JP7199691B2 - カテプシンeに強く結合し活性化するペプチド - Google Patents

カテプシンeに強く結合し活性化するペプチド Download PDF

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Description

本発明は、新規ペプチドとその使用に関する。より具体的には、酵素活性に影響を与えるペプチド、該ペプチドを含む医薬、および該ペプチドを利用した酵素の検出方法に関する。
カテプシンE(以下、CEと略記することがある)は細胞内アスパラギン酸プロテアーゼであり、免疫系細胞、消化系上皮細胞および皮膚組織など特定の細胞で主に発現する(非特許文献1)。本酵素は正常皮膚では角化細胞(ケラチノサイト)および毛包の内毛根鞘の領域に存在し、また免疫系細胞のマクロファージなどの抗原提示細胞では主としてエンドソームなどの細胞内小器官に存在する(特許文献1)。
カテプシンE活性の低下により、悪性腫瘍や免疫アレルギー疾患などが生じることが報告されている。川久保らは、カテプシンEはマウス乳腺におけるシグナル伝達、発生、分化および増殖に関連するタンパク質の発現を調節すること、カテプシンEの欠損はマウス乳腺組織において前がん状態を誘発すること (非特許文献2)、さらには血清カテプシンE活性が患者の好ましい予後結果と有意に相関していること(非特許文献3)を報告している。この研究は、カテプシンE発現の抑制が乳房発がんリスクを高め、乳がんの予後不良に結びつくことを示している。加えて、カテプシンE欠損マウスは無菌環境下で飼育しても全く異常を示さないが、通常環境下に移すとアトピー性皮膚炎様症状(AD)を示すことが報告されており、カテプシンEの発現の減少は、ADを有するヒトおよびADマウスモデルNC/Ngaの両方の赤血球においても観察されている(非特許文献4)。一方、臨床的意義は議論の余地があるものの、特定のヒトがんのバイオマーカーとしてのカテプシンEの有用性を示唆する報告がある(非特許文献5~9)。しかし、この相反する報告は、異なるタイプのがん細胞における非機能的カテプシンEの発現レベルの差異から生じていると考えられる(非特許文献3)。
カテプシンEは、強力な抗がん作用を有するプロテアーゼである。マウス実験ではカテプシンEの発現レベルが腫瘍抑制の程度と正に相関することがわかっており、カテプシンEは複数の経路を介して強力な腫瘍増殖と転移を抑制すると考えられている(非特許文献10)。第1にインビトロでカテプシンEががん細胞表面からアポトーシス誘導分子TRAILを特異的に切断遊離し、がん細胞表面のデス受容体に結合することによってがん細胞特異的アポトーシスが誘導されることが明らかになっている(非特許文献10)。さらにはカテプシンEが、腫瘍関連血管新生の抑制に関与していることや、腫瘍周辺部におけるマクロファージの浸潤増加と活性化亢進を誘導することが報告されている(非特許文献10)。また、カテプシンEは、ヒト前立腺がん細胞の増殖停止とアポトーシスを誘導することも報告されている(非特許文献11)。最近の研究では、カテプシンE発現の血清レベルと臨床病理学的パラメータとの間の相関分析により、タンパク質レベルではなく活性レベルが乳がんステージおよび進行と負に関連しているとの報告がある(非特許文献3)。
したがって、カテプシンEの発現/活性を増加させる薬剤が、がん治療に役立つことが期待されている。特に、ペプチド創薬の標的としてカテプシンEは非常に興味深い。創薬で現在主流となっている抗体医薬の問題点として、抗体の分子量が大きいことや合成コストが高いことなどが挙げられる。一方、ペプチドは、抗体の100分の1ほどのサイズであり低コストで合成できること、分子改変や化学修飾が容易であるためドラッグデリバリーシステムへの応用や分子ミミック化によって標的分子の生理活性の調節が可能であるといったメリットがある。
カテプシンEに特異的に結合し、その活性について阻害作用を有するペプチドが報告されている(特許文献2)。このペプチドはin-vitro-virus(IVV)法を使用した、分子淘汰操作により作成された。
一方、酵素に特異的に結合するペプチド(ペプチドアプタマー)の開発において、酵素活性阻害作用を有するものに比較し、酵素活性化作用を有するペプチドの開発は困難である。カテプシンE活性化ペプチドは、高速化された試験管内分子進化法である発達ライブラリー法を用いてライブラリーを進化させ、SFリンク法(非特許文献12)を使用して酵素活性機能について淘汰することにより開発されている(非特許文献13および14)。ビヤニらは、一次ライブラリーおよび二次ライブラリーとして、中性環境下でカテプシンEを活性化する8から16アミノ酸残基長のペプチドの開発を報告した(非特許文献13)。小松らは、8アミノ酸残基長の2つのペプチドをリンカーで連結した三次ライブラリーの作成を報告している(非特許文献14)。
さらには、カテプシンEについて腫瘍マーカーとしての利用が提案されている。被検試料中のカテプシンEの量を測定し、測定結果と乳がんの可能性または乳がんの予後とを関連付けることにより乳がんを検出する方法が報告されている(特許文献3)。カテプシンEの測定が、カテプシンEの基質、カテプシンEに対する抗体、またはカテプシンEに対して特異的に親和性を有するペプチド性化合物(アプタマー)を用いて行われてもよいと報告されている(特許文献3)。カテプシンEに特異的に結合するペプチドを用いてカテプシンEの量を測定する方法が報告されている(特許文献4及び非特許文献15)。さらには、カテプシンEタンパク質あるいはカテプシンEタンパク質の発現促進作用(インターフェロンγまたはリポ多糖)を有する物質を含む、老化現象を改善、防止または遅延させるための医薬組成物が報告されている(特許文献1)。
特開2011-105686 特開2007-332085 特開2011-137685 特開2011-115146
Yamamoto K, Kawakubo T, Yasukochi A, Tsukuba T, Emerging roles of cathepsin E in host defense mechanisms, Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Proteins and Proteomics, Volume 1824, Issue 1, 2012, Pages 105-112. Kawakubo T. et al. (2008) Gene expression profiling of mammary glands of cathepsin E-deficient mice compared with wild-type littermates. Biochimie, 90, 396-404. Kawakubo T, Yasukochi A, Toyama T, et al. Repression of cathepsin E expression increases the risk of mammary carcinogenesis and links to poor prognosis in breast cancer. Carcinogenesis. 2014 Mar;35(3):714-26. Tsukuba T, Okamoto K, Okamoto Y et al. Association of cathepsin E deficiency with development of atopic dermatitis. J Biochem. 2003 Dec;134(6):893-902. Ullmann,R. et al. (2004) Protein expression profiles in adenocarcinomas and squamous cell carcinomas of the lung generated using tissue microarrays. J. Pathol., 203, 798-807. Blaveri,E. et al. (2005) Bladder cancer outcome and subtype classification by gene expression. Clin. Cancer Res., 11, 4044-4055. Mota,F. et al. (1997) Cathepsin E expression by normal and premalignant cervical epithelium. Am. J. Pathol., 150, 1223-1229. Caruso,M. et al. (2009) Over-expression of cathepsin E and trefoil factor 1 in sessile serrated adenomas of the colorectum identified by gene expression analysis. Virchows Arch., 454, 291-302. Uno,K. et al. (2000) Clinical significance of cathepsin E in pancreatic juice in the diagnosis of pancreatic ductal adenocarcinoma. J. Gastroenterol. Hepatol., 15, 1333-1338. Kawakubo, T, Yasukochi, A, Nakamura S, and Yamamoto, K. Cathepsin E as a potent anticancer protease. J. Oral Biosci.53(2):128-136, 2011。 Kawakubo T, Okamoto K, Iwata JI, et al. Cathepsin E prevents tumor growth and metastasis by catalyzing the proteolytic release of soluble TRAIL from tumor cell surface. Cancer Research. 2007;67(22):10869-10878. Naimuddin M, Kitamura K, Kinoshita Y, et al. Selection-by-function: efficient enrichment of cathepsin E inhibitors from a DNA library. Journal of Molecular Recognition. 2007;20(1):58-68. Biyani M, Futakami M, Kitamura K, et al. In vitro selection of cathepsin E-activity-enhancing peptide aptamers at neutral pH. International Journal of Peptides.International Journal of Peptides Volume 2011 (2011), Article ID 834525, 10 pages Komatsu M, et al., "Peptide-Modulated Activity Enhancement of Acidic Protease Cathepsin E at Neutral pH," International Journal of Peptides, vol. 2012, Article ID 316432, 7 pages, 2012. Tung et al.,"1 Peptide aptamer-modified single walled carbon nanotube-based transistors for high-performance biosensors Scientific Reports 7:17881 DOI:10.1038 (2017).
カテプシンEの活性を促進するペプチドであって、従来のペプチドよりも高い活性化機能を有するペプチド、および/または従来のペプチドよりもカテプシンEに対し高い結合親和性を有するペプチドを提供することを課題とする。加えて、上記ペプチドを用いたカテプシンEの酵素活性測定方法およびカテプシンE量の測定方法の提供を課題とする。さらには、該カテプシンEの活性を促進するペプチドを含むがん治療用医薬の提供を課題する。
本発明者らは、三次ライブラリーを基礎として、それを独自のアプローチによりさらに進化させて、三次ライブラリーに属する最高の活性化力を有するカテプシンE活性化ペプチドよりも一段と高い活性化機能を有するペプチドを見出した。また、このペプチドを含むがん治療用医薬を見出した。
上記三次ライブラリーに属するペプチドアプタマーは、検出感度が解離定数で数十nMである。一定の強度を持つとはいえ、生物試料中(例えば血液中)のカテプシンEの濃度(数nM以下)を測定するには精度的に十分ではなかった。今回取得したペプチドアプタマーは十分な精度で、血液中の低濃度カテプシンEを検出することが期待される。
本発明は以下の通りである。
[1] 式1:X1-C-X3-X4-X5-D-X7-X8-V-E-V-Q-X13-E-V-A-E-A-X19-X20-X21-X22-L-X24-L-X26-P-G-X29
(式1中、X1はG、L、N、AまたはVであり、
X3はPまたはTであり、
X4はC、HまたはYであり、
X5はI、A、EまたはVであり、
X7はFまたはLであり、
X8はKまたはMであり、
X13はVまたはMであり、
X19はL、T、QまたはPであり、
X20はL、S、Q、EまたはPであり、
X21はS、TまたはAであり、
X22はAまたはRであり、
X24はSまたはHであり、
X26はSまたはHであり、
X29はWまたはSである)(配列番号1)のアミノ酸配列を有し、但しX8がMであり且つX29がSであるアミノ酸配列を除く、ペプチド。
[2] 上記式1のX8がKである(配列番号2)、[1]に記載のペプチド。
[3] 上記式1のX8がMであり、X29がWである(配列番号3)、[1]に記載のペプチド。
[4] 上記式1中、
X1はGまたはLであり、
X3はPであり、
X4はCまたはHであり、
X5はIまたはAであり、
X7はFであり、
X19はLであり、
X20はL、S、QまたはEであり、
X21はSまたはTであり、
X22はAである(配列番号4~6)、
[1]~[3]のいずれか一に記載のペプチド。
[5] カテプシンEの元の酵素活性を100%とすると、三次ライブラリーで得られたペプチド(CEAP3)よりも、カテプシンEの酵素活性をさらに約20%以上、上昇させる、[1]~[5]のいずれか一に記載のペプチド。
[6] カテプシンEへの結合に対する解離定数(KD)は1nM以下である、[1]~[5]のいずれか一に記載のペプチド。
[7] [1]~[6]のいずれか一に記載のペプチドを含む、がんを治療するための医薬。
[8] 試料中のカテプシンEの酵素活性測定方法であって、
(a)固相化されたペプチドアプタマーと試料を混合し、固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEを得る工程、
(b)固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEと、標識されたカテプシンE基質を接触させる工程、および
(C)カテプシンEによるカテプシンE基質の切断を検出してカテプシンE酵素活性を求める工程
を含み、上記ペプチドアプタマーが[1]~[6]のいずれか一に記載のペプチドである、方法。
[9] 試料中に含まれるカテプシンE量の測定方法であって、
(a)固相化されたペプチドアプタマーと試料を混合し、固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEを得る工程、および
(b)カテプシンEが結合したペプチドアプタマーを検出し、試料中のカテプシンE量を求める工程
を含み、上記ペプチドアプタマーが[1]~[6]のいずれか一に記載のペプチドである、方法。
[10] カーボンナノチューブ電界効果型トランジスタ法を用いて実施される[9]に記載の方法であって、
上記工程(a)において、固相化されたペプチドアプタマーは、電極に設置されたカーボンナノチューブに固相化されたペプチドアプタマーであり、そして
上記工程(b)は、上記ペプチドアプタマーとカテプシンEの結合前後において、上記電極に生じる標準電極に対する電位差を測定することを含む工程である、方法。
本発明のペプチドは従来のペプチドと比較してカテプシンEに対する結合親和性が高い。したがって、本発明のペプチドは、ペプチドアプタマーとして利用して試料中の低濃度カテプシンEを検出することができる。本発明のペプチドは従来のペプチドと比較して、カテプシンEに対する結合親和性が高くかつカテプシンE活性を促進する作用がより高い。したがって、本発明のペプチドは、ペプチドアプタマーとして利用して、試料中のカテプシンEの酵素活性を高い感度により測定することができる。本発明のペプチドは従来のペプチドと比較してカテプシンE活性を促進する作用がより高い。したがって、本発明のペプチドは、がん細胞にアポトーシスを誘導する働きをより増強することができ、がん治療への応用が期待される。
点置換体四次ライブラリー用のコンストラクト(P109)(配列番号45)。Variable領域(382から468番目の塩基)の1コドンにつき元のアミノ酸を除く19種類のアミノ酸に変異が加わるように設計されており、理論上19×19=361種類の変異体が含まれたライブラリー。 Selection-by-Function導入型cDNAディスプレイを用いたin vitro Selectionの概要図。 点置換体四次ライブラリー淘汰産物のゲル電気泳動図。レーン1:100bpラダー、レーン2:カテプシンEに対して結合のないもの、レーン3:Selection bufferによる洗浄1、レーン4:Selection bufferによる洗浄2、レーン5:Selection bufferによる洗浄3、レーン6:カテプシンE酵素反応産物、レーン7:wash bufferによる洗浄、レーン8:溶出物(各524bpのバンド)。 点置換体四次ライブラリー淘汰産物のアミノ酸配列。リンカー領域は影をつけて示した。アミノ酸点置換を□(囲み文字)で示す。アミノ酸配列の横の数字は、得られたコピー数である。 点置換体ペプチドのカテプシンE活性促進度合。縦軸の標記は活性促進度合であり、CEの活性としては、この数値に100%を加えたものである。エラーバーは標準偏差(実験3回)を示す。 加算的点置換体四次ライブラリーのゲル電気泳動結果。レーン1:100bpラダー、レーン2:参照バンド(545bp)、レーン3:加算的点置換体ライブラリー(524bp)。レーン3は、後に転写、ライゲーション、翻訳、淘汰を行う際に必要な配列を含めた524bpのバンドを表している。 加算的点置換体四次ライブラリーのダイレクトシークエンス法による塩基配列波形。 淘汰前後での加算的点置換体四次ライブラリーの塩基配列波形。淘汰前後のダイレクトシークエンス法による塩基配列波形を上下に並べて示す。 加算的点置換体四次ライブラリー淘汰産物のアミノ酸配列。太字+下線で示した残基は、表3のオリゴマーで導入され、作製された変異体ライブラリーを用いて淘汰された結果、変異が確認された部位を示す。下線のみを記した残基はライブラリー構築時における断片ごとのハイブリダイゼーションからの伸長反応の際のエラーによるものであると考えられる変異を含む部位を示す。アミノ酸配列の横の数字は、得られたコピー数である。 加算的点置換体ペプチドのカテプシンE活性促進度合。活性評価は、加算的点置換体四次ライブラリー淘汰産物13種類と、点置換体ライブラリー淘汰の際にカテプシンEに対する活性を調べていないM8K変異体ペプチドを含む。縦軸の標記は活性促進度合であり、CEの活性としては、この数値に100%を加えたものである。エラーバーは標準偏差(実験3回)を示す。
以下に記載する本発明の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
(定義)
本明細書中の「カテプシンE」は、カテプシンEタンパク質を意味し、本明細書ではCatEあるいはCEと記載することがある。
本明細書中の「ペプチドアプタマー」は、特定の分子と特異的に結合するペプチドを指す。本明細書中で使用する場合、「ペプチドアプタマー」という言葉は、特定の分子がもつ生物学的活性を抑制するか促進するかを問わず、または特定の分子がもつ生物学的活性に影響を及ぼすか及ぼさないかを問わず、特定の分子に特異的に結合するペプチドを意味する。本明細書において、「ペプチドアプタマー」を単にアプタマーと記載する場合がある。
本明細書中の「カテプシンE活性化ペプチド(CEAP)」とは、直接的または間接的に、実質的に完全にまたは部分的に、カテプシンEの生物学的活性を誘導、促進、または増強することが可能である任意のペプチドを含む。通常、カテプシンEは酸性pHで機能するが、本明細書では中性pHで機能するカテプシンEの第2の活性に対して、それに有効な基質を用いて淘汰(スクリーニング)しており、本発明のペプチドは中性pH環境下でカテプシンEを活性化する。
本明細書中の「CEAP3」は三次ライブラリー淘汰産物であり、アミノ酸配列「GCPCIDFMVEVQVEVAEALLTALSLSPGS」(配列番号7)を有する。ペプチド非存在下でのカテプシンEの活性を100%とすると、CEAP3の存在下でカテプシンEの活性は150%である。なお、非特許文献14では、ペプチド非存在下と比較して、ペプチド存在下で、カテプシンEの活性を175%や186%にすることができるペプチドが得られている。
本明細書中の式1、2または3の「X1」「X3」「X4」「X5」「X7」「X8」「X13」「X19」「X20」「X21」「X22」「X24」「X26」「X29」は、任意のアミノ酸残基を示し、Xに付された番号は便宜上、式1に記載のアミノ酸配列のN末端側からの位置を示す。なお、例えば、N末端から2番目のアミノ酸残基は式1ではX2とは記載せずC(cys)と記載している。本発明のペプチドはN末端側に任意のアミノ酸残基が付加されてもよいので、その場合はX1が1番目のアミノ酸残基とはならない。
用語「ペプチド」は、一般に、ペプチド(アミド)結合によって結合したアミノ酸の連続する比較的短い配列を指す。典型的には、必ずしもそうではないが、ペプチドは、約2から約50個のアミノ酸、約4から40個のアミノ酸、または約10から30個のアミノ酸の長さを有する。
用語「ポリペプチド」は、一般に、ペプチドの長い形態を指すが、「ポリペプチド」と「ペプチド」は、本明細書の幾つかの文脈では互換的に使用することができる。
用語「アミノ酸」および「残基」は、本明細書において互換的に使用される。
ペプチドまたはポリペプチドの「領域」は、典型的には、2以上のアミノ酸の連続配列である。少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15の連続するアミノ酸からなる。
本明細書中「ライブラリー」とは、構造が異なる分子の群を意味する。本発明のライブラリーは、mRNAディスプレイライブラリーやcDNAディスプレイライブラリー等を含む。ライブラリー中から特定の性質を有する分子を選択する工程を、本明細書では特に分子の機能活性により選択しているので「淘汰」という。本明細書において「淘汰」と「選択」は互換的に使用される。
(ペプチド)
本発明のペプチドは、前述のように、三次ライブラリーの淘汰産物を基礎として、それを独自のアプローチによりさらに進化させて、三次ライブラリーの淘汰産物(CEAP3を含む)よりも一段と高い活性化機能を有するペプチド群を見出したことを基礎とする。さらなる進化の手法は、第1段階が、配列中に点置換を導入することによる四次ライブラリー(第1段階)の作成であり、第2段階は、そのライブラリーを淘汰して得られた優位変異体(元より活性の高い変異体)の配列情報から、活性を向上させると考えられる点置換を選び、それらを任意の組合せで複数含む変異体(複数点置換変異体)の分子ライブラリー(加算的点置換体ライブラリー)、すなわち、四次ライブラリー(第2段階)を作製し、その四次ライブラリーの淘汰による、カテプシンEに対する高活性化機能を有するペプチド群の選択である。これら2つの段階において、ペプチドアプタマーが高活性化機能を有するために適したアミノ酸配列に関する知見を得て、下記式1の本発明のペプチドに到達した。
第1段階の点置換体による四次ライブラリーの作成においては、図4に示すアミノ酸配列および図5に示すカテプシンE活性促進度合から、CEAP3よりも一段と高い活性化機能を有するペプチドとして点置換L20EおよびT21Sを有するペプチドを見出した。さらにこれらの結果は、2つのアプタマー領域において、アミノ酸置換が入っても、活性が大きく低下しない部位とアミノ酸の種類を明らかにしている。
さらに、第2段階の加算的点置換体四次ライブラリーの淘汰においては、図9に示すアミノ酸配列および図10に示すカテプシンE活性促進度合から、カテプシンEに対する高活性化機能を有するペプチド群として、点置換M8Kおよび/またはS29Wを有するペプチド群を見出した。さらにこれらの結果は、2つのアプタマー領域において、アミノ酸置換が入ってもペプチドが有する生物学的活性が大きく低下しない位置とそのアミノ酸の種類、および活性が低下する傾向がある位置とそのアミノ酸の種類を明らかにしている。
これら2段階の実験結果から、カテプシンE活性促進を格段に向上させるのは、M8KおよびS29Wの一方または両方であり、第1段階において見出されたL20EおよびT21Sは、カテプシンE活性促進の格段の向上には寄与していないことが分かるとともに、しかしこれら置換前後のいずれのアミノ酸であっても、M8KおよびS29Wの一方または両方が含まれるペプチドにおいてはカテプシンE活性促進の格段の向上が得られることが分かる。
同様にこれらの2つの実験結果に基づいて、本発明では、以下の式1を定めた。
式1:X1-C-X3-X4-X5-D-X7-X8-V-E-V-Q-X13-E-V-A-E-A-X19-X20-X21-X22-L-X24-L-X26-P-G-X29
(X1はG、L、N、AまたはVであり、
X3はPまたはTであり、
X4はC、HまたはYであり、
X5はI、A、EまたはVであり、
X7はFまたはLであり、
X8はKまたはMであり、
X13はVまたはMであり、
X19はL、T、QまたはPであり、
X20はL、S、Q、EまたはPであり、
X21はS、TまたはAであり、
X22はAまたはRであり、
X24はSまたはHであり、
X26はSまたはHであり、
X29はWまたはSである)(配列番号1)のアミノ酸配列を有し、ただしX8がMであり且つX29がSであるアミノ酸配列を除く、ペプチド。
本発明の好ましい第一実施態様では、式1におけるX8はKである。
2段階の実験結果において示すX8がKであるペプチドは、いずれもCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を示し、特に、MP04、02、13、01、03、10、09、11は、有意差を持ってCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を示す(図10参照)。また、MP07およびMP06も、CEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有するが有意差を持つものではない。前者の結果から、MP04、02、13、01、03、10、09、11が有するX8以外のアミノ酸置換は、X8がKであることによって得られるカテプシンE活性促進効果を妨げるものではなく、これらの置換を有するペプチドは、MP04、MP03とほぼ同等のカテプシンE活性促進効果を奏する。MP07およびMP06が有するアミノ酸置換は、MP03と比べてカテプシンE活性促進効果をやや低下させるが、CEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を示す。MP07およびMP06は、いずれもX29が(Wではなく)Sであり、MP02の結果との対比からは、MP07およびMP06においてX29がWであるペプチドは、MP07およびMP06よりはさらに高いカテプシンE活性促進効果であって、有意差を持ってCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を示すであろうことが推察される。
本発明の好ましい第二の実施態様では、式1におけるX29はWである。
MP12および05の結果から、X8がKではなくMであるペプチドについては、X29がSではなくWであっても、大幅なカテプシンE活性促進効果は得られないが、CEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有する(図10参照)。ただし、有意差を持つものではない。X8がKであり、且つX29がWであるペプチドが、より高いカテプシンE活性促進効果を有するという観点から好ましい。
X8およびX29以外のアミノ酸で、置換可能であることが実験的に確認されたアミノ酸は、X1、X3、X4、X5、X7、X13、X19、X20、X21、X22、X24、X26である。
X1はG、L、N、AまたはVである。X1がGまたはLであるペプチドは、第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X1がN、AまたはVであるペプチドは、第1段階の結果からペプチドが有するカテプシンE活性促進効果を実質的に低下させないことは明らかであり、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03とほぼ同様のカテプシンE活性促進効果を奏する蓋然性が高いことが予想される。ここで、MP02は点置換M8K、V13MおよびS29Wを有するが他の置換を含まないペプチドであり、MP03は点置換M8KおよびV13Mを有するが他の置換を含まないペプチドである。MP02およびMP03は高いカテプシンE活性促進効果を示す(図10)。
X3はPまたはTである。X3がPであるペプチドは、第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X3がTであるペプチドとしては、MP08(X8=M(Kではない)、X29=S(Wではない))のみの結果であるが、大幅なカテプシンE活性促進効果の低下は見られないことから、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏するものと予想される。
X4はC、HまたはYである。X4がCまたはHであるペプチドは、第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X4がYであるペプチドは、第1段階の結果からペプチドが有するカテプシンE活性促進効果を実質的に低下させないことは明らかであり、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03とほぼ同様のカテプシンE活性促進効果を示す蓋然性が高いことが予想される。
X5はI、A、EまたはVである。X5がI、A、EまたはVであるペプチドは、第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X5がAであるペプチドは、第1段階の結果からペプチドが有するカテプシンE活性促進効果を実質的に低下させないことも示されており、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏するものと予想される。
X7はFまたはLである。X7がFであるペプチドは第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X7がLであるペプチドとしては、MP08(X8=M(Kではない)、X29=S(Wではない))のみの結果であるが、大幅なカテプシンE活性促進効果の低下は見られないことから、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏するものと予想される。
X13はVまたはMである。X13がVまたはMであるペプチドは第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X13がMであるペプチドは、第1段階の結果からペプチドが有するカテプシンE活性促進効果を実質的に低下させないことも示されており、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏する。
X19はL、T、QまたはPである。X19がL、TまたはQであるペプチドは第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X19がPであるペプチドは第1段階の結果からペプチドが有するカテプシンE活性促進効果を実質的に低下させないことが示されており、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏するものと予想される。
X20はL、S、Q、EまたはPである。X20がL、SまたはQであるペプチドは第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X20がEまたはPであるペプチドは第1段階の結果からペプチドが有するカテプシンE活性促進効果を実質的に低下させないことが示されており、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏するものと予想される。
X21はS、T、またはAである。X21がSまたはTであるペプチドは第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X21がSであるペプチドは、第1段階の結果からペプチドが有するカテプシンE活性促進効果を実質的に低下させないことも示されており、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏するものと予想される。X21がAであるペプチドとしては、MP08(X8=M(Kではない)、X29=S(Wではない)のみの結果であるが、大幅なカテプシンE活性促進効果の低下は見られないことから、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏するものと予想される。
X22はAまたはRである。X22がAであるペプチドは第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X22がRであるペプチドは、第1段階の結果からペプチドが有するカテプシンE活性促進効果を実質的に低下させないことも示されており、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏するものと予想される。
X24はSまたはHである。X24がSまたはHであるペプチドは第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。
X26はSまたはHである。X26がSであるペプチドは第2段階の結果からCEAP3より高いカテプシンE活性促進効果を有することが明らかである。X26がHであるペプチドは、第1段階の結果からペプチドが有するカテプシンE活性促進効果を実質的に低下させることがないことも示されており、X8がKであり、X29がSまたはWであるペプチドにおいて、MP02およびMP03に近いカテプシンE活性促進効果を奏するものと予想される。
本発明の好ましいペプチドは、上記式1中のX8がKである場合にはX29がWまたはSであり、且つX8がMである場合にはX29がWであるアミノ酸配列を有する。本発明の別の好ましいペプチドは、上記式1中のX29がWである場合にはX8がKまたはMであり、且つ上記式1のX29がSである場合にはX8がKであるアミノ酸配列を有する。
本発明のペプチドは、好ましい実施態様において、式1中、X1がGまたはLであり、X3がPであり、X4がCまたはHであり、X5がIまたはAであり、X7がFであり、X8がMまたはKであり、X13がVまたはMであり、X19がLであり、X20がL、S、QまたはEであり、X21がSまたはTであり、X22がAであり、X24がSまたはHであり、X26がSまたはHであり、X29がWまたはSであるアミノ酸配列を有し、但しX8がMであり且つX29がSであるアミノ酸配列を除くペプチドである。
本発明のペプチドは、好ましい実施態様において、式1中、X1がGまたはLであり、X3がPであり、X4がCまたはHであり、X5がIまたはAであり、X7がFであり、X8がKであり、X13がVまたはMであり、X19がLであり、X20がL、S、QまたはEであり、X21がSまたはTであり、X22がAであり、X24がSまたはHであり、X26がSまたはHであり、X29がWまたはSであるアミノ酸配列を有するペプチドである。
本発明のペプチドは、好ましい実施態様において、式1中、X1がGまたはLであり、X3がPであり、X4がCまたはHであり、X5がIまたはAであり、X7がFであり、X8がKであり、X13がVまたはMであり、X19がLであり、X20がL、S、またはQであり、X21がSまたはTであり、X22がAであり、X24がSまたはHであり、X26がSであり、X29がWまたはSであるアミノ酸配列を有するペプチドである。
本発明のペプチドは、好ましい実施態様において、式1中、X1がGであり、X3がPであり、X4がCであり、X5がIまたはAであり、X7がFであり、X8がKであり、X13がVまたはMであり、X19がLであり、X20がLであり、X21がSまたはTであり、X22がAであり、X24がSまたはHであり、X26がSであり、X29がWであるアミノ酸配列を有するペプチドである。
本発明のペプチドは、上記式1のアミノ酸配列を有し、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50アミノ酸残基からなる。
本発明のペプチドは、上記式1のアミノ酸配列のN末端側にN個(ここでNは、1以上21以下の整数)のアミノ酸をさらに含み、そして/または、C末端側にM個(ここでMは、1以上21以下の整数)のアミノ酸をさらに含むことができる。
本発明のペプチドは、第1のアプタマー領域として、式2:X1-C-X3-X4-X5-D-X7-X8(式2中、X1はG、L、N、AまたはVであり、X3はPまたはTであり、X4はC、HまたはYであり、X5はI、A、EまたはVであり、X7はFまたはLであり、またはX8はKまたはMである)(配列番号8)のアミノ酸配列を含む。すなわち、第1のアプタマー領域は、少なくとも8アミノ酸残基の長さであり、以下の表の各位置(X1からX8)に記載したアミノ酸種類の組み合わせで構成されたアミノ酸配列の全てを含む。
Figure 0007199691000001
本発明のペプチドの第1のアプタマー領域の例としては、GCPCIDFK(配列番号9)、GCPCADFK(配列番号10)、GCPHIDFK(配列番号11)、LCPCIDFK(配列番号12)、GCPCADFM(配列番号13)、GCPCEDFM(配列番号14)、GCPCVDFK(配列番号15)、GCTCIDLM(配列番号16)、GCPCIDFM(配列番号17)、NCPCIDFM(配列番号18)、ACPCIDFM(配列番号19)、GCPCADFM(配列番号20)、GCPYIDFM(配列番号21)およびVCPCIDFM(配列番号22)などがある。
本発明のペプチドは、第2のアプタマー領域として、式3:X19-X20-X21-X22-L-X24-L-X26-P-G-X29(式3中、X19はL、T、QまたはPであり、X20はL、S、Q、EまたはPであり、X21はS、TまたはAであり、X22はAまたはRであり、X24はSまたはHであり、X26はSまたはHであり、X29はWまたはSである)(配列番号23)のアミノ酸配列を含む。すなわち、第2のアプタマー領域は、少なくとも11アミノ酸残基の長さであり、以下の表の各位置(X19からX29)に記載したアミノ酸種類の組み合わせで構成されたアミノ酸配列の全てを含む。
Figure 0007199691000002
本発明のペプチドの第2のアプタマー領域の例としては、LLSALSLSPGW(配列番号24)、LLTALSLSPGW(配列番号25)、LLTALHLSPGW(配列番号26)、LLTALSLSPGW(配列番号27)、LLTALSLSPGS(配列番号28)、LSTALSLSPGS(配列番号29)、LLTALSLSPGW(配列番号30)、LQTALSLSPGW(配列番号31)、TLTALSLSPGW(配列番号32)、QLTALSLSPGS(配列番号33)、LLAALSLSPGS(配列番号34)、LLTALSLSPGS(配列番号35)、LLSALSLSPGS(配列番号36)、LETALSLSPGS(配列番号37)、PLTALSLSPGS(配列番号38)、LPTALSLSPGS(配列番号39)、LLTRLSLSPGS(配列番号40)およびLLTALSLHPGS(配列番号41)などがある。
上記式1のアミノ酸配列中のV-E-V-Q-X13-E-V-A-E-A(X13はVまたはMである)(配列番号42)はリンカー領域である。リンカー領域は、標的分子(タンパク質)に独立に結合する2つのペプチド(アプタマー領域)を連結するために必要な一定のスペーサーである。リンカーを構成するアミノ酸は、三次ライブラリーではグリシンを主な構成とする(Gly-Gly-Gly-Ser)×2~3を使用した(非特許文献14)。三次ライブラリーの淘汰では、グリシンを主な構成とするリンカーのフレームシフトにより得られたV-E-V-Q-V-E-V-A-E-Aをリンカーとして使用したペプチドが選択されたペプチドとして残ったので、本発明の四次ライブラリー用のコンストラクトはリンカー配列:V-E-V-Q-V-E-V-A-E-A(配列番号43)を使用して設計した。本発明のペプチドのリンカー領域は、V-E-V-Q-V-E-V-A-E-Aであるか、またはV-E-V-Q-M-E-V-A-E-A(配列番号44)である。本発明のペプチドは、第1のアプタマー領域と第2のアプタマー領域が上記リンカーにより連結されている。第1のアプタマー領域とリンカー領域と第2のアプタマー領域の組み合わせは、図9に示した13の組み合わせに限定されない。当然であるが、本発明のペプチドは、式1:X1-C-X3-X4-X5-D-X7-X8-V-E-V-Q-X13-E-V-A-E-A-X19-X20-X21-X22-L-X24-L-X26-P-G-X29(式1中、X1はG、L、N、AまたはVであり、X3はPまたはTであり、X4はC、HまたはYであり、X5はI、A、EまたはVであり、X7はFまたはLであり、X8はKまたはMであり、X13はVまたはMであり、X19はL、T、QまたはPであり、X20はL、S、Q、EまたはPであり、X21はS、TまたはAであり、X22はAまたはRであり、X24はSまたはHであり、X26はSまたはHであり、X29はWまたはSである)(配列番号1)のアミノ酸配列に包含される第1のアプタマー領域とリンカー領域と第2のアプタマー領域のあらゆる組み合わせを含む。ある実施態様では、本発明のペプチドはN末端からC末端の方向に順に第1のアプタマー領域、リンカー領域および第2のアプタマー領域を含む。別の実施態様では、本発明のペプチドはN末端からC末端の方向に順に第2のアプタマー領域、リンカー領域および第1のアプタマー領域を含む。
本発明に用いられ、そして本明細書に記載されるオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチドおよび小分子は、当技術分野で公知の標準的な技術を用いて製造することができる。
本発明のペプチドは、担体にコンジュゲートされてもよい。担体は、生分解性ポリマー(例えば、PEG、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、およびそれらの共重合体、炭水化物、セルロース、キチン、およびリグニン、またはポリペプチド担体(Fcおよび血清アルブミンなど))である。担体にコンジュゲートされた本発明のペプチドは、担体にコンジュゲートされていないものと比較して、半減期および/または生物学的利用率が向上する。
(四次ライブラリー淘汰産物)
本発明のペプチドは、カテプシンEの酵素活性を促進する機能を有する、カテプシンEを活性化する分子(カテプシンE活性化ペプチド(CEAP))である。
本発明のペプチドは、ペプチド非存在下と比較して、ペプチド存在下のカテプシンEの活性を少なくとも約140から220%、約170から220%、あるいは約190から220%にすることができるものであり、特に「200%以上」という値(すなわち、カテプシンEの活性を2倍以上にすることができること)は、本発明のペプチドの、がん治療のための医薬用途に大きな期待を与える。また、カテプシンEの活性を特異的かつ高感度に検出する方法にもつながる。血清カテプシンE活性と乳がん患者の予後の研究では、好ましい予後結果を有する患者のカテプシンE活性は、好ましくない予後結果を有する患者に比較して、約2倍高いことがわかっている(非特許文献3、Fig.1(E)等)。したがって、乳がん患者のカテプシンE活性を少なくとも200%に活性化できる分子(例えば、ペプチド)は、予後予測が悪い患者の治療に有用であることが期待される。本発明のペプチドは、ペプチド非存在下の活性と比較して、カテプシンEの活性を140%以上、150%以上、170%以上、172%以上、173%以上、175%以上、180%以上、185%以上、188%以上、190%以上、195%以上、200%以上、205%以上、208%以上、210%以上、215%以上、218%以上、あるいは220%以上にすることができる。本発明のペプチドは、ペプチド非存在下の活性と比較して、カテプシンEの活性を約140から220%、約150から220%、約170から220%、約172から220%、約173から220%、約175から220%、約180から220%、約185から220%、約188から220%、約190から220%、約195から220%、約200から220%、約205から220%、約208から220%、約210から220%、あるいは約215から220%、にすることができる。
本発明のペプチドは、カテプシンEの元の酵素活性を100%とすると、三次ライブラリーで得られたペプチド(CEAP3)よりも、カテプシンEの活性をさらに少なくとも約20%、少なくとも約22%、少なくとも約23%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約38%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約58%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約68、あるいは少なくとも約70%上昇させることができる。
本発明のペプチドは、カテプシンEに対し1nM以下の解離定数(KD)で結合することができる。本発明のペプチドは、1nM以下、すなわちpMオーダーの解離定数を有するため、試料中の低濃度カテプシンEを検出することが期待される 本発明のペプチドは、カテプシンEの異なる部分にそれぞれ結合する第1のアプタマー領域と第2のアプタマー領域を有するため、カテプシンEに対する特異性が高い。
(医薬)
本発明のペプチドは、該ペプチドを含む医薬として提供される。ある実施態様では、本発明の医薬は個体における疾患または障害を治療するためのものである。ある実施態様では疾患または障害の症状は、自己免疫疾患である。別の実施態様では、本発明の医薬はがんの治療のためのものである。
本発明が治療対象とするがんは任意の種類のがんである。好ましい実施態様では、本発明のペプチドは、とりわけカテプシンEが関与すると考えられるTRAILリガンドの遊離とそれに伴うTRAIL受容体への結合およびそれに続くアポトーシス反応によるがん細胞死が期待されるがんに有効と考えられる。本発明のペプチドは、カテプシンEの接近が容易な遊離がん細胞(血液系や浮遊性のがん細胞)には特に有効と考えられる。本発明のペプチドは、固形がん細胞であっても、その表層細胞を順次細胞死する形で、縮小消滅させることが期待される。本発明のペプチドは、治療方法に使用することができる。また、本発明のペプチドは医薬の製造または調製方法に使用することができる。
本発明の治療対象の個体または患者は、哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
本発明は、有効成分としてカテプシン活性化ペプチドを含む、がんを治療するための医薬を提供する。カテプシンE酵素活性を促進するために、本発明の医薬の有効量が患者に投与される。本発明の医薬は、有効成分であるペプチドに加えて、医薬として許容される担体を含んでもよい。
別の態様において、本発明の医薬は、2種類以上のカテプシンE活性化ペプチド(CEAP)を含む。第1のCEAPと第2のCEAPは、カテプシンEの同じ部位に結合するものであってもよく、または異なる部位に結合するものであってもよい。
本発明の医薬は、任意の適切な手段によって、経口投与、肺内投与、鼻腔内投与、病巣内投与、局所投与、または眼内投与されてもよい。本発明の医薬は非経口注入により投与されてもよく、非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、または腹腔内への注入、または皮下注射などが含まれる。投薬レジュメは、投与が短期間かまたは長期であるかによって適切に計画される。本発明の医薬は治療目的に最適な剤形で処方され、医療従事者の知識に基づいて治療に最適且つ臨床的に妥当な投与経路、投与方法、投与量および投与スケジュールが決定される。
(カテプシンEの酵素活性測定方法)
本発明のペプチドはペプチドアプタマーとして、以下の(a)から(c)を含む、試料中のカテプシンEの酵素活性測定方法に使用することができる。
(a)固相化されたペプチドアプタマーと試料を混合し、固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEを得る工程、
(b)固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEと、標識されたカテプシンE基質を接触させる工程、および
(C)カテプシンEによるカテプシンE基質の切断を検出してカテプシンE酵素活性を求める工程。
本発明のペプチドは、カテプシンEを捕捉しても、それとの結合はいわゆるアロステリック結合であり、酵素の活性を妨げず、むしろ活性を向上させる機能がある。このため、カテプシンE酵素活性の測定感度が上昇する。
乳がん患者の予後と相関しているのは、カテプシンEの物質的総量ではなく、カテプシンEの活性である(非特許文献3)。可能性としては、これに限定されないが、乳がん患者のカテプシンEは一部失活しているか、そもそも発現量が減っているかの両方があり、前者はカテプシンEの物質量と活性量の両者を測定することで判断できる。従来技術では、高感度に活性を測定するのが難しく、腕のいいエキスパートしかできなかったという事情がある。本発明のペプチドは、1nM以下、すなわちpMオーダーの解離定数でカテプシンEに結合してかつカテプシンEの酵素活性を向上させるため、カテプシンE活性の測定に用いた場合、測定感度が、従来のペプチドを用いた場合と比較して格段に上昇する。
カテプシンEの酵素活性測定方法工程(a)
本発明のカテプシンEの酵素活性測定方法では、ペプチドアプタマーは、プレート、プレートのウェル、アレイ、ビーズ、チューブ、チップなどの固相に固相化される。ペプチドアプタマーは、固相に、ペプチドやPEGなどのリンカーを介して固相化されてもよいし、直接的に固相化されてもよい。
本発明の測定方法に用いられる試料は、CEを含有する試料であれば、特に制限はなく、通常は生物由来検体であり、例えば哺乳動物の血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、ぬぐい液、各種組織液等の体液、細胞(がん細胞、良性腫瘍細胞、悪性腫瘍細胞)およびそれらの細胞溶解液、または組織(がん組織、良性腫瘍組織、悪性腫瘍組織)およびそれらの組織溶解液であることができる。
固相化されたペプチドアプタマーと試料との混合は、例えばペプチドアプタマーが固相化された固相を含む容器に、上記試料を含む緩衝液を注入することにより実施してもよいし、上記試料と緩衝液を含む容器にペプチドアプタマーが固相化されたビーズ等を投入することにより実施してもよい。この混合により、試料中のCEは、固相化ペプチドアプタマーに結合する。これにより固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEを得る。ペプチドアプタマーと試料との混合は、試料がカテプシンEを含む場合にはペプチドアプタマーとカテプシンEが結合できる条件を適宜選択して行われる。すなわち、仮に測定試料にカテプシンE濃度が過剰に存在し、結合可能なペプチド濃度を超えるような場合は、試料を緩衝液で希釈して用いることができる。固相化ペプチドアプタマーに非特異的に弱く結合している夾雑物を除去するため、上記固相や固相を含む容器(例えばプレートのウェルやチューブ)を、試料を含む緩衝液の除去後に、蒸留水等で洗浄することが好ましい。
カテプシンEの酵素活性測定方法の工程(b)
固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEと、標識されたカテプシンE基質を接触させる。標識は、例えば、発色物質、蛍光発生物質、化学発光物質、酵素などを利用するものであってもよい。固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEと、標識されたカテプシンE基質との接触は、pHを中性に調整した溶液中で実施される。本発明のペプチドは、中性pH環境下でカテプシンEを活性化するためである。
カテプシンEの酵素活性測定方法の工程(c)
カテプシンEによるカテプシンE基質の切断を検出してカテプシンE酵素活性を求める。カテプシンEによるカテプシンE基質の切断は、標識物質の化学的変化をモニターすることにより検出される。検出は当業者に公知の方法により行うことができ、例えば、蛍光物質の場合には蛍光光度計により検出することができ、発色物質の場合には分光光度計により検出することができる。
試料中のカテプシンEの酵素活性の測定方法について、以下に具体例を記載する。但し、この例に限定される意図ではない。
<ペプチドアプタマーの固相化>
本発明のペプチド(ペプチドアプタマー)をカップリング緩衝液(0.2M NaHCO3、0.5M NaCl、pH8.3)で1mg/mlに希釈し、50μlのペプチド溶液をペプチドコーティングプレート(TaKaRa)のアレイに注ぎ、直ちに、10μlのReaction solution(TaKaRa)を各ウェルに加え、室温で2時間インキュベートする。インキュベーション後、溶液をプレートのウェルから移動させ、ペプチドコーティングウェルを200μlの蒸留水で3回洗浄する。次に、ブロッキング溶液(0.5Mエタノールアミン、0.5M NaCl(pH8.3))200μlを各ウェルに添加し、容器内に存在する非特異的結合物質を失活させるために室温で1時間インキュベートする。ブロッキング溶液を除去した後、ウェルを200μlの蒸留水で3回洗浄する。
<ペプチドアプタマーによるカテプシンEの捕捉>
カテプシンEプロテアーゼ含有組織抽出物または血清を緩衝液(500mM酢酸ナトリウム、1M NaCl、pH4.0)でpH7.4に調整する。15,000rpmで5分間の遠心分離によってできた沈殿を除去し、上清を回収する。30μlの上清を各認識ペプチド固定化ウェルに添加し、室温で20分間インキュベートし、溶液を除去する。プレート上に残っている溶液を200μlの蒸留水で2回洗浄する。
<Enzyme on peptideでの測定>
ペプチド上に捕捉されたカテプシンEの量を蛍光発生基質を用いたアッセイにより測定する。蛍光発生基質で標識されたカテプシンE基質(Nma-Gly-Gly-Arg-Arg-Ser-Gly-Thr-Cys-Gly(Dnp)-D-Arg-NH2:配列番号101)、50mMの酢酸ナトリウムおよび100mMのNaClを含む溶液(pH4.5)を各ウェルに添加し、次いで40℃で10分間インキュベートする。
蛍光プレートリーダーFluPOLO(TaKaRa)を用いて、インキュベーション中に基質切断によって生成された蛍光強度の増加を、励起波長360nm/蛍光波長430nmで測定する。
(カテプシンE量の測定方法)
本発明のペプチドは、ペプチドアプタマーとして、以下の(a)および(b)を含む、試料中に含まれるカテプシンE量を測定する方法に使用される。
(a)固相化されたペプチドアプタマーと試料を混合し、固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEを得る工程、および
(b)カテプシンEが結合したペプチドアプタマーを検出し、試料中のカテプシンE量を求める工程。
カテプシンE量の測定方法の工程(a)
本発明のカテプシンE量の測定方法では、ペプチドアプタマーは、プレート、プレートのウェル、アレイ、ビーズ、チューブ、チップ、バイオセンサチップなどの固相に固相化される。また、固相の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、金属、カーボンなど挙げられる。
本発明の測定方法に用いられる試料は、CEを含有する試料であれば、特に制限はなく、通常は生物由来検体であり、例えば哺乳動物の血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、ぬぐい液、各種組織液等の体液、細胞(がん細胞、良性腫瘍細胞、悪性腫瘍細胞)およびそれらの細胞溶解液、または組織(がん組織、良性腫瘍組織、悪性腫瘍組織)およびそれらの組織溶解液であることができる。
固相化されたペプチドアプタマーと試料との混合は、緩衝液中で上記試料と固相化されたペプチドアプタマーを混合することにより実施してもよく、例えば、当該固相を含む容器に上記試料と緩衝液を加えることにより実施してもよい。この混合により、試料中のCEは、固相化ペプチドアプタマーに結合する。これにより、ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEを得る。ペプチドアプタマーと試料との混合は、試料がカテプシンEを含む場合にはペプチドアプタマーとカテプシンEが結合できる条件を適宜選択して行われる。
カテプシンE量の測定方法の工程(b)
カテプシンEが結合したペプチドアプタマーの検出は、例えば適当な標識を予めペプチドアプタマーに結合させておき、この標識から得られるシグナルを測定することができる。ここで使用可能な標識としては、例えば、化学発光物質を基質とするような、HRP(Horse Radish Peroxidase)、ALP(Alkaline Phosphatase)などの他、蛍光標識などの公知の物質を使用することができる。
本発明のペプチドアプタマーの、第1のアプタマー領域と第2のアプタマー領域はカテプシンEタンパク質の同じ部位に結合するか、あるいは異なる部位に結合する。本発明の好ましい実施態様では、本発明のペプチドアプタマーの、第1のアプタマー領域と第2のアプタマー領域はカテプシンEタンパク質の異なる部位に結合し、ペプチドアプタマーのカテプシンEに対する結合力が相加的にまたは相乗的に増大する。本発明のペプチドアプタマーは、カテプシンEの異なる部分にそれぞれ結合する第1のアプタマー領域と第2のアプタマー領域を有するため、カテプシンEに対する特異性が高く、試料中に含まれるカテプシンE量を精度よく測定することができる。
本発明のペプチドアプタマーは、1nM以下、pMオーダーの解離定数(KD)でカテプシンEに結合するため、カテプシンE量の測定精度が、従来のペプチドと比較して上昇する。
好ましい実施形態では、本発明のカテプシンE量測定方法は、単層カーボンナノチューブ電界効果型トランジスタ法(SWCNT FET)を用いて実施することができる。ここで、カテプシンE量の測定方法の工程(a)の固相化されたペプチドアプタマーは、電極に設置されたカーボンナノチューブに固相化されたペプチドアプタマーであってもよく、そして工程(b)は、上記ペプチドアプタマーとカテプシンEの結合前後において、上記電極に生じる標準電極に対する電位差を測定することを含む工程としてもよい。
SWCNT FET法を用いたカテプシンE量の測定方法では、SWCNT FETを製造し、本発明のペプチドをペプチドアプタマーとしてSWCNTチャネルのカーボンナノチューブにリンカーを介して固相化して、カテプシンE検出用SWCNT FETセンサーを用意する。固相化のための、ペプチドアプタマーとリンカーの濃度およびインキュベーション条件は、当該分野の公知技術に基づいて、体系的に調整し決定することができる。ペプチドアプタマーを修飾したセンサーは0.0005×PBS(pH7.4)中に入れ、さまざまな濃度(例えば、0.1~10ng/mL)のカテプシンEで計測をすることができる。SWCNT FET法を用いたカテプシンE量の測定方法については、非特許文献15を参考にして実施することができる。
(ライブラリーについて)
本発明のペプチドは、高速化された試験管内分子進化法である発達ライブラリー法を使用したカテプシン活性化ペプチド開発の最終段階に位置付けられた四次ライブラリーから開発された。試験管内進化法はランダムな配列をもつ集団をはじめとし、分子集団であるライブラリーから目的の機能をもつ分子群を淘汰する集団選択と、個々のクローンごとに淘汰するクローン選択のプロセスを経てライブラリーを高い活性を持つ集団へと絞りこんでいく。淘汰が進むにつれて弱い活性、低い親和性の分子は取り除かれ、ライブラリーの多様性は減少する。すなわち構成する分子群の種類は減っていくが、高い活性をもつ分子が残る。ここからさらに高い活性を示す分子群を選び出すために、人工的に変異を加えることで次段階のライブラリーを構成する。発達ライブラリー法の中では、ライブラリーの進化のためにY連結ブロックシャフリング(YLBS)法を用いる段階がある。この方法では、N種(たとえば、10種)のブロックを原料としてわずか4回連結するだけでN16(たとえば、出発時に10種の要素から始めると、1016)の分子多様性が実現する。集団での淘汰、および個々のクローンでの淘汰を行った後に得られたペプチド分子から、4つのアミノ酸ブロックを選び出し連結して二次ライブラリーを得て、続いて淘汰を行う。この結果得られた二次ライブラリー淘汰産物はすでに機能単位(モジュール)とみなすことができる(Kitamura K et al. Journal of Molecular Biology. 2009;387(5):1186-1198、非特許文献13)。この機能単位とスペーサ配列を組み合わせることで三次ライブラリー(ペアペプチドライブラリー)が作製された(非特許文献14)。本明細書ではこの三次ライブラリーの淘汰産物に対してさらにアミノ酸配列に点置換を加えて得られる点置換体四次ライブラリーを作製する(図1)。点置換体四次ライブラリーを淘汰した後に、さらに、それらの点置換体四次ライブラリー淘汰産物にDNAシャフリング(Stemmer WP.Nature.1994, Aug4;370 (6488): 389-91)を導入する。
(cDNAディスプレイ法)
ペプチドを創製するために、まず表現型であるペプチド部分と遺伝型部分であるDNAを対応付ける必要がある。本研究室で開発されたcDNAディスプレイ法を用いて、四次ライブラリーから目的のペプチド・タンパクを得る手順を図2に示す。
ペプチドをコードする四次ライブラリーのDNAをPCRすることで増幅し、転写することによってmRNAをつくり、表現型と遺伝型の対応をつける小分子ピューロマイシンリンカーと連結する。そして、翻訳を行うことによってピューロマイシンにペプチドを連結させる。その後、mRNAを安定化させるために逆転写を行う。続いてピューロマイシンに連結しているペプチド鎖の精製過程を経ることによってcDNAディスプレイを作製する。最後にターゲットに対して淘汰を行うことによって、より機能(結合能)の高いペプチドが得られる(非特許文献12、Tsuji-Ueno S, et al. Protein and Peptide Letters. 2011;18(6):642-650)。この連結体にはSFリンク(Naimuddin et al. J. MOL, Recog. 2007)が導入されており、機能(例えば、酵素活性制御)により淘汰できる。
実験方法について以下に説明する。
実験方法1:cDNAディスプレイの作製
図1に記載の点置換体四次ライブラリーのコンストラクトのDNAを増幅したPCR産物と転写反応試薬を以下のとおり混合する。
PCR産物 1 pmol
25 mM r(A,T,U,G)TP mix (Promega) 3μl
5×T7 Trans Buffer (Promega) 2μl
RNase-free water (Promega) up to 9μl
T7 Enz mix (Promega) 1μl
PCR産物を含む溶液を37℃で3時間インキュベートし、更にRQ1 RNase-Free DNase(1U/μl、Promega)を1μlを加えて37℃で15分間インキュベートする。RNeasy(Qiagen)を用いてRNA精製を行い、最終溶液量を14μlにした。分光光度計Nano Drop ND-1000を用いてmRNA産物を定量する。
上記得られたmRNA産物とライゲーション試薬を以下のとおり混合する。
mRNA産物 20 pmol
SBP (streptavidin puromycin) linker (20pmol/μl) 22 pmol
10×T4 ligase buffer (TaKaRa) 2.5μl
RNase-free water up to 20μl
次に、mRNAを含む溶液について、ライゲーション反応を、90℃:2min→70℃:2min→25℃:3sec→4℃:Holdの手順で行う。T4 RNK(10U/μl;TaKaRa)1μlおよびT4RNA ligase (30U/μl;TaKaRa)1μlを加えた後、25℃で1時間20分インキュベートする。RNA精製を行い、最終溶液量を27μlにする。電気泳動でライゲーション産物を確認する(Gel組成:Polyacrylamide gel (6%T,5%C) containing 8M Urea、1×TBE;泳動条件100V、55℃、5×TBE, 8min)。
ライゲーション産物と翻訳用試薬を以下のとおり混合する。0.2mlのチューブで2本分作製する。
ライゲーション産物 (2.2pmol/μl) 4μl
20×Master Mix-Me 1.25μl
20×Master Mix-Leu 1.25μl
Reticulocyte lysate 34μl
RNase-free water up to 50μl
ライゲーション産物を含む溶液を翻訳のため、30℃で20分間インキュベートした後、3MのKClを20μl、1MのMgCl2を6μlを加え、37℃で1時間20分間インキュベートする。SDS PAGEによりmRNAディスプレイ産物を確認する(Gel組成:Polyacrylamide gel(4→6%T 5%C) containing 8 M Urea、0.1 SDS;泳動条件:電流10 mA、2時間、泳動用緩衝液25mM Tris、192mM Glycine、0.1% SDS)。mRNAディスプレイ産物をSA-ビーズ (Dynabeads MyOne Streptavidin C1)を使用して精製する。
mRNAディスプレイ産物が結合したSA-ビーズと逆転写用試薬を以下のとおり混合する。
mRNAディスプレイ産物が結合したビーズ 全量
5×ReverTraAce buffer (TOYOBO) 8μl
2.5 mM dNTP mix 16μl
RNase-free water up to 15μl
ReverTraAce Enzyme (TOYOBO) 1μl
ビーズを含む溶液を42℃で20分混和しながらインキュベートした後、上澄みを除去する。100μlの5 mM imidazole in PBS500で2回洗浄する。0.5μlのRNase T1(1000U/μl)を39.5μlのビーズを含む5 mM imidazole in PBS500に加える。37℃で20分間インキュベートし、上澄みを回収する。さらに、ピューロマイシンに連結しているペプチド鎖を精製し(His Mag sepharose Ni-ビーズ、バイオスピンカラム、Xa)、cDNAディスプレイを得る。
実験方法2:In vitro selection法
得られたcDNAディスプレイについて、selection-by-function 法を使用してカテプシンE活性化ペプチドを選択する。カテプシンEを固定化したNHS-ビーズ (NHS Mag Sepharose, GE Healthcare)を用意する。cDNAディスプレイを、カテプシンE固定化NHS-ビーズを含むSelection buffer (50mM Tris-HCl, 100mM NaCl, 5mM MgCl2, pH 7.4)中で、25℃で10分間インキュベートする。非結合DNA分子をSelection bufferにより3回洗浄除去する。カテプシンE固定化NHS-ビーズに結合したDNA分子をカテプシンE蛋白分解反応に適した温度(37℃)でインキュベートする。Wash buffer(50 mM Tris-HCl, 1.0 mM NaCl pH 7.4)により洗浄し、elution buffer (25% NH3)で65℃、10分間溶出させる。ビーズから溶出したDNA分子は大部分がカテプシンEの増強されたタンパク質分解反応によって生成されると想定できるので、次の評価工程のために回収する。この手順を、カテプシンE蛋白分解反応のための反応時間を短くして、3回繰り返す(1min、20sec、10sec)。最終産物をクローニングおよび配列決定に供して、点置換体四次ライブラリー淘汰産物であるカテプシンE活性化ペプチドを同定した。
実験方法3:カテプシンE活性化ペプチドの評価
選択されたペプチドによるカテプシンE活性についての促進活性を決定するために、ペプチドをin vitro翻訳または化学合成により合成した。20nMカテプシンEと選択されたペプチドをSelection buffer (50mM Tris-HCl, 100mM NaCl, pH7.4)中、25℃で10分間前もってインキュベートする。次に蛍光基質(MOCAc-Gly-Lys-Pro-Ile-Leu-Phe-Phe-Arg-Leu-Lys(Dnp)-D-Arg-NH2:配列番号102)を5μM加え、37℃で1時間反応させる。蛍光測定器を用いて蛍光強度を440nm(励起340nm)で観察する。カテプシンEは通常、酸性pHで機能するが、中性pH(7.4)で感受性の蛍光発生基質は、S.B.P. Athauda and K. Takahashi (Protein and Peptide Letters,vol.9, no.1, pp.15-22,2002) らの文献をもとに設計された。
カテプシンEの活性(%)は以下の計算式から導いた。
Figure 0007199691000003
Sfは選択されたペプチドの存在下でのカテプシンE反応の蛍光強度、Cfは選択されたペプチドの不在下でのカテプシンE反応の蛍光強度、Bfは蛍光基質のみを含む溶液のバックグラウンド蛍光である。ペプチド不在化でカテプシンEの活性は100%となる。なお、図5および10のグラフは、縦軸の標記は活性促進度合であり、カテプシンEの活性としては、この数値に100%を加えたものである。
実験方法4:加算的点置換体四次ライブラリーの設計と構築
オリゴマーを用いて、DNAのハイブリダイゼーションと伸長反応を行うことにより新たなライブラリーを作製する。ハイブリダイゼーション試薬を以下のとおり混合する。
10×Ex taq Buffer 2.5μl
2.5 mM dNTP mixture 2μl
Hybridization oligomer 各100 pmol
Template DNA 500 ng
D.D.W up to 25μl
Ex Taq (5 U/μl)(TaKaRa) 0.125μl
各ハイブリダイゼーションステップにおいて、同じチューブのままで多段階反応させる。
以下のサイクルで反応を行う:95℃ =2min → 25℃(35℃) =5min → 40℃ =10min → 72℃ =5min。但し、ハイブリダイゼーション温度は各オリゴマーのTmに対して変更する。
上記サイクルを6回行い、断片をつなぎ合わせる。最終産物を通常のプライマーを用いたPCRによって増幅させることにより、加算的点置換体四次ライブラリーを得る。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
実施例1:機能淘汰型cDNAディスプレイ
以前得られた三次ライブラリーの淘汰産物(非特許文献14)に対してさらにアミノ酸配列に点置換を加えて得られる点置換体四次ライブラリーを図1のコンストラクトから作製した。
通常のcDNAディスプレイ法に対して、Selection-by-Function法を導入して行うin vitro selection(図2の左挿入図参照)においては、いわゆるcDNAディスプレイ部分は、cDNA部分(情報)+リンカー+ペプチド(機能)からなるが、このペプチド部分の先頭にカテプシンEの基質配列が仕組まれている。そのために、カテプシンEにペプチドが結合したときに、結合様式(阻害/中立/活性化)によっては、カテプシンEを活性化する場合があり、そのとき、「馬の鼻先にニンジンを垂らした状態」になり、基質部分が切断されることになる。その場合は、ペプチドの機能領域はカテプシンEに結合したままであるが、DNA部分は基質部分のペプチドの開裂によりフリーになり溶液中に出てくる。逆に、ペプチドがカテプシンEを阻害するときには切断が起こらず、cDNAディスプレイ全体はカテプシンEに結合し溶液中にはDNAはでてこない。この原理を利用して、切断されたDNA断片をアクリルアミドゲル電気泳動で確認した実験を図3に示す。この一連のin vitro selection法で選択されたcDNAディスプレイ(レーン6)は、洗浄後に選択工程を経ていないcDNAディスプレイ(レーン5)と比較して濃いバンド(524bp)を示した。
実施例2:点置換体四次ライブラリー淘汰産物の配列決定
次に点置換体四次ライブラリーの淘汰産物の配列を決定した。合計62クローン、42種類の配列を決定した。結果を図4に示す。特に21番目のアミノ酸ThrがSerに変異した配列が10コピー、20番目のLeuがGluに変異した配列が3コピー得られた。リンカー配列にもアミノ酸置換があったが本来点置換を加えた箇所ではないためPCR由来による非意図的有利変異であると考えられる。
実施例3:カテプシンEに対する点置換体ペプチドの機能評価
淘汰産物である42種類のクローン配列の内、同一の配列が得られた7クローン、ランダムに選んだ6クローン、変異を加えていない三次ライブラリー淘汰産物(CEAP3)の計14クローンについて無細胞翻訳を行い、実験方法3に従って、ペプチドによるカテプシンEの機能促進能を検証した。結果を図5に示す。
特に取得クローンの内コピー数が多かった変異T21SまたはL20Eを有するペプチドが三次ライブラリー淘汰産物(CEAP3)に比べてそれぞれ約35%、38%の上昇がみられた。一方、変異C4Y、G1V、またはA22Rを有するペプチドにおいては、CEAP3と比較してわずかに低い活性促進能を示した。また、変異V13Mを有するペプチドにおいては10%ほどの減少度が確認された。また、出現頻度の高かった21番目のセリンは元のトレオニン(T)と同じ親水性、20番目のグルタミン酸は酸性を示す極性電荷側鎖アミノ酸であり、親水性アミノ酸がカテプシンEの活性促進に関与していることが示唆される。
実施例4:加算的点置換体四次ライブラリーの作製
次に、実施例3の結果に基づいて、複数の点置換を組み合わせた加算的点置換体四次ライブラリーを作製した。
表3に示したオリゴマー(配列番号46から74)を用いて、実験方法4に記載したDNAのハイブリダイゼーションおよび伸長反応を行うことにより新たなライブラリーを作製した。仮にすべての点置換候補が導入された場合には、アミノ酸配列:NCPYADFKVEVQMEVAEAPESALHLSPGW(配列番号103)が作成される。
Figure 0007199691000004
加算的点置換体四次ライブラリーを電気泳動で確認した(図6、レーン3)。また、伸長反応によるライブラリー全体が正確に構築されていることをダイレクトシークエンスにより確認した(図7)。次の淘汰工程に必要な配列が構築できたことを確認した。その他の点置換においては、最低でも50%の割合で変異が加わった配列が得られた。G1N、C4Y、I5Aの点置換においては、変異が加わっていない配列が優勢であった。
実施例5:加算的点置換体四次ライブラリーの淘汰と評価
実施例4で作成した加算的点置換体四次ライブラリーについて、実験方法1から3に従って、cDNAディスプレイを作製し、カテプシンEと反応させることにより選択された加算的点置換体四次ライブラリー淘汰産物を得た。この淘汰産物をダイレクトシークエンス法で分析した。得られた塩基配列波形を図8に示す。
淘汰前後のDNA塩基配列の波形より、M8Kの変異においては、2番目の塩基が淘汰前ではほとんど同程度の強度を示していたが、Metを示すATGのコドンからLysを示すAAGのコドンが強い強度を示していた。同様にS29Wでは淘汰前はSerを示すTCGとTrpを示すTGGのコドンが同程度の強度であったが、淘汰後はTrpに対応するコドンがより強い強度を示した。また、点置換体四次ライブラリー淘汰産物の中でもっとも高い活性を示したL20E、T21Sについても淘汰によってwild typeに近い配列に収束した。これらの結果は、M8K、S29Wの変異をもつペプチドがカテプシンEの活性をより促進する作用を持つことを示唆する。
実施例6:加算的点置換体四次ライブラリー淘汰産物の配列決定
加算的点置換体四次ライブラリーに対して2ラウンドの淘汰を行って得られた淘汰産物のアミノ酸配列を図9に示す。興味深いことには、元の点置換体4次ライブラリー淘汰産物中で、一番高い活性促進能を持つT21SとL20Eの加算的点置換体は選択されなかった。このことは単純な推論では及ばない配列空間形状の複雑性、すなわち、タンパク質の立体構造の形状やその機能に関して、個々のアミノ酸の寄与だけではなく、それらの相互関係が重要であるということを示している。
変異体として、M8K、V13M、S29Wの変異が多く見られ、これらの2点、3点の加算的点置換体配列も得られた。また、点置換体四次ライブラリーの淘汰産物の中で最も活性の高かった2クローンの中のT21Sの変異が加わった加算的点置換体配列も得られた。
実施例7:加算的点置換体四次ライブラリー淘汰産物の評価活性
2ラウンドの淘汰を行って得られた実験方法3に従ってカテプシンEに対する活性評価を行った。淘汰によって得られた13種類の配列と点置換体ライブラリー淘汰の際にカテプシンEに対する活性を調べていないM8K変異体ペプチドの計14種類について活性評価を行った結果を図10に示す。
特にM8Kの変異とS29Wの変異を持つ配列を含む加算的点置換体ペプチドは、カテプシンEを高く活性化した。点置換ペプチドの活性評価で得られた活性促進度に対して、非線形で正に相関した加算活性度が得られ、タンパク質科学的に合理的な結果となった(一般に単純加算にはならない)。このことで、加算的点置換体ライブラリーの有効性を実証できた。
カテプシンE活性の促進作用が最も高かった加算的点置換体四次ライブラリー淘汰産物は、カテプシンEの活性を218%に増大した。発達ライブラリー法第3段階の成果であるCEAP3との比較では、68%の上昇がみられた(MP04)。
実施例8:解離定数による特徴づけ
実施例7で得られた加算的点置換体四次ライブラリー淘汰産物であるペプチドMP04とカテプシンEの結合親和性を、Biacore X100(GE Healthcare)を用いた表面プラズモン共鳴法(SPR法)により決定した。カテプシンEを、アミンカップリングキット(GE Healthcare、UK)を用いたアミンカップリング法によりBiacoreセンサーチップNTA(GE Healthcare、UK)に固定化した。解離定数を決定するために、5つの異なる濃度(200μM、40μM、8μM、1.6μM及び0.32μM)のペプチドMP04を相互作用に使用した。ペプチドMP04はあまり溶解性が高くないため、10%DMSOを実験で使用し、高い濃度のペプチド濃度で実験を行った。解離定数は、Evaluation Software version 2.0.1において、反応モデルは1:1結合を用いて算出した。結果を以下の表に示す。
Figure 0007199691000005
ペプチドMP04(配列番号91)の解離定数(KD)は3.13pMと算出された。従来の三次ライブラリーでは、1nM以下の解離定数(KD)でカテプシンEに結合するペプチドは開発されていない。本発明のペプチドは、1nM以下の解離定数でカテプシンEに結合するため、生物試料中(例えば血液中)に低濃度で含まれるカテプシンE(数nM以下)を十分な精度で測定することができる。
配列番号1~41:カテプシンE活性化ペプチド
配列番号42~44:リンカー配列
配列番号45:コンストラクト
配列番号46~74:表3に記載のオリゴマー
配列番号75~87:図4に記載のペプチド
配列番号88~100:図9に記載のペプチド
配列番号101及び102:カテプシンE基質
配列番号103及び104:変異ペプチド

Claims (10)

  1. 配列番号75、76、84、88から91、96から98、および100のいずれかに記載のアミノ酸配列を有するペプチド。
  2. カテプシンEの元の酵素活性を100%とすると、三次ライブラリーで得られたペプチド(CEAP3)よりも、カテプシンEの酵素活性をさらに0%以上、上昇させる、請求項1に記載のペプチド。
  3. 配列番号91にアミノ酸配列を有し、カテプシンEへの結合に対する解離定数(KD)は1nM以下であペプチド。
  4. 請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドを含む、がんを治療するための医薬。
  5. 試料中のカテプシンEの酵素活性測定方法であって、
    (a)固相化されたペプチドアプタマーと試料を混合し、固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEを得る工程、
    (b)固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEと、標識されたカテプシンE基質を接触させる工程、および
    (C)カテプシンEによるカテプシンE基質の切断を検出してカテプシンE酵素活性を求める工程
    を含み、前記ペプチドアプタマーが請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドである、方法。
  6. 試料中に含まれるカテプシンE量の測定方法であって、
    (a)固相化されたペプチドアプタマーと試料を混合し、固相化ペプチドアプタマーに結合したカテプシンEを得る工程、および
    (b)カテプシンEが結合したペプチドアプタマーを検出し、試料中のカテプシンE量を求める工程
    を含み、前記ペプチドアプタマーが請求項1~のいずれか一項に記載のペプチドである、方法。
  7. カーボンナノチューブ電界効果型トランジスタ法を用いて実施される請求項に記載の方法であって、
    前記工程(a)において、固相化されたペプチドアプタマーは、電極に設置されたカーボンナノチューブに固相化されたペプチドアプタマーであり、そして
    前記工程(b)は、前記ペプチドアプタマーとカテプシンEの結合前後において、前記電極に生じる標準電極に対する電位差を測定することを含む工程である、方法。
  8. カテプシンEに対する高活性化機能を有するペプチドの作成方法であって、
    (1) 基礎となるカテプシンE活性化作用を有するペプチドのアミノ酸配列において、一アミノ酸残基のみが置換された点置換体の全種類もしくはその一部を含むライブラリーを作成する工程、
    (2) 工程(2)で得られたライブラリーをカテプシンE活性化作用について淘汰して、高活性な一点アミノ酸置換ペプチドを得る工程、および
    (3) 前記高活性な一点アミノ酸置換ペプチドの配列情報から、カテプシンE活性化作用を向上させると考えられる点置換を選び、それらを任意の組合せで複数含む加算的点置換体ライブラリーを作成し、前記加算的点置換体ライブラリーをカテプシンE活性化作用について淘汰して、カテプシンEに対する高活性化機能を有するペプチドを得る工程を含む、方法。
  9. 前記工程(1)において、基礎となるカテプシンE活性化作用を有するペプチドのアミノ酸配列において、先頭(1位)から最終部位(N位)までの各部位が元のアミノ酸と異なる19種のアミノ酸にそれぞれ置換された一置換体の全種類(19×N[種])を含むライブラリーが作成される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記基礎となるカテプシンE活性化作用を有するペプチドが、試験管内分子進化法によるライブラリーの作成と淘汰、モジュールシャフルドペプチドライブラリーの作成と淘汰、および/またはペアドペプチドライブラリーの作成と淘汰の淘汰産物である、請求項8または9に記載の方法。
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