本実施の形態に係る電子記録債権処理装置100を図1に示す電子記録債権処理システム1に適用した場合を例に説明する。電子記録債権処理システム1は、図1に示すように、電子記録債権処理装置100と、b銀行処理装置200と、c銀行処理装置300と、記録装置400と、を備える。なお、この実施の形態では、理解を容易にするため、図示する電子記録債権処理システム1において、企業Aが電子記録債権を企業Bに払い出し(企業Aと企業Bとの間の商取引において企業Aが企業Bに対し電子記録債権にて支払いを行い)、企業Bが企業Cに当該電子記録債権を譲渡し、企業Cが支払期日前にa銀行に当該電子記録債権を譲渡(割引債権譲渡)することにより、企業Cが資金調達を行うことを前提としている。企業Aは、電子記録債権を払い出すことにより債権者に対して支払いを行う支払企業(債務者)であり、企業Bは、企業Aに対して商品などを納入する納入企業であり、企業Cは、企業Bから電子記録債権を譲受する受取企業である。また、a銀行は企業Aの取引銀行であり、b銀行は企業Bの取引銀行であり、c銀行は企業Cの取引銀行であり、ネットワーク5を介して電子記録債権の管理を行う電子債権記録機関とそれぞれ通信可能となっている。すなわち、a銀行、b銀行、およびc銀行は、それぞれ電子記録債権を用いた商取引を行うためのネットワークに加盟している。また、企業Aの情報(例えば与信残高や決算情報などといった後述する企業情報や与信情報など)についてはa銀行が、企業Bの情報についてはb銀行が、といったように、それぞれの企業の情報はそれぞれの取引銀行にて保有するものとする。上述したように、この実施の形態では、企業Cがa銀行に割引債権譲渡することから、企業Cは、a銀行に対しインターネットなどのネットワークを介して割引債権譲渡の要求が可能となっている。なお、この他にも、例えば、企業Cは、割引債権譲渡の要求を、c銀行からネットワーク5を介してa銀行に要求可能であってもよい。
この実施の形態に係る電子記録債権処理装置100は、図1に示すように、支払企業である企業Aの取引銀行であるa銀行に設置されている一般的なコンピュータである。b銀行処理装置200は、納入企業である企業Bの取引銀行であるb銀行に設置されている一般的なコンピュータである。c銀行処理装置300は、受取企業である企業Cの取引銀行であるc銀行に設置されている一般的なコンピュータである。記録装置400は、電子債権記録機関に設置されている一般的なコンピュータであり、電子記録債権処理装置100、b銀行処理装置200およびc銀行処理装置300とネットワーク5を介して相互に通信可能に接続されている。
図2は、電子記録債権処理装置100の機能ブロック図である。電子記録債権処理装置100は、電子記録債権の払い出しを行う他、支払期日前に譲渡の申し出があった電子記録債権が、債務者の与信枠に基づく割引金額(債務者割引額)にて割引可能か否かを判定し、割引可能であれば債務割引額を適用し、割引不可能であれば、債権者の与信枠に基づく割引金額(債権者割引額)を適用して電子記録債権の買い取り金額を算出する装置である。なお、債務者割引額は、債権者割引額よりも小さい金額である。
電子記録債権処理装置100は、図2に示すように、制御部110と、記憶部120と、入出力部130と、を備え、これらが内部バスを介して接続されている。
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを備える。制御部110は、記憶部120に記憶されたプログラムに従って動作する。制御部110は、記憶部120に記憶されたプログラムにより提供される主要な機能部として、事前申請処理部111と、債権登録処理部112と、買取処理部113と、送金処理部114と、を備える。
事前申請処理部111は、企業Aからの要求に応じて企業Aの審査を行い、審査を通過した場合に、企業Aの企業情報および与信情報を記録部120へ登録する機能を有している。具体的に、事前申請処理部111では、債務者割引額にて割引を行う電子記録債権の払い出しを可能とするか否か、すなわち、債務者割引サービスを利用可能か否か審査する。当該審査は、債務者である企業Aの与信枠や資本金など、任意の各種情報に基づいて行われればよい。なお、事前申請処理部111では、審査に通過し、企業Aの企業情報および与信情報を登録するにあたり、その旨を企業Aに通知する機能も備えている。
債権登録処理部112は、企業Aからの要求に応じて、記録部120に記録されている与信情報を確認し、企業Aが所望する債権額の電子記録債権の払い出しが可能であるか否かを判定する機能を有している。また、債権登録処理部112は、電子記録債権の払い出しが可能である場合、記憶部120に記憶されている与信情報を更新し、払い出す電子記録債権の情報を発生記録情報として電子債権記録機関の記録装置400に登録する機能を有している。換言すると、債権登録処理部112は、債務者からの要求に応じて電子記録債権の払い出しを行う機能を有している。なお、電子記録債権の払い出しが不可能である場合、債権登録処理部112は、企業Aに対しその旨を通知する。
買取処理部113は、支払期日前に電子記録債権を譲渡する割引債権譲渡の要求を企業Cから受け付け、割引債権譲渡の対象である電子記録債権が債務者割引額にて割引可能か否かを判定する機能を有している。また、買取処理部113は、債務者割引額にて割引可能である場合、債務者割引額を適用して電子記録債権の買い取り金額を算出し、債務者割引額にて割引不可能である場合、債権者割引額を適用して電子記録債権の買い取り金額を算出する機能を有している。さらに、買取処理部113は、算出した買い取り金額による買い取りを企業Cが合意したことに基づいて、当該買い取り金額の料金を債権者である企業Cに支払う機能を有している。
送金処理部114は、債権登録処理部112の機能により払い出された電子記録債権の支払期日となったことに基づいて、債務者の口座から債権者の口座に当該電子記録債権の債権額の支払いを行う機能を有している。
記憶部120は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。ROMは制御部110のCPUが実行するプログラム及び、プログラムを実行する上で予め必要なデータを記憶する。RAMは、プログラム実行中に作成されたり変更されたりするデータを記憶する。記憶部120は、制御部110が実行するプログラムが用いる主要な情報として、企業Aを含む様々な企業(a銀行との契約がある企業)の資本金や従業員数などの企業情報の一覧を示す企業情報一覧121、企業Aを含む様々な企業(a銀行との契約がある企業)の払い出した電子記録債権や与信枠の情報(与信情報)の一覧を示す与信情報一覧122、払い出された電子記録債権が債務者割引サービスの対象として債務者割引額にて割引を行う対象であることを示す割引サービス対象一覧123を記憶する。
図3は、企業情報一覧121の一例を示している。企業情報一覧121は、複数の企業についてそれぞれの企業に関する情報(企業情報)を示すものである。具体的に、企業情報一覧121には、少なくとも図示するように、企業を識別する識別情報である企業コード、企業名、資本金、従業員数、および操業年数などの情報が企業毎に含まれている(各企業の企業情報が含まれている)。なお、企業情報一覧121に示される企業情報には、例えば、売上高や営業利益、経常利益などの決算情報が企業毎に含まれていてもよい。企業情報一覧121は、でんさい契約などの所定の契約が企業とa銀行とで締結されることにより企業情報が記憶されることで記憶されればよい。企業情報一覧121は、電子記録債権が払い出される際に参照される。
図4は、与信情報一覧122の一例を示している。与信情報一覧122は、払い出した債権の合計金額と、与信残高とを企業毎に示すもの(企業毎の与信情報)である。具体的に、与信情報一覧122には、少なくとも図示するように、企業コード、債権の合計金額である債権金額、払い出すことが可能な債券金額の残高を示す与信残高などの情報が企業毎に含まれている。債権金額の初期値としては「0」が記憶され、電子記録債権を払い出す度に、債権金額に対応する金額が加算される。また、与信残高は、a銀行が企業に対して審査を行うことで設定した金額が初期値として記憶されており、電子記録債権を払い出す度に、債権金額に対応する金額が減算される。なお、与信情報一覧122に示される与信情報には、例えば、企業の信用度を段階的(例えばA~Eの5段階評価)に評価した信用情報が企業毎に含まれていてもよい。信用度は、例えば、企業情報一覧121に含まれる資本金や操業年数、決算情報などにより予め定められた演算方法により算出されればよい。与信情報一覧122は、でんさい契約などの所定の契約が企業とa銀行とで締結され、a銀行の審査にて対象企業の与信残高が設定されることにより与信情報が記憶されることで記憶される。また、与信情報一覧122は、企業により電子記録債権が払い出されることや、払い出した電子記録債権の支払期日となったことにより更新される。
図5は、割引サービス対象一覧123の一例を示している。割引サービス対象一覧123は、債務者割引サービスの対象となる電子記録債権とその債権金額、および債務者の情報を電子記録債権毎に示すものである。具体的に、割引サービス対象一覧123には、図示するように、債務者割引サービスの対象となる電子記録債権を特定するための債権番号とその債権金額、当該債権を払い出した企業の企業コードおよび支払期日などの情報が含まれている。なお、割引サービス対象一覧123には、例えば、与信情報一覧122の信用度に基づいて定められた割引率が含まれていてもよい。割引率は、与信情報一覧122の信用度が高いほど低い割引率となるように設定されていればよい。割引サービス対象一覧123は、企業により電子記録債権が払い出されることにより記憶される。
図2に戻り、入出力部130は、キーボード、マウス、カメラ、マイク、液晶ディスプレイ、有機EL(Electoro-Luminescence)ディスプレイなどから構成され、データの入出力を行うための装置である。また、入力部130は、インターネットやネットワーク5などの各ネットワークを介して企業や電子債権記録機関、各銀行と通信を行うための通信部としても機能する。
以上が、電子記録債権処理装置100の構成である。続いて図1に示すb銀行処理装置200の構成について説明する。なお、c銀行処理装置300についても同様の構成を有しているため、説明は省略する。
図6は、b銀行処理装置200の機能ブロック図である。b銀行処理装置200は、払い出された電子記録債権を他の企へ譲渡する処理を行う装置である。b銀行処理装置200は、図6に示すように、制御部210と、記憶部220と、入出力部230と、を備え、これらが内部バスを介して接続されている。
制御部210は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを備える。制御部210は、記憶部220に記憶されたプログラムに従って動作する。制御部210は、記憶部220に記憶されたプログラムにより提供される主要な機能部として、債権譲渡処理部211を備える。なお、b銀行処理装置200は、企業Bからの要求に応じて、債務者割引サービスの対象とはならない一般的な電子記録債権の払い出しを行うことが可能であるが、この実施の形態では、説明を省略する。このように一般的な電子記録債権が払い出された場合にも、後述するように、記録装置400に当該電子記録債権に関する情報が記憶される。
債権譲渡処理部211は、企業からの譲渡の要求に応じて電子記録債権の譲渡に関する処理を行う機能を有している。例えば、企業Bが企業Cに電子記録債権の譲渡を行う契約が締結された場合に、企業Bからの要求に応じて、電子債権記録機関の記録装置400に記憶されている当該電子記録債権の情報を更新することで、企業Bから企業Cへの債権の譲渡を行う。また、債権譲渡処理部211は、債権の譲渡が完了した場合に、その旨を譲渡人および譲受人に通知する機能を有している。さらに、債権譲渡処理部211は、譲受人の口座から譲渡人の口座に当該譲渡金額の金銭の支払いを行う機能を有している。
記憶部220は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。ROMは制御部210のCPUが実行するプログラム及び、プログラムを実行する上で予め必要なデータを記憶する。RAMは、プログラム実行中に作成されたり変更されたりするデータを記憶する。記憶部220は、制御部210が実行するプログラムが用いる主要な情報として、企業Bを含む様々な企業(b銀行との契約がある企業)の資本金や従業員数などの企業情報を示す企業情報一覧221、企業Bを含む様々な企業(b銀行との契約がある企業)の払い出した電子記録債権や与信枠の情報を示す与信情報一覧222を記憶する。企業情報一覧221および与信情報一覧222は、企業Aではなく企業Bの情報を記憶している点で異なるのみであり、図3および図4に示す企業情報一覧121および与信情報一覧122と同様であるため、説明を省略する。
入出力部230は、キーボード、マウス、カメラ、マイク、液晶ディスプレイ、有機EL(Electoro-Luminescence)ディスプレイなどから構成され、データの入出力を行うための装置である。また、入力部230は、インターネットやネットワーク5などの各ネットワークを介して企業や電子債権記録機関、各銀行と通信を行うための通信部としても機能する。
以上が、b銀行処理装置200(c銀行処理装置300についても、C企業の情報を記憶している点で異なるなどといった相違がある点でその他は同様)の構成である。続いて図1に示す記録装置400の構成について説明する。
図7は、記録装置400の機能ブロック図である。記録装置400は、払い出された電子記録債権に関する様々な情報を記録原簿として保管し、必要に応じて当該内容の開示や更新を行う装置である。すなわち、記録装置400が設置されている電子債権記録機関は、電子記録債権の登記所としての役割を備えている。
記録装置400は、図7に示すように、制御部410と、記憶部420と、入出力部430と、を備え、これらが内部バスを介して接続されている。
制御部410は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを備える。制御部410は、記憶部420に記憶されたプログラムに従って動作する。制御部410は、記憶部420に記憶されたプログラムにより提供される主要な機能部として、債権登録更新部411と、期日通知部412と、を備える。
債権登録更新部411は、電子記録債権が払い出されたことに応じて、記憶部420に記憶されている記録原簿421に、当該払い出された電子記録債権に関する情報を登録する機能や、電子記録債権が譲渡され債権者が変更した場合に、記録原簿における債権者の情報を更新する機能、および、支払期日となり支払いが行われた電子記録債権に関する情報を記録原簿から削除する機能などを備えている。
期日通知部412は、記録原簿421に登録された電子記録債権の支払期日を管理し、支払期日が到来した場合に、当該電子記録債権の債務者およびその取引銀行にその旨を通知する機能を備えている。なお、この実施の形態では、電子債権記録機関における記録装置400にて電子記録債権の支払期日を管理する例を示しているが、電子記録債権の払い出しを許可した金融機関(この例ではa銀行)にて支払期日を管理し、当該金融機関が記録装置400へアクセスして支払先となる債権者を特定し、支払いと行うようにしてもよい。
記憶部420は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。ROMは制御部110のCPUが実行するプログラム及び、プログラムを実行する上で予め必要なデータを記憶する。RAMは、プログラム実行中に作成されたり変更されたりするデータを記憶する。記憶部420は、制御部410が実行するプログラムが用いる主要な情報として、電子記録債権に関する様々な情報が記憶された記録原簿421を記憶する。
図8は、記録原簿421の一例を示している。記録原簿421は、電子記録債権における債務者と債権者、債権金額や支払期日などの情報を、電子記録債権ごとに示すものである。具体的に、記録原簿421には、少なくとも図示するように、電子記録債権を特定するための債権番号、当該電子記録債権の債権金額、当該電子記録債権の払い出し日や譲渡日を示す振出日、債務者とその取引銀行に関する情報(口座番号など)、債権者とその取引銀行に関する情報(口座番号など)、および支払期日などの情報が含まれている。なお、図8に示す記録原簿421の債権番号にて特定される電子記録債権は、図5に示す割引サービス対象一覧123の債権番号にて特定される電子記録債権と、債権番号が同一であれば同一の電子記録債権であることを示している。また、記録原簿421は、電子記録債権ごと、すなわち債権番号ごとに記憶されるものであり、債権番号、債権金額、振出日、債務者とその取引銀行に関する情報、および支払期日、といった情報は固定であることから、譲渡日と債権者の情報を、例えばツリー構造にて記憶するものであってもよい。記録原簿421は、企業Aが企業Bとの間で電子記録債権による取引契約が締結され、企業Aからの要求により電子記録債権処理装置100が電子記録債権を払い出すことにより記憶される。なお、この他にも、債務者割引サービスの対象とはならない一般的な電子記録債権が例えば企業Bなどの企業により払い出された場合にも、当該電子記録債権に関する情報が記録原簿421に記憶される。
図7に戻り、入出力部430は、キーボード、マウス、カメラ、マイク、液晶ディスプレイ、有機EL(Electoro-Luminescence)ディスプレイなどから構成され、データの入出力を行うための装置である。また、入力部430は、ネットワーク5を介して各銀行と通信を行うための通信部としても機能する。
以上が、記録装置400の構成である。続いて、これらの装置で構成される電子記録債権処理システム1の動作について説明する。具体的に、企業Aが電子記録債権を企業Bに払い出し、企業Bが企業Cに当該電子記録債権を譲渡し、企業Cが支払期日前にa銀行に当該電子記録債権を譲渡(割引債権譲渡)することにより、企業Cが資金調達を行う場合を例に、各装置の動作について説明する。
まず、企業Aに対して債務者割引サービスの利用登録を行う処理(事前登録処理)について説明する。図9は、電子記録債権処理装置100にて行われる事前登録処理の一例を示すフローチャートである。事前登録処理は、企業Aから債務者割引サービスを利用したい旨のリクエスト要求をインターネットなどのネットワークを介して受け取ることにより開始される。なお、当該リクエスト要求には、例えば、企業名、資本金、従業員数、操業年数、および売上高や営業利益、経常利益などの決算情報などといった、後述する審査にて必要な情報が含まれている。また、リクエスト要求は、例えば、企業Aの従業員などがa銀行に必要な書類などを直接持ち込むことにより行われてもよい。
事前登録処理を開始すると、電子記録債権処理装置100は、事前申請処理部111の機能により、企業Aが当該債務者割引サービスを利用可能であるか否かを審査する(ステップS11)。ステップS11では、例えば、受け取ったリクエスト要求に含まれる各種情報を、予め定められた審査基準に当てはめるなどにより、債務者割引サービスを利用可能であるか否かを審査する。
ステップS11の処理を実行した後、電子記録債権処理装置100は、事前申請処理部111の機能により、ステップS11における審査の審査結果が合格であるか否かを判定する(ステップS12)。審査結果が合格である場合(ステップS12;Yes)、当該企業Aに固有の企業コード(この例では企業Aの企業コードは「000001」)を割り当て、受け取ったリクエスト要求に含まれる企業名、資本金、従業員数、および操業年数といった情報をそれぞれ対応付け、企業情報一覧121(図3参照)として記憶部120へ記憶する(ステップS13)。また、ステップS13では、予め定められた与信決定基準にしたがって企業Aの与信残高を設定して企業コードに対応付け、債権金額を初期値の「0」とした与信情報一覧122(図4参照)を記憶部120へ記憶する。図4に示す例では、企業Aの与信残高として1000万円が設定された例を示している。
ステップS13の処理を実行した後、またはステップS12にて審査結果が不合格であると判定した場合(ステップS12;No)、電子記録債権処理装置100は、事前申請処理部111の機能により、結果を企業Aにネットワークを介して通知し(ステップS14)、事前登録処理を終了する。ステップS14の処理では、ステップS13の処理を実行した場合には、債務者割引サービスを利用可能となったことを、記憶された企業情報一覧121の内容と与信情報一覧122の内容とともに通知し、審査結果が不合格であった場合には、その旨を通知すればよい。このように、事前登録処理が行われ、債務者割引サービスを利用可能となったことにより、企業Aは、当該サービスを利用した電子記録債権の払い出しを要求することができる状態(債務者割引サービスを利用可能な状態)となる。
事前登録処理が行われ債務者割引サービスを利用可能な状態となった後、企業Aは、当該債務者割引サービスを利用した電子記録債権を用いた商取引を企業Bとの間で締結する。そして、企業Aは当該サービスを利用した電子記録債権の払い出しをa銀行に要求する(ネットワークを介して対象債権払い出し要求を送信する)。なお、当該要求は、企業Aの従業員などがa銀行に必要な書類などを直接持ち込むことにより行われてもよい。電子記録債権処理装置100は、企業Aから当該電子記録債権の払い出し要求を受け取ると、債権登録処理を実行する。なお、対象債権払い出し要求には、払い出しを要求する電子記録債権の債権金額、支払期日、債務者と債権者およびそれぞれの取引先銀行の情報などが含まれている。また、企業Aは、対象債権払い出し要求を行う前に、企業A側において、ステップS14の処理にて通知された与信情報一覧122の内容に基づいて、払い出しを要求する電子記録債権の債権金額が与信残高の範囲内であることを確認しているものとする。企業A側において行われる当該確認は、a銀行の与信情報一覧122にアクセスすることで与信残高を確認することにより行われてもよい。また、この実施の形態では、当該サービスを利用した電子記録債権の払い出しをa銀行に要求する例を示しているが、当該サービスを利用しない電子記録債権の払い出しをa銀行に要求してもよく、この場合についての説明は省略する。
以下では、理解を容易にするため、企業Aが300万円の債権金額の電子記録債権(債務者割引サービスを利用した電子記録債権)の払い出しを要求する場合を例に説明する。なお、企業Aの与信残高は1000万円であることとする。また、この例では、企業Aが債務者割引サービスを利用した電子記録債権の払い出しをa銀行に要求する(ネットワークを介して対象債権払い出し要求を送信する)例を示したが、企業Aは、債務者割引サービスを利用しない通常の電子記録債権を用いた商取引を他企業との間で締結することも、企業Aの選択により可能であり、その場合には、対象払い出し要求ではなく、一般払い出し要求が送信される。この場合、後述するステップS25の処理が実行されないこととなる。
図10は、債権登録処理などの一例を示すフローチャートである。債権登録処理を開始すると、電子記録債権処理装置100は、債権登録処理部112の機能により、与信情報一覧122を参照し、企業Aの与信残高が、払い出しを要求する電子記録債権の債権金額未満であるか否かを判定することで、すなわち電子記録債権の払い出しを許可するか否かを判定する(ステップS21)。払い出しを要求する電子記録債権の債権金額は、上述したように、対象債権払い出し要求に含まれている。この例では、企業Aの与信残高は1000万円であり、払い出しを要求する電子記録債権の債権金額は300万円であることから、電子記録債権の払い出しが許可されることとなる。
企業Aの与信残高が要求する債権金額以上であれば(ステップS21;No)、電子記録債権の払い出しを許可し、当該電子記録債権を記録原簿421に登録するよう要求する債権登録要求を、ネットワーク5を介して電子債権記録機関に送信する(ステップS22)。なお、債権登録要求には、債権金額、払い出し日、支払期日、債務者と債権者およびそれぞれの取引先銀行の情報などが含まれている。
一方、電子債権記録機関の側では、記録装置400が債権登録要求を受信することにより、債権情報登録処理を実行する。債権情報登録処理において、記録装置400は、債権登録更新部411の機能により、要求された電子記録債権に関する情報を記録原簿421に記憶し(ステップS23)、債権情報登録処理を終了する。ステップS23の処理では、電子記録債権を一意に特定するための債権番号を採番し(この例では「0000001」)、債権登録要求に含まれる各種情報とともに記録原簿421に記憶する。なお、例えば、企業Aが企業Bに対して300万円の電子記録債権を払い出す場合、ステップS23の処理において、図8の最上段に示す情報(払い出し日が「2017/11/01」の行の情報)がそれぞれ記憶されることとなる。払い出し日については、債権登録要求を受信した年月日が記憶され、受信した要求が債権登録要求であれば払い出しが、受信した要求が後述する債権譲渡要求であれば譲渡が、年月日と対応付けられてそれぞれ記憶される。ステップS23にて電子記録債権に関する情報が記録原簿421に記憶されると、登録が完了したことを示す登録完了通知が電子記録債権処理装置100に通知される。
電子記録債権処理装置100は、ステップS22の処理を実行した後、債権登録処理部112の機能により、与信情報一覧122の情報を更新する(ステップS24)。なお、ステップS24の処理は、記録装置400から送信された登録完了通知の受信を待たずに行われてもよいし、登録完了通知の受信を待ち、受信したことにより行われてもよい。ステップS24では、与信情報一覧122における債権金額および与信残高を更新する。例えば、企業Aが300万円の電子記録債権を払い出した場合、企業Aの企業コードに対応する「000001」の債権金額に300万円を加算するとともに、与信残高から300万円を減算して700万円とする。
ステップS24の処理を実行した後、電子記録債権処理装置100は、債権登録処理部112の機能により、当該電子記録債権に関する情報を割引サービス対象一覧123へ記憶する(ステップS25)。この例では、ステップS25において、図5の最上段に示す情報(債権番号が「0000001」の行の情報)がそれぞれ記憶される。これにより、債権番号「0000001」の電子記録債権が、債務者割引サービスの対象として登録されることとなる。
ステップS25の処理を実行した後、またはステップS21にて与信残高が債権金額未満であると判定した場合(ステップS21;Yes)、電子記録債権処理装置100は、債権登録処理部112の機能により、企業に通知し(ステップS26)、債権登録処理を終了する。ステップS26では、ステップS25の処理を実行した場合には、ステップS23~ステップS25の処理が正常に行われたことを企業Aおよび企業Bへ通知するとともに、ステップS23~ステップS25におけるそれぞれの登録内容を企業Aに通知する。一方で、ステップS21にてYesと判定された場合には、要求する電子記録債権の払い出しが不可能、すなわち、電子記録債権による取引が不可能であることを企業Aおよび企業Bに通知する。なお、企業への通知は、それぞれの取引銀行を介して行われる。例えば、企業Bへの通知は、企業Bの取引銀行であるb銀行を介して行われる。企業Aへの通知については、電子記録債権処理装置100が企業Aの取引銀行であるa銀行に設けられていることから、直接企業Aに対して行われる。以上により、債務者を企業A、債権者を企業Bとした電子記録債権による商取引が行われたこととなる。
続いて、当該電子記録債権を企業Bが企業Cに譲渡する場合について説明する。まず、企業Bは、企業Aから払い出された債権番号が「0000001」の電子記録債権を企業Cに譲渡する契約を、企業Cとの間で締結する。そして、企業Bは、取引先の銀行であるb銀行に対し、当該電子記録債権を企業Cに譲渡する旨の要求を行う(ネットワークを介して当該電子記録債権の譲渡要求を送信する)。なお、当該譲渡要求は、企業Bの従業員などがb銀行に必要な書類などを直接持ち込むことにより行われてもよい。b銀行処理装置200は、当該譲渡要求を受け取ると、債権譲渡処理を実行する。なお、譲渡要求には、少なくとも、譲渡を要求する電子記録債権の債権番号(この例では「0000001」)、譲渡者と譲受者およびそれぞれの取引先銀行の情報などが含まれている。
図11は、債権譲渡処理などの一例を示すフローチャートである。債権譲渡処理を開始すると、b銀行処理装置200は、債権譲渡処理部211の機能により、企業Bから受け取った譲渡要求の内容を確認し、当該電子記録債権の債権者が企業Bから企業Cへ変更されたことを記録原簿421に登録するよう要求する債権譲渡要求を、ネットワーク5を介して電子債権記録機関に送信する(ステップS31)。なお、債権譲渡要求には、少なくとも、譲渡を要求する電子記録債権の債権番号(この例では「0000001」)、譲渡者と譲受者およびそれぞれの取引先銀行の情報などが含まれている。
一方、電子債権記録機関の側では、記録装置400が債権譲渡要求を受信することにより、債権情報更新処理を実行する。債権情報登録処理において、記録装置400は、債権登録更新部411の機能により、受信した債権譲渡要求に基づく内容を記録原簿421に記憶することで記録原簿421を更新し(ステップS32)、債権情報更新処理を終了する。具体的に、ステップS32の処理では、受信した債権譲渡要求に含まれる債権番号により更新対象となる電子記録債権を特定し、記録原簿421における当該電子記録債権に関する情報を新たに追加して記憶する(新たに追加する)ことで、記録原簿421を更新する。なお、債権金額や債務者、支払期日といった変更のない情報(債権譲渡要求に含まれていない情報)については、先に記憶されている情報をコピーして記憶すればよい。例えば、企業Bが、企業Aから払い出された債権番号0000001の電子記録債権を企業Cに譲渡する場合、ステップS32の処理において、図8の上から2段目に示す情報(譲渡日が「2017/11/10」の行の情報)がそれぞれ記憶されることとなる。図示する譲渡日については、債権譲渡要求を受信した年月日が記憶されればよい。ステップS32にて当該電子記録債権に関する新たな情報が記録原簿421に記憶されると、更新が完了したことを示す更新完了通知が電子記録債権処理装置100に通知される。
b銀行処理装置200は、ステップS31の処理を実行した後、債権譲渡処理部211の機能により、企業に通知し(ステップS33)、債権譲渡処理を終了する。なお、ステップS33の処理は、記録装置400から送信された更新完了通知の受信を待たずに行われてもよいし、更新完了通知の受信を待ち、受信したことにより行われてもよい。ステップS33では、電子記録債権の譲渡処理が完了したことを企業Bおよび企業Cへ通知する。なお、企業への通知は、それぞれの取引銀行を介して行われる。例えば、企業Cへの通知は、企業Cの取引銀行であるc銀行を介して行われる。企業Bへの通知については、b銀行処理装置200が企業Bの取引銀行であるb銀行に設けられていることから、直接企業Bに対して行われる。以上により、債務者を企業A、債権者を企業Cとした電子記録債権の情報が電子債権記録機関における記録原簿421に登録され、債権者が企業Bから企業Cへと変更されたこととなる。
次に、債権者となった企業Cが、支払期日前にa銀行に当該電子記録債権を譲渡(割引債権譲渡)することにより、企業Cが資金調達を行う場合について説明する。企業Cは、債権番号が「0000001」の電子記録債権の割引債権譲渡の要求をa銀行に対して行う(ネットワークを介して割引債権譲渡要求を送信する)。なお、当該割引債権譲渡要求は、企業Cの従業員などがa銀行に必要な書類などを直接持ち込むことにより行われてもよい。電子記録債権処理装置100は、企業Cから送信された当該割引債権譲渡要求を、入出力部130を介して買取処理部113にて受け取り、債権買取処理を実行する。なお、割引債権譲渡要求には、少なくとも割引債権譲渡を要求する電子記録債権の債権番号(この例では「0000001」)が含まれている。割引債権譲渡要求には、債権金額、支払期日、債務者や債権者の情報が含まれていてもよい。
図12は、債権買取処理などの一例を示すフローチャートである。債権買取処理を開始すると、電子記録債権処理装置100は、買取処理部113の機能により、当該割引債権譲渡要求に含まれる債権番号にて特定される電子記録債権が、債務者割引サービスの対象となる電子記録債権であるか否かを判定する(ステップS41)。ステップS41では、割引サービス対象一覧123を参照し、当該割引債権譲渡要求に含まれる債権番号にて特定される電子記録債権が債務者割引サービス対象であるか否かを判定する。具体的には、当該割引債権譲渡要求に含まれる債権番号に対応する情報が、割引サービス対象一覧123に記憶されているか否かを確認することにより、債務者割引サービス対象の電子記録債権であるか否かを判定する。企業Cが債権番号「0000001」の電子記録債権の割引債権譲渡の要求をa銀行に対して行った場合、電子記録債権処理装置100は、図5に示すように、債権番号「0000001」に対応する情報が割引サービス対象一覧123に記憶されていることから、ステップS41の処理において、当該電子記録債権が債務者割引サービス対象であると判定する。
ステップS41にて債務者割引サービスの対象となる電子記録債権であると判定した場合(ステップS41;Yes)、電子記録債権処理装置100は、買取処理部113の機能により、当該電子記録債権の債権金額から債務者割引額を割り引いた(減算した)額で買い取りを行う(ステップS42)。例えば、ステップS42の処理では、債権番号「0000001」の電子記録債権の場合、債権金額は300万円であるため、債務者割引額(20万円とする)を差し引いた280万円にて買い取りを行う。なお、買い取りは、a銀行から企業Cの口座に対して買い取り金額の資金が支払われることにより行われればよい。また、債務者割引額は、予め定められた算出方法により算出されていればよく、例えば、債務者の与信残高および信用度(例えば上述したA~Eの5段階評価)に応じて異なる値となるような算出方法が、与信情報一覧122および企業情報一覧121などを参照して予め設定されていればよい(債権者割引額についても同様)。具体的に、上述したように、割引サービス対象一覧123に割引率が含まれている場合には、当該割引率を適用して債務者割引額を算出すればよい。また、ステップS42の処理が実行されると、債権者が企業Cからa銀行となることから、図11のステップS31の処理のときと同様に、当該電子記録債権の債権者が企業Cからa銀行へ変更されたことを記録原簿421に登録するよう要求する債権譲渡要求が、ネットワーク5を介して電子債権記録機関に送信される。
一方、債務者割引サービスの対象ではない電子記録債権であると判定した場合(ステップS41;No)、電子記録債権処理装置100は、買取処理部113の機能により、企業Cの取引銀行であるc銀行に対し企業Cの与信情報(債権者情報)を要求し、債権者情報を取得する(ステップS43)。債権者情報は、c銀行が保有する与信情報一覧122に含まれる企業Cの与信情報であり、少なくとも債権者である企業Cの与信残高を含む情報である。なお、与信残高以外にも、例えば企業Cの決算情報や資本金などの情報が含まれていてもよい。なお、ステップS43の処理では、c銀行に債権者情報を要求して債権者情報を取得する例を示したが、この他にも、例えば、企業Cに債権者情報を要求し、企業Cがa銀行(より具体的にはa銀行の電子記録債権処理装置100)に債権者情報を送信するようにしてもよいし、企業Cの従業員などがa銀行に必要な書類などを直接持ち込むようにして取得してもよい。なお、債権者情報には、上述したように、企業の信用度を段階的(例えばA~Eの5段階評価)に評価した信用情報が含まれていてもよい。また、ステップS43にてc銀行から企業Cの与信情報(債権者情報)を取得した場合、a銀行はc銀行に対し債権者情報の取得に関する手数料を支払えばよい。
ステップS43の処理を実行した後、電子記録債権処理装置100は、買取処理部113の機能により、ステップS43にて取得した債権者情報に含まれる企業Cの与信残高(債権者与信)が、割引債権譲渡要求の行われた電子記録債権の債権金額未満であるか否かを判定する(ステップS44)。この例において、ステップS44では、企業Cの与信残高(債権者与信)が、当該電子記録債権の債権金額である300万円未満であるか否かを判定する。
債権者与信が債権金額以上である場合(ステップS44;No)、電子記録債権処理装置100は、買取処理部113の機能により、当該電子記録債権の債権金額から債権者割引額(債務者割引額よりも大きい金額)を割り引いた(減算した)額で買い取りを行う(ステップS45)。例えば、ステップS45の処理では、債権番号「0000001」の電子記録債権の場合、債権金額は300万円であるため、債権者割引額(30万円とする)を差し引いた270万円にて買い取りを行う。なお、買い取りは、a銀行から企業Cの口座に対して買い取り金額の資金が支払われることにより行われればよい。また、債権者割引額は、債務者割引額よりも大きい金額となるよう予め定められた算出方法により算出されていればよく、例えば、債権者の与信残高および信用度(例えば上述したA~Eの5段階評価)に応じて異なる値となるような算出方法が予め設定されていればよい。ステップS45の処理が実行されると、債権者が企業Cからa銀行となることから、図11のステップS31の処理のときと同様に、当該電子記録債権の債権者が企業Cからa銀行へ変更されたことを記録原簿421に登録するよう要求する債権譲渡要求が、ネットワーク5を介して電子債権記録機関に送信される。
ステップS42またはステップS45の処理が実行されると、債権譲渡要求が、ネットワーク5を介して電子債権記録機関に送信される。電子債権記録機関の側では、記録装置400が債権譲渡要求を受信することにより、図11に示す場合と同様に債権情報更新処理を実行する。債権情報登録処理において、記録装置400は、債権登録更新部411の機能により、受信した債権譲渡要求に基づく内容を記録原簿421に記憶することで記録原簿421を更新し(ステップS32)、債権情報更新処理を終了する。具体的に、ステップS32の処理では、記録原簿421における債権番号「0000001」の電子記録債権の債権者をa銀行とした情報を新たに追加して記憶する(新たに追加する)ことで、記録原簿421を更新する。すなわち、図8の上から3段目に示す情報(譲渡日が「2017/11/17」の行の情報)がそれぞれ記憶されることとなる。ステップS32にて当該電子記録債権に関する新たな情報が記録原簿421に記憶されると、更新が完了したことを示す更新完了通知が電子記録債権処理装置100に通知される。
図12に戻り、ステップS42とステップS45のいずれかの処理を実行した後、またはステップS44にて債権者与信が債権金額未満であると判定した場合(ステップS44;Yes)、電子記録債権処理装置100は、買取処理部113の機能により、企業に通知し(ステップS46)、債権買取処理を終了する。なお、ステップS46の処理は、記録装置400から送信された更新完了通知の受信を待たずに行われてもよいし、更新完了通知の受信を待ち、受信したことにより行われてもよい(ステップS42またはステップS45の処理が実行された場合)。ステップS46では、例えば、ステップS42またはステップS45の処理を実行した場合には、電子記録債権の割引債権譲渡が完了したことを企業Cへ通知する。具体的に、ステップS42の処理を実行した場合には、債務者割引額にて割引を行った旨とその買い取り明細を通知し、ステップS45の処理を実行した場合には、債権者割引額にて割引を行った旨とその買い取り明細を通知する。また、ステップS44にて債権者与信が債権金額未満であると判定した場合(ステップS44;Yes)、電子記録債権の割引債権譲渡が不可能であることを企業Cへ通知する。以上により、企業Cの所有する債権番号「0000001」の電子記録債権がa銀行に対し割引債権譲渡され、企業Cは資金調達を行うことができる。また、ステップS41にて債務者割引サービスの対象となる電子記録債権であるか否かを判定し、対象であれば債務者割引額にて割引を行い、対象でなければ債権者割引額にて割引を行ってそれぞれ買い取りを行うことから、企業Cは好適な資金調達を行うことが可能となる。
次に、当該電子記録債権の支払期日が到来した場合について説明する。この例における電子記録債権(債権番号「0000001」の電子記録債権)は、図8に示すように、2018年2月7日が支払期日である。そのため、2018年2月7日を例に説明する。なお、上述したように、債務者は企業A、債権者はa銀行となっている(企業Cがa銀行に割引債権譲渡したため)。記録装置400では、記録原簿421に電子記録債権が登録されると期日処理が実行され、当該電子記録債権の支払期日が到来したか否かを管理し、かつ支払期日が到来した場合にその旨を通知する処理が行われる。
図13は、記録装置400にて行われる期日処理などの一例を示すフローチャートである。期日処理を実行すると、記録装置400は、期日通知部412の機能により、支払期日が到来したか否かを判定する(ステップS51)。ステップS51の処理では、記録原簿421に登録されている電子記録債権の支払期日と、予め内蔵された計時装置における日時情報とを比較し、支払期日の到来を判定すればよい。支払期日が到来していない場合(ステップS51;No)、記録装置400は、そのまま期日処理を終了する。
一方、支払期日が到来したと判定した場合(ステップS51;Yes)、記録装置400は、期日通知部412の機能により、支払期日が到来したことを、その旨とともに、到来した電子記録債権の債権番号、債権金額、および債権者の情報を含む期日通知を債務者および債務者の取引銀行に送信することで期日到来を通知する(ステップS52)。この例では、債権番号「0000001」の電子記録債権の支払期日が到来し、その債権金額は300万円であり、債権者がa銀行であることが、企業Aおよび企業Aの取引銀行であるa銀行に通知される(図示する例では、企業Aへの通知を省略している)。そして、a銀行の電子記録債権処理装置100は、期日通知を受信すると、送金処理を実行する。送金処理では、まず、送金処理部114の機能により、債務者の口座から債権者の口座へ債権金額の送金を行う(ステップS53)。この例では、企業Aの口座からa銀行の口座へ、債権金額である300万円の送金を行う。
ステップS53の処理を実行した後、電子記録債権処理装置100は、送金処理部114の機能により、与信情報一覧122に含まれる企業Aの与信情報を更新する(ステップS54)。具体的に、ステップS54の処理では、債権金額から300万円を減算し、与信残高に300万円を加算する。例えば、企業Aの債権金額が300万円で、与信残高が700万円であった場合、債権金額を0円、与信残高を1000万円、とする。
ステップS54の処理を実行した後、電子記録債権処理装置100は、送金処理部114の機能により、割引サービス対象一覧123から該当する債権番号に関する情報を削除し(ステップS55)、送金処理を終了する。ステップS55の処理では、例えば、図5に示す債権番号「0000001」に関する情報を削除する。ステップS55の処理では、また、支払いが完了したこと、すなわち、支払期日到来により行われるべき処理が完了したことを示す支払い完了通知を電子債権記録機関の記録装置400へ送信する。記録装置400の側では、ステップS52の処理の後、当該支払い完了通知を受信したことにより、債権登録更新部411の機能により、記録原簿421から当該支払期日が到来した電子記録債権に関する情報を削除し(ステップS56)、期日処理を終了する。ステップS56の処理では、例えば、図8に示す債権番号「0000001」に関する情報を全て削除する。なお、例えば、ステップS53において、残高不足など、債権金額の送金が正常に行われなかった場合には、ステップS54以降の処理を実行せず、その旨を企業Aおよび記録装置400に通知し、送金処理および期日処理を終了してもよい。以上により、支払期日が到来した電子記録債権について、債務者から債権者に債権金額の支払いが行われ、当該電子記録債権での決済が完了することとなる。
以上が電子記録債権処理システム1の動作である。このように、電子記録債権処理システム1における電子記録債権処理装置100は、割引債権譲渡が要求された電子記録債権が債務者割引サービスの対象となる電子記録債権であるか否かを判定し、対象であれば債務者割引額を割り引いた額にて買い取りを行い、対象外であれば債権者の与信情報を取得して債権者割引額を割り引いた額にて買い取りを行う。したがって、転々流通する電子記録債権に対し割引債権譲渡を好適に行うことを可能とし、債権者の好適な資金調達を実現することができる。
(変形例)
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、電子記録債権処理装置100では、上記実施の形態で示した全ての技術的特徴を備えるものでなくてもよく、従来技術における少なくとも1つの課題を解決できるように、上記実施の形態で説明した一部の構成を備えたものであってもよい。また、下記の変形例それぞれについて、少なくとも一部を組み合わせても良い。
上記実施の形態では、割引債権譲渡要求に含まれる債権番号にて特定される電子記録債権(買い取り対象の電子記録債権)が債務者割引サービスの対象であるか否かを判定し、対象であれば当該電子記録債権の債権金額から債務者割引額を割り引いた(減算した)額で買い取りを行う例を示したが、これは一例である。債務者割引といったように債務者の与信枠に基づいて予め定められた算出方法にて算出された割引額といったように、債務者の与信枠に基づいて変動する割引額ではなく、サービスの対象であれば、債権者割引額よりも割引額が低い固定額を割り引くようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、図12のステップS42にて債務者割引サービスの対象ではない電子記録債権であると判定した場合、企業Cの取引銀行であるc銀行に対し企業Cの与信情報(債権者情報)を要求し、債権者情報を取得する例を示したが、これは一例である。例えば、電子債権処理装置100は、c銀行に対し当該電子記録債権の買い取りの可否および債権者割引額の算出を要求してもよい。すなわち、図12のステップS44の処理およびステップS45における債権者割引額の算出を、c銀行に実行させてもよい。そして電子債権処理装置100は、当該結果を受信して債権者割引額を適用した買い取りを実行してもよい。
また、上記実施の形態では、図10におけるステップS21にて企業Aの与信枠の残高(与信残高)が払い出しを要求する電子記録債権の債権金額未満である場合、すなわち与信残高が足りない場合には、当該電子記録債権の払い出しができない例を示したが、これは一例である。例えば、与信残高が払い出しを要求する電子記録債権の債権金額未満であっても、当該電子記録債権の払い出しを許可してもよい。その場合、複数の企業における与信枠を合計した合計値が債権金額以上となった場合に、上記実施の形態おける債務者割引サービスの利用条件が成立することとすればよい。以下、このような場合における電子記録債権処理システム1の動作について説明する。
なお、当該変形例における電子記録債権処理システム1を構成する電子記録債権処理装置100は、上記実施形態とは異なり、図14に示すように、a銀行ではなく、いずれの銀行とも異なる与信記録機関に設置されていればよい(a銀行には、上記実施の形態における債権登録処理部112の機能を備えたa銀行処理装置100Aが設置されているものとする)。与信記録機関は、図示するように、ネットワーク5を介してa銀行、b銀行、c銀行、d銀行および電子債権記録機関と相互に通信可能に接続されている。d銀行は、企業Dの取引銀行である。当該変形例では、企業Aが自身の与信残高(500万円)を超える額の電子記録債権(債権金額1000万円とする)を企業Bに払い出し、企業Bが企業Cに当該電子記録債権を譲渡し、企業Cが企業Dに当該電子記録債権を譲渡し、企業Dが支払期日前にd銀行に当該電子記録債権を譲渡(割引債権譲渡)することにより、企業Dが当該債務者割引サービスを利用して資金調達を行う場合を例に説明する。なお、当該変形例では、企業Bが企業Cに譲渡を行う際、および企業Cが企業Dに譲渡を行う際に、当該譲渡人である企業Bおよび企業Cは、自己の与信枠の使用を許可することを前提としている(この例では企業Bが300万円の与信枠の使用を許可し、企業Bが200万円の与信枠の使用を許可しているものとする)。
まず、上記実施の形態と同様、企業Aから債務者割引サービスを利用した電子記録債権の払い出しの要求を受け付けると、a銀行処理装置100Aが、債権登録処理部112の機能により図15に示す債権登録処理を実行する。当該変形例では、図10に示す債権登録処理とは異なり、債権登録処理におけるステップS21にて、企業Aの与信残高が、要求する債権金額未満である場合(ステップS21;Yes)、企業Aの上記要求に基づいて当該電子記録債権の仮登録を行う債権情報仮登録処理の実行を要求する実行要求を記録装置400へ送信する(ステップS27)。
記録装置400では、債権情報仮登録処理の実行要求を受信することで、債権情報仮登録処理を実行する。債権情報仮登録処理において、記録装置400は、債権登録更新部411の機能により、要求された電子記録債権に関する情報を記録原簿421に記憶し(ステップS28)、債権情報登録処理を終了する。ステップS28の処理では、図10に示すステップS23の処理と同様、電子記録債権を一意に特定するための債権番号を採番(この例では「0000005」)し、実行要求に含まれる各種情報とともに記録原簿421に記憶するが、ステップS28の処理では、図10に示すステップS23の処理とは異なり、仮の登録であること、すなわち実際に登録される候補であることが特定できるよう、仮登録状態であることを示す仮登録情報を合わせて記録原簿421に記憶する。当該ステップS28の処理により各種情報が記憶されると、仮登録が完了したことを示す仮登録完了通知がa銀行処理装置100Aに通知される。
a銀行処理装置100Aは、ステップS27の処理を実行した後、記録装置400から仮登録完了通知を受信すると、与信情報一覧122の情報を更新する(ステップS29)。ステップS29の処理は、図10におけるステップS24の処理と同様にして行われればよい。なお、例えば、企業Aの与信枠が600万円あった場合、企業Aは今回使用する与信枠を500万円として指定可能であり、ステップS29の処理では、指定された使用与信枠に基づいて与信残高を更新すればよい。ステップS29の処理が行われると、企業Aの使用した与信枠(500万円)を与信情報として登録する与信登録処理の実行要求を、電子記録債権処理装置100へ送信する。当該与信登録処理の実行要求には、記録装置400から受信した仮登録完了通知に含まれる、仮登録が行われた電子記録債権の債権番号(この例では「0000005」)、債権金額、および企業Aが使用する与信枠(500万円)である与信情報が少なくとも含まれている。
与信記録機関の側では、電子記録債権処理装置100が与信登録処理の実行要求を受信することで、与信登録処理を実行する。与信登録処理において、電子記録債権処理装置100は、債権登録処理部112の機能により、実行要求に含まれる与信情報を登録する(ステップS300)。具体的に、ステップS30では、債権番号(「0000005」)と、債権金額(1000万円)と、与信使用者(企業A)と、与信情報(500万円)とを、それぞれ対応付けて記憶部100に記憶する。
ステップS300の処理を実行した後、電子記録債権処理装置100は、債権登録処理部112の機能により、ステップS300にて登録された与信情報を合計した金額(与信合計)が債権金額未満であるか否かを判定する(ステップS310)。具体的に、ステップS310では、同一の債権番号の電子記録債権に対応する与信情報を合計した金額が、当該電子記録債権の債権金額未満であるか否かを判定する。与信合計が債権金額以上である場合(ステップS310;No)、電子記録債権処理装置100は、債務者割引サービスの利用条件が成立したとして、債権登録処理部112の機能により、図10のステップS25の処理と同様に、当該電子記録債権に関する情報を割引サービス対象一覧123へ記憶する(ステップS320)。
このように、ステップS320の処理が実行されると、債務者割引サービスの利用条件が成立したことになるため、電子記録債権処理装置100は、記録装置400に対し、当該電子記録債権について仮登録状態から本登録状態への更新を要求(本登録更新要求)するとともに、当該電子記録債権についての債権者(企業D)と、当該電子記録債権について与信枠を使用している与信枠使用者(企業A、企業B、および企業C)と、を含む関係者に対し、債務者割引サービスの利用条件が成立したことを通知する。記録装置400では、当該本登録更新要求を受信すると、当該電子記録債権について、記録原簿421に記憶されている仮登録情報を消去する処理を行えばよい。
ステップS320の処理を実行した後、またはステップS310にて与信合計が債権金額未満である場合(ステップS310;Yes)、電子記録債権処理装置100は、与信登録処理を終了し、与信情報の登録が完了したことを、当該与信登録処理の実行要求元の装置へ通知する。
続いて企業Bが企業Cに当該電子記録債権を譲渡する場合について説明する。なお、上述したように、譲渡人である企業Bが企業Cへ譲渡する際、企業Bが300万円の与信枠の使用を許可しているものとする。企業Bが企業Cに当該電子記録債権を譲渡する場合、上記実施の形態と同様に、b銀行処理装置200が、図11に示す債権譲渡処理を実行する。当該変形例では、当該債権譲渡処理におけるステップS31にて債権譲渡要求を、ネットワーク5を介して電子債権記録機関に送信することに加え、当該譲渡人である企業Bにて使用する与信枠に基づいて与信情報一覧122の情報を更新する(図10におけるステップS24の処理と同様)。なお、例えば、企業Bの与信枠が500万円あった場合、企業Bは今回使用する与信枠を300万円として指定可能であり、当該変形例におけるステップS31の処理では、指定された使用与信枠に基づいて与信残高を更新すればよい。ステップS31の処理が行われると、企業Bの使用した与信枠(300万円)を与信情報として登録する与信登録処理の実行要求を、電子記録債権処理装置100へ送信する。当該与信登録処理の実行要求には、譲渡対象の電子記録債権の債権番号(この例では「0000005」)、債権金額(1000万円)、与信使用者(この例では企業B)、および企業Bが使用する与信枠(300万円)である与信情報が少なくとも含まれている。与信記録機関の側では、電子記録債権処理装置100が企業Bから与信登録処理の実行要求を受信することで、図15に示す与信登録処理を実行する(当該与信登録処理については上述したため説明を省略する)。このようにして企業Bが企業Cに当該電子記録債権を譲渡すると、企業Bの使用する与信枠である与信情報(300万円)が与信記録機関に登録され、当該与信情報を合計した金額(800万円)が当該電子記録債権の債権金額(1000万円)未満であるか否か判定される。そして、与信情報を合計した金額が債権金額未満と判定され、債務者割引サービスの利用条件は不成立のままとなり、記録装置400の記録原簿421における当該電子記録債権は仮登録状態のままとなる。
企業Cが企業Dに当該電子記録債権を譲渡する場合についても、企業Bが企業Cに当該電子記録債権を譲渡する場合と同様であるが、譲渡人である企業Cが企業Dへ譲渡する際、企業Cが200万円の与信枠の使用を許可しているとすると、企業Cの使用する与信枠である与信情報(200万円)が与信記録機関に登録され、当該与信情報を合計した金額(1000万円)が当該電子記録債権の債権金額(1000万円)未満であるか否か判定される。そして、与信情報を合計した金額が債権金額以上と判定され、債務者割引サービスの利用条件が成立し、記録装置400の記録原簿421における当該電子記録債権が仮登録状態から本登録状態に更新される。
続いて、企業Dが、支払期日前にd銀行に当該電子記録債権を譲渡(割引債権譲渡)することにより、企業Dが当該債務者割引サービスを利用して資金調達を行う場合について説明する。企業Dは、債権番号が「0000005」の電子記録債権の割引債権譲渡の要求をd銀行に対して行う(ネットワークを介して割引債権譲渡要求を送信する)。なお、当該割引債権譲渡要求は、企業Dの従業員などがd銀行に必要な書類などを直接持ち込むことにより行われてもよい。
d銀行処理装置500は、企業Dから当該割引債権譲渡要求を受け取ると、図12に示す債権買取処理を実行する。当該変形例における債権買取処理では、図12に示すステップS41において、当該割引債権譲渡要求の対象である電子記録債権が債務者割引サービス対象の電子記録債権であるか否かを、電子記録債権処理装置100に問い合わせる(サービス対象確認要求を送信する)。電子記録債権処理装置100の側では、当該サービス対象確認要求を受信すると、割引サービス対象一覧123を参照し、当該サービス対象確認要求に含まれる債権番号に対応する情報が、割引サービス対象一覧123に記憶されているか否かを確認することにより、債務者割引サービス対象の電子記録債権であるか否かを判定し、判定結果をd銀行処理装置500に送信する。そして、d銀行処理装置500は、図12に示すステップS41において、電子記録債権処理装置100から送信された当該判定結果に応じて、当該割引債権譲渡要求の対象である電子記録債権が債務者割引サービスの対象であるか否かを判定すればよい。ステップS41以降の処理については、図12に示す処理と同様である。なお、当該変形例では、企業Dの取引銀行であるd銀行が買い取りを行うことから、d銀行には企業Dの与信情報といった債権者情報が既に存在している。そのため、当該変形例では、ステップS43の処理をスキップすればよい。また、この例では、当該電子記録債権が債務者割引サービスの対象であるとして、d銀行が980万円で買い取りを行ったものとする(債務者割引額は20万円とする)。また、債務者割引額の算出にあたり、電子記録債権処理装置100に記憶されている与信情報を参照し、例えば、信用度の高い企業が占める割合が高ければ高いほど債務者割引額を低くするなど、与信比率(債権金額のうちどの企業がどの程度の割合の与信を使用しているかといった割合)と企業の信用度に応じて債務者割引額の大小を算出するようにしてもよい。
次に、当該電子記録債権の支払期日が到来した場合について説明する。なお、債務者は企業A、債権者はd銀行となっており(企業Dがd銀行に割引債権譲渡したため)、当該電子記録債権についての与信使用者(与信登録機関において当該債権番号(「0000005」)に対応する与信情報が登録された者)は企業A、企業B、および企業Cである。上記実施の形態と同様、記録装置400は、記録原簿421に電子記録債権が登録されると期日処理を実行し、当該電子記録債権の支払期日が到来したか否かを管理し、かつ支払期日が到来した場合にその旨を通知する処理を実行する。
図16は、当該変形例における期日処理などの一例を示すフローチャートである。なお、図13では、電子記録債権処理装置100が送金処理を行う例を示しているが、当該変形例では、a銀行処理装置が送金処理を実行する。また、ここでは、図13に示す期日処理および送金処理とは異なる部分について説明する。当該変形例における送金処理では、ステップS53の処理にて債務者である企業Aの銀行口座から債権者であるd銀行の銀行口座へ、債権金額である1000万円の送金を行い、送金処理を終了する。そして、ステップS53の処理が行われると、送金が行われた旨が債権者であるd銀行に通知される(図16に示す「F」)とともに、支払い完了通知が電子債権記録機関の記録装置400に送信される。
d銀行処理装置500は、送金が行われた旨の通知を受け、入金を確認する処理である確認処理を実行する。確認処理を開始すると、まず、d銀行処理装置は500は、当該d銀行の口座を確認し、債権金額である1000万円の入金が行われていることを確認する(ステップS57)。ステップS57にて入金が行われていない場合にはその旨を債務者に通知してもよい。なお、入金確認が正常に行われると(債権金額である1000万円の入金が行われていることを確認すると)、ステップS57では、送金元であるa銀行処理装置100Aへ入金確認完了通知が通知される。当該a銀行処理装置100Aは、入金確認完了通知を受信したことにより、記録装置400へ支払い完了通知を送信する。
ステップS57の処理にて入金確認が正常に行われると(債権金額である1000万円の入金が行われていることを確認すると)、d銀行処理装置500は、電子債権処理装置100に記憶されている与信情報を参照し、与信比率を確認する(ステップS58)。与信情報としては、例えば債権番号「0000005」の電子記録債権として、債権金額が1000万円であり、与信使用者である企業Aが500万円使用し、同電子記録債権についての与信使用者である企業Bが300万使用し、企業Cが200万円使用していることが記憶されている。そのため、ステップS58では、与信比率として企業A:企業B:企業Cが5:3:2とする。
また、ステップS58の処理を実行すると、d銀行処理装置500は、電子債権処理装置100に記憶されている割引サービス対象一覧から割引サービス対象一覧123から該当する債権番号(この例では「0000005」)に関する情報を削除するとともに、当該債権番号(この例では「0000005」)に対応する与信情報を削除する指示を送信する。電子債権処理装置100の側では、当該指示に従いこれらの情報を削除する。また、ステップS58の処理を実行すると、d銀行処理装置500は、与信情報として記憶された与信使用者の与信情報一覧を更新するため、当該与信使用者の取引銀行に、当該与信情報一覧を更新させる指示(与信情報一覧更新指示)を送信する。当該与信情報一覧更新指示を受信した銀行処理装置は、債権金額から当該債権金額(1000万円)を減算し、与信残高に使用した与信枠に対応する金額を加算する(企業Aの場合は500万円、企業Bの場合は300万円、企業Cの場合は200万円を加算する)。
ステップS58の処理を実行した後、d銀行処理装置500は、ステップS58の処理で確認した与信比率に基づいて、与信使用者の取引銀行である銀行口座に、それぞれ手数料を支払う(ステップS59)。債権番号「0000005」の電子記録債権をd銀行が980万円にて買い取りを行った場合、d銀行には20万円の利益が生じている。ステップS59の処理では、例えば、当該20万円の利益のうちの10万円を、ステップS57にて確認した与信比率(企業A:企業B:企業Cが5:3:2)となるよう、それぞれ5万円、3万円、2万円に分割し、それぞれの取引銀行の銀行口座に手数料として送金する。なお、利益のうち手数料として送金する割合については予め設定されていればよい。また、当該手数料は、それぞれの取引銀行が各企業の与信情報の登録手続を行ったこと(すなわち、電子記録債権処理装置100に対し図14の与信登録処理を行わせたこと)に対する手数料である。ステップS59の処理を実行した後、d銀行処理装置500は、確認処理を終了する。
このように、債務者の与信枠の残高(与信残高)が払い出しを要求する電子記録債権の債権金額未満である場合(すなわち与信残高が足りない場合)、複数の企業における与信枠を合計した合計値が債権金額以上となったことを債務者割引サービスの利用条件とすることで、買い取りを行う銀行(金融機関)に対する安全性を担保しつつ、債権者が好適に資金調達を行うことができる。
なお、上述の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションとの分担、またはOSとアプリケーションとの協同により実現する場合などには、OS以外の部分のみを媒体に格納してもよい。
また、搬送波にプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS、Bulletin Board System)に当該プログラムを掲示し、ネットワークを介して当該プログラムを配信してもよい。そして、これらのプログラムを起動し、オペレーティングシステムの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行できるように構成してもよい。