JP7189247B2 - 義歯床フレーム及び義歯床 - Google Patents
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Description
本発明は、歯科治療に用いられる義歯床フレーム及び義歯床に関する。
従来、インプラント支持を利用したパーシャルデンチャーやオーバーデンチャー(IOD:Implant Over Denture)が知られている(例えば、特許文献1参照)。これらはインプラント義歯と呼ばれる。
インプラント義歯による治療を行う場合、通常、ガイデッドサージェリーが行われる。ガイデッドサージェリーとは、撮像によって得られたレントゲンやCT(Computed Tomography)画像を基にコンピュータ上でインプラントの埋植位置等を設計し、それに合わせたサージカルガイドという樹脂製マウスピースを用いて行うインプラント手術である。このようにインプラント義歯による治療を行う場合、義歯とは別にサージカルガイドが必要となる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、義歯床とは別のサージカルガイドを必要とせずにガイデッドサージェリーを可能とする義歯床フレーム及び義歯床を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る義歯床フレームは、義歯床を構成する義歯床フレームであって、患者の口腔に沿う形状の金属製の板状部と、患者の口腔のインプラント窩が形成される部分に対応する箇所に板状部と一体に形成された、当該インプラント窩側に向かって開口を有すると共に義歯床を当該患者の口腔内に装着するためのアタッチメントを保持するハウジングと、を備え、ハウジングは、インプラント窩の形成の際のガイドになる貫通孔を有する。
本発明に係る義歯床フレームに形成されたハウジングの貫通孔は、インプラント窩の形成の際のガイドとして用いることができる。従って、本発明に係る義歯床フレームによれば、義歯床とは別のサージカルガイドを必要とせずにガイデッドサージェリーを可能とする。
板状部は、少なくともハウジング以外の箇所で患者の口腔に接触し、ハウジングの箇所では当該患者の口腔に接触せずに当該患者の口腔に装着できるように形成されていることとしてもよい。この構成によれば、義歯床フレームのインプラント窩が形成される部分に対応する箇所をレジンで覆う等してより適切な義歯床を作成することができる。
また、本発明に係る義歯床は、本発明に係る義歯床フレームを含んで構成される。
本発明によれば、義歯床とは別のサージカルガイドを必要とせずにガイデッドサージェリーを可能とする。
以下、図面と共に本発明に係る義歯床フレーム及び義歯床の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
本実施形態に係る義歯床フレーム10及び義歯床1は、歯科治療であるインプラント治療、より具体的には、トップダウントリートメントによるインプラント治療で用いられる。本実施形態に係る義歯床1は、患者の顎骨及び歯肉における欠損歯に相当する部分に埋植(埋設)されるインプラントに装着されて用いられる。義歯床1は、オーバーデンチャー又はパーシャルデンチャーである。本実施形態に係る義歯床フレーム10は、本実施形態に係る義歯床1の金属製のフレームである。
図1は、本実施形態に係る義歯床フレーム10の斜視図である。図2は、本実施形態に係る義歯床1の斜視図である。図1及び図2では、患者の口腔100に装着されている義歯床フレーム10及び義歯床1を示す。図3は、本実施形態に係る義歯床フレーム10の断面図である。図4は、本実施形態に係る義歯床1の断面図である。図3及び図4では、患者の顎堤110に装着される部分の義歯床フレーム10及び義歯床1を示す。
義歯床フレーム10は、板状部11とハウジング12とを備える。板状部11は、患者の口腔100に沿う形状であって、患者の口腔100に装着できる金属製の薄い板状の部材である。板状部11は、図2に示す、レジン(樹脂)によって形成される義歯床1の歯20及び歯肉21の部分の土台となる。
板状部11は、少なくとも、患者の口腔100における、義歯床1の歯20の部分である人工歯を設ける部分を覆うように形成される。板状部11の当該部分11aは、義歯床1の歯20及び歯肉21の部分となるレジンがよく絡むようにメッシュ状であったり、穴を有したりしてもよい。また、板状部11は、義歯床1を適切に口腔100に装着できるように口蓋(義歯床1が上顎に装着されるものである場合)又は口腔底(義歯床1が下顎に装着されるものである場合)に沿う部分11bを有していてもよい。また、板状部11は、患者自身の歯が残存している場合には、義歯床1を適切に口腔100に装着できるように患者自身の歯に装着される部分11cを有していてもよい。
ハウジング12は、義歯床1を患者の口腔100内に装着するためのアタッチメント(留め具)を保持する部材である。ハウジング12は、患者の口腔100のインプラント窩が形成される部分に対応する箇所に板状部11と一体に形成されており、当該インプラント窩側に向かって開口を有する。ハウジング12は、インプラント窩の形成の際のガイドになる貫通孔12aを有する。
アタッチメントは、患者の口腔100内に義歯床1を装着するためものである。アタッチメントは、患者の口腔100内の支台(インプラント)側にも設けられている。義歯床1側のアタッチメントと、支台側のアタッチメントとが連結することで義歯床1が患者の口腔100内に装着される。アタッチメントは、例えば、嵌め合わせることで連結を行うロケータアタッチメント若しくはボールアタッチメント、又は磁力で連結を行うマグネットアタッチメント(マグネットキーパー)である。但し、アタッチメントとしては、上記以外のものでもよい。
例えば、ハウジング12は、アタッチメントを収容する(嵌め込む)ことができる、一面に開口を有する箱状又は筒状の部材である。ハウジング12に保持される、即ち、義歯床1へ固定されるアタッチメントは、例えば、柱状の部材であり、一方の端面で支台側のアタッチメントと連結する。アタッチメントが円柱状であれば、図1及び図3に示すように、ハウジング12の形状は円筒状とし、ハウジング12の内側の空洞部分の形状は円柱状とする。ハウジング12の内側(空洞部分、窪み)の形状は、アタッチメントを嵌め込むことができるようにアタッチメント30の形状にあわせたものである。例えば、ハウジング12の内側の径の長さは、アタッチメントを保持できるようにアタッチメントの径の長さと同程度とする。アタッチメントは、支台側のアタッチメントと連結する側の面が外側に向くようにハウジング12に嵌め込まれる。なお、アタッチメントがハウジング12に嵌め込まれるのは、ハウジング12が後述するようにガイドとして用いられた後である。
ハウジング12の内側は、アタッチメントの軸方向の全体を嵌め込むことができる深さを有していてもよい。あるいは、ハウジング12の内側は、アタッチメントを固定的に保持できる限りにおいてアタッチメントの軸方向の一部のみを嵌め込むことができる深さを有していてもよい。なお、ハウジング12は、必ずしも上記の形状に限られず、上記以外でアタッチメントを固定的に保持できる形状、構成となっていてもよい。
ハウジング12は、インプラント窩の中心軸が内部を通るように、かつインプラント窩とは逆側に突き出るように板状部11と一体に形成される。図1及び図3に示すように、通常、ハウジング12は、板状部11の人工歯を設ける部分を覆う部分11aに形成される。なお、図面に示す例では、義歯床フレーム10にハウジング12は1つしか設けられていないが、患者に形成されるインプラント窩の数、即ち、患者に埋植されるインプラントの数と同じ数のハウジング12が設けられる。
患者に形成されるインプラント窩の位置、即ち、インプラントの埋植位置は、患者のレントゲンやCT画像を基に決められる。ハウジング12の位置は、決定されたインプラント窩の位置に応じて上記のように決められる。図1及び図3に示すように、ハウジング12の底面には、インプラント窩の形成の際のガイドになる貫通孔12aが設けられる。貫通孔12aは、貫通孔12aの中心軸が患者に形成されるインプラント窩の中心軸と一致するように形成される。貫通孔12aには、インプラント窩を形成する際に用いられるドリルが挿し込まれる。貫通孔12aの径のサイズは、ドリルの径に合ったものとし、ドリルが挿し込まれた際にドリルが軸方向以外に動かないものとする。また、貫通孔12aが形成されるハウジング12の底面の厚さは、ドリルが適切にガイドできるような厚さとする。
また、二回法でのインプラント治療が行われる場合には、ハウジング12の貫通孔12aは、インプラント窩にフィクスチャが埋植された後、カップリングバー等の穴開け用の器具によってフィクスチャが埋植された箇所の歯肉に穴を開ける際に、穴開け用の器具のガイドとして用いられてもよい。このようにハウジング12に設けられる貫通孔12aは、サージカルガイドの役目を果たす。
板状部11は、少なくともハウジング12以外の箇所で患者の口腔100に接触し、ハウジング12の箇所では当該患者の口腔100に接触せずに当該患者の口腔100に装着できるように形成されていてもよい。具体的には、図3に示すように、義歯床フレーム10が患者に装着された際に、ハウジング12及び板状部11のハウジングの近傍の部分には、患者との間にわずかな隙間ができるように形成されてもよい。また、板状部11のそれ以外の部分は、患者の口腔100内に密着するように形成されてもよい。隙間ができる部分は、患者の顎堤110の少なくとも隆起した部分周辺である。図4に示すようにこの部分には義歯床の歯肉21の部分となるレジンが付けられる。義歯床1を患者の顎堤110の部分に密着させて装着させるために、この部分は金属ではなくレジンによって構成されることが望ましいからである。隙間ができず、患者の口腔100に密着する部分は、例えば、口蓋又は口腔底に沿う部分11b及び患者自身の歯に装着される部分11cである。
義歯床フレーム10は、例えば、コバルトクロム、チタン又はチタン合金によって構成されている。あるいは、義歯床フレーム10は、義歯床フレームに用いられ得る上記以外の金属によって構成されていてもよい。義歯床フレーム10は、例えば、患者毎に、CAD(Computer Aided Design)によって設計され、CAM(Computer Aided Manufacturing)によって作成される。具体的には、義歯床フレーム10は、ミリングマシン又は3Dプリンタによって作成される。
義歯床1は、義歯床フレーム10を含んで構成される。義歯床1を作成するため、図4に示すように、義歯床フレーム10のハウジング12にアタッチメント30が取り付けられる。アタッチメント30が取り付けられた義歯床フレーム10には、歯20及び歯肉21の部分となるレジンが付けられて義歯床1となる。歯肉21の部分となるレジンは、歯20の部分の根本及び患者の顎堤110に接触する部分等に付けられる。アタッチメント30の取り付け及びレジンの付着は、義歯床フレーム10による上述したガイドが行われた後に行われる。
義歯床1のレジンの部分の設計及び作成は、義歯床フレーム10の設計及び生成と同様にCAD及びCAMによって行われればよい。具体的には、義歯床1のレジンの部分の設計及び作成は、従来と同様に行われればよい。義歯床1に用いられるレジンは、従来と同様のものでよい。
義歯床1の歯20の部分は、図4に示すようにハウジング12の上部となってもよい。また、貫通孔12aの外側からレジンを入れることでアタッチメント30をハウジング12の開口方向に押して移動させることができる。これによって、アタッチメント30の軸方向の位置調整を行ってもよい。以上が、本実施形態に係る義歯床フレーム10及び義歯床1である。
引き続いて、図5を用いて、本実施形態に係る義歯床フレーム10を用いたインプラント治療を説明する。以下では、二回法でのインプラント治療の例を示すが、二回法以外でのインプラント治療でも本実施形態に係る義歯床フレーム10を用いることができる。
まず、患者のレントゲンやCT画像を基に、患者に形成されるインプラント窩の位置、即ち、インプラントの埋植位置が決められる。続いて、インプラント窩の位置に基づいて、義歯床フレーム10及び義歯床1の設計が行われる。この設計は、例えば、CADによって行われる。続いて、設計された義歯床フレーム10が作成される。この作成は、例えば、CAMによって行われる。作成した義歯床フレーム10が患者の口腔100に装着される。続いて、図5(a)に示すように義歯床フレーム10に設けられたハウジング12の貫通孔12aにインプラント窩を形成するためのドリル300が挿し込まれる。貫通孔12aをガイドとして、ドリル300によって患者の歯肉及び顎骨にインプラント窩が形成される。図5(b)に示すように、形成されたインプラント窩にフィクスチャ200が埋植される。続いて、図5(c)に示すように、歯肉が閉じられ、フィクスチャ200が骨結合するのが待たれる。
フィクスチャ200の骨結合後、フィクスチャ200が埋植された位置の歯肉に穴が開けられる。歯肉の穴開けは、例えば、図5(d)に示すようなカップリングバー等の穴開け用の器具400によって行われる。この際、図5(d)に示すように義歯床フレーム10が患者の口腔100に再度装着され、ハウジング12の貫通孔12aが、器具400による穴開けのガイドとされてもよい。なお、器具400の先端の径が貫通孔12aの径よりも大きい場合には、この際、取っ手を外した状態の器具400がハウジング12の内側から図5(d)に示すように通されて、その状態で義歯床フレーム10が患者の口腔100に装着されてもよい。また、器具400が貫通孔12aに通された状態で、義歯床フレーム10が患者の口腔100に再度装着されて、器具400によって穴を開ける部分に印が付けられてもよい。この場合、患者の口腔100から義歯床フレーム10が外される。そして、穴開けは、義歯床フレーム10から外された器具400によって行われてもよい。続いて、穴の下にあるフィクスチャ200に、支台側のアタッチメントが設けられたアバットメント210が取り付けられる。これによって、支台側は、図4に示すような状態となる。
一方で義歯床フレーム10にはアタッチメント30が取り付けられる。また、上記の設計に基づいて義歯床フレーム10には歯20及び歯肉21に相当する部分にレジンが付けられて、図2及び図4に示す義歯床1が作成される。義歯床1は、アタッチメント30が支台側のアタッチメントと連結することで、患者の口腔100内に装着されて利用される。以上が、本実施形態に係る義歯床フレーム10を用いたインプラント治療である。
本実施形態に係る義歯床フレーム10に形成されたハウジング12の貫通孔12aは、インプラント窩の形成の際等のガイドとして用いることができる。従って、本実施形態によれば、義歯床1とは別のサージカルガイドを必要とせずにガイデッドサージェリーを可能とする。従って、サージカルガイドを別に作成するコストをかけずにガイデッドサージェリーを実施することができ、容易かつ確実にインプラント治療を行うことができる。
また、上述した実施形態のように、義歯床フレーム10の板状部11は、少なくともハウジング12以外の箇所で患者の口腔100に接触し、ハウジング12の箇所では当該患者の口腔100に接触せずに当該患者の口腔100に装着できるように形成されているようにしてもよい。この構成によれば、義歯床フレーム10のインプラント窩が形成される部分に対応する箇所をレジンで覆う等してより適切な義歯床1を作成することができる。
また、本実施形態に係る義歯床1は、本実施形態に係る義歯床フレーム10を含んで構成されてもよい。上述したように義歯床1の歯20の部分は、図4に示すようにハウジング12の上部となってもよい。即ち、ハウジング12の位置、即ち、インプラント窩の位置を、義歯床1の歯20の部分に対応する位置にすることとしてもよい。この構成によれば、噛む力をインプラントだけなく、金属製のハウジング12でも支えることとなる。これによって、義歯床1の摩耗及び欠け等の破損が生じることを低減することができる。即ち、丈夫な義歯床1を作成することができる。その結果、インプラントの本数を増やすことなく、患者の身体的及び経済的負担が少ないインプラント治療を行うことができる。
1…義歯床、10…義歯床フレーム、11…板状部、12…ハウジング、12a…貫通孔、30…アタッチメント。
Claims (3)
- 義歯床を構成する義歯床フレームであって、
患者の口腔に沿う形状の金属製の板状部と、
前記患者の口腔のインプラント窩が形成される部分に対応する箇所に前記板状部と一体に形成された、当該インプラント窩側に向かって開口を有すると共に前記義歯床を当該患者の口腔内に装着するためのアタッチメントを保持するハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、インプラント窩の形成の際のガイドになる貫通孔を有する義歯床フレーム。 - 前記板状部は、少なくとも前記ハウジング以外の箇所で前記患者の口腔に接触し、ハウジングの箇所では当該患者の口腔に接触せずに当該患者の口腔に装着できるように形成されている請求項1に記載の義歯床フレーム。
- 請求項1又は2に記載の義歯床フレームを含んで構成される義歯床。
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