以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る腐食検知センサを備える電気機器を示す図である。図1を参照して、電気機器900は、たとえばインバータまたはコンバータなどの電力変換装置であるが、電気機器の種類は特に限定されるものではない。電気機器900は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)、昇降機、発電機、自動車または鉄道などに設置される。このような各種用途での使用環境下において、電気機器900(より詳細には後述する電気機器本体90)では、腐食性ガスによって腐食損傷が生じる可能性がある。
電気機器900は、腐食検知センサ101と、電気機器本体90とを備える。腐食検知センサ101は、電気機器本体90の腐食の進行度合いを推定するために用いられる。腐食検知センサ101は、センサ本体11と、抵抗測定器20と、制御装置30と、報知装置40とを備える。
図2は、実施の形態1におけるセンサ本体11の構成の一例を示す図である。図2を参照して、センサ本体11は、腐食検知構造体21と、回路基板3と、配線4と、半田5とを備える。
回路基板3は、たとえばプリント基板であって、様々な配線および電子部品を実装することが可能に構成されている。
配線4は、配線41,42を含む。配線41,42の各々は、回路基板3上に配置された導体配線である。配線41と配線42とは互いに間隔を隔てて配置されている。各配線41,42の材料としては、銅(Cu)などを用いることができる。
腐食検知構造体21は、配線41と配線42との間を接続するように配置され、半田5により配線41,42上に実装されている。腐食検知構造体21は、腐食検知センサ101の腐食の進行度合いを検知し、それにより電気機器本体90の腐食の進行度合いを推定するように構成されている。腐食検知構造体21の構成については後述する。
図1に戻り、抵抗測定器20は、センサ本体11の抵抗を測定し、その測定結果を制御装置30に出力する。図1に示す例では、電気機器本体90から所定の電圧がセンサ本体11の両端の間(配線41と配線42との間)に印加されている。抵抗測定器20は、たとえば、電圧計201と電流計202とを含む。電圧計201は、センサ本体11の両端間に印可された電圧を測定し、その測定結果を制御装置30に出力する。電流計202は、センサ本体11を流れる電流を測定し、その測定結果を制御装置30に出力する。図示しないが、電気機器本体90とは独立した電源(たとえば小型電池)によってセンサ本体11の両端間に電圧が印可されてもよい。なお、抵抗測定器20は、本開示に係る「抵抗測定装置」に相当する。
制御装置30は、たとえばマイクロプロセッサを含んで構成され、抵抗測定器20によるセンサ本体11の抵抗の測定結果に基づいて報知装置40を制御する。より具体的には、制御装置30は、抵抗測定器20により測定された抵抗が所定の基準抵抗REFを上回った場合に、その旨をユーザに報知するように報知装置40を制御する。この基準抵抗REFは、腐食性ガスにより電気機器本体90が腐食損傷に至る危険度に基づいて予め定められる。基準抵抗REFの設定手法および危険度についても後に詳細に説明する。
なお、制御装置30は、腐食検知センサ101に必須の構成要素ではない。電気機器本体90に制御装置が設けられている場合には、その制御装置によって一連の処理(詳細は後述)を実行することができる。また、腐食検知センサ101は、制御装置30に代えて、抵抗測定器20により測定された抵抗と基準抵抗REFとを比較するための回路(たとえばコンパレータ回路)を備えてもよい。
報知装置40は、液晶ディスプレイまたはLED(Light Emitting Diode)インジケータなどにより構成され、抵抗測定器20により測定された抵抗が基準抵抗REFを上回った旨をユーザに報知する。
なお、報知装置40は、本開示に係る「抵抗出力装置」の一例である。本開示に係る「抵抗出力装置」は、抵抗測定器20による抵抗の測定結果(あるいは、測定された抵抗が基準抵抗REFを上回ったとの検知結果)をユーザに対して出力するものに限られず、電子機器に対して出力するものも含まれる。たとえば、制御装置30がコンパレータ回路等である場合には、本開示に係る「抵抗出力装置」は、抵抗測定器20により測定された抵抗と基準抵抗REFとを比較した結果を信号の電圧レベル(すなわちH(ハイ)レベルかL(ロー)レベルか)によって出力してもよい。
図3は、腐食検知構造体21の構成の一例を示す斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う腐食検知構造体21の断面図である。図3および図4を参照して、腐食検知構造体21は、絶縁基板6と、電極対7と、金属薄膜8と、抵抗体9とを含む。
絶縁基板6は、たとえば直方体形状を有する、絶縁性の基板である。絶縁基板6の材料としては、たとえば、酸化アルミニウム(Al2O3)またはガラス(SiO2など)を用いることができる。
電極対7は、一対の電極である第1電極71と第2電極72とを含む。第1電極71と第2電極72とは、絶縁基板6の直方体側面のうちの互いに向かい合う側面に配置されている。第1電極71および第2電極72の各々は、導体薄膜であり、たとえば錫(Sn)メッキにより形成することができる。図3および図4に示す例において、第1電極71は、金属薄膜8に電気的に接続されている。第2電極72は、抵抗体9に電気的に接続されている。
金属薄膜8は、絶縁基板6上に配置された金属の薄膜である。金属薄膜8の幅および長さは、金属薄膜8の厚さ(膜厚)よりも有意に大きい。一例として、金属薄膜8の膜厚が3μm~12μmであり、金属薄膜8の幅は0.8mmであり、金属薄膜8の長さは1.6mmである。
金属薄膜8は、腐食性ガスにより腐食される。金属薄膜8の材料としては、銀(Ag)または銅を用いることができる。これらの材料は、電気機器に使用される典型的な金属であり、主要な腐食性ガスと鋭敏に反応するため、電気機器900が曝露された環境の腐食性を定量評価するための材料として好適である。
本開示において、腐食性ガスとは、硫黄系ガス、塩素系ガス、窒素酸化物の総称である。硫黄系ガスは、硫化水素(H2S)、二酸化硫黄(SO2)、硫黄華(S8)などを含む。塩素系ガスは塩素ガス(Cl2)を含む。窒素酸化物(NOx)は、たとえば二酸化窒素(NO2)を含む。金属薄膜8の材料である銀は、硫黄華および塩素ガスに鋭敏に反応する。一方、銅は、硫化水素、二酸化硫黄および二酸化窒素に鋭敏に反応する。
抵抗体9は、絶縁基板6上において金属薄膜8に直列に接続されている。抵抗体9は、腐食性ガスに対して耐性を有する。抵抗体9の材料としては、酸化物半導体(たとえば酸化ルテニウム(RuO2))を用いることができる。あるいは、抵抗体9には、錫などの特定の金属を用いてもよい。抵抗体9の抵抗値は、金属薄膜8の抵抗値よりも高く定めることが好ましい。なお、抵抗体9は、本開示に係る「抵抗器」に相当する。
なお、図3および図4では金属薄膜8の膜厚と抵抗体9の厚さとが等しいが、これは模式的に図示したために過ぎず必須の条件ではない。また、図3および図4に示す構成は腐食検知構造体の構成の一例に過ぎず、図5~図8に示すように、他の構成を採用することもできる。
図5は、腐食検知構造体の構成の他の一例を示す斜視図である。図6は、図5のVI-VI線に沿う腐食検知構造体22の断面図である。図5および図6を参照して、腐食検知構造体22では、第1電極71と第2電極72との間に、抵抗体9と金属薄膜8と抵抗体9とがこの順で直列に接続されている。
図7は、腐食検知構造体の構成のさらに他の一例を示す斜視図である。図8は、図7のVIII-VIII線に沿う腐食検知構造体23の断面図である。図7および図8を参照して、腐食検知構造体23では、第1電極71と第2電極72との間に、金属薄膜8と抵抗体9と金属薄膜8とがこの順で直列に接続されている。
図3~図8から理解されるように、腐食検知構造体に含まれる金属薄膜8および抵抗体9の各々の個数は、1個であってもよいし複数個であってもよい。また、金属薄膜8と抵抗体9との接続順序も特に限定されるものではない。以下では腐食検知構造体21(図3および図4参照)を採用する例について代表的に説明するが、腐食検知構造体21を腐食検知構造体22または腐食検知構造体23に適宜読み替えることができる。
本実施の形態では、ユーザに報知を行うタイミングを調整するためのパラメータとして「危険度」が用いられる。危険度の設定手法について説明する。
まず、腐食検知センサ101が設けられた電気機器900を腐食性ガスが存在する環境に曝露し、電気機器本体90が腐食損傷に至るまでの金属薄膜8の膜厚の減少量を事前に求める。これにより求められた減少量を「最大減少量」と称する。より詳細に説明すると、金属薄膜8の初期の膜厚を十分に厚め(たとえば20μm)に設定する。そして、電気機器本体90が腐食損傷に至った時点(その直前の時点であってもよい)での金属薄膜8の膜厚を測定する。電気機器本体90が腐食損傷に至った時点での膜厚が8μmであった場合、最大減少量は、20μm-8μm=12μmと算出される。そして、最大減少量に対する、実際の使用条件下における腐食性ガスによる金属薄膜8の膜厚の減少量の比を「危険度」と定義する(下記式(1)参照)。
危険度=金属薄膜8の膜厚の実際の減少量/最大減少量×100[%] ・・・(1)
ある電気機器900において金属薄膜8の材料が銀である場合の最大減少量が12μmであったとする。危険度を25%に設定するときには、膜厚が12μm×25%=3μmになるように金属薄膜8が形成される。そうすると、電気機器900の実際の使用条件下において金属薄膜8が3μmだけ腐食した時点で第1電極71と第2電極72との間が断線するため、抵抗測定器20により測定される抵抗が増加する。この抵抗増加を検知することで、金属薄膜8の腐食が3μmだけ進行したことが分かる。
図9は、実施の形態1における腐食検知処理を示すフローチャートである。図9ならびに後述する図11および図14のフローチャートに示される処理は、所定周期が経過する度に図示しないメインルーチンから呼び出されて制御装置30により実行される。各ステップ(以下、Sと略す)は、基本的には制御装置30によるソフトウェア処理によって実現されるが、制御装置30内に作製された電子回路によるハードウェア処理によって実現されてもよい。
図9を参照して、S11において、制御装置30は、抵抗測定器20を用いてセンサ本体11の両端間の抵抗を測定する。抵抗測定器20により測定される抵抗は、絶縁基板6の抵抗と金属薄膜8の抵抗と抵抗体9の抵抗と電極対7の抵抗とが合成された抵抗であるため、以下では「合成抵抗X」と記載する。
S12において、制御装置30は、S11にて測定された合成抵抗Xと基準抵抗REFとを比較する。基準抵抗REFとしては、腐食性ガスによる腐食前の合成抵抗Xよりも微小量(たとえば腐食前の合成抵抗Xの数%に相当する値)だけ高い値を設定することができる。
合成抵抗Xが基準抵抗REF以下である場合(S12においてNO)、制御装置30は、以降のS13の処理をスキップして処理をメインルーチンに戻す。そうすると、所定周期が次に経過したときに図9に示す一連の処理が再度実行されることになる。これに対し、合成抵抗Xが基準抵抗REFよりも高い場合(S12においてYES)、制御装置30は、処理をS13に進める。
S13において、制御装置30は、危険度が予め定められた値(前述の例では25%)に達した旨を報知するように報知装置40を制御する。報知装置40がLEDインジケータである場合、報知装置40は、危険度が25%に達するまでは無表示であるが、危険度が25%に達すると、赤色に発光して危険度が25%まで上昇したことをユーザに報知する。
ユーザへの報知態様はこれに限定されるものではない。たとえば、報知装置40が液晶ディスプレイである場合には、危険度を表す数値(25%との数値)を表示してもよい。あるいは、報知装置40がブザーまたはスピーカーなどである場合には、危険度の上昇を音声により報知してもよい。
実施の形態1の第1実施例.
続いて、本開示に係る腐食検知センサの有効性の検証結果について説明する。以下に説明する各実施例では、金属薄膜8の腐食が加速される環境に電気機器900(この例ではインバータ)を曝露した。より具体的に、実施の形態1の第1実施例では、硫黄華が存在する75℃の環境下で電気機器900の曝露試験を行った。金属薄膜8には、前述の膜厚3μmの銀薄膜を用いた。曝露試験開始前の合成抵抗X(以下「初期合成抵抗X0」とも記載する)は1000kΩであった。この場合、基準抵抗REFを初期合成抵抗X0よりも1%だけ高い1010kΩに設定することができる。曝露試験の開始から10日経過後には、腐食性ガスにより金属薄膜8の腐食が進み、合成抵抗Xが1010kΩよりも高くなった。このときのセンサ本体11を観察すると、金属薄膜8(膜厚3μmの銀薄膜)における腐食断線の発生が確認された。
実施の形態1の第2実施例.
実施の形態1の第2実施例では、腐食検知構造体21に含まれる金属薄膜8として、膜厚3μmの銅薄膜を用いた。なお、銅薄膜の最大減少量は12μmであった。センサ本体11の初期合成抵抗X0は1000kΩであった。このような腐食検知センサ101を備える電気機器900を40℃/95%RH/(3ppmH2S+10ppmNO2)の環境に曝露した。そうすると、曝露試験の開始から1.2日後に合成抵抗Xが1010kΩよりも高くなった。このときのセンサ本体11を観察すると、腐食検知構造体21に含まれる金属薄膜8(膜厚3μmの銅薄膜)の腐食断線が確認された。
以上のように、実施の形態1においては、合成抵抗Xの測定結果をメモリに蓄積することも要さず、合成抵抗Xの測定結果をデータベースに記憶された過去のデータと照合することも要さない。実施の形態1によれば、腐食検知構造体21を用いることによって、腐食性ガスに起因する電気機器900の腐食の進行度合いを非常に簡易な構成で把握することができる。そして、危険度を100%未満の所望の値に設定することで、電気機器本体90に腐食損傷の不具合が発生する前に電気機器900の腐食の進行度合いをユーザに報知することができるので、電気機器本体90の修理または交換等の必要な対策をユーザが取ることが可能になる。
実施の形態2.
実施の形態2においては、電気機器900の腐食の進行度合いを段階的にユーザに報知するための構成について説明する。実施の形態2に係る電気機器の全体構成は、腐食検知センサが異なる以外は実施の形態1に係る電気機器900の全体構成(図1参照)と同様である。また、実施の形態2に係る腐食検知センサの構成は、センサ本体の構成を除いて実施の形態1に係る腐食検知センサ101(図1参照)の構成と同様である。よって、図面が煩雑になるのを防ぐため、以下ではセンサ本体を抜き出して図示する。
図10は、実施の形態2におけるセンサ本体の構成の一例を示す図である。図10を参照して、センサ本体121は、並列に接続された2つの腐食検知構造体21A,21Bを含む。腐食検知構造体21A,21Bの各々の構成は、図3および図4に示した腐食検知構造体21の構成と同等である。
腐食検知構造体21Aに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Bに含まれる金属薄膜8の材料とは同じである。一方、腐食検知構造体21Aに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体21Bに含まれる金属薄膜8の膜厚とは異なる。腐食検知構造体21Aに含まれる金属薄膜8の膜厚は、腐食検知構造体21Bに含まれる金属薄膜8の膜厚よりも薄い。また、腐食検知構造体21Aの抵抗値は、腐食検知構造体21Bの抵抗値よりも高い。
たとえば、実施の形態2の第1実施例において、腐食検知構造体21Aに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Bに含まれる金属薄膜8の材料とは、いずれも銀であった。腐食検知構造体21Aに含まれる金属薄膜8の膜厚は3μmであった。上記式(1)に示した危険度の定義によると、腐食検知構造体21Aに含まれる金属薄膜8の膜厚は、危険度25%(=3μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21Bに含まれる金属薄膜8の膜厚は6μmであった。腐食検知構造体21Bに含まれる金属薄膜8の膜厚は、危険度50%(=6μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21Aの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体21Bの抵抗値は100kΩであった。
実施の形態2では、合成抵抗Xとの間で大小関係を比較するための基準抵抗が2種類準備される。第1基準抵抗REF1は、2つの腐食検知構造体21A,21Bのうち金属薄膜8の膜厚が薄い腐食検知構造体21Aが腐食により断線したものの、金属薄膜8の膜厚が厚い腐食検知構造体21Bは断線していない状態におけるセンサ本体121の両端の抵抗(合成抵抗X)に基づいて定められる。第2基準抵抗REF2は、2つの腐食検知構造体21A,21Bの両方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体121の合成抵抗Xに基づいて定められる。
より具体的には、第1基準抵抗REF1は、1よりも大きい第1係数K1を腐食前の合成抵抗X(初期合成抵抗X0)に乗算した値である(REF1=K1×X0,K1>1)。第2基準抵抗REF2は、1よりも大きい第2係数K2を初期合成抵抗X0に乗算した値である(REF2=K2×X0,K2>1)。第2係数K2は第1係数K1よりも大きい(K2>K1)。よって、第2基準抵抗REF2は、第1基準抵抗REF1よりも高い(REF2>REF1)。
実施の形態2の第1実施例において、初期合成抵抗X0は、91kΩである。第1基準抵抗REF1は、初期合成抵抗X0よりも1.2%だけ高い値である92kΩに設定される。第2基準抵抗REF2は、初期合成抵抗X0よりも11%だけ高い値である101kΩに設定される。この場合、合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1を超えたことは、腐食検知構造体21Aにおいて断線が発生したこと、つまり、膜厚3μmの金属薄膜8が腐食により断線したことを意味する。このことから危険度が25%に達したことが把握される。その後に合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2を超えたことは、膜厚6μmの金属薄膜8を有する腐食検知構造体21Bが腐食により断線したことを表す。これにより、危険度が50%に達したことが把握される。
図11は、図10に示したセンサ本体121の構成に対応する腐食検知処理を示すフローチャートである。図11を参照して、S21において、制御装置30は、抵抗測定器20を用いてセンサ本体121の両端間の抵抗(合成抵抗X)を測定する。
S22において、制御装置30は、合成抵抗Xと第1基準抵抗REF1(=92kΩ)とを比較する。合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1以下である場合(S22においてNO)、制御装置30は、以降の処理をスキップして処理をメインルーチンに戻す。一方、合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1よりも高い場合(S22においてYES)、制御装置30は、処理をS23に進める。
S23において、制御装置30は、合成抵抗Xと第2基準抵抗REF2(=101kΩ)とを比較する。合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2以下である場合(S23においてNO)、すなわち、合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1超かつ第2基準抵抗REF2以下である場合、制御装置30は、処理をS25に進める。S25において、制御装置30は、危険度D1(=25%)を表示するように報知装置40を制御する。合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2よりもさらに高い場合(S23においてYES)、制御装置30は、処理をS24に進める。S24において、制御装置30は、危険度D2を表示するように報知装置40を制御する。
たとえば、報知装置40がLEDインジケータであって2つのLEDを含む場合、制御装置30は、危険度がD1以下であるときには2つのLEDをともに消灯状態に維持する。危険度がD1超かつD2以下であるときには、制御装置30は、一方のLEDは消灯させたまま、もう一方のLEDを点灯(点滅であってもよい)させる(S25)。さらに、危険度がD2超であるときには、制御装置30は、両方のLEDを点灯させる(S24)。
また、報知装置40がLEDインジケータであって発光色を切り替え可能な1つのLEDを含む場合には、制御装置30は、危険度に応じた色で発光するように当該LEDを制御してもよい。たとえば、制御装置30は、危険度がD1以下のときに消灯し、危険度がD1超かつD2以下のときに黄色に発光し、危険度がD2超であるとき赤色に発光するように、LEDを制御することができる。
さらに、報知装置40が液晶ディスプレイである場合には、制御装置30は、危険度がD1に達した時点でD1を表す数値(=25%)を表示し、危険度がD2に達した時点でD2を表す数値(=50%)を表示するように、液晶ディスプレイを制御することができる。
実施の形態2の第1実施例.
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、図10に示すセンサ本体121を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(具体的にはインバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は91kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=92kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体21A(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=101kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体21B(膜厚6μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態2の第2実施例.
図12は、実施の形態2におけるセンサ本体の構成の他の一例を示す図である。図12には、実施の形態2の第2実施例における腐食検知構造体の具体的な構成(金属薄膜8の材料および膜厚ならびに腐食検知構造体の初期抵抗)が記載されている。図12を参照して、センサ本体122の構成は、センサ本体121の構成(図10参照)と基本的に同等である。
実施の形態2の第2実施例において、腐食検知構造体21Cに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Dに含まれる金属薄膜8の材料とは、いずれも銅であった。腐食検知構造体21Cに含まれる金属薄膜8の膜厚は3μmであった。腐食検知構造体21Dに含まれる金属薄膜8の膜厚は6μmであった。腐食検知構造体21Cの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体21Dの抵抗値は100kΩであった。
40℃/95%RH/(3ppmH2S+10ppmNO2)の環境下で、センサ本体122を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は91kΩであった。曝露試験開始から1.2日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=92kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体21C(膜厚3μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=101kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体21D(膜厚6μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態2の第3実施例.
図13は、実施の形態2におけるセンサ本体の構成のさらに他の一例を示す図である。図13には、実施の形態2の第3実施例における腐食検知構造体の具体的な構成が記載されている。図13を参照して、センサ本体131は、並列に接続された3つの腐食検知構造体21E~21Gを含む。腐食検知構造体21E~21Gの各々の構成は、図3および図4に示した腐食検知構造体21の構成と同等である。
腐食検知構造体21Eに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Fに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Gに含まれる金属薄膜8の材料とは同じである。一方、腐食検知構造体21Eに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体21Fに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体21Gに含まれる金属薄膜8の膜厚とは異なる。腐食検知構造体21Eに含まれる金属薄膜8の膜厚が最も薄く、腐食検知構造体21Fに含まれる金属薄膜8の膜厚が次に薄く、腐食検知構造体21Gに含まれる金属薄膜8の膜厚が最も厚い。また、腐食検知構造体21Eの抵抗値が最も高く、腐食検知構造体21Fの抵抗値が次に高く、腐食検知構造体21Gの抵抗値が最も低いことが好ましい。
実施の形態2の第3実施例において、腐食検知構造体21Eに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Fに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Gに含まれる金属薄膜8の材料とは、いずれも銀であった。腐食検知構造体21Eに含まれる金属薄膜8の膜厚は3μmであった。この膜厚は危険度25%(=3μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21Fに含まれる金属薄膜8の膜厚は6μmであった。この膜厚は危険度50%(=6μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21Gに含まれる金属薄膜8の膜厚は9μmであった。この膜厚は危険度75%(=9μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21Eの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体21Fの抵抗値は100kΩであり、腐食検知構造体21Gの抵抗値は10kΩであった。
図13に示す構成では、合成抵抗Xと比較するための基準として、3種類の基準抵抗(第1基準抵抗REF1~第3基準抵抗REF3)が準備される。第1基準抵抗REF1は、3つの腐食検知構造体21E~21Gのうち金属薄膜8の膜厚が最も薄い腐食検知構造体21Eが腐食により断線したものの、残る2つの腐食検知構造体21F,21Gは断線していない状態におけるセンサ本体131の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第2基準抵抗REF2は、腐食検知構造体21E,21Fが腐食により断線したものの、金属薄膜8の膜厚が最も厚い腐食検知構造体21Gは断線していない状態におけるセンサ本体131の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第3基準抵抗REF3は、3つの腐食検知構造体21E~21Gすべてが腐食により断線した状態におけるセンサ本体131の合成抵抗Xに基づいて定められる。
より具体的には、第1基準抵抗REF1は、1よりも大きい第1係数K1を腐食前の合成抵抗X(初期合成抵抗X0)に乗算した値である(REF1=K1×X0,K1>1)。第2基準抵抗REF2は、1よりも大きい第2係数K2を初期合成抵抗X0に乗算した値である(REF2=K2×X0,K2>1)。第3基準抵抗REF3は、1よりも大きい第3係数K3を初期合成抵抗X0に乗算した値である(REF3=K3×X0,K3>1)。第3係数K3、第2係数K2および第1係数K1は、この順に大きい(K3>K2>K1)。よって、第3基準抵抗REF3、第2基準抵抗REF2および第1基準抵抗REF1は、この順に高い(REF3>REF2>REF1)。
実施の形態2の第3実施例において、初期合成抵抗X0は9.01kΩであった。第1基準抵抗REF1は、初期合成抵抗X0よりも0.1%だけ高い値である9.02kΩに設定された。第2基準抵抗REF2は、初期合成抵抗X0よりも1%だけ高い値である9.10kΩに設定された。第3基準抵抗REF3は、初期合成抵抗X0よりも12%だけ高い値である10.1kΩに設定された。この場合、合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1を超えたことは、腐食検知構造体21Eに含まれる膜厚3μmの金属薄膜8が腐食により断線したことを意味する。このことから危険度が25%に達したことが把握される。合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2を超えたことは、腐食検知構造体21Fに含まれる膜厚6μmの金属薄膜8が腐食によりさらに断線したことを意味する。このことから危険度が50%に達したことが把握される。合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3を超えたことは、腐食検知構造体21Gに含まれる膜厚9μmの金属薄膜8が腐食によりさらに断線したことを意味する。このことから危険度が75%に達したことが把握される。
図14は、図13に示したセンサ本体131の構成に対応する腐食検知処理を示すフローチャートである。図14を参照して、S31において、制御装置30は、抵抗測定器20を用いてセンサ本体131の両端間の抵抗(合成抵抗X)を測定する。
S32において、制御装置30は、合成抵抗Xと第1基準抵抗REF1(=9.02kΩ)とを比較する。合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1以下である場合(S32においてNO)、制御装置30は、以降の処理をスキップして処理をメインルーチンに戻す。一方、合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1よりも高い場合(S32においてYES)、制御装置30は、処理をS33に進める。
S33において、制御装置30は、合成抵抗Xと第2基準抵抗REF2(=9.10kΩ)とを比較する。合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2以下である場合(S33においてNO)、すなわち、合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1超かつ第2基準抵抗REF2以下である場合、制御装置30は、処理をS37に進める。一方、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2よりもさらに高い場合(S33においてYES)、制御装置30は、処理をS34に進める。
S34において、制御装置30は、合成抵抗Xと第3基準抵抗REF3(=10.1kΩ)とを比較する。合成抵抗Xが第3基準抵抗REF2以下である場合(S34においてNO)、すなわち、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2超かつ第3基準抵抗REF3以下である場合、制御装置30は、処理をS36に進める。一方、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3よりもさらに高い場合(S34においてYES)、制御装置30は、処理をS35に進める。
S37において、制御装置30は、危険度D1(=25%)をユーザに報知するように報知装置40を制御する。S36において、制御装置30は、危険度D2(=50%)をユーザに報知するように報知装置40を制御する。S35において、制御装置30は、危険度D3(=75%)をユーザに報知するように報知装置40を制御する。
各危険度D1~D3の報知態様は、図11にて説明した報知態様と同等である。具体的には、報知装置40がLEDインジケータであって3つのLEDを含む場合、制御装置30は、危険度がD1以下であるときには3つのLEDをいずれも消灯させる。危険度がD1超かつD2以下であるときには、制御装置30は、2つのLEDは消灯させたまま1つのLEDを点灯させる。さらに、危険度がD2超かつD3以下であるときには、制御装置30は、1つのLEDは消灯させたたま2つのLEDを点灯させる。そして、危険度がD3超であるときには、制御装置30は、3つのLEDすべてを点灯させる。
また、報知装置40がLEDインジケータであって発光色を切り替え可能な1つのLEDを含む場合には、制御装置30は、危険度に応じた色で発光するように当該LEDを制御してもよい。たとえば、制御装置30は、危険度がD1以下のときに消灯し、危険度がD1超かつD2以下のときに緑色に発光し、危険度がD2超かつD3以下のときに黄色に発光し、危険度がD3超であるとき赤色に発光するように、LEDを制御することができる。
さらに、報知装置40が液晶ディスプレイである場合には、制御装置30は、危険度がD1に達した時点でD1を表す数値(=25%)を表示し、危険度がD2に達した時点でD2を表す数値(=50%)を表示し、危険度がD3に達した時点でD3を表す数値(=75%)を表示するように、液晶ディスプレイを制御することができる。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、図13に示すセンサ本体131を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は9.01kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=9.02kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体21Eの腐食断線に起因することが確認された。その後、曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=9.10kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体21Fの腐食断線に起因することが確認された。さらに曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=10.1kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体21Gの腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態2の第4実施例.
図15は、実施の形態2におけるセンサ本体の構成のさらに別の一例を示す図である。図15には、実施の形態2の第4実施例におけるセンサ本体132に含まれる腐食検知構造体21H~21Jの具体的な構成が記載されている。センサ本体132の構成は、センサ本体131の構成(図13参照)と基本的に同等である。
腐食検知構造体21Hに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Iに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Jに含まれる金属薄膜8の材料とは、いずれも銅であった。腐食検知構造体21Hに含まれる金属薄膜8の膜厚は3μmであった。腐食検知構造体21Iに含まれる金属薄膜8の膜厚は6μmであった。腐食検知構造体21Jに含まれる金属薄膜8の膜厚は9μmであった。腐食検知構造体21Hの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体21Iの抵抗値は100kΩであり、腐食検知構造体21Jの抵抗値は10kΩであった。
40℃/95%RH/(3ppmH2S+10ppmNO2)の環境下で、センサ本体132を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は9.01kΩであった。試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=9.02kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体21H(膜厚3μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=9.10kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体21I(膜厚6μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。さらにその後、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=10.1kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体21J(膜厚9μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
以上のように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、簡易な構成によって、腐食性ガスに起因する電気機器の腐食の進行度合いを把握することができる。また、実施の形態2では複数の腐食検知構造体が並列に接続されるとともに、複数の危険度が設定される。これにより、腐食の進行度合いをより詳細に、段階的にユーザに報知することが可能になる。
なお、図10、図12、図13および図15では、2つまたは3つの腐食検知構造体が並列に接続された構成を例に説明したが、4つ以上の腐食検知構造体を用いてもよい。任意のN(Nは2以上の自然数)個の腐食検知構造体が用いられる場合、N並列回路が構成されることとなる。Nが大きいほど、腐食検知センサの構成が複雑になるものの、より詳細な腐食の進行度合い(危険度)をユーザに報知することができる。
実施の形態3.
電気機器900は様々な環境に設置され、種々の腐食性ガスに曝される可能性がある。実施の形態3では、複数種類の腐食性ガスによる腐食を検知可能な構成について説明する。
図16は、実施の形態3におけるセンサ本体の構成の一例を示す図である。図16には、実施の形態3の第1実施例におけるセンサ本体14に含まれる腐食検知構造体21K,21Lの具体的な構成が記載されている。
図16を参照して、センサ本体14は、直列に接続された2つの腐食検知構造体21K,21Lと、3つの配線41~43とを含む。腐食検知構造体21K,21Lの各々の構成は、図3および図4に示した腐食検知構造体21の構成と同等である。配線41と配線42とは互いに間隔を隔てて配置されている。腐食検知構造体21Kは、配線41と配線42との間を接続するように配置され、半田により配線41,42上に実装されている。同様に、配線42と配線43とは互いに間隔を隔てて配置されている。腐食検知構造体21Lは、配線42と配線43との間を接続するように配置され、半田により配線42,43上に実装されている。
腐食検知構造体21Kに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Lに含まれる金属薄膜8の材料とは異なる。本実施の形態において、直列に接続された腐食検知構造体21K,21Lの間で材料が相違することは必須である。
どの種類の腐食性ガスに対して鋭敏に反応するかは金属薄膜8の材料に応じて異なる。具体的には前述のように、銀は、硫黄華および塩素ガスなどに鋭敏に反応する。銅は、硫化水素、二酸化硫黄および二酸化窒素などに鋭敏に反応する。電気機器900の設置環境に硫黄華等が存在する場合、銀の腐食速度の方が銅の腐食速度よりも速い。そのため、銀薄膜を含む腐食検知構造体によって、硫黄華等による電気機器900の腐食の進行度合い(危険度)を評価することができる。一方、電気機器900の設置環境に硫化水素等が存在する場合、銅の腐食速度の方が銀の腐食速度よりも速い。そのため、銅薄膜を含む腐食検知構造体によって硫化水素等による電気機器900の危険度を評価することができる。
実施の形態3の第1実施例では、腐食検知構造体21Kに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体21Lに含まれる金属薄膜8の膜厚とは等しい。しかし、これらの膜厚は互いに異なってもよい。各金属薄膜8の膜厚は、腐食性ガスの種類もしくは濃度による材料毎の腐食速度の違い、または、ユーザに報知しようとする危険度などを考慮して適宜設定すればよい。
また、実施の形態3の第1実施例では、腐食検知構造体21Kの抵抗値と、腐食検知構造体21Lの抵抗値とは等しい。ただし、本開示に係る腐食検知センサでは腐食断線に伴う抵抗増加を検知できればよいので、これらの抵抗値が等しいことは必須ではない。その一方で、両抵抗値を等しい値とすることで、抵抗体9の仕様(材料およびサイズなど)を共通化できるので、腐食検知構造体21K,21Lの製造がより一層容易になる。
実施の形態3の第1実施例において、腐食検知構造体21Kに含まれる金属薄膜8の材料は銀であり、腐食検知構造体21Lに含まれる金属薄膜8の材料は銅であった。腐食検知構造体21Kに含まれる金属薄膜8の膜厚は3μmであり、腐食検知構造体21Lに含まれる金属薄膜8の膜厚も3μmであった。金属薄膜8の材料が銀および銅のいずれであっても最大減少量が12μmで共通である場合、上記膜厚は、いずれも危険度25%(=3μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21Kの抵抗値および腐食検知構造体21Lの抵抗値は、1000kΩであった。
本実施の形態においても、合成抵抗Xとの大小関係を比較する基準として基準抵抗REFが準備される。基準抵抗REFは、2つの腐食検知構造体21K,21Lのうちの少なくとも一方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体14の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。より具体的には、基準抵抗REFは、1よりも大きい係数Kを腐食前の初期合成抵抗X0に乗算した値である(REF=K×X0,K>1)。
図16に示すセンサ本体14を含む腐食検知センサを用いて実施される腐食検知処理は、実施の形態1にて説明した処理(図9のフローチャート参照)と同様であるため、説明は繰り返さない。
実施の形態3の第1実施例.
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、図16に示すセンサ本体14を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は2000kΩであった。基準抵抗REFは、初期合成抵抗X0よりも1%だけ高い値である2020kΩに設定した。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが基準抵抗REFよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体21K(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態3の第2実施例.
図17は、実施の形態3におけるセンサ本体の構成の他の一例を示す図である。図17には、実施の形態3の第2実施例におけるセンサ本体15に含まれる腐食検知構造体の具体的な構成が記載されている。
図17を参照して、センサ本体15は、4つの腐食検知構造体21M~21Pと、3つの配線41~43とを含む。腐食検知構造体21Mと腐食検知構造体21Nとは、配線42を介して直列に接続されている。また、腐食検知構造体21Oと腐食検知構造体21Pとは、配線42を介して直列に接続されている。さらに、腐食検知構造体21M,21Nと腐食検知構造体21O,21Pとは、配線41と配線43との間に並列に接続されている。腐食検知構造体21M~21Pの各々の構成は、図3および図4に示した腐食検知構造体21の構成と同等である。
腐食検知構造体21Mに含まれる金属薄膜8(本開示に係る「第1の薄膜」に相当)の材料と、腐食検知構造体21Nに含まれる金属薄膜8(本開示に係る「第2の薄膜」に相当)の材料とは異なる。また、腐食検知構造体21Oに含まれる金属薄膜8(本開示に係る「第3の薄膜」に相当)の材料と、腐食検知構造体21Pに含まれる金属薄膜8(本開示に係る「第4の薄膜」に相当)の材料とも異なる。腐食検知構造体21Mの抵抗値と、腐食検知構造体21Nの抵抗値とは等しい。また、腐食検知構造体21Oの抵抗値と、腐食検知構造体21Pの抵抗値とは等しい。さらに、腐食検知構造体21M,21Nの各々の抵抗値は、腐食検知構造体21O,21Pの各々の抵抗値よりも高い。
実施の形態3の第2実施例において、腐食検知構造体21M,21Oに含まれる金属薄膜8の材料は銀であり、腐食検知構造体21N,21Pに含まれる金属薄膜8の材料は銅であった。腐食検知構造体21M,21Nに含まれる金属薄膜8の膜厚は3μmであった。この膜厚は危険度25%(=3μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21O,21Pに含まれる金属薄膜8の膜厚は6μmであった。この膜厚は危険度50%(=6μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21M,21Nの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体21O,21Pの抵抗値は100kΩであった。
合成抵抗Xとの大小関係を比較する基準として、2種類の基準抵抗(第1基準抵抗REF1および第2基準抵抗REF2)が準備される。第1基準抵抗REF1は、直列に接続された腐食検知構造体21M,21Nのうちの少なくとも一方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体15の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第2基準抵抗REF2は、直列に接続された腐食検知構造体21O,21Pのうちの少なくとも一方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体15の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。係数を用いた具体的な設定手法は、実施の形態2の第1実施例(図10参照)における設定手法と同様である。また、センサ本体15を含む腐食検知センサを用いて実施される腐食検知処理は、図11に示したフローチャートにより表される処理と同様であるため、説明は繰り返さない。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体15を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は182kΩであった。試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=184kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体21M(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=202kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体21O(膜厚6μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態3の第3実施例.
図18は、実施の形態3におけるセンサ本体の構成のさらに他の一例を示す図である。図18には、実施の形態3の第3実施例におけるセンサ本体16に含まれる腐食検知構造体の具体的な構成が記載されている。
図18を参照して、センサ本体16は、6つの腐食検知構造体21Q~21Vと、3つの配線41~43とを含む。腐食検知構造体21Qと腐食検知構造体21Rとは、配線42を介して直列に接続されている。同様に、腐食検知構造体21Sと腐食検知構造体21Tとは、配線42を介して直列に接続されている。腐食検知構造体21Uと腐食検知構造体21Vとも、配線42を介して直列に接続されている。さらに、腐食検知構造体21Q,21Rと腐食検知構造体21S,21Tと腐食検知構造体21U,21Vとは、配線41と配線43との間に並列に接続されている。腐食検知構造体21Q~21Vの各々の構成は、図3および図4に示した腐食検知構造体21の構成と同等である。
腐食検知構造体21Qに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Rに含まれる金属薄膜8の材料とは異なる。また、腐食検知構造体21Sに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Tに含まれる金属薄膜8の材料とは異なる。腐食検知構造体21Uに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体21Vに含まれる金属薄膜8の材料とは異なる。腐食検知構造体21Qの抵抗値と、腐食検知構造体21Rの抵抗値とは等しい。腐食検知構造体21Sの抵抗値と、腐食検知構造体21Tの抵抗値とは等しい。腐食検知構造体21Uの抵抗値と、腐食検知構造体21Vの抵抗値とは等しい。腐食検知構造体21Q,21Rの各々の抵抗値は、腐食検知構造体21S,21Tの各々の抵抗値よりも高い。さらに、腐食検知構造体21S,21Tの各々の抵抗値は、腐食検知構造体21U,21Vの各々の抵抗値よりも高い。
実施の形態3の第3実施例において、腐食検知構造体21Q,21S,21Uに含まれる金属薄膜8の材料は銀であり、腐食検知構造体21R,21T,21Vに含まれる金属薄膜8の材料は銅であった。腐食検知構造体21Q,21Rに含まれる金属薄膜8の膜厚は3μmであった。この膜厚は危険度25%(=3μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21S,21Tに含まれる金属薄膜8の膜厚は6μmであった。この膜厚は危険度50%(=6μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21U,21Vに含まれる金属薄膜8の膜厚は9μmであった。この膜厚は危険度75%(=9μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体21Q,21Rの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体21S,21Tの抵抗値は100kΩであり、腐食検知構造体21U,21Vの抵抗値は10kΩであった。
合成抵抗Xとの大小関係を比較する基準として、3種類の基準抵抗(第1基準抵抗REF1~第3基準抵抗REF3)が準備される。第1基準抵抗REF1は、直列に接続された腐食検知構造体21Q,21Rのうちの少なくとも一方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体16の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第2基準抵抗REF2は、直列に接続された腐食検知構造体21S,21Tのうちの少なくとも一方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体16の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第3基準抵抗REF3は、直列に接続された腐食検知構造体21U,21Vのうちの少なくとも一方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体16の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。係数を用いた具体的な設定手法は、実施の形態2の第3実施例(図13参照)における設定手法と同様である。また、センサ本体16を含む腐食検知センサを用いて実施される腐食検知処理は、図14に示したフローチャートにより表される処理と同様であるため、説明は繰り返さない。
40℃/95%RH/(3ppmH2S+10ppmNO2)の環境下で、センサ本体16を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は18kΩであった。曝露試験開始から1.2日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=18.1kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体21R(膜厚3μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=18.3kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体21T(膜厚6μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。さらにその後、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=20.2kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体21V(膜厚9μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
以上のように、実施の形態3によれば、実施の形態1,2と同様に、簡易な構成によって、腐食性ガスに起因する電気機器900の腐食の進行度合いを把握することができる。また、実施の形態3では、金属薄膜8の材料が互いに異なる複数の腐食検知構造体が直列に接続される。腐食性ガスの種類と金属の種類との組み合わせにより腐食性(腐食速度)が異なるので、この性質を利用することにより、複数種類の腐食性ガスによる電気機器900の腐食を検知することができる。さらに、腐食検知構造体の直列接続と並列接続とを組み合わせることにより、電気機器900の腐食の進行度合い(危険度)についても詳細にユーザに報知することが可能になる。
実施の形態4.
実施の形態1~3では、金属薄膜8および抵抗体9の両方が腐食検知構造体に含まれる構成について説明した。しかし、以下に説明するように、腐食検知構造体の構成はこれに限定されるものではない。抵抗体9は、腐食検知構造体の外部に設けられていてもよい。
図19は、実施の形態4に係る腐食検知センサを備える電気機器を示す図である。図19を参照して、電気機器904は腐食検知センサ104を備える。腐食検知センサ104はセンサ本体171を備える。センサ本体171は、腐食検知構造体21に代えて腐食検知構造体24を含む点、および、固定抵抗器50をさらに含む点において、実施の形態1におけるセンサ本体11(図1参照)と異なる。センサ本体171のそれ以外の構成は、センサ本体11の対応する構成と同様であるため、説明は繰り返さない。腐食検知構造体24の構成としては、たとえば、後述する実施の形態4の第1実施例の構成を採用することができる。
固定抵抗器50は、たとえば面実装型の抵抗器(チップ抵抗)またはリード線型の抵抗器である。固定抵抗器50は、腐食検知構造体24に直列に接続されている。固定抵抗器50は、腐食性ガスに対して耐性を有する。また、固定抵抗器50の抵抗値は、金属薄膜8(図20および図21参照)の抵抗値よりも高く定められている。なお、固定抵抗器50は、本開示に係る「抵抗器」の他の一例である。
図20は、実施の形態4における腐食検知構造体24の構成の一例を示す斜視図である。図21は、図20のXXI-XXI線に沿う腐食検知構造体24の断面図である。
図20および図21を参照して、腐食検知構造体24は、抵抗体9を含まない点において、実施の形態1における腐食検知構造体21~23(図3、図5および図7参照)と異なる。腐食検知構造体24では、絶縁基板6上において第1電極71と第2電極72を電気的に接続するように金属薄膜8が配置されている。金属薄膜8の材料は、実施の形態1と同様に、腐食性ガスにより腐食される金属(銀または銅など)である。
このように、腐食検知構造体21の構成要素として腐食検知構造体21の内部に抵抗体9を配置するのに代えて、腐食検知構造体24の外部にディスクリート部品として固定抵抗器50を配置してもよい。実施の形態4においても実施の形態1と同様に、腐食性ガスによる電気機器900の腐食の進行を検知可能である。この検知手法は、実施の形態1における手法と同様(図9参照)であるため、詳細な説明は繰り返さない。
実施の形態4の第1実施例.
実施の形態4の第1実施例では、腐食検知構造体24に含まれる金属薄膜8の材料は銀であった。金属薄膜8の膜厚は3μmであった。この膜厚は危険度25%(=3μm/12μm)に対応する。固定抵抗器50の抵抗値は1000kΩであった。
このようなセンサ本体171を含む腐食検知センサ104が設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を硫黄華が存在する環境下で行った。初期合成抵抗X0は1000kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが基準抵抗REF=1010kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体24(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態4においても実施の形態2,3にて説明したように、腐食検知構造体24と固定抵抗器50とからなる直列回路を直列または並列に適宜接続することが可能である。実施の形態4とおけるセンサ本体の構成は、抵抗体9に代えて固定抵抗器50が腐食検知構造体の外部に設けられている以外は実施の形態2,3にて既に説明したセンサ本体の構成と基本的に共通である。以下では、実施の形態2,3における対応する構成の説明を援用し、主として腐食検知センサの有効性の検証結果について説明する。
実施の形態4の第2実施例.
図22は、実施の形態4におけるセンサ本体の構成の第2の例を示す図である。図22を参照して、センサ本体172は、図10に示したセンサ本体121または図12に示したセンサ本体122に対応する。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体172を含む腐食検知センサが設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は、91kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=92kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体24A(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=101kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体24B(膜厚6μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態4の第3実施例.
図23は、実施の形態4におけるセンサ本体の構成の第3の例を示す図である。図23を参照して、センサ本体173は、図13に示したセンサ本体131または図15に示したセンサ本体132に対応する。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体173を含む腐食検知センサが設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は、9.01kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=9.02kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体24C(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=9.10kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体24D(膜厚6μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。さらにその後、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=10.1kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体24E(膜厚9μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態4の第4実施例.
図24は、実施の形態4におけるセンサ本体の構成の第4の例を示す図である。図24を参照して、センサ本体174は、図16に示したセンサ本体14に対応する。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体174を含む腐食検知センサが設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は2000kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが基準抵抗REF=2020kΩよりも高くなった。この抵抗増加は、腐食検知構造体24F(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態4の第5実施例.
図25は、実施の形態4におけるセンサ本体の構成の第5の例を示す図である。図25を参照して、センサ本体175は、図17に示したセンサ本体15に対応する。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体175を含む腐食検知センサが設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は182kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=184kΩよりも高くなったが、この抵抗増加は腐食検知構造体24H(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=202kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体24J(膜厚6μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態4の第6実施例.
図26は、実施の形態4におけるセンサ本体の構成の第6の例を示す図である。図26を参照して、センサ本体176は、図18に示したセンサ本体16に対応する。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体176を含む腐食検知センサが設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は18.0kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=18.1kΩよりも高くなったが、この抵抗増加は腐食検知構造体24L(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=18.3kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体24N(膜厚6μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。さらにその後、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=20.2kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体24P(膜厚9μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
なお、実施の形態4の各実施例では、硫黄華が存在する環境に電気機器904を曝露して銀を含む金属薄膜8の腐食断線を確認した例について説明した。しかし、実施の形態2,3にて説明したように、たとえば40℃/95%RH/(3ppmH2S+10ppmNO2)の環境下では、銅を含む金属薄膜8の腐食断線を確認することができる。
以上のように、実施の形態4によれば、固定抵抗器50が腐食検知構造体の外部に設けられている構成であっても実施の形態1と同様に、簡易な構成によって、腐食性ガスによる電気機器904の腐食の進行度合いを把握することができる。また、複数の腐食検知構造体を直列に接続することで、複数種類の腐食性ガスによる電気機器904の腐食を検知することができる。さらに、複数の腐食検知構造体を並列に接続することで、より詳細な電気機器904の腐食の進行度合い(危険度)についてもユーザに報知することが可能になる。
実施の形態5.
実施の形態5においては、複数の腐食検知構造体の間で金属薄膜の材料が互いに異なる構成について説明する。なお、実施の形態5に係る電気機器の全体構成は、金属薄膜の材料が異なる以外は実施の形態1に係る電気機器900の全体構成(図1参照)と同様である。
金属薄膜の材料として、銀または銅に加えて銀系合金または銅系合金を用いることも可能である。銀系合金または銅系合金における添加元素は、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、金(Au)、亜鉛(Zn)または白金(Pt)などである。添加元素は、銀または銅に対して0~30wt%の範囲で添加される。また、銀系合金には0~30wt%の範囲で銅を添加でき、銅系合金には0~30wt%の範囲で銀を添加できる。これらの材料は、電気機器に使用される典型的な金属であり、主要な腐食性ガスと鋭敏に反応するため、電気機器900が曝露された環境の腐食性を定量評価するための材料として好適である。なお、銀系合金および銅系合金における構成元素は3種類以上であってもよい。
図27は、実施の形態5におけるセンサ本体の構成の一例を示す図である。図27には、実施の形態5の第1実施例におけるセンサ本体に含まれる腐食検知構造体の具体的な構成が記載されている。図27を参照して、センサ本体181は、並列に接続された2つの腐食検知構造体25A,25Bを含む。腐食検知構造体25A,25Bの各々の構成は、図3および図4に示した腐食検知構造体21の構成と同等である。
腐食検知構造体25Aに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体25Bに含まれる金属薄膜8の材料とは異なる。腐食検知構造体25Aに含まれる金属薄膜8の材料の最大減少量は、腐食検知構造体25Bに含まれる金属薄膜8の材料の最大減少量よりも大きい。腐食検知構造体25Aに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体25Bに含まれる金属薄膜8の膜厚とは等しい。また、腐食検知構造体25Aの抵抗値は、腐食検知構造体25Bの抵抗値よりも高い。
実施の形態5の第1実施例において、腐食検知構造体25Aに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体25Bに含まれる金属薄膜8の膜厚とは、いずれも3μmであった。腐食検知構造体25Aに含まれる金属薄膜8の材料は銀であり、腐食検知構造体25Bに含まれる金属薄膜8の材料は銀-亜鉛合金(亜鉛添加量は0.4wt%)であった。なお、銀-亜鉛合金薄膜(亜鉛添加量は0.4wt%)の最大減少量は9.1μmであった。上記式(1)に示した危険度の定義によると、腐食検知構造体25Aに含まれる金属薄膜8の膜厚は、危険度25%(=3μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体25Bに含まれる金属薄膜8の膜厚は、危険度32%(=3μm/9.1μm)に対応する。腐食検知構造体25Aの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体25Bの抵抗値は100kΩであった。
実施の形態5においても、合成抵抗Xとの間で大小関係を比較するための基準抵抗が2種類準備される。前述のように、2つの腐食検知構造体25A,25Bのうち、腐食検知構造体25Aに含まれる金属薄膜8の最大減少量(=12μm)の方が、腐食検知構造体25Bに含まれる金属薄膜8の最大減少量(=9.1μm)よりも大きい。第1基準抵抗REFは、腐食検知構造体25Aが腐食により断線したものの、腐食検知構造体25Bは断線していない状態におけるセンサ本体181の両端の抵抗(合成抵抗X)に基づいて定められる。第2基準抵抗REF2は、2つの腐食検知構造体25A,25Bの両方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体181の合成抵抗Xに基づいて定められる。
より具体的には、第1基準抵抗REF1は、1よりも大きい第1係数K1を腐食前の合成抵抗X(初期合成抵抗X0)に乗算した値である(REF1=K1×X0,K1>1)。第2基準抵抗REF2は、1よりも大きい第2係数K2を初期合成抵抗X0に乗算した値である(REF2=K2×X0,K2>1)。第2係数K2は第1係数K1よりも大きい(K2>K1)。よって、第2基準抵抗REF2は、第1基準抵抗REF1よりも高い(REF2>REF1)。
実施の形態5の第1実施例において、初期合成抵抗X0は、91kΩである。第1基準抵抗REF1は、初期合成抵抗X0よりも1.2%だけ高い値である92kΩに設定される。第2基準抵抗REF2は、初期合成抵抗X0よりも11%だけ高い値である101kΩに設定される。この場合、合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1を超えたことは、腐食検知構造体25Aにおいて断線が発生したこと、つまり、最大減少量12μmかつ膜厚3μmの金属薄膜8が腐食により断線したことを意味する。このことから危険度が25%に達したことが把握される。その後に合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2を超えたことは、最大減少量9.1μmかつ膜厚3μmの金属薄膜8が腐食により断線したことを表す。これにより、危険度が32%に達したことが把握される。
なお、実施の形態5における腐食検知処理のフローチャートは、実施の形態2における腐食検知処理のフローチャート(図11参照)と同様であるため、詳細な説明は繰り返さない。
実施の形態5の第1実施例.
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、図27に示すセンサ本体181を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は91kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=92kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体25A(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=101kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体25B(膜厚3μmの銀-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態5の第2実施例.
図28は、実施の形態5におけるセンサ本体の構成の他の一例を示す図である。図28には、実施の形態5の第2実施例におけるセンサ本体に含まれる腐食検知構造体の具体的な構成が記載されている。図28を参照して、センサ本体182の構成は、センサ本体181の構成(図27参照)と基本的に同等である。
実施の形態5の第2実施例において、腐食検知構造体25Cに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体25Dに含まれる金属薄膜8の膜厚とは、いずれも3μmであった。腐食検知構造体25Cに含まれる金属薄膜8の材料は銅-亜鉛合金(亜鉛添加量は30wt%)であった。この材料における上記膜厚は、危険度18%(=3μm/16.8μm)に対応する。腐食検知構造体25Dに含まれる金属薄膜8の材料は銅であった。この材料における上記膜厚は、危険度25%(=3μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体25Cの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体25Dの抵抗値は100kΩであった。
40℃/95%RH/(3ppmH2S+10ppmNO2)の環境下で、センサ本体182を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は91kΩであった。曝露試験開始から1.2日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=92kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体25C(膜厚3μmの銅-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=101kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体25D(膜厚3μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態5の第3実施例.
図29は、実施の形態5におけるセンサ本体の構成のさらに他の一例を示す図である。図29には、実施の形態5の第3実施例におけるセンサ本体に含まれる腐食検知構造体の具体的な構成が記載されている。図29を参照して、センサ本体183は、並列に接続された3つの腐食検知構造体25E~25Gを含む。腐食検知構造体25E~25Gの各々の構成は、図3および図4に示した腐食検知構造体21の構成と同等である。
腐食検知構造体25Eに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体25Fに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体25Gに含まれる金属薄膜8の膜厚とは等しい。一方、腐食検知構造体25Eに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体25Fに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体25Gに含まれる金属薄膜8の材料とは異なる。腐食検知構造体25Eに含まれる金属薄膜8の最大減少量が最も大きく、腐食検知構造体25Fに含まれる金属薄膜8の最大減少量が次に大きく、腐食検知構造体25Gに含まれる金属薄膜8の最大減少量が最も小さい。また、腐食検知構造体25Eの抵抗値が最も高く、腐食検知構造体25Fの抵抗値が次に高く、腐食検知構造体25Gの抵抗値が最も低い。
実施の形態5の第3実施例において、腐食検知構造体25Eに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体25Fに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体25Gに含まれる金属薄膜8の膜厚とは、いずれも3μmであった。腐食検知構造体25Eに含まれる金属薄膜8の材料は、銀であった。この材料における上記膜厚は、危険度25%(=3μm/12μm)に対応する。腐食検知構造体25Fに含まれる金属薄膜8の材料は、銀-亜鉛合金(亜鉛添加量は0.4wt%)であった。この材料における上記膜厚は、危険度32%(=3μm/9.1μm)に対応する。腐食検知構造体25Gに含まれる金属薄膜8の材料は、銀-アルミニウム合金(アルミニウム添加量は0.4wt%)であった。この材料における上記膜厚は、危険度41%(=3μm/7.3μm)に対応する。腐食検知構造体25Eの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体25Fの抵抗値は100kΩであり、腐食検知構造体25Gの抵抗値は10kΩであった。
図29に示す構成では、合成抵抗Xと比較するための基準として、3種類の基準抵抗(第1基準抵抗REF1~第3基準抵抗REF3)が準備される。第1基準抵抗REF1は、3つの腐食検知構造体25E~25Gのうち最大減少量が最も大きい腐食検知構造体25Eが腐食により断線したものの、残る2つの腐食検知構造体25F,25Gは断線していない状態におけるセンサ本体183の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第2基準抵抗REF2は、腐食検知構造体25E,25Fが腐食により断線したものの、最大減少量が最も小さい腐食検知構造体25Gは断線していない状態におけるセンサ本体183の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第3基準抵抗REF3は、3つの腐食検知構造体25E~25Gすべてが腐食により断線した状態におけるセンサ本体183の合成抵抗Xに基づいて定められる。
より具体的には、第1基準抵抗REF1は、1よりも大きい第1係数K1を腐食前の合成抵抗X(初期合成抵抗X0)に乗算した値である(REF1=K1×X0,K1>1)。第2基準抵抗REF2は、1よりも大きい第2係数K2を初期合成抵抗X0に乗算した値である(REF2=K2×X0,K2>1)。第3基準抵抗REF3は、1よりも大きい第3係数K3を初期合成抵抗X0に乗算した値である(REF3=K3×X0,K3>1)。第3係数K3、第2係数K2および第1係数K1は、この順に大きい(K3>K2>K1)。よって、第3基準抵抗REF3、第2基準抵抗REF2および第1基準抵抗REF1は、この順に高い(REF3>REF2>REF1)。
実施の形態5の第3実施例において、初期合成抵抗X0は9.01kΩであった。第1基準抵抗REF1は、初期合成抵抗X0よりも0.1%だけ高い値である9.02kΩに設定された。第2基準抵抗REF2は、初期合成抵抗X0よりも1%だけ高い値である9.10kΩに設定された。第3基準抵抗REF3は、初期合成抵抗X0よりも12%だけ高い値である10.1kΩに設定された。この場合、合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1を超えたことは、腐食検知構造体25Eに含まれる、銀の金属薄膜8が腐食により断線したことを意味する。このことから危険度が25%に達したことが把握される。合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2を超えたことは、腐食検知構造体25Fに含まれる、銀-亜鉛合金の金属薄膜8が腐食によりさらに断線したことを意味する。このことから危険度が32%に達したことが把握される。合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3を超えたことは、腐食検知構造体21Gに含まれる、銀-アルミニウム合金の金属薄膜8が腐食によりさらに断線したことを意味する。このことから危険度が41%に達したことが把握される。
なお、実施の形態5の第3実施例における腐食検知処理のフローチャートは、実施の形態2の第3実施例における腐食検知処理のフローチャート(図14参照)と同様であるため、詳細な説明は繰り返さない。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、図29に示すセンサ本体183を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は9.01kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=9.02kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体25E(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後、曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=9.10kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体25F(膜厚3μmの銀-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。さらに曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=10.1kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体25G(膜厚3μmの銀-アルミニウム合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態5の第4実施例.
図30は、実施の形態5におけるセンサ本体の構成のさらに別の一例を示す図である。図30には、実施の形態5の第4実施例におけるセンサ本体に含まれる腐食検知構造体の具体的な構成が記載されている。図30を参照して、センサ本体184の構成は、センサ本体183の構成(図29参照)と基本的に同等である。
腐食検知構造体25Hに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体25Iに含まれる金属薄膜8の膜厚と、腐食検知構造体25Jに含まれる金属薄膜8の膜厚とは、いずれも3μmであった。腐食検知構造体25Hに含まれる金属薄膜8の材料は、銅-錫合金(錫添加量は6wt%)であった。なお、この材料における上記膜厚は、危険度17%(=3μm/18μm)に対応する。腐食検知構造体25Iに含まれる金属薄膜8の材料は、銅-亜鉛合金(亜鉛添加量は30wt%)であった。腐食検知構造体21Jに含まれる金属薄膜8の材料は、銅であった。腐食検知構造体25Hの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体25Iの抵抗値は100kΩであり、腐食検知構造体25Jの抵抗値は10kΩであった。
40℃/95%RH/(3ppmH2S+10ppmNO2)の環境下で、センサ本体184を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は9.01kΩであった。試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=9.02kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体25H(膜厚3μmの銅-錫合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=9.10kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体25I(膜厚3μmの銅-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。さらにその後、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=10.1kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体25J(膜厚3μmの銅薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
以上のように、実施の形態5によれば、実施の形態2と同様に、簡易な構成によって、腐食性ガスに起因する電気機器の腐食の進行度合いを把握することができる。また、実施の形態5では複数の腐食検知構造体が並列に接続されるとともに、複数の危険度が設定される。これにより、腐食の進行度合いをより詳細に、段階的にユーザに報知することが可能になる。
なお、図27~図30では、2つまたは3つの腐食検知構造体が並列に接続された構成を例に説明したが、実施の形態2と同様に、4つ以上の腐食検知構造体を用いてもよい。任意のN(Nは2以上の自然数)個の腐食検知構造体が用いられる場合、N並列回路が構成されることとなる。Nが大きいほど、腐食検知センサの構成が複雑になるものの、より詳細な腐食の進行度合い(危険度)をユーザに報知することができる。
実施の形態6.
実施の形態6では、実施の形態3と同様に、複数種類の腐食性ガスによる腐食を検知可能な構成について説明する。銀および銀系合金は、硫黄華および塩素ガスなどに鋭敏に反応する。銅および銅系合金は、硫化水素、二酸化硫黄および二酸化窒素などに鋭敏に反応する。電気機器の設置環境に硫黄華等が存在する場合、銀または銀系合金の腐食速度の方が銅または銅系合金の腐食速度よりも速い。そのため、銀薄膜または銀系合金薄膜を含む腐食検知構造体によって、硫黄華等による電気機器の腐食の進行度合い(危険度)を評価することができる。一方、電気機器の設置環境に硫化水素等が存在する場合、銅または銅系合金の腐食速度の方が銀または銀系合金の腐食速度よりも速い。そのため、銅薄膜または銅系合金薄膜を含む腐食検知構造体によって、硫化水素等による電気機器の危険度を評価することができる。
実施の形態6の第1実施例.
図31は、実施の形態6におけるセンサ本体の構成の一例を示す図である。図31には、実施の形態6の第1実施例におけるセンサ本体に含まれる腐食検知構造体の具体的な構成が記載されている。
図31を参照して、センサ本体191は、3つの腐食検知構造体26A~26Cと、3つの配線41~43とを含む。腐食検知構造体26Aと腐食検知構造体26Bとは、配線42を介して直列に接続されている。腐食検知構造体26A,26Bと腐食検知構造体26Cとは、配線41と配線43との間に並列に接続されている。腐食検知構造体26A~26Cの各々の構成は、図3および図4に示した腐食検知構造体21の構成と同等である。
腐食検知構造体26Aまたは腐食検知構造体26Bに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体26Cに含まれる金属薄膜8の材料とは異なる。腐食検知構造体26A,26Bの各々の抵抗値は、腐食検知構造体26Cの抵抗値よりも高い。
実施の形態6の第1実施例において、腐食検知構造体26Aに含まれる金属薄膜8の材料は銀であり、腐食検知構造体26Bに含まれる金属薄膜8の材料は銅であり、腐食検知構造体26Cに含まれる金属薄膜8の材料は銀-亜鉛合金(亜鉛添加量は0.4wt%)であった。腐食検知構造体26A~26Cに含まれる金属薄膜8の膜厚は、いずれも3μmであった。この膜厚は、腐食検知構造体26A、26Bでは危険度25%(=3μm/12μm)に対応し、腐食検知構造体26Cでは危険度32%(=3μm/9.1μm)に対応する。腐食検知構造体26A,26Bの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体26Cの抵抗値は200kΩであった。
合成抵抗Xとの大小関係を比較する基準として、2種類の基準抵抗(第1基準抵抗REF1および第2基準抵抗REF2)が準備される。第1基準抵抗REF1は、直列に接続された腐食検知構造体26A,26Bのうちの少なくとも一方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体191の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第2基準抵抗REF2は、腐食検知構造体26Cが腐食により断線した状態におけるセンサ本体191の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。係数を用いた具体的な設定手法は、実施の形態2の第1実施例(図10参照)における設定手法と同様である。また、センサ本体191を含む腐食検知センサを用いて実施される腐食検知処理は、図11に示したフローチャートにより表される処理と同様であるため、説明は繰り返さない。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体191を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は182kΩであった。試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=184kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体26A(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=202kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体26C(膜厚3μmの銀-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態6の第2実施例.
図32は、実施の形態6におけるセンサ本体の構成の他の一例を示す図である。図32には、実施の形態6の第2実施例におけるセンサ本体に含まれる腐食検知構造体の具体的な構成が記載されている。
図32を参照して、センサ本体191は、4つの腐食検知構造体26D~26Gと、3つの配線41~43とを含む。腐食検知構造体26Dと腐食検知構造体26Eとは、配線42を介して直列に接続されている。腐食検知構造体26D,26Eと腐食検知構造体26Fと腐食検知構造体26Gとは、配線41と配線43との間に並列に接続されている。腐食検知構造体26D~26Gの各々の構成は、図3および図4に示した腐食検知構造体21の構成と同等である。
腐食検知構造体26Dまたは腐食検知構造体26Eに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体26Fに含まれる金属薄膜8の材料と、腐食検知構造体26Gに含まれる金属薄膜8の材料とは異なる。腐食検知構造体26Dの抵抗値と、腐食検知構造体26Eの抵抗値とは等しい。腐食検知構造体26D,26Eの各々の抵抗値は、腐食検知構造体26Fの抵抗値よりも高い。さらに、腐食検知構造体26Fの抵抗値は、腐食検知構造体26Gの抵抗値よりも高い。
実施の形態6の第2実施例において、腐食検知構造体26Dに含まれる金属薄膜8の材料は銀であり、腐食検知構造体26Eに含まれる金属薄膜8の材料は銅であり、腐食検知構造体26Fに含まれる金属薄膜8の材料は銀-亜鉛合金(亜鉛添加量は0.4wt%)であり、腐食検知構造体26Gに含まれる金属薄膜8の材料は銀-アルミニウム合金(アルミニウム添加量は0.4wt%)であった。腐食検知構造体26D~26Gに含まれる金属薄膜8の膜厚は、いずれも3μmであった。この膜厚は、腐食検知構造体26D、26Eでは危険度25%(=3μm/12μm)に対応し、腐食検知構造体26Fでは危険度32%(=3μm/9.1μm)に対応し、腐食検知構造体26Gでは危険度41%(=3μm/7.3μm)に対応する。腐食検知構造体26D,26Eの抵抗値は1000kΩであり、腐食検知構造体26Fの抵抗値は200kΩであり、腐食検知構造体26Gの抵抗値は20kΩであった。
合成抵抗Xとの大小関係を比較する基準として、3種類の基準抵抗(第1基準抵抗REF1~第3基準抵抗REF3)が準備される。第1基準抵抗REF1は、直列に接続された腐食検知構造体26D,26Eのうちの少なくとも一方が腐食により断線した状態におけるセンサ本体192の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第2基準抵抗REF2は、腐食検知構造体26Fが腐食により断線した状態におけるセンサ本体192の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。第3基準抵抗REF3は、腐食検知構造体26Gが腐食により断線した状態におけるセンサ本体192の両端の合成抵抗Xに基づいて定められる。係数を用いた具体的な設定手法は、実施の形態2の第3実施例(図13参照)における設定手法と同様である。また、センサ本体192を含む腐食検知センサを用いて実施される腐食検知処理は、図14に示したフローチャートにより表される処理と同様であるため、説明は繰り返さない。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体192を含む腐食検知センサが設けられた電気機器900(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は18kΩであった。曝露試験開始から1.2日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=18.1kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体26D(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=18.3kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体26F(膜厚3μmの銀-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。さらにその後、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=20.2kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体26G(膜厚3μmの銀-アルミニウム合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
以上のように、実施の形態6によれば、実施の形態1~5と同様に、簡易な構成によって、腐食性ガスに起因する電気機器900の腐食の進行度合いを把握することができる。また、実施の形態6では、実施の形態3と同様に、複数種類の腐食性ガスによる電気機器900の腐食を検知することができる。さらに、腐食検知構造体の直列接続と並列接続とを組み合わせることにより、電気機器900の腐食の進行度合い(危険度)についても詳細にユーザに報知することが可能になる。
実施の形態7.
金属薄膜8の材料を腐食検知構造体毎に異ならせる場合にも、実施の形態4にて説明したように、抵抗体9が腐食検知構造体の外部に設けられていてもよい。なお、実施の形態7に係る腐食検知センサを備える電気機器の構成は、実施の形態4に係る腐食検知センサを備える電気機器904の構成(図19参照)と同等である。また、実施の形態7における腐食検知構造体の構成は、実施の形態4における腐食検知構造体24の構成(図20参照)と同等である。ただし、実施の形態7の各実施例では、腐食性ガスにより腐食される金属薄膜の材料として、銀、銅以外にも銀系合金または銅系合金などが用いられる。
実施の形態7の第1実施例.
図33は、実施の形態7におけるセンサ本体の構成の第1の例を示す図である。図33を参照して、センサ本体193は、図27に示したセンサ本体181または図28に示したセンサ本体182に対応する。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体193を含む腐食検知センサが設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は、91kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=92kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体27A(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=101kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体27B(膜厚3μmの銀-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態7の第2実施例.
図34は、実施の形態7におけるセンサ本体の構成の第2の例を示す図である。図34を参照して、センサ本体194は、図29に示したセンサ本体183または図30に示したセンサ本体184に対応する。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体194を含む腐食検知センサが設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は、9.01kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=9.02kΩよりも高くなったが、この抵抗増加が腐食検知構造体27C(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=9.10kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体27D(膜厚3μmの銀-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。さらにその後、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=10.1kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体27E(膜厚3μmの銀-アルミニウム合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態7の第3実施例.
図35は、実施の形態7におけるセンサ本体の構成の第3の例を示す図である。図35を参照して、センサ本体195は、図31に示したセンサ本体191に対応する。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体195を含む腐食検知センサが設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は182kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=184kΩよりも高くなったが、この抵抗増加は腐食検知構造体27F(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=202kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体27H(膜厚3μmの銀-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
実施の形態7の第4実施例.
図36は、実施の形態7におけるセンサ本体の構成の第4の例を示す図である。図36を参照して、センサ本体196は、図32に示したセンサ本体192に対応する。
硫黄華を含む75℃の温度環境下で、センサ本体196を含む腐食検知センサが設けられた電気機器904(インバータ)の曝露試験を行った。初期合成抵抗X0は18.0kΩであった。曝露試験開始から10日後には合成抵抗Xが第1基準抵抗REF1=18.1kΩよりも高くなったが、この抵抗増加は腐食検知構造体27I(膜厚3μmの銀薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。その後も曝露試験を継続すると、合成抵抗Xが第2基準抵抗REF2=18.3kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体27K(膜厚3μmの銀-亜鉛合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。さらにその後、合成抵抗Xが第3基準抵抗REF3=20.2kΩよりも高くなった。この抵抗増加については腐食検知構造体27L(膜厚3μmの銀-アルミニウム合金薄膜)の腐食断線に起因することが確認された。
なお、実施の形態7の各実施例では、硫黄華が存在する環境に電気機器904を曝露して銀または銀系合金を含む金属薄膜8の腐食断線を確認した例について説明した。しかし、実施の形態5にて説明したのと同様に、たとえば40℃/95%RH/(3ppmH2S+10ppmNO2)の環境下では、銅または銅系合金を含む金属薄膜8の腐食断線を確認することができる。
以上のように、実施の形態7によれば、実施の形態4と同様に、固定抵抗器50(50L~50R)が腐食検知構造体の外部に設けられている構成であっても簡易な構成によって、腐食性ガスによる電気機器904の腐食の進行度合いを把握することができる。また、複数の腐食検知構造体を直列に接続することで、複数種類の腐食性ガスによる電気機器904の腐食を検知することができる。さらに、複数の腐食検知構造体を並列に接続することで、より詳細な電気機器904の腐食の進行度合い(危険度)についてもユーザに報知することが可能になる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。