JP7200316B2 - 金型の製造方法、樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
特に外装部品の場合には、加飾模様の不整が外観上の美観に大きな影響を与えるため、加飾模様の成形精度を高めるのが望ましいが、従来は視覚的に美観を損ねる段差が外観上目立つ位置に形成されてしまう場合があった。
これらの段差は樹脂成形品に転写されるが、視覚的に目立つ位置に段差が形成されると外観面での品質低下を招く。
複数の切削工具を順次に交換して母材を切削して前記金型の前記加飾用模様に対応する型面を形成する際に、前記切削工具の交換は、前記加飾用模様に含まれる凸部の一部に対応する凹部を切削するタイミングで行う、ことを特徴とする金型の製造方法である。
第一の実施形態として、原稿読取装置を備えたプリンターの外装部品に本発明を適用した例を示す。
図1は、本実施形態の樹脂成形品を外装部品として用いたプリンターの斜視図である。図1において、1は複合型プリンターであり、原稿カバー12や筐体10は、例えば黒色、白色の樹脂で成形されている。また、プリンターの上面や側面は、外観面11としてユーザーの目に触れる場所であるため、その外観は美的に優れていることが求められ、例えば原稿カバー12には加飾用の模様形状が形成された樹脂成形品が用いられる。
原稿カバー12の外観面には、図2に示した格子状の模様が形成されている。具体的には、外観面の基本形状を構成するベース面の上に、加飾用の模様として、ベース面から突出した凸部が格子状に設けられている。
第1ベース面30は、図中の左端に示された原稿カバー12の湾曲部の基本形状を構成するベース面である。また、第2ベース面31は原稿カバー12の上面のうち図中の左側の部分の基本形状を構成するベース面であり、第3ベース面32は原稿カバー12の上面のうち図中の右側の部分の基本形状を構成するベース面である。
各ベース面には、加飾用模様として突出した凸部33が、上方から見て格子状に設けられている。
次に、原稿カバー12の製造方法を説明する。
図中の41は、原稿カバー12の裏側、すなわち外観面ではない側の面形状を規定するコア側駒である。42は、原稿カバー12の表側、すなわち加飾用の模様形状を含む外観面の上側の面形状を規定するキャビティ駒である。43は、原稿カバー12の湾曲部の表側、すなわち加飾用の模様形状を含む外観面の湾曲部の面形状を規定するスライド駒である。44は金型の開閉をガイドする為のダイポスト、45は金型を閉じる際に加えられる圧力を受けるダイセットである。
次に、各駒から成る金型セットの構成について、さらに詳しく説明する。
図中の51は、原稿カバー12の裏側、すなわち外観面ではない側の面形状を規定するコア側駒である。52は、原稿カバー12の表側、すなわち加飾用の模様形状を含む外観面の上側の面形状を規定するキャビティ駒である。53は、原稿カバー12の湾曲部の表側、すなわち加飾用の模様形状を含む外観面の湾曲部の面形状を規定するスライド駒であり、矢印55はスライド駒53を離間させる際のスライド方向を示す。50は、金型キャビティ内に形成された原稿カバー12用の樹脂成形品である。
図7において、65はキャビティ駒52とスライド駒53の境界にある駒同士の合わせ面、66はコア駒51とスライド駒53の境界にある駒同士の合わせ面である。
また、スライド駒53には、樹脂成形品50の湾曲部の外観面に加飾用の凸状模様を形成するための型として凹部68が形成されている。凹部68の深さ613は、樹脂成形品50の外観面のベース面に対する凸状模様の高さと等しい。
図11は、キャビティ駒52を製造する際に使用する加工機であるマシニングセンタの構成を示す斜視図である。101はマシニングセンタであり、直線軸X、直線軸Y、直線軸Zの3軸で構成されている。102は切削工具を取り付け回転させることで切削加工を行う主軸、103は切削工具、104は被加工物すなわちキャビティ駒の母材である。105は被加工物104を切削工具103に対してY方向に移動させるためのテーブル、106は切削工具103を被加工物104に対してX方向に移動させるための主軸サドルである。107は切削工具103を被加工物104に対してZ方向に移動させるための主軸ガイド、108は切削加工で使用するX軸、Y軸、Z軸の各移動量、主軸の回転数、X軸、Y軸、Z軸の各移動速度、などの指令が記載されたNCデータである。
主軸102がNCデータ108に記載された回転数、各軸の送り速度、送り量で移動、回転することで被加工物104を、切削工具103を使用して切削加工することが可能となる。マシニングセンタ101の主軸102に取り付けられた切削工具103を用いて、主軸102を回転させながら被加工物104に対して相対的に移動を行うことにより、任意の三次元形状を加工することができる。
切削工具を交換すると、加工機の加工特性が変化するため、工具交換の前後で加工形状に差異が生じて段差部分が発生する。この加工形状の差を、以後の説明では工具間段差と呼ぶ場合がある。
そのため、第一の方法でも第二の方法でも、樹脂成形品のベース面となる部分を切削している途中で切削工具を交換することが多かった。そうすると、交換による加工特性の変化により、図13に示すように、特定のベース面の中に高さ90の工具間段差が形成されていた。
もちろん、キャビティ駒を製造する際に段差が生じないようにできればそれが望ましいものの、樹脂成形品のサイズが大きくなると、切削工具を交換せずにキャビティ駒を製造するのは、現実的には困難である。
本実施形態では、切削工具103の交換は、加飾用の模様形状の凸部33に対応する型面を加工するタイミングで行う。図12に示すように、本実施形態によれば、加飾用の模様形状の凸部に対応する凹部1933を境界として、ベース面を形成するための平坦面1131および平坦面1132が形成される。
言い換えれば、加飾用の模様形状の凸部933を挟んでその両側のベース面の高さに差があっても、視覚上は目立たないといえる。
尚、後述する実施例に示すように、美観の面から、凸部の高さ97に対する段差90の高さの割合は、60%以下であるのがよく、更に望ましくは50%以下であるのがよい。
図14に、実施例1の加飾用の模様形状を付加した樹脂成形品を製造するために用いる金型セットの上面図を示す。図中の111はキャビティ駒、110はスライド駒を示す。112は加飾用の模様形状の凸部、113は加飾用の模様形状の凸部頂点の横方向間隔、114は加飾用の模様形状の凸部頂点の縦方向間隔であり、ベース面の1つの区画の横と縦の幅に相当する。115はキャビティ駒111とスライド駒110の型合わせ面を示しており、このキャビティ駒111とスライド駒110を使用して成形を実施し樹脂成形品を得た時に、パーティング段差の発生する個所にあたる。
次に、金型を構成する駒のキャビティ表面および金型スライド表面の加工方法を説明する。
図11に示す3軸制御のマシニングセンタ101、主軸102、切削工具103からなる構成の加工装置を用いて、実施例の金型セットの駒と、後述する比較例の駒を作成した。切削加工で使用するX軸の移動量、Y軸の移動量、Z軸の移動量、主軸の回転数、X軸の送り速度、Y軸の送り速度、Z軸の移動速度、などの指令が記載されたNCデータ108に記載された指令を基に、被加工物104に対して切削加工を行って駒を作成した。
このエリア内に、エンドミル工具を使用して、切削加工で加飾用の模様形状を形成した。今回加工した加飾用の模様形状は、図14に示すように規則性をもって配置された格子状の模様形状で、横方向の線間隔113を5mm、縦方向の線間隔114を5mmとした。
使用した工具は、先端形状が円形なボールエンドミルであり、工具の形状が金型に十分に転写できる加工条件を選んで加工を実施した。
図17(a)および図17(b)は、実施例7、実施例9の樹脂成型品を製造するために使用する金型のキャビティ駒の上面図である。図中の141は金型のキャビティ駒であり、加飾用の模様形状が規則性をもって徐々に変化するように型形状を有している。図17(a)中の142は、キャビティ駒内の加飾パターンが加工される表面のベース面を加工するために1本目の工具を使用して加工された加工エリアである。また、143は、キャビティ駒内の加飾パターンが加工される表面のベース面を加工するために2本目の工具を使用して加工された加工エリアである。144は、キャビティ駒内の加飾パターンが加工される表面のベース面を加工するために使用した1本目の工具の加工エリア142と2本目の工具の加工エリア143の間の境界線すなわち工具間段差である。145は、ベース面に加工された1本目の工具の加工エリア142と2本目の工具の加工エリア143の間の工具間段差144上を通過し、徐々に変化しながら形成された加工飾用のパターン形状の凸部である。146は、ベース面に加工された加工飾用のパターン形状の凸部145の凸部中心の間隔を示す。
使用した工具は先端形状が円形なボールエンドミルである。加工に使用した加工条件は、工具の形状が金型に十分に転写できる条件を使用した。
製作したキャビティ駒とスライド駒を金型に組み込み、この金型を使用して成形を行い、樹脂成形品を得た。東レ製のPS材料で色は白色の樹脂を用いて射出成形を行い、金型キャビティ駒およびスライド駒に設けた加飾用の格子パターンを樹脂成形品に転写させた。成形機は、J180EL3射出成形機(日本製鋼所(株))を用い、金型のキャビティ駒表面およびスライド駒表面に加工した加飾用の格子パターンが十分に転写できるように成形条件を設定して成形した。
工具間段差を検証する実施例においては、各実施例の工具間段差144は、実施例7が0.025mm、実施例9が0.05mmであった。また、図9のパターン高さ97は、実施例7が0.05mm、実施例9が0.1mmであった。
図15に、パーティング段差の比較例の樹脂成型品を作成するために用いた金型セットの一部断面を示す。比較例1は、パーティング段差が、加飾用のパターンの凸部ではなくベース面に形成されるような形態である。図中の121は比較例1の樹脂成形品、122はコア駒、123はキャビティ駒、124はスライド駒、125はキャビティ駒123とスライド駒124の間にある型合わせ面である。また、126はスライド駒124のスライド方向、127はキャビティ駒123とスライド駒124の間に発生するパーティング段差、128は格子形状のパターン形状の凸部、129は格子形状の線間隔を示す。
比較例1では、格子形状の線間隔129は実施例と同じ5mmとした。
また、比較例2として、図8に示した金型を用いて樹脂を成形し、スライド駒とキャビティ駒の境界付近の表面に加飾用の模様のパターンが存在しない樹脂成形品70を用意した。
射出成形によって得られた実施例1~13と比較例1~4の樹脂成形品を、通常外観判定を実施している熟練者5名が評価し、キャビティ駒とスライド駒の間に発生するパーティング段差と工具間段差が目視で確認できるかを5段階で評価して比較した。段差を確認しにくいほど、高い評価点を与えるようにした。評価基準は、「×」は5名の評価結果の平均が2以下、「○」は5名の評価結果の平均が3~4、「◎」は5名の評価結果の平均が5とした。
評価結果を以下の表1に示す。
また、実施例5~9および12~13の工具間段差は、段差が加飾用の模様形状の凸部と一体化するため、工具間段差の高低差が大きくても比較例3~4に比べて視認されにくいことがわかる。
以上説明したように、本発明は、加飾模様が形成された樹脂成形品に生じる段差が、視覚上目立たない位置に形成されるようにする効果を奏する。
尚、本発明の実施は、上述した実施形態および実施例に限られるものではなく、適宜変更したり、組み合わせたりすることが可能である。
Claims (11)
- 規則性を有して配置された凸部を含む加飾用模様が形成された樹脂成形品を製造するために用いる金型の製造方法において、
複数の切削工具を順次に交換して母材を切削して前記金型の前記加飾用模様に対応する型面を形成する際に、前記切削工具の交換は、前記加飾用模様に含まれる凸部の一部に対応する凹部を切削するタイミングで行う、
ことを特徴とする金型の製造方法。 - 複数の凸部を含む加飾用模様が形成された樹脂成形品を製造するために用いる金型の製造方法において、
複数の切削工具を順次に交換して母材を切削して前記金型の前記加飾用模様に対応する型面を形成する際に、前記切削工具の交換は、前記加飾用模様に含まれる凸部の一部に対応する凹部を切削するタイミングで行う、ことを特徴とする金型の製造方法。 - 前記切削工具の交換により、段差が生じることを特徴とする請求項1または2に記載した金型の製造方法。
- 前記タイミングは、前記凹部の加工直前から前記凹部の加工直後までの間であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載した金型の製造方法。
- 前記凹部の加工直後から、前記凹部の次に加工される凹部の加工直前までは、前記切削工具の交換は行わないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載した金型の製造方法。
- 前記凸部の高さに対する前記段差の大きさの割合が60%以下である、
ことを特徴とする請求項3に記載した金型の製造方法。 - 前記凸部の配置の規則性とは、同一の形状の凸部を同一のピッチで繰り返し配置することである、
ことを特徴とする請求項1に記載した金型の製造方法。 - 前記凸部の配置の規則性とは、凸部の面積および/または形状および/または配列ピッチが、所定の変化率で徐々に変化していくよう配置することである、
ことを特徴とする請求項1に記載した金型の製造方法。 - 前記凸部は、所定の間隔で配置された複数のライン状の凸部である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載した金型の製造方法。 - 前記凸部は、格子状に形成された凸部である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載した金型の製造方法。 - 請求項1乃至10のいずれか1項に記載した金型の製造方法によって製造された金型を用い、
前記金型を含む複数の金型で形成されたキャビティに樹脂を注入することによって、樹脂成形品を製造することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
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