JP7197873B1 - 出力制御装置、出力制御プログラム、及びそれを用いた太陽光自家消費システム - Google Patents

出力制御装置、出力制御プログラム、及びそれを用いた太陽光自家消費システム Download PDF

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Abstract

Figure 0007197873000001
【課題】複数のPCSを用いる太陽光発電システムにおいて、逆潮流を発生しにくくする。
【解決手段】出力制御装置2は、受電電力と複数のPCS3の出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段と、複数のPCS3に優先順位を付しており、優先順位の順番に、PCS3に対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段と、複数のPCS3の出力電力を合計したときの上限値を規定する制御目標値を算出する制御目標値算出手段と、制御目標値算出手段で算出した制御目標値に基づいて、優先順位の高い順に、PCS3での出力電力の上限値が低くなるように、各PCS3への制御指令値を算出する制御指令値算出手段とを備える。
【選択図】図1


Description

本発明は、太陽電池による発電電力を自家消費するためのシステムで用いられるパワーコンディショナの出力制御装置及び出力制御プログラムに関し、より特定的には、逆潮流を発生しないようにするための出力制御装置及び出力制御プログラムに関する。
特許文献1には、逆潮流を発生させないようにするための出力制御装置及び出力制御プログラムが記載されている。特許文献1に記載の太陽光発電自家消費システム(1)(括弧内の符号は、特許文献に記載の符号である。以下同様。)は、太陽電池(2)と、パワーコンディショナ(3)と、受変電設備(5)と、パワーコンディショナ(3)の出力電力を制御するための出力制御装置(4)と、を備える。出力制御装置(4)は、消費電力とPCS定格との比率(α)に対応させて、設定差分値(β)として予め登録した比率・設定差分値テーブルを記憶している記憶部(42)と、比率・設定差分値テーブルを参照して、比率(α)に対応する設定差分値(β)を決定し、現在の消費電力から決定後の設定差分値(β)を引いた値を、PCS定格で割って、当該割った値を制御指令値(A)として、パワーコンディショナ3の出力を制御する制御部(41)とを備える。
なお、負荷として、複数の負荷が用いられているのが一般である。もし、個々の負荷の消費電力を計測しようとすると、個々の負荷に、電力計・電流計等を設置しなければならない。これは、コスト的に実現が難しい場合が多い。したがって、一般に、自家消費システムにおいては、商用電力系統からの受電電力と、パワーコンディショナの出力電力(太陽電池の発電電力)との合計を、消費電力としている。
従来、自家消費のための太陽光発電システムにおいては、パワーコンディショナ(以下、「PCS」という。)の出力を制御する際には、出力制御装置が、PCSに対して、制御指令値を送信して、制御していた。たとえば、制御指令値は、PCS定格(PCSの最大出力可能電力のこと)の何パーセントの出力電力を上限値とするかを示す数値である。たとえば、10kWのPCS定格を有するPCSに対して、60%との制御指令値を出力制御装置が送信した場合、当該PCSは、6kWを出力電力の上限値として、太陽電池で発電された電力の出力を制御する。なお、PCSの制御に用いる制御指令値としては、PCS定格に対する何パーセントを用いるのではなく、出力電力のkW数を直接用いるようにしてもよく、PCSの制御指令値としては、周知のあらゆる方法が用いられる(以下同様)。制御指令値は、PCSの出力電力の上限値を規定するための値である。
ここで、複数のPCSが存在する場合について述べる。従来の一般的な自家消費システムにおいて、複数のPCSが存在する場合には、複数のPCSに対して、一律に、同一の制御指令値が送信されていた。以下、このような制御を「等割制御」という。
図11を用いて具体例を説明する。図11の左図に示すように、「等割制御」でPCSを制御する場合には、たとえば、特許文献1で決定されたような制御指令値を、出力制御装置が全てのPCSに送信することとなる。たとえば、PCS定格10kWのPCSが5台ある場合、5台全てに、80%の制御指令値を送信する。そうすると、5台のPCSの出力電力の上限値が、10kWの80%であるところの8kWに制限されることとなる。よって、図11に示すように、5台のPCSの合計の最大出力電力は40kWとなる。
従来、複数のPCSが存在する場合には、このような等割制御によって、PCSの出力電力の上限値を制御して、逆潮流を防止していた。
特許第7004987号公報 特開2021-191162号公報
しかし、出力制御装置とPCSとは、一般的に、RS-485などのシリアル通信によって接続されることが多い。そのため、出力制御装置から、1番目のPCSへ信号が送信されて、一番目のPCSの出力電力(発電電力ともいう。以下同様。)が制御され、その後、二番目のPCSへ信号が送信されて、二番目のPCSの出力電力が制御され、というように繰り返して、最後に、n番目のPCSへ信号が送信されて、n番目のPCSの出力電力が制御される。
図12では、等割制御を用いて、PCS1からPCS5に対して、80%の出力指令値を、シリアル通信で順次送信していると想定している。図12に示すように、出力制御装置と複数のPCSとの間で、制御が行われている間に、急激に、消費電力が低下して、発電電力の制御が間に合わずに、発電電力が余剰となり、逆潮流が発生してしまう場合がある。
この場合、図12のグラフに示すように、Step1からStep5において、5台のPCSの発電電力の合計値が順に緩やかに減少していくこととなるが、消費電力が発電電力の減少スピードよりも早く減少した場合、発電電力の余剰が発生して、逆潮流が発生してしまうのである。
このように、従来の等割制御を用いて、複数のPCSを同じ制御指令値で制御する場合、状況によっては、逆潮流が発生してしまう可能性があった。
それゆえ、本発明は、複数のPCSを用いる太陽光発電システムにおいて、逆潮流を発生しにくくする出力制御装置及び出力制御プログラムを提供することを目的とする。
なお、特許文献2の請求項1には、「消費電力取得ステップの間隔は前記指令送信ステップの間隔より短いことを特徴とする、発電制御プログラム。」が記載されている。
上記したとおり、消費電力を個別の負荷毎に計測するのは、現実的ではないので、実際は、商用電力系統からの受電電力と発電電力との合計を消費電力としている。そして、発電電力は、図13に示すように、出力制御装置から各PCSに制御指令値が送信されてから順次反映されていくものである。そのため、全てのPCSの発電電力が、制御指令値の指示に基づいたものとして反映されるには、制御1サイクル分の時間が必要である。制御1サイクルが完結していない状態で、PCSを制御するための目標値(制御目標値)を算出しようとしても、変化の途中であるので、発電電力及び受電電力が正しく反映されていないこととなる。
したがって、特許文献2の請求項1のように、「消費電力取得ステップの間隔は前記指令送信ステップの間隔より短いことを特徴とする、発電制御プログラム。」では、正しくない消費電力に基づいて、制御目標値を決めることとなる。よって、このようなプログラムでは、期待する効果が得られない。
次に、特許文献2の図4及び段落0053~0059には、複数のPCSの制御についての記載がある。これらの記載では、たとえば、「時刻t1において、総発電電力の上限値が35kWに低減した場合、計測制御端末6は、最大の電力出力値20kWを出力する発電制御装置2の1つであるPCS3を選択し、20kWの電力を出力するよう指令する。計測制御端末6は、総発電電力の上限値に近づけるため、もう1台の発電制御装置2の1つであるPCS4を選択して、15kWの電力を出力するよう指令する。さらに、その他の発電制御装置2は発電出力量を0kWに指令する。」と記載されている。
すなわち、特許文献2では、総発電電力上限値(制御目標値に相当する)に対して、まず、最大出力電力(PCS定格に相当する)の大きいPCSを選択して、そのPCSに対して、制御指令値を送信するアルゴリズムが採用されている(特許文献2の請求項4も同旨)。
なお、特許文献2の請求項1では、「一部の前記発電制御装置のみに対して選択的に制御指令値を送信する指令送信ステップ」と記載して、選択されたPCSにのみ制御指令値を送信するとしながら、一方で、上記の明細書の記載において、発電電力量を0kWにするPCSに対しては、0kWを指令するとしており、請求項と明細書との間で矛盾した記載があるが、その点は、措くとする。
いずれにしても、特許文献2では、最大出力電力を有するPCSが選択されて、当該PCSからの出力電力が出来る限り大きくなるように制御されるのである。しかし、このような制御の場合、図12に示した等割制御の場合と同様、制御開始からの発電電力の減少スピードは緩やかなものとなってしまう。
たとえば、特許文献2の図4の時刻t1の場合に、PCS3を20kWに制御し、次に、PCS4を15kWに制御した場合、総発電電力の減少スピードは、緩やかとなることは、理解できるであろう。このように、減少スピードが緩やかな状況で、急激に消費電力が低下した場合には、発電電力の余剰が発生してしまい、逆潮流が発生することとなる。
よって、特許文献2に記載の出力制御プログラムは、複数のPCSを用いる太陽光発電システムにおいて、逆潮流を発生しにくくするという課題を解決することができないのである。
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。
本発明は、太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、受電電力と複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段と、複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、優先順位の順番に、パワーコンディショナに対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段と、複数のパワーコンディショナの出力電力を合計したときの上限値を規定する制御目標値を算出する制御目標値算出手段と、制御目標値算出手段で算出した制御目標値に基づいて、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各パワーコンディショナへの制御指令値を算出する制御指令値算出手段とを備える。
好ましくは、制御指令値算出手段は、優先順位に従って、パワーコンディショナの出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いるとよい。
好ましくは、出力制御装置は、さらに、制御目標値に基づいて、複数のパワーコンディショナの出力電力を抑制したときの上限値の合計を、抑制電力として算出する抑制電力算出手段を備える。制御指令値算出手段は、出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いたパワーコンディショナのPCS定格の合計が抑制電力以下である間、上限値が0となる制御指令値を用いるとよい。
好ましくは、制御指令値算出手段は、出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いたパワーコンディショナ以外のパワーコンディショナの制御指令値を、上限値が0よりも大きくなるように算出するとよい。
好ましくは、制御指令値算出手段は、残りのパワーコンディショナに対しては、PCS定格まで発電可能とする制御指令値を用いるとよい。
好ましくは、制御目標値算出手段は、消費電力と、複数のパワーコンディショナのPCS定格の合計であるところのPCS総定格との比率を算出し、比率に対応して記憶されている設定差分値を示すテーブルを参照して、算出した比率に対応する設定差分値を決定し、消費電力から設定差分値を引いた値に対して、PCS総定格を除算した値に基づいて、制御目標値を決定するとよい。
好ましくは、制御指令値で規定される複数のパワーコンディショナの出力電力の上限値の合計と、制御目標値で規定される複数のパワーコンディショナの出力電力の上限値の合計とが対応しているとよい。
好ましくは、優先順位は、日ごとに変更していくとよい。
また、本発明は、太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、受電電力と複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段と、複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、優先順位の順番に、パワーコンディショナに対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段と、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各パワーコンディショナへの制御指令値を算出する制御指令値算出手段とを備える。
また、本発明は、太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、受電電力と複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段と、複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、優先順位の順番に、パワーコンディショナに対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段と、複数のパワーコンディショナの出力電力を抑制したときの合計値を規定する抑制電力を算出する抑制電力算出手段と、抑制電力算出手段で算出した抑制電力に基づいて、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各パワーコンディショナへの制御指令値を算出する制御指令値算出手段とを備える。
また、本発明は、太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置を、受電電力と複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段、複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、優先順位の順番に、パワーコンディショナに対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段、複数のパワーコンディショナの出力電力を合計したときの上限値を規定する制御目標値を算出する制御目標値算出手段、及び、制御目標値算出手段で算出した制御目標値に基づいて、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各パワーコンディショナへの制御指令値を算出する制御指令値算出手段として機能させるための出力制御プログラムである。
また、本発明は、太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置を、受電電力と複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段、複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、優先順位の順番に、パワーコンディショナに対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段、及び、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各パワーコンディショナへの制御指令値を算出する制御指令値算出手段として機能させるための出力制御プログラムである。
また、本発明は、太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置を、受電電力と複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段、複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、優先順位の順番に、パワーコンディショナに対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段、複数のパワーコンディショナの出力電力を抑制したときの合計値を規定する抑制電力を算出する抑制電力算出手段、及び、抑制電力算出手段で算出した抑制電力に基づいて、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各パワーコンディショナへの制御指令値を算出する制御指令値算出手段として機能させるための出力制御プログラムである。
また、本発明は、複数の太陽電池と、複数の太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナと、複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電システムであって、出力制御装置は、受電電力と複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段と、複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、優先順位の順番に、パワーコンディショナに対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段と、複数のパワーコンディショナの出力電力を合計したときの上限値を規定する制御目標値を算出する制御目標値算出手段と、制御目標値算出手段で算出した制御目標値に基づいて、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各パワーコンディショナへの制御指令値を算出する制御指令値算出手段とを備える。
また、本発明は、複数の太陽電池と、複数の太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナと、複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電システムであって、出力制御装置は、受電電力と複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段と、複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、優先順位の順番に、パワーコンディショナに対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段と、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各パワーコンディショナへの制御指令値を算出する制御指令値算出手段とを備える。
また、本発明は、複数の太陽電池と、複数の太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナと、複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電システムであって、出力制御装置は、受電電力と複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段と、複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、優先順位の順番に、パワーコンディショナに対して、出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段と、複数のパワーコンディショナの出力電力を抑制したときの合計値を規定する抑制電力を算出する抑制電力算出手段と、抑制電力算出手段で算出した抑制電力に基づいて、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各パワーコンディショナへの制御指令値を算出する制御指令値算出手段とを備える。
本発明によれば、優先順位の高い順に、パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、制御指令を算出することとなるので、制御1サイクルの最初の段階で、出力電力を一気に下げることができる。よって、複数のPCSを用いる太陽光発電システムにおいて、逆潮流を発生しにくくすることが可能となる。
優先順位に従って、パワーコンディショナの出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いれば、制御の最初の段階で、出力電力を一気に下げることができる。
パワーコンディショナの出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いる処理を、出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いたパワーコンディショナのPCS定格の合計が抑制電力以下である間、行うことで、制御1サイクルの初期の段階で、一気に、抑制電力分だけ、発電電力を抑制することが可能となる。
そして、出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いたパワーコンディショナ以外のパワーコンディショナの制御指令値を、上限値が0よりも大きくなるように算出することで、全てのパワーコンディショナの出力電力の合計値が、制御目標値に基づく値となるように、調整することができる。
最後に、残りのパワーコンディショナの出力電力をPCS定格まで発電するような制御指令値を用いることで、残りのパワーコンディショナの制御が楽になり、全体としての発電効率が向上することになる。
このように、制御1サイクルの中で、優先順位の高い最初の方のパワーコンディショナの出力電力は0にして、出力電力の合計値が制御目標値に基づく値になるように、パワーコンディショナの出力電力の値を調整して、残りをPCS定格まで発電するようにすることで、消費電力の急激な低下による逆潮流を回避しつつ、かつ、発電効率を高めることが可能となる。
制御目標値を算出する際には、荷重等差制御では比率・設定差分値テーブルという分かりやすいテーブルを用いて、逆潮流の回避の設定を行うことができるので、パワーコンディショナの制御を分かりやすいものとすることができる。また、一律同じ値の差分値を用いて制御する等差制御と比べて、消費電力とPCS定格との比率に応じて、設定差分値を決めることができるので、発電電力上限値に余裕を持たせることができつつ、逆潮流の回避を実現しつつ、等比制御と比べて、発電電力上限値を高く設定することができるので、太陽電池の発電電力を出来る限り有効活用することができる。
優先順位を日ごとに変更していくことで、一部のパワーコンディショナに負担がかかるのを防止できる。
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
図1は、本発明の一実施形態における太陽光発電システム1の機能的構成を示すブロック図である。 図2は、出力制御プログラムを実行したときの出力制御装置2の動作を示すフローチャートである。 図3は、制御1サイクルでの処理の流れを示す概念図である。 図4は、図2における制御目標値算出処理を示すフローチャートである。 図5は、比率・設定差分値テーブルの一例を示す図である。 図6は、図2における各PCSへの制御指令値算出処理を示すフローチャートである。 図7は、図6の動作に従った場合の具体的数値の例を示す図である。 図8は、図2における各PCSへの制御指令値算出処理の他の例を示すフローチャートである。 図9は、図8の動作に従った場合の具体的数値の例を示す図である。 図10は、図2における各PCSへの制御指令値算出処理の他の例での具体的数値の例を示す図である。 図11は、従来の等割制御及び本発明の優先制御の概要を比較した図である。 図12は、従来の等割制御の課題と本発明の優先制御の効果とを比較した図である。 図13は、従来の等割制御において、制御1サイクルでの発電電力及び受電電力の遷移を示す図である。
まず、図11を用いて、従来の等割制御と本発明の制御(以下、「優先制御」という。)を概説的に比較する。
図11の右図に示すように、優先制御では、たとえば、PCS定格10kWの5台のPCSに対して、全てのPCS定格を合計したPCS総定格を80%にしたいとする。図11では、制御指令値(後述の「制御目標値」に相当)を80%と記載している。
このとき、等割制御のように、各PCSを80%とするのではなく、最初に、優先的に制御すべきPCS(以下、「優先PCS」という。)1台に対して、制御指令値として0%を送信する。これによって、5台のPCSの最大出力は40kWとなるので、PCS総定格を80%となり、目的を達成できる。このように、優先制御では、最初に、一気に発電電力を抑えるようにしているので、速やかに、発電電力を減少させることができる。
なお、優先PCSが常に同じであると、特定のPCSに負荷がかかりすぎる可能性があるので、優先PCSは、所定のルールによって、自動的に変化していくとよい。たとえば、日時によって、優先PCSを変更したり、ランダムに優先PCSを変更したりするとよく、その変更方法は、本発明を限定するものではない。本発明では、優先的に制御されるPCSの順番が予め決められていればよい。
図12に示すように、Step1において、PCS1に対して0[%]の制御指令値を送信して、速やかに、PCS1の発電電力を低下させたとする。その後、残りのPCS2~5に対しては、100[%]の制御指令値を送信する。これによって、図12のグラフで示すように、最初のStep1の段階で、発電電力が一気に減少することとなる。よって、消費電力が急激に変化したとしても、逆潮流が発生する可能性を回避できるのである。
上記の概略を実現するための実施形態を、以下に、図1~図10を参照しながら説明することとする。
図1において、太陽光発電システム1は、出力制御装置2と、複数のPCS3と、複数の太陽電池4と、RPR(Reverse Power Relay:逆電力継電器)5と、受変電設備6とを備える。受変電設備6には、RPR5を介して、電力送配電網7が接続されている。受変電設備6は、商用電力系統からの受電電力を複数の負荷8に供給する。受変電設備6は、受電電力の値[kW]を示す受電電力信号を出力制御装置2に送信する。なお、ここでは、受変電設備6が受電信号を出力制御装置2に送信する構成としているが、受電設備6とは別に、受電電力の計測器が設置され、当該計測器が受電電力を出力制御装置2に送信するようにしてもよい。いずれにしても、出力制御装置2は、受電電力を検出することができるようになっている。
出力制御装置2は、コンピュータ装置であり、入力部、出力部、通信部、記憶部、及び制御部を備えるものである。記憶部には、出力制御プログラムが格納されており、制御部で、当該出力制御プログラムを実行する。また、記憶部には、特許文献1と同様に、後述の比較・設定差分値テーブルが記憶されている。
ここでは、出力制御装置2と、各PCS3とは、RS-485のようなシリアル通信で通信されるものとする。ただし、本発明においては、このようなシリアル通信に限定されるものではなく、Ethernet(登録商標)通信であってもよいし、その他の通信方法であってもよい。
図1に示す例では、ケーブル上に、芋づる式に機器が接続されるマルチドロップ接続によって、出力制御装置2と各PCS3とが接続されているが、接続方法については、これに限られるものではなく、周知のあらゆる方法を使用可能である。
出力制御装置2から各PCS3に送信される信号には、送信先アドレスが付けられており、送信先アドレスに対応するPCS3が、出力制御装置2からの信号に呼応することで、処理が実行されることとなる。
各PCS3には、太陽電池4が接続されている。各PCS3は、周知のあらゆる方法によって、太陽電池4の発電電力(太陽電池4から出力される電力)を制御して、出力電力を制御することが可能である。
各PCS3は、受変電設備6に接続されている。各PCS3からの発電電力は、受変電設備6を介して、受電電力と共に、各負荷8に供給される。
もし、RPR5によって、逆潮流が検出された場合、RPR5は、各PCS3に対して、発電を停止するように指令する。これにより、各PCS3からの出力電力が受変電設備6に供給されないように、遮断され、逆潮流が防止される。RPR5が作動してPCS3の発電が停止すると、太陽電池4で発電された電力が無駄になる。したがって、自家消費システムにおいては、出来る限りRPR5を作動させないように、すなわち、逆潮流が生じないようにする必要がある。なお、RPRの設置位置や動作方法などは、本発明を限定するものではない。また、RPRは、本発明の必須構成ではない。
図2を参照しながら、出力制御プログラムを実行している出力制御装置2の動作について説明する。
まず、出力制御装置2は、受変電設備6から受電電力信号を取得して、商用電力系統からの受電電力を認識する(S10)。
次に、出力制御装置2は、第1のPCSに対して、発電電力信号を送信するよう要求する(S11)。ここで、発電電力信号とは、発電電力が何kWであるかを示す信号である。これに応じて、第1のPCSは、発電電力信号を出力制御装置2に返信し、出力制御装置2は、発電電力信号を受信する(S12)。次に、出力制御装置2は、前回の制御1サイクルで計算した第1のPCSに対する制御指令値を、第1のPCSへ送信し(S13:制御指令値送信手段)、第1のPCSから制御指令値を受信した旨のレスポンスを受信する(S14)。これにより、第1のPCSの出力電力が制御されることとなる。なお、第1のPCSの出力電力は、次の制御サイクルにおいて、出力制御装置2が取得して認識できることとなる。
なお、初期起動時など、予め決められている状況の場合、出力制御装置2は、各PCS3に対して、制御指令値として0%を送信することとする。初期起動時には、発電電力が分からないので、消費電力が決まらないため、逆潮流が発生しないように、安全を期して、各PCS3の制御指令値を0%としておく。
なお、ここでは、制御指令値は、PCS定格の何パーセントかを示す値とするが、制御指令値の形式は、本発明を限定するものではなく、PCS3が指定する制御指令値を用いればよい。
ここで、第1~第nのPCSについて説明する。本発明では、PCS3には、制御する優先順位を付けている。優先順位の付け方は、種々考えられるが、たとえば、日ごとに、優先順位1番のPCS3を変化させていく方法が考えられる。第1のPCSは、優先順位1番のPCS3であり、第2のPCSは、優先順位2番のPCS3であり、同様に、第nのPCSは、優先順位n番のPCS3である。
例を示して説明する。
今日の優先順位1番のPCS3を、PCS-1とする。優先順位2番のPCS3を、PCS-2とする。同様に、優先順位n番のPCS3を、PCS-nとする。この場合、今日の出力制御は、PCS-1,PCS-2,・・・,PCS-nの順に、第1~第nのPCSとなって、図2の動作フローに従って、処理が進む。
同じPCS3ばかりを優先順位が高いとすると、同じPCS3に負荷がかかり過ぎて、問題が生じるかもしれない。したがって、次の日は優先順位を変更するという方法が採用しうる。この場合、たとえば、優先順位1番のPCS3を、PCS-2とする。優先順位2番のPCS3を、PCS-3とする。同様に、優先順位n-1番のPCS3を、PCS-nとする。優先順位n番のPCS3を、PCS-1とする。
このように、PCS3の優先順位は、日ごとや週ごとなど、決められたルールにしたがって、変化するようにするとよい。ただし、本発明において、PCS3の優先順位を変更することは、必須の構成ではなく、優先順位が固定されていてもよい。
また、PCS3の優先順位は、ランダムに決めてもよいし、その他の予め決められたルールで決めてもよいし、PCS定格の大きいPCS3を優先順位の高いPCSとしてもよしい、PCS定格の小さいPCS3を優先順位の高いPCSとしてもよいし、製造年月日の順に優先順位を決めてもよいし、過去の発電電力の大小で優先順位を決めてもよい。
このような優先順位で、第1~第nのPCSが決まっているという前提で、図2の説明に戻る。
S14の後、第2のPCSについて、発電電力の送信の要求(S15)、発電電力信号の受信(S16)、制御指令値の送信(S17:制御指令値送信手段)、及びレスポンスの受信(S18)が行われる。その後、第nのPCSまで、同様の処理が行われる(S19、S20、S21(制御指令値送信手段)、S22)。
S22までの処理で、受電電力、各PCS3の発電電力(1つ前の制御1サイクルでの制御指令値に基づいて発電された発電電力)が取得できたことになる。
S23の制御目標値算出処理(制御目標値算出手段)によって、出力制御装置2は、各PCS3の出力電力の上限値の合計(以下、「総出力電力目標値」という。)を、各PCS3のPCS定格の合計(以下、「PCS総定格」という。)の何パーセントにするかを決定する。この決定されるパーセントを、制御目標値という。
すなわち、制御目標値=総出力電力目標値/PCS総定格×100[%]である。
なお、制御目標値の決定方法は、あくまでも一例であり、本発明を限定するものではない。制御目標値は、各PCS3の出力電力の上限値の合計によって規定される値である。
S23において、制御目標値が算出された後、出力制御装置2は、各PCS3への制御指令値を算出する(S24:制御指令値算出手段)。
ここで、図3を用いて、出力制御装置2による制御1サイクルについて、整理しておく。図3に示すように、制御1サイクルの間に、出力制御装置2は、受電電力の計測、第1のPCSの発電電力計測、第1のPCSへの制御指令値の送信、・・・、第nのPCSの発電電力計測、第nのPCSへの制御指令値の送信、制御目標値の算出、各PCSへの制御指令値の算出を行う。
図3に示したように、各PCSは、出力制御装置2から制御指令値を受信してから、出力電力を制御することとなる。出力電力の制御には、ある程度の時間が必要であるので、一回の制御1サイクルで送信された制御指令値に基づいて、各PCS3の出力を制御した結果が反映されるのは、次の制御1サイクルである。そして、次の制御1サイクルで、前の制御1サイクルで指令された制御指令値による出力制御が反映されて、出力制御装置2は、次の出力制御を実行するようにして、このサイクルを繰り返すのである。
図4及び図5を用いて、制御目標値算出処理について説明する。なお、図4及び図5に示す動作は、特許文献1に記載されている動作と同様の主旨の動作である。
出力制御装置2は、S10で取得した受電電力と、S12,S16,・・・,S20で取得したPCSの発電電力の合計(以下、「PCS総発電電力」という。)との和算を、消費電力と定義付ける(S31:消費電力計測手段)。
次に、出力制御装置2は、消費電力/PCS総定格を計算して、消費電力とPCS総定格との比率αを算出する(S32)
出力制御装置2には、比率αに対応させて、設定差分値β[kW]を定義づけた比率・設定差分値テーブルが記憶されている。図5が、比率・設定差分値テーブルの一例である。図5に示すように、比率αに対して、設定差分値β[kW]が決められている。設定差分値βの値を、消費電力から引いた値を元に、制御目標値が決定される。たとえば、図5に示すように、比率αが大きくなるほど、設定差分値βを大きくする。これにより、消費電力が大きい領域において、急激に消費電力が低下としたとしても、設定差分値βに余裕を持たせることになるので、発電電力が消費電力を上回って、逆潮流が発生するという状況を回避することが可能となる。
比率αが100[%]よりも大きい場合、消費電力がPCS定格を上回っているのであるから最大限発電したとしても良いように思うが、消費電力が急に低下した場合、最大限発電していると、パワーコンディショナの制御が追いつかずに、逆潮流を生じてしまうないしRPRが動作する場合がある。そのため比率αが100[%]よりも大きい場合でも、安全マージンを見て設定差分値を設定しておくのが好ましい。
S32の後、出力制御装置2は、比率・設定差分値テーブルを参照して、比率αに対応する設定差分値βを決定する(S33)。出力制御装置4は、消費電力-設定差分値βが0以下であるかを判断する(S34)。S34の動作において消費電力-設定差分値βが0以下であると判断した場合、出力制御装置4は、制御目標値を、0に設定する(S36)。
一方、S34の動作において、消費電力-設定差分値βが0よりも大きいと判断した場合、出力制御装置4はS35の動作に進む。S35において、出力制御装置4は、(消費電力-設定差分値β)/PCS総定格を演算して、演算結果を、制御目標値とする。制御目標値は、PCS全体で、PCS総定格の何パーセントまで電力を出力して良いかを意味している。制御目標値を百分率で表すか、小数点を用いた数値で表すかは、本発明を限定するものではない。制御目標値は、各PCS3の出力電力の上限値の合計値を制御するための値となる。
ただし、演算結果が1以上の場合、すなわち、消費電力-設定差分値βが、PCS総定格以上の場合、出力制御装置4は、制御目標値を1とする。演算結果が1以上の場合、消費電力が充分大きいことを意味しており、全てのPCSが最大限出力しても逆潮流が生じない可能性が高いことを意味している。
出力制御装置2は、図3に示す動作を制御1サイクル毎に実行して、常に、最新の消費電力に応じた制御目標値を算出し、各PCS3に対して、最新の制御指令値を送信する。これに応じて、各PCS3は、最新の消費電力に応じた電力を出力する。
次に、図6及び図7を用いて、各PCS3への制御指令値算出処理について説明する。図6に示すように、出力制御装置2は、PCS総定格-PCS総定格×制御目標値を計算して、計算結果を「抑制電力」とする(STEP1:抑制電力算出手段)。なお、式変形も含めて、抑制電力の定義の仕方は、上記に限られない。また、ここでは、制御目標値を介して、抑制電力を計算しているが、制御目標値を介さずに、いきなり、抑制電力を計算してもよい。
次に、STEP2において、出力制御装置2は、抑制電力又は余剰から、当日優先のPCS番号を有するPCSのPCS定格を減ずる。なお、一回目のSTEP2のときに、抑制電力が用いられて、二回目以降のSTEP2のときに、余剰が用いられる。一回目のSTEP2のときのPCS番号に対応するのが、第1のPCSである。二回目以降のSTEP2から、PCS番号に対応するのが、第2のPCS~第nのPCSとなる。
減じた値に余剰がある場合には、当日優先のPCS番号を有するPCSの制御指令値を0[%]とする。
減じた値に余剰がない場合には、(PCS定格-抑制電力(又は余剰))/当日優先PCS番号のPCS定格×100[%]を、当日優先PCS番号の制御指令値とする。なお、制御指令値を百分率で表さずに、小数点を用いた数字で表してもよい。なお、上記計算式で、一回目のSTEP2のときに、抑制電力が用いられて、二回目以降のSTEP2のときに、余剰が用いられる。
STEP2で減じた値に、さらに、余剰があるか否かを、出力制御装置2は、判断する(STEP3)。さらに余剰がある場合、出力制御装置2は、当日優先PCS番号をインクリメントすべく、PCS番号が「当日優先PCS番号+1」のPCSについて、STEP2の動作に戻って、制御指令値の演算を行う。なお、当日優先PCS番号+1が設備台数を超えた場合は、1番機のPSCに戻る。
一方、余剰がない場合には、出力制御装置2は、残りのPCS3の制御指令値を100[%]とする。
上記の図6の処理の具体例について、図7を用いて説明する。
たとえば、PCSが5台であり、それぞれのPCS番号のPCS定格が、No1は10[kW]、No2が20[kW]、No3が30[kW]、No4が10[kW]、No5が30[kW]であったとする。この場合、PCS総定格は、100[kW]となる。そして、仮に、当日の第一優先のPCS番号がNo4であったとする。計算の結果、制御目標値が65[%]となったとする。
STEP1で、PCS総定格100kW×(1-制御目標値65[%])の計算より、抑制電力が35[kW]となる。言うまでもないが、計算時に、制御目標値65[%]は、小数点を用いた数字で計算する。
STEP2-1(一回目のSTEP2のこと。以下同様。)で、抑制電力35[kW]-No4のPCS定格10[kW]の計算より、余剰が25[kW]になる。よって、余剰がある場合となるので、No4の制御指令値が0[%]となる。STEP2-1によって、No4のPCS定格10[kW]分が速やかに抑制されることとなる(図7の下図も参照)。
STEP2-2で、余剰25[kW]-No5のPCS定格30[kW]の計算より、余剰が0[kW]になる。よって、余剰がなくなるので、(No5のPCS定格30[kw]-抑制電力35[kW])/No5のPCS定格30[kW]×100の計算により、No5の制御指令値が16.6…[%]となる。STEP2-2によって、No5の発電電力の25[kW]分が抑制されることとなる(図7の下図も参照)。
そして、さらなる余剰はないので、STEP5で、No1,2,3の制御指令値が100[%]となる(図7の下図も参照)。
このように、図7で示す例では、抑制電力35[kW]分が優先的に全てのPCS3の出力電力から抑制されることとなるので、制御1サイクル中に消費電力が急激に低下したことが原因で、逆潮流が発生するのを防止できる。なお、全てのPCS3の出力電力の上限値の合計(最大出力と図示。制御目標値によって規定されている。)は、65[kW]となる。
図8及び図9を用いて、図2における各PCSへの制御指令値算出処理の他の例について説明する。図8において、図6に示す動作と異なるのは、STEP2及びSTEP3である。その他のSTEPは、図6に示す動作と同様であるので、説明を省略する。
図8のSTEP2において、出力制御装置2は、抑制電力又は余剰から、当日優先のPCS番号を有するPCSのPCS定格を除する。なお、一回目のSTEP2のときに、抑制電力が用いられて、二回目以降のSTEP2のときに、余剰が用いられる。第1~第nのPCSの決め方は、図6の場合と同様である。
商が1以上の場合には、当日優先のPCS番号を有するPCSの制御指令値を0[%]とする。
商が1未満の場合には、(1-除算の商)×100[%]を、当日優先PCS番号の制御指令値とする。
STEP3では、商が1以上であるか否かが判断されて、1未満の場合は、STEP4に進み、1以上の場合は、STEP5に進む。
図9を用いて具体的に説明する。図9において、諸条件は、図7の場合と同様とする。STEP1で、図7と同じく、抑制電力が35[kW]となる。
STEP2-1で、抑制電力35[kW]/No4のPCS定格10[kW]の計算より、商が3.5となるので、No4の制御指令値が0[%]となる。これにより、No4のPCS定格10[kW]分が抑制される(図9の下図も参照)。
STEP2-2で、(抑制電力35[kW]-No4のPCS定格10[kW])/No5のPCS定格30[kW]の計算が行われる。除するための当日優先PCS定格の番号は、STEP4でインクリメントされている。このとき、商が0.83…となる。(1-0.83…)×100[%]の計算より、No5の制御指令値は16.6…[%]となる。これにより、25[kW]が抑制されて、合計35[kW]の抑制が行われる(図9の下図も参照)。
最後に、STEP5でNo1,2,3の制御指令値は、100[%]となる(図9の下図も参照)。
このように、図9で示す例でも、抑制電力35[kW]分が優先的に全てのPCS3の出力電力から抑制されることとなるので、制御1サイクル中に消費電力が急激に低下したことが原因で、逆潮流が発生するのを防止できる。なお、全てのPCS3の出力電力の上限値の合計(最大出力と図示。制御目標値によって規定されている。)は、65[kW]となる。
図10を用いて、図2における各PCSへの制御指令値算出処理の他の例について説明する。
図10では、当日優先PCS番号から順次ではなく、定格の大きい(かつPCS番号の小さい)PCSから処理を行う場合を示す。STEP2の処理は、図6又は図8どちらかを使用するものとする。図10では、図6のSTEP2を使用している。
STEP1で、同じく、抑制電力35[kW]が計算される。
STEP2-1では、抑制電力35[kW]-No3のPCS定格30[kW]が計算される。余剰が5[kW]となるので、No3の制御指令値は、0[%]となる。
STEP2-2では、余剰5[kW]-No5のPCS定格30[kW]が計算される。余剰が0[kW]となるので、No5の制御指令値は、83.3…[%]となる。
最後に、STEP5で、No1,2,4の制御指令値を100[%]とする。
このように、図10に示す例でも、抑制電力35[kW]分が優先的に全てのPCS3の出力電力から抑制されることとなるので、制御1サイクル中に消費電力が急激に低下したことが原因で、逆潮流が発生するのを防止できる。なお、全てのPCS3の出力電力の上限値の合計(最大出力と図示。制御目標値によって規定されている。)は、65[kW]となる。また、PCS定格の大きいPCSの優先順位を上位にすれば、最初のステップで、一度に、出力電力を大きく下げることができ、制御1サイクル中の消費電力の急激な低下による逆潮流をより回避しやすくなる。また、たとえば、No3のPCS定格が35[kW]以上であった場合は、一つ目のステップで、抑制電力に達するので、PCS定格が大きいものを優先順位の上位とすることは、御1サイクル中の消費電力の急激な低下による逆潮流をより回避するという点で、有効である。
なお、上記の図6~図10に示した例では、第1のPCSの制御指令値が0[%]になる例を示しているが、数値によっては、第1のPCSの制御指令値が0[%]よりも大きくなる場合があることは、言うまでもない。
以上のように、上記実施形態では、出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いたPCS3のPCS定格の合計が抑制電力以下である間、上限値が0[%]となる制御指令値を用いて、優先順位の高い順に、0[%]となる制御指令値をPCS3に送信することとなるのであるから、制御1サイクルの最初に、発電電力を一気に下げることができ、消費電力の急激な減少による逆潮流を回避することが可能となる。そして、出力制御装置2は、0[%]となる制御指令値を用いたパワーコンディショナ以外のパワーコンディショナの制御指令値を、0[%]よりも大きくなるように算出して、出力電力の上限値を調整する。そして、残りのPCS3については、PCS定格まで発電可能とする制御指令値が用いられる。
上記の実施形態において、出力制御装置2は、優先順位が1番のPCSに対して、出力電力を一気に下げるように、制御指令値を送信する。その後、順次、優先順位にしたがって、PCSの出力電力を下げるための制御指令値が、第2のPCSに送信されていく。このように、制御1サイクルの最初の段階から、優先順位の高いPCSの出力電力を一気に下げる。これによって、制御1サイクルにおけるPCSの総発電電力を、制御1サイクルの最初の段階で、出来る限り急に下げることが可能となる。よって、制御1サイクルの途中で、もし、消費電力が急激に低下したとしても、逆潮流が発生しにくくなるのである。
先述したが、特許文献2では、PCS定格の大きいPCSを選択して、そのPCSに対して、制御指令値を送信するアルゴリズムが採用されているが、その際の制御指令値は、PCS定格の大きいPCSから、出来る限り最大限に電力を出力させようとするものである。
しかし、本発明は、優先順位の高い(設定によっては、PCS定格の大きいPCSの優先順位が高い場合もある)PCSから、出来る限り発電電力を下げるようにして、制御1サイクル内で消費電力の急激な低下が生じても逆潮流が生じないように使用とする発明である。
すなわち、特許文献2に記載の発明と本発明とは、PCSの制御方法が逆であり、特許文献2に記載の発明では、急激に、消費電力が低下した場合に、逆潮流が発生してしまう場合があるが、本発明では、その可能性を回避することができるのであり、本発明の方が、自家消費システムの出力制御装置として、より適切なものであると言える。
なお、上記実施形態では、S35の処理において、制御目標値は、(消費電力-設定差分値β)/PCS総定格によって比率として定義されている。これは、PSCを制御する制御指令値が、PCS定格に対する比率を用いているからである。もし、制御指令値として、電力の値を用いるのであれば、制御目標値としては、(消費電力-設定差分値β)/PCS総定格ではなく、消費電力-設定差分値βを用いることができる。その場合、消費電力-設定差分値βがPCS総定格よりも大きければ、制御目標値は、PCS総定格となる。
なお、上記実施形態では、制御目標値を求めるために、図4及び5に示すような消費電力/PCS定格の比率αに応じて設定差分値βを変化させる方法(「荷重等差制御」という。)を用いることとしたが、本発明において、制御目標値の求め方は、荷重等差制御に限るものではない。
たとえば、PCS総定格について、消費電力から所定の電力を差し引いた値を全PCSの出力電力合計の上限値とする方法(「等差制御」という。)や、消費電力に対して比率を乗算した値を全PCSの出力電力合計の上限値とする方法(「等比制御」という。)、比率αに応じて、消費電力に乗算する値を変化させて全PCSの出力電力の合計の上限値とする方法(「荷重等比制御」という。)を用いて、制御目標値を決定してもよい。
制御目標値として比率を用いる場合であっても、制御目標値として電力値を用いる場合であっても、制御目標値を求めるための計算方法として荷重等差制御、等差制御、等比制御、荷重等比制御、その他の方法を用いる場合であっても、制御目標値は、全PCSの出力電力を合計したときの上限値を規定する値であるといえる。
そして、出力制御装置2は、各PCS3への制御指令値を算出するに際して、制御目標値に基づいて、各PCS3での出力電力の上限値が優先順位の高い順に低くなるように、各PCS3への制御指令値を算出する。このとき、各PCS3への制御指令値に基づく、各PCS3での出力電力の上限値の合計が、制御目標値で規定される全PCS3の出力電力の合計の上限値に対応するのである。このように計算された制御指令値を、出力制御装置2は、優先順位の高い順に、制御指令値をPCS3に送信して、各PCS3の出力電力を制御し、優先順位の高いPCS3から順に制御する。
上記実施形態では、PCS総定格-PCS総定格×制御目標値=抑制電力であるとしている。よって、抑制電力=PCS総定格×(1-制御目標値)と表してもよい。また、その他、等価の値が、抑制電力として用いられてもよい。
また、制御目標値=(PCS総定格-抑制電力)/PCS総定格=1-抑制電力/PCS総定格である。制御目標値についても、その他の等価の値が用いられてもよい。
なお、制御指令値として、上記では、百分率を用いて、何パーセントであるかと示したが、小数点で示してもよいことは言うまでもない。制御指令値が0パーセントとは、PCS3の出力電力の上限値が0[kW]であるという意味の制御指令値となる。制御指令値が100%とは、PCS3の出力電力をPCS定格まで発電してよいという意味の制御指令値となる。
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。
本発明は、出力制御装置、出力制御プログラム、及びそれを用いた太陽光自家消費システムであり、産業上利用可能である。
1 太陽光発電システム
2 出力制御装置
3 PCS
4 太陽電池
5 RPR
6 受変電設備
7 電力送配電網
8 負荷
S31 消費電力計測手段
S13,S17,S21 制御指令値送信手段
S23 制御目標値算出手段
S24 制御指令値算出手段
STEP1 抑制電力算出手段

Claims (9)

  1. 太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置であって、
    受電電力と前記複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段と、
    前記複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、前記優先順位の順番に、前記パワーコンディショナに対して、前記出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段と、
    前記複数のパワーコンディショナの出力電力を合計したときの上限値を規定する制御目標値を算出する制御目標値算出手段と、
    前記制御目標値算出手段で算出した前記制御目標値に基づいて、前記優先順位の高い順に、前記パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各前記パワーコンディショナへの前記制御指令値を算出する制御指令値算出手段とを備え
    前記制御目標値算出手段は、
    前記消費電力と、前記複数のパワーコンディショナのPCS定格の合計であるところのPCS総定格との比率を算出し、
    前記比率に対応して記憶されている設定差分値を示すテーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、
    前記消費電力から前記設定差分値を引いた値に対して、前記PCS総定格を除算した値に基づいて、前記制御目標値を決定することを特徴とする、出力制御装置。
  2. 前記制御指令値算出手段は、前記優先順位に従って、前記パワーコンディショナの出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いることを特徴とする、請求項1に記載の出力制御装置。
  3. さらに、前記制御目標値に基づいて、前記複数のパワーコンディショナの出力電力を抑制したときの上限値の合計を、抑制電力として算出する抑制電力算出手段を備え、
    前記制御指令値算出手段は、出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いたパワーコンディショナのPCS定格の合計が前記抑制電力以下である間、上限値が0となる制御指令値を用いることを特徴とする、請求項2に記載の出力制御装置。
  4. 前記制御指令値算出手段は、出力電力の上限値が0となる制御指令値を用いたパワーコンディショナ以外のパワーコンディショナの制御指令値を、上限値が0よりも大きくなるように算出することを特徴とする、請求項3に記載の出力制御装置。
  5. 前記制御指令値算出手段は、残りのパワーコンディショナに対しては、PCS定格まで発電可能とする制御指令値を用いることを特徴とする、請求項4に記載の出力制御装置。
  6. 前記制御指令値で規定される前記複数のパワーコンディショナの出力電力の上限値の合計と、前記制御目標値で規定される前記複数のパワーコンディショナの出力電力の上限値の合計とが対応していることを特徴とする、請求項1に記載の出力制御装置。
  7. 前記優先順位は、日ごとに変更していくことを特徴とする、請求項1に記載の出力制御装置。
  8. 太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置を、
    受電電力と前記複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段、
    前記複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、前記優先順位の順番に、前記パワーコンディショナに対して、前記出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段、
    前記複数のパワーコンディショナの出力電力を合計したときの上限値を規定する制御目標値を算出する制御目標値算出手段、及び、
    前記制御目標値算出手段で算出した前記制御目標値に基づいて、前記優先順位の高い順に、前記パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各前記パワーコンディショナへの前記制御指令値を算出する制御指令値算出手段として機能させるための出力制御プログラムであって、
    前記制御目標値算出手段は、
    前記消費電力と、前記複数のパワーコンディショナのPCS定格の合計であるところのPCS総定格との比率を算出し、
    前記比率に対応して記憶されている設定差分値を示すテーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、
    前記消費電力から前記設定差分値を引いた値に対して、前記PCS総定格を除算した値に基づいて、前記制御目標値を決定することを特徴とする、出力制御プログラム。
  9. 複数の太陽電池と、前記複数の太陽電池に接続された複数のパワーコンディショナと、前記複数のパワーコンディショナの出力電力を制御するための出力制御装置とを備える太陽光発電システムであって、
    前記出力制御装置は、
    受電電力と前記複数のパワーコンディショナの出力電力との合計を消費電力とする消費電力計測手段と、
    前記複数のパワーコンディショナに優先順位を付しており、前記優先順位の順番に、前記パワーコンディショナに対して、前記出力電力の上限値を規定するための制御指令値を送信する制御指令値送信手段と、
    前記複数のパワーコンディショナの出力電力を合計したときの上限値を規定する制御目標値を算出する制御目標値算出手段と、
    前記制御目標値算出手段で算出した前記制御目標値に基づいて、前記優先順位の高い順に、前記パワーコンディショナでの出力電力の上限値が低くなるように、各前記パワーコンディショナへの前記制御指令値を算出する制御指令値算出手段とを備え
    前記制御目標値算出手段は、
    前記消費電力と、前記複数のパワーコンディショナのPCS定格の合計であるところのPCS総定格との比率を算出し、
    前記比率に対応して記憶されている設定差分値を示すテーブルを参照して、算出した前記比率に対応する前記設定差分値を決定し、
    前記消費電力から前記設定差分値を引いた値に対して、前記PCS総定格を除算した値に基づいて、前記制御目標値を決定することを特徴とする、太陽光発電システム。
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