JP7183721B2 - 連続鋳造鋳片の熱間幅圧下圧延方法 - Google Patents
連続鋳造鋳片の熱間幅圧下圧延方法 Download PDFInfo
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熱間幅圧下圧延開始温度T(℃)が(1)式を満足し、且つ990℃未満であることを特徴としている。
T>1/{-188.09([Mn]・[S])3+5.5229([Mn]・[S])2-0.0541([Mn]・[S])+0.000983}-273 (1)
ここで、[Mn]:Mnの濃度(質量%)、[S]:Sの濃度(質量%)
また、熱間幅圧下圧延開始温度Tが990℃以上となる温度まで加熱炉で加熱すると、鋳片表面にスケールが大量に生成して表面疵の原因となるので、熱間幅圧下圧延開始温度Tは990℃未満とする。
本発明者らは、炭素鋼を連続鋳造機で鋳造し、得られた鋳片(スラブ)を所定長さに切断した後、当該鋳片を加熱し、サイジングミルを用いて熱間幅圧下圧延したものについて割れ等の調査を実施した。
電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて観察した結果、エッジ割れが発生した周囲には、割れに沿ってまだ結合していない微細な亀裂が多数並んで分布していることが確認された。また、その微細な亀裂の内部に多数の介在物が存在しており、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いて非金属介在物を同定した結果、MnS非金属介在物であることがわかった。これらの観察結果から推定されるエッジ割れ発生メカニズムは以下の通りである。
温度及びS濃度が上昇すると、計算MnS析出量が上昇することが同図よりわかる。また、計算MnS析出量を、エッジ割れ発生限界である1mol/1000kg鋼以下とするためには、S濃度によって温度を変える必要があることがわかる。
T>1/{-188.09([Mn]・[S])3+5.5229([Mn]・[S])2-0.0541([Mn]・[S])+0.000983}-273 (2)
ここで、[Mn]:Mnの濃度(質量%)、[S]:Sの濃度(質量%)である。また、熱間幅圧下圧延開始温度としたのは、熱間幅圧下圧延の1パス目でエッジ割れが発生するかどうかが決まると推定されるためである。
本発明では、式(2)を満足する熱間幅圧下圧延開始温度で鋳片を熱間幅圧下圧延することにより、エッジ割れの無い鋳片を製造することができる。
熱間幅圧下圧延開始温度が990℃以上になると、スケール起因疵発生率が急激に上昇し、熱間幅圧下圧延開始温度の上昇に伴い、スケール起因疵発生率がさらに増大することが同図よりわかる。
熱間幅圧下圧延開始温度が限界温度(○と×の境界)以下になると、エッジ割れが発生することが同図よりわかる。また、熱間幅圧下圧延開始温度が限界温度を超えていればエッジ割れは発生しないが、990℃以上になると、スケール起因疵が発生することがわかる。
転炉で吹錬して、更に真空脱ガス装置を用いて精錬した溶鋼中に、C、Si、Mn等の合金を添加して撹拌し、脱酸と成分調整を行う。Sについては、必要なS上限まで溶銑予備処理あるいは二次精錬工程で脱硫を行う。また、Alやその他、必要な合金を添加して成分調整を行う。このようにして溶製された溶鋼を連続鋳造して鋳片を製造する。連続鋳造では、例えば、通常の250mm厚もしくは300mm厚程度のスラブ連続鋳造で実施する。
その後、連続鋳造鋳片を所定長さに切断して加熱炉に装入する。加熱炉では、熱間幅圧下圧延開始温度Tが(2)式を満足し、且つ990℃未満となるようにして鋳片を30分から50分程度加熱した後、熱間幅圧下圧延を行う。この時、同時にサイジングミルを用いて厚み圧下を行ってもよい。
Cは、鋼の焼き入れ性と強度を制御する最も基本的な元素である。鋼板の強度を確保するために必須の元素であり、少なくとも0.03質量%が必要である。しかし、C濃度が0.30質量%を超えると、加工性ならびに溶接性が劣化する。そのため、本実施の形態では、C濃度を0.30質量%以下とする。
<Si:0.01~0.80質量%>
Siは主要な脱酸元素の一つであり、伸びを大きく損なうことなく鋼の強度を向上することができる。そのため、Si濃度を0.01質量%以上とする必要がある。一方、Si濃度が高すぎると、靭延性が極端に悪くなり、スケールの固着を促進する。そのため、本実施の形態では、Si濃度の上限を0.80質量%とする。
Mnは、製綱段階での脱酸に有用な元素であり、C、Siと共に鋼板の高強度化に有効な元素である。このような効果を得るためには、Mn濃度を0.50質量%以上とする必要がある。しかしながら、Mnを3.00質量%を超えて含有させると、Mnの偏析や固溶強化の増大により鋼の延性が低下する。また、溶接性や母材靭性も劣化するので、Mn濃度の上限は3.00質量%とする。
<S:0.0001~0.0150質量%>
Sは、不純物として偏析し、熱延製品としたときに、MnS系の延伸介在物を形成して加工性を劣化させる。そのため、S濃度の上限を0.0150質量%とした。Sは、極力低濃度であることが望ましく、二次精錬において脱硫負荷をかけすぎると、脱硫コストが高くなり、コストが高くなる。従って、S濃度の下限は0.0001質量%とする。
PはFe原子よりも小さな置換型固溶強化元素として作用する点において有効である。しかし、P濃度が0.050質量%を超えると、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより、ねじり疲労強度を低下させ、加工性の劣化を引き起こす原因にもなりえる。そのため、P濃度の上限を0.050質量%とする。一方、固溶強化の必要がなければPを添加する必要はなく、P濃度の下限値は0.005質量%とする。
<Al:0.01~0.10質量%>
Alは、一般に鋼の脱酸に用いられる元素である。その酸化物がクラスター化して粗大になり易く、加工性を劣化させるため、極力抑制することが望ましい。しかしながら、安価で有効な脱酸元素であるため、Al濃度の下限は0.01質量%とした。一方、ハイテンの鋼種によっては、Siを使わずAlで強度を出す場合もあるため、Al濃度の上限は0.10質量%とする。
<Ti:0~0.045質量%>
Tiは主要な脱酸元素の一つであると共に、炭化物、窒化物、炭窒化物を形成し、結晶粒の微細化・高強度化機能を担う。コストが高くなることと、0.045質量%を超えてTiを含有すると、粗大な炭化物、窒化物、炭窒化物を形成してしまい、かえって材質の劣化を招き、含有量に見合う効果が期待できない。このため、本実施の形態では、Ti濃度の上限を0.045質量%とする。一方、ハイテン鋼の鋼種によっては、Tiを添加せず、他の安価な高強度化元素、例えば、C,Si,Mnを使用する場合もあることから0を下限とする。
<Nb:0~0.045質量%>
複合炭化物、複合窒化物等を得るため、Nbを含有させることが好ましいが、Nb濃度が0.045質量%を超えると、母材組織の細粒化の効果が飽和し、製造コストが高くなる。このため、Nb濃度は0.045質量%を上限とする。一方、ハイテン鋼の鋼種によっては、Nbを添加せず、他の安価な高強度化元素、例えば、C,Si,Mnを使用する場合もあることから0を下限とする。
<V:0~0.034質量%>
上述した複合炭化物、複合窒化物等を得るためにはVを含有させることが好ましいが、V濃度が0.034質量%を超えると、効果が飽和し、製造コストが高くなる。このため、V濃度は0.034質量%を上限とする。一方、ハイテン鋼の鋼種によっては、Vを添加せず、他の安価な高強度化元素、例えば、C,Si,Mnを使用する場合もあることから0を下限とする。
<Zr:0~0.013質量%>
Zrは、上述した硫化物を球状化して母材の靭性を改善する効果を得るために、濃度を高くすることが好ましい。しかし、Zrを多量に含有すると、かえって鋼の清浄性を損ない、延性を劣化させる。そのため、Zr濃度は0.013質量%を上限とする。一方、求められる靭性によっては、Zrの添加を必要としない場合もあることから0を下限とする。
Caは、ハイテンの加工性を損なうSを固定するために有効な元素であるが、Caを多量に含有させても効果が飽和し、かえって鋼の清浄性を損ない、延性を劣化させる。そのため、Ca濃度は0.005質量%を上限とする。一方、Caを添加せず、極低濃度まで脱硫することで、Ca添加を省くことができる。従って、Ca濃度の下限は0とする。
表1~表3に試験条件及び試験結果の一覧を示す。
表2は、本発明に係る熱間幅圧下圧延開始温度範囲より低い温度で熱間幅圧下圧延を行った比較例であり、エッジ割れが発生した。
表3は、本発明に係る熱間幅圧下圧延開始温度範囲より高い温度で熱間幅圧下圧延を行った比較例であり、エッジ割れはないものの、スケール起因疵が発生した。
Claims (1)
- Cを0.03~0.30質量%、Siを0.01~0.80質量%、Mnを0.79~3.00質量%、Pを0.005~0.050質量%、Sを0.0001~0.0150質量%、Alを0.01~0.10質量%含有する溶鋼を連続鋳造機で鋳造し、得られた鋳片を所定長さに切断した後、該鋳片を加熱しサイジングミルを用いて熱間幅圧下圧延する方法において、
熱間幅圧下圧延開始温度T(℃)が次式を満足し、且つ990℃未満であることを特徴とする連続鋳造鋳片の熱間幅圧下圧延方法。
T>1/{-188.09([Mn]・[S])3+5.5229([Mn]・[S])2-0.0541([Mn]・[S])+0.000983}-273
ここで、[Mn]:Mnの濃度(質量%)、[S]:Sの濃度(質量%)
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