[鼾検出方法]
図1は、本発明の鼾検出方法の一例のフローチャートであり、図2は各処理における30秒間の信号波形である。鼾検出方法を実行可能な装置を鼾検出装置という。S1において、鼾検出装置は、生体振動信号の時系列データを取得する。図2(A)は、鼾をかいている状態の人の生体振動信号21(上段)及び心電図22(下段)であり、縦軸は強度(任意単位:au)、横軸は時間(s)である。生体振動信号の時系列データは、生体近傍に設置された振動センサによって生体振動を検出することにより得ることができる。鼾検出装置は、振動センサで検出した生体振動信号を直接又は通信手段を介して入手してもよいし、記憶媒体に保存されていた過去に検出された生体振動信号を入手してもよい。
S2において、鼾検出装置は、生体振動信号をウェーブレット(wavelet)変換する。ウェーブレット変換することにより、生体振動信号を時間と各周波数成分との関係を示すウェーブレット波形を得ることができる。ウェーブレット波形は、横軸が時間(s)、縦軸が周波数(Hz)であり、明暗で信号の強度(パワー)を示しており、各時間における各周波数成分のパワーが確認できる。なお、ウェーブレット変換する前に生体振動信号を正規化してもよいし、ウェーブレット変換する前にBPF(バンドパスフィルタ)によって所定の周波数帯域の信号を抽出してもよい。図2(B)は、生体振動信号を正規化した後、ウェーブレット変換した信号であり、縦軸が周波数(Hz)、横軸が時間(s)であり、明暗で信号の強度を示している。図の明るい領域23は50Hz近傍の信号が強いことを意味している。
S3において、鼾検出装置は、ウェーブレット波形の各時間における所定の周波数帯域のパワーを積分して、エネルギーの時系列データを取得する。エネルギーは、各時間における所定の周波数帯域のパワーを積分したものであり、ウェーブレット波形の時系列データから抽出した所定の周波数帯域に対して積分を実施すること、又はBPFで抽出した所定の周波数帯域の信号をウェーブレット変換して得られたウェーブレット波形に対して積分を実施することでエネルギーの時系列データを得ることができる。図2(C)は、ウェーブレット変換した信号の30Hz~150Hzの範囲における強度を積分したエネルギーの時系列データ24であり、縦軸はエネルギー(任意単位:au)、横軸は時間(s)である。所定の周波数帯域としては、鼾の周波数を含み、かつ、ノイズとなる心拍や呼吸に起因する信号を低減できるような周波数の範囲とし、50Hzを含むことが好ましく、40~100Hzの範囲を含んでいてもよい。所定の周波数帯域を抽出する手段は、10Hz以上、20Hz以上、30Hz以上又は40Hz以上のHPF(ハイパスフィルタ)でもよいし、200Hz以下、175Hz以下、150Hz以下、125Hz以下又は100Hz以下のLPF(ローパスフィルタ)と前述のHPFとを組み合わせたBPF(バンドパスフィルタ)でもよい。所定の周波数帯域は、例えば30Hz~150Hzの範囲としてもよい。また、所定の周波数帯域は、ウェーブレット変換した信号から50Hz近傍の鼾の周波数帯域を含むように上限又は下限の数値を設定してもよい。
S4において、鼾検出装置は、エネルギーが鼾発生の閾値Eth以上の領域の有無を判定し、鼾発生の閾値Eth以上だった場合(S4のYes)はS5に進み、鼾発生の閾値Eth以上の領域が無い場合(S4のNo)はS7に進み終了する。鼾発生の閾値Ethは、予め設定してもよいし、エネルギーの時系列データに基づいて設定してもよい。例えば、図2(D)に示すように、エネルギーの時系列データから、縦軸を出現頻度、横軸をエネルギーとしたエネルギーのヒストグラムを作成し、ヒストグラムを対数正規分布にフィッティングすることで曲線26を得た。曲線26の対数正規分布における頻度最大値(約9100)の所定割合(例えば10%(約910))のエネルギーの値(約9)を鼾発生の閾値としてもよい。閾値を頻度最大値の何%とするかは適宜設定され、5~30%の範囲で設定することが好ましい。このようにして得た鼾発生の閾値Ethは、対数正規分布に基づいて算出しているため、比較的共通的な指標として利用することができる。鼾発生の閾値Ethは、エネルギーの時系列データから都度求めてもよいし、データ取得開始時に求めた値を求めてもよい。
S5において、鼾検出装置は、鼾発生の閾値Eth以上の領域が持続時間の閾値Tth以上連続しているか否かを判定し、連続していた場合(S5のYes)はS6に進み鼾発生と判定し、鼾発生の閾値Eth以上の領域が持続時間の閾値Tth未満の場合(S5のNo)はS7に進み終了する。持続時間の閾値Tthは、予め設定してもよいし、取得した生体情報やエネルギーの時系列データに基づいて設定してもよい。持続時間の閾値Tthとしては、0.1秒~2秒の範囲内とすることが好ましい。持続時間の閾値Tthを設けることにより、体動に基づく振動やノイズを分離することができる。体動に基づく振動は、鼾に比較して短時間であり、持続しにくいので分離できる。また、鼾は主に呼吸の吸気時に発生するため、持続時間の閾値は吸息の時間よりも短くすることが好ましい。例えば、生体情報として呼吸の周期の平均を取得し、そこから吸息の時間を推定し、吸息の時間の所定割合(例えば、10%、25%、50%、75%等)を持続時間の閾値Tthとしてもよい。なお、一般的に自然呼吸では吸気時間と呼気時間は同じか、吸気時間の方が短いため、呼吸の周期から吸息の時間を推定できる。図2(C)の波形では、持続時間の閾値Tthを0.2秒に設定し、鼾発生の閾値Eth以上の時間が連続して0.2秒以上の領域25を求めた。領域25が鼾をかいていると判定する。
このように、本発明の鼾検出方法は、エネルギーが鼾発生の閾値を超えたとしても、持続時間の閾値を超えていない場合は鼾発生とはせず、鼾発生の閾値を超え、且つそれが連続して持続時間の閾値を超えた場合にのみ鼾発生と判定する。
[生体情報検出装置]
図3は、本発明の鼾検出装置を含む生体情報検出装置100の一例の概略ブロック図である。生体情報検出装置100は、生体101が発する生体振動を取得可能な振動信号取得手段102と、振動信号取得手段102で取得した生体振動信号を処理する情報処理手段104とを含んでいる。振動信号取得手段102で取得した生体振動信号は伝送手段103を介して情報処理手段104に入力される。情報処理手段104は、取得した生体振動信号に基づいて生体情報を取得するものであり、鼾検出装置として使用する場合は鼾を検出する。例えば、生体情報として鼾以外に、生体の存在・不存在を検出したり、生体の脈拍、心弾動波形、脈波、呼吸数、呼吸波形、心音、寝言、体動、心理ストレス又は睡眠状態の指標となる情報(心拍間隔の変動と呼吸パターンの瞬時位相差の位相コヒーレンス)などの生体情報を信号処理によって算出したりしてもよい。生体情報検出装置100は、必要に応じて、電力供給手段105、記憶手段106、通信手段107、表示出力手段108、操作手段109などの一つ又は複数を備えていてもよい。なお、生体101として、ヒトの例を示すが、ヒトに限定されず、他の動物にも利用可能である。さらに、生体以外でも、情報検出装置として、振動センサによってモータなどの駆動体の回転状態の検出や建築物などの耐久消費財の経年劣化の検出手段にも利用可能である。
振動信号取得手段102は、生体近傍に設置された振動センサでもよいし、過去に検出された生体振動信号が保存されている記憶媒体でもよい。振動センサの場合は、生体振動をリアルタイムで検出し、情報処理手段104に伝送し、リアルタイムの生体情報を取得することが可能である。圧電材料を使用した振動センサの具体的な構造については後述するが、本発明の鼾検出方法及び装置に適用可能な振動センサは、圧電材料を使用した振動センサに限定されない。例えば、高感度の加速度センサを用いて、腕時計、携帯端末のように体と接触させて、あるいはベッド、椅子等の一部に加速度センサを設置して生体信号を取得してもよいし、チューブ内の空気圧又は液体圧の変化を圧力センサ等で検知して、生体信号を取得してもよい。さらに、マイクロ波等を用いた信号受発信に伴って非接触で生体信号を取得できる非接触式のセンサを利用してもよい。例えば、マイクロ波としてはマイクロ波ドップラーセンサ、UWB(ウルトラワイドバンド)を用いたセンサ、マイクロ波以外の電磁波を用いたセンサ、LED光を使った反射又は透過光を用いたセンサ、さらには、超音波の反射波を用いたセンサ等を使用することができる。これらのマイクロ波等を用いたセンサは、小型化が可能であり、非接触かつ非拘束で信号を取得でき、遠隔から信号を取得できる。なお、加速度センサも小型化が可能である。
伝送手段103は、振動信号取得手段102と情報処理手段104とを接続し、振動信号取得手段102で取得した生体振動信号を情報処理手段104に伝えるものである。伝送手段103としては、有線であっても、無線であってもよく、通信手段107を伝送手段の一部として利用してもよい。
情報処理手段104は、伝送手段103によって振動信号取得手段102と有線又は無線で接続されており、振動信号取得手段102から伝送された生体振動信号を処理して生体情報を算出する手段である。情報処理手段104は、生体情報に応じて生体振動信号から該当する生体情報を抽出する手段を有しており、鼾検出装置として使用する場合は鼾の発生を検出する鼾抽出手段を有している。さらに、情報処理手段104は、例えば、生体の存在・不存在の場合は生体振動信号の有無を判別する手段、脈拍、心弾動波形、脈波の場合は心弾動・脈波抽出手段及び心拍数算出手段、呼吸数、呼吸波形の場合は呼吸波形抽出手段、心音の場合は心音抽出手段、寝言の場合は寝言抽出手段、体動の場合は体動抽出手段、心理ストレス又は睡眠状態の場合は、呼吸波形抽出手段、心拍間隔算出手段、瞬時位相差算出手段及び位相コヒーレンス算出手段等の一つ又は複数を実装してもよい。情報処理手段104は、例えば、電子回路や、CPU(中央処理装置)の演算処理機能を利用することができ、携帯電話、スマートフォン、パソコン、サーバー、クラウドコンピューティング等のCPUを情報処理手段104として利用してもよい。CPUの演算処理機能によれば、例えば、デジタルフィルタを構成し、周波数フィルタリングを実現することもできる。また、情報処理手段104は、デジタル回路ではなくアナログ回路で実現することも可能である。例えば、コンデンサや抵抗及びオペアンプ等で構成されたローパスフィルタ(LPF)やハイパスフィルタ(HPF)などのアナログフィルタによって、周波数フィルタリングを実現してもよい。また、入力される生体信号がアナログ信号であれば、アナログ-デジタル変換回路によってデジタル信号に変換してもよい。
鼾抽出手段は、鼾を抽出するものであり、例えば、図1に示すフローチャートの鼾検出方法を実施する。また、その他の心弾動・脈波抽出手段、呼吸波形抽出手段、心音抽出手段、寝言抽出手段、体動抽出手段は、該当する生体情報の周波数帯域をフィルタリングすることで抽出してもよい。例えば、心弾動・脈波抽出手段としては、バンドパスフィルタ(BPF)を含むことが好ましく、BPFは、通過域の下限周波数が0.5Hz以上、0.6Hz以上、0.7Hz以上、0.8Hz以上、0.9Hz又は1Hz以上であることが好ましく、上限周波数が10Hz以下、8Hz以下、6Hz以下、5Hz以下、3Hz以下であることが好ましく、これらの下限周波数の何れかと上限周波数の何れかを組み合わせた通過域を持つことが好ましい。呼吸波形抽出手段は、ローパスフィルタ(LPF)を含むことが好ましく、LPFの遮断周波数は、0.5Hz以下の周波数範囲の通過域を有することが好ましいが、0.3Hz、0.4Hz、0.6Hz、0.7Hz、0.8Hzであってもよい。心音抽出手段としては、下限周波数が4Hz以上、10Hz以上、20Hz以上、30Hz以上、40Hz以上、50Hz以上のフィルタ(ハイパスフィルタ又はバンドパスフィルタ)を含んでいてもよいし、ウェーブレット(wavelet)変換する手段を含んでいてもよい。バンドパスフィルタの場合は、上限周波数を500Hz以下、400Hz以下、300Hz以下とすることが好ましい。例えば、20Hzから500Hzのバンドパスフィルタを用いてもよい。また、その他の公知の抽出方法を利用してもよい。
電力供給手段105は、生体情報検出装置100の各部に電力を供給する機能を有し、例えば、Liイオンバッテリー等のバッテリーなどを採用することができる。記憶手段106は、振動信号取得手段102で取得した生体振動信号、情報処理手段104で検出した生体情報、情報処理手段104を動作させるためのプログラムなどを記憶する機能を有し、例えば、メモリ、HDDなど採用することができる。
通信手段107は、有線又は無線通信を介して各種信号を受け渡す機能を有する。通信手段107は、振動信号取得手段102に接続された配線、ケーブルであってもよい。無線の通信手段107は、例えば、振動信号取得手段102が取得した生体振動信号を情報処理手段104、記憶手段106、表示出力手段108、外部装置(図示せず)などに送信してもよいし、情報処理手段104が算出した生体情報を記憶手段106、表示出力手段108、外部装置(図示せず)などに送信してもよいし、記憶手段106に格納された情報を、情報処理手段104、表示出力手段108、外部装置(図示せず)などに送信してもよい。また、通信手段107は、操作手段109を介して使用者から入力された情報を、情報処理手段104、記憶手段106、表示出力手段108などに送信してもよい。通信手段107として無線の場合は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-fi(登録商標)、近接場型の近距離無線通信(NFC:Near field radio communication)などを利用することが好ましい。なお、通信手段107は、生体情報検出装置100の態様によっては、必ずしも双方向の通信としなくてもよい。
表示出力手段108は、振動信号取得手段102が取得した生体振動信号、情報処理手段104が算出した生体情報、操作手段109で入力した操作内容などを表示または出力する手段である。表示出力手段108としては、画像で表示するディスプレイ、紙で出力するプリンター、音声で出力するスピーカー、電子情報で出力する有線又は無線の出力端子などを使用することができる。表示出力手段108としてのディスプレイを操作手段109におけるタッチパネルと兼用させてもよい。操作手段109は、使用者が生体情報検出装置1を操作するためのスイッチ、タッチパネル、ボタン、つまみ、キーボード、マウス、音声入力用マイク等の操作端子が設けられている。
[振動センサ]
図4(A)は振動センサ本体10の一例を示す図であり、図4(B)は芯材20の一例を示す図であり、図4(C)は芯材20の筒状又は柱状部分20aに振動センサ本体10の帯状部分10aをらせん状に巻きつけた構造を有する筒状又は柱状の振動センサ1を示す図である。また、図5(A)は振動センサ本体10の断面構造の一例を示す図であり、図5(B)は振動センサ1の断面構造を示す図である。筒状又は柱状の振動センサ1は、芯材20に巻き付けられた振動センサ本体10によって振動を検知して振動信号を生成することができる。本明細書において、振動センサ本体10の帯状部分10aの長く伸びた方向を長手方向とし、その長さをL、長手方向に垂直な幅をWとし、芯材20の筒状又は柱状部分20aの外径をdとする。また、筒状又は柱状部分20aの中心軸Cに対して垂直な面をV(垂直面)、らせん状に巻き付けた帯状部分の長手方向との角度(ピッチ角)をθとする。
シート状振動センサ10は、筒状又は柱状振動センサ1の振動センサ本体10として使用する場合は、図4(A)に示すように、帯状部分10aを含む必要があるが、
振動センサ本体10は、展開時の平面視において幅Wよりも長手方向に長く伸びた帯状部分10aを含んでいるが、帯状部分10a以外の形状の部分を有していてもよい。例えば、振動センサ本体の電極を外部と接続するための接続部、取得した信号を処理する回路が設置される周辺回路部、操作手段が設けられた操作部などは帯状部分に設けなくてもよく、特に長手方向の端部近傍に設けることが好ましい。図4(A)の振動センサ本体10は、全体として一定幅Wの帯状であり、幅W×長さLの長方形状を有しており、一方の端部近傍に接続部10bが設けられている。なお、振動センサ本体10は、芯材に巻き付けずにシート状で使用すれば、それ自体をシート状振動センサとして使用できる。普通にシート状振動センサとして使用する場合は、振動センサ本体10の平面形状は、特に帯状に限定されることはなく、正方形状、長方形状、多角形状、円形状、楕円形状等としてもよい。
帯状部分10aは、芯材20の筒状又は柱状部分20aに巻き付ける部分であり、薄く略均一な厚さのフィルム状又はシート状である。帯状部分10aは、芯材20に巻き付けるために芯材20の筒状又は柱状部分20aの形状に対応可能な可撓性を持たせる必要がある。このため、帯状部分10aの各構成の材料、厚さ等を適切に設定することが好ましい。帯状部分10aの厚さは、厚くなると強度が増すので曲がりにくくなるため、全体で数100μm~数mm、好ましくは300μm~1mmとすることが好ましい。帯状部分10aは、筒状又は柱状部分20aに全て巻き付けることが可能な幅W及び長さLとすることが好ましい。帯状部分10aを芯材20の筒状又は柱状部分20aにらせん状に巻き付ける際に、巻き付けた帯状部分の幅方向の端同士が重ならないようなピッチ角θで巻き付けることが好ましく、幅Wは、外径がdの筒状又は柱状部分にピッチ角θで巻き付ける場合はdπsinθ≧Wとなるようにすることが好ましい。この点については図6の説明で詳述する。
帯状部分10aは、図5(A)に示すように、センサ素材層11と、センサ素材層11の上下に配置された第1の電極層12及び第2の電極層13を少なくとも含む積層構造を含んでいる。さらに、図5(A)の積層構造は、第1の電極層12及び第2の電極層13の外側(センサ素材層11とは反対側)を覆う第1の絶縁層14及び第2の絶縁層15と、第1の絶縁層14及び第2の絶縁層15の外側を覆う第1の遮蔽層16及び第2の遮蔽層17を含んでいてもよい。また、これらの積層構造全体を覆う保護外装18を含むことが好ましい。なお、センサ素材層11と第1の電極層12及び第2の電極層13とが直接接触していてもよいが、間に電気接続を補助する下地層や接着層などの層を有していてもよい。帯状部分10aの断面構造において、積層構造を覆う各層は必要に応じて共通化したり、省略したり、追加したりすることができる。また、帯状部分10aの幅Wは長手方向において均一であることが好ましい。
接続部10bは、積層構造における第1の電極層12及び第2の電極層13の信号を取り出すための端子が設けられ、配線19a、19bに接続されている。図示しないが、接続部10bでは、第1の電極層12及び第2の電極層13の表面が直接又は別の導電材料(例えば遮蔽層)を介して露出した端子が形成され、配線19a、19bに電気的に接続されている。例えば、第1の絶縁層14及び第1の遮蔽層16に開口部を形成し、第1の電極層12の表面を露出させて外部接続用の端子とし、第2の絶縁層15及び第2の遮蔽層17に開口部を形成し、第2の電極層13の表面を露出させて外部接続用の端子としてもよい。さらに、接続部10bにおいて、遮蔽層16、17を定電位に維持するような端子が形成されてもよいが、第1の電極層12及び第2の電極層13の一方が定電位に維持されている場合は、定電位の電極層と遮蔽層とを電気的に接続部10b以外で接続させてもよい。接続部10bは、長手方向の端部に設けることが好ましい。また、取得した振動信号を処理したり、外部と無線通信したりする半導体チップ、集積回路等の電気回路を設置して周辺回路部としても、操作手段を設けて操作部としてもよい。必要に応じて接続部10bの幅を帯状部分よりも広くしてもよい。
センサ素材層11は、振動によって電荷を発生させる圧電材料であり、ピエゾ素子(圧電素子)が好適に用いられる。圧電材料は、圧力(荷重)それ自体ではなく圧力が変化することによって電荷が発生する微分型のセンサである。ピエゾ素子材料としては、セラミックス系であっても、有機ポリマー系であってもよく、セラミックス系としては、PZTやBST等の高ε材料である強誘電体材料を用いることが好ましい。また、有機ポリマー系として、例えばポリオレフィン系材料を用いてもよく、具体的には、例えば、多孔性ポリプロピレンエレクトレットフィルム(Electro Mechanical Film(EMFI))、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンと三フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TrFE))、又はフッ化ビニリデンと四フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TFE))を用いてもよい。センサ素材層11としては、フィルム状であり、さらにフレキシブルである。センサ素材層11の面積及び厚さは感度に比例するが、可撓性を持たせるため、厚さは1mm以下、好ましくは、10~200μm厚とすることが好ましい。センサ素材層11として圧電センサを使用すると、生体を拘束せずに生体振動信号を取得することが可能であり、よりストレスフリーで測定できるので好ましい。さらに、生体以外でも、振動信号検出装置として、振動センサ本体によってモータなどの駆動体の回転状態の検出や建築物などの耐久消費財の経年劣化の検出手段にも利用可能である。
第1の電極層12及び第2の電極層13は、センサ素材層11に隣接して形成されており、金属(銅、アルミニウム、銀、金など)、導電性カーボン膜、透明導電材料(ITO、IZOなど)などの導電性材料が使用される。第1の電極層12及び第2の電極層13としては、フィルム状であることが好ましく、さらにフレキシブルであることが好ましい。特に、従来のアルミニウムではなく、薄い導電性カーボン膜、銀電極等の柔らかい素材を使用すると、振動センサ本体10自体を柔らかくすることができ、好ましい。これらの電極層は、印刷技術や接着剤を用いた薄膜貼り合わせ法、蒸着法やスパッタ法等の様々な方法で形成することができる。電極層12、13の厚さは、数nm~数100μmの厚みとすることが好ましく、材料にもよるが5nm~50μmの厚みとすることが特に好ましい。第1の電極層12及び第2の電極層13の何れか一方を定電位とし、他方で振動による発電を取り出すように構成すれば、定電位の電極層を遮蔽層として機能させることができ、第1及び第2の絶縁層の一方と、第1及び第2の遮蔽層の一方を省略することができる。
第1及び第2の絶縁層14、15は、第1及び第2の電極層12、13と第1及び第2の遮蔽層16、17とを絶縁するものであり、有機又は無機の絶縁性の被膜が使用される。例えば、絶縁層14、15の素材としては、PET、PEN、ポリカーボネート、塩化ビニル、二酸化ケイ素、シリコンナイトライド等、又は複数種類の絶縁層を組み合わせた積層構造を使用してもよい。絶縁層14、15としては、フィルム状であることが好ましく、さらにフレキシブルであることが好ましい。絶縁層14、15の厚さは、数μm~数100μmの厚みとすることが好ましく、特に50~200μmとすることが好ましい。絶縁層14、15は、印刷技術や接着剤を用いた薄膜貼り合わせ法、蒸着法やスパッタ法等の様々な方法で形成することができる。また、絶縁性のフィルムを別途準備し、第1及び第2の電極層12、13の外側に配置してもよく、連続した一枚の絶縁フィルムを折り返すことによって第1及び第2の絶縁層14、15としてもよい。絶縁フィルムは第1及び第2の電極層12、13と接着してもよいし、接着せずに分離可能に配置してもよい。絶縁層14、15は、電極層12、13と遮蔽層16、17とに挟まれ、容量となるが、その静電容量は、鼾とか寝言の信号といった100乃至500Hz付近の周波数の振動を検出する場合には、センサ素材層11、第1の電極層12及び第2の電極層13の静電容量に比べて、10分の1以下とすることが好ましい。
第1及び第2の遮蔽層16、17は、第1及び第2の絶縁層14、15の上に形成されており、金属(アルミニウム、銀、金)、導電性カーボン膜などの導電性材料又は導電性材料と絶縁性材料の積層膜などが使用される。遮蔽層16、17としては、フィルム状であることが好ましく、さらにフレキシブルであることが好ましい。特に、従来のアルミニウムではなく、薄い導電性カーボン膜、銀電極等の柔らかい素材を使用すると、振動センサ本体10自体を柔らかくすることができ、好ましい。遮蔽層16、17は定電位(例えば接地)とすることにより、信号を取り出す第1及び第2の電極層に対する外部からの電磁場などの影響を遮蔽することができる。遮蔽層16、17の厚さは、数nm~数100μmの厚みとすることが好ましく、材料にもよるが5nm~50μmの厚みとすることが特に好ましい。例えば、厚さ125μmのPET上に形成された厚さ1μmのアルミニウム層を有する積層フィルムを使用し、PET層を絶縁層14、15又はその一部とし、アルミニウム層を遮蔽層16、17として用いてもよい。また、連続した一枚の導電フィルム又は導電層を含む積層フィルムを折り返して第1及び第2の遮蔽層16、17としてもよいし、第1又は第2の電極の何れか一方を定電位とし、遮蔽層として利用したり、遮蔽層と電気接続させたりしてもよい。
保護外装18は、センサ素材層11を含む積層構造を内包するものであり、フレキシブルなフィルム状の部材であり、外部との接触、摩擦、摩耗による損傷を防止し、また、水分、酸素、ほこり、光などの外部環境から内部を保護することが好ましい。保護外装18は袋状、筒状でもよいし、1枚のシート状フィルムを折り返して包んでもよいし、2枚のシート状フィルムの周縁を接着させて積層構造を包んでもよい。保護外装18の材質は特に限定されないが、防水機能を有し、水分や酸素を透過し難い材料が好ましい。保護外装18として、高分子プラスチック素材(例えば、PVC、PE、PP、PS、ABS、AS、PET、PMMAポリエステル、PC、PUR、PEN)でもよいし、これらに金属層、バリア層等を積層した積層素材でもよい。金属層を積層した場合は、金属層を定電位(例えば接地)とすることにより、遮蔽層(シールド層)として振動センサ本体10のノイズを低減させる機能を持たせることできる。保護外装18の厚さは数μm~数100μmとすることが好ましい。保護外装18は、内包する積層構造と接着させて積層構造を固定してもよいし、積層構造と接着させずに分離可能とし、交換作業等を容易にしてもよい。また、保護外装18は、損傷防止及び外部環境からの保護を目的とするものであり、積層構造を内包する保護外装18に代えて又はこれに加えて振動センサ本体10を芯材20の筒状又は柱状部分に巻きつけた後に芯材20の筒状又は柱状部分も含めて内包するような保護外装を設けてもよい。
芯材20は、筒状又は柱状部分20aを含む部材であり、筒状又は柱状部分以外の形状については特に制限されない。芯材20の筒状又は柱状部分20aは、均一な断面であることが好ましいが、必ずしも均一でなくてもよい。例えば、筒状又は柱状部分20aの表面に凹凸があってもよいし、筒状又は柱状部分20aの径を長さ方向で連続的に又は段階的に変えてもよい。断面形状は、円形であることが好ましく、円柱又は円環部分を含むことが好ましいが、楕円形、多角形又はこれらの形状の中心に開口を有する環状でもよい。芯材20の材料としては、特に限定されるものではないが、高分子プラスチック素材(例えば、PVC、PE、PP、PS、ABS、AS、PET、PMMAポリエステル、PC、PUR、PEN)、ゴム、金属素材、木材、紙材等を使用してもよい。芯材20は、金属のような硬質なものでもよいが、ある程度の柔らかさを有していてもよく、プラスチックホースのように芯材自体が変形可能なものであってもよい。例えば、芯材として塩化ビニルやポリプロピレン等のプラスチック製のホースを使用し、芯材を渦巻き状に巻いたり、湾曲させたりできるようにしてもよい。芯材20の筒状又は柱状部分20aの外径は、使用する環境(隙間の大きさ、材質等)に応じて設定することができるが、筒状又は柱状部分20aが細すぎるとらせん状に巻き付ける際に振動センサ本体10の変形が大きくなるため、3mm以上、好ましくは5mm以上とすることが好ましく、芯材20が太くなると上面だけでも測定に十分な面積を確保可能であり、振動センサ本体をらせん状に巻き付ける意味が少なくなるため、100mm以下、好ましくは15mm以下とすることが好ましい。
[製造工程]
図6は、芯材20(全体が筒状又は柱状部分20a)に対して、振動センサ本体10(全体が帯状部分10a)を巻き付ける工程を示す図である。図6(A)は、振動センサ本体10の長手方向と芯材20の中心軸Cの垂直面Vとのピッチ角がθとなるように、幅Wの振動センサ本体10の上に外径dの円柱からなる芯材20を斜めに配置した状態であり、図6(B)は、振動センサ本体10を一回巻いた状態であり、図6(C)は、振動センサ本体10を二回巻いた状態である。振動センサ本体10と芯材20とは接着剤、両面テープ等によって接着固定してもよいし、接着せずに分離可能にしてもよい。振動センサ10のセンサ素材層11に生じる変位をできるだけ均等とすることが好ましいので、芯材の断面は円形であり、均一であることが好ましい。また、振動センサ10の表面積を増やすために芯材20の表面をできるだけ覆うことが好ましい。
振動センサ本体10を一回巻くと円周方向に一回転するため、展開した時の垂直面Vにおける長さはd×π(芯材の円周)となり、ピッチPはd×π×tanθとなる。このピッチPよりも振動センサ本体10の中心軸C方向の長さ(W/cosθ)が長くなると巻き付けた際に振動センサ本体10の幅方向の端部が重なるため、幅方向の端部が重ならないように、P≧W/cosθとすることが好ましい。さらに、ピッチPにd×π×tanθを代入し、Wの式にすると以下のようになる。
d×π×tanθ≧W/cosθ
d×π×tanθ×cosθ≧W
d×π×sinθ≧W
したがって、外径dの芯材20に幅Wの振動センサ本体10を巻き付ける場合、幅Wはdπsinθ以下とすることが好ましく、dπsinθと略同一とすると隙間なく巻き付けることができるので好ましい。また、外径dの芯材20に幅Wの振動センサ本体10を巻き付ける場合、ピッチ角θは、sinθ≧W/dπとすることが好ましく、sinθ≒W/dπとすることが特に好ましい。例えば、外径10mmの芯材20に対し、幅30mmの振動センサ本体10を巻き付ける場合は、ピッチ角θは約73°以上とすることが好ましい。また、外径10mmの芯材20に対し、50°のピッチ角θで振動センサ本体10を巻き付ける場合は、振動センサ本体10の幅Wは24mm以下とすることが好ましい。隙間なく巻き付けた振動センサ1の断面図を図5(B)に示す。芯材20の表面上に振動センサ本体10が巻き付けられており、上方で隣り合うピッチの振動センサ本体10の保護外装が隣接している。
[変形例]
図7は、振動センサ本体10の変形例である。図7(A)は、振動センサ本体10の短辺を長辺に対して傾斜させた構成であり、図7(B)は、図7(A)の振動センサ本体10を芯材20に巻き付けた状態を示す図である。図7(A)の振動センサ本体10は、接続部10b側の短辺を長辺に対して90°±θの角度で傾斜させ、接続部10bも当該短辺に平行に配置しており、ピッチ角θで芯材20に巻き付けた際に当該短辺及び接続部10bが芯材の中心軸Cと平行に配置される。他方の短辺は、長辺に対してθ及び180°-θの角度で傾斜させており、ピッチ角θで芯材20に巻き付けた際に当該短辺が芯材の中心軸Cに対して垂直に配置される。このため、図7(B)に示すように、接続部10bは芯材の中心軸と平行に配置され、反対の短辺は芯材の中心軸に対して垂直となり、芯材の表面を有効に利用することができる。なお、接続部10b側の短辺も長辺に対してθ及び180°-θの角度で傾斜させて、芯材の中心軸Cに対して垂直に配置されるようにしてもよい。
図7(C)は、振動センサ本体10に制御装置30を直接接続させた構成である。制御装置30は、図示しないが振動センサで検出した生体振動信号を処理して生体情報を取得する情報処理手段を含んでいる。さらに、制御装置30は、画像表示手段30a、操作手段30b、図示しない電源、記憶手段、通信手段等を含んでもよい。図7(C)の振動センサ本体10の帯状部分10bを芯材に巻き付けた振動センサは、検出した振動信号を処理する情報検出装置としても機能させることができ、生体が発する生体振動を検出させれば生体振動信号から生体情報を取得する生体情報検出装置としても機能させることができる。
図8は、振動センサ本体10の積層構造等の変形例である。図8(A)の振動センサ本体10は、センサ素材層11と、センサ素材層11の上下に配置された第1の電極層12及び第2の電極層13と、第1の電極層12の外側を覆う第1の絶縁層14と、第1の絶縁層14の外側を覆う第1の遮蔽層16とを含む積層構造と、かかる積層構造を内包する保護外装18とを含んでいる。図8(A)の振動センサ本体10では、第2の電極層13は定電位とし、遮蔽層としても機能させ、第2の電極層13及び第1の遮蔽層16によって第1の電極層12で取り出す振動信号へのノイズを低減する。第2の電極層13と第1の遮蔽層16とは電気的に接続してもよい。図8(A)の構成とすることによって、振動センサ本体10の厚さを薄くすることができ、芯材に巻き付けるのが容易になる及び細い芯材に対しても巻き付けやすくなる。
図8(B)の振動センサ本体10は、図8(A)の構成において、一枚の導電フィルム16aを折り返して第1の遮蔽層及び第2の遮蔽層を形成したものである。導電フィルム16aは、第1の絶縁層14から第2の絶縁層15までの積層構造を内包するような袋状としてもよい。また、導電フィルム16aは、第1の絶縁層14及び第2の絶縁層15と接着してもよいし、接着せずに分離可能にしてもよい。なお、図8(B)において、導電層と絶縁層との積層フィルムを使用すれば、第1の絶縁層及び第2の絶縁層についても一度に形成できる。
図8(C)の振動センサ本体10は、センサ素材層11と、センサ素材層11の上下に配置された第1の電極層12及び第2の電極層13と、第1の電極層12の外側を覆う第1の絶縁層14とを含む積層構造と、かかる積層構造を内包する保護外装18とを含み、保護外装18が、導電層18a及び絶縁層18bを含んでいる。保護外装18の導電層18aは、定電位を維持することで遮蔽層として機能させることができる。また、保護外装18の導電層18aと第2の電極層13とを電気的に接続してもよい。図8(C)の構成とすることによって、振動センサ本体10の厚さを薄くすることができ、芯材に巻き付けるのが容易になる及び細い芯材に対しても巻き付けやすくなる。
図8(D)は、芯材20の上に振動センサ本体10を巻き付けた振動センサの構造を示すものである。図8(D)の振動センサ本体10は、センサ素材層11と、センサ素材層11の上下に配置された第1の電極層12及び第2の電極層13と、第1の電極層12の外側を覆う第1の絶縁層14とを含む積層構造を有している。かかる積層構造を芯材20の上に配置した後、これらを覆う保護外装40が設けられ、保護外装40が、導電層40a及び絶縁層40bを含んでいる。保護外装40の導電層40aは、定電位を維持することで遮蔽層として機能させることができる。保護外装40は、芯材20に巻かれた振動センサ本体10の全周を覆うようにすることが好ましく、筒状又は袋状の保護外装40で覆ってもよいし、芯材20に巻かれた振動センサ本体10の上にフィルム状の保護外装40をらせん状に巻き付けてもよい。なお、保護外装40と振動センサ本体10とは接着してもよいし、接着せずに分離可能としてもよい。
[寝具]
本発明の振動センサ又は生体情報検出装置(鼾検出装置)を寝具に取り付けて、就寝中の生体から生体情報、特に鼾を取得してもよい。寝具は、使用者が身体を休めたり睡眠をとったりするときに使用される道具であり、例えば、布団、敷きパッド、ベッドパッド、マットレス、ベッドマットレス、ベッド、枕、座布団、クッション等を含む。シート状の振動センサを使用する場合、寝具の上又は下に配置すればよい。また、芯材の筒状又は柱状部分に振動センサ本体の帯状部分をらせん状に巻きつけた筒状又は柱状の振動センサ、及び筒状又は柱状の振動センサを含む生体情報検出装置は、寝具に設けられた僅かな隙間に振動センサ本体を巻き付けた筒状又は柱状部分を設置することができる。特に、本発明の寝具としては、凹凸形状、切込み、溝、凹部、凸部、コイル等の体圧分散構造を有する敷布団、敷きパッド、ベッドパッド、マットレス、ベッドマットレス、マットレス、枕、座布団、クッション等において、体圧分散構造の隙間に筒状又は柱状の振動センサを配置した構成でもよい。筒状又は柱状の振動センサ本体の表面が、生体と接触する寝具の部材と直接接触するように振動センサ又は生体情報検出装置を配置することが好ましいが、生体と接触する寝具の部材と一つ乃至複数の別の部材を介して接触する配置でもよい。振動センサ又は生体情報検出装置は、心臓の直下に配置することが好ましいが、心臓の位置から多少外れていても有効な測定が可能であり、例えば心臓の位置から50cm以内、好ましくは10cm以内に配置してもよい。また、一つの寝具に対して、複数の振動センサ又は生体情報検出装置を配置してもよい。
図9(A)は、生体情報検出装置100を含むマットレス110の全体概略を示す図であり、(B)は生体情報検出装置100近傍を拡大した図である。マットレス110は、平面視で長方形であり、土台部材111と、土台部材111上に形成された複数の突起部材112とを有し、突起部材112の隙間に長方形のマットレスの短辺と平行に生体情報検出装置100が配置されている。なお、図9では、マットレスの短辺と平行に生体情報検出装置100を配置しているが、長辺と平行に配置してもよいし、マットレスの辺に対して斜めに配置してもよい。
土台部材111は、弾性体、例えば、ウレタンフォームのようなエラストマーで構成された平板形状であり、マットレスの基礎となる部材である。土台部材111は、通気性を高くすることが好ましく、例えばフィルム状の膜を取り除いた無膜ウレタンフォームを使用してもよい。また、土台部材111の反発弾性率を低くすることで、複数の突起部材112に加わる荷重を全体に分散させて荷重を平滑化することができ、マットレス全体としての体圧分散機能を高くすることができる。突起部材112は、弾性体、例えば、ウレタンフォームのようなエラストマーで構成された柱状の部材であり、土台部材111の上に突出するように形成され、複数の突起部材112がマトリクス状に配置されている。図9では、四角柱であるが、上方に向かうにつれて断面積を狭くし、四角錐又は四角錘台形状としてもよいし、四角柱ではなく円柱、角柱、円錐、角錐、円錐台、角錐台又はこれらを組み合わせた形状としてもよい。複数の突起部材112は、マットレス上の生体の荷重を点の状態で支え、下方の土台部材111を介して全体に分散させる。土台部材111及び突起部材112は、複数の異なる特性の弾性体を積層させた構造でもよい。
生体情報検出装置100は、振動センサ1及び制御装置30を有し、同軸ケーブル31によって振動センサ1と制御装置30とを接続している。振動センサ1の振動センサ本体を巻き付けた筒状又は柱状部分が隣り合う突起部材112の間の溝に挿入されている。図9(B)に記載したように、筒状又は柱状部分の外径が溝の幅よりも大きいと、突起部材112の側面が変形し、突起部材112と振動センサ本体との接触面積が広くなる。突起部材112は、直接又はシーツやカバー等を介してマットレス上の生体と接触し、生体の荷重が伝達する部材であるため、振動センサ本体との接触面積が広くなると生体振動信号の検出精度を高めることができる。同軸ケーブル31は、内部導体を絶縁体が覆い、その周囲を外部導体が覆い、さらにその周囲を保護被膜が覆った構成であり、外部導体が電磁シールドの役割を果たすため、内部導体の信号を保護することができる。同軸ケーブル31の内部導体を振動センサ本体の第1及び第2の電極層の一方と接続し、外部導体を振動センサ本体の第1及び第2の電極層の他方とさらに遮蔽層と接続し、外部導体に基準電圧を供給し、内部導体を通じて振動信号を取り出す。制御装置30は、情報処理手段、電源、記憶手段、画像表示手段、操作手段を含んでおり、同軸ケーブル31を介して生体振動信号を取得し、情報処理手段で生体情報を算出する。
[実施例]
図9に示す構造のマットレスを使用して生体情報を算出した。振動センサ本体は、30mm×900mmの長方形状であり、図5(A)の積層構造を有し、センサ素材層として約40μm厚の薄型PVDFフィルムを使用し、その両面のほぼ全面に約3μm厚の銀電極層を約30μmの異方性導電性両面粘着シートによって被着して、第1及び第2電極層を形成した。なお、異方性導電性両面粘着シートは膜厚方向にのみ導通する粘着シートであり、PVDFフィルムと銀電極層とを導通させる。さらにその両面を約100μm厚のPEN(ポリエチレンアフタレート)フィルムを第1及び第2の絶縁層として配置し、それらを約25μmの導電性不織布で覆って第1及び第2の遮蔽層として配置して、積層構造を準備した。さらに、保護外装として約100μm厚のPETシートで積層構造の両面を保護した。振動センサ本体の全体の厚さは約550μm~560μmであった。第1の電極層と信号配線とを電気的に接続し、振動による信号を取り出し、第2の電極層及び遮蔽層をグランドに接続し、固定電位とした。芯材は、外径約10mmのプラスチック製中空パイプを使用し、振動センサ本体を隙間なく、且つ重ならないようにらせん状に巻き付けた。その後、保護外装として、振動センサ本体を巻き付けた芯材の周囲を熱圧着チューブで被覆して振動センサを完成させた。この振動センサを格子状に切れ目が入った全体として長方形のマットレスの切れ目に埋め込み内蔵させた。内蔵した振動センサは、長方形のマットレスの短辺と平行に配置されており、振動センサの上に胸部が配置されるようにマットレスの短辺に直行するように人が寝て振動センサによって生体振動を検出した。
図10(A)は、鼾をかいていない状態の人の生体振動信号であり、(B)は、鼾をかいている状態の人の生体振動信号である。図10において、横軸は時間(1秒/目盛り)であり、縦軸は信号の強度(任意)である。図10(A)の波形から、約1秒周期hbの心拍信号81を確認できる。また、心拍信号81のベースが約5秒周期で上下しており、これは呼吸に由来する周期(呼吸信号)82である。図10(A)自体から心拍信号81も呼吸周期82も検出可能であるが、さらにフィルタリング処理することで、各信号を抽出することができ、より明確な波形を取得することができる。図10(B)の波形には、心拍信号81及び呼吸周期82に加えて、鼾に由来する信号(鼾信号)83が生じている。鼾信号83は、信号の強度が大きく、約5~6秒周期であり、呼吸信号の周期と対応している。鼾が大きくなると鼾信号83の振幅も大きくなる。
また、本実施例の構成によって図2(A)の鼾をかいている状態の人の生体振動信号21(上段)も検出した。図2(B)は、生体振動信号を正規化した後、ウェーブレット変換した信号であり、縦軸が周波数(Hz)、横軸が時間(s)であり、明暗で信号の強度を示している。図の明るい領域93は50Hz近傍の信号が強いことを意味している。図2(C)は、ウェーブレット変換した信号の30Hz~150Hzの範囲における強度を積分したエネルギーの時系列データ24であり、縦軸はエネルギー(任意単位:au)、横軸は時間(s)である。図2(C)の波形から、30秒間におけるエネルギーの最大値を特定し、その10%の値を鼾発生の閾値として設定し、図2(C)の波形において、鼾発生の閾値を超えた時間が連続して鼾の持続時間の閾値(0.2秒)を超えた領域25を求めた。領域25が生じた場合に鼾をしていると判定する。このように、エネルギーが鼾発生の閾値を超えたとしても、持続時間の閾値を超えていない場合は鼾発生とはせず、鼾発生の閾値を超え、且つそれが連続して持続時間の閾値を超えた場合にのみ鼾発生と判定した。
また、本発明の棒状の振動センサによって心拍及び心拍間隔を精度よく測定することができた。図11及び図12は、長方形のマットレスの中に内蔵された第1の振動センサ及び第2の振動センサによってマットレス上の人の生体振動を測定した結果を示すものである。第1の振動センサは、マットレスの短辺と平行に、人の胸部の下に配置して測定した。第2の振動センサは、マットレスの短辺と平行に、第1の振動センサよりも人の頭部側に約10cm離れた位置に配置して第1のセンサと同時に測定した。
図11及び12において、(A)の上段は人の生体振動信号(bcg)の生データであり、中段はbcgに対して呼吸成分を除くため下限周波数0.5Hzのハイパスフィルタを通過させて取得されたハイパスフィルタを通過後の生体振動信号(hbcg)であり、下段は心電図計測用センサを別途人に取り付けて、振動センサと同時に計測した心電図波形である。(B)の上段は、hbcgに対して積分した波形であり、微分型の振動センサによって検出した生体振動を積分することにより、脈波に似た波形の信号を得ることができ、心拍間隔の検出を容易にした。(B)の下段は、ecgを積分した積分信号であり、hbcgと同様の信号処理をecgにも適用した。(C)はhbcg積分信号の瞬時位相の波形であり、基本的に位相が負から正に変化するタイミング、すなわち位相が0の横線を超えるタイミングがhbcg積分信号が立ち上がるタイミング、心拍の開始点として特定した(図中の〇)。(D)は、心拍間隔として、生体振動信号から求めた心拍の開始点間の間隔(BBI)と、心電図から求めたR波とR波との間隔(RRI)とを併記したものである。(E)は、BBIとRRIとの間の誤差を分析したBland-Altmanプロットであり、縦軸は同じ心拍に対するBBIとRRIとの差(BBI-RRI)であり、横軸は同じ心拍に対するBBIとRRIとの平均値((BBI+RRI)/2)であり、点線は95%信頼区間の上限値及び下限値である。
図11は、人の胸部の下に配置した第1の振動センサの結果であるが、図11(D)に示すように、生体振動信号bcgを信号処理することで得られたBBIと心電図に基づいて得られたRRIとが非常に一致している。さらに、図11(E)によれば、BBIとRRIとの差の平均(mean)は、0.001秒であり、BBIとRRIとがほぼ同一であることが確認できた。さらに、BBIとRRIとの差の二乗平均平方根(rms)は、0.023秒であり、ばらつきも少なかった。BBIとRRIの一致率を示す指標をDとして、D=(average-rms)×100/average(%)と定義する。平均値からどれだけばらついているかを示す指標であるが、Dは、約97%と高い数値を示しており、ばらつきは小さいと言うことができる。ここでaverageは、RRIの平均値(ここでは、0.872秒)を示している。
図12は、人の胸部の下から約10cm頭側に移動させた位置に配置した第2の振動センサの結果であるが、図12(D)に示すように、図11に比べるとBBIとRRIとの誤差が大きくなっている。また、図12(E)によれば、BBIとRRIとの差の平均(mean)は、-0.001秒であり、BBIとRRIとがほぼ同一であることが確認できた。BBIとRRIとの差の二乗平均平方根(rms)は、0.053秒であり、図11に比べればばらついていたが、Dは、約94%と高い数値を示しており、十分に実用化許容範囲内の値であった。以上のように、振動センサは、心臓の直下で生体振動を測定することが好ましいが、心臓から10cm程度離れていても、十分に信頼に値するデータを取得することができたことが確認された。
図13は、寝具に振動センサを設置し、睡眠中の人の生体振動を一晩測定した結果であり、横軸は測定開始からの時間であり、縦軸は、(A)が1-λ(λは心拍間隔の変動と呼吸パターンの瞬時位相差の位相コヒーレンス(以下、「位相コヒーレンス」という))、(B)が1分間の心拍数、(C)が1分間の呼吸数、(D)が鼾の強度(エネルギー)である。図13において、点線131は入床したタイミングであり、測定開始から約6時間50分の時点であり、点線132は、離床したタイミングであり、測定開始から約14時間55分の時点であり、入床から離床までの約8時間測定し続けた。
図13(A)の(1-λ)は、睡眠状態を示す指標である。位相コヒーレンス(λ)は、睡眠中の脳波におけるδ波と相関しており、δ波の振幅が大きくなると位相コヒーレンス(λ)が1に近づき、δ波の振幅が小さくなると位相コヒーレンス(λ)が0に近づく傾向がある。δ波は睡眠の深さの指標であり、睡眠の深度が深い場合(δ波が優勢の場合)は、心拍間隔の変動と呼吸パターンの位相差のばらつきは少なく(位相コヒーレンスが1に近い)、睡眠の深度が浅くなるとばらつきが大きくなる(位相コヒーレンスが0に近い)。したがって、(1-λ)は、0に近づくと睡眠の深度が深く、1に近づくと睡眠の深度が浅くなることを意味している。図13(A)によれば、(1-λ)が測定開始から約8時間10分~40分の期間、約11時間20分~55分の期間において0に近づいており、睡眠の深度が深いことが確認できる。図13(B)は1分間の心拍数であり、図11及び12においてBBIを求めたのと同様に、心拍間隔を求めて算出している。図13(C)は1分間の呼吸数であり、0.5HzのLPF(ローパスフィルタ)によって生体振動信号から呼吸成分を抽出して算出した。なお、これらの信号処理によって取得した心拍間隔及び呼吸成分から、位相コヒーレンス(λ)を算出するための心拍間隔の変動と呼吸パターンとを算出した。図13(D)は、図10と同様のアルゴリズムを用いて鼾が発生している期間を算出したものであり、各時間における30Hz~150Hzのパワーを積分したエネルギーの時系列データにおいて、鼾発生の閾値Eth以上で持続時間の閾値Tth以上連続した領域が示されている。図13から、睡眠が深い状態のときには、鼾がほとんど発生していないことが確認できる。