JP7184364B2 - ゲノム編集のための方法 - Google Patents
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Description
[1]痕跡が残らないゲノム配列を有する細胞を製造する方法であって、ゲノム内の標的化された領域中へと挿入された外因性核酸配列が完全に切除され、
ここで、該外因性核酸配列が、各末端における標的化された領域中のゲノム配列と相同な核酸配列と、二つの該相同な核酸配列間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位と、を含み、かつ該方法が:
(1)該配列特異的ヌクレアーゼ又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸を、該外因性核酸配列が挿入されるゲノム配列を有する宿主細胞中へと導入する工程;及び
(2)工程(1)で得られた細胞を培養する工程、を含み、
これによって、該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における二本鎖切断、及びこれに続いて、その結果生じる該相同な核酸配列を含む切断末端間におけるマイクロホモロジー媒介末端結合又は一本鎖アニーリングが引き起こされて、該外因性核酸配列が標的化された領域から完全に切除されて痕跡が残らないよう復帰されたゲノム配列を有する細胞が産生される、
方法;
[2]該外因性核酸配列が、2つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含み、かつそのうちの2つがそれぞれ、該2つの相同な核酸配列に実質的に隣接し、外因性遺伝子が該2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の間に挿入される、[1]記載の方法;
[3]該外因性遺伝子が、選択マーカー遺伝子である、[2]記載の方法;
[4]該相同な核酸配列のどちらか一方又は両方が、対応する内因性ゲノム配列中に変異を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の方法;
[5]該相同な核酸配列の両方が同一の変異を有し、それによって該標的化された領域中に変異を持つゲノム配列を有する細胞が産生される、[4]記載の方法;
[6]該相同な核酸配列のどちらか一方が変異を有し、それによって該標的化された領域中に変異を持つゲノム配列を有する細胞と、該変異を持たない同質遺伝子細胞が同時に産生される、[4]記載の方法;
[7]該配列特異的ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)又はクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質(CRISPR/Cas)である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法;
[8]該宿主細胞が、
該外因性核酸配列を含み、該外因性核酸配列の両末端に該相同な核酸配列と相同なゲノム配列の両末端にフランキングゲノム配列をそれぞれ含む核酸を細胞中に導入し、
それによって、相同組換えによって宿主ゲノムの標的化された領域内へ該外因性核酸配列が挿入される、
ことによって得られる、[1]~[7]のいずれかに記載の方法;
[9]該フランキングゲノム配列のどちらか一方又は両方が、対応する内因性ゲノム配列内に変異を有し、それによって該フランキングゲノム配列内に該変異を持つゲノム配列を有する細胞が産生される、[8]記載の方法;
[10]該相同組換えが、各フランキングゲノム配列内の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における配列特異的二本鎖切断によって媒介される、[8]又は[9]に記載の方法;
[11]該配列特異的ヌクレアーゼが、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casである、[10]記載の方法;
[12]該宿主細胞が、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞である[1]~[11]のいずれかに記載の方法;
[13]該標的化された領域が、その部位における変異が疾患を引き起こす部位を含む、[1]~[12]のいずれかに記載の方法;
[14](a)宿主ゲノム内の標的化された領域に相同な2つの核酸配列であって、該核酸配列のうちの1つの3’末端と、他方の核酸配列の5’末端とがオーバーラップする、2つの核酸配列;及び
(b)該(a)の2つの核酸配列の間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位、
を含む、[8]~[11]のいずれかに記載の方法における使用のための核酸;
[15]該外因性核酸配列が、2つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含みかつそれらのうちの2つがそれぞれ、該(a)の2つの核酸配列に実質的に隣接して配置され、該2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の間に外因性遺伝子が挿入されている、[14]記載の核酸;
[16](a)[14]又は[15]の核酸;及び
(b)(a)の核酸に含まれる該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を特異的に認識する1つ以上の種類の配列特異的ヌクレアーゼ、又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸、
を含む、[8]~[11]のいずれかに記載の方法における使用のためのキット;
[17]該配列特異的ヌクレアーゼが、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casである、[16]記載のキット;
等、を提供する。
本発明においてゲノム配列から除去されるべき「外因性核酸配列」は、
(a)その両末端に、該標的化された領域中のゲノム配列と相同な核酸配列(以下、「相同な核酸配列」ともいう)と、
(b)該2つの相同な核酸配列の間に1個以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位と
を含む。
上記(a)の相同な核酸配列は、上記(b)の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における二本鎖切断(DSB)によって生じる、該相同な核酸配列を含む2つの切断末端の間でマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)又は一本鎖アニーリングによるDNA修復が起こる限り特に制限はない。相同な核酸配列の例としては、該標的化された領域内に位置する連続する5~1000ヌクレオチド程度からなる核酸配列と相同な配列が挙げられる。天然には、MMEJは5~25ヌクレオチド程度のマイクロホモロジー配列を介して起こり、SSAはより長い(例えば、30ヌクレオチド以上)相同配列を介して起こるとされる。しかしながら、本発明においては、いずれの末端修復メカニズムによっても同等の結果を生じるので、いずれのメカニズムを用いているかを厳密に特定することは重要ではない。しかしながら、本発明の相同な核酸配列の構築の容易さ等を考慮すれば、該相同な核酸配列の好ましいヌクレオチド長として、5~100ヌクレオチド、あるいは5~50ヌクレオチドが挙げられる。マイクロホモロジーの長さが増すにつれて、MMEJによる修復効率が向上することが知られている(Villarreal et al., 2012)。実際、本発明者らのプラスミド末端結合アッセイを使用する予備的研究においても、少なくとも5~50ヌクレオチドの範囲で、配列長依存的に修復効率が向上することが確認されいる。
上記(b)において用語「配列特異的ヌクレアーゼ」とは、ある特定の標的ヌクレオチド配列を特異的に認識して該標的ヌクレオチド配列の内部もしくはその近傍で二本鎖DNAを切断し得るヌクレアーゼを意味する。配列特異的ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ自体が配列特異性を有するものであってもよく、例えば、制限酵素が挙げられるが、(i)DNA鎖上の特定のヌクレオチド配列(即ち、標的ヌクレオチド配列)を特異的に認識して結合する能力を有する分子又は分子複合体(以後、「核酸配列認識モジュール」ともいう)と、前記(i)に連結された非特異的ヌクレアーゼ(例、Fok I等)との複合体(ここでの「複合体」には、複数の分子で構成されるものだけでなく、融合タンパク質のように、核酸配列認識モジュールとヌクレアーゼとを単一分子内に有するものも包含される)であってもよい。制限酵素認識部位よりも長いヌクレオチド配列に対する認識能力をヌクレアーゼに付与できる点で、後者がより好ましい。具体的には、好ましい配列特異的ヌクレアーゼの例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)又はクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質(CRISPR/Cas)等が挙げられる。その他、制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等のDNAと特異的に結合し得るタンパク質のDNA結合ドメインを有するが、DNA二重鎖切断能を有しないフラグメントに、非特異的ヌクレアーゼを連結したものも、配列特異的ヌクレアーゼとして用いることができる。さらには、PPRモチーフの連続によって配列特異性を有するように構成されたPPRタンパク質と、非特異的ヌクレアーゼを連結した人工ヌクレアーゼを用いることもできる(特開2013-128413号公報参照)。
本発明の方法は、以下の工程を含む。
(1)該外因性核酸配列が挿入されたゲノム配列を有する宿主細胞中に、該配列特異的ヌクレアーゼもしくはそれをコードする核酸を導入する工程;及び
(2)工程(1)で得られた細胞を培養する工程
工程(1)に用いられる外因性核酸配列が挿入されたゲノム配列を有する宿主細胞は、上記外因性核酸配列がゲノム配列中の標的化された領域内に挿入されたものであれば、いかなる手段により作製された細胞でもよい。好ましい一実施態様においては、該宿主細胞は、相同組換えにより内因性ゲノム配列の標的化された領域内に上記外因性核酸配列を挿入することにより作製されたものである。相同組換えによる上記外因性核酸配列の挿入は、例えば、該外因性核酸配列の5’及び3’末端に、該相同な核酸配列に対応する宿主細胞のゲノム配列の5’及び3’末端に隣接するゲノム配列(以下、「フランキングゲノム配列」ともいう)をそれぞれ連結した核酸、好ましくはターゲッティングベクターを該宿主細胞に常法により導入し、ゲノム中の標的化された領域内の前記相同な配列に対応するゲノム配列に、該外因性核酸配列が挿入された細胞を選択することにより行われる。
工程(1)に用いられる配列特異的ヌクレアーゼは、上記外因性核酸配列中に含まれる配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を認識して、当該認識部位の内部もしくはその近傍で、ゲノム配列を二本鎖切断できるものである。ここで配列特異的ヌクレアーゼとしては、上記したものを用いることができるが、好ましくは、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casなどの人工ヌクレアーゼ(核酸配列認識モジュールとヌクレアーゼとの複合体)である。
宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。
宿主が酵母である場合、Gal1/10プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。
宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
宿主が植物細胞である場合、CaMV35Sプロモーター、CaMV19Sプロモーター、NOSプロモーターなどが好ましい。
エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60,160 (1968)〕,エシェリヒア・コリJM103〔Nucleic Acids Research,9,309 (1981)〕,エシェリヒア・コリJA221〔Journal of Molecular Biology,120,517 (1978)〕,エシェリヒア・コリHB101〔Journal of Molecular Biology,41,459 (1969)〕,エシェリヒア・コリC600〔Genetics,39,440 (1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24,255 (1983)〕,バチルス・サブチルス207-21〔Journal of Biochemistry,95,87 (1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87-11A,DKD-5D,20B-12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036,ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞、Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合、昆虫細胞としては、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞〔以上、In Vivo, 13, 213-217 (1977)〕などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫、ショウジョウバエ、コオロギなどが用いられる〔Nature,315,592 (1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、dhfr遺伝子欠損CHO細胞、マウスL細胞,マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞,ラットGH3細胞、ヒトFL細胞などの細胞株、ヒト及び他の哺乳動物のiPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞、種々の組織から調製した初代培養細胞が用いられる。さらには、ゼブラフィッシュ胚、アフリカツメガエル卵母細胞なども用いることができる。
植物細胞としては、種々の植物(例えば、イネ、コムギ、トウモロコシ等の穀物、トマト、キュウリ、ナス等の商品作物、カーネーション、トルコギキョウ等の園芸植物、タバコ、シロイヌナズナ等の実験植物など)から調製した懸濁培養細胞、カルス、プロトプラスト、葉切片、根切片などが用いられる。
大腸菌は、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110 (1972)やGene,17,107 (1982)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
バチルス属菌は、例えば、Molecular & General Genetics,168,111 (1979)などに記載の方法に従ってベクター導入することができる。
酵母は、例えば、Methods in Enzymology,194,182-187 (1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75,1929 (1978)などに記載の方法に従ってベクター導入することができる。
昆虫細胞および昆虫は、例えば、Bio/Technology,6,47-55 (1988)などに記載の方法に従ってベクター導入することができる。
動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263-267 (1995)(秀潤社発行)、及びVirology,52,456 (1973)に記載の方法に従ってベクター導入することができる。
ベクターを導入した細胞の培養は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
例えば、大腸菌またはバチルス属菌を培養する場合、培養に使用される培地としては液体培地が好ましい。また、培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物などを含有することが好ましい。ここで、炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖などが;窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質が;無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げられる。また、培地は、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを含んでいてもよい。培地のpHは、好ましくは約5~約8である。
バチルス属菌の培養は、通常約30~約40℃で行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
酵母を培養する場合の培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77,4505 (1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81,5330 (1984)〕などが挙げられる。培地のpHは、好ましくは約5~約8である。培養は、通常約20℃~約35℃で行なわれる。必要に応じて、通気や撹拌を行ってもよい。
昆虫細胞または昆虫を培養する場合の培地としては、例えばGrace's Insect Medium〔Nature,195,788 (1962)〕に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6.2~約6.4である。培養は、通常約27℃で行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
動物細胞を培養する場合の培地としては、例えば、約5~約20%の胎児ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)〔Science,122,501 (1952)〕、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)〔Virology,8,396 (1959)〕、RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199,519 (1967)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73,1 (1950)〕などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6~約8である。培養は、通常約30℃~約40℃で行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
植物細胞を培養する培地としては、例えば、MS培地、LS培地、B5培地などが用いられる。培地のpHは好ましくは約5~約8である。培養は、通常約20℃~約30℃で行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
上述のように、本発明の方法の工程(1)に用いる宿主細胞を提供する際に、前記相同な核酸配列の一方もしくは両方の中の、対応する内因性ゲノム配列に対して1もしくは数個のヌクレオチド変異(例えば、置換、欠失、挿入、付加)を導入することができる。
(i) 該相同な核酸配列の両方に同一の変異を導入した場合、本発明の方法を実施すると、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位でのDSBと、それに続く切断末端間でのMMEJ又はSSAが起こり、その結果、ゲノム中の該相同な核酸配列に対応する内因性ゲノム配列内に、当該変異を導入することができる。
(ii) 該相同な核酸配列の両方に異なる変異(例、異なるヌクレオチドへの置換、異なる部位での変異等)を導入した場合、本発明の方法を実施すると、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位でのDSBと、それに続く切断末端間でのMMEJ又はSSAが起こり、その結果、ゲノム中の該相同な核酸配列に対応する内因性ゲノム配列内に、いずれか一方の該相同な核酸配列に対応する変異がそれぞれ導入された、2種の同質遺伝子的な細胞を得ることができる。
(iii) 該相同な核酸配列の一方に変異を導入した場合、本発明の方法を実施すると、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位でのDSBと、それに続く切断末端間でのMMEJ又はSSAが起こり、その結果、ゲノム中の該相同な核酸配列に対応する内因性ゲノム配列内に、当該変異が導入された細胞と、当該変異が導入されていない、2種の同質遺伝子的な細胞を得ることができる。
(iv) 本発明の方法の工程(1)に用いる宿主細胞が相同組換えにより提供される場合、前記フランキングゲノム配列内に内因性ゲノム配列に対して1以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入、付加)を導入することができる。該フランキングゲノム配列内に変異が導入された宿主細胞に対して、本発明の方法を実施すると、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位でのDSBと、それに続く切断末端間でのMMEJ又はSSAが起こり、その結果、ゲノム中の該フランキングゲノム配列内に、当該変異を導入することができる。
本発明はまた、本発明の方法における使用のための核酸(以下、「本発明の核酸」ともいう)を提供する。当該核酸は、本発明の方法の工程(1)に用いられる宿主細胞の作製に用いられる。
(a)宿主ゲノム内の標的化された領域に相同な2つの核酸配列であって、該核酸配列のうちの1つの3’末端と、他方の核酸配列の5’末端とがオーバーラップする、2つの核酸配列;及び
(b)該(a)の2つの核酸配列の間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位、
を含む。
上記(a)の2つの核酸配列は、本発明の方法における前記5’フランキングゲノム配列の3’末端に前記相同な核酸配列が付加された配列と、本発明の方法における前記3’ フランキングゲノム配列の5’末端に前記相同な核酸配列が付加された配列に相当し、該相同な核酸配列部分においてオーバーラップする。
本発明はまた、本発明の方法における使用のためのキット(以下、「本発明のキット」ともいう)を提供する。当該キットは、
(a)言及された本発明の核酸;及び
(b)(a)の核酸に含まれる該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を特異的に認識する1つ又は2つ種類の配列特異的ヌクレアーゼ、又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸、
を含む。
プラスミド構築
表1は、本研究において使用された配列を検証したプラスミドの一覧表を提供する。完全なプラスミドの配列は、要求に応じて、又はAddgeneを通して入手可能である。クローニング及びバリデーションに使用したプライマーを表2に表す。
HPRT1_B NC-TALENは、以前に記載されている(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)。非反復可変性二残基(non-repeat-variable di-residue(non-RVD))バリエーションを持つAvr-TALEN発現ベクターを、Platinum TALEN法(Sakuma et al., Scientific reports3, 3379, 2013)を使用して、CMVの代わりにCAGプロモーターを含む改変ptCMV-136/63-VR発現ベクターへと構築した。次いで、DNA結合モジュールを、2工程のGolden Gate法を使用して構築した。構築されたモジュールは以下のとおりである:左、HD HD NI NG NG HD HD NG NI NG NN NI HD NG NN NG NI NN NI NG;右、NI NG NI HD NG HD NI HD NI HD NI NI NG NI NN HD NG。AAVS1を標的化するTALENは、以前に記載されている(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)。
CRISPR/Cas9発現のために、sgRNAオリゴ(表2)を、以前に記載されたとおり(Ran et al., 2013)にBbsIで直線化させたpX330(Addgeneプラスミド番号42230、Feng Zhang氏より寄贈された)にアニーリングさせてクローニングした。得られたプラスミド(pX-EGFP-g1、-g2、及び-g3)の配列を検証した(表1)。
HPRT1 SSAレポーターベクターを、以前に記載されたとおり(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)に使用した。eGFP sgRNAのための追加のCRISPR/Cas9 SSAレポーターベクターを、プロトスペーサー及びPAMからなるオリゴをアニーリングさせた後(表2)、BsaIで直線化したpGL4-SSAにライゲーションさせることによって作製した。
HPRT1遺伝子編集のためのMhAXドナーベクターを作製するために、HPRT1_B TALENで標的化された部位の周囲の1253bpの相同領域を、201B7 iPSCゲノムDNAからPCR増幅し(Takahashi et al., 2007)、最小pBluescriptバックボーンにクローニングし、配列を検証した(p3-HPRT1)。puro-ΔTK選択マーカーを、以前に記載されたとおり(Chen and Bradley, 2000)に設計し、AAVS1ドナーベクター(Addgene plasmid #22075)中に構築した。InFusionクローニング(クローンテック社)を使用して、2A-puro-ΔTKカセットを、p3-HPRT1ドナーベクター中へと導入した。簡単には、p3-HPRT1ベクターを、切除及びMMEJ修復のための全ての操作上の配列(eGFP1プロトスペーサー及びPAM配列、適切に設計されたμH、並びにサイレント及び疾患関連変異(μH内もしくは本文中で示した特有のフランキング領域内のいずれかの中に含まれる)が挙げられる)を含み、12~15ntのInFusionオーバーハング(表2)で終わるプライマーでインバースPCRによって増幅させた。2A-puro-ΔTKカセットを、T2A及び選択マーカーコード領域が、HPRTエキソン3のインフレームであるように増幅させて、pHPRT1-Ptk-ftsGFP1を得た。p3-HPRT1-S104R-PdTK-mCh及びp3-HPRT1-S104Rf-PdTK-mChのHPRTMunichドナーベクターを構築するために、改変μHと点変異とを持つInFusionプライマーを、PCRに使用した(表2)。次に、まずpAAVS1-P-CAG-DESTからCAG::Gatewayカセットをクローニングするために制限-ライゲーションを使用し(Addgeneプラスミド番号80490; Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)、次いでmCherryのGatewayクローニングによってCAG::mCherryレポーターを導入した。
SSAアッセイを、以前に記載されたとおり(Ochiai et al., 2010)に実行した。簡単には、TALEN又はCRISPR/Cas9ヌクレアーゼ発現ベクターを各200ng、100ngの適切なpGL4-SSA標的ベクター、及び20ngのpGL4_74_hRlucTK Renillaリファレンスベクターを含むDNA混合物を、96ウェルプレートにおいて、25μLのOpti-MEM I低血清培地(インビトロジェン社)中で調製した。次いで、0.7μLのリポフェクタミン2000(インビトロジェン社)を含有する25μLのOpti-MEM Iを添加し、室温で30分間インキュベートした。次いで、HEK293T細胞(Thermo Scientific社)を15% FBS含有DMEM中4×104個の細胞/100μLの密度で添加し、37℃、5% CO2で、24時間培養した。ルシフェラーゼ活性をアッセイするために、75μLの増殖培地を75μLのDual-Glo試薬(プロメガ社)で置換する前に、プレートをまず室温まで平衡化した。10分間インキュベーションした後、150μLの反応物を白色のマイクロタイタープレートへと移し、発光(1秒)を、Centro LB960(ベルトールド社)又は2104 EnVision Multilabel Plate Reader(パーキンエルマー社)で読み取った50μLのストップ試薬の添加と10分間のインキュベーションに次いで、Renilla発光を同様に読み取った。活性を、Firefly/Renilla強度の比率によって計算した。
未分化ヒトESC及びiPSCを、以前に記載されたとおり、フィーダーを含まない条件下で維持した(Kim et al. 2016)。簡単には、H1 hESC(Thomson et. al., 1998)及び1383D6 iPSCを、組換えヒトラミン-511 E8断片(iMatrix-511、ニッピ社)でコーティングされた6ウェル組織培養プレート上(0.5μg/cm2)で、StemFit AK03又はAK02N(味の素株式会社)培地中で培養した。継代のために、細胞を、37℃で10分間の300μLのAccumax(Innovative Cell Technologies株式会社)での処置に次いで、ピペットでの穏やかな機械的解離によって、剥離させた。細胞を回収するために、10μMのROCK阻害剤Y-27632(和光純薬工業株式会社)を含有する700μLの培養液を添加した。細胞を、TC20(バイオラッド社)上で、トリパンブルー色素排除法を使用して数えた。典型的には、各継代において1~3×103個の細胞/cm2をY-27632含有培地中に播種した。48時間後、培地を、Y-27632を含まないものへと変更した。
プレートに撒いた5~7日後、細胞は80~90%の培養密度に達し、再び継代のために調製した。凍結hiPSCストックを作るために、細胞を1×106個の生細胞/1mL STEM-CELLBANKER(タカラバイオ株式会社)の密度で再懸濁し、200~500μLの細胞懸濁液(2~5×105個のhiPSC)をクライオチューブへと移した。ストックのバイアルを、iMatrix-511でコートされた6ウェル組織培養プレート上へと、Y-27632含有StemFit AK03又はAK02N培地中で解凍させた(1つのバイアル/10cm2)。
409B2の維持(Okita, et. al., 2010)を、霊長類ES細胞用培地(株式会社リプロセル)中で、SNLフィーダー細胞上で実行した(Tsubooka, et. al., 2011)。継代のため、SNLフィーダー細胞を、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)中、1mg/mlコラゲナーゼ、0.25%トリプシン、20% KSR、及び1mM CaCl2を含有し、Mg2+及びCa2+を含まない、300μLのCTK溶液(ナカライテスク株式会社)中、2分間、室温でのインキュベーションによってウェルから剥離させた。次に、CTK溶液を除去し、ウェルを2mLのDPBSで2回洗浄した。Recombinant Human FGF-basic(PEPROTECH社)を補填した1mLの霊長類ES細胞用培地(株式会社リプロセル)を加え、コロニーをセルスクレーパーで収集し、ウェル全体をくまなく上下に数回ピペッティングすることで、小さな凝集塊へと解離させた。分割比は、新鮮なSNLフィーダーでコーティングされたプレートに対し、~1:5であった。
409B2 iPSCにおけるNC-TALENを使用したHPRT1ノックアウト実験を、以前に記載されたとおり(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)に、SNLフィーダー上でDNAの送達にはNeon(インビトロジェン社)エレクトロポレーションを用いて実行した。H1 ESC及び1383D6 iPSCにおいてAvr-TALENを使用したTALEN評価アッセイ及びHPRT1ノックアウト実験を、以前に記載されたとおり(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)に、フィーダーを含まない条件下で、DNAの送達にはNEPA21(ネッパジーン株式会社)を用いて実行した。簡単には、CAG-dNC-HPRT1 TALEN(各3μg)又はCAG-Avr-HPRT TALEN(各3μg)を、単細胞懸濁液中で、NEPA21エレクトロポレーションによって1×106個の細胞に遺伝子導入した。エレクトロポレーションした細胞を、1~5×105個の細胞/60mm培養皿の密度でプレートに撒いた。エレクトロポレーションの2日後、6-チオグアニン(6-TG、20μM;シグマアルドリッチ社)選択を開始し、7~10日間の期間にわたり毎日給餌した。集団解析のために、少なくとも50~300でコロニーを貯蔵し、ゲノムDNAの調製の前に一度継代した。クローン解析のために、iPSCコロニーをマイクロピペットで手動にて単離し、以前に記載されたように、96ウェル形式で培養、処理、及び冷凍保管した(Kim et al., 2016)。選択したクローンを解凍し、液体窒素中での永久保管のために増やした。
遺伝子ターゲティングを、本質的に記載されたとおりに実行した(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)。簡単には、ヌクレアーゼ発現ベクター(CRISPRについて1μg、TALENについて各1μG)及びドナーベクター(3μg)を、単一細胞懸濁液中で、1×106個の細胞に対してNEPA21エレクトロポレーションによって遺伝子導入した。エレクトロポレーションしたiPSCを、Y-27632含有Stemfit培地中1~5×105個の細胞/60mm培養皿の密度でプレートに撒いた。エレクトロポレーションの2日後、Y-27632を除去し、0.5μg/mLのピューロマイシン(シグマアルドリッチ社)を加え、7~10日間の期間にわたり毎日給餌した。クローンを、マイクロピペットで手動にて単離し、上記のように、96ウェル形式で処理した。
カセットの切除を開始させるために、1μgのpX-EGFP-g1発現ベクターを、単一細胞懸濁液中で、1×106個の細胞に対してNEPA21エレクトロポレーションによって遺伝子導入し、Y-27632含有Stemfit培地中1~5×105個の細胞/60mm培養皿の密度でプレートに撒いた。エレクトロポレーションの2日後に、Y-27632を除去した。
HAT(1×)選択によって濃縮されたカセットの切除を、7~10日間の期間にわたり毎日給餌しながら実行した。クローンを手動にて単離し、上記のように、96ウェル形式で処理した。
蛍光レポーターを含むカセットでは、カセットが切除されたmCherry陰性細胞の濃縮をFACSによって実施した。pX-EGFP-g1でエレクトロポレーションしたiPSCを、通常通りプレートに撒き、選択圧の非存在下で回復させた。6日後、細胞を下に記載のようにFACS分取に供した。回復したmCherry陰性細胞集団を計数し、HAT(1×)の存在下又は非存在下で、クローン密度でプレートに撒いた。クローンを手動にて単離し、上記のように、96ウェル形式で処理した。
GFP又はmCherryの蛍光強度のルーチン的な測定のために、3.0×105個の細胞をFACS緩衝液(2% BSAを補填したDPBS)中に懸濁し、BD LSRFortessa Cell Analyzer(BDバイオサイエンス)を使用してBD FACSDivaソフトウェア(BDバイオサイエンス)で解析した。p3-HPRT1-S104R-PdTK-mCh(片側性S104R Munich変異)又はp3-HPRT1-S104Rf-PdTK-mCh(両側性S104R Munich変異)で標的化されたクローンのmCherry蛍光強度を、96ウェル形式で、MACSQuant VYB(ミルテニーバイオテク株式会社)上で測定した。
カセットを切除されたmCherry陰性iPSCの単離のために、細胞をFACS緩衝液中で、~1×106個の細胞/mLの密度で、単一細胞の懸濁液として収集し、凝集塊を取り除くためにセルストレーナーを通してろ過した。シングレットに対してゲート設定した後、mCherry陰性細胞集団を、BD FACSAria IIセルソーター(BDバイオサイエンス)上で、20μMのY-27632を含有するStemfit AK02N培地中に収集した。分取効率を、BD LSRFortessa Cell Analyzerを使用して決定した。
フローサイトメトリーデータを、FlowJoソフトウェア(Tree Star社)によって解析して作成した。
コンフルーエントな、又は薬剤選択された培養物からのiPSCのプレートを、氷冷DPBSで2回洗浄し、氷冷メタノール(ナカライテスク株式会社)で10分間、室温で固定した。メタノールを除去し、プレートの底部を覆うのに十分なクリスタルバイオレット溶液(HT90132、シグマアルドリッチ社)を添加した。室温での10分間のインキュベーション後、染色溶液を除去し、プレートをddH2Oで穏やかにすすいだ。室温で完全に乾燥させた後、STYLUS XZ-2(オリンパス株式会社)カメラで、ウェル全体の画像を取得した。
PCRスクリーニング及びシーケンシング用のゲノムDNAを、DNeasy Blood & Tissue Kit(株式会社キアゲン)を製造者の指示に従って使用して、0.5~1×106個の細胞から抽出した。サザンブロット用のゲノムDNAを、溶解緩衝液(100mM Tris-HCl、pH8.5、5mM EDTA、0.2% SDS、200mM NaCl、及び1mg/mL プロテイナーゼK)を使用して6ウェルのシャーレ(~1~3×106個の細胞)の1つのコンフルーエントなウェルから抽出し、それに続き、標準的なフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿、及びTE pH8.0中での再懸濁を行った。ハイスループットのサザンブロット又はPCRスクリーニングのために、ゲノムDNAを、プレート溶解緩衝液(10mM Tris-HCl、pH7.5、10mM EDTA、0.5% サルコシル、10mM NaCl、及び1mg/mL プロテイナーゼK)を使用して96ウェル形式で抽出し(Ramirez-Solis et al., 1992)、それに続き、直接的なエタノール沈殿及び制限消化混合物又はTE pH8.0中での再懸濁を行った。
HPRT1(受入番号NG_012329.1)のエキソン1~9のプライマー設計を、NCBIプライマーBLASTを使用し、任意の設定においてヒトリピートフィルター、SNPハンドリング、及びプライマー対特異性のヒト(taxid:9606)基準ゲノム(表2)、をチェックして実施した。H1 ESC及び1383D6 iPSCについて、KAPA Taq Extraを用いて、以下のプロトコール(98℃で10秒間、59℃で15秒間、68℃で4分間)×30サイクル、4℃で保持、を使用してゲノムDNAからエキソン1~9を増幅させ、そしてシーケンシングした。
遺伝子ターゲティングのために、puro耐性クローンをPCRによってスクリーニングして、5’及び3’の標的接合部を検証した。ドナーベクターホモロジーアーム外のプライマー及び導入遺伝子特異的なプライマーを、図9及び12、並びに表2中に記載されるように使用した。PCRを、以下のプロトコール(98℃で10秒間、59℃で15秒間、68℃で4分間)×30サイクル、4℃で保持、を使用して、KAPA Taq Extraを用いて実行した。接合部領域のシーケンシングを使用して、隣接するμH及びCRISPRプロトスペーサーの忠実度を保証した。
標的カセットの切除に次ぐ、HPRT1_B TALEN誘導変異スペクトル及びMMEJ修復率を、プライマーセットdna309/310を用い、AmpliTaq 360(ABI)95℃で10分間、(95℃で30秒間、57℃で30秒間、72℃で60秒間)×30サイクル、72℃で7分間、4℃で保持、を使用して、プールした又はクローンゲノムDNA調製物からスクリーニングした。クローンからのPCR産物を、同一のプライマーを使用して直接シーケンスし、一方で、プールからのPCR産物はTOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社)を使用してクローニングし、次に、得られた細菌コロニーからのT3/T7プライマーを用いたPCR増幅に次いで個々にシーケンスした。
片側性又は両側性の変異μHでの切除後に、サイレント変異が定着したかを検証するために、ゲノムDNAを、dna1720/411プライマーを使用して増幅させた。切断されたアンプリコンをAflII制限酵素での処置後又は処置なしで、ゲル電気泳動によって分離させた。
シーケンシング
PCR産物を、シーケンシングに先立って、ExoSAP-IT(アフィメトリクス社)で処置した。BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)を使用して、エタノール沈殿によって精製し、3130xl Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムズ)上で実行することによって、DNAシーケンシングを実施した。配列アライメントを、Sequencher v5.1(Genecodes)又はSnapgene v3.1.4 以上(GSL Biotech LLC.)を使用して実施した。ベースコールの信頼度が低いシーケンストレースファイルを、さらなる解析から除外した。
約50クローン(H1)又は200クローン(1383D6)からなるiPSCの集団をプールしてゲノムDNAを収集し、上記のように増幅させた。混合配列のTIDE解析を、https://tide.nki.nl/(Brinkman et al., 2014)におけるオンラインツールを使用して実施した。1383D6 iPSC又はH1 ESCからの配列データを、基準として使用した。TIDEは、CRISPR/Cas9用に設計されており、TALENは、スペーサー内の未確定の位置でDSBを誘導するため、我々は、予測された切断点を、ベースコールの信頼度が見かけ上混合された配列と完全に一致して最初に低下したHPRT1_B TALEN-L結合部位(ATTCCTATGACTGTAGAT^TTT)に隣接するように、スペーサーの5’末端に配置した。欠失サイズのウィンドウを、より大きな欠失に適応させるように、20bpに拡張した。残りのパラメータは、デフォルトに設定するか、又は提供されたシーケンストレースファイルの性質に基づいて自動的に調整されることを許容した。
HPRT-B及びmCherryプローブ断片を、それぞれゲノムPCRアンプリコン又はプラスミドPCRアンプリコンから調製し(表2)、一方で、TKプローブをプラスミド制限断片から調製した。DIG標識dUTP(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を、製造者の指示に従って、HPRT-B及びmCherryの場合には、ExTaq(タカラバイオ株式会社)を使用してPCR増幅によって組み入れ、TKの場合にはランダムプライミングによって組み入れた。
ゲノムDNA(5~10μg)を、BSA(100μg/mL)、RNaseA(100μg/mL)及びスペルミジン(1mM)の存在下、3~5倍過剰の制限エンドヌクレアーゼで一晩消化した。消化されたDNA断片を、0.8%アガロースゲル上で分離し、脱プリン化し、変性させ、20×SSCを使用してHybond N+ナイロン膜(GEヘルスケア社)へと移行させた。膜を、UV架橋し、プレハイブリダイズし、4mLのDIG Easy Hybバッファー(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)中150ng/mLのジゴキシゲニン(DIG)標識DNAプローブとともに、42℃で一晩、常に回転させながらインキュベートした。65℃での洗浄(0.5×SSC;0.1% SDS)を繰り返した後、膜をブロックし(DIG Wash and Block Buffer Set、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)アルカリホスファターゼ接合抗DIG抗体(1:10,000、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を膜に加えた。シグナルを、CDP-star(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)によって高め、ImageQuant LAS 4000 imaging system(GEヘルスケア社)によって検出した。
位相差像及び蛍光像を、適切なフィルター及び露出時間を使用して、BZ-X710(株式会社キーエンス)上で取得した。
細胞増殖の測定
iPSC株を3×104個の細胞/6ウェル培養シャーレでプレートに撒き、HATなしで2日間増殖させ、次いでさらに2日間HATあり又はなしで増殖させた。細胞を、プレートに撒いた2日、3日及び4日後に収集し100μLのAK02中に再懸濁した。11μLアリコートの細胞懸濁液を、トリパンブルー染色液0.4%(ギブコ社)と1:1で穏やかなピペット操作で混合し、10μLをCounting Slide(バイオラッド社)の両側にアプライした。細胞数を、TC20 Automated Cell Counter(バイオラッド社)を用いて決定した。
HPRTタンパク質解析のために、全細胞可溶化液を、50mMの最終濃度でDTTを含有する100μLのNuPAGE LDSサンプルバッファー(1×)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)中で10分間、1×106個の細胞を煮沸することによって調製した。可溶化液を、Bis-Trisゲル上で分離させ、HPRT(F-1, sc-376938, 1:200, Santa Cruz社)及び抗アクチン(A2066, 1:5,000, シグマアルドリッチ社)抗体を使用してプロービングした。ヤギ抗ウサギIgG-HRP(Santa Cruz社: sc-2004)及びヤギ抗マウスIgG、HPRTに対するHRP-Linked Whole Ab Sheep(GEライフサイエンス:NA931-100UL)二次抗体並びに抗アクチンをそれぞれ、1:5000希釈で使用した。シグナルを、ECL Primeウエスタンブロッティング検出試薬(GEヘルスケア社)を使用して高め、ImageQuant LAS 4000 imaging system(GEヘルスケア社)上で検出した。
培養液試料を、キャピラリー電気泳動飛行時間型質量分析(CE-MS)を使用して、記載(Wakayama, et. al., 2015)のように解析した。資料の調製には、示したiPSCクローンから1.5×105個の細胞を、96ウェルプレートの各ウェルあたり、ROCKi(10μM)を含有する150μLのAK02培地中に播種し、37℃、5% CO2で培養した。翌日、培地を、150μLのROCKiを含まない新鮮なAK02培地で置換した。培地のみの基準資料を調製し、同様に37℃、5% CO2で培養した。24時間後、100μLの消費された培地を収集し、Lメチオニンスルホン(和光純薬工業株式会社)、MES(株式会社同仁化学研究所)、及びCSA(和光純薬工業株式会社)内部標準(各200μM)を含有する400μLのメタノールと混合した。200μLのMilli-Q超純水の添加に次いで、試料を、500μLのクロロホルムで抽出した。水層を、5kDa限外濾過(HMT)に供し、凍結乾燥した(ラブコンコ社)。凍結乾燥試料を解析前に、3-アミノピロリジン(シグマアルドリッチ社)及びトリメシン酸(和光純薬工業株式会社)内部標準(各200μM)を含有する50μLのMilli-Q超純水中に再懸濁した。データを、特にCE-MSべースのメタボロームデータ解析用に開発された、インハウスのソフトウェア(Master Hands-2.17.1.11)を使用して、解析及び定量化した。
MMEJは、HPRT1遺伝子座のTALEN切断に次ぐDSBRの結果に偏りをもたらす
プログラムされたエンドヌクレアーゼを使用した遺伝子破壊は、無作為の挿入及び欠失(挿入欠失)変異を作り出すために、非相同末端結合(NHEJ)等の細胞のエラープローン修復経路に頼る。我々は、以前にこの現象を活用して、改変TALEN構築物の活性を評価するために、201B7ヒト女性iPSCにおけるHPRT酵素機能を破壊した(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)。そのアッセイにおいて、ヒトHPRT1遺伝子のエキソン3を標的化する(図1A)HPRT1_B(Cermak et al., 2011)を倣って作られたTALENの一過性導入と、それに次ぐ6チオグアニン耐性(6-TGR)に関する濃縮が、再発される17塩基の欠失からなる変異(Δ17)を明らかにした。別の女性iPSC株(409B2)におけるHPRT1のTALEN媒介性破壊は、Δ17アレルを、~25%の頻度で再現した(図2)。NHEJの結果は、マイクロホモロジー媒介末端結合と思われる代替の修復経路中の短い直列反復配列によって偏りがもたらされ得る(McVey and Lee, Trends in genetics : TIG 24, 529-538, 2008)。したがって我々は、(Bae et al., 2014)に基づいたカスタムのPythonスクリプトを使用して、予測されたDSB部位でのマイクロホモロジー(μH)を検出した。スクリプトは、12bpの非相同配列によって分離されている、左のTALEN(TALEN-L)結合部位内及び介在スペーサー領域内に位置する5bpのμH(μ5:「GACTG」)を予測した。さらなる検討は、1つのバリアント塩基(T又はA)のみで分離される、μ5に隣接する3bpの第二のμH(μ3:「AGA」)を明らかにし、その結果、構造「GACTGWAGA」(ここで、W=T/A(以後、μ5W3と呼ぶ)の不完全な化合物μHがもたらされた。これらの知見は、さらなる研究を保証する、MMEJを介した偏った修復経路を示唆した。
MMEJ媒介性切除のために設計されたカセットを使用した点変異の定着
HPRT1遺伝子座での不完全なμ5W3修復(図1)に対する我々の知見を鑑み、我々は、結果の二様性を意図的に活用して、単一の実験から変異体及びコントロールiPSCクローンの両方を作製できると推察した。我々はしたがって、AvrHPRT1_B TALENで標的化された領域に隣接するHPRT1のエキソン3内に位置する、CからAへのトランスバージョン変異(312C>A;rs137852485)(Cariello et al., 1988)によって引き起こされる、HPRTMunich部分的酵素欠損(Wilson et al., J Biol Chem 256, 10306-10312, 1981)の再作製に着目することを選択した。外部変異の定着のために、上記したものと類似したMhAXカセット構造を使用して(図7A)、我々は、312C>A Munich変異を中心(二重下線)に、かつもっぱら診断目的のAflII制限部位を作出する追加のサイレント変異306G>TをμHの5’末端(一重下線)に含む(図10A)、新たな隣接するμH「TAAGAGATATTGT」を設計した(図10A)。したがってHPRT1ホモロジーにおけるオーバーラップは、変異の位置に適応するようにシフトされた(図10A及び図11)。μ5W3の不完全な修復に伴って観察される現象を再現するために(図1)、我々は、μHにおける患者の312C>A変異が、対称的(両側性)あるいは非対称的(下流のホモロジーが「TAAGAGCTATTGT」であるように片側性)のいずれか(図10)である2つのターゲティングベクターを作出した。両側性にコードされた変異は、100%のクローンにおいて定着すると仮定され、一方で、片側性にコードされた変異は、一部のクローンのみにおいて定着するだろうと仮定された。両方のμHは、診断上特徴的なAflII 306G>T変異を含有した。両方のμH成分は、左のホモロジーアーム内へとシフトされ、ターゲティング又は切除には影響しないと予想されたため、我々は、内因性μ5W3を破壊する努力はしなかった。最後に、我々は、カセットが切除されたiPSCの濃縮を改善させるために、構成的に発現するCAG::mCherryレポーター遺伝子を含めた。AvrHPRT1_B TALENを再び利用して、1383D6 iPSCにおける遺伝子ターゲティングが刺激された。クローンは、切除へと進める前に、サザンブロット(図11D)、PCR増幅とそれに次ぐAflII切断(図11E)及び接合部のシーケンス(データは示さず)、FACSによるmCherry発現(図10B)、並びにHAT感受性及び6-TG耐性(図10B)、によってスクリーニングされた。
操作されたHPRTMunich変異の表現型解析
MMEJ効率に対して、μH長を増加させることの効果を探索するために、我々は、HPRTMunichアレルを作り出すために使用された我々のカセット設計と類似した、プラスミドベースのMMEJアッセイを開発した。我々は、クロラムフェニコール/ccdB陽性/陰性細菌選択カセットを、eGFP-1(ps1)プロトスペーサーと隣接させ、それを、0~50bpまで長さが増加する隣接μHを持つルシフェラーゼ発現ベクター内へと挿入した(図14a、b)。HEK293T細胞内への遺伝子導入に次いで、μH長とルシフェラーゼ活性との間には陽性の相関が観察され、増加するμH長とともにMMEJ率の改善が示唆された(図14b)。ccdB感受性細菌宿主におけるKanRカセットが切除されたプラスミドの回収は、試験されたすべてのμH長にわたって、類似したコロニー数を明らかにし(データは示さず)、MMEJプラスミド系列を渡るps1切断に関する一定の効率を反映する。細菌コロニーからのμ0接合部のシーケンシングは、一貫したNHEJの様式を明らかにする一方で、μ20接合部は、KanRクローンの6.25%(2/32)における完全なMMEJ媒介性修復を明らかにした。したがって、ルシフェラーゼ活性と一致して、μH長の増加は、NHEJよりもMMEJ修復を改善させた。
APRT遺伝子座の2対立遺伝子改変
APRT遺伝子座の「液状」改変は、一連の同質遺伝子アレルを作出する
MhAXカセット切除のための代替のsgRNA
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さらに、本明細書中で述べられた特許及び特許出願明細書を含む任意の刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
Claims (14)
- 痕跡が残らないゲノム配列を有し、かつ、変異を持つゲノム配列を有する細胞と、痕跡が残らないゲノム配列を有し、かつ、該変異を持たない同質遺伝子細胞とを同時に製造する方法であって、ゲノム内の標的化された領域中へと挿入された外因性核酸配列が完全に切除され、
ここで、該外因性核酸配列が、各末端における標的化された領域中のゲノム配列と相同な核酸配列と、二つの該相同な核酸配列間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位と、を含み、該相同な核酸配列のどちらか一方だけが、対応する内因性ゲノム配列中に変異を有し、かつ該方法が:
(1)該配列特異的ヌクレアーゼ又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸を、該外因性核酸配列が挿入されるゲノム配列を有する宿主細胞中へと導入する工程;及び
(2)工程(1)で得られた細胞を培養する工程、を含み、
これによって、該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における二本鎖切断、及びこれに続いて、その結果生じる該相同な核酸配列を含む切断末端間におけるマイクロホモロジー媒介末端結合又は一本鎖アニーリングが引き起こされて、該外因性核酸配列が標的化された領域から完全に切除されて痕跡が残らないよう復帰されたゲノム配列を有する細胞が産生され、該標的化された領域中に変異を持つゲノム配列を有する細胞と、該変異を持たない同質遺伝子細胞が同時に産生される、
方法。 - 該外因性核酸配列が、2つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含み、かつそのうちの2つがそれぞれ、該2つの相同な核酸配列に実質的に隣接し、外因性遺伝子が該2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の間に挿入される、請求項1記載の方法。
- 該外因性遺伝子が、選択マーカー遺伝子である、請求項2記載の方法。
- 該配列特異的ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)又はクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質(CRISPR/Cas)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
- 該宿主細胞が、
該外因性核酸配列を含み、該外因性核酸配列の両末端に該相同な核酸配列と相同なゲノム配列の両末端にフランキングゲノム配列をそれぞれ含む核酸を細胞中に導入し、
それによって、相同組換えによって宿主ゲノムの標的化された領域内へ該外因性核酸配列が挿入される、
ことによって得られる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。 - 該フランキングゲノム配列のどちらか一方又は両方が、対応する内因性ゲノム配列内に変異を有し、それによって該フランキングゲノム配列内に該変異を持つゲノム配列を有する細胞が産生される、請求項5記載の方法。
- 該相同組換えが、各フランキングゲノム配列内の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における配列特異的二本鎖切断によって媒介される、請求項5又は6に記載の方法。
- 該配列特異的ヌクレアーゼが、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casである、請求項7記載の方法。
- 該宿主細胞が、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
- 該標的化された領域が、その部位における変異が疾患を引き起こす部位を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
- (a)宿主ゲノム内の標的化された領域に相同な2つの核酸配列であって、該核酸配列のうちの1つの3’末端と、他方の核酸配列の5’末端とがオーバーラップする、2つの核酸配列;及び
(b)該(a)の2つの核酸配列の間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位、
を含み、該相同な核酸配列のどちらか一方だけが、対応する内因性ゲノム配列中に変異を有する、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法における使用のための核酸。 - 該外因性核酸配列が、2つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含みかつそれらのうちの2つがそれぞれ、該(a)の2つの核酸配列に実質的に隣接して配置され、該2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の間に外因性遺伝子が挿入されている、請求項11記載の核酸。
- (a)請求項11又は12の核酸;及び
(b)(a)の核酸に含まれる該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を特異的に認識する1つ以上の種類の配列特異的ヌクレアーゼ、又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸、
を含み、該相同な核酸配列のどちらか一方だけが、対応する内因性ゲノム配列中に変異を有する、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法における使用のためのキット。 - 該配列特異的ヌクレアーゼが、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casである、請求項13記載のキット。
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