<第1実施形態>
以下、図面を参照して、第1実施形態に係る回転電機10について説明する。図1、2に示されるように、本実施形態の回転電機10は、同期式多相交流モータであり、外側が回転するアウタロータ構造となっている。なお、図1は、回転電機10を回転軸方向(すなわち、回転中心軸CLに沿った方向)と直交する方向から見た縦断面図であるが、説明の便宜上、回転中心軸CLに対して一方側の断面のみを図示している。また、回転中心軸CLに対して他方側の断面は、回転中心軸CLを挟んで一方側と対称の構造とされている。図2は、回転電機10を回転軸方向から見た横断面図であるが、説明の便宜上、断面の四分の一の領域のみを図示している。また、図2ではハウジング24の図示を省略している。
回転電機10は、回転中心軸CLに沿って延在された回転軸12を備えている。回転軸12は、略円柱状に形成されており、後述するハウジング24に対して回転中心軸CL周りに回転自在に支持されている。そして、回転電機10は、この回転軸12と同軸上に配置された回転子14、固定子16、巻線21、ハウジング24及び電気コンポーネント30を含んで構成されている。
回転子14は、略円筒状に形成されており、回転軸12の外周面に取り付けられている。このため、回転子14は、回転軸12を介してハウジング24に回転自在に支持されている。また、回転子14は、回転軸12から径方向外側へ延在された腕部14Aと、腕部14Aの先端から回転軸方向に延在された磁石取付部14Bとを含んで構成されている。
磁石取付部14Bは、ハウジング24と固定子16との間に位置している。また、図2に示されるように、磁石取付部14Bの内周面14Cは、回転軸方向から見て多角形状に形成されている。本実施形態では一例として、内周面14Cが回転軸方向から見て正十六角形に形成されている。なお、ここでいう正十六角形とは、厳密に各辺の長さが同一とされた形状に限定されず、製造誤差や設計誤差等によって各辺の長さが僅かに異なる形状とされた構造も含む。後述する固定子16における正多角形についても同様である。
ここで、磁石取付部14Bの内周面14Cには磁石部28が設けられている。磁石部28は、それぞれ極異方性磁石でありかつ磁極が互いに異なる第1磁石28部A及び第2磁石28部Bを有している。第1磁石部28A及び第2磁石部28Bは周方向に交互に配置されている。第1磁石部28Aは、回転子14においてN極となる磁石であり、第2磁石部28Bは、回転子14においてS極となる磁石である。第1磁石部28A及び第2磁石部28Bは、例えばネオジム磁石等の希土類磁石からなる永久磁石である。図2の矢印は、第1磁石部28A及び第2磁石部28Bの磁化方向を示すものである。図8~10の矢印も同様である。
本実施形態では、永久磁石として、残留磁束密度Brが1.0T以上であり、保磁力bHcが400kA/m以上のものを想定している。5000~10000ATが相間励磁により掛かるものであるから、1極対で25mmの永久磁石を使えば、bHc=10000Aとなり、減磁をしないことが伺える。ここで、本実施形態においては、配向により磁化容易軸をコントロールした永久磁石を利用しているから、その磁石内部の磁気回路長を、従来1.0T以上を出す直線配向磁石の磁気回路長と比べて、長くすることができる。すなわち、1極対あたりの磁気回路長を、少ない磁石量で達成できる他、従来の直線配向磁石を利用した設計と比べ、過酷な高熱条件に曝されても、その可逆減磁範囲を保つことができる。
ここで、第1磁石部28A及び第2磁石部28Bは、中央と端部とで磁化容易軸が異なる方向に向いている。具体的には、磁極中心をd軸とすると、磁石部28では、第1磁石部28A及び第2磁石部28Bのそれぞれのd軸付近において磁極面に直交する向きで磁束が生じ、その磁束は、磁極面から離れるほど、d軸から離れるような円弧状をなす。また、磁極面に直交する磁束ほど、強い磁束となる。
回転子14の径方向内側(すなわち、内周側)には、固定子16が配設されている。図1に示されるように、固定子16は、固定子鉄心18とヒートシンク20とを含んで構成されている。また、固定子16は、電気コンポーネント30を介してハウジング24に固定されている。固定子16の詳細については後述する。
ハウジング24は、回転電機10の外殻を構成しており、略円筒状の周壁部24Aを備えている。また、周壁部24Aの一端部から回転中心軸CLへ向かって一端面部24Bが延在されており、この一端面部24Bの回転軸12側の端部が第1軸受部32を介して回転軸12に支持されている。第1軸受部32は、回転軸12側が圧入される内輪32Aとハウジング24側が圧入される外輪32Bと、内輪32Aと外輪32Bとの間に配置された複数の球体32Cとを含んで構成されている。
周壁部24Aの他端部から回転中心軸CLへ向かって他端面部24Cが延在されており、この他端面部24Cには電気コンポーネント30が取り付けられている。また、他端面部24Cには、ハウジング24の外部と内部とを連通する呼吸孔24Dが形成されている。呼吸孔24Dは、他端面部24Cに複数形成された円孔であり、それぞれの呼吸孔24Dはフィルタ34によって閉塞されている。このため、空気は連通するが、ハウジング24の内部に水分は浸入しない構造となっている。
次に、固定子16の詳細について説明する。図2に示されるように、固定子16の径方向外側は、固定子鉄心18によって構成されている。固定子鉄心18は、軟磁性材からなる積層鋼板によって略円環状に形成されており、この固定子鉄心18の外周面には、導線部22を略筒状に巻回形成して構成された巻線21が設けられている。
図3に示されるように、巻線21は、軸方向一端側から順に、コイルエンド部21A、コイルサイド部21B及びコイルエンド部21Cを備えている。コイルサイド部21Bは、固定子鉄心18の径方向外側に位置する部分であり、磁石部28と径方向に対向して配置されている。
また、コイルサイド部21Bでは、導線部22が直接状に延在されており、コイルエンド部21A、21Cは、導線部22が略V字状に形成されたターン部によって互いに接続されている。
図4に示されるように、巻線21を構成する導線部22は、表面が絶縁被膜36により被覆された被覆導線よりなり、径方向に互いに重なる導線部22同士の間、及び導線部22と固定子鉄心18との間においてそれぞれ絶縁性が確保されている。この絶縁被膜36は、後述する素線38が自己融着被覆線であるならその皮膜、又は、素線38の皮膜とは別に重ねられた絶縁部材で構成されている。
導線部22により構成される各相巻線は、接続のための露出部分を除き、絶縁被膜36による絶縁性が保持されるものとなっている。露出部分としては、例えば、入出力端子部や、星形結線とする場合の中性点部分である。本実施形態では、複数の素線38の集合体として導体40が構成されており、この導体40は、樹脂固着や自己融着被覆線を用いて、径方向に隣り合う各導線部22が相互に固着されている。これにより、導線部22同士が擦れ合うことによる絶縁破壊や、振動、音が抑制される。
具体的には、導体40は、複数の素線38を撚ることで撚糸状に形成された部位を備えている。また、素線38は、細い繊維状の導電材を束ねた複合体として構成されている。例えば、素線38はCNT(カーボンナノチューブ)繊維の複合体であり、CNT繊維として、炭素の少なくとも一部をホウ素で置換したホウ素含有微細繊維を含む繊維が用いられている。炭素系微細繊維としては、CNT繊維以外に、気相成長法炭素繊維(VGCF)等を用いることができるが、CNT繊維を用いることが好ましい。なお、素線38の表面は、エナメルなどの高分子絶縁層で覆われている。ポリイミドの被膜やアミドイミドの被膜からなる、いわゆるエナメル被膜であることが好ましい。
また、導体40は、複数の素線38が撚り合わされて構成されているため、各素線38での渦電流の発生が抑えられ、導体40における渦電流の低減を図ることができる。さらに、各素線38が捻られていることで、1本の素線38において磁界の印加方向が互いに逆になる部位が生じて逆起電圧が相殺される。そのため、渦電流の低減を図ることができる。特に、素線38を繊維状の導電材により構成することで、細線化することと捻り回数を格段に増やすこととが可能になり、渦電流をより好適に低減することができる。なお、ここでいう素線38同士の絶縁方法は、前述の高分子絶縁膜に限定されず、接触抵抗を利用し撚られた素線38間で電流が流れにくくする方法であってもよい。すなわち、撚られた素線38間の抵抗値が、素線38そのものの抵抗値よりも大きい関係であれば、発生する電位差により、高分子絶縁膜を用いた場合と同等の効果を得ることができる。例えば、素線38を作成する製造設備と、回転電機10の電機子を作成する製造設備とを別の非連続の設備として作成することで、移動時間などから素線38は酸化し、接触抵抗を増やすことができ、好適である。
また、巻線21は、断面が扁平矩形状をなす複数の導線部22が径方向に並べて配置されて構成されている。すなわち、導線部22は、回転軸方向から見て一極一相あたりの径方向の寸法が周方向の寸法よりも小さく形成されている。各導線部22は、横断面において径方向寸法<周方向寸法となる向きで配置されている。これにより、径方向の薄肉化を図るとともに、ティースが従来あった領域まで導体領域を延ばすことができる。このように、導線部22を周方向に扁平化して導体40の断面積を稼ぐことで、導線部22の発熱量の増加を抑えている。なお、複数の導線部22を周方向に並べ、それらを並列結線とする構成であっても、同様の効果が得られる。
上述した通り、導線部22は、断面が扁平矩形状をなし、径方向に複数並べて配置されるものとなっている。例えば、導線部22は、融着層と絶縁層とを備えた自己融着被覆線で被覆された複数の素線86を撚った状態で集合させ、その融着層同士を融着させることで形状を維持している。なお、融着層を備えない素線や自己融着被覆線の素線を撚った状態で合成樹脂等により所望の形状に固めて成形してもよい。もし、導線部22における絶縁被膜36の厚さを例えば80μmとし、導線部の被膜厚さよりも厚肉とした場合、導線部22と固定子鉄心18との間に絶縁紙等を介在させることをしなくても、導線部22と固定子鉄心18との絶縁性が確保することができる。なお、一般的に用いられる導線の被膜厚さは5~40μmである。
各導線部22は、周方向に所定の配置パターンで配置されるように折り曲げ形成されており、これにより、巻線21として相ごとの相巻線が形成されている。巻線21は、各導線部22のうち軸方向に直線状に延びる直線部によりコイルサイド部21Bが形成され、軸方向においてコイルサイド部21Bよりも両外側に突出するターン部によりコイルエンド部21A及びコイルエンド部21Cが形成されている。各導線部22は、直線部とターン部とが交互に繰り返されることにより、波巻状の一連の導線として構成されている。直線部は、磁石部28に対して径方向に対向する位置に配置されており、磁石部28の軸方向外側となる位置において所定間隔を隔てて配置される同相の直線部同士が、ターン部により互いに接続されている。
本実施形態の巻線21は、各相2対ずつの導線部22を用いて相ごとの巻線を構成しており、巻線21のうち一方の3相巻線(U相、V相、W相)と他方の3相巻線(X相、Y相、Z相)とが径方向内外の2層に設けられるものとなっている。この場合、巻線の相数をS、導線部22の対数をmとすれば、極対ごとに2×S×m=2Sm個の導体40が形成されることになる。本実施形態では、相数Sが3、対数mが2であり、8極対(すなわち、16極)の回転電機であることから、極対ごとに2×3×2×8=96の導体40が周方向に配置されている。
導体40は、3相の全節ピッチの16極相当の巻線ルールで構成され、1極1相当たりの導体数は2である。すなわち、電気1周期の導体配列はそれぞれ、U1+、U2+、W1-、W2-、V1+、V2+、U1-、U2-、W1+、W2+、V1-,V2-の順で並んでおり、これが再帰的に8回配列されている。
ここで、本実施形態では、固定子鉄心18における磁石部28と対向する外周面18Aが回転軸方向から見て多角形状とされており、本実施形態では一例として、正四十八角形に形成されている。具体的には、図5に示されるように、固定子鉄心18の外周面18Aは、複数の平面部によって構成されており、隣り合う平面部の間に稜線18Bが形成されている。そして、1つの平面部に対して、周方向に2つの導線部22が隣接して配置されている。すなわち、固定子鉄心18の多角形状を構成する平面部にそれぞれ固定されている。
また、上述した通り、導線部22は、径方向に2つ隣接して配置されている。このため、外周面18Aを構成する1つの平面部に対して、4つの導線部22が配置されている。なお、平面部の間に稜線18Bが形成されていない構造としてもよい。この場合、隣り合う平面部間が曲面によって連結された構造を採用してもよい。
一方、外周面18Aに固定されている導線部22は、周方向に沿って固定子鉄心18の外周面18Aに空隙を介して複数配列されている。このため、導線部22同士の隙間の比透磁率が1.0に近い状態となっている。また、導線部22における固定面22Aは、平面状に形成されている。このため、導線部22の固定面22Aと固定子鉄心18の外周面18Aとは、平面部同士が面接触した状態で固定されている。
図2に示されるように、固定子鉄心18の外周面18Aが回転軸方向から見て多角形状に形成されている一方で、回転子14側の磁石部28の表面は、回転軸方向から見て円形に形成されている。このため、回転子14と固定子16との間の間隔は、回転方向に変化している。
具体的には、回転子14と固定子16との間の間隔は、回転方向に周期的に変化している。すなわち、図5において、固定子鉄心18の外周面18Aに形成された稜線18Bの部分が最も回転子14との間隔が狭くなるように構成されている。
図1、図2に示されるように、固定子鉄心18の径方向内側には、ヒートシンク20が設けられており、固定子16の内周面20Bを含む一部がヒートシンク20によって構成されている。
ヒートシンク20は、中空の略円筒状に形成されており、このヒートシンク20の内部には冷媒に相当する冷却水の流路20Aが形成されている。流路20Aは、環状に形成されており、図示しないウォータポンプによって流路20A内の冷却水が循環するように構成されている。
ここで、ヒートシンク20の内周面20B、すなわち、固定子16の内周面20Bは、回転軸方向から見て多角形状とされており、本実施形態では一例として、正十二角形に形成されている。そして、この内周面20Bにはそれぞれ、電気コンポーネント30を構成する半導体モジュール26が固定されており、半導体モジュール26の固定面26Aは、平面状に形成されている。
また、本実施形態では、相数をmとすると、ヒートシンク20における多角形状を構成する内周面20Bのそれぞれの回転方向に沿った長さは、外周面18Aのそれぞれの回転方向に沿った長さのm面分から2m面分の間の長さとされている。本実施形態では、3相モータであるため、内周面20Bの一辺の長さは、外周面18Aの一辺の長さの3倍から6倍とされている。
以下、電気コンポーネント30について説明する。図1に示されるように、電気コンポーネント30は、インバータ回路を構成する半導体モジュール26、制御基板42及びコンデンサモジュール44と、これらを保持する保持部材とを含んで構成されている。また、電気コンポーネント30は、保持部材が第2軸受部46を介して回転軸12に支持されている。第2軸受部46は、回転軸12側が圧入される内輪46Aと電気コンポーネント30側が圧入される外輪46Bと、内輪46Aと外輪46Bとの間に配置された複数の球体46Cとを含んで構成されている。
図2に示されるように、コンデンサモジュール44は、中空円筒状に形成されて回転軸12の周りに配置されている。コンデンサモジュール44は、互いに並列接続された平滑用のコンデンサ44Aを複数備えている。具体的には、コンデンサ44Aは、複数枚のフィルムコンデンサが積層されてなる積層型フィルムコンデンサであり、横断面が略台形状を成している。コンデンサモジュール44は、12個のコンデンサ44Aが環状に並べて配置されることで構成されている。
なお、コンデンサ44Aの製造過程においては、例えば、複数のフィルムが積層されてなる所定幅の長尺フィルムを用いる。そして、フィルム幅方向を台形高さ方向とし、かつ台形の上底と下底とが交互になるように長尺フィルムが等脚台形状に切断されることにより、コンデンサ素子が作られる。そして、そのコンデンサ素子に電極等を取り付けることでコンデンサ44Aが作製される。
半導体モジュール26は、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチング素子を有し、略板状に形成されている。本実施形態では、回転電機10が2組の3相巻線を備えており、その3相巻線ごとにインバータ回路が設けられていることから、計12個の半導体モジュール26が電気コンポーネント30に設けられている。
半導体モジュール26は、ヒートシンク20とコンデンサモジュール44との間に挟まれた状態で配置されている。また、半導体モジュール26の外周面は、ヒートシンク20の内周面20Bに固定される固定面26Aとされており、この固定面26Aは平面状に形成されている。このため、半導体モジュール26の固定面26Aとヒートシンク20の内周面20Bとは、平面部同士が面接触した状態で固定されている。
図1に示されるように、コンデンサモジュール44よりも回転軸方向の一方側には、制御基板42が配置されている。制御基板42は、ハウジング24に固定されており、所定の配線パターンが形成されたプリントサーキットボード(PCB)を有している。そして、ボード上には、各種IC(Integrated Circuit)や、マイコン等からなる制御装置が実装されている。
次に、回転電機10を制御する制御システムの構成について説明する。図13に示されるように、巻線21として2組の3相巻線50A及び3相巻線50Bが示されており、3相巻線50AはU相巻線、V相巻線及びW相巻線を含んで構成されている。また、3相巻線50Bは、X相巻線、Y相巻線及びZ相巻線を含んで構成されている。
3相巻線50A側には第1インバータ52が設けられており、3相巻線50B側には第2インバータ54が設けられている。第1インバータ52及び第2インバータ54は、相巻線の相数と同数の上下アームを有するフルブリッジ回路により構成されている。そして、各アームに設けられたスイッチ(半導体スイッチング素子)のオンオフにより、巻線21の各相巻線において通電電流が調整される。
第1インバータ52及び第2インバータ54には、直流電源56と平滑用のコンデンサ58とが並列に接続されている。直流電源56は、例えば複数の単電池が直列接続された組電池により構成されている。なお、第1インバータ52及び第2インバータ54の各スイッチが、図2等に示す半導体モジュール26に相当し、コンデンサ58が、図2等に示すコンデンサモジュール44に相当する。
制御装置60は、CPUや各種メモリからなるマイコンを備えており、回転電機10における各種の検出情報や、力行駆動及び発電の要求に基づいて、第1インバータ52及び第2インバータ54における各スイッチのオンオフにより通電制御を実施する。回転電機10の検出情報には、例えば、レゾルバ等の角度検出器により検出される回転子14の回転角度(電気角情報)や、電圧センサにより検出される電源電圧(インバータ入力電圧)、電流センサにより検出される各相の通電電流が含まれる。制御装置60は、第1インバータ52及び第2インバータ54の各スイッチを操作する操作信号を生成して出力する。なお、発電の要求は、例えば回転電機10が車両用動力源として用いられる場合、回生駆動の要求である。
第1インバータ52は、U相、V相及びW相からなる3相において上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの直列接続体をそれぞれ備えている。各相の上アームスイッチSpの高電位側端子は直流電源56の正極端子に接続され、各相の下アームスイッチSnの低電位側端子は直流電源56の負極端子(グランド)に接続されている。
各相の上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの間の中間接続点には、それぞれU相巻線、V相巻線、W相巻線の一端が接続されている。これら各相巻線は星形結線(Y結線)されており、各相巻線の他端は中性点にて互いに接続されている。
第2インバータ54は、第1インバータ52と同様の構成を有しており、X相、Y相及びZ相からなる3相において上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの直列接続体をそれぞれ備えている。各相の上アームスイッチSpの高電位側端子は直流電源56の正極端子に接続され、各相の下アームスイッチSnの低電位側端子は直流電源56の負極端子(グランド)に接続されている。各相の上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの間の中間接続点には、それぞれX相巻線、Y相巻線、Z相巻線の一端が接続されている。これら各相巻線は星形結線(Y結線)されており、各相巻線の他端は中性点で互いに接続されている。
図14には、U,V,W相の各相電流を制御する電流フィードバック制御処理と、X,Y,Z相の各相電流を制御する電流フィードバック制御処理とが示されている。ここではまず、U,V,W相側の制御処理について説明する。
図14において、電流指令値設定部62は、トルク-dqマップを用い、回転電機10に対する力行トルク指令値又は発電トルク指令値や、電気角θを時間微分して得られる電気角速度ωに基づいて、d軸付近の電流指令値とq軸の電流指令値とを設定する。なお、電流指令値設定部62は、U,V,W相側及びX,Y,Z相側において共通に設けられている。また、発電トルク指令値は、例えば回転電機10が車両用動力源として用いられる場合、回生トルク指令値である。また、q軸は、磁極境界である。
dq変換部64は、相ごとに設けられた電流センサによる電流検出値(各相電流)を、界磁方向をd軸とする直交2次元回転座標系の成分であるd軸付近の電流とq軸電流とに変換する。
電流フィードバック制御部66は、d軸付近の電流を電流指令値にフィードバック制御するための操作量として指令電圧を算出する。また、q軸電流フィードバック制御部68は、q軸電流をq軸の電流指令値にフィードバック制御するための操作量としてq軸の指令電圧を算出する。これらd軸フィードバック制御部66及びq軸フィードバック制御部68では、d軸電流及びq軸電流の電流指令値に対する偏差に基づき、PIフィードバック手法を用いて指令電圧が算出される。
3相変換部70は、d軸及びq軸の指令電圧を、U相、V相及びW相の指令電圧に変換する。なお、上記の電流指令値設定部62、dq変換部64、d軸電流フィードバック制御部66、q軸電流フィードバック制御部68及び3相変換部70は、dq変換理論による基本波電流のフィードバック制御を実施するフィードバック制御部である。また、U相、V相及びW相の指令電圧がフィードバック制御値である。
そして、操作信号生成部72は、周知の三角波キャリア比較方式を用い、3相の指令電圧に基づいて、図13の第1インバータ52の操作信号を生成する。具体的には、操作信号生成部72は、3相の指令電圧を電源電圧で規格化した信号と、三角波信号等のキャリア信号との大小比較に基づくPWM制御により、各相における上下アームのスイッチ操作信号(デューティ信号)を生成する。
また、X,Y,Z相側においても同様の構成を有しており、dq変換部76は、相ごとに設けられた電流センサによる電流検出値を、界磁方向をd軸とする直交2次元回転座標系の成分であるd軸電流とq軸電流とに変換する。
d軸電流フィードバック制御部77はd軸の指令電圧を算出し、q軸電流フィードバック制御部78はq軸の指令電圧を算出する。3相変換部80は、d軸及びq軸の指令電圧を、X相、Y相及びZ相の指令電圧に変換する。そして、操作信号生成部82は、3相の指令電圧に基づいて、図13の第2インバータ54の操作信号を生成する。具体的には、操作信号生成部82は、3相の指令電圧を電源電圧で規格化した信号と、三角波信号等のキャリア信号との大小比較に基づくPWM制御により、各相における上下アームのスイッチ操作信号(すなわち、デューティ信号)を生成する。
ドライバ74は、操作信号生成部72及び操作信号生成部82にて生成されたスイッチ操作信号に基づいて、第1インバータ52及び第2インバータ54における各3相のスイッチSp,Snをオンオフさせる。
続いて、トルクフィードバック制御処理について説明する。この処理は、例えば高回転領域及び高出力領域等、第1インバータ52及び第2インバータ54の出力電圧が大きくなる運転条件において、主に回転電機10の高出力化や損失低減の目的で用いられる。制御装置60は、回転電機10の運転条件に基づいて、トルクフィードバック制御処理及び電流フィードバック制御処理のいずれか一方の処理を選択して実行する。
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
図2に示されるように、本実施形態に係る回転電機10によれば、回転子14の回転方向に沿って第1磁石部28A及び第2磁石部28Bが配列されている。また、回転子14の内周側には固定子鉄心18が配置されている。ここで、固定子鉄心18における磁石と対向する外周面18Aは、回転子14の回転軸方向から見て多角形状とされている。さらに、固定子鉄心18の外周面18Aには、回転子14の回転方向に沿って導線部22が複数配列されており、これらの導線部22は、空隙を介して配列されている。また、導線部22はそれぞれ固定子鉄心18の多角形状を構成する面に固定されている。これにより、導線部22を平面に固定することができ、導線部22を曲面に固定する構造などと比較して、導線部22の移動を抑制することができる。
特に、本実施形態では、固定子鉄心18にスロットが設けられていないため、固定子鉄心18の周方向の一周における導体領域を、隙間領域より大きく設計することができる。例えば、一般的な車両用回転電機では、固定子巻線の周方向の一周における導体領域/隙間領域は1以下となっている。一方、本実施形態では、導体領域が隙間領域と同等又は導体領域が隙間領域よりも大きくなるように巻線21が構成されている。ここで、図5に示すように、周方向において導線部22が配置された導線領域をWA、隣り合う導線部22の間となる導線間領域をWBとすると、導線領域WAは、導線間領域WBより周方向において大きい。
ところで、回転電機10のトルクは、導体40の径方向の厚さに略反比例する。本実施形態では、固定子鉄心18の径方向外側において導体40の厚さを薄くしたことにより、回転電機10のトルクを増加させることができる。その理由としては、回転子14の磁石部28から固定子鉄心18までの距離を小さくして磁気抵抗を下げることができるためである。これによれば、永久磁石による固定子鉄心18の鎖交磁束を大きくすることができ、トルクを増強することができる。
また、本実施形態では、図5に示されるように、導線部22の固定面22Aが平面状に形成されている。これにより、導線部22を固定子鉄心18に対して面接触させた状態で固定することができ、導線部22の保持状態を良好に維持することができる。また、面接触させることで、導線部22と固定子鉄心18との接触面積を大きく確保することができ、熱伝導性を向上させることができる。例えば、200A級のモータで、導体40の断面積が10mm2程度となる場合、3mm程度の平角線が採用される。このとき、導線部22と固定子鉄心18とを面接触させることで、3mm程度の接触面の幅を確保することができ、効率的に発熱の放散を行うことができる。
さらに、本実施形態の導線部22は、図4に示されるように、複数の素線38が撚られて形成された部位を備えた導体40を含んで構成されている。これにより、導体40中に発生する高周波渦電流損を低減させることができる。また、銅損の増加を抑制することができ、スロットレスモータの効率を向上させることができる。
さらにまた、本実施形態では、図2に示されるように、固定子16が回転子14の内周側に配置されたアウタロータ構造となっており、この固定子16の外周面18Aに導線部22が固定され、固定子16の内周面20Bに半導体モジュール26が固定されている。これにより、回転電機10の主な発熱体である導線部22と半導体モジュール26とを抱き合わせで一カ所に固定して発熱を集中させることで、冷却機能も一カ所に集約することができ、冷却機構の小型化を図ることができる。すなわち、固定子16を冷却することで、導線部22及び半導体モジュール26の両方を冷却することができる。
また、固定子16の内周面20Bが回転軸方向から見て多角形状とされており、半導体モジュール26の固定面26Aが平面状に形成されて内周面20Bとが面接触した状態で固定されている。これにより、固定子16の内周面20Bが回転軸方向から見て円形状に形成された構成と比較して、半導体モジュール26と固定子16との接触面積を広く確保することができ、効率的に発熱の放散を行うことができる。
さらに、固定子16の内周側がヒートシンク20によって構成されており、このヒートシンク20の内部には、冷却水が流れる流路20Aが設けられている。これにより、導線部22及び半導体モジュール26から発生した熱を冷却水に吸熱させることができ、効果的に冷却を行うことができる。このとき、必要に応じて、流路20Aに放熱面積を増やすためのフィンを設けてもよい。
さらにまた、本実施形態では、相数をmとしたときに、固定子16における内周面20Bのそれぞれの回転方向に沿った長さが、外周面18Aのそれぞれの回転方向に沿った長さのm面分から2m面分の間の長さとなっている。ここで、一般的に1つのパワーモジュール(すなわち、半導体モジュール)は、m相モータの1相分の上下アームのトランジスタが1パッケージに集積されたものが多い。そして、このトランジスタをm個から2m個並列して1つのインバータを構成することが知られている。つまり、1つのパワーモジュールには常時1相分の電流しか流れていないことになる。
一方、固定子16の導体グループは、3グループから6グループで3相分を構成している。つまり、多角形のm面分から2m面分でm相分に相当することとなる。本実施形態のように3相の場合、U相,V相,W相にIu+Iv+Iw=ゼロの電流がバランスよく流れている。従って、冷却機構を備えたヒートシンク20を挟んで1枚のパワーモジュールと3相分の導体グループとが対峙してれば、各パワーモジュールに導体グループ3相分の均等な発熱量が割り振られることになる。この結果、冷却性能のアンバランスを解消することができ、冷却機構を小型化することができる。
また、本実施形態では、回転子14と固定子16との間の間隔が回転方向に変化するように構成されている。すなわち、本実施形態では、固定子16の外周面18Aが回転軸方向から見て多角形状に形成されており、回転子14側では、磁石部28の表面が回転軸方向から見て円形状に形成されているため、この間の間隔が回転方向に変化している。これにより、回転子14が回転することで回転方向に圧力変動が生じ、回転子14と固定子16との間に空気の流れが発生する。この結果、露出した導線部22に周囲の空気が吹き付けられ、効果的に導線部22を冷却することができる。
特に、本実施形態では、回転子14と固定子16との間隔が周期的に変化している。これにより、回転子14と固定子16との間隔が非周期的である構造と比較して、電磁振動騒音などのノイズが発生するのを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、ハウジング24の他端面部24Cに呼吸孔24Dが形成されているため、ハウジング24内の熱をハウジング24の外部へ放出させることができる。
なお、上記実施形態では、図5に示されるように、隣り合う導線部22の間に空気しか介在されていないが、これに限定されず、図6に示される変形例の構造を採用してもよい。
(第1実施形態の変形例)
図6に示されるように、本変形例では、巻線21が合成樹脂材からなる封止部材23によって封止されており、この封止部材23が非磁性体で形成された導線間部材に相当する。
封止部材23は、導線部22の間に充填されており、この封止部材23が絶縁部材として機能する。また、封止部材23は、固定子鉄心18の径方向外側に設けられており、導線部22の径方向の厚さ寸法よりも厚いため、導線部22が封止部材23の内部に配置された構造となっている。
なお、図示はしないが、封止部材23は、巻線21のターン部を含む範囲で設けられており、インバータ回路との接続端子を除いて巻線21の略全体が封止部材23で樹脂封止されている。
本変形例のように、封止部材23が固定子鉄心18の端面を含む範囲で設けられた構成では、封止部材23によって固定子鉄心18の積層鋼板を軸方向内側に押さえ付けることができる。これにより、封止部材23を用いて積層鋼板の積層状態を保持することができる。なお、固定子鉄心18の内周面を含む固定子鉄心18の全体を樹脂封止する構成であってもよい。
また、回転電機10が車両動力源として使用される場合には、封止部材23の材質として、高耐熱のフッ素樹脂や、エポキシ樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、シリコン樹脂、PAI(ポリアミドイミド)樹脂、PI(ポリイミド)樹脂等を含んで構成されていることが好ましい。また、封止部材23を巻線21の絶縁被膜36と同じ材質にすれば、膨張差による割れを抑制することができる。一方、電気自動車のように、エンジンなどの内燃機関を持たない車両に適用する場合は、耐熱性を持つPPO(ポリプロピレンオキシド)樹脂やフェノール樹脂、FRP(繊維強化樹脂)等を含んで封止部材23を構成してもよい。
さらに、1磁極における封止部材23の周方向の幅寸法をWt、封止部材23の飽和磁束密度をBsとし、1磁極における磁石部28の周方向の幅寸法をWm、磁石部28の残留磁束密度をBrとした場合に、Wt×Bs≦Wm×Brの関係式を満たしていることが好ましい。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る回転電機90について説明する。なお、第1実施形態と同様の構造については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
図7に示されるように、本実施形態の回転電機90は、内側が回転するインナロータ構造となっている点で第1実施形態と異なっている。具体的には、回転電機90は、回転中心軸CLに沿って延在された回転軸92を備えている。回転軸92は、略円柱状に形成されており、後述するハウジング94に対して回転中心軸CL周りに回転自在に支持されている。そして、回転電機10は、この回転軸92と同軸上に配置された回転子96、固定子91、巻線21及びハウジング94を含んで構成されている。なお、図7では、説明の便宜上、回転中心軸CLに対して一方側の回転電機90の断面のみを図示している。また、回転中心軸CLに対して他方側の断面は、回転中心軸CLを挟んで一方側と対称の構造とされている。
回転子96は、略円環状に形成されており、回転軸92の外周面に取り付けられている。また、図8に示されるように、回転子96の外周面96Aは、回転軸方向から見て多角形状に形成されている。本実施形態では一例として、外周面96Aが回転軸方向から見て正十六角形に形成されている。そして、この外周面96Aには磁石部97が設けられている。なお、図8~10では、説明の便宜上、回転電機90の断面の四分の一の領域のみを図示している。また、図8~10では、ハウジング94の図示を省略している。
磁石部97は、それぞれ極異方性磁石でありかつ磁極が互いに異なる第1磁石部97A及び第2磁石部97Bを有しており、第1磁石部97A及び第2磁石部97Bは周方向に交互に配置されている。また、第1磁石部97Aは、径方向外側へ磁束が向かうように着磁された中央部と、この中央部の両側に位置して中央部側へ磁束が向かうように着磁された両端部とを含んで構成されている。第2磁石部97Bは、径方向内側へ磁束が向かうように着磁された中央部と、この中央部の両側に位置して中央部側とは反対側に磁束が向かうように着磁された両端部とを含んで構成されている。このため、磁石部97は、16極のハルバッハ配列の磁石配置となっている。
また、第1磁石部97A及び第2磁石部97Bはそれぞれ、中央部が最も径方向に厚く形成されており、両端部へ向かうにつれて厚みが徐々に減少する形状となっている。このため、磁石部97は、回転軸方向から見て16弁の花弁形状となっており、磁石部97と固定子91との間隔が回転方向に沿って周期的に変化するように構成されている。
図7に示されるように、回転子96の径方向外側には固定子91が設けられており、この固定子91は、ハウジング94に取り付けられている。ハウジング94は、回転電機90の外殻を構成しており、略円筒状の周壁部94Aを備えている。また、周壁部94Aの一端部から回転軸92へ向かって一端面部94Bが延在されており、この一端面部94Bの回転軸92側が第1軸受部93を介して回転軸92に連結されている。第1軸受部93は、回転軸92側の内輪93Aとハウジング94側の外輪93Bと、内輪93Aと外輪93Bとの間に配置された複数の球体93Cとを含んで構成されている。
周壁部94Aの他端部から回転軸92へ向かって他端面部94Cが延在されており、この他端面部94Cの回転軸92側が第2軸受部95を介して回転軸92に連結されている。第2軸受部95は、回転軸92側の内輪95Aとハウジング94側の外輪95Bと、内輪95Aと外輪95Bとの間に配置された複数の球体95Cとを含んで構成されている。
固定子91は、ハウジング94の周壁部94Aの径方向内側の面に設けられており、固定子鉄心98を備えている。図8に示されるように、固定子鉄心98は、軟磁性材からなる積層鋼板によって略円環状に形成されており、この固定子鉄心98の外周面には、導線部22を略筒状に巻回形成して構成された巻線21が設けられている。
ここで、固定子鉄心98における磁石部97と対向する内周面98Aが回転軸方向から見て多角形状とされており、本実施形態では一例として、正四十八角形に形成されている。そして、正四十八角形を構成する1つの平面部に対して、周方向に2つの導線部22が隣接して配置されている。
本実施形態では、インナロータ構造とすることで、内周側を回転させることができる。また、磁石部97がハルバッハ配列とされているため、任意の方向に磁界を集中させることができる。その他の作用については第1実施形態と同様である。
なお、本実施形態の磁石部97を構成する第1磁石部97A及び第2磁石部97Bは、三方向に着磁された構造としたが、これに限定されない。図9、10に示される変形例の構造を採用してもよい。
(第2実施形態の第1変形例)
図9に示されるように、本変形例では、回転子96の外周面96Aは、回転軸方向から見て正三十二角形に形成されている。そして、この外周面96Aには磁石部89が設けられている。
磁石部89は、第1磁石89A、第2磁石89B、第3磁石89C及び第4磁石89Dを含んで構成されている。第1磁石89A、第2磁石89B、第3磁石89C及び第4磁石89Dは、この順番で周方向に並んで配置されており、ハルバッハ配列となるように着磁されている。
本変形例では、第2実施形態と異なり、1つの磁石が一方向のみに着磁されているため、磁石の製造が容易となる。
(第2実施形態の第2変形例)
図10に示されるように、本変形例では、回転子96の外周面96Aは、回転軸方向から見て正十六角形に形成されている。そして、この外周面96Aには磁石部99が設けられている。
磁石部99は、それぞれ極異方性磁石でありかつ磁極が互いに異なる第1磁石99A及び第2磁石99Bを含んで構成されている。第1磁石99A及び第2磁石99Bは、中央と端部とで磁化容易軸が異なる方向に向いている。具体的には、第1磁石99A及び第2磁石99Bのそれぞれのd軸付近(すなわち磁極中心)において磁極面に直交する向きで磁束が生じ、その磁束は、磁極面から離れるほど、d軸から離れるような円弧状をなす。また、磁極面に直交する磁束ほど、強い磁束となる。
本変形例では、ハルバッハ配列で磁石を配置する構造と比較して、組み立てに要する工数を削減することができる。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る回転電機100について説明する。なお、第1実施形態と同様の構造については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。なお、要部は第1実施形態と同様の構造であるため、以下の説明では回転電機100の全体構成についてのみ図示して記載する。
図11及び図12に示されるように、回転電機100は、軸受部120、ハウジング130、回転子140、固定子150及びインバータユニット160を含んで構成されている。これら構成部品は、回転軸111と共に同軸上に配置され、所定順序で軸方向に組み付けられることで回転電機100が構成されている。
軸受部120は、軸方向に互いに離間して配置される2つの軸受121及び軸受122と、軸受121及び軸受122を保持する保持部材123とを有している。軸受121及び軸受122は、例えばラジアル玉軸受であり、それぞれ外輪と、内輪と、球体とを含んで構成されている。保持部材123は、円筒状をなしており、この保持部材123の径方向内側に軸受121及び軸受122が組み付けられている。そして、軸受121及び軸受122の径方向内側に回転軸111及び回転子140が回転自在に支持されている。
ハウジング130は、円筒状をなす周壁部131と、周壁部131の軸方向両端部のうち一方の端部に設けられた端面部132とを有している。周壁部131における軸方向両端部のうち端面部132の反対側が開口部133となっており、ハウジング130は、端面部132の反対側が開口部133により開放された構成となっている。
端面部132の中央には円形の孔134が形成されており、孔134には、軸受部120が挿通されている。軸受部120は、孔134に挿通した状態でネジやリベット等の固定具により端面部132に固定されている。また、ハウジング130の周壁部131及び端面部132によって区画された内部スペースには、回転子140と固定子150とが収容されている。
本実施形態の回転電機100は、外側が回転子140となるアウタロータ構造であり、ハウジング130の内部スペースには、筒状をなす回転子140の径方向内側に固定子150が配置されている。回転子140は、回転軸111に片持ち支持されている。
回転子140は、中空筒状に形成された回転子本体141と、回転子本体141の径方向内側に設けられた環状の磁石部142とを含んで構成されている。回転子本体141は、端面部132側が底部となる略有底円筒状に形成されており、磁石保持部材としての機能を有する。また、回転子本体141は、略円筒状の磁石保持部143と、磁石保持部143よりも小径の略円筒状に形成された固定部144と、磁石保持部143及び固定部144を繋ぐ中間部145とを含んで構成されている。そして、磁石保持部143の内周面には、磁石部142が取り付けられている。
固定部144には挿通孔144Aが形成されており、この挿通孔144Aには回転軸111が挿通されている。そして、挿通孔144Aに回転軸111が挿通された状態で回転軸111が固定部144に固定されている。つまり、回転子本体141は、固定部144を介して回転軸111に固定されている。なお、固定部144は、凹凸を利用したスプライン結合、キー結合、溶接又はかしめ等により回転軸111に対して固定してもよい。これにより、回転子140が回転軸111と一体に回転する。
また、固定部144の径方向外側には、軸受部120の軸受121及び軸受122が組み付けられている。軸受部120は、ハウジング130の端面部132に固定されているため、回転軸111及び回転子140は、ハウジング130に回転可能に支持されるものとなっている。これにより、ハウジング130内において回転子140が回転自在となっている。
回転子140には、軸方向両側のうち片側にのみ固定部144が設けられており、これにより、回転子140が回転軸111に片持ち支持されている。ここで、回転子140の固定部144は、軸受部120の軸受121及び軸受122により、軸方向に2箇所で回転可能に支持されている。すなわち、回転子140は、回転子本体141における軸方向の両側端部のうち一方側において、軸受121及び軸受122により回転可能に支持されている。そのため、回転子140が回転軸111に片持ち支持される構造であっても、回転子140の安定回転が実現されるようになっている。この場合、回転子140の軸方向中心位置に対して片側にずれた位置で、回転子140が軸受121及び軸受122により支持されている。
また、軸受部120において回転子140の中心寄り(すなわち、図中の下側)の軸受122と、逆側(すなわち、図中の上側)の軸受121とは、外輪及び内輪と球体との間の隙間寸法が相違している。例えば、軸受122の方が軸受121よりも隙間寸法が大きい。この場合、回転子140の振れや、部品公差に起因するインバランスによる振動が軸受部120に作用しても、回転子140の振れや振動を吸収することができる。具体的には、軸受122において予圧により遊び寸法(すなわち、隙間寸法)を大きくしていることで、片持ち構造において生じる振動がその遊び部分により吸収される。なお、予圧は、定位置予圧でもよいが、軸受122の軸方向外側の段差に予圧用バネ、ウェーブワッシャ等を挿入することで与えてもよい。
中間部145は、径方向中心側とその外側とで軸方向の段差を有する構成となっている。この場合、中間部145において、径方向の内側端部と外側端部とは、軸方向の位置が相違しており、これにより、軸方向において磁石保持部143と固定部144とが一部重複している。つまり、固定部144の基端部よりも軸方向外側に磁石保持部143が突出するものとなっている。本構成では、中間部145が段差無しで平板状に設けられる場合に比べて、回転子140の重心近くの位置で、回転軸111に対して回転子140を支持させることが可能となる。この結果、回転子140の安定動作が実現できるものとなっている。
上述した中間部145の構成によれば、回転子140には、径方向において固定部144を囲みかつ中間部145の内寄りとなる位置に、軸受部120の一部を収容する軸受収容凹部146が環状に形成されている。また、軸受収容凹部146を囲みかつ中間部145の外寄りとなる位置に、固定子150の固定子巻線151のコイルエンド部154を収容するコイル収容凹部147が形成されている。
軸受収容凹部146とコイル収容凹部147とは、径方向の内外で隣り合うように配置されている。つまり、軸受部120の一部と、固定子巻線151のコイルエンド部154とが径方向内外に重複するように配置されている。これにより、回転電機100において軸方向の長さ寸法の短縮が可能となっている。
コイルエンド部154は、径方向の内側又は外側に曲げられることで軸方向の寸法を小さくすることができ、固定子150の軸長を短縮することが可能である。コイルエンド部154の曲げ方向は、回転子140との組み付けを考慮したものであってもよい。本実施形態のように回転子140の径方向内側に固定子150が組み付けられた場合、回転子140に対する先端側では、コイルエンド部154が径方向内側に曲げられるとよい。その逆側の曲げ方向は任意でよいが、空間的に余裕のある外径側が製造上好ましい。
また、磁石部142は、磁石保持部143の径方向内側において、周方向に沿って磁極が交互に変わるように配置された複数の磁石により構成されている。
固定子150は、回転子140の径方向内側に設けられている。固定子150は、略筒状に巻回形成された固定子巻線151と、その径方向内側に配置された固定子コア(すなわち、固定子鉄心)152とを有しており、固定子巻線151が、所定のエアギャップを挟んで円環状の磁石部142に対向するように配置されている。
固定子巻線151は、複数の相巻線よりなる。それら各相巻線は、周方向に配列された複数の導線部が所定ピッチで互いに接続されることで構成されている。本実施形態では、U相、V相及びW相の3相巻線と、X相、Y相及びZ相の3相巻線とを用い、それら3相2組の相巻線を用いることで、固定子巻線151が6相の相巻線として構成されている。
固定子コア152は、軟磁性材からなる積層鋼板により円環状に形成されており、固定子巻線151の径方向内側に組み付けられている。
固定子巻線151は、軸方向において固定子コア152に重複する部分である。また、固定子巻線151は、固定子コア152の径方向外側となるコイルサイド部153と、軸方向において固定子コア152の一端側及び他端側にそれぞれ張り出すコイルエンド部154及びコイルエンド部155とを含んで構成されている。コイルサイド部153は、径方向において固定子コア152及び磁石部142にそれぞれ対向している。回転子140の内側に固定子150が配置された状態では、軸方向両側のコイルエンド部154及びコイルエンド部155のうち軸受部120側となるコイルエンド部154が、回転子140の回転子本体141により形成されたコイル収容凹部147に収容されている。
インバータユニット160は、ハウジング130に対してボルト等の締結具により固定されるユニットベース161と、そのユニットベース161に組み付けられる電気コンポーネント162とを含んで構成されている。ユニットベース161は、ハウジング130の開口部133側の端部に対して固定されるエンドプレート部163と、エンドプレート部163に一体に設けられ、軸方向に延びるケーシング部164とを有している。エンドプレート部163は、その中心部に円形の開口部165を有しており、開口部165の周縁部から起立するようにしてケーシング部164が形成されている。
ケーシング部164の外周面には固定子150が組み付けられている。つまり、ケーシング部164の外径寸法は、固定子コア152の内径寸法と同じか、又は固定子コア152の内径寸法よりも僅かに小さい寸法になっている。ケーシング部164の外側に固定子コア152が組み付けられることで、固定子150とユニットベース161とが一体化されている。また、ユニットベース161がハウジング130に固定されることからすると、ケーシング部164に固定子コア152が組み付けられた状態では、固定子150がハウジング130に対して一体化された状態となっている。
また、ケーシング部164の径方向内側は、電気コンポーネント162を収容する収容空間となっており、その収容空間には、回転軸111を囲むようにして電気コンポーネント162が配置されている。ケーシング部164は、収容空間形成部としての役目を有している。電気コンポーネント162は、インバータ回路を構成する半導体モジュール166や、制御基板167、コンデンサモジュール168を含んで構成されている。
以上のように構成された回転電機100において、固定子巻線151は、第1実施形態の巻線21と同様の構造とされている。また、回転電機100の横断面は、第1実施形態と類似した構造となっており、その作用についても第1実施形態と同様である。
以上、第1実施形態~第3実施形態について説明したが、これに限らず、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、第1実施形態では、図2に示されるように、第1磁石部28A及び第2磁石部28Bの径方向内側の面を連続する円弧状に形成したが、これに限定されない。図8に図示されているように花弁状に形成してもよく、他の形状に形成してもよい。
(変形例)
上記実施形態では、固定子コアの外周面を凹凸のない曲面状とし、その外周面に所定間隔で複数の導線群212を並べて配置する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、図15に示すように、固定子コア202は、固定子巻線201の径方向両側のうち回転子とは反対側(図の下側)に設けられた円環状のヨーク204と、そのヨーク204から、周方向に隣り合う直線部208の間に向かって突出するように延びる突起部214とを有している。突起部214は、ヨーク204の径方向外側、すなわち回転子側に所定間隔で設けられている。固定子巻線の各導線群212は、突起部214と周方向において係合しており、突起部214を導線群212の位置決め部として用いつつ周方向に並べて配置されている。なお、突起部214が「導線間部材」に相当する。
突起部214は、ヨーク204からの径方向の厚さ寸法、言い換えれば、図15に示すように、ヨーク204の径方向において、直線部208のヨーク204に隣接する内側面216から突起部214の頂点までの距離Wが、径方向内外の複数層の直線部208のうち、ヨーク204に径方向に隣接する直線部208の径方向の厚さ寸法の1/2(図のH1)よりも小さい構成となっている。言い換えれば、固定子巻線201(固定子コア202)の径方向における導線群212(伝導部材)の寸法(厚み)T1(導線210の厚みの2倍、言い換えれば、導線群212の固定子コア202に接する面216と、導線群212の回転子に向いた面216との最短距離)の4分の3の範囲は非磁性部材(封止部材206)が占有していればよい。こうした突起部214の厚さ制限により、周方向に隣り合う導線群212(すなわち直線部208)の間において突起部214がティースとして機能せず、ティースによる磁路形成がなされないようになっている。突起部214は、周方向に並ぶ各導線群212の間ごとに全て設けられていなくてもよく、周方向に隣り合う少なくとも1組の導線群212の間に設けられていればよい。例えば、突起部214は、周方向において各導線群212の間の所定数ごとに等間隔で設けられているとよい。突起部214の形状は、矩形状、円弧状など任意の形状でよい。
また、固定子コア202の外周面では、直線部208が一層で設けられていてもよい。したがって、広義には、突起部214におけるヨーク204からの径方向の厚さ寸法は、直線部208における径方向の厚さ寸法の1/2よりも小さいものであればよい。
なお、回転軸の軸心を中心とし、かつヨーク204に径方向に隣接する直線部208の径方向の中心位置を通る仮想円を想定すると、突起部214は、その仮想円の範囲内においてヨーク204から突出する形状、換言すれば仮想円よりも径方向外側(すなわち回転子側)に突出しない形状をなしているとよい。
上記構成によれば、突起部214は、径方向の厚さ寸法が制限されており、周方向に隣り合う直線部208の間においてティースとして機能するものでないため、各直線部208の間にティースが設けられている場合に比べて、隣り合う各直線部208を近づけることができる。これにより、導体210aの断面積を大きくすることができ、固定子巻線201の通電に伴い生じる発熱を低減することができる。かかる構成では、ティースがないことで磁気飽和の解消が可能となり、固定子巻線201への通電電流を増大させることが可能となる。この場合において、その通電電流の増大に伴い発熱量が増えることに好適に対処することができる。また、固定子巻線201では、ターン部が、径方向にシフトされ、他のターン部との干渉を回避する干渉回避部を有することから、異なるターン部同士を径方向に離して配置することができる。これにより、ターン部においても放熱性の向上を図ることができる。以上により、固定子200での放熱性能を適正化することが可能になっている。
また、固定子コア202のヨーク204と、回転子の磁石ユニット(すなわち各磁石221,222)とが所定距離以上離れていれば、突起部214の径方向の厚さ寸法は、図15のH1に縛られるものではない。具体的には、ヨーク204と磁石ユニット42とが2mm以上離れていれば、突起部214の径方向の厚さ寸法は、図15のH1以上であってもよい。例えば、直線部208の径方向厚み寸法が2mmを越えており、かつ導線群212が径方向内外の2層の導線210により構成されている場合に、ヨーク204に隣接していない直線部208、すなわちヨーク204から数えて2層目の導線210の半分位置までの範囲で、突起部214が設けられていてもよい。この場合、突起部214の径方向厚さ寸法が「H1×3/2」までになっていれば、導線群212における導体断面積を大きくすることで、前記効果を少なからず得ることはできる。
また、固定子コア202は、図16に示す構成であってもよい。なお、図16では、封止部材206を省略しているが、封止部材206が設けられていてもよい。図16では、便宜上、磁石ユニット220及び固定子コア202を直線状に展開して示している。
図16の構成では、固定子200は、周方向に隣接する導線210(すなわち直線部208)の間に、導線間部材としての突起部214を有している。固定子200は、固定子巻線201が通電されると、磁石ユニット220の磁極の一つ(N極、またはS極)とともに磁気的に機能し、固定子200の周方向に延びる一部分3200を有する。この部分3200の固定子200の周方向への長さをWnとすると、この長さ範囲Wnに存在する突起部214の合計の幅(すなわち、固定子200の周方向への合計の寸法)をWtとし、突起部214の飽和磁束密度をBs、磁石ユニット220の1極分の周方向の幅寸法をWm、磁石ユニット220の残留磁束密度をBrとする場合、突起部214は、
Wt×Bs≦Wm×Br …(1)
となる磁性材料により構成されている。
なお、範囲Wnは、周方向に隣接する複数の導線群212であって、励磁時期が重複する複数の導線群212を含むように設定される。その際、範囲Wnを設定する際の基準(境界)として、導線群212の間隙218の中心を設定することが好ましい。例えば、図16に例示する構成の場合、周方向においてN極の磁極中心からの距離が最も短いものから順番に、4番目までの導線群212が、当該複数の導線群212に相当する。そして、当該4つの導線群212を含むように範囲Wnが設定される。その際、範囲Wnの端(起点と終点)が間隙218の中心とされている。
図16において、範囲Wnの両端には、それぞれ突起部214が半分ずつ含まれていることから、範囲Wnには、合計4つ分の突起部214が含まれている。したがって、突起部214の幅(すなわち、固定子200の周方向における突起部214の寸法、言い換えれば、隣接する導線群212の間隔)をAとすると、範囲Wnに含まれる突起部214の合計の幅は、Wt=1/2A+A+A+A+1/2A=4Aとなる。
詳しくは、本実施形態では、固定子巻線201の3相巻線が分布巻であり、その固定子巻線201では、磁石ユニット220の1極に対して、突起部214の数、すなわち各導線群212の間となる間隙218の数が「相数×Q」個となっている。ここでQとは、1相の導線210のうち固定子コア202と接する数である。なお、導線210が回転子の径方向に積層された導線群212である場合には、1相の導線群212の内周側の導線210の数であるともいえる。この場合、固定子巻線201の3相巻線が各相所定順序で通電されると、1極内において2相分の突起部214が励磁される。したがって、磁石ユニット220の1極分の範囲において固定子巻線201の通電により励磁される突起部214の周方向の合計幅寸法Wtは、突起部214(つまり、間隙218)の周方向の幅寸法をAとすると、「励磁される相数×Q×A=2×2×A」となる。
そして、こうして合計幅寸法Wtが規定された上で、固定子コア202において、突起部214が、上記(1)の関係を満たす磁性材料として構成されている。なお、合計幅寸法Wtは、1極内において比透磁率が1よりも大きくなりえる部分の周方向寸法でもある。また、余裕を考えて、合計幅寸法Wtを、1磁極における突起部214の周方向の幅寸法
としてもよい。具体的には、磁石ユニット220の1極に対する突起部214の数が「相数×Q」であることから、1磁極における突起部214の周方向の幅寸法(合計幅寸法Wt)を、「相数×Q×A=3×2×A=6A」としてもよい。
なお、ここでいう分布巻とは、磁極の1極対周期(N極とS極)で、固定子巻線201の一極対があるものである。ここでいう固定子巻線201の一極対は、電流が互いに逆方向に流れ、ターン部84で電気的に接続された2つの直線部208とターン部84からなる。上記条件みたすものであれば、短節巻(Short Pitch Winding)であっても、全節巻(Full Pitch Winding)の分布巻の均等物とみなす。
次に、集中巻の場合の例を示す。ここでいう集中巻とは、磁極の1極対の幅と、固定子巻線201の一極対の幅とが異なるものである。集中巻の一例としては、1つの磁極対に対して導線群212が3つ、2つの磁極対に対して導線群212が3つ、4つの磁極対に対して導線群212が9つ、5つの磁極対に対して導線群212が9つのような関係であるものが挙げられる。
ここで、固定子巻線201を集中巻とする場合には、固定子巻線201の3相巻線が所定順序で通電されると、2相分の固定子巻線201が励磁される。その結果、2相分の突起部214が励磁される。したがって、磁石ユニット220の1極分の範囲において固定子巻線201の通電により励磁される突起部214の周方向の幅寸法Wtは、「A×2」となる。そして、こうして幅寸法Wtが規定された上で、突起部214が、上記(1)の関係を満たす磁性材料として構成されている。なお、上記で示した集中巻の場合は、同一相の導線群212に囲まれた領域において、固定子200の周方向にある突起部214の幅の総和をAとする。また、集中巻におけるWmは「磁石ユニット220のエアギャップに対向する面の全周」×「相数」÷「導線群212の分散数」に相当する。
ちなみに、ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石、フェライト磁石といったBH積が20[MGOe(kJ/m^3)]以上の磁石ではBd=1.0強[T]、鉄ではBr=2.0強[T]である。そのため、高出力モータとしては、固定子コア202において、突起部214が、Wt<1/2×Wmの関係を満たす磁性材料であればよい。
また、後述するように導線210が外層被膜1210を備える場合には、導線210同士の外層被膜1210が接触するように、導線210を固定子コア202の周方向に配置しても良い。この場合は、Wtは、0又は接触する両導線210の外層被膜1210の厚さ、と看做すことができる。
図25や図16の構成では、回転子側の磁石磁束に対して不相応に小さい導線間部材(突起部214)を有する構成となっている。なお、回転子は、インダクタンスが低くかつ平坦な表面磁石型ロータであり、磁気抵抗的に突極性を有していないものとなっている。かかる構成では、固定子200のインダクタンス低減が可能となっており、固定子巻線201のスイッチングタイミングのずれに起因する磁束歪みの発生が抑制され、ひいては軸受の電食が抑制される。
なお、上記実施形態では、ヒートシンクに冷却水の流路が形成されていたが、これに限定されない。すなわち、ヒートシンクを冷却するための冷媒を流すことで、同じ効果を得ることができるため、低温の気体などを流してもよい。