JP7197096B1 - フィルム又は繊維製品用抗菌塗工液、抗菌製品、抗菌フィルム、及び抗菌繊維製品 - Google Patents
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そのため食品等を入れるための紙器には抗菌処理がなされている(特許文献1)。既存の紙器表面への抗菌処理技術は印刷用塗工機によって抗菌塗工するものである。
また、不織布は多重に繊維を重ねたものを無数の熱圧着箇所で繊維を固定することでシート状を保つため、熱圧着箇所が不織布繊維表面よりも低くなり、繊維と熱圧着箇所は凸凹関係にある。このため粘性が高いと塗工時に繊維よりも低い熱圧着箇所には塗工ローラーが当たらず抗菌塗工液も凹部へ及ばず抗菌処理されないという大きな問題も生じる。
本発明に係るフィルム又は繊維製品用抗菌塗工液は、粉末抗菌剤と結晶セルロースとを含有する。これにより、粘性を低くしても粉末抗菌剤の分散性に優れ、透明性が確保された塗膜を与えることができる。この理由は必ずしも明らかではないが、抗菌塗工液中で結晶セルロースが層状にほぐれることにより、粉末抗菌剤の沈降が大幅に緩和されるためであると推察される。また、粉末の抗菌剤を使用することにより、長期間にわたる抗菌性と安全性が得られる。
なお、本明細書において、25℃における粘度は、後述の実施例における測定方法により測定される値を意味する。
粉末抗菌剤の種類は特に限定されないが、例えば、銀系抗菌剤、銅系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤等の無機系抗菌剤が挙げられる。なかでも、抗菌性及び防カビ性に優れることから、銀系抗菌剤を用いることが好ましい。銀系抗菌剤として、ゼオライト粒子、シリカゲル粒子、アルミナ粒子、リン酸塩粒子等を担体として、これらの担体粒子に銀化合物を担持させた銀担持抗菌剤のほか、炭酸銀等が挙げられる。粉末抗菌剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、粉末抗菌剤は防カビ性を有してもよい。
結晶セルロースは、例えば、繊維性植物のパルプから得られたα-セルロースを、酸で部分的に解重合した後、可溶性部分を取り除き、適宜、不溶性部分を結晶化して得られるものである。
例えばフィルムを用いた製品は製品売価が低い傾向にあり、製造効率をあげるため毎分40m以上の送りスピードで薬剤塗工されるケースが一般的である。このように製造効率を上げなければ利益が出にくい製品については、高速での塗膜形成技術が必要となり、塗工液の良好な乾燥性が求められる。乾燥性を向上させる方法としてはアルコール類などの沸点の低い溶媒を使用する方法がよく知られているが、結晶セルロースは水溶媒中でなければ均一に分散しない。この理由は、結晶セルロースは水中で撹拌されることで結晶セルロースの結晶領域と非結晶領域の間に水が入り込み層状にほぐれるからである。従って、塗工液の乾燥性を向上させる目的で有機溶媒を利用することは難しい。
本発明者らは、結晶性セルロースに加えて、キサンタンガムやデキストリン類等のセルロース以外の多糖類を用いることで、アルコール類を含む水溶液中でも安定して結晶セルロースが層状に分散することを見出した。
すなわち、本発明に係る抗菌塗工液は、水とアルコール類とセルロース以外の多糖類とを更に含むことが好ましい。これにより、粉末抗菌剤の分散性と塗工液の乾燥性を両立させやすい。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられるが、乾燥性に優れる点から、メタノール、エタノールが好ましい。アルコール類は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に係る抗菌塗工液は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。これにより、抗菌塗工液の硬化膜を塗布対象の表面に形成することができる。
本発明に係る抗菌塗工液は、水溶性樹脂を含んでもよい。水溶性樹脂は、所定の粘性を有するため、抗菌塗工液に粘性が付与され、例えば、印刷機の印刷用ロールに濡れやすくなる。
本発明に係る「抗菌塗工液」の用途は特に限定されるものでないが、中でも、低い粘性及び抗菌性が要求される種々の用途、例えば、フィルムや繊維製品等に好適に適用できる。
本発明は、以上の抗菌塗工液の硬化膜が表面に形成されている抗菌製品を包含する。
抗菌フィルムは、ベースとなるフィルムの抗菌性を付与すべき少なくとも一方の面に、本発明に係る抗菌塗工液の硬化膜を形成して得られるものである。ベースフィルムとしては特に限定されず、従来公知のものが挙げられるが、例えば生分解性の高分子フィルムやコロナ処理がされた炭化水素系フィルムも含まれる。抗菌フィルムとしては、例えば、食品包装等に用いられる透明フィルムが挙げられる。
抗菌繊維製品は、例えば、繊維製品のベースとなる繊維の表面に、本発明に係る抗菌塗工液の硬化膜を形成して得られるものである。繊維の種類等は特に限定されないが、例えば、生分解性の不織布やコロナ処理がされた炭化水素系不織布が含まれる。繊維製品としては、衣類、タオル、マスク、ソファー、クッション、寝具、カーテン、靴、鞄等が挙げられる。
本発明に係る抗菌製品の製造方法は、抗菌塗工液をフィルムや繊維製品等の表面に塗布する塗布手順と、抗菌塗工液を硬化させる硬化手順とを含む。
抗菌塗工液の塗布は、フィルムや繊維製品等の表面に抗菌効果が付与される限りにおいて、その方法は特に限定されない。例えば、含浸、印刷用ロール等による転写、スプレーによる散布等が挙げられる。
抗菌塗工液の硬化は、熱風乾燥、活性エネルギー線照射といった従来公知の種々の方法で行われてよい。このうち、活性エネルギー線(例えば、遠赤外線)照射は、フィルムや繊維製品等の損傷を抑制できる点で好ましい。
はない。
蒸留水13gにメタノール4.3gを混合した後、結晶セルロース0.023gとキサンタンガム0.002gとデキストリン0.006gを加えて高速ミキサーでよく撹拌した。銀ゼオライト0.34gを加えてさらに撹拌し、ポリ酢酸ビニル樹脂水分散液(固形分濃度30wt%)を2.5g添加してよく撹拌することで抗菌塗工液を得た。このようにして得られた抗菌塗工液の25℃における粘度は14.78cPであった。
次にグラビア印刷機の全面印刷用ロールを用いて、抗菌塗工液をセロハンフィルムの表面に塗布し、120℃の熱風をフィルムに2秒間吹き付けることで、抗菌被膜を塗工したセロハンフィルムを得た。同様に、抗菌塗工液を不織布の表面に塗布し、120℃の熱風を2秒間吹き付けることで、抗菌被膜を塗工した不織布を得た。
蒸留水13gにメタノール4.3gを混合した後、結晶セルロース0.023gとキサンタンガム0.002gとデキストリン0.006gを加えて高速ミキサーでよく撹拌した。銀ゼオライト0.34gを加えてさらに撹拌し、ポリ乳酸樹脂水分散液(固形分濃度30wt%)を2.5g添加してよく撹拌することで抗菌塗工液を得た。このようにして得られた抗菌塗工液の25℃における粘度は10.35cPであった。
次に、実施例1と同様にして、抗菌被膜を塗工したセロハンフィルム及び不織布を得た。
蒸留水13gにメタノール4.3gを混合した後、結晶セルロース0.023gとキサンタンガム0.002gとデキストリン0.006gを加えて高速ミキサーでよく撹拌した。銀ゼオライト0.34gを加えてさらに撹拌し、変性ポリアクリル樹脂水分散液(固形分濃度30wt%)を2.5g添加してよく撹拌することで抗菌塗工液を得た。このようにして得られた抗菌塗工液の25℃における粘度は4.39cPであった。
次に、実施例1と同様にして、抗菌被膜を塗工したセロハンフィルム及び不織布を得た。
蒸留水13gにメタノール4.3gを混合した後、結晶セルロース0.0115gとキサンタンガム0.001gとデキストリン0.003gを加えて高速ミキサーでよく撹拌した。銀ゼオライト0.34gを加えてさらに撹拌し、変性ポリアクリル樹脂水分散液(固形分濃度30wt%)を2.5g添加してよく撹拌することで抗菌塗工液を得た。このようにして得られた抗菌塗工液の25℃における粘度は2.91cPであった。
次に、実施例1と同様にして、抗菌被膜を塗工したセロハンフィルム及び不織布を得た。
蒸留水17.3gに結晶セルロース0.023gを加えて高速ミキサーでよく撹拌した後、銀ゼオライト0.34gを加えてさらに撹拌し、変性ポリアクリル樹脂水分散液(固形分濃度30wt%)を2.5g添加してよく撹拌することで抗菌塗工液を得た。このようにして得られた抗菌塗工液の25℃における粘度は1.52cPであった。
次に、実施例1と同様にして、抗菌被膜を塗工したセロハンフィルム及び不織布を得た。
蒸留水13gにメタノール3.5gを混合した後、結晶セルロース0.023gとキサンタンガム0.002gとデキストリン0.006gを加えて高速ミキサーでよく撹拌した。銀ゼオライト0.7gを加えてさらに撹拌し、変性ポリアクリル樹脂水分散液(固形分濃度30wt%)を25g添加してよく撹拌することで抗菌塗工液を得た。このようにして得られた抗菌塗工液の25℃における粘度は48.2cPであった。
次に、実施例1と同様にして、抗菌被膜を塗工したセロハンフィルム及び不織布を得た。
蒸留水13gにメタノール4.3gを混合した後、銀ゼオライト0.34gを加えて撹拌し、変性ポリアクリル樹脂水分散液(固形分濃度30wt%)を2.5g添加してよく撹拌することで抗菌塗工液を得た。このようにして得られた抗菌塗工液の25℃における粘度は3.10cPであった。
次に、実施例1と同様にして、抗菌被膜を塗工したセロハンフィルムを得た。
蒸留水17.3gに銀ゼオライト0.34gを加えて撹拌し、変性ポリアクリル樹脂水分散液(固形分濃度30Wt%)を2.5g添加してよく撹拌することで抗菌塗工液を得た。このようにして得られた抗菌塗工液の25℃における粘度は1.20cPであった。
次に、実施例1と同様にして、抗菌被膜を塗工したセロハンフィルムを得た。
水10gに分散剤0.1gと銀ゼオライト0.34gを加えて撹拌し、アクリル樹脂水分散液(固形分濃度30wt%)を2.5g添加してよく撹拌することで抗菌塗工液を得た。このようにして得られた抗菌塗工液の25℃における粘度は163cPであった。
次に、実施例1と同様にして、抗菌被膜を塗工したセロハンフィルムを得た。
銀ゼオライト:株式会社シナネンゼオミック製、平均粒径2~3μm
結晶セルロース:旭化成株式会社製 セオラスUF-F702
キサンタンガム:株式会社キミカ製 EC
デキストリン:三晶株式会社製 MALTRIN QD M440
分散剤:日信化学工業株式会社製 サーフィノール
抗菌塗工液の25℃における粘度の測定は、コーンプレート型粘度計(ブルックフィールド社製 LV)を用い、コーンスピンドルはCPA-40Zを使用した。測定温度を25℃とし、測定用サンプル0.5mLをシリンジで測り取り、測定中は粘度計内部のトルク値が10%から100%の範囲を外れないように条件設定し、粘度を測定した。粘度の単位はcP(センチポアズ)で示した。
実施例及び比較例で得られた各セロハンフィルムについて、フィルム越しに1m離れた人の顔が認識できるか否かで透明性を評価し、結果を表1に示した。評価基準は、下記の通りとした。
◎:フィルム越しに1m離れた人の顔がはっきりと認識できる場合
〇:フィルム越しに1m離れた人の顔が認識できる場合
△:フィルム越しに1m離れた人の顔がぼやけるがよく見ると認識はできる場合
×:フィルム越しに1m離れた人の顔がぼやけて認識できない場合
実施例及び比較例で得られた各抗菌塗工液を50mLの透明なガラス容器に20mLとり、8時間静置後、透明なガラス容器をゆっくりと傾けてガラス容器の底を確認することで塗工液の沈降具合(抗菌剤の分散性)を評価し、結果を表1に示した。評価基準は、下記の通りとした。
◎:ガラス容器の底を光に照らして内部がはっきりと確認できる場合
〇:ガラス容器の底を光に照らして内部がはっきりではないが確認できる場合
×:ガラス容器の底から内部が確認できない場合
実施例で得られた各セロハンフィルム及び不織布について抗菌性の評価を行った。
セロハンフィルムについては、JIS Z 2801のフィルム密着法に準拠した。使用したセロハンフィルムの厚さは30μmであった。実施例1~6の抗菌活性値はいずれも4以上であり、良好な抗菌性が得られることが明らかとなった。
不織布については、JIS L 1902の菌液吸収法に準拠した。使用した不織布は、ポリエステル不織布(目付40g)、ポリ乳酸不織布(目付30g)であった。実施例1~6の抗菌活性値はいずれも4以上であり、良好な抗菌性が得られることが明らかとなった。
実施例3で得られたフィルム及び不織布の表面を、走査電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製のSU3500)を使用して、低真空モード(30Pa)、加速電圧10kV、倍率100倍、COMP画像により観察した。結果の図1に示されている通り、白点で示される粉末抗菌剤が良好に分散していることが明らかとなった。
Claims (9)
- フィルム又は繊維製品の表面に塗布されるフィルム又は繊維製品用抗菌塗工液であって、
粉末抗菌剤と結晶セルロースと水とアルコール類とセルロース以外の多糖類とを含有し、
前記粉末抗菌剤が、ゼオライト粒子、シリカゲル粒子、アルミナ粒子、又はリン酸塩粒子を担体とした銀担持抗菌剤であり、
前記結晶セルロースが、繊維性植物のパルプから得られたα-セルロースを、酸で部分的に解重合した後、可溶性部分を取り除いて得られるものである、フィルム又は繊維製品用抗菌塗工液。 - 25℃における粘度が50cP以下である、請求項1に記載の抗菌塗工液。
- 前記抗菌塗工液の全質量に対し、前記粉末抗菌剤の含有量が0.5質量%以上5質量%以下であり、前記結晶セルロースの含有量が0.01質量%以上2質量%以下である、請求項1又は2に記載の抗菌塗工液。
- 前記アルコール類がメタノール及び/又はエタノールであり、前記多糖類がキサンタンガム及び/又はデキストリン類である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗菌塗工液。
- 熱可塑性樹脂を更に含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗菌塗工液。
- フィルム又は繊維製品の表面に塗布されるフィルム又は繊維製品用抗菌塗工液であって、
粉末抗菌剤と結晶セルロースと水とアルコール類とセルロース以外の多糖類とを含有し、
前記結晶セルロースが、繊維性植物のパルプから得られたα-セルロースを、酸で部分的に解重合した後、可溶性部分を取り除いて得られるものである、フィルム又は繊維製品用抗菌塗工液。 - 請求項1~6のいずれか一項に記載の抗菌塗工液の硬化膜が表面に形成されている抗菌製品。
- 請求項1~6のいずれか一項に記載の抗菌塗工液の硬化膜が表面に形成されている抗菌フィルム。
- 請求項1~6のいずれか一項に記載の抗菌塗工液の硬化膜が表面に形成されている抗菌繊維製品。
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