JP7195678B1 - 積層シート、及び食品包装容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、炭酸カルシウム粒子を高濃度で含みつつ、成形加工性、機械的特性及び外観にバラツキが生じにくい積層シートを提供すること。【解決手段】本発明は、内層と、前記内層の両面に積層される一対の外層とを備える積層シートであって、前記内層は、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含み、前記外層は、熱可塑性樹脂を含み、前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含み、前記内層における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は、40.0質量%以上80.0質量%以下であり、前記炭酸カルシウム粒子は、スルホン酸及びその塩の少なくとも1種、又はリン酸エステル、を含む表面処理剤で表面処理され、前記一対の外層を構成する各外層の厚さの比率は、前記積層シートの全体厚さに対して2.0%以上20.0%以下である、積層シートを提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、積層シート、及び食品包装容器に関する。
従来、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む内層と、前記内層の両面に積層され熱可塑性樹脂を含む一対の外層と、を備える積層シートが知られている。
近年、環境保護の観点から、各種樹脂製品における樹脂成分含有量を低減することが望まれている。
これに対し、特許文献1には、内層と、該内層の両面に積層される一対の外層とを備える熱可塑性樹脂含有積層体であって、積層体における炭酸カルシウム粒子の含有割合を50.0質量%超とした積層体が開示されている。また、特許文献1には、炭酸カルシウム粒子及び熱可塑性樹脂の界面に空隙が発生することを抑制するために、炭酸カルシウム粒子に、シランカップリング剤処理、ステアリン酸カルシウム処理等の表面処理を施してもよいことが開示されている。特許文献1の積層体は、炭酸カルシウム粒子を高濃度で含むため環境保護のために好ましい。また、特許文献1によれば、成形加工性に優れる積層体が得られるとされている。
特許第6857428号公報
しかし、特許文献1に開示された積層体は、小さな粒径の炭酸カルシウム粒子のみを配合しているため、混練時の分散性不良等により炭酸カルシウム粒子の偏在が生じやすい。このように樹脂組成物中で炭酸カルシウム粒子が偏在すると、得られる積層体やその成形品において、成形加工性、機械的特性及び外観にバラツキが生じやすいという問題があった。
また、熱可塑性樹脂と、無機充填剤とを含む樹脂成形体では、無機充填剤の周囲に空洞部分が生じることが多い。そして、この空洞部分は樹脂成形体の成形加工性、機械的特性及び外観に影響を及ぼすことがある。
例えば、樹脂成形体の樹脂部分の空隙率が高いと、樹脂成形体に強い外力を加えた際に樹脂成形体内の変形の逃げ場が多いため、通常、樹脂成形体は割れにくくなる。これに対し、樹脂の空隙率が低いと、樹脂成形体に強い外力を加えた際に樹脂成形体内の変形の逃げ場が少ないため、通常、樹脂成形体は割れにくくなる。このように、樹脂の空隙率は、樹脂成形体の成形加工性、機械的特性及び外観に影響を及ぼすことがある。
また、一般的に、無機充填剤は熱可塑性樹脂よりも硬い。このため、樹脂成形体が無機充填剤を多量に含む場合は、上記の樹脂の空隙率の成形加工性、機械的特性及び外観への影響は、より顕著になりやすい。すなわち、樹脂成形体が無機充填剤を多量に含む場合は、硬い無機充填剤のために樹脂成形体の変形の逃げ場がより少なくなることから、樹脂成形体の成形加工性、機械的特性及び外観への影響が大きくなりやすい。
特許文献1に開示された積層体は、炭酸カルシウム粒子及び熱可塑性樹脂の界面での空隙の発生を少なくする目的で作製された積層体である。また、特許文献1に開示された上記表面処理は、空隙率を低くするものである。このため、特許文献1に開示された積層体では、空隙率が適切でないために成形加工性、機械的特性及び外観が十分でなくなるおそれがある。
このように、従来の積層体には、炭酸カルシウム粒子の偏在及び樹脂部分の空隙率の小ささ等に起因して、成形加工性、機械的特性及び外観にバラツキが生じやすいという問題があった。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、炭酸カルシウム粒子を高濃度で含みつつ、成形加工性、機械的特性及び外観にバラツキが生じにくい積層シートを提供することを目的とする。
本発明者らは、炭酸カルシウム粒子を含む無機充填剤に特定の表面処理を行うと、炭酸カルシウム粒子を含む無機充填剤の分散性や反応性が高まり内層の空隙率が適切になることで、積層シートの成形加工性、機械的特性及び外観が改善されることを見出した。このため、本発明者らは、上記表面処理を行った無機充填剤を含む積層シートによれば、成形加工性、機械的特性及び外観にバラツキが生じにくい積層シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
(1) 内層と、前記内層の両面に積層される一対の外層とを備える積層シートであって、
前記内層は、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含み、
前記外層は、熱可塑性樹脂を含み、
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含み、
前記内層における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は、40.0質量%以上80.0質量%以下であり、
前記炭酸カルシウム粒子は、スルホン酸及びその塩の少なくとも1種、又はリン酸エステル、を含む表面処理剤で表面処理され、
前記一対の外層を構成する各外層の厚さの比率は、前記積層シートの全体厚さに対して2.0%以上20.0%以下である、
積層シート。
(2) 前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂である、(1)に記載の積層シート。
(3)前記内層の少なくとも一裁断面における前記無機充填剤の実測平面占有率MPOが、前記内層の無機充填剤の含有割合に基づき算出した前記裁断面における前記無機充填剤の理論上平面占有率TPOより2%以上低い、(1)に記載の積層シート。
(4) 前記ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記高密度ポリエチレンにおけるJIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であり、
前記直鎖状低密度ポリエチレンにおけるJIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であり、
前記高密度ポリエチレンと前記直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比が、90:10~50:50である、(2)に記載の積層シート。
(5) 前記内層に含まれる熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であり、
前記ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンホモポリマー及び/又はポリプロピレンブロックポリマーである、(1)に記載の積層シート。
(6) 前記炭酸カルシウム粒子が、重質炭酸カルシウム粒子からなる、(1)に記載の積層シート。
(7) 前記スルホン酸が、アルキルスルホン酸、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及びキシレンスルホン酸からなる群より選択される1種以上のスルホン酸である、(1)に記載の積層シート。
(8) 前記リン酸エステルが、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸である、請求項(1)に記載の積層シート。
(9) 前記積層シートが、真空成形用積層シートである、(1)から(8)のいずれかに記載の積層シート。
(10) (9)に記載の積層シートで成形された食品包装容器。
本発明によれば、炭酸カルシウム粒子を高濃度で含みつつ、成形加工性、機械的特性及び外観にバラツキが生じにくい積層シートが提供される。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
[積層シート]
本発明の積層シートは、内層と、内層の両面に積層される一対の外層とを備える、少なくとも3層構造のシートである。以下、上記一対の外層のうち、内層の一方面に積層される外層を「第1の外層」、内層の他方面に積層される外層を「第2の外層」、ともいう。
本発明の積層シートは、以下の要件を全て満たす。なお、第1の外層及び第2の外層は、以下の要件を満たす限り、構成が同一であってもよいし異なってもよい。
(要件1)内層は、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む。
(要件2)外層は、熱可塑性樹脂を含む。
(要件3)無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含む。
(要件4)内層における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は、40.0質量%以上80.0質量%以下である。
(要件5)炭酸カルシウム粒子は、スルホン酸及びその塩の少なくとも1種、又はリン酸エステル、を含む表面処理剤で表面処理される。
(要件6)一対の外層を構成する各外層の厚さの比率は、積層シートの全体厚さに対して2.0%以上20.0%以下である。
本発明の積層シートは、その内層の組成に主要な技術的特徴がある。
具体的には、内層に含まれる無機充填剤は炭酸カルシウム粒子を含み、内層における炭酸カルシウム粒子の含有割合が40.0質量%以上80.0質量%以下であり、無機充填剤はスルホン酸及びその塩の少なくとも1種、又はリン酸エステルを含む表面処理剤で表面処理される点である(要件3~5)。
本発明の積層シートは、炭酸カルシウム粒子を含む無機充填剤に特定の表面処理を行うと、無機充填剤の分散性や反応性が高まるために内層の空隙率が適切になることで内層の変形の逃げ場が適切になり、この結果、積層シートの成形加工性、機械的特性及び外観が改善されることを見出して完成されたものである。
本発明において「積層シートの外観」とは、積層シートの表面状態を含む概念である。
本発明において「積層シートの外観のバラツキが抑制されている」とは、積層シートの表面状態全体に、凹凸、変形、又は破れ等がほぼ認められないか、全く認められないことを含む概念である。
積層シートの外観は、例えば実施例に開示した方法で評価される。
本発明において「積層シートの機械的特性」とは、積層シートの引張強度を含む概念である。
本発明において「積層シートの機械的特性のバラツキが抑制されている」とは、積層シートの引張強度のバラツキが小さいことを含む概念である。
積層シートの機械的特性は、例えば実施例に開示した方法で評価される。
本発明において「積層シートの成形加工性」とは、積層シートから成形容器への成形加工の容易性を示す概念である。積層シートの成形加工性は、成形容器の目的寸法に対する実寸法の差異、成形容器の形状の歪の大小で判断される。
本発明において「積層シートの成形加工性のバラツキが抑制されている」とは、成形容器の目的寸法に対する実寸法の差異が小さいこと、及び成形容器の形状の歪量が小さいこと、を含む概念である。
積層シートの成形加工性は、例えば実施例に開示した方法で評価される。
以下、本発明の積層シートの構成について詳述する。
(1)内層
内層は、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む。すなわち、内層は、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物からなる。なお、後述の外層は、熱可塑性樹脂を含むが、意図的に無機充填剤を含ませるものでなく、実質的に無機充填剤を含まない。
<無機充填剤>
無機充填剤としては、例えば、金属(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等)の塩(炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩)、酸化物、又は水和物の粒子が用いられる。
無機充填剤としては、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレイ、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、ウォラストナイト、ドロマイト、黒鉛等の粒子が用いられる。
無機充填剤の形状は、特に限定されないが、粒子状(球形、不定形状等)、フレーク状、顆粒状、繊維状等のいずれであってもよい。
無機充填剤が粒子状である場合、無機充填剤の粒径の下限は、特に限定されないが、平均粒子径が、好ましくは0.7μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。また、無機充填剤が粒子状である場合、無機充填剤の粒径の上限は、特に限定されないが、平均粒子径が、好ましくは6.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下である。本発明において「平均粒子径」とは、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値を意味する。平均粒子径の測定機器としては、例えば、島津製作所社製の比表面積測定装置「SS-100型」を好ましく用いることができる。
内層に用いられる無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を含む。炭酸カルシウム粒子としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等が用いられる。内層に用いられる炭酸カルシウム粒子は、好ましくは重質炭酸カルシウム粒子を含み、より好ましくは重質炭酸カルシウム粒子からなる。
ここで、「重質炭酸カルシウム」とは、CaCOを主成分とする天然原料(石灰石等)を機械的に粉砕(乾式法、湿式法等)して得られる炭酸カルシウムを意味する。また、「軽質炭酸カルシウム」とは、合成法(化学的沈殿反応等)により調製された炭酸カルシウムを意味する。
炭酸カルシウム粒子のうち、重質炭酸カルシウム粒子は、熱可塑性樹脂に対してより多くの接触界面を有し、積層シートの機械的特性を向上させやすいため好ましい。また、内層に含まれる炭酸カルシウム粒子が重質炭酸カルシウム粒子からなると、上記積層シートの機械的特性をより向上させやすいため、より好ましい。
重質炭酸カルシウム粒子の平均粒子径は、好ましくは0.7μm以上6.0μm以下、より好ましくは1.0μm以上5.0μm以下、さらに好ましくは1.5μm以上3.0μm以下である。なお、重質炭酸カルシウム粒子の粒径分布において、粒子径45μm以上の粒子が含まれないことが好ましい。
重質炭酸カルシウム粒子の平均粒子径が上記範囲にあると、内層中での分散性が良好であり、積層シート製造時の過度な粘度上昇を防ぐことができる。また、重質炭酸カルシウム粒子の平均粒子径が上記範囲にあると、内層や積層シートの表面から重質炭酸カルシウム粒子が突出して脱落したり、外観や機械強度等を損なったりしにくくなることから、本発明の効果をより奏しやすくなる。
本発明において、上記炭酸カルシウム粒子等の無機充填剤の平均粒子径は、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値である。測定機器としては、例えば、島津製作所社製の比表面積測定装置SS-100型を好ましく用いることができる。
重質炭酸カルシウム粒子の不定形性は、形状の球形化の度合い、すなわち真円度によって表すことができる。真円度が低いほど、不定形性が高いことを意味する。重質炭酸カルシウム粒子の真円度は、好ましくは0.50以上0.95以下、より好ましくは0.55以上0.93以下、さらに好ましくは0.60以上0.90以下である。
本発明において「真円度」とは、粒子の投影面積を、粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積で割った値((粒子の投影面積)/(粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積))を意味する。真円度の測定方法は特に限定されないが、例えば、走査型顕微鏡や実体顕微鏡等で得られる粒子の投影図を、市販の画像解析ソフトで解析して特定することができる。具体的には、粒子の投影面積(A)、粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積(B)、粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の半径(r)、粒子の投影周囲長(PM)の測定結果に基づき、下式によって算出することができる。
「真円度」=A/B=A/πr=A×4π/(PM)
重質炭酸カルシウムの製造方法における粉砕方法としては、湿式粉砕、及び乾式粉砕のうちいずれも用いることができる。好ましくは、経済的な観点から、脱水工程や乾燥工程等が不要な乾式粉砕が用いられる。重質炭酸カルシウムの粉砕に用いる粉砕機は特に限定されず、例えば、衝撃式粉砕機、ボールミル等の粉砕メディアを用いた粉砕機、ローラーミル等が用いられる。重質炭酸カルシウムの製造方法における分級手段としては、空気分級、湿式サイクロン、デカンター等の従来知られる手段を用いることができる。
重質炭酸カルシウムは、幅広い粒径の粒子を含むことから、一般的に成形加工性に劣ることが知られている。しかし、本発明によれば、重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム粒子が特定の表面処理剤で表面処理されているため、重質炭酸カルシウムを内層中に含む積層シートであっても、成形加工性が良好であり、外観を優れたものにすることができる。
内層に用いられる無機充填剤は、炭酸カルシウム粒子を、通常90質量%~100質量%、好ましくは95質量%~100質量%、より好ましくは不可避的不純物を除く実質的に全量になるように含む。後述のように、本発明の炭酸カルシウム粒子は、特定の表面処理剤で表面処理され、熱可塑性樹脂中での炭酸カルシウム粒子の分散性や反応性が高められている。無機充填剤中の炭酸カルシウム粒子の含有量が上記範囲内にあると、熱可塑性樹脂中への無機充填剤の分散性が良好であり樹脂組成物からの溶出が生じにくいため好ましい。
内層における炭酸カルシウム粒子の含有割合は、40.0質量%以上80.0質量%以下である。ここで、「内層における炭酸カルシウム粒子の含有割合」とは、「内層100質量%中の炭酸カルシウム粒子の含有割合(質量%)」を意味する。内層における炭酸カルシウム粒子の含有割合が上記範囲内にあると、環境保護の観点から好ましい。
[表面処理]
炭酸カルシウム粒子は、スルホン酸及びその塩の少なくとも1種、又はリン酸エステル、を含む表面処理剤で表面処理される。すなわち、内層に用いられる無機充填剤のうち少なくとも炭酸カルシウム粒子は、上記表面処理剤で表面処理される。炭酸カルシウム粒子が、上記表面処理剤で表面処理されると熱可塑性樹脂中での炭酸カルシウム粒子の分散性や反応性が高まることで、内層を構成する樹脂組成物の物性や成形加工性を改善することができる。
なお、従来の脂肪酸等の汎用表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウム粒子では、熱可塑性樹脂中に高充填されると、機械的特性、酸性条件下での溶出等の物性、等が低下しやすい。これに対し、本発明の表面処理剤で表面処理された炭酸カルシウム粒子は、熱可塑性樹脂中に高充填されても、機械的特性や酸性条件下での溶出等の物性がバランスよく優れた樹脂組成物が得られる。このため、本発明の表面処理された炭酸カルシウム粒子を含む内層は、食品包装容器及び食器用に好適である。
なお、本発明では、炭酸カルシウム粒子以外の無機充填剤が上記表面処理剤で表面処理されていてもよい。この場合、炭酸カルシウム粒子以外の無機充填剤の分散性や反応性が高まることで、内層を構成する樹脂組成物の物性や成形加工性を改善する可能性がある。
(スルホン酸及びその塩を含む表面処理剤)
本発明において「スルホン酸及びその塩の少なくとも1種を含む表面処理剤」とは、「スルホン酸基を有する有機物及びその塩の少なくとも1種を含む表面処理剤」を全て含む概念である。以下、「スルホン酸及びその塩の少なくとも1種を含む表面処理剤」を「スルホン酸系表面処理剤」ともいう。
スルホン酸系表面処理剤としては、特に限定されないが、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパン-1-スルホン酸、プロパン-2-スルホン酸、n-ブタン-1-スルホン酸、n-ブタン-2-スルホン酸、t-ブタン-2-スルホン酸、2-メチル-プロパン-1-スルホン酸、n-オクタン-1-スルホン酸、n-オクタン-2-スルホン酸、n-ドデカン-1-スルホン酸、ペンタデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、オクタデカンスルホン酸、ジアルキルスルホサクシネート、パーフロロブタンスルホン酸、パーフロロオクタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、m-トルエンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、各種キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、その他アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸等のアリールスルホン酸;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ラウレス硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸等、及びこれらの1種以上、並びにこれらの塩、を含む表面処理剤が用いられる。ここで、塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びこれらの1種以上が用いられる。
スルホン酸系表面処理剤のうち、アルキルスルホン酸、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及びキシレンスルホン酸からなる群より選択される1種以上のスルホン酸、並びにこれらの塩が好ましい。これらの表面処理剤で炭酸カルシウム粒子を表面処理すると、樹脂組成物の酸性条件下での溶出量をより低減することができる。
スルホン酸系表面処理剤のうち、アルキルスルホン酸、及び炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、並びにこれらの塩がより好ましい。一般的に、アルキル鎖長が長い方が熱可塑性樹脂との相溶性に優れる傾向があるため、これらの表面処理剤で炭酸カルシウム粒子を表面処理すると、樹脂組成物の酸性条件下での溶出量をさらに低減することができる。
スルホン酸系表面処理剤のうち、炭素数6~30、及び/又は炭素数3~30のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、並びにこれらの塩がさらに好ましい。また、スルホン酸系表面処理剤のうち、8~20のアルキルスルホン酸、及び/又は炭素数6~20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。これらの表面処理剤で炭酸カルシウム粒子を表面処理すると、樹脂組成物の酸性条件下での溶出量を顕著に低減することができる。
スルホン酸系表面処理剤のうち、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸(ラウリルベンゼンスルホン酸)、テトラデシルベンゼンスルホン酸(ミリスチルベンゼンスルホン酸)、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸(パルミチルベンゼンスルホン酸)、オクタデシルベンゼンスルホン酸(ステアリルベンゼンスルホン酸)等の炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、及びそれらの塩が、さらに特に好ましい。これらの表面処理剤で炭酸カルシウム粒子を表面処理すると、樹脂組成物の酸性条件下での溶出量をより顕著に低減することができる。
なお、上記表面処理剤において、ベンゼン環上のアルキル基の数に特に制限はなく、上記モノアルキル置換のベンゼンスルホン酸であってもよく、ジ又はトリアルキル置換のベンゼンスルホン酸であってもよい。また、アルキル基は直鎖状であっても分岐していてもよく、一部が環状構造となっていてもよい。
(スルホン酸系表面処理剤での表面処理法)
上記スルホン酸系表面処理剤による炭酸カルシウム粒子の表面処理方法に特に制限はなく、種々の公知の表面処理法を用いることができる。例えば、炭酸カルシウム粒子のスラリーにスルホン酸及びその塩を加えて攪拌する方法(湿式法)、粉砕機やミキサー中に炭酸カルシウム粒子とスルホン酸及びその塩とを入れ、所望により加熱しながら攪拌する方法(乾式法)、炭酸カルシウムの含水ケーキとスルホン酸とを、ミキサー中で加熱しながら攪拌する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。表面処理剤として用いるスルホン酸及びその塩の種類にもよるが、一般に軽質炭酸カルシウムの表面処理は湿式法で、重質炭酸カルシウム粒子の表面処理は乾式法で行うことが好ましい。
表面処理の際の、炭酸カルシウム粒子に対する、スルホン酸及びその塩の量比は、特に制限されないが、炭酸カルシウム粒子100質量部に対し、スルホン酸及びその塩の量を、好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部程度とする。上記スルホン酸及びその塩の量であれば、炭酸カルシウム粒子表面の均一な改質が容易となり、また、余剰のスルホン酸及びその塩が使用時に溶出するリスクを低減することができる。なお、炭酸カルシウム粒子表面のスルホン酸量は、溶剤抽出や熱分解GC/MS等の公知の分析方法によって定量することができる。
湿式法により表面処理する場合、スラリー中の炭酸カルシウム濃度や溶媒の種類は特に制限されないが、好ましくは、炭酸カルシウム濃度10~300g/L、より好ましくは25~200g/L程度の水性スラリーとする。上記濃度であれば、表面処理の生産性が高められても、粘度が高くなって作業性が低下することがない。
また、湿式法において水性溶媒を用いると、表面処理を簡便かつ低コストで行うことができ、また、処理温度を高めても安全性を保持することができる。湿式法におけるスラリー温度は、好ましくは20~98℃、より好ましくは40~90℃、さらに好ましくは60~80℃とする。表面処理を20℃以上で行うことにより、表面処理剤を炭酸カルシウム粒子上に均一に吸着結合させることが可能となり、均一に表面処理することが可能となる。なお、スラリー温度を98℃以下とする場合は、突沸等のリスクがないため、耐圧性の装置を不要にすることができる。また、上記湿式法での表面処理では、スラリー中に界面活性剤を含有させてもよい。
乾式法による表面処理は、例えばヘンシェルミキサーやニーダー、押出混練機等の混練機中で、炭酸カルシウム粒子とスルホン酸及びその塩とを混練することによって行う。炭酸カルシウム粒子として重質炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、粉砕機中に所望のスルホン酸及びその塩を添加し、炭酸カルシウム粒子の粒径調整と同時に表面処理を行ってもよい。
乾式法による表面処理時の温度は、用いるスルホン酸及びその塩の種類に応じて任意に設定することができるが、例えば20~150℃、好ましくは40~130℃、より好ましくは60~120℃程度とする。表面処理を20℃以上で行うことにより、表面処理剤を炭酸カルシウム粒子上に均一に吸着結合させることが可能となり、均一に表面処理することができる。なお、処理温度を150℃程度以下とする場合は、表面処理剤の熱劣化や変質のリスクを低減することができる。また、乾式法による表面処理時の温度は、さらに好ましくは、用いるスルホン酸及びその塩の融点以上の温度とする。これにより、表面処理剤は、炭酸カルシウム粒子上により均一に吸着結合しやすくなる。例えば、ラウリルベンゼンスルホン酸等の室温で液状の物質を用いる表面処理は、室温で行うことができる。p-トルエンスルホン酸を用いる表面処理は、110~150℃程度の温度で混練することが可能である。なお、乾式法の表面処理において、湿式法の表面処理と同様に、少量の溶媒を併用してもよい、例えばスルホン酸及びその塩の水溶液を炭酸カルシウム粒子に加えて、混練又は粉砕してもよい。
炭酸カルシウム粒子の含水ケーキを用いる表面処理は、乾式法と同様の条件を用いることがすることができるが、好ましくは処理時の温度を20~150℃、より好ましくは40~98℃程度とする。これにより、含水ケーキを用いる表面処理において、表面処理剤の不均一吸着や突沸のリスクを低減することが可能となる。
(リン酸エステルを含む表面処理剤)
本発明において「リン酸エステルを含む表面処理剤」とは、リン酸ベースのエステルを含む表面処理剤を全て含む概念である。以下、「リン酸エステルを含む表面処理剤」を「リン酸エステル系表面処理剤」ともいう。
リン酸エステル系表面処理剤としては、リン酸ベースのエステルを含む限り特に限定されないが、例えば、リン酸とアルコールとのモノエステル、ジエステル、トリエステル;リン酸とフェノールとのモノエステル、ジエステル、トリエステル;リン酸とアルキルフェノールとのモノエステル、ジエステル、トリエステル;リン酸とアルコールとアルキレンオキシドとのモノエステル、ジエステル、トリエステル;リン原子にアルキルオキシ基とアルキルオキシアルキレンオキシ基とヒドロキシ基とが結合した構造等のリン酸エステル;カルボキシ基やカルボニル基を有する構造のリン酸エステル、及びこれらの1種以上、並びにこれらの塩、を含む表面処理剤が用いられる。ここで、塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びこれらの1種以上が用いられる。リン酸エステル系表面処理剤は、上記リン酸エステルに加え、必要により、脂肪酸や樹脂酸、無水脂肪酸変性樹脂等を含む表面処理剤であってもよい。
リン酸エステル系表面処理剤に含まれるリン酸エステルは、モノエステル、ジエステル、もしくはそれらの塩、又はそれらの2種以上の混合物であることが好ましい。一般にモノエステルやジエステルを含む表面処理剤であれば、炭酸カルシウム粒子表面の改質効果が大きくなる。本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、モノエステルやジエステルは、分子中の>P(=O)-O-基を介して、炭酸カルシウム粒子表面に強固に反応又は吸着するものと考えられる。また、一般的に、脂肪族炭化水素鎖長が長い方が熱可塑性樹脂との相溶性に優れる傾向があり、本発明の効果が特に顕著なものとなる。このため、分子中に長鎖脂肪族炭化水素基を有するリン酸エステル、例えばリン酸と長鎖アルコールとのモノエステル、ジエステル、トリエステル;リン酸と長鎖アルキルフェノールとのモノエステル、ジエステル、トリエステル;リン酸と長鎖アルコールとアルキレンオキシドとのモノエステル、ジエステル、トリエステル;及びそれらの塩から選択される1種以上のリン酸エステルを含む表面処理剤が好ましい。リン酸エステル系表面処理剤に含まれるリン酸エステルは、より好ましくは、リン酸と長鎖アルコールとのモノエステル及びジエステル、リン酸と長鎖アルコールとアルキレンオキシドとのモノエステル及びジエステル、並びにそれらの塩から選択される1種以上のリン酸エステルである。
上記リン酸エステル中の脂肪族炭化水素基は特に制限されない。上記リン酸エステル中の脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和の直鎖状、分岐状、又は環状の脂肪族炭化水素基全てを含む。上記リン酸エステル中の脂肪族炭化水素基は、ヒドロキシ基やアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等で置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、例えば、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基(ラウリル基)、ペンタデシル基(ミリスチル基)、テトラデシル基(ミリスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、ヘキサデセニル基(パルミトレイル基)、オクタデセニル基(オレイル基)、オクタデカジエニル基(リノレイル基、エライドリノレニル基)、オクタデカトリエニル基(リノレニル基)、ヒドロキシオクタデセニル基(リノレイル基)等が用いられる。また、上記リン酸エステル中の脂肪族炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、例えば、炭素数が、好ましくは3~20、より好ましくは8~18、さらに好ましくは10~14の脂肪族炭化水素基とすることができる。
本発明において、リン酸エステルは特に、リン酸とアルコールとアルキレンオキシドとのモノエステル、ジエステル、及び/又はそれらの塩であることが好ましい。このようなリン酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、式1:[C2x+1O(C2yO)]nP(=O)(OH) のような化合物やその塩(式1中、x、y、及びzは1以上の整数であり;n及びmは1又は2で、n+m=3である。)とすることができる。リン酸エステルの炭化水素基(C2x+1相当部)が、例えば不飽和結合や環状構造を備えて水素原子数が2x-1以下であってもよく、また、分岐構造や、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。上記リン酸エステルによれば、炭酸カルシウム粒子表面を特に有効に改質することができ、酸性条件下での溶出量が少なく、機械的強度等の物性が良好な樹脂組成物を得ることが可能となる。本発明は特定の理論により限定されるものではないが、分子中にアルキレンオキシド単位を有することによって、炭酸カルシウム粒子表面上のリン酸エステルから脂肪族炭化水素基がより広範囲に広がり、その結果、表面処理炭酸カルシウム粒子と熱可塑性樹脂との相溶性が良好となっていると考えられる。
リン酸エステルの脂肪族炭化水素基の炭素数(例えば上記式1中のx)に特に制限はないが、好ましくは炭素数3~20のリン酸エステルやその塩、より好ましくは炭素数8~18のリン酸エステルやその塩、さらに好ましくは炭素数10~14のリン酸エステルやその塩、特に好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸やその塩が用いられる。
アルキレンオキシドの種類にも特に制限はないが、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドが、好ましくはエチレンオキシド(上記式1においてy=2)が用いられる。アルキレンオキシド単位の数(式1におけるz)にも特に制限はないが、例えば上記各脂肪族炭化水素基とリン原子との間に、アルキレンオキシド単位を1~12個、好ましくは1~4個有するようにする。
リン酸エステル系表面処理剤として、より好ましくは、ポリオキシエチレン(1~4)ラウリルエーテルリン酸及び/又はその塩が用いられ、さらに好ましくは、モノポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテルリン酸、及びそれらの塩から選択される1種以上のリン酸エステルが用いられる。
(リン酸エステル表面処理剤での表面処理法)
上記リン酸エステルによる炭酸カルシウム粒子の表面処理方法に特に制限はなく、種々の公知の表面処理法を用いることができる。例えば、炭酸カルシウム粒子のスラリーにリン酸エステルを加えて攪拌する方法(湿式法)、粉砕機やミキサー中に炭酸カルシウム粒子とリン酸エステルとを入れ、所望により加熱しながら攪拌する方法(乾式法)、さらには炭酸カルシウム粒子の含水ケーキとリン酸エステルとを、ミキサー中で加熱しながら攪拌する方法等が挙げられるが、これらに限定されない。表面処理剤として用いるリン酸エステルの種類にもよるが、一般に軽質炭酸カルシウム粒子の表面処理は湿式法で、重質炭酸カルシウム粒子の表面処理は乾式法で行うことが好ましい。
表面処理の際の、炭酸カルシウム粒子に対するリン酸エステルの量比は、特に制限されないが、好ましくは炭酸カルシウム粒子100質量部に対し、リン酸エステルの量を、好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部程度とする。上記リン酸エステル量であれば、炭酸カルシウム粒子表面の均一な改質が容易となり、また、余剰のリン酸エステルが使用時に溶出するリスクを低減することができる。なお、炭酸カルシウム粒子表面のリン酸エステル量は、溶剤抽出や熱分解GC/MS等の公知の分析方法によって定量することができる。
湿式法により表面処理する場合、スラリー中の炭酸カルシウム粒子濃度や溶媒の種類に特に制限はない。好ましくは、炭酸カルシウム粒子濃度10~300g/L、特に25~200g/L程度の水性スラリーとする。上記濃度であれば、表面処理の生産性が高められても、粘度が高くなって作業性が低下することがない。
また、湿式法において水性溶媒を用いると、表面処理を簡便かつ低コストで行うことができ、また、処理温度を高めても安全性を保持することができる。湿式法におけるスラリー温度は、好ましくは20~98℃、より好ましくは40~90℃、さらに好ましくは60~80℃とする。表面処理を20℃以上で行うことにより、表面処理剤を炭酸カルシウム粒子上に均一に吸着結合させることが可能となり、均一に表面処理することが可能となる。なお、スラリー温度を98℃以下とする場合は、突沸等のリスクがないため、耐圧性の装置を不要にすることができる。また、上記湿式法での表面処理では、スラリー中に界面活性剤を含有させてもよい。
乾式法による表面処理は、例えばヘンシェルミキサーやニーダー、押出混練機等の混練機中で、炭酸カルシウム粒子とリン酸エステルとを混練することによって行うことができる。炭酸カルシウム粒子として重質炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、粉砕機中に所望のリン酸エステルを添加し、炭酸カルシウム粒子の粒径調整と同時に表面処理を行ってもよい。
乾式法による表面処理時の温度は、用いるリン酸エステルの種類に応じて任意に設定することができるが、例えば20~150℃、好ましくは40~130℃、より好ましくは60~120℃程度とする。表面処理を20℃以上で行うことにより、表面処理剤を炭酸カルシウム粒子上に均一に吸着結合させることが可能となり、均一に表面処理することができる。なお、処理温度を150℃程度以下とする場合は、表面処理剤の熱劣化や変質のリスクを低減することができる。また、乾式法による表面処理時の温度は、さらに好ましくは、用いるリン酸エステルの融点以上の温度とする。これにより、表面処理剤は炭酸カルシウム粒子上により均一に吸着結合しやすくなる。例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸等の室温で液状の物質を用いる表面処理は、室温で行うことができる。ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸等を用いる表面処理は、50~150℃程度の温度で混練することが可能である。なお、乾式法の表面処理において、湿式法の表面処理と同様に、少量の溶媒を併用してもよい、例えばリン酸エステル、特に塩型のリン酸エステルの水溶液を炭酸カルシウム粒子に加えて、混練又は粉砕してもよい。
炭酸カルシウム粒子の含水ケーキを用いる表面処理は、乾式法と同様の条件を用いることができるが、好ましくは処理時の温度を20~150℃、より好ましくは40~98℃程度とする。これにより、含水ケーキを用いる表面処理において、表面処理剤の不均一吸着や突沸のリスクを低減することが可能となる。
<熱可塑性樹脂>
内層で用いられる熱可塑性樹脂としては、樹脂シートに通常配合され得る任意の樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が用いられる。これらのうち、成形性等の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
本発明において「ポリオレフィン系樹脂」とは、オレフィン成分単位を主成分とするポリオレフィン系樹脂を意味する。「オレフィン成分単位を主成分とする」とは、オレフィン成分単位がポリオレフィン系樹脂中に50質量%以上(好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上)含まれることを意味する。なお、本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂の製造方法は特に限定されず、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒、ラジカル開始剤(酸素、過酸化物等)等を用いる方法等のいずれでもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が用いられる。
熱可塑性樹脂は、良好な外観を実現しやすく、さらに機械的特性の不均一性をより抑制しやすいという観点から、好ましくはポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を含む樹脂が用いられ、より好ましくはポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂である樹脂が用いられる。
[ポリプロピレン系樹脂]
本発明におけるポリプロピレン系樹脂は、プロピレン成分単位が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上の樹脂を含む。
ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)、プロピレンと他のα-オレフィン(プロピレンと共重合可能なもの)との共重合体等が用いられる。
「他のα-オレフィン」としては、例えば、炭素数4~10のα-オレフィン(エチレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン等)が用いられる。
プロピレン単独重合体としては、種々の立体規則性(アイソタクティック、シンジオタクティック、アタクチック、ヘミアイソタクチック等)を示す、直鎖状又は分枝状のポリプロピレン等が用いられる。
プロピレンの共重合体は、ポリプロピレンランダムコポリマー(ランダム共重合体)、ポリプロピレンブロックコポリマー(ブロック共重合体)、二元共重合体、三元共重合体等のいずれであってもよい。具体的には、エチレン-プロピレンランダム共重合体、ブテン-1-プロピレンランダム共重合体、エチレン-ブテン-1-プロピレンランダム3元共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体等が用いられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、好ましくはポリプロピレンホモポリマー及び/又はポリプロピレンブロックポリマーを含む樹脂、より好ましくはポリプロピレンホモポリマー及び/又はポリプロピレンブロックポリマーである樹脂が用いられる。
[ポリエチレン系樹脂]
本発明におけるポリエチレン系樹脂は、エチレン成分単位が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上の樹脂を含む。
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン1共重合体、エチレン-ブテン1共重合体、エチレン-ヘキセン1共重合体、エチレン-4メチルペンテン1共重合体、エチレン-オクテン1共重合体等が用いられる。
ポリエチレン系樹脂としては、好ましくは高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂、より好ましくは高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンのみからなる樹脂が用いられる。
高密度ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンにおけるJIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、好ましくは5g/10分以上15g/10分以下であるもの、より好ましくは7g/10分以上13g/10分以下であるものが用いられる。
直鎖状低密度ポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレンにおけるJIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、好ましくは0.5g/10分以上1.5g/10分以下であるもの、より好ましくは0.7g/10分以上1.3g/10分以下であるものが用いられる。
高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含む樹脂において、両者の質量比(高密度ポリエチレン:直鎖状低密度ポリエチレン)は、好ましくは90:10~50:50、より好ましくは92:8~50:50、さらに好ましくは94:6~50:50である。
本発明の好ましい態様においては、ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
高密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であり、
直鎖状低密度ポリエチレンにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であり、
高密度ポリエチレンと、直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比が、90:10~50:50である。
<内層に配合される炭酸カルシウム粒子の割合>
内層に含まれる炭酸カルシウム粒子の含有量(炭酸カルシウム粒子の総量)の下限は、内層に対して40.0質量%以上であるが、積層シートに充分な機械的特性を付与する観点から、内層に対して、好ましくは42.0質量%以上、より好ましくは44.0質量%以上である。
内層に含まれる炭酸カルシウム粒子の含有量(炭酸カルシウム粒子の総量)の上限は、内層に対して80.0質量%以下であるが、内層に充分量の熱可塑性樹脂を配合しつつ、炭酸カルシウム粒子の偏在を抑制しやすいという観点から、内層に対して、80.0質量%以下、好ましくは75.0質量%以下、より好ましくは70.0質量%以下である。
内層における、第1の炭酸カルシウム粒子群と、第2の炭酸カルシウム粒子群との質量比(第1の炭酸カルシウム粒子群:第2の炭酸カルシウム粒子群)は、99.95:0.05~99.99:0.01である。
内層中の炭酸カルシウム粒子の偏在を抑制しつつ、機械的特性の均一性を高めやすいという観点から、該質量比(第1の炭酸カルシウム粒子群:第2の炭酸カルシウム粒子群)は、好ましくは99.96:0.04~99.99:0.01、より好ましくは99.97:0.03~99.99:0.01である。
<内層に配合される熱可塑性樹脂の割合>
内層に配合される熱可塑性樹脂の割合は、充分量の無機充填剤を配合できる範囲であれば特に限定されない。
熱可塑性樹脂の含有量の下限は、内層に対して、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは22.0質量%以上、さらに好ましくは24.0質量%以上である。
熱可塑性樹脂の含有量の上限は、内層に対して、好ましくは60.0質量%以下、より好ましくは58.0質量%以下、さらに好ましくは56.0質量%以下である。
<内層に配合されるその他の成分>
内層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、無機充填剤及び熱可塑性樹脂以外の、その他の成分を配合してもよい。
その他の成分としては、樹脂シートに通常配合され得る任意の成分を用いることができる。
その他の成分としては、例えば、潤滑剤、分散剤、静電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が用いられる。
これらの成分の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定することができる。
(2)外層
外層は、内層の表裏2つの表面に積層される一対の層である。すなわち、本発明の積層シートにおいて、外層は、内層を挟むように2層形成される。本発明において、上記一対の層を、第1の外層及び第2の外層ともいう。
第1の外層及び第2の外層の構成は同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、第1の外層及び第2の外層は、それぞれ、熱可塑性樹脂を含む。
本発明の好ましい態様は、第1の外層及び第2の外層の構成(組成、厚さ、形状等)が全て同一である態様を含む。
<熱可塑性樹脂>
外層で用いられる熱可塑性樹脂としては、樹脂シートに通常配合され得る任意の樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
外層に用いられる熱可塑性樹脂は、上記内層に用いられる熱可塑性樹脂と同様の樹脂を用いることができる。なお、本発明の積層シートにおいて、外層に用いられる熱可塑性樹脂と、内層に用いられる熱可塑性樹脂とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明の好ましい態様は、以下の態様を全て含む。
(態様1)外層に配合される熱可塑性樹脂と、内層に配合される熱可塑性樹脂とが全て同一である態様
(態様2)第1の外層に配合される熱可塑性樹脂と、第2の外層に配合される熱可塑性樹脂と、内層に配合される熱可塑性樹脂とが全て異なる態様
(態様3)第1の外層に配合される熱可塑性樹脂、第2の外層に配合される熱可塑性樹脂、及び内層に配合される熱可塑性樹脂のうち2種のみが同一である態様
上記態様のうち、本発明の効果が奏されやすいという観点から、態様3が好ましい。
上記(態様3)において、本発明の効果が奏されやすいという観点から、第1の外層に配合される熱可塑性樹脂、及び第2の外層に配合される熱可塑性樹脂が同一である態様、すなわち、内層に配合される熱可塑性樹脂のみが異なる態様が好ましい。
第1の外層、及び第2の外層における熱可塑性樹脂は、それぞれ、好ましくはポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を含む樹脂が用いられ、より好ましくはポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂である樹脂が用いられる。
<外層に配合される熱可塑性樹脂の割合>
外層に配合される熱可塑性樹脂の割合は、樹脂シートを成形できる範囲であれば、特に限定されない。
熱可塑性樹脂の含有量の下限は、外層に対して、好ましくは80.0質量%以上、より好ましくは90.0質量%以上、さらに好ましくは99.0質量%以上である。
熱可塑性樹脂の含有量は、外層に対して、好ましくは100.0質量%である。
<外層に配合されるその他の成分>
外層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、熱可塑性樹脂以外のその他の成分を配合してもよい。
その他の成分としては、樹脂シートに通常配合され得る任意の成分を用いることができる。
このような成分として、無機充填剤(炭酸カルシウム、クレイ、カオリン、マイカ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、シリカ、タルク、二酸化チタン、二酸化ケイ素、ベントナイト等)、潤滑剤、分散剤、静電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が用いられる。
これらの成分の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定することができる。
本発明の好ましい態様は、外層が、熱可塑性樹脂のみからなる積層シートを含む。
(3)積層シートの各層の厚さ等
本発明の積層シートにおいて、一対の外層を構成する各外層の厚さの比率、すなわち第1の外層及び第2の外層の厚さの比率は、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下である。このため、本発明の積層シートにおいて、外層の総厚さ、すなわち第1の外層及び第2の外層の厚さの合計値は、積層シートの全体厚さに対して、4.0%以上40.0%以下となっている。
本発明の積層シートは、内層の厚さに比較して外層の厚さを薄くすることで、良好な外観を示しながらも、内層によって奏される優れた機械的特性を発現することができるようになっている。
第1の外層及び第2の外層の厚さの比率の下限は、外観が良好となりやすいという観点から、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上、好ましくは2.5%以上、より好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは4.0%以上である。
第1の外層及び第2の外層の厚さの比率の上限は、内層による効果が奏しやすくなるという観点から、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、20.0%以下、好ましくは18.0%以下、より好ましくは16.0%以下、さらに好ましくは10.0%以下、特に好ましくは6.0%以下である。
本発明の積層シートにおいて、内層の厚さの比率は、外層の厚さに応じて調整され、積層シートの全体厚さに対して、60.0%以上96.0%以下である。
第1の外層及び第2の外層の厚さの下限は、良好な外観が得られやすい等の観点から、それぞれ、好ましくは5.0μm以上、より好ましくは10.0μm以上である。
第1の外層及び第2の外層の厚さの上限は、成形加工性等の観点から、それぞれ、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは45.0μm以下である。
内層の厚さの下限は、良好な機械的特性が得られやすい等の観点から、好ましくは50.0μm以上、より好ましくは100.0μm以上である。
内層の厚さの上限は、成形加工性等の観点から、好ましくは950.0μm以下、より好ましくは900.0μm以下である。
積層シートの全体厚さの下限は、外層や内層の厚さに応じて調整され、好ましくは100.0μm以上、より好ましくは150.0μm以上である。
積層シートの全体厚さの上限は、外層や内層の厚さに応じて調整され、好ましくは990.0μm以下、より好ましくは700.0μm以下である。
積層シートの密度は、特に限定されない。
(4)内層の端面における無機充填剤の露出面積の平面占有率
本発明の積層シートは、通常、端面を有する。積層シートの端面は、通常、外層及び内層のそれぞれの端面が積層したものになっている。積層シートの端面は、例えば、積層シートの製造時に形成された製造時端面、製造された面積の大きな積層シートを裁断した際に形成される裁断面等である。積層シートは、製造された面積の大きな積層シートを所望の大きさに裁断して使用されることが多い。このため、使用される積層シートの多くは、裁断面が端面になっている。
積層シートのうち内層は、無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含み、通常、熱可塑性樹脂中に無機充填剤が分散している。
また、積層シートの内層中には、製造時の延伸等により、空隙が生じることがある空隙は、延伸等の際に無機充填剤と熱可塑性樹脂との界面で剥離して生じると推測される。このため、積層シートの端面が裁断面である場合、内層の端面には、通常、熱可塑性樹脂、無機充填剤及び空隙が露出する。
本発明の積層シートは、内層の少なくとも一裁断面における無機充填剤の実測平面占有率MPOが、内層の無機充填剤の含有割合に基づき算出した前記裁断面における無機充填剤の理論上平面占有率TPOより2%以上低くなっている。
ここで、実測平面占有率MPO、理論上平面占有率TPO、及びこれらの差異を規定する意味について説明する。
内層の実際の裁断面MCUにおいては、せん断力により可塑性樹脂が塑性変形することがある。このため、内層の実際の裁断面MCUにおいては、炭酸カルシウム粒子等の無機充填剤の表面の少なくとも一部が、塑性変形した可塑性樹脂で被覆されることがある。
<実測平面占有率MPO>
実測平面占有率MPOとは、内層の実際の裁断面MCUにおいて実測した無機充填剤の平面占有率である。内層の実際の裁断面MCUは、可塑性樹脂が塑性変形せず無機充填剤の表面が可塑性樹脂で被覆されない態様、及び可塑性樹脂が塑性変形して無機充填剤の表面が可塑性樹脂で被覆される態様、の2態様を含む。
例えば、内層の実際の裁断面MCUにおいて、総面積をSMT、可塑性樹脂の露出面積のうち無機充填剤の表面を被覆しない可塑性樹脂の露出面積をSMRN、可塑性樹脂の露出面積のうち無機充填剤の表面を被覆する可塑性樹脂の露出面積をSMRC、無機充填剤の露出面積をSMF、空隙が占める面積をSMV、としたとき、SMT=SMRN+SMRC+SMF+SMVである。実測平面占有率MPOは、SMF/SMTで算出される。なお、可塑性樹脂が塑性変形せず無機充填剤の表面が可塑性樹脂で被覆されない態様では、SMRCが0となる。
実測平面占有率MPOは、例えば、電子顕微鏡により観察した画像から算出することができる。例えば、1区画当たりの面積が0.014mmとなるように断面中の同一平面上の任意の4区画を選び、それぞれの区画の面積に対して無機充填剤が占有する面積を計測し、その平均を算出した平均占有率とすることができる。なお、任意の1以上の区画は、互いにその位置が重複しないようにする。また、任意の1以上の区画は、裁断シートの一端面に位置すれば特に限定されないが、それぞれの区画が少なくとも1つの他の区画と隣接していることが好ましい。ここで、「隣接する」とは、それぞれの区画の最接近点同士の距離が、少なくとも0.1mm以内であること指すが、好ましくは少なくとも0.09mm以内であり、より好ましくは0.07mm以内であり、さらに好ましくは、0.04mm以内であり、より一層好ましくは0.01mm以内である。また、任意の1以上の区画は、どのような形であってもよく、四角形(正方形、長方形等)、円形等であってよい。
<理論上平面占有率TPO>
一方、理論上平面占有率TPOとは、可塑性樹脂が塑性変形せず無機充填剤の表面が可塑性樹脂で被覆されないと仮定した内層の理想的な裁断面ICUにおける無機充填剤の平面占有率である。
なお、理論上平面占有率TPOは、例えば、内層の密度(比重)と、内層全体に対する無機充填剤の含有割合(CR)と、無機充填剤の密度(比重)とから算出される。
理論上平面占有率TPOの具体的算出方法の一例は以下のとおりである。はじめに、「内層の密度(比重)」/「無機充填剤の密度(比重)」により密度比RDを算出する。次に、「密度比RD」と「内層全体に対する無機充填剤の質量比率MR」とを用いて「無機充填剤の空間占有率SO」を算出する。さらに、高さ方向に一様な空間占有率SOの値を有する仮想内層柱状体VICを作成する。次に、この仮想内層柱状体VICの底面VBにおける無機充填剤の平面占有率TPOVB[%]を、裁断面における前記無機充填剤の理論上平面占有率TPO[%]と規定する。
本発明の積層シートにおいて実測平面占有率MPOが理論上平面占有率TPOより2%以上低いことは、炭酸カルシウム粒子等の無機充填剤の表面の一部が裁断時に塑性変形した熱可塑性樹脂で被覆されているためと考えられる。なお、このような被覆は、内層シートの裁断面の鋭利な突起物を少なくし、内層シートや積層シートを取り扱う使用者の指等に切り傷を生じさせにくくするため好ましい。また、上記被覆は、裁断面における無機充填剤と熱可塑性樹脂との界面の空隙を被覆し、積層シートに優れた耐水性を付与すると推測される。
内層中の空隙について説明する。内層は、通常、無機充填剤と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物を溶融混練し、シート状に成形されることにより得られる。得られた内層シートでは、シート状に延伸する際に無機充填剤と熱可塑性樹脂との界面で剥離が生じると考えられる。樹脂組成物を延伸すると前記界面で生じた剥離が伝播し拡大することで、樹脂組成物内に空隙が形成されると考えられる。なお、積層シートの内層の裁断面に現れる空隙が独立空隙である場合には吸水が進行しにくく、連続空隙である場合には吸水が進行しやすく耐水性が損なわれやすいと考えられる。本発明において、実測平面占有率MPOが理論上平面占有率TPOよりも2%以上低いことは、シート端面からの吸水を抑制し、シートの吸水率を低くすることに寄与していると考えられる。
実測平面占有率MPOは理論上平面占有率TPOより2%以上低ければ特に限定されないが、3%以上低いことが好ましく、4%以上低いことがより好ましく、5%以上低いことがさらに好ましい。なお、上限については、実測平面占有率MPOは理論上平面占有率TPOより20%以下(15%以下、10%以下等)であってもよい。
積層シートにおける内層の裁断面の数は、特に限定されず、3以上(4、5、6等)とすることができる。また、積層シートの内層の裁断面のうち、実測平面占有率MPOの理論上平面占有率TPOよりも2%以上低い裁断面は、全裁断面数のうち、好ましくは10%以上の数の裁断面にあり、より好ましくは25%以上の数の裁断面にあり、さらに好ましくは50%以上の数の裁断面にあり、特に好ましくは75%以上の数の裁断面にあり、最も好ましくは100%の数の裁断面にある。
(5)積層シートの製造方法
本発明の積層シートの製造方法は特に限定されず、従来知られる多層シートや積層体の製造方法を用いることができる。
積層シートの製造方法として、例えば、以下の方法が用いられる。
・シート状に成形した内層及び外層をカレンダーロールで積層する方法
・内層及び外層を共押出する方法
・多層Tダイ方式の二軸押出成形機を用いて、内層用原材料の溶融混練と内外層の共押出成形とを同一工程で行う方法
・複数の環状ダイスを用いた、押出インフレーション方式による方法
積層シートは、必要に応じて延伸を行ってもよい。
(6)積層シートの用途
本発明の積層シートは、通常の樹脂シートにおける任意の用途に用いることができる。
本発明の積層シートの成形方法としては、特に限定されず、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形等が用いられる。
これらのうち、成形容易性という観点から、真空成形が好ましい。したがって、本発明の積層シートは、真空成形用積層シートである態様を含む。
本発明の積層シートの好適な用途として、包装容器の材料が用いられる。
したがって、本発明は、本発明の積層シートから成形された包装容器、特に、食品包装容器を含む。
食品包装容器としては任意の容器が包含され、トレイ、カップ、各種容器のフタ、袋等が用いられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<積層シートの作製及び評価>
以下の方法で積層シートを作製し、その評価を行った。
(1)材料の準備
各層の材料を以下のとおり準備した。
<無機充填剤>
・重質炭酸カルシウム粒子-1:重質炭酸カルシウム粒子(備北粉化工業株式会社製ソフトン(商品名)1000、平均粒径:2.2μm、比表面積10000cm/g、表面処理なし)
重質炭酸カルシウム粒子-1の平均粒径は、JIS M-8511に準じた空気透過法に基づき特定された値である。
<表面処理剤>
[スルホン酸系表面処理剤]
・スルホン酸系表面処理剤-1:キシレンスルホン酸(テイカ株式会社製テイカトックス(登録商標)110、有効成分96.7%)
・スルホン酸系表面処理剤-2:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(テイカ株式会社製テイカパワー(登録商標)L121、有効成分96.7%)
・スルホン酸系表面処理剤-3:p-トルエンスルホン酸ナトリウム
・スルホン酸系表面処理剤-4:1-ドデカンスルホン酸ナトリウム
・スルホン酸系表面処理剤-5:クメンスルホン酸ナトリウム(テイカ株式会社製テイカトックス(登録商標)N5040、有効成分約40%)
[リン酸エステル系表面処理剤]
・リン酸エステル系表面処理剤-1:ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製フォスファノール(登録商標)ML-220:C1225O(CO)-P(=O)(OH)と[C1225O(CO)P(=O)OHとの混合物、第1酸価140~160)
・リン酸エステル系表面処理剤-2:ポリオキシエチレンラウリルフェノールリン酸(芳香族EOリン酸エステル、東邦化学工業株式会社製フォスファノール(登録商標)LF-200:C1225O(CO)-P(=O)(OH)と[C1225OC(CO)P(=O)OHとの混合物、第1酸価95~115)
・リン酸エステル系表面処理剤-3:ラウリルリン酸(東邦化学工業株式会社製フォスファノール(登録商標)ML-200:C1225O-P(=O)(OH)と(C1225O)P(=O)OHとの混合物、第1酸価190~210)
・リン酸エステル系表面処理剤-4:長鎖不飽和脂肪族炭化水素鎖とエチレンオキシド単位とを有するリン酸エステルのナトリウム塩(不飽和EOリン酸エステル塩、東邦化学工業株式会社製フォスファノール(登録商標)RD-720、炭化水素鎖の炭素数18、エチレンオキシド単位数7)
[その他の表面処理剤]
・表面処理剤-C1:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸変性樹脂;三洋化成工業株式会社製ユーメックス(登録商標)1010)
・表面処理剤-C2:スチレン・マレイン酸エステル(マレイン酸変性樹脂;三洋化成工業株式会社製レジット(登録商標)SM-101)
<表面処理済無機充填剤>
・表面処理重質炭酸カルシウム粒子-C1:脂肪酸表面処理重質炭酸カルシウム粒子(平均粒子径2.2μm;備北粉化工業株式会社製ライトン(登録商標)S-4)
<熱可塑性樹脂>
・PP-1:ポリプロピレンホモポリマー(ポリプロピレン単独重合体、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)E111G、融点160℃)
・PP-2:ポリプロピレンブロックコポリマー(融点160℃)
・PE:HDPE及びLLDPEのブレンド(HDPE:LLDPE(質量比)=70:30)
なお、上記HDPEにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)は、7.5g/10分である。
上記LLDPEにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)は、0.8g/10分である。
<滑剤>
・ステアリン酸マグネシウム滑剤
(2)積層シートの作製
表に示す材料を用いて、多層Tダイ法により、3層の積層シートを作製した。
積層シートの全体厚さは、300.0μmに設定した。
内層の厚さは、270μm(積層シートの全体厚さに対して90%)に設定した。
内層の両面に外層(第1の外層及び第2の外層)を設け、それぞれの外層の厚さは、15μm(積層シートの全体厚さに対して5%)に設定した。
各実施例、比較例の内層用樹脂組成物の作製方法については、後述する。
(3)積層シートの評価
以下の方法で、積層シートについて、外観、及び機械的特性を評価した。その結果を表中の「評価」の項に示す。
<外観>
以下の方法で、積層シートから得られた成形品の外観を評価した。
[外観の評価方法]
積層シートを、遠赤外線ヒーターで予熱した後、真空成形機によって底径50mmφ、開口径50mmφ、高さ30mm、フランジ幅5mmのトレイ状の容器に成形した。
得られた容器の外観を目視観察し、以下の基準で評価した。
[外観の評価基準]
A:表面状態全体が非常に良好である(凹凸、変形、破れ等が全く発生しなかった)。
B:表面状態全体が良好である(凹凸、変形、又は破れ等が少々発生した)。
C:表面状態全体が不良である(凹凸、変形、又は破れ等が明確に発生した)。
<機械的特性>
以下の方法で、積層シートの機械的特性(引張強度)を評価した。
[機械的特性の評価方法]
各積層シートの引張強度を、JIS K 7161-2:2014に準じて、23℃、50%RHの条件下で、オートグラフAG-100kNXplus(株式会社島津製作所)を用いて測定した。
試験片は、各積層シートから切り出した試料(ダンベル形状)を用いた。延伸速度を50mm/分に設定した。
[機械的特性の評価基準]
A:引張強度が13MPa以上であった。
B:引張強度が10MPa以上13MPa未満であった。
C:引張強度が10MPa未満であった。
<成形加工性>
以下の方法で、積層シートの成形加工性を評価した。
[成形加工性の評価方法]
成形後の各容器を目視観察及び採寸し、各積層シートの成形加工のし易さを以下の基準で評価した。
[成形加工性の評価基準]
A:ほぼ目的値の寸法に成形され、形状の歪も観察されなかった。
B:寸法の一部が目的値と異なっていたが、目視では形状の歪は観察されなかった。
C:容器形状の歪が目視で観察された。
[実施例A1]
(内層用樹脂組成物の作製)
平均粒子径2.2μm(空気透過法による)、比表面積10,000cm/gの重質炭酸カルシウム粒子(備北粉化工業株式会社製のソフトン(商品名)1000;重質炭酸カルシウム粒子-1)100質量部を、キシレンスルホン酸(テイカ株式会社製テイカトックス(登録商標)110、有効成分96.7%;スルホン酸系表面処理剤-1)3質量部と共に、ヘンシェルミキサーにて、温度120℃、回転数1200rpmで30分間攪拌し、表面処理した。
上記で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子60質量部と、ポリプロピレン単独重合体(株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)E111G、融点160℃)40質量部とを、ステアリン酸マグネシウム滑剤0.5質量部と共に、株式会社パーカーコーポレーション製同方向回転二軸混練押出機HK-25D(φ25mm、L/D=41)に投入し、シリンダー温度190~200℃でストランド押出後、冷却、カットすることでペレット化した。
(外層用材料)
ポリプロピレンホモポリマー(ポリプロピレン単独重合体、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)E111G、融点160℃;PP-1)を用意した。
試験結果を、表1に示す。
Figure 0007195678000001
[比較例1]
無機物質粉末として未処理のソフトン1000を使用した以外は実施例A1と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
Figure 0007195678000002
[実施例A2]
キシレンスルホン酸(キシレンスルホン酸スルホン酸系表面処理剤-1)の代わりに直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(テイカ株式会社製テイカパワー(登録商標)L121、有効成分96.7%;スルホン酸系表面処理剤-2)を用いた以外は、実施例A1と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
[実施例A3]
ソフトン1000を精製水中に分散させ(濃度100g/L)、スラリーを作製した。このスラリーに、p-トルエンスルホン酸ナトリウム(スルホン酸系表面処理剤-3)をスラリー1Lに対して3g(炭酸カルシウム粒子基準で3質量%)添加し、50℃で30分間攪拌した後、濾別・乾燥して表面処理炭酸カルシウム粒子を得た。
この表面処理炭酸カルシウム粒子を用いた以外は実施例A1と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。試験結果を、表1に示す。
[実施例A4]
p-トルエンスルホン酸ナトリウム(スルホン酸系表面処理剤-1)の代わりに1-ドデカンスルホン酸ナトリウム(スルホン酸系表面処理剤-4)を用いた以外は実施例A3と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
[比較例2]
表面処理炭酸カルシウム粒子として、市販の脂肪酸表面処理重質炭酸カルシウム粒子(平均粒子径2.2μm;備北粉化工業株式会社製ライトン(登録商標)S-4;表面処理重質炭酸カルシウム粒子-C1)を用いた以外は実施例A1と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
[比較例3]
表面処理剤としてキシレンスルホン酸(スルホン酸系表面処理剤-1)の代わりに無水マレイン酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸変性樹脂;三洋化成工業株式会社製ユーメックス(登録商標)1010;表面処理剤-C1)を用い、表面処理時の温度を180℃とした以外は実施例A1と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
[比較例4]
表面処理剤としてスチレン・マレイン酸エステル(マレイン酸変性樹脂;三洋化成工業株式会社製レジット(登録商標)SM-101;表面処理剤-C2)を用いた以外は比較例3と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
[実施例A5~A6]
表面処理炭酸カルシウム粒子を70質量部としポリプロピレン単独重合体を30質量部とした以外は実施例A1及びA2と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
[比較例5]
表面処理炭酸カルシウム粒子を70質量部としポリプロピレン単独重合体を30質量部とした以外は比較例2と同様の操作を行った。試験結果を、表2に示す。
[実施例A7]
表面処理時のスルホン酸系表面処理剤の量を1質量部とした以外は、実施例A6と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
[実施例A8]
p-トルエンスルホン酸ナトリウム(スルホン酸系表面処理剤-3)3質量部の代わりにクメンスルホン酸ナトリウム(テイカ株式会社製テイカトックス(登録商標)N5040、有効成分約40%;スルホン酸系表面処理剤-5)5質量部を用いた以外は実施例A3と同様にして表面処理炭酸カルシウム粒子を調製した。得られた表面処理炭酸カルシウム粒子70質量部と、ポリプロピレン単独重合体30質量部とを用い、実施例A5~A6と同様の操作を行った。試験結果を、表1に示す。
[実施例B1]
(内層用樹脂組成物の作製)
平均粒子径2.2μm(空気透過法による)、比表面積10,000cm/gの重質炭酸カルシウム粒子(備北粉化工業株式会社製のソフトン(商品名)1000;重質炭酸カルシウム粒子-1)100質量部を、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製フォスファノール(登録商標)ML-220:C1225O(CO)-P(=O)(OH)と[C1225O(CO)P(=O)OHとの混合物、第1酸価140~160;リン酸エステル系表面処理剤-1)3質量部と共に、ヘンシェルミキサーにて、温度120℃、回転数1200rpmで30分間攪拌し、表面処理した。
上記で得られた表面処理炭酸カルシウム粒子60質量部と、ポリプロピレン単独重合体(株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)E111G、融点160℃)40質量部とを、ステアリン酸マグネシウム滑剤0.5質量部と共に、株式会社パーカーコーポレーション製同方向回転二軸混練押出機HK-25D(φ25mm、L/D=41)に投入し、シリンダー温度190~200℃でストランド押出後、冷却、カットすることでペレット化した。
(外層用材料)
ポリプロピレンホモポリマー(ポリプロピレン単独重合体、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)E111G、融点160℃;PP-1)を用意した。
試験結果を、表3に示す。
Figure 0007195678000003
[実施例B2]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(リン酸エステル系表面処理剤-1)の代わりにポリオキシエチレンラウリルフェノールリン酸(芳香族EOリン酸エステル、東邦化学工業株式会社製フォスファノール(登録商標)LF-200:C1225O(CO)-P(=O)(OH)と[C1225OC(CO)P(=O)OHとの混合物、第1酸価95~115;リン酸エステル系表面処理剤-2)を用いた以外は実施例B1と同様の操作を行った。試験結果を、表3に示す。
[実施例B3]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(リン酸エステル系表面処理剤-1)の代わりにラウリルリン酸(東邦化学工業株式会社製フォスファノール(登録商標)ML-200:C1225O-P(=O)(OH)と(C1225O)P(=O)OHとの混合物、第1酸価190~210;リン酸エステル系表面処理剤-3)を用いた以外は実施例B1と同様の操作を行った。試験結果を、表3に示す。
[実施例B4]
ソフトン1000を精製水中に分散させ(濃度100g/L)、スラリーを作製した。このスラリーに、長鎖不飽和脂肪族炭化水素鎖とエチレンオキシド単位とを有するリン酸エステルのナトリウム塩(不飽和EOリン酸エステル塩、東邦化学工業株式会社製フォスファノール(登録商標)RD-720、炭化水素鎖の炭素数18、エチレンオキシド単位数7;リン酸エステル系表面処理剤-4)をスラリー1Lに対して3g(炭酸カルシウム粒子基準で3質量%)添加し、50℃で30分間攪拌した後、濾別・乾燥して表面処理炭酸カルシウム粒子を得た。
この表面処理炭酸カルシウム粒子を用いた以外は実施例B1と同様にしてシートを作製し、物性を評価した。試験結果を、表3に示す。
[実施例B5]
表面処理炭酸カルシウム粒子を70質量部としポリプロピレン単独重合体30質量部とした以外は実施例B1と同様の操作を行った。試験結果を、表3に示す。
[実施例B6]
表面処理時のリン酸エステル系表面処理剤量を1質量部とした以外は実施例B5と同様の操作を行った。試験結果を、表3に示す。
[実施例A9~A13]
キシレンスルホン酸(キシレンスルホン酸スルホン酸系表面処理剤-1)の配合量を表4に示すように変えた以外は、実施例A1と同様の操作を行った。試験結果を、表4に示す。
Figure 0007195678000004
[実施例B7~B11]
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(リン酸エステル系表面処理剤-1)配合量を表5に示すように変えた以外は、実施例B1と同様の操作を行った。試験結果を、表5に示す。
Figure 0007195678000005
[実施例A14~A17]
内層の「理論上平面占有率TPO-実測平面占有率MPO (%)」が「2%未満」であること以外は、それぞれ、A1~A4と同様の操作を行った。試験結果を、表6に示す。
Figure 0007195678000006
[実施例B12~B15]
内層の「理論上平面占有率TPO-実測平面占有率MPO (%)」が「2%未満」であること以外は、それぞれ、B1~B4と同様の操作を行った。試験結果を、表7に示す。
Figure 0007195678000007
[実施例A18~A20]
内層、第1の外層及び第2の外層において、PP-1に変えて表8に示す材料を用いた以外は、それぞれ、A1~A3と同様の操作を行った。試験結果を、表8に示す。
Figure 0007195678000008
[実施例B16~B18]
内層、第1の外層及び第2の外層において、PP-1に変えて表8に示す材料を用いた以外は、それぞれ、B1~B3と同様の操作を行った。試験結果を、表8に示す。
表に示されるとおり、本発明の要件を満たす積層シートは、得られる成形品の外観、及び、積層シートの成形加工性及び機械的特性のいずれもが良好であった。
機械的特性については、試験を複数回行い、本発明の要件を満たす積層シートの引張強度の値のバラツキが小さいことも確認した。
なお、データは示していないが、本発明の要件を満たす積層シートは、成形の有無にかかわらず、表面状態が良好であった。

Claims (8)

  1. 内層と、前記内層の両面に積層される一対の外層とを備える積層シートであって、
    前記内層は、平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の重質炭酸カルシウム粒子からなる無機充填剤及び熱可塑性樹脂を含み、厚さが100.0μm以上であり、
    前記外層は、熱可塑性樹脂からなり厚さが5.0μm以上50.0μm以下であり、表面に凹凸がなく、
    記内層における前記炭酸カルシウム粒子の含有割合は、40.0質量%以上80.0質量%以下であり、
    前記炭酸カルシウム粒子は、スルホン酸及びその塩の少なくとも1種、又はリン酸エステル、を含む表面処理剤で表面処理され、
    前記一対の外層を構成する各外層の厚さの比率は、前記積層シートの全体厚さに対して2.0%以上20.0%以下であり、
    前記内層の少なくとも一裁断面における前記無機充填剤の実測平面占有率MPOが、前記内層の無機充填剤の含有割合に基づき算出した前記裁断面における前記無機充填剤の理論上平面占有率TPOより2%以上低い、
    積層シート。
  2. 前記熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂である、請求項1に記載の積層シート。
  3. 前記ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
    前記高密度ポリエチレンにおけるJIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、5g/10分以上15g/10分以下であり、
    前記直鎖状低密度ポリエチレンにおけるJIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)が、0.5g/10分以上1.5g/10分以下であり、
    前記高密度ポリエチレンと前記直鎖状低密度ポリエチレンとの質量比が、90:10~50:50である、請求項2に記載の積層シート。
  4. 前記内層に含まれる熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であり、
    前記ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンホモポリマー及び/又はポリプロピレンブロックポリマーである、請求項1に記載の積層シート。
  5. 前記スルホン酸が、アルキルスルホン酸、炭素数2以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及びキシレンスルホン酸からなる群より選択される1種以上のスルホン酸である、請求項1に記載の積層シート。
  6. 前記リン酸エステルが、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸である、請求項1に記載の積層シート。
  7. 前記積層シートが、真空成形用積層シートである、請求項1からのいずれか一項に記載の積層シート。
  8. 請求項に記載の積層シートで成形された食品包装容器。
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