JP7188377B2 - 標準サンプルおよびその作製方法、ならびにebsd測定装置の管理方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、使用済みのルツボサンプルの結晶層をEBSD法により、結晶粒径の頻度分布や結晶粒の配向性を測定することが記載されている。
しかしながら前述したようにEBSD法ではSEM焼けの影響で、同じ場所の繰り返し測定を行うことが出来ないので繰り返し精度を求めることが難しい。同様に同じ場所を測定できないため日間変動を求めることも難しい。したがって、測定装置の測定精度の管理上問題があった。
これらの問題を解決するためには、違う場所を測定した場合であっても同じ測定結果が得られるように、サンプル面内で結晶面方位の割合が常に一定である標準サンプルが必要となる。結晶の配向性が面内で均一であれば、EBSD法での繰り返し精度や日間変動を調べる為の標準サンプルとして、理想的なサンプルとなる。
前記標準サンプルは、基板と、シリコン微粒子と、接着剤とを有し、
前記シリコン微粒子は前記基板の表面に前記接着剤により接着されていて微粒子層を形成しており、
該微粒子層は、表面が研磨かつエッチングされた平滑面であることを特徴とする標準サンプルを提供する。
しかも、シリコン基板にポリシリコンを堆積した従来の標準サンプルよりも、結晶の配向性が面内で均一なEBSD測定装置用の標準サンプルとなる。すなわち、微粒子層の表面において、単位面積あたりの(111)、(110)、(100)等の各結晶面方位の分布(面積比)が面内のどの箇所においても一定のものとなる。このため、サンプル面内のどこを測定箇所としても良く、同一箇所の測定でSEM焼けが生じても別の箇所で測定すればよく、繰り返し精度の確認を行うことができる。また、同様の理由でEBSD測定装置における測定値の日間変動の確認を行うこともできる。したがってEBSD測定装置の管理用の標準サンプルとして実に優れたものとなる。
基板上にシリコン微粒子を接着剤で接着して微粒子層を形成し、
該微粒子層の表面を、研磨した後、エッチングして前記標準サンプルを作製することを特徴とする標準サンプルの作製方法を提供する。
しかも、従来よりも結晶の配向性が面内で均一なEBSD測定装置用の標準サンプルを作製することができ、EBSD測定装置における繰り返し精度の確認や、測定値の日間変動の確認に適した標準サンプルを得ることができる。
前記標準サンプルとして上記本発明の標準サンプルを用い、前記電子の回折パターンを繰り返して測定する際に、前記電子線の照射場所を変えて測定することを特徴とするEBSD測定装置の管理方法を提供する。
前述したように、EBSD測定は測定中にSEM焼けと呼ばれる炭素の堆積が起こり、EBSD信号が弱くなる。そのため、繰り返し測定が行えず、測定装置の管理上問題があった。また、シリコン基板上にポリシリコンを堆積したものを標準サンプルとする場合があるが、ポリシリコンの配向性が面内でばらつくため、標準サンプルとしては適さないものであった。
例えばシリコン単結晶やシリコン多結晶を細かな粉末(シリコン微粒子)にすることで、結晶面方位、結晶粒子サイズが全体で均一なサンプルを作ることが出来る。これは、XRD法では粉末X線回折測定法として知られている方法である。本発明者らは、この方法を応用し、SEMを用いたEBSD測定装置用のサンプル台(基板)に、細かく砕いて用意したシリコン微粒子を貼り付けて、EBSD測定装置用の標準サンプルとすることを考えた。さらに、XRDでは問題ないが、EBSD測定装置の標準サンプルとして新たに求められるのは、サンプル表面が平らである事、真空装置の中で分析することから粉末が飛び散らない事である。そこで、上記シリコン微粒子からなる微粒子層の表面が研磨かつエッチングされて平滑なものとすることを考えた。
そして以上のようなものであれば、結晶の配向性が面内で均一で、EBSD測定装置の管理のための繰り返し精度の確認等に適切な標準サンプルとすることができることを見出し、本発明を完成させた。
ここで基板2は特に限定されず、例えばシリコン基板とすることができるが、他の種類の基板とすることも可能である。
図2に示すように、まず、基板2、シリコン微粒子3、接着剤5を用意する(工程1)。これらの各部材については前述した通りである。
なお、より具体的には、シリコン微粒子3については、適当なサイズの結晶、例えばSiウェーハを3cm×3cmのサイズに切り出し、ボールミルで24時間微細化しSiパウダーとしたものとすることができる。ボールミルでの粉砕処理時間は24時間に限定されず、適宜決定できる。
例えば、微粒子層4の表面を9μmと1μmのダイヤモンドパウダーで研磨して表面を平らに加工したのち、HF/HNO3でエッチングして表面の平滑化を行う。これらの研磨処理やエッチング処理の条件は、所望の平滑面が得られるよう、その都度決定することができ、特に限定されない。
以上のような工程を経て、図1に示すようなEBSD測定装置用の標準サンプル1を作製する。これにより、(100)、(110)、(111)の配向性が微粒子層4の面内の位置によって変わらない(分布が面内で均一)標準サンプルを作ることが出来る。
まず、この方法で使用するEBSD測定装置の一例を図3に示す。図3に示すように、EBSD測定装置10は、SEM11とEBSD検出器12を有している。試料(標準サンプル1)に対して電子線13を照射するSEM11自体は、例えば従来と同様のものとすることができる。またEBSD検出器12としては、例えばCCDカメラとすることができる。電子照射によって標準サンプル1内での電子の回折パターン14を測定して解析できるものであれば良い。
次に、用意した標準サンプル1に対して、EBSD測定を行い、該測定結果に基づいてEBSD測定装置10の管理を行う(工程2)。このとき、EBSD測定を続けて繰り返して行うことにより繰り返し精度の確認をする。あるいは、時間をあけた繰り返し測定、例えば、日ごとにEBSD測定を行い、測定値の日間変動の確認を行う。そして必要に応じて測定装置の各種調整を行い、適正な測定が行われるよう管理する。
(実施例)
図1に示すような本発明の標準サンプル1を、図2に示す本発明の作製方法により作製した。
具体的には、基板としてはシリコン単結晶基板を用意した。シリコン微粒子は3cm×3cmのシリコン単結晶基板をボールミルで24時間かけて粉砕することで用意した。また、接着剤としては、熱硬化性導電性接着剤である“TKペーストCR2800”(化研テック株式会社製)を用いた。接着剤の熱硬化のための熱処理条件は90℃、30分間とした。また微粒子層の表面に対し、9μmと1μmのダイヤモンドパウダーによる研磨、さらにはHF/HNO3でのエッチングを施し、平滑化することにより標準サンプル1を作製した。
まず、微粒子層の表面平滑化前後のSEMによる表面の観察結果を図5A、5Bに示す。突起の多い平滑化前の図5Aに比べて、平滑化後の図5Bでは平らな面が多く見られることが分かる。
色のついている場所は方位を特定できた領域であり、(111)面、(110)面、(100)面の配向性の結晶粒を併せて示している。それぞれジャスト方位から15度以内の面方位のものを(111)、(110)、(100)結晶面方位とし、それぞれの面積比を比較した。
サンプル面内を7カ所測定したところ、(111)、(110)、(100)面方位の結晶の面積比はほぼ一定であった。上記EBSD結果では結晶面方位が特定できた面積比は広いが、その中で(111)、(110)、(100)から15度以内の結晶面方位を持つ面積比は、後述する比較例のp-Si膜の場合より低かった。p-Si膜の成長では、下地の(100)結晶の面方位の影響があるが、本発明の標準サンプルでは下地の影響はないため、面積比が少なくなったものと考えられる。
比較例の従来の標準サンプルでは、ポリシリコン成長時には基板である下地から成長するので、温度によって、下地の面方位を起点にしてポリシリコンの成長が起きる。本発明の標準サンプルは、砕いた粉を固めているので、どの方位を向くのかはランダムとなり、特定できる結晶面方位の割合が小さくなる。
シリコン基板上にp-Si膜を堆積した従来の標準サンプルを用意した。
この標準サンプル(単にポリシリコンサンプルとも言う)の面内の結晶の配向性等について検証した。
ポリシリコンのサンプルを用いて、面内の同一箇所で連続測定した場合(7回)のEBSD測定結果を図8、9に示す。図8はEBSD測定による結晶面方位の分布(測定箇所同一)を示した測定図である。結晶面方位ごとにばらした分布も併せて示す。また図9は結晶面方位ごとの面積比(測定箇所同一)を示すグラフである。
図8より、単純に同じ場所を測定し続けるとSEM焼けの影響で、結晶面方位を特定できない部分が増えているのが確認できる。つまり同じ場所を何回も連続で測定する繰り返し測定は出来ないという事になる。
また、図9からも、EBSD測定の回数が増すと、各方位を示す面積比が変わり、繰り返し測定精度を求めることはできない事が分かる。
図11の結果(図11の場合では特に(100))からわかるように、測定位置によって各結晶面方位の分布にばらつきがあるため、測定位置を変えての繰り返し測定は適切ではない。
なお、図10のEBSD像では(100)、(110)、(111)それぞれの方位から30°位ずれると色味が変わるが、図11のグラフの(100)、(110)、(111)の点はそれぞれジャストの結晶面方位からのずれが15°以内の結晶の面積を算出している。そのため、EBSD像の色から想定できる方位の面積比とグラフの面積比は異なる。
4…微粒子層、 5…接着剤、
10…EBSD測定装置、 11…SEM、 12…EBSD検出器、
13…電子線、 14…電子の回折パターン。
Claims (6)
- EBSD測定装置用の標準サンプルであって、
前記標準サンプルは、基板と、シリコン単結晶またはシリコン多結晶の粉砕物であるシリコン微粒子と、接着剤とを有し、
前記シリコン微粒子は前記基板の表面に前記接着剤により接着されていて微粒子層を形成しており、
該微粒子層は、表面が研磨かつエッチングされた平滑面であることを特徴とする標準サンプル。 - 前記接着剤は、熱硬化性導電性接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の標準サンプル。
- EBSD測定装置用の標準サンプルの作製方法であって、
基板上に、シリコン単結晶またはシリコン多結晶の粉砕物であるシリコン微粒子を接着剤で接着して微粒子層を形成し、
該微粒子層の表面を、研磨した後、エッチングして前記標準サンプルを作製することを特徴とする標準サンプルの作製方法。 - 前記接着剤を、熱硬化性導電性接着剤とすることを特徴とする請求項3に記載の標準サンプルの作製方法。
- 前記微粒子層の表面のエッチングを、フッ酸および硝酸を用いて行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の標準サンプルの作製方法。
- EBSD測定装置を用い、標準サンプルに電子線を照射して前記標準サンプルから後方散乱する電子の回折パターンを測定し、該測定の結果に基づいて前記EBSD測定装置を管理する方法であって、
前記標準サンプルとして請求項1または請求項2に記載の標準サンプルを用い、前記電子の回折パターンを繰り返して測定する際に、前記電子線の照射場所を変えて測定することを特徴とするEBSD測定装置の管理方法。
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