以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、及び、構成要素の配置位置や接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺等は必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、本明細書において、「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔をあけて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに接する状態で配置される場合にも適用される。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る半導体発光素子について説明する。
[1-1.構成]
まず、本実施の形態に係る半導体発光素子の構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体発光素子10の共振方向に垂直な方向における構成、活性層13中のIn組成比分布、及び、エネルギーバンド分布を示す模式図である。図1の前面図(a)には、半導体発光素子10の共振方向の端面が示されている。また、グラフ(b)及び(c)には、それぞれ、半導体発光素子10の共振方向に垂直な方向(第1光導波路20の幅方向)の位置に対する活性層13中のIn組成比、及び、エネルギーバンドの分布が示されている。図2は、本実施の形態に係る半導体発光素子10の共振方向における構成、活性層13中のIn組成比分布、及び、エネルギーバンド分布を示す模式図である。図2の上面図(a)には、半導体発光素子10が備える基板11の主面11sの上面視における半導体発光素子10の模式図が示されている。また、グラフ(b)及び(c)には、それぞれ、半導体発光素子10の共振方向の位置に対する活性層13中のIn組成比、及び、エネルギーバンドの分布が示されている。
本実施の形態に係る半導体発光素子10は、第1レーザ光を出射する素子である。図1の前面図(a)に示されるように、半導体発光素子10は、基板11と、積層構造体10Sと、第1上方電極30と、下方電極15とを備える。
基板11は、積層構造体10Sが積層される板状部材である。基板11は、主面11sを有し、主面11sに第1レーザ光の出射方向に延びる第1凹部40が形成されている。本実施の形態では、基板11は、n-GaN基板である。
第1凹部40は、図1に示されるように、基板11の主面11sに形成された凹状の段差部である。つまり、第1凹部40は、基板11の主面11sから凹んだ部分である。本実施の形態では、第1凹部40は、溝状の形状を有するが、階段状の形状を有してもよい。例えば、図1において、第1凹部40の底面の右側に配置される側壁がなく、第1光導波路20側から右側に階段状に形成された段差部であってもよい。本実施の形態では、第1凹部40の幅は、4μmであり、深さは、2μmである。
このような第1凹部40が形成されることにより、第1凹部40の幅方向の中央、及び、第1凹部40から離れた位置にある活性層13の領域においては、In組成比が高くなり、第1凹部40の幅方向の端部周辺では、In組成比が低くなる。これは、基板11の主面11sが一般にGaN結晶のc面であり、c面上には、InGaN層が積層されやすく、それ以外の面(基板11の主面11sと第1凹部40の底面とを繋ぐ面など)には、積層されにくいことに起因する。
積層構造体10Sは、基板11の主面11sの上方に配置された半導体積層体である。積層構造体10Sは、活性層13、及び、活性層13の上方に積層された上方クラッド層14を含む。本実施の形態では、積層構造体10Sは、下方クラッド層12をさらに含む。なお、積層構造体10Sは、バッファ層、光ガイド層、電子オーバーフロー抑制層、コンタクト層などの他の半導体層をさらに含んでもよい。
積層構造体10Sは、図2の上面図(a)に示されるように、基板11の主面11sの上面視において第1凹部40の側方(図2の下方)に配置され、第1レーザ光を導波する第1光導波路20を有する。本実施の形態では、第1光導波路20の幅(つまり、図1における水平方向の寸法)は、30μmである。また、第1光導波路20の第1レーザ光の出射方向における長さは、1200μmである。
下方クラッド層12は、基板11の上方に配置される第1導電型の半導体層である。本実施の形態では、第1導電型はn型であり、下方クラッド層12は、n-AlGaN層である。
活性層13は、下方クラッド層12の上方に配置される発光層である。本実施の形態では、活性層13は、InGaNを含む。
上方クラッド層14は、活性層13の上方に配置される第2導電型の半導体層である。第2導電型は、第1導電型と異なる導電型である。本実施の形態では、第2導電型は、p型であり、上方クラッド層14は、p-AlGaN層である。上方クラッド層14には、第1レーザ光の出射方向に延びるリッジが形成されており、当該リッジによって第1光導波路20が形成される。
第1上方電極30は、積層構造体10Sの上方に配置され、第1レーザ光の出射方向に延びる電極である。第1上方電極30は、第1光導波路20の上方において、第1凹部40寄りに配置される。言い換えると、第1上方電極30の幅方向(図1の水平方向)における中心位置は、第1光導波路20の幅方向(図1の水平方向)における中心位置より、第1凹部40に近い。第1上方電極30は、例えば、Pd、Pt、Niなどの金属材料を用いて形成される。
第1上方電極30は、一定の幅を有する長尺状の形状を有する。より具体的には、第1上方電極30は、長方形状の形状を有し、短辺方向の長さが14μmで一定で、長辺方向の長さが、半導体発光素子10の第1光導波路20の長さと同等である。
下方電極15は、基板11の下方に配置される電極である。下方電極15は、基板11の主面11sの裏側の主面に配置される。下方電極15は、例えば、Ti、Pt、Auなどの金属材料を用いて形成される。
本実施の形態に係る半導体発光素子10は、上述したような積層構造体10Sを備えることによって、発光素子に必要なダブルヘテロ構造を形成している。
[1-2.作用及び効果]
次に、本実施の形態に係る半導体発光素子10の作用及び効果について説明する。
本実施の形態に係る半導体発光素子10では、図2に示されるように、積層構造体10Sは、基板11の主面11sの上面視において第1凹部40の側方に配置される。また、図1に示されるように、半導体発光素子10は、第1レーザ光を導波する第1光導波路20を有し、第1上方電極30は、第1光導波路20の上方において、第1凹部40寄りに配置される。
このように、第1上方電極30が、第1凹部40寄りに配置されることで、第1上方電極30から注入された電流は、図1の前面図(a)に示されるように、第1上方電極30付近においては、第1光導波路20の第1凹部40側に集中する。一方、第1光導波路20において、バンドギャップは、図1のグラフ(c)に示されるように、第1凹部40から遠い側において小さくなり、キャリア(つまり、電子及び正孔)は、第1凹部40から遠い側に集まろうとする。このように、第1光導波路20において、第1上方電極30による電流分布によって、バンドギャップ分布によるキャリア集中が抑制される。言い換えると、バンドギャップ分布に起因するキャリアの集中効果と、第1上方電極30の配置に起因する電流集中効果とが少なくとも部分的には相殺する。したがって、キャリア分布が第1光導波路20の幅方向の全体に広がる。その結果、第1レーザ光のバンドギャップが小さい領域への集中が抑制される。このため、第1光導波路20における光密度が下がり、半導体発光素子10の劣化が生じにくくなる。よって、高出力動作に適した半導体発光素子10を実現できる。
また、本実施の形態に係る半導体発光素子10では、図2の上面図(a)に示されるように、第1光導波路20の幅方向の中心軸から、第1凹部40の幅方向の中心軸までの距離は、第1レーザ光の出射方向の位置に対して変調されている。より詳しくは、第1光導波路20の幅方向の中心軸から、第1凹部40の幅方向の中心軸までの距離は、第1レーザ光の出射方向の位置に対して、最小値Dminから最大値Dmaxまでの間で周期的に変調されている。ここで、第1光導波路20の幅方向の中心軸とは、半導体発光素子10の基板11の主面11sの上面視において、第1光導波路20の幅方向の中心となる位置を結んだ線(図2の上面図(a)の第1光導波路20内に示される一点鎖線)を意味する。また、第1凹部40の幅方向の中心軸とは、半導体発光素子10の基板11の主面11sの上面視において、第1凹部40の幅方向の中心となる位置を結んだ線(図2の上面図(a)の第1凹部40内に示される一点鎖線)を意味する。
第1凹部40は、基板11の主面11sの上面視において、第1レーザ光の出射方向(つまり、共振方向)の位置に対して、周期的な矩形波状に蛇行しており、基板11の第1レーザ光の出射方向における一方の端面から他方の端面まで連続して形成されている。本実施の形態に係るこのような構成の効果について、比較例と比較しながら図19を用いて説明する。
図19は、比較例の半導体発光素子910aの構成、活性層中のIn組成比分布、及び、エネルギーバンド分布を示す模式図である。図19の上面図(a)には、半導体発光素子910aが備える基板911aの主面の上面視における半導体発光素子910aの模式図が示されている。また、グラフ(b)及び(c)には、それぞれ、半導体発光素子910aのレーザ光の出射方向(レーザ光の共振方向)の位置に対する活性層中のIn組成比、及び、エネルギーバンドの分布が示されている。
比較例の半導体発光素子910aは、上記特許文献2に記載された半導体発光素子と同様の構成を有する。つまり、図19の上面図(a)に示されるように、光導波路920からIn組成比変調用の凹部940aまでの距離が、レーザ光の出射方向(つまり、共振方向)に対して連続的に変化している点以外は、図18に示される先行技術の半導体発光素子と同様の構成を有する。これにより、図19のグラフ(b)に示されるように、レーザ光の出射方向において、光導波路920における活性層のIn組成比は、レーザ光の出射方向における一方端(図19の左端)で高く、他方端(図19の右端)で低くなる。これに伴い、図19のグラフ(c)に示されるように、バンドギャップは、レーザ光の出射方向における一方端で小さく、他方端で大きくなる。
このため、図19のグラフ(c)に示されるように、キャリアはバンドギャップが小さい領域に集まる。このため、バンドギャップの小さいところの誘導放出が多くなるため、発振波長範囲(つまり、利得波長幅)は広がらない。
これに対して、本実施の形態では、活性層13がInGaNを含み、図2の上面図(a)に示されるように、第1光導波路20の幅方向の中心軸から、第1凹部40の幅方向の中心軸までの距離が、第1レーザ光の出射方向の位置に対して変調される。これにより、図2のグラフ(b)に示されるように、第1光導波路20の中心軸から第1凹部40の中心軸までの距離に応じて、活性層13内のIn組成比が変化する。このため、図2のグラフ(c)に示されるように、活性層13のバンドギャップも変化する。この結果、バンドギャップが、第1レーザ光の出射方向の位置に対して変調されるため、キャリアがバンドギャップの大きい領域にも存在するようになる。このため、広いエネルギー範囲での再結合が可能になり、発振波長範囲(つまり、利得範囲)も広がる。
続いて、上述したような作用及び効果をより確実に得るために必要な第1上方電極30の寸法の条件について図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る半導体発光素子10の第1上方電極30の構成を示す模式的な前面図である。
図3に示されるように、第1光導波路20上の第1上方電極30から注入された正孔は、活性層13に向かうが、すべての正孔が図3の上方から下方に最短距離で到達するのでなく、正孔の進行方向(つまり、電流の進行方向)は、図3に点線矢印で示されるように所定の拡がり角の範囲内に分散している。これに伴い、正孔の注入領域は、第1上方電極30の幅より広がる。この幅の第1上方電極30の幅からの増加量は、およそ第1上方電極30から活性層13までの距離Tと等しい。したがって、第1上方電極30の幅Eと、第1光導波路20の幅Wと、第1上方電極30から活性層13までの距離Tと、第1上方電極の第1凹部40側端から第1光導波路20の第1凹部40側端までの距離Sとの間に、以下の式2が成り立ってもよい。
W>T+E+S (式2)
つまり、以下の式3が成り立ってもよい。
E<W-T-S (式3)
本実施の形態では、W=30μm、T=1μm、S=1μmであることから、W-T-S=28μmとなる。また、E=14μmであるから、上記式2及び式3が成り立つ。したがって、本実施の形態では、上記作用及び効果を確実に得ることができる。
また、本実施の形態のように、第1上方電極30の幅Eは、第1光導波路20の幅Wの半分以下であってもよい。また、第1上方電極30は、第1光導波路20の幅方向の中心軸より第1凹部40寄りに配置されてもよい。言い換えると、第1上方電極30は、第1光導波路20の幅方向の中心軸と、第1光導波路20の第1凹部40側の端との間に配置されてもよい。上記各構成によって、第1上方電極30から注入される電流をより確実に第1凹部40側に集中させることができる。
(実施の形態2)
実施の形態2に係る半導体発光素子及び発光装置について説明する。本実施の形態に係る半導体発光素子は、複数の光導波路を備え、各光導波路から互いに異なる波長のレーザ光を出射する点において、実施の形態1に係る半導体発光素子10と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体発光素子について、実施の形態1に係る半導体発光素子10との相違点を中心に説明する。
[2-1.半導体発光素子の構成]
まず、本実施の形態に係る半導体発光素子の構成について、図4を用いて説明する。図4は、本実施の形態に係る半導体発光素子110の構成を示す模式的な斜視図である。本実施の形態に係る半導体発光素子110は、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光を出射する。図4に示されるように、半導体発光素子110は、基板111と、積層構造体110Sと、第1上方電極31と、第2上方電極32と、第3上方電極33と、下方電極15とを備える。また、半導体発光素子110は、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光の出射方向に端面110F及び110Rを有する。
基板111は、積層構造体110Sが積層される板状部材である。基板111は、主面111sを有し、主面111sに第1レーザ光の出射方向に延びる第1凹部41、第2凹部42、及び第3凹部43が形成されている。第1凹部41、第2凹部42、及び第3凹部43の各々は、実施の形態1に係る第1凹部40と同様の構成を有する。第1凹部41、第2凹部42、及び第3凹部43の深さは、等しく、長手方向において一様である。
積層構造体110Sは、基板111の主面111sの上方に配置された半導体積層体である。積層構造体110Sは、基板111の主面111sの上面視において第1凹部41、第2凹部42、及び第3凹部43の側方にそれぞれ配置される第1光導波路21、第2光導波路22、及び第3光導波路23を有する。第1光導波路21、第2光導波路22、及び第3光導波路23は、それぞれ、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光を導波する。
積層構造体110Sは、活性層13、及び、活性層13の上方に積層された上方クラッド層114を含む。本実施の形態では、積層構造体110Sは、下方クラッド層12をさらに含む。本実施の形態に係る上方クラッド層114には、第1光導波路21、第2光導波路22、及び第3光導波路23に対応する三つのリッジが形成されている点において、実施の形態1に係る上方クラッド層14と相違し、その他の点において一致する。
第1上方電極31、第2上方電極32、及び第3上方電極33は、それぞれ、積層構造体110Sの上方に配置され、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光の出射方向に延びる電極である。第1上方電極31は、第1光導波路21の上方において、第1凹部41寄りに配置される。第2上方電極32は、第2光導波路22の上方において、第2凹部42寄りに配置される。第3上方電極33は、第3光導波路23の上方において、第3凹部43寄りに配置される。第1上方電極31、第2上方電極32、及び第3上方電極33の各々は、実施の形態1に係る第1上方電極30と同様の構成を有する。
ここで、各光導波路と、各凹部との位置関係について、図5A及び図5Bを用いて説明する。図5Aは、本実施の形態に係る半導体発光素子110の各光導波路と、各凹部との間の最大距離及び最小距離の関係を示す模式的な上面図である。図5Bは、本実施の形態に係る半導体発光素子110の各光導波路と、各凹部との間の距離の平均値の関係を示す模式的な上面図である。図5A及び図5Bには、半導体発光素子110の基板111の主面111sの上面視における模式図が記載されている。
図5Aに示されるように、第1光導波路21の幅方向の中心軸から、第1凹部41の幅方向の中心軸までの距離は、第1レーザ光の出射方向の位置に対して、最小値Dmin1から最大値Dmax1までの間で周期的に変調されている。また、第2光導波路22の幅方向の中心軸から、第2凹部42の幅方向の中心軸までの距離は、第2レーザ光の出射方向の位置に対して、最小値Dmin2から最大値Dmax2までの間で周期的に変調されている。また、第3光導波路23の幅方向の中心軸から、第3凹部43の幅方向の中心軸までの距離は、第3レーザ光の出射方向の位置に対して、最小値Dmin3から最大値Dmax3までの間で周期的に変調されている。
本実施の形態に係る各最小値DminN、各最大値DminN、及び、各光導波路の幅方向の中心軸から各凹部の幅方向の中心軸までの距離の平均値DaveNを図6に示す(N=1,2,3)。図6は、本実施の形態に係る各光導波路の幅方向の中心軸と、各凹部の幅方向の中心軸との距離の関係を示す図である。
図5A及び図6に示されるように、最小値Dmin1は、最小値Dmin2より小さく、最小値Dmin2は、最小値Dmin3より小さい。また、最大値Dmax1は、最大値Dmax2より小さく、最大値Dmax2は、最大値Dmax3より小さい。
図5B及び図6に示されるように、第1光導波路21の幅方向の中心軸から、第1凹部41の幅方向の中心軸までの距離の平均値Dave1は、第2光導波路22の幅方向の中心軸から、第2凹部42の幅方向の中心軸までの距離の平均値Dave2より小さい。また、平均値Dave2は、第3光導波路23の幅方向の中心軸から、第3凹部43の幅方向の中心軸までの距離の平均値Dave3より小さい。
なお、第2光導波路22の幅方向の中心軸から、第1凹部41の幅方向の中心軸までの距離の平均値は、第2光導波路22における活性層13のバンドギャップへの第1凹部41に起因する影響を無視できる程度に十分大きい。また、第3光導波路23の幅方向の中心軸から、第2凹部42の幅方向の中心軸までの距離の平均値は、第3光導波路23における活性層13のバンドギャップへの第2凹部42に起因する影響を無視できる程度に十分大きい。言い換えると、第1光導波路21の幅方向の中心軸から、第1凹部41の幅方向の中心軸までの距離の平均値Dave1は、第1光導波路21の幅方向の中心軸から、第1凹部41以外の他の凹部の幅方向の中心軸までの距離の平均値より十分に小さい。また、第2光導波路22の幅方向の中心軸から、第2凹部42の幅方向の中心軸までの距離の平均値Dave2は、第2光導波路22の幅方向の中心軸から、第2凹部42以外の他の凹部の幅方向の中心軸までの距離の平均値より十分に小さい。また、第3光導波路23の幅方向の中心軸から、第3凹部43の幅方向の中心軸までの距離の平均値Dave3は、第3光導波路23の幅方向の中心軸から、第3凹部43以外の他の凹部の幅方向の中心軸までの距離の平均値より十分に小さい。
本実施の形態に係る半導体発光素子110においては、上述した構成を有することにより、各光導波路におけるバンドギャップを異ならせることができる。本実施の形態に係る各レーザ光の波長について図7を用いて説明する。図7は、本実施の形態に係る各光導波路の幅方向の中心軸と、各凹部の幅方向の中心軸との間の距離Dと、各光導波路における発振波長λとの関係の一例を示すグラフである。なお、図7に示される関係は、一例であり、このような関係は、例えば積層構造体110Sの成長条件などに応じて変化し得る。図7に示されるように、本実施の形態では、第1レーザ光として発振可能な波長λ1は404±2nm程度となり、第2レーザ光として発振可能な波長λ2は411±2nm程度となり、第3レーザ光として発振可能な波長λ3は416±2nm程度となる。このように、本実施の形態に係る半導体発光素子110によれば、互いに波長の異なる第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光を出射できる。また、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光の各々のパワーは、3W程度となる。
[2-2.発光装置の構成]
次に、本実施の形態に係る半導体発光素子110を備える発光装置について、図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態に係る発光装置101の構成の概要を示す模式図である。
発光装置101は、半導体レーザアレイとして半導体発光素子110を用い、回折格子を用いて波長合成を行う外部共振型波長合成光学系を備える装置である。発光装置101は、図8に示されるように、半導体発光素子110と、コリメートレンズアレイ82と、集光レンズ84と、回折格子86と、出力カプラ88とを備える。
半導体発光素子110のリア側の端面110Rは、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光に対する高反射面を形成する。例えば、端面110Rには、誘電体多層膜などからなる高反射膜が形成されていてもよい。半導体発光素子110のフロント側の端面110Fは、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光の反射が抑制されている端面である。例えば、端面110Fには、誘電体多層膜などからなる反射防止膜が形成されていてもよい。
コリメートレンズアレイ82は、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光の各々をコリメートするレンズアレイである。
集光レンズ84は、コリメートレンズアレイ82からの平行光を回折格子86上に集光するレンズである。
回折格子86は、半導体発光素子110から出射された第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光が入射し、これらのレーザ光を波長合成する光学素子である。図8では、回折格子86として、反射型の回折格子が用いられる構成例が示されているが、回折格子86として透過型の回折格子が用いられてもよい。
出力カプラ88は、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光の一部を反射し、一部を透過させる反射器である。本実施の形態では、出力カプラ88と、半導体発光素子110のリア側の端面110Rとの間で外部共振器が形成される。
ここで、各レーザ光の波長と、回折格子86への入射角との関係について図9を用いて説明する。図9は、本実施の形態に係る回折格子86によって、波長合成し得る各レーザ光の波長と、回折格子86への入射角との関係を示すグラフである。図9においては、回折格子86からのレーザ光の出射角θoを20度と設定し、かつ、回折格子86の溝数を1100[本/mm]、1200[本/mm]、及び1300[本/mm]と設定した場合のレーザ光の波長と回折格子86への入射角との関係が示されている。図9に示されるように、回折格子86の単位長さあたりの溝数(周期dの逆数)を、1200[本/mm]とすると、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光の回折格子86への入射角θ1、θ2、及びθ3が、それぞれ、55.8度、56.6度、及び57.3度である。場合に、波長合成できる。
以上のように、本実施の形態では、第1光導波路21の中心軸から、第1凹部41の幅方向の中心軸までの距離の平均値Dave1は、第2光導波路22の中心軸から、第2凹部42の幅方向の中心軸までの距離の平均値Dave2より小さく、平均値Dave2は、第3光導波路23の中心軸から、第3凹部43の幅方向の中心軸までの距離の平均値Dave3より小さい。また、第1レーザ光の回折格子86への入射角θ1は、第2レーザ光の回折格子86への入射角θ2より小さく、第2レーザ光の回折格子86への入射角θ2は、第3レーザ光の回折格子86への入射角θ3より小さい(つまり、θ1<θ2<θ3)。
これにより、第1レーザ光の方が第2レーザ光より短波長となり、第2レーザ光の方が第3レーザ光より短波長となるため、回折格子86により、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光を波長合成することができる。したがって、高出力の発光装置101を実現できる。
発光装置101の半導体発光素子110において、各光導波路から5Wのレーザ光が出射されように、各上方電極に電流を供給したところ、出射角θo=20度の方向に、強いレーザ光が得られた。このレーザ光のパワーは、11W、ビーム品質BPP(ビームプロダクト積)は、1.6[mm・mrad]であり、高出力、かつ、高ビーム品質のレーザ光が得られた。比較実験のため、入射角をθ1>θ2>θ3としたところ、発光装置から得られるレーザ光は6W程度であった。これは、外部共振器によって定まる発振波長帯域と、各光導波路におけるゲインが高い波長帯域とにずれが生じたことに起因すると考えられる。
なお、本実施の形態では、3本の光導波路を有する半導体発光素子110を用いたが、光導波路の本数は、3本に限定されず、数百本程度の光導波路を有する半導体発光素子、及び、そのような半導体発光素子からの数百のレーザ光を波長合成可能な回折格子も実現可能である。したがって、このような半導体発光素子及び回折格子を用いることで数百ワットクラスの発光装置も実現可能である。
[2-3.製造方法]
次に、本実施の形態に係る半導体発光素子110の製造方法について、図10A~図10Dを用いて説明する。図10A~図10Dは、それぞれ、本実施の形態に係る半導体発光素子110の製造方法の第1工程~第4工程を示す模式的な斜視図である。
まず、図10Aに示されるように、n-GaNからなる基板111の主面111sに、第1凹部41、第2凹部42、第3凹部43を形成する。これらの各凹部の形成には、例えば、フォトリソグラフィ及びドライエッチを用いることができる。各凹部と隣り合う凹部との間隔は、非等間隔である。具体的には、第1凹部41の幅方向の中心軸と、第2凹部42の幅方向の中心軸との距離の平均値は、第2凹部42の幅方向の中心軸と、第3凹部43の幅方向の中心軸との距離の平均値より小さい。
なお、基板111を準備する際には、結晶構造を考慮する必要がある。このような結晶構造について、図11A~図11Cを用いて説明する。図11A、図11B、及び図11Cは、それぞれ、GaN結晶におけるc面、m面、及びa面を示す模式図である。各図において、白丸印は、Ga原子を表し、黒丸印は、N原子を表す。図11A及び図11Bに示されるように、c面とm面及びa面とは(つまり、c軸とm軸及びa軸とは)互いに垂直である。また、m面とa面とのなす角(つまり、m軸と、a軸とのなす角)は、150度である。このような結晶構造を有するn-GaN基板を基板111として用いる場合、主面111sがc面と平行となるように、かつ、端面110F及び110Rがm面と平行となるように、基板111が形成される。
続いて、図10Bに示されるように、基板111の主面111s上に、n-AlGaNを含む下方クラッド層12、InGaNを含む活性層13、及び、p-AlGaNを含む上方クラッド層114を順に成長させる。これらの各層の形成には、例えば、MOCVD法(有機金属気相成長法)を用いることができる。なお、活性層13の結晶成長の過程において、各凹部の存在に起因して、In組成比が、活性層13の位置に応じて変調される。活性層13におけるIn組成比は、上述のとおり、凹部からの距離に依存する。凹部からの距離が小さいほど、In組成比が小さくなり、凹部からの距離が大きいほど、In組成比が大きくなる。したがって、活性層13におけるバンドギャップは、凹部からの距離小さいほど大きくなり、凹部からの距離が大きいほど小さくなる。
これらの各層の形成によって、各凹部は埋められる。なお、各図では簡略化のため、各層の表面形状が直線的に描かれているが、ミクロに観察すると、凹部付近では、各層の表面は湾曲している(図1など参照)。
続いて、図10Cに示されるように、第1光導波路21、第2光導波路22、及び第3光導波路23を形成する。具体的には、例えば、フォトリソグラフィ及びドライエッチを用いて、上方クラッド層114に3本のリッジを形成する。このようにして形成された各リッジが、各光導波路を構成する。なお、各光導波路は、等間隔に、かつ、各凹部の側方に形成される。
続いて、図10Dに示されるように、第1上方電極31、第2上方電極32、第3上方電極33、及び下方電極15を形成する。具体的には、例えば、電子ビーム(EB)蒸着及びフォトリソグラフィを用いて各電極が形成される。このように、半導体発光素子110が形成される。なお、半導体発光素子110の端面には、保護膜が形成されてもよい。また、保護膜は、誘電体多層膜などからなる反射膜又は反射防止膜であってもよい。
以上の各工程によって単一の半導体発光素子110を製造してもよいし、多数の半導体発光素子を同時に製造してもよい。例えば、半導体発光素子より大幅に大きいウェハを基板111の母材として用いて、当該ウェハに対して上記各工程が適用されてもよい。このようなウェハに多数の半導体発光素子を形成した後、ウェハを劈開して、劈開端面に保護膜などを形成してもよい。
なお、実施の形態1に係る半導体発光素子10も上述したような製造方法によって製造できる。
[2-4.変形例]
次に、本実施の形態の変形例に係る半導体発光素子について説明する。ここで説明する各変形例に係る半導体発光素子は、基板111に形成された各凹部の構造において、本実施の形態に係る半導体発光素子110と相違する。以下、本実施の形態の変形例に係る半導体発光素子について、本実施の形態に係る半導体発光素子110との相違点を中心に図12~図14を用いて説明する。
図12は、本実施の形態の変形例1に係る半導体発光素子110aの構成を示す上面図である。図12に示されるように、変形例1に係る半導体発光素子110aの基板111の主面111sには、第1凹部41a、第2凹部42a、及び第3凹部43aが形成されている。変形例1に係る半導体発光素子110aでは、基板111の主面111sの上面視において、各凹部は滑らかな曲線状に蛇行する。より詳しくは、各凹部は、正弦波状に蛇行する。
このような各凹部を有する半導体発光素子110aにおいても、本実施の形態に係る半導体発光素子110と同様の効果が奏される。また、このような滑らかな曲線状の形状の各凹部は、角部を有さないため、容易に形成できる。
図13は、本実施の形態の変形例2に係る半導体発光素子110bの構成を示す上面図である。図13に示されるように、変形例2に係る半導体発光素子110bの基板111の主面111sには、第1凹部41b、第2凹部42b、及び第3凹部43bが形成されている。変形例2に係る半導体発光素子110bでは、基板111の主面111sの上面視において、各凹部は、各レーザ光の出射方向(つまり、共振方向)に垂直な軸に対して非対称な形状を有する。また、各凹部は、周期的に鋭角に屈曲している。言い換えると、各凹部は、周期的な鋸波状の形状を有する。
このような各凹部を有する半導体発光素子110bにおいても、本実施の形態に係る半導体発光素子110と同様の効果が奏される。また、変形例2に係る半導体発光素子110bでは、各光導波路から、各凹部までの距離が急激に変化する領域(つまり、各凹部が鋭角に屈曲する領域に対応する領域)が存在するため、このような領域においては、活性層13のバンドギャップが急激に変化する。つまり、ポテンシャル障壁が形成される。このようなポテンシャル障壁によって、キャリアの移動が抑制されるため、熱などの外乱に起因して、キャリア分布が不均一になることを抑制できる。
図14は、本実施の形態の変形例3に係る半導体発光素子110cの構成を示す上面図である。図14に示されるように、変形例3に係る半導体発光素子110cの基板111の主面111sには、第1凹部41c、第2凹部42c、及び第3凹部43cが形成されている。変形例3に係る半導体発光素子110cでは、基板111の主面111sの上面視において、各凹部は、120度の角度で周期的に屈曲している。変形例3に係る半導体発光素子110cの基板111は、GaN結晶のc面に平行な主面111sを有し、かつ、各レーザ光の出射方向の端面は、m面に平行である。各凹部は、m面に平行な端面に対して、上面視において60度の角度で交差する。
このような各凹部を有する半導体発光素子110cにおいても、本実施の形態に係る半導体発光素子110と同様の効果が奏される。また、変形例3に係る半導体発光素子110cでは、各凹部において、各凹部を形成する側面の少なくとも一部がa面に平行となる。このため、ドライエッチによって、各凹部を形成する際に、各凹部を均一にエッチングできる。したがって、構造の均一度の高い凹部を形成することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3に係る半導体発光素子について説明する。本実施の形態に係る半導体発光素子は、各凹部の変調の態様において、実施の形態2に係る半導体発光素子110と相違する。実施の形態2に係る半導体発光素子110においては、活性層13におけるIn組成比を変調するために、各光導波路の中心軸から、各凹部の中心軸までの距離が変調されたが、本実施の形態に係る半導体発光素子では、各凹部の深さが変調される。以下、本実施の形態に係る半導体発光素子について、実施の形態2に係る半導体発光素子110との相違点を中心に図15A~図15Dを用いて説明する。
図15Aは、本実施の形態に係る半導体発光素子210の構成を示す模式的な上面図である。図15B、図15C及び図15Dは、それぞれ、本実施の形態に係る半導体発光素子210の第1凹部241、第2凹部242、及び第3凹部243の構造を示す模式的な断面図である。図15B、図15C及び図15Dには、それぞれ、図15AのXVB-XVB線、XVC-XVC線、及びXVD-XVD線における断面が示されている。
本実施の形態に係る半導体発光素子210は、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光を出射する素子である。図15B~図15Dに示されるように、半導体発光素子210は、基板211と、基板211の主面211sの上方に配置される積層構造体210Sとを備える。また、図15Aに示されるように、半導体発光素子210は、第1上方電極31と、第2上方電極32と、第3上方電極33とをさらに備える。また、図示しないが、半導体発光素子210は、実施の形態2に係る半導体発光素子110と同様に、基板211の下方に配置される下方電極15をさらに備える。
基板211は、積層構造体210Sが積層される板状部材である。図15B~図15Dに示されるように、基板211は、主面211sを有し、主面211sに第1レーザ光の出射方向に延びる第1凹部241、第2凹部242、及び第3凹部243が形成されている。
積層構造体210Sは、基板211の主面211sの上方に配置された半導体積層体である。積層構造体210Sは、基板211の主面211sの上面視において第1凹部241、第2凹部242、及び第3凹部243の側方にそれぞれ配置される第1光導波路21、第2光導波路22、及び第3光導波路23を有する。第1光導波路21、第2光導波路22、及び第3光導波路23は、それぞれ、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光を導波する。
積層構造体210Sは、活性層13と、活性層13の上方に積層された上方クラッド層114と、活性層13の下方に配置される下方クラッド層12とを含む。
半導体発光素子210においては、実施の形態2に係る半導体発光素子110と同様に、第1光導波路21の中心軸から、第1凹部241の幅方向の中心軸までの距離の平均値は、第2光導波路22の中心軸から、第2凹部242の幅方向の中心軸までの距離の平均値より小さく、第2光導波路22の中心軸から、第2凹部242の幅方向の中心軸までの距離の平均値は、第3光導波路23の中心軸から、第3凹部243の幅方向の中心軸までの距離の平均値より小さい。
本実施の形態においては、図15B~図15Dに示されるように、第1凹部241、第2凹部242、及び第3凹部243の基板211の主面211sからの深さが、出射方向の位置に対して変調されている。図15B~図15Dに示される例においては、各凹部の深さは、各レーザ光の出射方向に対して曲線状に変調されている。より詳しくは、各凹部の深さは、各レーザ光の出射方向に対して正弦波状に変調されている。なお、本実施の形態では、第1凹部241、第2凹部242、及び第3凹部243のそれぞれの深さの平均値F1、F2、及びF3は、等しい。具体的には、例えば、各凹部の幅は4μmであり、深さの平均値F1、F2、及びF3は2μmである。なお、このような構造を有する各凹部は、例えば、フォトリソグラフィとドライエッチとを複数回繰り返すことによって形成できる。つまり、各凹部の深さは、ドライエッチの回数を増減させることによって調整可能である。
このような各凹部を備える半導体発光素子210によっても、実施の形態2に係る半導体発光素子110と同様に、活性層13におけるIn組成比を変調できる。したがって、本実施の形態に係る半導体発光素子210によって、実施の形態2に係る半導体発光素子110と同様の効果が奏される。
(実施の形態4)
実施の形態4に係る半導体発光素子について説明する。実施の形態3に係る半導体発光素子210においては、各光導波路における活性層13のIn組成比を変えるために、各光導波路の中心軸から、各凹部の中心軸までの距離の平均値が、各光導波路毎に変えられた。本実施の形態では、各光導波路における活性層13のIn組成比を変えるために、各光導波路の中心軸から、各凹部の中心軸までの距離の平均値は変えずに、各凹部の深さの平均値が変えられる。以下、本実施の形態に係る半導体発光素子について、実施の形態3に係る半導体発光素子210との相違点を中心に図16A~図16Dを用いて説明する。
図16Aは、本実施の形態に係る半導体発光素子210aの構成を示す模式的な上面図である。図16B、図16C及び図16Dは、それぞれ、本実施の形態に係る半導体発光素子210aの第1凹部241a、第2凹部242a、及び第3凹部243aの構造を示す模式的な断面図である。図16B、図16C及び図16Dには、それぞれ、図16AのXVIB-XVIB線、XVIC-XVIC線、及びXVID-XVID線における断面が示されている。
本実施の形態に係る半導体発光素子210aは、図16B~図16Dに示されるように、基板211aと、基板211aの主面211asの上方に配置される積層構造体210Sとを備える。また、図16Aに示されるように、半導体発光素子210aは、第1上方電極31と、第2上方電極32と、第3上方電極33とをさらに備える。また、図示しないが、半導体発光素子210は、実施の形態2に係る半導体発光素子110と同様に、基板211の下方に配置される下方電極15をさらに備える。
基板211aは、図16B~図16Dに示されるように、主面211asを有し、主面211asに第1レーザ光の出射方向に延びる第1凹部241a、第2凹部242a、及び第3凹部243aが形成されている。
半導体発光素子210aにおいては、第1光導波路21の中心軸から、第1凹部241aの幅方向の中心軸までの距離の平均値、第2光導波路22の中心軸から、第2凹部242aの幅方向の中心軸までの距離の平均値、及び、第3光導波路23の中心軸から、第3凹部243aの幅方向の中心軸までの距離の平均値は、等しい。
一方、図16B~図16Dに示されるように、本実施の形態では、第1凹部241a、第2凹部242a、及び第3凹部243aのそれぞれの深さの平均値F1、F2、及びF3は、互いに異なる。具体的には、第1凹部241aの深さの平均値F1は、第2凹部242aの深さの平均値F2より大きく、第2凹部242aの深さの平均値F2は、第3凹部243aの深さの平均値F3より大きい。
具体的には、例えば、各凹部の幅は4μmであり、深さの平均値F1、F2、及びF3は、それぞれ、3.5μm、2.5μm、及び1.5μmである。なお、このような構造を有する各凹部は、例えば、フォトリソグラフィとドライエッチとを複数回繰り返すことによって形成できる。
このような各凹部を備える半導体発光素子210aによっても、実施の形態3に係る半導体発光素子210と同様に、活性層13におけるIn組成比を変調できる。したがって、本実施の形態に係る半導体発光素子210aによって、実施の形態3に係る半導体発光素子210と同様の効果が奏される。さらに、本実施の形態では、各光導波路と、各凹部との間の距離と均一にできるため、各光導波路の間隔に対する制約が緩和される。
(実施の形態5)
実施の形態5に係る半導体発光素子について説明する。本実施の形態に係る半導体発光素子は、主に、光導波路の構成において、実施の形態1に係る半導体発光素子10と相違する。以下、本実施の形態に係る半導体発光素子について、実施の形態1に係る半導体発光素子10との相違点を中心に図17を用いて説明する。
図17は、本実施の形態に係る半導体発光素子310の構成を示す模式的な前面図である。図17においては、半導体発光素子310のレーザ光が出射される端面が示されている。
本実施の形態に係る半導体発光素子310は、基板11と、積層構造体310Sと、第1上方電極30と、下方電極15とを備える。
基板11は、実施の形態1に係る基板11と同様の構成を有し、主面11sに第1凹部40が形成されている。
本実施の形態に係る積層構造体310Sは、活性層13、及び、活性層13の上方に積層された上方クラッド層314を含む。積層構造体310Sは、下方クラッド層12をさらに含む。
積層構造体310Sは、第1凹部40の側方に配置され、第1レーザ光を導波する第1光導波路320を有する。
上方クラッド層314には、ボロンなどのイオンが注入された高抵抗化領域320iが形成されており、上方クラッド層314のうち、高抵抗化領域320iで挟まれた領域が、第1光導波路320を構成する。なお、第1光導波路320以外の上方クラッド層314にイオンを注入する手法に代えて、高Al組成比のAlGaNを埋め込み成長させることによって、第1光導波路320を形成してもよい。これにより、第1光導波路320と、高Al組成比のAlGaNとの屈折率差が大きくなるため、レーザ光の第1光導波路320へ安定的に閉じ込めることができる。
本実施の形態に係る半導体発光素子310によっても、実施の形態1に係る半導体発光素子10と同様の効果が奏される。
(その他の変形例など)
以上、本開示に係る半導体発光素子及び発光装置について、各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記各実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記各実施の形態では、半導体発光素子が有する光導波路及び凹部の本数は、1本又は3本であったが、光導波路及び凹部の本数は、2本でも、4本以上でもよい。
また、上記実施の形態2に係る発光装置で用いる半導体発光素子として、実施の形態3及び実施の形態4に係る各半導体発光素子を用いてもよい。例えば、発光装置は、実施の形態4に係る半導体発光素子210aと、第1レーザ光、第2レーザ光、及び第3レーザ光が入射する回折格子とを備える。半導体発光素子210aの第1凹部241aの深さの平均値は、第2凹部242aの深さの平均値より深く、第2凹部242aの深さの平均値は、第3凹部243aの深さの平均値より深い。そして、第1レーザ光の回折格子への入射角は、第2レーザ光の回折格子への入射角より小さく、第2レーザ光の回折格子への入射角は、第3レーザ光の回折格子への入射角より小さい。このような発光装置においても、実施の形態2に係る発光装置101と同様の効果が奏される。
また、上記各実施の形態及び変形例では、基板及び積層構造体を形成する材料の一例が示されたが、基板及び積層構造体を形成する材料は、上記の例に限定されず、窒化物系半導体材料であればよい。
また、上記各実施の形態及び変形例においては、下方クラッド層及び上方クラッド層として、それぞれ、n型及びp型の半導体層が用いられたが、下方クラッド層及び上方クラッド層として、それぞれ、p型及びn型の半導体層が用いられてもよい。
また、上記各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
例えば、実施の形態1又は2に、実施の形態3及び4の少なくとも一方の構成を適用してもよい。つまり、実施の形態1又は2の形態に係る各凹部の深さを変調してもよいし、実施の形態2に係る各凹部の深さの平均値を異ならせてもよい。