JP7185423B2 - 導光体及びそれを用いた光学ラインセンサ、並びに、導光体の製造方法 - Google Patents

導光体及びそれを用いた光学ラインセンサ、並びに、導光体の製造方法 Download PDF

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Description

本願発明は、光学ラインセンサに用いる紫外線LED(以下「UV_LED」と記す)や紫外線LD(以下「UV_LD」と記す)などの紫外線光源の発する紫外光が照明用導光体に入射することにより、前記導光体内部に蛍光を生じ、その蛍光が、紫外光で照明された媒体から発する蛍光に混入し、媒体の発する正味の蛍光の測定を阻害するため、導光体自身の発する蛍光の発生を防止するための方法に関するものであり、特に、サイドライト方式の光学ラインセンサにおける照明用導光体並びにそれを用いた光学ラインセンサに関するものである。以下では、紫外線により前記導光体に発生する蛍光を紫外蛍光と記す。
前記光学ラインセンサユニットは、紙葉類の鑑別などのために、紙葉類の色・模様などの認識をする目的で用いられる装置である(特許文献1及び2参照)。この光学ラインセンサユニットは、紙葉類を照明するためのライン光源と、そのライン光源から出射され紙葉類を透過又は反射した光(蛍光を含む)を導くためのレンズアレイと、そのレンズアレイにより導かれた光をレンズアレイの焦点位置で受光する受光部とを備えている。
ライン光源から出射される光には、主に紙葉類の表と裏の図柄、或いは、画像などを読み取るための可視光と、主に紙葉類の真偽を判別するための紫外線(以下「UV光」と記す)、赤外光(以下「IR光」と記す)とが用いられる。
前記ライン光源の典型的な構成は、紙葉類の搬送方向に直角に長手状に延びる導光体と、導光体の一側面に長手方向に形成された光拡散パターンと、導光体の一方の端面付近に設けられた光源部と、導光体を保持するための導光体ケースとを有している(特許文献2参照)。
前記光学ラインセンサのライン光源において、光源部から導光体の一端に入射された光は、光拡散パターンにより拡散・屈折されて、その一部は導光体の一側面から紙葉類に向けて照射される。
この光拡散パターンの微細形状を工夫することにより、紙葉類への照射光の長手方向に沿う光量のばらつきを抑制しながら、紙葉類に照射することができる。よって、安定した読み取りが可能となり、紙葉類の色や模様を正確に認識することができる。
特開2013-222346号公報 特許第6246351号公報
光学ラインセンサに用いる照明系は、大別して、直下型とサイドライト型に分類できる。
UV_LEDを搭載した光学ラインセンサは、当初直下型方式が主流であった。その理由は、個々のUV_LED光源のUV光量が少なかったからである。故にUV_LEDが多数必要となり、必然的に直下型を選択することとなった。直下型方式の光学ラインセンサ12を図1Aに示す。図1Bは、図1Aに示す光学ラインセンサ12に備えられたUV_LEDアレイ20の斜視図である。
この直下型方式では、UV_LEDアレイ20を主走査方向に配置し、コンタクトガラス17上において、主走査方向に直交する搬送方向11(副走査方向x)に向かって搬送された紙葉類を照明する。紙葉類は、読取面Sに沿って搬送される。UV_LEDアレイ20に備えられたLED光源22は、紙面に垂直な方向である主走査方向yに向かって、直線状に複数配置されている。受光レンズアレイ23は、副走査方向x及び主走査方向yに直交する方向zに沿って直立している。受光レンズアレイ23の被写体側焦点位置Pは、読取面S上に位置している。照明された紙葉類の被写体側焦点位置Pから出射した拡散光は、受光レンズアレイ23の受光センサ側焦点位置に結像し、複数の受光センサ24の受光面Tにより受光される。信号処理部33は、受光センサ24から入力される信号を処理する。UV_LEDアレイ20、受光レンズアレイ23、受光センサ24及び信号処理部33は、筐体16内に収容されており、筐体16の端面にコンタクトガラス17が設けられている。より具体的には、筐体16内の発光領域UにUV_LEDアレイ20が設けられるとともに、受光領域Vに受光センサ24及び信号処理部33が設けられている。
本方式では、光源であるLED光源22を主走査方向yに多数並べる必要がある。その欠点としては、第一に温度-出力特性がばらつくことにより、各LED光源22の光量(出力)を揃えることが困難であることであり、第二に、長期間動作により、各LED光源22の劣化特性がばらつくことにより正確な補正が出来ないことである。
同時に、主走査方向yにおいて、各LED光源22の配列ピッチに起因する光強度分布に、リップル(凹凸した光量分布)を生じやすい。これに対し、サイドライト方式では、照明光の滑らかな光強度分布を実現可能である。サイドライト方式の光学ラインセンサを図2に示す。図2では、光学ラインセンサのうちUV_LEDアレイ(光学ラインセンサ用照明光学系)の部分のみを示している。
図2の場合、主走査方向はLと記してある。図1Aに示す直下型方式と異なる点は、導光体1の長手方向(主走査方向L)の端部にLED光源3、4が配置されており、各LED光源3、4から出射した光が、光学フィルタ6、7を介して導光体1の端面1e、1fから導光体1に入射する。受光部は、図1に示した直下型方式と同様である。図2の導光体1の端部に配置されるLED光源3は、例えばUV_LED光源であり、LED光源4は例えば、可視LEDやIR_LEDである。各LED光源3、4は、端子31を介して基板5に固定され、基板5から電力が供給されることにより発光する。
導光体1は、主走査方向Lに沿って延びる細長い形状であり、アクリル樹脂などの光透過性の高い樹脂を用いる。アクリル樹脂以外では、シクロオレフィンポリマー系の樹脂やフッ素樹脂も好適である。特に、UV光を発光する光源が用いられる場合には、導光体1の材料として、UV光に対する減衰が比較的少ない樹脂が好ましい。導光体1は、底側面1a、左右側面1b、1c、光出射側面1d(図2において導光体1の上面に相当)、端面1e、1f及び光拡散パターン形成面1g(図2において導光体1の斜めカット面に相当)を有している。光出射側面1dは、レンズの集光効果を持たせるために外向きに滑らかな凸の曲線状に形成されている。ただし、光出射側面1dは必ずしも凸状に形成されていなくてもよく、平面状であってもよい。
光拡散パターン形成面1gに形成された光拡散パターンPは、導光体1の長手方向Lに沿って一直線状に延びている。この光拡散パターンPは、導光体1の光拡散パターン形成面1gに転写された複数のV字状の溝により構成されている。複数のV字状の溝は、それぞれ導光体1の長手方向(主走査方向L)に直交する方向に延びるように形成されている。この光拡散パターンPにより、導光体1の端面1e、1fから導光体1に入射する光を拡散反射させ、主走査方向Lに沿ってほぼ一様の明るさで光出射側面1dから紙葉類に光を照射することができる。これにより、主走査方向Lにおいて紙葉類に照射される光をほぼ一定とすることができ、照度むらをなくすことができる。
導光体1の底側面1a及び左右側面1b、1cは、カバー部材2により覆われている。カバー部材2は、導光体1の底側面1aに対向する内底面2a、導光体1の右側面1bに対向する右内側面2b、及び、導光体1の左側面1cに対向する左内側面2cを有している。これらの内面により断面がほぼ矩形状の凹部が形成され、この凹部内に導光体1が挿入される。導光体1に入射する光の一部は、導光体1を透過した後にカバー部材2に入射し、カバー部材2で反射して再び導光体1内に入射した後、導光体1の光出射側面1d側から出射して紙葉類を照明する。
図2においてフィルタ6、7の記載があるが、これは光学フィルタを意味する。以下、特に断らない限り、「光学フィルタ」は、単に「フィルタ」と記す。
図2に示したサイドライト方式の光学ラインセンサにも問題がある。
サイドライト方式では、紙葉類に対する照明エリアを直下型よりも広くとることが可能になり、光軸方向の光量変動を抑えることはできるが、絶対的な光量の不足が新たな問題として浮上してきた。即ち受光センサが受光する絶対光量が不足することが判明した。このため、光源であるUV_LEDの光量を増大させる必要が生じた。サイドライト方式では、主としてアクリルやシクロオレフィンポリマー等の樹脂を導光体として用いる。
本願発明者は、UV_LEDから出射した光が導光体に入射した際に、導光体自身が蛍光を発することを発見した。そして、その蛍光光量は導光体に入射するUV_LEDから出射した光量に比例することが判明した。導光体に入射するUV光量とそれに起因する蛍光光量との関係を図3に示す。図3はUV_LEDへの投入電流と受光センサの出力との関係を表している。即ち、UV_LEDへの投入電流の増加は、UV光量の増大を示し、また同時に、受光センサ出力の増大は、蛍光光量の増大を示しており、しかもUV光量と蛍光光量は比例している。
導光体自身が発生する蛍光による受光センサの出力は、蛍光を全く発しない媒体(以下「無蛍光媒体」と記す;例えば、ポリプロピレン繊維の不敷布、発泡ポリプロピレンフィルム、多孔質PTFE、アルミ蒸着を施した拡散フィルムなど)を紙葉類の位置に配置し、測定して得ることが可能である。本願発明においては、媒体として発泡ポリプロピレンフィルムを用いた。導光体が発する蛍光光量が増えれば以下に述べる問題が発生する。
紙葉類は、一般的には、同じ光量のUV光を照射しても、発生する蛍光量が異なる。発生する蛍光量が大きい紙葉類ならば、導光体が発する蛍光が大きい場合でも、画像として認識可能である。しかし、紙葉類自身が発する蛍光量が小さいものもあり、この場合は、導光体が発する蛍光に、紙葉類が発する蛍光が埋もれてしまい、画質が劣化する。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、導光体自身が発する蛍光を減少させた導光体及びそれを用いた光学ラインセンサ、並びに、導光体の製造方法を提供することを目的とする。
本願発明者は、上記サイドライト方式の導光体が発する蛍光の問題に取り組み、前記導光体自身が発する蛍光を減じる方策について鋭意検討した結果、以下に述べる解決策を見出した。
本願発明に係る光学ラインセンサ用導光体は、光学ラインセンサとして組み込まれる前に、予め、UV光が照射される。具体的には、アブレーション効果により樹脂の分子構造を破壊しない程度のエネルギーであり、かつ、波長が420nm以下(より好ましくは325nm~405nm)のUV光を用いる。光によるアブレーション効果で樹脂の高分子鎖が切れない条件は、分子の結合エネルギーで知ることができる。各結合エネルギーをKJ/molで表し、アブレーション波長も加えた一般的なデータを表1に示す。ここで、本願発明における「アブレーション効果」とは、紫外線などのエネルギーの高い光を高分子化合物に照射した際、光エネルギーが分子の化学結合エネルギーよりも高い場合に、前記高分子化合物の分子結合が変化、或いは、切断されることを意味しており、「アブレーション波長」は、前記高分子化合物の分子の化学結合エネルギーにほぼ等しいエネルギーを有する光の波長を意味している。
Figure 0007185423000001
照射するUV光のエネルギー(波長)を、表1を参考にして決めることが可能である。代表的な結合エネルギーとアブレーション波長の関係は、例えば、λ=305nm(N-H結合)、λ=325nm(C-O結合)、λ=355nm(C-C結合)、λ=365nm(C-N結合)である。
但し、同じ単結合であっても分子の立体的構造により結合エネルギーが異なる為、アブレーションが可能になる光エネルギーも異なることに留意して照射するUV光の波長を決定する必要がある。
また、図4に代表的な樹脂の300nm以下の吸収スペクトルを示す。A,B,Cは樹脂の種類が異なることを示している。多くの樹脂は、図4に示すような吸収スペクトル帯があるために、280nm以下のUV光を用いると、導光体樹脂の分子鎖が切れ、変質をまねき、導光体としての機能を失うおそれがあることが分かる。この帯域の波長は特に用いるべきではない。
但し、前述の如く、280nm以下の波長は、樹脂に照射する光源としては望ましくないと言えるのであるが、分子結合エネルギーが高い樹脂のみの分子構造であればこの限りではない。
更に図5にアクリル樹脂の分光透過率特性を示す。図5では300nm以下の波長の透過率が下がってきており、図4の吸収スペクトルにほぼ対応していることが分かる。
以上の観点から、導光体に照射するUV光の波長帯域は、300nmから420nmまで(より好ましくは325nm~405nm)を用いるのが好ましい。
次にUV_LEDが発するUV光のスペクトルと、前記UV光による導光体が発する蛍光スペクトル(紫外蛍光スペクトル)と、を比較した結果を図6A及び図6Bに示す。前記スペクトルは、前記導光体の任意の表面の数か所において導光体が発するスペクトルを分光器により測定した際の測定値を平均化したものである。図6Aは、評価に用いたUV_LEDの発光スペクトルであり、ピーク波長は365nmである。図6Bは導光体が発した蛍光のスペクトル(前記同様数か所の測定値の平均値)であり、415nm近傍と463nm近傍にピークがあることが分かる。
本願発明の一つの例示においては、第一に、励起波長のスペクトルのピーク値と蛍光波長のスペクトルのピーク値の比を用いて導光体の発する蛍光の許容値を決定する方法について述べる。また、励起波長は、本願発明においては、365nmを用いているが、UV_LEDの発光波長が異なれば、自ずと、励起波長も異なる為、各UV_LEDの発光波長に応じたピーク波長におけるピーク値により決定してもよい。また、本願発明において、蛍光スペクトルの強度は、463nm近傍(458nm~468nm)のピーク値を用いている。また、図6Aに示す励起光のスペクトルピークの測定値は、1.26×10であり、図6Bに示す蛍光のスペクトルの463nm近傍(458nm~468nm)の強度のピーク値は3.65×10であり、その比は、2.9×10-3となる。但し、この値は、紫外線照射処理前の初期状態における値である。
紫外線照射処理とは、本願発明の導光体に紫外線を照射する処理であり、後述する導光体が発する蛍光を減じるためにUV光を前記導光体に照射し、前記導光体が発する蛍光(紫外蛍光)を減じる手段をいう。紫外蛍光とは、上記導光体を製品に組み込んだ時に、紙葉類を照明するためのUV_LEDから出射したUV光により導光体自身から発する蛍光を意味する。紫外光照射処理に用いる光源は、発光スペクトルが325nmから405nmにピークを有する少なくとも一つの紫外光源であり、かつ、前記ピークの1/10値幅が50nm以下であり、好ましくは30nm以下である。但し、本願発明における紫外蛍光は、製品に組み込む前に本願発明の導光体にUV光を入射した際に発生する蛍光も含む。
尚、本願発明で例示したスペクトル及びスペクトル強度は前述の如くであるが、励起スペクトルが異なれば、蛍光スペクトルも異なることもあり、また、異ならない場合においても、スペクトル強度は異なる。そのため、各励起スペクトル、並びに、前記各励起スペクトルにより発生した蛍光スペクトルとの比を用いて、許容値を決定すべきである。
図7は、紫外線照射処理前後の導光体の蛍光スペクトルである。前記のUV光を導光体に照射する前と比較すると、UV光を照射した後の方が導光体自身から発生する蛍光光量が減じていることが図7から分かる。図7において、図6Bと同様に463nm近傍(458nm~468nm)のスペクトルの強度比を求めると、約1:4であった。
図6A、図6B及び図7より、ピーク波長が365nmのUV_LEDを用いた際に、このUV_LEDの励起スペクトルのピーク強度と、導光体が発する蛍光スペクトルの463nm近傍(458nm~468nmの波長帯域)におけるスペクトルのピーク強度との比は、1×10-3以下となった。UV光が導光体に入射し、導光体の出射面から紙葉類に向けて出射される光のスペクトルのピーク強度をPLEDとし、導光体が発する蛍光のスペクトルの波長帯域にあるピーク強度をPとしたとき、下記式(1)を満足することが好ましい。
/PLED < 1×10-3 ・・・(1)
本願発明によれば、導光体を製品に組み込む前に、UV光による導光体自身が発する蛍光を抑えることが出来る。このため、UV_LEDを制御する際に、導光体から発生する蛍光成分がUV成分に混入せず、正確なUV_LEDの制御が可能になる。また、導光体の蛍光成分が少なくなることで、紙葉類が経時劣化した結果、紙葉類から発する蛍光成分が少ない場合でもその蛍光を正確に測定でき、ひいては、正確な真贋判定が可能になる。
直下型光学ラインセンサの一例を示す断面図である。 図1に示す光学ラインセンサに備えられたUV_LEDアレイの斜視図である。 本願発明の導光体を組み込むサイドライト型光学ラインセンサを示す分解斜視図である。 UV_LEDの投入電流と受光センサの出力を示すグラフである。 樹脂の深紫外域の分光吸収特性を示すグラフである。 アクリルの分光透過率特性を示すグラフである。 UV_LEDの発光スペクトルを示すグラフである。 導光体が発する蛍光スペクトルを示すグラフである。 紫外線照射処理用UV光の導光体への照射前・照射後での導光体の発する蛍光強度の比較をスペクトルで示したグラフである。 各種UV_LEDの発光スペクトル(相対強度)である。 UV_LED照射後30分後の残蛍光量を波長別に表したグラフである。 ピーク波長が365nmのUV_LEDを用いた場合のUV光照射時間と蛍光減衰との関係を表すグラフである。 発光波長が345nmのUV_LEDを用いた際の導光体から発する蛍光減衰を表したグラフである。 発光波長が355nmのUV_LEDを用いた際の導光体から発する蛍光減衰を表したグラフである。 水銀キセノンランプの発光スペクトルのうち、赤外カットフィルタやバンドパスフィルタを用いて365nmのスペクトルを取り出し、UV照射器に用いた際の水銀キセノンランプのスペクトルを表すグラフである。 UV照射器に水銀キセノンランプを用いた際の導光体から発する蛍光の減衰を表したグラフである。
本実施形態に係る光学ラインセンサは、サイドライト方式の光学ラインセンサであり、その具体的構成の一例は、図2を用いて既に詳述した通りである。本願発明の導光体に照射するUV光は、本願発明では例示しない各種装置を用いて照射することが考えられるが、要は、導光体の内部にUV光を導光できればよい。
<UV_LEDを用いる場合>
図8にUV_LEDの各種発光スペクトル(相対強度で表している)を示す。
図8は、300nmから420nmの波長帯域にスペクトルピークを有するLEDのスペクトルである。本願発明においては、まず、365nm、385nm、405nmのピーク波長を有するUV_LEDを用いて実験した。いずれも120mW/cmのパワーを有する。
図9は、UV_LED照射後30分後の残蛍光量である。残蛍光量とは、前述したように紫外線照射処理前後において、製品に組み込んだ導光体、或いは、製品と同じ評価機に組み込んだ導光体自身が発生する蛍光による受光センサの出力値の比を表しており、各波長において紫外線照射処理前を100%としている。また、蛍光を全く発しない無蛍光媒体を紙葉類の位置に配置して得た受光センサ出力値を用いた。図9によれば、短波長の方がUV光による蛍光量減衰効果が高いことが分かる。しかしながら、蛍光減衰効果の差は、10%程度であり、大きな差は無い。しかも、どのUV_LEDにおいても、UV光を30分照射後には、ほぼ半減していることが分かる。
次に、ピーク波長が365nmのUV_LEDを用いた場合のUV光照射時間と蛍光減衰との関係を図10に示す。図10によれば10時間経過で、蛍光量は、3分の1以下に減衰することが分かる。この場合は、365nmであるが、他のピーク波長のLED光源でも同様の効果がある。より短波長側のピーク波長を有するLED光源がより導光体の発する蛍光減衰に効果的である。
更に、ピーク波長が、345nm、355nmであるより短波長側の発光波長を有するUV_LEDを照射した場合の残蛍光量を図11A及び図11Bに示す。その際のUV光のパワーは、それぞれピーク波長355nmのUV_LEDが30mW/cm、345nmのUV_LEDが90mW/cmである。図11A及び図11Bに示した如く、350nm以下の短波長側においても蛍光減衰の効果があることが分かる。
図9、図10、図11A及び図11Bから、UV光により導光体が発する蛍光は、各初期値に対し減衰していることが分かる。具体的には、図9より、約60%(405nm)、約55%(385nm)、約50%(365nm)に減衰しており、図10により、約70%(365nm)に減衰しており、図11Aより、約60%(345nm)、図11Bより、約45%(355nm)に減衰していることが分かる。前記の減衰効果には、導光体の発する蛍光量のばらつきを考慮する必要があるが、概ね、許容値は、初期値の60%以下であることが判明した。
即ち、紙葉類に代えて、無蛍光媒体に対してUV光を照射した際に、導光体が発する紫外蛍光による光学ラインセンサの紫外光照射処理前の出力値をSLAとし、紫外光照射処理後の出力値をSLBとしたときに、下記式(2)を満足することが好ましい。
LB/SLA < 0.6 ・・・(2)
<水銀キセノンランプを用いる場合>
次に導光体照射器の光源として水銀キセノンランプを用いた際の水銀キセノンランプのスペクトル強度を図12に示す。ここで用いた水銀キセノンランプのスペクトルには、バンドパスフィルタをかけて、深紫外域と、可視域、赤外域のスペクトルを除去し、365nmの輝線のみ残している。その際のUV光パワーは、120mW/cmである。
前記の水銀キセノンランプを照射した際の導光体の残蛍光量を図13に示す。図13に示した如く水銀キセノンランプにおいてもUV_LED光源同様に導光体から発する蛍光量を減じる効果があることが分かる。
前述した如く、アブレーションによる分子損傷の波長帯域を避けて、300nmから420nm(より好ましくは325nm~405nm)のUV光を用いて、導光体にUV光を照射すれば、UV照明光源の種類によらず、導光体から発する蛍光量を減じることができる。
即ち、本願発明によれば、製品として導光体を組み込む前にUV光による蛍光の発生を抑えることが出来るため、UV_LEDを制御する際に、導光体から発生する蛍光成分がUV成分に混ざらず、正確な紙葉類の判別が可能になる。
また、導光体の蛍光成分が少なくなることで、紙葉類が経時劣化した結果、紙葉類から発する蛍光成分が少なくなった場合でもその蛍光を正確に測定できるため、正確な真贋判定が可能になる。
前述した如く、製品として組み込む前に紫外線照射処理によりUV光を照射し、導光体の発する蛍光を予め減じておくことが好ましい。しかしながら、前述した紫外線照射処理は、製品として組み込んだ後にも可能であり、製品完成後、所謂エージング処理を実施することでも同じ効果がある。即ち、製品に組み込まれたUV_LEDが発するUV光を前記の導光体に照射・導光して同じ効果を得ることが出来る。
S:読取面
P:受光レンズの被写体側焦点位置
x:副走査方向
y:主走査方向
1:導光体
1d:光出射側面
1e:第2の端面
1f:第1の端面
2:カバー部材
1g:導光体の光拡散パターン形成面
3:第2の光源部
4:第1の光源部
5:基板
6:第2のフィルタ
7:第1のフィルタ
11:搬送方向
12:直下型光学ライセンサユニット
16:筐体
17:コンタクトガラス(透光カバー)
20:UV_LEDアレイ
22:LED光源
23:受光レンズアレイ
24:受光センサ
31:端子
33:信号処理部

Claims (4)

  1. 紙葉類に紫外光を照射し、該紙葉類が発する蛍光を検出し判別するための光学ラインセンサの製造方法であって、
    外蛍光スペクトルが、458nmから468nmの波長帯域において、ピークを有しており、紫外光による蛍光を発生する導光体を、前記光学ラインセンサに組み込む前に、前記導光体に対し紫外光源が発する紫外光を照射することにより、前記光学ラインセンサの製造時に予め前記導光体が発生する蛍光を減じることを特徴とする光学ラインセンサの製造方法
  2. 紙葉類に紫外光を照射し、該紙葉類が発する蛍光を検出し判別するための光学ラインセンサの製造方法であって、
    紫外蛍光スペクトルが、458nmから468nmの波長帯域において、ピークを有しており、紫外光による蛍光を発生する導光体を、前記光学ラインセンサに組み込んだ後に、前記導光体に対し紫外光源が発する紫外光を照射することにより、前記光学ラインセンサの製造時に予め前記導光体が発生する蛍光を減じることを特徴とする光学ラインセンサの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の光学ラインセンサの製造方法により製造された光学ラインセンサであって、
    前記導光体は、発光スペクトルが325nmから405nmにピークを有する少なくとも一つの紫外光源から照射される紫外光により紫外蛍光が減じられかつ、前記ピークの1/10値幅が50nm以下であり、
    前記紫外光を励起光としたときの励起波長のスペクトルのピーク波長が略365nmのときに、前記導光体の紫外蛍光スペクトルのピーク波長が、458nmから468nmの波長帯域にあって、
    前記紫外光が前記導光体に入射し、前記導光体の出射面から紙葉類に向けて出射される光のスペクトルのピーク強度をPLEDとし、前記導光体が発する蛍光のスペクトルの前記波長帯域にあるピーク強度をPとしたとき、
    /PLED < 1×10-3
    を満足することを特徴とする光学ラインセンサ
  4. 請求項1又は2に記載の光学ラインセンサの製造方法により製造された光学ラインセンサであって、
    前記紙葉類に代えて、無蛍光媒体に対して前記光源から紫外光を照射した際に、前記導光体が発する紫外蛍光による前記光学ラインセンサの紫外光照射処理前の出力値をSLAとし、前記紫外光照射処理後の出力値をSLBとしたときに、
    LB/SLA < 0.6
    を満足することを特徴とする光学ラインセンサ。
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