JP7184364B2 - ゲノム編集のための方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゲノム編集のための新規方法に関する。より具体的には、本発明は、マイクロホモロジー媒介末端結合又は一本鎖アニーリングを使用する、選択マーカー遺伝子等の導入遺伝子の宿主ゲノムからの痕跡が残らない(scarless)切除方法に関する。本発明はまた、上記方法を使用する、そのゲノム中の標的化された領域中に変異を有する細胞及び該変異を持たない同質遺伝子細胞の作製等に関する。
機能ゲノム科学は、タンパク質活性又は遺伝子発現の制御に関与する変異を引き起こす又は復帰させるために、遺伝子ターゲティングに頼る。この方法論は、ZFN、TALEN及びCRISPR/Cas9等のデザイナーヌクレアーゼ系の開発を通して、種を超えて非常に進展し(Kim and Kim, Nature reviews Genetics 15, 321-334, 2014; Sakuma and Woltjen, Dev Growth Differ 56, 2-13, 2014)、効率的かつ再現性のあるゲノム切断に加えて、プログラム可能なsgRNAクローニングの単純性のため、CRISPR/Cas9が先導的な役割を担っている。実験デザイン及びDNA切断機構における差異にもかかわらず、全ての設計されたヌクレアーゼは、標的化された二本鎖切断(DSB)を発生させて細胞修復経路を誘導することによって機能する。非相同末端結合(NHEJ)を介したエラープローン修復が典型的には遺伝子破壊に十分である一方で、相同組換え修復(homology directed repair:HDR)は、標的化された二本鎖切断の修復においてドナーとして作用するカスタム鋳型DNAによって取って代わられ得、これによってより特異的な遺伝子編集が可能となる。これらの進歩は、ヒト遺伝学分野において、疾患モデル化のための特別な興味の対象であり、ここで、ヌクレアーゼを用いたヒト人工多能性幹細胞(iPSC)における遺伝子ターゲティングは、元の患者iPSC株を、同質遺伝子コントロールとして働くことを可能とする(Hockemeyer and Jaenisch, Cell stem cell 18, 573-586, 2016)。
ヌクレアーゼ技術における近年の進展は、ヒト胚性幹細胞(ESC)又はiSPCへの遺伝子ターゲティング効率をきちんと向上させたものの、患者の変異を模倣又は修正する単一ヌクレオチドバリエーションの定着は、濃縮及び選択のための頑強な手段なしでは難しいままであり、そのために抗生物質耐性マーカーの陽性選択が、遺伝子ターゲティングにおいて主要な要素として残っている(Capecchi, Nature reviews Genetics 6, 507-512, 2005)。そのうえ、陽性選択は、最小限の労力でクローン集団を産生するための方法を提供する。陽性選択を用いた従来の遺伝子ターゲティングによるゲノム編集では、抗生物質選択マーカーの痕跡を残さない切除は重要な工程であるが、それにも関わらず、現在の方法を使用することでは難しいままである。Cre-loxP組換え等の方法(Davis et al., Nature protocols 3, 1550-1558, 2008)、及びより最近では、切除を生じやすい転移(Firth et al., Cell reports 12, 1385-1390, 2015)が、選択カセットの効用が使われた後に、それらを除去することが示されてきた。しかしながら、これらの方法は、残余リコンビナーゼ部位(Meier et al., FASEB journal : official publication of the Federation of American Societies for Experimental Biology 24, 1714-1724, 2010)、低頻度の切除、及びカセットの再組込みの可能性(Ye et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 111, 9591-9596, 2014)等の複雑な事態を伴う。したがって、痕跡が残らない切除を達成するための別の方法を探す必要がある。
内因性の細胞修復経路のレパートリー内において、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)及び一本鎖アニーリング(SSA)は、正当に評価されていないDSB修復のための機構である。MMEJ及びSSAは、DSBのいずれかの側に生じて末端結合を媒介する、それぞれ天然起源の、5~25bpのマイクロホモロジー(μH)又はそれより大きい(>30bp)ホモロジー、を利用するKu非依存的な経路である(McVey and Lee, Trends in genetics : TIG 24, 529-538, 2008)。MMEJの結果は、1コピーのμHを保持する一方で、介在配列の再現可能な除去である。この理由のため、MMEJは通常、精密な除去による遺伝情報の全体的な消失のために、変異原性であるとみなされている。
本発明において、発明者らは、MMEJを使用することによって、高忠実度の切除という問題に取り組んだ。点変異が陽性選択カセットと並置される標準的なドナーベクターデザインを使用して、発明者らは、左及び右のホモロジーアームにおいて、単純なPCRによって産生されたオーバーラップを介して、μHが選択カセットに隣接するよう操作することに取り掛かった。遺伝子ターゲティングに対する陽性選択の後、発明者らは、カセットとμHとの間に入れ子状態にされた、検証されかつ標準化されたCRISPR/Cas9プロトスペーサーを使用してDSBを導入し、細胞を刺激して、MMEJを利用してカセットを痕跡が残らないように切除させ、遺伝子座でのデザイナー点変異のみを残させた。その上、不完全なマイクロホモロジーを利用して、発明者らは、同一の実験から、同質遺伝子変異体及びコントロールのiPSC株を産生することが可能であることを実証し、この分野におけるヌクレアーゼの影響及び細胞培養操作に対する現在の懸念に取り組んだ。最後に、発明者らは、この技術を利用して、高尿酸血症によって引き起こされる痛風を呈している患者において発見されたHPRTMunichの部分的な酵素欠損(Wilson et al., J Biol Chem 256, 10306-10312, 1981)のiPSCモデルを開発し、細胞代謝の手段を使用してiPSCクローン間の一貫した分子表現型を樹立した。我々はこの技術が、痕跡が残らないiPSCゲノム編集でさえも超えて、幅広い適用を持つことを期待する。我々はMMEJを実施例として使用したものの、SSAもまたMMEJと共通する遺伝的要件を共有し、適用可能である。
即ち、本発明は:
[1]痕跡が残らないゲノム配列を有する細胞を製造する方法であって、ゲノム内の標的化された領域中へと挿入された外因性核酸配列が完全に切除され、
ここで、該外因性核酸配列が、各末端における標的化された領域中のゲノム配列と相同な核酸配列と、二つの該相同な核酸配列間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位と、を含み、かつ該方法が:
(1)該配列特異的ヌクレアーゼ又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸を、該外因性核酸配列が挿入されるゲノム配列を有する宿主細胞中へと導入する工程;及び
(2)工程(1)で得られた細胞を培養する工程、を含み、
これによって、該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における二本鎖切断、及びこれに続いて、その結果生じる該相同な核酸配列を含む切断末端間におけるマイクロホモロジー媒介末端結合又は一本鎖アニーリングが引き起こされて、該外因性核酸配列が標的化された領域から完全に切除されて痕跡が残らないよう復帰されたゲノム配列を有する細胞が産生される、
方法;
[2]該外因性核酸配列が、2つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含み、かつそのうちの2つがそれぞれ、該2つの相同な核酸配列に実質的に隣接し、外因性遺伝子が該2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の間に挿入される、[1]記載の方法;
[3]該外因性遺伝子が、選択マーカー遺伝子である、[2]記載の方法;
[4]該相同な核酸配列のどちらか一方又は両方が、対応する内因性ゲノム配列中に変異を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の方法;
[5]該相同な核酸配列の両方が同一の変異を有し、それによって該標的化された領域中に変異を持つゲノム配列を有する細胞が産生される、[4]記載の方法;
[6]該相同な核酸配列のどちらか一方が変異を有し、それによって該標的化された領域中に変異を持つゲノム配列を有する細胞と、該変異を持たない同質遺伝子細胞が同時に産生される、[4]記載の方法;
[7]該配列特異的ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)又はクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質(CRISPR/Cas)である、[1]~[6]のいずれかに記載の方法;
[8]該宿主細胞が、
該外因性核酸配列を含み、該外因性核酸配列の両末端に該相同な核酸配列と相同なゲノム配列の両末端にフランキングゲノム配列をそれぞれ含む核酸を細胞中に導入し、
それによって、相同組換えによって宿主ゲノムの標的化された領域内へ該外因性核酸配列が挿入される、
ことによって得られる、[1]~[7]のいずれかに記載の方法;
[9]該フランキングゲノム配列のどちらか一方又は両方が、対応する内因性ゲノム配列内に変異を有し、それによって該フランキングゲノム配列内に該変異を持つゲノム配列を有する細胞が産生される、[8]記載の方法;
[10]該相同組換えが、各フランキングゲノム配列内の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における配列特異的二本鎖切断によって媒介される、[8]又は[9]に記載の方法;
[11]該配列特異的ヌクレアーゼが、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casである、[10]記載の方法;
[12]該宿主細胞が、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞である[1]~[11]のいずれかに記載の方法;
[13]該標的化された領域が、その部位における変異が疾患を引き起こす部位を含む、[1]~[12]のいずれかに記載の方法;
[14](a)宿主ゲノム内の標的化された領域に相同な2つの核酸配列であって、該核酸配列のうちの1つの3’末端と、他方の核酸配列の5’末端とがオーバーラップする、2つの核酸配列;及び
(b)該(a)の2つの核酸配列の間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位、
を含む、[8]~[11]のいずれかに記載の方法における使用のための核酸;
[15]該外因性核酸配列が、2つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含みかつそれらのうちの2つがそれぞれ、該(a)の2つの核酸配列に実質的に隣接して配置され、該2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の間に外因性遺伝子が挿入されている、[14]記載の核酸;
[16](a)[14]又は[15]の核酸;及び
(b)(a)の核酸に含まれる該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を特異的に認識する1つ以上の種類の配列特異的ヌクレアーゼ、又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸、
を含む、[8]~[11]のいずれかに記載の方法における使用のためのキット;
[17]該配列特異的ヌクレアーゼが、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casである、[16]記載のキット;
等、を提供する。
本発明のカセット切除方法の適応性は、遺伝子又は細胞治療の適用における外来性の遺伝因子の除去、そしておそらく条件的な遺伝子操作においてですら、より幅広い適用を有し得る。
図1は、HPRT1遺伝子座のTALENによる破壊は、MMEJによって偏ることを示す。A.スプライスジャンクションを含むエキソン3及び4のセグメント(オレンジ)、HPRT1_B NC又はAvr-TALEN標的化された領域(緑)、及びミスマッチ塩基(A/T)を赤で示した予測されるμ5W3マイクロホモロジー(青)の詳細を示す、ヒトHPRT1遺伝子座の概略図。染色体における配置は、ヒトGRCh38を参照する。HPRTコドンは、上部に番号をつけてある。1383D6 iPSCゲノムのシーケンストレースは、下部に示される。SD、スプライスドナー;SA、スプライスアクセプター。B.HPRT1_B Avr-TALENでの1383D6 iPSCの処置後の6-TGクローンにおける修復の結果の概略。個々のクローン配列は、図5に表示されている。C.2つの最もよく観察される17bpの欠失である、Δ17A及びΔ17Tの配列。D.MMEJによるΔ17A又はΔ17Tのいずれかの形成につながる分子修復現象の概略図。最終的な結果(A又はT)にかかわらず、17bpの介在配列は同様に切除されることが認められる。μH、マイクロホモロジー(青)。 図2は、ヒト女性iPSCクローンにおけるNC-TALEN誘導性突然変異のスペクトルを示す。 HPRT1_B NC-TALENで処置し、SNLフィーダー上で6-TG選択によって濃縮した409B2(女性)iPSCクローン由来のHPRT1アレルの配列。SNLフィーダー条件下では、多くの女性iPSCが、2つの活性X染色体を有し(Tomoda et al., Cell stem cell11, 91-99, 2012)、したがって、6-TG選択に抵抗するためには両HPRT1アレルの破壊が必要である(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)。標的化された領域のPCR増副産物をTAクローニングして、各形質転換由来の少なくとも8つの細菌コロニーをPCR増幅して、サンガーシーケンシングによって個々のアレルを決定した。クローンは数値順に、アレルはアルファベット順に標識してある。2つより多いアレルを持つiPSCクローンはおそらくモザイク集団を示す。大文字は、TALEN結合部位を表す(図1)。挿入された塩基は斜体で表される。欠失又は挿入サイズは、右に示される。REF、親409B2 iPSC基準ゲノム配列;NORM、シーケンシングによって調査された領域に関して非変異のアレル。 図3は、最新のTALENの構造が、HPRT1_Bの切断活性を向上させることを示す。A.ザントモナス・オリゼ・パソバー(PthXo1)ベースのTALEスキャフォールド(NC-TALEN, Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)、又は改変斑点細菌病菌(AvrBs3)ベースの+136/+63スキャフォールド(Avr-TALEN, Sakuma et al., Scientific reports 3, 3379, 2013)を使用して組み立てられたHPRT1_B TALENの活性を比較するSSAアッセイ。PthXo1ベースのAAVS1 NC-TALEN(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)が、基準として含まれている。比率、測定されたFirefly/Renillaルシフェラーゼ活性の比率の計算値。B.HPRT1の破壊を示す、6-TGコロニー形成によって測定された1383D6男性iPS細胞におけるTALEN活性。ヌクレアーゼの非存在下における自発的なコロニー形成は認められなかった。アッセイのために、1μgの各ヌクレアーゼをエレクトロポレーションによって1×10個の細胞内へと遺伝子導入し、次いで、5×10個の細胞/60mmシャーレの密度でプレートに撒いた。iPSCは、材料と方法において記載されているように選択されて染色された。C.陽性選択ドナープラスミド(図7A)での同時導入にあたり、Puroコロニー形成によって決定されたように、Avr-TALENは、1383D6 iPSCにおいてより高いレベルの遺伝子ターゲティングを達成する。プロモーターのない2A-puroカセットを活性化させるためにはインフレームのジーントラップが必要であり、したがってオフターゲットの挿入又は無作為の組込みはまれである。ヌクレアーゼの非存在下における自発的なコロニー形成は認められなかった(図示せず)。アッセイのために、1μgの各ヌクレアーゼ及び3μgのドナーベクターをエレクトロポレーションによって1×10個の細胞内へと遺伝子導入し、次いで、5×10個の細胞/60mmシャーレの密度でプレートに撒いた。iPSCは、材料と方法において記載されているように選択されて染色された。 図4は、HPRT1_B TALENで標的化された部位における挿入欠失形成のTIDE解析を示す。A.HPRT1_B TALENによって標的化される遺伝子座を解析するために使用したゲノムPCRアッセイの概略図。TIDE解析では、図示したとおり、切断点をスペーサーの初めに配置した(黒の矢印)。 図4は、HPRT1_B TALENで標的化された部位における挿入欠失形成のTIDE解析を示す。B.元の1383D6 iPSC、及びTALENでの処置後の6-TG集団のシーケンストレースファイル。TIDE解析で使用された切断点の位置が示されている(黒の矢印)。多義性の(ambiguous)A/T塩基が、予測された切断点の上流に認められる(赤の矢印)。C.オンラインTIDEソフトウェアによって決定された異常配列のプロット。矢印はBと同様である。D.TIDEによって予測されたとおりの混合6-TG iPSC集団における挿入欠失のスペクトル。挿入よりも欠失が多くみられ、17bp欠失に対して明らかな偏りがある。パネルC及びDのデータは、独立した実験をまたいで再現された(n=3)。 図4は、HPRT1_B TALENで標的化された部位における挿入欠失形成のTIDE解析を示す。E.元のH1 ESC、及びTALENでの処置後の6-TG集団のシーケンストレースファイル。TIDE解析で使用された切断点の位置が示されている(黒の矢印)。多義性の塩基が、予測された切断点の上流に認められる(赤の矢印)。F.オンラインTIDEソフトウェアによって決定された異常配列のプロット。矢印はEと同様である。G.TIDEによって予測されたとおりの混合6-TG ESC集団における挿入欠失のスペクトル。1383D6 iPSCと同様に、挿入よりも欠失が多くみられ、17bp欠失に対して明らかな偏りがある。 図5は、ヒト男性iPSCクローンにおけるAvr-TALEN誘導性変異のスペクトルを示す。HPRT1_B Avr-TALENで処置し、フィーダーを含まない条件下で6-TG選択によって濃縮した1383D6(男性)iPSCクローン由来の一連の個々のクローンにおいて検出された、HPRT1アレル型の配列。標的化された部位のPCRアンプリコンを、直接サンガーシーケンスにかけた。クローンは、番号順に標識されている。混合配列は、解析には含まなかった。大文字は、HPRT1_B Avr-TALEN結合部位を表す。挿入された塩基は、斜体で示される。欠失又は挿入部位は、右に示す。図1C中に示されている4つの複合アレルのうち3つは、ミスセンス変異又は挿入塩基を持つΔ17Tアレルであった(例示せず)。Δ17を除き、最も一般的な欠失はΔ46であり(10%又は3/30の欠失)、ここで欠失の境界は、予測された「GATT」μHに続くTリッチな配列内配置されていた。REF、親1383D6 iPSC基準ゲノム配列。 図6は、1383D6親及びHPRT1ノックアウトiPSCクローンの薬剤感受性を示す。代表的なHPRT1ノックアウトクローンiPSC株の、6-TG又はHAT培地での3日間の処置後のクリスタルバイオレット染色。PCRによる遺伝子型決定及びシーケンシングによって特定されたとおり(図5)、耐性と感受性とは、HPRT1遺伝子座の状態と相関する。 図7は、設計されたマイクロホモロジーが、痕跡が残らないカセット切除を可能とし、点変異が定着したことを示す。A.HPRT遺伝子座をサイレントに改変するのに使用したMhAX技術の概略図。ドナーベクターのホモロジーアームを、陽性/陰性(+/-)抗生物質選択カセット(グレー)に隣接する11bpの直列型のマイクロホモロジー(μH;青)を作り出すように、オーバーラップを持つよう設計した。相補的なプロトスペーサー配列(黒)は、μHとカセットとの間に分岐した配向性で入れ子状態にした。プロトスペーサー配列と削除した部位の位置は、上に示した(緑)。この実施例において、μHにおいて内因性のμ5T3(図1A)が使用され、変異(赤)は右のホモロジーアーム内の特有の領域に配置されて、内因性のμ5A3配列を破壊している。HPRT1_B Avr-TALEN(図示せず)を使用して遺伝子ターゲティングを亢進させ、ピューロマイシンでの陽性選択は標的クローンを濃縮する。CRISPR/Cas9での処置にあたり、隣接するDSBが設計されたμHの近位に作り出される。MMEJによる修復が、カセットを痕跡が残らないよう切除し、3つのサイレント変異のみが残される(赤)。遺伝子ターゲティング及びスクリーニングは、図3に詳述される。 図7は、設計されたマイクロホモロジーが、痕跡が残らないカセット切除を可能とし、点変異が定着したことを示す。B.iPSCコロニーのクリスタルバイオレット染色によって示される、HPRT遺伝子座の操作の間の薬剤耐性の逆転。ピューロマイシン耐性(puro)は、標的カセットの存在を示し、一方で6-TG及びHAT耐性はそれぞれ、HPRT酵素の欠損又は活性を示す。パネルAに示される操作された変異は、意図されたとおりサイレントである。C.HATによって選択されたクローンのサザンブロット解析は、検出可能なカセットの再組込みは起こらず(TKプローブ、右)に、HPRT1遺伝子座が回復した(HPRT-Bプローブ、左)こと示す。元の1383D6及び親016-A3標的化iPSCクローンが、コントロールとして含まれている。D.HAT選択圧があるか又はない場合のMMEJ率及び切除の忠実度を決定した。高品質の配列読み取りデータのみを、解析において考慮した。MMEJ率は、(MMEJ修復/解析されたサンプル数)として計算している。痕跡が残らない切除は、追加の塩基変異を一切持たないMMEJ修復事象をいう。「忠実度」は、(「痕跡が残らない切除」/「MMEJ修復」)として計算されている。E.痕跡が残らないMMEJ(左)又は伝統的なNHEJ(右)を介したカセット切除後のiPSCクローンのシーケンストレースファイルであり、後者は、CRISPR誘導性DSBによって形成されると予測される末端の直接融合の結果起こる。 図8は、サイレント点変異を定着させるための切除可能なカセットを用いたHPRT遺伝子座の標的化を示す。A.通常のHPRTアレルの一部を示す概略図。エキソンはグレーで示されている。オーバーラップするホモロジーアーム(HA-L/R)は、白で示されている。μH領域は青で示されている。黒の棒は、サザンブロットのプローブを示す。標的クローンをスクリーニングするために使用されるプライマーは赤で示されている。B.PCR及びサザンブロットスクリーニングの戦略に関する詳細を含む、標的HPRTアレルの概略図。プロモーターのない2A-puro-ΔTKカセットを、HPRTエキソン3のインフレームに挿入した。eGFP1のCRISPRで標的化された領域は、緑で示されている。サイレント変異は、赤で強調されている。C.定着した変異を持つ、切除されたHPRTアレルの概略図。 図8は、サイレント点変異を定着させるための切除可能なカセットを用いたHPRT遺伝子座の標的化を示す。D.ターゲティング後の遺伝子座とカセットとの接合部(グレー)を示す、クローン016-A3のサンガーシーケンス結果。隣接するμH(青)、eGFP1プロトスペーサー(緑)とその予測された切断部位(緑の矢印)、及びサイレント点変異(赤)が示されている。E.遺伝子ターゲティングに次ぐ、選択クローンのサザンブロットの結果。パネルA及びBにおいて予測されたバンドサイズが、示されている。1383D6 iPSCが、コントロールとして含まれている。F.pX330ベースの sgRNA発現ベクターで処置した016-A3 iPSCからのHATコロニー形成のクリスタルバイオレット染色であり、カセットの切除及びHPRT遺伝子座の回復を示す。HATRコロニーは、ヌクレアーゼの非存在下又は非ターゲティングsgRNAであるeGFP2をコードするpX330ベクターの遺伝子導入に次いでは、観察されなかった。 図9は、sgRNAの切断活性に関するスクリーニングを示す。A.pX330 sgRNA及びCas9発現ベクター(Ran et al., 2013)、並びにプラスミド切断アッセイで使用された、関連するpGL4-SSA標的プラスミドの図表。3つのeGFPプロトスペーサー配列(Fu et al., 2013b)が示されている。B.ルシフェラーゼ発現によって決定されたSSAの相対活性。 図9は、sgRNAの切断活性に関するスクリーニングを示す。C.iPSCにおけるゲノム切断活性を評価するために、トランスジーン破壊アッセイが設計された。317-A4 iPSCは、AAVS1遺伝子座へ標的化された、構成的に発現するCAG::eGFPレポータートランスジーンについてヘテロ接合性である(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)。3つのsgRNAの相対的な配置が示されている。ヌクレアーゼ処置6日後のGFP発現についての顕微鏡観察及びFACS解析が使用されて、3つのsgRNAの活性が比較された。スケールバー、200μm。 図10は、不完全なマイクロホモロジーが、患者の変異を持つiPSCと、それらの同質遺伝子のコントロールiPSCを同時に作出することを示す。A.HPRTMunich患者の変異と、同質遺伝子コントロールiPSCを作製するためのMhAX技術の概略図。ドナーベクター及びカセットは本質的に、図7A中で記載されているように操作されているが、いくつかの重要な差異があった。隣接する13bpのμHはS104コドンが中心になるように配置され、患者の変異(C>A)が片側のみにある(片側性)か、又は両側にある(両側性)ように改変された。診断に役立つAflII制限部位を作り出すサイレントな点変異(G>T)は、両側性に含まれている。陽性/陰性選択カセットは、ターゲティングと切除の工程をモニターするために、構成的CAG::mCherryレポーターを利用する。HPRT1_B Avr-TALEN(図示せず)が遺伝子ターゲティングの亢進に使用され、ピューロマイシン及びmCherryでの陽性選択が、標的クローンを濃縮する。CRISPR/Cas9での処置にあたり、隣接するDSBが、操作されたμHの近位で生じる。MMEJによる修復は、カセットを痕跡が残らないよう切除し、その結果として、操作された変異の2つの結果が生じ得る。切除されたクローンは、mCherry陰性である。B.iPSCコロニーのクリスタルバイオレット染色によって示される、HPRT1遺伝子座の操作の間における6-TG及びHATに対する薬剤感受性の逆転は、サイレント変異を持つクローン(035-C1)のみにおいて起こる一方で、クローン035-D12は両方の薬剤に対して感受性のままである。元の1383D6及び片側性親クローン033-U-45が、コントロールとして含まれている。mCherryに関するFACS解析が、右に示されている。C.片側性又は両側性の変異を持つクローンのMMEJ率及び切除の忠実度を、HAT選択圧ありか又はなしの場合で決定した。計算は、図7Dに示すとおりである。 図10は、不完全なマイクロホモロジーが、患者の変異を持つiPSCと、それらの同質遺伝子のコントロールiPSCを同時に作出することを示す。D.クローン033-U-45からの痕跡が残らないMMEJカセット切除に次ぐ、サイレント変異のみ又はMunich変異を持つiPSCクローンのシーケンストレースファイル(片側性の変異)。両方の種類のクローンは、同一の実験から単離された。E.切除されたクローンのサザンブロット解析は、検出可能なカセットの再組込みをすることなく(mCherryプローブ、下部)、HPRT1遺伝子座が回復されたこと(HPRT-Bプローブ、上部)を明らかにする。元の1383D6並びに親033-U-45及び033-B-43標的化iPSCが、コントロールとして含まれている。アステリスク(*)は、クローン035-G8における第二のバンドの検出を示し、薬剤選択は、モザイク現象を確証させた(データは示さず)。 図11は、不完全なマイクロホモロジーを持つMhAX選択マーカーでのHPRT遺伝子座のターゲティングを示す。A.通常のHPRTアレルの一部を示す概略図。エキソンは、グレーで示されている。オーバーラップするホモロジーアーム(HA-L/R)は、白色で示されている。μH領域は青で示されている。黒の棒は、サザンブロットのプローブを示す。標的クローンをスクリーニングするために使用されるプライマーは赤で示されている。B.PCR及びサザンブロットスクリーニングの戦略に関する詳細を含む、標的HPRTアレルの概略図。プロモーターのない2A-puro-ΔTK;CAG::mCherry選択マーカーを、HPRTエキソン3のインフレームに挿入した。CAG::mCherryは、ターゲティング及び切除の検出を向上させる。GFP1のCRISPR標的化された領域は、緑で示されている。サイレント変異は、赤で強調されている。C.サイレントもしくはMunich変異が定着した(上部)、又はサイレント変異のみが定着した(下部)、切除に次ぐ2つの潜在的なHPRTアレルの概略図。サイレント変異によって作出されたAflII部位が示されている。 図11は、不完全なマイクロホモロジーを持つMhAX選択マーカーでのHPRT遺伝子座のターゲティングを示す。D.片側性又は両側性のいずれか一方の変異μHで各々標的化され、mCherry(上部)又はHPRT(下部)のいずれか一方でプロービングされた96個のiPSクローンのサザンブロットの結果。ジーントラップ選択で環状プラスミドドナーを使用するときに最も一般的なバックグラウンドの供給源であるドナーベクターバックボーンの組込み(Oceguera et al.)の結果として現れる8.8kbpのバンドとともに、パネルA及びBにおいて示された予測された6.8kbp(正常)及び9.8kbp(標的化された)のバンドサイズが示されている。選択されたクローン(033-U-45及び033-B-43)は、アステリスクで示されている。1383D6 iPSCが、コントロールとして含まれている。E.片側性又は両側性のホモロジーを持つよう操作されたiPSCクローンからのMhAXに次ぐPCRアンプリコンのAflII制限処理は、試験された全クローンにおけるサイレント(S)変異の存在を示す。「M」で標識されたクローンは、シーケンシングによって、Munich変異も含むことが見いだされた。1383D6 iPSCが、切断の陰性コントロールとして含まれている。 図12は、カセットが切除されたクローンのFACSによる単離を示す。A.eGFP1 sgRNA発現ベクターでの処置6日後のカセットを切除されたクローンを濃縮するためのFACS分取スキームの概要。両側性又は片側性のμHのいずれか一方を持つ複数のクローンにおいて、同様の切除率(~1~2%)が観察された。B.mCherry陰性及び陽性の細胞集団が分取され、純度が検証され、次にHAT選択あり又はなしでプレートに撒いた。クローン解析を行って、MhAXの頻度及び忠実度、並びに片側性μHの点変異の定着率が決定された。結果は、図10E中に要約されている。観察された選択圧の非存在下におけるμ11の修復率(~15%)に基づき、我々は、同様のコロニー数を得るために、非選択細胞よりも10倍高い密度でHAT選択下の細胞をプレートに撒くことを選んだ。 図13は、代謝的な表現型の決定がHHPRTMunichiPSCにおけるプリンサルベージ欠損を確証させることを示す。A.プリン代謝におけるデノボ合成及びサルベージ経路。HPRTは、グアニンのグアニン一リン酸(GMP)への変換、及びヒポキサンチンのイノシン一リン酸(IMP)への変換の両方を触媒する。完全な又は部分的なHPRT欠損では、代謝産物は蓄積する。キサンチンオキシダーゼ(XO)は、ヒポキサンチンを尿酸へと変換する。大部分の哺乳類と異なり、ヒトは尿酸オキシダーゼ(UOX)を欠き、尿酸をアラントインへ酵素的に変換しない。B.HAT選択圧の存在下での親及び操作されたiPSCの増殖曲線解析。HPRTMunich iPSCは、ノックアウト(Δ17)又は標的親クローン033-U-45と比較して、HAT感受性の低下を示す。サイレント変異を持つiPSCの増殖は、1383D6と識別不能である。同様に操作された遺伝子型をもつ個々のクローンの挙動は、比較可能であったことが認められる。HAT選択24時間後のiPSCコロニーの代表的な形態が、右に示されている。スケールバー、200μm。 図13は、代謝的な表現型の決定がHHPRTMunichiPSCにおけるプリンサルベージ欠損を確証させることを示す。C.親及び操作されたiPSCクローンにおけるHPRTタンパク質レベルのウエスタンブロット解析。ノックアウト株であるΔ17及び033-U-45は、HPRTタンパク質を産生しない。HPRTMunich及びサイレントコントロールクローンにおける発現レベルは、正常の1383D6 iPSCに匹敵する。ACTINが、負荷のコントロールとして使用されている。D.親及び操作されたiPSCからの、消費された培地のCE-MS代謝産物アッセイ。ヒポキサンチン及びグアニンがHPRT欠損の結果蓄積し、HPRTMunich細胞においてより軽度の表現型であった。サイレントコントロールiPSCは、1383D6と同様に挙動する。チミジンレベルは、本質的に変化しないままである。2つの独立した試料からのデータが示されている(n=2)。E.患者又は正常のiPSCからの同質遺伝子コントロールの作出は、ゲノム工学によって促進される。操作された細胞のための従来のコントロール(下部左)は、親iPSCに直接由来するが(上部)、継代方法及び遺伝子操作方法の広がりは、説明のできない技術的なバリエーションの供給源を課す。MhAXを不完全なμHと一緒に使用することで、同等の実験的操作を経てきた同質遺伝子コントロール(下部右)が、同時に単離され得、同質遺伝子コントロールの相互依存に新たな側面を提供する。 図14は、MMEJの忠実度に影響するパラメータを示す。a.iPSC染色体からの切除を模倣する、プラスミドベースのMMEJアッセイの概略図。MMEJ効率は、ルシフェラーゼ活性を介して測定されている。細菌選択マーカーは、プラスミドの回収及び修復事象の遺伝子型決定を可能とする。b.ルシフェラーゼ活性と隣接するマイクロホモロジー長の増加との間の相関関係を示すMMEJアッセイの結果。挿入図は、バックグラウンドと比較して5bpのμHで低レベルのルシフェラーゼ活性を示す。c.HPRT遺伝子座に標的化された11又は29bpのμHを持つMhAXカセットの概略図。d.cに示されたカセットの切除に次ぐ、HAT耐性コロニー。e.より長いホモロジーでより大きなMMEJ率を示す、切除されたクローンからの遺伝子型決定の結果。f.MMEJ修復率対する異種構造の役割を観察するための、隣接するプロトスペーサーの反転。g.fに示されたカセットの切除に次ぐ、HAT耐性コロニー。 図15は、不完全なマイクロホモロジーは、患者の変異を持つiPSCと、それらの同質遺伝子コントロールiPSCを同時に作出することを示す。a.APRT*J患者変異及び同質遺伝子コントロールiPSCを作製するための、片側性μHを用いたMhAX技術の概略図。GFPレポーターが、無作為の組込みを除外するために、バックボーンに含まれている。b.中間体及び最終クローンを標的化するAPRT遺伝子の遺伝子型決定。c.APRT遺伝子ターゲティングのサザンブロットの結果。d.APRTカセット切除のサザンブロットの結果。e.APRTアレルのスペクトルを示す(クローン)のMhAX切除に次ぐ遺伝子型決定の概要。f.すべてのクローン的に単離されたiPSCのうちの二倍体遺伝子型決定の概要。 図16は、APRT遺伝子ターゲティング及び切除のフローサイトメトリー解析を示す。a.標的クローンにおけるmCherry蛍光のヒストグラム。b.MhAX切除に次ぐmCherry陰性細胞の分取を示すFACSプロット。 図17は、FACS分取を使用して、促進されたAPRT遺伝子編集を示す。a.標的化及び切除されたiPSCを単離するためのFACS分取プロトコールの概略図。b.APRT遺伝子編集のFACSプロット。c.アレルスペクトル及び切除された集団内における分布。d.切除されたクローン間のアレルスペクトル及び分布。e.同質遺伝子的に対になったiPSCクローンの新規な供給源。 図18は、FACS分取を使用して、促進されたHPRT遺伝子編集を示す。 図19は、MhAXのための代替のプロトスペーサーの使用を示す。a.HPRT遺伝子座を標的にする29bpのμH及び種々の隣接するプロトスペーサーを持つ、MhAXカセットの概略図。b.HPRT修復アッセイにおいて試験されたプロトスペーサーの表。c.カセットの切除及びMMEJ修復に起因するHAT耐性コロニー。
本発明は、痕跡が残らないゲノム配列を有する細胞を製造する方法であって、ゲノム内の標的化された領域中へと挿入された外因性核酸配列が完全に切除される方法(以下、「本発明の方法」ともいう)、を提供する。
本明細書中、用語「痕跡が残らない」は、外因性核酸配列が挿入されているゲノム配列の標的化された領域が、外因性核酸配列の残存断片及び内在性ゲノム配列の欠失なく、その以前の状態に回復されたことを意味する。
ここで用語「標的化された領域」とは、外因性核酸配列が挿入されるゲノム中の部位及びその近傍の領域を意味し、宿主細胞ゲノムの全領域の中から任意に選択され得る。一実施態様においては、該標的化された領域は、ゲノム配列中の、変異を導入したい(もしくは変異を復元したい)部位を含む領域であってもよい。
1.外因性核酸配列
本発明においてゲノム配列から除去されるべき「外因性核酸配列」は、
(a)その両末端に、該標的化された領域中のゲノム配列と相同な核酸配列(以下、「相同な核酸配列」ともいう)と、
(b)該2つの相同な核酸配列の間に1個以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位と
を含む。
<相同な核酸配列>
上記(a)の相同な核酸配列は、上記(b)の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における二本鎖切断(DSB)によって生じる、該相同な核酸配列を含む2つの切断末端の間でマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)又は一本鎖アニーリングによるDNA修復が起こる限り特に制限はない。相同な核酸配列の例としては、該標的化された領域内に位置する連続する5~1000ヌクレオチド程度からなる核酸配列と相同な配列が挙げられる。天然には、MMEJは5~25ヌクレオチド程度のマイクロホモロジー配列を介して起こり、SSAはより長い(例えば、30ヌクレオチド以上)相同配列を介して起こるとされる。しかしながら、本発明においては、いずれの末端修復メカニズムによっても同等の結果を生じるので、いずれのメカニズムを用いているかを厳密に特定することは重要ではない。しかしながら、本発明の相同な核酸配列の構築の容易さ等を考慮すれば、該相同な核酸配列の好ましいヌクレオチド長として、5~100ヌクレオチド、あるいは5~50ヌクレオチドが挙げられる。マイクロホモロジーの長さが増すにつれて、MMEJによる修復効率が向上することが知られている(Villarreal et al., 2012)。実際、本発明者らのプラスミド末端結合アッセイを使用する予備的研究においても、少なくとも5~50ヌクレオチドの範囲で、配列長依存的に修復効率が向上することが確認されいる。
ここで用語「相同」とは、2つの核酸配列が完全に同一である場合だけでなく、配列間で1ないし数個(例えば、1、2又は3個)のヌクレオチドが相違する場合をも包含する。従って、外因性核酸配列に含まれる該相同な核酸配列は、対応する内因性ゲノム配列に対して、1ないし数個の変異を有し得る。また、2つの相同な核酸配列は、互いに完全に同一であっても、1ないし数個のヌクレオチドが相違していてもよい。
<配列特異的ヌクレアーゼ認識部位>
上記(b)において用語「配列特異的ヌクレアーゼ」とは、ある特定の標的ヌクレオチド配列を特異的に認識して該標的ヌクレオチド配列の内部もしくはその近傍で二本鎖DNAを切断し得るヌクレアーゼを意味する。配列特異的ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ自体が配列特異性を有するものであってもよく、例えば、制限酵素が挙げられるが、(i)DNA鎖上の特定のヌクレオチド配列(即ち、標的ヌクレオチド配列)を特異的に認識して結合する能力を有する分子又は分子複合体(以後、「核酸配列認識モジュール」ともいう)と、前記(i)に連結された非特異的ヌクレアーゼ(例、Fok I等)との複合体(ここでの「複合体」には、複数の分子で構成されるものだけでなく、融合タンパク質のように、核酸配列認識モジュールとヌクレアーゼとを単一分子内に有するものも包含される)であってもよい。制限酵素認識部位よりも長いヌクレオチド配列に対する認識能力をヌクレアーゼに付与できる点で、後者がより好ましい。具体的には、好ましい配列特異的ヌクレアーゼの例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)又はクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質(CRISPR/Cas)等が挙げられる。その他、制限酵素、転写因子、RNAポリメラーゼ等のDNAと特異的に結合し得るタンパク質のDNA結合ドメインを有するが、DNA二重鎖切断能を有しないフラグメントに、非特異的ヌクレアーゼを連結したものも、配列特異的ヌクレアーゼとして用いることができる。さらには、PPRモチーフの連続によって配列特異性を有するように構成されたPPRタンパク質と、非特異的ヌクレアーゼを連結した人工ヌクレアーゼを用いることもできる(特開2013-128413号公報参照)。
用語「配列特異的ヌクレアーゼ認識部位」とは、上記のいずれかの配列特異的ヌクレアーゼによって特異的に認識されるヌクレオチド配列を意味し、種々の制限酵素認識部位や、転写因子、RNAポリメラーゼ等のDNA結合タンパク質と特異的に結合し得るシス配列が含まれ得る。しかしながら、これらは利用できるヌクレオチド配列が制限されることや、ゲノム上の標的化された領域以外(すなわち、オフターゲット部位)にも標的ヌクレオチド配列が存在する蓋然性が高いことから、好ましくは、配列の自由度が高い、ZFN、TALEN、又はCRISPR/Cas等の人工ヌクレアーゼにより認識されるヌクレオチド配列を、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位として選択することができる。
該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位は、MMEJ又はSSAによるDNA修復の際にゲノム配列から切り出されるので、該認識部位としては、標的化された領域におけるゲノム配列に関係なく、任意のヌクレオチド配列を用いることができる。通常、ZFN又はTALENは目的の標的ヌクレオチド配列に合わせてその都度デザインする必要があるが、本発明においては、手持ちのZFN又はTALENによって認識されるヌクレオチド配列を、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位としてそのまま用いることができる。
該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位は、2つの前記相同な核酸配列の間に1個以上含まれる。配列特異的ヌクレアーゼ認識部位におけるDSBの結果生じる、2つの相同な核酸配列の間で、MMEJ又はSSAによる修復が起こる限り、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の数は1個でもよい。しかしながら、本発明の好ましい実施態様においては、外因性核酸配列は、1以上の外因性遺伝子(例えば、薬剤耐性遺伝子及び蛍光タンパク質遺伝子のようなレポーター遺伝子を含む選択マーカー遺伝子等)を含むので、その場合、1か所切断では効率よくMMEJ又はSSAが生じない場合があり得る。そのため、外因性核酸配列が、前記相同な配列の間に遺伝子発現カセットのような長い挿入配列を含む場合、挿入配列が2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位に隣接することがより好ましい。2カ所でのDSBによって長い挿入配列は除去されるため、末端付近に前記相同な配列を含む2つの切断末端が生じ、MMEJ又はSSAによるDNA修復が可能となる。
この点に関連し、前記相同な核酸配列と配列特異的ヌクレアーゼ認識部位との間に、余分なヌクレオチド配列が付加されることを排除するものではないが、当該付加ヌクレオチド配列は、2つの相同な核酸配列によるMMEJ又はSSAを妨げない程度の長さであることが望まれる。従って、好ましい実施態様においては該相同な核酸配列と該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位とは、実質的に隣接している。
一方、前記相同な配列の間に挿入されるヌクレオチド配列が十分に短い場合には、該外因性核酸配列は、該相同な配列の間に1個の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位のみを含みさえすれば、当該部位でのDSBにより生じる切断末端の間でMMEJ又はSSAを起こすことができる。例えば、宿主ゲノム上の標的遺伝子を該外因性核酸配列の挿入により一旦破壊しておいて、所望の時期に該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位におけるDSBとその後のMMEJ又はSSAによる修復により、破壊された内因性遺伝子を再活性化することができる。
尚、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位におけるDSBの結果、MMEJ又はSSAによる修復が起こり得る2つの切断末端を生じるように、1又は2個の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位が配置されている限り、前記外因性核酸配列は、さらに1個以上の余分な配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含んでいてもよい。
前記外因性核酸配列が2個以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を有する場合、それらの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位は、同一のヌクレオチド配列を有するものであっても、異なるヌクレオチド配列を有するものであってもよいが、使用する配列特異的ヌクレアーゼが1種類でよい点で、前者が有利である。
2.本発明の方法
本発明の方法は、以下の工程を含む。
(1)該外因性核酸配列が挿入されたゲノム配列を有する宿主細胞中に、該配列特異的ヌクレアーゼもしくはそれをコードする核酸を導入する工程;及び
(2)工程(1)で得られた細胞を培養する工程
本発明の方法に用いられる宿主細胞は、遺伝子操作が可能な生物由来の細胞であれば特に制限されない。すなわち、本発明の方法は、任意の生物種(例えば、大腸菌、枯草菌等の細菌、酵母、昆虫、脊椎動物(例、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類(例、ヒト、マウス、ラット等))、植物等)の任意の細胞種(例えば、体細胞、体性幹細胞、多能性幹細胞(例、ES細胞、iPS細胞等)など)に適用可能である。好ましい一実施態様において、宿主細胞はヒト又は他の哺乳動物由来の細胞、例えばES細胞やiPS細胞等の多能性幹細胞であり得る。別の好ましい一実施態様においては、宿主細胞は、疾患特異的な遺伝子変異を有するヒトから樹立された多能性幹細胞であり得る。
<外因性核酸配列が挿入されるゲノム配列を有する宿主細胞>
工程(1)に用いられる外因性核酸配列が挿入されたゲノム配列を有する宿主細胞は、上記外因性核酸配列がゲノム配列中の標的化された領域内に挿入されたものであれば、いかなる手段により作製された細胞でもよい。好ましい一実施態様においては、該宿主細胞は、相同組換えにより内因性ゲノム配列の標的化された領域内に上記外因性核酸配列を挿入することにより作製されたものである。相同組換えによる上記外因性核酸配列の挿入は、例えば、該外因性核酸配列の5’及び3’末端に、該相同な核酸配列に対応する宿主細胞のゲノム配列の5’及び3’末端に隣接するゲノム配列(以下、「フランキングゲノム配列」ともいう)をそれぞれ連結した核酸、好ましくはターゲッティングベクターを該宿主細胞に常法により導入し、ゲノム中の標的化された領域内の前記相同な配列に対応するゲノム配列に、該外因性核酸配列が挿入された細胞を選択することにより行われる。
相同組換え体の選択は、該外因性核酸配列内に選択マーカー遺伝子(例えば、抗生物質等の薬剤に耐性を付与する遺伝子や蛍光タンパク質のように可視化できるレポーター遺伝子等)が挿入されている場合には、対応する選択マーカーを用いて(例えば、選択マーカー遺伝子が薬剤耐性遺伝子の場合、該薬剤の存在下で細胞を培養することにより)実施することができる。一方、外因性核酸配列中に選択マーカー遺伝子が含まれない場合、例えば、相同組換えによる外因性核酸配列の挿入により内因性遺伝子が破壊された結果、薬剤応答性や栄養要求性に変化が生じる場合には、当該変化を検出することにより、相同組換え体を選択することができる。
相同組換え体の作製の際に、前記相同な核酸配列中に、対応する内因性ゲノム配列に対して1もしくは数個(例えば、2、3、4、5個)のヌクレオチド変異(例えば、置換、欠失、挿入、付加)を導入することができる。当該変異は、2つの該相同な核酸配列の一方もしくは両方に導入することができ、両方に導入する場合、当該変異は同一の変異であっても、異なる変異(例、異なるヌクレオチドへの置換、異なる部位での変異等)であってもよい。
あるいはまた、前記フランキングゲノム配列内に1以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入、付加)を導入することもできる。当該変異も2つのフランキングゲノム配列の一方もしくは両方に導入することができる。
好ましい実施態様において、前記2つのフランキングゲノム配列中に配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を挿入したターゲッティングベクターと、該認識部位を認識する配列特異的ヌクレアーゼとを、宿主細胞に導入することにより、相同組換えの効率を向上させることができる。ここで、該フランキングゲノム配列に導入される配列特異的ヌクレアーゼ認識部位は、前記外因性核酸配列中に含まれる配列特異的ヌクレアーゼ認識部位とは異なるヌクレオチド配列からなるものである。
配列特異的ヌクレアーゼとしては、前記外因性核酸配列中に含まれる配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を認識切断する配列特異的ヌクレアーゼに関して後述するものと、同様のものを用いることができる。好ましくは、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas等の人工ヌクレアーゼが挙げられる。
本発明の別の実施態様においては、工程(1)に用いられる外因性核酸配列が挿入されたゲノム配列を有する宿主細胞は、MMEJを用いて内因性ゲノム配列の標的化された領域内に上記外因性核酸配列を挿入することにより作製することができる。MMEJを用いた標的化された領域への外因性核酸配列の導入は、例えば、Nakade et al.(2014)に記載の方法に準じて行うことができる。当該手法は、前記フランキングゲノム配列を必要としないため、当該配列をクローニングする労力を削減できる点で有利である。
<工程(1)配列特異的ヌクレアーゼ又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸の導入>
工程(1)に用いられる配列特異的ヌクレアーゼは、上記外因性核酸配列中に含まれる配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を認識して、当該認識部位の内部もしくはその近傍で、ゲノム配列を二本鎖切断できるものである。ここで配列特異的ヌクレアーゼとしては、上記したものを用いることができるが、好ましくは、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casなどの人工ヌクレアーゼ(核酸配列認識モジュールとヌクレアーゼとの複合体)である。
ジンクフィンガーモチーフは、Cys2His2型の異なるジンクフィンガーユニット(1フィンガーが約3塩基を認識する)を3~6個連結させたものであり、9~18塩基の標的ヌクレオチド配列を認識することができる。ジンクフィンガーモチーフは、Modular assembly法(Nat Biotechnol (2002) 20: 135-141)、OPEN法(Mol Cell (2008) 31: 294-301)、CoDA法(Nat Methods (2011) 8: 67-69)、大腸菌one-hybrid法(Nat Biotechnol (2008) 26: 695-701)等の公知の手法により作製することができる。ジンクフィンガーモチーフの作製の詳細については、特許第4968498号公報を参照することができる。
TALエフェクターは、約34アミノ酸を単位としたモジュールの繰り返し構造を有しており、1つのモジュールの12および13番目のアミノ酸残基(RVDと呼ばれる)によって、結合安定性と塩基特異性が決定される。各モジュールは独立性が高いので、モジュールを繋ぎ合わせるだけで、標的ヌクレオチド配列に特異的なTALエフェクターを作製することが可能である。TALエフェクターは、オープンリソースを利用した作製方法(REAL法(Curr Protoc Mol Biol (2012) Chapter 12: Unit 12.15)、FLASH法(Nat Biotechnol (2012) 30: 460-465)、及びGolden Gate法(Nucleic Acids Res (2011) 39: e82)等)が確立されており、比較的簡便に標的ヌクレオチド配列に対するTALエフェクターを設計することができる。TALエフェクターの作製の詳細については、特表2013-513389号公報を参照することができる。
上記いずれかの核酸配列認識モジュールは、ヌクレアーゼとの融合タンパク質として提供することもできるし、あるいは、SH3ドメイン、PDZドメイン、GKドメイン、及びGBドメイン等のタンパク質結合ドメインとそれらの結合パートナーとを、核酸配列認識モジュールと、ヌクレアーゼとにそれぞれ融合させ、該ドメインとその結合パートナーとの相互作用を介してタンパク質複合体として提供してもよい。あるいは、核酸配列認識モジュールと、ヌクレアーゼとにそれぞれインテイン(intein)を融合させ、各タンパク質合成後のライゲーションにより、両者を連結することもできる。
核酸配列認識モジュールとヌクレアーゼとが結合した複合体(融合タンパク質を含む)を含んでなる本発明の配列特異的ヌクレアーゼと、ゲノムDNAとの接触は、該配列特異的ヌクレアーゼのタンパク質導入によって行われてもよいが、好ましくは、該ゲノムDNAを有する細胞に、該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸を導入することにより実施されることが望ましい。
従って、核酸配列認識モジュールと、ヌクレアーゼとは、それらの融合タンパク質をコードする核酸として、あるいは、結合ドメインやインテイン等を利用してタンパク質に翻訳後、宿主細胞内で複合体形成し得るような形態で、又はそれらをそれぞれコードする核酸として調製することが好ましい。ここで核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。DNAの場合は、好ましくは二本鎖DNAであり、宿主細胞内で機能的なプロモーターの制御下に核酸を配置した発現ベクターの形態で提供される。RNAの場合は、好ましくは一本鎖RNAである。
ジンクフィンガーモチーフ、TALエフェクター等の核酸配列認識モジュールをコードするDNAは、各モジュールについて上記したいずれかの方法により取得することができる。
ヌクレアーゼをコードするDNAは例えば、使用する酵素のcDNA配列情報をもとにオリゴDNAプライマーを合成し、当該酵素を産生する細胞より調製した全RNAもしくはmRNA画分を鋳型として用い、RT-PCR法によって増幅することにより、クローニングすることができる。
クローン化されたDNAは、そのまま、または所望により制限酵素で消化するか、適当なリンカー及び/又は核移行シグナル(目的の二本鎖DNAがミトコンドリアや葉緑体DNAの場合は、各オルガネラ移行シグナル)を付加した後に、核酸配列認識モジュールをコードするDNAとライゲーションして、融合タンパク質をコードするDNAを調製することができる。あるいは、核酸配列認識モジュールをコードするDNAと、ヌクレアーゼをコードするDNAに、それぞれ結合ドメインもしくはその結合パートナーをコードするDNAを融合させるか、両DNAに分離インテインをコードするDNAを融合させることにより、核酸配列認識変換モジュールとヌクレアーゼとが宿主細胞内で翻訳された後に複合体を形成できるようにしてもよい。これらの場合も、所望により一方もしくは両方のDNAの適当な位置に、リンカー及び/又は核移行シグナルを連結することができる。
核酸配列認識モジュールをコードするDNA、ヌクレアーゼをコードするDNAは、化学的にDNA鎖を合成するか、もしくは合成した一部オーバーラップするオリゴDNA短鎖を、PCR法やGibson Assembly法を利用して接続することにより、その全長をコードするDNAを構築することによって得ることができる。化学合成又はPCR法もしくはGibson Assembly法との組み合わせで全長DNAを構築することの利点は、該DNAを導入する宿主に合わせて使用コドンをCDS全長にわたり設計できる点にある。異種DNAの発現に際し、そのDNA配列を宿主生物において使用頻度の高いコドンに変換することで、タンパク質発現量の増大が期待できる。使用する宿主におけるコドン使用頻度のデータは、例えば(公財)かずさDNA研究所のホームページに公開されている遺伝暗号使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/index.html)を用いることができ、または各宿主におけるコドン使用頻度を記した文献を参照してもよい。入手したデータと導入しようとするDNA配列を参照し、該DNA配列に用いられているコドンの中で宿主において使用頻度の低いものを、同一のアミノ酸をコードし使用頻度の高いコドンに変換すればよい。
核酸配列認識モジュール及び/又はヌクレアーゼをコードするDNAを含む発現ベクターは、例えば、該DNAを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13);枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194);酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15);昆虫細胞発現プラスミド(例:pFast-Bac);動物細胞発現プラスミド(例:pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージなどのバクテリオファージ;バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクター(例:BmNPV、AcNPV);レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものを用いてもよい。
例えば、宿主が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
宿主が大腸菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。
宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。
宿主が酵母である場合、Gal1/10プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。
宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
宿主が植物細胞である場合、CaMV35Sプロモーター、CaMV19Sプロモーター、NOSプロモーターなどが好ましい。
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ターミネーター、ポリA付加シグナル、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性相補遺伝子等の選択マーカー、複製起点などを含有しているものを用いることができる。
核酸配列認識モジュール及び/又はヌクレアーゼをコードするRNAは、例えば、上記した核酸配列認識モジュール及び/又はヌクレアーゼをコードするDNAをコードするベクターを鋳型として、自体公知のインビトロ転写系にてmRNAに転写することにより調製することができる。
核酸配列認識モジュール及び/又はヌクレアーゼをコードするDNAを含む発現ベクターを宿主細胞に導入し、当該宿主細胞を培養することによって、核酸配列認識モジュールとヌクレアーゼとの複合体を宿主細胞内で発現させることができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60,160 (1968)〕,エシェリヒア・コリJM103〔Nucleic Acids Research,9,309 (1981)〕,エシェリヒア・コリJA221〔Journal of Molecular Biology,120,517 (1978)〕,エシェリヒア・コリHB101〔Journal of Molecular Biology,41,459 (1969)〕,エシェリヒア・コリC600〔Genetics,39,440 (1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24,255 (1983)〕,バチルス・サブチルス207-21〔Journal of Biochemistry,95,87 (1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87-11A,DKD-5D,20B-12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036,ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞、Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合、昆虫細胞としては、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞〔以上、In Vivo, 13, 213-217 (1977)〕などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫、ショウジョウバエ、コオロギなどが用いられる〔Nature,315,592 (1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、dhfr遺伝子欠損CHO細胞、マウスL細胞,マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞,ラットGH3細胞、ヒトFL細胞などの細胞株、ヒト及び他の哺乳動物のiPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞、種々の組織から調製した初代培養細胞が用いられる。さらには、ゼブラフィッシュ胚、アフリカツメガエル卵母細胞なども用いることができる。
植物細胞としては、種々の植物(例えば、イネ、コムギ、トウモロコシ等の穀物、トマト、キュウリ、ナス等の商品作物、カーネーション、トルコギキョウ等の園芸植物、タバコ、シロイヌナズナ等の実験植物など)から調製した懸濁培養細胞、カルス、プロトプラスト、葉切片、根切片などが用いられる。
上記いずれの宿主細胞も、半数体(一倍体)であってもよいし、倍数体(例、二倍体、三倍体、四倍体など)であってもよい。
発現ベクターの導入は、宿主の種類に応じ、公知の方法(例えば、リゾチーム法、コンピテント法、PEG法、CaCl2共沈殿法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、リポフェクション法、アグロバクテリウム法など)に従って実施することができる。
大腸菌は、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110 (1972)やGene,17,107 (1982)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
バチルス属菌は、例えば、Molecular & General Genetics,168,111 (1979)などに記載の方法に従ってベクター導入することができる。
酵母は、例えば、Methods in Enzymology,194,182-187 (1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75,1929 (1978)などに記載の方法に従ってベクター導入することができる。
昆虫細胞および昆虫は、例えば、Bio/Technology,6,47-55 (1988)などに記載の方法に従ってベクター導入することができる。
動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263-267 (1995)(秀潤社発行)、及びVirology,52,456 (1973)に記載の方法に従ってベクター導入することができる。
<工程(2)宿主細胞の培養並びにDSB及びMMEJの誘導>
ベクターを導入した細胞の培養は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
例えば、大腸菌またはバチルス属菌を培養する場合、培養に使用される培地としては液体培地が好ましい。また、培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物などを含有することが好ましい。ここで、炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖などが;窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質が;無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げられる。また、培地は、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを含んでいてもよい。培地のpHは、好ましくは約5~約8である。
大腸菌を培養する場合の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔Journal of Experiments in Molecular Genetics, 431-433, Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。必要により、プロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β-インドリルアクリル酸のような薬剤を培地に添加してもよい。大腸菌の培養は、通常約15~約43℃で行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
バチルス属菌の培養は、通常約30~約40℃で行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
酵母を培養する場合の培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77,4505 (1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81,5330 (1984)〕などが挙げられる。培地のpHは、好ましくは約5~約8である。培養は、通常約20℃~約35℃で行なわれる。必要に応じて、通気や撹拌を行ってもよい。
昆虫細胞または昆虫を培養する場合の培地としては、例えばGrace's Insect Medium〔Nature,195,788 (1962)〕に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6.2~約6.4である。培養は、通常約27℃で行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
動物細胞を培養する場合の培地としては、例えば、約5~約20%の胎児ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)〔Science,122,501 (1952)〕、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)〔Virology,8,396 (1959)〕、RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199,519 (1967)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73,1 (1950)〕などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6~約8である。培養は、通常約30℃~約40℃で行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
植物細胞を培養する培地としては、例えば、MS培地、LS培地、B5培地などが用いられる。培地のpHは好ましくは約5~約8である。培養は、通常約20℃~約30℃で行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、核酸配列認識モジュールとヌクレアーゼとの複合体、即ち配列特異的ヌクレアーゼを宿主細胞内で発現させることができる。
核酸配列認識モジュール及び/又はヌクレアーゼをコードするRNAの宿主細胞への導入は、マイクロインジェクション法、リポフェクション法等により行うことができる。RNA導入は1回もしくは適当な間隔をおいて複数回(例えば、2~5回)繰り返して行うことができる。
工程(2)の培養工程の間に、宿主細胞内に導入された発現ベクター又はRNA分子から、配列特異的ヌクレアーゼが発現すると、核酸配列認識モジュールがゲノム配列中に挿入された外因性核酸配列内の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を特異的に認識して結合し、該核酸配列認識モジュールに連結されたヌクレアーゼの作用により、該認識部位の内部もしくはその近傍でDSBが起こる。その結果生じる両切断末端は、前記相同な核酸配列を含んでいるので、これらの配列を利用してMMEJ又はSSAが起こり、その結果、標的化された領域から外因性核酸配列が完全に除去された、痕跡が残らないゲノム配列(即ち、5’側フランキングゲノム配列-1つの前記相同な核酸配列-3’側フランキングゲノム配列からなる連続した配列)を有する細胞が得られる。
本願発明では、任意の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を使用することができる(いかなる場合でも、同じ認識部位を使用することができる)ので、それぞれの認識部位(標的ヌクレオチド配列)に応じて新たにZFモチーフやTALエフェクターを設計する必要はない。しかしながら、CRISPR/Casシステムは、標的ヌクレオチド配列に対して相補的なガイドRNAにより目的の二本鎖DNAの配列を認識するので、標的ヌクレオチド配列と特異的にハイブリッド形成し得るオリゴDNAを単に合成するだけで、任意の配列を標的化することができる点で、より好ましい。従って、本発明の好ましい実施態様においては、配列特異的ヌクレアーゼとしてCRISPR/Cas系が用いられる。
本発明で使用されるCasタンパク質は、ガイドRNAと複合体を形成して、目的遺伝子中の標的ヌクレオチド配列とそれに隣接するprotospacer adjacent motif(PAM)を認識し結合し得る限り、特に制限はないが、好ましくはCas9又はCpf1である。Cas9としては、例えばストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9(SpCas9; PAM配列NGG(NはA、G、T又はC。以下同じ))、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)由来のCas9(StCas9; PAM配列NNAGAAW)、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria meningitidis)由来のCas9(MmCas9; PAM配列NNNNGATT)等が挙げられるが、それらに限定されない。通常、PAMによる制約が少ないSpCas9が用いられるが、本発明においては、標的ヌクレオチド配列を自由に設計できるので、他種由来のCas9も好ましく使用され得る。また、Cpf1としては、例えば、フランシセラ・ノヴィシダ(Francisella novicida)由来のCpf1(FnCpf1; PAM配列NTT)、アシダミノコッカス sp.(Acidaminococcus sp.)由来のCpf1(AsCpf1;PAM配列NTTT)、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)由来のCpf1(LbCpf1; PAM配列NTTT)等が挙げられるが、それらに限定されない。
CRISPR/Casを配列特異的ヌクレアーゼとして用いる場合でも、ZFN等を配列特異的ヌクレアーゼとして用いる場合と同様に、それらをコードする核酸の形態で、宿主細胞に導入することが望ましい。
CasをコードするDNAは、ヌクレアーゼをコードするDNAについて上記したのと同様の方法により、該酵素を産生する細胞からクローニングすることができる。
一方、ガイドRNAをコードするDNAは、標的ヌクレオチド配列に対して相補的なDNA配列と既知のtracrRNA配列(例えば、gttttagagctagaaatagcaagttaaaataaggctagtccgttatcaacttgaaaaagtggcaccgagtcggtggtgctttt)とを連結したオリゴDNA配列を設計し、DNA/RNA合成機を用いて、化学的に合成することによって得ることができる。ガイドRNAをコードするDNAも、宿主に応じて、上記と同様の発現ベクターに挿入することができるが、プロモーターとしては、pol III系のプロモーター(例、SNR6、SNR52、SCR1、RPR1、U6、H1プロモーター等)及びターミネーター(例、T6配列)を用いることが好ましい。
尚、配列特異的ヌクレアーゼとしてCRISPR/Casを用いる場合、前記配列特異的ヌクレアーゼ認識部位は、ガイドRNAに含まれるcrRNA配列に相補的なヌクレオチド配列(すなわち、標的ヌクレオチド配列)に加えて、CasがDSB部位を認識するために必要なDNA切断部位認識配列PAM(PAMの具体的配列については上記参照)を含む必要がある。
CasをコードするRNAは、例えば、CasをコードするDNAを保有するベクターを鋳型として使用して、自体公知のインビトロ転写系にてmRNAに転写することにより調製することができる。
ガイドRNAは、標的ヌクレオチド配列に対して相補的な配列と既知のtracrRNA配列とを連結したオリゴDNA配列を設計し、DNA/RNA合成機を用いて、化学的に合成することで得ることができる。
CasをコードするDNAあるいはRNA、ガイドRNA又はそれをコードするDNAは、宿主の種族に応じて、上記と同様の方法により宿主細胞に導入することができる。
本発明の一実施態様において、前記外因性核酸配列中の2つの前記相同な核酸配列の間に、外因性遺伝子として、Casをコードする発現カセットを挿入することができる。その場合、Casタンパク質は宿主細胞内で既に発現しているので、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を特異的に認識するガイドRNAを宿主細胞に導入する限りは、該ガイドRNAとCasとが宿主細胞内で複合体を形成し、該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位におけるDSBを複合体によって生じさせることができる。このことは、配列特異的ヌクレアーゼを発現ベクターの形態で宿主細胞に導入することが不要であることを意味するので、該発現ベクターの除去のための追加的工程も不要となる点でこの実施態様は有用であるといえる。
ZFN又はTALEN等の別の配列特異的ヌクレアーゼを用いる場合でも、前記外因性核酸配列の2つの前記相同な核酸配列の間に、外因性遺伝子として、誘導プロモーターの制御下にある該配列特異的ヌクレアーゼをコードする発現カセットを挿入することもできる。その場合、プロモーターに対応する誘導物質の添加により宿主細胞内で該配列特異的ヌクレアーゼが発現し、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位におけるDSBを生じさせることができる。誘導プロモーターとしては、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等の高等真核細胞を宿主細胞とする場合には、メタロチオネインプロモーター(重金属イオンで誘導)、ヒートショックタンパク質プロモーター(ヒートショックで誘導)、Tet-ON/Tet-OFF系プロモーター(テトラサイクリン又はその誘導体の添加又は除去で誘導)、ステロイド応答性プロモーター(ステロイドホルモン又はその誘導体で誘導)等が挙げられる。適切な時期に培地に対応する誘導物質を添加(又は培地から誘導物質を除去)して配列特異的ヌクレアーゼの発現を誘導し、宿主細胞を培地中で一定期間培養して、DSB及びそれに続くMMEJ又はSSAを引き起こすことにより、ゲノムDNAの修復を実現するとともに、発現カセットの除去により配列特異的ヌクレアーゼの発現は停止し、off-target切断のリスクを低減することができる。
3.本発明の方法を使用した突然変異誘発
上述のように、本発明の方法の工程(1)に用いる宿主細胞を提供する際に、前記相同な核酸配列の一方もしくは両方の中の、対応する内因性ゲノム配列に対して1もしくは数個のヌクレオチド変異(例えば、置換、欠失、挿入、付加)を導入することができる。
(i) 該相同な核酸配列の両方に同一の変異を導入した場合、本発明の方法を実施すると、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位でのDSBと、それに続く切断末端間でのMMEJ又はSSAが起こり、その結果、ゲノム中の該相同な核酸配列に対応する内因性ゲノム配列内に、当該変異を導入することができる。
(ii) 該相同な核酸配列の両方に異なる変異(例、異なるヌクレオチドへの置換、異なる部位での変異等)を導入した場合、本発明の方法を実施すると、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位でのDSBと、それに続く切断末端間でのMMEJ又はSSAが起こり、その結果、ゲノム中の該相同な核酸配列に対応する内因性ゲノム配列内に、いずれか一方の該相同な核酸配列に対応する変異がそれぞれ導入された、2種の同質遺伝子的な細胞を得ることができる。
(iii) 該相同な核酸配列の一方に変異を導入した場合、本発明の方法を実施すると、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位でのDSBと、それに続く切断末端間でのMMEJ又はSSAが起こり、その結果、ゲノム中の該相同な核酸配列に対応する内因性ゲノム配列内に、当該変異が導入された細胞と、当該変異が導入されていない、2種の同質遺伝子的な細胞を得ることができる。
さらに、
(iv) 本発明の方法の工程(1)に用いる宿主細胞が相同組換えにより提供される場合、前記フランキングゲノム配列内に内因性ゲノム配列に対して1以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入、付加)を導入することができる。該フランキングゲノム配列内に変異が導入された宿主細胞に対して、本発明の方法を実施すると、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位でのDSBと、それに続く切断末端間でのMMEJ又はSSAが起こり、その結果、ゲノム中の該フランキングゲノム配列内に、当該変異を導入することができる。
例えば、上記(iii)の方法により、同一の遺伝的背景を有し、遺伝病の原因遺伝子における変異を有する、又は有しない2つの細胞系統を、同時に作製することができる。当該変異を有しない細胞系統をコントロールとして用いることにより、該遺伝病における当該変異の影響や、当該変異を有する細胞の薬剤感受性等を、より正確に評価することができる。
あるいは、ある特定の遺伝子変異を有する細胞(例えば、当該変異を有する患者から誘導したiPS細胞等)に、上記(i)や(iv)の方法を適用することにより、当該変異を有しない、即ち野生型遺伝子を有する自家細胞を作製することができる。このような野生型に復帰した自家細胞は、当該遺伝子変異に起因する疾患の治療のための移植細胞ソースとして応用することができる。
4.本発明の方法における使用のための核酸
本発明はまた、本発明の方法における使用のための核酸(以下、「本発明の核酸」ともいう)を提供する。当該核酸は、本発明の方法の工程(1)に用いられる宿主細胞の作製に用いられる。
本発明の核酸は、
(a)宿主ゲノム内の標的化された領域に相同な2つの核酸配列であって、該核酸配列のうちの1つの3’末端と、他方の核酸配列の5’末端とがオーバーラップする、2つの核酸配列;及び
(b)該(a)の2つの核酸配列の間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位、
を含む。
上記(a)の2つの核酸配列は、本発明の方法における前記5’フランキングゲノム配列の3’末端に前記相同な核酸配列が付加された配列と、本発明の方法における前記3’ フランキングゲノム配列の5’末端に前記相同な核酸配列が付加された配列に相当し、該相同な核酸配列部分においてオーバーラップする。
また、上記(b)の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位は、本発明の方法における前記2つの相同な核酸配列の間に位置する1個以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位に相当する。
上記(a)の2つの核酸配列は、相同組換えの効率を向上させる目的で、前記5’及び3’フランキングゲノム配列内に上記(b)の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位とは異なる配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含むことが好ましい。
本発明の核酸は、2つ以上の上記(b)の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含むことが好ましく、そのうちの2つは、上記(a)の2つの核酸配列に、それぞれ実質的に隣接したものである。ここで用語「実質的に」とは、上記(a)の核酸配列と、配列特異的ヌクレアーゼ認識部位とが、直接的に連結されているか、上記(a)の2つの核酸配列がオーバーラップする末端間でMMEJ又はSSAが起こる程度の介在配列を介して連結されていることを意味する。この場合、本発明の核酸は、上記(a)の核酸配列に実質的に隣接する該2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の間に、1以上の外因性遺伝子を含むことができる。該外因性遺伝子の例としては、本発明の方法の説明において前記したものが挙げられる。
5.本発明の方法における使用のためのキット
本発明はまた、本発明の方法における使用のためのキット(以下、「本発明のキット」ともいう)を提供する。当該キットは、
(a)言及された本発明の核酸;及び
(b)(a)の核酸に含まれる該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を特異的に認識する1つ又は2つ種類の配列特異的ヌクレアーゼ、又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸、
を含む。
上記(b)の配列特異的ヌクレアーゼとしては、本発明の方法の説明において前記したものが例示され、好ましくは、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas等の人工ヌクレアーゼが挙げられる。
上記(a)の核酸が、前記5’及び3’フランキングゲノム配列内に上記4(b)の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位とは異なる配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含む場合には、本発明のキットは、相同組換えの効率を向上させるための該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を認識して結合する、別の配列特異的ヌクレアーゼ又はそれをコードする核酸をさらに含み得る。
以下に実施例を挙げて、本発明を説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
材料及び方法
プラスミド構築
表1は、本研究において使用された配列を検証したプラスミドの一覧表を提供する。完全なプラスミドの配列は、要求に応じて、又はAddgeneを通して入手可能である。クローニング及びバリデーションに使用したプライマーを表2に表す。
HPRT1_B NC-TALENは、以前に記載されている(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)。非反復可変性二残基(non-repeat-variable di-residue(non-RVD))バリエーションを持つAvr-TALEN発現ベクターを、Platinum TALEN法(Sakuma et al., Scientific reports3, 3379, 2013)を使用して、CMVの代わりにCAGプロモーターを含む改変ptCMV-136/63-VR発現ベクターへと構築した。次いで、DNA結合モジュールを、2工程のGolden Gate法を使用して構築した。構築されたモジュールは以下のとおりである:左、HD HD NI NG NG HD HD NG NI NG NN NI HD NG NN NG NI NN NI NG;右、NI NG NI HD NG HD NI HD NI HD NI NI NG NI NN HD NG。AAVS1を標的化するTALENは、以前に記載されている(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)。
CRISPR/Cas9発現のために、sgRNAオリゴ(表2)を、以前に記載されたとおり(Ran et al., 2013)にBbsIで直線化させたpX330(Addgeneプラスミド番号42230、Feng Zhang氏より寄贈された)にアニーリングさせてクローニングした。得られたプラスミド(pX-EGFP-g1、-g2、及び-g3)の配列を検証した(表1)。
HPRT1 SSAレポーターベクターを、以前に記載されたとおり(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)に使用した。eGFP sgRNAのための追加のCRISPR/Cas9 SSAレポーターベクターを、プロトスペーサー及びPAMからなるオリゴをアニーリングさせた後(表2)、BsaIで直線化したpGL4-SSAにライゲーションさせることによって作製した。
HPRT1遺伝子編集のためのMhAXドナーベクターを作製するために、HPRT1_B TALENで標的化された部位の周囲の1253bpの相同領域を、201B7 iPSCゲノムDNAからPCR増幅し(Takahashi et al., 2007)、最小pBluescriptバックボーンにクローニングし、配列を検証した(p3-HPRT1)。puro-ΔTK選択マーカーを、以前に記載されたとおり(Chen and Bradley, 2000)に設計し、AAVS1ドナーベクター(Addgene plasmid #22075)中に構築した。InFusionクローニング(クローンテック社)を使用して、2A-puro-ΔTKカセットを、p3-HPRT1ドナーベクター中へと導入した。簡単には、p3-HPRT1ベクターを、切除及びMMEJ修復のための全ての操作上の配列(eGFP1プロトスペーサー及びPAM配列、適切に設計されたμH、並びにサイレント及び疾患関連変異(μH内もしくは本文中で示した特有のフランキング領域内のいずれかの中に含まれる)が挙げられる)を含み、12~15ntのInFusionオーバーハング(表2)で終わるプライマーでインバースPCRによって増幅させた。2A-puro-ΔTKカセットを、T2A及び選択マーカーコード領域が、HPRTエキソン3のインフレームであるように増幅させて、pHPRT1-Ptk-ftsGFP1を得た。p3-HPRT1-S104R-PdTK-mCh及びp3-HPRT1-S104Rf-PdTK-mChのHPRTMunichドナーベクターを構築するために、改変μHと点変異とを持つInFusionプライマーを、PCRに使用した(表2)。次に、まずpAAVS1-P-CAG-DESTからCAG::Gatewayカセットをクローニングするために制限-ライゲーションを使用し(Addgeneプラスミド番号80490; Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)、次いでmCherryのGatewayクローニングによってCAG::mCherryレポーターを導入した。
Figure 0007184364000001
Figure 0007184364000002
Figure 0007184364000003
Figure 0007184364000004
Figure 0007184364000005
SSAアッセイ
SSAアッセイを、以前に記載されたとおり(Ochiai et al., 2010)に実行した。簡単には、TALEN又はCRISPR/Cas9ヌクレアーゼ発現ベクターを各200ng、100ngの適切なpGL4-SSA標的ベクター、及び20ngのpGL4_74_hRlucTK Renillaリファレンスベクターを含むDNA混合物を、96ウェルプレートにおいて、25μLのOpti-MEM I低血清培地(インビトロジェン社)中で調製した。次いで、0.7μLのリポフェクタミン2000(インビトロジェン社)を含有する25μLのOpti-MEM Iを添加し、室温で30分間インキュベートした。次いで、HEK293T細胞(Thermo Scientific社)を15% FBS含有DMEM中4×10個の細胞/100μLの密度で添加し、37℃、5% COで、24時間培養した。ルシフェラーゼ活性をアッセイするために、75μLの増殖培地を75μLのDual-Glo試薬(プロメガ社)で置換する前に、プレートをまず室温まで平衡化した。10分間インキュベーションした後、150μLの反応物を白色のマイクロタイタープレートへと移し、発光(1秒)を、Centro LB960(ベルトールド社)又は2104 EnVision Multilabel Plate Reader(パーキンエルマー社)で読み取った50μLのストップ試薬の添加と10分間のインキュベーションに次いで、Renilla発光を同様に読み取った。活性を、Firefly/Renilla強度の比率によって計算した。
ESC及びiPSC培養
未分化ヒトESC及びiPSCを、以前に記載されたとおり、フィーダーを含まない条件下で維持した(Kim et al. 2016)。簡単には、H1 hESC(Thomson et. al., 1998)及び1383D6 iPSCを、組換えヒトラミン-511 E8断片(iMatrix-511、ニッピ社)でコーティングされた6ウェル組織培養プレート上(0.5μg/cm)で、StemFit AK03又はAK02N(味の素株式会社)培地中で培養した。継代のために、細胞を、37℃で10分間の300μLのAccumax(Innovative Cell Technologies株式会社)での処置に次いで、ピペットでの穏やかな機械的解離によって、剥離させた。細胞を回収するために、10μMのROCK阻害剤Y-27632(和光純薬工業株式会社)を含有する700μLの培養液を添加した。細胞を、TC20(バイオラッド社)上で、トリパンブルー色素排除法を使用して数えた。典型的には、各継代において1~3×10個の細胞/cmをY-27632含有培地中に播種した。48時間後、培地を、Y-27632を含まないものへと変更した。
プレートに撒いた5~7日後、細胞は80~90%の培養密度に達し、再び継代のために調製した。凍結hiPSCストックを作るために、細胞を1×10個の生細胞/1mL STEM-CELLBANKER(タカラバイオ株式会社)の密度で再懸濁し、200~500μLの細胞懸濁液(2~5×10個のhiPSC)をクライオチューブへと移した。ストックのバイアルを、iMatrix-511でコートされた6ウェル組織培養プレート上へと、Y-27632含有StemFit AK03又はAK02N培地中で解凍させた(1つのバイアル/10cm)。
409B2の維持(Okita, et. al., 2010)を、霊長類ES細胞用培地(株式会社リプロセル)中で、SNLフィーダー細胞上で実行した(Tsubooka, et. al., 2011)。継代のため、SNLフィーダー細胞を、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)中、1mg/mlコラゲナーゼ、0.25%トリプシン、20% KSR、及び1mM CaClを含有し、Mg2+及びCa2+を含まない、300μLのCTK溶液(ナカライテスク株式会社)中、2分間、室温でのインキュベーションによってウェルから剥離させた。次に、CTK溶液を除去し、ウェルを2mLのDPBSで2回洗浄した。Recombinant Human FGF-basic(PEPROTECH社)を補填した1mLの霊長類ES細胞用培地(株式会社リプロセル)を加え、コロニーをセルスクレーパーで収集し、ウェル全体をくまなく上下に数回ピペッティングすることで、小さな凝集塊へと解離させた。分割比は、新鮮なSNLフィーダーでコーティングされたプレートに対し、~1:5であった。
TALENでのHPRTノックアウト
409B2 iPSCにおけるNC-TALENを使用したHPRT1ノックアウト実験を、以前に記載されたとおり(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)に、SNLフィーダー上でDNAの送達にはNeon(インビトロジェン社)エレクトロポレーションを用いて実行した。H1 ESC及び1383D6 iPSCにおいてAvr-TALENを使用したTALEN評価アッセイ及びHPRT1ノックアウト実験を、以前に記載されたとおり(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)に、フィーダーを含まない条件下で、DNAの送達にはNEPA21(ネッパジーン株式会社)を用いて実行した。簡単には、CAG-dNC-HPRT1 TALEN(各3μg)又はCAG-Avr-HPRT TALEN(各3μg)を、単細胞懸濁液中で、NEPA21エレクトロポレーションによって1×10個の細胞に遺伝子導入した。エレクトロポレーションした細胞を、1~5×10個の細胞/60mm培養皿の密度でプレートに撒いた。エレクトロポレーションの2日後、6-チオグアニン(6-TG、20μM;シグマアルドリッチ社)選択を開始し、7~10日間の期間にわたり毎日給餌した。集団解析のために、少なくとも50~300でコロニーを貯蔵し、ゲノムDNAの調製の前に一度継代した。クローン解析のために、iPSCコロニーをマイクロピペットで手動にて単離し、以前に記載されたように、96ウェル形式で培養、処理、及び冷凍保管した(Kim et al., 2016)。選択したクローンを解凍し、液体窒素中での永久保管のために増やした。
iPSC遺伝子ターゲティング
遺伝子ターゲティングを、本質的に記載されたとおりに実行した(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)。簡単には、ヌクレアーゼ発現ベクター(CRISPRについて1μg、TALENについて各1μG)及びドナーベクター(3μg)を、単一細胞懸濁液中で、1×10個の細胞に対してNEPA21エレクトロポレーションによって遺伝子導入した。エレクトロポレーションしたiPSCを、Y-27632含有Stemfit培地中1~5×10個の細胞/60mm培養皿の密度でプレートに撒いた。エレクトロポレーションの2日後、Y-27632を除去し、0.5μg/mLのピューロマイシン(シグマアルドリッチ社)を加え、7~10日間の期間にわたり毎日給餌した。クローンを、マイクロピペットで手動にて単離し、上記のように、96ウェル形式で処理した。
カセットの切除
カセットの切除を開始させるために、1μgのpX-EGFP-g1発現ベクターを、単一細胞懸濁液中で、1×10個の細胞に対してNEPA21エレクトロポレーションによって遺伝子導入し、Y-27632含有Stemfit培地中1~5×10個の細胞/60mm培養皿の密度でプレートに撒いた。エレクトロポレーションの2日後に、Y-27632を除去した。
HAT(1×)選択によって濃縮されたカセットの切除を、7~10日間の期間にわたり毎日給餌しながら実行した。クローンを手動にて単離し、上記のように、96ウェル形式で処理した。
蛍光レポーターを含むカセットでは、カセットが切除されたmCherry陰性細胞の濃縮をFACSによって実施した。pX-EGFP-g1でエレクトロポレーションしたiPSCを、通常通りプレートに撒き、選択圧の非存在下で回復させた。6日後、細胞を下に記載のようにFACS分取に供した。回復したmCherry陰性細胞集団を計数し、HAT(1×)の存在下又は非存在下で、クローン密度でプレートに撒いた。クローンを手動にて単離し、上記のように、96ウェル形式で処理した。
フローサイトメトリーと細胞分取
GFP又はmCherryの蛍光強度のルーチン的な測定のために、3.0×10個の細胞をFACS緩衝液(2% BSAを補填したDPBS)中に懸濁し、BD LSRFortessa Cell Analyzer(BDバイオサイエンス)を使用してBD FACSDivaソフトウェア(BDバイオサイエンス)で解析した。p3-HPRT1-S104R-PdTK-mCh(片側性S104R Munich変異)又はp3-HPRT1-S104Rf-PdTK-mCh(両側性S104R Munich変異)で標的化されたクローンのmCherry蛍光強度を、96ウェル形式で、MACSQuant VYB(ミルテニーバイオテク株式会社)上で測定した。
カセットを切除されたmCherry陰性iPSCの単離のために、細胞をFACS緩衝液中で、~1×10個の細胞/mLの密度で、単一細胞の懸濁液として収集し、凝集塊を取り除くためにセルストレーナーを通してろ過した。シングレットに対してゲート設定した後、mCherry陰性細胞集団を、BD FACSAria IIセルソーター(BDバイオサイエンス)上で、20μMのY-27632を含有するStemfit AK02N培地中に収集した。分取効率を、BD LSRFortessa Cell Analyzerを使用して決定した。
フローサイトメトリーデータを、FlowJoソフトウェア(Tree Star社)によって解析して作成した。
クリスタルバイオレット染色
コンフルーエントな、又は薬剤選択された培養物からのiPSCのプレートを、氷冷DPBSで2回洗浄し、氷冷メタノール(ナカライテスク株式会社)で10分間、室温で固定した。メタノールを除去し、プレートの底部を覆うのに十分なクリスタルバイオレット溶液(HT90132、シグマアルドリッチ社)を添加した。室温での10分間のインキュベーション後、染色溶液を除去し、プレートをddHOで穏やかにすすいだ。室温で完全に乾燥させた後、STYLUS XZ-2(オリンパス株式会社)カメラで、ウェル全体の画像を取得した。
ゲノムDNAの単離
PCRスクリーニング及びシーケンシング用のゲノムDNAを、DNeasy Blood & Tissue Kit(株式会社キアゲン)を製造者の指示に従って使用して、0.5~1×10個の細胞から抽出した。サザンブロット用のゲノムDNAを、溶解緩衝液(100mM Tris-HCl、pH8.5、5mM EDTA、0.2% SDS、200mM NaCl、及び1mg/mL プロテイナーゼK)を使用して6ウェルのシャーレ(~1~3×10個の細胞)の1つのコンフルーエントなウェルから抽出し、それに続き、標準的なフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿、及びTE pH8.0中での再懸濁を行った。ハイスループットのサザンブロット又はPCRスクリーニングのために、ゲノムDNAを、プレート溶解緩衝液(10mM Tris-HCl、pH7.5、10mM EDTA、0.5% サルコシル、10mM NaCl、及び1mg/mL プロテイナーゼK)を使用して96ウェル形式で抽出し(Ramirez-Solis et al., 1992)、それに続き、直接的なエタノール沈殿及び制限消化混合物又はTE pH8.0中での再懸濁を行った。
PCR遺伝子型決定
HPRT1(受入番号NG_012329.1)のエキソン1~9のプライマー設計を、NCBIプライマーBLASTを使用し、任意の設定においてヒトリピートフィルター、SNPハンドリング、及びプライマー対特異性のヒト(taxid:9606)基準ゲノム(表2)、をチェックして実施した。H1 ESC及び1383D6 iPSCについて、KAPA Taq Extraを用いて、以下のプロトコール(98℃で10秒間、59℃で15秒間、68℃で4分間)×30サイクル、4℃で保持、を使用してゲノムDNAからエキソン1~9を増幅させ、そしてシーケンシングした。
遺伝子ターゲティングのために、puro耐性クローンをPCRによってスクリーニングして、5’及び3’の標的接合部を検証した。ドナーベクターホモロジーアーム外のプライマー及び導入遺伝子特異的なプライマーを、図9及び12、並びに表2中に記載されるように使用した。PCRを、以下のプロトコール(98℃で10秒間、59℃で15秒間、68℃で4分間)×30サイクル、4℃で保持、を使用して、KAPA Taq Extraを用いて実行した。接合部領域のシーケンシングを使用して、隣接するμH及びCRISPRプロトスペーサーの忠実度を保証した。
標的カセットの切除に次ぐ、HPRT1_B TALEN誘導変異スペクトル及びMMEJ修復率を、プライマーセットdna309/310を用い、AmpliTaq 360(ABI)95℃で10分間、(95℃で30秒間、57℃で30秒間、72℃で60秒間)×30サイクル、72℃で7分間、4℃で保持、を使用して、プールした又はクローンゲノムDNA調製物からスクリーニングした。クローンからのPCR産物を、同一のプライマーを使用して直接シーケンスし、一方で、プールからのPCR産物はTOPO TAクローニングキット(インビトロジェン社)を使用してクローニングし、次に、得られた細菌コロニーからのT3/T7プライマーを用いたPCR増幅に次いで個々にシーケンスした。
片側性又は両側性の変異μHでの切除後に、サイレント変異が定着したかを検証するために、ゲノムDNAを、dna1720/411プライマーを使用して増幅させた。切断されたアンプリコンをAflII制限酵素での処置後又は処置なしで、ゲル電気泳動によって分離させた。
シーケンシング
PCR産物を、シーケンシングに先立って、ExoSAP-IT(アフィメトリクス社)で処置した。BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)を使用して、エタノール沈殿によって精製し、3130xl Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムズ)上で実行することによって、DNAシーケンシングを実施した。配列アライメントを、Sequencher v5.1(Genecodes)又はSnapgene v3.1.4 以上(GSL Biotech LLC.)を使用して実施した。ベースコールの信頼度が低いシーケンストレースファイルを、さらなる解析から除外した。
TIDE解析
約50クローン(H1)又は200クローン(1383D6)からなるiPSCの集団をプールしてゲノムDNAを収集し、上記のように増幅させた。混合配列のTIDE解析を、https://tide.nki.nl/(Brinkman et al., 2014)におけるオンラインツールを使用して実施した。1383D6 iPSC又はH1 ESCからの配列データを、基準として使用した。TIDEは、CRISPR/Cas9用に設計されており、TALENは、スペーサー内の未確定の位置でDSBを誘導するため、我々は、予測された切断点を、ベースコールの信頼度が見かけ上混合された配列と完全に一致して最初に低下したHPRT1_B TALEN-L結合部位(ATTCCTATGACTGTAGAT^TTT)に隣接するように、スペーサーの5’末端に配置した。欠失サイズのウィンドウを、より大きな欠失に適応させるように、20bpに拡張した。残りのパラメータは、デフォルトに設定するか、又は提供されたシーケンストレースファイルの性質に基づいて自動的に調整されることを許容した。
サザンブロット
HPRT-B及びmCherryプローブ断片を、それぞれゲノムPCRアンプリコン又はプラスミドPCRアンプリコンから調製し(表2)、一方で、TKプローブをプラスミド制限断片から調製した。DIG標識dUTP(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を、製造者の指示に従って、HPRT-B及びmCherryの場合には、ExTaq(タカラバイオ株式会社)を使用してPCR増幅によって組み入れ、TKの場合にはランダムプライミングによって組み入れた。
ゲノムDNA(5~10μg)を、BSA(100μg/mL)、RNaseA(100μg/mL)及びスペルミジン(1mM)の存在下、3~5倍過剰の制限エンドヌクレアーゼで一晩消化した。消化されたDNA断片を、0.8%アガロースゲル上で分離し、脱プリン化し、変性させ、20×SSCを使用してHybond N+ナイロン膜(GEヘルスケア社)へと移行させた。膜を、UV架橋し、プレハイブリダイズし、4mLのDIG Easy Hybバッファー(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)中150ng/mLのジゴキシゲニン(DIG)標識DNAプローブとともに、42℃で一晩、常に回転させながらインキュベートした。65℃での洗浄(0.5×SSC;0.1% SDS)を繰り返した後、膜をブロックし(DIG Wash and Block Buffer Set、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)アルカリホスファターゼ接合抗DIG抗体(1:10,000、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を膜に加えた。シグナルを、CDP-star(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)によって高め、ImageQuant LAS 4000 imaging system(GEヘルスケア社)によって検出した。
顕微鏡観察
位相差像及び蛍光像を、適切なフィルター及び露出時間を使用して、BZ-X710(株式会社キーエンス)上で取得した。
細胞増殖の測定
iPSC株を3×10個の細胞/6ウェル培養シャーレでプレートに撒き、HATなしで2日間増殖させ、次いでさらに2日間HATあり又はなしで増殖させた。細胞を、プレートに撒いた2日、3日及び4日後に収集し100μLのAK02中に再懸濁した。11μLアリコートの細胞懸濁液を、トリパンブルー染色液0.4%(ギブコ社)と1:1で穏やかなピペット操作で混合し、10μLをCounting Slide(バイオラッド社)の両側にアプライした。細胞数を、TC20 Automated Cell Counter(バイオラッド社)を用いて決定した。
ウエスタンブロット
HPRTタンパク質解析のために、全細胞可溶化液を、50mMの最終濃度でDTTを含有する100μLのNuPAGE LDSサンプルバッファー(1×)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)中で10分間、1×10個の細胞を煮沸することによって調製した。可溶化液を、Bis-Trisゲル上で分離させ、HPRT(F-1, sc-376938, 1:200, Santa Cruz社)及び抗アクチン(A2066, 1:5,000, シグマアルドリッチ社)抗体を使用してプロービングした。ヤギ抗ウサギIgG-HRP(Santa Cruz社: sc-2004)及びヤギ抗マウスIgG、HPRTに対するHRP-Linked Whole Ab Sheep(GEライフサイエンス:NA931-100UL)二次抗体並びに抗アクチンをそれぞれ、1:5000希釈で使用した。シグナルを、ECL Primeウエスタンブロッティング検出試薬(GEヘルスケア社)を使用して高め、ImageQuant LAS 4000 imaging system(GEヘルスケア社)上で検出した。
メタボローム解析
培養液試料を、キャピラリー電気泳動飛行時間型質量分析(CE-MS)を使用して、記載(Wakayama, et. al., 2015)のように解析した。資料の調製には、示したiPSCクローンから1.5×10個の細胞を、96ウェルプレートの各ウェルあたり、ROCKi(10μM)を含有する150μLのAK02培地中に播種し、37℃、5% COで培養した。翌日、培地を、150μLのROCKiを含まない新鮮なAK02培地で置換した。培地のみの基準資料を調製し、同様に37℃、5% COで培養した。24時間後、100μLの消費された培地を収集し、Lメチオニンスルホン(和光純薬工業株式会社)、MES(株式会社同仁化学研究所)、及びCSA(和光純薬工業株式会社)内部標準(各200μM)を含有する400μLのメタノールと混合した。200μLのMilli-Q超純水の添加に次いで、試料を、500μLのクロロホルムで抽出した。水層を、5kDa限外濾過(HMT)に供し、凍結乾燥した(ラブコンコ社)。凍結乾燥試料を解析前に、3-アミノピロリジン(シグマアルドリッチ社)及びトリメシン酸(和光純薬工業株式会社)内部標準(各200μM)を含有する50μLのMilli-Q超純水中に再懸濁した。データを、特にCE-MSべースのメタボロームデータ解析用に開発された、インハウスのソフトウェア(Master Hands-2.17.1.11)を使用して、解析及び定量化した。
結果
MMEJは、HPRT1遺伝子座のTALEN切断に次ぐDSBRの結果に偏りをもたらす
プログラムされたエンドヌクレアーゼを使用した遺伝子破壊は、無作為の挿入及び欠失(挿入欠失)変異を作り出すために、非相同末端結合(NHEJ)等の細胞のエラープローン修復経路に頼る。我々は、以前にこの現象を活用して、改変TALEN構築物の活性を評価するために、201B7ヒト女性iPSCにおけるHPRT酵素機能を破壊した(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)。そのアッセイにおいて、ヒトHPRT1遺伝子のエキソン3を標的化する(図1A)HPRT1_B(Cermak et al., 2011)を倣って作られたTALENの一過性導入と、それに次ぐ6チオグアニン耐性(6-TG)に関する濃縮が、再発される17塩基の欠失からなる変異(Δ17)を明らかにした。別の女性iPSC株(409B2)におけるHPRT1のTALEN媒介性破壊は、Δ17アレルを、~25%の頻度で再現した(図2)。NHEJの結果は、マイクロホモロジー媒介末端結合と思われる代替の修復経路中の短い直列反復配列によって偏りがもたらされ得る(McVey and Lee, Trends in genetics : TIG 24, 529-538, 2008)。したがって我々は、(Bae et al., 2014)に基づいたカスタムのPythonスクリプトを使用して、予測されたDSB部位でのマイクロホモロジー(μH)を検出した。スクリプトは、12bpの非相同配列によって分離されている、左のTALEN(TALEN-L)結合部位内及び介在スペーサー領域内に位置する5bpのμH(μ5:「GACTG」)を予測した。さらなる検討は、1つのバリアント塩基(T又はA)のみで分離される、μ5に隣接する3bpの第二のμH(μ3:「AGA」)を明らかにし、その結果、構造「GACTGWAGA」(ここで、W=T/A(以後、μ5W3と呼ぶ)の不完全な化合物μHがもたらされた。これらの知見は、さらなる研究を保証する、MMEJを介した偏った修復経路を示唆した。
標的化された領域でのMMEJの評価に先立ち、我々は、我々のHPRT1 TALENアッセイにおいて、3つの顕著な技術的改良を行った。最初に、HPRT1遺伝子座がX連鎖性であることを考慮して、我々は、HPRT1エキソン1~9において、両方ともが基準ヒトゲノムから偏向していない(データは示さず)、男性1383D6 iPSC(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)及びH1 ESC(Thomson et al., 1998)を利用することを選択した。両アレルのX活性化を促進する条件下(X/X, Tomoda et al., Cell stem cell 11, 91-99, 2012)で増殖させた女性iPSC株は、ヌクレアーゼ切断の頑強性を実証した(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013)ものの、男性細胞株における単一のHPRT1コピーは、NHEJ変異スペクトルを明らかにするのに役立つだろう。我々は第二に、我々のアッセイを、リーダーを含まない条件に適応させ(Nakagawa et al., 2014)、このことは、96ウェル形式での単一細胞の継代、クローニング、及び解析を可能とすることによって、クローン解析を改善した(Kim et al., 2016)。そのうえ、HPRT1陰性SNLフィーダーを除去することで(Okita et al., 2011)、交差摂取又はフィーダー感受性を回避することによって、それぞれ6-TG及びHAT選択、の両方の薬剤毒性の動態学を有意に改善した。第三に、同一の標的配列(Cermak et al., 2011)を維持する一方で、HPRT1_B TALENを、切断型のザントモナス・オリゼ・パソバー.(PthXo1)ベースTALEスキャフォールド(Sakuma et al., Genes Cells 18, 315-326, 2013a)から、斑点細菌病菌(AvrBs3)ベースの+136/+63 TALE構造(Christian et al. 2010; Sakuma et al., Scientific reports 3, 3379, 2013)へとアップデートし、新たなCAGプロモーター駆動型発現ベクター(表1)から発現させた。これらの組み合わされたベクター改変は、単鎖アニーリングアッセイによって測定されたAvrHPRT1_B TALENの切断活性において、3倍の増加をもたらした(Sakuma et al., Scientific reports 3, 3379, 2013; Fig. 3A)。増強されたゲノム切断活性は、1383D6男性iPSCの遺伝子導入に次ぐ6-TGコロニー形成の改善によっても実証された(図3B)。
これらの改善点をもって、我々は、男性iPSCにおいてAvrHPRT1_B TALENによって誘導される変異のスペクトルの調査に着手した。我々は、6-TG男性iPSCの混合集団におけるアレル頻度を、混合PCRアンプリコンからの計算的シーケンストレース分解を利用することによって、推定した(TIDE, Brinkman et al., 2014)。シーケンストレースファイルにおいて、オーバーラップするピークが、μ5W3の直後に観察され、それに先行する位置「W」においてT/Aオーバーレイが観察された(図4A~C)。種々の主要ではない欠失アレルのうち、Δ17が、有意に大きな比率を占めることが見いだされ(63.5%、図4D)、μ5W3を介したMMEJが強く支持された。男性H1ヒトES細胞においても、同様の頻度でTIDE結果が立証された(43.9%、図4E~G)。集団における、この明らかに高い割合のMMEJ修復が、PCRバイアスの人為現象である可能性を除外するために、我々は、6-TG iPSCクローンを単離し、エキソン3のサンガーシーケンスを実施した(図1B及び図5)。クローン解析は、欠失が最も一般的なNHEJの結果である(83%)こと(このうち、Δ17アレルが大部分を構成した(69%))を明らかにし、集団ベースのTIDE解析と一致した。Δ17アレルは、μ5W3における不完全さに従って、5(T):15(A)(図1C)の比率でさらに細分することができ、これはおそらく、修復のための上流のμ5のより頻繁な使用、及びこれに一致する介在性「TAGA」配列の喪失によって指示されている。両方の種類のΔ17欠失は、-1フレームシフトを生み出し、これはナンセンス変異(fsTer101)において終始する3つ(HPRTΔ17TではD98E、F99L、I100L)又は4つ(HPRTΔ17AではV97E、D98E、F99L、I100L)のミスセンス変異をもたらし、これは6-TG耐性及びHAT感受性によって測定されるHPRT機能の喪失をもたらすが(図6A)、通常の培養条件下ではクローン形態又は増殖率に対するさらなる影響はない。TALEN媒介性HPRT1ノックアウトデータの解析は、我々を2つの主要な結論へと導いた(図1D):最初に、一般的なMMEJ現象が、再現可能な介在配列の高忠実度の欠失をもたらし、第二に、不完全なμH(μ5W3)間のMMEJが、代替であるが予測可能なアレルの結果を引き起こす。
MMEJ媒介性切除のために設計されたカセットを使用した点変異の定着
TALEN媒介性のHPRT1破壊(図1)に触発されて、我々は、内因性配列が抗体選択マーカーに隣接するように、それらを、重複するμHとして設計することによって、入れ子状のDSBを修復するためにMMEJを利用するよう細胞を動員することができ、その結果、痕跡が残らない切除と遺伝子座の回復がもたらされると考えた(図7A)。この、マイクロホモロジー媒介性切除(microhomology-assissted excision)(MhAX)技術を実証するために、我々は、遺伝子ターゲティング及び切除の両工程を追跡する意図をもって、puro-ΔTK抗体対抗選択カセット(切断型チミジンキナーゼに対するピューロマイシンの融合物)を使用してHPRT1エキソン3を標的化することを選択した。HPRT1は、ヒトiPSCにおいて発現されるため、我々は、カセットを2A-ペプチド連結プロモーターレスジーントラップとして利用した;このアプローチは、バックグラウンドフリーなAAVS1標的化のために使用されるアプローチ(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)と類似しているが、HPRT1オープンリーディングフレーム内へのインフレームな挿入を支持するスプライス受容体配列を欠く(図8A)。
マーカーに隣接するDSBを作り出すために、我々は、統合されたCas9タンパク質及びsgRNAプラスミド発現系(Ran et al., 2013)並びに定義されたエンドヌクレアーゼ切断点(Jinek et al., 2012)、を含む複数の利点を活用し、TALENよりもむしろCRISPR/Cas9を利用することを選択した。我々は、ヒトゲノムにおいてわずかなオフターゲット部位を有することが予測された、証明された活性を持つ候補sgRNAを検討し、ヒトU2OS骨肉腫細胞において高い活性及び低い毒性を有することがすでに示されているA.victoriaのGFP遺伝子を標的化する3つのsgRNA(Fu et al., 2014)にはじめに着目することを選択した。HEK293T細胞におけるルシフェラーゼ修復を測定するプラスミドベースのSSAアッセイ(Ochiai et al., 2010)は、各sgRNAの相対活性を決定し(図9A及びB)、eGFP sgRNA1が最も強力であることが見いだされ、最初の報告(Fu et al., 2014)の結果を実証した。我々はさらに一連のeGFP sgRNAの活性を、AAVS1遺伝子座へ標的化された構成的CAG::GFP導入遺伝子の破壊を測定する、ヒトiPSCにおけるゲノム切断アッセイ(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)を使用して決定した(図9C)。濃縮しないヌクレアーゼでの遺伝子導入の5日後におけるGFPに対するFACS解析は、sgRNA1に関して、7.4%のGFP陰性画分を示し、ヒトiPSCのゲノム切断におけるその有用性を証明した。いずれのアッセイにおいても、どのsgRNAでも明白な細胞毒性は観察されなかった。これらのデータに基づき、我々は、PAM及び上流の切断部位が、設計されたμHに近位になるように、カセットに隣接するeGFP-1プロトスペーサーを、分岐した配向性で配置した(図7A及び8A)。
隣接するμHを設計するにあたり、我々は、天然のμ5T3配列(図1A)を活用した。我々は、ドナーベクターの右のホモロジーアーム内にサイレント変異を設計して、痕跡が残らない定着を実証する一方で、μ5T3とμ5A3との間にあり得る相互作用も妨害した(図7A及び8A)。sgRNAライブラリのハイスループットスクリーニング及びコンピュータ解析(Doench et al., 2014; Doench et al., 2016)は、PAMの下流に配置された「G」ヌクレオチドは、Cas9活性には好ましくないことを明らかにしてきた。したがって我々は、入れ子状態の各eGFP-1 PAMが、「T」又は「A」ヌクレオチドによって隣接されるように、μHを意図的に長くした。最後に、2A-puro-ΔTK発現のために、現在は5’隣接eGFP1プロトスペーサーを含むオープンリーディングフレームを維持するようにμ5T3が調節された。したがって、最終的な隣接μHは、連続した11bpの配列「TGACTGTAGAT」であった。このμHは、それらが選択マーカー及びCRISPRで標的化された領域と直列に隣接するように、HPRT1ドナーベクターの左のホモロジーアームの3’末端及び右のホモロジーアームの5’末端内へとPCR増幅によって操作された(図7A)。
プロトタイプMhAX選択マーカーの、1383D6男性iPSC内への遺伝子ターゲティングは、HPRT1_B TALENを使用して刺激され、次いで、ピューロマイシンでの標的クローンの選択が行われた。全クローンは、PCRによって事前にスクリーニングされ、次いで、標的接合部のサンガーシーケンスが行われ(図8B)、引き続き、無作為の組込みを除外し、HPRTのノックインを証明するために、それぞれ内部TK及び外部HPRTプローブを使用したサザンブロットによって遺伝子型が同定された(図8C)。陽性コロニーは、薬剤選択されて、HPRT1ノックアウトが機能的に検証され(6-TG及びHAT;図7B、中央)、かつHAT培地におけるコロニー形成によって、親iPSCの混入がないような純度(10個の細胞あたり1個未満細胞)を保証した。
選択マーカーを切除するために、クローン016-A3が、Cas9及びeGFP1 sgRNAの発現ベクターで遺伝子導入され(pX-EGFP-g1)、次いで、コロニー形成に関するHAT選択が行われた。eGFP2 sgRNAがHATコロニー形成を誘導せず(図8D)、複数回の継代後にもアレルの自発的な復帰が起こらなかったことから(データは示さず)、コロニー形成は、eGFP1 gRNAでの処置に特異的かつ依存的であった。FIAUを使用したカセットに対する選択は効果がなく、これはもしかしたら、内因性HPRT1の低発現が2A-puro-ΔTKを駆動するからかもしれず、これは我々のAAVS1遺伝子座のジーントラップの経験におけるneoの低レベルの発現(Oceguera-Yanez et al., Methods 101, 43-55, 2016)と類似する。いずれの場合においても、得られたHATRクローンもまた、puro及び6-TGに感受性であり、痕跡が残らない切除を示唆している(図7B)。サザンブロット解析は、HPRT1遺伝子座の再構築を示す一方で、選択マーカーのためのプロービング(TKプローブ)は、切除されたクローンにおいてバンド形成がなかったことを明らかにし、再組込みが起こることなくカセットが除去されたことを証明した(図7C)。
ゲノムPCR及びシーケンシング(図7D及びE)は、全てのクローン的に単離されたHAT iPSCのうち93%を超える(42/45)ものが、設計されたμHのMMEJを通して起こると予測されたとおりに修復されたことを明らかにした。すべての42クローンが、設計されたサイレント変異を有し、これは、それらが親1383D6 iPSCとは別個であり、MMEJの結果として生じたことを示している。挿入欠失をもたらす隣接するDSBのNHEJが予想されるため、我々は、HAT選択圧の非存在下における修復の忠実度を探索した。クローン016-A3を、pX-eGFP-g1で遺伝子導入し、全ゲノムDNAをHAT非選択集団から収集し、次いで、PCRによる標的化された領域の増幅及びTAクローン産物のシーケンスを行った。非選択集団において、複数のクローンが、種々の追加の短い挿入欠失あり又はなしで、2つのeGFP1プロトスペーサー切断点での融合を示し(図7E、右、及び示されていないデータ)、伝統的なNHEJが修復経路であることが推測された。重要なことに、~10.5%の配列(9/86)が、MMEJ切除のための正確な欠失サイズを有しており、MMEJ媒介修復について予測された完璧に再構築されたHPRTコーディング配列を表した(図7E、左)。したがって、我々は、MhAXを、高い忠実度の痕跡が残らない選択マーカー切除方法及びゲノム内のデザイナー点変異を定着させるための新規のアプローチとして確立した。
片側性のμH変異は、同質遺伝子コントロールの同時単離を可能とする
HPRT1遺伝子座での不完全なμ5W3修復(図1)に対する我々の知見を鑑み、我々は、結果の二様性を意図的に活用して、単一の実験から変異体及びコントロールiPSCクローンの両方を作製できると推察した。我々はしたがって、AvrHPRT1_B TALENで標的化された領域に隣接するHPRT1のエキソン3内に位置する、CからAへのトランスバージョン変異(312C>A;rs137852485)(Cariello et al., 1988)によって引き起こされる、HPRTMunich部分的酵素欠損(Wilson et al., J Biol Chem 256, 10306-10312, 1981)の再作製に着目することを選択した。外部変異の定着のために、上記したものと類似したMhAXカセット構造を使用して(図7A)、我々は、312C>A Munich変異を中心(二重下線)に、かつもっぱら診断目的のAflII制限部位を作出する追加のサイレント変異306G>TをμHの5’末端(一重下線)に含む(図10A)、新たな隣接するμH「TAAGAGATATTGT」を設計した(図10A)。したがってHPRT1ホモロジーにおけるオーバーラップは、変異の位置に適応するようにシフトされた(図10A及び図11)。μ5W3の不完全な修復に伴って観察される現象を再現するために(図1)、我々は、μHにおける患者の312C>A変異が、対称的(両側性)あるいは非対称的(下流のホモロジーが「TAAGAGCTATTGT」であるように片側性)のいずれか(図10)である2つのターゲティングベクターを作出した。両側性にコードされた変異は、100%のクローンにおいて定着すると仮定され、一方で、片側性にコードされた変異は、一部のクローンのみにおいて定着するだろうと仮定された。両方のμHは、診断上特徴的なAflII 306G>T変異を含有した。両方のμH成分は、左のホモロジーアーム内へとシフトされ、ターゲティング又は切除には影響しないと予想されたため、我々は、内因性μ5W3を破壊する努力はしなかった。最後に、我々は、カセットが切除されたiPSCの濃縮を改善させるために、構成的に発現するCAG::mCherryレポーター遺伝子を含めた。AvrHPRT1_B TALENを再び利用して、1383D6 iPSCにおける遺伝子ターゲティングが刺激された。クローンは、切除へと進める前に、サザンブロット(図11D)、PCR増幅とそれに次ぐAflII切断(図11E)及び接合部のシーケンス(データは示さず)、FACSによるmCherry発現(図10B)、並びにHAT感受性及び6-TG耐性(図10B)、によってスクリーニングされた。
切除は、標的クローンである033-U-45(片側性)及び033-B-43(両側性)のpX-EGFP-g1での遺伝子導入によって誘導され、033-U-45及び033-B-43それぞれについて1.9%及び1.4%の割合でmCherry陰性集団が産生された(図12)。mCherry陰性細胞は、>98%の純度までFACSで分別され、HAT選択圧あり又はなしで、クローン密度で再度プレートに撒いた。クローン単離及び代謝スクリーニングは、一定のiPSC株が6-TG及びHAT耐性の逆転を呈し、正常HPRTが示され、一方で他のiPSC株が両方の薬剤に対する感受性を示したことを明らかにした(図10B)。HAT選択下において、033-B-43ではいかなるクローンももたらされず、修復ができないか又は312C>A変異の表現型に対する影響のいずれかが示唆された(図10C)。その一方で、033-U-45は、HAT選択圧下で、痕跡が残らない切除を達成したが、サイレントな306G>T変異の定着をもっぱら表した(49/49)iPSCコロニーを産生し、修復偏向又はHATに対するHPRT1312Aの感受性の表現型のいずれかであることが示された。
切除、FACS濃縮、及び選択圧の非存在下におけるコロニー形成は、痕跡が残らないよう操作されたクローンを産生した(図10C)。μ11で観察されたように(図7E)、NHEJを介して修復されたクローンは、eGFP sgRNA1切断点及び隣接するμHの保持、からなる種々の挿入欠失変異を生み出した。両側性のμHを持つクローンのうち、2.5%(5/204)は痕跡が残らないよう切除され、全てのクローンが、306Tサイレント及び312A Munich変異の両方を有した。片側性のμH由来のクローンは、6.6%の割合(14/211)で痕跡が残らないよう切除された。重要なことに、9/14のクローンが、サイレント及びMunich変異の両方を有していた一方で、残り(5/14)は、1つのサイレント変異のみを持っており(図10C及びD)、これは、我々が、意図的に不完全なホモロジーを設計することによって、MMEJの結果の偶然性を再現することができることを示した。mCherryに対するFACS解析(図10B)及び内部導入遺伝子プローブでのサザンブロット(図10E)の両方が、正しく切除されたクローンの中でマーカー遺伝子はいかなる検出可能な割合においてもゲノム内に再挿入されないことの証拠を再び提供した。したがって、我々のデータは、不完全なμHを媒介したMMEJは、等しい実験条件下で取り扱われた場合に、疾患及び関連する正常の同質遺伝子iPSCクローンの同時の作出に適用され得ることを証明する。
操作されたHPRTMunich変異の表現型解析
最後に、我々は、HPRT操作の表現型上の結果を調べ、クローンのバリエーションの評価に着手した。プリンサルベージ経路におけるヒポキサンチンのイノシン一リン酸(IMP)への変換には、HPRT酵素活性が必要である(図13A)。培養中に、プリンのデノボ合成が、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)によって遮断される場合、細胞は、DNA合成について、全面的にプリンサルベージに頼らなければならない。MhAXの手順の間に、HATの濃縮は、選択的にHPRT306T/312Aクローンを排除し、HPRT306Tクローンを支持した(図10C)。しかしながら、通常のiPSC維持条件下では、正常、変異体、又は同質遺伝子コンロトールのクローン間で、形態又は増殖率におけるいかなる差異も認められなかった。我々は、したがって、HAT選択下で、操作されたiPSCクローンの増殖を検討した。HAT処理開始から24時間以内に、ノックアウトHPRTΔ17A及び033-U-45は完全に排除され、一方で、HPRT306T/312A iPSCは、細胞数において遅延した増殖を示した(d3、図13B)。この低下は、細胞形態における顕著な変化(図13B、右)、及び72時間までの完全な細胞死に付随した。興味深いことに、HPRTΔ17A及び033-U-45ノックアウトiPSCとは異なり、HPRT306T/312A iPSCもまた、6-TGに対する感受性を保持していたものの(20μM、図10B)、HAT応答と同様に、1383D6又はHPRT306Tと比較した場合には細胞死は遅延されていた(データは示さず)。これらのデータは、HPRT306T/312Aは限定されたグアニンサルベージ能を保持し、最終的には6-TG誘導毒性につながったけれども、デノボ合成の非存在下における全体的なプリンサルベージは、DNA複製及び細胞増殖には不十分であることを示唆する。
病理学的には、低下したHPRT機能は、高レベルのヒポキサンチン、及び過剰なヒポキサンチンの尿酸への変換という結果をもたらし(図13A)、尿酸は関節及び腱の中に蓄積して炎症性関節炎を引き起こし、又はより重症の場合には、腎結石もしくは尿酸腎症を引き起こす。高尿酸血症患者の細胞可溶化液を使用したインビトロアッセイは、HPRTMunichタンパク質の細胞内レベルは正常であることを見出した(Wilson et al., J Biol Chem 256, 10306-10312, 1981; Wilson et al., 1982)一方で、突然変異が、異常なヒポキサンチン触媒活性を持つ酵素という結果をもたらす(Wilson and Kelly, 1984)ことを示した。よって、HPRTΔ17A及び033-U-45ノックアウトiPSC株からの可溶化液のウエスタンブロット解析においてHPRTタンパク質が検出不可能であったにもかかわらず、HPRT306T又はHPRT306T/312Aの各3つのクローンは、1383D6のタンパク質発現レベルに匹敵するタンパク質発現レベルを明らかにした(図13C)。HPRT306T/312A iPSCにおけるHPRTMunichの代謝状態を評価するために、我々は、キャピラリー電気泳動飛行時間型質量分析(CE-MS)を実施して、消費された細胞培養培地中のイオン代謝産物を検出した(Wakayama et al., 2015))。HPRT媒介性プリンサルベージの機能不全について予測されたように、ヒポキサンチン及びグアニン両方のレベルが、1383D6と比較して、ノックアウトiPSCにおいて上昇していた(図13D)。HPRT306Tクローンは、1383D6に似た代謝プロファイルを有していた一方で、HPRT306T/312A iPSCは、HPRTΔ17A又は033-U-45ノックアウトよりは少ない程度であるが、ヒポキサンチンとグアニンの両方を蓄積した。これらのデータは、完全な機能喪失よりはむしろ、低レベルのグアニン及びヒポキサンチンサルベージと一致した。かくして、我々は、痕跡が残らないよう、かつ確率論的に疾患関連又はコントロールの点変異を定着させるために、MhAX技術を使用して、HPRT1コード領域変種の特有のiPSCモデルを作出した。
MMEJカセット切除に影響するパラメータ
MMEJ効率に対して、μH長を増加させることの効果を探索するために、我々は、HPRTMunichアレルを作り出すために使用された我々のカセット設計と類似した、プラスミドベースのMMEJアッセイを開発した。我々は、クロラムフェニコール/ccdB陽性/陰性細菌選択カセットを、eGFP-1(ps1)プロトスペーサーと隣接させ、それを、0~50bpまで長さが増加する隣接μHを持つルシフェラーゼ発現ベクター内へと挿入した(図14a、b)。HEK293T細胞内への遺伝子導入に次いで、μH長とルシフェラーゼ活性との間には陽性の相関が観察され、増加するμH長とともにMMEJ率の改善が示唆された(図14b)。ccdB感受性細菌宿主におけるKanカセットが切除されたプラスミドの回収は、試験されたすべてのμH長にわたって、類似したコロニー数を明らかにし(データは示さず)、MMEJプラスミド系列を渡るps1切断に関する一定の効率を反映する。細菌コロニーからのμ0接合部のシーケンシングは、一貫したNHEJの様式を明らかにする一方で、μ20接合部は、Kanクローンの6.25%(2/32)における完全なMMEJ媒介性修復を明らかにした。したがって、ルシフェラーゼ活性と一致して、μH長の増加は、NHEJよりもMMEJ修復を改善させた。
HEK293T細胞の染色体外プラスミドからのMMEJによる正確なカセットの切除は、iPS細胞ゲノムからのカセットの切除を正確には反映していないかもしれない。我々はしたがって、μ5A3を破壊する3つの同義変異(c.303A>G、c.304C>T、及びc.306G>A)の定着とともに、MMEJがHAT耐性の回復をもたらす、HPRT遺伝子座における染色体アッセイを確立した。TALENを使用して、11bp又は29bp長のμHによって隣接されるMhAXカセットを、HPRT1エキソン3に標的化した(図14c)。Puroクローンを、以前のようにPCR及びサザンブロットによってスクリーニングし、6-TG及びHATであることが検証された一方で、フローサイトメトリーは、全ての正確に標的化されたiPSCにおけるmCherryの構成的かつ均一な発現を明らかにした(データは示さず)。予想されたとおり、mCherry陰性画分は、2つのコンストラクト間で類似しており、ps1プロトスペーサーでのCas9切断及びカセット切除の割合は、μH長によって影響されないことが示された。しかしながら、μ29切除からのmCherry陰性細胞は、より大きな数のHATコロニーを生じさせ(図14d)、MMEJによる痕跡が残らない修復の亢進が示唆された。μ11及びμ29 mCherry陰性集団(HAT濃縮をしていない)からのHPRTアレルの遺伝子型決定は、プラスミドアッセイにおいて観察された変化の倍率(図14b)と同様に、痕跡が残らない修復及び変異の定着における~4倍の増加(7.8%対~平均35%)を明らかにした。このように、μHの長さを増加させることは、ヒトiPSC染色体からの痕跡が残らないカセット切除を改善させる。
酵母(PMID:17483423)及びマウスESC(PMID:9418857)におけるDSBRからの証拠は、長い異種構造(heterology)(DSBの末端からホモロジーの開始点までの非相同配列)の存在は、MMEJ又はHDR修復率に負に影響し得ることを示唆する。我々は、ps1プロトスペーサーのPAMが選択カセットの近位に位置し、これまでに使用されたPAM遠位の配向性において作り出された6又は7bpと比較して、いずれかの末端における17bpの異種構造をもたらすように、ps1プロトスペーサーを単純に反転させることによってこのパラメータを試験した(図14e)。PAM遠位又は反転プロトスペーサーからのmCherry陰性細胞画分によって測定されたところのカセット切除の割合は類似しており、配向性自体は、Cas9切断に影響しないことが示された。いずれのプロトスペーサー配向性からのHAT選択集団においても、設計された同義変異を持つ、挿入欠失を含まない配列は濃縮され得るものの、全体的なHATコロニー形成における減少によって示されるように、伸長された異種構造によってMMEJ修復率は妨害された(図14f)。逆に、公用及び経験的データは、設計されたプロトスペーサーに内因性配列を提供するμH末端を慎重に選択することで、MMEJの忠実度はさらに亢進され得ることを示唆する。これらの結果に基づき、引き続くMhAX実験では、伸長されたμHが利用され、PAM遠位配向性が維持された。
APRT遺伝子座の2対立遺伝子改変
多くの疾患発症性の変異は、常染色体性の劣性遺伝を示す。我々はしたがって、MhAX法を使用して、痕跡が残らない2対立遺伝子改変を実証することに着手した。この目的のために我々は、アデニンからアデノシン一リン酸(AMP)を合成するために必要であるアデノシンフォスフォリボシルトランスフェラーゼ(APRT)酵素を操作することを選択した。APRT*J変異(c.407T>C;rs104894507;M136T)は、部分的な酵素欠損をもたらし、2,8-ジヒドロキシアデニン(2,8-DHA)結晶の蓄積を引き起こし、しばしば腎結石の形成、又はより重症な場合には、腎不全をもたらす(Kamatani et al., 1990)。APRT*J変異は、尿路結石症である日本人患者において蔓延している(79%)ものの、APRT*J変異のインビトロなiPSCモデルは、まだ作出されていない。PAM-遠位eGPF-1プロトスペーサーによって隣接されているジーントラップMhAXカセット(図15a)を利用して、我々は、以下:
Figure 0007184364000006
の隣接する32bpのμHを設計し、ここで、診断上特徴的なAcc65I制限部位を作り出す同義のc.402A>T変異(一重下線)は両側性で存在し、一方で、APRT*J変異(二重下線)は片側性で存在した。ドナーベクターバックボーンの無作為の組込みを低減するために、我々は、GFP蛍光に対する陰性選択を利用した(図15a、PMID:16258059)。APRTエキソン5において変異部位にオーバーラップするCRISPR sgRNAを、T7E1消化を使用してスクリーニングし、APRT遺伝子ターゲティングで直接使用した。両方のアッセイにおける優れた能力のため、APRT sgRNA-2をを選択した。ピューロマイシン耐性mChpos/GFPneg iPSCクローンを顕微鏡観察によって同定し、選び取り、正しいターゲティングについて、ゲノムPCR、接合部シーケンシング、サザンブロット、及びフローサイトメトリーによってスクリーニングした。mCherryの平均蛍光強度は、二峰性の分布を示し、これは、ヘテロ及びホモ接合性の標的クローンの遺伝子型決定によって検証されたように、コピー数依存的な様式で関連付けられていた(図16)。
ヘテロ及びホモ接合性の標的クローンを各3つずつ、pX-eGFP-1の遺伝子導入を介した選択マーカーの切除に供した。切除率は、一貫してホモ接合性標的クローン(平均3.3%)に対して、ヘテロ接合性標的クローン(平均6.7%)で高く(図15e及び示していないデータ)、ゲノムから1又は2コピーの選択マーカーが取り除かれる必要性があることが反映された。切除されたmChneg集団を、FACSによって単離し、ゲノムPCRによってアレルのスペクトルを解析した。予想通り、改変されていない正常アレルが、ヘテロ接合性標的クローンからの切除された集団において検出された配列のおそよ半分を構成していた。痕跡が残らないカセットの切除は、ヘテロ接合性クローンにおいて平均30%の割合で起こった。興味深いことに、ホモ接合性の標的クローンは、NHEJアレルにおいて相対的な増加を示し、痕跡が残らない切除の全体的な割合は平均13%に減少した。片側性のμHを再び観察して、サイレント及び病原性のアレル型を確率論的に作り出した。
mChneg細胞の集団を、クローン単離及び遺伝子型決定のために、プレートに撒いた。両アレルの識別を保証するために、我々はPCRアンプリコン内にイントロン3からのヘテロ接合体SNP(rs8191489、G/C)を近隣に含ませ(データは示さず)、ヘテロ接合体修復事象を分解するためにTIDE解析を利用した。すべてのクローン単離されたiPSCの二倍体の遺伝子型は、図15gにおいて要約されている。ヘテロ接合性に標的化されたクローンEP052-2-2における痕跡が残らない切除の割合は、集団解析から予測された割合と類似していた(32.2%、図15g)。ホモ接合性クローンEP052-2-11は、9/160(5.6%)の痕跡が残らない2対立遺伝子改変を持つ切除クローンを生じさせ、ホモ接合性及び化合物ヘテロ接合性遺伝子型を表している(図15g)。TIDEによる配列の分解は、NHEJとして分類された追加の18クローンが、他のアレルの痕跡が残らない切除を経て、アレルのMhAX忠実度の全体的な割合(16.9%)が我々の最初の集団解析と一致していることを明らかにした。
2対立遺伝子が操作されたAPRT*Jクローンが選択され、サザンブロット及びAcc65I RFLPアッセイを使用して、正確な遺伝子編集がさらに確認された(図15c、d)。我々は、有毒なプリンアナログである2,6-ジアミノプリン(DAP)(PMID:3837181)に対するAPRT*J iPSCクローンの耐性を試験することによって、その表現型を決定した。親1383D6及びホモ接合性サイレント/サイレント変異体は、10ug/mL DAPに対して、処置のほんの24時間以内に、重い薬剤感受性を見せた。ヘテロ接合性の標的化細胞又はAPRT*J/サイレント細胞は、DAPに対してわずかな感受性しか持たなかったが、それでもまた48時間以内には排除された一方で、ホモ接合性の標的化細胞及びAPRT*J/APRT*J細胞は、DAP処置に対して完全に耐性であり、APRTノックアウト又は遺伝子編集の結果として細胞代謝における機能的な変化が実証された。
APRT遺伝子座の「液状」改変は、一連の同質遺伝子アレルを作出する
iPSCにおける痕跡が残らない遺伝子編集の過程を促進するという目標をもって、我々は、コピー数依存的な導入遺伝子発現及びFACSによる無作為のターゲティング事象の蛍光対抗選択で、ジーントラップターゲティングの高い忠実度を活用することを選択した。APRT遺伝子ターゲティングは、上記のように実行された(図15)が、標的中間体のクローン単離及びスクリーニングの代わりに、Puro集団全体が、バルクで収集され、FACSに供されてmChpos/GFPneg iPSCが単離された(図17a、b)。我々はさらに、ヘテロ接合性又はホモ接合性標的細胞(図15/SX)をそれぞれ濃縮するために、mChpos集団を、mChlow(全体の52.9%)及びmChhigh(全体の15.5%)へ分けた(図17b)。カセットの切除は、mChhighバルク集団からよりもmChlowバルク集団からのほうがより効率的であり(2.6%対7.0%)(図17b)、これはヘテロ接合性又はホモ接合性標的クローンからの1又は2コピーの導入遺伝子の切除と一致した(図15)。
我々はまず、得られた2つの切除された集団に対して、遺伝子型決定解析を実施し、アレルを3つのカテゴリーに分類した:非標的化、これは正常及び挿入欠失アレル(遺伝子ターゲティングの間に作り出される)を含む;NHEJ、これはカセット切除の修復の間に起こる(これらは操作された配列を保持するために、挿入欠失と区別される);並びにMMEJ、これらは病原性及び/又はサイレント変異を含む(図17c)。注目すべきことに、mChlow集団はより頻繁な挿入欠失を含んでいた一方で、mChhigh集団はNHEJに偏向し、1又は2対立遺伝子標的化細胞のFACS濃縮を確証し、かつAPRT-sgRNA2の、DSBのエラープローン修復を誘発する潜在力もまた明らかにした。正常及び挿入欠失アレルを除外すると、痕跡が残らない切除の忠実度は、mChhighよりもmChlow集団でわずかに高かった(26.5対22.7%)。HPRTMunichアレルについて、FACSベースのターゲティン及び切除という同様の工程が実施され(図18)、これは、クローン化中間体において以前に観察された割合と類似した割合で(5.6対6.6%)、痕跡が残らないよう遺伝子編集されたクローンを生じさせた。最後に、我々は、バルクで切除された集団から、クローン単離及びAPRT*Jアレルの解析を実施した。このように、我々のHPRT及びAPRT遺伝子編集アプローチは、不完全なμHを通して操作されたMMEJは、均一な実験条件下で取り扱われたときに、疾患及び正常の両方の同質遺伝子iPSCクローンを同時に産生することを示した(図17e)。
MhAXカセット切除のための代替のsgRNA
我々は、ヒトゲノムにおいて低いオフターゲット部位を有することが予測される一連の候補sgRNAをスクリーニングした(図19)。候補のリストは、我々がすでにMhAXに対して活性であると実証済みであるA.victoriaのGFP遺伝子を標的化するsgRNA、ヒトのほぼ一倍体(near-haploid)HAP1細胞においてNHEJを介して内因性遺伝子タギングを刺激するのに最近使用されたゼブラフィッシュtia1l(Lackner et al., 2015)を標的化する1つのsgRNA(Hwang et al., 2013)、及びPITCh(ヒトHEK293T細胞におけるMMEJを利用した遺伝子ノックインに使用される、完全に人工的なsgRNA配列(Nakade et al., 2014))を含んだ。
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本発明は、好ましい実施態様に重点を置いて記載されてきたが、好ましい実施態様は改変されてもよいことが、当業者には明らかである。本発明は、本明細書において詳細に記載されている方法の他の方法も含み得ることが意図される。したがって、本発明は、添付した「特許請求の範囲」の要旨及び範囲の中に含まれるすべての改変を包含する。
さらに、本明細書中で述べられた特許及び特許出願明細書を含む任意の刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
本出願は、米国仮出願番号62/370,047号を基礎としており、ここで言及することにより、その内容はすべて本明細書に包含される。

Claims (14)

  1. 痕跡が残らないゲノム配列を有し、かつ、変異を持つゲノム配列を有する細胞と、痕跡が残らないゲノム配列を有し、かつ、該変異を持たない同質遺伝子細胞と同時に製造する方法であって、ゲノム内の標的化された領域中へと挿入された外因性核酸配列が完全に切除され、
    ここで、該外因性核酸配列が、各末端における標的化された領域中のゲノム配列と相同な核酸配列と、二つの該相同な核酸配列間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位と、を含み、該相同な核酸配列のどちらか一方だけが、対応する内因性ゲノム配列中に変異を有し、かつ該方法が:
    (1)該配列特異的ヌクレアーゼ又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸を、該外因性核酸配列が挿入されるゲノム配列を有する宿主細胞中へと導入する工程;及び
    (2)工程(1)で得られた細胞を培養する工程、を含み、
    これによって、該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における二本鎖切断、及びこれに続いて、その結果生じる該相同な核酸配列を含む切断末端間におけるマイクロホモロジー媒介末端結合又は一本鎖アニーリングが引き起こされて、該外因性核酸配列が標的化された領域から完全に切除されて痕跡が残らないよう復帰されたゲノム配列を有する細胞が産生され、該標的化された領域中に変異を持つゲノム配列を有する細胞と、該変異を持たない同質遺伝子細胞が同時に産生される、
    方法。
  2. 該外因性核酸配列が、2つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含み、かつそのうちの2つがそれぞれ、該2つの相同な核酸配列に実質的に隣接し、外因性遺伝子が該2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の間に挿入される、請求項1記載の方法。
  3. 該外因性遺伝子が、選択マーカー遺伝子である、請求項2記載の方法。
  4. 該配列特異的ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)又はクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質(CRISPR/Cas)である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  5. 該宿主細胞が、
    該外因性核酸配列を含み、該外因性核酸配列の両末端に該相同な核酸配列と相同なゲノム配列の両末端にフランキングゲノム配列をそれぞれ含む核酸を細胞中に導入し、
    それによって、相同組換えによって宿主ゲノムの標的化された領域内へ該外因性核酸配列が挿入される、
    ことによって得られる、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  6. 該フランキングゲノム配列のどちらか一方又は両方が、対応する内因性ゲノム配列内に変異を有し、それによって該フランキングゲノム配列内に該変異を持つゲノム配列を有する細胞が産生される、請求項記載の方法。
  7. 該相同組換えが、各フランキングゲノム配列内の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位における配列特異的二本鎖切断によって媒介される、請求項又はに記載の方法。
  8. 該配列特異的ヌクレアーゼが、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casである、請求項記載の方法。
  9. 該宿主細胞が、胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  10. 該標的化された領域が、その部位における変異が疾患を引き起こす部位を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
  11. (a)宿主ゲノム内の標的化された領域に相同な2つの核酸配列であって、該核酸配列のうちの1つの3’末端と、他方の核酸配列の5’末端とがオーバーラップする、2つの核酸配列;及び
    (b)該(a)の2つの核酸配列の間の1つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位、
    を含み、該相同な核酸配列のどちらか一方だけが、対応する内因性ゲノム配列中に変異を有する、請求項のいずれか1項に記載の方法における使用のための核酸。
  12. 該外因性核酸配列が、2つ以上の配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を含みかつそれらのうちの2つがそれぞれ、該(a)の2つの核酸配列に実質的に隣接して配置され、該2つの配列特異的ヌクレアーゼ認識部位の間に外因性遺伝子が挿入されている、請求項11記載の核酸。
  13. (a)請求項11又は12の核酸;及び
    (b)(a)の核酸に含まれる該配列特異的ヌクレアーゼ認識部位を特異的に認識する1つ以上の種類の配列特異的ヌクレアーゼ、又は該配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸、
    を含み、該相同な核酸配列のどちらか一方だけが、対応する内因性ゲノム配列中に変異を有する、請求項のいずれか1項に記載の方法における使用のためのキット。
  14. 該配列特異的ヌクレアーゼが、ZFN、TALEN又はCRISPR/Casである、請求項13記載のキット。
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