JP7176683B2 - 自己熱補償型柔軟性pcpを使用したガス分離装置 - Google Patents

自己熱補償型柔軟性pcpを使用したガス分離装置 Download PDF

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本発明はゲート現象を示す自己熱補償型柔軟性PCPを用いたガス分離装置に関する。
ガス分離装置に用いるガス吸着材としては、活性炭、ゼオライト、アルミナ、シリカゲル等、およびPCP(多孔性金属錯体:Porous Coordination Polymer)等が知られている。活性炭等の吸着挙動はガス圧力が高まるとガス吸着量が増え、ガス圧力が下がるとガス吸着量が下がる、すなわちガス圧に対してガス吸着量が、Langmuir型のように応答し、図1に示すように吸着等温線と脱着等温線とが一致するI型と呼ばれる挙動である。I型吸着挙動を示す吸着材(以下、「I型吸着材」という)は、ガスを回収するためには低圧まで圧力を下げる必要があり、ガス回収のためのエネルギー消費が大きいという問題点がある。また、I型吸着材の吸着現象は通常発熱現象であるため、このガス吸着材はこの発熱により、吸着力が低下するという問題がある。
一方で、ガス圧力に応じて、吸着材の構造が変化することで、ガス圧とガス吸着量とがLangmuir型のような応答を示さない、非I型吸着特性を示すPCPが知られている。このタイプのPCPはかなり珍しく、PCPの中でも恐らく1%以下しかない特殊PCPであり、ガス吸着量が急激に増加する事をゲートになぞらえ、ゲート型PCP吸着材と総称される。また、このゲート的なガス吸着挙動は、ゲート型PCP吸着材がガス吸着に際して、結晶構造が変化する事に由来する場合が多い。ガス吸着に際して、結晶構造が変化するゲート型PCP吸着材は、構造変化が吸熱反応であることから、ガス吸着による発熱が補償され、正味の発熱量が減少し、吸着力の低下が起こりにくい場合があることが知られている。このため、ゲート型PCPは自己熱補償型柔軟性PCPとも呼ばれ、発熱による吸着力の低下が起こりにくいことからガス分離に好適に使用できると考えられる。
ゲート型PCP吸着材は、閾値以上のガス圧で急激に吸着量が増加する特徴を有し、図2の吸脱着等温線に示すように、a~cの三通りに分類出来る。この図2で、縦軸はガス吸着量であり、横軸はガス圧力である。これらの材料はガス脱着に於いても、Langmuir型に従わない挙動を示し、すなわち一定以下のガス圧でガスを急激に放出する。ゲート型PCP吸着材は一定圧以下でガスが放出される為、ガスが容易に回収出来る利点があると認識されている。
一方で、ゲート型PCP吸着材にはslipping-offと呼ばれる問題があることが分かってきた。図3のa~d図はI型及びゲート型のガス吸着挙動を示す。図4のe~h図は、図3のa~d図のそれぞれに対応する破過特性(塔から放出される被吸着ガスの時間変化)を示す。図3のa図のI型吸着材では、破過前は被吸着ガスの流出(slipping-off)は生じない。これは、I型吸着材が極低圧でも被吸着ガスを吸うという特性を有しているからである。しかし、ゲート型PCP吸着材は、吸脱着等温線の形状に寄らず、slipping-offが生じる。I型吸着等温線を示す既存材料の典型的な破過は、図4のe図の様に表される。すなわち、吸着ガスの流出は当初は起こらず、一定時間(破過時間)後に、破過が生じる。これに対し、ゲート型PCP吸着材は、一定圧以下ではガスを吸わないため、図4のf、g、h図の様に被吸着ガスの破過の前に、少量の被吸着ガスの流出が生じてしまう。図4のe~h図は、破過点およびslipping-offが生じる場所を示したものである。slipping-offは一定のガス圧以下では被吸着ガスを吸着しないというゲート型PCP吸着材の特性の本質によるもので、避けることができない。別の言い方をすれば、slipping-off現象はゲート型PCP吸着材でのみ生じる現象で有り、既存材料を使用している限り、本現象は生じない。
吸着材を用いるガス分離は、破過直前まで被吸着ガスを吸着材に吸着させ(吸着材が吸着したガス量が最大化する)、その状態から被吸着ガスを分離、回収することで行われる。すなわち、破過前に吸着塔を通過するガスは通常排気される。吸着材にゲート型PCP吸着材を用いる場合は、破過まえに、低濃度の被吸着ガスの流出が生じている。ガス分離(ガスの高濃度化)を目的にしているにもかかわらず、低濃度の被吸着ガスが流出してしまい、これは目的とするガスのロスである。このため、利用価値が低い低濃度被吸着ガスの処理費用が発生する(例えばCO濃縮等)、あるいは無駄な追加処理である低濃度被吸着ガスからの再度の高濃度化処理等の問題を引き起こす。
ゲート型PCP吸着材はガス吸着に際して、結晶構造が変化する、すなわち、吸着材体積が変化する特性がある。圧力スイング吸着法(PSA)において、吸着材を使用するためには、導入ガスで吸着材が飛散しないようにするために、吸着材をビーズ等への成形体に加工する必要がある。ところがゲート型PCP吸着材をビーズ等への成形体に加工すると、体積変化により成形体が崩壊する問題がある。したがって、ガス流通条件でのゲート型PCP吸着材の評価は限られている。このため以下の非特許文献の例を除けば、slippng-off現象自体が、一般にはその存在がほとんど認識されていない。I型吸着材ではそもそもslippng-off現象が生じない。
非特許文献1には、Fig.1にCOの破過曲線が記載されており、ゲート型PCP吸着材でslipping-off現象が生じる事が読み取れる。しかし、この論文には、ステップが生じるという定性的な記述があるのみで、このことがガス分離の課題となるという記載、解決方法の記載等は全く無い。
非特許文献2にはFig.3に破過曲線が記載されており、ゲート型PCP吸着材でslipping-off現象が生じる事が読み取れる。しかし、この論文には、ステップが生じるという定性的な記述があるのみで、このことがガス分離の課題となるという記載、解決方法の記載等は全く無い。
自己熱補償型柔軟性PCPは、被吸着ガスの選択性に優れており、吸着したガスの分離、回収のためのエネルギー消費が非常に少ないという利点を有しているため、実用化が期待されている。しかし、上述したslipping-off現象に起因する、利用価値が低い低濃度被吸着ガスの発生、低濃度被吸着ガスからの再度の高濃度化処理の問題を解決する方法が望まれている。また、自己熱補償性能を有し且つ低消費エネルギーで高効率のガス分離能を有するガス分離装置が望まれている。
特開2004-74025号公報
Sotomayor, F. J.; Lastoskie, C. M., Langmuir 33, 11670-11678, (2017) Horike, S.ら、 Chem. Sci. 3, 116-120, (2012)
本発明は、ゲート型PCP吸着材のslipping-off現象に起因する、利用価値が低い低濃度被吸着ガスの発生、低濃度被吸着ガスからの再度の高濃度化処理等の問題を解決することであり、その解決手段を組み込んだ自己熱補償型柔軟性PCP(以下、「ゲート型PCP」ともいう)を使用したガス分離装置を提供すること、また、自己熱補償性能を有し且つ低消費エネルギーで高効率のガス分離能を有するガス分離装置を目的とする。
すなわち本発明は下記に示すとおりである。
(1)ゲート型PCP吸着材とI型吸着材とを直列に配置し、前記ゲート型PCP吸着材のガス導入側に第1バルブを有し、前記I型吸着材のガス排出側に第2バルブを有し、前記第1バルブから被吸着ガスを含む混合ガスが導入されるガス分離装置。
(2)前記ゲート型PCP吸着材側と、前記I型吸着材側との間に中間バルブを有する前記(1)に記載のガス分離装置。
(3)前記ゲート型PCP吸着材を含む第1吸着塔、前記I型吸着材を含む第2吸着塔を少なくとも有し、前記第1吸着塔の後に前記第2吸着塔が配置されている前記(1)に記載のガス分離装置。
(4)前記第1吸着塔と前記第2吸着塔の間に中間バルブを有する前記(3)に記載のガス分離装置。
(5)前記ゲート型PCP吸着材が、混合ガスに含まれる少なくとも1種の被吸着ガスに対してゲート型の吸着挙動を示す、一次元鎖構造を有するゲート型多孔性高分子金属錯体、二次元ネットワークの積層型のゲート型多孔性高分子金属錯体、および三次元ネットワークのゲート型多孔性高分子金属錯体から成る群より選ばれ、前記I型吸着材が、前記少なくとも1種の被吸着ガスに対してI型吸着挙動を示す、ゼオライト、活性炭、およびI型吸着挙動を示すPCPから成る群より選ばれる前記(1)~(4)のいずれかに記載のガス分離装置。
(6)前記ゲート型PCP吸着材が、ELMと総称される複層積層型のネットワーク構造を有する多孔性高分子金属錯体、カゴメ型多孔性高分子金属錯体、DUTと総称される多孔性高分子金属錯体、およびMILと総称される多孔性高分子金属錯体から成る群より選ばれ、前記I型吸着材が、ゼオライト、活性炭、およびI型吸着挙動を示すPCPから成る群より選ばれる前記(5)に記載のガス分離装置。
(7)前記ゲート型PCP吸着材が、ELMと総称される複層積層型のネットワーク構造を有する多孔性高分子金属錯体であり、前記I型吸着材が、ゼオライト、活性炭、およびI型吸着挙動を示すPCPから成る群より選ばれる(6)に記載のガス分離装置。
本発明のガス分離装置は、混合ガスから高効率に且つ低消費エネルギーで、選択ガスをガス分離することができ、高純度の選択ガスを得ることができる。
吸着等温線と脱着等温線とが一致するI型吸着材の吸脱着等温線を示す。 ゲート型PCP吸着材の吸着等温線を示す。ゲート型PCP吸着材の吸着様式は何通りか有り、a図はゲート的なガス吸着現象の前にガスがほぼ吸着されないタイプで、本明細書ではゲート(0-1)型と称する。b図はゲート的なガス吸着現象の前にガスが少量吸着されるタイプを示し、c図は、ゲート的なガス吸着現象が多段階で生じるタイプを示す。 各吸着材の吸着等温線を示す。図3のa図はI型吸着材の吸着等温線を表し、図3のb(ゲート(0-1)型)、c、d図はゲート型PCP吸着材の吸着等温線を表す。ここで、y は流入ガス成分Aの分率を示し、Pはシステムの全圧を示す。 図4のe~h図は、図3のa~d図のそれぞれに対応する破過特性を示し、破過点およびslipping-offの場所を示す。ここで、P はゲートが二段である場合の1段目のゲート型吸着材のゲート吸着圧を示し、P2G は2段目のゲート圧を示す。 本発明の第1の態様を示す模式図。 本発明の第2の態様を示す模式図。 本発明の第2の態様の吸着工程を示す模式図。
本願発明者は、slipping-off現象に起因する、低濃度の被吸着ガスの発生を解消する為に、発生した低濃度の被吸着ガスを低圧で吸着するI型吸着材料を、ゲート型PCP吸着材と併用することを見出した。但し、単独の吸着塔において、ゲート型PCP吸着材とI型吸着材とを混合して使用する場合は、その吸着特性はそれぞれ吸着材の吸着特性の足し合わせとなり、その吸着等温線は図3のcで表される。この場合、slipping-off現象に起因する低濃度の被吸着ガスの発生を遅らせる事は出来るが、その発生自体を防止することは出来ない。
特許文献1には、ゲート型PCP吸着材とI型吸着材を複合して(コアシェル型に成形して)利用する方法、また両者を混合することが開示されている。しかし、特許文献1には、slipping-offの課題、その解決方法のいずれの記載も無い。また、本方法では、slipping-offの課題を解決することが出来ない。
本願発明者は、slipping-off現象に起因する低濃度の被吸着ガスの発生を防止する為には、ゲート型PCP吸着材とI型吸着材を混合せず、別個に使用することが必要であることを見出した。その使用態様としては、単独の吸着塔内の片側に前段として、ゲート型PCP吸着材を充填し、もう一方の側に後段として、I型吸着材を充填し、ゲート型PCP吸着材側からガスを導入し、I型吸着材からガスを排出する方法がある。あるいは、吸着塔を前段、後段から成る2塔式とし、前段の第1吸着塔にゲート型PCP吸着材、後段の第2吸着塔にI型吸着材を充填し、第1吸着塔と第2吸着塔を直列に配置して、第1吸着塔からガスを導入する態様がある。
ゲート型PCP吸着材とI型吸着材は被吸着ガスを放出する際の挙動が全く異なるため、実際の操業を考えた場合、別個にガス回収操作を行う事が好ましく、このためには、ゲート型PCP吸着材充填部分とI型吸着材充填部分との間にバルブを設置し、個別に分離操作が行えるガス分離装置が好ましい。
本装置を運転する圧力レンジに限定は無く、ガス種や目的(高圧ガスが欲しいのか、低圧でよいのか)等に応じて選ぶことが出来る。常圧以上での操業を行うPSA法、または圧力ではなく温度を上下させることでガスを吸脱着するTSA法(Temperature Swing Adsorption)のいずれもが使用できる。PSA法は、さらに、1気圧以下で操業するVSA法、吸着圧が高圧で、脱着を減圧下で行うPVSA法がある。ガス種や目的に応じてこれらの方法を選ぶことができる。
PSA法では吸着塔を多段にして分離性能を上げる方式は一般的である。例えば、(i)水を含むガスを分離する為に、吸着塔の前段に吸水塔を設置する直列多塔式、(ii)3種混合ガス等で、その中の1種類のガスを除去する目的の塔を含む直列多塔式、(iii)同一あるいは同種の吸着材を充填した吸着塔を並列に設置して、吸着/脱着塔の操作を塔毎に行う多塔式の各種の方式がある。(i)(ii)は目的の分離ガス以外の除去を対象とした方式である。(iii)はガス分離操作の都合上、複合化した方式で有る。これらの方式はゲート型PCP吸着材のslipping-offガスの課題解決を目的とするものではない。
PSA法において複数の吸着塔を前段、後段からなる多塔化とする技術は存在するが、そもそも既存材のゲート型PCP吸着材ではslipping-offガスの課題が存在しておらず、多塔化することは、slipping-offガスの課題解決にはならない。吸着塔の多塔化は分離装置を複雑にするため、通常、特段の理由が無い限り行われない。
本発明のガス吸着装置は、前段の吸着材として、ゲート現象を示すゲート型PCPを用いる。ゲート型PCPとは、ガスの圧力に応じて、材料の構造や、電子状態が変化する事で、ガスとPCPとの相互作用が大きく変わる結果、ガス吸着量が圧力に対してLangmuir型に従わない応答を示し、一般的にはガス吸着量が一定のガス圧(ゲート圧)以上で急激に増加するようなPCPを示す。本発明のガス吸着装置に用いることができるゲート型PCPの例としては、以下に示すゲート型PCPを挙げることができる。
ゲート型PCPの例として、一次元鎖構造を有するゲート型多孔性高分子金属錯体を挙げることができる。例えば、式:[G(H)(I)](式中、Gは遷移金属イオン、Hは第一配位子、Iは第二配位子である)で表される金属錯体、または、式:G(J)(L(式中Gは遷移金属イオン、Jは配位子、Lは1価の対イオンである)表される金属錯体である。
ゲート型PCPの例として、二次元ネットワークの積層型のゲート型多孔性高分子金属錯体を挙げることができる。
二次元積層型のゲート型多孔性高分子金属錯体とは、多孔性高分子金属錯体のネットワーク構造が二次元層状構造を有しており、この構造がファンデルワールス力、水素結合等の弱い相互作用で積層する事で形成されている多孔性高分子金属錯体である。三次元型の柔軟性多孔性高分子金属錯体と比して、特定の方向(層間が広がる方向)にのみ体積膨張が生じるため、賦形体への負荷がかかりやすい。
二次元積層型の、さらに別の二次元積層型のゲート型多孔性高分子金属錯体の例としては、通称カゴメ様二次元ネットワーク構造が多孔性高分子金属錯体の例としては、通称カゴメ様二次元ネットワーク構造が積層した多孔性高分子金属錯体挙げることができ、カゴメ型多孔性高分子金属錯体と称される。カゴメ型多孔性高分子金属錯体は、以下の式で表される
[DE]
上式中、Dは2価の遷移金属イオンでありCu2+、Zn2+、Ru2+、Rh2+、Mo2+、Cr2+から選択され、Eは置換または非置換のイソフタル酸イオンである。
カゴメ型多孔性高分子金属錯体は、例えば、以下の文献にて開示されている。
特開2012-228667号公報には、一般式:{M(OOC-R-COO)}
〔式中、MはCu2+、Zn2+、Ru2+、Rh2+、Mo2+、Cr2+から選択される2価の金属イオンであり、Rは2個のCOOH基がメタ位の位置関係にある2価の芳香族基を示す。〕で表される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
Satoら、Science、 (2014) 167には、銅イオンと、アジド基を置換基とするイソフタル酸イオンから構成されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
Zaworotkoら、Chem. Commun. (2004) 2534には、銅イオンと、ベンジルオキシ基を置換基とするイソフタル酸イオンから構成される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
Zaworotkoら、Angew. Chem. Int. Ed. (2001), 2111には、亜鉛イオンまたは銅イオンとイソフタル酸から構成されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。尚、pyで表記されているピリジンは、金属イオンに弱く配位しているだけであり、吸着測定の前処理で除去される為、ネットワーク構造は一般的なカゴメ構造と見なすことができる。
Zaworotkoら、Cryst. Growth Des. (2003) 513には、銅イオンと、イソフタル酸イオンまたはエトキシ基を置換基とするイソフタル酸イオンから構成されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
特開2012-045533号公報には、一般式:[Cu(ピリジン-3、5-ジカルボキシラート)で表されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
米国特許出願公開2002/120165号公報の[0022]には、Fig.2に記載の配位子から合成される一般式:(MA)n(式中、Mは任意の金属、Aは二官能価のカルボキシラートを表す)で表されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
上代ら、Int. J. Mol. Sci. 2010、 11、 3803には、ELMと総称される複層積層型のネットワーク構造を有する、多孔性高分子金属錯体が記載されている。ELMは、PCP層自体は剛直な配位子から形成されているので、柔軟性を有しないが、隣接する層同士がずれることで材料全体としての柔軟性を発現する多孔性高分子金属錯体である。ELMには、ELM-11([Cu(bpy)(BF](bpy=4,4’-ビピリジン))、BFの代わりにOTfイオンを含有するELM-11、BFの代わりにCF3BF3イオンを含有するELM-13、BFの代わりにCF3BF3イオンおよびOTfイオンの両方を含有するELM-12/3、銅イオンの代わりにNiイオンを含有するELM-31、Coイオンを含有するELM-31、銅イオンの代わりにNiイオンを含有し、bpy配位子の代わりに1、4-ビス(4-ピリジル)ベンゼン(bp1p)を含有するELM-31b([Ni(bp1p)(BF]ががある。
二次元ネットワークのゲート型積層型多孔性高分子金属錯体の例として、カゴメ型及びELMと総称される多孔性高分子金属錯体を例示したが、柔軟性を有する二次元ネットワークのゲート型積層型多孔性高分子金属錯体はこれらに限定される物では無い。例示された、カゴメ型及びELMの様に、層の間に、多数の水素結合などの結合が存在しない場合は、層間の相互作用が弱まり、多孔性高分子金属錯体が柔軟性を示す事が知られている。
三次元ネットワークのゲート型多孔性高分子金属錯体の例として、MILまたはDUTと総称される多孔性高分子金属錯体を挙げることができる。MILは、Vosら、Microporous and mesoporous mater、 (2009) 221、Kaskelら、Advanced Engineering Materials (2009) 93の文献において、「MIL」として表されている多孔性高分子金属錯体群である。DUTは、Kaskelら、Phys. Chem. Chem. Phys. (2015)17471の文献に記載の、Ni(26ndca)-Dabco(式中、26ndcaは2、6-ナフタレンジカルボン酸、Dabcoは1、8ジアザビシクロオクタンである)で表される柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体である。
本発明のガス吸着装置は、前段の吸着材として、吸着等温線と脱着等温線とが一致するI型吸着材を用いる。具体的な例には、ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカゲル等を挙げることができる。また、I型吸着挙動を示すPCPを用いることもできる。I型吸着挙動を示すPCPとしては、HKUST-1({Cu(btc)(HO))、アルドリッチ社から販売されている、Z1200(別名ZIF-8)、ストレム社から販売されているUiO-66等を挙げることができる。この中で、材料の安定性が高いことからゼオライト、活性炭が好ましい。slipping-offで生じたガスを効率よく吸着する為に、ゲート型PCP吸着材が吸着するガスの量の1/4以上の吸着量を有するI型吸着材が好ましい。
本発明のガス分離装置の第1の態様は、ゲート型PCP吸着材とI型吸着材とを直列に配置したガス分離装置であって、前記ゲート型PCP吸着材側に第1バルブを有し、前記I型吸着材側に第2バルブを有し、第1バルブから被吸着ガスを導入するガス分離装置である。図5は、第1の態様を示す模式図であるが、本発明の装置は当該図に限定されない。ガス分離装置1は、ゲート型PCP吸着材を有する前段部分2と、I型吸着材を有する後段部分3とが直列に連結されており、ゲート型PCP吸着材側に第1バルブ4を有し、I型吸着材側に第2バルブ5を有している。矢印は、ガス吸着時のガスの流れを示す。ガス吸着時には、第1バルブからガスが導入され、第2バルブからガスが排出される。前段部分と後段部分との間には、中間バルブ6が設けられていることが好ましく、必要に応じて、この中間バルブを開閉して、ガスの排出操作またはガスの導入操作を、前段部分2と後段部分3に対して別個に行うことができる。尚、図5は、ゲート型PCP吸着材を有する前段部分2と、I型吸着材を有する後段部分3がそれぞれ、別個の容器で明確に分離されている態様となっているが、二種の吸着材が実質的に混合しなければ、一つの吸着塔の内部で、ゲート型PCP吸着材を有する前段部分2とI型吸着材を有する後段部分3が、例えば穴あきの仕切り板等で分離されている態様であってもよい。
本発明のガス分離装置の第2の態様は、ゲート型PCP吸着材を含む第1吸着塔、I型吸着材を含む第2吸着塔を少なくとも有し、前記第1吸着塔の後に前記第2吸着塔が配置されているガス分離装置である。図6は、第2の態様を示す模式図で模式図であるが、本発明の装置は当該図に限定されない。ガス分離装置11は、ゲート型PCP吸着材を有する第1吸着塔12と、I型吸着材を有する第2吸着塔13とが直列に連結されている。図6では、第1吸着塔に第1バルブ14、第2吸着塔に第2バルブ15が設けられている。矢印は、ガス吸着時のガスの流れを示す。ガス吸着時には、第1バルブからガスが導入され、第2バルブからガスが排出される。第1吸着塔12と第2吸着塔13との間には、中間バルブ16が設けられていることが好ましく、必要に応じて、この中間バルブをバルブ開閉して、ガスの排出操作またはガスの導入操作を、第1吸着塔13と第2吸着塔13に対して別個に行うことができる。例えば、第2吸着塔でのガス吸着量に応じて、脱着工程では、第2吸着塔に対するパージ工程は不要となる場合があり、リンス工程を省略することができる。さらに、第2吸着塔での脱着工程における圧力を第1吸着塔と同じにすることができ、真空ポンプの動力コストを削減することができるという効果を有する。
導入する混合ガス成分が、ガス分離を阻害するような成分を含む場合は、さらに別の吸着塔を増設した多塔型であってもよい。本発明のガス分離装置の第2の態様は、第1吸着塔12と、第2吸着塔13とが少なくとも直列に連結されていること以外は、一般的なPSA装置に存在する付加的なバルブ、昇圧ポンプ、製品タンク等を、さらに有することができる。
本発明の分離装置を用いて分離することができるガスの種類は、使用するゲート型PCP吸着材が吸着できるガスに依存する。ゲート型PCP吸着材が吸着できるガスには、例えば、水素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、窒素が挙げられる。
本発明のガス分離装置の設計においては、次のように考えることができる。
図7のように、0-1型のゲート型PCP吸着材を充填した第1吸着塔を塔G、およびI型吸着材を充填した第2吸着塔を塔Iとする。そして、第1吸着塔Gに流入するガス流れを1、第1吸着塔Gから流出し、第2吸着塔Iに流入するガス流れを2、第2吸着塔Iから流出するガス流れを3とする。図7で、Fは塔Gの混合ガスの入口流量、y は塔Gの流入ガス成分Aの分率、y は塔Gの流入ガス成分Bの分率を表し、Fは塔Gからの混合ガスの出口流量、y は塔Gからの流出ガス成分Aの分率、y は塔Gからの流出ガス成分Bの分率を表し、そしてFは塔Iからの混合ガスの出口流量、y は塔Iからの流出ガス成分Aの分率、y は塔Iからの流出ガス成分Bの分率を表す。N はゲート型吸着材のガス成分Aに対する吸着量、n はゲート型吸着材のガス成分Aの残存量、n はゲート型吸着材のガス成分Bの残存量を表し、そしてN はI型吸着材のガス成分Aに対する吸着量、n はI型吸着材のガス成分Aの残存量、n はI型吸着材のガス成分Bの残存量を表す。P はゲート型吸着材のゲート吸着圧、Pはシステムの全圧を表す。
図7の模式図では、成分AおよびBの混合流体を考え、流れiにおける成分jのモル分率をy とし、塔Gおよび塔Iにおける主要な吸着成分をAとする。また、流れiの流量をFとし、吸着塔k(=G、I)に充填した吸着材の重量基準の成分jの吸着量をN とする。吸着速度が無限に速い理想条件を仮定し、分離システムの全圧をPとするとき、ガス流れ1における成分Aの分圧P が塔Gにおける成分Aのゲート吸着圧P よりも高い場合には、
Figure 0007176683000001

の分率にて、成分Aが漏れ出てしまう。ここで、昇圧工程後のガスのフィード時間をtとし、時刻tにおいて成分Aが塔Gから破過(流れ1に等しい分率にて成分Aが流出)しないような必要最小限の充填量をw[g]とすると、各成分についての流入量、吸着量、流出量の物質収支から、以下の2つの式が得られる。
Figure 0007176683000002
そして、式(2)および(3)を連立して解くと、流れ2の流量および、必要なサンプル充填重量wを以下のように求めることができる。
Figure 0007176683000003
このときの塔Gの体積Vは、ゲート型PCP吸着材の見掛け密度ρを用いて、
Figure 0007176683000004

となる。また、y の分率にて漏れ出てしまう成分Aの全量(F )を取り去るのに必要な最小限のI型の吸着材充填量w[g]は、
Figure 0007176683000005

となり、塔Iの体積Vは、見掛け密度ρを用いて同様に、以下のように書くことができる。
Figure 0007176683000006
したがって、得られる純成分B(y =0、y =1)の流量Fは、各吸着塔で吸着された分を除いた、以下の式
Figure 0007176683000007

によって表すことができるが、その一部は脱着過程において残存している成分Aのパージ工程に使用するため、実質的に得られる製品流量F は、以下のようになる。
Figure 0007176683000008

ここで、n は、脱着工程終了後に吸着塔k(G、I)の吸着材内に残存してしまう成分jの吸着量であり、αはパージ効率を表す係数である。
ゲート吸着前に少量のガスが吸着するような場合(図3c)、成分Aの破過曲線は図4gのようになり、y の分率にて漏れ出てしまう成分Aの到達が遅延すること以外、0-1型のゲート型吸着材と相似形であるので、式(1)-(10)と同様の式によって評価することが可能である。
上述の提案ガス分離システムにおいて適用可能な、流れ1における成分Aの分率は、y 以上、1以下である。
なお、上述の吸着量N は、塔Gおよび塔Iに導入されるガスの流量に依存する実効吸着量である。例えば、熱的平衡状態が実現するとみなせるような、極めて小さな流量にてガスを各吸着塔に導入する場合、N の値は同じ温度、同じガス組成において得られる平衡吸着量に等しくなる。一方、極めて大きな流量にて、断熱的にガスを導入する場合、その吸着熱によって吸着材の温度は上昇し、結果としてN の値は平衡吸着量よりも小さな値となる。ガス分離システムにおいて、ガス導入流量を大きくし、かつ、フィード時間を短くすることは、分離装置サイズの縮小を可能とし、分離コストの削減に寄与することができる。しかし、通常のI型吸着材のみでは吸着塔内温度の上昇に伴うN の減少が問題となる。これに対して、ゲート型吸着材は、ガス吸着(発熱)に伴う構造変形(吸熱)によって、自身の温度上昇を軽減(自己熱補償)し、断熱的操作条件下においても大きなN を得ること可能とする。つまり、提案ガス分離装置は、ゲート型吸着材における自己熱補償能を有効に活用し、断熱的な吸脱着サイクル・高効率化を可能とするものである。
図6、図7の模式図に示すガス分離装置を想定して、下に示す実施例及び比較例の操作をシミュレートした。
本シミュレーションでは、100mol/sのCO:CH混合ガスを100秒間で処理するのに必要な吸着材質量および吸着塔のサイズを求めることとし、吸着塔のL/D比を2とした。また、各種の吸着材とバインダーからなる成形体を直径2mmの球形とし、これを充填率0.65で吸着塔内に充填するものと仮定した。さらに、成形体中の吸着材の含有率を75%とし、バインダーの密度は吸着材の結晶密度と同等であるとした。吸着材として仮定したHKUST-1およびZeolite-13Xにおける、COおよびCHの単成分吸着等温線、吸着熱、比熱については、全て実験値(文献値)を使用し、CO選択率はCOおよびCH吸着等温線を用いたIAST法によって推算した。また、ELM-11については、分子シミュレーションによってCOおよびCHの混合吸着等温線、CO選択率、吸着熱を決定し、その比熱は量子化学計算によって求めた。ELM-11のCO吸着におけるゲート圧の温度依存性については、195Kから298Kの広い温度範囲にわたって吸着等温線を実測することによって精密な推算式を求め、これによってslipping-offガス量を推算することを可能とした。さらに、COの吸脱着時におけるELM-11の自己熱補償能(ELM-11の発熱量および吸熱量)については、CO吸着測定結果と各種の計算科学的手法による解析結果を援用した自由エネルギー解析によって求めた。
実施例1
500kPaのCO:CH=1:1混合ガスを吸着させ(P=500kPa、A=CO、B=CH、y =y =0.5)、250kPaにおいて少量の純COでリンスした後、5kPaで脱着、さらに5kPaの純CHによって吸着質のパージを行うような分離プロセスを考える。ゲート型吸着材にELM-11、I型吸着材にはHKUST-1を用い、吸着工程における初期温度は263Kとする。ELM-11における自己熱補償能を含む熱収支を考慮すると、500kPaのCO:CH=1:1混合ガスに対するELM-11の実効吸着量は、N =3.13mmol/g、N =0.08mmol/gであり、ゲート吸着圧はP =20.8kPaである。このとき、塔Gの出口流量にはy =20.8/500=0.042のCOが含まれている。つまり、F=100mol/s(CO50mol/s、CH50mol/s)、t=100sとする場合、塔径1.15m、塔高2.29m、必要なELM-11の量wは1528kgとなるが、出口よりとともに2.1mol/sのCOが漏れ出ることになる。
提案ガス分離装置は、塔Gに接続する塔Iによって、塔Gの出口より流出する2.1mol/sのCOを除去することを可能とするものである。P=500kPa、y =0.042、y =0.958の流入ガス(263K)に対するHKUST-1の実効吸着量は、N =0.50mmol/g、N =2.20mmol/gである。すなわち、w=425kgのHKUST-1を充填した塔I(塔径0.78m,塔高1.57m)を後続させることで、COの完全除去が可能であり、この場合のCH流出量Fは39.4mol/sとなる。また、脱着工程において、各吸着塔ではそれぞれ、n =0.0mmol/g、n =0.60mmol/gのCOが残存している。これらをパージするのに同mol量のCHが必要であると仮定するならば(α=1)、最終的なCH製品流量F は36.9mol/sとなる。
実施例2
500kPaのCO:CH=4:6混合ガスを吸着させ(P=500kPa、A=CO、B=CH、y =0.4、y =0.6)、200kPaにおいて少量の純COでリンスした後、5kPaで脱着、さらに5kPaの純CHによって吸着質のパージを行うような分離プロセスを考える。ゲート型吸着材にELM-11、I型吸着材にはHKUST-1を用い、吸着工程における初期温度は263Kとする。ELM-11における自己熱補償能を含む熱収支を考慮すると、500kPaのCO:CH=4:6混合ガスに対するELM-11の実効吸着量は、CO選択率の高さから実施例1と同等と見なすことができ(N =3.13mmol/g、N =0.08mmol/g)、ゲート吸着圧はP =20.8kPaである。このとき、塔Gの出口流量にはy =20.8/500=0.042のCOが含まれている。つまり、F=100mol/s(CO40mol/s、CH60mol/s)、t=100sとする場合、塔径1.06m、塔高2.11m、必要なELM-11の量wは1194kgとなるが、出口より59.0mol/sのCHとともに2.6mol/sのCOが漏れ出ることになる。一方、P=500kPa、y =0.042、y =0.958の流入ガス(263K)に対するHKUST-1の実効吸着量は、N =0.50mmol/g、N =2.20mmol/gである。すなわち、w=515kgのHKUST-1を充填した塔(塔径0.83m、塔高1.67m)を後続させることで、COの完全除去が可能であり、この場合のCH流出量Fは47.7mol/sとなる。また、脱着工程において、各吸着塔ではそれぞれ、n =0.0mmol/g、n =0.60mmol/gのCOが残存している。これらをパージするのに同mol量のCHが必要であると仮定するならば(α=1)、最終的なCH製品流量F は44.6mol/sとなる。
実施例3
500kPaのCO:CH=1:1混合ガスを吸着させ(P=500kPa、A=CO、B=CH、y =y =0.5)、250kPaにおいて少量の純COでリンスした後、5kPaで脱着、5kPaの純CHによって吸着質のパージを行うような分離プロセスを考える。ゲート型吸着材にELM-11、I型吸着材にはHKUST-1を用い、吸着工程における初期温度は298Kとする。ELM-11における自己熱補償能を含む熱収支を考慮すると、500kPaのCO:CH=1:1混合ガス(298K)に対するELM-11の実効吸着量はN =1.68mmol/g、N =0.04mmol/gであり、ゲート吸着圧はP =81.8kPaである。このとき、塔Gの出口流量にはy =81.8/500=0.164のCOが含まれている。つまり、F=100mol/s(CO50mol/s、CH50mol/s)、t=100sとする場合、塔径1.33m、塔高2.67m、必要なELM-11の量wは2410kgとなるが、出口より49.0mol/sのCHとともに9.6mol/sのCOが漏れ出ることになる。一方、P=500kPa、y =0.164、y =0.836の流入ガス(298K)に対するHKUST-1の実効吸着量は、N =0.97mmol/g、N =1.23mmol/gである。すなわち、w=986kgのHKUST-1を充填した塔(塔径1.04m、塔高2.08m)を後続させることで、COの完全除去が可能であり、この場合のCH流出量Fは36.9mol/sとなる。また、脱着工程において、各吸着塔ではそれぞれ、n =0.0mmol/g、n =0.25mmol/gのCOが残存している。これらをパージするのに同mol量のCHが必要であると仮定するならば(α=1)、最終的なCH製品流量F は34.4mol/sとなる。
実施例4
ゲート型吸着材にELM-11、I型吸着材としてZeolite-13Xを用いた、実施例1と同様の分離プロセスを考える。上述のように、500kPaのCO:CH=1:1混合ガスに対するELM-11の実効吸着量はN =3.13mmol/g、N =0.08mmol/gであり、ゲート吸着圧はP =20.8kPaである。従って、塔Gの出口流量にはy =20.8/500=0.042のCOが含まれ、F=100mol/s(CO50mol/s、CH50mol/s)、t=100sとする場合、出口より48.8mol/sのCHとともに2.1mol/sのCOが漏れ出ることになる。なお、この時に必要なELM-11の量wは、1528kgであり、塔径は1.15m、塔高は2.29mとなる。一方、P=500kPa、y =0.042、y =0.958の流入ガス(263K)に対するZeolite-13Xの熱収支を考慮した実効吸着量は、N =2.17mmol/g、N =0.55mmol/gである。すなわち、w=98kgのZeolite-13Xを後続させることでCOを除去することが可能であり、この時のCH流出量Fは48.3mol/sである。また、脱着工程において、各吸着塔ではそれぞれ、n =0.0mmol/g、n =1.84mmol/gのCOが残存している。これらをパージするのに同mol量のCHが必要であると仮定するならば(α=1)、最終的なCH製品流量F は、46.5mol/sとなる。
実施例5
提案ガス分離プロセスは、流れ1における成分Aの分圧P が塔Gにおける成分Aのゲート吸着圧P よりも高い条件下であれば、全ての0-1型のゲート型吸着材とI型吸着材の組み合わせ、及び任意のガス種を任意の比で混成したガスについて成立すべきものであり、実施例1及び2における諸条件に限定するものではない。例えば、1000kPaのCO:N=20:80混合ガスを吸着させ(P=1000kPa、A=CO、B=N、y =0.2、y =0.8)、200kPaにおいて少量の純COでリンスした後、5kPaにて脱着、5kPaの純Nにてパージを行うようなプロセスに対し、仮想的なゲート型吸着材x(N =3.0mmol/g、N =0.5mmol/g、n =0.0mmol/g)、及び仮想的なI型吸着材y(N =2.0mmol/g、N =1.5mmol/g、n =0.5mmol/g)を組み合わせることを考える。吸着時間を100s、流入ガス量を100mol/sとするとき、式(5)及び式(7)によって、各吸着材の必要量はw=531kg、w=204kgとなり、これらの材料がELM-11と同程度の真密度を有するとする場合、塔Gは塔径0.81m、塔高1.61m、塔Iは塔径0.59m、塔高1.17mとなる。そして、N流量F は式(10)によって73.3mol/sと求めることができる。
実施例6(三方式バルブを用いた実施例1の最適化)
実施例1及び2では、塔Gから漏れ出るCOは比較的少量であるため、吸着工程にて、塔Iで除去されるCO量は210molと僅かである。一方、純COによるリンス工程、及び脱着工程を経て、塔Iに残存するCO量が254molであることを考えると、塔Iに対してリンス工程及び脱着工程を実施することは非効率である。また、n =0.0mmol/gであることから、塔Gに対するパージ工程は本質的に不要であり、リンス工程を省略することができる。すなわち、図6のように塔Gと塔Iの間に三方式バルブ(中間バルブ)による中間出口を設け、実施例1における分離プロセスをさらに効率化することが可能となる。中間バルブを設けて、各吸着塔に対して独立な操作を実施することを可能とするならば、さらに、この場合、塔Gでの脱着工程における圧力(5kPa)を、ELM-11の263Kにおけるゲート脱着圧である15kPaとすることが可能となり、真空ポンプの動力コストを削減することが可能となる。
比較例1(実施例1とHKUST-1のみとの比較)
実施例1と全く同条件の分離工程を、HKUST-1のみを充填した従来プロセスを用いて行うことを考える。P=500kPa、y =0.5、y =0.5の流入ガス(263K)に対するHKUST-1の熱収支を考慮した実効吸着量は、N =2.57mmol/g、N =0.63mmol/gであり、F=100mol/s(CO50mol/s、CH50mol/s)、t=100sとする場合、塔径1.30m、塔高2.60m、HKUST-1の必要量はw=1945kg、CH流出量Fは37.7mol/sとなる。ただし、脱着工程においてn =0.60mmol/gのCOが残存してしまうため、最終的なCH製品流量F は26.1mol/sとなる。一方、実施例1におけるCH製品流量F は1.4倍の36.9mol/sであって、提案ガス分離プロセスの方が高効率となることは明らかである。
比較例2(実施例4とZeolite-13Xのみとの比較)
実施例4と全く同条件の分離工程を、Zeolite-13Xのみを充填した従来プロセスを用いて行うことを考える。P=500kPa、y =0.5、y =0.5の流入ガス(263K)に対するHKUST-1の熱収支を考慮した実効吸着量はN =3.53mmol/g、N =0.10mmol/gであり、F=100mol/s(CO50mol/s、CH50mol/s)、t=100sとする場合において、塔径1.17m、塔高は2.34m、必要となるZeolite-13Xはw=1416kg、CH流出量Fは48.5mol/sとなる。ただし、脱着工程においてn =1.84mmol/gのCOが残存してしまうため、最終的なCH製品流量F は22.4mol/sとなる。これに対して、実施例1におけるCH製品流量F は2.1倍であり、提案ガス分離プロセスの方が高効率なものとなる。これは、Zeolite-13XとCOの相互作用が強すぎるために、脱着工程において残存してしまうCO量が多く、パージ工程により多くのCHを必要とするためである。
比較例3(実施例1とELM-11のみとの比較)
実施例1と全く同条件の分離工程を、ELM-11のみを充填した従来ガス分離プロセスを用いて行うことを考える。この場合、実施例1における流れ2が製品となるため、低純度95.8mol%(89.4wt%)の製品メタン(50.9mol/s)しか得ることができない。一方、提案ガス分離プロセスでは、純度100%の製品メタンを得ることが可能となる。
比較例4(ELM-11とHKUST-1の単純混合の場合)
ゲート型吸着材とI型吸着材を単純に混合した場合、実質的な吸着等温線形状は図1cのようになり、この混合物を一つの吸着塔内に充填した場合の破過曲線は図1gのようになるはずである。従って、ゲート型吸着材とI型吸着材の単純混合材では、分率y の成分Aの漏れ出しに要する時間を遅延させることが可能であるのみであって、ガス分離効率は、実質的に比較例3と同等なものとなる。
1 ガス分離装置
2 ゲート型PCP吸着材を有する前段部分
3 I型吸着材を有する後段部分
4 第1バルブ
5 第2バルブ
6 中間バルブ
11 ガス分離装置
12 第1吸着塔
13 第2吸着塔
14 第1バルブ
15 第2バルブ
16 中間バルブ

Claims (7)

  1. ゲート型PCP吸着材とI型吸着材とを直列に配置し、前記ゲート型PCP吸着材のガス導入側に第1バルブを有し、前記I型吸着材のガス排出側に第2バルブを有し、前記第1バルブから被吸着ガスを含む混合ガスが導入されるガス分離装置。
  2. 前記ゲート型PCP吸着材側と、前記I型吸着材側との間に中間バルブを有する請求項1に記載のガス分離装置。
  3. 前記ゲート型PCP吸着材を含む第1吸着塔、前記I型吸着材を含む第2吸着塔を少なくとも有し、前記第1吸着塔の後に前記第2吸着塔が配置されている請求項1に記載のガス分離装置。
  4. 前記第1吸着塔と前記第2吸着塔の間に中間バルブを有する請求項3に記載のガス分離装置。
  5. 前記ゲート型PCP吸着材が、混合ガスに含まれる少なくとも1種の被吸着ガスに対してゲート型の吸着挙動を示す、一次元鎖構造を有するゲート型多孔性高分子金属錯体、二次元ネットワークの積層型のゲート型多孔性高分子金属錯体、および三次元ネットワークのゲート型多孔性高分子金属錯体から成る群より選ばれ、前記I型吸着材が、前記少なくとも1種の被吸着ガスに対してI型吸着挙動を示す、ゼオライト、活性炭、およびI型吸着挙動を示すPCPから成る群より選ばれる請求項1~4のいずれか一項に記載のガス分離装置。
  6. 前記ゲート型PCP吸着材が、ELMと総称される複層積層型のネットワーク構造を有する多孔性高分子金属錯体、カゴメ型多孔性高分子金属錯体、DUTと総称される多孔性高分子金属錯体、およびMILと総称される多孔性高分子金属錯体から成る群より選ばれ、前記I型吸着材が、ゼオライト、活性炭、およびI型吸着挙動を示すPCPから成る群より選ばれる請求項5に記載のガス分離装置。
  7. 前記ゲート型PCP吸着材が、ELMと総称される複層積層型のネットワーク構造を有する多孔性高分子金属錯体であり、前記I型吸着材が、ゼオライト、活性炭、およびI型吸着挙動を示すPCPから成る群より選ばれる請求項6に記載のガス分離装置。
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