以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
実施形態における電動機駆動制御システムは、電動機を、制御しつつ、駆動するシステムであり、インバータ回路の出力で駆動される電動機を制御する電動機駆動制御装置を備える。本実施形態では、電動機駆動制御システムSは、モデル予測制御を用いたベクトル制御によって、電動機を、制御しつつ、駆動する。以下、このような電動機駆動システムについて、第1および第2実施形態で、より具体的に説明する。
(第1実施形態)
図1は、実施形態における電動機駆動制御システムの構成を示すブロック図である。図1には、第1および第2実施形態における電動機駆動制御システムの各構成が図示されており、第1および第2実施形態における電動機駆動システムSa、Sbにおいて共通な各構成は、添え字無しで図示され、第1実施形態における電動機駆動システムSaの構成は、添え字「a」を付加することによって図示され、第2実施形態における電動機駆動システムSbの構成は、添え字「b」を付加することによって図示されている。図2は、図1に示す第1実施形態の前記電動機駆動制御システムにおけるMPC制御部の構成を示すブロック図である。図3は、前記電動機駆動制御システムにおけるインバータ回路の構成を示す回路図である。図4は、前記インバータ回路で出力可能な電圧を示すベクトル図である。図5は、前記インバータ回路で出力可能な時系列な電圧パターンの一例を説明するための図である。
第1実施形態における電動機駆動制御システムSaは、例えば、図1に示すように、電動機Mと、インバータ回路IVと、PWM変調器PWと、2相3相変換部CV1と、モデル予測制御部MCaと、3相2相変換部CV2と、回転速度処理部RSCと、電流測定部CSと、回転角度測定部VSとを備える。
電動機Mは、インバータ回路IVに接続され、インバータ回路IVの交流出力で駆動される電動機である。例えば、電動機Mは、インバータ回路IVから出力されるU相、V相およびW相の三相交流電力で駆動される同期電動機、より具体的には、本実施形態では永久磁石式同期電動機(permanent magnet synchronous motor、PMSM)である。なお、電動機Mは、これに限定されるものではなく、例えば、例えば、誘導電動機(induction motor、IM)やSRモータ(Switched Reluctance motor、SRM)等の他の種類であっても良い。
PWM変調器PWは、変更可能なパスル幅で矩形波を出力する回路であり、インバータ回路IVは、直流電力を交流電力に変換する回路であり、本実施形態では、PWM変調器PWおよびインバータ回路IVにより、三相交流電力で電動機を駆動する、いわゆる3相PWMインバータモータドライバが構成される。これらPWM変調器PWおよびインバータ回路IVは、2相3相変換部CV1を介してモデル予測制御部MCaに接続され、モデル予測制御部MCaの制御に従って、直流電源Vdcからの直流電力を、所定の周波数の交流電力へ変換する。より具体的には、PWM変調器PWは、モデル予測制御部MCaの制御に従った周波数およびパルス幅の矩形波を後述の制御信号(IV制御信号)としてインバータ回路IVへ出力する回路である。インバータ回路IVは、PWM変調器PWに接続され、PWM変調器PWからのIV制御信号に従って、直流電源Vdcの直流電力を、所定の周波数の交流電力へ変換する回路である。インバータ回路IVは、例えば、図3に示すように、直列に接続された2個のスイッチング素子Trを1組として、互いに並列に接続された3組Tr1、Tr4;Tr2、Tr5;Tr3、Tr6を備える。より具体的には、インバータ回路IVは、6個の第1ないし第6スイッチングTr1~Tr6を備える。これら第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等の、オンオフするスイッチ機能を持つ電力用半導体素子である。第1ないし第3スイッチング素子Tr1~Tr3の各一方端子(例えば各コレクタ端子)は、それぞれ、直流電源Vdcの一方端子に接続される。第1スイッチング素子Tr1の他方端子(例えばエミッタ端子)は、第4スイッチング素子Tr4の一方端子(例えば各コレクタ端子)に接続される。第2スイッチング素子Tr2の他方端子(例えばエミッタ端子)は、第5スイッチング素子Tr5の一方端子(例えば各コレクタ端子)に接続される。第3スイッチング素子Tr3の他方端子(例えばエミッタ端子)は、第6スイッチング素子Tr6の一方端子(例えば各コレクタ端子)に接続される。これら第4ないし第6スイッチング素子Tr4~Tr6の各他方端子(例えば各エミッタ端子)は、それぞれ、直流電源Vdcの他方端子に接続される。これら第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6における、スイッチング素子TrをオンオフするためのIV制御信号が入力される各制御端子(例えばゲート端子)は、PWM変調器PWに接続される。これら第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6それぞれにおいて、その一方端子と他方端子との各間それぞれには、他方端子にアノード端子を接続した各ダイオードD1~D6が接続される。そして、第1スイッチング素子Tr1と第4スイッチング素子Tr4とを接続する第1接続点は、例えばU相の交流電流を出力し、電動機MのU相を接続する入力端子に接続される。第2スイッチング素子Tr2と第5スイッチング素子Tr5とを接続する第2接続点は、例えばV相の交流電流を出力し、電動機MのV相を接続する入力端子に接続される。第3スイッチング素子Tr3と第6スイッチング素子Tr6とを接続する第3接続点は、例えばW相の交流電流を出力し、電動機MのW相を接続する入力端子に接続される。このような構成では、インバータ回路IVは、いわゆる2レベル3相インバータ回路であり、各組の一方のスイッチング素子Tr1、Tr2、Tr3と他方のスイッチング素子Tr4、Tr5、Tr6とは、互いに逆のスイッチング態様(一方がオンの場合には他方がオフで、一方がオフの場合には他方がオンである態様)となるように、PWM変調器PWからのIV制御信号に従って制御され、直流電源Vdcの直流電力を変換してU相、V相およびW相の3相の交流電流を電動機Mへ出力する。
電流測定部CSは、3相2相変換部CV2に接続され、インバータ回路IVから電動機Mへ流れる電流、本実施形態では、U相電流、V相電流およびW相電流それぞれを測定し、その各測定結果を3相2相変換部CV2へ出力する装置である。電流測定部CSは、例えば交流電流計を備えて構成される。
回転角度測定部VSは、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2および回転速度処理部RSCそれぞれに接続され、電動機Mにおける磁極位置を角度で測定し、その測定結果(回転角度、電気角(=機械角/電動機Mの極対数))を2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2および回転速度処理部RSCそれぞれに出力する装置である。回転角度測定部VSは、例えば、ロータリエンコーダ(パルスジェネレータ)や、ホールIC等を備えて構成される。なお、センサレスの場合には、回転角度測定部VSは、電動機Mのモデルを用いて電流および電圧から電動機Mの回転角度を求めても良い。
2相3相変換部CV1は、モデル予測制御部MCaに接続され、回転角度測定部VSから入力された測定結果(回転角度)およびモデル予測制御部MCaで後述のように求められた平滑電圧パターンに基づく目標電圧vd
*、vq
*から、この目標電圧vd
*、vq
*に対応する目標のU相電流、V相電流およびW相電流をインバータ回路IVから出力するようにPWM変調器PWを制御するための制御信号(PWM制御信号)を求め、このPWM制御信号をPWM変調器PWへ出力するものである。
3相2相変換部CV2は、モデル予測制御部MCaに接続され、電流測定部CSから入力された測定結果(U相電流、V相電流およびW相電流)および回転角度測定部VSから入力された測定結果(回転角度)から、いわゆるクラーク(Clarke)変換およびパーク(Park)変換によって、励磁電流(d軸電流)idおよびトルク分電流(q軸電流)iqを求め、この求めたd軸電流idおよびq軸電流iqをモデル予測制御部MCへ出力するものである。
回転速度処理部RSCは、モデル予測制御部MCaに接続され、回転角度測定部VSから入力された測定結果(回転角度)から、電動機Mの回転速度ωmを求め、この求めた回転速度ωmをモデル予測制御部MCaへ出力するものである。例えば、回転角度測定部VSで測定された回転角度θeを時間微分して電動機Mの極対数pの逆数を乗じることによって回転速度ωmが求められる。
モデル予測制御部MCaは、モデル予測制御を用いたベクトル制御によって、電動機MをPWM変調器PWおよびインバータ回路IVを介して駆動制御するものである。モデル予測制御部MCaは、より具体的には、例えば、図2に示すように、制御部11と、電圧パターン生成部12と、平滑化部13aと、予測部14と、電圧パターン選択部15と、PWMインバータ制御部16とを備える。
制御部11は、電動機駆動制御システムSaの各部を当該各部の機能に応じて制御し、電動機駆動制御システムSa全体の制御を司るものである。
電圧パターン生成部12は、インバータ回路IVで出力可能な時系列な電圧パターンを、互いに異なるように複数、生成するものである。すなわち、電圧パターン生成部12は、インバータ回路IVで出力可能な時系列な電圧パターンを、互いに異なるように複数、生成する電圧パターン生成処理を実施する。インバータ回路IVは、本実施形態では、上述のように、2レベル3相インバータであるので、第1ないし第6スイッチング素子Tr1~Tr6のスイッチング態様に応じて、図4に示すように、23=8通りの電圧を出力できる。なお、電圧ベクトルV0は、第1ないし第3スイッチング素子Tr1~Tr3がオフであって第4ないし第6スイッチング素子Tr4~Tr6がオンであり、電動機Mに給電されない場合(V0=(0、0、0))である。電圧ベクトルV7は、第1ないし第3スイッチング素子Tr1~Tr3がオンであって第4ないし第6スイッチング素子Tr4~Tr6がオフであり、電動機Mに給電されない場合(V7=(0、0、0))である。時系列な電圧パターンは、予測する制御周期数である予測ホライズン、および、制御入力である電圧を可変とする制御周期数である制御ホライズンによって決定される。このため、モデル予測制御部MCaには、予め予測ホライズンの数値および制御ホライズンの数値が、モデル予測制御の仕様等に応じて適宜に予め設定され、電圧パターン生成部12は、インバータ回路IVで出力可能な電圧(上述では8通り)、予測ホライズンの数値および制御ホライズンの数値に応じて互いに異なる複数の時系列な電圧パターンを生成する。図5には、一例として、予測ホライズンNpが2であり、制御ホライズンNcが1である場合のインバータ回路IVで出力可能な全ての時系列な電圧パターンが樹形図で図示されている。図5では、現在のN番目の制御における電圧に対し、予測ホライズンNpが2であるので、次の(N+1)番目の制御における電圧と、さらに次の(N+2)番目の制御における電圧とが予測され、制御ホライズンNcが1であるので、インバータ回路IVで出力可能な全ての時系列な電圧パターンは、現在のN番目の制御における電圧から、次の(N+1)番目の制御では、8通りの電圧V0~V8に分岐し、さらに次の(N+2)番目の制御では、各電圧V0~V8から、それぞれ当該電圧V0~V8に維持された8組の時系列な電圧パターンである。なお、他の一例として、予測ホライズンが2であり、制御ホライズンが2である場合、現在のN番目の制御における電圧に対し、予測ホライズンが2であるので、次の(N+1)番目の制御における電圧と、さらに次の(N+2)番目の制御における電圧とが予測され、制御ホライズンが2であるので、インバータ回路IVで出力可能な全ての時系列な電圧パターンは、(N+1)番目の制御および(N+2)番目の制御それぞれで8通りの電圧V0~V8に分岐し、64組の時系列な電圧パターンである。
平滑化部13aは、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、当該時系列な電圧パターンを時系列な平滑電圧パターンとして平滑化(スムージング)するものである。すなわち、平滑化部13aは、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、当該時系列な電圧パターンを時系列な平滑電圧パターンとして平滑化する平滑化処理を実施する。より具体的には、本実施形態では、平滑化部13aは、時系列な電圧パターンをローパスフィルタでフィルタリングすることで前記時系列な電圧パターンを平滑化する。より詳しくは、モデル予測制御部MCaが、予め設定された所定の制御周期ごとに繰り返し電動機Mを制御する場合、k番目の制御におけるdq軸(回転座標系)での電圧ベクトルをvdq(k)とし、その平滑化した電圧ベクトルをvdqs(k)とし、パラメータとして、平滑化の度合いを調整する平滑度をKaとする場合に、平滑化部13aは、電圧パターン生成部12によって生成された時系列な電圧パターンを、次式1で平滑化する。式1では、k番目の制御における、平滑化した電圧ベクトルをvdqs(k)は、それまでの(k-1)番目の制御における、平滑化した電圧ベクトルvdqs(k-1)とk番目の制御における電圧ベクトルをvdq(k)とを、平滑度Kaで重み付けした重み付け平均することによって求められる。平滑度Kaは、0から1までの範囲内で予め適宜に設定される(0≦Ka≦1)。平滑度Kaが1に近づくほど、(k-1)番目の制御における、平滑化した電圧ベクトルvdqs(k-1)が重視され、k番目の制御における、平滑化した電圧ベクトルvdqs(k)中に占める、(k-1)番目の制御における、平滑化した電圧ベクトルvdqs(k-1)の割合が大きくなり、逆に、平滑度Kaが0に近づくほど、k番目の制御における電圧ベクトルvdq(k)が重視され、k番目の制御における、平滑化した電圧ベクトルvdqs(k)中に占める、k番目の制御における電圧ベクトルvdq(k)の割合が大きくなる。なお、電圧ベクトルvdq(k)は、[vd(k)、vq(k)]Tである(vdq(k)=[vd(k)、vq(k)]T)。
ここで、k=1の場合における式1の右辺第1項のvdqs(0)には、前回の制御周期の制御で実際にインバータ回路IVから出力された電圧値が用いられる。
上述の例では、現在のk番目の制御において、電圧パターン生成部12で生成された8通りの、2制御周期先までの[vdq(k+1)、vdq(k+2)]に対し、平滑化部13aによって8通りの、2制御周期先までの[vdqs(k+1)、vdqs(k+2)]が求められる。
予測部14は、平滑化部13aで平滑化された複数の時系列な平滑電圧パターンそれぞれについて、当該時系列な平滑電圧パターンが電動機Mに入力された場合における前記電動機Mの制御目的に関する所定の物理量の値を予測値として予測するものである。すなわち、平滑化部13aで平滑化された複数の時系列な平滑電圧パターンそれぞれについて、当該時系列な平滑電圧パターンが電動機Mに入力された場合における前記電動機Mの制御目的に関する所定の物理量の値を予測値として予測する予測処理を実施する。より具体的には、本実施形態では、前記電動機Mの制御目的に関する所定の物理量は、回転速度であり、このため、予測部14は、平滑化したd軸電圧vdsを用いた次式2によってd軸電流idを求め、平滑化したq軸電圧vqsを用いた次式3によってq軸電流iqを求める。そして、予測部14は、次式4によってトルクTeを求め、この求めたトルクTeを用いた次式5によって回転速度ωmを求める。
ここで、id(k)は、k番目の制御におけるd軸電流であり、iq(k)は、k番目の制御におけるq軸電流であり、Ldは、d軸インダクタンスであり、Lqは、q軸インダクタンスである。なお、本実施形態では、電動機Mが永久磁石式同期電動機であるので、Ld=Lq=Lとなる。Tsは、制御周期であり、Rは、電動機Mの巻線抵抗であり、ωm(k)は、k番目の制御における、測定された回転速度(実績の回転速度)であり、pは、電動機Mにおける極対数であり、Ψは、電動機Mにおける永久磁石の鎖交磁束であり、Jは、電動機Mにおける回転子の慣性モーメントであり、Dは、電動機Mにおける回転子の動摩擦抵抗である。なお、現在、k番目の制御の場合、(k+1)、(k+2)、(k+3)、・・・は、予測値であることを表している。
上述の例では、現在のk番目の制御において、平滑化部13aで求められた8通りの[vdqs(k+1)、vdqs(k+2)]に対し、予測部14によって、8通りの2制御周期先までの[idq(k+1)、idq(k+2)]および2制御周期先までの[ωm(k+1)、ωm(k+2)]が各予測値として求められる。なお、電流ベクトルidq(k)は、[id(k)、iq(k)]Tである(idq(k)=[id(k)、iq(k)]T)。
電圧パターン選択部15は、平滑化部13aで平滑化された複数の時系列な平滑電圧パターンの中から、予測部14で予測された電動機Mの各予測値の中で最も高い評価の予測値に対応する時系列な平滑電圧パターンを選択するものである。すなわち、電圧パターン選択部15は、平滑化部13aで平滑化された複数の時系列な平滑電圧パターンの中から、予測部14で予測された電動機Mの各予測値の中で最も高い評価の予測値に対応する時系列な平滑電圧パターンを選択する電圧パターン選択処理を実施する。より具体的には、電圧パターン選択部15は、平滑化部13aで平滑化された複数の時系列な平滑電圧パターンそれぞれについて、予測部14で予測された電動機Mの電流予測値[idq(k+1)、idq(k+2)]および回転速度予測値[ωm(k+1)、ωm(k+2)]を、例えば次式6の評価式gに用いることによって、前記時系列な平滑電圧パターンを定量的に評価し、前記複数の時系列な平滑電圧パターンの中から、最も高い評価の電流予測値[idq(k+1)、idq(k+2)]および回転速度予測値[ωm(k+1)、ωm(k+2)]に対応する時系列な平滑電圧パターンを選択する。式6の評価式gでは、評価値が小さいほど、評価が高い。したがって、前記複数の時系列な平滑電圧パターンの中から、最も小さい評価値を与える電流予測値[idq(k+1)、idq(k+2)]および回転速度予測値[ωm(k+1)、ωm(k+2)]に対応する時系列な平滑電圧パターンが最適な時系列な平滑電圧パターンとして選択される。なお、モデル予測制御部MCaには、外部から制御目的の目標値の回転速度ωm
*が入力され、設定される。
上記式6の評価式gは、速度制御の上で重要となることから、速度偏差を第1項とし、永久磁石式同期電動機の場合、無駄な給電を防止するために、トルクの発生に寄与しないd軸電流idを0に保持することが重要であることから、電流偏差を第2項とし、これら第1項および第2項を係数a、bで線形結合することで構成されている。したがって、第1項と第2項とにおける相対的な重要度に応じて係数a、bが予め適宜に決定される。言い換えれば、係数a、bで第1項と第2項とにおける相対的な重要度が調整できる。すなわち、電動機Mの制御で、速度偏差が電流偏差より相対的に重要である場合には、係数aは、係数bより大きく設定され(a>b)、逆に、電動機Mの制御で、電流偏差が速度偏差より相対的に重要である場合には、係数bは、係数aより大きく設定され(b>a)、両者が等しく重要である場合には、係数aは、係数bと同値に設定される(a=b)。
PWMインバータ制御部16は、電圧パターン選択部15で選択された時系列な平滑電圧パターンに基づいて、インバータ回路IVを制御するものである。すなわち、PWMインバータ制御部16は、電圧パターン選択部15で選択された時系列な平滑電圧パターンに基づいて、インバータ回路IVを制御するPWMインバータ制御処理を実施する。より具体的には、本実施形態では、PWMインバータ制御部16は、現在、k番目の制御である場合に、電圧パターン選択部15で選択された時系列な平滑電圧パターンにおける次回の(k+1)番目の制御でのd軸電圧vd(k+1)およびq軸電圧vq(k+1)それぞれをd軸目標電圧vd
*およびq軸目標電圧vq
*それぞれとして、この目標電圧vd
*、vq
*に対応する目標のU相電流、V相電流およびW相電流をインバータ回路IVから出力するように、2相3相変換部CV1にPWM制御信号を生成させてこのPWM制御信号でPWM変調器PWにIV制御信号を生成させ、この生成させたIV制御信号をPWM変調器PWからインバータ回路IVへ出力させる。
そして、制御部11は、前記電圧パターン生成処理、前記平滑化処理、前記予測処理、前記電圧パターン選択処理および前記インバータ制御処理を、電圧パターン生成部12、平滑化部13a、予測部14、電圧パターン選択部15およびPWMインバータ制御部16に、所定の制御周期で繰り返し実施させる。
このようなモデル予測制御部MCa、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2および回転速度処理部RSCは、CPU(Central Processing Unit)、メモリおよびその周辺回路を備えて構成されるマイクロプロセッサで構成可能であり、モデル予測制御部MCaにおける制御部11、電圧パターン生成部12、平滑化部13a、予測部14、電圧パターン選択部15およびPWMインバータ制御部16、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2、ならびに、回転速度処理部RSCは、所定のプログラムの実行により、前記CPUに機能的に構成される。
次に、本実施形態の動作について説明する。図6は、前記電動機駆動制御システムにおける動作を示すフローチャートである。図6には、第1および第2実施形態における電動機駆動制御システムの各処理が図示されており、第1および第2実施形態における電動機駆動システムSa、Sbにおいて共通な各処理は、添え字無しで図示され、第1実施形態における電動機駆動システムSaの処理は、添え字「a」を付加することによって図示され、第2実施形態における電動機駆動システムSbの処理は、添え字「b」を付加することによって図示されている。図7は、第1実施形態において、速度制御のシミュレーション結果を示す図である。
このような第1実施形態の電動機駆動制御システムSaでは、電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。そして、例えば、プログラムの実行によって、前記CPUには、モデル予測制御部MCa、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2および回転速度処理部RSCが機能的に構成され、モデル予測制御部MCaには、制御部11、電圧パターン生成部12、平滑化部13a、予測部14、電圧パターン選択部15およびPWMインバータ制御部16が機能的に構成される。
そして、図6に示す処理S11ないし処理S17の各処理が、電動機Mの駆動が停止されるまで、制御部11によって所定の制御周期ごとに繰り返し実行される。
図6において、まず、今回(k番目)において、電流測定部CSによって測定された各相の電流値が取得され、回転角度測定部VSによって測定された回転角度の値が取得される(S11)。電流測定部CSは、この取得した各相の電流値を、3相2相変換部CV2へ出力し、回転角度測定部VSは、この取得した回転角度値を、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2および回転速度処理部RSCそれぞれへ出力する。
続いて、3相2相変換部CV2は、処理S11で取得された各相の電流値および回転角度値から、d軸電流idおよびq軸電流iqを求め、この求めたd軸電流idおよびq軸電流iqをモデル予測制御部MCaへ出力し、回転速度処理部RSCは、処理S11で取得された各相の電流値および回転角度値から、回転速度ωmを求め、この求めた回転速度ωmを、モデル予測制御部MCaへ出力する(S12)。
続いて、モデル予測制御部MCaは、電圧パターン生成部12によって、予め設定された予測ホライズンの値および制御ホライズンの値に応じて、インバータ回路IVで出力可能な時系列な電圧パターンを、互いに異なるように複数、生成する(S13、電圧パターン生成処理)。
続いて、モデル予測制御部MCaは、平滑化部13aによって、処理S12で電圧パターン生成部12によって生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、当該時系列な電圧パターンを時系列な平滑電圧パターンとして平滑化する(S14a、平滑化処理)。
続いて、モデル予測制御部MCaは、予測部14によって、処理S14aで平滑化部13aによって平滑化された複数の時系列な平滑電圧パターンそれぞれについて、当該時系列な平滑電圧パターンが電動機Mに入力された場合における前記電動機Mの制御目的に関する所定の物理量の値を予測値として予測する(S15、予測処理)。より具体的には、本実施形態では、予測部14は、次式2によってd軸電流idを求め、次式3によってq軸電流iqを求め、次式4によってトルクTeを求め、次式5によって回転速度予測値ωmを求める。
続いて、モデル予測制御部MCaは、電圧パターン選択部15によって、処理S14aで平滑化部13aによって平滑化された複数の時系列な平滑電圧パターンの中から、処理S15で予測部14によって予測された電動機Mの各予測値の中で最も高い評価の予測値に対応する時系列な平滑電圧パターンを選択する(S16、電圧パターン選択処理)。
続いて、モデル予測制御部MCは、PWMインバータ制御部16によって、処理S16で電圧パターン選択部15によって選択された時系列な平滑電圧パターンに基づいて、PWM変調器PWおよびインバータ回路IVを制御して電動機Mを駆動する(S17、PWMインバータ制御処理)。
このように電動機Mが、制御目的の目標値の回転速度ωm
*となるように、モデル予測制御で制御され、駆動される。
シミュレーション(数値実験)によって、本実施形態における電動機駆動制御システムSa、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法の効果が検証された。その一実施例の速度制御のシミュレーション結果がその比較例と共に図7に示されている。図7A、図7Bおよび図7Cは、第1実施形態における電動機駆動制御システムSaによる速度制御のシミュレーション結果を示し、図7Aは、回転速度を示し、図7Bは、d軸電流idを示し、図7Cは、q軸電流iqを示す。図7D、図7Eおよび図7Fは、比較例による速度制御のシミュレーション結果を示し、図7Dは、回転速度を示し、図7Eは、d軸電流idを示し、図7Fは、q軸電流iqを示す。図7Aないし図7Fにおける各横軸は、経過時間であり、図7Aおよび図7Dの各縦軸は、回転速度であり、図7Bおよび図7Eの各縦軸は、d軸電流idであり、図7Cおよび図7Fの各縦軸は、q軸電流iqである。比較例は、電圧パターン生成部12で生成された複数の電圧パターンを平滑化せずに、そのまま用いる点を除き、前記実施例と同様である。前記実施例および前記比較例では、モデル予測制御の制御周期は、100μsecであり、キャリア周波数は、10kHzである。前記実施例の平滑度Kaは、0.9とした。図7Eおよび図7Fから分かるように、前記比較例では、d軸電流idおよびq軸電流iqそれぞれに電流脈動が生じているが、図7Bおよび図7Cから分かるように、前記実施例では、これに較べて、d軸電流idおよびq軸電流iqそれぞれの電流脈動が低減されている。そして、図7Aおよび図7Dから分かるように、目標速度の追従性は、前記実施例と前記比較例とで差が無く、制御の応答性が維持されている。なお、図7Aおよび図7Dにおいて、破線は、目標値(参照値、reference)を示し、実線は、測定値(measured)を示す。
以上説明したように、本実施形態における電動機駆動制御システムSa、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法は、候補入力電圧として生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれを平滑化した複数の平滑電圧パターンの中から選択した平滑電圧パターンを用いるので、制御周期で繰り返し実行される各制御間における入力電圧の差異を低減できるから、電流脈動を低減できる。
本実施形態によれば、速度制御できる電動機駆動制御システムSa、電動機駆動制御装置および電動機駆動制御方法が提供できる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第2実施形態)
平滑化部13aで生成され電圧パターン選択部15で選択された平滑電圧パターンがインバータ回路IVで出力可能であれば、インバータ回路IVは、平滑電圧パターンで交流電力を電動機Mに給電でき、第1実施形態における電動機駆動制御システムSaは、安定的に電動機Mを駆動できる。しかしながら、電圧パターン生成部12は、予測ホライズンの数値および制御ホライズンの数値に応じて互いに異なる複数の時系列な電圧パターンを生成するので、前記電圧パターンがインバータ回路IVで生成できる電圧範囲を超える場合が生じ得る。すなわち、前記電圧パターンが、PWM変調器PWのIV制御信号とインバータ回路IVの出力とが一致しない過変調領域になってしまう虞がある。このような場合では、電動機駆動制御システムSaは、電動機Mを安定的に駆動できなくなってしまう。そこで、第2実施形態では、このような平滑電圧パターンが抑制され、電動機Mがより安定的に駆動できる。
図8は、図1に示す第2実施形態の電動機駆動制御システムにおけるMPC制御部の構成を示すブロック図である。このような第2実施形態における電動機駆動制御システムSbは、例えば、図1に示すように、電動機Mと、インバータ回路IVと、PWM変調器PWと、2相3相変換部CV1と、モデル予測制御部MCbと、3相2相変換部CV2と、回転速度処理部RSCと、電流測定部CSと、回転角度測定部VSとを備える。すなわち、第2実施形態における電動機駆動制御システムSbは、第1実施形態における電動機駆動制御システムSaに対し、モデル予測制御部MCaに代え、モデル予測制御部MCbを備える。このため、第2実施形態の電動機駆動制御システムSbにおける電動機M、インバータ回路IV、PWM変調器PW、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2、回転速度処理部RSC、電流測定部CSおよび回転角度測定部VSは、それぞれ、第1実施形態の電動機駆動制御システムSaにおける電動機M、インバータ回路IV、PWM変調器PW、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2、回転速度処理部RSC、電流測定部CSおよび回転角度測定部VSと同様であるので、その説明を省略する。
モデル予測制御部MCbは、モデル予測制御を用いたベクトル制御によって、電動機MをPWM変調器PWおよびインバータ回路IVを介して駆動制御するものである。第2実施形態では、モデル予測制御部MCbは、より具体的には、例えば、図8に示すように、制御部11と、電圧パターン生成部12と、平滑化部13bと、予測部14と、電圧パターン選択部15と、PWMインバータ制御部16と、判定部17とを備える。すなわち、第2実施形態におけるモデル予測制御部MCbは、第1実施形態におけるモデル予測制御部MCaに対し、平滑化部13aに代え、平滑化部13bを備え、さらに、判定部17を備える。このため、第2実施形態のモデル予測制御部MCbにおける制御部11、電圧パターン生成部12、予測部14、電圧パターン選択部15およびPWMインバータ制御部16は、それぞれ、第1実施形態のモデル予測制御部MCaにおける制御部11、電圧パターン生成部12、予測部14、電圧パターン選択部15およびPWMインバータ制御部16と同様であるので、その説明を省略する。
判定部17は、前記平滑電圧パターンをインバータ回路IVで出力可能か否かを判定するものである。すなわち、判定部17は、前記平滑電圧パターンをインバータ回路IVで出力可能か否かを判定する判定処理を実施する。判定部17は、平滑化部13bで求めた平滑電圧パターンが電源Vdcの最大電圧以下であるか否かを判定することによって前記平滑電圧パターンをインバータ回路IVで出力可能か否かを判定して良いが、本実施形態では、判定部17は、電動機Mへ流れる電流、電動機Mの回転速度、インバータ回路IVに給電される最大電圧(インバータ回路IVに給電する電源Vdcの最大出力電圧)および電動機Mの特性パラメータに基づいて前記平滑電圧パターンをインバータ回路IVで出力可能か否かを判定する。より具体的には、判定部17は、電流測定部CSおよび3相2相変換部CV2で求めたq軸電流iqが次式7で与えられる閾値(q軸電流閾値)iqlim以下であるか否かを判定し、前記求めたq軸電流iqがq軸電流閾値iqlim以下である場合には、出力可能と判定し、前記求めたq軸電流iqがq軸電流閾値iqlim以下ではない場合(q軸電流閾値iqlimを超えている場合)には、出力可能ではない(出力不能である)と判定する。判定部17は、この判定結果を平滑化部13bへ通知する。
ここで、ωmは、回転角度測定部VSおよび回転速処理部RSCで求められた実績の回転速度である。電動機Mの特性パラメータは、電動機Mの仕様を決めるパラメータであり、式7では、巻線抵抗R、q軸インダクタンスLq、永久磁石の鎖交磁束Ψおよび極対数pである。極対数pは、上述したように、回転角測定部VSで測定した回転角度θeから回転速度ωmを回転速度処理部RSCで求める際に用いられる。
この式7は、次式8の不等式から導出される。この不等式8のうち、左辺は、インバータ回路IVに給電される最大電圧(インバータ回路IVに給電する電源Vdcの最大出力電圧)によって決まるインバータ回路IVで出力可能なインバータ回路IVの最大出力電圧であり、その右辺は、電動機Mが現在出力しているトルクおよび回転速度を維持するために必要となる電圧である。この不等式8が成立している場合では、前記電源Vdcから供給される電圧は、前記電源Vdcの最大出力電圧以下であって、インバータ回路IVは、現在の電動機Mの駆動を維持できる。一方、電動機の回転速度が上昇し、その結果、右辺の値が大きくなり、やがて、不等式8を満たさない場合((不等式8の左辺)<(不等式8の右辺))には、電動機Mの駆動に必要な電圧は、インバータ回路IVの最大出力電圧(前記電源Vdcの最大出力電圧)を超えてしまう。すなわち、PWM変調器PWのIV制御信号とインバータ回路IVの出力とが一致しない過変調領域に成ってしまう。そこで、回転角度測定部VSおよび回転速処理部RSCで求められた実績の回転速度ωmを、不等式8の左辺と不等式8の右辺とを等しいとした等式((不等式8の左辺)=(不等式8の右辺))に代入し、前記等式をq軸電流iqについて解くことによって、現在の回転速度ωmにおいて、過変調領域に至らないq軸電流iqのq軸電流閾値iqlimが求められる。
平滑化部13bは、平滑化部13aと同様に、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、当該時系列な電圧パターンを時系列な平滑電圧パターンとして平滑化(スムージング)するものである。すなわち、平滑化部13bは、前記平滑化処理を実施する。ここで、第2実施形態では、平滑化部13bは、判定部17の判定結果に基づいて前記平滑電圧パターンを生成する。より具体的には、判定部17の判定結果が前記平滑電圧パターンを前記インバータ回路で出力可能である場合(すなわち、iq≦iqlimの場合、言い換えれば、過変調領域ではない場合)では、平滑化部13bは、上述の式1(Ka>0)によって電圧パターンを平滑化し、平滑電圧パターンを求める。一方、判定部17の判定結果が前記平滑電圧パターンを前記インバータ回路で出力可能ではない場合(すなわち、iq>iqlimの場合、言い換えれば、過変調領域である場合)では、平滑化部13bは、vdqs(k)=vdq(k)とする。すなわち、前記過変調領域では、平滑化部13bの式1による平滑化機能がオフとされ、制御方式がPWMを用いない方式に切り換えられる。言い換えれば、上述の式1において、Ka=0とされる。これによってPWM変調器PWのIV制御信号とインバータ回路IVの出力との不一致が回避され、電動機Mがより安定的に駆動できる。
なお、本実施形態では、電流測定部CSおよび3相2相変換部CV2は、前記電動機へ流れる電流を取得する電流取得部の一例に相当し、回転角度測定部VSおよび回転速処理部RSCは、前記電動機の回転速度を取得する回転速度取得部の一例に相当する。
次に、本実施形態の動作について説明する。このような第2実施形態の電動機駆動制御システムSbでは、電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。そして、例えば、プログラムの実行によって、前記CPUには、モデル予測制御部MCb、2相3相変換部CV1、3相2相変換部CV2および回転速度処理部RSCが機能的に構成され、モデル予測制御部MCbには、制御部11、電圧パターン生成部12、平滑化部13b、予測部14、電圧パターン選択部15、PWMインバータ制御部16および判定部17が機能的に構成される。
そして、図6に示す処理S11、処理S12b、処理S13、処理S14b、処理S15、処理S16および処理S17の各処理が、電動機Mの駆動が停止されるまで、制御部11によって所定の制御周期ごとに繰り返し実行される。これら第2実施形態における処理S11、処理S13、処理S15、処理S16および処理S17は、それぞれ、第1実施形態における処理S11、処理S13、処理S15、処理S16および処理S17と同様であるので、その説明を省略する。
前記処理S12bでは、上述の処理S12aと同様に、3相2相変換部CV2は、処理S11で取得された各相の電流値および回転角度値から、d軸電流idおよびq軸電流iqを求め、この求めたd軸電流idおよびq軸電流iqをモデル予測制御部MCbへ出力し、回転速度処理部RSCは、処理S11で取得された各相の電流値および回転角度値から、回転速度ωmを求め、この求めた回転速度ωmを、モデル予測制御部MCbへ出力する。そして、第2実施形態では、さらに、判定部17は、前記平滑電圧パターンをインバータ回路IVで出力可能か否かを判定する。より具体的には、判定部17は、まず、回転速度処理部RSCで求めた回転速度ωmを不等式8の左辺とその右辺とを等しいとした前記等式に代入し、q軸電流iqについて解くことによって、現在の回転速度ωmにおけるq軸電流閾値iqlimを求める。次に、判定部17は、3相2相変換部CV2で求めたq軸電流iqと前記求めたq軸電流閾値iqlimとを比較する。この比較の結果、前記求めたq軸電流iqが前記求めたq軸電流閾値iqlim以下である場合には、判定部17は、出力可能(iq≦iqlim、非過変調領域)と判定し、一方、前記比較の結果、前記求めたq軸電流iqが前記求めたq軸電流閾値iqlim以下ではない場合には、判定部17は、出力可能ではない(iq>iqlim、過変調領域)と判定する。そして、判定部17は、この判定結果を平滑化部13bへ通知する。
前記処理S14bでは、処理S14aと同様に、平滑化部13bは、処理S12で電圧パターン生成部12によって生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、式1によって、当該時系列な電圧パターンを時系列な平滑電圧パターンとして平滑化する。ここで、第2実施形態では、処理S12bにおける判定部17の判定結果が出力可能である場合(iq≦iqlim、非過変調領域)には、予め設定された所定のKa(Ka>0)で式1が用いられ、処理S12bにおける判定部17の判定結果が出力可能ではない場合(iq>iqlim、過変調領域)には、Ka=0とされ、平滑化部13bは、vdqs(k)=vdq(k)とする。
このように電動機Mが、制御目的の目標値の回転速度ωm
*となるように、モデル予測制御で制御され、駆動される。
シミュレーション(数値実験)によって、本実施形態における電動機駆動制御システムSb、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法の効果が検証された。その一実施例の速度制御のシミュレーション結果が図9に示されている。図9A、図9Bおよび図9Cは、第2実施形態における電動機駆動制御システムSbによる速度制御のシミュレーション結果を示し、図9Aは、回転速度を示し、図9Bは、d軸電流idを示し、図9Cは、q軸電流iqを示す。図9Aないし図9Cにおける各横軸は、経過時間であり、図9Aの縦軸は、回転速度であり、図9Bの縦軸は、d軸電流idであり、図9Cの縦軸は、q軸電流iqである。図7に示す第1実施形態における電動機駆動制御システムSaによる速度制御のシミュレーションと同様に、モデル予測制御の制御周期は、100μsecであり、キャリア周波数は、10kHzである。前記平滑電圧パターンをインバータ回路IVで出力可能である場合である線形領域(iq≦iqlim、非過変調領域)では、平滑度Kaは、0.9とされ、過変調領域(iq>iqlim)では、平滑度Ka=0である。シミュレーションは、負荷トルクを一定とし、目標速度を加速(増加)させていき、線形領域と過変調領域との境界をまたぐように駆動領域を変化させることによって実施された。図9から分かるように、線形領域では、電圧パターンを平滑化していることから、第1実施形態と同様に、電流脈動が抑制できている。さらに、速度が増加され、PWMを用いた制御方式では、制御が不安定になる過変調領域においても、第2実施形態では、線形領域から過変調領域になると、電圧パターンを平滑化しないことで、速度制御が安定している。
以上説明したように、第2実施形態における電動機駆動制御システムSb、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法は、第1実施形態における電動機駆動制御システムSa、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法と同様の作用効果を奏する。そして、第2実施形態における電動機駆動制御システムSb、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法は、前記平滑電圧パターンをインバータ回路IVで出力可能か否かを判定した判定結果に基づいて前記平滑電圧パターンを生成するので、電動機Mを安定的に駆動できる。
第2実施形態における電動機駆動制御システムSb、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法は、その取得した電流および回転速度(電動機Mの駆動状態)、ならびに、予め求められる最大電圧および特性パラメータに基づいて前記平滑電圧パターンをインバータ回路IVで出力可能か否かを判定するので、電動機Mの駆動状態からリアルタイムで前記判定を実施できる。
すなわち、前記特許文献1や特許文献2に開示されたモデル予測制御を比較例とした場合、第1実施形態、第2実施形態および前記比較例における各作用効果を定性的に比較すると、表1の通りである。ここで、「◎」は、その作用効果が好ましいことを表し、「○」は、その作用効果が普通であることを表し、「×」は、その作用効果が好ましくないことを表す。
なお、上述の第1および第2実施形態において、電動機駆動制御システムSa、Sb、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法は、平滑度Kaが調整可能に構成されても良い。このような場合では、例えば、図2および図8に破線で示すように、平滑化部13a、13bは、電圧パターン生成部12で生成された複数の時系列な電圧パターンそれぞれについて、当該時系列な電圧パターンを時系列な平滑電圧パターンとして平滑化するデジタルローパスフィルタ部(DLPF部)131と、所定の平滑度Kaとなるように、DLPF131のフィルタ係数を制御するフィルタ係数制御部132とを備える。このようなDLPF131およびフィルタ係数制御部132は、例えば、前記CPUに機能的に構成される。前記所定の平滑度Kaは、例えばディップスイッチ、ロータリスイッチおよびキーボード等の数値を入力できる、MPC制御部MCに接続された図略の入力手段によって、外部から入力され、フィルタ係数制御部132に与えられる。
シミュレーション(数値実験)によって、第1実施形態において、このような電動機駆動制御システムSa、電動機駆動制御装置およびこれに実装された電動機駆動制御方法における平滑度別の効果が検証された。なお、第2実施形態についても、同様に、シミュレーションできる。
図10は、インバータ回路の出力可能な電圧範囲において、速度偏差および電流偏差の平滑度別に関する、速度制御のシミュレーション結果を示す図である。図10A、図10Bおよび図10Cは、平滑度Kaが0.3である場合を示し、図10D、図10Eおよび図10Fは、平滑度Kaが0.6である場合を示し、図10G、図10Hおよび図10Iは、平滑度Kaが0.9である場合を示す。図10A、図10Dおよび図10Gは、回転速度を示し、その各横軸は、経過時間であり、その各縦軸は、回転速度である。図10B、図10Eおよび図10Hは、d軸電流idを示し、その各横軸は、経過時間であり、その各縦軸は、d軸電流idである。図10C、図10Fおよび図10Iは、q軸電流iqを示し、その各横軸は、経過時間であり、その各縦軸は、q軸電流iqである。これら平滑度別のシミュレーションでは、モデル予測制御の制御周期は、100μsecであり、キャリア周波数は、10kHzである。
これら図10および図10Cと、図10Eおよび図10Fと、図10Hおよび図10Iとから分かるように、平滑度Kaを大きく調整するに従って、d軸電流idおよびq軸電流iqそれぞれの電流脈動が低減されている。また、図10A、図10Dおよび図10Gから分かるように、平滑度Kaを大きく調整するに従って、応答性を確保しつつ電流脈動を改善できる。そして、電流脈動が改善できる結果、出力トルクの脈動も改善(減少)し、速度脈動も改善(減少)できる。このような傾向を考慮することによって、平滑度Kaは、例えば、0≦Ka≦1の下で、電動機駆動制御システムSの仕様で許容されている範囲で適宜に調整されて良い。なお、図10A、図10Dおよび図10Gにおいて、破線は、目標値(参照値、reference)を示し、実線は、測定値(measured)を示す。
また、上述の第1および第2実施形態では、速度制御するために、前記電動機Mの制御目的に関する所定の物理量は、回転速度であったが、これに限定されるものではなく、他であっても良い。例えば、トルク制御するために、前記電動機Mの制御目的に関する所定の物理量は、駆動電流であっても良い。これによれば、駆動電流制御によるトルク制御できる電動機駆動制御システムSa、Sb、電動機駆動制御装置および電動機駆動制御方法が提供できる。
この場合では、予測部14は、処理S15において、平滑化したd軸電圧vdsを用いた前記式2によってd軸電流idを求め、平滑化したq軸電圧vqsを用いた前記式3によってq軸電流iqを求める。したがって、この場合では、前記式4および前記式5は、用いられない。そして、電圧パターン選択部15は、処理S16において、平滑化部13a、13bで平滑化された複数の時系列な平滑電圧パターンそれぞれについて、予測部14で予測された電動機Mの電流予測値[idq(k+1)、idq(k+2)]を、例えば次式9の評価式gに用いることによって、前記時系列な平滑電圧パターンを定量的に評価し、前記複数の時系列な平滑電圧パターンの中から、最も高い評価の電流予測値[idq(k+1)、idq(k+2)]に対応する時系列な平滑電圧パターンを選択する。式9の評価式gでは、評価値が小さいほど、評価が高い。
上記式9の評価式gは、トルク制御の上で重要となることから、q軸電流iqの電流偏差を第1項とし、上述のように、永久磁石式同期電動機の場合、無駄な給電を防止するために、トルクの発生に寄与しないd軸電流idを0に保持することが重要であることから、d軸電流idの電流偏差を第2項とし、これら第1項および第2項を係数a、bで線形結合することで構成されている。したがって、第1項と第2項とにおける相対的な重要度に応じて係数a、bが予め適宜に決定される。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。