JP7173416B1 - 溶接継手、溶接継手の設計方法、溶接継手の製造方法及び船体構造 - Google Patents

溶接継手、溶接継手の設計方法、溶接継手の製造方法及び船体構造 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼板同士の溶接継手において溶接熱影響部でのひずみ集中による破断を抑制すること。【解決手段】鋼板を使用して形成された突合せ溶接継手であって、前記鋼板は、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、かつ、前記統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有し、前記突合せ溶接継手の板厚をt(mm)、溶接熱影響部の幅をLh(mm)、前記溶接熱影響部の硬さをHh、母材部の硬さをHb、及び、溶接金属部の硬さをHwとしたときに、Hh/Hbが0.97未満の場合には、下記式(1)~(4)を満足し、Hh/Hbが0.97以上の場合には、下記式(3)~(4)を満足する。Lh≦(0.034t+0.510)/(1-Hh/Hb)0.9・・・(1)Hh/Hb≧0.70 ・・・(2)Hw/Hb≧1.0 ・・・(3)6≦t≦40 ・・・(4)【選択図】図3

Description

本発明は、溶接継手、溶接継手の設計方法及び溶接継手の製造方法と、当該溶接継手を備えた船体構造に関する。
近年、船舶の衝突、座礁等の海難事故による海洋汚染が社会問題となっている。例えば、鉱石運搬船や石炭運搬船等のバルクキャリアのように、積荷が海洋を過度に汚染するものではない船舶であっても、燃料油の流出によって海洋を汚染する場合がある。また、タンカー等の船舶から積荷である油が流出すれば、海洋汚染はより顕著になる。このため、衝突、座礁等による船殻の破口を抑制する必要がある。
そこで、特許文献1には、耐衝突性に優れた船体構造が提案されている。ここでいう耐衝突性とは、例えば所定の速度で他船の衝突を受けても船殻の破口を抑制できる性質をいう。この船体構造は、船側部の外板若しくは内板の一部の部位又は外板若しくは内板の全ての部位に、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.8 2014)に準拠した規格を満たし、IACSの統一規格で規定された全伸びの値の1.4倍以上の全伸びが仕様として課せられ、且つ、上記仕様を満たしたことが確認された、強度区分32、36又は40の高延性鋼板を使用した船殻構造を有している。かかる場合、船体構造に上記高延性鋼板を使用することで、外板や内板等の船殻に破口が生じるのを抑制することができる。
また、特許文献2には、溶接金属部での破断を抑制した溶接継手が提案されている。特許文献2には、V形等の形状を有する開先の完全溶け込み溶接において、開先角度、溶接金属の引張強さ、母材の引張強さ等をパラメータとする関係式が示され、提案された溶接継手は当該関係式を満たす。かかる場合、溶接金属材料の強度が母材の強度を下回る場合であっても、母材に比較して靭性が低い溶接金属部に変形が集中するのを避けることで、粘り強い溶接継手を実現することができる。
特許第5893231号公報 特許第6319027号公報
ところで、溶接継手における溶接金属材料の強度が母材の強度を下回る、いわゆるアンダーマッチングの場合や、溶接熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)が軟化している場合に、溶接継手に引張応力が作用すると、軟質部に塑性ひずみが集中する。このため、溶接継手の部材の伸びが小さい時点で、当該溶接継手が破断することが想定される。
特に、熱加工制御(TMCP:Thermo Mechanical Control Process)による鋼板の組織制御により、当該鋼板の強度・伸び特性を向上させている場合、HAZは、溶接熱によってオーステナイト化温度よりも高温となる。これにより、母材の組織がHAZに残存せず、母材に比べ強度が低下することがある。そうすると、HAZは軟化しやすく、溶接継手では鋼板の強度・伸び特性が十分に生かされない可能性がある。
本発明者らが鋭意検討したところ、後述するように溶接継手においてHAZが破断しないための条件として、HAZの軟化率とHAZの幅が影響することを見出した。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、鋼板同士の溶接継手において溶接熱影響部でのひずみ集中による破断を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、鋼板を使用して形成された突合せ溶接継手であって、前記鋼板は、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、かつ、前記統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有し、前記突合せ溶接継手の板厚をt(mm)、溶接熱影響部の幅をLh(mm)、前記溶接熱影響部の硬さをHh、母材部の硬さをHb、及び、溶接金属部の硬さをHwとしたときに、Hh/Hbが0.97未満の場合には、下記式(1)~(4)を満足し、Hh/Hbが0.97以上の場合には、下記式(3)~(4)を満足する溶接継手が提供される。
前記溶接継手において、前記鋼板は、前記統一規格で規定された強度区分32、36又は40であってもよい。
標点間距離が200mm、幅が40mmの平形継手試験片を用いた引張試験での全伸びの値が、前記統一規格で規定された母材部の全伸びの値の1.4倍以上であってもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、鋼板を使用して形成される突合せ溶接継手の設計方法であって、前記鋼板として、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、かつ、前記統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する鋼板を選定する鋼板選定ステップと、前記突合せ溶接継手の板厚をt(mm)、溶接熱影響部の幅をLh(mm)、前記溶接熱影響部の硬さをHh、母材部の硬さをHb、及び、溶接金属部の硬さをHwとしたときに、Hh/Hbが0.97未満の場合には、下記式(1)~(4)を満足し、Hh/Hbが0.97以上の場合には、下記式(3)~(4)を満足するように、突合せ溶接の溶接条件を設定する溶接条件設定ステップと、を有する溶接継手の設計方法が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、鋼板を使用して形成される突合せ溶接継手の製造方法であって、前記鋼板として、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、かつ、前記統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する鋼板を選定する鋼板選定ステップと、前記突合せ溶接継手の板厚をt(mm)、溶接熱影響部の幅をLh(mm)、前記溶接熱影響部の硬さをHh、母材部の硬さをHb、及び、溶接金属部の硬さをHwとしたときに、Hh/Hbが0.97未満の場合には、下記式(1)~(4)を満足し、Hh/Hbが0.97以上の場合には、下記式(3)~(4)を満足するように、突合せ溶接の溶接条件を設定する溶接条件設定ステップと、前記鋼板選定ステップにおいて選定された前記鋼板を、前記溶接条件設定ステップにおいて設定された前記溶接条件のもとで溶接する溶接ステップと、を有する溶接継手の製造方法が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、船側部若しくは船底部の外板の突合せ溶接継手の一部の部位若しくは当該突合せ溶接継手の全ての部位、又は、船側部若しくは船底部の内板の突合せ溶接継手の一部の部位若しくは当該突合せ溶接継手の全ての部位が、前記溶接継手である船体構造が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、船側部又は船底部の外板又は内板の突合せ溶接継手の中で、破口を抑制する必要がある部位が、前記溶接継手である船体構造が提供される。

Lh≦(0.034t+0.510)/(1-Hh/Hb)0.9 ・・・(1)
Hh/Hb≧0.70 ・・・(2)
Hw/Hb≧1.0 ・・・(3)
6≦t≦40 ・・・(4)
以上説明したように本発明によれば、延性に優れた溶接継手を提供することができ、鋼板同士の溶接継手において溶接熱影響部でのひずみ集中による破断を抑制することができる。また、船側部若しくは船底部の外板の突合せ溶接継手の一部の部位若しくは当該突合せ溶接継手の全ての部位に、当該溶接継手を使用することにより、例えば船舶の衝突や座礁による溶接継手の破断が抑制される。その結果、産業上の貢献が極めて顕著となる。
船体構造の部材を説明するための図である。 図1における船体構造の船側部及び船底部を拡大した図である。 FEM解析に用いた継手引張試験片を示す図である。 FEM解析で用いたモデルの例を示す図である。 推定式で導出した限界HAZ幅と、FEM解析で求めた限界HAZ幅とを比較したグラフである。 継手引張試験後の継手引張試験片の状態を示す図である。 高延性鋼板のEGW継手の断面硬さ分布を示す図である。 従来鋼のEGW継手の断面硬さ分布を示す図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<船体構造>
先ず、船体構造(船殻構造)の一例として、油槽の二重船殻構造について説明する。図1及び図2に示すように、二重船殻構造の船側部10を構成する主要な部材は、外板11と内板12、外板11と内板12にそれぞれ付随する防撓材13、14、トランス15、及び、ストリンガー16である。また、船底部20を構成する主要な部材は、外板21と内板22、外板21と内板22にそれぞれ付随する防撓材23、24、トランス25、及び、ストリンガー26である。更に、二重船殻構造は、アッパーデッキ30及びビルジ31を有している。
<鋼板>
本実施形態の船体構造において、上記外板や内板等の主要な部材には、例えば上記特許文献1に開示されたように、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、IACSの統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する高延性鋼板が用いられる。かかる場合、船舶の耐衝突性を飛躍的に向上でき、外板や内板等の船殻に破口が生じるのを抑制することができる。なお、上記のIACSの統一規格で規定された全伸びの値に対する全伸びの倍率は、高ければ高いほど良く、その上限値は特に規定するものではないが、実質的には2.20倍程度が上限となる。
具体的には、特許文献1に記載されている通り、大型船舶である大型原油タンカー(VLCC:Very Large Crude oil Carrier)の衝突事故を想定した場合において、船体構造の船側部の外板や内板等に様々な全伸びを有する鋼板を適用して有限要素法(Finite Element Method:FEM)による解析を行ったところ、IACSの統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する高延性鋼板を用いた場合に、従来鋼を用いた場合に比べて、エネルギー吸収量を向上させることができ、外板や内板等の船殻に破口が生じるのを抑制することができた。また、船底部の外板や内板等に上記高延性鋼板を用いた場合においても、同様に、エネルギー吸収量を向上させることができ、外板や内板等の船殻に破口が生じるのを抑制することができる。
なお、統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)で規定された全伸びの値は、表1の通りである。表1は、板厚とGradeに応じて、使用する船体材料が満足するべき最小の伸び値を規定している。統一規格では、Gradeにおけるアルファベット(A、B、D、E及びF)は、シャルピー衝撃試験で要求される試験温度の違いを示し、数字(32、36、及び40)は、強度の区分を示している。高延性鋼板は、これらの表1で示す全伸びの規格値を上回る伸びを有しており、統一規格を満足している。上記のような強度の区分を有する高延性鋼板を用いることで、以下で説明するような本発明の効果が特に顕著となる。
Figure 0007173416000002
以上のように、本実施形態の船体構造には、高延性鋼板が用いられる。以下の説明において「高延性鋼板」という場合は、このようにIACSの統一規格に準拠した規格を満たし、且つ、IACSの統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する鋼板を指すものとする。
なお、高延性鋼板は、上記の要件を満足する限り、鋼板の組成及び製造条件は限定されない。例えば、上記高延性鋼板として、組成が、質量%で、C:0.02~0.18%、Si:0.01~0.50%、Mn:0.9~1.6%、Al:0.001~0.100%、N:0.02%以下、P:0.02%以下、及びS:0.01%以下を含有し、残部が、Fe及び不純物からなる鋼板を用いることができる。
また、高延性鋼板には、母材部の強度の向上、溶接継手の靭性の向上等、要求される特性に応じて、上記組成を変更した鋼板を用いてもよい。例えば、上記組成において、Feの一部に換えて、Ni:0.8%以下、Cr:0.2%以下、Mo:0.08%以下、Cu:0.35%以下、W:1.0%以下、Co:1.0%以下、V:0.1%以下、Nb:0.05%以下、Ti:0.02%以下、Zr:0.05%以下、Ta:0.05%以下、Hf:0.005%以下、REM(希土類元素):0.005%以下、Y:0.005%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、Te:0.01%以下、Se:0.005%以下、B:0.005%以下、及び、Sn:0.3%以下の1種又は2種以上を含有させてもよい。
また、上記のような強度の区分の高延性鋼板以外にも、例えば、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、IACSの統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する軟鋼を用いることも可能である。
<溶接継手>
次に、本実施形態の船体構造において、高延性鋼板を使用して形成される突合せ溶接継手(以下、単に「溶接継手」という。)について説明する。溶接継手の溶接方法としては、例えば、被覆アーク溶接(SMAW)、炭酸ガス(CO)アーク溶接、エレクトロガスアーク溶接(EGW)、サブマージアーク溶接(SAW)等の溶接方法を用いることができる。
上述したように本実施形態では、船体構造に高延性鋼板を用いることで、外板や内板等の船殻に破口が生じるのを抑制することができる。一方、従来の技術では、溶接継手において、破断を抑制する効果が得られるか否かは明らかではなかった。例えば船舶の衝突、座礁等が生じた場合、溶接継手の溶接線に沿って破断する懸念がある。
本発明者らは、上記懸念を払拭するために、鋭意検討を行った結果、溶接継手において、HAZの硬さと母材部の硬さとの相違に起因して、破断が生じる部位が変化する可能性に想到した。
そこで、本発明者らは、上記検討から想到した知見について更なる検証を行うべく、有限要素法(FEM)により継手引張試験のシミュレーションを実施した。その結果、以下に述べる通り、HAZが破断しないための溶接継手の条件(具体的には、HAZの軟化率(以下、「HAZ軟化率」という。)とHAZの幅(以下、「HAZ幅」という。)の条件)を見出すに至った。
図3は、FEM解析に用いた継手引張試験片(平形継手試験片)を示す図である。図3(a)は側面図を示し、図3(b)は平面図を示す。継手引張試験片の外形は、JIS1A号引張試験片に準拠している。継手引張試験片の長手方向中心部に溶接金属部WMと溶接熱影響部HAZとが位置するように、継手引張試験片をモデル化した。すなわち、モデル化した継手引張試験片において、溶接金属部WMは中心に位置し、溶接熱影響部HAZは溶接金属部WMの外側に位置し、母材部BMは溶接熱影響部HAZの更に外側に位置する。
かかるモデルにおいて、継手引張試験片の長さは580mmであり、平行部の長さは220mmであり、標点間距離GLは200mmである。継手引張試験片の掴み部の幅は60mmであり、平行部の幅は40mmである。母材部BMにおいて、幅が60mmと40mmで変化する場所の曲率半径Rは25mmである。なお、平行部の幅は40mmに限定されず、例えば25mmとしてもよい。
また、継手引張試験片の板厚tは、6mm、12mm、24mm、36mmの4ケースとした。溶接金属部WMの幅は20mmで固定し、溶接熱影響部HAZの幅Lhを1~15mmの範囲において1mmピッチで変化させた。このHAZ幅Lhの1~15mmの範囲は、通常の溶接条件での溶接熱影響部HAZで想定される範囲である。母材部BMに対する溶接熱影響部HAZの軟化率は、5%、10%、20%、30%の4ケースとした。
図4に、FEM解析で用いたモデル(継手引張試験片の右半分)の例を示した。図4には、継手引張試験片の板厚tが12mmであり、溶接熱影響部HAZの幅Lhが5mmの場合のモデルの例を示している。
FEM解析において、材料の真応力―真ひずみ関係を、下記式(6)のSwift則により近似した。ここで、以下の式(6)において、σ:真応力、ε:真ひずみ、σ、α、n:材料特性、である。また、FEM解析に用いたSwift則のパラメータは、本発明者らが過去に実施した各種実験で取得されたデータに基づいて、表2の通りに設定した。

σ=σ(1+ε/α) ・・・(6)
Figure 0007173416000003
以上の継手引張試験片の板厚t(4ケース)と溶接熱影響部HAZの軟化率(4ケース)の条件において、溶接熱影響部HAZの幅Lhを1~15mmの範囲で1mmピッチで変化させてFEM解析を行い、溶接熱影響部HAZで破断しない限界のHAZの幅(以下、「限界HAZ幅」という。)を求めた。その結果を、表3に示す。
Figure 0007173416000004
表3に示すように、継手引張試験片の板厚tが小さく、且つ、溶接熱影響部HAZの軟化率が大きい場合、限界HAZ幅は小さくなる傾向があり、小さいHAZ幅Lhで溶接熱影響部HAZが破断しやすいことがわかる。一方、継手引張試験片の板厚tが大きく、且つ、溶接熱影響部HAZの軟化率が小さい場合、限界HAZ幅は大きくなる傾向があり、大きいHAZ幅Lhでも溶接熱影響部HAZが破断しにくいことがわかる。
次に、本発明者らは、表3に示すFEM解析結果に基づいて、限界HAZ幅の推定式を導出した。限界HAZ幅は、HAZ軟化率が0%に近づく(すなわち、Hh/Hbが1に近づく)と、無限大になることが想定される。かかる想定に基づき、下記式(7)に示す限界HAZ幅LhLIMの推定式を定義した。

LhLIM=a/(1-Hh/Hb) ・・・(7)
表3のFEM解析結果を用いて、継手引張試験片の板厚t毎に、最小二乗法により係数a、bを導出した。その結果、aは板厚tに依存して変化し、bは板厚tに依存しないと見做せることが分かり、下記式(8)及び(9)が導出された。

a=0.034t+0.510 ・・・(8)
b=0.9 ・・・(9)
以上より、上記式(7)~(9)に基づいて、下記式(10)に示す限界HAZ幅の推定式が導出された。ここで、以下の式(10)において、LhLIM:限界HAZ幅(mm)、t:継手引張試験片(溶接継手)の板厚(mm)、Hh:HAZの硬さ、Hb:母材部の硬さ、である。

LhLIM=(0.034t+0.510)/(1-Hh/Hb)0.9・・・(10)
そして、下記式(11)に示す通り、HAZ幅Lhが限界HAZ幅LhLIM以下であれば、HAZで破断しない。そうすると、式(10)及び(11)より、本発明において溶接継手が満足すべき条件である下記式(12)が導出される。また、上記のように、HAZ軟化率は0%超の値であるため、下記式(13)のように、Hh/Hbは1.00未満の値となる。

Lh≦LhLIM ・・・(11)
Lh≦(0.034t+0.510)/(1-Hh/Hb)0.9 ・・・(12)
Hh/Hb<1.00・・・(13)
なお、溶接継手は、下記式(14)~(16)に示す条件を満足するものとする。上述した通り、FEM解析ではHAZ軟化率を5%、10%、20%、30%の4ケースとしている。また、式(12)によると、板厚が6mmである場合、Hh/Hbが0.97以上で限界HAZ軟化幅LhLIMが15mmを超えるため、下記式(14)が導出される。また、溶接金属部の硬さが母材部の硬さ以上であって、通常の溶接継手で想定される、いわゆるオーバーマッチングであるため、下記式(15)が導出される。更に、上述した通り、FEM解析では継手引張試験片の板厚tを6mm、12mm、24mm、36mmの4ケースとしているが、後述するように、本発明者らは板厚tが40mmであっても上記式(10)を満たすことを確認している。かかる結果から、下記式(16)が導出される。

0.97>Hh/Hb≧0.70 ・・・(14)
Hw/Hb≧1.0 ・・・(15)
6≦t≦40 ・・・(16)
以上をまとめると、本発明において溶接継手が満足すべき条件は、Hh/Hbの値に応じて場合分けすることができ、Hh/Hbが0.97未満の場合は、下記式(1)~(4)を満足することであり、Hh/Hbが0.97以上の場合は、下記式(3)~(4)を満足することとなる。換言すれば、Hh/Hbの値に応じて、溶接継手が上記のような条件を満足すれば、HAZ(軟質部)でのひずみ集中による引張破断を抑制することができ、延性に優れた溶接継手を提供することができる。ここで、下記式(1)~(4)において、Hh:HAZの硬さ、Hb:母材部の硬さ、t:溶接継手の板厚(mm)、Lh:HAZ幅(mm)、Hw:溶接金属部の硬さ、である。

Lh≦(0.034t+0.510)/(1-Hh/Hb)0.9 ・・・(1)
Hh/Hb≧0.70 ・・・(2)
Hw/Hb≧1.0 ・・・(3)
6≦t≦40 ・・・(4)
なお、本実施形態において、母材及び溶接継手の断面の板厚の1/4位置と板厚の3/4位置のビッカーズ硬さ分布を、JIS Z2244:2009に即して、1mmピッチで測定する。この際、熱影響を受けていない母材部の試験片と溶接継手の試験片をそれぞれ用意する。溶接部の硬さ測定では、溶接継手における溶接線の延伸方向に対して直交する方向に、溶接線が中央に位置するように、サンプルを採取して、測定断面とする。また、ビッカーズ硬さ分布の測定では、荷重は10kgとする。かかる測定により得られた結果を用いて算出される母材部の硬さの平均値をHbとし、HAZの硬さの最小値をHhとし、溶接金属部の硬さの最小値をHwとする。また、上記のようにして得られる硬さの測定結果から、板厚の1/4位置と板厚の3/4位置のHAZ軟化部の幅を求め、それらの平均値をLhとする。
なお、母材部の硬さの平均値Hb、HAZの硬さの最小値Hh、溶接金属部の硬さの最小値Hw、及び、HAZ幅Lhについて、定義と、より具体的な測定方法は、以下の通りである。
すなわち、母材部については、板厚の1/4位置と板厚の3/4位置において、1mmピッチで10点ずつ、合計20点測定し、得られた20個の測定値の平均値を、母材部の硬さHbとする。溶接継手の測定では、溶接継手の断面を研磨後にナイタール腐食することで、溶接金属とHAZを現出させる。その後、板厚の1/4位置と板厚の3/4位置において、溶接金属とHAZの境界線(溶融線)を起点として、母材側に1mmピッチで母材部に到達するまで硬さ分布を測定し、測定結果の最小値をHAZの硬さHhとする。硬さの測定結果が、母材部の硬さHbの97%以下である領域をHAZ軟化域と定義し、板厚の1/4位置と板厚の3/4位置において、溶融線からHAZ軟化域の母材側端部までの距離をそれぞれ求め、得られた距離の最大値をHAZ幅Lhとする。また、溶接金属部については、板厚の1/4位置と板厚の3/4位置において、1mmピッチで測定し、得られた測定値の最小値を溶接金属部の硬さHwとする。
また、溶接継手が、Hh/Hbの値に応じて、上記(1)~(4)の条件を適切に満足することで、標点間距離が200mm、幅が40mmの平形継手試験片を作製して、かかる試験片を引張試験に供した場合に、引張試験での全伸びの値は、上記統一規格で規定された母材部の全伸びの値の1.40倍以上となる。上記統一規格で規定された母材部の全伸びの値に対する全伸びの倍率は、高ければ高いほど良く、その上限値は特に規定するものではないが、実質的には2.20倍程度が上限となる。
<検証>
ここで、上述した限界HAZ幅LhLIMの推定式である上記式(10)について、検証する。図5は、式(10)の推定式で導出した限界HAZ幅(図5の横軸)と、FEM解析で求められた限界HAZ幅(図5の縦軸)とを比較したグラフである。図5を参照すると、溶接継手の板厚tが6mm、12mm、24mm、36mmの4ケースにおいて、式(10)を用いた推定結果とFEM解析結果とが良好に一致していることが分かる。なお、溶接継手の板厚tが40mmの場合でも、図5におけるグラフを外挿すれば、式(10)を用いた推定結果とFEM解析結果とが良好に一致する。従って、溶接継手が満足すべき条件である上記式(1)~(4)が適切であることが分かる。
<溶接継手の設計方法>
次に、上記のような溶接継手を製造する際の溶接継手の設計方法について説明する。
本実施形態に係る溶接継手の設計方法は、鋼板を使用して形成される突合せ溶接継手の設計方法である。この設計方法は、溶接継手の素材となる鋼板を選定する鋼板選定ステップと、突合わせ溶接の溶接条件を設定する溶接条件設定ステップと、を有する。
鋼板選定ステップは、溶接継手の素材となる鋼板として、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、かつ、かかる統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する鋼板を選定するステップである。
また、溶接条件設定ステップは、溶接継手の板厚をt(mm)、溶接熱影響部の幅をLh(mm)、溶接熱影響部の硬さをHh、母材部の硬さをHb、及び、溶接金属部の硬さをHwとしたときに、上記式(1)~式(4)を満足するように、突合せ溶接の溶接条件を設定するステップである。
かかる溶接条件設定ステップでは、FEMをはじめとする各種のシミュレーション方法を実施し、上記式(1)~式(4)を満足するような溶接条件を、仮想的に求めてもよい。また、上記鋼板選定ステップで選定した鋼板を利用して、溶接条件を変えながら実際に突合わせ溶接と溶接後の検証とを行って、上記式(1)~式(4)を満足するような溶接条件を実験的に求めてもよい。
上記のような溶接条件設定ステップを経ることで、溶接条件も含め、求める溶接継手を製造するための具体的な設計図面を得ることができる。
<溶接継手の製造方法>
次に、上記のような溶接継手の製造方法について説明する。
本実施形態に係る溶接継手の製造方法では、上記のような溶接継手の設計方法に即して選定された鋼板を、設定した溶接条件に即して突合わせ溶接することで、上記のような溶接継手を製造する。すなわち、本実施形態に係る溶接継手の製造方法は、上記のような鋼板選定ステップ及び溶接条件設定ステップと、選定された鋼板を、設定した溶接条件に即して溶接する溶接ステップと、を有するものであるといえる。
ここで、用いる溶接方法としては、例えば、被覆アーク溶接(SMAW)、炭酸ガス(CO)アーク溶接、エレクトロガスアーク溶接(EGW)、サブマージアーク溶接(SAW)等を挙げることができる。
また、かかる溶接の際に、例えば以下のような条件を採用することにより、上記式(1)~式(4)を満足する溶接継手を、確実に製造することが可能となるため、特に好ましい。
すなわち、溶接入熱量が大きい場合は、HAZが大きくなる傾向があるため注意が必要である。例えば、エレクトロガスアーク溶接(EGW)やサブマージアーク溶接(SAW)において、溶接入熱量が50kJ/cmを超える場合には、特にHAZ軟化し難い鋼板を選定することが重要となる。一方、被覆アーク溶接(SMAW)や炭酸ガス(CO)アーク溶接において、溶接入熱量を20kJ/cm以下とすれば、HAZが小さくなるため、あまり鋼板のHAZ軟化特性に配慮せずとも、上記式(1)~式(4)を満足する溶接継手を製造することが可能となる。
<船体構造への溶接継手の適用>
以上のように上記式(1)~(4)を満足する溶接継手(以下、「上記溶接継手」という。)は、船体構造において、船側部又は船底部の外板の突合せ溶接継手の一部の部位又は当該突合せ溶接継手の全ての部位に使用される。また、上記溶接継手は、船体構造において、船側部又は船底部の内板の突合せ溶接継手の一部の部位又は当該突合せ溶接継手の全ての部位に使用される。
特に、上記溶接継手は、船側部又は船底部の外板又は内板の突合せ溶接継手の中で、破口を抑制する必要がある部位に使用される。ここで、破口を抑制する必要がある部位は、船側部又は船底部のうち船舶が衝突、座礁する際に衝撃を受ける可能性がある部位であって、具体的には船舶の種類に依存する。
例えば、バルクキャリアにおいては、バラストタンクがなく船倉が外板1枚の部位(つまり、内板がない部位)を、破口を抑制する必要がある部位と特定し、当該部位の溶接継手に上記溶接継手を使用してもよい。あるいは、燃料タンクの一部となる外板がある部位を、破口を抑制する必要がある部位と特定し、当該部位の溶接継手に上記溶接継手を使用してもよい。
また、例えばタンカーにおいては、製品油(原油タンカーの場合には、原油)が貯蔵されているタンクがある内板に対向する外板の部位を、破口を抑制する必要がある部位と特定し、当該部位の溶接継手に上記溶接継手を使用してもよい。
また、例えば球形タンク方式のLNG船においては、LNGが貯留されている球形タンクが最も近接する船側外板の部位を、破口を抑制する必要がある部位と特定してもよい。この場合、タンクは球形であるため、当該部位は、平面視及び側面視においてタンク全体をカバーする部分である必要はなく、タンクが最も近接する部分のみでよい。そして、特定された部位の溶接継手に上記溶接継手を使用してもよい。必要に応じて、球形タンクが最も近接する船側外板の周辺の部位も、破口を抑制する必要がある部位と特定してもよい。
以上の方法は、船舶の設計図面から、破口を抑制する必要がある部位を特定する方法である。FEMによる各部材の吸収エネルギー解析を行って、破口を抑制する必要がある部位を特定してもよい。
なお、上記溶接継手は、船体構造において、船側部又は船底部の防撓材、トランス、ストリンガーのいずれかの突合せ溶接継手の一部の部位又は当該突合せ溶接継手の全ての部位に使用してもよい。また、上記溶接継手は、船体構造において、アッパーデッキ、ビルジのいずれかの突合せ溶接継手の一部の部位又は当該突合せ溶接継手の全ての部位に使用されてもよい。
また、上記溶接継手は、大型船舶に加えて小型船舶にも使用可能であるが、特に大型船舶に適用した場合に効果が大きい。さらに、上記溶接継手は、二重船殻構造(ダブルハル)の船舶や一重船殻構造(シングルハル)の船舶のいずれにも使用可能である。なお、一重船殻構造の場合、外板は内板でもあると看做せる(逆に、内板は外板でもあると看做せる。)。
なお、以上の実施形態の船体構造には、IACSの統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する高延性鋼板を用いる。ただし、高延性鋼板の品質管理上、上記高延性鋼板の現実的な製造目標としては、IACSの統一規格で規定された全伸びの値の1.50倍又は1.50倍以上とすることが好ましい。
以下では、実施例及び比較例を示しながら、本実施形態に係る溶接継手について、具体的に説明する。
先ず、本発明者らは、以下の表4に示した高延性鋼板と従来鋼について、継手引張試験を実施し、検証を行った。従来鋼としては、YP36鋼(降伏応力36kgf/mm、1kgfは、約9.8Nである。)を用いた。なお、以下の表4には、降伏応力(YP)、引張強さ(TS)、及び、全伸び(EL)についても、あわせて記載している。また、以下の表4における「倍率」の項目は、IACSの統一規格で規定された全伸びの値に対する倍率を表している。
Figure 0007173416000005
次に、上記表4に示した高延性鋼板同士の溶接継手と従来鋼同士の溶接継手を、EGW、COアーク溶接、又は、SAWにより2個ずつ作製し、それぞれの溶接継手に対し、JIS Z2241:2011に準拠した1A号引張試験(標点間距離が200mm、幅が40mmの平形継手試験片を用いたもの)にて継手引張試験を行った。
この際、各溶接方法における溶接条件は、以下に示す表5の通りとした。
また、以下の表5における試験No.7については、アンダーマッチの溶接材料を用いた。また、以下の表5における試験No.8については、試験No.4よりも大きな入熱量となるようにした。
また、継手引張試験に供する前の溶接継手について、先だって説明した方法により、式(1)~式(4)に記載されている各パラメータの具体的な値を測定したところ、それぞれ、以下のようになった。
上記継手引張試験の結果を、以下の表5に示す。表5には、各鋼材及び各溶接方法の継手引張試験片における引張強さ(TS)と全伸び(EL)の測定結果、及び、破断位置を示している。ここで、以下の表5における「倍率」の項目は、IACSの統一規格で規定された母材部の全伸びの値に対する倍率を表している。更に、図6は、試験No.1とNo.5に関して、試験後の継手引張試験片の状態を示している。
表5及び図6に示すように、本試験で使用した高延性鋼板同士の溶接継手においては、母材部で破断し、延性(伸び)が低下しないことが確認された。一方、従来鋼同士の溶接継手においては、HAZで破断し、延性が大きく低下することが確認された。
Figure 0007173416000006
本発明者らは、上記継手引張試験において、高延性鋼板のEGWの溶接継手(以下、「EGW継手」という。)が母材部で破断したのに対し、従来鋼のEGW継手がHAZで破断した結果について考察を行った。
図7は、高延性鋼板のEGW継手の断面硬さ分布を示し、図8は、従来鋼のEGW継手の断面硬さ分布を示す。図7(b)及び図8(b)において、横軸はEGW継手の中心からの距離を示し、縦軸はビッカーズ硬さ(Hv)を示す。また、図7(b)及び図8(b)に示す溶接継手において、中心からの距離が±10mmの部分が溶接金属部であり、溶接金属部の外側(中心からの距離が±10mm~±20mmの部分)がHAZであり、更に、HAZの外側(中心からの距離が±20mmより外側の部分)が母材部である。また、図7(b)及び図8(b)には2つのグラフが示されている。「t/4」は図7(a)及び図8(a)に示すEGW継手について、表面から板厚tの1/4の深さに対応する位置であり、「3t/4」は図7(a)及び図8(a)に示すEGW継手の表面から板厚tの3/4の深さに対応する位置である。
図7(b)に示すように高延性鋼板の溶接継手では、HAZの硬さと母材部の硬さがほぼ同じである。一方、図8(b)に示すように従来鋼の溶接継手では、HAZの硬さが母材部の硬さに比べて小さく、HAZが広範囲に軟化している。なお、図8(b)では、HAZの幅Lhに対応する範囲をあわせて記載している。
従って、溶接継手では、HAZが広範囲に軟化していると、HAZで破断し、延性(伸び)が大幅に低下することが明らかとなった。換言すれば、高延性鋼板の溶接継手では、大入熱溶接で作製された場合でも、HAZ軟化が生じにくいため、母材部で破断し、延性が低下しない。一方、従来鋼の溶接継手では、大入熱溶接で作製された場合、HAZが広範囲に軟化するため、HAZで破断し、延性が大きく低下する。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、船体構造において優れた耐衝突性が重要である船舶に有用である。
10 船側部
11 外板
12 内板
13 外板に付随する防撓材
14 内板に付随する防撓材
15 トランス
16 ストリンガー
20 船底部
21 外板
22 内板
23 外板に付随する防撓材
24 内板に付随する防撓材
25 トランス
26 ストリンガー
30 アッパーデッキ
31 ビルジ

Claims (7)

  1. 鋼板を使用して形成された突合せ溶接継手であって、
    前記鋼板は、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、かつ、前記統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有し、
    前記突合せ溶接継手の板厚をt(mm)、溶接熱影響部の幅をLh(mm)、前記溶接熱影響部の硬さをHh、母材部の硬さをHb、及び、溶接金属部の硬さをHwとしたときに、
    Hh/Hbが0.97未満の場合には、下記式(1)~(4)を満足し、
    Hh/Hbが0.97以上の場合には、下記式(3)~(4)を満足する、溶接継手。
    Lh≦(0.034t+0.510)/(1-Hh/Hb)0.9 ・・・(1)
    Hh/Hb≧0.70 ・・・(2)
    Hw/Hb≧1.0 ・・・(3)
    6≦t≦40 ・・・(4)
  2. 前記鋼板は、前記統一規格で規定された強度区分32、36又は40である、請求項1に記載の溶接継手。
  3. 標点間距離が200mm、幅が40mmの平形継手試験片を用いた引張試験での全伸びの値が、前記統一規格で規定された母材部の全伸びの値の1.40倍以上である、請求項1又は2に記載の溶接継手。
  4. 鋼板を使用して形成される突合せ溶接継手の設計方法であって、
    前記鋼板として、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、かつ、前記統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する鋼板を選定する鋼板選定ステップと、
    前記突合せ溶接継手の板厚をt(mm)、溶接熱影響部の幅をLh(mm)、前記溶接熱影響部の硬さをHh、母材部の硬さをHb、及び、溶接金属部の硬さをHwとしたときに、Hh/Hbが0.97未満の場合には、下記式(1)~(4)を満足し、Hh/Hbが0.97以上の場合には、下記式(3)~(4)を満足するように、突合せ溶接の溶接条件を設定する溶接条件設定ステップと、
    を有する、溶接継手の設計方法。
    Lh≦(0.034t+0.510)/(1-Hh/Hb)0.9 ・・・(1)
    Hh/Hb≧0.70 ・・・(2)
    Hw/Hb≧1.0 ・・・(3)
    6≦t≦40 ・・・(4)
  5. 鋼板を使用して形成される突合せ溶接継手の製造方法であって、
    前記鋼板として、国際船級協会連合(IACS)の統一規格(Unified Requirement W11 Rev.9 2017)に準拠した規格を満たし、かつ、前記統一規格で規定された全伸びの値の1.40倍以上の全伸びを有する鋼板を選定する鋼板選定ステップと、
    前記突合せ溶接継手の板厚をt(mm)、溶接熱影響部の幅をLh(mm)、前記溶接熱影響部の硬さをHh、母材部の硬さをHb、及び、溶接金属部の硬さをHwとしたときに、Hh/Hbが0.97未満の場合には、下記式(1)~(4)を満足し、Hh/Hbが0.97以上の場合には、下記式(3)~(4)を満足するように、突合せ溶接の溶接条件を設定する溶接条件設定ステップと、
    前記鋼板選定ステップにおいて選定された前記鋼板を、前記溶接条件設定ステップにおいて設定された前記溶接条件のもとで溶接する溶接ステップと、
    を有する、溶接継手の製造方法。
    Lh≦(0.034t+0.510)/(1-Hh/Hb)0.9 ・・・(1)
    Hh/Hb≧0.70 ・・・(2)
    Hw/Hb≧1.0 ・・・(3)
    6≦t≦40 ・・・(4)
  6. 船側部若しくは船底部の外板の突合せ溶接継手の一部の部位若しくは当該突合せ溶接継手の全ての部位、又は、船側部若しくは船底部の内板の突合せ溶接継手の一部の部位若しくは当該突合せ溶接継手の全ての部位が、請求項1~3の何れか一項に記載の溶接継手である、船体構造。
  7. 船側部又は船底部の外板又は内板の突合せ溶接継手の中で、破口を抑制する必要がある部位が、請求項1~3の何れか一項に記載の溶接継手である、船体構造。

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