、2fd分だけ周波数の増加方向にシフトする。図8‐c中のスペクトルにてfを用いた記号は、光ビームAの散乱光と光ビームBの散乱光の掛け合わせで発生した信号を意味する。例えば、図中、右端の“fA-1*fB+1”は、図8‐aのスペクトル“fA-1”と図8‐bのスペクトル“fB+1”との掛け合わせにて発生した差周波数のスペクトルを示している。
図8‐cには、マイナスの周波数のスペクトルが存在している。これらは、差周波数計算より発生したものであり、実際のAMP出力23では、マイナスの成分は、ゼロ周波数でプラス側に折り返されて出現する。
AMP出力23のスペクトルを、図8‐dに示す。ここでは、マイナス成分の周波数がプラス側に折り返っており、そのスペクトルは図中の(2)と(4)の点線で表示した。
また、図中には、光ビームAの散乱光の二乗検波成分と光ビームBの散乱光の二乗検波成分の加算成分を、矢印で示した。これらの二乗検波成分は、式(2)中の前半部分“АА 2 2”に相当し、自分自身の電場のスペクトルが二乗されたものである。この二乗検波成分は、AMP出力の周波数0(DC)と周波数fmに現れる。二乗検波成分には、ドップラ周波数シフトfdは含まれず、移動物体の速度が変わっても常に周波数fmに存在する。なお、二乗検波成分は、自分自身の光電場の二乗なので、光の位相と偏波は一致しており、光ビームAと光ビームBの相関で発生するドップラ信号成分より信号強度は大きくなる。
図8‐dは、本実施形態で発生する最小数のスペクトルを示している。DC分を除くと6本が最小に発生するスペクトルであるが、VCSELへの正弦波変調の強度を増やしてゆくと、FM変調により周波数3fmや4fm付近にさらにペアのスペクトルが発生する。また、正弦波変調の強度を増やしてゆくと、図中の(0)信号は低下し、周波数fm周辺の(1)と(2)の信号と、周波数2fm周辺の(3)と(4)の信号が大きくなってくる。図8は、動作の説明を簡便にするため、VCSELへの周波数変調の変調度m=0.5として、VCSELから3本のスペクトルが発生する状態としている。実際には、例えば変調度m=1~1.4程度に設定し、VCSELから7本のFM変調スペクトルが発生する状態で使用するのが望ましい。
ドップラ周波数fdの計測は、図8‐dの周波数fmまわりのスペクトル(1)と(2)の差周波数(4fdに相当)から読み取れる。従来例3のレーザドップラ速度計は、ドップラ出力は(1)のみの一本であり、ドップラ周波数fdは周波数fmとスペクトル(1)の差周波数2fdから読み取る。尚、従来例3でのfmは、周波数シフト素子(AOM)でシフトする光の周波数となる。
本実施形態では、従来例3に比べ2倍の周波数差を読み取ることになるので、速度検出の周波数分解能を倍にできるメリットがある。しかし、移動物体の速度がゼロに近づくと、スペクトル(1)と(2)も周波数fmに近づいてゆくので、周波数fmに存在する二乗検波成分のスペクトルが邪魔になる。二乗検波成分の周波数は変動せず、自己光の2乗検波成分であるためA/Bの光が干渉したドップラ信号よりスペクトル線幅は狭いので、数値処理工程で除去はできるが、ゼロ速度での周波数読み取り精度の低下は避けることができない。
このような問題を避けるため、図8‐dの周波数2fm周辺の(3)と(4)のスペクトルも利用できる。二乗検波成分は、主に、周波数fmの正弦波のAM変調により生じるものなので、その出力は周波数fmにしか存在しない。一般に、VCSELを含む単一モードレーザは、電流‐光出力特性(I-L特性)の直線性に優れるため、AM変調の2次歪は少なく周波数2fmに光変調による信号は存在しない。
周波数2fm周辺で、(3)と(4)のスペクトルの周波数差4fdからドップラ周波数fdを求めれば、分解能の高い速度検出が可能となる。
移動物体の移動方向の読み取りには、別の方法を用いる。従来例3のレーザドップラ速度計は、ドップラ信号出力は図8‐dのスペクトル(1)のみであるので、速度が+方向の場合にはスペクトル(1)は光周波数シフトfmより大きく、速度が-方向の場合には光周波数シフトfmより小さくなる。従来例3では、ドップラ信号出力の周波数と光周波数シフトfmとの大小比較から移動方向を決定する。
本実施形態では、ドップラ信号出力はスペクトル(3)と(4)の2本となる。速度が+方向の場合には、スペクトル(3)は周波数2fmより大きくスペクトル(4)は周波数2fmより小さい。速度が逆方向のマイナスの場合には、スペクトル(3)は周波数2fmより小さくスペクトル(4)は周波数2fmより大きくなる。移動方向のプラスマイナス変化に伴い、2本のスペクトルが2fmを中心に入れ替わるので、スペクトル(3)とスペクトル(4)を区別する必要がある。移動方向を判断するには、スペクトル(3)かスペクトル(4)の一方を消し去り、残ったスペクトルの周波数を読み取る方法がある。
図8‐dにて、周波数2fmより高いスペクトル(3)は、光ビームAの散乱光fA-1と光ビームBの散乱光fB+1の干渉であり、これらの光周波数を比較すると光ビームB側が高い。一方、周波数2fmより低いスペクトル(4)は、光ビームAの散乱光fA+1と光ビームBの散乱光fB-1の干渉であり、これらの光周波数を比較すると光ビームA側が高い。つまり、スペクトル(3)は光ビームB側の周波数が高いとき、スペクトル(4)は光ビームА側の周波数が高いとき、との相関がある。
光ビームAと光ビームBの時間軸での光周波数の変化の相関を示したのが、図9である。光ビームBは、周波数fmの正弦波で周波数変調された光ビームAを分岐してΔTの遅延を持たせものであった。光ビームAと光ビームBは、光周波数f(353THz)を中心にfmや2fmの数MHz程度の微小な周波数変化を起こす粗密波である。ΔTの遅延により周期1/2fm毎に、光ビームAと光ビームBの光周波数の高低が入れ替わる。光ビームA/B双方の光周波数が低下する時間帯では、光ビームB周波数>光ビームA周波数であり、光ビームA/B双方の光周波数が上昇する時間帯では、光ビームA周波数>光ビームB周波数となる。
例えば、図9の時間領域波形を、光ビームA/B双方の光周波数が上昇する時間帯でマスクして処理すれば、上述のスペクトル(4)の成分を消し去り、スペクトル(3)の成分を取り出すことができる。取り出したスペクトル(3)の周波数が、2fmより高ければ移動物体の移動方向はプラスであり、スペクトル(3)の周波数が、2fmより低ければ移動物体の移動方向はマイナスと判断できる。
上記の処理には、図7中の処理部15において、VCSELへの変調信号fmと同期した信号と、受信信号の乗算を行い、マスク処理を実施する。具体的には、処理部15において、周期fmの窓関数を採用することで対応する。図7を用いて説明すると、APD9で光信号を受信し、その電気信号を増幅して受信信号23を得る。この受信信号は、光ビームAの散乱光と光ビームBの散乱光との光ヘテロダイン検波出力であり、時間波形では周波数fmの正弦波に雑音が乗ったような波形となるが、スペクトルアナライザで観測すると図8‐dのようなスペクトルが見える。ここから、周波数2fm付近の必要な信号のみバンドパスフィルタ24で取り出したのち、ADコンバータ14でデジタル信号に変換し、処理部15で速度出力を算出する。処理部15では、高速フーリエ変換(FFT)にて周波数成分解析を行うが、この処理部に受信信号の周波数が上昇する部分をマスクする窓関数を構成する。本窓関数は、周波数fmに同期した関数であり、受信信号との位相を調整して、本窓関数と受信信号をかけ合わせてFFTを行えば、図8‐dでのスペクトル(4)の成分を消し去ることができる。残ったスペクトル(3)より、その周波数が周波数2fmより大きいか小さいかの判断から、移動物体の移動方向が決定できる。
以下で、図面を参照して本発明の実施例を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものでなく、本実施例と同じ技術的思想を成しえる構成を含むものである。
[実施例1]
図1は、実施例1のドップラ速度計の構成図である。実施例1では、図11の従来の構成例に対して、周波数シフト素子(AOM)を削除し、レーザドップラ速度計としての低価格化や小型化を狙ったものである。
図1の実施例1にて、レーザ光源1は、波長850nmの垂直共振器型面発光レーザ: Vertical Cavity Surface Emitting Laser;VCSEL)である。使用したVCSELは、閾値電流が1mA、光出力が2mW(4mAバイアス電流印加時)であり、4mAまでの電流範囲において、モード飛びの無い単一モード発振をしている。VCSELは波長変動が無いようサーミスタとペルチエ素子により30℃にて温度制御した。そのスペクトル幅は、約30MHzである。直流の注入電流変化に対する周波数変調効率は、0.071nm/mA(29GHz/mA)であった。
ドップラ速度計のクロック16をPLL17で分周した後、バンドパスフィルタ(BPF)18で、周波数fm=4MHzの正弦波信号に成形した。LD駆動回路2は、正弦波信号と直流バイアス電流をレーザ光源1のVCSELに注入する。ここで、VCSELへの直流バイアス電流は3.6mA、正弦波信号電流強度は0.28mAに設定した。VCSEL変調時のサイドモード抑圧比は、35dB以上であった。VCSELでのFM変調度mは1.4程度であり、FM変調により発生するスペクトルは約7本で、その間隔は4MHzとなる。
レーザ光源1のVCSELからの光は、コリメータレンズ3にて平行光とした後、ビームスプリッタ4で2つに分け、一方は移動物体0に直接照射する光ビームA(図中6)、もう一方は、ミラー5で折り返して移動物体0に照射される光ビームB(図中7)とした。
光ビームA6と光ビームB7の間で発生する光路差Dは53mmであり、光ビームA6と光ビームB7で形成される角度2θは20°、移動物体の水平線からのズレ角φは0°とした。使用した移動物体0は、亜鉛メッキの薄板鋼鈑とし、円盤に張り付けて回転させた。
移動物体からの散乱光をfdのドップラ周波数シフトを受けて、レンズ8を介してAPD9で受光した。増幅器10の出力であるAMP出力23が光受信出力となる。
AMP出力23をスペクトラムアナライザで観測した結果を図2に示す。図2の横軸は帯域20MHzに亘る周波数(単位:Hz、図中の刻みは2MHz/division)、縦軸は電力(単位:dBm、図中の刻みは10dB/division)である。スペクトラムアナライザにて、帯域20MHz内に、10本のスペクトルが観測できた。ここで、周波数0.8MHzのスペクトルは、図8‐dでの(0)で表記した成分であり、移動物体0の速度Vが遅くなると周波数ゼロに近づく。周波数3.2MHzと周波数4.8MHzの成分は、図8‐dでの(2)と(1)で表記した成分であり、移動物体0の速度Vが遅くなると周波数4MHzに近づく。なお、周波数4MHzには、主にAM変調に伴う二乗検波成分スペクトルが存在し、このスペクトル周波数は移動物体0の速度Vには依存せず変調周波数fmのみに依存する。
周波数7.2MHzと周波数8.8MHzの成分は、図8‐dでの(4)と(3)で表記した成分であり、移動物体0の速度Vが遅くなると周波数8MHzに近づく。なお、周波数8MHzには、二乗検波成分のスペクトルは存在しない。VCSELの変調信号は4MHzの正弦波であり8MHzの成分が存在しないこと、およびVCSELのAM変調の線形性が優れるために、8MHzに不要なスペクトルは現れない。
VCSELのFM変調による高周波成分により、10MHz以上にもスペクトルは現れるが、その振幅は、変調度m=1.4と設定したため、減少してゆく。
移動物体0の速度Vは、8MHz付近の2つのスペクトル成分の差から求めることができる。差の周波数は4fdであり、4fd=8.8MHz-7.2MHzであり、式(3)から速度Vが算出できる。
速度Vの算出は、図1のAMP出力23以後のフィルタと演算処理で行う。AMP出力23から8MHz付近の信号を取り出すため、急峻な特性のハイパスフィルタ11とローパスフィルタ13を用いたのち、ADコンバータ14でデジタル信号に変換した。処理部15には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)と入出力用ICを用いた。処理部15で高速フーリエ変換(FFT)による周波数成分解析により、8MHz付近の2つのスペクトル成分の差周波数を読み取り、速度Vを算出して、その速度出力を出力する。
移動物体0の移動方向は、処理部15内にて窓関数を用いた演算処理を、速度Vの処理と並列して行うことにより算出する。図3に、その処理の様子を説明するためのシミュレーション波形を示す。図3-aは、4MHzでFM変調を受けた光ビームA6と光ビームB7の光周波数変化の波形である。光ビームB7は、光路差D=53mm分遅れているが、その遅延量は小さく波形が重なって見えるので、図3-aでは遅延量を20倍に拡大して示した。
図3-bは、処理部15内に設定した窓関数(図中の破線)と、処理部15に入力する8MHz信号成分(図中の一点鎖線)と、その出力(図中の実線)の関係を示している。窓関数には、周期250nsの連続するハニング窓を用い、図3‐aの光ビームAと光ビームBの光周波数が減少する領域が、窓関数を通過するよう窓関数の位相を設定した。この窓関数と8MHz信号成分の乗算した出力は、図3‐bの実線である。実線は、周期250ns毎に信号強度がゼロになる周期信号であるが、8MHzの成分が含まれた信号であることも分かる。また、窓関数は、光ビームAと光ビームBの周波数減少部分のみを選択しているので、図2の8.8MHzのスペクトル成分が窓関数との乗算結果として現れる。つまり、その乗算結果では、7.2MHzが大きく減衰し、8.8MHz成分のみが現れる。結果、窓関数と受信信号の乗算結果は、2fm=8MHzより高い周波数の8.8MHz一本となるため、移動物体0の移動方向は、図1の移動物体の矢印方向と一致したプラス方向と判断できた。この窓関数の設定で、移動物体0の移動方向を図1の矢印と逆にすると、窓関数との演算出力には7.2MHz成分が現れるので移動方向はマイナス方向と判断して出力できる。
本実施例では、レーザ光源1にVCSELを用いたが、単一モード発振し電流注入によりその発振波長が変化する半導体レーザであればVCSELに限らず使用が可能である。例えば、分布帰還形半導体レーザ(Distributed Feedback Laser Diodes:DFB-LD)や分布反射型( Distributed Bragg Reflector : DBR-LD )も使用できる。また、本発明では、市販されている単一モード発振するレーザをそのまま適用できるので、装置の小型化や低価格化が容易となる特徴がある。
ところで、半導体レーザの周波数変調を利用した装置としては、FMCW-LiDAR(frequency-Modulated Continuous Wave Light Detection and Ranging)がある。光のもつ高分解能と、光コヒーレント検波による高感度と、半導体レーザの周波数変調の容易性から各所で研究開発が進められているが、半導体レーザの変調に伴う非線形性の補償が装置を複雑にしてしまう。例えば、FMCW-LiDARでの半導体レーザ変調の非線形補償対策方法は、非特許文献4に示されている。この文献では、良好なLiDARの特性が報告されているが、半導体レーザの変調による非線形性を補償するため、光と電気信号によるフィードバック回路が採用されている。このフィードバック回路は、狭線幅のDFB-LDと光アイソレータと光強度制御系とマッハ・ツェンダー光干渉計(Mach-Zehnder interferometer)とフォトダイオードと電気発振器と電気ミキサとDFB-LDへの電流制御用回路とで構成されており、大規模で高価な光変調制御系となってしまう。
本発明のドップラ速度計では、光変調制御系は不要である。その理由は、本ドップラ速度計は、光の差動型の構成を取っているからであり、本実施例での光ビームAと光ビームBの光路差は53mmと小さい。コヒーレンス長が53mmの場合、干渉を発生させる光源の線幅は5.6GHz以下であれば良い。一方、LiDARは、一般に1メータ以上先の物体の距離や速度を検出すものであり、送信光と参照光の光路差は2メータ以上となる。コヒーレンス長が2メータであれば、干渉を発生させる光源の線幅は150MHz以下に制限される。かつ、LiDARでの半導体レーザには、周波数変調が施されるため、より厳しい光の線幅と光周波数変調の線形性確保のための光周波数変調の制御機構が必要となる。
本発明のドップラ速度計は、光干渉生成には差動構成をとっているため、使用する半導体レーザの線幅やFM変調特性には厳しい制限が無い。光変調を光学系で制御する回路は不要となるため、市販されている単一モードの半導体レーザをそのまま使用できるという利点がある。
また、本実施例で使用したVCSELは、直線偏光を出力していた。移動物体の光散乱に偏光依存性がある場合には、VCSELの光出力部にλ/4波長板を挿入して出力光を円偏波としてもよい。
実施例では、波長850nmでの動作例を示したが、本発明での使用波長は850nm帯に限らない。波長は、例えば1300nm、1550nm帯の光通信用の波長帯でも動作は可能である。また、レーザは単一モード発振であることが望ましい。
本実施例では、処理部15にFPGAを用い、VCSEL変調信号と同期した窓関数を設定して受信信号との乗算処理を行った。この乗算処理は、デジタル処理であるがアナログで処理してもよい。例えば、図1のADC14の前段に電気ミキサを配置して、VCSEL変調信号と同期した信号との乗算処理を行ってもよい。
また、本実施例での移動方向の識別感度を向上させるために、VCSELの変調周波数を増加させてもよい。VCSELの変調周波数fmを上昇させることで、光路差Dで生じる光ビームAと光ビームBの位相差が広がるので、8.8MHzと7.2MHz成分の抑圧比が大きくなるので、移動方向の識別感度が向上する。
さらに、本実施例での光路差Dそのものを大きくして、窓関数との乗算後の8.8MHzと7.2MHz成分抑圧比を大きくしてもよい。光路差Dを大きくするには、焦点距離Lや光ビームの開き角2θを大きくとるか、ビームスプリッタ4とミラー5の間に第二のミラーを挿入する方法もある。
本実施例では、コリメータレンズ3を用いVCSELの光の集光を行ったが、コリメータレンズ3の出力にシリンドリカルレンズを追加して、光のビーム形状を偏平とし光ビームAとBの干渉を強くして、光の検出感度を増加させてもよい。
[実施例2]
実施例2では、レーザ光源1にファブリ・ペロー型半導体レーザを用いた。ファブリ・ペロー型半導体レーザは、常に単一モードで発振するレーザでは無いが、半導体レーザの温度と注入電流を適切に設定すれば、単一モードでの動作が可能となる。ドップラ速度計の構成は図1と同様であるが、用いたファブリ・ペロー型半導体レーザの波長が781.4nmなので、ハーフミラー4とミラー5は、波長780nm用のものに変更した。ファブリ・ペロー型半導体レーザは、温度30℃となるよう温度制御を掛けた。閾値電流は39mAであり、バイアス電流が74mAから89mAの範囲で一本のファブリ・ペロー・モード上で発振した。
ファブリ・ペロー・モード間の波長間隔は0.075nmであり、バイアス電流が74mA以下となると0.6nm低波長に飛び、バイアス電流が89mA以上となると0.52nm長波長に飛ぶ特性を示した。4MHzの正弦波で変調を掛けるため、直流バイアス電流は82mAに設定し、4MHz正弦波の電流強度は1.9mAとした。この変調条件でファブリ・ペロー型半導体レーザは単一モードで発振し、サイドモード抑圧比は29dBであった。
光ビームの光路設定は、実施例1と同じとした。すなわち、光ビームA6と光ビームB7の間で発生する光路差Dは53mmであり、光ビームA6と光ビームB7で形成される角度2θは20°、移動物体の水平線からのズレ角φは0°とした。使用した移動物体0は、亜鉛メッキの薄板鋼鈑とし、円盤に張り付けて回転させた。
移動物体0からの散乱光を、APD9で受光し、増幅器10の出力であるAMP出力23をスペクトラムアナライザで観測した。その結果、図2と同様に、周波数4MHzの周りに2本、周波数8MHz周りに2本、周波数12MHz周りに2本、周波数16MHz周りに2本のドップラ信号が発生したが、周波数8MHzと周波数12MHzと周波数16MHz上に新たに3本の輝線スペクトルも加わった。新たな3本のスペクトルは、その周辺のドップラ信号強度より5dB低い強度で、移動物体0の速度に依存しない信号であり、ファブリ・ペロー型半導体レーザのAM変調の非線形歪から発生するものであった。
速度Vの算出は、処理部15のFPGAでの高速フーリエ変換(FFT)による周波数成分解析により行った。8MHzに現れるAM変調の非線形歪成分は、8MHz±100kHzの帯域に亘って数値処理上でマスクし、8MHz周辺に現れるドップラ信号の差周波数を読み取った。
また、FPGA内で並列して実施する移動方向の演算処理にも、8MHz±100kHzのマスク処理を施した。周期250nsの連続するハニング窓と入力信号との乗算後に、マスク処理を行った。
これらの処理により、レーザ光源1にファブリ・ペロー型半導体レーザを用いた場合でも、速度ゼロ周辺での速度Vおよび移動方向の分解能は低下するものの、速度Vが早い状態では読み取り間違いのない速度計測ができた。
発明での実施例では、波長780nmでのファブリ・ペロー型半導体レーザを用いた動作例を示したが、本発明での使用波長は780nm帯に限らない。波長は、例えば405nm帯、520nm帯、850nm帯、光通信用の1300nm、1550nm帯の波長でも動作可能である。また、FM変調時のレーザは単一モード発振であることが望ましい。
[実施例3]
実施例3では、レーザ光源1に注入する信号を鋸波とし、処理部15にて移動方向の演算処理を省略した構成とした。図4に、その構成図を示す。鋸波は、処理部15内のFPGAとその出力をデジタル-アナログ変換するDAコンバータ19により生成した。鋸波の周期は125nsで、繰り返し周波数は8MHz、立ち上がり時間が115ns、立下り時間が10nsの波形とした。レーザ光源1には、実施例1と同じ波長850nmのVCSELを用いた。VCSELのバイアス電流は3.6mA、鋸波の振幅は0.3mAに設定し、VCSELは30℃となるよう温度制御した。
レーザ光源1のVCSELからの光は、コリメータレンズ3にて平行光とした後、ビームスプリッタ4で2つに分け、一方は移動物体0に直接照射する光ビームA6、もう一方は、ミラー5で折り返して移動物体0に照射される光ビームB7とした。
光ビームA6と光ビームB7の間で発生する光路差Dは53mmであり、光ビームA6と光ビームB7で形成される角度2θは20°、移動物体の水平線からのズレ角φは0°とした。使用した移動物体0は、亜鉛メッキの薄板鋼鈑とし、円盤に張り付けて回転させた。
図5は、鋸波でFM変調された光ビームAと光ビームBの光周波数変化波形である。光路差を見やすくするため、光路差Dを20倍に広げたシミュレーション波形を示した。鋸波の周期は125nsであるが、そのうち90%程度の時間帯に亘って、光ビームBの光周波数は、光ビームAの光周波数を下回っている。
このような光ビームAとBの状態で、図4のAMP出力23をスペクトラムアナライザで観測した。その結果を図6に示す。図6の横軸は帯域20MHzに亘る周波数(単位:Hz、図中の刻みは2MHz/division)、縦軸は電力(単位:dBm、図中の刻みは10dB/division)である。周波数8MHzと16MHz付近に複数本のスペクトルが確認できた。このうち、周波数8MHzのスペクトルは、8MHzの繰り返し波形から発生したAM変調に大きく依存する二乗検波成分であり、移動物体0の速度Vには依存しない。また、自分自身の二乗成分であるため、スペクトル強度は光ビームAと光ビームBの干渉であるドップラ信号より大きく、スペクトル幅も狭い。
8.8MHzのスペクトルは、鋸波の90%部分である光ビームBの周波数が低くなる部分で発生するドップラ信号である。一方、7.2MHzのスペクトルは、鋸波の残り10%部分である光ビームBの周波数が高くなる部分で発生するドップラ信号である。7.2MHzのスペクトルは、光ビームAと光ビームBの干渉する時間が、8.8MHz分の約1/10であるため、その信号強度は20dB程度と小さくなる。また、実施例1では、正弦波変調を掛けたので、光ビームBの周波数が低くなる時間帯は周期の50%であったが、鋸波変調では光ビームBの周波数が低くなる時間帯は周期の90%と大きくなる。結果、鋸波での8.8MHzのスペクトルの強度は、正弦波での8.8MHzの強度に比べ、2.6dB上昇し感度の向上となった。
図4の処理部15では、FFT処理した後、8MHz±100kHzの成分のマスク処理を掛ける。速度の測定では、8.8MHzスペクトルと8MHzの差周波数を読みとり、その差周波数が2fdに相当するので、(3)式から移動物体の速度Vを算出することができる。移動方向の算出は、振幅の大きなドップラ信号の周波数から判断できる。ドップラ信号が8MHzより大きければ速度はプラス、小さければマイナスの出力となる。移動方向の算出のために、窓関数を用いた乗算と処理演算は不要となり消費電力の低減が図れる。
なお、本実施例では、鋸波を変調信号に用いたが、変調波形はこれに限らない。波形の周期内で、立ち上がりと立下りの比率が異なった波形であれば、本実施例3と同等の効果を得ることができる。
すなわち、周波数変調として、波形の周期内で立ち上がりと立下りの時間比率が異なった左右非対称の波形による変調を施せば、移動方向の算出は振幅の大きなドップラ信号の周波数から判断できるので、実施例1、2のような移動方向算出のための窓関数を用いた乗算と処理演算は不要となる。
本発明は、測定対象物の速度や長さ及び距離を非接触で正確に測ることができる。そのため、本発明は、製鉄業の圧延工程における鋼片の寸法測定や圧延工程の速度制御、鉄道での列車の正確な速度や走行距離の計測、道路インフラでの検測車の正確な速度や移動距離の計測、自動車関連での車両の正確な速度や走行軌跡の計測、化学工業や建設業などの産業機器での製造製品の正確な速度や長さの計測に適用することができる。また、流体の流速や血流速の計測にも適用することができる。
1 レーザ光源
2 レーザドライバ
3 コリメータレンズ
4 ビームスプリッタ
5 ミラー
6 光ビームA
7 光ビームB
8 レンズ
9 受光素子
10 増幅器
11 ハイパスフィルタ
12 増幅器
13 ローパスフィルタ
14 A/Dコンバータ
15 処理部
16 クロック
17 PLL
18 バンドパスフィルタ
19 D/Aコンバータ
23 AMP出力
24 バンドパスフィルタ
201 半導体レーザ
202 レンズ
203 回折格子
204 レンズ
205 ガラス管
206 光検出器
301 レーザ光源
302 コリメータレンズ
303 周波数シフト素子
304 偏光ビームスプリッタ
305 λ/2波長板
306 無偏向ビームスプリッタ
307 ミラー
308 レンズ
309 受光素子
310 増幅器
311 水晶発振器
312 PLL発振器
313 ミキサ
314 ローパスフィルタ
315 A/Dコンバータ
316 デジタル演算器
317 デジタル信号発生器
318 D/Aコンバータ
319 カウンタ
320 CPU
O 物体



Claims (3)

  1. レーザ光源から分離した二本の光束を、一方の光束は移動する物体の前方向から照射するのでドップラ散乱光は光周波数が増加する方向であり、他の光束は前記移動する物体の後方向から照射するのでドップラ散乱光は光周波数が減少する方向である、これら2つの散乱光を光検出器で検波すると、その出力電気信号は2つの散乱光成分の差分となり、これにより速度を計測する差動型レーザドップラ速度計に於いて、
    単一モード発振するレーザ光源と、
    該レーザ光源からのレーザビームを平行ビームにするコリメータレンズと、
    前記平行ビームを二分するビームスプリッタと、
    前記ビームスプリッタで二分されたレーザビームの一方を反射して物体に照射するミラーと、
    前記物体からの散乱光を集光するレンズと光検出器と電気回路を含む光受信部と、を有し、
    前記レーザ光源に周期的な信号を印加することによりレーザ光に光の側帯波を発生させる周波数変調を施し、前記周波数変調から生じる光の側帯波との干渉によるドップラ信号出力により、前記光受信部において前記移動する物体の移動方向を識別することを特徴とする差動型レーザドップラ速度計。
  2. 前記光受信部は前記散乱光からの受信電気信号を生成し、前記受信電気信号と前記周期的な信号と同期した信号との乗算を行い、前記移動する物体の移動方向を識別することを特徴とする請求項1に記載の差動型レーザドップラ速度計。
  3. 前記周波数変調は、波形の周期内で立ち上がりと立下りの比率が異なった波形の変調を施し、前記光受信部において前記移動する物体の移動方向を識別することを特徴とする請求項1に記載の差動型レーザドップラ速度計。
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