JP7192284B2 - Rfタグ - Google Patents
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Description
RFタグは、RFID(Radio Frequency Identification)タグ,ICタグ,非接触タグ等とも呼ばれ、ICチップと無線アンテナを備えた電子回路が樹脂フィルム等の基材によって封止・コーティングされた所謂インレイ(インレット)が、タグ(荷札)状に形成されてなる超小型の通信端末であり、読取・書込装置(リーダ・ライタ)によってタグ内のICチップに所定の情報が無線で読み取りや書き込み,読み書き(リードオンリー,ライトワンス,リード・ライト)が行えるようになっている。
このようなRFタグは、ICチップのメモリに数百ビット~数キロビットのデータが記録可能であり、物品等に関する情報としては十分な情報量を記録でき、また、読取・書込装置側とは非接触で通信が行えるため接点の磨耗や傷、汚れ等の心配もなく、さらに、タグ自体は無電源にすることができるため対象物に合わせた加工や小型化・薄型化が可能となる。
ここで、このようなRFタグでは、汎用のインレイ(インレット)と呼ばれるICチップとアンテナをフィルムコーティングしただけのRFタグが広く用いられている。この種のインレイは、小さく薄く、どのような対象物にも場所を取らずに容易に装着でき、直ちにRFタグとして使用できることから、近年広く普及している。
このため、このような外力が加わり易い環境下で使用されるRFタグについては、汎用インレイを所定のカバーやケース,筐体などに収納することで、インレイを物理的・機械的な衝撃等から保護することが行われている。
また、特許文献2には、非導電性材料で封止した汎用インレイを、金属ホルダーの中空状のスロット内に埋設するようにしたRFIDタグが提案されている。
このように保護板やホルダー内に汎用インレイを収納・封止することで、インレイを周囲の環境から保護し、特に外部から加わる物理的・機械的な外力や衝撃,衝突等によっても、インレイが容易に故障や破損等しないように保護することができるようになる。
汎用のインレイでは、基本的な構成として、ICチップと、ICチップの周囲近傍に配置されるループ回路アンテナと、ICチップ(ループ回路アンテナ)の左右に直線状に伸びる導体からなるダイポールアンテナを備えている。
ダイポールアンテナは、アンテナを構成する導体が所定の長さ、例えば1/2波長の長さとなるようにICチップの両側に左右対称となるように形成される。
特許文献1,2の技術では、上記のようなダイポールアンテナに対する考慮がなされておらず、インレイ全体を金属製の保護板やホルダー内に収納するだけの構造となっていた。
このため、インレイを含む金属製の保護板やホルダーの寸法は、インレイのダイポールアンテナの長さ(例えば1/2波長)を超える大きさが必要となり、RFタグの小型化や設計の自由度等を阻害する要因となっていた。
RFタグとして汎用のインレイを用いる場合に、更に補助アンテナを積層することにより、汎用インレイの無線通信距離をより長くしたり、任意の周波数帯域での無線通信が行えるようにすることができる。
ところが、そのようなインレイ及び補助アンテナを、特許文献1,2に提案されているような金属製の保護板やホルダー内にそのまま収納すると、インレイ及び補助アンテナの全体が金属製のケースによって電気的に遮蔽・遮断されてしまい、補助アンテナを有効に機能させることができなくなるという問題が発生してしまう。
特に、本発明のRFタグは、前記補助アンテナとは異なる、前記インレイに重ねて配置される、少なくとも一つの第二の補助を備え、前記第二の補助アンテナが、前記インレイの前記ループ回路アンテナの一部配置される構成としてある。
したがって、本発明によれば、RFタグの小型化や設計の自由度を確保しつつ、外部から物理的な力や衝撃が加わることの多い対象物用のRFタグとして好適に用いることができる。
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係るRFタグ1を示す、インレイ10を筐体50内に収納した完成状態の斜視図であり、図2及び図3は、図1に示す本実施形態に係るRFタグ1の分解斜視図である。
また、図4(a)は、トップカバー20とインレイ10の配置関係を示す平面図、図4(b)~(d)は、RFタグ1の断面図である。
具体的には、本実施形態に係るRFタグ1は、図2に示すように、ICチップ11とループ回路アンテナ12を備え、ICチップ11(ループ回路アンテナ12)の両側に伸びるダイポールアンテナを備えないインレイ10と、このインレイ10を保護するための保護手段として、内部にインレイ10を収納する筐体50(51,52)と、筐体50の一面に配置されて、筐体50内に収納されるインレイ10のアンテナとして機能するトップカバー20とで構成されている。
以下、各部を詳細に説明する。
インレイ10は、図示しないリーダ・ライタ(読取・書込装置)との間で無線による所定の情報の読み取りや書き込み,読み書きが行われるRFタグを構成しており、例えばリードオンリー型,ライトワンス型,リード・ライト型等の種類がある。
具体的には、インレイ10は、ICチップ11と、ICチップ11が搭載されるループ回路アンテナ12と、ループ回路アンテナ12の片側に伸びるモノポールアンテナ12aとを有し、これらICチップ11・ループ回路アンテナ12・モノポールアンテナ12aが、基材となる例えばPET樹脂等で形成された1枚の封止フィルム13上に搭載,形成された後、もう1枚の封止フィルム13が重ね合わされて、2枚の封止フィルム13によって挟持された状態で封止・保護されている。
このように、本実施形態では、インレイ10が、ICチップ11(ループ回路アンテナ12)の両側に伸びるダイポールアンテナを備えないように構成されている。
ダイポールアンテナは、アンテナを構成する導体が、例えば1/2波長の長さとなるようにICチップの両側に左右対称となるように備えられる。このため、汎用インレイをそのまま使用する場合には、少なくともダイポールアンテナの長さを配置・収納できる空間が必要となるため、インレイを含む筐体などの寸法が、ダイポールアンテナの長さ(例えば1/2波長)を超える大きさが必要となり、RFタグの小型化や設計の自由度等を阻害する要因となる。
また、ダイポールアンテナを備えたインレイに対して、更に補助アンテナを備えるようにした場合、ダイポールアンテナと補助アンテナとの間でインピーダンス整合が取れないことがあり、補助アンテナを有効に機能させることができなくなる場合がある。
図4(a),図5(a)~(d)に、ダイポールアンテナを備えないインレイ10の具体例を示す。
そして、このようにダイポールアンテナを備えず、モノポールアンテナ12aを備えるインレイ10が、筐体50内において、ループ回路アンテナ12の少なくとも一部が、補助アンテナとして機能するトップカバー20に重なるように、トップカバー20の切り欠き部21に重ねて配置される。
また、この場合、図4(a)に示すように、インレイ10は、ループ回路アンテナ12の片側に伸びるモノポールアンテナ12aの少なくとも一部が、トップカバー20で構成される補助アンテナに重なるように配置されることが望ましい。
これによって、インレイ10は、ループ回路アンテナ12やモノポールアンテナ12aの少なくとも一部が補助アンテナ(トップカバー20)と重なることで、インレイ10(RFタグ1)の通信特性を調整・向上させることができるようになる(後述する図11(a)~(c)参照)。
この場合、図5(a)に示すように、モノポールアンテナ12aは、例えばL字形状に曲折形成されることにより、導体の全長がインレイ10の電波周波数1/2波長かそれ以下の長さとなるように設定され、モノポールアンテナ12aの平面視の長手方向の長さが、インレイ10の電波周波数1/2波長よりも大幅に短い長さ(例えば1/4波長程度)とすることができる。
これによって、インレイ10の平面視長手方向の長さを、ダイポールアンテナを備えるインレイの場合と比較して大幅に小型化(短尺化)することができる。
これによって、後述するように、インレイ10(RFタグ1)の通信特性について、よりきめ細かな調整を行うことができるようになる(後述する図11(d)参照)。
なお、このような第二の補助アンテナ22は、ループ回路アンテナ12やモノポールアンテナ12aと同様に、封止フィルム13の表面に、例えば導電性インクや導電性を有するアルミ蒸着膜等の金属薄膜をエッチング加工等により所定の形状・大きさ(長さ,面積)・数・位置などに配置・形成することができる。
このようにすると、インレイ10を更に小型化(短尺化)することが可能となる。
この場合にも、インレイ10は、ループ回路アンテナ12の少なくとも一部が、補助アンテナとして機能するトップカバー20に重なるように、すなわち、ループ回路アンテナ12の少なくとも一部が、補助アンテナ(トップカバー20)が存在しない切り欠き部21と重ならないように配置され、インレイ10(RFタグ1)の通信特性が調整・向上されるようになる。
また、所定の長さ・形状のモノポールアンテナ12aを備えたインレイ10や、ICチップ11及びループ回路アンテナ12のみを備えたインレイ10を、専用のインレイとして製造することによっても構成することができる。
ループ回路アンテナ12は、ICチップ11の周囲近傍を囲むようにループ状の回路導体が接続されて構成される。このループ回路アンテナ12によって、ICチップ11のインピーダンス整合が図られ、後述するトップカバー20をアンテナ(補助アンテナ)として、図示しないリーダ・ライタとの間で無線通信による読み書き(データ呼び出し・登録・削除・更新など)が行われ、ICチップ11に記録されたデータが認識されるようになっている。
ここで、ICチップ11に記録されるデータとしては、例えば、商品の識別コード、名称、重量、内容量、製造・販売者名、製造場所、製造年月日、使用期限等、任意のデータが記録可能であり、また、書換も可能である。
ループ回路アンテナ12やモノポールアンテナ12aは、基材となる1枚の封止フィルム13の表面に、例えば導電性インクや導電性を有するアルミ蒸着膜等の金属薄膜をエッチング加工等により所定の形状・大きさ(長さ,面積)に成形することで形成される。
封止フィルム13は、例えばポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン,ポリイミド,ポリ塩化ビニル(PVC),アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS)等の可撓性を有するフィルム材からなり、封止するICチップ11・ループ回路アンテナ12・モノポールアンテナ12aが外部から視認可能な透明のPET樹脂等で構成されることが好ましい。また、封止フィルム13の片面側のフィルム表面には、基材や物品への貼り付けができるように粘着層・接着層を備えることができる。
一般にRFタグで使用される周波数帯としては、例えば、135kHz以下の帯域、13.56MHz帯、UHF帯に属する860~960MHz帯、2.45GHz帯等の数種類の周波数帯がある。そして、使用される周波数帯によって無線通信が可能な通信距離が異なるとともに、周波数帯によって最適なアンテナ長などや配線パターンが異なってくる。
但し、インレイ10や筐体50の大きさの制約等がなければ、本発明に係る技術思想自体は、特定の周波数帯に限定されるものではなく、例えばUHF帯以外の任意の周波数帯域についても適用できることは勿論である。
筐体50は、内部に上述したダイポールアンテナを備えないインレイ10を収納することで、当該インレイ10を保護するための保護手段である。
この筐体50によってインレイ10が保護されることにより、RFタグとしての耐候性や耐熱性・防水性等が高められるようになる。
具体的には、筐体50は、図1~4に示すように、インレイ10を移動不能に収納・配置する空間となる凹部51a(図3及び図4(b),(c)参照)を備えた上面側筐体51と、上面側筐体51の底面開口部分を蓋して閉止・密閉する蓋部材となる底面側筐体52とを備えた、全体が矩形直方体形状となっている。
また、上面側筐体51には、RFタグ1の上面となる表面に、トップカバー20を移動不能に配置・固定する空間となる凹部51b(図2及び図4(b),(c)参照)が形成されており、インレイ10のアンテナとなるトップカバー20が、筐体50内のインレイ10と所定位置で配置された状態で接合・固定されるようになっている。
凹部51bは、トップカバー20が積層・配置できるように、トップカバー20の外形に合わせて、上面側筐体51の表面の所定位置に、トップカバー20よりも一回り大きく、トップカバー20の厚みとほぼ同等か若干深い深さを有する凹状に形成される。
具体的には、インレイ10が、筐体50内において、ループ回路アンテナ12の少なくとも一部がトップカバー20に重なるように、また、モノポールアンテナ12aを備える場合には、モノポールアンテナ12aの少なくとも一部が、トップカバー20に重なるように、トップカバー20の切り欠き部21に重ねて配置されるようになる。
これによって、インレイ10は、ループ回路アンテナ12の少なくとも一部が切り欠き部21と重ならず、モノポールアンテナ12aの少なくとも一部が切り欠き部21と重なるように配置されることになる。
このような凹部51a,51bによる位置決め・配置構成によって、トップカバー20とインレイ10のICチップ11が、筐体50(上面側筐体51)を介して対向配置されるようになり、所謂コンデンサカップリングによって電気的接続がなされるようになり、トップカバー20がインレイ10のアンテナ(補助アンテナ)として機能するようになる。
これによって、インレイ10とトップカバー20を上面側筐体51の所定位置に位置決めして容易・確実に配置することができるとともに、筐体50に外部から外力・衝撃等が加わっても、インレイ10に直接的に外力が加わることを回避できる逃げ空間として機能させることができる。
本実施形態では、上面側筐体51の底面開口部分に、底面側筐体52の全体が嵌入・嵌合することにより、開口部分を閉止した状態で底面側筐体52が上面側筐体51の裏面とほぼ同一面(所謂面一)となるように形成されている(図1(b)及び図4(c)参照)。
上面側筐体51の開口に嵌合・閉止した底面側筐体52は、例えば超音波溶着や熱融着、接着剤等によって、上面側筐体51と接合され、筐体50は外部から密閉・封止される。
本実施形態では、図1~4に示すように、筐体50には、上面側筐体51(及びトップカバー20)を一体的に貫通する取付穴50a,50bが、筐体50の長手方向の両端側に穿設してある。
この取付穴50a,50bに、RFタグ1を対象物に固定するための固定手段となる螺子(図4(d)に示す螺子101参照)等を挿入させることで、筐体50を、RFタグ1を使用する物品・対象物の所定箇所に設置・固定することができる。
なお、螺子101などの取り付け手段として、例えば金属製以外の材質(樹脂・木製など)のものを用いることで、トップカバー20との導通・絶縁の問題を発生させないようにすることもできる。
また、金属製の螺子101とトップカバー20とは、必ずしも絶縁状態となっていない場合でも、RFタグ1が所定の通信特性を得られる場合には、上記のような絶縁構造を省略することも可能である。
本実施形態では、耐候性や耐熱性,耐水性等に優れ、インレイ10やトップカバー20の外形等に合わせて形成,加工等も容易であることから、特に耐候AES樹脂又は耐候ポリカーボネート樹脂などで筐体50を形成することができる。
上述のように、上面側筐体51と底面側筐体52とは、上面側筐体51の開口部分が底面側筐体52によって閉止された後、例えば超音波溶着等の手段により接合されるようになっている。
このため、上面側筐体51と底面側筐体52とを同一の樹脂材料で形成することにより、融着や接着により接合する場合に、より確実かつ堅固に両者を接合することができるようになる。
また、筐体50の外形は、内部にインレイ10が収納でき、かつ、一面にトップカバー20が積層配置できる限り、外形の形状・構造等は変更可能であり、例えばRFタグ1を使用する物品の構造や大きさ、タグの使用状態等に応じて筐体50の外形は適宜設計・変更することができる。
上記のように上面側筐体51の凹部51aに配置・収納されるインレイ10に対しては、更に保護部材を設けることができる。
保護部材としては、例えば筐体50内に収納されるインレイ10の上面及び/又は下面を覆う、インレイ10より一回り程度大きい板状部材やシート状部材、例えば耐熱シートなどで構成することができる。
なお、このような保護部材は、インレイ10の上面又は下面の少なともいずれか一面を保護するようになっていればよい。
また、保護部材は、インレイ10に対する緩衝性や防水性・耐熱性等を向上させることもでき、完成した筐体50に対して加わる外力に対しても、緩衝材・防水材・耐熱材として機能させることができ、インレイ10の保護をより万全なものとすることができる。
トップカバー20は、筐体50の一面側を覆う面状部材であり、所定の金属材料で形成されるようになっている。
このような金属製のトップカバー20を備えることによって、筐体50の一面(上面)側が金属板によって保護されることになり、RFタグとしての耐久性や耐衝撃性・耐候性・耐熱性・防水性等が高められるようになり、また、筐体50の内部に収納されたダイポールアンテナを備えないインレイ10のアンテナとして機能させることができるようになる。
そして、トップカバー20が筐体50の表面に配置・固定されることにより、トップカバー20の切り欠き部21と、筐体50に収納されているインレイ10とが位置合わせされ、インレイ10が、筐体50内において、切り欠き部21の内部に位置するように配置されるようになる。このような配置構成により、トップカバー20とインレイ10のICチップ11が、筐体50(上面側筐体51)を介して対向配置されるようになり、所謂コンデンサカップリングによって電気的接続がなされるようになり、トップカバー20がインレイ10のアンテナ(補助アンテナ)として機能するようになる。
トップカバー20の補助アンテナとしての機能の詳細については、後述する。
そして、金属製のトップカバー20を備えることで、トップカバー20を筐体50のインレイ10のアンテナとして機能させることが可能となり、インレイ10がダイポールアンテナを備えなくてもRFタグ1の無線通信が行えるようになる。
なお、筐体50を金属製とするのは、RFタグ1の表面に加わる機械的・物理的な外力に対する耐久性・耐衝撃性等を得るとともに、RFタグ1の表面に配置される金属部材によってインレイ10の補助アンテナを構成するためである。
したがって、そのような目的を達成するためには、筐体50の表面側(上面側筐体51の表面)に配置されるトップカバー20が少なくとも金属製であれば良く、筐体50の裏面側(底面側筐体52の表面)については非金属製、例えば合成樹脂製で十分である。但し、筐体50の裏面側にも、金属製のプレート部材等を配置することも可能である。
また、トップカバー20の対角線上に対向する両端側には、上面側筐体51の凹部51bの突起と係合する係合穴が1つずつ設けてあり、突起と係合穴が係合することで、L字形の非対称形状のトップカバー20が正しい向きで配置されるようになっている(図1~3参照)。
これによって、金属製の螺子101を用いても、筐体50取付穴50a,50bが絶縁手段として機能して、トップカバー20と金属製の取付対象とが絶縁されるようになる。
そして、本実施形態では、以上のような筐体50を構成するトップカバー20が、筐体50内に収納されるインレイ10のアンテナ(補助アンテナ)として機能するようになっている。
補助アンテナは、上述したインレイ10の通信特性を向上・調整するためのアンテナとして機能するものであり、通常、インレイ10の片面側(上面側)に積層配置される面状の導電性部材によって構成され、封止フィルム13によって樹脂封止されたインレイ10とは絶縁状態となって配置される。
これによって、インレイ10には補助アンテナが縦方向(高さ方向)に積層されることで、インレイ10のループ回路アンテナ12やモノポールアンテナ12aと補助アンテナにより二次元アンテナが構成され、補助アンテナが通信電波のブースターとして機能することになり、インレイ10の通信特性の調整・向上が図られることになる。
本実施形態のトップカバー20は、上述のように金属製のため、筐体50に収納されたインレイ10の上面側に配置される導電性部材となる。また、インレイ10は封止フィルム13によって樹脂封止され、さらに、インレイ10の上面側には合成樹脂製の筐体50(上面側筐体51)が配置されており、トップカバー20とインレイ10とは絶縁状態となり、所謂コンデンサカップリングによって電気的に接続されるようになる。
したがって、トップカバー20を所定の形状に形成することで、金属製のトップカバー20それ自体を、筐体50内に収納されるインレイ10のアンテナ、すなわち補助アンテナとして機能させることができる。
このような配置構成により、インレイ10は、ループ回路アンテナ12の少なくとも一部が、補助アンテナ(トップカバー20)が存在しない切り欠き部21と重ならず、モノポールアンテナ12aの少なくとも一部が、切り欠き部21と重なるように配置されるようになる。
さらに、インレイ10がモノポールアンテナ12aを備えない場合には、図5(d)に示すように、インレイ10のループ回路アンテナ12の少なくとも一部が、トップカバー20に重なるように、ループ回路アンテナ12の少なくとも一部が切り欠き部21と重ならないように配置される。
図6(a)に示す例では、トップカバー20の隣接する短辺及び長辺側に開口する矩形(長方形)状の切り欠き部21が、インレイ10よりも一回り程小さい大きさ(面積)となるように形成され、トップカバー20が平面視L字形状に形成される。
図6(b)に示す例では、トップカバー20の一方の長辺側に、長手方向のほぼ中心に凸状部分を備えることにより、当該長辺とその両側の短辺側に開口する二つの切り欠き部21が、それぞれインレイ10よりも一回り程小さい大きさとなるように形成され、トップカバー20が平面視凸形状に形成される。
図6(d)に示す例では、トップカバー20の一方の長辺側に、長手方向のほぼ中心に凹状部分によって一つの切り欠き部21が、インレイ10よりも小さい大きさで形成され、トップカバー20が平面視凹形状に形成される。
このように、図6(b)~(d)に示される凸状部分や凹状部分をトップカバー20に設けることで、その凸状/凹状部分によって、一又は二以上の任意の数の切り欠き部21を形成することができるようになる。
なお、切り欠き部21は、トップカバー20を構成する金属プレートの少なくとも一辺側に開口していれば良く、図6に示した平面視L字形状・凸形状・凹形状の切り欠き部21(トップカバー20)以外の形状・形態とすることも勿論可能である。
その場合にも、インレイ10のループ回路アンテナ12・モノポールアンテナ12aの少なくとも一部が、切り欠き部21・トップカバー20と重なるように配置することにより、RFタグ1の通信特性を調整・向上させることができるようになる。
ダイポールアンテナを備える通常のインレイを使用した場合、インレイのダイポールアンテナ自体が1/2波長に対応する長さを有していることから、インレイを筐体に収納しようとすれば、筐体が1/2波長を超える長さを有していることが必要となり、寸法が長くなり過ぎる(大き過ぎる)ことになり、小型化が要請されるRFタグの性質上好ましくない。
ここで、「略1/2」とは、電波周波数の波長に対して厳密に「1/2(0.5)」である場合は勿論のこと、概ね「1/2」であってもよく、例えば1/2波長の±20%の範囲(0.4~0.6)等であっても、本発明に係る「略1/2」に該当する。
例えば、補助アンテナとなるトップカバー20の長辺の長さを、インレイ10の電波周波数の波長の略1/4の長さとすることができる(図6(c)及び(d)参照)。これによって、トップカバー20や筐体50を含むRFタグ1全体を更に小型化することが可能となる。
なお、ここでいう「略1/4」は、上述した「略1/2」と同様に、電波周波数の波長に対して厳密に「1/4(0.25)」である場合は勿論のこと、概ね「1/4」であってもよく、例えば1/4波長の±20%の範囲(0.2~0.3)等であっても、本発明に係る「略1/4」に該当する。
すなわち、インレイのICチップ近傍にはループ回路が形成されており(ループ回路アンテナ)、このループ回路アンテナは、インピーダンスの整合を図る目的があり、かつ、磁界成分での通信を行うために設けられており、この磁界成分が補助アンテナを構成する導体によって阻害されないようにする必要がある。
また、通常のインレイはダイポールアンテナを備えており、このダイポールアンテナに補助アンテナが重なって位置することで、ループ回路アンテナによるインピーダンス整合が阻害されてICチップの通信特性が損なわれることがある。
なお、トップカバー20に設ける切り欠き部21の大きさ(幅及び深さ)は、少なくともインレイ10の一部に重ねてトップカバー20(補助アンテナ)が存在しない大きさであれば良く、また、この切り欠き部21の幅及び深さを適宜調整することで、ICチップ11の電波周波数や上述した筐体50の材質、RFタグ1を取り付ける物品からの影響等に応じて、インピーダンス整合を図ることができるようになる。
したがって、切り欠き部21は、少なくともインレイ10に重ねて配置が可能な大きさであって、その幅及び深さはトップカバー20(補助アンテナ)の大きさの範囲内で適宜調整・変更することができるものであれば良い。
なお、インレイ10を収納する筐体50を構成する樹脂層は、波長短縮効果を生み、見かけの波長が短縮される場合がある。その樹脂層の比誘電率εは、例えばおよそ「2~4」であり、この場合の短縮波長はλ/√εで求められる。
したがって、本実施形態におけるトップカバー20によって構成される補助アンテナの長辺の長さもおよその値であり、略λ/2や略λ/4の値となっていれば十分であり、RFタグ1の筐体50の材質、タグの使用環境,使用態様等による通信特性の変化に応じて長さが前後することはある。
具体的には、切り欠き部21の幅(長手方向の長さ)及び深さ(短手方向の長さ)は、インレイ10の幅(長手方向の長さ)及び高さ(短手方向の長さ)を基準にして、トップカバー20が、ループ回路アンテナ12の少なくとも一部に重ならず、インレイ10が切り欠き部21に重ねて配置可能な大きさに形成する。
例えばインレイ10(ループ回路アンテナ12)の幅のサイズが30mm程度で、インレイ10の高さが7mm程度ある場合に、切り欠き部21は、インレイ10が補助アンテナから大きく飛び出さない程度の大きさとなるよう、例えば幅が約16~19mm以上、深さが5~7mm以上の範囲の長さとすることができる。
次に、以上のような構成からなる本実施形態に係るRFタグ1の、筐体50とインレイ10及びトップカバー20の積層構造について、図4(b)~(d)を参照しつつ説明する。
図4(b)~(d)は、それぞれ本発明の一実施形態に係るRFタグ1を示す断面正面図であり、取付対象となる対象物100に対して取り付けられ、螺子101で固定される場合であり、筐体50内のインレイ10と、筐体50の表面のトップカバー20の積層構成を示している。
また、上面側筐体51の表面の凹部51bには、トップカバー20が位置合わせされて配置される。
このとき、インレイ10の上面及び/又は下面に、上述した耐熱シート等の保護部材(図示せず)を配置して、インレイ10を保護することができる。
また、上面側筐体51とトップカバー20とが接合され、トップカバー20の切り欠き部21と重なる所定位置に、筐体50内のインレイ10が配置されることになる。
これにより、RFタグ1の組立が完成する。
RFタグ1の固定は、筐体50の取付穴50a,50b及びトップカバー20の取付穴20a,20bに、固定手段となる螺子101を挿入・貫通させ、螺子101を取付対象物100に螺合させることで、取付対象物100の所定箇所に設置・固定することができる。このとき、螺子101は、取付穴50a,50bによってトップカバー20と絶縁され、トップカバー20と取付対象物100とは絶縁状態となる。したがって、取付対象物100及び螺子101が金属製であっても、トップカバー20は取付対象物100と絶縁状態となり、金属製の取付対象物100によってトップカバー20のアンテナ機能が影響を受けることがなくなる。
次に、以上のような積層構造からなるRFタグ1の製造方法について説明する。
本実施形態に係るRFタグ1は、例えば以下のような工程によって成形・製造することができる。
[射出成形+超音波溶着]
(1)まず、トップカバー20を構成する金属板に、筐体50の上面側筐体51となる樹脂を射出して接合する。
このとき、トップカバー20は切り欠き部21を備えた非対称形状の金属板であるので、金属板が正しい向きで配置され、他のパーツが反転しないように、樹脂に穴とそれに係合する突起を設けることが好ましい。
(2)次に、金属板に接合された上面側筐体51を構成する樹脂の内面側に、インレイ10を貼付する。
(3)トップカバー20となる金属板を取り付けた上面側筐体51の底面側開口に、底面側筐体52を構成する樹脂を超音波溶着等によって接合する。
(1)まず、トップカバー20を構成する金属板に、筐体50の上面側筐体51となる樹脂を射出して接合する。
(2)次に、金型内において上面側筐体51を構成する樹脂に、例えば耐熱シート等で耐熱性を付与したインレイ10を貼付する。
(2)2回目の射出を行い、インレイ10を貼付した上面側筐体51の底面開口を覆う底面側筐体52を成形して、固着・接合する。
[1回射出成形]
(1)トップカバー20を構成する金属板に、先にインレイ10を貼付しておく。
(2)その後に、筐体50(上面側筐体51及び底面側筐体52)を構成する樹脂を射出する。
すなわち、本実施形態に係るRFタグ1を構成することができる限り、製造方法や製造工程については、特に限定されることはない。
次に、上記のような製造方法における、金属製のトップカバー20と樹脂製の筐体50(上面側筐体51)との接合方法の詳細について、図7を参照しつつ説明する。
金属製のトップカバー20と樹脂製の筐体50とは、例えば、図7(a)に示すように、トップカバー20を構成する金属板の表面を化成処理やレーザー照射処理等の方法を用いて粗面化することにより接合することができる。
具体的には、(1)トップカバー20を構成する金属板の表面を、(2)化学エッチングにより微細な凹凸形状を形成して粗面化し、(3)その粗面化された金属板の表面に、溶融した樹脂を積層して、樹脂を凹凸形状の内部に樹脂を入り込ませる。その後、(4)溶融した樹脂が固化することにより、金属板と樹脂とが固定され、トップカバー20と筐体50とが堅固に接合されることになる。
例えば、筐体50(上面側筐体51)の表面に、トップカバー20を移動不能に配置する空間となる凹部51b(図2及び図4(b),(c)参照)を形成することにより、トップカバー20を凹部51bによって所定位置に配置・接合することができる。
なお、上述した図7(a)~(c)に示した接合方法に加えて、例えば、筐体50とトップカバー20の接合面を、熱溶着シートや(弾性)接着剤などの接合部材を用いて接着・接合させることができる。
これら図7(a)~(c)の接合方法及び接着剤等の接合部材による接合は、任意に組み合わせて用いることができる。
次に、本実施形態に係るRFタグ1において、トップカバー20と取付対象物100とを絶縁しつつ固定する構造について、図8を参照しつつ説明する。
トップカバー20と取付対象物100の絶縁は、図8(a)(及び図4(d))に示すように、筐体50に設けた取付穴50a,50b及びトップカバー20に設けた取付穴20a,20bを介して、螺子等の固定手段(図4(d)に示す螺子101参照)を取付対象物100に螺合・固定させることで、螺子が樹脂製の取付穴50a,50bによってトップカバー20と絶縁されるようになる。
また、このような構成とすることで、螺子101のボルト頭がRFタグ1の厚みよりも低くなり、引っかかり等がなくなるというメリットがある。
上述のとおり、本実施形態のRFタグ1は、ダイポールアンテナを備えないインレイ10を用いることで、トップカバー20の長さを1/2波長や1/4波長の長さに形成することができるようになる。このため、樹脂製の筐体50の長さを、トップカバー20よりも大きく(長く)成形することにより、筐体50のみに、螺子101の取付穴50a,50bを設けることができる。
なお、トップカバー20と取付対象物100との絶縁は、上記の方法・構造のみに限定されるものではない。例えば、RFタグ1を固定するための固定手段として非金属製の螺子等を用いたり、螺子等の固定手段を用いずに、筐体50(底面側筐体52)を取付対象物100に接着材などを用いて固定することでも、トップカバー20と取付対象物100を絶縁状態とすることができる。
また、RFタグ1が所望の通信特性が得られている場合には、トップカバー20と取付対象物100との絶縁構造を省略することもできる。
次に、本実施形態に係るRFタグ1の構成パターンについて、図9及び図10を参照しつつ説明する。
RFタグ1の基本構成は、図9に示すように、「インレイ(インレイ10)・補助アンテナ(トップカバー20)・誘電体(筐体50)」の3つの要素からなり、これらが金属対象物(取付対象物100)に搭載・取付されるようになっている。
これらRFタグ1を構成する3つの要素は、図9(a)に示すように、「金属対象物→誘電体→インレイ→補助アンテナ」の順に積層されてもよく、また、図9(c)に示すように、「金属対象物→誘電体→補助アンテナ→インレイ」の順に積層されてもよい。
また、図9(d)に示すように、「インレイ・補助アンテナ・誘電体」の3つの要素に対して、更に「金属体」をRFタグ1の構成要素と含ませることができ、このような4つの要素からなるRFタグ1を、「金属体」を介して金属体や絶縁物などの取付対象物に取り付けることもできる。
まず、図10(a)に示すよう構造では、インレイ10のIC11は、補助アンテナ(トップカバー20)が重ならないように切り欠き部21に重ねて配置されており、上面側及び底面側は、それぞれ筐体50(誘電体)によって保護されている。
この図10(a)に示す構造を基本として、図10(b)及び(c)に示すように、インレイ10のICチップ11の逃げ空間となる、凹部(図10(b))や、孔部(図10(c))を設けることができる。
このようにすると、筐体50に外部から外力・衝撃等が加わっても、凹部や孔部によってインレイ10のICチップ11に直接的に外力が加わることを回避することでき、破損等し易いICチップ11を有効に保護することができるようになる。
次に、以上のような構成からなる本実施形態に係るRFタグ1の通信特性について、図11~図13を参照しつつ説明する。
図11~図13は、本発明の一実施形態に係るRFタグの通信特性を示す、通信距離と周波数の関係を示す折れ線グラフである。
なお、RFタグ1の通信特性の評価は、公知の評価方法・評価システムを用いることができ、以下に示す本実施形態の評価は、評価システムとして、Voyantic社のTagformanceシステムを用いて実施した。
また、評価は、通信距離を直接測定するのではなく、一定距離においたときに、電波強度から換算した値によって行った。
また、測定は、RFタグ1を、鉄板(150*100*t2mm)に貼付して評価を行った。
これらのグラフに示すように、本実施形態のRFタグ1の場合には、高周波数帯において、特に860~940MHz帯において、長い通信距離が得られていることが分かる。
特に、900~920MHz帯においては、12m以上の通信距離が得られており、920MHz帯において、通信距離のピーク(約16m)が得られている。
これらのグラフに示すように、トップカバー20の全長を短くするほど、通信距離のピークが高周波数帯にシフトすることが分かる。
これらのグラフに示すように、トップカバー20の全長を変えずに、切り欠き部21の大きさを変更・調整すると、切り欠き部21を小さくすることで通信距離のピークをより高周波数帯側にシフトさせることができることが分かる。但し、切り欠き部21の大きさを変更しても、通信距離のピーク値にはほぼ変動がないことも分かる。
以上の図12(a)及び(b)の結果から、通信距離の調整を行う場合には、トップカバー20の全長により大まかな調整を行い、その後、切り欠き部21の寸法を変更・調整することにより微調整が行えることが分かる。
これらのグラフに示すように、トップカバー20の全長を変更することで、通信距離のピークを調整することができるとともに、特に、第二の補助アンテナ22を用いることで、通信距離を高周波数帯側にシフトさせることができることが分かる。
以上説明した第一実施形態に係るRFタグ1では、インレイ10のアンテナ(補助アンテナ)として機能する導体として、金属板からなるトップカバー20を、筐体50の表面(上面)に積層・配置する構成となっていたが、インレイ10のアンテナとして機能する導体を、筐体50の内部に収納するように構成することもできる。
以下、そのような構成を採用したRFタグ1の第二実施形態について、図14及び図15を参照して説明する。
同図に示すように、第二実施形態に係るRFタグ1は、第一実施形態に係るRFタグ1とほぼ同様の構成となっており、ダイポールアンテナを備えないインレイ10を筐体50内に収納して保護するとともに、切り欠きを備えた導体をアンテナ(補助アンテナ)として無線通信を行うRFタグを構成している。
第一実施形態と異なる点は、インレイ10のアンテナとして機能する導体を、筐体50の表面に配置されるトップカバー20に代えて、筐体50の内部に配置される補助アンテナ30としたことである。
以下、第一実施形態と同様の部分について、同一の符号を付して説明を援用しつつ、第二実施形態の構成について説明する。
なお、インレイ10については、図1~13に示したRFタグ1のインレイ10と同様である。
補助アンテナ30は、第一実施形態に係るRFタグ1のトップカバー20に相当するものである。
この補助アンテナ30は、金属プレートからなるトップカバー20に対して、薄膜のアンテナ導体で構成される点が異なっていることを除けば、形状・大きさなどは、トップカバー20と同様に構成することができ、トップカバー20の切り欠き部21と同様の切り欠き部31を備えた平面視L字形状の形成されるようになっている。そして、切り欠き部31に、ダイポールアンテナを備えないインレイ10(ICチップ11・ループ回路アンテナ12・モノポールアンテナ12a)の少なくとも一部が重ねて配置されるようになっている。インレイ10が補助アンテナ30・切り欠き部31に重ねて配置される位置関係については、上述した第一実施形態の場合と同様である。
そして、本実施形態では、このような薄膜導体からなる補助アンテナ30は、図15に示すように、補助アンテナ30の長手方向の長さが長い場合には、当該補助アンテナ30が積層される基材(誘電率調整プレート40)の裏面側に折り曲げることができる。
すなわち、インレイ10は、封止フィルム13によって全体が樹脂封止されており、導電性部材からなる補助アンテナ30とは物理的には絶縁状態となっている。そして、このような補助アンテナ30がインレイ10に直接積層されることで、補助アンテナ30とインレイ10のICチップ11は、封止フィルム13を介して対向配置されるようになり、所謂コンデンサカップリングによって電気的接続がなされるようになる。
ここで、補助アンテナ30は、例えば導電性を有する金属薄膜をトムソン刃による抜き切断加工等により所定の形状・大きさ(長さ,面積)に成形することで形成することができる。また、エッチングやパターン印刷などによって補助アンテナ30を形成することもできる。
そして、補助アンテナ30の誘電率調整プレート40よりも長い長手方向の端部の少なくとも一方が、図15に示すように、当該補助アンテナ30が積層されるインレイ10の裏面側に折り曲げられるようになっている。
一方、補助アンテナ30の長さに合わせて、RFタグ1の全体の長さを、例えば通信電波の1/2波長とすると、寸法が長くなり過ぎる(大き過ぎる)ことになり、小型化が要請されるRFタグの性質上好ましくない。
また、補助アンテナ30の基材となる誘電率調整プレート40は、補助アンテナ30の長辺の長さ、すなわち、電波周波数の波長の略1/2の長さよりも短くなるように形成する。
その上で、補助アンテナ30の誘電率調整プレート40よりも長くなる長手方向の端部の少なくとも一方、すなわち、長手方向のいずれか一端又は両端を、図15に示すように、補助アンテナ30が積層される誘電率調整プレート40の裏面側に折り曲げる(折り返す)ようにしてある。
このようにすることで、補助アンテナ30を、インレイ10の通信電波に対応させてほぼ1/2波長の長さに形成することで、良好な通信特性が得られるようにしつつ、補助アンテナ30の端部を折り曲げることで、RFタグ1の長さを、1/2波長の長さより短くすることができ、RFタグ1の小型化の要請にも対応することができるようになる。
そこで、補助アンテナ30は、特に図示しないが、長手方向に伸びる矩形・面状の周縁外形を有していれば、面状部分を例えばメッシュ(網目)状,格子状等に形成することができる。このように補助アンテナ30をメッシュ状等に形成することで、表皮効果によりアンテナとしての機能は損なわれず、かつ、補助アンテナ30の全体の導体部分の面積を少なくすることができ、補助アンテナ30を形成する導電性インク等の導体材料を節減でき、RFタグ1の更なる低コスト化を図ることができるようになる。
以上説明した補助アンテナ30のその他の構成・機能については、上述した第一実施形態に係るトップカバー20によって構成される補助アンテナの場合と同様である。
筐体50は、第一実施形態に係る筐体50とほぼ同様に、内部に上述したインレイ10を収納することで、当該インレイ10を保護するための保護手段であり、筐体内部にインレイ10を搭載した誘電率調整プレート40が着脱可能に収納されるようになっている。
この筐体50によってインレイ10が保護されることにより、RFタグとしての耐候性や耐熱性・防水性等が高められるようになる。
なお、本実施形態に係るRFタグ1では、外部から衝撃や圧力,水分などの物理的な力や外部環境の変化等のない、例えば屋内等で使用されるRFタグとして使用する場合には、筐体50を省略して、インレイ10,補助アンテナ30,基材(誘電率調整プレート40)のみによって構成することも可能である。この場合、基材としては、例えば発泡ポリエチレン,発泡ポリプロピレン,発泡ウレタン,発泡アクリルなどの発泡樹脂を用いることができる。これらの基材は柔軟性を有しており、屈曲面への貼付も可能である。
なお、筐体50の外形は、内部に補助アンテナ30が積層されたインレイ10が搭載された誘電率調整プレート40が収納できる限り、外形の形状・構造等は変更可能であり、例えばRFタグ1を使用する物品の構造や大きさ、タグの使用状態等に応じて筐体50の外形は適宜設計・変更することができる。
そして、この誘電率調整プレート40の長手方向の少なくとも一端から、補助アンテナ30の長手方向の端部30aが突出するように配置されることで、図15に示すように、突出した補助アンテナ30の端部30aが、そのまま誘電率調整プレート40の裏面側に折り曲げるようになる。
この誘電率調整プレート40が上面側筐体51の凹部に係合して移動不能に保持され、インレイ10及び補助アンテナ30が筐体内に収納・保持されることになる。
本実施形態では、上面側筐体51の凹部は、補助アンテナ30が積層され端部が折り曲げられた状態のインレイ10を搭載した誘電率調整プレート40の全体が収まる深さを有し、さらに、誘電率調整プレート40に重ねられた状態で底面側筐体52が嵌合してピッタリと収まる深さを有している。
上面側筐体51の開口に嵌合・閉止した底面側筐体52は、例えば超音波溶着や熱融着、接着剤等によって、上面側筐体51と接合され、筐体50は外部から密閉・封止される。
そして、上面側筐体51が底面側筐体52によって密閉された状態で、筐体50はRFタグ1を使用する物品・対象物に対して、例えば接着剤やネジ止め等で取り付けられたり、物品・対象物の所定箇所に設置・嵌合されたりして使用される。
また、誘電率調整プレート40を形成する材料も、本実施形態及び第一実施形態に係る筐体50と同様に選択することできる。
本実施形態でも、第一実施形態の場合と同様に、耐候性や耐熱性,耐水性等に優れ、インレイ10の通信特性に合わせ後述する誘電率調整プレート40の形成,加工等も容易であることから、特に耐候AES樹脂又は耐候ポリカーボネート樹脂で、誘電率調整プレート40を含む筐体50を形成することが好ましい。
例えば、誘電率調整プレート40は、所定の厚みで形成されるとともに、インレイ10が搭載される搭載面の所定箇所に、誘電率調整プレート40を貫通する一又は二以上の貫通部(貫通穴)を設けることができる。
これによって、使用するインレイ10の種類や通信特性,筐体50や誘電率調整プレート40の材質,RFタグ1を使用する物品・使用環境・使用周波数帯域などの諸条件を考慮して、誘電率調整プレート40に適宜貫通部を形成することで、誘電率調整プレート40のみを選択・交換することで、RFタグ1を異なる物品に使用したり、異なる通信周波数に対応させたりすることが可能となる。
具体的には、例えば筐体50(上面側筐体51・底面側筐体52)と誘電率調整プレート40の双方を耐候AES樹脂で形成する場合と、筐体50(上面側筐体51・底面側筐体52)と誘電率調整プレート40の双方を耐候ポリカーボネート樹脂で形成する場合とでは、誘電率調整プレート40に形成する貫通部の孔の位置や形状,大きさ,数等は異なったものとなる。
また、図14に示すように、誘電率調整プレート40は、上述したような貫通部を形成せず、孔等のない完全な板状に形成することもできる。このような誘電率調整プレート40によれば、インレイ10に対して片面側の全面に所定の誘電率を有する誘電率調整層(誘電率調整プレート40)が配置されることになり、これによってインレイ10が良好な通信特性を得られる設計となっている。
従って、貫通部の形成を含む誘電率調整プレート40の設計・調整のし易さや通信特性の安定性等の観点からは、誘電率調整プレート40は、上面側筐体51及び底面側筐体52と同一の樹脂材料により形成することが好ましい。勿論、RFタグ1としての最適な通信特性が得られる場合には、誘電率調整プレート40と、上面側筐体51及び底面側筐体52とを、別々の樹脂材料で形成することも可能である。
以上のような本実施形態に係るRFタグ1の構成パターンについて、図16を参照しつつ説明する。
本実施形態に係るRFタグ1の基本構成についても、上述した第一実施形態の場合と同様(図9参照)、「インレイ(インレイ10)・補助アンテナ(補助アンテナ30)・誘電体(誘電率調整プレート40・筐体50)」の3つの要素からなり、これらが金属対象物(取付対象物100)に対して搭載・取付られる。
そして、これらのRFタグ1を構成する3つの要素は、例えば図16(a)及び(b)に示すように、「金属対象物→誘電体→補助アンテナ(折り返し部分)→誘電体→補助アンテナ(本体部分)→インレイ」の順に積層することができる。
この場合、補助アンテナ30の折り返し部分は、図16(a)に示すように、「片側のみ」が誘電体の裏面側に折り返される場合もあり、また、図16(b)に示すように、「両側」双方が折り返される場合もある。
これによって、筐体50に外部から衝撃や圧力などの物理的な力が加わっても、内部のインレイ10は、筐体50やトップカバー20によって保護され、外力や衝撃によってインレイ10が故障・破損等することがなく、RFタグとしての耐久性や耐衝撃性,耐圧性等を向上させることができる。
このため、筐体50やRFタグ1全体の小型化や設計の自由度が確保され、RFタグ1を使用する対象物や使用目的などに応じて、筐体50の大きさや形状などを任意に設計・変更等することができるようになり、汎用性・拡張性も優れたRFタグとして好適に用いることができるようになる。
これによって、インレイ10がダイポールアンテナを備えないことによっても、トップカバー20・補助アンテナ30を介して良好な無線通信を確立することができ、RFタグ1の通信特性を良好な状態に維持・向上させることができる。
したがって、例えば貨物用のパレットやコンテナなどのように、特に外部から物理的な力や衝撃が加わることの多い対象物等に装着されるRFタグ1として好適に使用することができる。
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るRFタグを使用する物品として、貨物用のパレットやコンテナを例示しているが、本発明のRFタグを使用できる物品,対象物としては、貨物用のパレットやコンテナに限定されるものではない。
すなわち、RFタグが使用され、リーダ・ライタを介して所定の情報・データが読み書きされる物品,対象物であれば、どのような物品・対象物であっても本発明に係るRFタグを適用することができる。
10 インレイ
11 ICチップ
12 ループ回路アンテナ
13 封止フィルム
20 トップカバー(補助アンテナ)
21 切り欠き部
30 補助アンテナ
31 切り欠き部
40 誘電率調整プレート
50 筐体
51 上面側筐体
52 底面側筐体
100 取付対象物
101 螺子
Claims (6)
- ICチップと、ICチップを搭載するループ回路アンテナとを備えたインレイと、
少なくとも一辺に切り欠き部を有する補助アンテナと、
前記インレイを内部に収納する筐体と、
を備え、
前記インレイは、
前記ループ回路アンテナ以外の他のアンテナを備えることなく、前記ICチップ及び前記ループ回路アンテナのみを備えるとともに、前記ループ回路アンテナの少なくとも一部が、前記補助アンテナに重なるように前記切り欠き部に重ねて配置され、
前記インレイと前記補助アンテナとが電磁的に結合される
ことを特徴とするRFタグ。 - 前記補助アンテナの長辺の長さが、前記インレイの通信周波数の半波長以下である
ことを特徴とする請求項1記載のRFタグ。 - 前記補助アンテナが、前記切り欠き部を複数備え、
前記インレイは、前記複数の切り欠き部の少なくとも一つに重ねて配置される
ことを特徴とする請求項1又は2記載のRFタグ。 - 前記補助アンテナと前記インレイが、それぞれ異なる部材に搭載され、これら異なる部材同士が積層配置される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載のRFタグ。 - 前記補助アンテナが、前記筐体の少なくとも一部を構成する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載のRFタグ。 - 前記補助アンテナとは異なる、
前記インレイに重ねて配置される、少なくとも一つの第二の補助アンテナを備え、
前記第二の補助アンテナが、前記インレイの前記ループ回路アンテナの一部に重ねて配置される
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載のRFタグ。
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