JP7186451B2 - 創傷治癒ペプチド - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、創傷治癒ペプチドに関する。より具体的には、本発明は、グラニュリンタンパク質のN末端領域に由来するペプチドであって、細胞増殖、遊走及び/又は創傷治癒を促進するペプチドに関する。
背景
グラニュリンは、広範な生理学的機能、並びに胚形成、創傷修復、炎症および腫瘍増殖を含む疾患過程に関与するタンパク質増殖因子のファミリーである[1]。ヒト寄生性肝吸虫のタイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)は、Ov-GRN-1と呼ばれるグラニュリンファミリーメンバーを分泌し、これは発がん性吸虫の排泄/分泌(ES)産物から最初に単離された[2、3]。Ov-GRN-1は、宿主細胞の増殖を引き起こす病原体から記載された最初の増殖因子であった[4、5]。本発明者らは、ピコモル濃度の組み換えOv-GRN-1が、血管新生を誘導し、かつ局所投与時にマウスにおいて創傷修復を促進すること、肝吸虫のグラニュリンが創傷の治療として開発される可能性があることを示唆する発見を示した[6]。
Ov-GRN-1についての構造活性相関を理解することは、創傷を治癒するためのこのグラニュリンの最も有効な形態の設計を可能にするであろう。Ov-GRN-1の三次元構造は、実験的に決定されていないが、いくつかの種のグラニュリンの構造が報告されている。決定された最初のグラニュリン構造は、コイグラニュリン-1(carp granulin-1)のものであった;これは、ジスルフィド結合の格子状配置で6つのジスルフィド結合によって一緒に架橋した4つのβ-ヘアピンを含む[7]。コイグラニュリン-1について観察された明確に定義された構造にも関わらず、グラニュリンの構造機能相関は複雑であり、一次配列に大きく依存するようである。これはヒトグラニュリンに特に明白である。哺乳動物グラニュリンの前駆体タンパク質(プログラニュリン、PGRN)は、7個半のグラニュリンドメインを含み、斯かるドメインは、分子量が約6kDaであり、細胞からのPGRNの分泌後に個々のグラニュリンモジュールへとタンパク質分解的にプロセシングされる[1]。パラグラニュリンと称される「半グラニュリン」単位は、6個のシステイン残基のみを含む[8]。
7個のヒトグラニュリンモジュールは個別に発現され、その構造はNMR分光法によって分析された[9]。3個は溶液中で比較的明確に定義された三次元構造を含むが(A、C及びF)、その他のものは主として構造の乏しいジスルフィド異性体の混合物である[9]。ヒトグラニュリンAの構造は、コイグラニュリン-1と類似のβ-ヘアピン構造を含むが、C末端領域に顕著な構造的障害がある。十分に折り畳まれたヒトグラニュリンモジュールのうち、グラニュリンAは、乳癌細胞株の増殖の強力な抑制を示すが、対照的に、ヒトグラニュリンFは細胞増殖を刺激する[9]。不十分に折り畳まれたペプチドは、弱い阻害又は活性を示すか、あるいは阻害又は活性を示さない。しかしながら、制限された活性は、標的細胞中に重要なシグナル伝達経路が存在しないこと、及び/又は細菌における組み換えペプチドの産生が不完全/不正確なフォールディングを誘導したことに起因する可能性があることに留意すべきである。今日まで、グラニュリン活性及び結合パートナーの範囲は広く、一見すると器官依存性及び補因子依存性である[10~13]。
NMR分光法による構造分析は、コイグラニュリン-1及びヒトグラニュリンAのN末端領域が、C末端領域とは無関係にフォールディングできることを示した[14、15]。2個のジスルフィド結合のみを含むこれら2つのグラニュリンの切断されたアナログは、コイグラニュリン-1の30残基のN末端ドメインについて示されているように、β-ヘアピン構造を有する(図1)。
概要
驚くべきことに、グラニュリンのN末端領域に由来するペプチドは、細胞増殖、遊走及び/又は創傷治癒の促進における活性を有する。さらに、付加的なジスルフィド結合は、そのようなペプチドに組み込まれて、ペプチドのフォールディングを改善するか、あるいは他の方法で修飾し得る。
本発明の広義の形態は、グラニュリンタンパク質のN末端領域のアミノ酸配列に由来するか、又はそれに基づくアミノ酸配列を含む単離されたペプチドを提供する。
一態様では、本発明は、単離されたペプチドであって、以下のアミノ酸配列:
1n2XD 3XVYTCR 4XGQTC C/A RGLHGYGC 5m(配列番号13)、
又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、
を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、単離されたペプチドを提供する。
好ましくは、nは0~10である。
nが1~10である場合、1Xは、任意の同一又は異なったアミノ酸若しくはアミノ酸(複数)である。
一実施形態では、nが3である場合、1X=SPSであり、
一実施形態では、nが4である場合、1X=RSPSであり、
一実施形態では、nが11である場合、1X=MDTLQPIRSPSであり、
好ましくは、mが0~4である。
mが1~4である場合、5Xは、任意の同一又は異なったアミノ酸若しくはアミノ酸(複数)であり得る。
一実施形態では、mが1である場合、5X=C又はAであり、
一実施形態では、mが4である場合、5X=APMDであり、
別の実施形態では、mが4である場合、5X=CPMDである。
2X、3X、4Xの各々は、それぞれ、任意の同一又は異なったアミノ酸若しくはアミノ酸(複数)であり得る。
好ましくは、2X、3X、4Xのそれぞれは、独立してP又はAである。
いくつかの好ましい実施形態では、2X、3X、4Xの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はそれぞれが、Pである。
いくつかの好ましい実施形態では、2X、3X、4Xの2つが、Aである。
関連する態様では、本発明は、単離されたペプチドであって、配列番号11以外の図1~13又は表3のいずれか一つに記載されたアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、単離されたペプチドを提供する。
特定の実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号13、2~10のいずれか一つに記載のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む。
前述した態様のいくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、2つ又は3つの鎖内ジスルフィド結合を含むか、又は形成することができる。
前述した態様のいくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、プロリンcis/trans異性体を形成することができる。
第2の態様では、配列番号13、2~11のいずれか一つに記載のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むペプチドを修飾する方法であって、当該ペプチドのアミノ酸配列に、1つ又は複数のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を組み込むステップを含む、方法が提供される。
好ましくは、ペプチドの修飾は、ペプチドの1つ又は複数の増加又は増強された生物学的活性をもたらす。
本発明の第3の態様は、第2の態様の方法に従って修飾された単離されたペプチドを提供する。
また、第1又は第3の態様の単離されたペプチドに特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントが提供される。
別の態様では、本発明は、第1又は第3の態様の単離されたペプチドをコードする単離された核酸を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、前述の核酸の単離された核酸を含む遺伝子コンストラクトを提供する。
さらに別の態様では、本発明は、前述の態様の遺伝子コンストラクトを含む宿主細胞を提供する。
さらなる態様では、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、前述の態様の単離されたペプチド又は単離された核酸を含有する、医薬組成物を提供する。
別のさらなる態様では、本発明は、細胞増殖及び/又は遊走を促進する方法であって、1つ又は複数の細胞と、前述の態様の単離されたペプチド、単離された核酸、又は医薬組成物とを接触させ、それによって、1つ又は複数の細胞の増殖及び/又は遊走を開始、刺激又は促進するステップを含む、方法を提供する。
さらに別のさらなる態様では、本発明は、創傷を治癒する方法であって、創傷と、前述の態様の単離されたペプチド、単離された核酸、又は医薬組成物とを接触させ、それによって、少なくとも部分的に創傷を治癒するステップを含む、方法を提供する。
さらに別のさらなる態様では、本発明は、細胞増殖、遊走を促進し及び/又は創傷を治癒する薬剤の製造方法であって、細胞増殖及び/又は遊走を促進し、及び/又は創傷を治癒する前述の態様の単離されたペプチドのアナログ又はアゴニストを同定、操作、スクリーニング又は設計するステップを含む、方法を提供する。
本態様はまた、本態様の方法によって製造された細胞増殖、遊走を促進し及び/又は創傷を治癒する薬剤を提供する。
好適には、薬剤は、前述の態様の方法に従って使用され得る。
本明細書を通して、特に明記しない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、排他的ではなく包括的に使用され、従って、記載された整数又は整数群は、1つ又は複数の他の記載されていない整数又は整数群を含み得る。
「から本質的になる」とは、本文脈において、単離されたタンパク質又は各免疫原性フラグメントが、列挙されたアミノ酸配列に加えて、1個、2個の、又は3個以下のアミノ酸残基を有することを意味する。付加的なアミノ酸残基は、列挙されたアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に存在し得るが、これらに限定されない。
不定冠詞「a」及び「an」は、単数の不定冠詞として、あるいは他の方法で不定冠詞が指す1つを超える又は単一よりも多い主題を除外するものとして解釈されるべきではないことも理解されよう。例えば、「a」タンパク質は、1つのタンパク質、1つ又は複数のタンパク質、あるいは複数のタンパク質を含む。
コイグラニュリン-1の30残基N末端ドメインの三次元構造。(A)PDBコード1QGM、β鎖は紫色の矢印として、ジスルフィド結合は黄色の球棒形態で示されている。この画像はMolMolを用いて作成した。(B)全長コイグラニュリン-1タンパク質におけるジスルフィド結合性[7]。システインは連続したローマ数字I~XIIで示される。切断されたコイグラニュリン-1における2つの結合は、黄色で強調されている。 Ov-GRN-1切断アナログの配列及び二次シフト。(A)配列は、CysIV及びCysVIがアラニン残基により置換されたことを示している;システインは赤色で強調され、置換は青で示される。コイグラニュリン-1のN末端30残基も提供され、CysIV及びVIがアラニン残基で置換されている。配列識別子は、以下の通りである:Ov-GRN(1~35)=配列番号2;Ov-GRN(8~38)=配列番号3;Ov-GRN(12~34)=配列番号4;及びOv-GRN(12~35)=配列番号5。(B)4つのシステイン残基を有するOv-GRN-1ペプチドの二次シフト(Ov-GRN1-35、Ov-GRN8-38及びOv-GRN12-34)。二次シフトは、αHシフトからランダムコイルシフト[16]を差し引くことによって導き出された。保存された残基についての二次シフトの類似性は、全体の折り畳みが3つのペプチドにおいて同じであることを示している。配色は以下の図で保持されている。両方のパネル:黒色の接続線はジスルフィド結合の結合性を表す。 Ov-GRN12-34及びOv-GRN12-35_3sの構造分析。(A)コイグラニュリン1-30と比較したOv-GRN12-34及びOv-GRN12-35_3sの二次シフト。二次シフトは、αHシフトからランダムコイルシフト[16]を差し引くことによって導き出された。Ov-GRN12-34は、Ov-GRN12-35_3s及びcarp1-30と比較して、有意に異なる二次シフトを有し、βシート構造の欠如を示す正のシフトを欠く。配列の違いにも関わらず、Ov-GRN12-35_3sとcarp1-30との間の二次シフトについての傾向は類似しており、コイグラニュリン-1に存在するβシートがOv-GRN12-35_3sにも存在することを示している(黒色矢印)。(B)Ov-GRN12-34及びOv-GRN12-35_3sの構造は、NMR分光法を用いて決定され、Ov-GRN12-34はβシート構造を含まないが、Ov-GRN12-35_3sは含むことを確認する(青色矢印)。ジスルフィド結合は黄色の球棒表現として示され、carp1-30の構造が比較のために示されている。残基Ser17及びSer27の側鎖はcarp1-30構造上で強調されて、CysIV及びCysVIのCys-Ser置換部位を示す。この構造に基づいて、Ov-GRN12-35_3sにおける可能性のある結合性と一致して、carp1-30のCysIV及びCysVIはジスルフィド結合を形成することができる可能性があるように思われる。 肝吸虫グラニュリンペプチドは細胞増殖を誘導する。(A)コイグラニュリン1-30ではなくタイ肝吸虫グラニュリンペプチドは、xCELLigenceを用いてモニターしたところ、ある範囲の濃度でH69ヒト胆管細胞の増殖を誘導した。視覚化を補助するために、選択された処置のみがグラフ化されている。最良適合の可変スロープ(Variable slope)用量反応線は、処置の単回適用の4日後の増殖を示す。有意に増加した細胞増殖を特徴とするOv-GRN12-35_3sの効力は、≧15nMの最終濃度で観察された(p<0.05)。黒色矢印は、パネルBで使用された400~483nM濃度を示す。(B)パネルAからの400nMの全てのOv-GRN-1合成ペプチド、及び483nMのOv-GRN-1タンパク質における平均増殖。ns=有意でない、****p<0.0001。両方のパネル:多重比較のためのダネット補正(Dunnett’s correction)を用いた二元配置分散分析試験を用いて、処置と関連処置対照とを比較した(チオレドキシン発現に対するOv-GRN-1タンパク質は、ペプチド対照に対する組み換えタンパク質対照及びペプチドと一致した)。4~6回の反復からの平均値を2~4回の実験からプールし、SEMバーを明確性のために上又は下のいずれかに示した。 Ov-GRN-1及びペプチドのマウス創傷治癒活性。(A+B)耳の間の頭皮への生検パンチから生じる~0.2cm2の創傷に0~4日目から50μl容量で毎日塗布された1.5%メチルセルロースゲル中の、56pmolの組み換えOv-GRN-1、Ov-GRN-1ペプチド、非関連ペプチド、チオレドキシン(TRX)タンパク質対照、及び71pmolのRegranexによる処置からの創傷治癒結果。視覚化を補助するために、データを2つのグラフに分割し、Ov-GRN-1及びペプチド対照群を両方のパネルに示した。非関連ペプチド対照、PBS、又はTRXタンパク質対照の間の有意差はどの時点でも認められなかった。黒色矢印は、パネルCに使用された4日目の時点を示す。(C)4日目からのPBSビヒクル対照に対する創傷治癒。全てのパネル:SEMバーでプロットされた4~5匹の動物の群の2~6つの生物学的反復の平均治癒率。群は、見やすくするために左又は右にわずかにシフトされている。多重比較のためのダネット補正を用いた反復測定二元配置分散分析試験は、各群を他の各群と比較する。ペプチド/タンパク質対照に対する有意性は、****=p<0.0001、***=p<0.001、**=p<0.01、*=p<0.05、ns=有意でない、によって示される。Regranexに対して有意な処置は、#=p<0.05で示される。アスタリスク又はハッシュの色は、関連する群を表す。色及び記号は、図2~5にわたって維持されている。 化学シフト比較。切断型のコイ(carp)グラニュリンの公表されているシフト[14]と、C17A及びC27A突然変異を有する突然変異体との間の化学シフト比較。 グラニュリンファミリーにおける保存されたシステインフレームワーク。A)Carp-1グラニュリンにおけるジスルフィド結合の結合性パターン。(B)合成N末端Ov-GRN-1ペプチド(GRN 12-35_3s)におけるジスルフィド結合の結合性パターン。CysIVとCysVIとの間の予測された結合性に基づくGRN12-35_3sにおける非天然ジスルフィド結合は、赤色で強調されている;「---」は任意の残基であり得る。 操作されたペプチドのHPLCトレース。全てのペプチドは、室温で24時間、自由空気酸化で酸化された。MALDI分光法分析に従って予想された分子量を有する酸化されたペプチドに対応する収集画分は、*でマークされる。 NH領域においてGRN3Alaと比較したGRN12-35_3sのTOCSY二次元NMRスペクトル。TOCSYスペクトルを、0.2mMの濃度、290K、及び80msの混合時間で記録した。割り当てられた残基は、それらの残基名及び番号で示される。GRN12-35_3sによる複数の確認の採用から生じた付加的なピークを囲んでいる。 Ov-GRN12-35_3sと比較したOv-GRN12-35_3s操作ペプチドの二次シフト。二次シフトは、αHシフトからランダムコイルシフトを差し引くことによって導き出された。二次シフトについての傾向は、Ov-GRN12-35_3sと比較して類似であり、Ov-GRN12-35_3s中に存在するβシートがプロリン突然変異体アナログにおいて維持されていることを示している。 Ov-GRN12-35_3s(左)及びGRN3Ala(右)の三次元構造。構造をNMR分光法を用いて決定した。プロリン2、プロリン4及びプロリン10残基の側鎖が、Ov-GRN12-35_3s上で強調されている。GRN3Alaでは、プロリン残基は、側鎖が強調されているアラニンで置換されている。 H69細胞のインビトロ細胞増殖に対する操作されたOv-GRN12-35_3sペプチドの影響。H69細胞を、200nMのペプチド濃度で48時間処理した。ペプチドの増殖率を、材料及び方法に記載したように測定し、値をパーセンテージとして与える。データを一元配置分散分析によって分析した。有意性はns P<0.05、** P<0.001、*** P<0.001 ****P<0.0001に設定した。P<0.0001(Ov-GRN12-35_3s、GRNP2A、GRNP4A及びGRNP10A)及びP=0.90(GRN3Ala)の統計的に異なる値を、対照ペプチドLoop6と比較して決定した。 Ov-GRN-1及びペプチドのマウス創傷治癒活性。(A)4日目の創傷治癒結果を、耳の間の頭皮への生検パンチから生じる~0.2cm2の創傷に0~4日目から50μl容量で毎日塗布された1.5%メチルセルロースゲル中の、56pmolのペプチド対照と比較した、56pmolの組み換えOv-GRN-1、Ov-GRN-1ペプチド、チオレドキシン(TRX)タンパク質対照、及び71pmolのRegranexによる処置から示している。(B)ペプチドのアミノ酸配列。GRN27sps=配列番号10。
配列表の簡単な説明
配列番号13 切断されたOv-GRN-1ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号2 Ov-GRN(1~35)ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号3 Ov-GRN(8~38)ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号4 Ov-GRN(12~34)ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号5 Ov-GRN(12~35)ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号6 GRN(P2A)ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号7 GRN(P4A)ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号8 GRN(P10A)ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号9 GRN(3Ala)ペプチドのアミノ酸配列。
配列番号10 GRN27spsのアミノ酸配列。
配列番号11 Carp(1~30)ペプチドのアミノ酸配列。
詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的に、Ov-GRN-1の切断型、及び/又はその変異体の合成に基づいており、それらのフォールディング特性及びそれらの細胞増殖及び創傷治癒における活性を決定する。Ov-GRN-1のN末端領域は、新規なフォールディング特性、及び強力な細胞増殖活性を示した。いくつかのそのような切断されたペプチド及び変異体は、創傷治癒のマウスモデルにおいて試験され、全長タンパク質と同じくらい強力であり、かつ臨床的に使用されている創傷治癒薬剤であるRegranexと同程度又はさらにそれよりも優れている。
従って、本発明の態様は、単離されたペプチドであって、配列番号13のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、単離されたペプチドに関する。
本発明の目的のために、「単離された」とは、その天然状態から取り出されたか、又は他の方法で人為的操作を受けた物質を意味する。単離された物質は、実質的又は本質的に、その天然状態に通常伴う成分を含まないか、あるいはその天然状態に通常伴う成分と一緒に人工状態となるように操作され得る。単離された物質は、天然、化学合成又は組み換え型であり得る。
「タンパク質」とは、アミノ酸ポリマーを意味する。アミノ酸は、当該技術分野でよく理解されている天然又は非天然アミノ酸、D-又はL-アミノ酸であり得る。
用語「タンパク質」は、典型的には50個以下のアミノ酸を有するタンパク質を記述するために使用される「ペプチド」、並びに、典型的には50個超のアミノ酸を有するタンパク質を記述するために使用される「ポリペプチド」を含みかつ包含する。本発明の一実施形態は、単離されたポリペプチドであって、配列番号13のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを提供する。
単離されたペプチドは、以下のアミノ酸配列:
1n2XD 3XVYTCR 4XGQTC C/A RGLHGYGC 5m(配列番号13)、ここで、nは0~11であり、かつmは0~4である;又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり得る。
nがゼロである場合、アミノ酸は存在しないことが理解されるであろう。nが1~10である場合、1Xは、任意の同一又は異なったアミノ酸若しくはアミノ酸(複数)である。
一実施形態では、nが4である場合、1X=RSPSであり、
一実施形態では、nが3である場合、1X=SPSであり、
一実施形態では、nが11である場合、1X=MDTLQPIRSPSである。
mがゼロである場合、アミノ酸は存在しないことが理解されるであろう。mが1~4である場合、5Xは、任意の同一又は異なったアミノ酸若しくはアミノ酸(複数)であり得る。
一実施形態では、mが1である場合、5X=C又はAである。
一実施形態では、mが4である場合、5X=APMDである。
別の実施形態では、mが4である場合、5X=CPMDである。
2X、3X、4Xの各々は、それぞれ、任意の同一又は異なったアミノ酸若しくはアミノ酸(複数)であり得る。
好ましくは、2X、3X、4Xのそれぞれは、独立してP又はAである。
いくつかの好ましい実施形態では、2X、3X、4Xの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又はそれぞれが、Pである。
いくつかの好ましい実施形態では、2X、3X、4Xの1つが、Aである。
特定の実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号13、2~10のいずれか一つに記載のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
配列番号2~5のそれぞれのアミノ酸配列からなる単離されたペプチドは、本明細書中で以下のように称され得る:
配列番号2 Ov-GRN1-35、Ov-GRN(1~35)、又はGRN1-35
配列番号3 Ov-GRN8-38、Ov-GRN(8~38)、又はGRN8-38
配列番号4 Ov-GRN12-34、Ov-GRN(2~24)、又はGRN2-24
配列番号5 Ov-GRN12-35_3s、Ov-GRN(12~35)、又はGRN12-35_3s
実施例及び図4及び5を参照すると、配列番号2~5からなる単離されたペプチドは、Regranexと同程度又はそれよりも高い程度又はレベルまで、細胞増殖及び/又は創傷治癒を促進することができることが実証された。
いくつかの実施形態では、単離されたペプチドは、2つ又は3つの鎖内ジスルフィド結合を含む。図2に示されたアミノ酸配列から理解されることになるように、配列番号2~4は、2つのジスルフィド結合を形成する4個のシステイン残基を含むが、配列番号5は、3つのジスルフィド結合を形成する6個のシステイン残基を含む。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、配列番号5の単離されたペプチドは、全長グラニュリンタンパク質と同様の様式で折り畳まれ得ることが提唱される。
配列番号6~8のそれぞれのアミノ酸配列からなる単離されたペプチドは、本明細書中で以下のように称され得る:
配列番号6 Ov-GRNP2A、Ov-GRN(P2A)、GRNP2A、GRN24(P2A);
配列番号7 Ov-GRNP4A、Ov-GRN(P4A)、GRNP4A、GRN24(P4A);
配列番号8 Ov-GRNP10A、Ov-GRN(P10A)、GRNP10A、GRN(P10A);
配列番号6~8のアミノ酸配列のそれぞれは、配列番号13の形態であり、ここでは、2X、3X、4Xの1つがアラニンであり、かつ残りの2X、3X、4Xがプロリンである。実施例及び表3を参照すると、配列番号6~8のアミノ酸配列のそれぞれはまた、配列番号5のアミノ酸配列の変異体でもあり、ここで、配列番号5のそれぞれの単一のプロリン残基は、アラニン残基で置換されている。
別の実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号9に記載のアミノ酸配列、又はそのフラグメント若しくは変異体を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。配列番号9のアミノ酸配列からなる単離されたペプチドは、Ov-GRN3Ala、Ov-GRN(3Ala)、又はGRN3Alaと称され得る。配列番号9のアミノ酸配列は、配列番号13の形態であり、ここでは、2X、3X、4Xのそれぞれが、アラニンである。実施例及び表3を参照すると、配列番号9はまた、配列番号5のアミノ酸配列の変異体でもあり、ここで、配列番号5の3個のプロリン残基のそれぞれは、アラニン残基で置換されている。
実施例及び図12に記載されているように、配列番号6~8のアミノ酸配列を有する単離されたペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチドと同じ又はそれよりも大きな速度で細胞増殖を増強した。しかしながら、配列番号9のアミノ酸配列を有する単離されたペプチドは、細胞増殖を増強しなかった。従って、いくつかの好ましい実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号13に記載のアミノ酸配列であって、2X、3X、4Xの少なくとも1つ、しかし好ましくは3つ未満が、アラニンであるアミノ酸配列を含む。好ましくは、2X、3X、4Xの1つが、アラニンである。好ましくは、2X、3X、4Xの少なくとも1つが、プロリンである。
実施例及び図9~10を参照すると、配列番号5~8のアミノ酸配列を有するペプチドは、配列番号9のアミノ配列を有するペプチドに存在しなかった複数の立体配座を示したことがさらに理解されるであろう。理論に拘束されることなく、これら複数の立体配座は、配列番号9ではなく配列番号5~8におけるプロリンcis/trans異性体の形成の結果であると考えられている。これら複数の立体配座は、配列番号5~8のアミノ酸配列を有するペプチドに存在するが、配列番号9のアミノ酸配列を有するペプチドには存在しない観察された生物学的活性に寄与し得る。
従って、いくつかの好ましい実施形態では、単離されたペプチドは、プロリンcis/trans異性体を形成することができる。配列番号10は、N末端アミノ酸配列SPSを含む。配列番号10は、本明細書中で、Ov-GRNsps、Ov-GRN(SPS)、GRNsps、又はGRN27spsと称され得る。
本発明はまた、本明細書中でペプチド「変異体」と称される、配列番号13、2~10のいずれか一つと少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む単離されたペプチドを提供する。
本明細書で使用される、ペプチド「変異体」は、配列番号13、2~10のいずれか一つに記載のアミノ酸配列と、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。本明細書に開示されたペプチド「変異体」は、欠失した又は異なるアミノ酸によって置換された1つ又は複数のアミノ酸を有し得る。いくつかのアミノ酸は、ペプチドの生物学的活性を変化させることなく置換又は欠失され得ることがよく理解されるであろう(保存的置換)。好適には、変異体は、配列番号13、2~10のいずれか一つの単離されたペプチドの生物学的活性の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%を有する。特定の実施形態では、変異体は、2つ又は3つの鎖内ジスルフィド結合を含むか、又はそれらを形成することができる。
それぞれのタンパク質及び核酸の間の配列相関を説明するために本明細書で一般に使用される用語としては、「比較ウインドウ(comparison window)」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」及び「実質的同一性」が挙げられる。それぞれの核酸/タンパク質は、(1)核酸/タンパク質によって共有される完全な核酸/タンパク質配列の1つ又は複数の部分のみ、並びに(2)核酸/タンパク質間で相違する1つ又は複数の部分、をそれぞれ含み得るので、配列比較は、典型的には、配列類似性の局所領域を同定及び比較するための「比較ウインドウ」にわたって配列を比較することによって行われる。「比較ウインドウ」とは、参照配列と比較される、典型的には6、9又は12個の連続した残基の概念的セグメントを指す。比較ウインドウは、それぞれの配列の最適なアラインメントのために参照配列と比較して約20%以下の付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウインドウを整列するための配列の最適なアラインメントは、コンピューター化されたアルゴリズムの実装によって(IntelligeneticsによるGeneworks program;GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USA、参照により本明細書に組み込まれる)又は調査によって行うことができ、最良のアラインメント(すなわち、比較ウインドウにわたってもっとも高いパーセンテージの相動性をもたらす)は、選択された種々の方法のいずれかによって生成される。参照はまた、例えばAltschulら、1997、Nucl. Acids Res. 25 3389(参照により本明細書に組み込まれる)によって開示されたプログラムのBLASTファミリーに対して行うことができる。配列分析の詳細な議論は、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY Eds. Ausubelらのユニット19.3に見出すことができる(John Wiley & Sons Inc NY、1995-2015)。
用語「配列同一性」は、本明細書においてその最も広い意味で使用され、標準的なアルゴリズムを用いて適切なアラインメントを考慮して、配列が比較のウインドウにわたって同一である程度を考慮して、正確なヌクレオチド又はアミノ酸一致の数を含む。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較のウインドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)が両方の配列で生じる位置の数を決定し、一致した位置の数を得て、一致した位置の数を比較のウインドウにおける位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割り、そして結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。例えば、「配列同一性」は、DNASISコンピュータープログラム(ウインドウズ用のVersion 2.5;Hitachi Software engineering Co., Ltd.、サウスサンフランシスコ、カリフォルニア、USAから入手可能)によって計算された「一致率」を意味することが理解され得る。
本発明はまた、本明細書に開示された単離されたペプチドのフラグメントを提供する。いくつかの実施形態では、フラグメントは、配列番号13、2~10のいずれか一つの6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33又は34個のアミノ酸を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり得る。特定の実施形態では、フラグメントは、2つ又は3つの鎖内ジスルフィド結合を含むか、又はそれらを形成することができる。
好適には、フラグメントは生物学的に活性である。好ましくは、フラグメントは、配列番号13、2~10のいずれか一つの単離されたペプチドの生物学的活性の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%を有する。
本明細書に開示された単離されたペプチドの誘導体も提供される。本明細書で使用される、「誘導体」タンパク質又はペプチドは、例えば、他の化学的部分とのコンジュゲーション又は複合体化によって、当該技術分野で理解されるように、翻訳後修飾(例えばリン酸化、ユビキチン化、グリコシル化)、化学修飾(例えば架橋、アセチル化、ビオチン化、酸化又は還元など)、標識とのコンジュゲーション(例えばフルオロフォア、酵素、放射性同位体)、及び/又は、付加的なアミノ酸配列を含めることによって、変更されている。
これに関して、当業者は、タンパク質の化学修飾に関するより広範な方法論についてはCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE、Eds. Coliganらのチャプター15(John Wiley & Sons NY 1995~2015)を参照する。
付加的なアミノ酸配列は、融合タンパク質を作製する融合パートナーアミノ酸配列を含み得る。例として、融合パートナーアミノ酸配列は、単離された融合タンパク質の検出及び/又は精製を助けることができる。非限定的な例としては、金属結合(例えばポリヒスチジン)融合パートナー、マルトース結合タンパク質(MBP)、タンパク質A、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、蛍光タンパク質配列(例えばGFP)、エピトープタグ、例えばmyc、FLAG、及び血球凝集素タグが挙げられる。
本発明の単離されたペプチド、変異体及び/又は誘導体は、化学合成、及び組み換えDNA技術を含むが、これらに限定されない、当該技術分野で知られた任意の方法によって製造することができる。
化学合成は、固相及び液相合成を含む。そのような方法は当該技術分野でよく知られているが、SYNTHETIC VACCINES Ed. Nicholsonnのチャプター9(Blackwell Scientific Publications)及びCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE Eds. Coliganらのチャプター15(John Wiley & Sons, Inc.NY USA 1995~2008)に提供された化学合成の例が参照される。これに関して、国際公開WO99/02550及び国際公開WO97/45444も参照される。
組み換えタンパク質は、例えば以下のものに記載された標準的なプロトコルを用いて当業者によって便利に調製することができる:Sambrookら、MOLECULAR CLONING. A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press、1989)、特にセクション16及び17;CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY Eds. Ausubelら(John Wiley & Sons, Inc. NY USA 1995~2008)、特にチャプター10及び16;及びCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE Eds. Coliganら(John Wiley & Sons, Inc. NY USA 1995~2008)、特にチャプター1、5及び6。
本発明の関連した態様は、配列番号13、配列番号5、若しくは配列番号10に記載のアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するペプチドを、修飾、変更、又は変化させる方法であって、ペプチドのアミノ酸配列に、1つ又は複数のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を組み込むステップを含む、方法を提供する。
好ましくは、ペプチドの修飾、変更、又は変化は、ペプチドの1つ又は複数の生物学的活性を増加又は増強する。好ましい実施形態では、生物学的活性は、細胞増殖に対する活性、及び創傷治癒に対する活性から選択される。
本態様に従って修飾されるペプチドが配列番号11に記載のアミノ酸配列を有するペプチド又はその変異体である特定の好ましい実施形態では、当該方法は、ペプチドのアミノ酸配列にバリン残基を挿入及び/又は欠失させるステップを含む。図2(A)を参照すると、配列番号2~5に記載のアミノ酸配列は、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対する、配列番号11のCysI残基とCysII残基との間のバリン挿入を特徴とする。さらに、配列番号2~5に記載のアミノ酸配列は、配列番号11に記載のアミノ酸配列に対する、配列番号11のCysIII残基とCysIV残基との間のバリン欠失を特徴とする。図4~5に記載されているように、配列番号2~5に記載のアミノ酸配列を有するペプチドは、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有するペプチドと比較して、細胞増殖及び/又は創傷治癒に関して、増加又は増強された活性を示した。
本態様に従って修飾されるペプチドが、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有するペプチド、又はその変異体である特定の好ましい実施形態では、当該方法は、アラニン残基をシステイン残基に置換するステップを含む。好ましくは、アラニン/システイン置換は、ペプチドのアミノ酸配列において、システインシステインモチーフをもたらす。図2(A)を参照すると、配列番号5に記載のアミノ酸配列は、配列番号11のアラニンに対するシステイン置換を特徴とする。システイン置換(substation)は、配列番号11のCysIII残基とCysIV残基との間に位置し、配列番号5におけるシステインシステインモチーフを形成する。
修飾されるペプチドが、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するペプチド、又はその変異体である特定の好ましい実施形態では、当該方法は、プロリン残基をアラニン残基に置換するステップを含む。表3を参照すると、配列番号6~8は、配列番号5のプロリンに対するアラニン置換を特徴とする。図12に記載されているように、配列番号6~8のそれぞれに記載のアミノ酸配列を有するペプチドは、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するペプチドと比較して、より高い増加率の細胞増殖率を示した。
本発明の別の態様は、先行する態様の方法に従って製造された単離されたペプチドを提供する。好ましくは、当該単離されたペプチドは、増加又は増強された生物学的活性を有する。
本発明はまた、単離された核酸であって、配列番号13、2~10のいずれか一つの単離されたペプチド、又は単離されたペプチドを含む単離されたポリペプチド、又は複数の当該ペプチドをコードする、単離された核酸を提供する。
用語「核酸」は、本明細書で使用される場合、一本鎖又は二本鎖DNA及びRNAを指す。DNAは、ゲノムDNA及びcDNAを含む。RNAは、mRNA、RNA、RNAi、siRNA、cRNA及び自己触媒性RNAを含む。核酸はまた、DNA-RNAハイブリッドであり得る。核酸はヌクレオチド配列を含み、斯かるヌクレオチド配列は、A、G、C、T又はU塩基を含むヌクレオチドを典型的には含む。しかしながら、ヌクレオチド配列は、他の塩基、例えばイノシン、メチルシトシン、メチルイノシン、メチルアデノシン及び/又はチオウリジンを含み得るが、これらに限定されない。
一態様では、単離された核酸は遺伝子コンストラクト中にあり、斯かる遺伝子コンストラクトは、1つ又は複数の他の遺伝的構成要素に操作可能に連結又は接続された単離された核酸を含む。遺伝子コンストラクトは、単離された核酸の治療的送達、又は宿主細胞における組み換えタンパク質産生に適している可能性がある。
広範には、遺伝子コンストラクトは、当該技術分野でよく理解されるように、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド、酵母、又は細菌の人工染色体の形態であるか、あるいはそれらの遺伝的構成要素を含む。遺伝子コンストラクトは、細菌又は他の宿主細胞における単離された核酸の維持及び伝播、組み換えDNA技術による操作、及び/又は、本発明の核酸又はコードされたタンパク質の発現に適している可能性がある。
宿主細胞発現の目的のために、遺伝子コンストラクトは、発現コンストラクトである。好適には、発現コンストラクトは、発現ベクターにおいて1つ又は複数の付加的な配列に操作可能に連結された本発明の核酸を含む。「発現ベクター」は、自己複製型染色体外ベクター、例えばプラスミド、又は宿主ゲノムに組み込まれるベクターのいずれかであり得る。
「操作可能に連結された」とは、前記の付加的なヌクレオチド配列(複数)が本発明の核酸に対して配置されて、好ましくは転写を開始、調節するか、又はさもなければ制御することを意味する。
調節ヌクレオチド配列は、一般に、発現に使用される宿主細胞に適しているであろう。様々なタイプの適切な発現ベクター及び好適な調節配列が、様々な宿主細胞について当該技術分野で知られている。
典型的には、前記1つ又は複数の調節ヌクレオチド配列は、これらに限定されるものではないが、プロモーター配列、リーダー又はシグナル配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、並びにエンハンサー又はアクチベーター配列を含み得る。
当該技術分野で知られている構成的、抑制性又は誘導性プロモーターが、本発明によって企図される。
発現コンストラクトはまた、融合パートナー(典型的には発現ベクターによって提供される)をコードする付加的なヌクレオチド配列を含んでもよく、従って、組み換えタンパク質は、本明細書で前述した融合タンパク質として発現される。
発現コンストラクトはまた、選択マーカー、例えばampR、neoR又はkanRをコードする付加的なヌクレオチド配列を含み得るが、これらに限定されない。
創傷又は対象への単離された核酸の送達に関連する特定の実施形態では、発現コンストラクトは、プラスミドDNAの形態であってもよく、斯かるプラスミドDNAは好適には、動物細胞において作動可能なプロモーターを含む(例えばCMV、αA-クリスタリン又はSV40プロモーター)。他の実施形態では、核酸は、ウイルスコンストラクト、例えばアデノウイルス、ワクシニア、レンチウイルス又はアデノ随伴ウイルスベクターの形態であってもよい。
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載の核酸分子又は遺伝子コンストラクトで形質転換された宿主細胞を提供する。
発現に適した宿主細胞は、原核又は真核であってもよい。例えば、好適な宿主細胞としては、これらに限定されるものではないが、哺乳動物細胞(例えばHeLa、Cos、NIH-3T3、HEK293T、Jurkat細胞)、酵母細胞(例えば(サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、バキュロウイルス発現系を用いて又は用いずに利用される昆虫細胞(例えばSf9、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni))、植物細胞(例えばコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、フェオダクチラム(Phaeodactylum tricornutum))又は細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)が挙げられる。宿主細胞(原核又は真核のいずれであっても)への遺伝子コンストラクトの導入は、当該技術分野でよく知られており、例えばCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY Eds. Ausubelら(John Wiley & Sons, Inc.1995~2015)、特にチャプター9及び16に記載されている。
特定の態様では、本発明は、細胞増殖、遊走及び/又は創傷治癒を促進するための、本明細書に開示された単離されたペプチドの使用、例えば配列番号13、2~10のいずれか一つのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む単離されたペプチドの使用を提供する。また、細胞増殖、遊走、及び/又は創傷治癒を促進するための、本明細書に開示された単離されたペプチドをコードする核酸、あるいは同核酸を含む遺伝子コンストラクト又はベクターの使用が提供される。
本発明の一態様は、細胞増殖及び/又は遊走を促進する方法であって、1つ又は複数の細胞と、単離されたペプチド又はコード核酸とを接触させ、それによって、1つ又は複数の細胞の増殖及び/又は遊走を開始、刺激又は促進するステップを含む、方法を提供する。
本発明の別の態様は、創傷を治癒する方法であって、創傷と、単離されたペプチド又はコード核酸とを接触させ、それによって、少なくとも部分的に創傷を治癒するステップを含む、方法を提供する。
したがって、本明細書に開示された単離されたペプチドは、対象における創傷治癒を促進する細胞の増殖及び/又は遊走を促進し得る。これは、代替的に又は付加的に、創傷治癒を促進する創傷への細胞の遊走を促進することを含み得る。そのような細胞は、マクロファージ、好中球、上皮細胞、ケラチノサイト、樹状細胞(例えばランゲルハンス細胞)、血管細胞、線維芽細胞、血小板、リンパ球、及び/又は、これら細胞のいずれかの前駆細胞を含み得るが、これらに限定されるものではない。
本明細書で一般的に使用される、「創傷」とは、外皮系、例えば皮膚に対する任意の損傷的な擦過傷又は物理的破損であり、切り傷、病変、潰瘍及び火傷を含み得る。
特定の実施形態では、本発明は、擦り傷、切り傷、病変、潰瘍及び火傷を含む創傷の治療を提供する。「治療」とは、疾患、障害又は状態の1つ又は複数の症状若しくは転帰を少なくとも部分的に改善、減少、除去又は抑制する治療的作用過程を意味する。いくつかの実施形態では、治療は、代替的に又は付加的に、疾患、障害又は状態の1つ又は複数の症状又は転帰の再発(recurrence)又は再発(reappearance)が少なくとも部分的に予防される予防(prophylaxis)を含み得る。
いくつかの実施形態では、創傷と単離されたペプチド又はコード核酸とを接触させるステップは、対象への単離されたペプチド又はコード核酸の全身投与、あるいは創傷への単離されたペプチド又はコード核酸の局所投与を含み得る。
いくつかの実施形態では、対象への投与の目的のために、単離されたペプチド、又はコード核酸は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、単離されたペプチド又はコード核酸を含有する医薬組成物の形態であり得る。
「担体、希釈剤又は賦形剤」とは、一般に、全身投与に安全に使用することができる固体又は液体の充填剤、希釈剤、溶媒、ビヒクル、又は封入物質(encapsulating substance)を意味する。特定の投与経路に応じて、当該技術分野でよく知られている様々な担体が使用され得る。これら担体は、糖、デンプン、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、流動促進剤、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝液、乳化剤、等張食塩水、並びに塩、例えば、塩酸塩、臭化物塩及び硫酸塩を含む鉱酸塩、有機酸、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩及びマロン酸塩、並びに発熱物質除去水(pyrogen-free 水)を含む群から選択することができる。
担体、希釈剤及び賦形剤を記載する有用な一般的参考文献は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co. N.J. USA、1991)(参照により本明細書に組み込まれる)である。
任意の好適な手順が、組成物、例えばワクチン組成物を製造するために企図される。例示的な手順としては、例えば、New Generation Vaccines(1997、Levine et al.、Marcel Dekker, Inc. New York、Basel、Hong Kong)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載された手順が挙げられる。
任意の安全な投与経路が、動物に本発明の組成物を提供するために使用され得る。例えば、局所、経口、直腸、非経口、舌下、頬側、静脈内、鼻腔内、関節内、筋肉内、皮内、皮下、吸入、眼内、腹腔内、脳室内。及び経皮投与が使用され得る。
剤形としては、錠剤、分散剤、懸濁剤、軟膏(salves)、軟膏剤(ointments)、クリーム剤、ペースト剤、分散剤、注射剤、液剤、シロップ剤、トローチ剤、カプセル剤、経鼻スプレー剤、坐剤、エアロゾル剤、経皮パッチなどが挙げられる。これら剤形はまた、この目的のために特別に設計された制御放出装置、あるいはこの様式でさらに作用するように改変された他の形態のインプラントを注射又は移植することを含み得る。治療用薬剤の制御放出は、例えば、アクリル樹脂を含む疎水性ポリマー、ワックス、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、並びに特定のセルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、当該薬剤をコーティングすることによって達成することができる。さらに、制御放出は、他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はミクロスフェアを用いて達成することができる。
投与に適した組成物は、個別の単位、例えばカプセル剤、カプレット剤、サシェ剤、機能性食品/飼料、又は錠剤として、又は粉末若しくは顆粒として、又は、水性溶体、非水性液体中の溶液又は懸濁液、水中油型エマルジョン若しくは油中水型エマルジョンとして提示され得る。組成物は、剤形に適合する方法で、かつ免疫学的に有効な量で、投与することができる。対象に投与される用量は、適切な期間にわたって対象に有益な応答をもたらすのに十分であるべきである。投与されることになる薬剤(複数)の量は、年齢、性別、体重及びその一般的健康状態を含む治療されることになる対象、施術者の判断に左右されるであろう要因に依存し得る。
本明細書で一般的に使用されるように、「対象」は、哺乳動物を含む任意の動物、好ましくはヒトであり得る。獣医学的適用は、動物、例えば、これらに限定されるものではないが、魚、家禽、家庭用ペット、競走馬、家畜、及び他の非ヒト対象における創傷治癒に適している可能性がある。
さらに別のさらなる態様では、本発明は、細胞増殖、遊走及び/又は創傷治癒を促進する薬剤の製造方法であって、細胞増殖、遊走及び/又は創傷治癒を促進する本明細書に開示された単離されたペプチドのアナログ、模倣物(mimetic)又はアゴニストを同定、操作、スクリーニング又は設計するステップを含む、方法を提供する。
本発明がOv-GRN-1のフォールディングについての洞察を提供すること、並びにN末端領域が生物活性に寄与することが理解されるであろう。大量にOv-GRN-1を製造することの難しさを考慮すると、生物活性を維持又は増加させるタンパク質に由来するペプチドの開発(例えば配列番号13、2~10)は、新規な創傷治癒薬剤の開発のためのリード分子であり得る単離されたペプチドのアナログ、模倣物又はアゴニストを同定、操作、スクリーニング、又は設計することを促進することができる。薬剤は、本明細書に開示された単離されたペプチドの活性を少なくとも部分的に模倣する細胞増殖、遊走及び/又は創傷治癒活性を有するペプチド又は他のタンパク質、有機小分子、単糖、オリゴ糖若しくは多糖、脂質、核酸、あるいはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの有利な実施形態では、薬剤の生物活性は、分子間で比較した場合に単離されたペプチドの生物活性よりも大きい可能性がある。
いくつかの実施形態では、薬剤は、所望の又は予想された構造特性若しくは特徴に基づいてデノボ(de novo)で合理的に設計又は操作することができ、斯かる特性若しくは特徴は、薬剤が、本明細書に開示された単離されたペプチドの活性を少なくとも部分的に模倣する細胞増殖、遊走及び/又は創傷治癒活性を有することを示す。他の実施形態では、薬剤は、所望の又は予想された構造特性若しくは特徴に基づいて初期選択無しに分子のライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができ、斯かる特性若しくは特徴は、薬剤が、本明細書に開示された単離されたペプチドの活性を少なくとも部分的に模倣する細胞増殖、遊走及び/又は創傷治癒活性を有することを示す。そのようなライブラリーは、タンパク質、ペプチド、核酸のランダムに生成又は指向されたライブラリー、ファージディスプレイライブラリー、天然に存在する分子のライブラリー、及び/又は合成有機分子のコンビナトリアルライブラリー(combinatorial libraries)を含み得る。
候補モジュレーターの設計及び/又はスクリーニングに適用可能な技術の非限定的な例は、当該技術分野でよく知られているように、X線結晶構造解析、NMR分光法、構造データベースのコンピューター支援スクリーニング、コンピューター支援モデリング、あるいは、分子フォールディング及び/又は結合相互作用を検出、モデル化又は予測する生化学若しくは生物物理学的技術を用いることができる。
分子相互作用を同定する生物物理学的及び生化学的技術は、競合放射性リガンド結合アッセイ、免疫共沈降、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)結合アッセイを含む蛍光ベースのアッセイ、電気生理学、分析超遠心分離、ラベルトランスファー(label transfer)、化学架橋、質量分析、微量熱量測定、表面プラズモン共鳴、及び光学バイオセンサーに基づく方法を含み、これは、例えばCURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE Eds. Coliganら(John Wiley & Sons、1997~2015)のチャプター20に提供されている。生化学的技法、例えばツーハイブリッド(two-hybrid)及びファージディスプレイスクリーニング法は、CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE Eds. Coliganら(John Wiley & Sons、1997~2015)のチャプター19に提供される。
本明細書に開示されたように同定、操作、スクリーニング又は設計された薬剤は、前述のように細胞増殖、遊走及び/又は創傷治癒を促進する方法に適している可能性があることが理解されるであろう。
また、本明細書に開示された単離されたペプチドに特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントも提供される。「特異的に結合する」とは、抗体又は抗体フラグメントが、別のタンパク質、例えば野生型グラニュリンタンパク質よりも実質的に高い親和性で、単離されたペプチドに結合することを意味する。抗体は、当該技術分野でよく知られているように、ポリクローナル又はモノクローナルであり得る。抗体フラグメントは、単鎖フラグメント、例えばscFvフラグメント、Fab及びFab’2フラグメント、ダイアボディ及びトリアボディを含むが、これらに限定されるものではない。ポリクローナル抗体は、単離されたペプチドによる免疫化、続く血清抗体精製によって産生され得る。モノクローナル抗体は、単離されたペプチドによる免疫化、続く脾臓細胞融合及び抗体精製によって産生することができ、あるいは組み換えDNA技術によって産生することができる。組み換え抗体又は抗体フラグメントは、所望の抗原結合アミノ酸配列(例えばCDR配列)を含むように操作され、及び/又は、抗体の異種部分に対する望ましくない免疫応答を引き起こす可能性を低減して、特定の対象への投与を促進するように修飾され得る(例えばヒト化)。
本発明が完全に理解され、実用的な効果がもたらされるように、以下の非限定的な例を参照する。
実施例
実施例1.グラニュリン足場に基づく強力な創傷治癒剤の開発
材料及び方法
ペプチド合成及び精製
切断されたグラニュリンペプチドを、フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)化学を用いた手動の固相ペプチド合成を用いて合成した。ペプチドを、2-クロロトリチルクロリド樹脂(Auspep、オーストラリア)上に集めた。アミノ酸を、ペプチドグレードのジメチルホルムアミド(DMF-Auspep、オーストラリア)中の2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU - Iris Germany)を用いて活性化した。ペプチドを、95%TFA/2.5%TIPS/2.5%H2Oの混合物を用いて切断した。TFAを、窒素と共に蒸発させることによって除去し、氷冷ジエチルエーテルを残渣に添加した。エーテルを濾過により除去し、ペプチドを、0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含有する40%アセトニトリル/水混合物中に溶解し、その後凍結乾燥した。得られた粗ペプチドを、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いてC-18分取カラム(Phenomenex Jupiter 10μm C18 300Å 250x21.2 mm)上で精製した。1%/分の0%~80%溶媒B(H2O中、0.045%TFA中の90%アセトニトリル)及び溶媒A(H2O中の水性0.045%TFA)の勾配を使用し、溶出液を215及び280nmでモニターした。5mMの還元グルタチオンを含有する100mMの重炭酸アンモニウム(pH8.2)中のペプチド溶液を攪拌することによってペプチドを酸化し、室温で一晩放置し、RP-HPLCを用いてC-18分取カラム(Phenomenex Jupiter 10μm C18 300Å 250x21.2 mm)上で精製した。
切断されたペプチドのジスルフィド結合性を確認するために、Ov-GRN12-34を、システイン残基の選択的保護により合成した。Cys1及びCys14は、ACM基で側鎖保護され、Cys8及びCys23は、(Trt)保護基で保護された。粗ペプチドの切断及び精製に続いて、Cys8とCys23との間のジスルフィド結合を100mMの重炭酸アンモニウム中で形成し、ペプチドを上述の手順を用いて精製した。その後、0.5mLのTFA、10μLのアニソール及び25mgのトリフルオロメタンスルホン酸銀中の2mgのペプチドを4℃で1.5時間攪拌することによって、S-ACM基を除去した。冷エーテル(10mL)を混合物に添加し、沈殿物を遠心分離によって回収した。沈殿物をエーテルで2回洗浄し、さらに精製することなく、0.5MのHCl中の50%DMSOの溶液を用いて一晩酸化させた。溶液を水で15倍希釈し、完全に折り畳まれたペプチドを、1%ACN勾配を用いてHPLCによってC-18分取カラム(Phenomenex Jupiter 10μm C18 300Å 250x21.2 mm)上で精製した。
大腸菌における組み換えタンパク質発現の自動誘導
pET32a(Novagen)プラスミド内に含まれるOv-grn-1 pET41a又は大腸菌(Escherichia coli)チオレドキシン(trx)cDNAsを、BL21大腸菌細胞(Life Technologies)にトランスフェクトし、記載されたように自己誘導を有する組み換えタンパク質を生成するために使用した[4、22]。簡潔には、ZYM-5052培地に、100μMのFe(III)Cl3及び100μg/Lのカナマイシンを補充して、組み換えタンパク質(rOv-GRN-1)を産生するか、又は50μg/Lのアンピシリンを補充してTRXを産生した。1リットルのバッフル付き三角フラスコ中の200mlの接種培地を、37℃、300rpmの回転で一晩インキュベートして、自己誘導で発現を誘導した。
組み換えタンパク質精製
rOv-GRN-1の精製を、AKTA10精製システムを用いて4℃で行った(GE Healthcare)[23]。BL21大腸菌ペレットを3回の凍結/融解サイクルで溶解し、続いてQ4000ユニット(Qsonix)を用いて氷上で超音波処理した。得られた不溶性ペレットの20gを、400mlの尿素含有ニッケル結合緩衝液(8Mの尿素/300mMのNaCl/50mMのイミダゾール/50mMのリン酸ナトリウムpH8[Sigma])中で4℃で24時間ゆっくりと攪拌しながら可溶化した。0.22μMの濾過上清を、2×5mlのHistrap IMACニッケルカラム(GE Healthcare)上を通過させ、増加するイミダゾール濃度(50mMで2カラム容量[CV]/100mMで5CV)で洗浄し、結合緩衝液中の500mMのイミダゾールで溶出させた。対照TRXタンパク質を、同じ様式であるが、ネイティブ条件(カオトロピック剤を含まない)下で発現し、Histrap IMAC Nickelカラムで精製した[23]。
タンパク質のリフォールディング及び精製
尿素変性rOv-GRN-1のリフォールディングを、記載されたようにXK16/20カラム(GE)上の28mLのG10 Sephadex(GE)樹脂を用いて行った[23]。120mlのSuperdex 30 XK16/60カラム(GE)を使用して、3mlのリフォールドrOv-GRN-1を、150mMのNaCl、50mMのリン酸ナトリウム、pH6中に、1ml/分の流速で分画した。~1kDaと同程度のサイズで溶出するrOv-GRN-1モノマーを含む画分(10.4kDaの変性した分子サイズに関わらずグラニュリンタンパク質のフォールドに基づいて)をプールした。マイクロプレートBradfordアッセイ(Biorad)と280nmでの吸光度との組み合わせによって、タンパク質濃度を決定した。
NMR分光法及び構造決定
精製したペプチドを、90%H2O/10%D2O中に溶解して、~0.2mMのストックを得た。2D 1H-1H TOCSY、1H-1H NOESY、1H-1H DQF-COSY、1H-15N HSQC、及び1H-13C HSQCスペクトルを、極低温冷却プローブを備えた600 MHz AVANCE III NMR分光計(Bruker、カールスルーエ、ドイツ)を用いて290Kで得た。スペクトルを、1秒の走査間遅延(interscan delay)で記録した。NOESYスペクトルを200msの混合時間で得て、TOCSYスペクトルを80msの等方性混合期間で得た。Wuthrichらによって記載されたアプローチ[25]に基づいてCCPNMR[24]を用いて、全てのスペクトルを割り当てた。実験のαH化学シフトからWishartら[26]のランダムコイル1H NMR化学シフトを差し引くことによって、αH二次シフトを決定した。
Ov-GRN12-34及びOv-GRN12-35_3sの三次元構造を決定した。2D NOESYスペクトルを自動的に割り当て、構造のアンサンブルをプログラムCYANA[27]を用いて計算した。TALOS+を用いて予測されたねじれ角拘束(Torsion-angle restraints)を構造計算に使用した。ジスルフィド結合結合性(Cys1-Cys14、Cys8-Cys23)は、Ov-GRN12-34についての計算に含まれた。それは、これらの結合がシステイン残基の選択的保護によって確認されたためである。システイン残基の選択的保護は、最もエネルギー的に好ましい形態を単離する試みにおいて、Ov-GRN12-35_3sには使用されなかった。結果として、構造は、15の可能なジスルフィド結合性で計算された。CYANA標的関数(target functions)の分析を、最も可能性のある結合性を決定するために行った。構造をMOLMOL[28]を用いて可視化した。
哺乳動物細胞培養
非悪性胆管細胞株H69は、Dr. Gregory J. Gores(Mayo Clinic、ロチェスター、ミネソタ)により提供された、ヒト肝臓に由来するSV40形質転換ヒト胆管上皮細胞株である。H69細胞[23、29、30]は、軽微な変更を加えて、記載されたように単層としてT75cm2のベントフラスコ(vented flasks)(Corning)中に維持された[31]。細胞は、増殖因子補充専門完全培地[30][DMEM/F12であって、以下のものを含む:高グルコース、10%FCS、1×抗生物質/抗真菌剤、25μg/mlのアデニン、5μg/mlのインスリン、1μg/mlのエピネフリン、8.3μg/mlのホロトランスフェリン、0.62μg/mlのヒドロコルチゾン、13.6ng/mlのT3、及び10ng/mlのEGF-Life Technologies]を含む完全培地[RPMI(Sigma)]中で2~5日毎に0.25%のトリプシン(Life Technologies)を用いて定期的に分割しながら維持した。細胞増殖アッセイのための低栄養培地は、5%完全培地、すなわち0.5%FCS及び完全培地について上記に記載された1/20番目の増殖因子濃度であった。細胞株の同一性(ヒト由来)は、2015年1月におけるシングルタンデムリピート(single tandem repeat)(STR)分析で確認され(2つの対立遺伝子にわたって15/15のポジティブ遺伝子座)、ACLASSを通してCAP、ISO/IEC 17025:2005によって認定/認証されたDNA Diagnostics Centre(DDC)-medical(U.S.A.)でマイコプラズマフリーで確認された。
xCELLigenceを用いたリアルタイムでの細胞増殖モニタリング
細胞を、E-プレート(ACEA Biosciences)中の180μlの完全培地(上記)に1,500細胞/ウェルで播種し、xCELLigence SPシステム(ACEA Biosciences)でモニターしながら一晩増殖させた。斯かるxCELLigence SPシステムは、組織培養プレートの基部に組み込まれた嵌合した金微小電極にわたって電気的インピーダンスを測定することによってリアルタイムで細胞事象をモニターする[32]。180μlの低栄養培地(上記)を添加する前に、細胞をPBSで3回洗浄し、さらなる処理の前に最低6時間インキュベートした。処理物を10×濃度で調製し、20μlの総容量で各ウェルに添加した。xCELLigenceシステムは、処理後5~6日間1時間の間隔でセルインデックス(cell indexes)を記録した。セルインデックスの読み取りを処理前に正規化し、細胞増殖率を生物学的四重測定から決定し、4日目に対照細胞と比較した細胞の相対数を表す。処理に応答した細胞増殖の誘導の比較は、GraphPad Prism 6.02を使用してダネットの多重比較補正で二元配置分散分析試験を用いて行った。
マウス創傷アッセイ
これらの研究は、記載されたように、James Cook University Small Animal Ethics Committee、申請A1806及びA2204の承認を得て行われた[6]。簡潔には、1群当たり4~5匹の雌BALB/cマウスを麻酔し(腹腔内キシラジン16mg/kg;ケタミン80mg/kg)、その後、5mMの生検パンチ(Zivic instruments)を用いて頭頂部に皮膚深部創傷を負わせた。ベタジン液体消毒剤(Sanofi)を塗布し、1.5%のメチルセルロース(Sigma)で懸濁した71pmolのRegranex(製造業者Smith and Nephewによって推奨されるように、71pmolの処置は0.25cm2の創傷当たり1μgに等しい)、56pmolのrOv-GRN-1、Ov-GRN-1ペプチド、対照ペプチド(EADRKYDEVARKLAMVEADL)、TRX又はPBSのいずれかを含んだ50μlの塗布に続いた。創傷を毎日写真撮影し、処置群を盲検化した後、病変の面積をImageJソフトウェアで測定し、元の創傷画像から創傷閉鎖のパーセントとしてプロットした。創傷率の割合を、GraphPad prism 6.02を使用して多重比較のためのダネット補正を用いた二元配置分散分析試験で比較した。各マウス創傷研究を、再現性を得るために少なくとも2回行った。
結果
切断されたOv-GRN-1ペプチドの設計及び合成
Ov-GRN-1のN末端領域が独立してフォールディングできるかを決定するために、いくつかの切断されたペプチドを、FMOC化学を用いて設計及び合成した。合成ペプチドの配列を図2Aに示す。
Ov-GRN1-35、Ov-GRN8-38及びOv-GRN12-34は全て、全長タンパク質内にCysI、CysII、CysIII及びCysVに相当する4個のシステイン残基を含む(残りの報告に関して、ローマ数字は全長タンパク質に存在する番号付けを指す)。コイグラニュリン-1の三次元構造に基づいて、CysIV及びCysVIは、それぞれCysVII及びCysIXとジスルフィド結合を形成することが予想された[7]。切断されたアナログにおいて、CysIV及びCysVIは、これら残基間でのジスルフィド結合形成を防ぐために、アラニン残基で置換された。システイン残基の選択的保護を使用して、フォールディングを指向し、予測されるジスルフィド結合性を形成した(すなわちCysI-CysIII及びCysII-CysV)。
Ov-GRN-1は、グラニュリンの大半には存在しない伸長されたN末端テール(最初のシステイン残基の前の11残基)を含み、これら残基は、それらが生物活性における役割を果たすかを決定するために、Ov-GRN1-35に含まれた。Ov-GRN8-38においてN末端は切断され、C末端は伸長されて、コイグラニュリン-1切断型ペプチドと類似した数の残基を有するアナログを提供した。Ov-GRN12-34は、4個のシステイン残基(CysI、CysII、CysIII及びCysV)を含む最小配列であり、N-及びC末端領域がフォールディング及び活性に必要とされるかを決定するために設計された。
追加のペプチドは、切断されたN末端を有するが、Ov-GRN-1の最初の6個のシステインを含む合成された(Ov-GRN12-35_3s)であった(「3s」は、ペプチド中の3つのジスルフィド結合の存在を示す)。このペプチドは、システイン残基に関して哺乳動物のパラグラニュリン(上記)に類似している。それはシステイン残基の選択的保護無しに合成され、主要な立体配座はその構造及び活性の分析のために精製された。
NMR分光法による構造分析
NMR分光法を用いて、ペプチドの構造を分析した。Ov-GRN1-35、Ov-GRN8-38及びOv-GRN12-34の一次元スペクトルは、2つの天然ジスルフィド結合の形成にも関わらずβ-シート構造の欠如と一致してアミド領域における限られた分散を有する。二次元スペクトル(TOCSY及びNOESY)を使用して、共鳴を割り当て、αHシフトからランダムコイルシフト[16]を差し引くことによって二次シフトを決定した。二次シフトは、図2Bに示すように、これら3つのペプチドについての等価な残基にわたって類似であり、構造が類似であったこと、結果として、これらペプチドのN-及びC-末端における違いが全体の折り畳みに影響を及ぼさなかったことを示している。さらに、二次シフトは主に負であり、かつβ-シート構造は正の二次シフトによって特徴づけられるので、二次シフトはβ-シート構造の欠如と一致していた。Ov-GRN12-34の三次元構造は図3Aに示すように、NMR分光法を用いて決定した。特徴的なグラニュリンフォールドとは対照的に、構造は、ターン及び310ヘリックスの領域を含んでいた。構造統計は、補足表2に示されている。
2つのジスルフィド結合を含むOv-GRN-1ペプチドとは対照的に、3つのジスルフィド結合を有するOv-GRN12-35_3sは、一次元NMRスペクトルにおけるアミド領域により多くの分散を有する。さらに、おそらくプロリン残基の異性化に起因して、付加的なピークがスペクトルに存在した。これら付加的なピークにも関わらず、主要な立体配座は完全に割り当てられ、二次シフトは切断型コイグラニュリン-1[14]と類似であった(図3B)。このことは、全体的な構造の類似性を示している。残基1~30を含む切断型コイグラニュリン-1は、CysIV及びCysVIをセリン残基で置換して以前に合成され、β-シート構造を形成することが示された[14]。ここでは、本発明者らは、Ov-GRN-1の切断されたペプチドと一致するように、CysIV及びCysVIをアラニン残基で置換してコイグラニュリン1-30を合成した。セリン置換を有するコイグラニュリン-1の公開された[14]化学シフトとアラニン置換を有するペプチドとの間でわずかな変動のみが明らかであり(図6)、全体のフォールドが依然として維持されていることを示す。
Ov-GRN12-35_3sの構造がコイグラニュリン1-30と類似しているかどうかを確認するために、三次元構造をCYANAを用いて計算した。構造を最初にジスルフィド結合拘束なしに計算した。これら構造において、β-ヘアピンは残基14~23から存在したが、残基1~8は定義されていなかった。残基1~8についての定義の欠如は、最も可能性のある結合性への洞察を提供する硫黄-硫黄距離の分析を妨げた。それゆえ、代替アプローチが使用され、これによって構造は、15の可能なジスルフィド結合結合性で計算された。このアプローチは、ジスルフィド結合結合性を分析するためにジスルフィドリッチペプチド、例えばシクロチドに以前に使用されてきた[17、18]。Ov-GRN12-35_3sに対する15の結合性についてのCYANA標的関数を表1に示す。最も低いCYANA標的関数を有する結合性は、CysI-CysIII、CysII-CysV及びCysIV-CysVIであった。この結合性を有するOv-GRN12-35_3sの三次元構造は図3Aに示され、構造統計は補足表S1に提供される。分子の最もよく定義された領域は、残基14~23間のβ-ヘアピンであった。CysI及びCysIIを包含するN末端領域は、顕著な構造的障害を示した。
細胞増殖
リアルタイムでのH69胆管細胞の増殖に対するOv-GRN-1ペプチドの影響を、xCELLigence技術を用いて評価し、用量応答曲線をペプチドについて決定した。2μMの最終濃度でのOv-GRN12-35_3sは、対照ペプチドと比較して細胞増殖の41%の増加をもたらした(p<0.0001)(図4A)。Ov-GRN-1について得られたものと同様の用量応答曲線が、Ov-GRN12-35_3s処置で観察され、これは≧15nMの最終濃度で有意に増加した細胞増殖を特徴とする(p<0.05)。Ov-GRN12-34に代表される用量応答曲線で、2つのジスルフィド結合Ov-GRN-1ペプチドは、ナノモル濃度ではそれほど強力でなかったが、2μMでは有意な細胞増殖を促進した(14~25%の上記ペプチド対照;p<0.01)(図4A)。
これは、全ての試験濃度で最小細胞増殖(有意でない)、並びに32nMでのペプチド対照に対して9%の最大増殖を誘導したコイグラニュリン1-30と対照的である。全Ov-GRNペプチドの400nMでの応答は(図4B)、2つのジスルフィド結合ペプチドと比較して3つのジスルフィド結合ペプチド(Ov-GRN12-35_3s)の増強された効力を強調している。Ov-GRN12-35_3sは、その最も強力なものがOv-GRN1-35(ペプチド対照に対して9%の有意でない増加)であった最小増殖を誘導した残りのペプチドと比較して、細胞増殖における非常に有意な(p<0.0001)増加を促進した(ペプチド対照に対して26%)。
マウス創傷治癒モデル
メチルセルロースを配合した切断型Ov-GRN-1ペプチドを、創傷治癒のマウスモデルで試験した。全てのOv-GRN-1ペプチドは、メチルセルロース中の対照ペプチドと比較して、局所適用された場合に、強力な活性を示した(図5A、B)。Ov-GRN-1ペプチド、Ov-GRN-1タンパク質及びRegranexは、2~4日目にペプチド対照と比較して有意に治癒を改善した(p<0.05)。創傷が閉鎖すると、処置間の差異及び有意差は4日目を超えて明白ではなかった。Regranex及び様々なグラニュリンペプチドはほぼ同一の最適曲線を示し、インタクトなOv-GRN-1はここで、3日目及び4日目にRegranexを超える有意な改善を提供した唯一の試験化合物であった(p<0.05;図5B)。メチルセルロースを配合した様々な陰性対照群(PBSビヒクル対照、ペプチド対照、及びチオレドキシン(TRX)組み換えタンパク質対照を含む)の間で、有意差は観察されなかった。
4日目の治癒を、各生物学的反復からPBSビヒクルに対して評価した場合、Ov-GRN-1タンパク質及びペプチドによる創傷の処置は、対照と比較して創傷治癒を有意に加速させた(p<0.01、4日目:PBSに対して26~41%)。Ov-GRN-1タンパク質、Ov-GRN1-35及びOv-GRN12-34(PBSに対して37~41%)は、Regranex(PBSに対して29%)と比較して改善された治癒を提供したが、これら比較のいずれも4日目の時点で有意に達しなかった。
議論
グラニュリンの構造/活性相関を解明することは、このタンパク質ファミリーにおける配列及び構造の多様性を考慮すると困難であった。生物活性を有する領域はあまり理解されておらず、この増殖因子のための潜在的な受容体については不確実性が残っている[19、20]。
Ov-GRN-1は、他のグラニュリンと比較して異なるフォールディング経路を有すると思われる。2つの天然ジスルフィド結合(CysI-CysIII及びCysII-V)を含むOv-GRN-1のN末端領域は、コイグラニュリン-1及びヒトグラニュリンAとは対照的に、天然様β-ヘアピン構造へと独立してフォールドしない。Ov-GRN12-35_3sにおける第三の非天然ジスルフィド結合の導入が、コイグラニュリン-1及びヒトグラニュリンAペプチドに存在するものと同様のβ-ヘアピン構造をもたらすことは、注目に値する[14、15]。Ov-GRN12-35_3sのジスルフィド結合結合性は、2つの天然ジスルフィド結合(CysI-CysIII及びCysII-V)を、CysIV-CysVIジスルフィド結合に加えて、含むと思われる。結合対が種を超えて保存されている場合[7、9]、CysIVはCysVIIに、そしてCysVIはCysIXに結合することが予測されるので、後者の結合は全長Ov-GRN-1に存在しないと予測される。
哺乳動物プログラニュリンのパラグラニュリン(半グラニュリン)ドメインは、Ov-GRN12-35_3sに存在する等価な6個のシステイン残基を含み、生物学的に活性であって[21]、このことは、Ov-GRN12-35_3sが同じジスルフィド結合性を潜在的に含むことを示唆している。コイグラニュリン1-30ペプチドは、このCysI-CysIII、CysII-CysV、CysIV-CysVI結合性に適応し得る[14]。コイグラニュリン1-30ペプチドは、2つの天然ジスルフィド結合(CysI-CysIII及びCysII-CysV)のみを含むが、構造の分析は、CysIV及びCysVIを置換するセリン残基の側鎖が近接していることを示し、これらシステイン残基がジスルフィド結合を形成することが実現可能であることを示唆している。
Ov-GRN12-35_3sにおけるジスルフィド結合性は、全長Ov-GRN-1の構造に影響を及ぼし、斯かる構造は、十分な量の正確に折り畳まれた組み換え材料が利用可能でないままであるので、実験的に決定されていない。それゆえ、天然タンパク質のジスルフィド結合性は、コイグラニュリン-1についてもともと示された結合性に適合することが示されなかった[7]。タンパク質は、最初の6個のシステイン残基を含むジスルフィドドメイン(Ov-GRN12-35_3sに見られるものと等価)、並びに最後の6個のシステイン残基を含む第2のドメインを含むと考えられる。全長タンパク質の構造、及び寄生虫によって分泌される天然タンパク質との比較は無く、これは推論のままである。しかしながら、これまでの報告は、グラニュリンのジスルフィド結合性における曖昧さを明らかにした[9、15]。ヒトグラニュリンA及びFの構造は、明確に定義されたN末端領域を有するが、不規則なC末端領域は、全てのジスルフィド結合の特徴付けを妨げた。さらに、ヒトグラニュリンAのジスルフィド結合性の化学分析は、決定的ではなかった[9]。
Ov-GRN-1のフォールディングへの洞察を提供することに加えて、現在の研究は、N末端領域が生物活性に寄与し、Ov-GRN12-35_3sのβ-ヘアピンがさらに細胞増殖活性を増強することを明らかにした。しかしながら、β-ヘアピン構造は、増殖活性に関して完全なストーリーとは程遠く、それは、コイグラニュリン1-30ペプチドが二重のβ-ヘアピンを含み、そして、Ov-GRN-1ペプチドとは対照的に、試験した8つの濃度(10nM~2μM)で実質的な増殖を示さなかったためである。Ov-GRN-1とコイグラニュリン-1の配列との比較は、CysIとCysVIとの間に2個の保存された非システイン残基のみが存在することを明らかにする。このループ配列における保存の欠如は、フォールディング及び生物活性の両方における違いを説明する可能性が高い。
天然構造の欠如にも関わらず、Ov-GRN-1ペプチドを含む2つのジスルフィド結合は、高濃度(>800nM)で細胞増殖を促進し、マウスにおける皮膚創傷の有意な治癒を刺激した。Ov-GRN12-35_3sは、細胞増殖アッセイにおいて最も強力なペプチドであったが、他のOv-GRN-1ペプチドと同様にインビボで活性がなかった。Ov-GRN12-35_3sのβ-ヘアピンがインビボでの創傷治癒に関与している場合、本発明者らはマウスにおける違いを観察しなかった。細胞増殖活性は細胞株特異的である可能性があり、あるいはマウス創傷修復において試験された濃度は最適ではなかった。いずれの場合にも、マウスで観察された活性は、インビトロ分析からの知見よりも優れた生物学的及び治療的結果であり得る。将来的に、本発明者らは、Ov-GRN-1の構造-活性相関の役割の我々の理解を深めるために、多様な器官及び組織からの幅広い細胞の探索、並びに創傷治癒における欠点を示すマウスの調査を構想している。
結論として、NMR分光法による構造分析は、Ov-GRN-1が、おそらく一次配列に起因する、他のグラニュリンと比較して独特のフォールディング特性を示すことを示唆した。本発明らは、全長組み換えタンパク質よりも免疫原性が低く、かつ容易に産生される可能性が高いOv-GRN-1の生物活性領域を同定した。生物活性を維持する肝吸虫グラニュリンのペプチド及び誘導体は、創傷治療のための新規療法の同定に向けた重要な進歩を表す。
概要
Ov-GRN-1の生物活性領域(複数)の分析中に、4つの切断されたアナログのセットを合成し、NMR分光法を用いて構造的に特徴づけた。2つ又は3つのジスルフィド結合のいずれかを含むOv-GRN-1のN末端領域に由来するペプチドは、ヒト胆管細胞株の増殖を促進し、マウスにおける強力な創傷治癒を示した。2つの天然ジスルフィド結合のみを含むOv-GRN-1からのペプチドは、グラニュリンに特徴的なβ-ヘアピン構造を欠いている。注目すべきことに、非天然ジスルフィド結合の導入は、β-ヘアピン構造の形成に重要であった。Ov-GRN-1に由来するペプチドは、全長タンパク質よりも免疫原性が低く、かつ産生するのにより便利である可能性があるので、新規な創傷治癒薬の優れたリードである。
実施例2.肝吸虫由来グラニュリンのフォールディングへの洞察
導入
グラニュリンは、細胞増殖への影響を含む多様な生物学的機能を有する大きなファミリーのジスルフィドリッチタンパク質である[33]。グラニュリンドメイン間には限られた配列保存性があるが、全て、保存されたフレームワークを有する12個のシステイン残基を含む[34]。構造に関して最もよく研究されているグラニュリンは、コイグラニュリン-1であり、これは、6つのジスルフィド結合と一緒に留められた(stapled)β-ヘアピンの積み重ねを示す(図7-A)[35]。保存されたシステインフレームワークにも関わらず、構造/機能相関は複雑であり、いくつかのグラニュリンドメインは、細胞増殖活性を示し、いくつかは細胞増殖に阻害活性を有する[36、37]。
タイ肝吸虫から単離された肝吸虫グラニュリンであるOv-GRN-1は、インビボで強力な創傷治癒活性を示すが[34]、組み換え発現における低収量がその治療薬としての開発を制限している。構造/機能相関を解明することはまた、研究のための有意な量を産生することの困難性によって影響を受けた。しかしながら、本発明者らは、Ov-GRN-1の切断されたアナログが、正常な組織修復機構が圧倒される慢性創傷、例えば糖尿病性潰瘍の治療における可能性を有する機能的模倣物[34]を表すことを示した[38~41]。
本発明者らのOv-GRN-1の切断型アナログは、フォールディング及び生物活性領域への洞察を提供し始めたが、二次構造形成及び構造安定性についての重要な特徴に関して疑問が残されている。例えば、Ov-GRN-1における残基12~35に対応するペプチド(Ov-GRN12-35_3s)は、コイグラニュリン-1の切断形態とは対照的に1つのβ-ヘアピンのみを含む[34]。興味深いことに、このペプチドは、予測された結合性に基づいて非天然ジスルフィド結合を含み、二次構造の安定化におけるこの結合の役割は完全に理解されていない(図7-B)。Ov-GRN12-35_3sはまた、NMRスペクトルにおける付加的な立体配座の証拠を示す。これら付加的な立体配座は、プロリンcis/trans異性化の結果であると思われるが、どのプロリン残基が関与しているかを決定するためにさらなる研究が必要とされている。現在の研究において、本発明者らは、構造、フォールディング及び活性におけるプロリン残基の役割を決定するために、突然変異研究を用いた。最も構造的に安定かつ強力なアナログを決定することは、新規な創傷治癒剤としてのOv-GRN-1由来ペプチドの開発を促進すると思われる。
材料及び方法
ペプチド合成、精製及び特徴付け
グラニュリンアナログを、タンパク質Technologies PS3合成機で段階的固相ペプチド合成手順によって合成した。Fmocアミノ酸誘導体(Auspep、オーストラリア)を、HCTU(Iris、ドイツ)を用いて活性化し、DIPEA/DMFを用いて2-クロロトリチルクロリド樹脂状にカップリングした。ペプチドを、以下の切断カクテルを用いて樹脂から切断した:95%TFA:2.5%TIPS:2.5%dH2O。次のステップで、ペプチドを、氷冷ジエチルエーテルで沈殿させ、50%アセトニトリル:50%dH2O(0.1%TFA v/v)中に溶解し、その後、凍結乾燥した。得られた白色粉末を、C-18分取カラム(Phenomenex Jupiter 250x21.2 mm)、及び0.05%TFA(v/v)を含有するアセトニトリル-水混合物による1%勾配を用いて、逆相HPLCによって精製した。溶出を214及び280nmでモニターし、質量をMALDI TOF/TOF分光計を用いて決定した。
ジスルフィド形成
室温で24時間、5mMの還元グルタチオンを含有する0.1Mの重炭酸アンモニウム(pH8~8.2)中で0.1mg/mlのペプチドを一晩空気酸化することによって、ジスルフィド結合を形成した;溶液を酸性化、濾過し、RP-HPLCを用いてC-18分取カラム上で精製し、ペプチド質量を5800 MALDI TOF/TOF分光計を用いて分析した。
NMR分光法及び構造分析
試料を、90%H2O:10%D2O中に約0.2mMの濃度で凍結乾燥ペプチドから調製した。全てのNMRスペクトルを600 MHz AVANCE III NMR分光計(Bruker、カールスルーエ、ドイツ)で記録した。290Kでの2D 1H-1H TOCSY、1H-1H NOESY、1H-1H DQF-COSY、1H-15N HSQC、及び1H-13C HSQCを割り当てのために使用した。全てのスペクトルを、1秒の走査間遅延で記録した。NOESYスペクトルを200msの混合時間で得て、TOCSYスペクトルを80msの等方性混合期間で得た。Wuthrichらに記載されたアプローチ[43]に基づいてCCPNMR[42]を用いて、全てのスペクトルを割り当てた。実験のαH化学シフトからWishartら[44]のランダムコイル1H NMR化学シフトを差し引くことによって、αH二次シフトを決定した。2D NOESYスペクトルを割り当て、構造のアンサンブルをプログラムCYANA[45]を用いて計算した。合計100個の初期構造を、CYANAプログラムを用いて計算した。TALOS Nを用いて予測されたねじれ角拘束を構造計算に使用した。構造をMOLMOL[46]を用いて可視化した。
哺乳動物細胞培養
H69細胞株、非悪性胆管細胞株を、Dr. Gregory J. Gores(Mayo Clinic、ロチェスター、ミネソタ)から入手した[34]。H69細胞を、37℃及び5%インキュベーターで、10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco、スコットランド)を補充した、1×抗生物質/抗真菌剤及び15mMのHEPESを含有するDMEM/F12(Life Technologies)中で、以前に記載[34]されたように増殖及び維持した。以前の研究に記載されたように特定の濃度範囲で0.5%FBS及び特定のホルモン及び増殖因子を補充した改変DMEM/F12培地を用いて、細胞増殖アッセイを行った[34]。
xCELLigenceを用いたリアルタイムでの細胞増殖モニタリング
リアルタイムでの増殖研究を、以前に記載[34]されたようにxCELLigence SPシステム(ACEA Biosciences)を用いて行った。H69細胞を、96-ウェルxCELLigence E-plate(ACEA Biosciences)内に2000細胞/ウェルの密度で播種した;次に、37℃の5%CO2インキュベーター内に設置したxCELLigenceシステムに入れ、一晩モニターした[47]。次に、完全培地を、180μlの飢餓培地(以前に記載[34]されたように、5%FBSを補充した改変DMEM/F12培地)と交換し、少なくとも6時間インキュベートした。200nMの最終濃度を提供するために、20μlの総容量で各ウェルに処理剤を添加した。48時間の測定にわたって、細胞はコンフルエントに達し、システムはセルインデックス(CI)を記録した。細胞増殖率を、経時的に対照細胞と比較して処理細胞の相対数として計算した(48時間の培養)。GraphPad Prism 6.02を、一元配置分散分析、続いてダネットの多重比較検定に使用した。各処理を四連で測定した。
結果
GRN12-35_3s突然変異体の設計及び合成
どのプロリン残基が複数の立体配座の採用に関与しているかを決定するために、GRN12-35_3sの3つの単一突然変異体(P2A、P4A、P10A)(ここで、各突然変異体は3個のプロリンのうち1個がアラニンに変更されている)を化学合成した。GRN3Alaと称するさらなるアナログでは、3個全てのプロリン残基がアラニンで置換された。合成Ov-GRN-1切断型ペプチドの配列を表1に示す。
全てのペプチドを、FMOC固相ペプチド合成を用いて化学合成した。粗ペプチドをRP-HPLCを用いて精製し、質量分析をMALDI質量分析計を用いて行った。室温で24時間、0.1Mの重炭酸アンモニウム及び5mMのグルタチオン中で、ジスルフィド結合を形成させた。酸化的フォールディング反応のHPLCトレースを図8に示す。ペプチドの大部分について、比較的鋭い、早く溶出するピークが存在する。この早期溶出ピークの収率は、他のペプチドと比較してGRN3Ala突然変異体で有意に高い。現在の研究で使用された条件下では、GRN12-35_3sは、単一の異性体に効率的にフォールドしない。GRNP10Aを除いて、全てのペプチドについて、主要なピーク(図8においてアスタリスクで強調されている)が、さらなる特徴づけのために各反応から単離された。48時間の酸化期間後であっても、GRNP10Aのフォールディング反応に存在する多数のピークは、単一の主要なジスルフィド異性体の精製を妨げた。
NMR分光法による構造分析
GRN12-35_3sアナログについての精製画分又は部分精製画分の構造を、NMR分光法を用いて分析した。全てのペプチドの一次元スペクトルは、β-シート構造の存在と一致するアミド領域の有意な分散を有する。個々のプロリン突然変異体についてのTOCSY及びNOESYスペクトルの分析は、プロリン残基の異性化の結果として最も可能性の高い複数の立体配座の存在を示している。対照的に、GRN3Alaペプチドは、複数の立体配座を有するようには見えなかった(図9)。
二次元スペクトル(TOCSY及びNOESY)を使用して主要な立体配座を割り当て、αHシフトからランダムコイルシフト[48]を差し引くことによって二次シフトを決定した。二次シフトは、一般に、図10に示したように、N末端Ov-GRN-1ペプチド、GRN12-35_3sと比較して全てのプロリン突然変異体についての等価残基にわたって類似しており、全体の構造が類似であることを示している。正の二次シフトのストレッチは、β-シート構造の存在と一致している。
Ov-GRN-1ペプチドの構造がGRN12-35_3sと類似のフォールドを維持するかを確認するために、選択されたアナログの三次元構造を、プログラムCYANAを使用して決定した。効率的なフォールディング、立体配座不均一性の欠如による全構造分析のため、並びに全体のフォールドに対するプロリン残基の影響を決定するために、GRN3Alaが選択された。GRN12-35_3sのジスルフィド結合パターンは以前に、CysI-CysIII、CysII-CysV及びCysIV-CysVIであると予測された[49]。GRN3Alaの三次元構造は、GRN12-35_3sとペプチドのC末端領域でβ-ヘアピンを共有するが、N末端領域は、図11に示したように残基4~11からのα-ヘリックスを含む。
xCELLigenceを用いたリアルタイムでの細胞増殖モニタリング
構造研究に加えて、Ov-GRN12-35_3sの構造-機能相関への洞察を得るために、全ての操作されたペプチドを、インビトロ細胞増殖アッセイで試験した。図12は、48時間にわたるxCELLigenceプレートの読み取りからの各ペプチドについての細胞増殖の速度を示す。個々のプロリン突然変異体は、陰性対照ペプチド(トロポミオシン由来の20残基ペプチド)と比較して有意な細胞増殖を示した。GRN24P2AP4A及びP10Aの増殖率は、対照ペプチドに対してそれぞれ、131.7%(P<0.0001)、141.6%(P<0.0001)及び131.4%(P<0.0001)であった。対照的に、GRN3Alaは、対照ペプチドと比較して細胞増殖に関して統計的に有意な影響を示さなかった(P=0.90)。
議論
Ov-GRN-1は、新規な創傷治癒剤の開発における潜在的可能性を有するが、構造/機能相関に関する情報は限られている。ここで、本発明者らは、Ov-GRN12-35_3sにおける3個全てのプロリン残基が、構造及び機能の両方において重要な役割を果たすことを示す。
個々のプロリン残基の突然変異は、Ov-GRN12-35_3sの全体のフォールドを乱さなかったが、複数の立体配座が依然としてNMRスペクトルに存在した。対照的に、3個全てのプロリン残基がアラニン残基に突然変異された場合、単一の立体配座に対応する単一のピークのセットが、NMRスペクトルにおいて観察された。これらの結果は、3個全てのプロリン残基がcis/trans異性化に関与していることを示している。
Cis/trans異性化は、タンパク質のフォールディングにおける律速段階である可能性があり[49]、Ov-GRN12-35_3sのフォールディングに影響を及ぼすようである。アラニン残基によるプロリン10の突然変異は、Ov-GRN12-35_3sと比較してフォールディングを改善しなかったが、GRNP2A及びGRNP4Aのフォールディング収率は改善された。3個全てのプロリン残基の除去によるcis/trans異性化の防止は、最も高いフォールディング収率をもたらした(図8)。これら結果は、プロリン残基が一般的に、現在の条件下でフォールディングに有害であることを示している。
プロリン残基はまた、インビトロ細胞増殖に影響を有する。GRN3Alaの活性の欠如は、N末端領域における構造の摂動(perturbation)に関連するように思われる。プロリン残基の除去は、らせん構造の形成を可能にし、そしてこの立体配座は結合パートナーとの相互作用を可能にしないかもしれない。個々のプロリン残基をアラニン残基で置換しても依然として細胞増殖が生じることを考慮すると、プロリン残基との直接的相互作用が生物活性に関与しているとは考えにくい。しかしながら、3個のプロリン残基の全ては、Ov-GRN12-35_3sの最初の10残基内に存在するので、C末端ヘアピンよりもむしろこの領域が生物活性において重要であると思われる。
ヒトグラニュリンモジュールに関する以前の研究は、本発明者らの現在の研究と一致して、配列がフォールディング収率に有意な影響を及ぼし得ることを示している。哺乳動物において、グラニュリンはプログラニュリンとして発現され、これは7個半のグラニュリンモジュールを含む[33]。ヒトプログラニュリンにおける7個のグラニュリンモジュールは、大腸菌においてチオレドキシン融合タンパク質として発現された[50]。発現されたペプチドは、精製され、組み換えエンテロキナーゼによって切断されて、グラニュリンモジュールを放出した。HPLC分析及びNMR分析によるフォールディングの分析は、グラニュリンA、C及びFが、少なくともペプチドの領域に関して、比較的明確に定義された構造を示すことを示している。対照的に、グラニュリンB及びEは、NMRスペクトルにおいて有意な分散を示さず、グラニュリンD及びGは、ユニークなプロトンについてNMRスペクトルにおいて複数のシグナルを有することが報告された[50]。グラニュリンB及びFは、Ov-GRN12-35_3sにおけるプロリン2と一致して配列内の最初のシステインの直後にプロリン残基を含む。グラニュリンBは、フォールディング反応のHPLCプロファイルにおいて主要な鋭いピークを有さないが、グラニュリンFは有する[50]。この比較に基づいて、このプロリン残基が、全長ヒトグラニュリンモジュールのフォールディングに有意な影響を及ぼすことはないようである。
概要
全体として、本発明者らの結果は、Ov-GRN12-35_3sの構造及び機能におけるプロリン残基の重要性を強調している。さらに、データは、新世代のOv-GRN-1ベースの強力なアナログの設計に不可欠な情報を提供する。
実施例3.ペプチドのマウス創傷治癒活性の評価
4日目の創傷治癒を、本明細書に記載されたペプチドを用いて評価した(Ov-GRN-1、Ov-GRN1-35、Ov-GRN8-38、Ov-GRN12-34、Ov-GRN12-35_3s、GRN24-3ala、GRN24-P2A、GRN24-P4A、及びGRN27sps)。結果は、耳の間の頭皮への生検パンチから生じる~0.2cm2の創傷に0~4日目から50μl容量で毎日塗布された1.5%メチルセルロースゲル中の、56pmolの組み換えOv-GRN-1、Ov-GRN-1ペプチド、チオレドキシン(TRX)タンパク質対照、及び71pmolのRegranexによる処置から、56pmolのペプチド対照に対して示されている(図13(B))。いかなる時点においても、非関連ペプチド対照、PBS、又はTRXタンパク質対照の間で有意差は認められなかった(ns)。ペプチドOv-GRN-1、Ov-GRN1-35、Ov-GRN8-38、Ov-GRN12-34、Ov-GRN12-35_3s、GRN24-3ala、及びGRN24-3p4aは、対照と比較して創傷治癒の有意な増加を示した。
全てのパネル:4~5匹の動物の群の2~6個の生物学的反復の平均治癒率を、SEMバーと共にプロットした。見やすくするために、群は左右にわずかにシフトされている。多重比較のためのダネット補正を用いた反復測定二元配置分散分析試験は、ペプチド対照に対して各群を比較する。ペプチド/タンパク質対照に対する有意性は、****=p<0.0001、***=p<0.001、**=p<0.01、*=p<0.05、ns=有意でない、によって示された。アスタリスク又はハッシュの色は関連する群を表す。
本明細書を通して、目的は、発明をいずれか一つの実施形態又は特定の特徴の集合に限定することなく、発明の好ましい実施形態を記載することであった。それゆえ、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく例示された特定の実施形態において、種々の修正及び変更を行うことができることが当業者によって理解されるであろう。
本明細書で言及される全てのコンピュータープログラム、アルゴリズム、特許及び科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
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Figure 0007186451000001
Figure 0007186451000002
Figure 0007186451000003

Claims (12)

  1. 配列番号2~10のいずれか一つに記載のアミノ酸配列からなる、 単離されたペプチド
  2. 請求項1に記載の単離されたペプチドをコードする、単離された核酸。
  3. 請求項に記載の単離された核酸を含む、遺伝子コンストラクト。
  4. 請求項に記載の遺伝子コンストラクトを含む、宿主細胞。
  5. 薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、請求項1に記載の単離されたペプチド、又は請求項に記載の単離された核酸を含有する、医薬組成物。
  6. 医薬として使用するための、請求項1に記載の単離されたペプチド。
  7. 医薬として使用するための、請求項に記載の単離された核酸。
  8. 創傷の治療に使用するための、請求項1に記載の単離されたペプチド。
  9. 創傷の治療に使用するための、請求項に記載の単離された核酸。
  10. 請求項1に記載の単離されたペプチド、又は請求項に記載の単離された核酸、又は請求項に記載の医薬組成物の使用であって、インビトロ細胞増殖及び/又はインビトロ細胞遊走を開始、促進(promoting)、刺激、又は促進(facilitating)するための使用。
  11. 請求項1に記載の単離されたペプチド、又は請求項に記載の単離された核酸、又は請求項に記載の遺伝子コンストラクト、又は請求項に記載の医薬組成物の使用であって、インビトロ細胞増殖及び/又はインビトロ細胞遊走を開始、促進(promoting)、刺激、又は促進(facilitating)するための使用。
  12. インビトロ細胞増殖及び/又は遊走を促進する方法であって、インビトロの1つ又は複数の細胞と、請求項1に記載の単離されたペプチド、又は請求項に記載の単離された核酸とを接触させ、それによって、前記インビトロの1つ又は複数の細胞の増殖及び/又は遊走を開始、刺激又は促進するステップを含む、方法。
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